(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】ガラス積層構造体
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20221025BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
C03C27/12 L
C03C27/12 D
C03C27/12 F
B60J1/00 H
(21)【出願番号】P 2018566334
(86)(22)【出願日】2017-06-16
(86)【国際出願番号】 GB2017051773
(87)【国際公開番号】W WO2017216583
(87)【国際公開日】2017-12-21
【審査請求日】2020-06-12
(32)【優先日】2016-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516070575
【氏名又は名称】スウォンジー ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100175477
【氏名又は名称】高橋 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】イン チェン ロー
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー クレイポール
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ベイノン
(72)【発明者】
【氏名】エイフィオン ジュエル
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン サール
【審査官】須藤 英輝
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102173133(CN,A)
【文献】特開2011-218610(JP,A)
【文献】特開2005-170740(JP,A)
【文献】特開2014-075115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/12
B60J 1/00-1/20
B32B 1/00-43/00
B60S 1/00-1/68
H05B 3/84-3/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス積層構造体の製造方法であって、
a)第1のガラスプライおよび第2のガラスプライを提供することと、
b)ナノ粒子含有インクを有する印刷されたポリマープライであって、その少なくとも1つの表面の少なくとも一部に付着したナノ粒子含有インクを有する、印刷されたポリマープライを提供することと、
c)前記第1のガラスプライと前記第2のガラスプライとの間に、前記印刷されたポリマープライを挟むことと、
d)前記印刷されたポリマープライを90℃~160℃の範囲の温度に加熱し、これにより前記ガラス積層構造体を形成するとともに前記ナノ粒子含有インクを焼結することを含み、前記ナノ粒子含有インクが別の焼結工程を経ていない、方法。
【請求項2】
前記90℃~160℃の範囲の温度に加熱する間、前記ガラス積層構造体に1バール~20バールの範囲の圧力をかけることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
印刷されたポリマープライを提供することが、前記ナノ粒子含有インクを用いてポリマープライに印刷することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマープライに印刷することが、ローラー塗装、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、平版印刷、パッド印刷、インクジェット印刷、およびエアロゾル印刷から選択される印刷法を使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ナノ粒子含有インクが、ナノ粒子および少なくとも1つの溶剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記溶剤が、直鎖または分岐鎖C
2
~C
12
アルコール、ポリエーテル、プロピレングリコールおよび水から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記アルコールはイソオクチルアルコールであり、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ナノ粒子含有インクが、10重量%および80重量%のナノ粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のガラスプライと前記第2のガラスプライとの間に前記印刷されたポリマープライを挟む前に、前記ナノ粒子含有インク上に導電性層を析出させる工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
導電性層を析出させることが、電解析出または無電解析出処理によるものである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記導電性層が、銅を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記ナノ粒子含有インクが、導電性ナノ粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ナノ粒子含有インクが、無機ナノ粒子含有インクを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ナノ粒子含有インクが、銀ナノ粒子含有インクを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記印刷されたポリマープライの少なくとも1つの表面の前記印刷された部分が、導電性である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記印刷されたポリマープライの少なくとも1つの表面の前記印刷された部分が、導電性であり、0.005Ω/スクエア~200Ω/スクエアの範囲のシート抵抗を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
加熱前の前記ナノ粒子が、1nm~150nmの範囲の寸法を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記印刷されたポリマープライが、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルアセテート(PVA)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、またはポリエチレンテレフタレート(PET)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記印刷されたポリマープライが、テクスチャ加工されている、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1つのさらなるポリマープライを提供することと、
前記第1のガラスプライと前記第2のガラスプライとの間に、前記印刷されたポリマープライおよび前記少なくとも1つのさらなるポリマープライを挟むことと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記さらなるポリマープライが、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルアセテート(PVA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、環状オレフィンコポリマー(COP)、および熱可塑性ポリウレタン(TPU)から選択されるポリマーを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記印刷されたポリマープライの厚さが、20μm~2000μmの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記印刷されたポリマープライの厚さが、20μm~180μmの範囲である、請求項
1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス積層構造体、ガラス積層構造体の製造方法、およびこのようなガラス積層構造体を備える車両用グレージングに関する。
【0002】
積層されたガラスは、自動車分野および建築分野の両方において、積層されたグレージングを提供するために使用され得る。積層されたガラスは、一般的には、少なくとも1つのポリマー中間層(多くの場合、ポリビニルブチラール(PVB))を備え、ガラスの2つのプライの間に結合される。積層方法は、一般的には、加熱および加圧下で行われ、その後、PVB中間層は光学的に透明になり、ガラスプライに強く付着する。得られた積層体は、単一ユニットとして作用する。
【0003】
ガラスには、特に、単一シートまたは積層体のいずれかで自動車用途において、多くの場合スクリーン印刷され、次いで比較的低い融点のガラスフリットと混合された銀含有インクを使用して、ガラス基板上に焼成され得る導電性特徴部が提供され得る。銀含有インクの印刷および焼成は、ガラス基板の成形または強化中に行われ得る400℃を超える加熱処理を必要とするか、または別の加熱工程を必要とする場合がある。ガラス上に電気回路を印刷するための典型的なインクは、例えば、フレークとして50~83重量%の元素銀、3~6重量%のガラスフリット、および1~12重量%の他の添加剤(例えば、調色改良剤)を含む。ガラスを十分に高い温度に加熱すると、フリットは溶融してガラス表面に融着し、銀フレークまたは粒子が焼結する。
【0004】
湿気の多い、湿った、または寒い気候状態でガラスからの霜の除去を可能にするために、例えば、自動車の後部グレージング上の発熱回路の要素に、導電性特徴部を使用することができる。導電性特徴部はまた、アンテナ、センサ、グレージング照明システム、または母線などの他の機能にも使用することができる。
【0005】
US-A-5,182,431は、直列に接続された3つ以上の発熱可能領域を有する電気抵抗発熱式窓を開示する。これらの領域は、複数の垂直の導電性抵抗フィラメントから成り、電気性発熱システムは周知のスクリーン印刷技術によって窓に取り付けられ得る。
【0006】
WO-A-2008/062229は、改善された耐スクラッチ性を有する自動車用ガラス上に印刷するための改善された導電性インクを開示する。
【0007】
特に、自動車用グレージング上にさらなる電気性特徴部を提供する必要がある。例えば、積層体内に埋め込まれたワイヤを使用して、またはガラス層の内表面のうちの1つに導電性インクを用いて印刷することで、発熱回路を追加的または代替的に設けることができる。
【0008】
GB-A-1,365,785は、発熱のためのワイヤの配列を設けた窓を開示する。EP-A-0 788 294は、発熱のためのワイヤの配列を設けた窓を開示し、このような窓が製造され得る方法も開示する。
【0009】
GB-A-2,372,927は、母線の間で車両窓上に延在する複数の発熱体を備える少なくとも2つの発熱バンクを備える発熱回路を記載し、該発熱体は、ガラス上にスクリーン印刷された耐熱導電性インクまたは積層された車両窓の中間層に接触している導電性ワイヤから形成される。
【0010】
積層されたグレージングに、他の電気性構成部品も使用されている。
【0011】
US-A-2013/0228365は、PET、ポリカーボネート、またはPUであり得るポリマーフィルム上にインクジェット印刷された、導電性メッシュを用いて積層される航空機用グレージングを開示する。導電性メッシュは、除氷または電磁シールド用であり、100Ω/スクエア未満のシート抵抗を有することができる。
【0012】
US-A-2010/0220019は、積層体中のガラス上にスクリーン印刷された導電性インジウム錫酸化物塗装を開示する。印刷厚さは10~250nmであってもよい。
【0013】
US-B-4,443,691は、抵抗層が取り付けられ得るポリエステルフィルムを備える積層体を含む電気発熱式窓を開示する。
【0014】
EP-A-2 574 454は、PETの印刷可能な層およびガラスシート間のPVBの付着層を有する、窓を開示する。ガラスシートの表面に面する印刷可能な層の表面上に、センサやアンテナなどの印刷された電子構造体が設けられる。
【0015】
US-A-2005/238,857は、2つのガラスプライと、ガラスプライの間に積層された回路基板上に取り付けられた1つ以上の発光ダイオードを有し、LEDデバイスを形成するプラスチックプライとを備える、積層されたグレージングパネルを記載する。回路基板は、通常、(例えば、ポリイミドまたはポリエステルの)基板および導電性層(例えば、銅箔または導電性インク)を備える可撓性回路基板である。
【0016】
ガラス積層体上に導電性特徴部を提供するための代替方法を提供する必要が存在する。この必要性に対処することが本発明の目的である。
【0017】
したがって、本発明は、第1の態様において、第1のガラスプライ、第2のガラスプライ、第1のガラスプライと第2のガラスプライとの間に挟まれる印刷されたポリマープライ、および任意に少なくとも1つのさらなるポリマープライを備えるガラス積層構造体を提供し、印刷されたポリマープライは、その少なくとも1つの表面の少なくとも一部に付着したナノ粒子含有インクを含む。
【0018】
このようなガラス積層体は、驚くべきことに、ポリマープライ上に印刷することで、積層体の内表面上に機能的(または装飾的)な印刷を提供するため、有利である。これまでは、インクを首尾よく焼成するために高温処理を必要とするガラス基板上への印刷が必要であると考えられていた。特徴部、例えば導電性特徴部が積層体の内部に印刷され得ることで、積層体の他の表面、特にガラスプライ上に他の特徴部を印刷することが可能になる。これにより、積層されたグレージングのさらなる機能性が提供される。
【0019】
ナノ粒子含有インクは、一般的には、導電性ナノ粒子を含むであろう。
【0020】
好ましくは、ナノ粒子含有インクは、無機ナノ粒子含有インク、より好ましくは銀ナノ粒子含有インクを含む。銀ナノ粒子インクは、ガラス積層構造体、特に例えば、自動車用グレージングに機能性を提供することの大きな利点を、導電性特徴部に提供することを可能にする。導電性であることの利点も有する、他の好ましいナノ粒子材料は、Cu、酸化銅(印刷後に銅に還元することができる)、Pt、Pd、およびAuのうちの1つ以上を含む。
【0021】
したがって、印刷されたポリマープライの少なくとも1つの表面の部分は、導電性であってもよい。印刷されたポリマープライの少なくとも1つの表面の印刷された部分は、好ましくは、0.005Ω/スクエア~200Ω/スクエア、一般的には0.05Ω/スクエア~200Ω/スクエア、より一般的には0.1Ω/スクエア~200Ω/スクエア、最も一般的には0.5Ω/スクエア~200Ω/スクエアの範囲のシート抵抗を有するであろう。
【0022】
一般的には、印刷されたポリマープライは、積層構造体内の少なくとも1つの他のプライに積層されるであろう。少なくとも1つの他のプライは、ガラスプライまたはさらなるポリマープライであってもよい。積層は、良好な接着性を提供し、使用時に、印刷されたポリマー積層体の印刷された部分の保護を確実にする。
【0023】
有利には、ナノ粒子(好ましくは、加熱前)は、1nm~150nm、一般的には1nm~100nm、好ましくは5nm~80nm、より好ましくは8nm~70nm、最も好ましくは10nm~60nmの範囲の寸法を有してもよい。粒子サイズは、様々な方法、例えば動的光散乱によって決定することができる。
【0024】
粒子のこのような寸法は、それらが、ポリマープライと適合する比較的低い温度でさえも焼結が起こり得ることを提供するため、有利である。
【0025】
印刷されたポリマープライは、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルアセテート(PVA)、および熱可塑性ポリウレタン(TPU)、またはポリエチレンテレフタレート(PET)を含むことができる。PVB(PVAおよびTPU)は、ガラスへの良好な積層のため、有利である。PETは、比較的高温での印刷でさえ、特に安定した表面を提供するため、有利である。
【0026】
印刷されたポリマープライは、テクスチャ加工されてもよい。テクスチャ加工された表面は、ポリマープライ表面上に浅い溝を形成することができる。これは、加熱/積層時にインクから放出されるガスのための、かつ、例えば加熱/積層中のポリマープライまたはプライからの可塑剤のための改善された経路を提供するため、有利であり得る。
【0027】
好ましくは、ガラス積層構造体は、少なくとも1つのさらなるポリマープライをさらに備え、さらなるポリマープライが、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルアセテート(PVA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、環状オレフィンコポリマー(COP)、および熱可塑性ポリウレタン(TPU)、好ましくはPVBから選択されるポリマーを含む。
【0028】
したがって、好ましい実施形態において、ガラス積層構造体は、第1のPVBポリマープライ、印刷されたポリマープライ、および第2のPVBポリマープライを備えることができる。印刷されたポリマープライはPETを含むことができる。
【0029】
他の好ましい実施形態において、ガラス積層構造体は、印刷されたPVBポリマープライおよび第2のPVBポリマープライを備えることができる。
【0030】
一般的には、印刷されたポリマープライの厚さは、20μm~2000μmの範囲である。いくつかのポリマー(例えば、PET)では、印刷されたポリマープライの厚さは、20μm~80μmの範囲であり得る。他のポリマー(例えばPVB)では、印刷されたポリマープライの厚さは、200μm~800μmの範囲であり得、PVBのさらなるポリマープライの厚さであり得る。
【0031】
好ましくは、ナノ粒子含有インクは、別個の焼結過程を経ていない。
【0032】
第2の態様において、本発明は、第1のガラスプライ、第1のPVBプライ、第2のPVBプライ、第1のPVBプライと第2のPVBプライとの間に挟まれる印刷されたポリマープライ、および第2のガラスプライを備えるガラス積層構造体を提供し、印刷されたポリマープライは、その少なくとも1つの表面の少なくとも一部に付着したナノ粒子含有インクを含む。
【0033】
第3の態様において、本発明は、第1のガラスプライ、印刷されたPVBプライ、第2のPVBプライ、および第2のガラスプライを備えるガラス積層構造体を提供し、印刷されたポリマープライは、その少なくとも1つの表面の少なくとも一部に付着したナノ粒子含有インクを含む。
【0034】
本発明の第2および第3の態様の任意の好ましい特徴部は、本発明の第1の態様に関して上述したとおりである。
【0035】
本発明の第1および第2の態様に従う、ガラス積層構造体は、積層方法によって作製することができる。
【0036】
したがって、従う本発明は、第4の態様において、a)第1のガラスプライおよび第2のガラスプライを提供することと、b)ナノ粒子含有インクを有する印刷されたポリマープライであって、その少なくとも1つの表面の少なくとも一部にナノ粒子含有インクが付着した、印刷されたポリマープライを提供することと、c)印刷されたポリマープライを第1のガラスプライと第2のガラスプライとの間に挟むこととを含む、ガラス積層構造体の製造方法を提供する。
【0037】
方法は、好ましくは、ガラス積層構造体を、好ましくは80℃~99℃の範囲のプレニップ温度に加熱することをさらに含むであろう。これは、ポリマープライ(例えばPVB)を軟化させる傾向があり、その後の積層工程の前にプライ間の良好な接着を確実にするため、有利である。80℃~99℃の範囲のプレニップ温度が、PVBに特に有用であるが、他のポリマーは、例えば60℃超~200℃の他の有用な温度範囲を有してもよい。
【0038】
任意に、この方法は、80℃~99℃の範囲の温度に加熱する間に、ガラス積層構造体に減圧をかけることをさらに含むであろう。これは、ポリマーおよびインクのガス放出を改善し、気泡形成またはその後の積層不良の可能性を低減するため、有利である。
【0039】
この方法は、好ましくは印刷されたポリマープライを90℃~160℃の範囲の積層温度に加熱し、それにより好ましくはガラス積層構造体を積層し、好ましくはナノ粒子含有インキを同時に焼結することによる積層をさらに含む。本発明の大きな利点のうちの1つは、積層が、この比較的低い温度範囲であっても、ナノ粒子含有インクの焼成/焼結をももたらし、別の焼結工程が一般的には必要とされず、それにより製造効率が改善されることである。
【0040】
任意に、この方法は、90℃~160℃の範囲の積層温度に加熱する間に、ガラス積層構造体に1バール~20バール(100kPa~2000kPa)の範囲の圧力を加えることをさらに含む。
【0041】
この方法は、一般的には、印刷されたポリマープライがナノ粒子含有インクを用いて印刷される工程も含み得る。したがって、好ましくは、印刷されたポリマープライを提供することは、ナノ粒子含有インクを用いてポリマープライに印刷することを含む。
【0042】
ポリマープライを印刷することは、一般に、任意の適切な印刷方法を使用してもよい。したがって、印刷する工程は、ローラー塗装、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、石版印刷、パッド印刷、インクジェット印刷、およびエアロゾル印刷から選択される印刷法を使用してもよい。
【0043】
インクは、一般的には、ナノ粒子および少なくとも1つの溶剤を含むであろう。
【0044】
溶剤は、直鎖または分岐鎖C2~C12アルコール、好ましくはC5~C10直鎖または分岐鎖アルコール、より好ましくは分岐鎖C8アルコール(好ましくはイソオクチルアルコール)、ポリエーテル、好ましくはプロピレングリコール、および水から選択され得る。
【0045】
インクは、10重量%および80重量%のナノ粒子、好ましくは20重量%~70重量%のナノ粒子を含み得る。
【0046】
このプロセスは、第1のガラスプライと第2のガラスプライとの間に印刷されたポリマープライを挟む前に、ナノ粒子含有インク上に導電性層を析出させる工程をさらに含み得る。これは、導電性を増加させ得るため、有利である。導電性層を析出させることは、電解析出または無電解析出方法によるものである。導電性層は一般的には、金属層であり、銅、または銀、または他の適切な導電性材料を含んでもよい。
【0047】
好ましくは、ナノ粒子含有インクは、この方法で別の焼結工程を経ていない。
【0048】
本発明の態様は、特に自動車用グレージングにおいて、多くの潜在的用途を有する。
【0049】
したがって、第5の態様において、本発明は、第1、第2、または第3の態様に従う、ガラス構造積層体を含む車両用グレージングを提供する。
【0050】
第6の態様において、本発明は、第4の態様に従う、グレージングを備える車両を提供する。
【0051】
本発明のガラス積層構造体は、自動車(または建築)用グレージングにおいて多くの潜在的用途を有し、例えば、車両加熱式ワイパー領域、車両フロントガラス/ミラー霜取り装置、センサ(コンデンサ)、照明システムで、一般に母線として使われる。
【0052】
本発明は、それが積層体上のインキ印刷、特に導電性インキの印刷を、積層方法から分離できることを提供するため、時間および距離において有利である。印刷されたポリマープライ(例えば、PETまたはPVBシート)は、保管またはガラス製造現場への出荷のために巻かれ得る。ガラス構成部品の取り扱いおよび輸送は最小限に抑えられる。本発明は、製造方法の任意の時に、例えばガラスの成形前または後で、印刷された特徴部をグレージングに加えることができ、したがってグレージング製品の製造中に段階から印刷段階を成形段階から分離することができるため、特に有利である。
【0053】
ここで、本発明が、例としてのみ、添付図面を参照して記載される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に従う、ガラス積層構造体の、縮尺どおりでない概略分解図を示す。
【
図2】
図2は、本発明の第2の実施形態に従う、ガラス積層構造体の、縮尺どおりでない概略分解図を示す。
【
図3】
図3は、本発明の第3の実施形態に従う、ガラス積層構造体の、縮尺どおりでない概略分解図を示す。
【0055】
図1は、本発明に従う、ガラス積層体の分解図を概略的に示しており、縮尺どおりではない。積層体2は、第1のガラスプライ4および第2のガラスプライ6を備える。各ガラスプライは約2.1mmの厚さである。ガラスプライ4、6の間には、第1のPVBプライ8(約0.33mmの厚さ)および第2のPVBプライ10(約0.38mmの厚さ)がある。第1のPVB層8と第2のPVB層10との間に、銀ナノ粒子インク(約1.5μmの乾燥厚さ)の印刷された表面14を有するPET(約50μmの厚さ)の印刷されたポリマープライ12が挟まれる。
【0056】
図2および3において、同じまたは類似の特徴を示すために同じ参照番号が使用される。
【0057】
図2は、本発明に従う、第2のガラス積層体の分解図を概略的に示し、縮尺どおりではない。第1のガラスプライ4および第2のガラスプライ6、ならびに第1のPVBプライ8および第2のPVBプライ10が存在する。しかしながら、この実施形態において、印刷されたポリマープライは、銀ナノ粒子インク(約1.5μmの乾燥厚さ)の印刷された表面14を有する第1のPVBプライ8(約0.38mmの厚さ)である。
【0058】
図3は、本発明に従う、第3のガラス積層体の分解図を概略的に示し、縮尺どおりではない。同じまたは類似の特徴を示すために同じ参照番号が使用される。第1のガラスプライ4および第2のガラスプライ6、ならびに第1のPVBプライ8が存在する。しかしながら、この実施形態では、第2のPVBプライが存在せず、印刷されたポリマープライは、銀ナノ粒子インク(約1.5μmの乾燥厚さ)の印刷された表面14を有する第1のPVBプライ8である。
【0059】
いくつかの実施形態において、積層体内のポリマー層の印刷された面は、ナノ粒子インク上に析出されたさらなる導電性層を有することができる。
【0060】
本発明が、以下の実施例によってさらに示されるが、これに限定されない。
【0061】
実施例1~16
Kバーコーター(US3ワイヤゲージ、速度を3に設定)を使用し、フレキソ印刷用銀インクを含む銀ナノ粒子を用いて、PET-PVBデュプレット基材(30cm×30cm、50μmの厚さのPET、および330μmの厚さのPVB、そのPVBおよびPETプライを互いに接着した)を塗装/印刷した。塗装をPETプライの表面に施した。
【0062】
塗装面積は約10cm×10cmであり、乾燥塗装の厚さが約1.5μm(DekTakプロフィロメータで測定)であった。次いで、試料を風乾した。
【0063】
錫めっきされた銅の母線を、塗装された領域の頂部の境界および低部の境界に取り付けた。
【0064】
第2のPVBプライ(厚さ380μm)をPET-PVBデュプレットのPET側面に取り付けた。
【0065】
2つのガラスプライ(2.1mmの厚さ)をポリマープライの両側に配置した。
【0066】
プレニップ過程を、真空バッグ内で減圧下、95℃に加熱することによって積層体に施し、ポリマープライを付着させ、ガス放出した。
【0067】
次いで、オートクレーブ内で、10バール(1000kPa)の圧力下、125℃で加熱することで、構造体を積層過程に供した。
【0068】
プレニップ後および積層後に、作製した積層体の回路抵抗を測定した。回路抵抗測定の結果を以下の表1~表3に示す。
測定が以下の3つの位置で行われた。
1.頂部母線(「頂部」)に接続された両方のコネクタ、
2.底部母線(「底部」)に接続された両方のコネクタ、および
3.頂部母線と底部母線との間に対角に接続されたコネクタ(「対角線」、X)。
以下で測定が行われた。
1.プロトタイプが組み立てられた後(表1を参照されたい)、
2.プレニップサイクル後(表2を参照されたい)、および
3.オートクレーブサイクル後(表3を参照されたい)。
【0069】
積層サイクル間の抵抗の変化を示すため、対照試料(1つの母線(I配置)を含む対照試料1、一緒に接続された3つの母線(H配置)を含む対照試料2)の回路抵抗も測定し、母線が結果に影響を与えなかったことが示された。
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
実施例17~20。
Kバーコーター(US3ワイヤゲージ、速度を3に設定)を使用し、銀ナノ粒子を含有するフレキソ印刷用銀インクを用いて、PVBポリマープライ(30cm×30cm、0.38mmの厚さのPVB)を塗装/印刷した。
【0074】
塗装面積は約10cm×10cmであった。塗装後、試料を風乾した。
【0075】
錫めっきされた銅の母線を、塗装された領域の頂部の境界および低部の境界に取り付けた。
【0076】
第2の(非印刷)PVB層(0.38mmの厚さ)を、印刷されたPVB層の印刷面上に配置した。2つのガラスプライ(2.1mmの厚さ)をPVBの両側に配置した。
【0077】
プレニップ過程を、真空バッグ内で、1時間、減圧下で95℃に加熱することによって積層体に施し、ポリマープライを付着させ、ガス放出した。
【0078】
次いで、組み立ては、オートクレーブ内で、45分間、10バール(1000kPa)の圧力下、125℃で加熱することで、積層過程に供した。組み立て時、プレニップ後、および積層後に、積層体のシート抵抗を(非接触シート抵抗を測定するために)Nagy SRM-12を用いて測定した。結果を表4に示す。
【0079】
【0080】
実施例21~28。
これらの実施例は、(50cm×50cm)175μmの厚さのPET(SU 330)上に印刷されたナノ銀スクリーンインクを使用して行われた。使用したスクリーンは約36μmの湿潤塗装厚さを与える61/64メッシュであった。8つの試料が製造された。印刷して風乾させた後、4つの試料を電解めっき浴内でめっきし、印刷された領域の上に約10μmの銅層を析出させた。PVBシート(各々0.76mmの厚さ)および2つのガラスプライ(2.1mmの厚さ)を用いて、試料を積層した。
【0081】
印刷およびめっきされた試料の導電性は、非接触測定を使用して測定するには低すぎたため、母線を取り付け、45mmの間隔で50mmの幅の領域を提供した。プレニップ条件は、真空バッグ内で45mmの冷脱気、続いて(なお真空バッグ内で)95℃で1時間であった。試料をオートクレーブ(1時間、125℃、10バールの圧力)した。
【0082】
印刷された唯一の試料(実施例21~24)ならびに印刷およびめっきされた試料(実施例25~28)の抵抗の測定値を以下の表5に示す。測定値は、母線抵抗ならびに母線と測定領域との間の接触抵抗を含む。しかしながら、印刷された試料と、印刷およびめっきされた試料との測定値の比較では、そのような寄与は、めっきされた試料で測定された変化を説明できない。
【0083】