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特許7164407設備監視システム、転てつ機、軌道回路及び踏切装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】設備監視システム、転てつ機、軌道回路及び踏切装置
(51)【国際特許分類】
   B61L 23/04 20060101AFI20221025BHJP
   B61L 25/06 20060101ALI20221025BHJP
   B61L 29/30 20060101ALI20221025BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
B61L23/04
B61L25/06 Z
B61L29/30
H04Q9/00 311J
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2018212283
(22)【出願日】2018-11-12
(65)【公開番号】P2020078974
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-10-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年7月24日に、信号設備における検査業務の機械化についての提案の会議にて、設備監視システム、転てつ機、軌道回路及び踏切装置の開発について公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(74)【代理人】
【識別番号】100181146
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 啓
(72)【発明者】
【氏名】岡見 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】香川 卓也
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-16990(JP,A)
【文献】特開2010-117837(JP,A)
【文献】特開2017-4323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 23/04
B61L 25/06
B61L 29/30
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線路に沿って設置される設備の動作記録から直近の異常及び正常に関する正常異常記録データと異常の累積回数を含む異常判別データとで構成される通信データを抽出する現場装置と、
前記線路を走行する列車に搭載され、前記現場装置の設置位置から所定距離内において前記現場装置と通信して前記通信データに含まれる前記異常判別データを取得するデータ収集装置と
を備える設備監視システム。
【請求項2】
前記データ収集装置は、既に蓄積している過去の前記異常判別データと、前記現場装置との直近の通信において取得した最新の前記異常判別データとの比較に基づき前記設備における異常発生の有無を判断する、請求項1に記載の設備監視システム。
【請求項3】
前記データ収集装置は、異常の累積回数の増加により、異常発生有りと判断する、請求項1及び2のいずれか一項に記載の設備監視システム。
【請求項4】
前記異常判別データは、前記設備における異常発生の種別の情報を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の設備監視システム。
【請求項5】
前記データ収集装置は、予め記憶した前記現場装置の設置位置の情報と前記列車の現在地の情報とに基づいて、前記現場装置との通信を開始する、請求項1~4のいずれか一項に記載の設備監視システム。
【請求項6】
前記現場装置は、前記設備の動作記録を保存するデータ保存部と、前記データ保存部から前記異常判別データを抽出するデータ抽出部とを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の設備監視システム。
【請求項7】
前記データ保存部は、前記設備の動作記録の全てを保存する、請求項6に記載の設備監視システム。
【請求項8】
前記データ保存部は、通常の列車運行状態にある通常動作モードから異常発生の検知に基づき現場確認を行う現場モードへ切替えられた場合に、前記設備の動作記録について前記データ収集装置に対して未送信であるデータを含む情報を提供する、請求項6及び7のいずれか一項に記載の設備監視システム。
【請求項9】
動作記録から直近の異常及び正常に関する正常異常記録データと異常の累積回数を含む異常判別データとで構成される通信データを抽出するデータ抽出部と、
前記データ抽出部に接続され、線路を走行する列車に搭載されるデータ収集装置に対して所定距離内において前記異常判別データを含む前記通信データを送信する通信端末と
を備える転てつ機。
【請求項10】
前記データ抽出部は、前記動作記録としての転換時におけるモータ電圧値、モータ電流値、制御リレー電圧値、転換時間、又は、これらの組合せにより算出される値のいずれかの変化に基づき前記異常判別データを抽出する、請求項9に記載の転てつ機。
【請求項11】
異常判別の基準となる閾値の設定入力を受け付ける入力受付部と、
前記入力受付部で受け付けた設定値を表示する設定値表示部と、
前記閾値に基づく異常発生の判別時に表示状態を変更する異常発生表示灯と、
前記異常発生の判別時に異常発生を外部に出力する接点と、
自己の機能の健全性を表示する自己健全性表示灯と
を備える、請求項9及び10のいずれか一項に記載の転てつ機。
【請求項12】
複数の測定モードから選択された一の測定モードにおける各測定値を選択式固定で又は順番に表示する測定値表示部を備える、請求項9~11のいずれか一項に記載の転てつ機。
【請求項13】
蓄積した異常データの異常発生の種別を履歴順に表示する異常履歴表示部を備える、請求項9~12のいずれか一項に記載の転てつ機。
【請求項14】
動作記録から直近の異常及び正常に関する正常異常記録データと異常の累積回数を含む異常判別データとで構成される通信データを抽出するデータ抽出部と、
前記データ抽出部に接続され、線路を走行する列車に搭載されるデータ収集装置に対して所定距離内において前記異常判別データを含む前記通信データを送信する通信端末と
を備える軌道回路。
【請求項15】
前記データ抽出部は、前記動作記録として軌道回路電圧の立下りデータ、立上りデータ及び立下りから立上りまでの間における残留電圧のピーク値に基づき前記異常判別データを抽出する、請求項14に記載の軌道回路。
【請求項16】
動作記録から直近の異常及び正常に関する正常異常記録データと異常の累積回数を含む異常判別データとで構成される通信データを抽出するデータ抽出部と、
前記データ抽出部に接続され、線路を走行する列車に搭載されるデータ収集装置に対して所定距離内において前記異常判別データを含む前記通信データを送信する通信端末と
を備える踏切装置。
【請求項17】
前記データ抽出部は、前記動作記録として、踏切制御子におけるリレー動作に関する時間データを抽出し、
前記通信端末は、前記データ収集装置に対して前記時間データを送信し、
前記列車の先頭から最後尾の車軸間距離、前記時間データ及び前記時間データに基づく列車速度から制御区間長の算出を可能にする、請求項16に記載の踏切装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備監視システム、転てつ機、軌道回路及び踏切装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道電力設備におけるメンテナンスのためのデータ収集の方法に関して、例えば非特許文献1等に例示されるように、無線式センサを導入して、走行する列車でデータを収集するものが知られている。これにより、メンテナンスのための人員削減を図り、人手不足を解消することが期待される。
【0003】
しかしながら、センサにおいて蓄積したデータを走行する列車で収集するためには、多大な設備投資等が必要となる可能性がある。例えば、無線LANにより、センサにおいて蓄積されている大量のデータを高速で通過しながら授受する場合、通信速度が技術的・コスト的問題を生じさせる可能性がある。例えば通信速度が遅いと通信量の制約から、鉄道電力設備の異常に関するデータの取得ができなくなってしまう、といったことが生じるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】2014年9月10日、東日本旅客鉄道株式会社、鉄道電力設備における無線式センサの導入について〈URL:https://www.jreast.co.jp/press/2014/20140906.pdf〉
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、確実に異常に関するデータの取得ができ、鉄道の設備におけるメンテナンスに際して人員削減を図り、人手不足を解消できる設備監視システム、及び設備監視システムに適用可能な転てつ機、軌道回路及び踏切装置を提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するための設備監視システムは、線路に沿って設置される設備の動作記録から直近の異常及び正常に関する正常異常記録データと異常の累積回数を含む異常判別データとで構成される通信データを抽出する現場装置と、線路を走行する列車に搭載され、現場装置の設置位置から所定距離内において現場装置と通信して通信データに含まれる異常判別データを取得するデータ収集装置とを備える。
【0007】
上記設備監視システムでは、現場装置において、設備の動作記録のうちから、直近の異常及び正常に関する記録である正常異常記録データと異常の累積回数を含む異常判別データとで構成される通信データを抽出しておき、当該通信データに含まれる異常判別データをデータ収集装置に取得させることで、通信時におけるデータ量を抑えつつ、異常判別に必要なデータの確実な授受を維持でき、メンテナンスに際して人員削減を図り、人手不足を解消できる。さらに、授受するデータ量を抑えることでデータ収集装置と現場装置との通信が所定距離内の短い間であっても十分な構成とすることができ、通信設備に掛かる費用が抑えられる。
【0008】
本発明の具体的な側面では、データ収集装置は、既に蓄積している過去の異常判別データと、現場装置との直近の通信において取得した最新の異常判別データとの比較に基づき設備における異常発生の有無を判断する。この場合、送受信において取り扱うデータ量を抑えつつ、データの比較によって異常発生を検知できる。
【0009】
本発明の別の側面では、データ収集装置は、異常の累積回数の増加により、異常発生有りと判断する。この場合、異常の累積回数を利用して異常発生を検知できる。
【0010】
本発明のさらに別の側面では、異常判別データは、設備における異常発生の種別の情報を含む。この場合、異常発生の検知に際して、併せて異常発生の種別を検知できる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、データ収集装置は、予め記憶した現場装置の設置位置の情報と列車の現在地の情報とに基づいて、現場装置との通信を開始する。この場合、データ収集装置と現場装置との間で、効率的かつ確実な通信が可能となる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、現場装置は、設備の動作記録を保存するデータ保存部と、データ保存部から異常判別データを抽出するデータ抽出部とを有する。この場合、データ保存部において設備の動作記録として保存しておくべき種々の情報を格納するとともに、データ抽出部においてデータ保存部に格納された情報のうち異常判別データとして取り扱うべきもの、すなわち通信の対象となるものを抽出しておくことによって、送受信において取り扱うデータ量を抑えつつ、異常発生をデータ収集装置側において検知させることができる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、データ保存部は、設備の動作記録の全てを保存する。この場合、必要に応じて現場装置についての全てのデータを取得することが可能になる。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、データ保存部は、通常の列車運行状態にある通常動作モードから異常発生の検知に基づき現場確認を行う現場モードへ切替えられた場合に、設備の動作記録についてデータ収集装置に対して未送信であるデータを含む情報を提供する。この場合、現場装置とデータ収集装置との送受信において取り扱われなかったデータについて、現場モードにおいて提供可能となる。
【0015】
上記目的を達成するための転てつ機は、動作記録から直近の異常及び正常に関する正常異常記録データと異常の累積回数を含む異常判別データとで構成される通信データを抽出するデータ抽出部と、データ抽出部に接続され、線路を走行する列車に搭載されるデータ収集装置に対して所定距離内において異常判別データを含む通信データを送信する通信端末とを備える。
【0016】
上記転てつ機では、動作記録のうちから、直近の異常及び正常に関する記録である正常異常記録データと異常の累積回数を含む異常判別データとで構成される通信データをデータ抽出部において抽出しておき、当該通信データに含まれる異常判別データを通信端末によりデータ収集装置に対して所定距離内において送信し、データ収集装置に取得させている。これにより、通信時におけるデータ量を抑えつつ、異常判別に必要なデータの確実な授受を維持でき、メンテナンスに際して人員削減を図り、人手不足を解消できる。さらに、授受するデータ量を抑えることでデータ収集装置と現場装置との通信が所定距離内の短い間であっても十分な構成とすることができ、通信設備に掛かる費用が抑えられる。
【0017】
本発明の具体的な側面では、データ抽出部は、動作記録としての転換時におけるモータ電圧値、モータ電流値、制御リレー電圧値、及び転換時間、又は、これらの組合せにより算出される値のいずれかの変化に基づき異常判別データを抽出する。この場合、転てつ機の異常として、特に重要な情報や緊急を要する情報についてデータ収集装置に取得させることができる。
【0018】
本発明の別の側面では、異常判別の基準となる閾値の設定入力を受け付ける入力受付部と、入力受付部で受け付けた設定値を表示する設定値表示部と、閾値に基づく異常発生の判別時に表示状態を変更する異常発生表示灯と、異常発生の判別時に異常発生を外部に出力する接点と、自己の機能の健全性を表示する自己健全性表示灯とを備える。この場合、入力受付部において異常判別の基準となる閾値の設定が可能となり、また、閾値の設定における設定値を設定値表示部において表示できる。また、設定された閾値に基づく異常発生の判別時において、異常発生表示灯による報知がなされるとともに、接点から異常発生について転てつ機の外部に出力される。また、転てつ機自身の状態については、自己健全性表示灯により確認できる。
【0019】
本発明のさらに別の側面では、複数の測定モードから選択された一の測定モードにおける各測定値を選択式固定で又は順番に表示する測定値表示部を備える。この場合、測定値表示部において、選択された測定モードにおける各測定値について、確実に確認できる。
【0020】
本発明のさらに別の側面では、蓄積した異常データの異常発生の種別を履歴順に表示する異常履歴表示部を備える。この場合、異常履歴表示部において、異常発生の履歴について確認できる。
【0021】
上記目的を達成するための軌道回路は、動作記録から直近の異常及び正常に関する正常異常記録データと異常の累積回数を含む異常判別データとで構成される通信データを抽出するデータ抽出部と、データ抽出部に接続され、線路を走行する列車に搭載されるデータ収集装置に対して所定距離内において異常判別データを含む通信データを送信する通信端末とを備える。
【0022】
上記軌道回路では、動作記録のうちから、直近の異常及び正常に関する記録である正常異常記録データと異常の累積回数を含む異常判別データとで構成される通信データをデータ抽出部において抽出しておき、当該通信データに含まれる異常判別データを通信端末によりデータ収集装置に対して所定距離内において送信し、データ収集装置に取得させている。これにより、通信時におけるデータ量を抑えつつ、異常判別に必要なデータの確実な授受を維持でき、メンテナンスに際して人員削減を図り、人手不足を解消できる。さらに、授受するデータ量を抑えることでデータ収集装置と現場装置との通信が所定距離内の短い間であっても十分な構成とすることができ、通信設備に掛かる費用が抑えられる。
【0023】
本発明の具体的な側面では、データ抽出部は、動作記録として軌道回路電圧の立下りデータ、立上りデータ及び立下りから立上りまでの間における残留電圧のピーク値に基づき異常判別データを抽出する。この場合、軌道回路の異常として、特に重要な情報や緊急を要する情報についてデータ収集装置に取得させることができる。
【0024】
上記目的を達成するための踏切装置は、動作記録から直近の異常及び正常に関する正常異常記録データと異常の累積回数を含む異常判別データとで構成される通信データを抽出するデータ抽出部と、データ抽出部に接続され、線路を走行する列車に搭載されるデータ収集装置に対して所定距離内において異常判別データを含む通信データを送信する通信端末とを備える。
【0025】
上記踏切装置では、動作記録のうちから、直近の異常及び正常に関する記録である正常異常記録データと異常の累積回数を含む異常判別データとで構成される通信データをデータ抽出部において抽出しておき、当該通信データに含まれる異常判別データを通信端末によりデータ収集装置に対して所定距離内において送信し、データ収集装置に取得させている。これにより、通信時におけるデータ量を抑えつつ、異常判別に必要なデータの確実な授受を維持でき、メンテナンスに際して人員削減を図り、人手不足を解消できる。さらに、授受するデータ量を抑えることでデータ収集装置と現場装置との通信が所定距離内の短い間であっても十分な構成とすることができ、通信設備に掛かる費用が抑えられる。
【0026】
本発明の具体的な側面では、データ抽出部は、動作記録として、踏切制御子におけるリレー動作に関する時間データを抽出し、通信端末は、データ収集装置に対して時間データを送信しており、この結果、踏切装置は、列車の先頭から最後尾の車軸間距離、時間データ及び前記時間データに基づく列車速度から制御区間長の算出を可能にしている。つまり、この場合、踏切制御子の位置についての妥当性を判断するためのデータ取得が可能になっている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1実施形態に係る転てつ機、軌道回路及び踏切装置を含む設備監視システムについて示す概念図である。
図2】設備監視システムを構成する現場装置及びデータ収集装置について説明するためのブロック図である。
図3】設備監視システムにおける通信の様子について一例を示す斜視図である。
図4】現場装置におけるデータ保存について説明するための概念図である。
図5】第1実施形態に係る転てつ機の一例について概要を示す概念的な平面図である。
図6】転てつ機について内部構成の一例を概念的に示すブロック図である。
図7】(A)は、転てつ機におけるフォーマットのうち転てつ機の動作に関するデータ部の内容について一例を示すデータ表であり、(B)は、転てつ機について伝送対象となる電文フォーマットの一例を示すデータ表である。
図8】設備監視システムの動作の一例について説明するための概念図である。
図9】設備監視システムを構成するデータ収集装置の一動作例を説明するためのフローチャートである。
図10】(A)は、設備監視システムを構成する現場装置における設備の動作記録の処理について一例を説明するためのフローチャートであり、(B)は、現場装置のデータ収集装置への応答についての一動作例を説明するためのフローチャートである。
図11】現場確認を行う現場モードへの切替えについて説明するための概念図である。
図12】現場モードにおいて現場確認を行うための現場装置の一構成例を示す概念図である。
図13】(A)は、第2実施形態に係る軌道回路の一例について概要を示す概念的な平面図であり、(B)は、測定対象である軌道回路電圧の様子を概念的に示すグラフである。
図14】第3実施形態に係る踏切装置の一例について概要を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔第1実施形態〕
以下、図1等を参照して、第1実施形態に係る転てつ機、軌道回路及び踏切装置を含む設備監視システムについて説明する。
【0029】
図1及び図2に例示するように、本実施形態の設備監視システム500は、鉄道において線路RLに沿って設けられている転てつ機TM、軌道回路TC及び踏切装置RC等の各種設備EQについて、異常の有無を判定するためシステムである。特に、本実施形態の設備監視システム500では、営業車として矢印A1の方向に走行してくる列車TRが、設備EQにある程度の距離内に接近した際に、列車TR側からの呼びかけに応じて設備EQ側から異常判別データ等の各種データ(後述する通信データ)を送信し、列車TR側がこれを受信することで、営業車を利用した線路設備の保守管理を可能にしている。ここで、異常判別データとは、設備EQの動作に関わる正常・異常の発生について判断を行うための種々のデータを意味するが、本実施形態では、特に、設備EQの動作記録から異常の累積回数を含むように抽出したデータを取り扱う対象の異常判別データとしている。また、設備EQの動作記録から抽出した直近の異常及び正常に関する記録についても、異常判別データとともに送信する対象としており、ここでは、このようなデータを正常異常記録データとする。つまり、本実施形態では、異常判別データと正常異常記録データとを、設備EQから列車TRへの送信対象(通信対象)としている。また、これらのデータをまとめて通信データとする。
【0030】
このため、設備監視システム500は、現場に設置された各設備EQに付随してそれぞれ設けられて異常判別データに関する各種処理を行う現場装置10と、列車TRに搭載された携帯型通信端末等で構成されて現場装置10から送信される異常判別データを取得するデータ収集装置20と、単数又は複数設けられる保守管理部50と、異常判別データを管理統制する指令部100とを備える。なお、これらのうちから現場装置10を除いたデータ収集装置20、保守管理部50及び指令部100については、例えば保全用のネットワーク回線NT等を通じて、適宜通信可能となっている。これに対して、各現場に備えられる現場装置10については、通信部13による近距離通信機能のみを有し、設置位置から所定距離内においてのみデータ収集装置20との近距離での通信が可能となっている。なお、転てつ機TM、軌道回路TC及び踏切装置RC等の設備監視システム500において、データの送受信の対象となる設備EQについては、現場装置10を含めて設備EQと記載することもあるが、現場装置10以外の部分のみを設備EQと記載することもあるものとする。特に、現場装置10以外の部分のみを設備について示す場合には、設備EQa(図2参照)等と記載することもあるものとする。
【0031】
まず、設備監視システム500のうち、現場装置10は、各設備EQにおける異常の有無を監視するために各種動作に関するデータを取得するモニタ装置であり、図2に例示するように、設備EQのうち現場装置10を除いた本体部分である設備EQaにおける各種動作についてのデータを受け付けるデータ受付部11と、データ受付部11から取得した各種データの処理を行うデータ処理部12と、データ収集装置20との通信を行うための無線装置である通信部13と、各部の動作処理を行うための主制御部MCとを備える。
【0032】
データ受付部11は、設備EQに関する各種動作に関するデータの入力を受け付けるために現場装置10に設けられたインターフェースである。例えば設備EQの一例としての転てつ機TMにおけるレールの移動動作が考えられる。転てつ機TMは、例えば電気転てつ機であり、分岐器を構成する枕木上の基本レールやトングレールのうち、トングレールを移動させることで、分岐器における列車の進路の切替えを行う部材である。詳しい図示を省略するが、上記切替えの動作を行うために、転てつ機TMは、動力源であるモータ等のほか、例えば本体部から延びる動作かん、さらに動作かんに接続されてトングレールに繋がる接続部、あるいは、切替え動作後の位置固定のための鎖錠かん等を備える。本実施形態では、これらの転てつ機TMを構成する各部についての動作時のデータを記録すべく、現場装置10に各種データの入力がなされる。
【0033】
データ処理部12は、CPUやストレージデバイス等で構成され、各種データ処理を行う電子回路部である。データ処理部12は、データ受付部11を介して受け付けた設備EQの動作に関する各種情報を設備EQの動作記録として保存するデータ保存部12aと、データ保存部12aから異常判別データを抽出するデータ抽出部12bとを有する。本実施形態では、特に、データ保存部12aは、設備EQの動作記録の全てを保存している。これに対して、データ抽出部12bは、送信対象となる直近の動作に関する異常及び正常に関する正常異常記録データと異常の累積回数を含む異常判別データを抽出している。なお、詳しくは後述するが、データ保存部は、現場確認を行う現場モードに際しては、蓄積していた未送信であるデータを含む情報を提供するものとなっている。すなわち、現場装置10は、データ処理部12において正常異常記録データ及び異常判別データで構成される通信データ以外のデータについても蓄積しており、状況に応じて全データを提供可能としている。
【0034】
通信部13は、データ収集装置20との無線通信を行うための装置で構成されている。ここでは、例えば920MHzの周波数帯での送受信を行うものとなっており、データ収集装置20とのデータ通信がない場合は、受信待機し、データ通信が必要な場合だけ、待機状態から無線通信を使って起動させるウェイクアップ方式となっている。ここでの一例では、通信部13は、例えば付随する設備EQの直近に固定して設置され、設置位置からの距離100m程度の範囲内において通信可能となっている。すなわち、列車TRに搭載されたデータ収集装置20が通信部13から距離100mの範囲内にある間において、現場装置10とデータ収集装置20との通信が可能になっている。
【0035】
主制御部MCは、CPU等で構成され、上記各部を含む現場装置10全体の動作を制御する。ここでは、特に、データ処理部12において処理されたデータについて、通信部13を介してデータ収集装置20へ送信に関する制御を行う。
【0036】
次に、設備監視システム500のうち、データ収集装置20は、既述のように、列車TRに搭載されており、例えばスマホ等の携帯型通信端末で構成されている。データ収集装置20は、通信機能やデータ記憶機能、あるいは各種動作制御が可能であるが、ここでは特に、通信部13との通信を可能とするための各種機構を有している。すなわち、通信部13に対応して同一の周波数帯(例えば920MHz)での通信を可能としている。特に本実施形態では、データ収集装置20をホストとするポーリングアンサー式の応答をしている。すなわち、データ収集装置20が、線路RLに沿って複数存在する現場装置10(通信部13)に対して、送信したいデータがあるかどうかを一定のタイミングで問い合わせ、条件を満たした場合に送受信する形式となっている。データ収集装置20は、内蔵するストレージにおいて各現場装置10からの最新の異常判別データを受け付けるとともに過去に受け付けた異常判別データも保存しており、最新の正常異常記録データ及び異常判別データと、既に蓄積している過去の正常異常記録データ及び異常判別データとを比較することが可能になっている。なお、データ収集装置20は、通信機能を利用して、これらの情報を、保守管理部50や指令部100に対して提供可能になっている。
【0037】
図1に戻って、設備監視システム500のうち、保守管理部50は、例えばデータ収集装置20を搭載した列車TRが走行する1つあるいは複数の路線、または路線の一部等を管轄区間とし、管轄下にある区間上の各設備の保守管理を担う。このため、保守管理部50は、例えば各設備の状況を把握すべく収集端末20Aと、データ収集サーバ30と、表示装置40とを備える。収集端末20Aは、保守管理部50が管理対象とする区間のデータ収集をするデータ収集装置20との通信が可能であるか、あるいは、データ収集装置20そのものである。データ収集サーバ30は、収集端末20Aからデータを取得し、これを管理保管する。また、表示装置40は、データ収集サーバ30に格納されている各種データを表示する。これにより、例えば、保守管理部50における管理者が、管轄区間の状況を視認により把握することができるようになっている。なお、保守管理部50については、単数の場合に限らず、複数設けられて、各々の管轄区間について、上記のような管理をそれぞれ行うものとしてもよい。また、保守管理部50は、保全用のネットワーク回線NT等を介して指令部100からの指令を受け付け、例えば管轄下にある区間において緊急の補修を要する場合には、管理者に対してその旨の報知を行う。
【0038】
最後に、設備監視システム500のうち、指令部100は、データ収集装置20や保守管理部50からの各種データを、ネットワーク回線NT等を介して受け付け、設備監視システム500の監視下にある路線の全区間についての統括的な管理(管理統制)を行う。このため、指令部100は、表示部等を含む管理装置110等を備える。つまり、指令部100における監督責任者が、全区間の状況を視認により把握することができるようになっている。指令部100は、データ収集装置20や保守管理部50からの各種データから状況を判断し、特に、急を要する等の場合には、ネットワーク回線NT等を介して該当する区間を管轄する保守管理部50に対して、その旨の報知を行う。なお、上記のような判断については、監督責任者すなわち人間が行うものとしてもよいが、例えば急を要する補修事項等を予め定めておく一方、現場装置10からの異常判別データの発信に際して、異常判別データに各設備EQにおける異常発生の種別の情報を含ませておくことで、急を要する補修事項等に該当する異常発生であるか否かを管理装置110で自動的に判断可能であるようにしてもよい。
【0039】
以上のような構成により、設備監視システム500は、列車TRが走行する線路の各設備における異常判別を確実に遂行可能としている。
【0040】
ここで、営業車の走行については、例えば最高速度が130km/hに設定されている。このように高速で走行する列車(営業車)を利用して各種情報を収集しようとした場合、多大な設備投資等が必要となるおそれがある。また、閑散地域や無線通信の携帯通信による無線通信に速度制限がある地域等では、短い時間で大量のデータ送受信を行うことが困難となる可能性もある。
【0041】
これに対して、本実施形態では、上記のように現場に設けた現場装置10と列車TRに搭載したデータ収集装置20との間で通信を行う構成し、さらに現場装置10側で正常か異常かを判断することにより送受信するデータ量を抑えることで、簡易な構成で、確実に異常に関するデータの取得ができ、これにより、例えば定期検査の回数削減を図ることで、さらに、鉄道の設備におけるメンテナンスに際して人員削減を図り、人手不足を解消できるものとなっている。
【0042】
以下、図3を参照して、設備監視システム500における現場装置10とデータ収集装置20との通信の様子について一例を説明する。
【0043】
図示のように、複数の現場装置10あるいはこれを構成する通信部13は、転てつ機TM等の設備EQごとに設けられており、線路RLの脇にそれぞれ設けられている。各通信部13は、走行する列車TRに搭載されたデータ収集装置20の通信可能範囲CC内、すなわちデータ収集装置20との距離が100m以内になると、データ収集装置20は、該当する通信部13に構成される現場装置10との通信を開始し、正常異常記録データ及び異常判別データを収集する。なお、図示のように、複数の通信部13がデータ収集装置20との通信が可能となる場合には、データ収集装置20が現場装置10(通信部13)に対して一定のタイミングで順番に問い合わせることで、混信等が回避されるようになっている。
【0044】
ここで、既述のように、データ収集装置20は、営業速度(例えば、最高速度130km/h)で走行する列車TRに搭載されている場合に通信可能な範囲が100m程度であると、通信可能時間が、最短の場合には数秒程度となり、データ収集装置20と現場装置10との間で列車TRの1回の通過で通信できる情報量が、通信方式によっては、例えば数百バイトの情報を3回に分けて送信する、といった程度に制限される可能性がある。本実施形態では、かかる事態を踏まえて、設備EQの動作記録のうちから正常異常記録データ及び異常判別データを上記制限された情報量(データ量)の範囲内となるように予め抽出しておき、列車TRの通過に際して当該異常判別データをデータ収集装置に取得させるようにすることで、通信が所定距離内・所定時間内の短い間に限られる、といった制限が厳しい状況下にあっても十分な構成とすることができるようにしている。
【0045】
図4は、現場装置10におけるデータ保存について一例を説明するための概念図である。より具体的には、データDT1は、データ処理部12のデータ保存部12aに相当するメモリに格納されるデータの様子を概念的に示している。既述のように、ここでの一例では、データ保存部12aにおいて、各回の動作に関する全データを蓄積して記憶している。図示の例では、データDT1は、正常に動作した場合のデータを蓄積する正常データ蓄積領域データDT1aと、動作に異常があった場合のデータ(異常データ)を蓄積する異常データ蓄積領域データDT1bとで構成されている。ここでは、一例として、データDT1では、全データとして、正常データ蓄積領域データDT1aでは、最新450件分のデータ(正常データ)を蓄積可能にしており、異常データ蓄積領域データDT1bでは、最新50件分のデータ(異常データ)を蓄積可能にしている。これに対して、データ処理部12のデータ抽出部12bでは、データDT1として蓄積されたもののうち、直近(最新)の異常及び正常に関する記録である正常異常記録データと、異常の累積回数の情報及び異常発生の種別の情報を含む異常判別データとを、1回の通過で通信できる情報量に収まる最新の1データとし、これをデータ収集装置20に送信する通信データJD1として抽出している。つまり、通信データJD1は、データ収集装置20あるいはデータ収集装置20からデータを受け付ける指令部100(図1参照)等において、異常の有無の判断(故障分析)ができる情報を構成している。また、通信データJD1は、1回の通過で通信できるように、図示のように、例えば1つにつき数百バイトのデータずつの3つの分割データDV1~DV3に分けた状態で送信するようにしている。
【0046】
以下、図5等を参照して、本実施形態に係る異常判定の対象となる設備EQとしての転てつ機TMの一例について説明する。図5は、転てつ機TMの筐体SCの内部の構成について概要を示す概念的な平面図である。
【0047】
まず、図5に例示するように、転てつ機TMの各部を収める筐体SCの内部のうち、ほぼ中央に現場装置10のうち通信部13以外の各部を収納する本体部10Aが設けられ、本体部10Aに接続されたケーブルCB1が転てつ機TMの筐体SCの外部まで延びて通信部13に接続されている。以上により、現場装置10が転てつ機TMに取り付けられている。なお、本体部10Aは、例えば直方体状の収納部の天板において四隅がボルトで締めつけられて、転てつ機TMの筐体SCに固定され、かつ、蓋をされた状態となっている。また、現場装置10のケーブルCB2が、転てつ機TMの電源部PSに接続されていることで、現場装置10を構成する各部の電力が確保されている。
【0048】
以下、図6等を参照して、転てつ機TMの各部のうち、転てつ機TMの動作に際して現場装置10によるデータの取得方法について一例を説明する。図6は、転てつ機TMについて内部構成の一例を概念的に示すブロック図である。電気転てつ機である転てつ機TMは、図示のように、筐体SC内において、各部を動作させるための電源部PSのほか、例えば、転てつ機内回路TMcや、モータ部TMm等を備える。電源部PSは、転てつ機内回路TMcに接続されて電力供給を行っており、転てつ機内回路TMcは、モータ端子板やモータで構成されるモータ部TMm等について、電力供給をするとともに各種動作制御を行っている。以上において、現場装置10のうち通信部13以外の各部を収納する本体部10Aは、転てつ機TMの動作をモニタするためのセンサ端末として機能する。図示の例を参照してより具体的に説明すると、現場装置10の本体部10Aは、分割式(クランプ式)の測定部CL1,CL2により、電源部PSと転てつ機内回路TMcとの間、あるいは、転てつ機内回路TMcとモータ部TMmとの間における電流値や電圧値の測定あるいは算出を可能にしている。なお、測定部CL1,CL2を分割式(クランプ式)とすることで、転てつ機TM側の配線変更等をすることなく現場装置10による測定が可能になっている。また、本体部10Aに含まれるデータ処理部12(図2参照)は、上記のような電流値や電圧値あるいはこれから導出される各値のほか、時刻に関するデータを併せて取得する。以上により、例えば、データ処理部12は、転てつ機TMの動作記録として、転換時におけるモータ電圧値、モータ電流値、制御リレー電圧値及び転換時間等の各種データの取得が可能であり、データ処理部12のデータ抽出部12bは、取得可能なこれらの各種データの値、又は、これらの組合せにより算出される値のうちいずれかの変化に基づき異常判別データを抽出する。この場合、転てつ機TMの異常として、特に重要な情報や緊急を要する情報についてデータ収集装置20に取得させることができる。なお、上記において、各種データの組合せとは、各種データの全てを利用した組合せのほか、一部のみを利用した組合せの場合も含むものとする。
【0049】
以下、図7を参照して、現場装置10において保存される各種データやデータ収集装置20へ伝送される各種データ等について説明する。図7のうち、図7(A)は、転てつ機TMにおけるフォーマットデータのうち転てつ機TMの動作に関するデータ部の内容について一例を示すデータ表であり、図7(B)は、転てつ機TMについてデータ収集装置20への伝送対象となる電文フォーマットの一例を示すデータ表である。まず、図7(A)に例示するように、ここでは、連続的に動作する転てつ機TMの転換動作の動的な変化を捉えるため、例えばサンプリング時間を50mm秒単位として、逐次モータ電圧値及び電流値の値を測定している。これらのデータが、転換動作の時刻情報等とともに全てデータ保存部12aに記録される。ここで、上記の場合において、例えば転てつ機TMにおける一回の転換動作に、平均で5.5秒かかるとすると、モータ電圧値及び電流値の値が110回測定されることになる。各値のデータ量が2バイトであり、さらに、時刻に関する情報や、以上の累積回数のデータ及び異常発生の種別の情報のほか、さらに、妨害電流の測定時間等を加味すると、数百バイトから千数百バイト程度の情報量が必要であると考えられる。本実施形態では、これらの情報を数百バイト単位で3つに分割した状態で送信することで、短い通信時間の間に確実にデータ収集装置20へ送信可能となるようにしている。なお、データ収集装置20への電文フォーマットとしては、例えば図7(B)に示すようなものとなっている。
【0050】
以下、図8等を参照して、設備監視システム500の動作の一例について説明する。図8は、設備監視システムの動作の一例について説明するための概念図であり、ここでは、データ収集装置20を搭載した列車TRが、A駅を出発して矢印A1の方向に向かい、B駅に到着するまでの様子について示している。ここでは、図示のように、データ収集装置20との通信の対象となる現場装置10が組み込まれた複数の設備EQが、A駅から近い順に、線路RLに沿って設備EQ1,EQ2,…EQn,…と並んで設置されている。データ収集装置20には、A駅において予めこれらの設置位置すなわち各現場装置10の設置位置の情報が予め記憶されている。さらに、列車TRには、自身の現在地を検知する位置検知装置PDが設けられている。したがって、データ収集装置20は、各現場装置10の設置位置の情報と、列車の現在地の情報と取得可能としており、これらの情報に基づいて、各現場装置10との通信を開始する態様となっている。これにより、データ収集装置20は、複数のデータ収集装置20は、通信を行う際のホストとして、より適切なタイミングで通信動作をおこなうことが可能となっている。つまり、通信可能な範囲内に存在する設備EQを特定して、これらに対して応答を呼びかける態様とすることができる。なお、位置検知装置PDについては、種々の態様が考えられるが、例えばGPS機能を有するものや、列車TRの車輪の回転数に基づき移動距離を測定するもの等が想定される。
【0051】
以下、図9のフローチャートを参照して、上記図8に例示した態様において、設備監視システム500を構成するデータ収集装置20の一動作例について説明する。まず、列車TRがA駅を出発すると、データ収集装置20は、位置検知装置PDを利用して列車TRの位置を検出し(ステップS101)、目的地であるB駅に到着したか否かを確認する(ステップS102)。ステップS102において、B駅に到着していないと判断すると(ステップS102:No)、データ収集装置20は、予め記憶されている各現場装置10の設置位置の情報に基づいて、通信可能範囲内(例えば検出した列車TRの位置から100m以内)に通信の対象となっている設備EQが存在する否かを確認する(ステップS103)。ステップS103において、通信可能範囲内に設備EQが存在しないと判断すると(ステップS103:No)、データ収集装置20は、再び列車TRの位置を検出する(ステップS101)。
【0052】
一方、ステップS103において、通信可能範囲内に設備EQが存在していると判断すると(ステップS103:Yes)、データ収集装置20は、当該設備EQ(現場装置10)に対して、情報要求信号を送信し(ステップS104)、返信確認を行う(ステップS105)。データ収集装置20は、所定時間が経過するまで、情報要求信号の送信と返信確認の動作を継続する(ステップS104~ステップS106)。なお、所定時間が経過しても設備EQからの応答が無い場合(ステップS106:Yes)、データ収集装置20は、当該設備EQが通信不能な状態にあると判断し、その旨の通知として、通信異常通知を行う(ステップS107)。なお、データ収集装置20による通信異常通知の方法や通知先については、種々考えられるが、例えば、携帯通信回線を利用して、保守管理部50のデータ収集サーバ30、さらには、指令部100の管理装置110(図1参照)に対して通知を行うようにすることが考えられる。
【0053】
データ収集装置20は、ステップS105において、情報要求信号に対する返信確認がなされた場合(ステップS105:Yes)、当該データすなわち対応する現場装置10からの異常判別データ及び正常異常記録データで構成される通信データを取得し(ステップS108)、取得したデータのうち現場装置10との直近の通信において取得した最新の異常判別データと、既にデータ収集装置20に蓄積している当該現場装置10についての過去の異常判別データとを比較する(ステップS109)。データ収集装置20は、ステップS109での比較結果に基づき、当該現場装置10に対応する設備EQにおける異常発生の有無を判断する(ステップS110)。例えば異常判別データに含まれる異常の累積回数の変化から異常発生の有無が判断される。
【0054】
ステップS110における判断の結果、該当設備EQに異常が無いと判断した場合(ステップS110:No)、すなわち最新の異常判別データ中において異常回数についての累積数に変化が無く、直近のデータも正常の範囲内である場合、データ収集装置20は、正常である旨の通知をする(ステップS111)。一方、最新の異常判別データから、該当設備EQに異常があると判断した場合(ステップS110:Yes)、データ収集装置20は、異常が発生した旨の通知をする(ステップS112)。なお、ステップS111あるいはステップS112の通知についても、ステップS107の場合と同様、種々の報知の態様が考えられる。
【0055】
なお、ステップS107、ステップS111あるいはステップS112での処理の後、データ収集装置20は、再びステップS101における列車TRの位置検出からの動作を繰り返し、B駅に到着する(ステップS102:Yes)まで、上記動作を繰り返す。
【0056】
なお、以上では、説明を簡単にするため、1つの設備EQあるいはこれに対応する現場装置10とデータ収集装置20との関係で説明したが、データ収集装置20は、既述のように、ほぼ同時期に複数の現場装置10との通信が可能であり、例えば10台の現場装置10との高速な通信を順番に行うことで、実質的に同時並行的な通信が可能である。なお、本実施形態では、既述のように、データ収集装置20をホストとするポーリングアンサー式の応答とすることで、一定のタイミングで現場装置10への問い合わせを行っている。
【0057】
次に、図10(A)のフローチャートを参照して、設備監視システム500を構成する現場装置10における設備EQの動作記録の処理について一例を説明する。ここでは、上記図8に例示した態様における1つの設備EQ(例えば設備EQn)についての処理について説明する。なお、以下では設備EQnが転てつ機であるものとして説明するが、他の設備でも以下の場合と同様の処理がなされる。
【0058】
まず、設備EQnとしての転てつ機に設けられた現場装置10は、設備EQnにおける動作である転換動作すなわちレール切替え(進路切替え)の動作が開始されたか否かの確認を継続する(ステップS201)。ステップS201において、レール切替えの動作開始が確認されると(ステップS201:Yes)、現場装置10のデータ処理部12は、当該動作についての記録を開始する(ステップS202)。データ処理部12のデータ保存部12aにおける動作記録は、レール切替えの動作終了が確認されるまで(ステップS203)、継続する。ステップS203において、レール切替えの動作終了が確認されると(ステップS203:Yes)、データ処理部12のデータ抽出部12bにおける異常判別データの抽出が行われる(ステップS204)。ステップS204の処理が完了すると、設備EQの動作記録に関する一連の処理が終了し、再びステップS201からの動作を継続する。なお、ステップS204での異常判別データの抽出に際しては、併せて記録された動作が異常であるか否かの判定がなされる。このため、例えば現場装置10では、データを取得する対象となっている設備EQにおける動作時の電圧、電流あるいは動作時間といった各数値データについて予め閾値が決められており、当該閾値を超えた値が検出された場合に、異常があったと判断し、累積異常回数のカウント数を1つ増やす処理をする。この場合、データ収集装置20において、異常の累積回数の増加により異常発生有りと判断することが可能になる。また、予め設定された各閾値のうちどの閾値を超えたかについて示すことで、設備EQにおける異常発生の種別の情報を作成することができる。
【0059】
以下、図10(B)のフローチャートを参照して、現場装置10のデータ収集装置20への応答についての一動作例を説明する。現場装置10は、図10(A)のフローチャートを参照して説明した異常判別データの抽出(作成)についての動作を、転てつ機の転換動作ごとに繰り返す一方、データ収集装置20から異常判別データの送信要求があった場合にはこれに応答する動作を行う。すなわち、現場装置10は、通信部13を介して、データ収集装置20からの情報要求信号を受信したか否かの確認を継続し(ステップS301)、情報要求信号の受信が確認されると(ステップS301:Yes)、抽出しておいた正常異常記録データ及び異常判別データをデータ抽出部12bから読み出して(ステップS302)、通信部13を介してデータ収集装置20に送信し(ステップS303)、再びステップS301からの動作を継続する。
【0060】
以上のように、本実施形態に係る設備監視システム500では、現場装置10において、設備EQの動作記録のうちから、直近の異常及び正常に関する記録と異常の累積回数とを含む異常判別データを抽出しておき、当該異常判別データをデータ収集装置20に取得させることで、通信時におけるデータ量を抑えつつ、異常判別に必要なデータの確実な授受を維持でき、メンテナンスに際して人員削減を図り、人手不足を解消できる。さらに、授受するデータ量を抑えることでデータ収集装置20と現場装置10との通信が所定距離内の短い間であっても十分な構成とすることができ、通信設備に掛かる費用が抑えられる。
【0061】
以下、図11等を参照して、データ収集装置20において設備EQにおける異常が確認された後の処理について、一例を説明する。上記態様において、異常が発生した場合であっても、異常の程度によって、早急な対処が必要な場合もあれば、それほどの緊急性を要しない場合もある。上記においては、異常発生の種別によって措置の緊急性を判断することが典型的一例として考えられる。緊急性を要しない場合には、例えば最低限必要なメンテナンス(例えば動作維持のための定期的な機械類の油さし等)の際に併せて当該異常を正常化させるといった態様でもよいと考えられる。一方、急を要するものについては、当該設備を設置した現場に補修人員を直ちに向かわせることになる。ここでは、上記したように、通常の列車運行状態にある営業車による異常判別データの取得を行うモードを営業車モードあるいは通常動作モードと呼ぶものとし、さらに、営業車モードに対して、異常発生の検知に基づき現場に補修人員を向かわせて現場確認を行うモードを現場モードとする。
【0062】
図11は、現場確認を行う現場モードへの切替えについて説明するための概念図である。まず、営業車モード(通常動作モード)においては、図11において矢印C1で示すように、設備EQに設けた現場装置10(通信部13)を介して列車TRに搭載されたデータ収集装置20で異常判別データを取得し、保守管理部50及び指令部100へ伝達される。
【0063】
一方、図11において矢印C2で示すように、指令部100において、異常判別データの内容から緊急性を要するものであり、現場に補修人員を向かわせるべきとの判断がなされると、その旨が当該緊急性を要する設備を管轄下におく保守管理部50に対して伝達され、保守管理部50から設置箇所へ向かって現場確認を行う現場モードへと切り替わる。この際、保守管理部50からは、異常を解消するための要員、すなわち故障を修理するための作業員等が向かうほか、併せて、収集端末20Aが運ばれ、収集端末20Aによって現場装置10に保存されている動作記録に関する全データの取得を可能にしている。収集端末20Aは、例えば携帯型通信端末であり、より具体的には、データ収集装置20そのものであるか、あるいは、データ収集装置20と同様に920MHzの周波数帯での送受信が可能なもの等が適用され、無線通信によって通信部13を介して動作記録のデータの授受を可能としている。なお、現場モードでの無線通信の場合、営業車モード(通常動作モード)での送受信とは異なり通信時間の制約等が無いため、大量のデータ授受が可能である。また、以上の態様について、現場装置10側から言い換えると、データ処理部12のデータ保存部12aは、営業車モード(通常動作モード)から現場モードへ切替えられた場合に、設備EQの動作記録についてデータ収集装置である収集端末20Aに対して未送信であるデータを含む情報を提供するものとなっている。以上のように、現場モードにおいては、異常発生(障害発生)時の詳細データ取得が可能になる。なお、図11において矢印C3で示すように、収集端末20Aで取得した動作記録に関す全データは、保守管理部50及び指令部100へ伝達される。
【0064】
図12は、現場モードにおいて現場確認を行うための現場装置10の一部について、一構成例を示す概念図である。ここでは、図示のように、現場装置10においてモード切替等の各種動作を行うための操作端末OTが、動作をモニタするためのセンサ端末として機能し、特に、操作を受け付けるインターフェースとして機能すべく、設置されているものとする。操作端末OTは、現場モードと通常動作モードとのモード切替等を含む各種モードの切替えのためのモード切替スイッチSW1のほか、現場モードでの各種作業をするための機能を発揮させるために、例えば各種閾値を設定するための閾値設定スイッチSW2や、セグメント表示部SS、異常発生表示ランプLA1、動作確認ランプLA2等を備える。閾値設定スイッチSW2は、各値の測定結果について、異常であるか否かの判断基準となる各種閾値を設定するためのものである。例えば、設備EQが電気転てつ機である場合には、閾値設定スイッチSW2の操作により、転換時における電圧、電流、転換時間の閾値を設定できるようにしておくことが考えられる。また、セグメント表示部SSは、例えば4ケタの7セグメントLEDで構成され、各スイッチSW1,SW2における操作での状況について表示を行う。より具体的には、セグメント表示部SSは、各スイッチSW1,SW2により、モードや電圧、電流等を表示する値を切り替えると、これに応じた内容の表示が可能である。また、セグメント表示部SSにおける表示を、例えば数秒毎に自動で切り換えていく、といった態様とすることも可能である。また、異常発生表示ランプLA1は、例えばLEDランプ等で構成され、現場装置10における異常発生の判別時に表示状態を変更する異常発生表示灯である。表示状態の変更のさせ方については、例えば正常時は滅灯しており異常発生の判別時に点灯する、あるいは、正常時と異常時とで色が変わる、あるいは点滅表示をする等、種々の態様が考えられる。また、動作確認ランプLA2は、例えばLEDランプ等で構成され、操作端末OT自身や操作端末OTが組み込まれた現場装置10さらには設備EQの機能が正常に動作していることを示すためのものである。すなわち、動作確認ランプLA2は、自己の機能の健全性を表示する自己健全性表示灯である。動作確認ランプLA2の表示態様についても、異常発生表示ランプLA1と同様、種々の態様が考えられる。
【0065】
また、操作端末OTは、上記のほか、電源確保のための電源線LL1や、現場装置10の各部と有線あるいは無線による通信を可能とするための通信線LL2、異常を外部に伝達するための警報接点LL3等を備える。なお、警報接点LL3は、例えば現場装置10の測定に際して異常値が判別された場合にOFF(オープン)にして、異常を外部に伝達する。現場モードにおいて現場確認を行う際には、警報接点LL3がOFF(オープン)になっている可能性が高く、現場の作業員によって併せて補修されることになる。また、この場合、警報接点LL3は、現場装置10における異常発生の判別時に異常発生を外部に出力する接点として、異常発生表示ランプLA1とともに動作する。
【0066】
なお、操作端末OTについては、種々の構成が考えられ、例えば本体部10A(図5等参照)の一部として組み込まれてもよいが、例えば通信部13(図1等参照)と同様に、設備EQの本体部分から外部へ配線により接続する構成とすることで、現場確認のための各種動作をしやすいようにする、あるいは通信部13と一体型とする、といった態様が考えられる。また、図示を省略するが、現場モードでのデータの収集については、上記した収集端末20Aによる無線通信でのデータ収集のほかにも、例えばメディアを入れるスロットを操作端末OTに設け、メディアを入れると自動的に保存するような態様としてもよい。
【0067】
以下、操作端末OTの利用に関する一態様として、設備EQの1つである転てつ機TMの現場装置10(図5等参照)に操作端末OTが組み込まれた場合について説明する。
【0068】
この場合、まず、閾値設定スイッチSW2は、異常判別の基準となる閾値の設定入力を受け付ける入力受付部として機能する。より具体的には、閾値設定スイッチSW2は、転てつ機TMにおける測定されるべき値として、例えば転換時におけるモータの電流値や電圧値やこれらに付随する時刻に関するデータ等の各測定値について、正常・異常の判断基準となるべき各種閾値の設定を受け付ける。また、各種閾値の設定に際して、セグメント表示部SSは、閾値設定スイッチSW2で受け付けた設定値を表示する設定値表示部として機能する。
【0069】
なお、上記閾値に基づいて現場装置10において異常であるとの判別がなされた場合には、すなわち異常発生の判別時には、異常発生表示灯としての異常発生表示ランプLA1が作動して表示状態を変更し、また、警報接点LL3が作動して異常発生を外部に出力する。また、上記のような異常発生の判別時を含めた全ての動作期間において操作端末OTを含めた現場装置10の動作さらには転てつ機TMの動作が正常であるか否かが、動作確認ランプLA2により確認できる。
【0070】
また、操作端末OTを含む転てつ機TMにおいて、種々の測定モードを設定しておき、測定モードごとにおける各測定値を表示可能にしてもよい。以下、転てつ機TMにおける各種測定モードについての一例を説明する。まず、転てつ機TMは、通常の列車運行状態にある通常動作モードにおいては、動作記録として、転換時におけるモータ電圧値、モータ電流値、制御リレー電圧及び転換時間あるいは転換時間内での各値の最大値及び最小値等の各種データの取得をする。ここでは上記のような通常時の測定を、通常動作モードにおける一態様としての通常測定モードでの測定とする。これに対して、例えば現場確認を行う現場モードにおいては、上記のような通常の態様とは異なる測定を行いたい場合もある。典型例としては、転てつ機TMにおけるすべり電流の測定を行うことが考えられる。ここでは、すべり電流の測定を行うモードを、現場モードにおける一態様としてのすべり電流測定モードとし、モード切替スイッチSW1において、通常測定モードとすべり電流測定モードとの切替えが可能であるものとする。
【0071】
以下、すべり電流の測定について説明する。まず、前提として、転てつ機TMにおいて、例えば基本レールとトングレールとの間に異物が挟まる等によって転てつ機TMの動作が妨害された際に、電動機が回転を続けるのに対して、モータ焼損を保護するためクラッチが滑るようになっている。この際に流れる電流をすべり電流と呼ぶ。上記すべり電流を測定することにより、転てつ機TMにおいて電動機やクラッチの特性が変わっていない(正常である)ことが確認できる。このため、すべり電流の測定については、例えば定期点検の項目に含むようにしておく等が考えられる。本実施形態では、例えば現場モードにおいて、すべり電流測定モードに設定可能することで、現地でのすべり電流の測定が可能になっている。
【0072】
なお、すべり電流の測定については、電流を安定させるため、妨害開始から一定時間後に測定することと定められている。したがって、すべり電流の検査では、例えば、現地でレール間にスパナ等を挟み、一定時間後の電流を測定する、といった方法をとることが考えられる。ここではさらに、すべり電流測定モードにおいては、通常測定モードにおける測定の場合と比べて、サンプリング時間と測定時間を変更した測定を行っている。例えば、通常測定モードでは、転換データの測定について、サンプリング時間を50mm秒単位、測定時間を16.5秒とするのに対して、すべり電流測定モードでは、サンプリング時間を300mm秒単位、測定時間を90.0秒とする。これにより、測定における省力化を図ることができる。
【0073】
また、ここでは、選択されたモードでの測定結果としての各測定値を、測定値表示部としてのセグメント表示部SSにおいて、選択式固定(例えば電流のみ、電圧のみ等)で、あるいは、順番に表示するようにしてもよい。すなわち、セグメント表示部SSが、転てつ機TMによる転換時において測定されたモータ電圧値やモータ電流値等の各測定結果を、例えば数秒ごとに、予め定められた順に表示していく、といった態様としてもよい。
【0074】
以上の場合、転てつ機TMは、操作端末OTにより、複数の測定モードから選択された一の測定モードにおける各測定値を順番に表示することができる。
【0075】
さらに、操作端末OTにおいて、蓄積した異常データの異常発生の種別を履歴順に表示するようにしてもよい。具体的には、例えばモード切替スイッチSW1において、異常履歴を表示させるための異常履歴表示モードへの切替えが可能であるようにしておき、異常履歴表示モードが選択された場合に、異常履歴表示部としてのセグメント表示部SSにおいて、異常発生の種別を履歴順に表示させることが考えられる。この場合も、例えば数秒ごとに、最も新しい直近の異常発生の種別から順に、過去に発生した異常発生の種別を表示していく、といった態様とすることが考えられる。
【0076】
なお、セグメント表示部SSにおける各測定値の表示や異常発生の種別あるいは履歴の表示については、測定値の種類や異常発生の種別を示す符号等を予め定めておき、また、セグメント上において測定値や異常発生の種別、測定値の種類や履歴数を示す位置等を予め定めておくことが考えられる。
【0077】
また、上記では、種々の表示をセグメント表示部SSにおいて行うものとしているが、これに限らず種々の態様で表示を行うようにしてもよい。また、上記では、セグメント表示部SSを、閾値についての設定値を表示する設定値表示部のみならず、測定モードにおける各測定値を表示する測定値表示部、さらには、異常発生の種別を履歴順に表示する異常履歴表示部としても利用しているが、例えば複数の表示部を用意して、目的に応じて別々に表示させる態様としてもよい。
【0078】
また、上記では、設備EQの1つとして転てつ機TMを例示したが、他の設備EQについても、設備EQの属性に応じて、測定内容を種々変更することで、同様の態様とすることが考えられる。
【0079】
〔第2実施形態〕
以下、図13を参照して、第2実施形態に係る設備監視システムあるいは設備監視システムに適用可能な設備としての軌道回路について一例を説明する。
【0080】
本実施形態に係る軌道回路及びこれを含む設備監視システムは、第1実施形態で例示した設備監視システムの変形例であり、軌道回路の詳細を除いて、第1実施形態の場合と同様であるので、設備監視システムの全体に関する説明は省略し、軌道回路についてのみ説明する。
【0081】
図13(A)は、本実施形態に係る設備EQとしての軌道回路TCを動作させる制御装置CEについて一構成例を示す概念的な平面図である。言い換えると、図1に示す設備EQとしての軌道回路TCについて詳細な一例を示しているとも言える。また、図13(B)は、測定対象である軌道回路電圧の様子を概念的に示すグラフである。図13(B)において横軸は時間、縦軸は軌道回路電圧の値となっている。
【0082】
図13(A)に示すように、本実施形態に係る軌道回路TCは、制御装置CEの各部を収納する筐体SC内において、各部を動作させるための電源部PSのほか、データ処理部12、あるいは各種動作を司る制御盤CN等を備える。データ処理部12は、各種データの処理を行う主要部PPの一部として、異常判定に関するデータ処理を行う異常判別データ処理部PP1を有し、異常判別データ処理部PP1において、データ収集装置20に対して送信すべき異常判別データの抽出を行う。抽出された異常判別データ及び正常異常記録データ(異常及び正常に関する記録)は、異常判別データ保存部PP2に格納されている。以上のように、ここでは、異常判別データ処理部PP1と異常判別データ保存部PP2とが協働して、異常判別データを抽出するデータ抽出部として機能している。異常判別データ保存部PP2から通信端末である通信部13を介して異常判別データ及び正常異常記録データで構成される通信データが、データ収集装置20に送信される。
【0083】
ここで、データ抽出部としての異常判別データ処理部PP1は、図13(B)のグラフに示すように、軌道回路TCの動作記録のうち、軌道回路電圧の立下りデータFD、立上りデータRD及び立下りから立上りまでの間における残留電圧のピーク値PKに基づき異常判別データを抽出している。なお、図13(B)の例示では、図中において、左側の立下りデータFDと、右側の立上りデータRDと、立下りデータFDから立上りデータRDまでの間における残留電圧のピーク値PKとが、同一列車でのデータについての組合せであるものとする。以下、より具体的に説明すると、まず、立下りデータFDは、軌道回路TCの検知区間外から当該検知区間に列車が進入して当該列車の輪軸で電気的に短絡して閉塞されるまでの前後約10秒間について軌道回路電圧の変化を測定したデータである。立上りデータRDは、軌道回路TCの検知区間に存在していた列車が進入して当該検知区間外へ向かい、当該列車の輪軸での電気的な短絡が無くなり閉塞の状態が解除されるまでの前後約10秒間について軌道回路電圧の変化を測定したデータである。残留電圧のピーク値PKは、立下りから立上りまでの間すなわち列車が軌道回路TCに在線している間における軌道回路電圧の変化を測定した際に生じた閾値以上の残留電圧の値についてのデータである。これらのデータ測定については、第1実施形態において図7(A)に例示した場合と同様に、連続的に動作して動的な変化を捉えるべく、例えばサンプリング時間を50mm秒単位として、逐次軌道回路電圧を測定している。なお、これらのデータを、動作の時刻情報等とともに全てデータ処理部12等において記録しておいてもよい。ここで、上記のうち、立下りデータFD及び立上りデータRDについては、直近(最新)の1回分のデータが異常及び正常に関する記録として抽出され、データ収集装置20に送信する正常異常記録データの対象となる。一方、残留電圧のピーク値PKについては、予め定めた閾値を超える電圧が検出された時点のみが抽出され、データ収集装置20に送信する異常判別データの対象となる。以上の判断基準については、例えば立下りデータFD及び立上りデータRDのそれぞれについて、十分電圧が下がっているか、あるいは、上がっているかの基準となる所定の電圧値を閾値としてそれぞれ定め、当該閾値を基準に異常の有無を判断する。あるいは、立下りや立上りの変化の仕方について基準を定めるものとしてもよい。残留電圧のピーク値PKについては、予め定めた閾値を超えたり、さらに、閾値を超えた時間が一定以上続いたりした場合に異常である旨の判定をすることが考えられる。
【0084】
本実施形態においても、軌道回路に関する動作記録のうちから、直近の異常及び正常に関する記録である正常異常記録データと、異常の累積回数を含む異常判別データとを、データ抽出部において抽出しておき、当該異常判別データを通信端末によりデータ収集装置に対して所定距離内において送信し、データ収集装置に取得させていることで、通信時におけるデータ量を抑えつつ、異常判別に必要なデータの確実な授受を維持でき、メンテナンスに際して人員削減を図り、人手不足を解消できる。特に、本実施形態では、動作記録としての立下りデータ、立上りデータ及び立下りから立上りまでの間における残留電圧のピーク値に基づき異常判別データを抽出することで、軌道回路の異常として、特に重要な情報や緊急を要する情報についてデータ収集装置に取得させることができる。
【0085】
〔第3実施形態〕
以下、図14を参照して、第3実施形態に係る設備監視システムあるいは設備監視システムに適用可能な設備としての踏切装置について一例を説明する。
【0086】
本実施形態に係る踏切装置及びこれを含む設備監視システムは、第1実施形態等で例示した設備監視システムの変形例であり、踏切装置の詳細を除いて、第1実施形態等の場合と同様であるので、設備監視システムの全体に関する説明は省略し、踏切装置についてのみ説明する。
【0087】
図14は、本実施形態に係る設備EQとしての踏切装置RCについて一構成例を示す概念的な平面図である。言い換えると、図1に示す設備EQとしての踏切装置RCについて詳細な一例を示しているとも言える。なお、図示では、分かりやすさの観点から、現場装置10を、踏切装置RCを構成する遮断機等の本体部分から引き出して描いているが、現場装置10の組付け態様については、これに限らず種々のものが考えられる。
【0088】
図示のように、また、既述のように、本実施形態に係る踏切装置RCは、踏切装置RC内部における各種処理によってデータ抽出部12bで抽出された正常異常記録データ及び異常判別データを、通信端末である通信部13から送信している。さらに、本実施形態では、踏切装置RCは、一対の踏切制御子(閉電路式踏切制御子)CC1,CC2におけるリレー動作に関するデータの処理を行っている。
【0089】
まず、図14を参照して、一構成例の踏切装置RCについて概要を説明する。図示のように、また、既述のように、踏切装置RCには、現場装置10が付随して設けられており、列車TRに搭載されたデータ収集装置20が距離100mの範囲内にある間において、通信可能になっている。また、現場装置10は、踏切装置RCを構成する一対の踏切制御子CC1,CC2とも接続されており、一対の踏切制御子CC1,CC2におけるリレー動作についてのデータ取得と取得したデータについてのデータ収集装置20への送信が可能となっている。
【0090】
一対の踏切制御子CC1,CC2は、踏切から所定の距離外方に設置され、列車検知によって警報の始動点及び終止点を定めている。図示の例では、踏切制御子CC1が始動点を定め、踏切制御子CC2が終止点を定めている。このため、図に示す各踏切制御子CC1,CC2の配置等についての妥当性は非常に重要であり、各踏切制御子CC1,CC2の制御区間長Ls,Leを算出する必要がある。そこで、本実施形態では、制御区間長Ls,Leの算出を可能とすべく、踏切装置RCの現場装置10において、踏切制御子におけるリレー動作に関する時間データを抽出し、データ収集装置20に対して送信している。より具体的には、時間データとして、まず、列車TRが、踏切制御子CC1の始動点先端Stを通過する時刻を時刻Ts0とし、始動点後端Srを通過する時刻を時刻Ts1とする。また、列車TRが、踏切制御子CC2の終止点先端Etを通過する時刻を時刻Te0とし、終止点後端Erを通過する時刻を時刻Te1とする。これらの時刻Ts0,Ts1,Te0,Te1の情報は、各踏切制御子CC1,CC2を列車TRが通過する際のリレー動作を現場装置10側で検出することで把握できる。
【0091】
以上において、さらに、列車TRの車軸間距離を車軸間距離Ltとし、始動点先端Stから終止点先端Etまでの距離を距離Lとする。ここで、車軸間距離Ltと距離Lとについては、既知であるものとし、また、一対の踏切制御子CC1,CC2の区間を通過する間の列車TRの速度は略一定とみなせることから、この区間での平均速度Vを列車TRの速度とする。この場合、まず、
平均速度V=距離L÷通過時間(Te0-Ts0)…(1)
となり、上式(1)に既知の距離Lと現場装置10での時刻の検出結果を代入して、平均速度Vが算出される。さらに、
始動点制御区間長Ls=V×通過時間(Ts1-Ts0)-車軸間距離Lt…(2)
終止点制御区間長Le=V×通過時間(Te1-Te0)-車軸間距離Lt…(3)
となり、上式(1)から算出された平均速度Vを利用すれば、上式(2)、(3)から制御区間長Ls,Leを算出できる。すなわち、時刻Ts0,Ts1,Te0,Te1の情報から制御区間長Ls,Leが算出できる。なお、通信時間の僅かな違いが、制御区間長の算出結果に大きな影響を与えるので、例えば通過時間(Te1-Te0)、通過時間(Ts1-Ts0)の値は、個別の時刻Ts0,Ts1,Te0,Te1から算出するよりも、差分をデータとすることで、さらに望ましい結果の取得(精度の高い算出)が期待される。
【0092】
本実施形態においても、踏切装置に関する動作記録のうちから、直近の異常及び正常に関する記録である正常異常記録データと、異常の累積回数を含む異常判別データとを、データ抽出部において抽出しておき、当該異常判別データを通信端末によりデータ収集装置に対して所定距離内において送信し、データ収集装置に取得させていることで、通信時におけるデータ量を抑えつつ、異常判別に必要なデータの確実な授受を維持でき、メンテナンスに際して人員削減を図り、人手不足を解消できる。特に、本実施形態では、動作記録として、踏切制御子におけるリレー動作に関する時間データを抽出し、通信端末が、データ収集装置に対して時間データを送信することで、踏切制御子の位置についての妥当性を判断するためのデータ取得が可能になる。
【0093】
〔その他〕
この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0094】
まず、上記では、動作記録を取得する対象である線路に沿って設置される設備EQを、転てつ機、軌道回路及び踏切装置としているが、これに限らず、種々の設備を対象とし、異常発生を検出できる。
【0095】
また、上記のうち、第3実施形態において、踏切装置CRに設けた現場装置10からデータの送信をしているが、例えば踏切制御子において独自に現場装置10を設けて送信を行うものとしてもよい。
【0096】
また、上記では、データ収集装置20と各現場装置10との間での通信において、予めデータ収集装置20側で各現場装置10の設置位置を把握している場合について説明したが、各現場装置10の位置情報を有しない構成としてもよい。例えばA駅からB駅の間に存在する全ての現場装置10に対してデータ収集装置20が一定のタイミングで順番に問い合わせをするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0097】
10…現場装置、10A…本体部、11…データ受付部、12…データ処理部、12a…データ保存部、12b…データ抽出部、13…通信部、20…データ収集装置、20A…収集端末、30…データ収集サーバ、40…表示装置、50…保守管理部、100…指令部、110…管理装置、500…設備監視システム、A1…矢印、C1-C3…矢印、CB1,CB2…ケーブル、CC…通信可能範囲、CC1,CC2…踏切制御子、CE…制御装置、CL1,CL2…測定部、CN…制御盤、CR…踏切装置、DT1…データ、DT1a…正常データ蓄積領域データ、DT1b…異常データ蓄積領域データ、DV1~DV3…分割データ、EQ,EQ1,EQ2,EQa,EQn…設備、Er…終止点後端、Et…終止点先端、FD…立下りデータ、JD1…通信データ、L…距離、LA1…異常発生表示ランプ、LA2…動作確認ランプ、LL1…電源線、LL2…通信線、LL3…警報接点、Le…終止点制御区間長、Ls…始動点制御区間長、Lt…車軸間距離、MC…主制御部、NT…ネットワーク回線、OT…操作端末、PD…位置検知装置、PK…ピーク値、PP…主要部、PP1…異常判別データ処理部、PP2…異常判別データ保存部、PS…電源部、RC…踏切装置、RD…立上りデータ、RL…線路、SC…筐体、SS…セグメント表示部、SW1…モード切替スイッチ、SW2…閾値設定スイッチ、Sr…始動点後端、St…始動点先端、TC…軌道回路、TM…転てつ機、TMc…機内回路、TMm…モータ部、TR…列車、Ts0,Ts1,Te0,Te1…時刻、V…平均速度
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