(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】TIM-4アンタゴニストとPD-1アンタゴニストの組合せおよび使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20221025BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221025BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20221025BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221025BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20221025BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20221025BHJP
【FI】
A61K39/395 T ZNA
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
C07K16/28
C12N15/13
(21)【出願番号】P 2019500245
(86)(22)【出願日】2017-07-05
(86)【国際出願番号】 US2017040665
(87)【国際公開番号】W WO2018009507
(87)【国際公開日】2018-01-11
【審査請求日】2020-07-03
(32)【優先日】2016-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391015708
【氏名又は名称】ブリストル-マイヤーズ スクイブ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL-MYERS SQUIBB COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】ショーン・ドイル
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ジェイ・セルビー
(72)【発明者】
【氏名】エリック・チャドウィック
【審査官】山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/048312(WO,A1)
【文献】特開2015-209376(JP,A)
【文献】Human Vaccines & Immunotherapeutics,11(10),2015年,2458-2462
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61K 45/00
A61P 35/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトPD-1
またはヒトPD-L1に結合するPD-1アンタゴニスト抗体およびTIM-4アンタゴニスト抗体を含む、対象のがんを処置する方法における使用のための組み合わせ物であって、ここでTIM-4アンタゴニスト抗体がヒトTIM-4に結合し、かつ腫瘍細胞のエフェロサイトーシスを阻害する、組み合わせ物。
【請求項2】
TIM-4アンタゴニスト抗体がヒトTIM-4のIgVドメインに結合する抗体である、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項3】
PD-1アンタゴニスト抗体が、
(a)配列番号13に記載の配列を有する重鎖可変領域におけるCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびに配列番号15に記載の配列を有する軽鎖可変領域におけるCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、または
(b)配列番号1に記載の配列を有する重鎖可変領域におけるCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびに配列番号3に記載の配列を有する軽鎖可変領域におけるCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン
を含む、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項4】
PD-1アンタゴニスト抗体が、
(a)配列番号17に記載の配列を有する重鎖可変領域CDR1;配列番号18に記載の配列を有する重鎖可変領域CDR2;配列番号19に記載の配列を有する重鎖可変領域CDR3;配列番号20に記載の配列を有する軽鎖可変領域CDR1;配列番号21に記載の配列を有する軽鎖可変領域CDR2;および配列番号22に記載の配列を有する軽鎖可変領域CDR3、または
(b)配列番号5に記載の配列を有する重鎖可変領域CDR1;配列番号6に記載の配列を有する重鎖可変領域CDR2;配列番号7に記載の配列を有する重鎖可変領域CDR3;配列番号8に記載の配列を有する軽鎖可変領域CDR1;配列番号9に記載の配列を有する軽鎖可変領域CDR2;および配列番号10に記載の配列を有する軽鎖可変領域CDR3
を含む、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項5】
PD-1アンタゴニスト抗体が、
(a)それぞれ配列番号13および配列番号15に記載の配列を有する重鎖可変領域および軽鎖可変領域、
(b)それぞれ配列番号11および配列番号12に記載の配列を有する重鎖および軽鎖、または
(c)それぞれ配列番号1および配列番号3に記載の配列を有する重鎖可変領域および軽鎖可変領域
を含む、請求項4に記載の組み合わせ物。
【請求項6】
PD-1アンタゴニスト抗体およびTIM-4アンタゴニスト抗体が静脈内投与用に処方されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の組み合わせ物。
【請求項7】
がんが、白血病、リンパ腫、芽細胞腫、がん腫、肉腫、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、消化管がん、大腸がん、神経膠芽腫および結腸がんからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の組み合わせ物。
【請求項8】
使用が、さらなる治療物質の投与を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の組み合わせ物。
【請求項9】
ヒトPD-1
またはヒトPD-L1に結合するPD-1アンタゴニスト抗体およびTIM-4アンタゴニスト抗体を含む、
対象のがんを処置する方法における使用のための組成物であって、ここでTIM-4アンタゴニスト抗体はヒトTIM-4に結合し、かつ腫瘍細胞のエフェロサイトーシスを阻害する、組成物。
【請求項10】
PD-1アンタゴニスト抗体が、
(a)配列番号13に記載の配列を有する重鎖可変領域におけるCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびに配列番号15に記載の配列を有する軽鎖可変領域におけるCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、または
(b)配列番号1に記載の配列を有する重鎖可変領域におけるCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびに配列番号3に記載の配列を有する軽鎖可変領域におけるCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン
を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
PD-1アンタゴニスト抗体が、
(a)それぞれ配列番号13および配列番号15に記載の配列を有する重鎖可変領域および軽鎖可変領域、
(b)それぞれ配列番号11および配列番号12に記載の配列を有する重鎖および軽鎖、または
(c)それぞれ配列番号1および配列番号3に記載の配列を有する重鎖可変領域および軽鎖可変領域
を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
TIM-4アンタゴニスト抗体がTIM-4のIgVドメインに結合する、請求項9~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
対象のがんの処置における使用のための、ヒトPD-1に結合するPD-1アンタゴニスト抗体およびヒトTIM-4に結合するTIM-4アンタゴニスト抗体を含むキットであって、以下:
(a)1回分のPD-1アンタゴニスト抗体;
(b)腫瘍細胞のエフェロサイトーシスを阻害する1回分のTIM-4アンタゴニスト抗体;および
(c)対象におけるがんの処置における使用のための、PD-1アンタゴニスト抗体およびTIM-4アンタゴニスト抗体を含む医薬を調製するための説明書
を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2016年7月6日に出願された米国仮特許出願第62/359073号の優先権を主張する。上記出願の内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
背景技術
国立がん研究所は、米国のみにおいて、3人に1人が存命中にがんに罹患すると見積もっている。さらに、がんに罹患している人の約50~60%が最終的にその疾患に屈する。腫瘍細胞が原発部位から脱出すると、それらはリンパ系および/または循環系を通過し、最終的にいくつかは遠位部位に定着して転移を与える。先進国世界における固形腫瘍由来の死の95%は転移によるものである。
【0003】
がん腫瘍の広範な発生は、抗がんレジメンを改善する必要性を強調する。しかしながら集学的治療法の進歩にもかかわらず、がん患者の全生存の増加は制限されている。したがって、本発明の目的は、このような腫瘍を有する患者を処置するための改善された方法を提供することである。
【発明の概要】
【0004】
本発明者らは、TIM-4アンタゴニスト(例えば抗体)と抗PD-1アンタゴニスト(例えば抗体)の同時投与が、インビボ(in vivo)において腫瘍成長を効率的に(より適切には相乗的に)阻害することを初めて発見した。したがって、本発明の目的は、がんを有する対象を処置するための改善された方法を提供することである。具体的には、本発明の目的は効果的な併用処置レジメンを提供することであり、ここでTIM-4アンタゴニストはがんの処置のために抗PD-1アンタゴニストと組み合わされる。
【0005】
ある態様において、本発明は、有効量のPD-1アンタゴニストおよびTIM-4アンタゴニストを同時投与することによって対象のがんを処置する方法を提供する。
【0006】
本発明の方法における使用のための適切なTIM-4アンタゴニストは、限定されないが、リガンド、抗体(例えばモノクローナル抗体および二重特異性抗体)および多価物質を含む。TIM-4アンタゴニストは、非活性化リガンドまたはリガンド結合パートナー(例えば、小分子、設計されたPSエミュレーターもしくは可溶性TIM-1または他の結合タンパク質)であり得る。ある実施態様において、TIM-4アンタゴニストは抗TIM-4抗体である。ある実施態様において、TIM-4アンタゴニストは、TIM-4のIgVドメイン内のエピトープに結合する抗体である。別の実施態様において、TIM-4アンタゴニストは抗体(9F4、RMT4-53、RMT4-54、F31-563または21T112など)である。
【0007】
例示的な抗TIM-4抗体は、9F4、RMT4-53、RMT4-54、F31-563または21T112の重鎖CDRおよび軽鎖CDRを含む重鎖および軽鎖を含み、場合により、対応する抗体のフレームワーク領域と少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を有するフレームワーク領域を含む。抗TIM-4抗体はまた、抗体9F4、RMT4-53、RMT4-54、F31-563または21T112の重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインと少なくとも約90%、95%または99%同一である重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含み得る。ある実施態様において、抗TIM-4アンタゴニスト抗体は、9F4、RMT4-53、RMT4-54、F31-563または21T112と同様に、TIM-4上の同一のエピトープとの結合に競合し、かつ/またはこの同一のエピトープに結合する。
【0008】
本発明の方法における使用のための適切なPD-1アンタゴニストは、限定されないが、リガンド、抗体(例えばモノクローナル抗体および二重特異性抗体)および多価物質を含む。ある実施態様において、PD-1アンタゴニストは抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体である。別の実施態様において、PD-1アンタゴニストは抗体(MK-3475またはCT-011など)である。ある実施態様において、PD-1アンタゴニストは融合タンパク質(例えばAMP-244などのFc融合タンパク質)である。
【0009】
例示的な抗PD-1抗体は、それぞれ配列番号11および配列番号12に示される配列を有する重鎖および軽鎖を含む5C4(WO2006/121168において5C4と呼ばれている;MDX-1106、ONO-4538およびニボルマブとしても知られる)、またはその抗原結合フラグメントおよび変異体である。他の実施態様において、抗体は5C4の重鎖および軽鎖のCDRまたは可変領域(VR)を含む。したがって、ある実施態様において、抗体は、配列番号13に示される配列を有する5C4のVH領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびに配列番号15に示される配列を有する5C4のVL領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の実施態様において、抗体は、それぞれ配列番号17、18および19に記載の配列を有する重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびにそれぞれ配列番号20、21および22に記載の配列を有する軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の実施態様において、抗体は、それぞれ配列番号13および/または配列番号15に記載のアミノ酸配列を有するVHおよび/またはVL領域を含む。別の実施態様において、抗体は、それぞれ配列番号14および/または配列番号16に記載の核酸配列によってコードされる重鎖可変(VH)領域および/または軽鎖可変(VL)領域を含む。別の実施態様において、抗体は、上記の抗体と同様に、PD-1上の同一のエピトープとの結合に競合し、かつ/またはこの同一のエピトープに結合する。別の実施態様において、抗体は、上記の抗体との少なくとも約90%の可変領域のアミノ酸配列同一性(例えば、配列番号13または配列番号15との少なくとも約90%、95%または99%の可変領域の同一性)を有する。
【0010】
ある実施態様において、PD-1アンタゴニストは抗PD-L1抗体(MEDI4736(抗B7-H1としても知られる)またはMPDL3280A(RG7446としても知られる)など)である。例示的な抗PD-L1抗体は12A4(WO2007/005874および米国特許第7,943,743号において12A4と呼ばれている)である。ある実施態様において、抗体は12A4の重鎖および軽鎖のCDRまたはVRを含む。したがって、ある実施態様において、抗体は、配列番号1に示される配列を有する12A4のVH領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびに配列番号3に示される配列を有する12A4のVL領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の実施態様において、抗体は、それぞれ配列番号5、6および7に記載の配列を有する重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびにそれぞれ配列番号8、9および10に記載の配列を有する軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の実施態様において、抗体は、それぞれ配列番号1および/または配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するVHおよび/またはVL領域を含む。別の実施態様において、抗体は、それぞれ配列番号2および/または配列番号4に記載の核酸配列によってコードされる重鎖可変(VH)領域および/または軽鎖可変(VL)領域を含む。別の実施態様において、抗体は上記の抗体と同様に、PD-L1上の同一のエピトープとの結合に競合し、かつ/またはこの同一のエピトープに結合する。別の実施態様において、抗体は、上記の抗体との少なくとも約90%の可変領域のアミノ酸配列同一性(例えば、配列番号1または配列番号3との少なくとも約90%、95%または99%の可変領域の同一性)を有する。
【0011】
ある実施態様において、本発明は、対象のがんを処置する方法を提供し、該方法は対象に有効量のPD-1アンタゴニストおよびTIM-4アンタゴニストを投与することを含み、ここで、
(a)PD-1アンタゴニストは、配列番号13に記載の配列を有する重鎖可変領域におけるCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびに配列番号15に記載の配列を有する軽鎖可変領域におけるCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む抗PD-1抗体である;および
(b)TIM-4アンタゴニストは抗体である。
【0012】
別の実施態様において、本発明は対象のがんを処置する方法を提供し、該方法は対象に有効量のPD-1アンタゴニストおよびTIM-4アンタゴニストを投与することを含み、ここで、
(a)PD-1アンタゴニストは、配列番号1に記載の配列を有する重鎖可変領域におけるCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびに配列番号3に記載の配列を有する軽鎖可変領域におけるCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む抗PD-L1抗体である;および
(b)TIM-4アンタゴニストは抗体である。
【0013】
本明細書において提供される処置方法の有効性は、あらゆる適切な手段を用いて評価され得る。ある実施態様において、処置は、腫瘍のサイズの減少、転移性病変の数の経時的な減少、完全寛解、部分寛解および安定からなる群から選択される少なくとも1つの治療効果を生じる。別の実施態様において、PD-1アンタゴニストおよびTIM-4アンタゴニストの投与は、(例えば、PD-1アンタゴニストまたはTIM-4アンタゴニスト単独での処置と比較して、または処置開始前の腫瘍体積と比較して)腫瘍体積の少なくとも1、1.25、1.50、1.75、2、2.25、2.50、2.75、3、3.25、3.5、3.75または4倍の減少をもたらす。別の実施態様において、PD-1アンタゴニストおよびTIM-4アンタゴニストの投与は、(例えば、PD-1アンタゴニストまたはTIM-4アンタゴニスト単独での処置と比較して、または処置開始前の腫瘍体積と比較して)腫瘍体積の少なくとも1倍、2倍またはより好ましくは3倍の減少をもたらす。さらなる実施態様において、PD-1アンタゴニストおよびTIM-4アンタゴニストの投与は、(例えば、PD-1アンタゴニストまたはTIM-4アンタゴニスト単独での処置と比較して、または処置開始前の腫瘍体積と比較して)少なくとも50%、60%、70%または80%の腫瘍成長阻害をもたらす。ある実施態様において、腫瘍体積は(例えば、処置開始前の腫瘍サイズと比較して)50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上まで減少する。
【0014】
PD-1アンタゴニストおよびTIM-4アンタゴニストは、適切な投与量、経路(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、髄腔内または皮下)に従って投与され得る。アンタゴニストおよびアゴニストはまた、あらゆる適切なスケジュールに従って投与され得る。例えば、アンタゴニストおよびアゴニストは単一製剤において同時に投与され得る。あるいは、アンタゴニストおよびアゴニストは別々の投与のために処方され得、ここでこれらは同時または連続的に投与される。ある実施態様において、PD-1アンタゴニストは、TIM-4アンタゴニストの投与の前に投与される。別の実施態様において、TIM-4アンタゴニストは、PD-1アンタゴニストの投与の前に投与される。さらなる実施態様において、TIM-4アンタゴニストおよびPD-1アンタゴニストは同時に投与される。
【0015】
ある実施態様において、がんは、がん腫、肉腫、芽細胞腫、リンパ腫および白血病からなる群から選択される。ある実施態様において、がんは、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、消化管がん、大腸がん、胃がん、結腸がん、および神経膠芽腫からなる群から選択される。別の実施態様において、がんは、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ芽球性白血病(Ph+ALL)、扁平上皮癌、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、神経膠腫、消化管がん、腎がん、卵巣がん、肝がん、大腸がん、子宮内膜がん、腎臓がん、前立腺がん、甲状腺がん、神経芽細胞腫、膵がん、多形性膠芽腫、子宮頸がん、胃がん、膀胱がん、肝がん、乳がん、結腸がん、頭頸部がん、胃がん、胚細胞腫瘍、小児肉腫(pediatric sarcoma)、副鼻腔のナチュラルキラー、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、および慢性リンパ性白血病(CML)からなる群から選択される。
【0016】
さらなる物質および治療が、本明細書に記述されるアゴニストおよびアンタゴニストと組み合わせて投与され得る。ある実施態様において、本方法は、さらなる治療物質(例えば、細胞毒または化学療法薬)の投与を含む。
【0017】
また、本明細書はPD-1アンタゴニストおよびTIM-4アンタゴニストを含む組成物を提供する。ある実施態様において、アンタゴニストは、リガンド、抗体(例えばモノクローナル抗体または二重特異性抗体)または多価物質である。別の実施態様において、PD-1アンタゴニストは、5C4の重鎖および軽鎖のCDRまたはVRを含む抗PD-1抗体である。別の実施態様において、PD-1アンタゴニストは12A4の重鎖および軽鎖のCDRまたはVRを含む抗PD-L1抗体である。
【0018】
さらに、対象のがんを処置するためのキットが提供され、該キットは以下を含む:
(a)1回分のPD-1アンタゴニスト;
(b)1回分のTIM-4アンタゴニスト;および
(c)本明細書に記述される方法においてPD-1アンタゴニストおよびTIM-4アンタゴニストを使用するための説明書。ある実施態様において、TIM-4アンタゴニストは抗体である。別の実施態様において、PD-1アンタゴニストは抗体である。特定の実施態様において、PD-1アンタゴニストは、配列番号13に記載の配列を有する重鎖可変領域におけるCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびに配列番号15に記載の配列を有する軽鎖可変領域におけるCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む抗PD-1抗体である。別の特定の実施態様において、PD-1アンタゴニストは、配列番号1に記載の配列を有する重鎖可変領域におけるCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびに配列番号3に記載の配列を有する軽鎖可変領域におけるCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む抗PD-L1抗体である。
【0019】
本開示の他の特徴および利点が以下の詳細な説明および実施例から明らかとなり、これらは限定として解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、ヒトTIM-4アイソフォーム1および2のアミノ酸配列のアライメントを示す。
【0021】
【
図2】
図2は、カニクイザル、マウスおよびヒトTIM-4オルソログのアミノ酸配列のアライメントを示す。
【0022】
【
図3】
図3A~Eは、対照、TIM-4アンタゴニスト抗体、PD-1アンタゴニスト抗体、または抗PD-1抗体および抗TIM-4抗体の組合せを投与した後の、マウス由来の脾臓および腫瘍における骨髄性細胞集団を示すグラフである。
【0023】
【
図4】
図4A~Fは、対照、TIM-4アンタゴニスト抗体、抗PD-1抗体、または抗PD-1抗体および抗TIM-4抗体の組合せを投与した後の、マウス由来の脾臓および腫瘍におけるCD8+細胞集団を示すグラフである。
【0024】
【
図5】
図5A~Fは、対照、TIM-4アンタゴニスト抗体、抗PD-1抗体、または抗PD-1抗体および抗TIM-4抗体の組合せを投与した後の、マウス由来の脾臓および腫瘍におけるCD4+集団を示すグラフである。
【0025】
【
図6】
図6A~Dは、対照、TIM-4アンタゴニスト抗体、抗PD-1抗体、または抗PD-1抗体および抗TIM-4抗体の組合せを投与した後の、個々のマウスにおける腫瘍体積(mm
3)を示すグラフである。
【0026】
【
図7】
図7A~Bは、対照、TIM-4アンタゴニスト抗体、抗PD-1抗体、または抗PD-1抗体および抗TIM-4抗体の組合せを投与した後の、マウスにおける腫瘍体積(mm
3)の平均値および中央値を示すグラフである。
【0027】
【
図8】
図8は、対照、TIM-4アンタゴニスト抗体、抗PD-1抗体、または抗PD-1抗体および抗TIM-4抗体の組合せを投与した後の、マウスにおける28日目の腫瘍体積(mm
3)を示すグラフである。
【0028】
【
図9】
図9(A)は、CT26動物モデルに対照、TIM-4アンタゴニスト抗体、抗PD-1抗体、または抗PD-1抗体および抗TIM-4抗体の組合せを投与した後の、マウスの生存率を示すグラフである。
図9(B)は各処置群の生存率中央値を示す表である。
【0029】
【
図10】
図10は、MC38動物モデルに対照、TIM-4アンタゴニスト抗体、抗PD-1抗体、または抗PD-1抗体および抗TIM-4抗体の組合せを投与した後の、マウスの無憎悪生存率の割合を示すグラフである。
【0030】
【
図11】
図11は、
図10に示された実験におけるマウスへの移植後の日数に対する平均腫瘍体積を示す。
【0031】
【
図12】
図12A~Cは、
図10および11に示された実験におけるマウスへの移植後の日数に対する個々の腫瘍体積を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書に記述されるように、本発明は、TIM-4アンタゴニスト(例えば抗体)とPD-1アンタゴニスト(例えば抗体)の同時投与が、インビボにおいて腫瘍成長を効率的に(より適切には相乗的に)阻害するという発見に基づく。したがって、本発明は対象のがんを処置する方法を提供し、これは対象(例えばヒト)に有効量のPD-1アンタゴニストおよびTIM-4アンタゴニストを投与することを含む。
【0033】
I.定義
本記述がより容易に理解され得るように、特定の用語を最初に定義する。さらなる定義が詳細な説明のあらゆる箇所で記述される。他に定義されていない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を持つ。免疫学、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術および薬理学の従来の方法が利用される。
【0034】
本明細書において、単数形(a、anおよびthe)は文脈上明らかな他の指示がない限り、複数の指示対象を含む。「または」または「および」の使用は、特に明記しない限り「および/または」を意味する。さらに、用語「含む」および他の形式(「含んでいる」および「含んでいた」など)の使用は非限定的である。
【0035】
本明細書における用語「約」は、測定可能な値(量および一時的な期間など)を参照する場合、明記された値から±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±1%、およびなおさらにより好ましくは±0.1%の変動を包含することを意味し、これはこのような変動が開示される方法を実行するのに妥当なためである。他に示されない限り、本明細書で使用される成分および性質(分子量、反応条件など)などの量を表す全ての数は、用語「約」によって修飾されているものとして理解されるべきである。
【0036】
本明細書において、用語「対象」または「患者」は本明細書において互換的に使用され、哺乳類(ヒト、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、サル、ウシ、ウマおよびブタなど、例えばがんを有する患者)を指す。
【0037】
「固形腫瘍」は、例えば、肉腫、黒色腫、がん腫、前立腺がん、肺がん、結腸がん、または他の固形腫瘍がんを含む。
【0038】
用語「がん」、「がん性」または「悪性」は、無秩序な細胞増殖によって典型的に特徴付けられる哺乳類の生理的状態を指し、または記述する。本明細書において、この用語は前悪性がんおよび悪性がんを含む。がんの例は、例えば、白血病、リンパ腫、芽細胞腫、がん腫および肉腫を含む。このようながんのより特別な例は、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ芽球性白血病(Ph+ALL)、扁平上皮癌、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、神経膠腫、消化管がん、腎がん、卵巣がん、肝がん、大腸がん、子宮内膜がん、腎臓がん、前立腺がん、甲状腺がん、神経芽細胞腫、膵がん、多形性膠芽腫、子宮頸がん、胃がん、膀胱がん、肝がん、乳がん、結腸がん、頭頸部がん、胃がん、胚細胞腫瘍、小児肉腫、副鼻腔のナチュラルキラー、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、および慢性リンパ性白血病(CML)を含む。
【0039】
本明細書における用語「がん腫」は、上皮細胞から発生するがんの一種を指す。具体的には、がん腫は、身体の内表面または外表面を覆う組織において発症し、胚形成中において外胚葉または内胚葉に起因する細胞から一般に生じるがんである。がん腫の様々なサブタイプには、腺がん(顕微鏡的腺関連組織細胞診、組織構造および/または腺関連分子産物(例えばムチン)を特徴とする)、扁平上皮がん(扁平上皮分化を示す観察可能な特徴および特性(例えば細胞間橋、角質化、扁平真珠))、腺扁平上皮がん(腺がんと扁平上皮がんの両方を含む混合腫瘍、ここでこれらの各細胞型は腫瘍体積の少なくとも10%を構成する)、退形成がんまたは未分化がん(あらゆるより特異的に分化した新生物の明確な組織学的根拠または細胞学的根拠を欠いている細胞を特徴とする高悪性度がん腫の不均一群)、大細胞がん(細胞質を大量に有する、大きくて単調な円形または明らかに多角形の細胞で構成される)、小細胞がん(細胞は通常円形であり、静止リンパ球の直径の約3倍未満であり、明らかな細胞質がほとんど見られない)が含まれる。
【0040】
本明細書において、用語「免疫細胞」は、免疫応答に関与する細胞(リンパ球(B細胞およびT細胞など);ナチュラルキラー細胞;骨髄性細胞(単球、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、好塩基球および顆粒球など)を含む)を指す。
【0041】
本明細書における用語「免疫応答」は、細胞性免疫応答(T細胞介在性免疫応答および/またはB細胞介在性免疫応答(Tリンパ球、マクロファージおよび/またはナチュラルキラー細胞の刺激など)を含む)を指す。
【0042】
用語「骨髄由来抑制細胞」または「MDSC」は本明細書において互換的に用いられ、骨髄性細胞系列(骨髄幹細胞から生じる細胞のファミリー)由来の免疫細胞の不均一群を指し、これには樹状細胞、マクロファージおよび好中球が属する。MDSCは、造血の変化の結果として、病的状態(慢性感染症およびがんなど)において強く増殖する。MDSCは、単球性MDSCおよび顆粒球性MDSCの2つのサブタイプにさらに分類される。MDSCのサプレッサー機能は、T細胞増殖および活性化を阻害する能力にある。例えば、慢性炎症性疾患(ウイルス感染および細菌感染)またはがん下において、骨髄分化はMDSCの増殖に偏る。例えば、これらのMDSCは炎症部位および腫瘍に浸潤し、これらはT細胞(例えばCD8+ T細胞)およびNK細胞を阻害することによって免疫応答を阻害する。MDSCはまた、サイトカインおよび因子(TGF-βなど)の発現を介して血管新生、腫瘍の悪化および転移を加速させる。
【0043】
用語「傷害関連分子パターン」または「DAMP」は本明細書において互換的に使用され、傷害組織によって放出された細胞内分子を指す。DAMPは細胞の内部において生理学的な役割を有する分子であるが、細胞外環境に曝露された場合にさらなる機能を得る。例えば、DAMPは危険について身体に警告し、炎症反応を刺激し、最終的に再生プロセスを促進する。死細胞によるそれらの受動的な放出に加えて、いくつかのDAMPは、生命を脅かすストレスを受けている生細胞によって分泌または曝露され得る。DAMPは、炎症および関連障害に関連付けられている。DAMPには、限定されないが、ヒストン、ゲノムDNA、HMGB1、IL1a、IL33、ATP、F-アクチン、シクロフィリンA、HSP、尿酸結晶、S100、ミトコンドリアDNA、ミトコンドリア転写因子A、カルレティキュリン(alreticulin)が含まれる。
【0044】
用語「エフェロサイトーシス」は、(例えばアポトーシス性または壊死性の)瀕死の細胞/死細胞が食細胞(例えば、好中球、単球、マクロファージ、肥満細胞および樹状細胞)によって除去されるプロセスを指す。エフェロサイトーシス中において、食細胞は、アポトーシス細胞の部位に蓄積し、食細胞の細胞膜はアポトーシス細胞を貪食し、液体で満たされた大型のベシクルである、死細胞を含む「エフェロソーム(effersome)」を形成する。エフェロサイトーシスの効果は、死細胞の膜の完全性が破れ、その内容物が周囲の組織に漏出する前に死細胞を除去することである。エフェロサイトーシスは特定の下流の細胞内シグナル伝達経路を引き起こし、例えば、抗炎症効果、抗プロテアーゼ効果および増殖促進効果をもたらす。逆に、エフェロサイトーシス障害は自己免疫疾患および組織傷害に関連している。
【0045】
「オートファジー」または「オートファゴサイトーシス」は、制御されたプロセスを介して不必要または機能不全の細胞成分を分解する天然の破壊機構である。オートファジーは、細胞成分の秩序ある分解および再利用を可能にする。このプロセス中において、標的とされる細胞質構成成分は、オートファゴソームとして知られる二重膜ベシクル内の細胞の残りの部分から単離される。次に、オートファゴソームはリソソームと融合し、内容物は分解および再利用される。一般に記述されるオートファジーには3つの異なる形式(すなわち、マクロオートファジー、ミクロオートファジーおよびシャペロン介在性オートファジー)が存在する。疾患の文脈において、オートファジーは生存を促進するストレスのための適応応答として考えられているが、他の場合においてこれは細胞死および病的状態を促進するようである。
【0046】
本明細書における用語「処置する」、「処置している」および「処置」は、疾患に関連する症状、合併症、状態または生化学的兆候の進行、発生、重症度または再発を食い止め、軽減し、改善し、阻害し、抑制し、または予防する目的で、対象に対して実行され、または対象に有効な物質もしくは有効な物質の組合せを投与するあらゆる種類の介入またはプロセスを指す。
【0047】
本明細書において、「有効な処置」または「正の治療応答」は、有益な効果(例えば、疾患または障害(例えばがん)の少なくとも1つの症状の改善)を生じる処置を指す。有益な効果はベースラインを超える改善(すなわち、この方法に従って治療開始前に行われた測定または観察を超える改善)の形式を取り得る。例えば、有益な効果は、疾患の臨床症状もしくは診断症状またはがんのマーカーの減少または除去によって証明されるように、あらゆる臨床病期における対象のがんの進行を抑制、安定化、停止または食い止める形式を取り得る。有効な処置は、例えば、腫瘍サイズを減少させ得、循環腫瘍細胞の存在を減少させ得、腫瘍の転移を減少もしくは予防し得、腫瘍増殖を抑制もしくは停止し得、かつ/または腫瘍の再発もしくは再燃を予防もしくは遅延させ得る。
【0048】
用語「有効量」または「治療上有効量」は、所望の生物学的結果、治療結果および/または予防的結果を提供する物質の量または物質の組合せの量を指す。この結果は、疾患の徴候、症状もしくは原因のうち1つ以上の減少、改善、緩和、軽減、遅延および/または軽減、または生体システムのあらゆる他の所望の変化であり得る。固形腫瘍に関して、有効量は、腫瘍を縮小させ、かつ/または腫瘍の成長速度を減少させ(腫瘍成長を抑制するなど)、または他の望ましくない細胞増殖を予防もしくは遅延させるのに十分な量を含む。いくつかの実施態様において、有効量は腫瘍形成を遅延させるのに十分な量である。いくつかの実施態様において、有効量は腫瘍再発を予防または遅延させるのに十分な量である。有効量は1以上の投与において投与され得る。薬物または組成物の有効量は:(i)がん細胞の数を減少させ得;腫瘍サイズを減少させ得;がん細胞の末梢器官への浸潤をある程度阻害、遅延、抑制し得、かつ停止し得;(iv)腫瘍転移を阻害(すなわち、ある程度抑制し、かつ停止し得る)し得;(v)腫瘍成長を阻害し得;(vi)腫瘍の発生および/または再発を予防または遅延し得;かつ/または(vii)がんに関連する1以上の症状をある程度軽減し得る。ある例において、「有効量」は、組合せにおけるPD-1アンタゴニスト(例えば抗体)およびTIM-4アンタゴニスト抗体(例えば抗体)の量であり、がんの著しい減少またはがん(進行固形腫瘍など)の進行の抑制をもたらす。有効量の併用療法は、PD-1アンタゴニストとTIM-4アンタゴニストの組合せを指す「有効なレジメン」において本明細書に記載される方法に従って投与され、ここで投与の順序および投与頻度は処置をもたらすのに適切である。
【0049】
「至適生物学的投与量(OBD)」は、臨床的に容認できない毒性を有さず、最も至適で持続的なインビボにおける応答を与える物質または物質の組合せの最小投与量として定義される。毒性および治療効果は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手法(例えば、LD50(集団の50%が致死する投与量)およびED50(集団の50%に治療効果のある投与量)を決定すること)によって決定され得る。毒性効果と治療効果との間の投与量比は治療指数であり、LD50/ED50比として表され得る。
【0050】
本明細書において、用語「相乗作用」、「治療的相乗作用」および「相乗効果」は、治療物質の組合せ(例えば、TIM-4アンタゴニストと組み合わせたPD-1アンタゴニスト)を用いた患者の処置が、単独で使用された場合に使用される組合せの個々の成分によって達成される結果よりも優れた治療結果を示す現象を指す(例えば、T. H. Corbett et al., 1982, Cancer Treatment Reports, 66, 1187参照)。この文脈において、優れた治療結果は、以下のうち1つ以上を含む:(a)組合せと同一の用量における各物質単独での別々の効果の合計よりも大きい、治療応答の増加;(b)治療効果の減少を伴わない、組合せにおける1以上の物質の用量の減少;(c)組合せと同一の用量における各物質の単独療法と同等またはそれ以上の治療効果を受けつつ、有害事象の発生率を低下させること;(d)各物質の単独療法よりも高い治療効果を受けつつ、用量制限毒性を減少させること;(e)薬剤耐性の誘導の遅延または最小化。異種移植モデルにおいて、最大耐量で使用される組合せ(各成分は個々の最大耐量を一般的に超えない用量で存在している)は、組合せの投与によって達成された腫瘍成長の減少が、成分を単独で投与した場合に最も良い成分の腫瘍成長の減少の値よりも大きい場合、治療的相乗作用を示す。薬物の組合せの相乗作用は、例えばChou-Talalayの併用係数(combination index;CI)定理(Chou et al., Adv. Enzyme Regul. 1984; 22:27-55; Chou, Cancer Res. 2010;70(2):440-446)に従って決定され得る。
【0051】
「がんを患っていない」または「無病」またはNED(無病生存状態)は、患者が現在の標準的な治療を含む処置によって誘導された臨床応答を示していることを意味する。「臨床応答」によって、これは、がん細胞は身体に未だ存在し得るが、臨床徴候、放射線学の徴候およびがんの症状が、臨床診断に完全に基づいて著しく減少または消滅していることを意味する。したがって、臨床応答は部分寛解および完全寛解を包含することが想定される。残りのがん細胞の存在はCTC(循環腫瘍細胞)などのアッセイによって列挙され得、再発を予測し得る。
【0052】
「再発」、「再燃」または「再起」は本明細書において互換的に使用され、改善または応答後の再発のX線診断、またはがんの再発の徴候および症状を指す。
【0053】
本明細書において、用語「アンタゴニスト」は生物活性を遮断(例えば減少または防止)する分子を指す。用語「阻害する」または「阻害」は、測定可能な量に減少させることを意味する。
【0054】
本明細書において、用語「リガンド」は、生体分子(例えば受容体)と複合体を形成し、生物学的な目的を果たす分子を指す。より狭義の意味において、標的タンパク質上の部位に結合する、シグナル誘発分子である。結合は分子間力(例えばイオン結合、水素結合およびファンデルワールス力など)によって生じる。ドッキング(結合)は通常、可逆的(解離)である。リガンドとその標的分子との間の実際の不可逆的な共有結合は、生体系においてまれである。受容体(受容体タンパク質)とのリガンド結合は、その化学的な立体構造(3次元形状)を変化させる。受容体タンパク質の立体構造の状態はその機能的状態を決定する。
【0055】
タンパク質の「レベル」は、タンパク質レベルを測定する分野において公知の任意の方法(電気泳動、キャピラリー電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、高拡散(hyperdiffusion)クロマトグラフィー、液体またはゲル沈降反応、吸収分光法、比色アッセイ、分光光度アッセイ、フローサイトメトリー、免疫拡散、液相アッセイ、免疫電気泳動、ウエスタンブロッティング、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫蛍光アッセイおよび電気化学発光イムノアッセイを含む)を用いて決定された、試料中のタンパク質の量を指す。
【0056】
用語「試料」は、対象から単離された液体、細胞または組織の収集物を指す。体液は通常、生理的温度において液体であり、対象または生物学的供給源中に存在し、それらから取り出され、発現され、または抽出された、天然に存在する液体を含み得る。体液の例には、血液、血清、漿液、血漿、リンパ液、尿、脳脊髄液、唾液、眼液、嚢胞液、涙液、糞便、痰、粘膜分泌物、膣分泌物、婦人科液、腹水液(非固形腫瘍に関連する腹水液など)、胸膜、心膜、腹膜、腹腔および他の体腔の液体ならびに気管支洗浄によって収集された液体などが含まれる。
【0057】
本明細書において、用語「対照試料」は、臨床的に関連するあらゆる対照試料(例えば、健常な対象由来の試料または評価される対象からより早い時点で作成された試料を含む)を指す。例えば、対照試料は、がんの発生前、疾患のより早期の段階、または処置もしくは処置の一部の投与の前において、対象から得られた試料であり得る。
【0058】
本明細書において、用語「抗体」は、抗体全体およびあらゆる抗原結合フラグメント(すなわち、「抗原結合部分」としても知られる「抗原結合フラグメント」)を含む。抗体全体は、ジスルフィド結合によって相互接続している少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は重鎖可変領域(本明細書においてVHと略される)および重鎖定常領域で構成される。重鎖定常領域はCH1、CH2およびCH3という3つのドメインで構成される。各軽鎖は軽鎖可変領域(本明細書においてVLと略される)および軽鎖定常領域で構成される。軽鎖定常領域はCLという1つのドメインで構成される。VH領域およびVL領域は、より保存されている領域(フレームワーク領域(FR)と呼ばれる)が散在している、超可変性領域(相補性決定領域(CDR)と呼ばれる)にさらに細分化され得る。各VHおよびVLは、3つのCDRおよび4つのFRで構成され、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順序で配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫グロブリンと宿主組織または因子(免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(Clq)を含む)との結合を仲介し得る。用語「抗体」はまた、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体および多量体型の抗体(ミニ抗体、bis-scFv、二重特異性抗体、三重特異性抗体(triabody)、四重特異性抗体(tetrabody)および化学共役されたFab’多量体など)を包含する。
【0059】
本明細書における用語「抗体フラグメント」(「抗原結合フラグメント」または「抗原結合部分」とも呼ばれる)は、抗原に特異的に結合する能力を保持している抗体の1以上のフラグメントを指す。抗体の抗原に結合する機能は、完全長の抗体のフラグメントによって実行され得ることが示されている。抗体の用語「抗原結合フラグメント」に包含される結合フラグメントの例には、(i)Fabフラグメント(VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価フラグメント);(ii)F(ab)2フラグメント(二価フラグメントは本質的にヒンジ領域の一部を含むFabである、FUNDAMENTAL IMMUNOLOGY (Paul ed., 3.sup.rd ed. 1993)参照);(iv)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(v)抗体の単一のアームのVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント;(vi)dAbフラグメント(Ward et al., (1989) Nature 341:544-546)、これはVHドメインからなる;(vii)単離された相補性決定領域(CDR);および(viii)ナノボディ(単一ドメイン抗体(sdAb)としても知られている、これは単一の可変ドメインおよび2つの定常ドメインを含む重鎖可変領域である)が含まれる。単一ドメイン抗体は、VHHフラグメント(ラクダ類において見出された重鎖抗体から設計された単一ドメイン抗体)およびVNARフラグメント(軟骨魚類の重鎖抗体(IgNAR、「免疫グロブリン新抗原受容体(immunoglobulin new antigen receptor)」)から得られる単一ドメイン抗体)を含む。
【0060】
「抗原結合スキャホールド」は、標的(または抗原)またはエピトープに特異的に結合するタンパク質(IgフォールドまたはIg様フォールドを含むタンパク質など)である。抗体またはその抗原結合フラグメントはまた、抗原結合スキャホールドである。抗原結合スキャホールドは、一価、多価(例えば二価、三価、四価または5、6もしくはそれ以上のエピトープに結合する)であり得る。多価抗原結合スキャホールドは、単一特異性または多特異性(すなわち、互いに異なる複数(少なくとも2、3、4または5)のエピトープに結合する)であり得る。例えば、単一特異性の多価抗原結合スキャホールドは、少なくとも2、3、4または5つの同一のエピトープに結合するタンパク質であり、少なくとも2、3、4または5つの同一の抗原結合部分を含むタンパク質であり得る。例えば、TIM-4結合スキャホールドは2~10個(例えば2~6、2~5、2~4または2~3個)のTIM-4結合部分を含み得、これらは互いに同一または異なってい得る。
【0061】
多価抗体は、抗体の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の抗原結合部分を含む抗体を含み、この抗原結合部分は重鎖の一部および軽鎖の一部を含み得る。抗原結合部分は単一のポリペプチド上にあり得、または2以上のポリペプチドを含み得る。例えば、多価抗体は2~10個の抗原結合部分を含み得、これは互いに同一または異なってい得る。多価抗体は単一特異性または多特異性であり得る。多特異性抗体は、二重特異性、三重特異性(trispecific)、四重特異性(tetraspecific)であり得、または5以上の異なるエピトープに結合し得る。
【0062】
さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン(VLおよびVH)は別々の遺伝子によってコードされているが、これらは合成リンカーによって組換え法を用いて連結され得、合成リンカーはこれらを、VLおよびVH領域が対形成し、一価分子を形成する単一のタンパク質鎖(単鎖Fv(scFv)としても知られる;例えば、Bird et al. (1988) Science 242:423-426;およびHuston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883参照)とすることを可能にする。このような単鎖抗体はまた、抗体の用語「抗原結合フラグメント」に包含されることが意図される。これらの抗体フラグメントは当業者に公知の従来の技術を用いて得られ、フラグメントは無処置の抗体と同一の様式で有用性のためにスクリーニングされる。
【0063】
本明細書において、抗原またはそのエピトープに「特異的に結合する」抗原結合スキャホールドは、10-7M、5x10-8M、10-8M、5x10-9M、10-9M、5x10-10M、10-10M、5x10-11M、10-11M、5x10-12M、10-12Mまたはそれ未満のKDで、抗原またはそのエピトープに結合する抗原結合スキャホールドである。例えば、TIM-4に特異的に結合する抗原結合スキャホールドは、10-7M、5x10-8M、10-8M、5x10-9M、10-9M、5x10-10M、10-10M、5x10-11M、10-11M、5x10-12M、10-12Mまたはそれ未満のKDで、TIM-4に結合する抗原結合スキャホールドである。例えば、「ヒトPD-1に特異的に結合する」、または「ヒトPD-L1に特異的に結合する」抗体は、10-7M、5x10-8M、10-8M、5x10-9M、10-9M、5x10-10M、10-10M、5x10-11M、10-11M、5x10-12M、10-12Mまたはそれ未満のKDで、それぞれヒトPD-1またはPD-L1に結合する抗体を指すことが意図される。抗原またはエピトープに結合する2以上の領域を含む抗原結合スキャホールドは結合活性の増加を伴って抗原またはエピトープに結合するため、上記で与えられる範囲よりも低い抗原またはエピトープとの結合親和性を有していても、抗原またはエピトープに特異的に結合し得る。
【0064】
「二重特異性」または「二機能性抗体」は、2つの異なる重鎖/軽鎖対および2つの異なる結合部位を有する人工ハイブリッド抗体である。二重特異性抗体は様々な方法(ハイブリドーマの融合またはFab’フラグメントの連結を含む)で作製され得る。例えば、Songsivilai & Lachmann, Clin. Exp. Immunol. 79:315-321 (1990); Kostelny et al., J. Immunol. 148, 1547-1553 (1992)参照。
【0065】
本明細書における用語「モノクローナル抗体」は、モノクローナル抗体の作製中に生じ得る可能性のある変異体(このような変異体は一般に少量存在する)を除いて、特定のエピトープに対する単一の結合特異性および親和性を示す実質的に均一な抗体の集団由来の抗体を指す。したがって、用語「ヒトモノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域および場合により定常領域を有する抗体を指す。修飾語句「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体の集団から得られているという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法によって抗体を作製することを必要とすると解釈されない。例えば、本明細書に記述されるモノクローナル抗体は多様な技術で作製され得る。ある実施態様において、ヒトモノクローナル抗体は、不死化細胞と融合した、ヒト重鎖導入遺伝子および軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニック非ヒト動物(例えばトランスジェニックマウス)から得られたB細胞を含むハイブリドーマによって作製される。
【0066】
用語「エピトープ」または「抗原決定基」は、免疫グロブリンまたは抗体が特異的に結合する抗原上の部位を指す。エピトープは、連続したアミノ酸またはタンパク質の三次フォールディングによって並置されている不連続なアミノ酸のいずれからも形成され得る。連続したアミノ酸から形成されるエピトープは通常、変性溶媒に曝露されても保持されるが、三次フォールディングによって形成されるエピトープは通常、変性溶媒での処理によって失われる。通常、エピトープは、特有の空間構造において少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15個のアミノ酸を含む。エピトープの空間構造を決定する方法は、当分野における技術および本明細書に記述される技術(例えば、x線結晶構造解析、HDX-MSおよび2次元核磁気共鳴)を含む(例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66, G. E. Morris, Ed. (1996)参照)。
【0067】
用語「エピトープマッピング」は、抗体-抗原認識のための分子決定基の同定のプロセスを指す。
【0068】
2以上の抗体に関して、用語「同一のエピトープに結合する」は、抗体が抗原への結合に競合し、同一の、重複した、または包含された、連続的または非連続的なアミノ酸のセグメントに結合することを意味する。当業者は、語句「同一のエピトープに結合する」が、抗体が完全に同一のアミノ酸に結合することを必ずしも意味しないことを理解している。抗体が結合する正確なアミノ酸は異なっていてもよい。例えば、第1の抗体は、第2の抗体に結合されるアミノ酸のセグメントによって完全に包含されるアミノ酸のセグメントに結合し得る。別の例において、第1の抗体は、第2の抗体に結合される1以上のセグメントに著しく重複するアミノ酸の1以上のセグメントに結合する。本明細書における目的のために、このような抗体は「同一のエピトープに結合する」と見なされる。所定の方法(例えば、HDX-MS、結晶学または標的変異分析)によって決定された2つの抗体は「同一のエピトープに結合」し、これは同一のアミノ酸が両方の抗体について1以上の所定の方法によって同定されることを必要とする。
【0069】
したがって、本明細書に記述される特定の抗体によって認識されるエピトープの全部または一部(例えば、同一の領域もしくは重複領域、または領域間の領域もしくは領域にまたがる領域)を含むエピトープに結合する抗体、または所定の方法(例えば、HDX-MS、結晶学または標的変異分析)によって決定された同一のエピトープに結合する抗体は本発明に包含される。
【0070】
また、本明細書に記述される抗体の結合に競合し、場合により同一のエピトープに結合する抗体は本明細書に包含される。結合に競合する抗体は、通常の技術を用いて同定され得る。このような技術には、例えばイムノアッセイ(これは、ある抗体が別の抗体と標的抗原との結合をブロックする能力を示す;すなわち競合結合アッセイ)が含まれる。競合結合は、試験対象の免疫グロブリンが参照抗体と共通抗原との特異的結合を阻害するアッセイにおいて決定される。多数の種類の競合結合アッセイが知られている(例えば、Biacore、フローサイトメトリー、固相直接的または間接的ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接的または間接的酵素免疫測定法(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(Stahli et al., Methods in Enzymology 9:242 (1983)参照);固相直接的ビオチン-アビジンEIA(Kirkland et al., J. Immunol. 137:3614 (1986)参照);固相直接的標識アッセイ、固相直接的標識サンドイッチアッセイ(Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press (1988)参照);I-125標識を用いた固相直接的標識RIA(Morel et al., Mol. Immunol. 25(1):7 (1988)参照);固相直接的ビオチン-アビジンEIA(Cheung et al., Virology 176:546 (1990));および直接的標識RIA(Moldenhauer et al., Scand. J. Immunol. 32:77 (1990)))。通常、このようなアッセイは、固体表面に結合した精製抗原、またはこれらの非標識のテスト免疫グロブリンおよび標識された参照免疫グロブリンのいずれかを有する細胞の使用を含む。競合阻害は、テスト免疫グロブリン存在下において固体表面または細胞に結合した標識の量を決定することによって測定される。通常、テスト免疫グロブリンは過剰に存在する。通常、競合する抗体が過剰に存在する場合、この抗体は参照抗体と共通抗原との特異的結合を少なくとも50~55%、55~60%、60~65%、65~70%、70~75%またはそれ以上阻害する。
【0071】
エピトープマッピング法はまた、原子分解能のエピトープを与える抗原:抗体複合体の結晶のx線解析を含む。他の方法は、抗体と抗原フラグメントまたは抗原の変異体との結合をモニターし、ここで抗原配列内のアミノ酸残基の修飾による結合の損失はエピトープの構成要素の指標であると見なされることが多い。さらに、エピトープマッピングのコンピューターによる組合せ法もまた使用され得る。これらの方法は、対象の抗体が、コンビナトリアルファージディスプレイペプチドライブラリーまたは酵母ディスプレイペプチドライブラリー由来の特定の短ペプチドをアフィニティー単離する能力に依存している。ペプチドは、ペプチドライブラリーをスクリーニングするために使用された抗体に対応するエピトープの決定のためのリードと見なされる。エピトープマッピングについて、不連続な立体構造エピトープをマッピングすることが示されている計算アルゴリズムも開発されている。
【0072】
別のポリペプチドまたは分子と融合した、抗原結合ドメインを含むキメラ分子(または融合分子)または等価物も本発明に包含される。例えば、ポリペプチドは抗体のFc領域またはその一部と融合または結合し得る(例えばFc融合タンパク質)。ポリペプチドと融合する抗体の一部は、定常領域、ヒンジ領域、CH1ドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインまたはドメイン全体もしくはその一部のあらゆる組合せを含み得る。ポリペプチドは上記の抗体の一部と融合または結合し得、多量体を形成し得る。例えば、本発明のポリペプチドと融合したFc部分は、Fc部分間のジスルフィド結合を介して二量体を形成し得る。より高次の多量体型は、ポリペプチドをIgAおよびIgMの一部と融合することによって作製され得る。本発明のポリペプチドを抗体の一部と融合または結合する方法は当分野で公知である。例えば、米国特許第5,336,603、5,622,929、5,359,046、5,349,053、5,447,851および5,112,946号;EP307,434;EP367,166;PCT出願WO96/04388およびWO91/06570;Ashkenazi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:10535-10539 (1991);Zheng et al., J. Immunol., 154:5590-5600 (1995);およびVil et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:11337-11341 (1992)参照。
【0073】
本明細書において、用語「免疫複合体」は、治療部分(therapeutic moiety)(細胞毒、薬物または放射性同位体など)と連結した抗体を指す。細胞毒と結合している場合、これらの抗体複合体は「イムノトキシン」と呼ばれる。細胞毒または細胞毒性物質は、細胞に有害な(例えば細胞を死滅させる)あらゆる物質を含む。例として、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒシン(colchicin)、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラセンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロールおよびピューロマイシンならびにそれらの類似体またはホモログが挙げられる。治療物質には、限定されないが、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルダカルバジン(fluorouracil decarbazine))、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオテパクロラムブシル(thioepa chlorambucil)、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンCおよびシス-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシンおよびアントラマイシン(AMC))、および抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)が含まれる。本発明で使用される抗体は放射性同位体(例えば放射性ヨード)と結合され得、がんを処置するための細胞毒性放射性医薬品を生成し得る。
【0074】
免疫複合体は所定の生物学的反応を修飾するために使用され得、薬物部分は標準的な化学療法剤に限定されるものとして解釈されるべきではない。例えば、薬物部分は所望の生物活性を持つタンパク質またはポリペプチドであり得る。そのようなタンパク質には、例えば、酵素活性毒もしくはその活性なフラグメント(アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素、またはジフテリア毒素など);タンパク質(腫瘍壊死因子またはインターフェロン-γなど);または生物反応修飾物質(例えば、リンホカイン、インターロイキン-1(「IL-1」)、インターロイキン-2(「IL-2」)、インターロイキン-6(「IL-6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM-CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G-CSF」)または他の増殖因子など)が含まれる。
【0075】
そのような治療部分を抗体に結合する技術は周知であり、例えば、Arnon et al., "Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy", in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeld et al. (eds.), pp. 243-56 (Alan R. Liss, Inc. 1985); Hellstrom et al., "Antibodies For Drug Delivery", in Controlled Drug Delivery (2nd Ed.), Robinson et al. (eds.), pp. 623-53 (Marcel Dekker, Inc. 1987); Thorpe, "Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review", in Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications, Pinchera et al. (eds.), pp. 475-506 (1985); "Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy", in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwin et al. (eds.), pp. 303-16 (Academic Press 1985), およびThorpe et al., "The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates", Immunol. Rev., 62:119-58 (1982)参照。
【0076】
本明細書において、用語「多価」は、3以上の生物活性なセグメントを組み込む組換え分子を指す。場合により、多価分子を形成するタンパク質フラグメントは、構成要素部分に結合し、それぞれが独立して機能することを可能にするポリペプチドリンカーを介して連結され得る。
【0077】
本明細書において、「機能的等価物」は、元の免疫学的活性の相当量を維持しているペプチドまたはポリペプチド(例えば抗体またはその抗原結合部分)を指す。例えば、あるアミノ酸は、構造(例えば抗体の抗原結合領域または基質分子上の結合部位など)を有し、相互作用的な結合能の明らかな減少を伴わないタンパク質構造において、他のアミノ酸に置換され得る。したがって、開示された組成物のアミノ酸配列において、その生物学的有用性または生物活性の明らかな減少を伴わずに様々な変更が行われ得ることが想定される。アミノ酸置換はアミノ酸側鎖置換基の相対的類似性(例えば、それらの疎水性、親水性、電荷およびサイズなど)に基づき得る。上記の様々な特徴を考慮した例示的な置換は当業者に周知であり、そのような免疫学的な機能的等価物もまた本発明に包含される。
【0078】
本明細書における「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、いかなる保存的置換も配列同一性の一部として考慮せずに、最大のパーセント配列同一性を達成するように配列をアライメントし、必要に応じてギャップを導入した後における、選択された配列内のアミノ酸残基と同一な候補配列内のアミノ酸残基の百分率として定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアライメントは、当分野の技術における様々な方法(例えば、公開されているコンピューターソフトウェア(BLAST、BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなど)の使用)で達成され得る。当業者はアライメントを測定するために適切なパラメータを決定し得、これは比較される配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するために必要とされるあらゆるアルゴリズムを含む。
【0079】
本明細書における目的のために、所定のアミノ酸配列Bとの、Bを含む、またはBに対する所定のアミノ酸配列Aの%アミノ酸配列同一性(あるいは、所定のアミノ酸配列Bとの、Bを含む、またはBに対する特定の%アミノ酸配列同一性を有する、または含む所定のアミノ酸配列Aとして表現され得る)は以下のように計算される:割合X/Yを100倍する、ここでXは配列アライメントプログラム(BLAST、BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2またはMegalign(DNASTAR)など)によって、そのプログラムのAおよびBのアライメントにおいて完全な一致としてスコア化されたアミノ酸残基の数であり、YはBのアミノ酸残基の全体数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、Bに対するAの%アミノ酸配列同一性は、Aに対するBの%アミノ酸配列同一性と等しくないことが認識される。
【0080】
II.PD-1アンタゴニスト
本明細書において、用語「タンパク質PD-1」、「PD-1」、「PD1」、「PDCD1」は、「プログラム死1(Programmed Death 1)」、「プログラム細胞死1(Programmed Cell Death 1)」と互換的に使用される。完全ヒトPD-1配列はGenBank登録番号U64863(配列番号23)下において見出され得る。
【0081】
本明細書において、用語「PD-L1」、「PDL1」、「PDCD1L1」、「PDCD1LG1」、「CD274」、「B7ホモログ1」、「B7-H1」、「B7-H」および「B7H1」は、「プログラム細胞死1リガンド1(Programmed Cell Death 1 Ligand 1)」と互換的に使用される。完全ヒトPD-L1アミノ酸配列(アイソフォームa前駆体)はGenBank登録番号NP_054862.1(配列番号24)下において見出され得る。完全ヒトPD-L1アミノ酸配列(アイソフォームb前駆体)はGenBank登録番号NP_001254635.1(配列番号25)下において見出され得る。
【0082】
タンパク質プログラム細胞死1(PD-1)は受容体のCD28ファミリーの抑制性メンバーであり、このファミリーはまたCD28、CTLA-4、ICOSおよびBTLAを含む。PD-1は活性化B細胞、T細胞および骨髄性細胞上に発現する(Agata et al., supra; Okazaki et al. (2002) Curr. Opin. Immunol. 14: 391779-82; Bennett et al. (2003) J Immunol 170:711-8)。ファミリーの初期のメンバーであるCD28およびICOSは、モノクローナル抗体の添加後の、増強されたT細胞増殖に対する機能的効果によって発見された(Hutloff et al. (1999) Nature 397:263-266; Hansen et al. (1980) Immunogenics 10:247-260)。PD-1は、アポトーシス細胞における発現の差異についてのスクリーニングを介して発見された(Ishida et al. (1992) EMBO J 11:3887-95)。ファミリーの他のメンバーであるCTLA-4およびBTLAは、それぞれ細胞傷害性Tリンパ球およびTH1細胞における発現の差異についてのスクリーニングを介して発見された。CD28、ICOSおよびCTLA-4は全て、ホモ二量体化を可能にする対形成していないシステイン残基を有する。対照的に、PD-1は単量体として存在することが示唆され、他のCD28ファミリーメンバーにおける対形成していないシステイン残基の特徴を有していない。
【0083】
PD-1タンパク質は、Ig遺伝子スーパーファミリーの一部である55kDaのI型膜貫通タンパク質である(Agata et al. (1996) Int Immunol 8:765-72)。PD-1は、膜近位の免疫受容体チロシン抑制性モチーフ(ITIM)および膜遠位のチロシン依存性スイッチモチーフ(ITSM)を含む(Thomas, M.L. (1995) J Exp Med 181:1953-6; Vivier, E and Daeron, M (1997) Immunol Today 18:286-91)。PD-1はCTLA-4に構造的に類似しているが、B7-1およびB7-2結合に重要なMYPPPYモチーフ(配列番号27)を持たない。
【0084】
PD-1がCD28ファミリーの抑制性メンバーであることと一致して、PD-1欠損動物は様々な自己免疫表現型(自己免疫性心筋症ならびに関節炎および腎炎を伴うループス様症候群を含む)を発症する(Nishimura et al. (1999) Immunity 11:141-51; Nishimura et al. (2001) Science 291:319-22)。さらに、PD-1は、自己免疫性脳脊髄炎、全身性エリテマトーデス、移植片対宿主病(GVHD)、I型糖尿病および関節リウマチに関与していることが見出されている(Salama et al. (2003) J Exp Med 198:71-78; Prokunina and Alarcon-Riquelme (2004) Hum Mol Genet 13:R143; Nielsen et al. (2004) Lupus 13:510)。マウスB細胞腫瘍株において、PD-1のITSMは、BCR介在性Ca2+流および下流エフェクター分子のチロシンリン酸化を遮断するのに必須であることが示された(Okazaki et al. (2001) PNAS 98:13866-71)。
【0085】
PD-1の2つのリガンドであるPD-L1およびPD-L2が同定されており、これらはPD-1との結合によってT細胞活性化を下方制御することが示されている(Freeman et al. (2000) J Exp Med 192:1027-34; Latchman et al. (2001) Nat Immunol 2:261-8; Carter et al. (2002) Eur J Immunol 32:634-43)。PD-L1およびPD-L2は共にPD-1に結合するB7ホモログであるが、他のCD28ファミリーメンバーには結合しない。PD-L1は多様なヒトがんにおいて大量に存在する(Dong et al. (2002) Nat. Med. 8:787-9)。PD-1とPD-L1との間の相互作用は、腫瘍浸潤リンパ球の減少、T細胞受容体介在性増殖の減少、およびがん細胞による免疫回避をもたらす(Dong et al. (2003) J. Mol. Med. 81:281-7; Blank et al. (2005) Cancer Immunol. Immunother. 54:307-314; Konishi et al. (2004) Clin. Cancer Res. 10:5094-100)。免疫抑制はPD-1とPD-L1との局所的な相互作用を阻害することによって元に戻り得、この効果はPD-1とPD-L2との相互作用を同様に遮断した場合に相加的である(Iwai et al. (2002) Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 99:12293-7; Brown et al. (2003) J. Immunol. 170:1257-66)。
【0086】
本発明の方法は、がんを処置するための、TIM-4アンタゴニスト(例えば抗体)と組み合わせたPD-1アンタゴニスト(例えば抗体)の使用を含む。したがって、本発明のPD-1アンタゴニストはPD-1のリガンドに結合し、かつ1以上のリガンドとPD-1受容体との結合を妨害、減少もしくは阻害し、またはPD-1受容体を介したシグナル伝達に関与することなくPD-1受容体に直接結合する。ある実施態様において、PD-1アンタゴニストはPD-1に直接結合し、PD-1の抑制性シグナル伝達を遮断する。別の実施態様において、PD-1アンタゴニストはPD-1の1以上のリガンド(例えばPD-L1およびPD-L2)に結合し、リガンドがPD-1を介した抑制性シグナル伝達を引き起こすのを減少または阻害する。ある実施態様において、PD-1アンタゴニストはPD-L1に直接結合し、PD-L1がPD-1に結合するのを阻害または防止し、これによりPD-1の抑制性シグナル伝達を遮断する。
【0087】
本発明の方法および組成物において使用されるPD-1アンタゴニストは、PD-1結合スキャホールドタンパク質を含み、限定されないが、PD-1リガンド、抗体および多価物質を含む。特定の実施態様において、アンタゴニストは融合タンパク質(AMP-224など)である。別の実施態様において、アンタゴニストは抗PD-1抗体(「PD-1抗体」)である。本発明における使用に適した抗ヒトPD-1抗体(またはそれに由来するVHドメインおよび/またはVLドメイン)は当分野で周知の方法を用いて作製され得る。あるいは、当分野で認識されている抗PD-1抗体が使用され得る。例えば、抗体ニボルマブ(OPDIVO(商標))、MK-3475(ペンブロリズマブ、KEYTRUDA(商標))、PDR001またはCT-011が使用され得る。さらに、WO2006/121168に記載されているモノクローナル抗体5C4、17D8、2D3、4H1、4A11、7D3および5F4が使用され得、この教示は参照によって本明細書に組み込まれる。PD-1との結合について、当分野で認識されているこれらの任意の抗体と競合する抗体もまた使用され得る。
【0088】
例示的な抗PD-1抗体は、それぞれ配列番号11および12に示される配列を有する重鎖および軽鎖を含む5C4、またはその抗原結合フラグメントおよび変異体である。他の実施態様において、抗体は5C4の重鎖および軽鎖のCDRまたは可変領域を含む。したがって、ある実施態様において、抗体は、配列番号13に記載の配列を有する5C4のVHのCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびに配列番号15に記載の配列を有する5C4のVLのCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の実施態様において、抗体は、それぞれ配列番号17、18および19に記載の配列を有するCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびにそれぞれ配列番号20、21および22に記載の配列を有するCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の実施態様において、抗体は、それぞれ配列番号13および/または配列番号15に記載のアミノ酸配列を有するVH領域および/またはVL領域を含む。別の実施態様において、抗体は、それぞれ配列番号14および/または配列番号16に記載の核酸配列によってコードされる重鎖可変(VH)領域および/または軽鎖可変(VL)領域を含む。別の実施態様において、抗体は、上述の抗体としてPD-1上の同一のエピトープとの結合に競合し、かつ/またはこの同一のエピトープに結合する。別の実施態様において、抗体は、上述の抗体と少なくとも約90%の可変領域のアミノ酸配列同一性(例えば、配列番号13または配列番号15と少なくとも約90%、95%または99%の可変領域の同一性)を有する。
【0089】
ある実施態様において、PD1抗体は1以上の望ましい機能的性質(PD-1との高親和性結合(例えば、10-7M以下のKDを伴うヒトPD-1との結合);他のCD28ファミリーメンバー(例えばCD28、CTLA-4およびICOS)との有意な交差反応性の欠如;混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいてT細胞増殖を刺激する能力;MLRにおいてIFN-γおよび/またはIL-2分泌を増加させる能力;1以上のPD-1リガンド(例えばPD-L1および/またはPD-L2)とPD-1との結合を阻害する能力;抗原特異的記憶応答を刺激する能力;抗体応答を刺激する能力および/またはインビボにおいて腫瘍細胞の増殖を阻害する能力など)を示す。
【0090】
別の実施態様において、PD-1アンタゴニストは抗PD-L1抗体である。本発明における使用に適した抗ヒトPD-L1抗体(またはそれに由来するVHおよび/またはVLドメイン)は当分野で周知の方法を用いて作製され得る。あるいは、当分野で認識されている抗PD-L1抗体が使用され得る。例えば、MEDI4736(抗B7-H1としても知られている;デュルバルマブ(IMFINZI(商標)))、MPDL3280A(アテゾリズマブ(TECENTRIQ(商標))、RG7446としても知られている)、およびアベルマブ(BAVENCIO(商標))が使用され得る。さらに、WO2007/005874および米国特許第7,943,743号に記載されているモノクローナル抗体12A4、3G10、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7および13G4が使用され得、これらの教示は参照によって本明細書に組み込まれる。PD-L1との結合について、当分野で認識されているこれらの任意の抗体と競合する抗体もまた使用され得る。
【0091】
例示的な抗PD-L1抗体は12A4である(WO2007/005874および米国特許第7,943,743号)。ある実施態様において、抗体は12A4の重鎖および軽鎖のCDRまたはVRを含む。したがって、ある実施態様において、抗体は、配列番号1に示される配列を有する12A4のVH領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびに配列番号3に示される配列を有する12A4のVL領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の実施態様において、抗体は、それぞれ配列番号5、6および7に記載の配列を有する重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびにそれぞれ配列番号8、9および10に記載の配列を有する軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の実施態様において、抗体は、それぞれ配列番号1および/または配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するVH領域および/またはVL領域を含む。別の実施態様において、抗体は、それぞれ配列番号2および/または配列番号4に記載の核酸配列によってコードされる重鎖可変(VH)領域および/または軽鎖可変(VL)領域を含む。別の実施態様において、抗体は、上述の抗体としてPD-L1上の同一のエピトープとの結合に競合し、かつ/またはこの同一のエピトープに結合する。別の実施態様において、抗体は、上述の抗体と少なくとも約90%の可変領域のアミノ酸配列同一性(例えば、配列番号1または配列番号3と少なくとも約90%、95%または99%の可変領域の同一性)を有する。
【0092】
抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体は、10-7M、5x10-8M、10-8M、5x10-9M、10-9M、5x10-10M、10-10Mまたはそれ未満のKDで、それぞれPD-1またはPD-L1に結合し得る。
【0093】
ある実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体はIgG抗体(IgG1、IgG2またはIgG4抗体など)である。具体的な実施態様において、抗PD-1抗体またはPD-L1抗体はエフェクターを持たない(effectorless)定常領域を有する。抗PD-1抗体またはPD-L1抗体はIgG4抗体(例えばS228P変異を有するIgG4抗体)であり得る。
【0094】
III.
TIM-4アンタゴニスト
本明細書において、用語「TIM-4」および「TIMD-4」(「T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有タンパク質4」、「T細胞免疫グロブリンムチン受容体4」「T細胞膜タンパク質4」および「SMUCKLER」としても知られている)は互換的に使用される。ヒトTIM-4のアイソフォーム1の完全アミノ酸配列および完全ヌクレオチド配列は、GenBank登録番号NP_612388.2およびNM_138379.2(配列番号26~27)下においてそれぞれ見出され得る。ヒトTIM-4のアイソフォーム2の完全アミノ酸配列および完全ヌクレオチド配列は、GenBank登録番号NP_001140198.1およびNM_001146726.1(配列番号28~29)下においてそれぞれ見出され得る(Jones et al., Int Arch Allergy Immunol. 2006;141(4):331-6)。2つのヒトアイソフォームのアライメントを
図1に示す。
【0095】
カニクイザル由来のTIM-4アイソフォームのアミノ酸配列はGenBank登録番号XP_005558436およびEHH54702下において見出され得、マウスTIM-4アイソフォームのアミノ酸配列はGenBank登録番号NP_848874およびNP_599009下において見出され得る。マウス、カニクイザルおよびヒトTIM-4ポリペプチドのアミノ酸配列のアライメントが
図2において提供され、ヒト、カニクイザルおよびマウスオルソログの完全長およびIgV領域のパーセント同一性が表1に記載される。
【表1】
【0096】
タンパク質「TIM-4」は、T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有(TIM)ファミリーのメンバーであるI型膜タンパク質である。ヒトTIMファミリーは、喘息、アレルギーおよび自己免疫に関連付けられている染色体領域に位置するヒト染色体5q33.2上の3つのメンバー(TIM-1、TIM-3およびTIM-4)を含む。TIMタンパク質は共通の構造的特徴(高度に保存されたシステイン残基を含むN末端の免疫グロブリン(IgV)様ドメイン、O結合型グリコシル化およびN結合型グリコシル化を含むスレオニンリッチムチンドメイン、単一の膜貫通ドメイン、ならびに細胞質領域を含む)を持つI型細胞表面糖タンパク質である。ヒトTIM-1およびTIM-3の細胞質ドメインはチロシンリン酸化モチーフを含むが、TIM-4はホスホチロシンモチーフを持たない。
【0097】
TIM-4は骨髄性細胞(脾臓、リンパ節または腹膜腔由来の樹状細胞(DC)およびマクロファージを含む)上に発現する。TIM-4は、IgVドメインを介してTIM-1、MerTK、インテグリンαvβ3およびホスファチジルセリンに結合することが示されている。MerTKおよびインテグリンαvβ3は、特定のTIM4を介する生物活性に関与してい得る(Nishi et al. (2014) Mol Cell Biol. 34(8):1512-20およびToda et al. (2012) Mol Cell Biol. 32(1):118-25)。TIM-4は免疫応答の誘導期においてナイーブT細胞を阻害し、エフェクター相においてT細胞応答を増強することによって、T細胞恒常性を特異的に調節する(上記Rodriguez-Manzanet et al.,)。例えば、TIM-4はTIM-1(これは活性化T細胞上に存在する)に結合し、T細胞増殖を共刺激する。
【0098】
TIM-4は、N末端の免疫グロブリン可変(IgV)ドメイン内のFG-CC’結合クレフト(binding cleft)を介してホスファチジルセリン(PS)に結合する。TIM-4はDAMPの放出後に上方制御され、マクロファージによるアポトーシス細胞のエフェロサイトーシスを増強する(Kobayashi, 2007; Albacker, et al., J. Immunol. 2010; 185:6839-6849; Mizui et al. Int. Immunol. 2008; 20:695-708)。対照的に、TIM-4ノックアウトマウスは、リソソーム分解、抗原提示およびクロスプライミング(cross-priming)において欠陥を有する(Miyanishi 2012, Rodrigues-Manzaneta, 2010)。
【0099】
TIM-4は腫瘍微小環境(TME)においてマクロファージおよびDC上に発現することが示されており、腫瘍内の骨髄性細胞と抗原特異的細胞傷害性T細胞との間の相互作用を調節し得る。Bahgdadi et al.(上記)は、アポトーシス腫瘍細胞がTIM-4+骨髄由来マクロファージ(BMDM)に取り込まれたことを報告し、これはTIM-4が取り込まれた腫瘍細胞の過剰なリソソーム分解を促進することによる免疫寛容に寄与し、TIM-4+腫瘍関連マクロファージ(TAM)による腫瘍抗原提示障害をもたらすことを示唆する。この機能の阻害は、抗TIM-4遮断抗体での単独療法後に抗腫瘍活性を促進すると考えられ、ワクチン療法モデルの文脈において抗TIM-3遮断抗体と組み合わせた場合に、相乗的な抗腫瘍活性を示す(Baghadadi 2013)。
【0100】
TIM-4に関して使用される用語「アンタゴニスト」は、インビトロ(in vitro)、インサイチュ(in situ)またはインビボにおいて、TIM-4の1以上の生物活性を部分的または完全に阻害するあらゆる分子を指す。このような生物活性の例として、TIM-4とPSの結合、腫瘍細胞のエフェロサイトーシス、腫瘍抗原提示の抑制、および文献に報告されているさらなる生物活性が挙げられる。TIM-4アンタゴニストは直接的または間接的な様式で機能し得る。例えば、TIM-4アンタゴニストは、TIM-4とPSの直接結合を遮断すること、および/またはTIM-4と他のPS受容体との相互作用を遮断すること、ならびに腫瘍細胞のエフェロサイトーシスに関与する細胞の能力を減少させることの結果として、インビトロ、インサイチュまたはインビボにおいて、TIM-4の1以上の生物活性を部分的または完全に阻害するように機能し得る。アンタゴニストはまた、TIM-4のTIM-1との相互作用を妨害することによって機能し得、これにより直接的なT細胞制御活性を防止する。TIM-4アンタゴニストはまた、(例えば、別の分子を阻害し、次いでTIM-4の活性化または発現を遮断することの結果として)インビトロ、インサイチュまたはインビボにおいて、TIM-4の1以上の生物活性を部分的または完全に阻害するように間接的に機能し得る。アンタゴニストは、TIM-4の発現または活性を遮断、阻害または減少させるように間接的に機能する分子として働き得る。
【0101】
TIM-4アンタゴニストは単独であるか、別の処置(PD-1アンタゴニストなど)との組合せであるかに関わらず、TIM-4の活性を直接的または間接的に阻害または減少させ、腫瘍成長を減少させるあらゆる分子であり得る。例示的なTIM-4アンタゴニストには、TIM-4結合スキャホールド(抗TIM-4抗体(「TIM-4抗体」)(例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体または完全ヒト抗体)、その抗原結合部分、またはあらゆるこれらに基づく分子、もしくは由来する分子など)が含まれる。TIM-4アンタゴニストはまた、非抗体タンパク質であり得る。例えば、TIM-4アンタゴニストには、修飾されたTIM-4リガンドまたは結合タンパク質(例えばTIM-1)およびPSに由来する分子またはPSに基づく分子が含まれる。さらに、TIM-4に調節された生物学は融合タンパク質(TIM-4:Igなど)によって妨害され得る。
【0102】
TIM-4アンタゴニストは一価または多価であり得る。ある実施態様において、TIM-4アンタゴニストは、二価、三価、四価であり、または5、6、7、8、9、10もしくはそれ以上のTIM-4エピトープに結合し、これは同一または異なるTIM-4エピトープであり得る。ある実施態様において、TIM-4アンタゴニストは単一特異性の多価TIM-4結合スキャホールド(例えば、同一のTIM-4エピトープに特異的に結合する少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の領域を含むTIM-4結合スキャホールドを含むタンパク質、ここでこの結合領域は同一または異なるアミノ酸配列で構成されてい得る)である。例えば、TIM-4アンタゴニストは、同一のTIM-4結合領域(例えば、N末端のIgV領域、またはIgV領域のFG-CC’結合クレフトを含むその一部)の2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の反復を含むTIM-4結合スキャホールドであり得る。
【0103】
ある実施態様において、TIM-4アンタゴニストはTIM-4に特異的に結合するが、TIMファミリーの他のメンバー(TIM-1またはTIM-3など)にあまり、または特異的に結合しない。他の実施態様において、TIM-4アンタゴニストはTIM-4およびTIM-1に特異的に結合する。
【0104】
別の実施態様において、TIM-4アンタゴニストは抗体(例えば、ヒトTIM-4に10-7M、5x10-8M、10-8M、5x10-9M、10-9M、5x10-10M、10-10Mまたはそれ未満のKDで結合する抗体)であり、ここでこの抗体は腫瘍成長を阻害し、かつ/または腫瘍抗原特異的CTLを増加させる。ヒトTIM-4に結合する抗体は当分野で公知である。これらの抗体のいずれかとPD-1アンタゴニストとの組合せが(例えばがんを有する対象において)腫瘍成長の阻害または腫瘍サイズの減少をもたらす場合、その抗体はPD-1アンタゴニストと組み合わせて使用され得る。例示的な抗体には、TIM-4のN末端IgVドメイン(例えばFG-CC”結合クレフト)に特異的に結合する抗体が含まれる。抗TIM-4抗体には、ヒトTIM-4に結合する抗体(例えば9F4(BioLegend))が含まれる。抗マウス抗TIM-4抗体には、RMT4-53(BioXCell, GeneTex)、RMT4-54(BioLegend)、F31-5G3および21H12(それぞれBioLegend、BD Biosciences)が含まれる。これらの抗体の変異体(これらの抗体のCDRを含む抗体など)、またはヒトもしくはマウスTIM-4とこれらの抗体のうち1つとの結合に競合する抗体、またはこれらの抗体のうち1つとTIM-4上の同一もしくは類似のエピトープに結合する抗体は、PD-1アンタゴニストと組み合わせて使用され得る。
【0105】
ある実施態様において、本明細書に記載される方法において使用される抗TIM-4抗体は、TIM-4の生物活性を弱め、がんを処置するために使用された場合に(いずれかの物質のみと比較して)PD-1アンタゴニストと少なくとも相加効果を有する場合、IgVドメインではない(例えばステムドメインまたはTIM-4の細胞外ドメイン内のあらゆる他の領域であり得る)ヒトTIM-4上の領域に結合する。
【0106】
別の実施態様において、TIM-4アンタゴニストは、多量体(例えば三量体化するドメインとTIM-4に結合するポリペプチドを含むポリペプチド構成物)などの多価物質である。
【0107】
また、本明細書に記載の例示的な物質のいずれかとTIM-4との結合に競合し、かつ腫瘍成長を阻害し、または腫瘍サイズを減少させる物質が使用され得る。本明細書に記載の抗TIM-4抗体のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、98%または99%同一のアミノ酸配列を含むVH鎖およびVL鎖を有する抗体が使用され得る。
【0108】
TIM-4アンタゴニストの投与は、ホスファチジルセリン(PS)結合物質(例えば、アネキシンVペプチド、TIM-4結合フラグメント)を用いた画像化によってモニターされ得、ここでPS結合物質は画像化(例えばPET、SPECT、蛍光など)のために標識され得る。結合物質は標的腫瘍細胞と接触し、結合物質の存在はPSが存在し、TIM-4と相互作用できることを示す。
【0109】
例えば、アネキシンVは、膜結合型の構成的な陰イオン性リン脂質であるホスファチジルセリン(PS)(これはアポトーシス細胞または生理的ストレスを受けた細胞の表面上に選択的に発現する)とナノモル濃度の親和性を有する、ヒトにおいて偏在する細胞内タンパク質である。そのようなものとして、放射線標識された形態のアネキシンVは、治療効果の初期の代替マーカーとしてトレーサーを利用するために動物モデルならびにヒト第I相試験および第II相試験の両方において使用されている(例えば、Blankenberg et al. Proc. Am. J. Thoracic. Soc. 2009; 6:469-476)。例えば、腫瘍微小環境におけるPSのインビボでのモニタリングは、(PETまたはSPECTのための)放射性トレーサー標識と連結した抗アネキシンV、または標識もしくは放射性トレーサーと連結したTIM-4融合タンパク質を用いて実行され得る。標識には、近IRイメージング用q-dot、または他のよりありふれた標識が含まれ得る。pK/Kdの調査が放射性標識抗体を用いて実行され得る。
【0110】
IV.組成物
ある態様において、本発明は(例えば単一の組成物に共に処方された、または別々に処方された)PD-1アンタゴニストおよびTIM-4アンタゴニストを含む組成物を提供する。ある実施態様において、PD-1アンタゴニストは、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブまたはPDR001である。ある実施態様において、組成物はPD-1アンタゴニストおよびTIM-4アンタゴニストを含み、ここで(a)PD-1アンタゴニストは、配列番号13に記載の配列を有する重鎖可変領域におけるCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびに配列番号15に記載の配列を有する軽鎖可変領域におけるCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む抗PD-1抗体であり、(b)TIM-4アンタゴニストは抗体である。別の実施態様において、組成物はPD-1アンタゴニストおよびTIM-4アンタゴニストを含み、ここで(a)PD-1アンタゴニストは、配列番号1に記載の配列を有する重鎖可変領域におけるCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびに配列番号3に記載の配列を有する軽鎖可変領域におけるCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む抗PD-L1抗体であり、(b)TIM-4アンタゴニストは抗体である。
【0111】
ヒト患者への投与に適した医薬組成物は通常、非経口投与用に処方される(例えば、液体担体中、または静脈内投与用の液体溶液もしくは懸濁液への再構成に適している)。
【0112】
一般に、このような組成物は通常、薬学的に許容され得る担体を含む。本明細書において、用語「薬学的に許容され得る」は、政府規制機関によって承認されていること、または米国薬局方もしくは動物(特にヒト)における使用のための一般的に認められている別の薬局方に記載されていることを意味する。用語「担体」は、化合物と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤または媒体を指す。そのような医薬担体は滅菌液(水および油など、これは石油、動物、野菜または合成起源の油(落花生油、大豆油、鉱物油、ゴマ油、およびグリセロールポリエチレングリコールリシノール酸塩など)を含む)であり得る。水または生理食塩水溶液ならびにブドウ糖水溶液およびグリセロール水溶液は(特に注射液用の)担体として利用され得る。非経口投与用の液体組成物は、注射または持続注入による投与のために処方され得る。注射または注入による投与経路には、静脈内、腹腔内、筋肉内、髄腔内および皮下が含まれる。
【0113】
経口使用のために、本発明の医薬組成物は(例えば、錠剤もしくはカプセル剤、粉末、分散性顆粒剤もしくはカシェ剤(cachet)の形状において、または水溶液もしくは懸濁液として)投与され得る。経口使用のための錠剤の場合、一般的に使用される担体には、ラクトース、コーンスターチ、炭酸マグネシウム、タルクおよび糖が含まれ、潤滑剤(ステアリン酸マグネシウムなど)が一般に添加される。カプセル剤の形状における経口投与のために有用な担体には、ラクトース、コーンスターチ、炭酸マグネシウム、タルクおよび糖が含まれる。水性懸濁液が経口投与のために使用される場合、乳化剤および/または懸濁剤が一般に添加される。
【0114】
さらに、甘味剤および/または香味剤が経口組成物に添加され得る。筋肉内、腹腔内、皮下および静脈内の使用のために、有効成分の滅菌溶液が通常利用され、溶液のpHは適切に調整および緩衝されるべきである。静脈内使用のために、溶質の全濃度は調整物を等張にするために調節されるべきである。
【0115】
本発明における坐薬を調製するために、低融点ワックス(脂肪酸グリセリドまたはココアバターの混合物など)を最初に溶かし、有効成分を(例えば撹拌によって)ワックス中に均一に分散させる。次に、融解した均一な混合物を都合の良いサイズの型に流し込み、冷却させて凝固させる。
【0116】
液体調製物は、溶液、懸濁液および乳濁液を含む。そのような調製物は、非経口注射用の水または水/プロピレングリコール溶液によって例示される。液体調製物はまた、鼻腔内投与用溶液を含み得る。
【0117】
吸入に適したエアロゾル調製物は溶液および粉末状の固体を含み得、これは薬学的に許容され得る担体(不活性圧縮ガスなど)と組み合わされ得る。
【0118】
使用の少し前に、経口投与用または非経口投与用のいずれかの液体調製物に変換するための固体調製物もまた含まれる。そのような液体形状には、溶液、懸濁液および乳濁液が含まれる。
【0119】
V.患者集団
本明細書において、患者のがんを処置する(例えば、TIM-4アンタゴニストおよびPD-1アンタゴニストの組合せを用いた)有効な方法が提供される。ある実施態様において、患者は、がん腫、肉腫、芽細胞腫、白血病およびリンパ腫からなる群から選択されるがんに罹患している。別の実施態様において、患者は、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、消化管がん、大腸がん、胃がん、結腸がんおよび神経膠芽腫からなる群から選択されるがんに罹患している。別の実施態様において、患者は、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ芽球性白血病(Ph+ALL)、扁平上皮癌、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、神経膠腫、消化管がん、腎がん、卵巣がん、肝がん、子宮内膜がん、腎臓がん、前立腺がん、甲状腺がん、神経芽細胞腫、膵がん、多形性膠芽腫、子宮頸がん、胃がん、膀胱がん、肝がん、乳がん、結腸がん、頭頸部がん、胃がん、胚細胞腫瘍、小児肉腫、副鼻腔のナチュラルキラー、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、および慢性リンパ性白血病(CML)からなる群から選択されるがんに罹患している。
【0120】
VI.さらなる物質/治療
本発明の組合せ(例えば、TIM-4アンタゴニストと組み合わせたPD-1アンタゴニスト)はまた、処置されているがんに対する特定の有用性のために選択された他の周知の治療と組み合わせて使用され得る。あるいは、本発明の組合せは、適切でない場合に公知の薬学的に許容され得る物質と連続的に使用され得る。
【0121】
例えば、本明細書に記載されるPD-1アンタゴニストおよびTIM-4アンタゴニストは、さらなる処置(照射、化学療法(例えば、カンプトテシン(CPT-11)、5-フルオロウラシル(5-FU)、シスプラチン、ドキソルビシン、イリノテカン、パクリタキセル、ゲムシタビン、シスプラチン、パクリタキセル、ドキソルビシン、5-fu、またはカンプトテシン+apo21/TRAIL(6Xコンボ)の使用)、1以上のプロテアソーム阻害剤(例えばボルテゾミブまたはMG132)、1以上のBcl-2阻害剤(例えば、BH3I-2’(bcl-xl阻害剤)、AT-101(R-(-)-ゴシポール誘導体)、ABT-263(小分子)、GX-15-070(オバトクラックス)、またはMCL-1(骨髄性白血病細胞分化タンパク質-1)アンタゴニスト)、iAP(アポトーシスタンパク質阻害剤)アンタゴニスト(例えば、smac7、smac4、小分子smac模倣物、合成smacペプチド(Fulda et al., Nat Med 2002;8:808-15参照)、ISIS23722(LY2181308)またはAEG-35156(GEM-640))、HDAC(ヒストンデアセチラーゼ)阻害剤、抗CD20抗体(例えばリツキシマブ)、血管新生阻害剤(例えばベバシズマブ)、VEGFおよびVEGFRを標的とする抗血管新生剤、合成トリテルペノイド(Hyer et al., Cancer Research 2005;65:4799-808参照)、c-FLIP(細胞性FLICE抑制タンパク質)モジュレーター(例えば、PPARγ(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ)の天然および合成リガンド、5809354または5569100)、キナーゼ阻害剤(例えばソラフェニブ)、および/または遺伝毒性薬など)と組み合わせて(例えば同時または別々に)使用され得る。
【0122】
本明細書に記載されるPD-1アンタゴニストおよびTIM-4アンタゴニストはさらに、1以上の抗増殖性の細胞毒性物質と組み合わせて使用され得る。抗増殖性の細胞毒性物質として使用され得る化合物の種類には以下が含まれるが、これらに限定されない:
【0123】
アルキル化剤(限定されないが、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソウレアおよびトリアゼンを含む):ウラシルマスタード、クロルメチン、シクロホスファミド(CYTOXAN(商標))ホスファミド(fosfamide)、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホラミン(Triethylenethiophosphoramine)、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、およびテモゾロミド。
【0124】
代謝拮抗物質(限定されないが、葉酸拮抗薬、ピリミジン類似体、プリン類似体およびアデノシンデアミナーゼ阻害剤を含む):メトトレキサート、5-フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、リン酸フルダラビン、ペントスタチン、およびゲムシタビン。
【0125】
本発明の方法における使用に適した抗増殖性物質は、限定されないが、当分野で公知の他の微小管(microtubuline)安定化剤に加えて、タキサン、パクリタキセル(パクリタキセルはTAXOL.RTM.として市販されている)、ドセタキセル、ディスコデルモリド(DDM)、ジクチオスタチン(DCT)、ペロルシドA、エポチロン、エポチロンA、エポチロンB、エポチロンC、エポチロンD、エポチロンE、エポチロンF、フラノエポチロンD、デスオキシエポチロンBl、[17]-デヒドロデスオキシエポチロンB、[18]デヒドロデスオキシエポチロンB、C12,13-シクロプロピル-エポチロンA、C6-C8架橋エポチロンA、トランス-9,10-デヒドロエポチロンD、シス-9,10-デヒドロエポチロンD、16-デスメチルエポチロンB、エポチロンB10、ディスコデルモリド(discoderomolide)、パツピロン(EPO-906)、KOS-862、KOS-1584、ZK-EPO、ABJ-789、XAA296A(ディスコデルモリド)、TZT-1027(ソブリドチン)、ILX-651(タシドチン塩酸塩)、ハリコンドリンB、エリブリンメシル酸塩(E-7389)、ヘミアステリン(HTI-286)、E-7974、クリプトフィシン、LY-355703、マイタンシノイド免疫複合体(DM-1)、MKC-1、ABT-751、T1-38067、T-900607、SB-715992(イスピネシブ)、SB-743921、MK-0731、STA-5312、エリュテロビン、17ベータ-アセトキシ-2-エトキシ-6-オキソ-B-ホモ-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、シクロストレプチン、イソラウリマリド(isolaulimalide)、ラウリマリド、4-エピ-7-デヒドロキシ-14,16-ジデメチル-(+)-ディスコデルモリド、およびクリプトチロン1(cryptothilone 1)を含む。
【0126】
本発明の化学療法による処置と同時に、またはこの処置の前に異常な増殖性細胞を静止状態にすることが望ましい場合、ホルモンおよびステロイド(合成類似体を含む)(17a-エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベストロール、テストステロン、プレドニゾン、フルオキシメステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、テストラクトン、酢酸メゲストロール、メチルプレドニゾロン、メチルテストステロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、メドロキシプロゲステロン酢酸エステル、ロイプロリド、フルタミド、トレミフェン、ZOLADEX(商標)など)が患者に投与され得る。本発明の方法または組成物を利用する場合、臨床環境において腫瘍成長または転移の調節に使用される他の物質(アンチミメティック(antimimetic)など)もまた、所望の通りに投与され得る。
【0127】
化学療法剤の安全および有効な投与のための方法は当業者に公知である。さらに、この投与は標準的な文献に記載されている。例えば、多くの化学療法剤の投与は(例えば1996版の)米医薬品便覧(PDR)(Medical Economics Company, Montvale, N.J. 07645-1742, USA)に記載されており、この開示は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0128】
PD-1アンタゴニストおよびTIM4アンタゴニストはまた、免疫系を刺激する1以上の免疫療法剤(例えば、ヒトCTLA-4、LAG-3、GITR、OX40、IDO、CSF-1Rなどに結合する物質)と組み合わされ得る。
【0129】
化学療法剤および/または放射線療法は、当分野で周知の治療プロトコルに従って投与され得る。化学療法剤および/または放射線療法の投与が、処置されている疾患ならびにその疾患に対する化学療法剤および/または放射線療法の公知の効果に依存して様々であり得ることは当業者に明白である。また、熟練した臨床医の知識に従って、治療プロトコル(例えば投与の用量および回数)は患者に対して投与された治療物質の観察された効果、および投与された治療物質に対する疾患の観察された応答を考慮して様々であり得る。
【0130】
VII.処置プロトコル
患者のがんを処置するのに適切な処置プロトコルは、例えば有効量のPD-1アンタゴニスト(例えば抗体)およびTIM-4アンタゴニスト(例えば抗体)を患者に投与することを含む。
【0131】
本明細書において、補助的投与または併用投与(同時投与)は、同一または異なる剤形における2つのアンタゴニストの同時投与、または2つのアンタゴニストの別々の投与(例えば連続的投与)を含む。したがって、PD-1アンタゴニスト(例えば抗体)およびTIM-4アンタゴニスト(例えば抗体)は単一製剤において同時に投与され得る。あるいは、PD-1アンタゴニストおよびTIM-4アンタゴニストは別々の投与のために処方され得、同時または連続的に投与される。
【0132】
例えば、PD-1アンタゴニストは最初に投与され得、その後(例えば直後)にTIM-4アンタゴニストの投与(またはその逆)が行われ得る。ある実施態様において、PD-1アンタゴニストはTIM-4アンタゴニストの投与前に投与される(例えば、PD-1アンタゴニストが最初に患者に注入され、その10分~3時間後にTIM-4アンタゴニストの注入が行われる)。ある実施態様において、TIM-4アンタゴニストはPD-1アンタゴニストの投与前に投与される(例えば、TIM-4アンタゴニストが最初に患者に注入され、その10分~3時間後にPD-1アンタゴニストの注入が行われる)。このような併用投与または連続的投与は、好ましくは両方のアンタゴニストが処置される患者において同時に存在することをもたらす。別の実施態様において、TIM-4アンタゴニストおよびPD-1アンタゴニストは同時に投与される。
【0133】
ある実施態様において、対象は、単回投与のTIM-4アンタゴニストおよび単回投与のPD-1アンタゴニスト(例えば抗PD-1または抗PD-L1抗体)を投与される。ある実施態様において、複数回(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)投与のTIM-4アンタゴニストおよび複数回(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)投与のPD-1アンタゴニストが、処置を必要とする対象に投与される。TIM-4アンタゴニストおよびPD-1アンタゴニストの投与は同日であり得、あるいは、TIM-4アンタゴニストはPD-1アンタゴニストの1日以上前または後に投与され得る。
【0134】
ある実施態様において、TIM-4アンタゴニストおよびPD-1アンタゴニストの投与は毎週または毎月行われ得、このレジメンにおいて、これらは同日(例えば同時)に、または一方の後に他方が(例えば、互いに1分以上、1時間以上または1日以上前または後に)投与され得る。ある実施態様において、TIM-4アンタゴニストおよびPD-1アンタゴニストは3日毎に投与される。
【0135】
ある実施態様において、PD-1アンタゴニストおよび/またはTIM-4アンタゴニストの用量は時間と共に変動する。例えば、PD-1アンタゴニストおよび/またはTIM-4アンタゴニストは最初に高用量で投与され得、時間と共に低減され得る。別の実施態様において、PD-1アンタゴニストおよび/またはTIM-4アンタゴニストは最初に低用量で投与され、時間と共に増加される。
【0136】
別の実施態様において、投与されるPD-1アンタゴニストおよび/またはTIM-4アンタゴニストの量は、各用量について一定である。別の実施態様において、PD-1アンタゴニストおよび/またはTIM-4アンタゴニストの量は、各用量によって変動する。例えば、アンタゴニストの維持量(または後続用量)は、最初に投与された負荷用量と同じ、またはそれより高くてもよい。別の実施態様において、アンタゴニストの維持量は負荷用量と同じまたはそれより低くてもよい。臨床医は、処置されている患者の状態によって保証される好ましい投与量を利用し得る。用量は多くの要素(病期などを含む)に依存し得る。このような要素のうち1つ以上の存在に基づいて投与されるべきである具体的な用量は、当業者の技術の範囲内である。一般に、処置はその化合物の最適用量未満である、より少ない用量で開始される。その後、用量は、その状況下における最適な効果に達するまで少量ずつ増加される。利便性のために、1日の全投与量は所望の場合、部分に分割され、1日の間に投与され得る。間欠治療法(例えば、3週間のうち1週間、または4週間のうち3週間)もまた使用され得る。
【0137】
ある実施態様において、TIM-4アンタゴニスト(例えば抗体)は、0.1、0.3、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10mg/kg体重の用量で投与される。別の実施態様において、PD-1アンタゴニスト(例えば抗体)は、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10mg/kg体重の用量で投与される。一般に、200μg/マウスは約10mg/kgであり、100μg/マウスは約5mg/kgである。したがって、本明細書に記載される実験に基づいて、TIM-4アンタゴニストおよびPD-1アンタゴニストの1~20mg/kg体重、1~10mg/kg体重、5~20mg/kg体重または5~10mg/kg体重のうち1以上の用量が対象に投与され得る。ある実施態様において、0.3mg/kg体重~10mg/kg体重の用量のTIM-4アンタゴニストが使用され、少なくとも1mg/kg体重(例えば1~10mg/kg体重)の用量のPD-1アンタゴニストが使用される。
【0138】
VIII.結果
本明細書で開示される方法に従って処置される患者(例えばヒト)は好ましくは、がんの少なくとも1つの徴候における改善を経験する。ある実施態様において、改善は、測定可能な腫瘍病変の量および/またはサイズの減少によって測定される。別の実施態様において、病変は、胸部x線またはCTもしくはMRIフィルム上で測定され得る。別の実施態様において、細胞学または組織学が、治療に対する応答性を評価するために使用され得る。
【0139】
ある実施態様において、処置される患者は、腫瘍サイズの減少、転移性病変の数の経時的な減少、完全寛解、部分寛解および安定を示す。別の実施態様において、処置される患者は、腫瘍の縮小および/または成長率の減少(すなわち腫瘍成長の抑制)を経験する。別の実施態様において、望ましくない細胞増殖が減少または阻害される。さらなる他の実施態様において、以下のうち1つ以上が生じ得る:がん細胞の数が減少し得る;腫瘍サイズが減少し得る;がん細胞の末梢器官への浸潤が阻害、遅延、抑制、または停止され得る;腫瘍転移が抑制または阻害され得る;腫瘍成長が阻害され得る;腫瘍の再発が予防または遅延され得る;がんに関連する症状のうち1つ以上がある程度軽減され得る。
【0140】
別の実施態様において、本処置方法は、PD-1アンタゴニスト(例えば抗体)またはTIM-4アンタゴニスト(例えば抗体)単独で達成された、比較可能な臨床的有用率(CBR=CR(完全寛解)、PR(部分寛解)またはSD(安定)≧6ヶ月)よりも良い臨床的有用率を生じる。他の実施態様において、臨床的有用率の改善は、(例えば、PD-1アンタゴニストもしくはTIM-4アンタゴニスト単独での処置と比較して、または処置の1日目もしくは処置の開始直前における腫瘍成長と比較して)約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%またはそれ以上である。
【0141】
別の実施態様において、PD-1アンタゴニストおよびTIM-4アンタゴニストの投与は、(例えば、PD-1アンタゴニストもしくはTIM-4アンタゴニスト単独での処置と比較して、または処置の1日目もしくは処置の開始直前における腫瘍成長と比較して)腫瘍体積の少なくとも3倍の減少(例えば3.5倍の減少)をもたらす。
【0142】
さらなる実施態様において、PD-1アンタゴニストおよびTIM-4アンタゴニストの投与は、(例えば、PD-1アンタゴニストもしくはTIM-4アンタゴニスト単独での処置と比較して、または処置の1日目もしくは処置の開始直前における腫瘍成長と比較して)腫瘍成長の少なくとも80%の阻害をもたらす。
【0143】
ある実施態様において、PD-1アンタゴニストおよびTIM-4アンタゴニストの投与は、処置の開始前または処置の1日目における腫瘍量と比較して、腫瘍量を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%減少させる。いくつかの実施態様において、腫瘍量は本明細書に記載される処置後には、もはや検出できない。いくつかの実施態様において、対象は部分寛解または完全寛解である。ある実施態様において、対象は、全生存率、生存率の中央値および/または無増悪生存率が増加している。
【0144】
IX.キットおよび単位剤形
また、本明細書は、前述の方法における使用に適応した治療有効量において、(a)PD-1アンタゴニストおよび(b)TIM-4アンタゴニストならびに薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物を含むキットを提供する。ある実施態様において、PD-1アンタゴニストは抗体である(例えば、それぞれ5C4または12A4)。別の実施態様において、TIM-4アンタゴニストは抗体である。また、キットは場合により説明書(例えば投与スケジュールを含む)を含み得、これは実行者(例えば医師、看護師または患者)ががんを有する患者に本明細書に含まれる組成物を投与することを可能にする。キットはまた、注射器を含み得る。
【0145】
場合により、キットは、上記で提供された方法に従って、単回投与のための1回量の医薬組成物(それぞれは有効量のPD-1アンタゴニストおよびTIM-4アンタゴニストを含む)の複数の包装を含む。また、医薬組成物を投与するために必要な説明書またはデバイスがキットに含まれ得る。例えば、キットは、ある量のPD-1アンタゴニストおよびTIM-4アンタゴニストを含む1以上のプレフィルドシリンジを提供し得る。
【0146】
ある実施態様において、本発明は患者のがんを処置するためのキットを提供し、該キットは以下を含む:
(a)1回分のPD-1アンタゴニスト;
(b)1回分のTIM-4アンタゴニスト;および
(c)本明細書に記述される方法においてPD-1アンタゴニストおよびTIM-4アンタゴニストを使用するための説明書。
【0147】
ある実施態様において、本発明は患者のがんを処置するためのキットを提供し、該キットは以下を含む:
(a)1回分またはそれ以上のPD-1アンタゴニスト;
(b)1回分またはそれ以上のTIM-4アンタゴニスト;および
(c)本明細書に記述される方法においてPD-1アンタゴニストおよびTIM-4アンタゴニストを使用するための説明書。
【0148】
ある実施態様において、TIM-4アンタゴニストは抗体である。ある実施態様において、PD-1アンタゴニストは抗体である。特定の実施態様において、PD-1アンタゴニストは、配列番号13に記載の配列を有する重鎖可変領域におけるCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびに配列番号15に記載の配列を有する軽鎖可変領域におけるCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む抗PD-1抗体である。別の特定の実施態様において、PD-1アンタゴニストは、配列番号1に記載の配列を有する重鎖可変領域におけるCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびに配列番号3に記載の配列を有する軽鎖可変領域におけるCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む抗PD-L1抗体である。
【0149】
本開示を読むことによって多くの変形および等価物が当業者に明白となるため、以下の実施例は単なる説明であり、いかなる方法においても本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0150】
本願の至る所で引用されている全ての参考文献、Genbankエントリー、特許および公開された特許出願の内容は、参照によって本明細書に明確に組み込まれる。
【実施例】
【0151】
材料と方法
動物
10~11週齢の雌性C57/BL6マウス(Harlan)を研究に用いた。マウスは自由に食物および水を受け取り、国際実験動物管理公認協会(AAALAC)の規則に従って制御された環境において維持された。全ての動物研究は適切な倫理委員会によって承認され、したがって1964年のヘルシンキ宣言およびその後の改正で定められた倫理基準に従って実行された。
【0152】
抗体
Bristol-Myers Squibb (Biologics Discovery, CA)によって、抗マウスPD-1 mAb(抗mPD-1 mAb)クローン4H2、マウスIgG1アイソタイプを作製および精製した。抗TIM-4 mAbであるRMT4-53は以前に記述されている(Yeung et al., J. Immunol. 2009; 191:4447-4455)。簡潔に述べると、Sprague Dawleyラットを、マウスTIM-4の細胞外ドメイン(aa1~288)およびマウスIgG2aのFc部分を含むTIM-4-Ig融合タンパク質で免疫し、LN細胞をP3U1骨髄腫細胞と融合した。RMT4-53はTIM-4/NRK細胞と反応するが、親のNRKまたは遺伝子導入された他のTIMファミリー(TIM-1 B6/NRK、TIM-1 BALB/NRK、TIM-2/NRK、TIM-3 B6/NRK、TIM-3 BALB/NRK)細胞とは反応しない。抗体は、<0.5EU/mgの内毒素レベル、>95%の純度および<5%の高分子量種を有することが証明された。抗mPD-1 mAb(クローン4H2;マウスIgG1)および抗mTIM-4抗体(クローンRM4-53;ラットIgG2a)の原液を使用前に4℃で保持した。抗mPD-1 mAbおよび抗mTIM-4 mAbの投与溶液を滅菌リン酸緩衝生理食塩水(pH7.0)で調製し、4℃で維持した。
【0153】
細胞株
CT-26は線維芽細胞形態を有する未分化結腸がん細胞株である(ATCC)。皮下接種されたマウスは、103細胞で80%、104細胞で100%の頻度で致死的腫瘍を発症する。マウスに104細胞を静脈内接種させると、肺転移が発生する(Wang et al. J. Immunol. 1995; 154:4685-4692)。MC38細胞株は、上皮形態を有するC57BL6マウス結腸腺がん細胞(CD44+ALDH1+)に由来していた。
【0154】
TIM-4の発現
マウス腹腔マクロファージおよびTAM上におけるTIM-4の発現およびTAMがフローサイトメトリーによって確認された。
【0155】
免疫組織化学
ウサギ抗TIM-4(Atlas Antibodies、HPA015625)を用いた免疫組織化学分析は、ヒト扁桃腺、肺および肝臓に存在する組織常在性マクロファージ上においてTIM-4の発現を示した。発現は固定組織上で示され、これは切片にされ、Superfrost Plusスライドガラスに5ミクロンの厚さで適用された。切片を室温で一晩乾燥させた。次に、組織をキシレン中で脱パラフィンし、その後段階系列(graded series)のエタノール中の蒸留水に水和させた。Biocare Medical社のEDTA、pH8.2(1X)でのHIERを用いて、約115℃で1分間、抗原賦活化を行い、次いで室温で20分間冷却した。切片をTNT緩衝液(TBS+0.5%Tween)でリンスし、パップペンを用いて単離した。Biocare Medical社のBackground Sniperを用いて室温で30分間ブロッキングを行い、その後1X TNT緩衝液でリンスし、Dako社のPeroxidase Block中で10分間、室温でインキュベートし、2X TNT緩衝液でリンスした。一次抗体染色を、Biocare Medical社のRenaissance抗体希釈液およびバックグラウンド低減剤(background reducer)の1/1000希釈物を用いて室温で60分間行い、3X TNT緩衝液でリンスした。Biocare Medical社のMACH3ウサギポリマーHRPで切片を覆うために適切な数の液滴を用いて検出抗体を適用し、室温で30分間インキュベートし、その後3X TNT緩衝液でリンスした。試料をBiocare Medical社のBetazoid DABと共にインキュベートし、スライドを水中に置くことで反応を停止した。切片をヘマトキシリン(Leica)で30分間対比染色し、水道水で洗浄し、青色染色液中で45秒~1分間インキュベートし、水で2X洗浄し、アルコールの段階系列およびキシレン中で脱水し、次いでマウントした。
【0156】
実施例1:抗TIM-4抗体によるエフェロサイトーシスの阻害
胸腺細胞をBALB/cマウスから単離し、デキサメタゾンと共に、またはデキサメタゾンを含まずに4時間培養し、アポトーシスを誘導した。次に、細胞を製造者の説明書(Thermofisher Scientific)に従って、pHrodo色素と共に5~10分間インキュベートした。簡潔に述べると、2x107細胞を血清を含まない培地で1x洗浄し、1mLの希釈剤C(カタログ番号G8278)に再懸濁した。次いで、1mLの2x色素溶液を添加することによって(4mLのPKH26エタノール色素溶液(カタログ番号P9691)を1mLの希釈剤Cに添加することによって)細胞を染色し、ピペッティングによって試料を混合した。定期的に混合しながら5分間インキュベートした。等体積の血清を添加し1分インキュベートすることによって染色反応を停止した。次いで、細胞を血清を含まない培地で1x洗浄し、PBSで2x洗浄した。3x106個のpHrodo標識された細胞をBALB/cマウスに腹腔内注射した。3~5mLの氷冷PBS+2mM EDTAを安楽死させたマウスの腹膜腔に注射し、腹部を触診し、次いで針穿刺吸引を介して溶液を回収することによって、腹腔マクロファージを洗浄によって回収した。実験動物にpHrodo標識された胸腺細胞Tを注射する1時間前に、RMT4-53抗TIM4抗体を注射した。
【0157】
腹腔マクロファージによるアポトーシス細胞の取り込みをフローサイトメトリーを用いて測定した。簡潔に述べると、腹腔マクロファージをPBSで2x洗浄し、100μLの生死判別色素(viability dye)(eBioscience)で再懸濁し、氷上で15分間インキュベートした。細胞をPBSで1x洗浄し、FcBlock(BioLegend)中で15分間氷上においてインキュベートした。次いで、細胞を、CD45(BD)、Tim-4(BioLegend)、CD11b(BioLegend)、CD206(BioLegend)、およびF4/80+(BioLegend)に対する抗体を用いて、氷上で30分間染色した。次に、細胞を1x洗浄し、Perm/Fixで再懸濁した。試料をLSR Fortessa X20(BD)上で回収した。エフェロサイトーシスに関与した細胞を同定するために、生細胞集団由来のCD45+/CD11b+骨髄性細胞をゲーティング(gate on)した。これらの細胞のうち、エフェロサイトーシスに関与したマクロファージをF4/80+、OPKH26+と規定した。結果を表2に記載する。
【表2】
【0158】
結果は、非アポトーシス細胞(25~40%)に対するアポトーシス細胞(50~70%)のエフェロサイトーシスの増加を示す。抗TIM-4遮断抗体の添加は、生細胞およびアポトーシス細胞の両方の取り込みを著しく減少させた。これは、TIM-4が細胞取り込みの重要なメディエーターであることを示す。
【0159】
実施例2:抗TIM-4抗体および抗PD-1抗体を用いた併用処置による、CT26モデルにおけるインビボでの腫瘍成長の阻害
実験をマウス腫瘍モデルにおいて実行し、抗TIM-4および抗PD-1の組合せが抗腫瘍活性を増強するという仮説を検証した。結腸腺がん腫瘍モデル(TGM-1438)であるSC CT-26マウスを、抗TIM-4抗体RTM-453の単独または抗PD-1抗体IgG1 D265Aとの組合せでの処置後における腫瘍成長について評価した。
【0160】
雌性BALB/cマウス(Harlan;約8~9週齢)に、0日目において10
6個のCT-26細胞を皮下移植した。60匹のマウスを、以下のスケジュールに従った2X/wkの投与後における体重および腫瘍の測定によって評価した:
【表3】
【0161】
投与の日において、2つの抗体を組み合わせ、全100μLの組み合わせた抗体をマウスに注射した。以下のプロトコルに従って、16日目において群毎に5匹のマウス由来の脾臓および腫瘍を、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)および脾臓免疫細胞のフローサイトメトリー分析のために回収および処理した。
【0162】
簡潔に述べると、細胞をPBSで再懸濁し、プレートに分取(脾臓2x106/ウェル、全腫瘍細胞/ウェル)し、次いでPBSで2x洗浄した。次に、細胞を100μLの生死判別色素(eBioscience)で再懸濁し、氷上で15分インキュベートした。細胞をPBSで1x洗浄し、50μLのFcBlock(BioLegend)中において氷上で15分間インキュベートし、次いで後述されるように50μLの抗体染色混合物で30分間染色した。次に、細胞をFACS緩衝液で1x洗浄し、Perm/Fixで再懸濁した。次いで、試料をLSR Fortessa X20(BD)上で回収した。
【0163】
T細胞パネル
【表4】
増殖性細胞を評価するためのKi-67+;
サブセットのT細胞を、ナイーブT細胞サブセット、活性化T細胞サブセットおよびメモリーT細胞サブセットに特定するためのCD44/CD62L分析;
Treg(FoxP3+CD4+ T細胞)の集団を評価するためのFoxP3;
脱顆粒CD8+ T細胞(抗原/腫瘍特異的CTL)を評価するためのCD8+CD107a+
【0164】
骨髄のパネル
【表5】
TAM、MDSC、NK細胞、B細胞のための骨髄性細胞サブセット
活性化APCのためのCD80、CD86染色
【0165】
脾臓および腫瘍における骨髄性集団を
図3に示す。脾臓および腫瘍浸潤リンパ球におけるCD8+T細胞集団を
図4に示す。脾臓および腫瘍浸潤リンパ球におけるCD4+細胞集団を
図5に示す。データは、骨髄性細胞集団の変化および腫瘍浸潤リンパ球における活性化T細胞の増加を示す。
【0166】
群毎に残りの10匹のマウスを腫瘍成長についてモニターした。腫瘍サイズおよび体重を1週間に2回測定した。腫瘍サイズ(mm3として測定した)を、腫瘍の長さに腫瘍の幅の二乗を乗じ、2で割ることによって算出した。皮下腫瘍のサイズが200mm3の中央値(確立されたモデル)に達した場合に、処置を開始した。
【0167】
提供された抗PD-1抗体と組み合わせて投与された抗TIM-4抗体は、いずれかの物質単独の抗腫瘍活性を超えて、この活性を増強させた。この組合せは、腫瘍成長率の減少(
図6~8)および全生存率の増加(
図9)を示した。まとめると、TIM-4 mAbおよびPD-1 mAbの組合せは、単一の物質のみによって誘発された活性と比較して相乗的な活性をもたらした。したがって、本研究からの結果は、抗mTIM-4 mAbおよびPD-1 mAbの併用レジメンが良好な耐用性を示し、著しい抗腫瘍活性をもたらすことを示す。
【0168】
実施例3:抗TIM-4抗体および抗PD-1抗体を用いた併用処置による、MC38モデルにおけるインビボでの腫瘍成長の阻害
結腸腺がん腫瘍モデルであるMC38マウスを、抗TIM-4抗体RTM-453の単独または抗PD-1抗体IgG1 D265Aとの組合せでの処置後における腫瘍成長について評価した。
【0169】
雌性C57/BL6マウス(Harlan;約8~9週齢)に、0日目において106個のMC38細胞を皮下移植した。マウスに6日目から投与をした。200μg/注射での3回の投与を4日毎に腹腔内投与した。2つの抗体をマウスに投与する場合、抗体を最初に組み合わせ、マウスに共に投与した。腫瘍をキャリパーを用いて測定し、腫瘍体積を式(L2xW)/2を用いて算出した。無憎悪生存率を、腫瘍が最初の腫瘍体積の4倍に達した日数として規定した。
【0170】
結果を
図10、11および12ならびに表Xに与える。
図10(これは、移植後の日数に対する無憎悪生存率の割合を与える)は、抗PD-1および抗TIM4抗体の組合せの投与が、別々の各抗体およびアイソタイプ対照と比較して、より高い割合の無憎悪生存率をもたらすことを示す。表Xは、併用処置が、別々の各抗体およびアイソタイプ対照と比較して、より多くの完全寛解を与えたことを示す。
図11(これは移植後の日数に対するMC38の平均腫瘍体積を示す)は、併用処置が別々の各抗体およびアイソタイプ対照と比較して、平均腫瘍体積をより減少させたことを示す。
図12A~CはMC38の個々の腫瘍体積を示し、
図10、11および表Xにおいて示された結果を支持する。
【表6】
【0171】
したがって、CT26およびMC39動物モデルにおける抗TIM4抗体と抗PD-1抗体との組合せの投与は、各抗体単独と比較してより強い抗腫瘍効果をもたらした。
【0172】
配列表の概要
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【表7-4】
【表7-5】
【表7-6】
【表7-7】
【配列表】