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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】回転炉の支持構造
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/20 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
F23G5/20 A ZAB
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018244493
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020106191
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】深澤 大志
(72)【発明者】
【氏名】津乗 充良
(72)【発明者】
【氏名】大竹 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】成澤 道則
(72)【発明者】
【氏名】岩本 典之
(72)【発明者】
【氏名】篠原 良平
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-7979(JP,A)
【文献】特開2002-188890(JP,A)
【文献】特開昭58-213113(JP,A)
【文献】特開昭55-023876(JP,A)
【文献】実開昭52-40570(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の炉本体と、
前記炉本体の径方向外側を囲むタイヤと、
前記炉本体及び前記タイヤのうち一方に相対移動不能に設けられた第1係合部と、
前記炉本体及び前記タイヤのうち他方に相対移動不能に設けられ、前記第1係合部に前記炉本体の径方向に相対移動可能かつ周方向に相対移動不能に係合する第1被係合部と、
を備え、
前記炉本体が、前記第1係合部と該第1係合部に係合した前記第1被係合部とを介して、前記タイヤに支持され
前記第1係合部は、前記炉本体の軸方向に延びるピンであり、
前記第1被係合部は、前記ピンが挿通される長孔であり、
前記長孔は、前記炉本体の径方向に延びている、回転炉の支持構造。
【請求項2】
前記第1係合部は、前記一方に固定された第1部材に設けられ、
前記第1被係合部は、前記他方に固定された第2部材に設けられ、
前記第1及び第2部材は、互いに前記炉本体の軸方向に当接して、前記炉本体に対する前記タイヤの軸方向移動を規制する、請求項に記載の回転炉の支持構造。
【請求項3】
前記第1係合部と、前記第1被係合部と、前記第1部材と、前記第1部材に対して前記炉本体の軸方向の片側から当接する前記第2部材とから構成された支持機構が、前記炉本体の周方向に複数配置されており、
前記複数の支持機構は、前記第2部材が前記炉本体の軸方向の一側から前記第1部材に当接する第1支持機構と、前記第2部材が前記炉本体の軸方向の他側から前記第1部材に当接する第2支持機構とを含む、請求項に記載の回転炉の支持構造。
【請求項4】
前記炉本体及び前記タイヤのうち一方に相対移動不能に設けられた第2係合部と、
前記炉本体及び前記タイヤのうち他方に相対移動不能に設けられ、前記第2係合部に前記炉本体の径方向に相対移動可能かつ周方向に相対移動不能に係合する第2被係合部と、
をさらに備え、
前記炉本体が、前記第2係合部と該第2係合部に係合した前記第2被係合部とを介して、前記タイヤに支持され、
前記第2係合部は、前記炉本体の径方向に延びる凸部であり、
前記第2被係合部は、前記凸部に係合する凹部であり、
前記凹部の内壁面が、前記凸部の側面に対して摺動可能に面接触する、請求項1に記載の回転炉の支持構造。
【請求項5】
前記凸部と前記凹部を画成する部材とが、互いに前記炉本体の軸方向に当接して、前記炉本体に対する前記タイヤの軸方向移動を規制する、請求項に記載の回転炉の支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転炉、特にロータリーキルン炉、回転ストーカ式焼却炉などにおける回転炉の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、回転ストーカ式焼却炉の回転炉として、円筒状の炉本体と、炉本体の入口側と出口側の端部外周に取り付けられたタイヤと、を備えた回転炉を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-114213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転炉では、炉本体の径方向の熱膨張を吸収できるように、炉本体を板バネ材またはスポーク材などを介してタイヤに支持させることがある。しかしながら、板バネ材及びスポーク材は、いずれも構造が複雑で部品点数も多く、回転炉の重量軽減を阻む要因の一つとなっていた。
【0005】
本開示の目的は、回転炉の支持構造を簡素化して、その重量を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様にかかる回転炉の支持構造は、円筒状の炉本体と、炉本体の径方向外側を囲むタイヤと、炉本体及びタイヤのうち一方に相対移動不能に設けられた係合部と、炉本体及びタイヤのうち他方に相対移動不能に設けられた被係合部と、を備える。被係合部は、係合部に炉本体の径方向に相対移動可能かつ周方向に相対移動不能に係合する。炉本体は、係合部と該係合部に係合した被係合部とを介して、タイヤに支持される。
【0007】
上記係合部は、炉本体の軸方向に延びるピンであり、被係合部は、ピンが挿通される長孔であり、長孔は、炉本体の径方向に延びていてもよい。また、係合部は、上記一方に固定された第1部材に設けられ、被係合部は、上記他方に固定された第2部材に設けられ、第1及び第2部材が、互いに炉本体の軸方向に当接して、炉本体に対するタイヤの軸方向移動を規制してもよい。さらに、係合部と、被係合部と、第1部材と、第1部材に対して炉本体の軸方向の片側から当接する第2部材とから構成された支持機構が、炉本体の周方向に複数配置されてもよい。当該複数の支持機構は、第2部材が炉本体の軸方向の一側から第1部材に当接する第1支持機構と、第2部材が炉本体の軸方向の他側から第1部材に当接する第2支持機構とを含んでもよい。
【0008】
また、上記係合部は、炉本体の径方向に延びる凸部であり、被係合部は、凸部に係合する凹部であり、凹部の内壁面が、凸部の側面に対して摺動可能に面接触してもよい。さらに、凸部と凹部を画成する部材とは、互いに炉本体の軸方向に当接して、炉本体に対するタイヤの軸方向移動を規制してもよい。
【発明の効果】
【0009】
上記回転炉の支持構造によれば、構造が簡素化され、その重量が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態にかかる回転ストーカ式焼却炉の概略構成図である。
図2】第1実施形態にかかる回転炉の支持構造を示す図であり、(a)は当該支持構造を炉本体の軸方向からみた図、(b)は(a)のB-B線に沿った断面図、(c)は(a)のC-C線に沿った断面図である。
図3図2の支持構造の作用を説明する図である。
図4】比較例にかかる回転炉の支持構造を示す図であり、(a)は当該支持構造を炉本体の軸方向からみた図、(b)は(a)のD-D線に沿った断面図である。
図5】他の比較例にかかる回転炉の支持構造を示す図であり、(a)は当該支持構造を炉本体の軸方向からみた図、(b)は(a)のE-E線に沿った断面図である。
図6】第2実施形態にかかる回転炉の支持構造を示す図であり、(a)は当該支持構造の支持機構の一つを炉本体の軸方向からみた図、(b)は(a)のF-F線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、いくつかの実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図において実質的に同一の機能を有する要素については、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
<第1実施形態>
図1に示すように、回転ストーカ式焼却炉Sは、回転炉RFを含む。回転炉RFは、円筒状の炉本体1と、炉本体1の径方向外側を囲むタイヤ2と、を備える。以下の説明では、炉本体1の軸方向をz方向、炉本体1の径方向をr方向、炉本体1の周方向をθ方向、回転炉RFの回転方向をR方向と称する。
【0013】
回転炉RFの炉本体1は、カバーケーシング3内に、入口側よりも出口側の方が低くなるように傾斜して横置きされている。タイヤ2は、炉本体1の入口側と出口側の端部外周に取り付けられており、それぞれターニングローラ4上に炉本体1の中心軸周りに回転可能に載置されている。本実施形態では、入口側のタイヤ2を駆動装置で回転させることで、炉本体1を回転駆動させる。
【0014】
炉本体1は、リング状に形成した入口側ヘッダ管5及び出口側ヘッダ管6と、それらの間にθ方向に一定間隔で配置された図示しない多数の水管と、を備える。各水管の両端は、入口側ヘッダ管5と出口側ヘッダ管6とにそれぞれ接続されている。水管同士の間の隙間には、図示しないフィンが取り付けられており、フィンには、長手方向に所定の間隔をあけて多数の空気孔が穿設されている。出口側ヘッダ管6には、ロータリージョイント7が連結されており、これを介してボイラ水を各水管内に循環流通させている。
【0015】
炉本体1の下方には、送風ダクト8が配置されている。送風ダクト8は、炉本体1内の下側側面から各空気孔を通して炉内に燃焼用空気を供給する。送風ダクト8は、複数の流路に分割されている。各分割流路は、各々ダンパ9を備え、ダンパ9の開度調整で燃焼用空気の供給量を調整する。
【0016】
回転ストーカ式焼却炉Sでは、投入ホッパ10内の廃棄物11を給じん機12で炉本体1の入口側から炉本体1内に供給する。供給された廃棄物11は、炉本体1の回転により下流側に移送されつつ、送風ダクト8から供給する燃焼用空気によって、炉内の上流側から順に乾燥、熱分解、燃焼処理される。未燃ガスは、下流の二次燃焼室13で処理される。炉本体1から排出された灰は、後燃焼装置14で処理される。
【0017】
炉本体1は、図2(a)に示すように、複数の支持機構20によってタイヤ2に支持されている。複数の支持機構20は、タイヤ2の延在方向に沿って設けられ、互いにθ方向に所定の間隔をあけて配置されている。なお、図示した例では、支持機構20をθ方向に等間隔で8箇所に配置しているが、支持機構20の個数は、7以下または9以上でもよく、θ方向の間隔は、非等間隔であってもよい。
【0018】
複数の支持機構20は、図2(a)に示すように、第1支持機構21と第2支持機構22とを含む。各支持機構21,22は、図2(b)及び(c)に示すように、タイヤ2に固定された第1部材である第1ブラケット31と、炉本体1に固定された第2部材である第2ブラケット32と、を備える。第1ブラケット31は、z方向に貫通する第1貫通孔31aを有し、第2ブラケット32は、z方向に貫通する第2貫通孔32aを有する。
【0019】
第1貫通孔31aと第2貫通孔32aとには、z方向に延びるピン33が挿通されている。本実施形態のピン33は、例えばクロムモリブデン鋼製の段付きボルトから構成される。段付きボルトは、ボルト頭部33aと、円柱状の大径部33bと、大径部33bよりも先端側に設けられた小径部33cとを備える。大径部33bの長さは、第1ブラケット31のうち第1貫通孔31aが形成された板状部分の厚さt1と、第2ブラケット32のうち第2貫通孔32aが形成された板状部分の厚さt2との和と略等しくなるように設定される。なお、ピン33の形状、材質等は、上記に限定されず、要求される仕様条件に応じて適宜選択することができる。
【0020】
第1ブラケット31の第1貫通孔31a周縁部と、ボルト頭部33aとの間には、座金34が設けられている。また、第2ブラケット32の第2貫通孔32a周縁部と、ナット35との間には、座金36が設けられている。座金36は、段付きボルトの大径部33bと小径部33cとの間に形成された段差部と、小径部33cに締め付けられたナット35との間に挟持されている。ピン33は、第1貫通孔31aに挿通された状態において、タイヤ2に対して相対移動不能に設けられた係合部G1を構成する。また、第2貫通孔32aは、炉本体1に対して相対移動不能に設けられた被係合部G2を構成する。第2貫通孔32aは、r方向に延びる長孔SHであり、ピン33に対してr方向に相対移動可能かつθ方向に相対移動不能に係合する。長孔SHの幅は、ピン33の大径部33bの径より僅かに大きい。長孔SHの長さは、特に限定されないが、ピン33の大径部33bの径の例えば140%程度に設定することができる。
【0021】
図3は、各ピン33から第2ブラケット32の第2貫通孔32a周縁部或いは長孔SHの内側面に伝達される力を模式的に示したものである。図中実線で示したベクトルは、長孔SHの内側面に作用する力である。図中破線で示したベクトルは、長孔SHの内側面に作用する力の鉛直方向成分であり、各第2貫通孔32a周縁部が分担する炉本体1の重量である。即ち、破線で示されたベクトルの和が、当該タイヤ2が支持する炉本体1の重量に対応する。ここで炉本体1の重量は、例えば、炉本体1を構成する水管、ヘッダ管5,6、フィンなどの構造物の重量、炉内に存在する廃棄物11の重量、水管内を流れる冷却水の重量などを含む。
【0022】
各長孔SHは、図3に示すように、炉本体1の中心軸Xに垂直な断面において、それぞれ中心軸Xから放射状に延びている。従って、仮に炉本体1の中心軸Xの位置がタイヤ2の中心軸Yの位置からずれようとしても、複数の長孔SHの中に中心軸の位置ずれの方向と交差する方向に延在するものが必ず存在し、それらにおいて、長孔SHの内側面がピン33の外周面と干渉することになる。例えば、炉本体1が重力によってタイヤ2に対して鉛直下方に移動しようとしても、図3に示すように、複数の長孔SHのうち延在方向が鉛直方向に対して傾斜した状態にあるもの(図3では6箇所)において、長孔SHの内側面がピン33の外周面と干渉する。このピン33と長孔SHとの機械的干渉によって、タイヤ2に対する炉本体1の下方移動が拘束される。換言すれば、炉本体1は、ピン33とこれに係合した長孔SHとを介してタイヤ2に支持される。
【0023】
また、図2(b)に示すように、第1支持機構21では、第2ブラケット32がz方向入口側(z方向一側)から第1ブラケット31に当接する。具体的には、第1ブラケット31の入口側側面31bにおける第1貫通孔31a周縁部と、第2ブラケット32の出口側側面32bにおける第2貫通孔32a周縁部とが、z方向に対向して当接する。一方、第2支持機構22では、図2(c)に示すように、第2ブラケット32がz方向出口側(z方向他側)から第1ブラケット31に当接する。具体的には、第1ブラケット31の出口側側面31cにおける第1貫通孔31a周縁部と、第2ブラケット32の入口側側面32cにおける第2貫通孔32a周縁部とが、z方向に対向して当接する。このように、各ブラケット31,32は、互いにz方向に当接して、炉本体1に対するタイヤ2のz方向移動(位置ずれ)を規制している。
【0024】
さらに、図2(a)に示すように、第1支持機構21と第2支持機構22とは、θ方向に交互に配置されている。即ち、r方向外側からみたとき、第2ブラケット32は、第1ブラケット31に対して千鳥に配置されている。なお、各支持機構21,22のθ方向の並び方は、図示したものに限らず、支持機構21,22は例えば2つずつ交互に配置されてもよい。
【0025】
以下、本実施形態の作用効果について説明する。
【0026】
(1)比較例にかかる回転炉RFの支持構造としては、図4に示すように、炉本体1を複数のスポーク材80を介してタイヤ2に支持したものがある。この支持構造では、各スポーク材80がその両端部においてそれぞれタイヤ2及び炉本体1に揺動可能に連結されており、炉本体1の熱膨張・熱収縮による拡径・縮径変形をスポーク材80の揺動により吸収するようになっている。また、他の比較例としては、図5に示すように、炉本体1を複数の板バネ材90を介してタイヤ2に支持したものがある。この支持構造では、炉本体1の拡径・縮径変形を板バネ材90の弾性変形によって吸収するようになっている。
【0027】
これに対し、本実施形態にかかる支持構造では、タイヤ2に対して相対移動不能に設けられた係合部G1であるピン33と、炉本体1に対して相対移動不能に設けられた被係合部G2である長孔SHとを備えている。長孔SHは、ピン33に対してr方向に相対移動可能かつθ方向に相対移動不能に係合している。そのため、炉本体1の熱膨張・熱収縮による拡径・縮径変形は、ピン33と長孔SHとの間のr方向の相対移動により吸収される。一方、上記のごとく、炉本体1の荷重は、ピン33とこれにr方向に相対移動可能かつθ方向に相対移動不能に係合した長孔SHとを介して、タイヤ2に支持される。
【0028】
従って、本実施形態にかかる支持構造によれば、比較例にかかるスポーク材80または板バネ材90を設ける必要がなくなり、そのため部品点数を減少させて構造を簡素化することができ、支持構造の重量、ひいては回転炉RFの重量を軽減することができる。また、スポーク材80及び板バネ材90を省くことができ、炉本体1の外周面からタイヤ2外周面までの高さ(r方向寸法)を抑えることができる。これにより、タイヤ2の外径寸法に対する炉本体1の外径寸法の比を大きくして、回転炉RFのr方向の最大寸法を抑えつつ炉容積を増大させることができる。
【0029】
(2)また、本実施形態にかかる支持構造では、z方向に延びるピン33が、r方向に長い長孔SHに挿通され、ピン33は、長孔SHの内側面によってθ方向の相対移動を規制されつつ、r方向に相対移動可能となっている。即ち、このピン33及び長孔SHの組み合わせによれば、比較例にかかるスポーク材80または板バネ材90よりも簡易な構造で、炉本体1の熱膨張・熱収縮による拡径・縮径変形を許容しつつ、炉本体1の荷重をタイヤ2に支持させることができる。さらに、本実施形態にかかる支持構造によれば、スポーク材80または板バネ材90よりも構造が簡素化されるため、その施工性、メンテナンス性も向上する。例えば炉本体1からタイヤ2を取り外す際は、ブラケット31,32からz方向にピン33を引き抜き、タイヤ2を、炉本体1に対してθ方向に所定角度だけ回転させてから或いはそのままの姿勢でz方向に移動させればよい。
【0030】
(3)図4に示した比較例にかかる支持構造では、炉本体1が熱膨張または熱収縮によってz方向に伸長または収縮したときの、炉本体1に対するタイヤ2のz方向変位を防止するために、炉本体1の外周面にスラスト受け金物81を設けている。スラスト受け金物81は、図4(b)に示すように、スポーク材80のタイヤ側取付ブラケット83に対してz方向両側からストッパボルト81aを当接させて、炉本体1に対するタイヤ2のz方向移動を阻止している。また、図5に示した他の比較例にかかる支持構造でも同様に、炉本体1の外周面にスラスト受け金物91を設けている。このスラスト受け金物91は、図5(b)に示すように、板バネ材90の取付ブラケット93に対してz方向両側からストッパボルト91aを当接させて、炉本体1に対するタイヤ2のz方向移動を阻止している。
【0031】
これに対し、本実施形態にかかる支持構造では、第1ブラケット31と第2ブラケット32とが、互いにz方向に当接して、炉本体1に対するタイヤ2のz方向移動を規制している。これにより、炉本体1がz方向に伸長または収縮したときの、炉本体1に対するタイヤ2のz方向変位(位置ずれ)を防止する。即ち、本実施形態によれば、ブラケット31,32が、炉本体1の重量の支持金物とスラスト受け金物とを兼ねることができるため、上記比較例にかかるスラスト受け金物81,91を省略することができる。
【0032】
(4)また、本実施形態にかかる支持構造では、支持機構20が、第1支持機構21と第2支持機構22とを含む。そして、第1支持機構21では、第2ブラケット32がz方向入口側(z方向一側)のみから第1ブラケット31に当接し、第2支持機構22では、第2ブラケット32がz方向出口側(z方向他側)のみから第1ブラケット31に当接する。このため、ブラケット31,32の一方を他方に対してz方向両側から当接させる場合よりも、少ない部品で効率良くタイヤ2のz方向移動を規制して、タイヤ2を炉本体1のz方向の伸長及び収縮に追随させることができる。
【0033】
(5)さらに、本実施形態にかかる支持構造では、第1ブラケット31の第1貫通孔31a周縁部と、第2ブラケット32の第2貫通孔32a周縁部とが、互いに面同士で当接してスラスト荷重を受ける。このため、比較例にかかるスラスト受け金物81,91のストッパボルト81a,91aよりも荷重受け面の面圧を低減して、繰り返し荷重に対する耐久性を向上させることができる。
【0034】
なお、本実施形態では、各支持機構20において、第2ブラケット32がz方向の片側のみから第1ブラケット31に当接していたが、支持機構20の一部において、第2ブラケット32は、z方向の両側から第1ブラケット31に当接するようにしてもよい。即ち、第1ブラケット31のz方向の両側に第2ブラケット32を設け、2つの第2ブラケット32で第1ブラケット31を間に挟むようにしてもよい。また、これとは逆に、第1ブラケット31がz方向の両側から第2ブラケット32に当接するようにしてもよい。片側のみから当接させる場合よりも、当該支持機構20におけるスラスト荷重に対する支持剛性を高めることができる。
【0035】
また、ピン33の断面形状は円形に限らない。例えば、ピン33の外周面のうち、ピン33のr方向の相対移動によって長孔SHの内側面と摺接することとなる領域には、接触面圧を低減するべく平坦部を形成してもよい。
【0036】
<他の実施形態>
次に、他の実施形態にかかる回転炉RFの支持構造について説明する。なお、各実施形態の説明では、それぞれ先行する実施形態と異なる構成についてのみ説明することとし、先行する実施形態において既に説明した要素と同じ機能を有する要素については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0037】
なお、以下の実施形態にかかる回転炉RFの支持構造は、第1実施形態と同様に、炉本体1及びタイヤ2のうち一方に対して相対移動不能に設けられた係合部G1と、他方に対して相対移動不能に設けられた被係合部G2を備える。そして、被係合部G2は、係合部G1にr方向に相対移動可能かつθ方向に相対移動不能に係合する。従って、これらの実施形態でも、第1実施形態と同様の効果(少なくとも上記(1)の効果)を得ることができる。
【0038】
<第2実施形態>
第2実施形態にかかる回転炉RFの支持構造では、各支持機構20が、図6(a)に示すように、炉本体1に対して相対移動不能に設けられた係合部G1である凸部41と、タイヤ2に対して相対移動不能に設けられた被係合部G2である凹部42と、を備える。そして、凸部41は、r方向に延びており、凹部42は、凸部41に対してr方向に相対移動可能かつθ方向に相対移動不能に係合する。
【0039】
凸部41は、例えば図6(b)に示すように、r方向と直交する方向に4つの側面を有する。4つの側面は、R方向前側の側面41a(以下、前側面)と、R方向後側の側面41b(以下、後側面)と、炉本体1の入口側の側面41cと、出口側の側面41dとである。
【0040】
凹部42は、例えば図6(a)に示すように、凸部41よりR方向前側に設けられた前側ガイド部材43と、凸部41よりR方向後側に設けられた後側ガイド部材44との間に形成された、r方向に深さを有する溝45である。溝45は、R方向前側の内壁面45aと、R方向後側の内壁面45bとによって画成される。内壁面45aは、前側ガイド部材43のR方向後側の側面により構成され、内壁面45bは、後側ガイド部材44のR方向前側の側面により構成され得る。内壁面45a,45bは、互いに平行であり、かつr方向に平行である。内壁面45a,45b同士の間隔、即ち、溝45の幅は、凸部41の厚さ、即ち、前側面41aから後側面41bまでの幅より大きい。
【0041】
凸部41と凹部42とが係合した状態では、凹部42の内壁面45aが、凸部41の前側面41aに、凹部42の内壁面45bが、凸部41の後側面41bに、それぞれ摺動可能に面接触するようになっている。凸部41のr方向外側先端部と凹部42の底部との間の隙間は、炉本体1が熱膨張・熱収縮する際の、凸部41と凹部42との間のr方向の相対移動を許容し得る大きさに設定される。ガイド部材43,44のr方向内側先端部と凸部41の基部との間の隙間も、同様である。
【0042】
また、本実施形態では、図6(b)に示すように、ガイド部材43,44のz方向出口側(z方向他側)に、それらを互いに連結する板状の連結部材50が設けられている。連結部材50は、例えば、前側ガイド部材43の出口側側面43aと、後側ガイド部材44の出口側側面44aとに、図示しないボルト等の締結部材によって締結固定されている。連結部材50の入口側側面のうち溝45に対向する領域50aは、溝45のz方向出口側の端部を画成している。連結部材50は、その領域50aにおいて、凸部41の出口側側面41dに摺接可能に当接する。即ち、凸部41と、凹部42を画成する連結部材50とが、互いにz方向に当接する。これにより、炉本体1に対するタイヤ2のz方向移動が規制される。
【0043】
なお、図6に示した支持機構20では、ガイド部材43,44のz方向出口側(z方向他側)に連結部材50が設けられていたが、連結部材50とガイド部材43,44との位置関係はこれに限らない。即ち、本実施形態の支持機構20は、ガイド部材43,44のz方向入口側(z方向一側)に連結部材50が設けられた支持機構を含み得る。
【0044】
(5)本実施形態によれば、凹部42の内壁面45a,45bが凸部41の側面41a,41bに対して面接触するため、凸部41と凹部42との間の接触部の接触面圧を低減して、当該接触部の摩耗を抑制することができる。
【0045】
(6)本実施形態によれば、凸部41と、凹部42を画成する連結部材50とが互いにz方向に当接して、炉本体1に対するタイヤ2のz方向移動を規制するため、第1実施形態と同様に、上記比較例にかかるスラスト受け金物81,91を省略することができる。
【0046】
なお、凸部41及び凹部42の形状は、凹部42が凸部41に対してr方向に相対移動可能かつθ方向に相対移動不能に係合し得るものであれば、特に限定されない。例えば、凸部41の形状は、上記板状の他、棒状、管状、方形状などであってもよく、凹部42の形状は、上記溝状の他、穴状などであってもよい。
【0047】
<第3~第6実施形態>
第3実施形態にかかる支持構造では、複数の支持機構20のうちの一部または全部において、第1実施形態にかかるピン33が炉本体1に設けられ、第1実施形態にかかる長孔SHがタイヤ2に設けられる。また、第4実施形態にかかる支持構造では、複数の支持機構20のうちの一部または全部において、第2実施形態にかかる凸部41がタイヤ2に設けられ、第2実施形態にかかる凹部42が炉本体1に設けられる。
【0048】
さらに、第5実施形態にかかる支持構造では、複数の支持機構20が、第1~第4実施形態及びそれらの変形例にかかる支持機構20のいずれか2以上の組み合わせから構成される。さらに、第6実施形態にかかる支持構造では、複数の支持機構20が、第1~第5実施形態及びそれらの変形例にかかる支持機構20のいずれか1以上と、上記比較例にかかる板バネ材90を用いた支持構造との組み合わせから構成される。この第6実施形態では、一部の板バネ材90が当該組み合わせにかかる支持機構20と入れ替わることで、比較例よりも回転炉RFの重量が軽減されることになる。
【0049】
以上、いくつかの実施形態について説明したが、本開示は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0050】
上記実施形態及びそれらの変形例では、回転ストーカ式焼却炉Sの回転炉RFを例にとって説明したが、上記支持構造は、ロータリーキルン炉の回転炉など他の回転炉の支持構造に適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0051】
RF 回転炉
1 炉本体
2 タイヤ
20 支持機構
21 第1支持機構
22 第2支持機構
31 第1ブラケット(第1部材)
32 第2ブラケット(第2部材)
SH 長孔
33 ピン
41 凸部
41a 前側面(側面)
41b 後側面(側面)
42 凹部
45 溝(凹部)
45a,45b 内壁面
50 連結部材(凹部を画成する部材)
G1 係合部
G2 被係合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6