(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】地盤改良工法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
E02D3/12 102
(21)【出願番号】P 2018179933
(22)【出願日】2018-09-26
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】山下 祐司
(72)【発明者】
【氏名】田中 肇一
(72)【発明者】
【氏名】高山 英作
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-178962(JP,A)
【文献】特開2015-110873(JP,A)
【文献】特開2006-016947(JP,A)
【文献】特開平02-027015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤内に注入管を所定深度まで貫入して引き抜く際に、前記注入管のノズルから前記地盤内に改良材を高圧噴射して所定断面形状の造成体を造成する地盤改良工法において、
前記注入管を徐々に回転させながら前記ノズルから一直線状に改良材を高圧噴射して断面形状が略三角形或いは略台形の第1の改良体を先行して造成し、
次に、
前記第1の改良体の造成位置と異なる位置より、前記第1の改良体の斜辺の面に接するように
前記注入管を徐々に回転させながら前記ノズルから一直線状に改良材を高圧噴射して断面形状が略三角形或いは略台形の第2の改良体を造成して、
2組の相対向する2辺のうちの少なくとも
1組の相対向する2辺が
噴射軸線方向への噴射により造成された改良体の側面部で構成され、直線状となる断面形状が略四角形の造成体を造成することを特徴とする地盤改良工法。
【請求項2】
請求項1記載の地盤改良工法であって、
前記第1の改良体と前記第2の改良体は、異なる場所に設置された同一の前記注入管により造成されることを特徴とする地盤改良工法。
【請求項3】
請求項1または2記載の地盤改良工法であって、
前記注入管は、前記第2の改良体の造成時に、前記第1の改良体の斜辺の面に対して少なくともどこか1点で直角となって当たるように前記ノズルから前記改良材を高圧噴射することを特徴とする地盤改良工法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の地盤改良工法であって、
前記ノズルからの改良材の高圧噴射の噴射時間を調節することにより、前記改良材の到達距離を変化させ、前記第1の改良体或いは前記第2の改良体を造成することを特徴とする地盤改良工法。
【請求項5】
請求項1記載の地盤改良工法であって、
前記断面形状が略四角形の造成体を複数連結して、
両側の
相対向する長辺が
それぞれ直線状となる帯状の造成体を造成することを特徴とする地盤改良工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤内に改良材を高圧噴射して所定断面形状の造成体を造成する地盤改良工法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の地盤改良工法として、例えば、特許文献1に開示された工法がある。この特許文献1に開示された地盤改良工法は、断面形状が小径の扇形と大形の扇形の少なくとも2種の組み合わせで、断面多扇形の改良体を造成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の地盤改良工法では、断面形状が小径の扇形と大形の扇形の組み合わせにより、断面多扇形の改良体を造成するため、直線状に地盤改良することができず、例えば、地中既設構造物に当たったり、境界線より外に出るおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、直線状に地盤改良することができ、地中既設構造物等に影響を与えることがない地盤改良工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、地盤内に注入管を所定深度まで貫入して引き抜く際に、前記注入管のノズルから前記地盤内に改良材を高圧噴射して所定断面形状の造成体を造成する地盤改良工法において、前記注入管を徐々に回転させながら前記ノズルから一直線状に改良材を高圧噴射して断面形状が略三角形或いは略台形の第1の改良体を先行して造成し、次に、前記第1の改良体の造成位置と異なる位置より、前記第1の改良体の斜辺の面に接するように前記注入管を徐々に回転させながら前記ノズルから一直線状に改良材を高圧噴射して断面形状が略三角形或いは略台形の第2の改良体を造成して、2組の相対向する2辺のうちの少なくとも1組の相対向する2辺が噴射軸線方向への噴射により造成された改良体の側面部で構成され、直線状となる断面形状が略四角形の造成体を造成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、断面形状が略四角形の造成体の少なくとも1組の相対向する2辺を直線状に地盤改良することができ、地中既設構造物等に影響を与えることがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態の第1の改良体の説明図である。
【
図2】上記第1の改良体に隣接する第2の改良体の説明図である。
【
図3】上記第1の改良体と第2の改良体からなる造成体を複数連結した帯状の造成体の説明図である。
【
図4】上記第1実施形態の地盤改良工法に用いられる施工機の概略を示す説明図である。
【
図5】本発明の第2実施形態の第1の改良体の説明図である。
【
図6】上記第2実施形態の第1の改良体に隣接する第2の改良体の説明図である。
【
図7】上記第2実施形態の第1の改良体と第2の改良体からなる造成体を複数連結した帯状の造成体の説明図である。
【
図8】本発明の第3実施形態の第1の改良体と第2の改良体及び第3の改良体からなる造成体の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は本発明の第1実施形態の第1の改良体の説明図、
図2は同第1の改良体に隣接する第2の改良体の説明図、
図3は第1の改良体と第2の改良体からなる造成体を複数連結した帯状の造成体の説明図、
図4は第1実施形態の地盤改良工法に用いられる施工機の概略を示す説明図である。
【0011】
この第1実施形態の地盤改良工法は、
図1~
図4に示すように、地盤9内に注入管20を所定深度まで貫入して引き抜く際に、注入管20のノズル23から地盤9内にセメントミルク等のスラリー状の硬化改良材(改良材)Kを高圧噴射して水平(横)断面形状(以下、単に断面形状という)が略四角形の造成体3を造成する工法であり、
図4に示す施工機10を用いる。
【0012】
この施工機10は、先端部21が円錐面状に閉塞された円筒状の注入管20の基端部22をジョイント12を介して着雑自在に回転させる回転駆動装置11を有している。この回転駆動装置11の上部のジョイント12に対向する位置には、スイベル14を介して硬化改良材Kを注入管20内に高圧で圧送する改良材圧送管13を連結してある。この改良材圧送管13は高圧ポンプ15及び硬化改良材Kと水等を攪拌処理する攪拌機16等に接続されている。また、回転駆動装置11等は、図示しない強制昇降装置により昇降動するようになっていて、回転駆動装置11により注入管20は回転すると共に、上下方向に昇降動するようになっている。さらに、注入管20の先端部21の近傍には、ノズル23を注入管20の外周面に対して直角に取り付けてあり、このノズル23よりスラリー状の硬化改良材Kが地盤改良する地盤9内に高圧ジェット噴射されるようになっている。
【0013】
次に、この施工機10を用いた第1実施形態の地盤改良の手順を
図1~
図3に沿って説明する。
【0014】
まず、地盤改良する地盤9内に注入管20を所定深度まで貫入して引き抜く際に、
図1に示すように、注入管20を鋭角の範囲内で、例えば7°毎回転する度に注入管20のノズル23からスラリー状の硬化改良材K(K1~K5)を地盤改良する地盤9内に
一直線状に高圧ジェット噴射させることで、斜辺1aの面を有する断面形状が略直角三角形(略三角形)の第1の改良体1を先行して造成する。この際、ノズル23からのスラリー状の硬化改良材K1~K5の高圧噴射の噴射時間を調節することで、スラリー状の硬化改良材K1~K5の到達距離(ジェット射程長)を徐々に長くなるように変化させ、また、硬化改良材Kのジェット射程長が長くなるほど注入管20の回転角度を狭めて(例えば7°毎よりも狭めて)、第1の改良体1を造成する。
【0015】
次に、第1の改良体1の硬化後に、この第1の改良体1とは相対向する異なる場所に施工機10を設置して、注入管20を所定深度まで貫入して引き抜く際に、
図2に示すように、第1の改良体1の斜辺1aの面に接するように、注入管20を直角の範囲内で、例えば10°毎回転する度に注入管20のノズル23からスラリー状の硬化改良材K(K1~K11)を地盤改良する地盤9内に
一直線状に高圧ジェット噴射させることで、底角の一つが直角で断面形状が略台形の第2の改良体2を造成して、
2組の相対向する2辺のうちの1組の相対向する2辺が
噴射軸線方向への噴射により造成された改良体の側面部で構成され、直線状となる断面形状が略四角形の造成体3を造成する。この際、ノズル23からのスラリー状の硬化改良材K1~K12の高圧噴射の噴射時間を調節することで、スラリー状の硬化改良材K1~K11の到達距離(ジェット射程長)を可変させ、また、硬化改良材Kのジェット射程長が長くなるほど注入管20の回転角度を狭めて(例えば10°毎よりも狭めて)、第2の改良体2を造成する。さらに、この第2の改良体2の造成時に、硬化した第1の改良体1の斜辺1aの面に対して少なくともどこか1点で直角となって当たるように注入管20のノズル23からスラリー状の硬化改良材Kを高圧噴射する。
【0016】
そして、
図3に示すように、断面形状が略四角形の造成体3を複数連結して、両側の
相対向する長辺がそれぞれ直線状となる帯状の造成体4を造成する。
【0017】
このように、先行して造成した断面形状が略三角形の第1の改良体1の斜辺1aの面に接するように断面形状が略台形の第2の改良体2を造成して、
1組の相対向する2辺が直線状となる断面形状が略四角形の造成体3を造成することにより、
図3に示すように、一直線状に
延びた帯状に地盤改良することができる。これにより、例えば、水道管等の地中既設構造物に当たることなく地盤改良をすることができ、また、例えば、境界線から外にはみ出すことなく地盤改良することができる。
【0018】
図5は本発明の第2実施形態の第1の改良体の説明図、
図6は同第1の改良体に隣接する第2の改良体の説明図、
図7は第1の改良体と第2の改良体からなる造成体を複数連結した帯状の造成体の説明図である。
【0019】
この第2実施形態の地盤改良工法でも
図4に示す施工機10を用いる。
【0020】
次に、この施工機10を用いた第2実施形態の地盤改良の手順を
図5~
図7に沿って説明する。
【0021】
まず、地盤改良する地盤9内に注入管20を所定深度まで貫入して引き抜く際に、
図5に示すように、注入管20を直角の範囲内で、例えば10°毎回転する度に注入管20のノズル23からスラリー状の硬化改良材K1~K11を地盤改良する地盤9内に
一直線状に高圧ジェット噴射させることで、斜辺5aの面を有する底角の一つが直角で断面形状が略台形の第1の改良体5を先行して造成する。この際、ノズル23からのスラリー状の硬化改良材K1~K12の高圧噴射の噴射時間を調節することで、スラリー状の硬化改良材K1~K11の到達距離(ジェット射程長)を可変させ、また、硬化改良材Kのジェット射程長が長くなるほど注入管20の回転角度を狭めて(例えば10°毎よりも狭めて)、第1の改良体1を造成する。
【0022】
次に、第1の改良体5の硬化後に、この第1の改良体5とは相対向する異なる場所に施工機10を設置して、注入管20を所定深度まで貫入して引き抜く際に、
図6に示すように、第1の改良体5の斜辺5aの面に接するように、注入管20を直角の範囲内で、例えば10°毎回転する度に注入管20のノズル23からスラリー状の硬化改良材K1~K12を地盤改良する地盤9内に
一直線状に高圧ジェット噴射させることで、底角の一つが直角で断面形状が略台形の第2の改良体6を造成して、
2組の相対向する2辺のうちの1組の相対向する2辺が
噴射軸線方向への噴射により造成された改良体の側面部で構成され、直線状となる断面形状が略四角形の造成体7を造成する。この際、ノズル23からのスラリー状の硬化改良材K1~K11の高圧噴射の噴射時間を調節することで、スラリー状の硬化改良材K1~K11の到達距離(ジェット射程長)を可変させ、また、硬化改良材Kのジェット射程長が長くなるほど注入管20の回転角度を狭めて(例えば10°毎よりも狭めて)、第2の改良体6を造成する。さらに、この第2の改良体6の造成時に、硬化した第1の改良体5の斜辺5aの面に対して少なくともどこか1点で直角となって当たるように注入管20のノズル23からスラリー状の硬化改良材Kを高圧噴射する。
【0023】
そして、
図7に示すように、断面形状が略四角形の造成体7を複数連結して、両側の
相対向する長辺がそれぞれ直線状となる帯状の造成体8を造成する。
【0024】
このように、先行して造成した断面形状が略台形の第1の改良体5の斜辺5aの面に接するように断面形状が略台形の第2の改良体6を造成して、
1組の相対向する2辺が直線状となる断面形状が略四角形の造成体7を造成することにより、
図7に示すように、一直線状に
延びた帯状に地盤改良することができる。これにより、例えば、水道管等の地中既設構造物に当たることなく地盤改良をすることができ、また、例えば、境界線から外にはみ出すことなく地盤改良することができる。
【0025】
図8は本発明の第3実施形態の第1の改良体と第2の改良体及び第3の改良体からなる造成体の説明図である。
【0026】
この第3実施形態の地盤改良工法でも
図4に示す施工機10の注入管20を用いて、
注入管20を引き抜く際に、注入管20のノズル23から地盤9内にスラリー状の硬化改良材Kを高圧噴射して造成体3′を造成するが、各改良体1′,1″.2′の断面形状が前記第1及び第2実施形態の断面形状と異なる。
【0027】
即ち、この第3実施形態では、
図8に示すように、断面形状が略2等辺三角形の第1の改良体1′と断面形状が略等脚台形の第2の改良体2′と断面形状が略2等辺三角形の第3の改良体1″とをそれぞれ造成して、断面形状が略等脚台形の造成体3を造成する。これにより、前記第1実施形態及び第2実施形態と略同様の作用・効果を奏する。
【0028】
尚、前記各実施形態によれば、断面形状が略三角形或いは略台形の改良体を造成して、断面形状が略矩形の造成体を造成するようにしたが、断面形状が扇形の改良体を複数造成し、それらを組み合わせて断面形状が略矩形の造成体を造成するようにしても良い。
【符号の説明】
【0029】
1,5 第1の改良体
1a,5a 斜辺
2,6 第2の改良体
3,7 造成体
4,8 帯状の造成体
9 地盤
20 注入管
23 ノズル
K,K1~K11 スラリー状の硬化改良材(改良材)