(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】体外受精の制御方法および制御装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/435 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
A61B17/435
(21)【出願番号】P 2018208408
(22)【出願日】2018-11-05
(62)【分割の表示】P 2015549659の分割
【原出願日】2013-12-18
【審査請求日】2018-12-04
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-10
(32)【優先日】2013-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2012-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506295621
【氏名又は名称】ドラモンド サイエンティフィック カンパニー
【氏名又は名称原語表記】DRUMMOND SCIENTIFIC COMPANY
【住所又は居所原語表記】500 Parkway Drive,Broomall,PA 19008 USA
(74)【代理人】
【識別番号】100079980
【氏名又は名称】飯田 伸行
(74)【代理人】
【識別番号】100167139
【氏名又は名称】飯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ドラモンド,マイケル,イー.
(72)【発明者】
【氏名】ディトロリオ,ニコラス,エム.
【合議体】
【審判長】佐々木 一浩
【審判官】平瀬 知明
【審判官】村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-508044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/425-17/435
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
子宮内カテーテル部を使用して体外受精処置を行う注入装置において、
このカテーテル部が、
(1)基端と、この基端における嵌合部と、開放先端とを有する内側カテーテル、および、(2)前記内側カテーテルを取り囲み、この内側カテーテル上に滑り移動し、開放先端を有する外側外筒体であって、基端における嵌合部を有する前記外側外筒体を有し、
この注入装置は、
(A)基端部および先端部を有するハウジングが、下記(A-i)、(A-ii)及び(A-iii)を備え、このカテーテル部を支えており、
(A-i)前記ハウジングの前記基端部に固定されたハンドル、
(A-ii)前記ハンドルに接続されて、前記ハウジングの前記基端部から前記先端部に延びているバレル、
(A-iii)前記バレルに固定あるいは形成する前記カテーテル部を取り付けるための部位、
(B)前記内側カテーテルに対して前記外側外筒体を前進および後退させるための外筒体の進退部が、下記(B-i)、(B-ii)及び(B-iii)を備えて、前記外側外筒体がトリガーを押すことで前進し、且つノブと一緒にロッドを戻すことで後退し、
(B-i)前記バレルを通過して延びるロッド、
(B-ii)このロッドの基端部分に固定された後退用の前記ノブ、
(B-iii)前記外側外筒体と着座可能に接続するノーズピースであって前記ロッドの先端部分に固定する前記ノーズピース、
(C)前記内側カテーテルに対して複数の箇所で前記外側外筒体を
一時的にロックする手段、
を構成する上記(A)、(B)、(C)を備えており、
前記内側カテーテルに対して複数の位置において前記外側外筒体を支持し、かつ一時的にロックし、そして前記内側カテーテルに対して前記外側外筒体を進退させるように構成、配置したことを特徴とする注入装置。
【請求項2】
前記外側外筒体を前記カテーテル部に対して基端側に後退させて、前記外側外筒体を前記内側カテーテルの最先端が露出する第1制限位置に移動させ、そして前記外側外筒体を前記カテーテル部に対して先端側に伸張させて、これを前記内側カテーテルの前記最先端を被覆する第2制限位置に移動させることができる請求項1に記載の注入装置。
【請求項3】
片手を使用して保持し、かつ操作するように構成、配置した請求項2に記載の注入装置。
【請求項4】
前記外筒体の進退部は、前記トリガーに接続され且つ前記トリガーを用いて動作させる前進部を有し、並びに、前記ロッドの基端側で係合
し、そして、前記ロッドの先端側にノーズピースを固定し、かつ前記ロッドの基端部分に前記ノブを固定する請求項3に記載の注入装置。
【請求項5】
前記カテーテル部を取り付けるための部位は前記バレルの上面に形成した基端側ソケット、さらに、前記ノーズピースに形成した先端側ソケットを含む請求項4に記載の注入装置。
【請求項6】
前記基端側ソケットの形状が三方向ベントおよびルアーフィッティングの形状に対応しているため、前記ベントおよび前記ルアーフィッティングを前記基端側ソケットに一時的に収容でき、そして
前記先端側ソケットの形状が前記外側外筒体の形状に対応しているため、前記外側外筒体の少なくとも一部を前記先端側ソケットに一時的に収容できる請求項5に記載の注入装置。
【請求項7】
前記ノーズピースに固定した照明部を有する請求項6に記載の注入装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は2012年12月18日を出願日とし、“体外受精の制御方法および制御装置”を発明の名称とする仮特許出願第61/738,735号、および2013年9月18日を出願日とし、“体外受精の制御方法および制御装置”を発明の名称とする仮特許出願第61/879,669号の優先権を主張する出願であり、これら両出願の内容を援用する出願である。
【技術分野】
【0002】
本発明は全体として体外受精(IVF)法を行うための新規な装置、および新規な方法に関する。より具体的には、本発明は培養培地または成長培地から接合体を抽出し、これら接合体を患者の子宮壁に着床させるための方法および装置に関する。本発明は、接合体を成長培地から子宮壁に移す条件を最適化することによって受精率を最大化する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
IVFを行う従来の方法および装置は扱いが難しい。例えば、
図1に示すように、内側カテーテル4の基端側ルアーフィッティング(Luer fitting:ルアー型の嵌合部)5の先端にシリンジ2を接続した、外筒体に収容したカテーテル部8を使用してIVFを行うことが知られている。成長培地から接合体を抽出するために、まず、最先端4bを成長培地に浸漬し、シリンジの後退動作によって少量のカラム状の成長培地をカテーテル内に吸引することによって、カテーテル4に成長培地を用意する。次に、カテーテルの先端を接合体に近接配置し、シリンジの後退動作によって接合体を吸引し、成長培地を内側カテーテル4内に取り込むことによって成長培地から第1接合体を抽出する。カテーテル4を用意する工程および接合体を抽出する工程は、所定個数の接合体がカテーテルの先端部分に連続的に集められ、両側が少量のカラム状成長培地によって取り囲まれるまで何度も繰り返す。
【0004】
一つの公知技術に従って接合体を着床処理するためには、カテーテル部8の外側外筒体6を軸方向に滑り前進させて、内側カテーテル4の先端部分上に移動させる。外筒体に収容したカテーテル部の先端を次に子宮頸管に案内し、そして子宮内に案内する。子宮壁に一旦近接した後は、先端開放端部4bが子宮壁に直接隣接するまで、内側カテーテル4を外筒体から伸張する。次に、シリンジ2を押し、接合体を排出し、子宮壁を成長培地で取り囲むことによって接合体を順次着床処理する。
【0005】
別な公知技術に従って接合体を着床処理するためには、内側カテーテル4に対して外側外筒体6を後退させる。カテーテル部8を子宮頸管に案内し、そして子宮内に案内する。カテーテル部8が妨害を受けた場合には、外筒体6を伸張し、カテーテル部8の先端に剛性を付与できるため、医療専門家はこの妨害を避けることができる。次に、上記のようにして接合体を着床処理する。
【0006】
上記従来技術によるIVF処置法は、いくつかの理由で扱いが難しく面倒である。第1に、近接シリンジ2の変位量に比較した場合、内側カテーテル4の内径および全容量がきわめて小さい。このような大きな差があるため、内側カテーテル4内の接合体および成長培地の変位量(吸引量/排出量)を正確に制御することは難しい。シリンジプランジャー(syringe plunger)が少しでも変位すると、カテーテルには大きな容量変位が生じる。従って、正確に制御された条件下でIVFルアーカテーテルから接合体および成長培地を吸引、排出できる方法および/または装置を確立することが望ましい。
【0007】
従来のIVF方法の場合、通常、二人かそれ以上の医療専門家が成長培地から接合体を子宮壁に移し換えることが必要である。特に患者に密接して作業を行う場合、この操作は扱いにくい。通常、一人の医療専門家がシリンジを制御している間に、もう一人の医療専門家がカテーテル部8を制御する。従って、一人の医療専門家によって操作できるIVFルアーカテーテルから接合体および成長培地を吸引、排出できる方法および/または装置を確立することが望ましい。
【0008】
また、従来方法の場合、シリンジ2のプランジャーの押し込み操作、引き出し操作を正確に制御することによってカテーテル内の吸引速度および排出速度を注意深く制御するために、医療専門家の技量に依存せざるを得ない。接合体および成長培地のカテーテル部8からの吸引量および排出量はIVF処置法の成功率、即ち受胎率に影響があるという学説がある。従って、IVF時に、正確に制御され、かつ反復可能な条件下で比較的簡単な手順で、接合体を成長培地から子宮壁に移し換える方法および装置を確立することが望まれている。
【発明の概要】
【0009】
本発明はIVFを行う装置、IVFの実施方法、および成長培地から接合体を子宮壁に移すさいの条件を最適化することによって受精率を最大化する方法を提供するものである。本発明によれば、成長培地から接合体を抽出し、これを患者の子宮壁に着床させるのにより有利で、信頼性が十分に高い装置および方法を提供するものである。
【0010】
本発明の一実施態様は、IVF法を行う装置を提供するものである。この装置は外部ポートを有する制御ユニットと、このポートに正圧および負圧の流体圧力を発生する手段とを有する。
【0011】
制御ユニットはハウジングと、このハウジング上のコマンドディスプレーとを有する。内部ポンプをハウジングの内部に設置し、これを外部ポートと空気連絡するように接続する。このポンプについては、ポートに正圧または負圧のいずれかを発生するように構成し、かつ設置する。
【0012】
基端に第1結合部を有し、そして先端に第2結合部を有する軟性の延長ホースが制御ユニットに接続する。第1結合部が、制御ユニットのポートに対してシールされた流体連絡状態で接続する。子宮内カテーテル部が第2結合部に接続する。カテーテル部は基端を有する内側カテーテルと、第2結合部に接続可能な基端における接続を素早くおこない、かつ素早く接続を切るフィッティングと、開放先端とを有する。このカテーテルの場合、内側カテーテルを取り囲み、かつこれに対して滑動可能な、開放先端を有する外側外筒部を有する。
【0013】
制御ユニットは、ディスプレーから入力コマンドを受け取り、ポンプの動作を制御するプログラム設定可能なマイクロプロセッサを有する。場合に応じて、制御ユニットはポンプの流れの動作、動作停止または反転を行う遠隔制御手段を有することができる。例えば、遠隔制御手段はマイクロプロセッサに接続したフットスイッチで構成することができる。
【0014】
制御ユニットの場合、カテーテル内に同じ流体流れの吸引、排出条件を繰り返し設定できるようにプログラム設定できる。また、制御ユニットの場合、カテーテル内の流体流れに関して所定シーケンスの吸引、排出条件を設定できるようにプログラム化することも可能である。場合に応じて、制御ユニットは、IVF法の各工程時にカテーテル内の流体流れ条件を記録する内部メモリを有することが可能である。
【0015】
好ましい実施態様では、上記ホースは管状の中心空気流路と、この管状の中心空気流路を取り囲み、かつこれを保護する内側外筒体と、内側外筒体を取り囲み、かつ中心空気流路を保護する外側外筒体とを有する。中心流路および内側外筒体については、軟性のポリカーボネート管から構成し、そして外側外筒体については、軟性のシリコーン管から構成するのが好ましい。
【0016】
ホースの第1結合部および第2結合部については、素早く接続でき、かつ接続を切ることができる構成にするのが好ましい。一つの実施態様では、第1結合部および第2結合部は、バーブド式接続ステム(barbed connection stem)を有するルアーフィッティングと、軸方向に中心開口を有する挿入体と、挿入体の中心開口に中心流路を固定する接着剤とを有する。内側外筒体、外側外筒体および中心流路の端部については、制御ユニットからの加圧された空気が中心流路のみに流れるように結合部に接続する。中心流路の外面については、挿入体の軸方向の中心開口内に接着する。内側外筒体が中心流路の外面と軸方向中心開口の内面との間で圧縮を受ける。外側外筒体の端部がバーブド式接続ステムを取り囲み、これに接続する。
【0017】
本発明装置の場合、別な実施態様では、外側外筒体が軸方向に滑り前進して、内側カテーテルの先端部分を被覆した方向にカテーテル部を支持し、かつ一時的にロックするように構成配置したキャリヤを有する。キャリヤは、長手方向軸線と対向端部をもつ細長いハンドルを有する。ハンドルの一端に細長いトレーを固定し、長手軸線に対してこれを横断伸張する。先端ソケットおよび基端ソケットについては、トレーの対向端部に固定する。各ソケットの内面の少なくとも一部は、カテーテル部を素早く接続でき、かつ接続を切るフィッティングの外面の少なくとも一部に対応する形状に構成する。また、先端ソケットの内面の少なくとも一部についても、外側外筒体の少なくとも一部に対応する形状に構成する。
【0018】
本発明装置の場合、別な実施態様では、カテーテル部に対して複数の位置でIVFカテーテル部の外側外筒体を支持し、かつ一時的にこれをロックし、かつカテーテル部に対して外側外筒を前進、後退させるように構成配置した注入装置を有する。注入装置の場合、カテーテル部に対して外側外筒体を基端側に後退させて、内側カテーテルの最基端部を露出する第1制限位置にこれを移動させ、カテーテル部に対して外側外筒体を先端側に前進させ、内側カテーテルの最先端部を被覆する第2制限位置にこれを移動させることができる。この注入装置については、片手で保持でき、作動できるにように構成、配置するのが好ましい。
【0019】
好ましい実施態様では、注入装置は、ハンドルと、このハンドルに対して先端および基端を有するバレルとを有するピストル形ハウジングを有する。カテーテル取り付け部をこのバレルに固定し、これによって支持する。ハンドルの上部にトリガーを回転自在に接続する。外筒体の進退アセンブリーをバレル内に装着し、トリガーに接続する。
【0020】
一つの好ましい実施態様では、外筒体の進退部は、バレルの先端から伸張する細長い起動ロッドと、バレル内に滑り自在に取り付けた基端部分とを有する。前進部はトリガーに接続し、トリガーによって起動する。前進部は起動ロッドの基端部分に係合する。起動ロッドの先端部分にノーズピースを固定する。起動ロッドの基端に後退ノブを固定する。
【0021】
一つの好ましい実施態様では、伸張ホースは中心流路と流体連絡するように配設した三方向ベントを有し、先端結合部に近接固定する。
【0022】
この実施態様の場合、上記取り付け部はバレルの上面に形成した基端ソケットと、ノーズピースに形成した先端ソケットとからなる。基端ソケットの形状は三方向ベントの形状および先端結合部に対応するため、ベントおよび結合部を基端ソケットに一時的に保持できる。基端ソケットの形状が外側外筒体の形状に対応しているため、外側外筒体の少なくとも一部を先端ソケットに一時的に保持できる。場合にもよるが、本発明装置はノーズピースに固定したライト(照明部)を有するものである。
【0023】
別な好ましい実施態様は、体外受精(IVF)処置を行う方法であり、この方法の第1ステップでは成長培地に複数のヒト接合体を用意する。上記の装置やその他の装置のいずれかを使用して、接合体をIVFカテーテル内に順次吸引し、IVFカテーテル内においてカラム状の成長培地によって取り囲む。IVFカテーテルを患者の子宮に挿入し、IVFカテーテルの最先端を子宮壁に近接配置する。IVFカテーテルから接合体を吐き出すことによって子宮壁に各接合体を順次着床処理する。
【0024】
接合体を吸引、着床処理する工程は、遠隔制御手段を使用して行うのが好ましい。各接合体を吸引、着床処理する工程は、予め設定された自動制御手段か、あるいは手で持たなくとも操作できる遠隔制御手段を使用して実施することが可能である。
【0025】
好ましい実施態様では、IVFカテーテルから各接合体を吐き出す工程は、カテーテル内の流体流れ条件を同じ条件にして行う。別な好ましい実施態様では、成長培地から各接合体をカテーテル内に吸引する工程は、カテーテル内の流体流動条件を同じ条件にして行う。これら流体流れ条件は制御ユニットによって制御する。
【0026】
本発明方法は、IVF処置の各工程時にカテーテル内の流体流れ条件を測定し、記録する工程を有するものでもある。このデータを使用して、IVF着床成功率について、胚として成功した接合体を計数し、着床成功率を記録されている流体流動条件と比較し、IVF処置に対して最適な流体流れ条件を算出することによって着床成功率を最適化できる。
【0027】
別な好ましい実施態様では、本発明はIVF処置の着床成功率を最適化する方法を提供するものである。この方法は、第1工程で複数のヒト接合体を成長培地に用意する。例えば上記の装置やその他の装置のいずれかを使用して、接合体をIVFカテーテル内に順次吸引し、IVFカテーテル内においてカラム状の成長培地によって取り囲む。IVFカテーテルを患者の子宮に挿入し、IVFカテーテルの最先端を子宮壁に近接配置する。IVFカテーテルから接合体を吐き出すことによって子宮壁に各接合体を順次着床処理する。これら流体流れ条件下で胚として成功した接合体を次に計数する。異なる、記録された流体流れ条件下で複数回のIVF処置を行う。最後に、複数回行ったIVF処置から集めたデータを統計学的に解析し、IVF処置について最適な流体流れ条件を決定する。この方法の場合、同じ流体流れ条件を使用してIFV処置時に各接合体を吸引し、吐き出す工程を有するのが好ましい。
【0028】
本発明の別な好ましい実施態様では、子宮内カテーテル部を使用してIVF処置を行うために注入装置を用意する。カテーテル部は基端を有する内側カテーテルと、基端において素早く接続を行い、また素早く接続を切るフィッティングと、開放先端とを有する。カテーテル部は内側カテーテルを取り囲み、この内側カテーテル上を滑動する外側外筒体を有するものでもある。外筒体は開放先端と、基端におけるフィッティングとを有する。注入装置については、カテーテルに対して複数の位置において外側外筒体を支持し、かつこれを一時的にロックするように、またカテーテルに対して外側外筒体を進退させるように構成、配置する。
【0029】
好ましい実施態様では、注入装置は、カテーテル部に対して外側外筒体を基端側に後退させて、内側カテーテルの最基端部を露出する第1制限位置にこれを移動させ、カテーテル部に対して外側外筒体を先端側に前進させ、内側カテーテルの最先端部を被覆する第2制限位置にこれを移動させることができる。この注入装置については、片手で保持でき、操作できるにように構成、配置するのが好ましい。また、この注入装置は、構成がIVF装置について上述した構成と同じである。
【0030】
本発明の好ましい実施態様で提供されるものは、標準ルアーカテーテル部を使用して体外受精(IVF)処置を行う装置である。この装置は外部ポートを形成したハウジングを有する制御ユニット12と、このハウジング上のコマンドディスプレーとを有する。内部ポンプは、外部ポートに空気連絡するように接続する。このポンプについては、外部ポートに正圧または負圧(positive pressure or negative pressure)のいずれか発生するように構成、配置する。制御ユニットは、ディスプレーから入力信号を受け取り、ポンプの動作を制御するプログラム可能なマイクロプロセッサを有する。
【0031】
軟性伸張ホースは制御ユニットに接続する。軟性ホースは基端に第1結合部を有し、この結合部を制御ユニットのポートに連結する。ホースは先端に第2結合部を有し、これについては、ルアーカテーテルのルアーフィッティングに接続するように構成、配置する。
【0032】
この実施態様の装置は、ポンプの流れの動作、動作停止、および反転を行う遠隔制御手段を有する。遠隔制御手段は、マイクロプロセッサに接続されたフットスイッチを有することができる。制御ユニットについては、カテーテル部内に同じ吸入、排出流れ条件を何度でも用意できるようにプログラム設定できる。本装置の場合、IVF処置の各工程時にカテーテル部内の流体流動条件を記録する内部メモリを有するのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】IVFを実施するためのシリンジに接続された従来の接合体移送カテーテルを示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施態様におけるIVF制御装置を示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施態様における伸張管を示す拡大一部斜視図である。
【
図4】
図3の伸張管の一端を示す拡大一部斜視図である。
【
図6b】
図6aの挿入体を示す正面図および背面図である。
【
図6d】
図6aの挿入体を示す正面図および背面図である。
【
図7a】挿入体に接続された伸張ホースの内側管および内側外筒体を示す一部側面図である。
【
図7b】
図7aの線A-Aにそって見た拡大横断面図である。
【
図8a】
図3に示す伸張ホースの一端および結合部を示す部分側面図である。
【
図8b】
図8aの線A-Aに沿って見た拡大横断面図である。
【
図9b】
図3の制御ユニットの主構成部材を示す斜視図である。
【
図10】本発明の一実施態様における接合体移送カテーテルを保持する着床キャリヤを示す斜視図である。
【
図11】
図10の移送キャリヤに取り付けた接合体移送カテーテルを示す拡大部分図である。
【
図12】本発明の一実施態様におけるIVF制御装置を示す斜視図である。
【
図14】前部ハウジング構成部材を取り外して示す、注入装置の斜視図である。
【
図16】注入装置の先端を示す拡大部分斜視図である。
【
図17】
図12に示す注入装置に取り付けたカテーテル部を注入装置のメジアン平面に沿って見た横断面図である。
【
図18】注入装置のロッド抵抗部を示す拡大部分斜視図である。
【
図19】外筒体進退部の動作タブを示す概略図(縮尺に従っていない)である。
【
図20】注入装置の動作タブ部分を示す拡大部分斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明を説明する目的で、本発明のいくつかの実施態様を添付図面に示す。なお、当業者ならば、本発明は図示し、かつ以下に説明する正確な構成、手段などに本発明が制限されないことを理解できるはずである。明細書全体を通じて、同じ要素などは同じ参照符号で示す。また明細書全体を通じて、各種要素および各種要素の部分に関連して使用されている“先端(distal)”および“基端(proximal)”は制御ユニットに対して空間関係を意味するものである。
【0035】
本発明の好ましい実施態様におけるIVF装置を
図2の概略図に示す。全体を参照符号10で示すIVF制御装置は、制御ユニット12と、細長い軟性の伸張ホース14とを有し、この伸張ホース14は
図2に示す子宮内接合体カテーテル部8に接続するようになっている。本発明の一実施態様においては、IVF制御装置10は、
図1に示すように、標準的な子宮内接合体カテーテル部8に接続する。カテーテル部8は内側カテーテル4からなり、この内側カテーテル4は基端4aにルアーフィッティング5を有するとともに、開放先端4bを有する。カテーテル部8は基端6aにおいてルアーフィッティング7を有するとともに、開放先端6bを有する外側外筒体6を有する。別な実施態様では、IVF制御装置は、同様な構成ではあるが、特に伸張ホース14に開放自在に接続できるように設計されている新規な子宮内接合体カテーテルを有する。
【0036】
図2に示す実施態様では、従来のカテーテル部8の場合、軟性の圧力ホース14を介して制御ユニット12と流体連絡するように接続することができる。制御ユニット12が内側カテーテル6の先端開口4bにおいて負圧か正圧のいずれかを選択的に発生し、培養培地から接合体を抽出し、接合体を患者の子宮壁に着床処理する。
【0037】
本発明の一実施態様における制御ユニット12を
図2および
図9に示す。この実施態様では、制御ユニットは全体としてハウジング18、ハウジング18上のタッチスクリーンディスプレー19、外部空気接続ポート20、およびこのポート20と空気連絡するように接続する内部ポンプ22からなる。内部ポンプ22は、公知技術を使用して、ポート20に正圧または負圧のいずれかを発生できる。制御ユニットは、ディスプレー19に入力されたユーザーコマンドを受け取るプログラム設定可能なマイクロプロセッサ24を有するのが好ましい。例えば、ユーザーがモーターをオフオンするように、規定の速度で動作するように、特別なモードで動作するように(正圧または負圧)、規定の速度で動作するようにコマンドを出すことができる。制御装置のコマンドおよび過去の動作は内部メモリ26に記憶しておけばよい。場合に応じて、制御ユニット12に、ポンプの動作、動作停止を制御するマイクロプロセッサに接続するフットスイッチ25を配置することができる。
【0038】
外部ポート20については、伸張ホース14の基端に開放自在に接続するように構成する。この実施態様では、ポート20に形成した雄ネジが、(以下に説明するように)伸張ホース14の基端14aに固定した結合部34の雌ネジに係合する。
【0039】
図3~
図8に、本発明の一実施態様における伸張ホース14を詳しく図示する。好ましい実施態様では、伸張ホース14は管状の中心空気連絡流路28を有する。好ましい実施態様の場合、この流路28は軟性ポリカーボネート管からなる。
図3~
図8に示す実施態様においては、中心管の内径(ID)は約0.010インチ、そして外径(OD)は約0.015インチである。管内の占有されていないスペース量、即ちデッドスペース量を最小化するために、IDおよび管長を最小限に抑制することが好ましい。
【0040】
また、伸張ホース14は外側外筒体30を有し、この外筒体30は管状の中心流路28を保護するバリヤとして作用するともに、制御ユニット12とカテーテル部8との間に強固な接続を形成するものである。好ましい実施態様の場合、外側外筒体30は軟性のシリコーン管からなり、内径は中心管28の外径より大きく設定するとともに、外径については、ユーザーにとって扱い易い外径で、実験室や処置室での通常の取り扱いに耐え得る強靭さをもつ外径に設定する。
図3~
図8に示す実施態様の場合、外側外筒体30のIDは約0.0625インチであり、また外径は0.125インチである。本実施態様の場合、外側外筒体30は、以下に記載するように、ルアーフィッティングへ確実に接続する設計の通常のストック用シリコーンから構成する。
【0041】
好ましい実施態様においては、伸張ホース14は第2の、即ち内側になる外筒体32を有する。この実施態様の場合、内側外筒体32はポリカーボネート管で構成し、内径を中心管28の外径よりもわずかに大きく設定するとともに、外径を外側外筒体(outer sheath)30の内径よりもわずかに小さく設定する。好ましい実施態様においては、内側外筒体(inner sheath)32のIDは約0.022インチであり、そしてODは約0.035インチである。内側外筒体32は構造的一体性を担保するもので、標準的なルアーフィッティングと簡単に一体化するものである。
【0042】
好ましい実施態様では、伸張ホース14は各端部に素早く接続でき、かつ接続を切ることができる結合部34を有する。
図3~
図8に示す実施態様では、この結合部は両端において同じ構成であるが、寸法がわずかに異なる。なお、制御ユニット12上のポート20の形状またはカテーテル部8の形状に応じて、結合部34は構成変更が可能である。
【0043】
図5aおよび
図5bを参照して説明すると、本発明の好ましい実施態様では、結合部34はルアーフィッティング35と、ルアーフィッティングの挿入体37と、紫外光硬化性接着剤などの接着剤39とを有する。各外筒体30、32の端部および中心流路28については、加圧された空気が中心流路28にのみ流れるように結合部に接続する。
【0044】
図6a~
図6cを参照して説明すると、挿入体37は、それぞれが一定の形状をもつ3つの異なる一体成形部分からなる細長い、不規則な形状を有する。第1部分36は円筒形で、外面38の径は一定であり、また内側ボア40の径も一定である。第2(中間)部分42は外面44が円錐台形であり、内側ボア46の径は一定である。第3部分48は環状カラー(annular collar)に似たもので、外面50の一定の径は第2部分42の最大外径よりも大きい。また、第3部分48は第2部分42のボア46に接続されたテーパーボア52を有する。これら3つのボア40、46、52はいずれも同軸である。この挿入体は結合部内流体流れ開口を非常に小さくするもので、カテーテル部のカテーテル内の流体流れ条件の精密制御にとって重要である。
【0045】
図7a~
図8cに、伸張ホース14と結合物(cupling)34との接続状態をより詳しく示す。
図7a~
図7cを参照して説明すると、中心管28は挿入体37の中心ボア全体に伸張し、先端37aに接着剤39によってシール処理する。この接着剤の場合、流路28の端部にある開口を閉じることはない。内側外筒体32は中心ボアの途中から挿入体37の第2位置42内の中間位置まで伸張する。内側外筒体32については、この位置に接着剤によって固定してもよく、あるいは中心管の外面と挿入体37の中心ボアの内面との間に内側外筒体を圧縮する圧嵌めによって固定してもよい。
【0046】
図5a、
図5bおよび
図8a~
図8cを参照して説明すると、ルアーフィッティング35の中心ボア53は伸張ホースのバーブ部分54から反対側端部にある接続ポート55まで伸張する。外側外筒体30は、ルアーフィッティング35の伸張ホースのバーブ部分54に接続し、これにシール処理される。挿入体37は、ルアーフィッティング35の接続ポート55に係合し、これにシール処理される。この構成の結果、中心流路28がルアーフィッティング35に対して唯一の空気連絡チャネルになるため、ルアーフィッティング35の伸張ホースのバーブ部分54に取り付けられた軟性のシリコーン管が形成する流路の容量と比較した場合、ルアーフィッティング35を通る中心流路の容量を効果的に小さくできる。内側外筒体および外側外筒体30、32が内側流路28を取り囲み、構造的一体性を担保し、標準的なルアーフィッティング35に対する一体化が容易になる。
【0047】
好ましい実施態様の場合、伸張ホース14の先端について、先端接続部34を介して子宮内接合体カテーテル部8に接続する(ネジ接続する)。
図2~
図10に示す実施態様においては、先端結合部34はカテーテル部8の基端側ルアーフィッティング5に係合するように構成する。IVF制御装置10を使用すればIVF処理の際に、より制御しやすく簡単に接合体を移すことができる。カテーテル部8から接合体および成長培地を吸引し、吐き出すためにシリンジ2を操作する代わりに、医療専門家は、流量、圧力、(望む場合には)一時的な休止時間、オフ時間などの目的の流体流れ条件を制御ユニット12にプログラム設定するだけでよい。あるいは、そして場合によってはこれに加えて、医療専門家は、フットスイッチ25などの遠隔制御手段を使用して、カテーテル部8による吸引、排出の制御を行ってもよい。後は、一人の医療専門家によって、多数の接合体を選択し、これらを着床処理するだけでよい。流体流れを制御ユニット12によって、あるいは遠隔制御手段によって制御できるからである。また、専門家ならば、一人で制御ユニット12を極めて低い流量、穏やかな流量、高流量またはこれらの間のいずれにも対応して設定できるはずである。後は一人の専門家が、IVF処置時に両手を使用してカテーテル部8を操作すればよい。
【0048】
本発明の別な態様の場合、医療専門家はIVF制御装置を使用して受精率を最適化することができる。本発明のこの態様においては、医療専門家が、接合体を採取し、着床処理した制御された条件と比較して、着床成功率の統計的分析を実施できる。制御ユニットがカテーテル内に同じ着床処理(接合体を採取してからカテーテルに移し、これに流す)条件を得ることができるように設定できるため、このような条件を記録し、そして統計的に解析して、このような着床処理条件がIVF処置における着床成功率に効果があるかどうかを判定できる。例えば、カテーテル部8内の流れが速いと、接合体に悪影響を与える傾向があるという学説がある。本発明装置を利用すると、専門家はIVF処置を容量流量などの制御された一定の条件下で反復し、この学説を検証することができる。従来技術ではこのような研究は不可能である。というのは、医療専門家のユーザー入力にはバラツキがあり、定量的な測定、記録が不可能であるからである。例えば、接合体の採取時および着床処理時に各専門家が使用する流量は測定できないか、もしくは再生信頼性がない。
【0049】
本発明の別な実施態様の場合、IVF制御装置は、伸張ホース14の先端に接続する設計の接合体カテーテルで構成することができる。この実施態様においては、伸張ホース14の先端側結合部34とカテーテルの基端側結合部は互換性でなければならない点を除くと、制御装置10の設計は上記制御装置と同様であればよい。
【0050】
本発明の別な実施態様では、IVF制御装置は、
図2および
図10に示すように小型キャリヤ60を有する。
図10を参照して説明すると、キャリヤはハンドル62と、ハンドルの上端に固定した、横断方向に伸張する細長いトレー64とを有する。トレー64は、両端に固定した第1ソケット即ち先端側ソケット66および第2ソケット即ち基端側ソケット68を有する。
図2に最善の形態を示すように、ホルダーは、外側外筒体6が軸方向に滑り前進して、内側カテーテル4の基端側部分を被覆した方向にカテーテル部8を支持できるように構成する。接合体を成長培地から抽出し、患者の子宮内の着床位置に一旦移した後は、この方向にカテーテル部8を配置する。この方向にキャリヤ60がカテーテルをロックした状態で、医療専門家が片手でカテーテル部8を着床位置に運び込む。
【0051】
図10および
図11を参照して説明すると、不規則形状のスロットが先端側ソケット66を介して(トレーに対して)長手方向に伸張する。スロットの前方部分67は、ハーフパイプ状であり、その幅が外筒体6の外径よりもわずかに大きい。この前方部分67がハーフパイプ状になっているため、長手方向開口を介して外筒体6を挿入することができる。開口の幅が外筒体6の外径よりも大きいからである。スロットの後方部分69はその上面が前方部分67と同じ幅であるが、内側半径は上面の幅よりも大きい。この大きな内側半径があるため、(外筒体に固定した)ルアーフィッティングの先端側部分7aをソケット67の端部を介して挿入できる。なお、ソケット67の上面でのスロットの幅はルアーフィッティングの先端側部分7aの外径よりも小さいため、ルアーフィッティング7が保持されることになる。
【0052】
基端側ソケット68は全体としてハーフパイプ状であり、内径が、カテーテル部8のカテーテル4に固定したルアーフィッティングの基端側部分5bの外径にほぼ等しい。基端側ソケット68は、その内形がルアーフィッティングの外形に対応しているため、基端側ソケット68内にぴったりとルアーフィッティング35を保持できる。このように、2つのソケット66、68が相互に一定の固定された距離でルアーフィッティング5及び7をロックするため、カテーテル部8内において接合体を妨害することはない。
【0053】
図12~
図20に、本発明の別な好ましい実施態様におけるIVF制御装置を全体として参照符号110で示す。この実施態様のIVF制御装置110は制御ユニット12を有し、この制御ユニットの構成および機能は上記の制御ユニットと同じである。これとは別な実施態様では、制御装置110は、主にカテーテル部8から流体を吐き出す設計の第2制御ユニットを有するものである。この実施態様では、第1制御ユニット12は、カテーテル部8に接合体を投入する実験室に設置する。第2制御ユニットは操作室/処置室に設置する。第2制御ユニットの場合、IVF処理の子宮着床段階ではカテーテル部8への吸入を行わないため、機能は限定的である(吸入機能はない)。
【0054】
また、IVF制御装置110は伸張ホース114を有し、このホースは上記の伸張ホース14と実質的に同じ構成であるが、この実施態様においては、伸張ホース14はホース114の先端および先端側ルアーコネクタ34の中間に接続する三方向ベント116を有する。この実施態様の場合、伸張ホース114は、
図1に示す標準的な子宮内接合体カテーテル部8などの子宮内接合体カテーテル部8に接続する設計である。
【0055】
この実施態様のIVF制御装置110は、片手で保持、操作する注入装置160を有する。本実施態様における注入装置160は、
図1~
図11に示す手で保持、操作するキャリヤ60の代替装置である。
図12、
図16および
図17に最良の形態を示すように、注入装置160は、外側外筒体6を軸方向後方に滑り動作させて内側カテーテル4の最先端を露出する第1制限位置から、外側外筒体6が軸方向前方に滑り動作してカテーテル4の先端部分を被覆する第2制限位置までの複数の範囲にある構成でカテーテル部8を支持するようになっている。キャリヤ60と同様に、注入装置160がカテーテル部8を好ましい構成でロックした状態で、医療専門家が片手でカテーテル部8を着床位置に移送する。さらに、以下に説明するように、患者の子宮内に一旦挿入した後は、医療専門家が内側カテーテル4に対して外側外筒体6を増分的に伸張させることができる。
【0056】
注入装置160は、ハンドル164と、このハンドル164に対して先端168および基端170をもつバレル166とを有するピストル形のハウジング162を備える。好ましい実施態様においては、ハウジング162は2つの全体として対称的な部分によって構成される内部キャビティを有し、このハウジング部分は注入装置160のメジアン平面と同一平面の界面にそって接続し、注入装置を(バレルを基体170から先端168の方に見降ろす視線に対して)左側172と右側174とに分割する。ピボットピン177でトリガー176をハンドル164の上部に回転自在に接続し、これがハウジング162のメジアン面内で回転する。通常の状態では、コイルスプリング179がトリガー176にバイアスを作用させて、
図17に最良の形態を示すように、(ハンドルに対して)伸張位置に移動させる。トリガー176の下部については、ヒトの手に対応する形状に構成するのが好ましい。トリガー176を押し、ハンドル162に対してこれを解除すると、バレル166内においてハンドル162内の動作ピン182が前進駆動され、次に後進駆動される。以下に記載するように、動作ピン182が外筒体進退部190の動作タブ206に係合する。ハウジング162およびトリガー176については、公知成形技術を使用して軽量ポリマーから形成するのが好ましい。
【0057】
図13~
図15を参照して説明すると、バレル166の上部外面に2つの凹部およびチャネルを形成する。第1凹部184については、バレル166の基端168に近接配置し、その形状はルアーフィッティングの形状に対応する。第2凹部186については、第1凹部184に近接配置し、その形状は三方向ベント116の形状に対応する。チャネル188は第2凹部186からバレル166の基端170まで伸張し、その形状は伸張ホース114に対応する。これら凹部184、186とチャネル188とが、
図12、
図16および
図17に示すように、IVF処置時カテーテル部8および伸張ホース14の先端が一時的に着座できる不規則形状のソケットを形成する。第1凹部184、第2凹部186およびチャネル188の寸法は、それぞれルアーフィッティング5、三方向ベント116および伸張ホースの外側寸法よりもわずかに小さいため、子宮内カテーテル部8および伸張ホース114の先端がソケットにぴったりと嵌合する。
【0058】
参照符号190で全体的に示す外筒体進退部は、注入装置160のバレル166内に設ける。外筒体進退部190を医療専門家が操作し、すなわちそれぞれトリガー176を押し、後退ノブ198を後退させることによってカテーテル部8の外側外筒体6を進退させることができる。
【0059】
進退部190はバレル166全長に伸張する細長いロッド192を有する。ノーズピース196はロッド192の先端193に固定し、後退ノブ198はロッド192の基端194に固定する。好ましい実施態様では、
図20に最良の形態を示すように、ロッド192の基端部分192aは横断面が円形であり、そしてロッド192の先端部分192bは横断面が正方形である。この実施態様の場合、基端部分192aの直径が先端部分192bの幅と同じであるため、ロッド192が全体としてバレル166内に部分的に伸張する正方形チャネル200内において滑り動作できる。ロッド192の正方形先端部分192aおよび正方形チャネル200を設けているため、横断動作時ロッド192が軸方向に回転することはない。
【0060】
ノーズピース196は形状が不規則であり、注入装置160のメジアン面と同一平面の界面にそって接続し、(基端170から先端168の方にバレル166を見降ろす視線に対して)ノーズピースを左側と右側に分割する2つの全体として対称的な部分から構成する。ノーズピース196は基端196aに凹部202を形成し、この凹部はルアーフィッティングの形状に対応する形状を有する。ノーズピース196のチャネル204が凹部202からノーズピース196の先端196bまで伸張し、カテーテル部8の外筒体6に対応する形状を有する。チャネル204と凹部202とが、
図12、
図16および
図17に示すように、IVF処置時にそれぞれ外側外筒体6およびルアーフィッティング7が一時的に着座できる形状が不規則なソケットを形成する。チャネル204および凹部202の寸法については、それぞれ外側外筒体6およびルアーフィッティング7の外側寸法よりもわずかに小さいため、これらがソケットにぴったりと嵌合する。ノーズピース196については、公知成形技術を使用して軽量のポリマーから構成するのが好ましい。
【0061】
ノーズピース196については、トリガー176を繰り返し押し、かつ解除にすることによって伸張する。
図17に最良の形態を示すように、バネバイアス式動作タブ206は、動作ロッド192の基端部分192aに滑り自在に取り付ける。
図19a~
図19cを参照して説明すると、ロッド192は基端面206aから先端面206bまで延在する中心ボア207内を伸張する。ボア207は2つの面取り部分206cを有し、それぞれ上部基端および下部先端に位置する。
図17を参照して説明すると、タブ206は圧縮バネ208によって後方に押圧され、駆動ピン182に接触する。動作タブ206と同様に、圧縮スプリング208も動作ロッド192に滑り自在に取り付ける。
【0062】
進退部190が動作ロッド192を徐々に前進させている動作時の3つの異なる位置における進退部の一部を
図19a~
図19cに示す。
図19aに、トリガー176が完全に伸張した第1制限位置にあるタブ206を示す。この第1制限位置では、駆動ピン182がタブ206の下部基端面206aに接触する。まず、トリガー176を押すと(反時計方向に回転させると)、駆動ピン182が反時計方向に回転し、
図19bに最良の形態を示すように、タブ206の面取り角部206cが動作ロッド192に接触する第2位置まで動作タブ206を時計方向に駆動(回転)する。トリガー176をさらに押すと、駆動ピン182によってタブ206がこれ以上回転することはない。代わりに、駆動ピン182がタブ206を前方に押し、
図19cに示すように、タブ206の面取り面206cとロッド192との間の摩擦接触しているため、ロッド192を前方に押す。トリガー176を一旦解除した後は、タブ206およびロッド192の直線状の前進が停止する。次に、圧縮バネ214がタブを反時計方向に回転させて、ロッド192との摩擦係合からはずれるため、タブが
図19aに示す位置に戻る。トリガー176を押す/解除する一回のサイクルのピッチは非常に小さい。従って、トリガー176の押す/解除を繰り返すことによって少量の正確な増分量でロッド192を前進させることができる。
【0063】
ロッド192の伸張時に意図しないバックラッシュ(リヴァーブ(reverb))を防止するために、注入装置160は全体として参照符号210で示すロッド抵抗部を有する。このロッド抵抗部210はロッド192の基端側部分192aを取り囲み、バレル166の基端側部分内に設ける。
図18を参照して説明すると、抵抗部210はO-リング212、圧縮バネ214、および複数の座金216を有する。O-リングの場合、ロッド192の外径よりわずかに小さい内径をもつ弾性材料から構成するのが好ましく、このように構成すると、O-リング212によってロッド192がきちんと圧縮されるが、同時に、ロッド192は中程度の押す力または引っ張り力に反応してO-リング212内を滑り移動できる。
【0064】
後退ノブ218は、動作ロッド192の基端側端部192aに固定する。このノブ218を設けているため、医療専門家がノブを後方に引っ張ることによって動作ロッド192を後退させることが可能になる。好ましい実施態様においては、圧縮バネ214をO-リング212の基端側に設け、
図18に最良の形態を示すように、それぞれの側部に座金216を配設する。このように構成したため、動作タブ206の圧縮バネ208が、ロッド192の前進時にリヴァーブやキックバックすることはない。ただし、外筒体進退部190の圧縮バネ208を併用するため、トリガー176によって前進動作力が加わらない限り、あるいは後退ノブ218によって後退力が加わらない限り、抵抗部210の圧縮バネ214がロッド192をバレル166に対して静止状態に保持する。
【0065】
注入装置は、バレル166の正面に取り付けられた、全体を参照符号220で示す照明部を有するのが好ましいが、この照明部は場合に応じて取り付けるものである。
図12~
図20に示す実施態様では、照明部220はロッド192の先端193に固定したLEDバンク222、バレル内に配設した回路板226および電池230、およびLEDバンク222を電池230および回路板226に接続する軟性コード224を有する。
図12および
図13に最良の形態を示すように、ハウジング162の右側からオンオフスイッチ228を延ばす。
図15および
図16に最良の形態を示すように、電池ドア232をハウジング162の左側に設置する。ロッド192の先端部分192bが正方形のチャネル200内を滑り動作するため、ロッド192およびこれに接続した部材がその長手方向軸線の周りで回転することはない。この結果、ノーズピース196および照明部220はバレル166に対して正しい角度配向において固定され、カテーテル部8の先端4bに合焦した状態を維持する。
【0066】
IVFを実施する方法の好ましい実施態様では、子宮内接合体カテーテル部8を伸張ホース14の先端結合部34に接続する。
図12~
図20に示す実施態様では、三方向弁116上の先端ポートに先端側結合部34を接続する。基端側結合部は、制御装置18上の流体接続ポート20に接続する。三方向弁の場合最初は“開”位置にあり、この位置では、カテーテル部8と伸張ホース14との間の流体流路が開き、そして伸張ホース14と側部ベントポート117との間の流路が閉じる。IVF制御装置110を次に実験室において使用して、内側カテーテル4の先端4bに成長培地および接合体を制御された吸入し易い方法で順次吸引することによって接合体を移す。制御された順で吸引を行うか、あるいはフットスイッチ25を介してポンプを選択的に作動させて吸引を患者に合わせて行うかを制御ユニット12に医療専門家がプログラム設定できる。
【0067】
内側カテーテル4へ接合体を充填した後、三方向弁は“閉”位置に移る。この閉位置では、カテーテル部8と伸張ホース14との間の流体流れがシャットされ、そして伸張ホース14と側部ベントポート117との間の流体流れ接続が開く。カテーテル部8の基端をシール処理することによって、制御ユニット12上のポート20から伸張ホース14の切断が切れた状態に伴う真空によって内側カテーテル4の流体(および接合体)のカラムが変位することはない。次に、バレルの上部のソケット内にカテーテル部8を取り付けるとともに、
図12、
図16および
図17に示す構成のノーズピース内に取り付ける。
【0068】
注入装置160にぴったりとカテーテル部8を保持した状態で、医療専門家が“充填された”カテーテルを着床処理位置、通常は病院の処置室内の着床処理位置にもってくる。この位置において、医療専門家が伸張ホース14の基端を第2制御ユニット12のポート20に再接続する。次に、三方向弁を解放位置に戻す。三方向弁が閉位置にくるように構成されているため、ポート20への接続時伸張ホース14内に発生した圧力によって内側カテーテル4内の流体(および接合体)のカラムが変位することはない。
【0069】
別な好ましい実施態様の方法の場合、最初に、内側カテーテル4の最先端4bに対してカテーテル部の外筒体6を後退させる。次に、医療専門家が片手を使用して子宮頸管にカテーテル部8を挿入し、子宮内に挿入し、もう一つの手で注入装置を支え、カテーテル部8を操作する。撮像装置でカテーテル部8の最先端を見ながら、医療専門家が最先端4bを操作し、子宮内の好ましい着床位置に移動させる。最先端4bが妨害を受けた場合には、医療専門家が片手でトリガー176を順次押しかつ解除することによって外筒体を徐々に伸張させることによって、カテーテル部8の先端部分を硬直させる。外筒体6を伸張させると、カテーテル部8が妨害物をより簡単に避けることができる。
【0070】
内側カテーテル4の最先端4bを子宮内の目的の着床位置に正確にもってきた後は、医療専門家が制御ユニット12を作動することによってカテーテル部8から接合体を吐き出す。この制御ユニット12には、流量、(望ましい場合には)中断時間、オフタイムなどの目的の流体流れ条件を予め設定しておくことができる。これとは別に、あるいはこれに加えて、制御ユニットに接続されたフットスイッチ25やその他の遠隔手段を使用して、カテーテル部8からの排出を制御できる。前述の装置および方法によって、医療専門家が一人で、多くの接合体を簡単に採取し、移し、着床させることができる。流量を制御ユニット12で制御できるからである。医療専門家が、制御ユニット12を遅い流量、中程度の流量、速い流量、またはこれらの中間の流量に設定できる。一人の医療専門家が両手を使用して、IVF処置時にカテーテル部8を操作できる。
【0071】
以上の説明はいずれも本発明の原理を説明することを目的とするものである。さらに、当業者にとっては数多くの変更などを加えることができるはずであるため、本発明を図示し、説明してきた正確な構成、操作に本発明を限定することは望ましくない。従って、これら好適な変更や等価物はいずれも本発明の範囲内に包含されるものである。
【符号の説明】
【0072】
4:内側カテーテル
4a、6a、14a、168、170:基端
4b、6b:開放先端
6、30:外側外筒体
5、7、35:ルアーフィッティング
8:子宮内接合体カテーテル部
10、110:IVF制御装置
12:制御ユニット
14、114:伸張ホース
18、162:ハウジング
19:タッチスクリーンディスプレー
20:外部空気接続ポート
22:内部ポンプ
24:マイクロプロセッサ
25:フットスイッチ
28:中心空気連絡流路
32:内側外筒体
34:結合部、ルアーコネクタ
36:第1部分
37:挿入体
38,50:外面
39:接着剤
40、46:内側ボア
42:第2(中間)部分
48:第3部分48
52:テーパーボア
54:バーブ部分
55:接続ポート
60:キャリヤ
62、164:ハンドル
66、67、68:ソケット
116:三方向ベント
117:側部ベントポート
160:注入装置
166:バレル
168:先端
170:基体
174:右側
177:ピボットピン
176:トリガー
182:駆動ピン
184:第1凹部
186:第2凹部
188、200、204:チャネル
190:外筒体進退部
192:ロッド
192a、192b:先端部分
196:ノーズピース
198、218:後退ノブ
202:凹部
210:抵抗部
212:O-リング
208、214:圧縮バネ
216:座金
228:オンオフスイッチ
232:電池ドア