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特許7164491真空バルブ及び真空バルブに用いられるアクチュエータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】真空バルブ及び真空バルブに用いられるアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F16K 51/02 20060101AFI20221025BHJP
   F16K 31/04 20060101ALI20221025BHJP
   F16K 49/00 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
F16K51/02 A
F16K31/04 A
F16K49/00 B
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019109400
(22)【出願日】2019-06-12
(65)【公開番号】P2020200905
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】バイヤーズ エマニュエル
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-509570(JP,A)
【文献】特開2005-061437(JP,A)
【文献】特開2011-158096(JP,A)
【文献】特開平08-042734(JP,A)
【文献】特開2017-227325(JP,A)
【文献】実開平06-087761(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/00-31/05
F16K 31/44-31/62
F16K 51/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバの排出口を覆うバルブプレートと、当該バルブプレートを、前記排出口が設けられている前記真空チャンバの面に直交する軸方向に駆動させるポペット式アクチュエータとを備える真空バルブであって、
前記アクチュエータは、前記バルブプレートに連結されるシャフトと、
前記シャフトの径方向に並んで配置され、ボールねじ軸及び当該ボールねじ軸を回転させる駆動源を備える駆動ユニットと、
前記ボールねじ軸と前記シャフトを連結し、前記バルブプレートが前記排出口を覆う位置まで前記シャフトと一緒に前記軸方向に移動する連結部と、を備えていることを特徴とする真空バルブ。
【請求項2】
前記駆動源は、前記ボールねじ軸に直接接続される、請求項1に記載の真空バルブ。
【請求項3】
前記シャフトを囲み、シャフトの軸方向にび縮み可能なベローズを備え、
前記連結部は、前記ボールねじ軸と連結されるボールねじ連結部と、前記ボールねじ連結部から前記軸方向に沿って前記真空チャンバの排出口から離れた方向の位置で前記ベローズを支持する支持と、を有する、請求項1又は2に記載の真空バルブ。
【請求項4】
前記連結部は、前記駆動源を収容する駆動源収容凹部を有する、請求項1乃至3の何れか1項に記載の真空バルブ。
【請求項5】
前記バルブプレートと対向するように設けられたハウジング上板と、
前記ベローズが収容される中空空間に通じ、前記ハウジング上板に設けられた開口部とを備え、
前記開口部の径は、ベローズの径よりも大きい、請求項3又は請求項3を引用する請求項4に記載の真空バルブ。
【請求項6】
前記駆動源を複数個備える、請求項1乃至5の何れか1項に記載の真空バルブ。
【請求項7】
前記シャフトは、中空構造を有する、請求項1に記載の真空バルブ。
【請求項8】
前記シャフトを加熱するシャフト加熱部を備え、当該シャフト加熱部の給電ケーブルは、前記シャフトの中空部を通る、請求項7に記載の真空バルブ。
【請求項9】
前記バルブプレートを加熱するプレート加熱部を備え、当該プレート加熱部の給電ケーブルは、前記シャフトの中空部を通る、請求項7又は8に記載の真空バルブ。
【請求項10】
真空チャンバ用のポペット式バルブアクチュエータであって、
前記真空チャンバの排出口を覆うバルブプレートを前記排出口が設けられる面に直交する軸方向に駆動させるシャフトと、
前記シャフトの径方向に並んで配置され、ボールねじ軸及び当該ボールねじ軸を回転させる駆動源を備える駆動ユニットと、
前記ボールねじ軸と前記シャフトを連結し、前記シャフトと一緒に前記軸方向に移動する連結部と、を備えていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項11】
前記シャフトは、中空構造を有し、
前記ベローズの下側に設けられた下側フランジと前記支持部とは密封するように固定され、
前記シャフトの中空部は、前記シャフトの外部から密封されるように前記支持部に固定され、
前記支持部は前記シャフトの端部と対向する位置に貫通孔を有する、請求項3に記載の真空バルブ。
【請求項12】
前記真空チャンバは、前記排出口を介して、前記軸方向に沿って前記真空チャンバの排出口から離れた位置に配置される真空ポンプと連結される、請求項1乃至9、及び11の何れか1項に記載の真空バルブ。
【請求項13】
2本の前記ボールねじ軸と、
2本の前記ボールねじ軸をそれぞれ回転させる2つの前記駆動源とを備え、
2本の前記ボールねじ軸は前記シャフトの径方向にずれた位置で、前記排出口の接線方向において前記シャフトを挟むように配置される、請求項6に記載の真空バルブ。
【請求項14】
一対の前記アクチュエータを備え、一対の前記アクチュエータは、前記排出口の接線方向に垂直な径方向に沿って前記排出口を挟むように配置される、請求項1乃至9、及び11乃至13の何れか1項に記載の真空バルブ。
【請求項15】
前記アクチュエータは、吸気口と排気口とを有するハウジングを備え、前記吸気口は、前記軸方向において前記排気口よりも前記真空チャンバから遠い位置に設けられる、1乃至9、及び11乃至14の何れか1項に記載の真空バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空バルブ及び真空バルブに用いられるアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真空チャンバと、真空チャンバ内の圧力を調整する真空ポンプとの間の流体流を制御するための真空バルブが知られている。真空バルブは、真空チャンバの排出口を覆うバルブプレートと、バルブプレートを駆動させるアクチュエータとを備えている。バルブプレートの駆動精度及び駆動速度を高めるために、真空バルブ及びそのアクチュエータに関して様々な改良が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-42734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
真空ポンプは、比較的体積が大きいので、例えば真空チャンバの排出口の近くに設置される場合には、真空バルブのアクチュエータの配置場所を制約し得る。例えば、駆動源によりシャフト等の昇降機構を昇降させてバルブプレートを駆動させるポペット式のアクチュエータでは、昇降動作のために、昇降方向におけるアクチュエータの長さが長くなりがちであり、アクチュエータが真空ポンプ及びその付属の機器類と干渉し得る。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するものであり、配置の制約を受け難い真空バルブ、及び真空バルブに用いられるアクチュエータを提供することを目的とする。
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、バルブプレートと、当該バルブプレートを駆動させるアクチュエータとを備える真空バルブであって、アクチュエータは、バルブプレートに連結されるシャフトと、シャフトの径方向に並んで配置され、駆動軸及び当該駆動軸を回転させる駆動源を備える駆動ユニットと、駆動軸とシャフトを連結する連結部と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、駆動ユニットとシャフトとをシャフトの径方向に並んで配置でき、これにより、シャフトの軸方向に沿ったアクチュエータの長さを短くできる。
【発明の効果】
【0008】
以上のように本発明によれば、配置の制約を受け難くできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態による真空バルブを含む真空排気システムの概略図である。
図2】同真空バルブの斜視図である。
図3】同真空バルブの側断面図である。
図4】同真空バルブの側断面図である。
図5】同真空バルブの要部を示す概略的な断面図である。
図6】同真空バルブの変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態では、X軸、Y軸、及びZ軸からなる三次元直交座標を用いて詳細な説明を行うことがある。この場合において、真空チャンバの排出口が設けられた面(例えば水平面であってもよい)に沿ってX軸及びY軸をとり、+Y方向は排出口の外周から中心に向かう径方向にあたる。-Y方向はその逆方向である排出口の中心から外周に向かう径方向にあたる。X軸はこの面内でY軸と直交するから、X方向は排出口の接線方向にあたる。Z軸は、XY平面に直交する。Z方向はたとえば鉛直方向であってもよい。+Z方向は真空ポンプから排出口に向かう方向とする。-Z方向はその逆方向である排出口から真空ポンプに向かう方向とする。また、実施形態では、Z方向を上下方向ということがある。上方向は、+Z方向と一致する。下方向は、-Z方向と一致する。
【0011】
図1は、本実施形態による真空バルブを含む真空排気システムの概略図である。
【0012】
図1に示すように、真空排気システム1は、真空チャンバ2と、真空チャンバ2を排気するための真空ポンプ4とを連結して形成される。真空チャンバ2は、半導体、フラットパネル等の製造プロセスに用いられる。真空チャンバ2は、例えば所定のプロセスガス及びプラズマを用いて内部に配置された半導体基板にエッチング処理を施す際に使用される。真空ポンプ4は、配管6、及び真空チャンバ2の排出口8を介して真空チャンバ2と連結されている。真空ポンプ4を駆動すると、排出口8を介して真空チャンバ2内のプロセスガスが排気される。なお、真空ポンプ4は、配管6を介さずに、真空チャンバ2に直接取り付けられても良い。
【0013】
排出口8は、真空チャンバ2の-Z方向にある面に設けられており、排出口8は配管6に連結されている。また、真空チャンバ2内には、排出口8を覆うバルブプレート10が設けられている。バルブプレート10は、開度によって真空チャンバ2からの流体の排気量を調整できる、いわゆる可変コンダクタンスバルブである。バルブプレート10は、真空チャンバ2の外に設けられたアクチュエータ12によってZ軸に沿って移動し、開閉量が制御される。バルブプレート10は、排出口8を覆う大きさ及び形状を有している。バルブプレート10を閉じると排出口8が密閉され、真空チャンバ2内の圧力を維持できる。またバルブプレート10を所定量だけ開けて真空ポンプ4を駆動すると、真空ポンプ4によって真空チャンバ2内に負圧が発生し真空チャンバ2内からプロセスガスを排気できる。
【0014】
真空ポンプ4は、真空チャンバ2の外部、たとえば、-Z方向の面側に設けられている。真空ポンプ4は、例えば半導体製造設備において汎用されているターボ分子型の高真空ポンプである。真空ポンプ4は、真空チャンバ2に対向して配置される羽収容部4aと、配管や配線等が収容され、かつ外部機器と接続される配管や配線等が接続されているポンプ本体4bとを備える。
【0015】
真空チャンバ2には、バルブプレート10を作動させるための一対のアクチュエータ12が取り付けられており、バルブプレート10とアクチュエータ12が真空バルブを構成する。一対のアクチュエータ12は、真空チャンバ2の-Z方向の外面に取り付けられており、真空ポンプ4及び真空チャンバ2の排出口8をY軸に沿って挟むように配置されている。アクチュエータ12は、真空ポンプ4のポンプ本体4bから延びる配管や配線等と干渉しないように配置されている。真空チャンバ2にアクチュエータ12を取り付ける場合、アクチュエータ12とポンプ本体4bとの干渉、及びアクチュエータ12と真空ポンプ4の配線等との干渉を考慮する必要があり、配置上の制約が存在する場合がある。アクチュエータ12を、Z軸に沿った方向においてポンプ本体4bおよび/または配管や配線等には到達しないようなZ軸寸法を有する形状とすることで、アクチュエータ12が真空ポンプ4等と干渉するのを防止できる。
【0016】
図2は、アクチュエータの斜視図であり、図3及び図4は、真空バルブの側断面図である。なお、図3及び図4は、厳密な断面図ではなく、アクチュエータの構成をより分かり易くするために、ハウジング14を破線で示し、さらに各部の断面のハッチングを省略してある。なお、一対のアクチュエータ12は、同一の機械的構造を有しているため、以下では一方のアクチュエータ12を例に挙げ、アクチュエータ12の構造について詳細な説明を行う。また、本実施形態では2つのアクチュエータを同期させて駆動することでバルブプレート10の開度を調整することとするが、バルブプレート10が小さい場合には1つのアクチュエータで駆動してもよいし、バルブプレート10が大きい場合には3つ以上のアクチュエータで駆動してもよい。
【0017】
アクチュエータ12は、いわゆるポペット式のアクチュエータであり、ハウジング14と、ハウジング14内からハウジング14外まで突出するシャフト16と、シャフト16が貫通するハウジング14の開口18aとを備えている。ハウジング14は、直方体形状を有している。ハウジング14の+Z方向の端に設けられるハウジング上板14aには、バルブプレート10と接続されるシャフト16を配置するための開口18aが形成されている。また、ハウジング14の-Z方向の端に設けられるハウジング下板14bにも、Z方向から見たときに開口18aと略同一の位置に開口18bが形成されている。ハウジング14は、ハウジング上板14a以外の部位は、導電性を有さない樹脂で形成されてもよい。ハウジング上板14aは、一定以上の強度を有し、かつ導電性を有する金属で形成されている。
【0018】
ハウジング上板14aは、ハウジング14の+Z方向端部に設けられており、アクチュエータ12を真空チャンバ2に取り付ける際に、真空チャンバ2の外面に接触する。ハウジング上板14aに設けられた開口18aからは、シャフト16の+Z方向端部近傍がハウジング14外部に突出している。また、開口18aは、後述するベローズを交換する際にベローズを取り出す部分でもある。また、ハウジング上板14aには、アクチュエータ12を真空チャンバ2に固定するための複数のボルト14cが貫通する複数の貫通孔14dが設けられている。ボルト14cは、真空チャンバ2の-Z方向端部に設けられた底面板2aに嵌入され、アクチュエータ12を真空チャンバ2に固定する。全てのボルト14cを底面板2aに正確に嵌入すると、真空チャンバ2の底面板2aに形成された排出口8と、真空ポンプ4の流入口(図示せず)が連通する。
【0019】
ハウジング14の側面には、内部冷却用の吸気口22i、及び排気口22oが設けられている。真空チャンバ2やバルブプレート10は、プロセス時に発生する生成物が真空チャンバ2に付着するのを防止するためにヒータで加熱されることがある。このような場合、ハウジング14を冷却するための空気を取り込むための吸気口22iは、高温の真空チャンバ2から離れた位置に設けることが好ましい。これにより、真空チャンバ2によって加熱された空気が吸気口22iから取り込まれるのを防止できる。図示の例では、吸気口22iは、ハウジング14の-Y方向を向いた面の-Z方向側の端付近に設けられており、排気口22oは、-X方向を向いた面の+Z方向側の端付近に設けられている。なお、ハウジング14の+Y方向の面にも吸気口22iを設けてもよい。また、比較的熱を発し易い後述するモータの付近に吸気口22iを設けることが好ましい。
【0020】
アクチュエータ12は、バルブプレート10を駆動させるシャフト16と、シャフト16の径方向にずれた位置に配置された2本のボールねじ軸24と、ボールねじ軸24を回転させるための2つのモータ26と、シャフト16とボールねじ軸24を連結する連結部28とを備えている。アクチュエータ12は、2つのモータ26と2つのボールねじ軸24を備える駆動ユニットでシャフト16をZ軸に沿って移動させ、バルブプレート10の開度を調整する。より具体的には、アクチュエータ12は、2つのモータ26で同時に2つのボールねじ軸24をそれぞれ回転させる。ボールねじ軸24の回転により連結部28は、ボールねじ軸24に沿ってZ軸に沿って移動する。連結部28に固定されたシャフト16は、連結部28と一緒にZ軸に沿って移動する。また、アクチュエータ12は、アクチュエータ12の動作を制御するためのコントロール基板30a及び冷却用のファン32を内蔵している。
【0021】
シャフト16は、金属で形成されており中空構造を有している。シャフト16の+Z方向端は、バルブプレート10に取り付けられ、-Z方向端が連結部28に固定される。シャフト16は、ハウジング14のZ軸に沿った長さとほぼ同一の長さを有している。シャフト16をZ軸に沿って移動させることで、シャフト16の端に取り付けられたバルブプレート10をZ軸に沿って移動させる。シャフト16内に中空部を設けることで、シャフト16内に、例えばシャフト16を加熱するヒータ34aの配線を通すことができる。シャフト16の中空部は、シャフト16の上端から下端まで延在してもよい。シャフト16の下端には、後述する連結部28の貫通孔28fと対向する位置に開口を有してもよい。シャフト16の中空部は、連結部28の貫通孔28fを介してベローズ36の外部空間と連通する。そのため、シャフト16の中空部は、大気圧となる。シャフト16の周囲には、Z軸に沿って伸縮可能なベローズ36が配置されている。
【0022】
ベローズ36は、シャフト16の移動空間を構成し、この内部空間は、真空チャンバ2の内部空間と流体的に連通し、かつベローズ36によってベローズ36の周辺とは流体的に分離されている。ベローズ36は、Z軸に沿って収縮可能な蛇腹状の隔壁36aと、隔壁36aの+Z方向に形成された上側フランジ36bと、隔壁36aの-Z方向に形成された下側フランジ36cとを備える。ベローズ36の隔壁36aは、ベローズ36の内部空間と、ベローズ36の周辺空間とを仕切る。真空チャンバ2の運転時には、ベローズ36の内部空間は、真空チャンバ2と同一の圧力となり、ベローズ36の周辺空間は大気圧となる。ベローズ36の上側フランジ36bには、底面板2aに接触するシール構造20が形成されている。上側フランジ36bは、ハウジング上板14aの開口18aの周囲に形成された段差に引っ掛けられる。ハウジング上板14aが底面板2aに固定されると、上側フランジ36bは、段差と底面板2aに挟み込まれて固定される。その状態では、シール構造20は、ボルト14cによってハウジング上板14aを底面板2aに押し付けることにより、上側フランジ36bと、底面板2aとの間で押しつぶされ両者の間を密封する。
【0023】
下側フランジ36cは、連結部28に対して着脱可能に形成されている。下側フランジ36cには、連結部28に接触するシール構造38を備えており、両者はボルト(図示せず)によって固定されている。シール構造38は、ボルトを締め付けることにより下側フランジ36cと、連結部28の+Z方向の面との間で押しつぶされ両者の間を密封する。
【0024】
また、ベローズ36は、Z方向から見たときにハウジング上板14aに形成された開口18aよりも小さい寸法を有している。従って、下側フランジ36cと連結部28とを固定するボルトを取り外すことにより、隔壁36a、上側フランジ36b、及び下側フランジ36cを含むベローズ36は、開口18aを通してハウジング14から取り出せる。
【0025】
2本のボールねじ軸24は、+Z方向から見たときにX軸方向においてシャフト16を挟むように配置されZ軸に沿って互いに平行に延びる。また2本のボールねじ軸24は、ハウジング14内でZ軸回りに回転可能に、かつハウジング14に対して±X、±Y、及び±Z方向のいずれの方向にも移動しないように保持されている。より具体的には2本のボールねじ軸24の+Z方向端は、ハウジング上板14aによってベアリングなどを介して回転可能に保持されており、-Z方向端は、モータ26に連結されている。2本のボールねじ軸24を、シャフト16を挟むような位置に配置することで、ボールねじ軸24はシャフト16とは、シャフト16の径方向にずれている。また、図3に示す状態は、シャフト16を最も-Z方向側に移動させた状態を示すが、この状態では2本のボールねじ軸24とシャフト16は、X軸に沿って並び、Z軸方向においてほぼ同一の位置に配置されている。2本のボールねじ軸24とシャフト16とを並べて配置すると、アクチュエータ12のX軸に沿った長さが長くなる場合がある。しかしながら、殆どの場合において真空ポンプ4の構成部品がアクチュエータ12のX方向において干渉することがないため、このような配置は実質的に何ら不利な影響を生じさせない。
【0026】
ボールねじ軸24の周面には螺旋状のねじ山が形成されている。ボールねじ軸24のねじ山は、連結部28のナットと結合する。ボールねじ軸24の+Z方向端部は、ハウジングに対して回転可能に保持されており、-Z方向端部は、モータ26に直接、接続されている。本実施形態では、ボールねじ軸24を、歯車やベルト等を介さずにモータ26に直接接続する、いわゆるダイレクトドライブ方式を用いている。なお、いわゆるダイレクトドライブ方式では、ボールねじ軸24と、モータ26の出力軸とが直線状に並んでいる方式であり、モータ26が出力する力とボールねじ軸24に入力される力が等しくなる。ダイレクトドライブ方式は、ボールねじ軸24とモータ26の出力軸とを直接接続する構造の他に、ボールねじ軸24とモータ26の出力軸との間に、ボールねじ軸24とモータ26の出力軸とが互いに動かないように連結する連結具を介在させたもの含む。2つのボールねじ軸24は、それぞれ連結部28に設けられた貫通孔28aに挿入される。
【0027】
2つのモータ26は、それぞれのモータ26の駆動軸が、対応するボールねじ軸24の軸と一直線になるように配置されている。より具体的には2つのモータ26は、ハウジング14の-Z方向端付近に、シャフト16を挟むように配置されている。2つのモータ26の駆動は完全に同期しており、同一の加速度、及び同一の回転速度で対応する2つのボールねじ軸24を回転させる。
【0028】
連結部28は、ハウジング14の内部を横切るようにX軸に沿って延びており、2つのボールねじ軸24の回転によりシャフト16、及びベローズ36の下側フランジ36cをZ軸に沿って移動させる。また、アクチュエータ12は、連結部28がXY平面と平行な姿勢を維持したまま、Z軸に沿って移動するように連結部28の移動を規制するリニアガイドGを備えている。連結部28は、金属材料を、Y軸に沿って見たときにクランク形状にして形成されている。より具体的には、連結部28は、それぞれのボールねじ軸24と連結される2つのボールねじ連結部28bと、ボールねじ連結部28bから-Z方向にずれた位置でベローズ36を支持する支持部28cと、Z軸方向に延び2つのボールねじ連結部28bと支持部28cとを連結する2つのZ方向連結部28dとを備える。ボールねじ連結部28bは、ボールねじ軸24と結合するナットを含む。2つのボールねじ連結部28bは、同一のXY平面内に形成されており、XY平面内で広がる板形状を有している。ボールねじ連結部28bは、ボールねじ軸24が貫通する貫通孔28aと、ボールねじ軸24と連結されるナット28eとを備えている。支持部28cは、2つのボールねじ連結部28bよりも-Z方向にあるXY平面内で広がる板形状を有している。支持部28cの+Z方向の面には、ベローズ36の下側フランジ36cが固定され、シール構造38によって下側フランジ36cと支持部28cの+Z方向の面との間が密封される。また、シャフト16は、その内部が密封されるように支持部28cに連結される。たとえば、ベローズ36の下側フランジ36cの径方向内周とシャフト16の外周との間に、Oリングなどのシール部材を配置してもよい。このようにして、シャフト16の中空部は、シャフト16の外部から密封される。支持部28cは、シャフト16の中空部と連通する貫通孔28fを備えており、シャフト16の中空部は、貫通孔28fを介して大気圧となる。Z方向連結部28dは、2つのボールねじ連結部28bのシャフト16側の端と、支持部28cのモータ26側の端とを連結する。これにより、2つのボールねじ連結部28bと、支持部28cとは、Z軸方向にずれた位置で互いに固定される。支持部28cは、ボールねじ連結部28bのナット28eを介してボールねじ軸24と連結され、ボールねじ軸24が回転すると、ボールねじ軸24に沿って±Z方向に移動する。このとき、ベローズ36の上側フランジ36bは、Z軸に沿って移動せず、下側フランジ36cだけがZ軸に沿って移動する。
【0029】
また、連結部28には、両端に駆動源収容凹部としてのモータ収容凹部40が形成され、中央にベローズ収容凹部42が形成されている。モータ収容凹部40は、連結部28の-Z方向側を凹ませた凹形状を有しており、Z方向連結部28dと、ボールねじ連結部28bとがなすL字形状によって部分的に囲まれる領域に形成される。ベローズ収容凹部42は、支持部28cと、2つのZ方向連結部28dとによって部分的に囲まれる領域に形成される。モータ収容凹部40により、連結部28が最も-Z方向側にあるとき(図3の状態)に連結部28とモータ26とが干渉しない。また、ベローズ収容凹部42により、連結部28が最もZ方向側にあるとき(図4の状態)に連結部28と、折り畳まれたベローズ36が干渉しない。
【0030】
リニアガイドGは、例えばZ軸に沿って延びる板状部材であり、連結部28に形成されたZ軸に沿って延びる溝(図示せず)とリニアガイドGをかみ合わせることにより、連結部28は姿勢を維持する。
【0031】
なお、連結部28は、少なくとも1つのボールねじ連結部28bと、ボールねじ連結部28bから-Z方向にずれた位置に形成された支持部28cと、両者を連結する少なくとも1つのZ方向連結部28dとを備えていれば、モータ収容凹部40、及びベローズ収容凹部42を形成できる。したがって、アクチュエータ12がモータ26を1つしか備えていない場合でも、上述した構造は実現可能である。
【0032】
ベローズ収容凹部42には、Z方向の面にベローズ36の-Z方向の端、及びシャフト16の-Z方向の端が取り付けられている。ベローズ収容凹部42は、上述したように折り畳まれたベローズ36と連結部28との干渉を防止する。また、ベローズ収容凹部42にはシャフト16の-Z方向の端が取り付けられており、連結部28のZ軸に沿った移動に伴ってシャフト16をZ軸に沿って移動させる。ベローズ収容凹部42に対応する位置の-Z方向の面は、ハウジング14の-Z方向の端付近に到達する。これにより、アクチュエータ12のZ軸に沿った長さは、シャフト16の長さとほぼ同一となる。
【0033】
また、連結部28を金属製とした上で連結部28と、金属製のハウジング上板14aとの間に可撓性のアース線Eを配置することで金属製の各部を同電位にし、金属製のシャフト16の帯電を防止してもよい。
【0034】
コントロール基板30aは、ハウジング14の壁面に沿って配置されている。より具体的には、本実施形態では、コントロール基板30aは、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置やRAM(Random Access Memory)等の計算領域を備えており、ハウジング14のX方向側の側面に沿って配置されている。また、配線基板30bが、ハウジング14の-Z方向側の底面に沿って配置されコントロール基板30aとモータ26とを接続している。コントロール基板30a付近には、ハウジング14の排気口22oと対応する位置設けられた冷却用のファン32が設けられている。コントロール基板30aには、真空チャンバ2内の圧力の検出結果等が入力され、コントロール基板30aは、入力された結果に基づいてモータ26の駆動量を算出し、開弁信号をモータ26に出力する。
【0035】
また、シャフト16の中空部内に、シャフト16を加熱してプロセス処理時に発生する生成物の付着を防止するヒータ34aを設けてもよい。ヒータ34aの配線は、シャフト16の中空部、及び連結部28の貫通孔28fを通って連結部28よりも-Z方向に延び、さらにハウジング下板14bの開口18bを通してハウジング14の外部まで延びる。これにより、ヒータ34aの配線をアクチュエータ12の外部の電源と接続できる。
【0036】
図5は、アクチュエータの要部を示す概略的な断面図である。なお、図5は、ハウジング14内の空気の流れを説明することを目的とする図であるため、アクチュエータ12内で空気の流れと関係が深い構成要素だけを示し、他の構成要素は省略している。図5に示すように、アクチュエータ12内には、真空チャンバ2から離れた位置にある吸気口22iから空気が流入する。吸気口22iからアクチュエータ12内に流入した空気は、発熱源となるモータ26の付近、及びコントロール基板30aの付近を通ってファン32の方向、即ち+Z方向に向けて流れる。ファン32に到達した空気は、排気口22oからハウジング14外に排出される。
【0037】
次に、アクチュエータの作用について説明する。バルブプレート10を閉じている状態では、アクチュエータ12は、図3に示す状態となる。この場合、連結部28は、ハウジング14内の最も-Z方向側にあり、X軸と平行な姿勢を保持している。この状態で、コントロール基板30からモータ26に開弁信号が入力されると、2つのモータ26が同時に、同一の量だけ回転駆動する。2つのモータ26が回転駆動すると、2つのモータ26に連結されているボールねじ軸24が同時に、同一の量だけ回転する。これにより、図4に示すように、ボールねじ軸24に噛み合っている連結部28が、X軸と平行な姿勢を維持しながらZ軸に沿って延びるリニアガイドGに沿って、ボールねじ軸24の回転量に対応する量だけ+Z方向に移動する。連結部28が+Z方向に移動すると、連結部28は、ベローズ36及びシャフト16を+Z方向に移動させる。これによりバルブプレート10が+Z方向に移動する。また、連結部28の+Z方向への移動に伴い、ベローズ36の上側フランジ36bの位置を保持したまま、下側フランジ36cを+Z軸方向に移動させる。これにより、ベローズ36は、ベローズ収容凹部42と、ハウジング上板14aによって折り畳まれる。折り畳まれたベローズ36は、ベローズ収容凹部42内で縮むため、連結部28の移動を妨げない。連結部28が+Z方向に移動することによりシャフト16がバルブプレート10をZ方向に移動させ、真空チャンバ2の排出口8が開弁信号に応じた量だけ開く。シャフト16を+Z方向に移動させると、シャフト16はアクチュエータ12のハウジングから突出し、真空チャンバ2内に延びる。このとき、例えばヒータ34aを駆動することでシャフト16を加熱し、シャフト16にプロセス時に発生する生成物が付着するのを防止してもよい。
【0038】
真空チャンバ2の排出口8を閉じる場合には、モータ26を上記とは逆回転させる。モータ26を逆回転させると、ボールねじ軸24がZ軸回りに回転する。これにより、連結部28はX軸と平行な姿勢を維持したまま、リニアガイドGに沿って-Z方向に移動する。連結部28が最下部(図3に示す位置)まで到達すると、バルブプレート10が完全に閉じ、真空チャンバ2を密封できる。
【0039】
以上のように実施形態にかかるアクチュエータ12によれば、アクチュエータ12のZ軸に沿った長さを、シャフト16の長さとほぼ同一にできる。これにより、アクチュエータ12のZ軸に沿った長さを短くできる。また、シャフト16と、ボールねじ軸24及びモータ26とを、同軸上に配置せず、シャフト16の径方向にずらして配置することで、シャフト16内に必要な配線を通せる。
【0040】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0041】
図6は、変形例による真空バルブが適用された真空排気システムを示すブロック図である。図6に示すように、シャフト16内に配置されていたヒータ34aに加えて、又はヒータ34aに替えて、バルブプレート10の内部にヒータ34b配置してもよい。この場合も、ヒータ34bの配線Lは、シャフト16内を通ってアクチュエータ12の外部まで延びる。このような形態により、バルブプレート10に、プロセス時に発生する生成物が付着するのを防止できる。
【符号の説明】
【0042】
10 バルブプレート
12 アクチュエータ
14 ハウジング
16 シャフト
18a 開口
24 ボールねじ
26 モータ
28 連結部
34a,34b ヒータ
36 ベローズ
40 モータ収容凹部
42 ベローズ収容凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6