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特許7164478発電プラント及び発電プラントの出力増加制御方法
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  • 特許-発電プラント及び発電プラントの出力増加制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】発電プラント及び発電プラントの出力増加制御方法
(51)【国際特許分類】
   F01D 17/04 20060101AFI20221025BHJP
   F01D 17/10 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
F01D17/04
F01D17/10 G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019063120
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020159352
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】冨山 朋哉
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-190546(JP,A)
【文献】特開2013-053531(JP,A)
【文献】特開昭60-178908(JP,A)
【文献】国際公開第2012/090778(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102012000029(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 17/04
F01D 17/10
F01K 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気発生装置と、前記蒸気発生装置で発生した蒸気により駆動するタービンと、前記タービンから排出された蒸気を復水にする復水器と、復水ポンプで昇圧された復水を加熱する給水加熱器と、前記給水加熱器で加熱された復水を加熱脱気する脱気器と、前記脱気器の水位を調節する脱気器水位調節弁と、前記タービンから抽気した蒸気を前記給水加熱器へ導入する抽気系統に設けられた抽気弁を有する発電プラントにおいて、
前記給水加熱器へ補助蒸気を導入する補助蒸気導入系統と、
前記補助蒸気導入系統に設けられ前記給水加熱器へ供給する蒸気量を調整する補助蒸気調節弁と、
前記脱気器水位調節弁、前記抽気弁、前記補助蒸気調節弁に対して開度指令信号を出力する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記発電プラントに対する急速負荷増加要求時に、前記抽気弁を閉方向、前記脱気器水位調節弁を開度維持、補助蒸気調節弁を開方向に制御することを特徴とする発電プラント。
【請求項2】
請求項1に記載の発電プラントにおいて、
前記補助蒸気導入系統の補助蒸気供給管内に補助蒸気の減温器を設置したことを特徴とする発電プラント。
【請求項3】
請求項1に記載の発電プラントにおいて、
前記補助蒸気導入系統の補助蒸気供給管内に補助蒸気の減圧器を設置したことを特徴とする発電プラント。
【請求項4】
蒸気発生装置と、前記蒸気発生装置で発生した蒸気により駆動するタービンと、前記タービンから排出された蒸気を復水にする復水器と、復水ポンプで昇圧された復水を加熱する給水加熱器と、前記給水加熱器で加熱された復水を加熱脱気する脱気器と、前記脱気器の水位を調節する脱気器水位調節弁と、前記タービンから抽気した蒸気を前記給水加熱器へ導入する抽気系統に設けられた抽気弁と、前記給水加熱器へ補助蒸気を導入する補助蒸気導入系統と、前記補助蒸気導入系統に設けられ前記給水加熱器へ供給する蒸気量を調整する補助蒸気調節弁を備える発電プラントの出力増加制御方法であって、
前記発電プラントに対する急速負荷増加要求時に、前記抽気弁を閉方向、前記脱気器水位調節弁を開度維持、補助蒸気調節弁を開方向に制御することを特徴とする発電プラントの出力増加制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載の発電プラントの出力増加制御方法において、
前記給水加熱器内の圧力を計測し、前記給水加熱器内の圧力を制御指標として前記補助蒸気調節弁の開度を制御することを特徴とする発電プラントの出力増加制御方法。
【請求項6】
請求項4に記載の発電プラントの出力増加制御方法において、
前記抽気系統を流れる抽気蒸気の流量を計測し、前記抽気蒸気の流量を制御指標として前記補助蒸気調節弁の開度を制御することを特徴とする発電プラントの出力増加制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電プラント及び発電プラントの出力増加制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電プラントの発電機出力の急速負荷増加要求に対し、抽気弁と脱気器水位調節弁を一定の速度で一定開度まで閉動作させ一時的に発電機出力を増加させる復水絞り運転制御と呼ばれる制御方式がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-53531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
復水絞り運転制御においては、脱気器水位調節弁を閉制御するため、一時的に脱気器水位調節弁下流の復水流量が減少し脱気器の水位が減少する。そのため、水位の減少をカバーできるだけの容量を持った脱気器を設ける必要があり、設備コストが掛かるという問題がある。
また、脱気器水位調節弁の閉制御による、復水器内の水位上昇を避けるため、脱気器水位調節弁上流の復水を一時的に貯水するための復水貯蔵タンク(Cold Condensate Storage Tank、以下CCSTと称する)を設置する必要があり、さらなる設備コスト上昇の要因となる。
本発明の目的は、発電プラントの発電出力増加を実施する上で、CCSTを不要にすること若しくはその容量を小さくすることを可能とし、また、脱気器容量に依らない発電プラント及び発電プラントの出力増加制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、蒸気発生装置と、蒸気発生装置で発生した蒸気により駆動するタービンと、タービンから排出された蒸気を復水にする復水器と、脱気器の水位を調節する脱気器水位調節弁と、復水ポンプで昇圧された復水を加熱する給水加熱器と、給水加熱器で加熱された復水を加熱脱気する脱気器と、タービンから抽気した蒸気を給水加熱器へ導入する抽気系統に設けられた抽気弁を有する発電プラントにおいて、給水加熱器へ補助蒸気を導入する補助蒸気導入系統と、補助蒸気導入系統に設けられ給水加熱器へ供給する蒸気量を調整する補助蒸気調節弁とを設置し、急速負荷要求時に、抽気弁を閉方向、脱気器水位調節弁を開度維持、補助蒸気調節弁を開方向に制御するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、発電出力増加を実施する上で、CCSTを不要にすること若しくはその容量を小さくすることができ、また、脱気器容量に依らない発電出力増加を実現でき、その結果、設備コストの増加を抑制することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施例の発電プラントの構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施例について図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の発電プラントの構成例を示す図である。なお、図では、主蒸気弁などの弁や、脱塩装置などその他の補機類の図示を省略している。
【0009】
発電プラント(蒸気タービン発電設備)は、ボイラ(蒸気発生装置)1、ボイラ1からの主蒸気により駆動される高圧タービン2、高圧タービン2の排気蒸気をボイラ1で再熱した再熱蒸気により駆動される中圧タービン3、中圧タービンの排気蒸気により駆動される低圧タービン4と、高圧タービン,中圧タービン及び低圧タービンにより駆動される発電機5とから構成されている。また、発電プラントは、復水器6、復水ポンプ8、低圧給水加熱器9、脱気器10、給水ポンプ11、高圧給水加熱器12などから構成される復水・給水系を備えている。
【0010】
低圧給水加熱器9には、低圧タービン4からの抽気蒸気が低圧抽気配管22を介して供給される。なお、図面では低圧給水加熱器9が1台しか図示されていないが、必要に応じて複数台設置されている。また、後段側の低圧給水加熱器には、中圧タービンからの抽気蒸気が供給される場合もある。
【0011】
脱気器10には、中圧タービン3からの抽気蒸気が第2高圧抽気配管21を介して供給されている。中圧タービン3の上流側に取り出し位置を有する第1高圧抽気配管20を介して抽気蒸気を脱気器10に供給する場合もある。
【0012】
高圧給水加熱器12には、中圧タービン3の上流側に取り出し位置を有する第1高圧抽気配管20を介して抽気蒸気が供給されている。なお、図面では高圧給水加熱器12が1台しか図示されていないが、必要に応じて複数台設置されている。また、後段側の高圧給水加熱器には、高圧タービンからの抽気蒸気が供給される場合もある。
【0013】
脱気器10の上流側の復水系統に脱気器10の水位を調節する脱気器水位調節弁30が設けられている。本実施例では、復水ポンプ8の下流の復水配管7に脱気器水位調節弁30が設置されている。また、低圧抽気配管22には低圧タービンから抽気した蒸気の遮断または抽気蒸気量を調整する抽気弁31が設けられている。
【0014】
本実施例では、さらに、低圧給水加熱器9へ補助蒸気を導入する補助蒸気導入系統が設けられている。補助蒸気導入系統は、所内ボイラなどの補助蒸気源50と、補助蒸気源50からの蒸気を低圧給水加熱器9へ導入する補助蒸気供給管23を備え、補助蒸気供給管23には低圧給水加熱器9へ供給する蒸気量を調節する補助蒸気調節弁32が設けられている。所内ボイラは給水ポンプ駆動タービンの駆動用蒸気、蒸気タービンの冷却用蒸気、脱気器の起動用蒸気などに用いられ、ボイラ1よりも機動性に優れるものである。
【0015】
また、本実施例では、低圧抽気配管22には抽気蒸気量を計測する流量計41が設置され、低圧給水加熱器9には低圧給水加熱器内の圧力を計測する圧力計42が設置されている。
【0016】
そして、本実施例では、出力上昇指令信号や流量計41,圧力計42からの信号などを入力として、ボイラ1への燃料投入指令信号や、脱気器水位調節弁30,抽気弁31,補助蒸気調節弁32の開度指令信号などを出力する制御装置100が設けられている。
【0017】
次に本発明における発電プラントの出力増加制御方法の一実施例について説明する。
発電プラントに対して急速負荷増加要求があった場合、ボイラ負荷が立ち上がるまでに、上述のように構成された発電プラントを次に述べる方法により制御して発電出力の急速上昇要求に対処するようにしている。
【0018】
例えば、電力系統における系統周波数低下が発生すると、中央給電所などから3%出力上昇指令が発電プラントの制御装置100に出力される。
【0019】
制御装置100は、出力上昇指令を受けると、抽気弁31に閉指令を出力し、補助蒸気調節弁32に開指令を出力する。また、このとき、従来の復水絞り運転制御では、閉指令が出されていた脱気器水位調節弁30には、その時点の開度維持がなされるように閉指令も開指令も出力されない。また、このとき、制御装置100は、ボイラ1にボイラ燃料投入指令を出力し、燃料を増加させて、ボイラ1の発生蒸気量を増加させる。
【0020】
抽気弁31を閉制御することで、抽気流量が減少した分、低圧タービン4内部の後続段流量が増加することで発電機出力が上昇する(発電機出力の3%上昇を達成)。
【0021】
ボイラ1での発生蒸気量を増加させるために、ボイラ1への給水流量には増加指令が出力される。従来の復水絞り制御では、脱気器水位調節弁30が絞られることにより、脱気器10に入る復水流量は減少し、一方、給水流量増加指令により、脱気器10から給水ポンプ11によりボイラ1へ圧送される給水流量は増加することになる。この結果、従来の復水絞り制御では、脱気器10から出る給水量(増加)と脱気器10に入る復水量(減少)にアンバランスが生じ、脱気器10の水位が低下する。このため、従来は、水位の減少をカバーできるだけの容量を持った脱気器を設ける必要があり、設備コストが掛かる。
【0022】
本実施例では、脱気器水位調節弁30の開度を維持した状態であるので、脱気器10の水位が低下しない。したがって、発電出力増加を実施する上で、脱気器10の容量を大きくする必要がない。すなわち、脱気器容量に依らない発電出力増加を実現できる。また、抽気弁31を閉じても補助蒸気調節弁32を開制御し低圧給水加熱器9へ補助蒸気を供給しているので、必要な給水加熱を行うことができる。
【0023】
本発明の実施例によれば、急速負荷増加要求への対応運転中に脱気器水位調節弁30を閉制御する必要がなくなり、低圧給水加熱器9へ流入する復水の流量を一定に保つことで、脱気器水位及び復水器水位が変化しなくなるので、CCSTの削減、脱気器容量の低減が可能となる。
【0024】
ボイラ1において、3%出力増加が可能となるボイラ発生蒸気量に到達すると、急速負荷増加要求への対応運転を終了する。具体的には、抽気弁31を通常の開度まで戻し、補助蒸気調節弁32を閉じするように、制御装置100から抽気弁31及び補助蒸気調節弁32に開度指令信号を出力する。
【0025】
なお、補助蒸気調節弁32の開度は、抽気弁31の閉動作により減少する抽気蒸気量を補うように、流量計41からの流量信号に基づき制御することが望ましい。
【0026】
また、補助蒸気調節弁32の開度は、抽気弁31の閉動作により低下する低圧給水加熱器9内の圧力を補うように、圧力計42からの圧力信号に基づき制御することが望ましい。
【0027】
また、補助蒸気供給管23に減温器60または減圧器70を設け、補助蒸気源50からの補助蒸気の温度または圧力を抽気蒸気の温度や圧力に合わせるようにすることが望ましい。
【0028】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加,削除,置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0029】
1・・・ボイラ、2・・・高圧タービン、3・・・中圧タービン、4・・・低圧タービン、5・・・発電機、6・・・復水器、7・・・復水配管、8・・・復水ポンプ、9・・・給水加熱器(低圧給水加熱器)、10・・・脱気器、11・・・給水ポンプ、12・・・高圧給水加熱器、20…第1高圧抽気配管、21・・・第2高圧抽気配管、22・・・低圧抽気配管、23・・・補助蒸気供給管、30・・・脱気器水位調節弁、31・・・抽気弁、32・・・補助蒸気調節弁、41・・・流量計、42・・・圧力計、50・・・補助蒸気源、60・・・減温器、70・・・減圧器、100・・・制御装置。
図1