(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】N,N’-ジアルキルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボキシジイミドの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 487/08 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
C07D487/08
(21)【出願番号】P 2018182100
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2021-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000228198
【氏名又は名称】エヌ・イーケムキャット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100118991
【氏名又は名称】岡野 聡二郎
(72)【発明者】
【氏名】高木 由紀夫
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 清彦
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-169139(JP,A)
【文献】国際公開第2009/056782(WO,A1)
【文献】Langhals, Heinz; Boeck, Bernd; Schmid, Tanja; Marchuk, Alexey,Angular Benzoperylenetetracarboxylic Bisimides,Chemistry - A European Journal,2012年,18(41),,13188-13194,
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 487/08
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボン酸二無水物に、塩基の存在下、アルキルアミン塩を反応させる工程を含む、N,N'-ジアルキルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボキシジイミドの製造方法。
【請求項2】
前記アルキルアミン塩が、炭素数1~4のアルキルアミンの塩を含む
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記アルキルアミン塩が、アルキルアミン無機酸塩を含む
請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記アルキルアミン塩が、アルキルアミン塩酸塩を含み、
前記N,N'-ジアルキルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボキシジイミドが
、N,N'-ジエチルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボキシジイミドを含む
請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記塩基が、水酸化ナトリウムである
請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N,N’-ジアルキルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボキシジイミドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
N,N,N',N'-テトラアルキルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-ジピロリジニウムは、ゼオライト等の多孔結晶材料の原料(例えば有機構造規定剤(OSDA;Organic Structure-Directing Agent))等として使用される有用な成分の一つである(例えば、特許文献1~3参照)。
【0003】
特許文献1~3には、具体的には、N,N,N',N'-テトラエチルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-ジピロリジニウム又はN,N,N',N'-テトラプロピルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-ジピロリジニウムの合成が開示されている。これらの化合物を合成するために、最初の段階として、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボン酸二無水物をエチルアミン又はプロピルアミン等のアルキルアミンとを反応させて、N,N’-ジアルキルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボキシジイミドを得ることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第6049018号明細書
【文献】特開2016-169139号公報
【文献】米国特許出願公開第6656268号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~3における、N,N’-ジアルキルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボキシジイミドの合成では、上述のようにエチルアミン又はプロピルアミン等のアルキルアミンが使用されている。しかしながら、これらのアルキルアミンは、引火性が高く、日本では危険物第四類特殊引火物又は第一石油類に指定されており、安全性を確保するため、反応への使用時や保管時に取り扱いを十分に配慮する必要がある。また、日本国内のみならず、例えば米国、欧州、中国その他の国・地域においても、当局による規制強化への対応を考慮すると、引火性に対するより高い安全性の確保が求められることは、同様である。
このようにアルキルアミンの使用は取り扱いに注意を必要とするため、従来の製造方法においては、製造プロセスによって得られるN,N’-ジアルキルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボキシジイミドが、比較的に高コストなものとなっていた。そのため、より簡便且つ安全に、N,N’-ジアルキルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボキシジイミドを製造可能な製造方法が求められている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、簡便且つ安全に、N,N’-ジアルキルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボキシジイミドを製造する方法を提供することを課題とする。
【0007】
なお、ここでいう目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも、本発明の他の目的として位置づけることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らがN,N’-ジアルキルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボキシジイミドの製造方法について鋭意検討した結果、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボン酸二無水物に、塩基の存在下、アルキルアミン塩を反応させることによって、簡便且つ安全に目的物を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下に示す種々の具体的態様を提供する。
(1)ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボン酸二無水物に、塩基の存在下、アルキルアミン塩を反応させる工程を含む、N,N’-ジアルキルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボキシジイミドの製造方法。
(2)前記アルキルアミン塩が、炭素数1~4のアルキルアミンの塩を含む(1)に記載の製造方法。
(3)前記アルキルアミン塩が、アルキルアミン無機酸塩を含む(1)又は(2)に記載の製造方法。
(4)前記アルキルアミン塩が、アルキルアミン塩酸塩を含み、前記N,N’-ジアルキルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボキシジイミドが、前記N,N’-ジエチルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボキシジイミドを含む(1)~(3)のいずれか一項に記載の製造方法。
(5)前記塩基が、水酸化ナトリウムである(1)~(4)のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法は、簡便且つ安全にN,N’-ジアルキルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボキシジイミドを得ることができ、工業的に有利な製造方法である。また、N,N’-ジアルキルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボキシジイミドは、ゼオライト等の多孔結晶材料の原料になる化合物(OSDA)の中間体として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらに限定されるものではない。すなわち、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。なお、本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いる。例えば「1~100」との数値範囲の表記は、その上限値「100」及び下限値「1」の双方を包含するものとする。また、他の数値範囲の表記も同様である。
【0012】
本実施形態の製造方法は、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボン酸二無水物に、塩基の存在下、アルキルアミン塩を反応させる工程を含む、N,N’-ジアルキルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボキシジイミドの製造方法である。
【0013】
本実施形態の製造方法における反応は、以下のスキームで表すことができる。
【化1】
【0014】
本実施形態の製造方法では、危険物第四類特殊引火物に指定されているエチルアミン又はイソプロピルアミン、あるいは、危険物第四類第一石油類に指定されているプロピルアミン又はブチルアミン等のアルキルアミンを使用する必要がないため、簡便且つ安全に、N,N’-ジアルキルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボキシジイミドを製造することができる。上記危険物第四類特殊引火物及び第一石油類は、それぞれ消防法(昭和23年法律第186号)に規定されている。
そして、かかる製造方法によれば、比較的に安全な条件下で合成可能なため、設備負担が小さく、大ロットで製造することができるため、得られるN,N’-ジアルキルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボキシジイミドの生産性及び経済性が高められる。
【0015】
(N,N’-ジアルキルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボキシジイミド)
本実施形態におけるN,N’-ジアルキルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボキシジイミドは、下記式(I)で表されるものである。
【化2】
【0016】
上記式(I)中、R1及びR2は、それぞれ独立して、アルキル基である。なお、R1及びR2は、上記の製造方法で用いるアルキルアミン塩のアルキル残基に対応する。
アルキル基としては、炭素数1~4の直鎖状又は分岐状のアルキル基を好適に挙げることができ、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。
これらのアルキル基の中でも、好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基であり、さらに好ましくはエチル基である。
【0017】
本実施形態における原料のビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボン酸二無水物は、市販品として入手することができる。
【0018】
本実施形態における原料のアルキルアミン塩は、アルキルアミンと酸とにより形成される塩が好ましく用いられる。とりわけ、アルキルアミン塩として、常温(25℃)で固体の塩が、エチルアミン、イソプロピルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等の、常温で液体であるアルキルアミンよりも、殊に引火性が低いため、好ましく用いられる。
アルキルアミン塩を形成する酸としては、特に制限されないが、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸のような無機酸;酢酸、乳酸、酒石酸、安息香酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、イセチオン酸、グルクロン酸、グルコン酸のような有機酸;が挙げられる。
これらの酸の中でも、好ましくは無機酸であり、より好ましくは塩酸である。なお、これらの酸は、1種を単独であるいは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。すなわち、アルキルアミン塩は、酸が異なる2種以上のアルキルアミン塩を含有していてもよい。
【0019】
アルキルアミン塩を形成するアルキルアミンとしては、炭素数1~4のアルキルアミンが好ましく用いられ、より好ましくは炭素数1~3のアルキルアミン、さらに好ましくは炭素数2~3のアルキルアミンである。具体的には、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン等が挙げられる。
これらのアルキルアミンの中でも、好ましくはメチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミンであり、より好ましくはメチルアミン、エチルアミンであり、さらに好ましくはエチルアミンである。なお、これらのアルキルアミンは、1種を単独であるいは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。すなわち、アルキルアミン塩は、アルキルアミンが異なる2種以上のアルキルアミン塩を含有していてもよい。
【0020】
アルキルアミンは市販品として入手することができる。
アルキルアミン塩もまた市販品として入手することができ、また、アルキルアミンと酸とを混合して調製してもよい。
【0021】
本実施形態において使用されるアルキルアミン塩の中でも、アルキルアミン無機酸塩が好ましく、より好ましくはエチルアミン無機酸塩であり、さらに好ましくはエチルアミン塩酸塩である。
アルキルアミン塩は、上述したとおり、1種を単独であるいは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0022】
本実施形態において使用される塩基は、アルキルアミン塩からアルキルアミンを系中に遊離させることができるpHを有していれば特に制限されない。上記塩基のpHとしては、通常7超であり、好ましくは8以上であり、より好ましくは9以上である。なお、上記塩基のpHの上限は、特に限定されず、14以下であればよい。
本実施形態において使用される塩基としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ナトリウムメトキサイド、ナトリウムt-ブトキサイド等が挙げられる。これらの中でも、塩基としては、アルカリ金属の水酸化物が好ましい。
上記塩基は、1種を単独であるいは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0023】
(反応条件)
本実施形態の製造方法は、具体的には、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボン酸二無水物、アルキルアミン塩、及び塩基を混合して、反応させる方法を挙げることができる。
ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボン酸二無水物、アルキルアミン塩、及び塩基を混合する順番は任意である。作業性の観点から、本実施形態の製造方法では、上記式(I)で表される化合物とアルキルアミン塩とを混合して必要に応じて溶媒を加え、その後に塩基を添加することが好ましい。
【0024】
本実施形態における反応は、溶媒の存在下で行ってもよい。
溶媒は、反応物や塩基を溶解できれば特に制限されず、反応温度や反応物等に応じて適宜選択すればよい。溶媒としては、例えば、水;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒;アセトニトリル、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒;テトラヒドロフラン(以下、THFとも記載する。)、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒;等が挙げられる。これら溶媒は、1種を単独であるいは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。これらの溶媒の中でも、好ましくは水、及び、水と他の溶媒を含有する水系溶媒であり、より好ましくは水である。
【0025】
溶媒の使用の有無及びその使用量はその他の反応条件を考慮して適宜設定すればよく、特に制限されないが、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボン酸二無水物の濃度を、反応混合物中、0.05~1mol/Lとすることが好ましく、0.1~0.6mol/Lとすることがより好ましく、0.2~0.5mol/Lとすることがさらに好ましい。
本実施形態の製造方法において、塩基を添加する際には、水等の反応に用いる溶媒に予め溶解して、溶液として添加してもよい。
【0026】
アルキルアミン塩の使用量は、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボン酸二無水物の物質量を1としたとき、通常4~20倍molであり、好ましくは6~15倍molであり、より好ましくは8~13倍molである。
塩基の量は、アルキルアミン塩の物質量を1としたとき、通常0.1~1.0倍molであり、好ましくは0.5~0.95倍molであり、より好ましくは0.7~0.90倍molである。
本実施形態の製造方法における求核剤(アルキルアミン塩)の使用量は、アルキルアミンを求核剤に用いる従来の方法よりも、少なく抑えられることができる。この理由としては、定かではないが以下の理由が考えられる。
従来の方法では加熱下で反応を行うことにより時間が経つにつれて徐々に遊離のアルキルアミンは揮発して反応系外に除かれるため、過剰量のアルキルアミンを反応に用いる必要がある。
一方、本実施形態の製造方法では、塩基が何らかの理由により反応を促進すると考えられる。
また、出発物からモノイミドを中間体として経由してジイミドが生成するが、モノイミドからジイミドの生成は100℃ぐらいの温度で反応が進行すると考えられる。100℃ぐらいの温度に到達するには、遊離アルキルアミンがある程度揮発して蒸気圧が下がる必要がある。本実施形態の製造方法にて用いる塩基は、遊離アルキルアミンの揮発を促進し100℃に早く到達させることができ、結果的に反応の進行を早めていると考えられる。
以上のように、塩基による反応の促進と、遊離アルキルアミンの揮発の促進とにより、反応時間を短縮でき、結果的に求核剤として系内に存在するアルキルアミン量を維持できる。したがって、アルキルアミン塩の使用量を抑えることができるため、本実施形態の製造方法は工業的に有利となる。
【0027】
反応温度は、特に制限されないが、通常20~200℃、好ましくは50~150℃、より好ましくは70~120℃の範囲である。
反応時間は、反応のスケールによって、また、GC-MS等を用い反応の進行状況をモニタリングすることによって適宜調整すればよく、通常10時間~100時間、好ましくは15~60時間、より好ましくは20~40時間である。
【0028】
反応終了後の混合物は、上記反応で溶媒を用いる場合、得られた反応溶液を必要に応じて濃縮した後、残渣をそのまま原材料や中間体として使用してもよく、反応混合物を適宜後処理して上記式(I)で表される化合物を得てもよい。後処理の具体的な方法としては、水洗、ろ過、乾燥、抽出、蒸留、クロマトグラフィー等の公知の精製方法を挙げることができる。これらの精製方法は、2種以上を組み合わせて行ってもよい。
【実施例】
【0029】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらによりなんら限定されるものではない。すなわち、以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更することができる。また、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における好ましい上限値又は好ましい下限値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0030】
(実施例1)
ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボン酸二無水物(分子量248.19、粉末、東京化成工業製)945.0g、エチルアミン塩酸塩(分子量81.54、固体、非危険物、東京化成工業)3,500gを16Lフラスコに入れ、水6,000mLを添加し、撹拌器を用いて撹拌し、窒素雰囲気下とした。次に、48%水酸化ナトリウム水溶液2,917gを添加し、室温で撹拌した。60℃まで昇温した後、徐々に昇温し、最終的には106℃とした。反応を50時間行った後、放冷後ろ過し、純水で洗浄して乾燥することで、目的物であるN,N’-ジエチルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボキシジイミドの白色固体1115.0g(収率95%以上)を得た。
原料として危険物は使用しなかった。
得られた白色固体の1H-NMR及び13C-NMRを以下に示す。
1H-NMR(400MHz, CDCl3) δ: 6.10 (t, 2H), 3.79 (brs, 2H), 3.48 (q4, 4H), 2.96 (s, 4H), 1.07 (t, 6H).
13C-NMR(400Hz, CDCl3) δ: 176.47(×4), 130.75(×2), 42.83(×4), 33.84(×2), 33.47(×2), 12.90(×2).
【0031】
(比較例1)
ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボン酸二無水物(分子量248.19、粉末、東京化成工業製)4.0g、70%エチルアミン溶液(分子量81.54、液体、危険物第4類特殊引火物指定数量50L、東京化成工業)25mlを2Lフラスコに入れ、水12ccを添加し、ホットスターラー上で撹拌子を用いて撹拌し、窒素雰囲気下とした。室温で撹拌した。60℃まで昇温した後、徐々に昇温し、最終的には100℃とした。反応を44時間行った後、放冷後ろ過し、純水で洗浄して乾燥することで、目的物であるN,N’-ジエチルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボキシジイミドの白色固体1.6g(収率95%以上)を得た。
生成物1molあたりの原料としての危険物使用量は1.6L/molであり、生成物1kgあたりの原料の指定数量に換算すると0.104倍/kgであった。
得られた白色固体の1H-NMR及び13C-NMRを以下に示す。
1H-NMR(400MHz, CDCl3) δ: 6.10 (t, 2H), 3.79 (brs, 2H), 3.48 (q4, 4H), 2.96 (s, 4H), 1.07 (t, 6H).
13C-NMR(400Hz, CDCl3) δ: 176.47(×4), 130.75(×2), 42.83(×4), 33.84(×2), 33.47(×2), 12.90(×2).
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、化合物の中間原料等として有用なN,N’-ジアルキルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボキシジイミドを簡便且つ安全に提供することができ、例えば含水アルミノケイ酸塩の一種であるゼオライト等の供給が比較的に安定且つ低コストで実現可能である。そのため、本発明は、各種の無機或いは有機分子の吸着剤又は分離剤の他、乾燥剤、脱水剤、イオン交換体、石油精製触媒、石油化学触媒、固体酸触媒、三元触媒、排ガス浄化触媒、NOx吸蔵材等の用途において、広く且つ有効に利用可能である。