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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】ギア部品
(51)【国際特許分類】
   F16H 55/17 20060101AFI20221025BHJP
   F16H 55/06 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
F16H55/17 Z
F16H55/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018228359
(22)【出願日】2018-12-05
(62)【分割の表示】P 2018148258の分割
【原出願日】2018-08-07
(65)【公開番号】P2019039563
(43)【公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2017153305
(32)【優先日】2017-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】517278886
【氏名又は名称】株式会社ミタカ電子
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(72)【発明者】
【氏名】小林 健一
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】実開平1-102557(JP,U)
【文献】独国実用新案第202014100830(DE,U1)
【文献】実開昭62-59356(JP,U)
【文献】特開2009-41683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/17
F16H 55/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯部および歯部を支持する支持部を有する、円環状の金属製ギア部品であって、
支持部の周全体にわたってその外側に歯部が複数設けられており、
支持部の円環内面にギアの幅方向に沿って溝部が複数均等に設けられており、
溝部は、1つの歯部、または隣接する2もしくはそれより多くの歯部当たり少なくとも1つの割合で存在し、
各溝部は、支持部において歯部が存在する位置に対応するように形成され、
溝部の溝底が歯底円を越えてその外側に位置することによって、溝部が歯部に食い込んでおり、
それぞれが一方の歯面のピッチ点と他方の歯面の歯底点とを結ぶ2本の直線の交点より外側に溝部の溝底が位置しておらず、
溝部の断面形状は、歯部の形状と相似関係にあることを特徴とするギア部品。
【請求項2】
溝部の数は歯部の数と同じであり、各溝部は、各歯部の内側に存在することを特徴とする、請求項1に記載のギア部品。
【請求項3】
歯部を有する円環状の金属製外周部と、金属製中心部とを有し、金属製外周部と金属製中心部との間に樹脂部が存在するギアであって、
歯部は、金属外周部の周全体にわたってその外側に複数設けられており、
金属外周部は、その円環内面にギアの幅方向に沿って溝部を複数均等に有し、
溝部は、1つの歯部、または隣接する2もしくはそれより多くの歯部当たり少なくとも1つの割合で存在し、
各溝部は、金属外周部において歯部が存在する位置に対応するように形成され、
溝部の溝底が歯底円を越えてその外側に位置し、
それぞれが一方の歯面のピッチ点と他方の歯面の歯底点とを結ぶ2本の直線の交点より外側に溝部の溝底が位置しないことを特徴とするギア。
【請求項4】
溝部の数は歯部の数と同じであり、各溝部は、各歯部の内側に存在することを特徴とする、請求項に記載のギア。
【請求項5】
溝部の断面形状は、矩形または等脚台形であることを特徴とする、請求項またはに記載のギア。
【請求項6】
溝部の断面形状は、歯部の形状と相似関係にあることを特徴する、請求項3~5のいずれかに記載のギア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギアに関する。特に、本発明は、金属と樹脂とを用いた、軽量化されたギアを製造するためのギア部品およびそれを用いたギアに関する。
【背景技術】
【0002】
ギアは、種々の機械装置に用いられている。代表的な用途としては、産業用ロボット、自動車、大型または小型の各種産業機械、精密機器、玩具等が挙げられる。特に産業用ロボット用ギア、産業機械用ギア、自動車用ギア等は、高い強度を有することが求められる。このようなギアとして、一般的には金属で形成されたギアが用いられている。例えば特許文献1には、全体が鉄鋼で形成されたギアが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-66336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の省エネルギー化の推進により、消費エネルギーを低減するために、各部品の軽量化が求められている。ギアについても例外ではなく、より軽いギアが求められている。さらに、産業用ロボットでは、スムーズな動きのためには、関節に用いられるギアの軽量化が有効であるという観点からも軽量化が求められている。自動車分野においては、電気自動車に対する需要が高まっており、走行距離を伸ばすために、各部品の軽量化が推し進められている。
【0005】
本発明者は、ギアの軽量化について検討し、ギアに樹脂材料を用いることにより、軽量化が図れることに気付いた。しかしながら、樹脂材料から形成されたギアは、強度を高めることが難しい。強度が低いと、特にギアに高負荷がかかる場合の信頼性および安全性に問題が生じ得る。例えば、手術用ロボットなどでは強度が低いと、動きに誤差が生じたり、自動車のトランスミッション用ギアなどでは、大きなトルクを受けるため強度が低いと、不具合を誘発する懸念がある。
【0006】
本発明は、高い強度を保持しつつ、軽量化を可能にするギアを提供することを目的とする。即ち、十分な強度を有する軽量なギアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討した結果、少なくともギアの外周部と中心部を金属で形成し、他の部分の少なくとも一部を樹脂材料で形成することにより、ギアの強度を保ちつつ、軽量化することができることを見出し、本発明に至った。
【0008】
本発明の第1の要旨によれば、歯部を有する、全体として円環状の金属製外周部と金属製中心部とを有し、該外周部と該中心部の間に、樹脂部が存在するギアが提供される。特に好ましい態様では、外周部はその円環内面に均等に複数の溝部を有する。
【0009】
本発明の第2の要旨によれば、歯部および歯部を支持する支持部から成るギア部品であって、全体として円環状であり、金属から形成されている、ギア部品が提供される。特に好ましい態様では、支持部は円環状であり、その円環内面に均等に複数の溝部を有する。このギア部品は、本発明のギアを製造するに際して使用でき、ギア部品は、金属製外周部として機能する。
【0010】
本発明の第3の要旨によれば、歯部および歯部を支持する支持部、中心部および支持部と中心部とを連結する連結部から成るギア部品であって、支持部が全体として円環状であり、全体が金属から形成されている、ギア部品が提供される。このギア部品は、本発明のギアを製造するに際して使用でき、ギア部品は、金属製外周部として機能する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ギアの外側、即ち外周部と、ギアの内側、即ち中心部を金属で形成することにより強度を確保することができ、他の部分を樹脂で形成することにより、軽量化が可能となる。従って、本発明によれば、高強度と軽量化を両立したギアを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一の実施形態におけるギア1aの模式的斜視図である。
図2図2は、本発明の一の実施形態におけるギア1aの外周部2および中心部3の模式的斜視図である。
図3図3は、本発明の一の実施形態におけるギア1aの樹脂部4の模式的斜視図である。
図4図4は、本発明の一の実施形態におけるギア1bの模式的斜視図である。
図5図5は、本発明の一の実施形態におけるギア1bの外周部2および中心部3の模式的斜視図である。
図6図6は、本発明の一の実施形態におけるギア1cの模式的斜視図である。
図7図7は、本発明の一の実施形態におけるギア1cの外周部2および中心部3の模式的斜視図である。
図8図8は、図7のギアの外周部2の一部分を拡大した模式的平面図である。
図9図9は、溝部の断面が等脚台形(但し、角部分は面取りされている)を有する場合の歯部を拡大した模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のギアの実施形態について、図面を参照しながらさらに説明する。尚、本実施形態のギアおよび各構成要素の形状および配置等は、図示する例に限定されない。
【0014】
(実施形態1)
本実施形態のギア1aの斜視図を図1に、該ギア1aの金属部分の斜視図を図2に、該ギア1aの樹脂部分の斜視図を図3に模式的に示す。
【0015】
図1図3に示されるように、本実施形態のギア1aは、円環状の外周部2、円環状の中心部3および、該外周部2と中心部3の間に位置する樹脂部4を有して成る。本発明のギアは、外周部2と中心部3が金属から形成されることにより、高い強度を有し得る。高い強度を有することにより、強度が求められる機械装置、例えば自動車のトランスミッションにおける使用が可能になる。また、外周部2と中心部と3の間を金属ではなく、樹脂で構成することにより、ギアの重量を低減することができ、かかるギアを用いる機械装置の軽量化に寄与し得る。
【0016】
上記外周部2は、金属製である。外周部を構成する金属としては、強度に優れた金属が好ましく、例えば鉄、または鉄の合金、例えば鋼鉄が挙げられる。好ましい態様において、外周部2は、鋼鉄、好ましくはS45Cから形成される。
【0017】
上記外周部2は、ギアの歯部5を、その円環外面に有する。即ち、上記外周部2は、歯部5および歯部5を支持する支持部8を有するギア部品である。ここに「支持部」とは、円環外面20と円環内面21との間の部分をいう。「円環外面」とは、歯底円22により規定される面(即ち、隣接する歯部によってその間に規定される歯底23を含む、外周部の仮想的な面)であり、「円環内面」は、下記する凸部および突出部が存在しないとした場合の、外周部2の内側面をいう。即ち、支持部8は、円環外面20および円環内面21により規定される円環部分25に相当する。
【0018】
上記外周部2において、ギアを構成する歯部5の数、ピッチ、高さ(歯たけ)、幅等は、目的とするギアの用途に応じて適宜設定することができる。
【0019】
上記支持部8の厚みは、特に限定されず用途に応じて適宜選択することができるが、例えば0.5mm以上20.0mm以下、1.0mm以上10.0mm以下、または3.0mm以上8.0mm以下であり得る。支持部の厚みをより大きくすることにより、強度をより高めることができる。また、支持部の厚みをより小さくすることにより、ギアの重量をより低減することができる。
【0020】
上記外周部2の幅w1(ギアの軸方向の長さ)は、特に限定されず用途に応じて適宜選択することができるが、例えば0.5mm以上30.0mm以下、3.0mm以上30.0mm以下、5.0mm以上20.0mm以下、または10.0mm以上15.0mm以下であり得る。
【0021】
上記外周部2の円環外面の直径は、特に限定されず用途に応じて適宜選択することができるが、例えば、1.0mm以上250.0mm以下、10.0mm以上250.0mm以下、15.0mm以上200.0mm以下、または20.0mm以上150.0mm以下であり得る。
【0022】
上記外周部2は、その円環内面に、凸部6を有する。本実施形態において、凸部6は、ギアの中心方向に向かって突出しており、外周部2の幅全体にわたって均等に、例えば等間隔または等角度で、設けられている。外周部の円環内面に凸部を設けることにより、外周部2と樹脂部4の円周方向のずれを防止することができる。これにより、より強い力でギアを回転させることが可能になる。
【0023】
尚、本実施形態において、凸部6は、図示するように、外周部2の幅全体にわたって設けられているが、これに限定されず、幅の一部、例えば幅の30%以上98%以下の領域、または50%以上90%以下の領域に設けられていてもよい。
【0024】
本実施形態において、上記凸部6は、外周部2の円環内面に均等に、即ち120°間隔で3つ設けられている。このように凸部を複数個設け、これらを均等に配置することにより、外周部2と樹脂部4の円周方向のずれをより効率的に防止することができる。ここに「均等」に凸部を設けるとは、各凸部の中央から外周部の中心に直線を引いた場合、隣接する2つの直線がなす角度がすべて実質的に等しいことを意味する。
【0025】
尚、本発明において、凸部の数は、特に限定されず、好ましくは、1個以上8個以下、より好ましくは2個以上6個以下、さらに好ましくは3個以上5個以下、さらにより好ましくは3個であり得る。尚、凸部は必須の構成ではなく、存在しなくてもよい。
【0026】
上記凸部6の高さは、特に限定されないが、好ましくは、外周部2の中心(即ち、外周部2を規定するの円環の中心)から外周部2の円環内面までの距離の5%以上30%以下の高さ、例えば10%以上15%以下の高さであり得る。一の態様において、上記凸部6の高さは、例えば0.1mm以上20.0mm以下、1.0mm以上20.0mm以下、3.0mm以上10.0mm以下、または3.0mm以上5.0mm以下であり得る。凸部の高さをより高くすることにより、より効率的に外周部2と樹脂部4の円周方向のずれを防止することができる。また、凸部の高さをより低くすることにより、凸部を形成することによるギアの重量増加を抑制することができる。
【0027】
上記外周部2は、その円環内面に、ギアの円周方向に沿った壁状(または襞状もしくは畝状)の突出部7を有する。本実施形態において、突出部7は、ギアの中心方向に向かって突出しており、外周部2の円環内面の全周にわたって、あるいは図示するように等間隔または等角度で部分的に設けられている。外周部の円環内面に突出部7を設けることにより、外周部2と樹脂部4の幅方向のずれを防止することができる。
【0028】
本実施形態において、上記突出部7は、外周部2の円環内面の円周方向で部分的に、合わせて3箇所に設けられているが、本発明はこれに限定されない。例えば、突出部7は、外周部2の円環内面の円周の一部、例えば円周の20%以上80%以下にわたって、30%以上70%以下にわたって、または40%以上60%以下にわたって等間隔もしくは等角度で複数設けてよい。また、突出部は必須の構成ではなく、必ずしも存在しなくてもよい。
【0029】
上記突出部7の高さは、特に限定されないが、好ましくは、外周部2の中心から外周部2の円環内面までの距離の5%以上30%以下の高さ、例えば10%以上15%以下の高さであり得る。一の態様において、上記突出部7の高さは、例えば0.1mm以上10.0mm以下、1.0mm以上10.0mm以下、2.0mm以上6.0mm以下、または3.0mm以上5.0mm以下であり得る。突出部の高さをより高くすることにより、より効率的に外周部2と樹脂部4の幅方向のずれを防止することができる。また、突出部の高さをより低くすることにより、突出部を形成することによるギアの重量増加を抑制することができる。
【0030】
上記突出部7の幅は、外周部2の幅よりも小さい限り特に限定されないが、外周部2の幅の5%以上50%以下の幅w2(ギアの軸方向の長さ)、例えば10%以上40%以下の幅または15%以上30%以下の幅であり得る。一の態様において、上記突出部7の幅は、例えば0.1mm以上10.0mm以下、0.5mm以上10.0mm以下、1.0mm以上8.0mm以下、または2.0mm以上5.0mm以下であり得る。突出部7の幅をより広くすることにより、より効率的に外周部2と樹脂部4の幅方向のずれを防止することができる。また、突出部7の幅をより狭くすることにより、突出部を形成することによるギアの重量増加を抑制することができる。
【0031】
本実施形態において、上記突出部7は、外周部2の円環内面の円周方向にわたって一筋で設けられているが、本発明はこれに限定されない。例えば、突出部は、互いに平行に(必ずしも対向している必要はない)2筋以上、例えば、2、3または4筋設けられていてもよい。突出部7の数を多くすることにより、より効率的に外周部2と樹脂部4の幅方向のずれを防止することができる。
【0032】
上記中心部3は、金属製である。中心部を構成する金属としては、強度に優れた金属が好ましく、例えば鉄、または鉄の合金、例えば鋼鉄が挙げられる。好ましい態様において、中心部3は、鋼鉄、好ましくはS45Cから形成される。
【0033】
好ましい態様において、中心部3を構成する金属材料は、上記した外周部2を構成する金属材料と同じ、例えば鋼鉄である。
【0034】
本実施形態において、上記中心部3は、円環状である。中心部3が円環状であることにより、ギアの強度を確保することが容易となる。
【0035】
上記中心部3の厚みは、特に限定されないが、例えば0.1mm以上10.0mm以下、0.5mm以上5.0mm以下、または1.0mm以上3.0mm以下であり得る。中心部の厚みをより大きくすることにより、強度をより高めることができる。また、中心部の厚みをより小さくすることにより、ギアの重量をより低減することができる。
【0036】
上記中心部3の円環外面の直径は、特に限定されないが、例えば、0.5mm以上100.0mm以下、1.0mm以上100.0mm以下、3.0mm以上50.0mm以下、または5.0mm以上30.0mm以下であり得る。
【0037】
上記中心部3は、その円環外面に、凹部9を有し得る。本実施形態において、凹部9に代えて、中心部3の円環部分を貫通するように孔を設けてもよい。中心部3に凹部または孔を設けることにより、そこに樹脂が入り込んで中心部3と樹脂部4の円周方向のずれを防止することができる。これにより、より強い力でギアを回転させることが可能になる。尚、図3において、貫通孔9により形成される、その孔形状に対応する樹脂の凸部10は図示を省略している。
【0038】
本実施形態において、上記凹部9は、中心部3の環上に均等に、即ち90°間隔で4つ設けられている。このように凹部を複数個設け、これらを均等に配置することにより、中心部3と樹脂部4の円周方向のずれをより効率的に防止することができる。
【0039】
尚、本発明において、凹部の数は、特に限定されず、好ましくは、1個以上8個以下、より好ましくは2個以上6個以下、さらに好ましくは2個以上5個以下であってもよい。また、凹部は必須の構成ではなく、存在しなくてもよい。また、凹部は、中心部3を貫通している必要はなく、窪みとして設けられてもよい。
【0040】
上記樹脂部4は、外周部2と中心部3の間に位置する。従来のギアでは、本発明のギアの樹脂部に相当する部分も金属で形成されていることから、重量が大きくなる。一方、本発明のギアは、樹脂部を設けることにより、従来のギアと比較して重量の低減が可能となる。
【0041】
上記樹脂部4は、樹脂製である。樹脂部を構成する樹脂としては、特に限定されないが、例えば液晶ポリマー(LCP)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)等が挙げられる。耐油性、耐熱性が求められる場合、上記樹脂としてはPEEKが好ましい。
【0042】
上記樹脂部4は円環状である。樹脂部4の円環外面は、外周部2の円環内面の形状に対応した形状を有する。樹脂部4の円環内面は、中心部3の円環外面の形状に対応した形状を有する。樹脂部の円環外面および円環内面を、それぞれ、外周部2の円環内面および中心部3の円環外面の形状に対応させることにより、樹脂部と外周部および中心部間の密着性が向上し、樹脂部と外周部および中心部間のずれを防止することができる。また、樹脂部4と外周部2および中心部3の間に隙間を作らないことにより、ギアの強度がより向上する。
【0043】
(実施形態2)
本実施形態のギア1bの斜視図を図4に、該ギア1bの金属部分の斜視図を模式的に図5に示す。
【0044】
図4図5に示されるように、本実施形態のギア1bは、円環状の外周部2、円環状の中心部3、外周部2と中心部3を連結する連結部11、および、外周部2と中心部3の間に位置する樹脂部4を有して成る。本実施形態のギア1bは、外周部2と中心部3を連結する連結部11を有することにより、より高い強度を有する。
【0045】
上記連結部11は、好ましくは金属から形成される。連結部を構成する金属としては、強度に優れた金属が好ましく、例えば鉄、または鉄の合金、例えば鋼鉄が挙げられる。好ましい態様において、連結部11は、鋼鉄、好ましくはS45Cから形成される。
【0046】
好ましい態様において、連結部11を構成する金属材料は、上記した外周部2および中心部3を構成する金属材料と同じ、好ましくは鋼鉄である。
【0047】
上記連結部11は、別途形成したものを外周部2および中心部3と接合してもよく、あるいは外周部2および中心部3と一体に形成してもよい。より強度を高めることができるので、連結部11は、外周部2および中心部3と一体に形成されるのが好ましい。
【0048】
本実施形態において、上記連結部11は、外周部2の円環内面に均等に、即ち120°間隔で3つ設けられている。このように連結部を複数個設け、これらを均等に配置することにより、ギアの強度をより高めることができる
【0049】
尚、本発明において、連結部の数は、特に限定されず、好ましくは2個以上8個以下、より好ましくは2個以上6個以下、さらに好ましくは3個以上5個以下、最も好ましくは3個であり得る。
【0050】
上記連結部11の形状は、特に限定されないが、中心部3側が相対的に太く、外周部2側が相対的に細い形状であることが好ましい。例えば、図示するように中心部3側が相対的に幅が広く、外周部2側が相対的に幅が狭い形状であることが好ましい。ここに、連結部の幅とは、ギアの軸に垂直であり、かつギアの半径方向に直交する方向の長さまたは幅を意味する。このような形状とすることにより、連結部が占める体積をより小さくしつつ、即ち軽量化の効果を大きくしつつ、高い強度を確保することができる。
【0051】
好ましい態様において、上記連結部11の平面形状は、おおよそ二等辺三角形の頂点がカットされた略台形形状であることが好ましい。連結部11の外周部側の幅(即ち、前記略台形の上底の幅)と中心部3側の幅(即ち、前記略台形の下底の幅)の比は、特に限定されないが、例えば1:10~9:10の範囲、好ましくは3:10~9:10、より好ましくは5:10~8:10の範囲であることが好ましい。ここに、連結部11の外周部側の幅とは、連結部の平面形状(即ち、略台形形状)において、かかる連結部の2つの側面(即ち、略台形形状の2つの脚部)と外周部の円環内面との2つの接点間の距離を意味する。同様に、連結部11の中心部側の幅とは、連結部の平面形状(即ち、略台形形状)において、かかる連結部の2つの側面(即ち、略台形形状の2つの脚部)と中心部の円環外面との接点間の距離を意味する。
【0052】
本実施形態において、外周部2、中心部3および連結部11は、一の部品を構成する。従って、本発明は、歯部および歯部を支持する支持部、中心部および支持部と中心部とを連結する連結部から成るギア部品であって、支持部が円環状であり、全体が金属から形成されているギア部品をも提供する。
【0053】
本実施形態において、連結部11以外の他の部分、外周部2、中心部3および樹脂部4は、上記ギア1aにおけるものと同様であり得る。
【0054】
また、本実施形態におけるギア1bにおいて、上記実施形態におけるギア1aおよび後述の実施形態におけるギア1cの特徴の少なくとも1つを必要に応じて組み合わせてもよい。
【0055】
(実施形態3)
本実施形態のギア1cの斜視図を図6に、該ギア1cの金属部分、即ち、ギア部品の斜視図を模式的に図7に示す。また、図7のギアの外周部2の一部分を拡大して模式的に平面図にて図8に模式的に示す。
【0056】
図6および図7に示すように、本実施形態のギア1cは、円環状の外周部2、円環状の中心部3、および外周部2と中心部3の間に位置する樹脂部4を有して成る。本実施形態の外周部2は、その円環内面21にてギアの幅方向(換言すればギアの厚み方向、図7の矢印Aの方向)に沿った溝部12を有する。樹脂部4は、かかる溝部12の内部にまで延在する。外周部2の支持部8の円環内面21に上記溝部12を設けることにより、外周部2と樹脂部4の円周方向のずれを防止することができる。これにより、より強い力でギアを回転させることが可能になる。尚、溝部12は、図示するように外周部2の幅の全長にわたって、即ち、幅の全長に沿って多数存在するのが好ましいが、幅の一部分に沿って存在してもよい。
【0057】
ギア1cは、円環外面20の周全体にわたって均等に、即ち、円環の中心を基準として等角度で、複数、通常多数の歯部5を有する。歯部の数は、ギアの用途に応じて適宜選択でき、例えば少なくとも20、少なくとも40、少なくとも60またはそれ以上であってよい。溝部12は、円環内面21の全周にわたって均等に、即ち、円環の中心を基準として等角度で、複数存在する。溝部の数は、ギアの用途およびその歯数に応じて適宜選択でき、例えば少なくとも20、少なくとも40、少なくとも60またはそれ以上であってよい。歯部の数と溝部の数は、後述するように必ずしも同じである必要はないが、1つの好ましい態様では、同数であり、図示するように、各歯部の内側に溝部がひとつ存在する。
【0058】
上記溝部12の断面形状(ギアの幅方向に垂直な面での断面形状)は、図8における平面図に関して、ギアの歯部5の断面に沿った形状(即ち、歯部の断面形状と実質的に相似関係にある形状)であるのが好ましいが、別の態様では、沿った形状でないことが好ましく、例えば長方形のような略四角形であることが好ましい。溝部の断面をギアの歯の断面に沿った形状とすると、用途によってはギアの強度が不足する可能性があるが、略四角形とし、歯部の厚みを確保することにより、よりギアの強度が相対的に向上する。また、略四角形とすることにより、外周部2と樹脂部4の円周方向のずれをより防止することができる。
【0059】
外周部2の一部分を拡大して模式的に示す平面図である図8を参照する。溝部12は、詳しくはその断面(そのような断面の1つを図8にて斜線で示す)は、いずれの適当な形状を有してもよく、例えば図示するように間口長さa1、溝底長さa2、奥行き長さbの略四角形を有する。ここで、この断面は、ギアの幅方向Aに対して垂直な断面を意味する。但し、円環内面21に対応する部分24は開放した状態である(即ち、開口であって、辺(または面)24は仮想的である)。溝部12の断面形状に関しては、略四角形であってよく、その場合は、例えば矩形(正方形の場合:a1=a2=b、長方形の場合:a1=a2≠b)、台形(a1<a2、bは任意、特に等脚台形)であってよい。このような形状に加えて、溝部12の断面形状は、三角形(a1は任意、a2≒0)、半円、半楕円等であってもよい。
【0060】
図8に示した態様では、溝部12の断面は、実質的に長方形(a1=a2<b)である。好ましい態様では、溝部12の断面は線対称であり、歯部5の線対称の軸40と溝部12の線対称の軸41とが一致するように、溝部12を歯部5に配置する。このようにすると、歯部5の両側の歯面31および32の強度が同等となるので好都合である。尚、溝部の断面が角部分を有する場合、その部分は面取りされた形状を有してよい。
【0061】
上記溝部12は、好ましくは、ギアの外周部2の歯部5が存在する位置に対応するように(即ち、歯部5の内側に溝部12が位置するように)円環内面21に形成される。換言すれば、上述のように歯部の対称軸と溝部の対称軸とが一致するように構成し、その結果、溝部12が歯部に対して図示するように対向する。
【0062】
本発明は、歯底23が存在する箇所の内側に溝部12を形成する態様(即ち、溝部の対称軸が、隣接する歯部の対称軸の中間に位置する態様)を排除するものではないが、そのような態様では、外周部2の円環部分(上述の支持部8に相当)25の厚さtが溝部の深さb(即ち、奥行き長さb)の分だけ減少し、その結果、外周部2の強度が低下する可能性がある。この強度低下は、円環部分25の厚さtが犠牲になっていることを意味し、場合によっては強度が不十分となるので必ずしも好ましくはない。そのため、強度低下を補うためには、外周部の円環部分25の厚さtを増やす必要がある。厚さの増加は、外周部2の金属量を増やすことになり、最終的にはギアの重量が増加するので好ましくない場合がある。
【0063】
これに対して、外周部2において、歯部5が存在する部分では、外周部2の強度に関して、歯部5があたかも円環部分の一部であるかのように機能できる。具体的には、円環部分25の厚さが減少しても、円環部分としても機能できる歯部5が存在するので、これが外周部の強度低下を抑制または補うことができる。従って、上述のように溝部12の形成箇所を歯部5に対応させると、円環部分25の厚さtの一部分を溝部の深さbに用いたとしても、溝部の外側には残りの円環部分およびその外側の歯部5が存在するので、外周部2の強度を確保することができる。
【0064】
また、溝部12の深さbが円環部分25の厚さtより大きい態様(後述の「食い込む」態様に相当)では、外周部を形成する金属の量が減少するので、ギアの軽量化に好都合である。この場合では、溝部の外側に実質的に十分な歯部5の部分が存在するので、外周部2の強度を適切に確保することができる。この態様では、溝部の間口および溝底ならびに奥行長さ(または食い込み度)の少なくとも1つを可及的に大きくすることにより、外周部の適切な強度を確保しつつ外周部をより軽量にできる。後述のように溝部の数を増やすと、各溝部一つ当たりに作用する力を軽減できるので、それに応じた溝部を構成できる。その結果、溝部の間口および溝底ならびに奥行長さ(または食い込み度)の少なくとも1つをより大きくできる。
【0065】
上述のように、溝部を歯部に対応して形成すると、円環部分の厚さの犠牲を最小限にできる、あるいは補償できるので、溝部形成による外周部2の強度低下を可及的に減らすことができる。このような溝部の形成は、外周部2の円環部分の厚さtを増やす必要がないので、外周部の軽量化、従って、ギアの軽量化に有効である。
【0066】
このように、歯部5に対応するように溝部12を形成することにより、外周部2の強度低下を抑制または補償しながら溝部を形成することが可能となり、および/または(歯底が存在する箇所の内側に溝部12を形成する場合と比べて)溝部の奥行長さより長く形成することが可能になり、外周部2と樹脂部4の円周方向のずれを効率的に防止できる。逆に言うと、溝部の形成によって外周部2の円環部分25の厚みtが過度に薄い部分が形成されることを防止することができ、適切な強度を維持することが容易になる。
【0067】
好ましい1つの態様では、図8に示すように、溝部12は歯部5に食い込むように外周部2が形成され、そのような溝部12にまで樹脂が入り込むように樹脂部4が形成されている。本明細書において、「食い込む」なる態様とは、溝部12の溝底26の位置がギアの歯部5の歯底円27(図8にて点線で図示)の外側に位置することを意味する。食い込みの程度は、溝底26が歯底円27を越えて延在する距離d(「食い込み長さ」と呼ぶ)の歯部5の高さ、即ち、歯たけh(=(歯先円28の直径da-歯底円27の直径df)×0.5)に対する割合(この割合を「食い込み度」と呼ぶ)で表すことができる。即ち、食い込み度=d/hとなる。食い込み度を大き過ぎると、溝部の奥行bが過度に大きくなって溝部と歯先30または歯面31もしくは32との距離(実質的には外周部の肉厚)が小さ過ぎることになって、外周部の強度が不十分になる可能性がある。
【0068】
更に、溝底長さa2が過度に長い場合には、溝部に隣接する歯部5の部分の肉厚(即ち、歯面31または32と溝部12との距離)が小さくなり過ぎ、同様に外周部の強度低下が生じ得る。これに関しては、溝底長さa2の歯部50の歯厚、詳しくは歯部50の基準円29(図8にて一点鎖線で図示)に基づく弦歯厚sに対する割合(=a2/s、「歯底長さ比」と呼ぶ)を考慮することが好ましい。
【0069】
本発明の特に好ましい態様では、溝部12の断面形状は、等脚台形(但し、a1>a2)である。この態様を、1つの歯部の部分を模式的に平面図にて示す図9を参照して詳細に説明する。図示した態様では、歯部5は歯先円28の一部分としての歯先30を有し、その両側には歯底円27から立ち上がっている歯面31および32を有する。図示するように、溝部12の先端部、即ち、溝底26は、歯底円27の外側に位置する。即ち、溝部に溝部が食い込んだ状態になっている。
【0070】
尚、歯部5の歯面(31および32)ならびに溝部の台形の脚部分(33および34)の両端部分は、換言すれば、歯先30および溝底36の両端部分は、面取りされている。図示するように面取りされている場合、実質的に直線である台形の脚部分(33および34)の延長線と実質的に直線である溝底26の延長線との交点p1およびp2間の距離が溝底長さa2に相当する。また、円環内面を規定する円21と脚部分(33および34)の延長線との交点p3およびp4の間の距離が間口長さa1に相当する。また、歯面31および32の延長線と歯底円27との交点p5およびp6(これらの交点を「歯底点」と呼ぶ)を結ぶ直線と溝底26との距離が、実質的に溝底26が歯底円27を越えて延在する長さ、即ち、食い込み長さdに相当する。尚、歯先30における面取りは、可能な範囲で大きい半径で丸くなっているのが好ましい。
【0071】
このように溝部12が等脚台形の断面を有する態様において、溝部12の断面と歯部5の断面形状は実質的に相似関係またはそれに近い関係にあるのが好ましい。ここで、相似関係とは、歯面31および32の延長線と歯先円28との交点p7およびp8間の距離g1とp5およびp6間の距離g2の比は、a2とa1の比に近いか、あるいは実質的に等しいのが好ましい。即ち、この好ましい態様は、数式で表すと、次のようになる:
g1:g2≒(または=)a2:a1
【0072】
このように相似または相似に近い寸法とすると、外周部の肉厚が過度に薄い部分が生じるのを避けることができ、外周部の強度を可及的に均等に確保し易いので好都合である。また、溝部12の過度の食い込みは、溝底26の近傍で外周部2の肉厚が薄くなるので、避けるのが特に好ましい。その目安としては、歯部5のピッチ点p9と歯底点p6を結ぶ直線35と、溝部の他方のピッチ点p10と歯底点p5を結ぶ直線36の交点p11とすると、溝底26は点p11を越えて外側に存在しない形状とするのが好ましく、溝底26が可能な限り点p11に近づくのがより好ましい。溝底26が点p11に可及的に近づくように、溝部12の奥行き長さbおよび溝底長さa2を適切に選択するのが望ましい。
【0073】
ギア1cのいずれの態様にいても、上記溝部12の数は、特に限定されないが、外周部12の周囲で均等に、即ち、外周部の中心に対して等角度に歯部を配置するのが好ましく、溝部の数を複数、好ましくは多くする(例えば溝部の数と歯部の数を同数として、各歯部に1つの溝部を形成する)ことにより、より効果的に外周部2と樹脂部4の円周方向のずれを防止することができる。歯部5の内側に溝部12が位置するように歯部5に対応して溝部12を形成する態様において、特に好ましい態様では、複数の歯数、好ましくは隣接する歯部の数4~10またはそれ以上、例えば5に対して1つの溝部、より好ましくは隣接する歯部の数3または2に対して1つの溝部を均等に設ける。最も好ましい態様では、1つの歯部5に対して少なくとも1つ、通常は1つの溝部を設ける。即ち、各歯部5に対応するように溝部12を設け(即ち、1つの歯部と1つの溝部とが対になり)、その結果、各歯部5はその内側に溝部12を有し、歯部5の数と溝部12に数は同じとなる。この態様において、溝部12が歯部5に食い込んでいるのがとりわけ好ましい。即ち、外周部2と樹脂部4の相対的な円周方向のずれをもたらし得る周方向の力に対して各歯部に設けた各溝部はそれぞれ分担して抗することができるので、各溝部が抗する能力はより小さくてもよい。従って、ある態様では、浅い(即ち、bが小さい)溝部および/または細い(即ち、a1および/またはa2が小さい)溝部の形成で十分である場合もあるので、外周部2の製造が簡単となり、成形による樹脂部4の形成も簡素化できる。
【0074】
上述のように、溝部12に関して、過度に溝底長さa2を大きくすると、溝部に隣接する、外周部2の金属部分の厚さが減り、外周部の強度が不十分になる場合がある。この場合、「溝底長さ比」を適切な範囲内とするのが好ましい。更に、溝の断面形状は、過度に細長過ぎても、過度に太短すぎても、外周部の強度および外周部の重量を考慮すると、好ましくない場合が多い。この場合、溝部の断面形状のアスペクト比(即ち、a1/b)を適切な範囲内とすることが好ましい。また、溝部12が歯部5に過度に食い込み過ぎると、同様に、外周部の強度低下をもたらす恐れがある。この場合、「食い込み度」を適切な範囲内とするのが好ましい。従って、使用する材料にもよるが、一般的には、本発明のギア1cにおいて、特に溝部12の断面形状が矩形または等脚台形であるギアにおいて、溝部12のディメンションおよび歯部5に関連する他のディメンションとの関係で、例えば次の表に示す範囲の割合を有するのが適切である:
【0075】
【表1】
【0076】
好ましい態様において、ギアの歯の表面から溝部までの距離、即ち、歯先と溝底との間の長さは、ギアの用途、ギアを構成する材料に応じて適切に選択できるが、例えば1.0mm以上、好ましくは1.2mm以上、例えば2.0mm以上である。
【0077】
上記溝部の深さ(即ち、奥行き長さb)は、特に限定されず、ギアの用途、ギアを構成する材料に応じて適切な深さを選択できるが、好ましくは、0.5mm以上20.0mm以下、例えば1.0mm以上10.0mm以下、または2.0mm以上5.0mm以下であり得る。溝部の深さをより深くすることにより、より効率的に外周部2と樹脂部4の円周方向のずれを防止することができ、さらによりギアの重量を低減することができる。また、溝部の深さをより浅くすることにより、ギアの強度を保持するのが容易になる。
【0078】
本実施形態において、外周部2の溝部12以外の他の部分、中心部3および樹脂部4は、上記ギア1aまたは1bにおけるものと同様であり得る。
【0079】
また、先と同様に、本実施形態におけるギア1cにおいて、上記実施形態におけるギア1aおよびギア1bの特徴の少なくとも1つを必要に応じて組み合わせてもよい。
【0080】
以上、本発明のギアについて、いくつかの実施形態を示して詳細に説明したが、本発明は上記の実施態様のギアに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々設計変更可能である。
【0081】
例えば、上記実施形態においては、中心部はすべて円環状であったが、これに限定されず、円環の内部が埋まっている形状であってもよい。
【0082】
また、外周部と樹脂部、および中心部と樹脂部のずれを防止するための凸部分および凹部分は、可能な場合には、それぞれ逆の形状、即ち、凹部分および凸部分であってもよい。
【0083】
本発明のギアは、好ましくは、一体成形により製造される。例えば、外周部と中心部を金型に入れ、その後液状の樹脂を流し込み、硬化または固化させることにより得ることができる。一体成形を用いることにより、より精密な構造のギアを、より精度よく製造することができ、これによりギアの強度がより向上する。
【0084】
本発明は、特に限定されないが、以下の態様を開示する。
態様1. 歯部を有する円環状の金属製外周部と金属製中心部とを有し、該外周部と該中心部の間に、樹脂部が存在するギア。
態様2. 前記外周部が、その円環内面に中心方向に突出する凸部を有する、態様1に記載のギア。
態様3. 前記外周部が、その円環内面にギアの円周方向に沿った壁状の突出部を有する、態様1または2に記載のギア。
態様4. 前記外周部が、その円環内面にギアの幅方向に沿った溝部を有する、態様1~3のいずれか1つに記載のギア。
態様5. さらに、前記外周部と前記中心部を繋ぐ金属製の連結部を有する、態様1~4のいずれか1つに記載のギア。
態様6. 前記連結部が、均等に配置されている、態様5に記載のギア。
態様7. 前記連結部が、3本存在する、態様5または6に記載のギア。
態様8. 前記外周部と前記中心部の間全体に樹脂部が存在する、態様1~7のいずれか1つに記載のギア。
態様9. 歯部および歯部を支持する支持部から成るギア部品であって、円環状であり、金属から形成されている、ギア部品。
態様10. 歯部および歯部を支持する支持部、中心部および支持部と中心部とを連結する連結部から成るギア部品であって、支持部が円環状であり、全体が金属から形成されている、ギア部品。
態様11. 前記支持部の円環内面に、中心方向に突出する凸部を有する、態様9または10に記載のギア部品。
態様12. 前記支持部の円環内面に、支持部の円周方向に沿った壁状の突出部を有する、態様9~11のいずれか1つに記載のギア部品。
態様13. 前記支持部の円環内面に、ギア部品の幅方向に沿った溝部を有する、態様9~12のいずれか1つに記載のギア部品。
態様14. 歯部および歯部を支持する支持部を有する、円環状の金属製ギア部品であって、
支持部の周全体にわたってその外側に歯部が複数設けられており、
支持部の円環内面にギアの幅方向に沿って溝部が複数均等に設けられており、
溝部は、1つの歯部、または隣接する2もしくはそれより多くの歯部当たり少なくとも1つの割合で存在し、
各溝部は、支持部において歯部が存在する位置に対応するように形成されている、ギア部品。
態様15. 溝部の数は歯部の数と同じであり、各溝部は、各歯部の内側に存在する、態様14に記載のギア部品。
態様16. 溝部の断面形状は、矩形または等脚台形である、態様14または15に記載のギア部品。
態様17. 溝部の断面形状は、歯部の形状と相似関係にある、態様14~16のいずれかに記載のギア部品。
態様18. 溝部の溝底が歯底円を越えてその外側に位置することによって、溝部が歯部に食い込んでいることを特徴とする、態様14~17のいずれかに記載のギア部品。
態様19. 溝部の食い込み長さの歯部の歯たけに対する割合は10~50%であることを特徴とする、態様18に記載のギア部品。
態様20. それぞれが一方の歯面のピッチ点と他方の歯面の歯底点とを結ぶ2本の直線の交点より外側に溝部の溝底が位置しない、態様19に記載のギア部品。
態様21. 歯部を有する円環状の金属製外周部と、金属製中心部とを有し、該外周部と該中心部との間に樹脂部が存在するギアであって、
歯部は、金属外周部の周全体にわたってその外側に複数設けられており、
金属外周部は、その円環内面にギアの幅方向に沿って溝部を複数均等に有し、
溝部は、1つの歯部、または隣接する2もしくはそれより多くの歯部当たり少なくとも1つの割合で存在し、
各溝部は、金属外周部において歯部が存在する位置に対応するように形成されている、ギア。
態様22. 溝部の数は歯部の数と同じであり、各溝部は、各歯部の内側に存在する、態様21に記載のギア。
態様23. 溝部の断面形状は、矩形または等脚台形である、態様21または22に記載のギア。
態様24. 溝部の断面形状は、歯部の形状と相似関係にある、態様21~23のいずれかに記載のギア。
態様25. 溝部の溝底が歯底円を越えてその外側に位置することによって、溝部が歯部に食い込んでいる、態様21~24のいずれかに記載のギア。
態様26. 溝部の食い込み長さの歯部の歯たけに対する割合は15~40%である、態様25に記載のギア。
態様27. それぞれが一方の歯面のピッチ点と他方の歯面の歯底点とを結ぶ2本の直線の交点より外側に溝部の溝底が位置しない、態様26に記載のギア。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明によれば、適切な強度を有しながらもギアの軽量化が可能であるので、本発明のギアは、種々の機械装置、特に産業用ロボットまたは自動車おいて有用に用いることができる。
【0086】
尚、本願は、日本国特許出願2017-153305号(出願日:2017年8月8日、発明の名称:ギア、出願人:株式会社ミタカ電子)に基づく優先権を主張し、この出願に記載された内容は、ここで参照することによって、本願明細書の一部分を構成する。
【符号の説明】
【0087】
1a,1b,1c…ギア
2…外周部
3…中心部
4…樹脂部
5…歯部
6…凸部
7…突出部
8…支持部
9…凹部
10…凸部
11…連結部
12…溝部
20…円環外面
21…円環内面
22…歯底円
23…歯底
24…溝部開放口
25…円環部分
26…溝底
27…歯底円
28…歯先円
29…基準円
30…歯先
31,32…歯面
33,34…台形の脚部分
35…ピッチ点と歯底点とを結ぶ直線
40…歯部の線対称軸
41…溝部の線対称軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9