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特許7164448インクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタの制御方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20221025BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20221025BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20221025BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
B41J2/175 121
B41J2/18
B41J2/175 153
B41J2/175 171
B41J2/175 301
B41J2/01 303
B41J2/01 401
B41J2/165
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019009239
(22)【出願日】2019-01-23
(65)【公開番号】P2020116813
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】西澤 遼
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼津 章
(72)【発明者】
【氏名】古川 貴一
(72)【発明者】
【氏名】三宅 康介
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-045891(JP,A)
【文献】特開2013-215943(JP,A)
【文献】特開2007-301772(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0297546(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク滴を吐出するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドに供給されるインクが収容されるサブタンクとを備え、
前記インクジェットヘッドは、前記サブタンクからのインクが供給されるインク供給口と、前記サブタンクに向かってインクが排出されるインク排出口と、インク滴を吐出するノズル部とが形成されるインク循環式のインクジェットヘッドであり、
前記サブタンクには、前記サブタンクの中からインクが流出するインク流出口と、前記インク流出口から流出して所定の循環経路を通過したインクが前記サブタンクの中に向かって流入するインク流入口とが形成され、
前記サブタンクの中には、インクが収容されるとともに前記インク流出口が形成される上流側インク室と、インクが収容されるとともに前記インク流入口が形成される下流側インク室と、前記上流側インク室と前記下流側インク室とを仕切る仕切り壁とが形成され、
前記インク流出口と前記インク供給口とが第1の配管によって繋がれ、
前記インク排出口と前記インク流入口とが第2の配管によって繋がれ、
前記インクジェットヘッドの中に形成されるインクの流路と、前記第1の配管と、前記第2の配管とによって、前記循環経路が構成され、
所定のタイミングで、前記インク流入口からインクを流出させるとともに前記循環経路を通過したインクを前記インク流出口から前記サブタンクの中に流入させることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
インク滴を吐出するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドに供給されるインクが収容されるサブタンクと、前記サブタンクの中の圧力を調整する圧力調整機構とを備え、
前記インクジェットヘッドは、前記サブタンクからのインクが供給されるインク供給口と、前記サブタンクに向かってインクが排出されるインク排出口と、インク滴を吐出するノズル部とが形成されるインク循環式のインクジェットヘッドであり、
前記サブタンクには、前記サブタンクの中からインクが流出するインク流出口と、前記インク流出口から流出して所定の循環経路を通過したインクが前記サブタンクの中に向かって流入するインク流入口とが形成され、
前記サブタンクの中には、インクが収容されるとともに前記インク流出口が形成される上流側インク室と、インクが収容されるとともに前記インク流入口が形成される下流側インク室と、前記上流側インク室と前記下流側インク室とを仕切る仕切り壁とが形成され、
前記インク流出口と前記インク供給口とが第1の配管によって繋がれ、
前記インク排出口と前記インク流入口とが第2の配管によって繋がれ、
前記インクジェットヘッドの中に形成されるインクの流路と、前記第1の配管と、前記第2の配管とによって、前記循環経路が構成され、
所定のタイミングで、前記インク流入口からインクを流出させるとともに前記循環経路を通過したインクを前記インク流出口から前記サブタンクの中に流入させ、
前記圧力調整機構は、前記上流側インク室の圧力を調整する第1圧力調整機構と、前記下流側インク室の圧力を調整する第2圧力調整機構とを備え、前記上流側インク室の圧力を前記下流側インク室の圧力よりも高くすることで、前記インク流出口から前記循環経路を経由して前記インク流入口に向かうインクの流れを発生させるとともに、前記下流側インク室の圧力を前記上流側インク室の圧力よりも高くすることで、前記インク流入口から前記循環経路を経由して前記インク流出口に向かうインクの流れを発生させることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記サブタンクは、前記上流側インク室の中のインクの量を検知するための第1検知機構と、前記下流側インク室の中のインクの量を検知するための第2検知機構とを備え、
前記圧力調整機構は、前記上流側インク室の中のインクの量が上限側の所定の量であることが前記第1検知機構によって検知されるまで、または、前記下流側インク室の中のインクの量が下限側の所定の量であることが前記第2検知機構によって検知されるまで、前記インク流入口から前記インク流出口に向かうインクの流れを発生させることを特徴とする請求項記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記インクジェットヘッドのクリーニングを行うためのメンテナンスユニットを備え、
前記メンテナンスユニットにおいて前記インクジェットヘッドからインク滴を強制的に吐出させる前に、前記インク流入口からインクを流出させるとともに前記循環経路を通過したインクを前記インク流出口から前記サブタンクの中に流入させることを特徴とする請求項からのいずれかに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記インクジェットヘッドおよび前記サブタンクが搭載されるキャリッジと、前記キャリッジを主走査方向に移動させるキャリッジ駆動機構とを備え、
前記キャリッジ駆動機構は、前記インクジェットヘッドがインク滴を吐出していないときの所定のタイミングで、前記キャリッジを主走査方向に振動させることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
インク滴を吐出するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドに供給されるインクが収容されるサブタンクとを備え、
前記インクジェットヘッドは、前記サブタンクからのインクが供給されるインク供給口と、前記サブタンクに向かってインクが排出されるインク排出口と、インク滴を吐出するノズル部とが形成されるインク循環式のインクジェットヘッドであり、
前記サブタンクには、前記サブタンクの中からインクが流出するインク流出口と、前記インク流出口から流出して所定の循環経路を通過したインクが前記サブタンクの中に向かって流入するインク流入口とが形成され
前記サブタンクの中には、インクが収容されるとともに前記インク流出口が形成される上流側インク室と、インクが収容されるとともに前記インク流入口が形成される下流側インク室と、前記上流側インク室と前記下流側インク室とを仕切る仕切り壁とが形成され、
前記インク流出口と前記インク供給口とが第1の配管によって繋がれ、
前記インク排出口と前記インク流入口とが第2の配管によって繋がれ、
前記インクジェットヘッドの中に形成されるインクの流路と、前記第1の配管と、前記第2の配管とによって、前記循環経路が構成されているインクジェットプリンタの制御方法であって、
所定のタイミングで、前記インク流入口からインクを流出させるとともに前記循環経路を通過したインクを前記インク流出口から前記サブタンクの中に流入させることを特徴とするインクジェットプリンタの制御方法。
【請求項7】
インク滴を吐出するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドに供給されるインクが収容されるサブタンクと、前記サブタンクの中の圧力を調整する圧力調整機構とを備え、
前記インクジェットヘッドは、前記サブタンクからのインクが供給されるインク供給口と、前記サブタンクに向かってインクが排出されるインク排出口と、インク滴を吐出するノズル部とが形成されるインク循環式のインクジェットヘッドであり、
前記サブタンクには、前記サブタンクの中からインクが流出するインク流出口と、前記インク流出口から流出して所定の循環経路を通過したインクが前記サブタンクの中に向かって流入するインク流入口とが形成され、
前記サブタンクの中には、インクが収容されるとともに前記インク流出口が形成される上流側インク室と、インクが収容されるとともに前記インク流入口が形成される下流側インク室と、前記上流側インク室と前記下流側インク室とを仕切る仕切り壁とが形成され、
前記インク流出口と前記インク供給口とが第1の配管によって繋がれ、
前記インク排出口と前記インク流入口とが第2の配管によって繋がれ、
前記インクジェットヘッドの中に形成されるインクの流路と、前記第1の配管と、前記第2の配管とによって、前記循環経路が構成され、
前記圧力調整機構は、前記上流側インク室の圧力を調整する第1圧力調整機構と、前記下流側インク室の圧力を調整する第2圧力調整機構とを備え、前記上流側インク室の圧力を前記下流側インク室の圧力よりも高くすることで、前記インク流出口から前記循環経路を経由して前記インク流入口に向かうインクの流れを発生させるとともに、前記下流側インク室の圧力を前記上流側インク室の圧力よりも高くすることで、前記インク流入口から前記循環経路を経由して前記インク流出口に向かうインクの流れを発生させるインクジェットプリンタの制御方法であって、
所定のタイミングで、前記インク流入口からインクを流出させるとともに前記循環経路を通過したインクを前記インク流出口から前記サブタンクの中に流入させることを特徴とするインクジェットプリンタの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク滴を吐出するインクジェットヘッドを備えるインクジェットプリンタに関する。また、本発明は、かかるインクジェットプリンタの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インク滴を吐出して印刷媒体に印刷を行うインクジェットプリンタが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のインクジェットプリンタは、インクジェットヘッドと、インクジェットヘッドが搭載されるキャリッジと、インクジェットヘッドにインクを供給するインク供給システムとを備えている。特許文献1に記載のインクジェットプリンタで使用されるインクは、顔料等のインク微粒子が含まれたインクであり、たとえば、白インク、メタリックインクまたはパールインク等である。
【0003】
特許文献1に記載のインクジェットプリンタでは、インク供給システムは、メインタンクと、サブタンクと、メインタンクとサブタンクとを連結する第1インク流路と、サブタンクとインクジェットヘッドとを連結する第2インク流路と、サブタンクと第1インク流路とを連結する第3インク流路と、第3インク流路内のインクをサブタンクから第1インク流路に向けて送液する送液ポンプとを備えている。
【0004】
また、特許文献1に記載のインクジェットプリンタでは、インクジェットプリンタが待機状態となっているタイミング等に、送液ポンプを駆動して、サブタンクの中のインク室と第3インク流路と第1インク流路とによって構成されるインクの循環経路でインクを循環させる循環制御を実行する。そのため、特許文献1に記載のインクジェットプリンタでは、サブタンクの中のインク室でのインク微粒子の沈降(沈澱)を抑制して、インクジェットヘッドから吐出されるインクの濃度の低下を抑制することが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-156859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のインクジェットプリンタの場合、サブタンクの中のインク室の形状によっては、循環制御でインクを循環させても、インク室の中でインクの流れが悪くなる箇所が生じるおそれがある。たとえば、インク室の形状が複雑になると、循環制御でインクを循環させても、インク室の中でインクの流れが悪くなる箇所が生じるおそれがある。インク室の中の、インクの流れが悪くなった箇所では、インク微粒子が沈降しやすくなる。そのため、特許文献1に記載のインクジェットプリンタの場合、インク室の形状によっては、インクを循環させても、インク室でのインク微粒子の沈降を抑制することができなくなるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、サブタンクの中のインク室の形状にかかわらず、サブタンクの中でのインク微粒子の沈降を抑制することが可能なインクジェットプリンタを提供することにある。また、本発明の課題は、サブタンクの中のインク室の形状にかかわらず、サブタンクの中でのインク微粒子の沈降を抑制することが可能となるインクジェットプリンタの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明のインクジェットプリンタは、インク滴を吐出するインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドに供給されるインクが収容されるサブタンクとを備え、インクジェットヘッドは、サブタンクからのインクが供給されるインク供給口と、サブタンクに向かってインクが排出されるインク排出口と、インク滴を吐出するノズル部とが形成されるインク循環式のインクジェットヘッドであり、サブタンクには、サブタンクの中からインクが流出するインク流出口と、インク流出口から流出して所定の循環経路を通過したインクがサブタンクの中に向かって流入するインク流入口とが形成され、サブタンクの中には、インクが収容されるとともにインク流出口が形成される上流側インク室と、インクが収容されるとともにインク流入口が形成される下流側インク室と、上流側インク室と下流側インク室とを仕切る仕切り壁とが形成され、インク流出口とインク供給口とが第1の配管によって繋がれ、インク排出口とインク流入口とが第2の配管によって繋がれ、インクジェットヘッドの中に形成されるインクの流路と、第1の配管と、第2の配管とによって、循環経路が構成され、所定のタイミングで、インク流入口からインクを流出させるとともに循環経路を通過したインクをインク流出口からサブタンクの中に流入させることを特徴とする。
【0009】
また、上記の課題を解決するため、本発明のインクジェットプリンタの制御方法は、インク滴を吐出するインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドに供給されるインクが収容されるサブタンクとを備え、インクジェットヘッドは、サブタンクからのインクが供給されるインク供給口と、サブタンクに向かってインクが排出されるインク排出口と、インク滴を吐出するノズル部とが形成されるインク循環式のインクジェットヘッドであり、サブタンクには、サブタンクの中からインクが流出するインク流出口と、インク流出口から流出して所定の循環経路を通過したインクがサブタンクの中に向かって流入するインク流入口とが形成され、サブタンクの中には、インクが収容されるとともにインク流出口が形成される上流側インク室と、インクが収容されるとともにインク流入口が形成される下流側インク室と、上流側インク室と下流側インク室とを仕切る仕切り壁とが形成され、インク流出口とインク供給口とが第1の配管によって繋がれ、インク排出口とインク流入口とが第2の配管によって繋がれ、インクジェットヘッドの中に形成されるインクの流路と、第1の配管と、第2の配管とによって、循環経路が構成されているインクジェットプリンタの制御方法であって、所定のタイミングで、インク流入口からインクを流出させるとともに循環経路を通過したインクをインク流出口からサブタンクの中に流入させることを特徴とする。
【0010】
本発明では、所定のタイミングで、インク流入口からインクを流出させるとともに循環経路を通過したインクをインク流出口からサブタンクの中に流入させている。すなわち、本発明では、インク流出口から流出して所定の循環経路を通過したインクがインク流入口に流入する通常のインクの流れ方向とは逆方向のインクの流れを所定のタイミングでサブタンクの中に生じさせている。そのため、本願発明者の検討によれば、通常のインクの流れ方向と逆方向のインクの流れをサブタンクの中に生じさせたときに、サブタンクの中の、通常のインクの流れ方向にインクを流した場合にインクの流れが悪くなる箇所において、インクの流れを改善して沈降したインク微粒子を流すことが可能になる。したがって、本発明では、サブタンクの中のインク室の形状にかかわらず、サブタンクの中でのインク微粒子の沈降を抑制することが可能になる。
【0011】
また、本発明では、インクジェットヘッドは、サブタンクからのインクが供給されるインク供給口と、サブタンクに向かってインクが排出されるインク排出口と、インク滴を吐出するノズル部とが形成されるインク循環式のインクジェットヘッドであり、インク流出口とインク供給口とが第1の配管によって繋がれ、インク排出口とインク流入口とが第2の配管によって繋がれ、インクジェットヘッドの中に形成されるインクの流路と、第1の配管と、第2の配管とによって、循環経路が構成されている。
【0012】
そのため、通常のインクの流れ方向とは逆方向のインクの流れを所定のタイミングでインクジェットヘッドの中のインクの流路に生じさせることが可能になる。したがって、通常のインクの流れ方向にインクを流したときにインクジェットヘッドの中のインクの流路においてインクの流れが悪くなる箇所が生じる場合であっても、通常のインクの流れ方向と逆方向のインクの流れをインクジェットヘッドの中のインクの流路に生じさせたときに、インクジェットヘッドのインクの流路の中の、通常のインクの流れ方向にインクを流した場合にインクの流れが悪くなる箇所において、インクの流れを改善して沈降したインク微粒子を流すことが可能になる。その結果、インクジェットヘッドの中のインクの流路におけるインク微粒子の沈降を抑制することが可能になる。
【0013】
また、上記の課題を解決するため、本発明のインクジェットプリンタは、インク滴を吐出するインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドに供給されるインクが収容されるサブタンクと、サブタンクの中の圧力を調整する圧力調整機構とを備え、インクジェットヘッドは、サブタンクからのインクが供給されるインク供給口と、サブタンクに向かってインクが排出されるインク排出口と、インク滴を吐出するノズル部とが形成されるインク循環式のインクジェットヘッドであり、サブタンクには、サブタンクの中からインクが流出するインク流出口と、インク流出口から流出して所定の循環経路を通過したインクがサブタンクの中に向かって流入するインク流入口とが形成され、サブタンクの中には、インクが収容されるとともにインク流出口が形成される上流側インク室と、インクが収容されるとともにインク流入口が形成される下流側インク室と、上流側インク室と下流側インク室とを仕切る仕切り壁とが形成され、インク流出口とインク供給口とが第1の配管によって繋がれ、インク排出口とインク流入口とが第2の配管によって繋がれ、インクジェットヘッドの中に形成されるインクの流路と、第1の配管と、第2の配管とによって、循環経路が構成され、所定のタイミングで、インク流入口からインクを流出させるとともに循環経路を通過したインクをインク流出口からサブタンクの中に流入させ、圧力調整機構は、上流側インク室の圧力を調整する第1圧力調整機構と、下流側インク室の圧力を調整する第2圧力調整機構とを備え、上流側インク室の圧力を下流側インク室の圧力よりも高くすることで、インク流出口から循環経路を経由してインク流入口に向かうインクの流れを発生させるとともに、下流側インク室の圧力を上流側インク室の圧力よりも高くすることで、インク流入口から循環経路を経由してインク流出口に向かうインクの流れを発生させることを特徴とする。
また、上記の課題を解決するため、本発明のインクジェットプリンタの制御方法は、インク滴を吐出するインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドに供給されるインクが収容されるサブタンクと、サブタンクの中の圧力を調整する圧力調整機構とを備え、インクジェットヘッドは、サブタンクからのインクが供給されるインク供給口と、サブタンクに向かってインクが排出されるインク排出口と、インク滴を吐出するノズル部とが形成されるインク循環式のインクジェットヘッドであり、サブタンクには、サブタンクの中からインクが流出するインク流出口と、インク流出口から流出して所定の循環経路を通過したインクがサブタンクの中に向かって流入するインク流入口とが形成され、サブタンクの中には、インクが収容されるとともにインク流出口が形成される上流側インク室と、インクが収容されるとともにインク流入口が形成される下流側インク室と、上流側インク室と下流側インク室とを仕切る仕切り壁とが形成され、インク流出口とインク供給口とが第1の配管によって繋がれ、インク排出口とインク流入口とが第2の配管によって繋がれ、インクジェットヘッドの中に形成されるインクの流路と、第1の配管と、第2の配管とによって、循環経路が構成され、圧力調整機構は、上流側インク室の圧力を調整する第1圧力調整機構と、下流側インク室の圧力を調整する第2圧力調整機構とを備え、上流側インク室の圧力を下流側インク室の圧力よりも高くすることで、インク流出口から循環経路を経由してインク流入口に向かうインクの流れを発生させるとともに、下流側インク室の圧力を上流側インク室の圧力よりも高くすることで、インク流入口から循環経路を経由してインク流出口に向かうインクの流れを発生させるインクジェットプリンタの制御方法であって、所定のタイミングで、インク流入口からインクを流出させるとともに循環経路を通過したインクをインク流出口からサブタンクの中に流入させることを特徴とする。
【0014】
本発明では、所定のタイミングで、インク流入口からインクを流出させるとともに循環経路を通過したインクをインク流出口からサブタンクの中に流入させている。すなわち、本発明では、インク流出口から流出して所定の循環経路を通過したインクがインク流入口に流入する通常のインクの流れ方向とは逆方向のインクの流れを所定のタイミングでサブタンクの中に生じさせている。そのため、本願発明者の検討によれば、通常のインクの流れ方向と逆方向のインクの流れをサブタンクの中に生じさせたときに、サブタンクの中の、通常のインクの流れ方向にインクを流した場合にインクの流れが悪くなる箇所において、インクの流れを改善して沈降したインク微粒子を流すことが可能になる。したがって、本発明では、サブタンクの中のインク室の形状にかかわらず、サブタンクの中でのインク微粒子の沈降を抑制することが可能になる。
また、本発明では、インクジェットヘッドは、サブタンクからのインクが供給されるインク供給口と、サブタンクに向かってインクが排出されるインク排出口と、インク滴を吐出するノズル部とが形成されるインク循環式のインクジェットヘッドであり、インク流出口とインク供給口とが第1の配管によって繋がれ、インク排出口とインク流入口とが第2の配管によって繋がれ、インクジェットヘッドの中に形成されるインクの流路と、第1の配管と、第2の配管とによって、循環経路が構成されている。そのため、通常のインクの流れ方向とは逆方向のインクの流れを所定のタイミングでインクジェットヘッドの中のインクの流路に生じさせることが可能になる。したがって、通常のインクの流れ方向にインクを流したときにインクジェットヘッドの中のインクの流路においてインクの流れが悪くなる箇所が生じる場合であっても、通常のインクの流れ方向と逆方向のインクの流れをインクジェットヘッドの中のインクの流路に生じさせたときに、インクジェットヘッドのインクの流路の中の、通常のインクの流れ方向にインクを流した場合にインクの流れが悪くなる箇所において、インクの流れを改善して沈降したインク微粒子を流すことが可能になる。その結果、インクジェットヘッドの中のインクの流路におけるインク微粒子の沈降を抑制することが可能になる。
また、本発明では、上流側インク室の圧力と下流側インク室の圧力とを調整すれば、サブタンクの中およびインクジェットヘッドの中に、通常のインクの流れ方向と逆方向のインクの流れを生じさせることが可能になる。したがって、比較的容易に、サブタンクの中およびインクジェットヘッドの中に、通常のインクの流れ方向と逆方向のインクの流れを生じさせることが可能になる。
【0015】
本発明において、サブタンクは、上流側インク室の中のインクの量を検知するための第1検知機構と、下流側インク室の中のインクの量を検知するための第2検知機構とを備え、圧力調整機構は、上流側インク室の中のインクの量が上限側の所定の量であることが第1検知機構によって検知されるまで、または、下流側インク室の中のインクの量が下限側の所定の量であることが第2検知機構によって検知されるまで、インク流入口からインク流出口に向かうインクの流れを発生させることが好ましい。このように構成すると、通常のインクの流れ方向と逆方向のインクの流れを自動的に止めることが可能になる。
【0016】
本発明において、インクジェットプリンタは、インクジェットヘッドのクリーニングを行うためのメンテナンスユニットを備え、メンテナンスユニットにおいてインクジェットヘッドからインク滴を強制的に吐出させる前に、インク流入口からインクを流出させるとともに循環経路を通過したインクをインク流出口からサブタンクの中に流入させることが好ましい。
【0017】
このように構成すると、インクジェットヘッドの中のインクの流路でインク微粒子が沈降する場合であっても、インクジェットヘッドの中のインクの流路で沈降するインク微粒子の量を低減させた後に、メンテナンスユニットにおいてインクジェットヘッドからインク滴を強制的に吐出させることが可能になる。したがって、インクジェットヘッドの中のインクの流路でインク微粒子が沈降する場合であっても、メンテナンスユニットにおいてインクジェットヘッドから強制的に吐出されるインク滴の中のインク微粒子の量を低減することが可能になる。その結果、メンテナンスユニットにおいてインクジェットヘッドからインク滴を吐出させることに起因して、インクジェットヘッドおよびサブタンクの中のインクの濃度が低下するのを抑制することが可能になる。
【0018】
本発明において、インクジェットプリンタは、インクジェットヘッドおよびサブタンクが搭載されるキャリッジと、キャリッジを主走査方向に移動させるキャリッジ駆動機構とを備え、キャリッジ駆動機構は、インクジェットヘッドがインク滴を吐出していないときの所定のタイミングで、キャリッジを主走査方向に振動させることが好ましい。すなわち、本発明において、キャリッジ駆動機構は、インクジェットヘッドがインク滴を吐出していないときの所定のタイミングで、キャリッジに搭載されるインクジェットヘッドおよびサブタンクを主走査方向に振動させることが好ましい。
【0019】
このように構成すると、サブタンクの中で沈降しているインク微粒子をインクの溶媒の中に拡散させることが可能になる。したがって、サブタンクの中でのインク微粒子の沈降を効果的に抑制することが可能になる。また、このように構成すると、インクジェットヘッドの中のインクの流路でインク微粒子が沈降する場合であっても、インクジェットヘッドの中のインクの流路で沈降しているインク微粒子をインクの溶媒の中に拡散させることが可能になる。したがって、インクジェットヘッドの中のインクの流路におけるインク微粒子の沈降を抑制することが可能になる。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明では、サブタンクの中のインク室の形状にかかわらず、サブタンクの中でのインク微粒子の沈降を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施の形態にかかるインクジェットプリンタの構成を説明するための概略図である。
図2図1に示すインクジェットプリンタの構成を説明するための概略図である。
図3】本発明の他の実施の形態にかかるインクジェットプリンタの構成を説明するための概略図である。
図4】本発明の他の実施の形態にかかるインクジェットプリンタの構成を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0030】
(インクジェットプリンタの構成)
図1図2は、本発明の実施の形態にかかるインクジェットプリンタ1の構成を説明するための概略図である。
【0031】
本形態のインクジェットプリンタ1(以下、「プリンタ1」とする。)は、たとえば、業務用のインクジェットプリンタであり、紙等の印刷媒体2に印刷を行う。プリンタ1は、インク滴を吐出するインクジェットヘッド3(以下、「ヘッド3」とする。)と、ヘッド3が搭載されるキャリッジ4と、キャリッジ4を主走査方向へ移動させるキャリッジ駆動機構5と、キャリッジ4を主走査方向へ案内するためのガイドレール6と、印刷時の印刷媒体2が載置されるプラテン7とを備えている。なお、プリンタ1は、三次元造形物を造形する3Dプリンタであっても良い。また、プリンタ1は、一般消費者向けのインクジェットプリンタであっても良い。
【0032】
キャリッジ駆動機構5は、モータおよびモータの動力をキャリッジ4に伝達する動力伝達機構を備えている。動力伝達機構は、たとえば、プーリおよびベルトを備えている。印刷媒体2に印刷を行うときには、キャリッジ4がガイドレール6に案内されて主走査方向へ往復移動しながら、プラテン7に載置される印刷媒体2の上面に向かってヘッド3がインク滴を吐出する。本形態のプリンタ1で使用されるインクは、顔料等のインク微粒子が溶媒の中に含まれたインクであり、たとえば、白インク、メタリックインクまたはパールインク等である。
【0033】
また、プリンタ1は、ヘッド3に供給されるインクが収容されるサブタンク9と、サブタンク9に供給されるインクが収容されるメインタンク10と、メインタンク10からサブタンク9にインクを送るためのインクポンプ11と、サブタンク9の中の圧力を調整する圧力調整機構12と、ヘッド3のクリーニングを行うためのメンテナンスユニット13とを備えている。なお、プリンタ1は、複数のヘッド3を備えており、複数のヘッド3がキャリッジ4に搭載されている。また、プリンタ1は、ヘッド3の数に応じた複数のサブタンク9と、サブタンク9の数に応じた複数のメインタンク10とを備えている。
【0034】
本形態のヘッド3は、ヘッド3の中のインクを循環させるインク循環式のインクジェットヘッドである。ヘッド3には、サブタンク9からのインクが供給されるインク供給口16と、サブタンク9に向かってインクが排出されるインク排出口17と、インク滴を吐出するノズル部18とが形成されている。ノズル部18には、インク滴を吐出する複数のノズルが形成されている。ヘッド3は、ノズルからインク滴を吐出させる圧電素子(ピエゾ素子)を備えている。また、ヘッド3の中には、インク供給口16およびインク排出口17に通じるインクの流路19が形成されている。流路19の一端は、インク供給口16に繋がっている。流路19の他端は、インク排出口17に繋がっている。ノズルには、流路19からインクが供給される。
【0035】
サブタンク9は、キャリッジ4に搭載されている。サブタンク9は、ヘッド3の上側に配置されている。サブタンク9の中には、インクが収容される上流側インク室21および下流側インク室22と、上流側インク室21と下流側インク室22とを仕切る仕切り壁23とが形成されている。本形態では、上流側インク室21の形状および下流側インク室22の形状は、比較的複雑になっている。
【0036】
上流側インク室21には、上流側インク室21からヘッド3に向かってインクが流出するインク流出口24が形成されている。下流側インク室22には、ヘッド3から排出されるインクが流入するインク流入口25が形成されている。すなわち、サブタンク9には、サブタンク9の中からインクが流出するインク流出口24と、サブタンク9の中に向かってインクが流入するインク流入口25とが形成されている。また、上流側インク室21には、メインタンク10または下流側インク室22からのインクが流入するインク流入口28が形成され、下流側インク室22には、上流側インク室21に向かってインクが流出するインク流出口29が形成されている。
【0037】
インク流出口24とインク供給口16とは、第1の配管としての配管30によって繋がれている。インク排出口17とインク流入口25とは、第2の配管としての配管31によって繋がれている。本形態では、ヘッド3の中に形成されるインクの流路19と配管30、31とによって、インクの循環経路32が構成されており、インク流出口24から流出して循環経路32を通過したインクがインク流入口25からサブタンク9の中に流入する。
【0038】
サブタンク9は、上流側インク室21の中のインクの量を検知するための検知機構34と、下流側インク室22の中のインクの量を検知するための検知機構35とを備えている。検知機構34は、上流側インク室21の中のインクの液面を検知することで、上流側インク室21の中のインクの量を検知する液面検知機構である。同様に、検知機構35は、下流側インク室22の中のインクの液面を検知することで、下流側インク室22の中のインクの量を検知する液面検知機構である。本形態の検知機構34は第1検知機構であり、検知機構35は第2検知機構である。
【0039】
検知機構34は、上流側インク室21の中に配置されるフロート36と、フロート36に内蔵される磁石(永久磁石)を検知するホールIC等の磁気センサ37、38とを備えている。フロート36は、上流側インク室21の中のインクに浮かんでいる。磁気センサ37、38は、上流側インク室21の外側面に固定されている。磁気センサ37は、上流側インク室21の外側面の下端側に固定され、磁気センサ38は、上流側インク室21の外側面の上端側に固定されている。
【0040】
本形態では、上流側インク室21の中のインクの量が下限側の所定の量になると、フロート36に内蔵される磁石が磁気センサ37に検知され、上流側インク室21の中のインクの量が上限側の所定の量になると、フロート36に内蔵される磁石が磁気センサ38に検知される。すなわち、検知機構34によって、上流側インク室21の中のインクの量が下限側の所定の量であること、および、上流側インク室21の中のインクの量が上限側の所定の量であることが検知される。
【0041】
検知機構35は、検知機構34と同様に構成されており、下流側インク室22の中に配置されるフロート39と、フロート39に内蔵される磁石(永久磁石)を検知するホールIC等の磁気センサ40、41とを備えている。フロート39は、下流側インク室22の中のインクに浮かんでいる。磁気センサ40、41は、下流側インク室22の外側面に固定されている。磁気センサ40は、下流側インク室22の外側面の下端側に固定され、磁気センサ41は、下流側インク室22の外側面の上端側に固定されている。
【0042】
本形態では、下流側インク室22の中のインクの量が下限側の所定の量になると、フロート39に内蔵される磁石が磁気センサ40に検知され、下流側インク室22の中のインクの量が上限側の所定の量になると、フロート39に内蔵される磁石が磁気センサ41に検知される。すなわち、検知機構35によって、下流側インク室22の中のインクの量が下限側の所定の量であること、および、下流側インク室22の中のインクの量が上限側の所定の量であることが検知される。
【0043】
圧力調整機構12は、上流側インク室21の圧力を調整する第1圧力調整機構44と、下流側インク室22の圧力を調整する第2圧力調整機構45とを備えている。第1圧力調整機構44は、上流側インク室21の内部圧力を負圧にするための負圧ポンプ等を備えている。第2圧力調整機構45は、下流側インク室22の内部圧力を負圧にするための負圧ポンプ等を備えている。第1圧力調整機構44は、逆流防止フィルタ46および開閉弁47を介して上流側インク室21に接続され、第2圧力調整機構45は、逆流防止フィルタ46および開閉弁47を介して下流側インク室22に接続されている。
【0044】
プリンタ1の使用時には、通常、上流側インク室21の圧力は、下流側インク室22の圧力よりも高くなっている。具体的には、プリンタ1の使用時には、通常、下流側インク室22の負圧は、上流側インク室21の負圧よりも大きな負圧になっている。たとえば、上流側インク室21の圧力は、-1.6(kPa)となっており、下流側インク室22の圧力は、-3.8(kPa)となっている。すなわち、上流側インク室21の圧力と下流側インク室22の圧力との差は、たとえば、2.2(kPa)となっている。
【0045】
本形態では、上流側インク室21の圧力と下流側インク室22の圧力との差によって、上流側インク室21からヘッド3にインクが供給されるとともに、ヘッド3から下流側インク室22にインクが排出されている。すなわち、圧力調整機構12は、上流側インク室21の圧力を下流側インク室22の圧力よりも高くすることで、インク流出口24から循環経路32を経由してインク流入口25に向かうインクの流れを発生させており、上流側インク室21から循環経路32を経由して下流側インク室22にインクが移動することで、ヘッド3の中のインクが循環する。
【0046】
メインタンク10は、プリンタ1の本体フレームに着脱可能に取り付けられている。インクポンプ11は、たとえば、ダイヤフラムポンプであり、駆動源としてモータを備えている。インクポンプ11は、メインタンク10と上流側インク室21との間の配管経路に配置されている。インクポンプ11と上流側インク室21との間の配管経路には、フィルタ50が配置されている。すなわち、インクポンプ11は、所定の配管およびフィルタ50を介してインク流入口28に接続されている。
【0047】
メインタンク10とインクポンプ11との間の配管経路には、三方弁51が配置されている。三方弁51には、配管を介して下流側インク室22が接続されている。すなわち、三方弁51には、配管を介してインク流出口29が接続されている。本形態では、通常、インクポンプ11が下流側インク室22から上流側インク室21にインクを送るインクの流路が形成されており、下流側インク室22から上流側インク室21にインクが送られるが、サブタンク9の中のインクの量が少なくなると、三方弁51が切り替わって、インクポンプ11がメインタンク10から上流側インク室21にインクを送るインクの流路が形成され、メインタンク10から上流側インク室21にインクが送られる。
【0048】
主走査方向において印刷媒体2に印刷が行われる領域を印刷領域PAとすると、メンテナンスユニット13は、主走査方向において印刷領域PAから外れた領域に配置されている。メンテナンスユニット13は、ヘッド3のノズル面を覆うキャッピング機構やヘッド3のノズル面を拭うワイパー等を備えている。メンテナンスユニット13では、ヘッド3のノズルに目詰まり等の不具合が生じるのを防止するため、ヘッド3からインク滴が強制的に吐出される。
【0049】
具体的には、メンテナンスユニット13では、ヘッド3の中の圧力を正圧にしてヘッド3からインク滴を強制的に吐出させるパージ(パージング)が定期的に行われる。パージは、たとえば、8時間ごとに実行されており、パージが実行される前または後には、ワイパーによるヘッド3のノズル面の拭き取りも行われる。また、メンテナンスユニット13では、ヘッド3の圧電素子を駆動してヘッド3からインク滴を強制的に吐出されるフラッシングが一定条件下で行われる。なお、キャッピング機構がヘッド3のノズルからインク滴を強制的に吸引するための吸引ポンプを備えている場合には、吸引ポンプを用いてパージを行っても良い。
【0050】
(インクジェットプリンタの制御方法)
上述のように、プリンタ1の使用時には、通常、下流側インク室22の負圧が上流側インク室21の負圧よりも大きな負圧になっており、インク流出口24から循環経路32を経由してインク流入口25に向かうインクの流れが生じている。本形態では、所定のタイミングで、インク流入口25から循環経路32を経由してインク流出口24に向かうインクの流れが生じさせている。すなわち、本形態では、プリンタ1の制御部は、所定のタイミングで、インク流入口25からインクを流出させるとともに循環経路32を通過したインクをインク流出口24からサブタンク9の中に流入させるインクの逆循環を行っており、通常のインクの流れ方向とは逆方向のインクの流れを所定のタイミングでサブタンク9の中に生じさせている。
【0051】
具体的には、上流側インク室21の負圧を下流側インク室22の負圧よりも大きな負圧にして、インク流入口25から循環経路32を経由してインク流出口24に向かうインクの流れを発生させている。すなわち、圧力調整機構12は、下流側インク室22の圧力を上流側インク室21の圧力よりも高くすることで、インク流入口25から循環経路32を経由してインク流出口24に向かうインクの流れを発生させている。
【0052】
本形態では、圧力調整機構12は、下流側インク室22の圧力を、通常時の上流側インク室21の圧力と同じ圧力にするとともに、上流側インク室21の圧力を、通常時の下流側インク室22の圧力と同じ圧力にすることで、下流側インク室22の圧力を上流側インク室21の圧力よりも高くしている。たとえば、下流側インク室22の圧力を、-1.6(kPa)とし、上流側インク室21の圧力を、-3.8(kPa)としている。なお、下流側インク室22の圧力が上流側インク室21の圧力よりも高くなっているときに、下流側インク室22の圧力と通常時の上流側インク室21の圧力とが異なっていても良いし、上流側インク室21の圧力と通常時の下流側インク室22の圧力とが異なっていても良い。
【0053】
また、圧力調整機構12は、検知機構34によって上流側インク室21の中のインクの量が上限側の所定の量であることが検知されるまで(すなわち、フロート36に内蔵される磁石が磁気センサ38に検知されるまで)、または、検知機構35によって下流側インク室22の中のインクの量が下限側の所定の量であることが検知されるまで(すなわち、フロート39に内蔵される磁石が磁気センサ40に検知されるまで)、インク流入口25からインク流出口24に向かうインクの流れを発生させている。
【0054】
また、メンテナンスユニット13においてパージが行われる前に、インク流入口25からインクを流出させるとともに循環経路32を通過したインクをインク流出口24からサブタンク9の中に流入させている。すなわち、メンテナンスユニット13においてヘッド3からインク滴を強制的に吐出させる前にインクの逆循環を行っており、定期的にインクの逆循環を行っている。
【0055】
また、本形態では、キャリッジ駆動機構5は、ヘッド3がインク滴を吐出していないときの所定のタイミングで、キャリッジ4を主走査方向に振動させている。すなわち、プリンタ1の制御部は、ヘッド3がインク滴を吐出していないときの所定のタイミングで、キャリッジ駆動機構5によってキャリッジ4を主走査方向に振動させることで、キャリッジ4に搭載されるヘッド3およびサブタンク9を主走査方向に振動させている。
【0056】
本形態では、定期的にキャリッジ4を主走査方向に振動させている。たとえば、1日に1回(すなわち、24時間ごとに)、キャリッジ4を主走査方向に振動させている。また、たとえば、印刷媒体2に対する印刷時のキャリッジ4の移動速度とほぼ同じ速度で、主走査方向にキャリッジ4を10往復させることでキャリッジ4を主走査方向に振動させている。このときのキャリッジ4の主走査方向への移動距離は、たとえば、10(cm)程度である。また、キャリッジ4の主走査方向への振動は、たとえば、メンテナンスユニット13で行われる。
【0057】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、所定のタイミングで、インクの逆循環を行っており、インク流出口24から循環経路32を経由してインク流入口25に向かう通常のインクの流れ方向とは逆方向のインクの流れを上流側インク室21および下流側インク室22の中に生じさせている。そのため、本形態では、通常のインクの流れ方向と逆方向のインクの流れを上流側インク室21および下流側インク室22の中に生じさせたときに、上流側インク室21および下流側インク室22の中の、通常のインクの流れ方向にインクを流した場合にインクの流れが悪くなる箇所において、インクの流れを改善して沈降したインク微粒子を流すことが可能になる。したがって、本形態では、上流側インク室21および下流側インク室22の形状が複雑になっていても、上流側インク室21および下流側インク室22の中でのインク微粒子の沈降を抑制することが可能になる。
【0058】
また、本形態では、ヘッド3の中に形成されるインクの流路19が循環経路32に含まれているため、通常のインクの流れ方向とは逆方向のインクの流れが所定のタイミングで流路19にも生じている。したがって、本形態では、通常のインクの流れ方向にインクを流したときに流路19においてインクの流れが悪くなる箇所が生じる場合であっても、通常のインクの流れ方向と逆方向のインクの流れを流路19に生じさせたときに、流路19の中の、通常のインクの流れ方向にインクを流した場合にインクの流れが悪くなる箇所において、インクの流れを改善して沈降したインク微粒子を流すことが可能になる。その結果、本形態では、流路19でのインク微粒子の沈降を抑制することが可能になる。
【0059】
本形態では、ヘッド3がインク滴を吐出していないときの所定のタイミングで、キャリッジ4を主走査方向に振動させることで、キャリッジ4に搭載されるサブタンク9を主走査方向に振動させている。そのため、本形態では、サブタンク9の中で沈降しているインク微粒子をインクの溶媒の中に拡散させることが可能になる。したがって、本形態では、上流側インク室21および下流側インク室22の形状が複雑になっていても、上流側インク室21および下流側インク室22の中でのインク微粒子の沈降を効果的に抑制することが可能になる。
【0060】
また、本形態では、ヘッド3がインク滴を吐出していないときの所定のタイミングで、キャリッジ4を主走査方向に振動させることで、キャリッジ4に搭載されるヘッド3を主走査方向に振動させているため、ヘッド3の流路19でインク微粒子が沈降する場合であっても、流路19で沈降しているインク微粒子をインクの溶媒の中に拡散させることが可能になる。したがって、本形態では、流路19でのインク微粒子の沈降を効果的に抑制することが可能になる。
【0061】
本形態では、圧力調整機構12は、上流側インク室21の圧力を下流側インク室22の圧力よりも高くすることで、インク流出口24から循環経路32を経由してインク流入口25に向かうインクの流れを発生させるとともに、下流側インク室22の圧力を上流側インク室21の圧力よりも高くすることで、インク流入口25から循環経路32を経由してインク流出口24に向かうインクの流れを発生させている。すなわち、本形態では、上流側インク室21の圧力と下流側インク室22の圧力とを調整することで、サブタンク9の中およびヘッド3の流路19の中に、通常のインクの流れ方向と逆方向のインクの流れを生じさせている。そのため、本形態では、比較的容易に、サブタンク9の中およびヘッド3の流路19の中に、通常のインクの流れ方向と逆方向のインクの流れを生じさせることが可能になる。
【0062】
本形態では、圧力調整機構12は、上流側インク室21の中のインクの量が上限側の所定の量であることが検知機構34によって検知されるまで、または、下流側インク室22の中のインクの量が下限側の所定の量であることが検知機構35によって検知されるまでインク流入口25からインク流出口24に向かうインクの流れを発生させている。そのため、本形態では、通常のインクの流れ方向と逆方向のインクの流れを自動的に止めることが可能になる。
【0063】
本形態では、メンテナンスユニット13においてパージが行われる前にインクの逆循環を行っている。そのため、本形態では、ヘッド3の流路19でインク微粒子が沈降する場合であっても、流路19で沈降するインク微粒子の量を低減させた後に、パージを行ってヘッド3からインク滴を強制的に吐出させることが可能になる。したがって、本形態では、パージを行うときにヘッド3から強制的に吐出されるインク滴の中のインク微粒子の量を低減することが可能になり、その結果、パージに起因して、ヘッド3およびサブタンク9の中のインクの濃度が低下するのを抑制することが可能になる。
【0064】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0065】
上述した形態において、パージが行われた後にインクの逆循環を行っても良いし、パージが行われるタイミングとは関係のない所定のタイミングでインクの逆循環を行っても良い。また、上述した形態において、メンテナンスユニット13においてフラッシングが行われる前にインクの逆循環を行っても良い。この場合には、ヘッド3の流路19でインク微粒子が沈降する場合であっても、フラッシングに起因して、ヘッド3およびサブタンク9の中のインクの濃度が低下するのを抑制することが可能になる。また、フラッシングが行われた後にインクの逆循環を行っても良い。
【0066】
上述した形態において、メンテナンスユニット13においてパージまたはフラッシングが行われる前に(すなわち、メンテナンスユニット13においてヘッド3からインク滴を強制的に吐出させる前に)、キャリッジ4を主走査方向に振動させても良い。この場合には、ヘッド3の流路19でインク微粒子が沈降する場合であっても、流路19で沈降するインク微粒子の量を低減させた後に、パージまたはフラッシングが行われるため、パージやフラッシングに起因して、ヘッド3およびサブタンク9の中のインクの濃度が低下するのを抑制することが可能になる。
【0067】
上述した形態では、上流側インク室21の圧力と下流側インク室22の圧力との差によってヘッド3の中のインクを循環させているが、図3に示すように、プリンタ1は、ヘッド3の中のインクを循環させるためのインクポンプ61を備えていても良い。この場合には、サブタンク9の中に1個のインク室が形成されている。また、この場合には、配管31の途中にインクポンプ61が配置されている。この場合には、インクポンプ61が、インク流出口24から循環経路32を経由してインク流入口25に向かう通常のインクの流れと、インク流入口25から循環経路32を経由してインク流出口24に向かう逆方向のインクの流れとを生じさせる。なお、図3では、上述した形態と同様の構成には、同一の符号を付している。
【0068】
上述した形態において、ヘッド3は、インク循環式のインクジェットヘッドでなくても良い。この場合には、図4に示すように、サブタンク9の中に1個のインク室が形成されている。また、サブタンク9には、サブタンク9の中からインクが流出するインク流出口64と、サブタンク9の中に向かってインクが流入するインク流入口65とが形成されている。また、この場合には、プリンタ1は、たとえば、サブタンク9の中のインクを循環させるためのインクポンプ66と、インク流出口64と三方弁51とを繋ぐ配管67と、インク流入口65と三方弁51とを繋ぐ配管68とを備えている。なお、図4では、上述した形態と同様の構成には、同一の符号を付している。
【0069】
図4に示す例では、インクポンプ11は、メインタンク10と三方弁51との間の配管経路に配置され、インクポンプ66は、配管67の途中に配置されている。また、配管67と配管68とによって、インクの循環経路72が構成されている。図4に示す例では、通常、インク流出口64とインク流入口65とを繋ぐインクの流路が形成されているが、サブタンク9の中のインクの量が少なくなると、三方弁51が切り替わって、インクポンプ11がメインタンク10からサブタンク9にインクを送るインクの流路が形成されて、メインタンク10からサブタンク9にインクが送られる。このときには、インク流入口65からサブタンク9の中にインクが流入する。
【0070】
また、図4に示す例では、プリンタ1の使用時に、通常、インクポンプ66は、インク流出口64からインクを流出させるとともに循環経路72を通過したインクをインク流入口65からサブタンク9の中に流入させているが、所定のタイミングで、インク流入口65からインクを流出させるとともに循環経路72を通過したインクをインク流出口64からサブタンク9の中に流入させており、通常のインクの流れ方向とは逆方向のインクの流れを所定のタイミングでサブタンク9の中に生じさせている。図4に示す変形例でも、通常のインクの流れ方向と逆方向のインクの流れをサブタンク9の中に生じさせたときに、サブタンク9の中の、通常のインクの流れ方向にインクを流した場合にインクの流れが悪くなる箇所において、インクの流れを改善して沈降したインク微粒子を流すことが可能になるため、サブタンク9の中の形状が複雑になっていても、サブタンク9の中でのインク微粒子の沈降を抑制することが可能になる。
【0071】
上述した形態において、所定のタイミングでインクの逆循環を行うのであれば、ヘッド3がインク滴を吐出していないときの所定のタイミングで、キャリッジ4を主走査方向に振動させなくても良い。また、上述した形態において、ヘッド3がインク滴を吐出していないときの所定のタイミングで、キャリッジ4を主走査方向に振動させるのであれば、所定のタイミングでインクの逆循環を行わなくても良い。
【0072】
上述した形態において、ヘッド3がインク滴を吐出していないときの所定のタイミングで、上下方向にキャリッジ4を振動させても良いし、主走査方向と上下方向とに直交する副走査方向にキャリッジ4を振動させても良い。また、上述した形態において、ヘッド3がインク滴を吐出していないときの所定のタイミングで、主走査方向および副走査方向以外の水平方向にキャリッジ4を振動させても良いし、上下方向および水平方向を含むランダムな方向にキャリッジ4を振動させても良い。
【符号の説明】
【0073】
1 プリンタ(インクジェットプリンタ)
3 ヘッド(インクジェットヘッド)
4 キャリッジ
5 キャリッジ駆動機構
9 サブタンク
12 圧力調整機構
13 メンテナンスユニット
16 インク供給口
17 インク排出口
18 ノズル部
19 流路
21 上流側インク室
22 下流側インク室
23 仕切り壁
24、64 インク流出口
25、65 インク流入口
30 配管(第1の配管)
31 配管(第2の配管)
32、72 循環経路
34 検知機構(第1検知機構)
35 検知機構(第2検知機構)
44 第1圧力調整機構
45 第2圧力調整機構
図1
図2
図3
図4