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特許7164397残留不純物の含有量が低減されたアラミド繊維の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】残留不純物の含有量が低減されたアラミド繊維の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06B 5/12 20060101AFI20221025BHJP
   D01F 6/60 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
D06B5/12
D01F6/60 371F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018202453
(22)【出願日】2018-10-29
(65)【公開番号】P2020070500
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】石川 大晃
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-281062(JP,A)
【文献】特開昭63-256765(JP,A)
【文献】特表2015-520808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06B1/00-23/30、D06C3/00-29/00、D06G1/00-5/00、
D06H1/00-7/24、D06J1/00-1/12、
D01F1/00-6/96、9/00-9/04、
C08G69/00-69/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラミド繊維に水を導入し、次いで140~400kPaの範囲の圧力、且つ110~140℃の範囲の温度で該繊維を加熱加圧処理することを特徴とする残留不純物の含有量が低減されたアラミド繊維の製造方法。
【請求項2】
アラミド繊維が、長繊維糸、合撚糸、短繊維、紡績糸、不織布、織物又は編物に形成されてなる請求項1に記載の残留不純物の含有量が低減されたアラミド繊維の製造方法。
【請求項3】
アラミド繊維が、衣服に形成されてなる請求項1又は2に記載の残留不純物の含有量が低減されたアラミド繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、残留物の含有量が低減されたアラミド繊維の製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、アラミド繊維に水を導入し、次いで加圧下で該繊維を加熱処理することにより、アラミド繊維に含まれる残留物の含有量を低減させる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸ジクロライドとから製造される全芳香族ポリアミド(本発明では「アラミド」と言うことがある)は、耐熱性に優れ、かつ、難燃性に優れることが知られている。アラミド繊維は、製造工程内において、有機溶媒、例えばN-メチル-2-ピロリドン、N,N,-ジメチルアセトアミドを使用することが有る。製造工程内にて、これらの有機溶媒を十分に取り除くことができなかった場合、最終製品のアラミド繊維中に有機溶媒が残留不純物として含まれる可能性がある。
【0003】
また、防護衣料用途では、着色したアラミド繊維が用いられることがある。着色する際に、顔料又は染料を使用するが、これらの中に残留する事が望ましくない化合物が含まれることが有る。例えば、ジクロロベンゼンなどが例示される。製造工程内にて、残留する事が望ましくない化合物を十分に取り除くことができなかった場合、最終製品のアラミド繊維中に、残留する事が望ましくない化合物がやはり残留不純物として含まれる可能性がある。
【0004】
有機溶媒や残留する事が望ましくない化合物がアラミド繊維に含まれていると、アラミド繊維を含む衣類を着た人間の健康を害する可能性がある。この為、アラミド繊維からこれら残留不純物を取り除くプロセスが必要とされている。
【0005】
アラミド繊維から残留不純物を取り除くプロセスとして、特許文献1では、アラミド繊維を、染料を添加しないキャリア染色法で、残留不純物を取り除くことが開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の方法では、多数の工程を必要とし、且つ、工程内にて、使用する溶液のpHを調整する為に、酸やアルカリを使用し、また、塩や担持成分として環境への負荷が高いベンジルアルコールを含む抽出溶液を使用する。このことから、産業上の利用価値が低く、環境への負荷が高いという問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2015-520808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術における問題点の解決を課題とし、その目的は、残留不純物の含有量が可及的に低減されたアラミド繊維を、簡単なプロセスを用い、且つベンジルアルコールなどの環境負荷を有する物質を用いること無く取り除くことが可能な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討をおこなった結果、アラミド繊維に水を導入し、特定の条件下で加圧加熱することにより、アラミド繊維中に残留する不純物の含有量が可及的に低減できることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
即ち、本発明によれば、アラミド繊維に水を導入し、次いで140~400kPaの範囲の圧力、且つ110~140℃の範囲の温度で該繊維を加熱加圧処理することを特徴とする残留不純物の含有量が低減されたアラミド繊維の製造方法、
が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡単なプロセスを用いるだけで、有機溶媒などの環境負荷の高い化合物を使用することなく、アラミド繊維中に含まれる、残留する事が望ましくない残留不純物の含有量を低減させることができる。加えて、本発明のプロセスは、アラミド繊維の形態に関わらず、アラミド製品を含む製品、すなわち、長繊維糸、合撚糸、短繊維、紡績糸、不織布、織物、編物又は衣服といった形態においても、実行可能である。従って、繊維製品コンバーターが容易に利用できる既製の染色機を用いて、本発明のプロセスが実行可能であるので、工業的価値は極めて大きい。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
本発明において用いられるアラミド繊維は、全芳香族ポリアミド、及び必要に応じ全芳香族ポリアミドとコポリマーから構成される繊維のことを指す。全芳香族ポリアミドとは、アミド結合が2個の芳香環に直接結合したポリアミドのことを指す。
【0014】
アミド結合が互いに対してパラ配位したパラ型全芳香族ポリアミドとアミド結合が互いに対してメタ配位したメタ型全芳香族ポリアミドの2種類がある。
【0015】
本発明によるプロセスは、メタ型全芳香族ポリアミドから構成されるメタ型全芳香族ポリアミド繊維である場合に、特に効果的である。
【0016】
[メタ型全芳香族ポリアミドの構成]
本発明のメタ型全芳香族ポリアミド繊維を構成するメタ型全芳香族ポリアミドは、メタ型芳香族ジアミン成分とメタ型芳香族ジカルボン酸成分とから構成されるものであり、本発明の目的を損なわない範囲内で、パラ型等の他の共重合成分が共重合されていてもよい。
【0017】
本発明において特に好ましく使用されるのは、力学特性、耐熱性、難燃性の観点から、メタフェニレンイソフタルアミド単位を主成分とするメタ型全芳香族ポリアミドである。
【0018】
メタフェニレンイソフタルアミド単位から構成されるメタ型全芳香族ポリアミドとしては、メタフェニレンイソフタルアミド単位が、全繰り返し単位の90モル%以上であることが好ましく、さらに好ましくは95モル%以上、特に好ましくは100モルである。
【0019】
〔メタ型全芳香族ポリアミドの原料〕
(メタ型芳香族ジアミン成分)
メタ型全芳香族ポリアミドの原料となるメタ型芳香族ジアミン成分としては、メタフェニレンジアミン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン等、および、これらの芳香環にハロゲン、炭素数1~3のアルキル基等の置換基を有する誘導体、例えば、2,4-トルイレンジアミン、2,6-トルイレンジアミン、2,4-ジアミノクロロベンゼン、2,6-ジアミノクロロベンゼン等を例示することができる。なかでも、メタフェニレンジアミンのみ、または、メタフェニレンジアミンを85モル%以上、好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上含有する混合ジアミンであることが好ましい。
【0020】
(メタ型芳香族ジカルボン酸成分)
メタ型全芳香族ポリアミドを構成するメタ型芳香族ジカルボン酸成分の原料としては、例えば、メタ型芳香族ジカルボン酸ハライドを挙げることができる。メタ型芳香族ジカルボン酸ハライドとしては、イソフタル酸クロライド、イソフタル酸ブロマイド等のイソフタル酸ハライド、および、これらの芳香環にハロゲン、炭素数1~3のアルコキシ基等の置換基を有する誘導体、例えば3-クロロイソフタル酸クロライド等を例示することができる。なかでも、イソフタル酸クロライドそのもの、または、イソフタル酸クロライドを85モル%以上、好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上含有する混合カルボン酸ハライドであることが好ましい。
【0021】
本発明によるプロセスを実施することによって、低減され得る残留不純物とは、製造工程内において使用され、その後の行程を経ても除去できなかった有機溶媒や、原料着色の際に使用された顔料又は染料に含まれる、人間に有害な化合物などを主として言う。
【0022】
これら残留不純物の非限定的な例は、N,N-ジメチルアセトアミド及びN,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン及びジメチルスルホキシドなどの非プロトン性溶媒、及び、クロロベンゼン及びその誘導体である。クロロベンゼンの誘導体である、オルト-ジクロロベンゼンは、オキサジン色素、ピラントロン染料、及びアントラキノン染料の生産におけるプロセス溶媒として使用される為、着色アラミド繊維に含まれることが有る。
【0023】
本発明によるプロセスは、前述の化合物の低減のみに限定されない。
【0024】
本発明によるプロセスを使用できるアラミド繊維の形態は制限されない。例えば、長繊維糸、合撚糸、短繊維、紡績糸、不織布、織物又は編物などすべての形態に適用可能である。さらに、アラミド繊維が含まれる衣服に対しても適用可能である。
【0025】
本発明によるプロセスが実行され得る装置は特に制限されないが、好ましい装置としては、ジェット染色機、パッケージ染色機、ジグ及びビーム染色機、又は連続染色機などの、繊維製品の染色の当技術分野において周知の装置の中から選択され得る。
【0026】
例えば、アラミド繊維が紡績糸の形態である場合、好ましい装置は、パッケージ染色機であり、一方、アラミド繊維が織物の形態である場合には、好ましい装置は、ビーム染色機である。
【0027】
本発明によるプロセスが、パッケージ染色機において実行される場合、抽出溶液(水)は、パッケージの内側からパッケージの外側への、抽出溶液の加圧された流れを利用することによって、アラミド繊維のパッケージを圧力によって強制的に通され得る。他の方法の中でも、ラックにおいて穿孔されたロッドの上に紡績糸の糸巻きを積み重ね、抽出溶液がその後加圧下にてロッドの穿孔から外側に押し出されるタンクにて浸漬させることによってなされ得る。
【0028】
本発明によるプロセスにおいて、水が導入されたアラミド繊維に付与される圧力は、140~400kPaの範囲であり、好ましくは、200~380kPaであり、より好ましくは、230~360kPaである。該圧力が140kPa未満である場合には、残留不純物を低減させる効果が低い為好ましくない。一方、該圧力が400kPaを超える場合には、残留不純物を低減させる効果は有するが、アラミド繊維若しくはアラミド繊維の含まれる製品自体の物性を悪化させることや圧力に耐えうる装置が限定される為、好ましくない。
【0029】
本発明によるプロセスにおいて、水が導入された、アラミド繊維に付与される温度は、110~140℃であり、より好ましくは、120~140℃であり、さらに好ましくは、125~140℃である。該温度は低いほど残留不純物を低減させる効果が低くなる傾向がみられ、110℃未満である場合には、残留不純物を低減させる効果が低い為好ましくない。一方、該温度が140℃を超える場合には、残留不純物を低減させる効果は有するが、アラミド繊維又はアラミド繊維を含む製品自体の物性を悪化させる為、好ましくない。
【0030】
本発明によるプロセスにおいて、水が導入された、アラミド繊維に付与される処理時間は、特に限定されるものではないが、15~300分の範囲で実施することが好ましく、より好ましくは、30~240分、さらに好ましくは、60~200分の範囲である。該処理時間が15分未満の場合においても十分に残留不純物を低減させることができる場合があるが、製品全体を均一に安定して低減させるには少なくとも15分以上は処理時間を取ることが望ましい。一方、該処理時間が300分より長くなる場合は、残留不純物を十分に低減させる効果を有するが、アラミド繊維若しくはアラミド繊維の含まれる製品自体の物性を悪化させる場合があるうえに、長時間の処理のためコストがかかるなどの問題が生じ好ましくない。
【0031】
ここで、「アラミド繊維若しくはアラミド繊維の含まれる製品に水を導入」とは、容器に含有されたアラミド繊維又はアラミド繊維を含む製品に、水を能動的に投入若しくは送液させること、又は、容器に含有された水にアラミド繊維又はアラミド繊維を含む製品を、能動的に投入することを意味する。投入若しくは送液する方法は、当技術分野において周知の方法を使用してよい。
【0032】
本発明によるプロセスにおいて、アラミド繊維又はアラミド繊維を含む製品に、導入される水の質量は制限されることはないが、好ましくは、アラミド繊維又はアラミド繊維を含む製品の質量に対して、水の質量が1倍から100倍までである。
【0033】
本発明によるプロセスにおいて、場合により、残留不純物を低減させる効果を減少させない範囲において、当技術分野において周知の有用な濃度にて、分散剤、洗浄剤、又は界面活性剤などの、当技術分野において周知の添加剤を併用してもよい。
【実施例
【0034】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳しく具体的に説明する。ただし、これらの実施例および比較例は本発明の理解を助けるためのものであって、これらの記載によって本発明の範囲が限定されるものではない。
【0035】
<繊維中のN-メチル-2-ピロリドンの測定方法>
測定対象繊維を熱分解ガスクロマトグラフィーを用いてチャートを求め、あらかじめ作成しておいた検量線よりN-メチル-2-ピロリドンの含有量を求めた。
【0036】
<繊維中のジクロロベンゼンの測定方法>
エコテックス規格100に準じた測定をエコテックス認証機関にて実施した。
実施例記載以外の残留不純物についても同様の効果が得られるが、その残留不純物の繊維中含有量の測定は、それぞれの物質に適した一般的な方法で実施される。
【0037】
<実施例1>
Teijinconexの商標名にて帝人株式会社から市販されている、青色原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維の短繊維1.5gと15gの水を、ビーカー染色機にて、310kPaかつ135℃の条件に保持し、180分間加熱加圧処理した。
【0038】
この処理にて得られた青色原着短繊維を、測定の為に乾燥させたのち、青色原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維の短繊維に含まれるN-メチル-2-ピロリドンの濃度を熱分解ガスクロマトグラフィーを用いて測定した。
【0039】
<実施例2>
Teijinconexの商標名にて帝人株式会社から市販されている、オレンジ色原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維の短繊維が、紡績糸の状態で75wt%含まれる織物1.5gと水15gを、ビーカー染色機にて、310kPaかつ135℃の条件に保持し、180分間加熱加圧処理した。
【0040】
この処理にて得られた織物を、測定の為に乾燥させたのち、布帛に含まれるN-メチル-2-ピロリドンの濃度を熱分解ガスクロマトグラフィーを用いて測定した。
【0041】
<実施例3>
Teijinconexの商標名にて帝人株式会社から市販されている、青色原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維の短繊維300gと水3000gを、ビーカー染色機にて、310kPaかつ135℃の条件に保持し、120分間加熱加圧処理した。
【0042】
この処理にて得られた青色原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維の短繊維を、測定の為に乾燥させたのち、青色原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維の短繊維に含まれるジクロロベンゼン濃度を、エコテックス規格100に基づき、ガスクロマトグラフィーを用いて測定した。
【0043】
<比較例1>
Teijinconexの商標名にて帝人株式会社から市販されている、青色原着ポメタ型全芳香族ポリアミド繊維の短繊維1.5gを、20g/Lのベンジルアルコール、20g/Lの硝酸ナトリウムを含有する、酢酸でpH4.5に調整した水性抽出溶液60mlに導入する工程と、ビーカー染色機において、40分間、130℃で、繊維と水性抽出溶液の混合物を加熱することによって、この混合物を130℃の温度に調整する工程と、水性抽出溶液から繊維を取り除く工程と、80℃の温度で繊維を水からなる水性リンス液に導入し、一定の撹拌下にて、30分間、80℃で維持する工程と、水性リンス液から繊維を取り除く工程と、その後、乾燥器にて、30分間、150℃で繊維を乾燥させる工程とによって、処理した青色原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維の短繊維のN-メチル-2-ピロリドンの濃度を熱分解ガスクロマトグラフィーを用いて測定した。
【0044】
<比較例2>
Teijinconexの商標名にて帝人株式会社から市販されている、オレンジ色原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維の短繊維が、紡績糸の状態で75wt%含まれる織物1.5gと水15gを、ビーカー染色機にて、100kPaかつ90℃の条件に保持し、180分間加熱加圧処理した。この処理にて得られ布帛を、測定の為に乾燥させたのち、布帛に含まれるN-メチル-2-ピロリドンの濃度を熱分解ガスクロマトグラフィーを用いて測定した。
【0045】
<比較例3>
Teijinconexの商標名にて帝人株式会社から市販されている、青色原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維の短繊維300gと水3000gをビーカー染色機にて、100kPaかつ90℃の条件に保持し、120分間加熱加圧処理した。この処理にて得られた青色原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維の短繊維を、測定の為に乾燥させたのち、青色原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維の短繊維に含まれるジクロロベンゼン濃度を、エコテックス規格100に基づき、ガスクロマトグラフィーを用いて測定した。
【0046】
比較例1、2及び実施例1、2の繊維に含まれるN-メチル-2-ピロリドンの濃度を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
青色原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維の短繊維に対して、従来公知の方法を用いた比較例1と比べて、本発明の方法を用いた実施例1は、繊維に含まれるN-メチル-2-ピロリドンの濃度を同等に低減できている上に、ベンジルアルコールを全く使用しておらず、環境への負荷が低いという特徴を有している。
【0049】
また、本発明の方法を用いなかった比較例2と比べて、本発明の方法を用いた実施例2は、オレンジ色原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維の短繊維が、紡績糸の状態で75wt%含まれる織物に含まれるN-メチル-2-ピロリドンの濃度が、24分の1以上低減している。
【0050】
このことから、本発明のプロセスは、本発明のプロセスを用いなかった比較例2と比べて、メタ型全芳香族ポリアミド繊維中の残留不純物の一種であるN-メチル-2-ピロリドンを低減させる効果が明らかにある。
【0051】
本発明のプロセスを使用した実施例1及び実施例2はベンジルアルコールを全く使用しない。このことから、本発明のプロセスは、環境への負荷を低減できるといえる。
【0052】
次に、比較例3及び実施例3の繊維に含まれるジクロロベンゼンの濃度を表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
青色原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維の短繊維に対して、本発明の方法を用いなかった比較例3と比べて、本発明の方法を用いた実施例3は、繊維に含まれるジクロロベンゼンの濃度が、34分の1以上低減している。このことから、本発明の方法は、メタ型全芳香族ポリアミド繊維中の残留不純物の一種であるジクロロベンゼンを低減させる効果が明らかにあるといえる。