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  • 特許-光ファイバ用ガラス体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】光ファイバ用ガラス体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/014 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
C03B37/014 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018188748
(22)【出願日】2018-10-04
(65)【公開番号】P2020055721
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-06-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】中込 久幸
【審査官】和瀬田 芳正
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-083982(JP,A)
【文献】国際公開第2015/107931(WO,A1)
【文献】特開昭63-236727(JP,A)
【文献】特開2001-199731(JP,A)
【文献】特開昭59-217634(JP,A)
【文献】国際公開第2002/102725(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 8/04
C03B 37/014
G02B 6/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質ガラス体をヒータで加熱して炉心管内で脱水処理する脱水処理工程と、
前記多孔質ガラス体を前記ヒータで加熱して焼結し、光ファイバ用ガラス体を得る焼結工程とを含む光ファイバ用ガラス体の製造方法であって、
前記脱水処理工程において、塩素系ガスを含む脱水処理ガスを前記炉心管内に供給しながら、前記炉心管内のガスを、前記炉心管に接続された排気管を通して排気し、
前記脱水処理工程が、前記塩素系ガスとして第1塩素系ガスを用いる前脱水処理工程と、前記塩素系ガスとして第2塩素系ガスを用いる後脱水処理工程とを含み、
前記後脱水処理工程において、前記多孔質ガラス体に対する前記第2塩素系ガスの反応性を、前記前脱水処理工程における前記多孔質ガラス体に対する前記第1塩素系ガスの反応性よりも高くし、
前記第2塩素系ガスが前記第1塩素系ガスと異なり、前記第2塩素系ガスは、前記ヒータの温度、及び、前記脱水処理ガスに対する分圧比が前記第1塩素系ガス及び前記第2塩素系ガスで同一である条件下に置かれる場合に、前記第1塩素系ガスよりも、前記多孔質ガラス体に対して高い反応性を有するガスである、光ファイバ用ガラス体の製造方法。
【請求項2】
多孔質ガラス体をヒータで加熱して炉心管内で脱水処理する脱水処理工程と、
前記多孔質ガラス体を前記ヒータで加熱して焼結し、光ファイバ用ガラス体を得る焼結工程とを含む光ファイバ用ガラス体の製造方法であって、
前記脱水処理工程において、塩素系ガスを含む脱水処理ガスを前記炉心管内に供給しながら、前記炉心管内のガスを、前記炉心管に接続された排気管を通して排気し、
前記脱水処理工程が、前記塩素系ガスとして第1塩素系ガスを用いる前脱水処理工程と、前記塩素系ガスとして第2塩素系ガスを用いる後脱水処理工程とを含み、
前記後脱水処理工程において、前記多孔質ガラス体に対する前記第2塩素系ガスの反応性を、前記前脱水処理工程における前記多孔質ガラス体に対する前記第1塩素系ガスの反応性よりも高くし、
前記第2塩素系ガスが前記第1塩素系ガスと同一であり、
前記前脱水処理工程と前記後脱水処理工程とで、前記脱水処理ガスに対する前記塩素系ガスの分圧比が異なり、前記脱水処理ガスに対する前記第2塩素系ガスの分圧比が、前記脱水処理ガスに対する前記第1塩素系ガスの分圧比の3倍以上であり、
前記第1塩素系ガスは、塩化チオニル(SOCl )である、光ファイバ用ガラス体の製造方法。
【請求項3】
前記脱水処理ガスに対する前記第2塩素系ガスの分圧比が、前記脱水処理ガスに対する前記第1塩素系ガスの分圧比の5倍以下である、請求項2に記載の光ファイバ用ガラス体の製造方法。
【請求項4】
前記第1塩素系ガスが塩素である、請求項に記載の光ファイバ用ガラス体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ用ガラス体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ用ガラス体は一般に、VAD(Vapor-phase Axial Deposition)法等によって生成された多孔質ガラス体を脱水処理した後、焼結により透明ガラス化処理することによって製造される。光ファイバを低損失化するためにはコアにシリカ(SiO)を用いるのがよい。この場合、コアの外側に、ダウンドーパントであるフッ素をSiOに添加してなるクラッドが設けられると、光ファイバ用ガラス体は、SiOからなるコア部と、その外側でSiOにフッ素を添加してなるクラッド部とで構成されることになる。しかし、この場合、クラッド部の粘度が低くなり、コア部とクラッド部との粘度差が大きくなる。このため、光ファイバ用ガラス体の線引時にコア部に引張応力が集中し、得られる光ファイバのコアにおいてレイリー散乱が増加してしまう。そのため、光ファイバ用ガラス体において、コア部とクラッド部との間の比屈折率差を保ちつつ、コア部とクラッド部の粘度差を低減するために、クラッド部におけるフッ素の添加量を低減し、コア部にアップドーパントである塩素が添加されることがある。また、光ファイバ用ガラス体はコア部のみで構成されたり、クラッド部のみで構成されたりすることもあり、これらのコア部又はクラッド部に塩素が添加されることもある。
【0003】
塩素を添加した光ファイバ用ガラス体の製造方法として、従来、例えば下記特許文献1に記載される製造方法が知られている。同文献には、多孔質ガラス体を脱水焼結装置の炉心内に配置し、炉心内に四塩化ケイ素(SiCl4)と不活性ガスとを混合した脱水処理ガスを供給し、炉心内のガスを、炉心に接続された排気管を通して排気することによって脱水処理を行った後、透明ガラス化処理(焼結処理)を行い、光ファイバ用ガラス体を製造することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-53423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の光ファイバ用ガラス体の製造方法は、光ファイバ用ガラス体に十分に塩素を添加できるものの、以下に示す課題を有していた。
【0006】
すなわち、上記特許文献1に記載の光ファイバ用ガラス体の製造方法では、脱水処理時に供給されるSiClが、多孔質ガラス体の表面に付着した水分と反応してSiOの粉体を生成し、このSiOの粉体が雰囲気中に浮遊して排ガス中に混入し、短期間で排気管を閉塞させやすくなる。その結果、排気管の交換や清掃のために脱水焼結装置を停止させることが必要となり、連続して製造できる光ファイバ用ガラス体の本数が減少し、光ファイバ用ガラス体を効率よく製造できなくなる。
【0007】
ここで、排気管の閉塞を抑制するためには、多孔質ガラス体の脱水処理時に、炉心に供給する脱水処理ガスとして、SiCl4に代えて、それよりも多孔質ガラス体に対する反応性の低い塩素系ガス(例えば塩素)を用いることも考えられる。しかし、この場合、光ファイバ用ガラス体に十分に塩素を添加することができない。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、塩素が十分に添加された光ファイバ用ガラス体を効率よく製造できる光ファイバ用ガラス体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、多孔質ガラス体を炉心内で脱水処理する脱水処理工程と、前記多孔質ガラス体をヒータで加熱して焼結して光ファイバ用ガラス体を得る焼結工程とを含む光ファイバ用ガラス体の製造方法であって、前記脱水処理工程において、塩素系ガスを含む脱水処理ガスを前記炉心内に供給しながら、前記炉心内のガスを、前記炉心に接続された排気管を通して排気し、前記脱水処理工程が、前記塩素系ガスとして第1塩素系ガスを用いる前脱水処理工程と、前記塩素系ガスとして第2塩素系ガスを用いる後脱水処理工程とを含み、前記後脱水処理工程において、前記多孔質ガラス体に対する前記第2塩素系ガスの反応性を、前記前脱水処理工程における前記多孔質ガラス体に対する前記第1塩素系ガスの反応性よりも高くする、光ファイバ用ガラス体の製造方法である。
【0010】
本発明の光ファイバ用ガラス体の製造方法によれば、脱水処理工程の前脱水処理工程では、多孔質ガラス体に対する第1塩素系ガスの反応性が、後脱水処理工程における多孔質ガラス体に対する第2塩素系ガスの反応性よりも低いため、多孔質ガラス体と第1塩素系ガスとの反応により生成されるSiClの濃度が低くなる。そのため、前脱水処理工程において、生成されたSiClが、多孔質ガラス体の表面に付着した水分と反応しても、生成されるSiOの粉体の濃度も低くなる。そのため、炉心管内のガスが排気管を通して排気されても排気管の閉塞が十分に抑制される。そして、後脱水処理工程では、多孔質ガラス体に対する第2塩素系ガスの反応性が、多孔質ガラス体に対する第1塩素系ガスの反応性よりも高くなっているため、光ファイバ用ガラス体に塩素を十分に添加することができる。このとき、多孔質ガラス体と第2塩素系ガスとの反応によりSiClが生成されるが、このときには、前脱水処理工程において多孔質ガラス体の表面に付着した水分が十分に除去されている。このため、SiClと多孔質ガラス体の表面に付着した水分との反応により生成されるSiOの粉体の濃度は十分に低くなる。そのため、炉心管内のガスが排気管を通して排気されても排気管の閉塞が十分に抑制される。以上より、本発明の光ファイバ用ガラス体によれば、塩素が十分に添加された光ファイバ用ガラス体を効率よく製造できる。
【0011】
上記光ファイバ用ガラス体の製造方法においては、前記第2塩素系ガスが前記第1塩素系ガスと異なり、前記第2塩素系ガスは、前記ヒータの温度、及び、前記脱水処理ガスに対する分圧比が前記第1塩素系ガス及び前記第2塩素系ガスで同一である条件下に置かれる場合に、前記第1塩素系ガスよりも、前記多孔質ガラス体に対して高い反応性を有するガスであることが好ましい。
【0012】
この場合、光ファイバ用ガラス体に効果的に塩素を添加することができる。
【0013】
上記光ファイバ用ガラス体の製造方法においては、前記第2塩素系ガスが前記第1塩素系ガスと同一であることが好ましい。
【0014】
この場合、第2塩素系ガスが第1塩素系ガスと同一であるため、脱水処理工程において、塩素系ガスを第1塩素系ガスから第2塩素系ガスに切り替えずに済む。このため、塩素系ガスの切換えの手間が省け、光ファイバ用ガラス体を容易に製造できる。
【0015】
上記光ファイバ用ガラス体の製造方法においては、前記第2塩素系ガスが前記第1塩素系ガスと同一である場合、前記前脱水処理工程と前記後脱水処理工程とで、前記脱水処理ガスに対する前記塩素系ガスの分圧比が異なり、前記脱水処理ガスに対する前記第2塩素系ガスの分圧比が、前記脱水処理ガスに対する前記第1塩素系ガスの分圧比よりも大きいことが好ましい。
【0016】
この場合、後脱水処理工程において、脱水処理ガス中の塩素系ガスの濃度が高まるので、多孔質ガラス体に対する塩素系ガスの反応性を、前脱水処理工程における塩素系ガスの反応性より高めることができる。また、SiOに対する比屈折率差の増加量は一般に、塩素系ガスの分圧比の1/4乗の増加量に比例するので、後脱水処理工程における塩素系ガスの分圧比を、前脱水処理工程における塩素系ガスの分圧比よりも大きくすることで、得られる光ファイバ用ガラス体の屈折率を容易に調整できる。
【0017】
上記光ファイバ用ガラス体の製造方法においては、前記第2塩素系ガスが前記第1塩素系ガスと同一である場合、前記前脱水処理工程と前記後脱水処理工程とで、前記ヒータの温度が異なり、前記後脱水処理工程における前記ヒータの温度が、前記前脱水処理工程における前記ヒータの温度よりも高いことが好ましい。
【0018】
この場合、後脱水処理工程において、脱水処理ガス中の塩素系ガスがさらに高い温度に加熱されるため、塩素系ガスの活性がより高まる。このため、多孔質ガラス体に対する塩素系ガスの反応性を、前脱水処理工程における塩素系ガスの反応性より高めることができる。
【0019】
上記光ファイバ用ガラス体の製造方法においては、前記第1塩素系ガスが塩素であることが好ましい。
【0020】
この場合、塩素系ガスの中でも塩素は多孔質ガラス体に対する反応性が相対的に低く、多孔質ガラス体と第1塩素系ガスとの反応により生成されるSiClの濃度が特に低くなる。そのため、前脱水処理工程において、生成されたSiClが、多孔質ガラス体の表面に付着した水分と反応しても、生成されるSiOの粉体の濃度もより低くなる。そのため、炉心管内のガスが排気管を通して排気されても排気管の閉塞がより十分に抑制される。
【0021】
なお、本発明において、「多孔質ガラス体に対する反応性」とは、SiOに対する多孔質ガラス体の波長632.8nmにおける比屈折率差を上昇させる能力をいい、後脱水処理工程における多孔質ガラス体に対する反応性が前脱水処理工程における多孔質ガラス体に対する反応性よりも高いかどうかは、SiOに対する光ファイバ用ガラス体の波長632.8nmにおける比屈折率差が、前脱水処理工程後のSiOに対する多孔質ガラス体の波長632.8nmにおける比屈折率差より大きくなるかどうかによって判別できる。ここで、比屈折率差は以下のように定義される。
比屈折率差=(n -n )/2n
(上記式中、nは波長632.8nmにおける多孔質ガラス体の屈折率を示し、nは波長632.8nmにおけるSiOの屈折率を示す)
「多孔質ガラス体に対する反応性」は、塩素系ガスの種類だけでなく、塩素系ガスの分圧比、温度を変更することによって変更することができる。
【0022】
また、本発明において、「塩素系ガス」とは、塩素原子を含有するガスを言うものとする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、塩素が十分に添加された光ファイバ用ガラス体を効率よく製造できる光ファイバ用ガラス体の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の光ファイバ用ガラス体の製造方法を実施するための脱水焼結装置の一例を示す概略切断面端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の光ファイバ用ガラス体の製造方法の実施形態について詳細に説明する。
【0026】
まず、本発明の光ファイバ用ガラス体の製造方法の実施形態の説明に先立ち、本発明の光ファイバ用ガラス体の製造方法を実施するための脱水焼結装置について図1を用いて説明する。図1は、本発明の光ファイバ用ガラス体の製造方法を実施するための脱水焼結装置の一例を示す概略切断面端面図である。
【0027】
図1に示すように、脱水焼結装置100は、多孔質ガラス体Pを収容するための炉心管1と、炉心管1を包囲する加熱炉2とを備えている。炉心管1は、炉心管本体1aと、炉心管本体1aの上端開口1bを塞ぐ蓋部1cとを有する。蓋部1cには、多孔質ガラス体Pを吊り下げる支持棒4を挿入するための挿入孔1dが形成されている。支持棒4の下端には多孔質ガラス体Pを吊り下げるための接続部5が取り付けられ、接続部5は多孔質ガラス体Pに接続されている。炉心管1には、塩素系ガスを含む脱水処理ガスを供給するためのガス供給口1eと、炉心管1内のガスを排気するための排気口1fとが形成されている。排気口1fには排気管3が接続され、排気管3には排ガス処理装置(図示せず)が設けられている。
【0028】
加熱炉2は、外壁部2aと、外壁部と炉心管1との間のヒータ室2bと、ヒータ室2b内に配置され、炉心管1を包囲するように配置されるヒータ2cとを備えている。
【0029】
次に、脱水焼結装置100を用いた光ファイバ用ガラス体の製造方法の実施形態について説明する。
【0030】
本実施形態の光ファイバ用ガラス体の製造方法においては、まず、多孔質ガラス体Pを用意する。ここで、多孔質ガラス体Pは、例えばスート部と、そのスート部の両端から延びる、ダミーとなるガラスロッドとを含んでいる。そして、支持棒4を、多孔質ガラス体Pを取り付け可能な位置(図示せず)まで引き上げた後に、用意した多孔質ガラス体Pを、接続部5を介して支持棒4に吊り下げる。そして支持棒4を下方へと下げることで、炉心管1内に多孔質ガラス体Pを収容し、蓋部1cで炉心管本体1aの上端開口1bを塞ぐ。
【0031】
次に、多孔質ガラス体Pを炉心1内で脱水処理する(脱水処理工程)。
【0032】
次に、多孔質ガラス体Pを焼結して光ファイバ用ガラス体を得る(焼結工程)。
【0033】
そして、脱水処理工程においては、塩素系ガスを含む脱水処理ガスを炉心1内に供給しながら、炉心1内のガスを、炉心1の排気口1fに接続された排気管3を通して排ガス処理装置へ排気する。脱水処理工程では、塩素系ガスとして第1塩素系ガスを用いる前脱水処理工程を行った後、塩素系ガスとして第2塩素系ガスを用いる後脱水処理工程を行う。そして、後脱水処理工程においては、多孔質ガラス体Pに対する第2塩素系ガスの反応性を、多孔質ガラス体Pに対する第1塩素系ガスの反応性よりも高くする。
【0034】
本実施形態の光ファイバ用ガラス体の製造方法によれば、脱水処理工程の前脱水処理工程では、多孔質ガラス体Pに対する第1塩素系ガスの反応性が、多孔質ガラス体Pに対する第2塩素系ガスの反応性よりも低いため、多孔質ガラス体Pと第1塩素系ガスとの反応により生成されるSiClの濃度が低くなる。そのため、前脱水処理工程において、生成されたSiClが雰囲気中の水分と反応しても、生成されるSiOの粉体の濃度も低くなる。そのため、炉心管1内のガスが排気管3を通して排気されても排気管3の閉塞が十分に抑制される。そして、後脱水処理工程では、多孔質ガラス体Pに対する第2塩素系ガスの反応性が、多孔質ガラス体Pに対する第1塩素系ガスの反応性よりも高くなっているため、光ファイバ用ガラス体に塩素を十分に添加することができる。このとき、多孔質ガラス体Pと第2塩素系ガスとの反応によりSiClが生成されるが、このときには、前脱水処理工程において、多孔質ガラス体Pの表面に付着した水分が十分に除去されている。このため、SiClと多孔質ガラス体Pの表面に付着した水分との反応により生成されるSiOの粉体の濃度は十分に低くなる。そのため、炉心管1内のガスが排気管3を通して排気されても排気管3の閉塞が十分に抑制される。以上より、本発明の光ファイバ用ガラス体によれば、塩素が十分に添加された光ファイバ用ガラス体を効率よく製造できる。
【0035】
次に、上記脱水処理工程及び焼結工程について詳細に説明する。
【0036】
(A)脱水処理工程
脱水処理工程は、多孔質ガラス体Pを炉心1内で脱水処理する工程である。脱水処理工程は、上述したように、前脱水処理工程と、後脱水処理工程とを含む。
【0037】
脱水処理ガスは、塩素系ガスに加えて、キャリアガスとしての不活性ガスをさらに含む。不活性ガスとしては、例えばHe、Ne、Ar、Nなどを用いることができる。
【0038】
(多孔質ガラス体)
多孔質ガラス体Pは、VAD法や外付け法などのスート法によって得ることができる。スート法では以下のようにして多孔質ガラス体Pが得られる。すなわち、まず予め、支持棒4の下端の接続部5と接続可能な形状を持つダミーロッドと、ガラス微粒子を堆積させるガラスロッドとを溶着させておく。そして、バーナーを設置し、このバーナーに酸素ガス、水素ガス、不活性ガスを流して反応させた火炎中に、SiClなどのガラス原料ガスを供給し、回転するガラスロッドにガラス微粒子を生成させる。こうして多孔質ガラス体Pが得られる。
【0039】
多孔質ガラス体Pは、コア部と、その外側のクラッド部とで構成されるものでもよいし、コア部のみで構成されるものでも、クラッド部のみで構成されるものであってもよい。
【0040】
多孔質ガラス体Pは、例えばSiOを含む。
【0041】
(前脱水処理工程)
前脱水処理工程においては、塩素系ガスとして第1塩素系ガスを用いる。第1塩素系ガスとしては、例えば塩素、塩化チオニル(SOCl)、SiCl、四塩化炭素(CCl)などを用いることができる。
【0042】
中でも、第1塩素系ガスとしては、塩素が好ましい。この場合、以下の式(1)及び(2)によって、多孔質ガラス体Pの表面におけるOH基や表面に付着した水分が除去される。

2SiOH(多孔質ガラス体P)+Cl→2Si-Cl+2HCl+O・・・(1)
2HO+2Cl→4HCl+O・・・(2)

一方、塩素は多孔質ガラス体Pと以下の(3)の反応を引き起こす。

SiO(多孔質ガラス体P)+2Cl→SiCl+O・・・(3)

そして、このとき生成されるSiClは、雰囲気中のHOと下記式(4)の反応を起こしてSiOの粉体を生成する。

SiCl+2HO→SiO(粉体)+4HCl・・・(4)

しかし、塩素系ガスの中でも塩素は多孔質ガラス体Pに対する反応性が低く、多孔質ガラス体Pと第1塩素系ガスとの反応(式(3)の反応)により生成されるSiClの濃度が特に低くなる。そのため、前脱水処理工程において、生成されたSiClが、多孔質ガラス体Pの表面に付着した水分と反応しても、生成されるSiOの粉体の濃度もより低くなる(式(4)参照)。そのため、炉心管1内のガスが排気管3を通して排気されても排気管3の閉塞がより十分に抑制される。
【0043】
脱水処理ガスに対する第1塩素系ガスの分圧比(R1)は、特に制限されるものではないが、0.01以上であることが好ましい。この場合、分圧比R1が0.01未満である場合に比べて、より効率よく多孔質ガラス体Pの脱水処理を行うことができる。
【0044】
分圧比R1は、0.25以上であることがより好ましい。
【0045】
ヒータ2cの温度は多孔質ガラス体Pの焼結温度よりも低い温度で且つ多孔質ガラス体Pの表面におけるOH基や表面に付着した水分を脱水可能な温度であれば特に制限されるものではないが、多孔質ガラス体Pへの第1塩素系ガスの拡散を促進する観点からは、1000℃以上であることが好ましい。但し、ヒータ2cの温度は多孔質ガラス体Pへの第1塩素系ガスの拡散を促進するとともに多孔質ガラス体Pの軟化を十分に抑制する観点からは、1200℃以下であることが好ましい。
【0046】
(後脱水処理工程)
後脱水処理工程においては、塩素系ガスとして第2塩素系ガスを用いる。第2塩素系ガスとしては、例えばSOCl、SiCl、CClなどを用いることができる。第2塩素系ガスとしては、本実施形態では、第1塩素系ガスと異なるガスを用いる。この場合、第2塩素系ガスは、ヒータ2cの温度、及び、脱水処理ガスに対する分圧比が第1塩素系ガス及び第2塩素系ガスで同一である条件下に置かれる場合に、第1塩素系ガスよりも、多孔質ガラス体Pに対して高い反応性を有するガスであることが好ましい。この場合、光ファイバ用ガラス体に効果的に塩素を添加することができる。例えば第1塩素系ガスとして塩素を用いる場合には、第2塩素系ガスとして、SOCl、SiCl、CClなどを用いることができる。なお、ヒータ2cの温度、及び、脱水処理ガスに対する分圧比が同一である条件下に置かれる場合における塩素系ガスの多孔質ガラス体Pに対する反応性は、塩素系ガスの分圧比の1/4乗と、SiOに対する光ファイバ用ガラス体の比屈折率差との関係を示す直線の傾きを指標とすることができる。
【0047】
脱水処理ガスに対する第2塩素系ガスの分圧比(R2)は、第2塩素系ガスの種類にもよるので一概には言えないが、例えば第2塩素系ガスが塩化チオニルである場合には、0.03以上であることが好ましい。この場合、分圧比R2が0.03未満である場合に比べて、より効率よく多孔質ガラス体Pに塩素を添加させることができる。
【0048】
分圧比R2は、例えば第2塩素系ガスが塩化チオニルである場合には、0.05以上であることがより好ましい。
【0049】
但し、分圧比R2は、第2塩素系ガスを炉心管1内に供給するための配管の温度において第2塩素系ガスの分圧が第2塩素系ガスの飽和蒸気圧と同一となる分圧比Raより小さいことが好ましい。この場合、分圧比R2がRa以上である場合と異なり、第2塩素系ガスが上記配管を通して炉心管1内に供給される際に、上記配管内において第2塩素系ガスの結露を抑制でき、結露によって配管が腐食したり劣化したりすることを十分に抑制することができる。また、分圧比R2がRaより小さい場合、予め決められた量の第2塩素系ガスを炉心管1内に供給することができる。
【0050】
ヒータ2cの温度は特に制限されるものではないが、多孔質ガラス体Pに塩素をより十分に添加する観点からは、1100℃以上であることが好ましい。但し、ヒータ2cの温度は、多孔質ガラス体Pへの第2塩素系ガスの拡散を促進するとともに多孔質ガラス体Pの軟化を十分に抑制する観点からは、1200℃以下であることが好ましい。
【0051】
(B)焼結工程
焼結工程は、多孔質ガラス体Pを焼結して光ファイバ用ガラス体を得る工程である。焼結工程においては、ガス供給口1eから炉心管1内に焼結処理用ガスを供給するとともに、炉心管1内のガスを、炉心1の排気口1fに接続された排気管3を通して排ガス処理装置へ排気する。焼結工程は、脱水処理工程を経た多孔質ガラス体Pをヒータ2cの上方に移動させた後、多孔質ガラス体Pの下端をヒータ2cの内側に配置し、多孔質ガラス体Pをヒータ2cによって加熱しながら下降させることによって行ったり、脱水処理工程を経た多孔質ガラス体Pを移動させることなく、多孔質ガラス体Pをヒータ2cによって加熱することによって行うことができる。
【0052】
焼結工程においては、ヒータ2cの温度を多孔質ガラス体Pの焼結温度以上する。ここで、多孔質ガラス体Pの焼結温度は、多孔質ガラス体Pを透明ガラス化させることが可能なヒータ2cの温度の最低値である。焼結処理用ガスは不活性ガスを含む。
【0053】
不活性ガスとしては、例えばHe、Arなどを用いることができる。不活性ガスは脱水処理工程で使用される不活性ガスと同一でも異なるものでもよい。
【0054】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、後脱水処理工程において、第2塩素系ガスとして第1塩素系ガスと異なるガスを用いているが、第2塩素系ガスを第1塩素系ガスと同一としてもよい。この場合、後脱水処理工程においては、脱水処理ガスに対する第2塩素系ガスの分圧比(R2)は、第1塩素系ガスの分圧比R1より大きくする必要がある。すなわち、R1に対するR2の比は1より大きくする必要がある。この場合、後脱水処理工程において、脱水処理ガス中の塩素系ガスの濃度が高まるので、多孔質ガラス体Pに対する塩素系ガスの反応性を、前脱水処理工程における塩素系ガスの反応性より高めることができる。また、SiOガラスに対する比屈折率差の増加量は一般に、塩素系ガスの分圧比の1/4乗の増加量に比例するので、後脱水処理工程における塩素系ガスの分圧比を、前脱水処理工程における塩素系ガスの分圧比よりも大きくすることで、得られる光ファイバ用ガラス体の屈折率を容易に調整できる。
【0055】
上記比(R2/R1)は1より大きければ特に制限されるものではないが、1.5以上であることが好ましい。この場合、上記比が1.5未満である場合に比べて、より効率よく多孔質ガラス体Pに塩素を添加させることができる。上記比(R2/R1)は、2.5以上であることがより好ましく、16.5以上がさらにより好ましい。
【0056】
あるいは、第2塩素系ガスを第1塩素系ガスと同一とする場合、後脱水処理工程においては、ヒータ2cの温度(T2)を、前脱水処理工程におけるヒータ2cの温度(T1)より高くしてもよい。すなわち、T1に対するT2の温度比(T2/T1)は1より大きくする必要がある。この場合、後脱水処理工程において、脱水処理ガス中の塩素系ガスがさらに高い温度に加熱されるため、塩素系ガスの活性がより高まる。このため、多孔質ガラス体に対する塩素系ガスの反応性を、前脱水処理工程における塩素系ガスの反応性より高めることができる。
【0057】
上記温度比は1より大きければ特に制限されるものではないが、1.08以上であることが好ましい。この場合、上記温度比が1.08未満である場合に比べて、より効率よく多孔質ガラス体Pに塩素を添加させることができる。なお、上記温度比(T2/T1)において、T1及びT2は絶対温度であるものとする。
【0058】
但し、上記温度比は、1.16以下であることが好ましい。この場合、上記温度比が1.16を超える場合に比べて、排気管3の閉塞をより十分に抑制できる。
【実施例
【0059】
以下、実施例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0060】
(実施例1~11)
まず以下のようにして多孔質ガラス体Pを作製した。すなわち、まず予め、支持棒4の下端の接続部5と接続可能な形状を持つダミーロッドと、ガラス微粒子を堆積させるガラスロッドとを用意し、これらを溶着させた。そして、バーナーを設置し、このバーナーに酸素ガス、水素ガス、不活性ガスであるArを流して反応させた火炎中に、ガラス原料としてのSiClを供給し、回転するガラスロッドにガラス微粒子からなるスート部を形成した。このとき、ガラスロッドは、SiOで構成した。こうして多孔質ガラス体Pを得た。得られた多孔質ガラス体Pは、スート部と、そのスート部の両端から延びる、ダミーとなるガラスロッドとで構成されていた。
【0061】
得られた多孔質ガラス体Pについては、スート部の全長が300mm、直径は30mmであった。そして、支持棒4を、多孔質ガラス体Pを取り付け可能な位置(図示せず)まで引き上げた後に、用意した多孔質ガラス体Pを、接続部5を介して支持棒4に吊り下げた。そして支持棒4を下方へと下げることで、炉心管1内に多孔質ガラス体Pを収容し、蓋部1cで炉心管本体1aの上端開口1bを塞いだ(図1参照)。
【0062】
次に、この多孔質ガラス体Pに対し、脱水焼結装置100にて脱水処理工程及び焼結工程を順次行った。
【0063】
脱水処理工程においては、まず、多孔質ガラス体Pに対して前脱水処理工程を行った。具体的には、支持棒4を下降させることにより多孔質ガラス体Pをヒータ2cの内側に挿入した。そして、炉心管1内にガス供給口1eから、表1に示す第1塩素系ガスと不活性ガスとしてのHeとからなる脱水処理ガスを3L/分の流量で供給する一方、炉心管1内のガスを、排気口1fに接続された排気管3を通して排ガス処理装置へ排気した。このとき、脱水処理ガスに対する第1塩素系ガスの分圧比R1は、表1の前脱水処理工程の第1塩素系ガスの分圧比の通りとした。なお、分圧比R1は、脱水処理ガスの圧力を1としたときの第1塩素系ガスの分圧の比である。また、前脱水処理工程におけるヒータ2cの温度T1は表1に示す通りとした。
【0064】
3時間経過した後、後脱水処理工程を行った。具体的には、炉心管1内にガス供給口1eから、表1に示す第2塩素系ガスと不活性ガスとしてのHeとからなる脱水処理ガスを3L/分の流量で供給した。このとき、排ガス処理装置は作動させたままとし、炉心管1内のガスは、排気口1fに接続された排気管3を通して排ガス処理装置へ排気した。このとき、脱水処理ガスに対する第2塩素系ガスの分圧比R2は、表1に示す後脱水処理工程の第2塩素系ガスの分圧比の通りとした。なお、分圧比R2は、脱水処理ガスの圧力を1としたときの第2塩素系ガスの分圧の比である。また、後脱水処理工程におけるヒータ2cの温度T2は表1に示す通りとした。
【0065】
そして、3時間経過して脱水処理工程を完了した後、焼結工程を行った。具体的には、多孔質ガラス体Pを移動させずにそのままとし、ヒータ2cを1450℃まで昇温させて、焼結させた。なお、多孔質ガラス体Pの焼結温度は1450℃であった。こうして、全長が150mmの光ファイバ用ガラス体を作製した。
【0066】
(比較例1~8)
前脱水処理工程において第1塩素系ガスの種類、分圧比R1及び温度T1を表1に示す通りとし、後脱水処理工程において第2塩素系ガスの種類、分圧比R2、ヒータ2cの温度T2を表1に示す通りとし、第1塩素系ガスの種類と第2塩素系ガスの種類、分圧比R1と分圧比R2、温度T1と温度T2をそれぞれ同一としたこと以外は実施例1と同様にして光ファイバ用ガラス体を作製した。

[評価]
実施例1~11及び比較例1~8の光ファイバ用ガラス体の製造方法について以下のようにして塩素添加効果及び排気管閉塞抑制効果の評価を行った。
【0067】
(塩素添加効果)
実施例1~11及び比較例1~8で得られた光ファイバ用ガラス体の波長632.8nmにおける屈折率を測定し、下記式に基づいて比屈折率差を算出し、この比屈折率差を塩素添加効果の指標とした。結果を表1に示す。
比屈折率差=(n -n )/2n
(上記式中、nは波長632.8nmにおける光ファイバ用ガラス体の屈折率を示し、nは波長632.8nmにおけるSiOの屈折率を示す)
このとき、塩素添加効果の合格基準は以下の通りとした。

(合格基準) 光ファイバ用ガラス体の比屈折率差が0.050%以上であること
【0068】
なお、上記比較例3(第1塩素系ガスである塩素の分圧比R1:0.30、温度T1:1200℃)で得られた光ファイバ用ガラス体の比屈折率差は0.041%であったのに対し、実施例1~3(第1塩素系ガスである塩素の分圧比R1:0.30、温度T1:1200℃)で得られた光ファイバ用ガラス体の比屈折率差は0.050~0.080%であったことから、実施例1~3の後脱水処理工程では、第2塩素系ガスである塩化チオニル(SOCl)の反応性は、前脱水処理工程で使用された第1塩素系ガスである塩素の反応性よりも高いことが分かる。また、上記比較例5(第1塩素系ガスである塩化チオニル(SOCl)の分圧比R1:0.01、温度T1:1200℃)で得られた光ファイバ用ガラス体の比屈折率差は0.043%であったのに対し、実施例4~6(第1塩素系ガスである塩化チオニル(SOCl)の分圧比R1:0.01、温度T1:1200℃)で得られた光ファイバ用ガラス体の比屈折率差は0.050~0.057%であったことから、実施例4~6の後脱水処理工程では、第2塩素系ガスである塩化チオニル(SOCl)の反応性は、前脱水処理工程で使用された第1塩素系ガスである塩化チオニル(SOCl)の反応性よりも高いことが分かる。また、上記比較例7(第1塩素系ガスである塩化チオニル(SOCl)の分圧比R1:0.05、温度T1:1000℃)で得られた光ファイバ用ガラス体の比屈折率差は0.040%であったのに対し、実施例7(第1塩素系ガスである塩化チオニル(SOCl)の分圧比R1:0.05、温度T1:1000℃)で得られた光ファイバ用ガラス体の比屈折率差は0.057%であったことから、実施例7の後脱水処理工程では、第2塩素系ガスである塩化チオニル(SOCl)の反応性は、前脱水処理工程で使用された第1塩素系ガスである塩化チオニル(SOCl)の反応性よりも高いことが分かる。さらに、上記比較例2(第1塩素系ガスである塩素の分圧比:0.30、温度1150℃)で得られた光ファイバ用ガラス体の比屈折率差は0.040%であったのに対し、実施例8~11(第1塩素系ガスである塩素の分圧比R1:0.30、温度T1:1150℃)で得られた光ファイバ用ガラス体の比屈折率差は0.050~0.080%であったことから、実施例8~11の後脱水処理工程では、第2塩素系ガスである塩化チオニル(SOCl)の反応性は、前脱水処理工程で使用された第1塩素系ガスである塩素の反応性よりも高いことが分かる。
【0069】
(排気管の閉塞抑制効果)
実施例1~11及び比較例1~8で光ファイバ用ガラス体を連続して作製し、排気管が閉塞するまでに連続して製造される光ファイバ用ガラス体の本数を測定した。このとき、このときの光ファイバ用ガラス体の本数を排気管の閉塞抑制効果の指標とした。結果を表1に示す。このとき、排気管の閉塞抑制効果の合格基準は以下の通りとした。

(合格基準) 連続して作製された光ファイバ用ガラス体の本数が20本以上であること

【表1】
【0070】
表1に示す結果より、実施例1~11の光ファイバ用ガラス体の製造方法は、塩素添加効果及び排気管の閉塞抑制効果の点で合格基準を満たすことが分かった。これに対し、比較例1~8の光ファイバ用ガラス体の製造方法は、塩素添加効果及び排気管の閉塞抑制効果のいずれかの点で合格基準を満たさないことが分かった。
【0071】
以上のことから、本発明の光ファイバ用ガラス体の製造方法によれば、塩素が十分に添加された光ファイバ用ガラス体を効率よく製造できることが確認された。
【符号の説明】
【0072】
1…炉心管
2c…ヒータ
3…排気管
P…多孔質ガラス体
図1