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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】多重袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 30/08 20060101AFI20221025BHJP
   B65D 33/25 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
B65D30/08
B65D33/25 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019129011
(22)【出願日】2019-07-11
(65)【公開番号】P2021001021
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2019-07-11
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2019116367
(32)【優先日】2019-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000147316
【氏名又は名称】株式会社生産日本社
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】野口 隆之
【合議体】
【審判長】一ノ瀬 覚
【審判官】筑波 茂樹
【審判官】内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-159444(JP,U)
【文献】特開2003-118021(JP,A)
【文献】特開2018-20800(JP,A)
【文献】国際公開第2016/159148(WO,A1)
【文献】特開平3-197033(JP,A)
【文献】登録実用新案第3110366(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 33/08
B65D 33/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基材からなる胴部を有する外袋と、熱可塑性樹脂フィルムからなる胴部を有する内袋と、を備える多重袋において、
前記多重袋は、収容部と、該収容部に連通する開口部と、該開口部に対向する縁に設けられた底部と、前記開口部と前記底部とを結ぶ第1側縁封止部と、該第1側縁封止部に対向する第2側縁封止部と、を有し、かつ、前記開口部の縁に沿って内表面に設けられた雌雄咬合型の嵌合具を備え、
前記第1側縁封止部及び前記第2側縁封止部は、前記多孔質基材及び前記熱可塑性樹脂フィルムの厚さ方向に沿って、前記多孔質基材の内表面と前記熱可塑性樹脂フィルムの外表面との熱接着部と、前記熱可塑性樹脂フィルムの内表面同士の熱接着部と、前記熱可塑性樹脂フィルムの外表面と前記多孔質基材の内表面との熱接着部と、を有し、
前記開口部の縁は、前記多孔質基材の内表面と前記熱可塑性樹脂フィルムの外表面との熱接着部を有し、
前記熱可塑性樹脂フィルムの熱可塑性樹脂は、前記熱接着部のうち前記多孔質基材と前記熱可塑性樹脂フィルムとの熱接着部において、前記多孔質基材の厚さ方向に20~100%含浸しており、
前記多重袋は、前記嵌合具よりも前記底部側の領域に、前記多孔質基材の内表面と前記熱可塑性樹脂フィルムの外表面との熱接着部を有する線シール部と、前記多孔質基材の内表面と前記熱可塑性樹脂フィルムの外表面との非接着部と、を有し、該非接着部において前記熱可塑性樹脂フィルムは貫通孔を有さないことを特徴とする多重袋。
【請求項2】
前記底部は、前記多孔質基材及び前記熱可塑性樹脂フィルムの厚さ方向に沿って、前記多孔質基材の内表面と前記熱可塑性樹脂フィルムの外表面との熱接着部と、前記熱可塑性樹脂フィルムの内表面同士の熱接着部と、前記熱可塑性樹脂フィルムの外表面と前記多孔質基材の内表面との熱接着部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の多重袋。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂フィルムの熱可塑性樹脂は、前記多孔質基材の厚さ方向に100%を超えて含浸していることを特徴とする請求項1又は2に記載の多重袋。
【請求項4】
前記多重袋が、美観袋であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の多重袋。
【請求項5】
前記多重袋は、前記外袋と前記内袋とに加えて、一つ以上の追加袋を更に有し、
該追加袋は、前記内袋の内側に配置されるか、前記内袋と前記外袋との間に配置されるか、又は前記外袋の外側に配置され、
前記追加袋の胴部の基材は、多孔質基材、熱可塑性樹脂フィルム及び金属箔の少なくともいずれか一種を含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の多重袋。
【請求項6】
前記線シール部が、前記嵌合具に並列する線状シールを含むことを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の多重袋。
【請求項7】
前記線シール部は、格子状シール、斜め格子状シール、円形状シール、横線状シール又は大小の格子状を組み合わせたシールを含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載の多重袋。
【請求項8】
前記線シール部は、前記熱可塑性樹脂フィルムの内表面同士の熱接着部を有さないことを特徴とする請求項1~7のいずれか一つに記載の多重袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多重袋に関する。
【背景技術】
【0002】
再封止が可能な嵌合具付き袋体としては、様々な形態が提案されている。例えば、大小異なる複数の袋部の開口及び収納物の取り出しを容易とした合成樹脂製ファスナ付きの袋体が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。複数の袋部を一体に形成し、各袋部に分別収納を可能とした合成樹脂製袋体が提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。外袋の内部に更に内袋が収納され、各袋に備えられた嵌合具によって各袋を封止することができる嵌合具付き二重袋が提案されている(例えば、特許文献3を参照。)。二枚のシートの間に不織布が配置され、二枚のシートの上部にファスナが取り付けられており、二枚のシートと不織布とが溶断によって一体に密着固定されたコンパクトディスク収納用包装容器が提案されている(例えば、特許文献4を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-25794号公報
【文献】特開2005-145536号公報
【文献】特開2012-20463号公報
【文献】特開2010-269825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
嵌合具付き袋体は、再封止が可能であることから、嵌合具が付いていない袋体と比較して、開封後長期間にわたって使用されることが多く、より美観を起こさせる袋体が求められていた。しかし、特許文献1~4では、いずれも美観に配慮した嵌合具付き袋体は提案されていない。
【0005】
本開示は、多重袋を安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る多重袋は、多孔質基材からなる胴部を有する外袋と、熱可塑性樹脂フィルムからなる胴部を有する内袋と、を備える多重袋において、前記多重袋は、収容部と、該収容部に連通する開口部と、該開口部に対向する縁に設けられた底部と、前記開口部と前記底部とを結ぶ第1側縁封止部と、該第1側縁封止部に対向する第2側縁封止部と、を有し、かつ、前記開口部の縁に沿って内表面に設けられた雌雄咬合型の嵌合具を備え、前記第1側縁封止部及び前記第2側縁封止部は、前記多孔質基材及び前記熱可塑性樹脂フィルムの厚さ方向に沿って、前記多孔質基材の内表面と前記熱可塑性樹脂フィルムの外表面との熱接着部と、前記熱可塑性樹脂フィルムの内表面同士の熱接着部と、前記熱可塑性樹脂フィルムの外表面と前記多孔質基材の内表面との熱接着部と、を有し、前記開口部の縁は、前記多孔質基材の内表面と前記熱可塑性樹脂フィルムの外表面との熱接着部を有し、前記熱可塑性樹脂フィルムの熱可塑性樹脂は、前記熱接着部のうち前記多孔質基材と前記熱可塑性樹脂フィルムとの熱接着部において、前記多孔質基材の厚さ方向に20~100%含浸しており、前記多重袋は、前記嵌合具よりも前記底部側の領域に、前記多孔質基材の内表面と前記熱可塑性樹脂フィルムの外表面との熱接着部を有する線シール部と、前記多孔質基材の内表面と前記熱可塑性樹脂フィルムの外表面との非接着部と、を有し、該非接着部において前記熱可塑性樹脂フィルムは貫通孔を有さないことを特徴とする。線シール部を備えることで、外袋の多孔質基材と内袋の熱可塑性樹脂フィルムとの接合部分が増えるので、外袋の多孔質基材と内袋の熱可塑性樹脂フィルムとのズレをより抑制することができる。また、嵌合具を備えることで、嵌合具によって再封止可能とすることができる。
【0008】
本発明に係る多重袋では、前記底部は、前記多孔質基材及び前記熱可塑性樹脂フィルムの厚さ方向に沿って、前記多孔質基材の内表面と前記熱可塑性樹脂フィルムの外表面との熱接着部と、前記熱可塑性樹脂フィルムの内表面同士の熱接着部と、前記熱可塑性樹脂フィルムの外表面と前記多孔質基材の内表面との熱接着部と、を有することが好ましい。底部において内袋の熱可塑性樹脂フィルムが袋の内方に浮き上がることを防止することができる。
【0009】
本発明に係る多重袋では、前記熱可塑性樹脂フィルムの熱可塑性樹脂は、前記多孔質基材の厚さ方向に100%を超えて含浸している形態を包含する。
【0011】
本発明に係る多重袋では、前記多重袋が、美観袋である形態を包含する。
【0012】
本発明に係る多重袋では、前記多重袋は、前記外袋と前記内袋とに加えて、一つ以上の追加袋を更に有し、該追加袋は、前記内袋の内側に配置されるか、前記内袋と前記外袋との間に配置されるか、又は前記外袋の外側に配置され、前記追加袋の胴部の基材は、多孔質基材、熱可塑性樹脂フィルム及び金属箔の少なくともいずれか一種を含む形態を包含する。本発明に係る多重袋では、前記線シール部が、前記嵌合具に並列する線状シールを含 むことが好ましい。本発明に係る多重袋では、前記線シール部は、格子状シール、斜め格 子状シール、円形状シール、横線状シール又は大小の格子状を組み合わせたシールを含む ことが好ましい。本発明に係る多重袋では、前記線シール部は、前記熱可塑性樹脂フィル ムの内表面同士の熱接着部を有さないことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、多重袋を安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る多重袋の第一例を示す正面図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3図1のB-B線断面図である。
図4】本実施形態に係る多重袋の第二例を示す正面図である。
図5図4のC-C線断面図である。
図6】本実施形態に係る多重袋の第三例を示す正面図である。
図7図6のD-D線断面図である。
図8図7のX部分の部分拡大図である。
図9図7のY部分の部分拡大図である。
図10】線シール部の変形例を示す正面図であり、(a)は線シール部が斜め格子状である形態、(b)は線シール部が円形状である形態、(c)は線シール部が横線状である形態、(d)は線シール部が大小の格子状を有する形態である。
図11】本実施形態に係る多重袋の第四例を示す正面図である。
図12図11のE-E線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0016】
次に、本実施形態に係る多重袋のうち、特に多孔質基材に、印刷、地模様又は染め模様など多様なデザインを施すことによって特有の美観を現出した袋(以降、美観袋ということもある。)を中心に説明するが、本発明はこれに限定されない。本発明に係る多重袋は、特に美観を現出しないような形態、例えば、多孔質基材が無地のままの形態や単色印刷だけを施した形態も包含する。
【0017】
図1は、本実施形態に係る多重袋の第一例を示す正面図である。図2は、図1のA-A線断面図、図3は、図1のB-B線断面図である。本実施形態に係る多重袋1は、図1図3に示すように、多孔質基材からなる胴部を有する外袋2と、熱可塑性樹脂フィルムからなる胴部を有する内袋3と、を備える多重袋において、多重袋1は、収容部S1と、収容部S1に連通する開口部5と、開口部5に対向する縁に設けられた底部4と、開口部5と底部4とを結ぶ第1側縁封止部6Aと、第1側縁封止部6Aに対向する第2側縁封止部6Bと、を有し、第1側縁封止部6A及び第2側縁封止部6Bは、図3に示すように、多孔質基材及び熱可塑性樹脂フィルムの厚さ方向Tに沿って、多孔質基材の内表面と熱可塑性樹脂フィルムの外表面との熱接着部H1と、熱可塑性樹脂フィルムの内表面同士の熱接着部H2と、熱可塑性樹脂フィルムの外表面と多孔質基材の内表面との熱接着部H3と、を有し、開口部の縁は、図2に示すように、多孔質基材の内表面と熱可塑性樹脂フィルムの外表面との熱接着部H8を有し、熱可塑性樹脂フィルムの熱可塑性樹脂は、熱接着部のうち多孔質基材と熱可塑性樹脂フィルムとの熱接着部H1,H3,H8において、多孔質基材の厚さ方向に20~100%含浸している。
【0018】
多重袋1は、図1に示すように、正面視で四角形状の袋体であることが好ましく、下縁に底部4、左右の側縁にそれぞれ第1側縁封止部6A及び第2側縁封止部6B、上縁に開口部5を有することが好ましい。収容部S1は、多重袋1の内部空間であり、例えば最内面となる基材の内側に設けられる。図2では一例として、最内面となる基材が内袋3の胴部を構成する熱可塑性樹脂フィルムであり、収容部S1が内袋3の内部空間である形態を示した。多重袋1の形状は、図1では一例として底部4を有する形態を示したが、本発明はこれに限定されない。また、多重袋1は、底部4を有さない形態であってもよい。図1に示すように底部4を有する形態は、例えば、表面フィルムと裏面フィルムとが1枚のフィルムを折り返して形成した袋体である。底部4を有さない形態(不図示)は、例えば、表面フィルムと裏面フィルムとが別個のフィルムである袋体、スタンディングパウチのように胴部と底部4とが別個のフィルムである袋体である。
【0019】
外袋2は、図1及び図2に示すように、袋の外観を構成する部分である。外袋2の胴部は、多孔質基材からなる。多孔質基材は、熱可塑性樹脂フィルムの熱可塑性樹脂が含浸可能な素材であればよく、特に限定されない。多孔質基材は、例えば、天然紙、繊維を織って作られた織布、又は、不織布である。天然紙は、特に限定されないが、例えば、クラフト紙である。織布の繊維は、特に限定されないが、例えば、生分解性繊維及び合成繊維を包含する。生分解性繊維は、例えば、綿、絹、麻、モヘヤ、ウール若しくはカシミアなどの天然繊維、又はアセテート、キュプラ若しくはレーヨンなどの再生繊維である。合成繊維は、例えば、ポリアミド(商品名:ナイロン(NY))、ポリウレタン若しくはポリエステルである。不織布の種類は、特に限定されないが、例えば、合成樹脂製不織布又は生分解性不織布である。合成樹脂製不織布の合成樹脂は、特に限定されないが、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)若しくは低密度ポリエチレン(LDPE)などのポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、AS樹脂(SAN)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリアミド(PA)/商品名ナイロン、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE、変性PPE、PPO)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、環状ポリオレフィン(COP)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、非晶ポリアリレート(PAR)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、又はフッ素樹脂である。生分解性不織布の生分解性樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリ乳酸又はポリグリコール酸である。また、生分解性プラスチックは、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、変性ポリビニルアルコール、カゼイン又は変性澱粉を成分とするものであってもよい。
【0020】
多孔質基材は、印刷、地模様又は染め模様など多様なデザインを施すことによって特有の美観を現出することができる。このため、本実施形態に係る多重袋1は、美観袋として、多孔質基材の持つ美観を生かして、ホテルなど宿泊施設でのアメニティ用の包装袋、又はお菓子、お米又は自然食品などの包装袋としても好適である。また多重袋1は、外表面が多孔質基材で覆われており、遮光性を有するため、お茶、コーヒー、紅茶などの包装袋として好適である。
【0021】
本実施形態では、多孔質基材の片面又は両面は、バリア性塗工層を有することが好ましい。バリア性塗工層によって内容物の品質低下をより抑制することができる。バリア性塗工層は、多孔質基材の内表面だけに設けられる形態、多孔質基材の外表面だけに設けられる形態、又は多孔質基材の内表面及び外表面の両方に設けられる形態であってもよい。多孔質基材及び熱可塑性樹脂フィルムが生分解性を有する場合、バリア性塗工層は、生分解性を有することが好ましい。また、バリア性塗工層を多孔質基材の内表面に設ける場合、バリア性塗工層は熱接着性を有することが好ましい。バリア性塗工層を多孔質基材の外表面に設ける場合、バリア性塗工層は印刷適性を有することが好ましい。生分解性、熱接着性及び印刷適性を有するバリア性塗工層としては、例えば日本製紙株式会社製のシールドプラス(登録商標)が挙げられる。
【0022】
内袋3は、図1及び図2に示すように、外袋2に内設される部分である。内袋3の胴部は、熱可塑性樹脂フィルムからなる。熱可塑性樹脂フィルムは、合成樹脂製フィルム及び生分解性フィルムを包含する。合成樹脂製フィルムの材質は、特に限定されないが、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)若しくは低密度ポリエチレン(LDPE)などのポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、AS樹脂(SAN)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリアミド(PA)/商品名ナイロン、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE、変性PPE、PPO)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、環状ポリオレフィン(COP)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、非晶ポリアリレート(PAR)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、又はフッ素樹脂である。生分解性フィルムの材質は、特に限定されないが、例えば、ポリ乳酸又はポリグリコール酸である。また、生分解性プラスチックは、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、変性ポリビニルアルコール、カゼイン又は変性澱粉を成分とするものであってもよい。熱可塑性樹脂フィルムは、単層構造であるか、又は押出しラミネートフィルム、ドライラミネートフィルム又は多層共押し出しフィルムなどの積層構造であってもよい。
【0023】
本実施形態では、熱可塑性樹脂フィルムには、金属蒸着膜付き熱可塑性樹脂フィルム、発泡フィルムが包含される。金属蒸着膜付き熱可塑性樹脂フィルムの金属蒸着膜の金属の種類は、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、亜鉛又は銅である。内袋3の胴部を構成する熱可塑性樹脂フィルムが金属蒸着膜付き熱可塑性樹脂フィルムを含む場合、熱可塑性樹脂フィルムは、金属蒸着膜付き熱可塑性樹脂フィルムの金属蒸着膜側の面に、別の熱可塑性樹脂フィルム又は別の熱可塑性樹脂層を積層させた積層構造であることが好ましい。別の熱可塑性樹脂フィルム又は別の熱可塑性樹脂層によって、内袋3を、外袋2の多孔質基材又は後述する追加袋(不図示)の基材へ、熱接着させることができる。また、発泡フィルムは、特に限定されないが、例えば、発泡ポリエチレンフィルム、発泡ポリスチレンフィルム又は発泡ポリプロピレンフィルムである。発泡フィルムを用いることで、多重袋1にパール調の風合いを付与することができる。内袋3の胴部を構成する熱可塑性樹脂フィルムが発泡フィルムを含む場合、熱可塑性樹脂フィルムは、発泡フィルムに別の熱可塑性樹脂フィルム又は別の熱可塑性樹脂層を積層させた積層構造であることが好ましい。このような積層フィルムは、例えば、発泡ポリエチレンとポリエチレンとの共押出しフィルムである。なお、上記において、別の熱可塑性樹脂フィルム又は別の熱可塑性樹脂層の材質は、特に限定されず、内袋3の胴部を構成する熱可塑性樹脂フィルムの材質として列挙したものを用いることができる。
【0024】
本実施形態に係る多重袋1は、開口部5の縁に沿って内表面に設けられた雌雄咬合型の嵌合具8を備えることが好ましい。嵌合具8によって再封止可能とすることができる。
【0025】
雌雄咬合型の嵌合具8は、図2に示すように、開口部5において対向する基材のうち、一方に突設された部材8Aと他方に突設された部材8Bとを有する。ここで、開口部5において対向する基材は、例えば、図2に示すように、内袋3が多重袋1の最内面を構成するとき、内袋の胴部を構成する熱可塑性樹脂フィルムである。図2では、嵌合具8が内袋3の胴部を構成する熱可塑性樹脂フィルムと一体に成形された形態を示したが、本発明はこれに限定されず、嵌合具8が熱可塑性樹脂フィルムと別体であり、熱接着によって取り付けられていてもよい。部材8A及び部材8Bは互いに係脱可能に係合する形状であればよく、図2では一例として部材8Aは断面形状が矢尻状の頭部を有する形状であり、部材8Bは部材8Aの頭部が嵌まるような断面形状が凹形状であってその両側の先端に互いに向き合う鉤が設けられた形状である形態を示したが、本発明はこれに限定されない。
【0026】
第1側縁封止部6A及び第2側縁封止部6Bは、図3に示すように、多孔質基材及び熱可塑性樹脂フィルムの厚さ方向Tに沿って、熱接着部H1、H2,H3を有する。本明細書において、「多孔質基材及び熱可塑性樹脂フィルムの厚さ方向Tに沿って」とは、多孔質基材及び熱可塑性樹脂フィルムの厚さ方向Tに伸びる仮想の同一直線(不図示)上に並んでいることを意味する。なお、図3には代表して第1側縁封止部6Aを示したが、第2側縁封止部6Bも第1側縁封止部6Aと同様の構造を有する。熱接着部H1、H3は、多孔質基材の内表面と熱可塑性樹脂フィルムの外表面とが熱によって接着された部分である。熱接着部H1、H3では、熱によって熱可塑性樹脂フィルム溶融又は軟化して多孔質基材に固着(融着)している。熱接着部H2は、熱可塑性樹脂フィルムの内表面同士が熱によって接着された部分である。熱接着部H2では、熱によって向かい合う熱可塑性樹脂フィルム同士が溶融又は軟化によって固着(融着)している。
【0027】
また、本実施形態に係る多重袋1では、開口部5の縁は、図2に示すように、熱接着部H8を有する。熱接着部H8は、多孔質基材の内表面と熱可塑性樹脂フィルムの外表面とが熱によって接着された部分である。熱接着部H8では、熱によって熱可塑性樹脂フィルム溶融又は軟化して多孔質基材に固着(融着)している。図2では、熱接着部H8が設けられた、開口部5の隣り合う縁が同じ高さである形態を示したが、本発明はこれに限定されず、一方の縁が他方の縁よりも底部4とは反対側に突出して配置されていてもよい。これによって、開口部5の隣り合う縁が互いに段差をもって配置されるため、開口部5の縁を指先でずらしやすくなり、より容易に開くことができる。
【0028】
多孔質基材と熱可塑性樹脂フィルムとの熱接着部である熱接着部H1、H3及びH8では、熱によって熱可塑性樹脂フィルムが溶融又は軟化して多孔質基材に固着(融着)している。ここで、多孔質基材の表面には繊維などの絡み合いによって生じる細孔又は凹凸があるため、毛管現象によって熱可塑性樹脂の溶融物又は軟化物が多孔質基材の表面の細孔又は凹凸に含浸することで、熱接着部H1、H3及びH8において両者は強固に結合する。多孔質基材が織布である場合、含浸によって、端部における織布の繊維が熱可塑性樹脂に固定される。このため、端部のほつれを防止することができる。本明細書において、「含浸」とは、熱によって溶融又は軟化させた熱可塑性の樹脂素材を非樹脂素材に圧入し硬化させて樹脂素材と非樹脂素材との隙間を埋める技術をいう。すなわち、本実施形態では、樹脂素材(熱可塑性樹脂フィルム)に熱を加え、溶融又は軟化状態にして非樹脂素材(多孔質基材)に含浸させ熱シールするものであり、分子結合させるものではない。従来は、熱シールには、一般的に溶融又は軟化する素材同士の熱接着が利用されてきたが、本発明では熱によって溶融又は軟化しない素材に、熱によって溶融又は軟化する素材を含浸させて熱シールする点で異なる。熱可塑性樹脂フィルムの熱可塑性樹脂は、多孔質基材と熱可塑性樹脂フィルムとの熱接着部(図2では、熱接着部H1、H3及びH8)において、多孔質基材の厚さ方向に20~100%含浸することが好ましく、50~90%含浸することがより好ましい。含浸の割合を前記範囲とすることで、多孔質基材と熱可塑性樹脂フィルムとの接着がより強固となる。また、織布のほつれ防止をより防止することができる。
【0029】
本実施形態に係る多重袋では、熱可塑性樹脂フィルムの熱可塑性樹脂は、多孔質基材の厚さ方向に100%を超えて含浸している形態を包含する。ここで、多孔質基材の厚さ方向に100%を超えて含浸するとは、熱可塑性樹脂フィルムを構成する熱可塑性樹脂が多孔質基材の外表面まで染み出るように浸透していることをいう。
【0030】
このように、本実施形態に係る多重袋1では、基材である多孔質基材及び熱可塑性樹脂フィルムは接着剤などの材料によって貼り合わされておらず、多孔質基材と熱可塑性樹脂フィルムとは、第1側縁封止部6A及び第2側縁封止部6Bにおいて含浸によって直接的に固定されている。その結果、接着剤の塗布装置など大掛かりな設備投資をすることなく、より安価に多重袋1を提供することができる。
【0031】
図4は、本実施形態に係る多重袋の第二例を示す正面図である。図5は、図4のC-C線断面図である。本実施形態に係る多重袋1では、底部4は、図4及び図5に示すように、多孔質基材及び熱可塑性樹脂フィルムの厚さ方向Tに沿って、多孔質基材の内表面と熱可塑性樹脂フィルムの外表面との熱接着部H4と、熱可塑性樹脂フィルムの内表面同士の熱接着部H5と、熱可塑性樹脂フィルムの外表面と多孔質基材の内表面との熱接着部H6と、を有することが好ましい。多孔質基材と熱可塑性樹脂フィルムとの熱接着部である熱接着部H4,H6は、熱接着部H1,H3と同様に、多孔質基材と熱可塑性樹脂フィルムとが含浸によって強固に結合している。熱接着部H4,H5,H6が設けられることによって、底部4において内袋3の熱可塑性樹脂フィルムが袋の内方に浮き上がることを防止することができる。
【0032】
次に、図6図9を参照して、実施形態に係る多重袋の第三例について説明する。本実施形態に係る多重袋1では、多重袋1は、図6に示すように、収容部S1に面する領域に、多孔質基材の内表面と熱可塑性樹脂フィルムの外表面との熱接着部H7(図8及び図9に図示)を有する線シール部7を備えることが好ましい。外袋2の多孔質基材と内袋3の熱可塑性樹脂フィルムとの接合部分が増えるので、外袋2の多孔質基材と内袋3の熱可塑性樹脂フィルムとのズレをより抑制することができる。
【0033】
線シール部7は、図6に示すように、収容部S1に面する領域に設けられる。ここで、収容部S1に面する領域は、嵌合具8よりも底部4側の領域である。線シール部7は、多重袋1の表面及び裏面の両面に施すことが好ましい。線シール部7は、図8及び図9に示すように、外袋2の多孔質基材の内表面と内袋3の熱可塑性樹脂フィルムの外表面との熱接着部H7を有することが好ましい。熱接着部H7は、熱接着部H1,H3と同様に、多孔質基材と熱可塑性樹脂フィルムとが含浸によって強固に結合している。このように、多孔質基材と熱可塑性樹脂フィルムとは線シール部7において熱による接着で直接的に固定されており、ラミネート加工などによって貼り合わされていない。その結果、外袋2の多孔質基材と内袋3の熱可塑性樹脂フィルムとをラミネート加工で貼り合わせることなく、外袋2の多孔質基材と内袋3の熱可塑性樹脂フィルムとを一体的に接合することができる。その結果、より安価に、外袋2と内袋3とを備える多重袋を実質的に一重構造の袋のようにすることができる。また、線シール部7によって袋の外表面に例えば格子状などの規則的な図様が形成されるので、より高い美観を現出できる。
【0034】
図10は、線シール部の変形例を示す正面図である。図6では、一例として線シール部7が格子状に設けられた形態を示したが、本発明はこれに限定されない。線シール部7は、例えば、図10(a)に示すように斜め格子状である形態、図10(b)に示すように円形状である形態、図10(c)に示すように横線状である形態、図10(d)に示すように大小の格子状を有する形態であってもよい。
【0035】
本実施形態に係る多重袋1は、開口部5の縁を封止する開口封止部(不図示)を有し、かつ、第1側縁封止部6A若しくは第2側縁封止部6Bのいずれか一方又は両方は、開口封止部と嵌合具8との間の領域に開封用のノッチ(不図示)を有する形態を包含する。開口封止部では、図3に示す熱接着部H1,H2,H3と同様に、多孔質基材及び熱可塑性樹脂フィルムの厚さ方向Tに沿って、多孔質基材の内表面と熱可塑性樹脂フィルムの外表面との熱接着部と、熱可塑性樹脂フィルムの内表面同士の熱接着部と、熱可塑性樹脂フィルムの外表面と多孔質基材の内表面との熱接着部と、を有することが好ましい。また、ノッチは、特に限定されず、例えば、Vノッチ、Iノッチ、又は傷加工などによるダメージ加工であってもよい。また、ノッチは、第1側縁封止部6Aだけに設けられていてもよいし、第2側縁封止部6Bだけに設けられていてもよいし、第1側縁封止部6A及び第2側縁封止部6Bの両方に設けられていてもよい。開口部5の縁が開口封止部で封止されることによって、多重袋1の未開封状態を確保することができる。この形態では、多孔質基材が織布、特にタオル地のように厚手である場合、ノッチに連通する開封補助線を有することが好ましい。開封補助線は、例えばミシン目、レーザーカット線、又はハーフカット線である。
【0036】
多孔質基材が織布である場合、本実施形態に係る多重袋1は、開口部5の縁、第1側縁封止部6Aの縁及び第2側縁封止部6Bの縁が多孔質基材のほつれ防止構造を更に有することが好ましい。ほつれ防止構造を有する多重袋としては、例えば、次のような形態が挙げられる。
【0037】
本実施形態に係る多重袋1では、ほつれ防止構造として、開口部5の縁、第1側縁封止部6Aの縁及び第2側縁封止部6Bの縁が、それぞれ熱可塑性樹脂フィルムの熱可塑性樹脂によって被覆されている構造を有することが好ましい。ここで、熱可塑性樹脂によって被覆されている構造は、各縁において熱可塑性樹脂の溶融物又は軟化物が多孔質基材の縁を被覆する構造、及び各縁において熱可塑性樹脂の溶融物又は軟化物が多孔質基材よりも袋の外側に延出している構造を包含する。
【0038】
本実施形態に係る多重袋1では、ほつれ防止構造として、開口部5の縁、第1側縁封止部6Aの縁及び第2側縁封止部6Bの縁が、それぞれホットメルト接着剤によって被覆されている構造を有することが好ましい。
【0039】
本実施形態に係る多重袋では、ほつれ防止構造として、多孔質基材である織布の繊維と開口部5の縁との交差角、前記織布の繊維と第1側縁封止部6Aの縁との交差角、及び前記織布の繊維と第2側縁封止部6Bの縁との交差角が、それぞれ2°以上である構造を有することが好ましい。所定の交差角を設けることで、織布の繊維方向が開口部5の縁、第1側縁封止部6Aの縁及び第2側縁封止部6Bの縁に対して平行とならないため、よりほつれにくくすることができる。各交差角は、3°以上であることが好ましく、5°以上であることがより好ましい。各交差角の上限は、特に限定されないが、45°以下であることが好ましく、30°以下であることがより好ましい。
【0040】
本実施形態に係る多重袋では、ほつれ防止構造として、第1側縁封止部6Aの縁及び第2側縁封止部6Bの縁が、溶断面である構造を有することが好ましい。溶断することによって、第1側縁封止部6Aの縁及び第2側縁封止部6Bの縁に熱可塑性樹脂フィルムの熱可塑性樹脂の溶融物又は軟化物が形成され、この溶融物又は軟化物によって多孔質基材が被覆されるため、よりほつれにくくすることができる。溶断面であることは、例えば、第1側縁封止部6Aの縁及び第2側縁封止部6Bの縁の端面を肉眼で観察するか又は顕微鏡観察することで確認することができる。例えば、次のような判断をすることができる。端が溶断面である場合、シール幅がおよそ1~1.5mm程度であり、端面が熱可塑性樹脂の溶融物又は軟化物によってキザギザしている。一方、縁が熱接着後に裁断された非溶断面である場合、シール幅が幅広(例えばおよそ5mm前後)であり、端面が直線的でフラットである。
【0041】
本実施形態に係る多重袋1は、ほつれ防止構造として、第1側縁封止部6Aの表面及び裏面にほつれ防止用フィルムが熱接着され、かつ、第2側縁封止部6Bの表面及び裏面にほつれ防止用フィルムが熱接着されている構造を有することが好ましい。ほつれ防止用フィルムは、例えば、ベースフィルム層とシーラント層とを有する多層構造であることが好ましい。ベースフィルム層の材質は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(商品名ナイロン(NY))又は二軸延伸ポリプロピレン(OPP)である。シーラント層の材質は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン(PE)又はエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)である。第1側縁封止部6A及び第2側縁封止部6Bが、ほつれ防止用フィルムで挟持されるため、ほつれ防止用フィルムのシーラント層の樹脂が、織布の繊維に絡まることでほつれを防止することができる。また、ほつれ防止用フィルムを用いることで、ほつれ防止の効果に加えて、例えば次のような効果も奏する。第1側縁封止部6A及び第2側縁封止部6Bがほつれ防止用フィルムで補強されるため、多重袋1の製造時に第1側縁封止部6A及び第2側縁封止部6Bをシャーカット方式などで裁断する時に切断刃の多孔質基材への噛み込みが減って、せん断応力が増す。その結果、切れ性が向上する効果が得られる。第1側縁封止部6A及び第2側縁封止部6Bを熱接着する時、多孔質基材と熱シールバーとの間にほつれ防止用フィルムが介在するため、多孔質基材が合成繊維などの耐熱性に乏しい材料を含む場合であっても、ベタシールを施すことができる。また、多孔質基材が綿又は麻などの天然繊維である場合、多重袋1の製造時に第1側縁封止部6A及び第2側縁封止部6Bを溶断することは難しいところ、ほつれ防止用フィルムを用いることでシャーカット方式での裁断が容易となる。また、ほつれ防止用フィルムのベースフィルム層に、印刷又は金属蒸着を施すことができるため、多重袋1の多孔質基材のデザインに合わせてほつれ防止用フィルムのデザインを適宜選択することで、商品デザインのバリエーションを増やし、美観をより高めることができる。
【0042】
本実施形態に係る多重袋1は、外袋2と内袋3とを備える多重袋である。本実施形態では、多重袋は、図1及び図2に示すような、外袋2と内袋3とからなる二重構造の袋(二重袋ということもある)に限定されず、外袋2と内袋3とに加えて、一つ以上の追加袋(不図示)を更に有する構造の袋であってもよい。この追加袋は、内袋3の内側に配置されていてもよいし、内袋3と外袋2との間に配置されてもよいし、又は外袋2の外側に配置されてもよい。例えば、多重袋1が外袋2と内袋3とに加えて一つの追加袋(不図示)を有する三重構造の袋(三重袋ということもある)である場合の一例としては、図1及び図2に示す多重袋1の内袋3の内側に更に多孔質基材からなる胴部を有する追加袋(不図示)を設けた三重袋である。この一例の三重袋では、内袋3の熱可塑性樹脂フィルムは2枚の多孔質基材の間に挟まれており、接着層としてみなされることもある。前記した一例の三重袋では、最内面となる追加袋の多孔質基材同士の接着は、追加袋の多孔質基材に内袋3の熱可塑性樹脂フィルムの熱可塑性樹脂を、多孔質基材の厚さ方向に100%を超えて含浸させ、その含浸した熱可塑性樹脂によって熱接着させることで行ってもよいし、追加袋の多孔質基材にパンチング加工などの孔をあけて内袋3の熱可塑性樹脂フィルムを露出させ、その露出した熱可塑性樹脂フィルムによって部分的に熱接着させてもよい。また、前記した一例の三重袋では、嵌合具8は最内面となる追加袋の多孔質基材からなる胴部に熱接着で取り付けてもよいし、開口部5の縁において内袋3の熱可塑性樹脂フィルムの縁を追加袋の多孔質基材の縁よりも底部4とは反対側に突出させて、この熱可塑性樹脂フィルムの突出させた部分に嵌合具8を一体に成形するか若しくは熱接着で取り付けてもよい。追加袋の胴部の基材は、特に限定されず、一例で挙げた多孔質基材の他、例えば、熱可塑性樹脂フィルム又はアルミニウム箔などの金属箔であってもよい。また、追加袋の胴部の基材は、単層構造であるか、又は押出しラミネートフィルム、ドライラミネートフィルム又は多層共押し出しフィルムなどの積層構造であってもよい。
【0043】
追加袋の胴部の基材において、多孔質基材又は熱可塑性樹脂フィルムは、外袋2の胴部又は内袋3の胴部の材質として列挙したものを用いることができる。追加袋の胴部が金属蒸着膜付き熱可塑性樹脂フィルムを含む熱可塑性樹脂フィルムである場合であって、追加袋が内袋3の内側又は内袋3と外袋2との間に配置される場合、熱可塑性樹脂フィルムは、金属蒸着膜付き熱可塑性樹脂フィルムの金属蒸着膜側の面に、別の熱可塑性樹脂フィルム又は別の熱可塑性樹脂層を積層させた積層構造であることが好ましい。また、追加袋の胴部が金属蒸着膜付き熱可塑性樹脂フィルムを含む熱可塑性樹脂フィルムである場合であって、追加袋が外袋2の外側に配置される場合、熱可塑性樹脂フィルムは、金属蒸着膜付き熱可塑性樹脂フィルムだけの単層構造であるか、又は金属蒸着膜付き熱可塑性樹脂フィルムの金属蒸着膜側の面に、別の熱可塑性樹脂フィルム又は別の熱可塑性樹脂層を積層させた積層構造であってもよい。熱可塑性樹脂フィルムが金属蒸着膜付き熱可塑性樹脂フィルムだけの単層構造である場合、金属蒸着膜面が外袋2側とは反対側にくるように配置されることが好ましい。熱可塑性樹脂フィルムが金属蒸着膜付き熱可塑性樹脂フィルムと別の熱可塑性樹脂フィルム又は別の熱可塑性樹脂層との積層構造である場合、別の熱可塑性樹脂フィルム又は別の熱可塑性樹脂層が外袋2側にくるように配置されることが好ましい。
【0044】
本実施形態に係る多重袋1の製造方法は、特に限定されないが、例えば、次の方法で製造してもよい。
【0045】
まず、帯状の多孔質基材と帯状の熱可塑性樹脂フィルムとを熱可塑性樹脂フィルムが内側になるように2枚重ねで二つ折りする。帯状の多孔質基材及び帯状の熱可塑性樹脂フィルムはそれぞれロール状に巻かれた原反ロールから、それぞれ繰り出されて供給されてもよい。また、嵌合具8は熱可塑性樹脂フィルムの原反を製造時に熱可塑性樹脂フィルムと一体に成形されることが好ましい。例えば、インフレーション成形によれば、嵌合具8を熱可塑性樹脂フィルムと一体に成形することができる。次いで、多孔質基材と熱可塑性樹脂フィルムとが二つ折りで重ね合わされた状態で、長手方向に交差する方向に延びる側縁封止部(第1側縁封止部6A及び第2側縁封止部6Bを含む。)を所定の間隔毎に熱接着で形成する。そして、側縁封止部を切断して個々の多重袋1とする。本実施形態では、多孔質基材が織布である場合、側縁封止部の熱接着と側縁封止部の切断とを同時に行う、いわゆる溶断によって製造することがほつれ防止の観点からより好ましい。また、多孔質基材の厚さが比較的厚い場合は、熱接着後に、別途裁断する工程を設けてもよい。ほつれ防止の観点から、裁断後、切断面に熱シールを再度施すことで熱可塑性樹脂フィルムの熱可塑性樹脂を更に溶融させる工程を設けてもよい。ほつれ防止用フィルムを用いる場合、側縁封止部(第1側縁封止部6A及び第2側縁封止部6Bを含む。)を熱接着した後であって裁断工程前に、側縁封止部の表面及び裏面に短冊状のほつれ防止用フィルムをあてがって多孔質基材に熱接着することが好ましい。または、多孔質基材が合成繊維などの耐熱性に乏しい材料を含む場合、側縁封止部(第1側縁封止部6A及び第2側縁封止部6Bを含む。)を熱接着する前に、側縁封止部となる部分の表面及び裏面に短冊状のほつれ防止用フィルムをあてがって側縁封止部を熱接着すると同時にほつれ防止用フィルムと側縁封止部とを熱接着してもよい。これによって、多孔質基材が耐熱性に乏しい材料を含んでいても側縁封止部にベタシールを施すことができる。ほつれ防止用フィルムを熱接着することで、裁断面を補強すると共にほつれを防止することができる。
【0046】
熱接着部H1~H8を設けるにあたり、熱接着される部分の片面側(製袋時上側)からのみシールバーで加熱してもよいが、多孔質基材の厚さに応じて、熱接着される部分の両面側(製袋時上側と下側)に同時にシールバーで加熱するか、又は熱接着される部分の片面側(製袋時上側)からシールバーで加熱した後、更に他方の面側(製袋時下側)からもシールバーで加熱してもよい。これによって、より安定的に熱可塑性樹脂フィルムの熱可塑性樹脂を多孔質基材に含浸させることができる。
【0047】
また、図6図10に示すように、線シール部7を有する形態では、線シール部7は、例えば、シールバー又は所定の形状が施された金型によって熱接着することで形成することができる。
【0048】
図1図10では、多重袋1が嵌合具8を備える形態を示してきたが、本実施形態に係る多重袋1は、図11及び図12に示すように嵌合具8を備えない形態を包含する。
【符号の説明】
【0049】
1 多重袋
2 外袋
3 内袋
4 底部
5 開口部
6A 第1側縁封止部
6B 第2側縁封止部
7 線シール部
8 嵌合具
8A 部材
8B 部材
H1、H2,H3,H4,H5,H6,H7,H8 熱接着部
S1 収容部
T 厚さ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12