(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】IL-4R阻害剤を投与することによって重度のアトピー性皮膚炎を処置するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20221025BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20221025BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20221025BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20221025BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221025BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20221025BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20221025BHJP
C07J 71/00 20060101ALN20221025BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20221025BHJP
A61K 45/06 20060101ALN20221025BHJP
A61K 45/00 20060101ALN20221025BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZMD
A61P17/04
A61P17/00
A61P37/08
A61P43/00 121
A61K31/573
A61K9/08
C07J71/00
C07K16/28 ZNA
A61K45/06
A61K45/00
(21)【出願番号】P 2019537047
(86)(22)【出願日】2017-09-21
(86)【国際出願番号】 US2017052772
(87)【国際公開番号】W WO2018057776
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-09-09
(32)【優先日】2016-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(73)【特許権者】
【識別番号】515337475
【氏名又は名称】サノフィ・バイオテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】アレン・ラディン
(72)【発明者】
【氏名】ニール・グラハム
(72)【発明者】
【氏名】ボランル・アキンレイド
(72)【発明者】
【氏名】ジャンルカ・ピロッツィ
(72)【発明者】
【氏名】シン・サン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ハルシュ
(72)【発明者】
【氏名】ブラッド・エス・シュメル
(72)【発明者】
【氏名】アシッシュ・バンサル
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】The New England Journal of Medicine,2014年,Vol.371, No.2,pp.130-139
【文献】順天堂医学,1999年,Vol.45, No.3,pp.352-360
【文献】医学のあゆみ,2009年,Vol.228, No.1,pp.98-102
【文献】J AM ACAD DERMATOL,2016年06月,Vol.75, No.3,pp.506-515
【文献】Lancet,2016年,Vol.387,pp.40-52,Published Online Oct 8, 2015
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
A61K 45/00-45/08
A61P 17/00-17/18
A61P 29/00-29/02
A61P 37/00-37/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中程度から重度のアトピー性皮膚炎(AD)を有する患者において、そう痒を低減する、またはADを処置する、または少なくとも1つのAD関連パラメーターを改善する方法で使用するための、治療有効量のインターロイキン-4受容体(IL-4R)阻害剤を含む医薬組成物であって、該患者は、全身性免疫抑制剤への不十分な応答または不耐性の病歴を有するか、および/または全身性免疫抑制剤での療法が得策ではなく、該IL-4R阻害剤は、IL-4Rαに結合する抗体またはその抗原結合フラグメントであり、該抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)
1~3および配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖相補性決定領域(LCDR)
1~3を含
み、該HCDR1は、配列番号3のアミノ酸配列を含み;該HCDR2は、配列番号4のアミノ酸配列を含み;該HCDR3は、配列番号5のアミノ酸配列を含み;該LCDR1は、配列番号6のアミノ酸配列を含み;該LCDR2は、配列番号7のアミノ酸配列を含み;該LCDR3は、配列番号8のアミノ酸配列を含む、
前記医薬組成物。
【請求項2】
患者が、IL-4R阻害剤の投与の前またはその時に、食物アレルギー、喘息、季節性アレルギー、アレルギー性鼻炎、ハウスダストアレルギー、およびアレルギー性結膜炎からなる群から選択される疾患もしくは障害を有するかまたはそれを有すると診断されている、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
全身性免疫抑制剤は、シクロスポリンA(CSA)、メトトレキセート、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、全身性コルチコステロイド、およびインターフェロン-ガンマからなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
全身性免疫抑制剤は、シクロスポリンA(CSA)である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
患者は、以前にCSAに曝露されておらず、医療上の禁忌、CSAまたは賦形剤に対する過敏症、CSAとの併用が禁止された付随的な薬物療法の使用、CSAによって誘発された腎臓損傷に対する感受性の増加、CSAによって誘発された肝臓傷害に対する感受性の増加、および重篤な感染症のリスクの増加からなる群から選択される状態のためにCSA療法が得策ではない、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
患者は、以前にCSAに曝露されており、不耐性、許容できない毒性、不十分な応答、患者の体重1kg当たり5mg/日より高い用量でCSAが必要なこと、および1年を超える持続時間にわたりCSA投与が必要なことからなる群から選択される状態のためにCSA療法が得策ではない、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記患者は、これまでに全身性免疫抑制剤に曝露されており、かつ該全身性免疫抑制剤が以下の理由:
(a)以前の不耐性および/または許容できない毒性;または
(b)最長6週間の高用量(5mg/kg/日)の後に維持用量(2から3mg/kg/日)に漸減させた免疫抑制剤におけるADの再燃、または維持用量で最短3カ月の後の再燃と定義される不十分な応答;または
(c)該全身性免疫抑制剤に関する処方情報で特定されたものを超える用量または期間、該免疫抑制剤を要すること、
から継続または再開すべきではない、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
IL-4R阻害剤は、50~600mgの用量で投与される、請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
IL-4R阻害剤は、300mgの用量で投与される、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
IL-4R阻害剤は、初回用量で、それに続いて1つまたはそれ以上の二次用量で投与され、各二次用量は、直前の用量の1から4週間後に投与される、請求項1~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
初回用量は、50~600mgのIL-4R阻害剤を含む、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
各二次用量は、25~400mgのIL-4R阻害剤を含む、請求項10または11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
初回用量は、600mgのIL-4R阻害剤を含み、各二次用量は、300mgのIL-4R阻害剤を含む、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項14】
各二次用量は、直前の用量の1週間後に投与される、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
各二次用量は、直前の用量の2週間後に投与される、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
IL-4R阻害剤の投与は:
(a)湿疹面積および重症度指標(EASI)スコアにおけるベースラインからの少なくとも75%の減少;
(b)そう痒数値評価スケール(NRS)スコアにおけるベースラインからの少なくと
も45%の減少;
(c)アトピー性皮膚炎評価スコア(SCORAD)スコアにおけるベースラインからの少なくとも50%の減少;
(d)医師による包括的評価(IGA)スコアにおけるベースラインからの2ポイント以上の減少;および
(e)NRSスコアのベースラインからの3ポイント以上の減少
からなる群から選択されるAD関連パラメーターの改善をもたらす、請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
IL-4R阻害剤の投与は、包括的個人徴候スコア(GISS)、患者向け湿疹尺度(POEM)、患者評価式の病院不安およびうつ病スケール(HADS)、および患者報告式の皮膚疾患の生活の質指標(DLQI)からなる群から選択される少なくとも1つの患者関連のアウトカムにおける改善をもたらす、請求項1~16のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
IL-4R阻害剤の投与は、患者における再燃または増悪の回数を減少させる、請求項1~17のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
IL-4R阻害剤は、皮下投与される、請求項1~18のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
IL-4R阻害剤は、第2の治療剤または療法と組み合わせて投与され、該第2の治療剤または療法は、外用コルチコステロイド、カルシニューリン阻害剤、およびエモリエント剤からなる群から選択される、請求項1~19のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
医薬組成物は、低い効力のTCS、中程度の効力のTCS、および高い効力のTCSからなる群から選択される外用コルチコステロイド(TCS)と組み合わせて投与される、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
患者に投与されるTCSの量は、IL-4R阻害剤の第1の用量の投与後、徐々に低減される、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
患者に投与されるTCSの量は、IL-4R阻害剤の第1の用量の投与後、4週間で、少なくとも約20%低減される、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項24】
抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1のアミノ酸配列を含むHCVRと配列番号2のアミノ酸配列を含むLCVRとを含む、請求項1~
23のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項
24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
IL-4R阻害剤は、デュピルマブである、請求項1~
25のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
IL-4R阻害剤は、シリンジ中に含有される、請求項1~
26のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
IL-4R阻害剤は、ペン型送達デバイス中に含有される、請求項1~
26のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
ペン型送達デバイスは、予め充填されている、請求項
28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
IL-4R阻害剤は、自己注射器中に含有される、請求項1~
26のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項31】
IL-4R阻害剤は、バイアル中に含有される、請求項1~
26のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列の記述
本出願は、配列表を含有し、配列表は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、その全体を参照によって本明細書に組み入れる。前記ASCIIコピーは、2017年9月11日に作成され、SequenceList_29.TXTと名付けられ、10.9キロバイトのサイズを有する。
【0002】
本発明は、アトピー性皮膚炎を処置するための方法に関する。より具体的に、本発明は、それを必要とする対象におけるインターロイキン-4受容体(IL-4R)阻害剤の投与に関する。
【背景技術】
【0003】
アトピー性皮膚炎(AD)は、強烈なそう痒(すなわち、痒み)、乾燥症(皮膚の乾燥)、および湿疹病変を特徴とする慢性/再発性の炎症性皮膚疾患であり、その特徴としては、紅斑、浸潤/丘疹形成、痂皮形成を伴う毛細血管出血、表皮剥離、および苔癬化が挙げられる。これはしばしば、他のアトピー性障害、例えばアレルギー性鼻炎および喘息と関連する。重度の疾患は、数々の要因:高い社会経済的なコストにつながる主要な心理的問題、顕著な睡眠不足、および生活の質(QOL)の悪化によって深刻な問題となる可能性がある。推測で成人の2%から10%が、ADに罹っている(非特許文献1)。
【0004】
ADの病態生理は、炎症、環境因子、遺伝学および皮膚バリアの機能不全の間の複雑な相互作用の影響を受ける。
【0005】
ADは、幼児期において最も一般的な炎症性皮膚疾患である(非特許文献2)。この疾患は通常、早期乳児期や幼児期中に存在するが、成人期まで持続したり、または成人期に始まったりすることもある(非特許文献3)。先進工業国では、この疾患は、子供の15から30%、および成人の2から10%に影響を与える(非特許文献1)。幼児期における喘息およびアレルギーの国際研究(International Study of Asthma and Allergies in Childhood)のフェーズ1は、オーストラリア、英国、および北欧で20%もの1年間の罹患率を示した(非特許文献4)。しばしばADは、アトピーマーチ(あるアトピー性疾患から別のアトピー性疾患への進行)の第1段階を構成する。およそ60%までのAD患者が、喘息またはアレルギー性鼻炎または食物アレルギーを併発している(非特許文献5)。
【0006】
外用コルチコステロイド(TCS)は、圧倒的に最も高頻度でAD患者に処方される薬物クラスである。しかしながら、TCSの長期適用は、皮膚萎縮、色素沈着異常、ざ瘡様発疹のリスク、および全身吸収に関連するリスク(例えば、視床下部下垂体軸の作用、クッシング病など)のために推奨されない。外用カルシニューリン阻害剤(TCI)は、短期間の処置として一般的に有効かつ安全であるが、皮膚の悪性腫瘍およびリンパ腫のリスク増加の懸念のために、規制当局は、その処方情報において外用タクロリムスおよびピメクロリムスの長期安全性に関する警告の必要性を促してきた。いずれかの外用療法の長い期間にわたる、または大きい表面積への繰り返しの適用も、患者のコンプライアンス低下を引き起こす。第1世代の抗ヒスタミン剤は、そう痒の急性の対症処置のために広く処方されているが、その有効性は限定的であり、その原因の大部分はその鎮痛作用にある。経口免疫抑制剤(非特許文献6)およびグルココルチコイドは効果的であるが、時には重度の毒性および副作用を伴うことから、その使用は短期および/または間欠的療法に限定される。子供のAD処置において、全身性薬剤は承認されていない。全ての全身性薬剤は、適用外使用であり(シクロスポリン、メトトレキセート、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、全身性コルチコステロイド)、使用の証拠的根拠はない。これらの薬剤は全て、長期間使用される場合、患者を重篤な感染症に罹りやすくする広範な免疫抑制作用を有し、悪性腫瘍の高いリスクを有する。他の報告されたこれらの薬剤による顕著な副作用としては、胃炎、発育阻害、糖尿病、体重の増加、高血圧、骨粗しょう症および副腎抑制(コルチコステロイド)、腎毒性、高血圧、振戦、多毛症、頭痛、歯肉増殖症(シクロスポリン)、胃腸障害、潰瘍性口内炎、骨髄抑制、肝毒性および肺線維症(メトトレキセート)、超過敏反応、肝臓酵素の上昇および白血球減少症(アザチオプリン)が挙げられる。さらに、最初のうちは疾患が全身性薬剤で制御される患者のうちの大多数が、療法が中止されたら再発を起こす(非特許文献7;非特許文献8)。
【0007】
シクロスポリンA(CSA)は、体液性および細胞性免疫応答の両方に影響を及ぼす効能のある免疫抑制剤であり、一部の地域では最新の重度ADのための療法である。これは、感染に対する感受性を増加させ、がんの免疫監視を減少させる。他の一般的に認められた毒性としては、高血圧ならびに腎臓および肝臓の機能不全が挙げられる。加えて、CSAは、他の一般的に使用される薬と相互作用することにより、その代謝および作用に影響を及ぼす可能性がある。患者の疾患は、特に全身性グルココルチコイドの投与後に処置が中止された場合、ぶり返すことが多い(非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11)。腫瘍壊死因子α(TNF)阻害剤(例えば、インフリキシマブ、エタネルセプト)、IgE阻害剤(例えば、オマリズマブ)、IL-5阻害剤(例えば、メポリズマブ)、およびCD11a阻害剤(例えば、エファリズマブ)などの生物学的薬剤は、臨床試験において全体的に効果がなかった。それゆえに、ADの代替処置に関する、具体的には、全身療法の候補である患者における重度のADの代替処置に関する重要な未だ満たされていない医療上の必要性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Bieber 2008、N.Engl.J.Med.358:1483~94
【文献】Illiら、2004、J.Allergy Clin.Immunol.113:925~31
【文献】Kayら、1994、J.Am.Acad.Dermatol.30:35~9
【文献】Williamsら、1999、J.Allergy Clin.Immunol.103:125~38
【文献】Hongら、2012、Envt.Health Toxicol.27:e2012006
【文献】Schmittら、2007、JEADV21:606~619
【文献】Granlundら、1995、Br.J.Dermatol.132:106~112
【文献】Schmittら、2009、Br.J.Dermatol.162:661~8
【文献】Schmittら、2009、Brit J Dermatol journal compilation:1~8
【文献】Schram 2012、Allergy 67:99~106
【文献】Akhavan 2008、Semin Cutan Med Surg 2008;27:151~155
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の特定の態様によれば、中程度から重度のADおよび重度のADを包含するアトピー性皮膚炎(AD)を処置、予防および/またはその症状の重症度を低減するための方法が提供される。本発明の特定の実施態様は、全身療法(全身性免疫抑制剤を包含する)による処置への耐性を有するかまたは全身療法により十分に制御されない重度のADを有する患者を処置するための方法に関する。一部の実施態様において、本発明は、全身性治療剤での処置にもかかわらず制御不能な重度のADを有する患者を処置する方法を包含する。一部の実施態様において、本発明は、全身性治療剤(例えば、全身性免疫抑制剤)での処置が医学上得策ではない重度のADを有する患者を処置する方法を包含する。本発明の方法は、治療有効量のインターロイキン-4受容体(IL-4R)阻害剤を含む医薬組成物の1つまたはそれ以上の用量を対象またはそれを必要とする患者に投与することを含む。特定の実施態様において、IL-4R阻害剤は、単独療法として投与される。他の実施態様において、IL-4R阻害剤は、外用療法(例えば外用コルチコステロイドまたは外用カルシニューリン阻害剤)と組み合わせて投与される。
【0010】
特定の実施態様において、全身性治療剤は、シクロスポリンA、メトトレキセート、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、経口コルチコステロイド、およびインターフェロン-ガンマからなる群から選択される免疫抑制剤である。
【0011】
特定の実施態様において、本発明は、重度のADを処置する、または患者における少なくとも1つのAD関連パラメーターを改善する方法であって、治療有効量のIL-4Rに結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物を投与すること、およびAD関連パラメーターにおける改善を決定することを含む、方法を包含する。特定の実施態様において、IL-4R阻害剤の投与は、医師による包括的評価(Investigators Global Assessment:IGA);アトピー性皮膚炎の病変体表面積(Body Surface Area Involvement of Atopic Dermatitis:BSA);湿疹面積および重症度指標(Eczema Area and Severity Index:EASI);アトピー性皮膚炎評価スコア(Scoring atopic dermatitis:SCORAD);5-Dそう痒スケール;およびそう痒数値評価スケール(Pruritus Numeric Rating Scale:NRS)からなる群から選択される1つまたはそれ以上のAD関連パラメーターにおける改善をもたらす。特定の実施態様において、IL-4R阻害剤の投与は、包括的個人徴候スコア(Global Individual Signs Score:GISS)、患者向け湿疹尺度(Patient Oriented Eczema Measure:POEM)、患者評価式の病院不安およびうつ病スケール(Hospital Anxiety and Depression Scale:HADS)および患者報告式の皮膚疾患の生活の質指標(Dermatology Life Quality Index :DLQI)からなる群から選択される少なくとも1つの患者関連のアウトカムにおける改善をもたらす。
【0012】
特定の態様によれば、本発明は、重度のADを有する患者を処置するための、またはADを有する患者における少なくとも1つのAD関連パラメーターを改善するための方法であって、患者は:(i)患者が、4のベースラインにおけるIGAスコアを有すること;(ii)患者が、3以上のベースラインにおけるIGAスコアを有すること;(iii)患者が、全身療法の候補であること;(iv)患者が、外用AD療法で制御不能な疾患を有すること;(v)患者が、外用AD療法への不十分な応答の確認された病歴を有するか、または有害な副作用もしくは安全性のリスクのために、患者にとって外用療法が得策ではないこと;(vi)患者が、これまでに、外用コルチコステロイド、外用カルシニューリン阻害剤、抗ヒスタミン、エモリエント剤、皮膚科学的な治療剤、全身性グルココルチコイド、非ステロイド系全身性免疫抑制剤、シクロスポリンA、アザチオプリン、紫外線(UV)光療法、および光線療法からなる群から選択される薬物療法または手順で処置されたことがあること;ならびに(vii)患者が、食物アレルギー、喘息、季節性アレルギー、アレルギー性鼻炎、ハウスダストアレルギー、およびアレルギー性結膜炎からなる群から選択される併存する疾患または障害を有することからなる群から選択される特質を有するか、またはそのような特質に基づき選択される、方法を提供する。本方法は、この態様によれば、治療有効量のIL-4R阻害剤を含む医薬組成物をそれを必要とする患者に投与することを含む。特定の実施態様において、投与は、以下の作用:(a)EASIスコアにおけるベースラインから70%より多くの低減;(b)第1の用量の投与後の2週目からの、そう痒NRSにおけるベースラインから50%より多くの低減;(c)第1の用量の投与後の2週目もの早期における、そう痒NRSにおけるベースラインからの4ポイント以上の低減;(d)患者が0または1のIGAを達成し(「解消」または「ほぼ解消」)、0から4のIGAスケールでベースラインから2ポイント以上低減していること;(e)患者の生活の質における改善の1つまたはそれ以上をもたらす。特定の実施態様において、IL-4R阻害剤は、単独療法として投与される。他の実施態様において、IL-4R阻害剤は、外用療法(例えば外用コルチコステロイドまたは外用カルシニューリン阻害剤)と組み合わせて投与される。
【0013】
特定の態様によれば、本発明は、重度のADを有する患者におけるそう痒を処置または低減するための方法であって、患者は、全身療法の候補である、方法を提供する。本方法は、これらの態様によれば、重度のADと診断された患者を選択する工程であって、患者は、全身性免疫抑制剤に対して耐性であるか、不十分な応答性を有するか、または不耐性である、工程;およびIL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量それを必要とする患者に投与する工程を含む。特定の実施態様において、IL-4R阻害剤は、単独療法として投与される。他の実施態様において、IL-4R阻害剤は、外用療法(例えば外用コルチコステロイドまたは外用カルシニューリン阻害剤)と組み合わせて投与される。特定の実施態様において、IL-4R阻害剤の投与は、EASIスコアにおけるベースラインから70%より多くの低減、そう痒NRSにおけるベースラインから50%より多くの低減、そう痒NRSにおけるベースラインからの4ポイント以上の低減、および/または0から4のIGAスケールでベースラインから2ポイント以上の低減をもたらす。
【0014】
特定の態様によれば、本発明は、重度のADを有する患者を処置する方法を包含する。本方法は、これらの態様によれば、重度のADを有する患者を選択する工程であって、患者はこれまでに、シクロスポリンA、IgE阻害剤、TNFアルファ阻害剤、CD11a阻害剤、CD20阻害剤、抗生物質、IL-4R阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体、例えばデュピルマブ)、全身性免疫抑制剤、外用コルチコステロイド、経口コルチコステロイド、カルシニューリン阻害剤および光線療法からなる群から選択される治療で処置されたことがある、工程;およびIL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量を、それを必要とする患者に投与する工程を含む。
【0015】
特定の実施態様において、本発明は、重度のADを有する患者における外用コルチコステロイド(TCS)への依存性を低減するための方法であって、それを必要とする対象に、IL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量を投与することを含む、方法を包含する。特定のさらなる実施態様において、中程度の効力のまたは高い効力のTCSは、IL-4R阻害剤と同時に投与される。1つのさらなる実施態様において、TCSの量は、IL-4R阻害剤の第1の用量の投与の際に、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%徐々に低減される。
【0016】
特定の態様によれば、本発明は、再燃またはADの増悪を低減するための方法であって、重度のADを有する患者を選択する工程、およびIL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量を、それを必要とする患者に投与する工程を含む、方法を包含する。特定の実施態様において、患者は、難治性ADを有するか、または全身性治療剤(例えば、全身性免疫抑制剤)での療法後に再発を起こしている。
【0017】
特定の態様によれば、本発明は、ADを処置する、またはそう痒を低減する、またはAD関連パラメーターを改善する方法であって、中程度から重度または重度のADを有する患者を選択する工程であって、患者はこれまでに、5週間より前、8週間より前、13週間より前、または20週間より前にIL-4R阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体、例えばデュピルマブ)で処置されたことがある、工程、およびそれを必要とする患者を、IL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量で再処置する工程であって、再処置は、EASIスコアにおけるベースラインから70%より多くの低減、そう痒NRSにおけるベースラインから50%より多くの低減、そう痒NRSにおけるベースラインからの4ポイント以上の低減、および/または0から4のIGAスケールでベースラインから2ポイント以上の低減をもたらす、工程を含む、方法を包含する。特定の実施態様において、IL-4R阻害剤の各用量は、約50~600mgを含み、直前の用量の1、2、3または4週間後に投与される。
【0018】
特定の態様によれば、本発明は、ADを有する患者におけるADを処置する、または少なくとも1つのAD関連パラメーターを改善する方法であって、(a)ADを有する患者を選択する工程であって、患者は、:(i)患者が、4のベースラインにおけるIGAスコアを有すること;(ii)患者が、3以上のベースラインにおけるIGAスコアを有すること;(iii)患者が、6歳から18歳の間であること;(iv)患者が、外用AD療法で制御不能な疾患を有すること;(v)患者が、外用AD療法への不十分な応答の確認された病歴を有するか、または有害な副作用もしくは安全性のリスクのために、患者にとって外用療法が得策ではないこと;(vi)患者が、これまでに、外用コルチコステロイド、外用カルシニューリン阻害剤、抗ヒスタミン、エモリエント剤、皮膚科学的な治療剤、全身性グルココルチコイド、非ステロイド系全身性免疫抑制剤、シクロスポリンA、アザチオプリン、紫外線療法、および光線療法からなる群から選択される薬物療法または手順で処置されたことがあること;ならびに(vii)患者が、食物アレルギー、喘息、季節性アレルギー、アレルギー性鼻炎、ハウスダストアレルギー、およびアレルギー性結膜炎からなる群から選択される併存する疾患または障害を有することからなる群から選択される特性を有する、工程;および(b)治療有効量のIL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量を、それを必要とする患者に投与する工程を含む、方法を包含する。特定の実施態様において、IL-4R阻害剤の各用量は、患者の体重1kg当たり1、2、3、4または5mgを含み、各用量は、直前の用量の1~4週間後に投与される。
【0019】
特定の実施態様によれば、本発明の方法は、IL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量をそれを必要とする対象に投与することを含む。特定の実施態様において、本発明の方法は、初回用量として約10mgから約600mgのIL-4R阻害剤を投与すること、それに続いて1つまたはそれ以上の二次用量を投与することを含み、各二次用量は、25から400mgのIL-4R阻害剤を含む。特定の実施態様において、初回用量および1つまたはそれ以上の二次用量はそれぞれ、約10mgから約600mgのIL-4R阻害剤を含む。特定の実施態様において、IL-4R阻害剤は、600mgの初回用量、それに続いて1つまたはそれ以上の二次用量で投与され、各二次用量は、300mgを含む。本発明のこの態様によれば、IL-4R阻害剤は、例えば、週1回、2週毎に1回、3週毎に1回または4週毎に1回の投与頻度で対象に投与してもよい。一実施態様において、各二次用量は、直前の用量の1週間後に投与される。一実施態様において、各二次用量は、直前の用量の2週間後に投与される。特定の実施態様において、本発明の方法は、IL-4R阻害剤をそれを必要とする対象に投与することを含み、IL-4R阻害剤は、対象の体重1kg当たり約1~10mgを含む。特定の実施態様において、それを必要とする対象は、IL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量が投与され、各用量は、対象の体重1kg当たり1、2、4、5または10mgを含み、各用量は、直前の用量の1~4週間後に投与される。
【0020】
本発明の方法に関して使用できる例示的なIL-4R阻害剤としては、例えば、IL-4Rまたはそのリガンド(IL-4および/またはIL-13)の低分子量の化学的な阻害剤、またはIL-4Rまたはそのリガンドを標的化する生物学的薬剤が挙げられる。特定の実施態様によれば、IL-4R阻害剤は、IL-4Rのα鎖に結合し、IL-4、IL-13、またはIL-4およびIL-13の両方によるシグナル伝達をブロックする抗原結合タンパク質(例えば、抗体またはその抗原結合フラグメント)である。一実施態様において、IL-4Rと特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1/2の重鎖可変領域(HCVR)/軽鎖可変領域(LCVR)配列の対中に相補性決定領域(CDR)を含む。特定の実施態様において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号3のアミノ酸配列を有する重鎖CDR(HCDR1)、配列番号4のアミノ酸配列を有するHCDR2、配列番号5のアミノ酸配列を有するHCDR3、配列番号6のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR(LCDR1)、配列番号7のアミノ酸配列を有するLCDR2、および配列番号8のアミノ酸配列を有するLCDR3を含む。本発明の方法に関して使用できる1つのこのようなタイプの抗原結合タンパク質は、抗IL-4Rα抗体、例えばデュピルマブである。
【0021】
一部の実施態様において、IL-4R阻害剤は、対象に、皮下、静脈内、または腹腔内投与される。
【0022】
特定の実施態様において、本発明は、患者における中程度から重度または重度のADを処置する、またはそう痒を低減するための、医薬品の製造における本発明のIL-4R阻害剤の使用であって、患者は、特定の実施態様において全身療法(例えば、全身性免疫抑制剤)の候補であり、患者は、全身療法に対して耐性であるかまたは不耐性であるか、または患者にとって安全性および健康上のリスクに加えて最適下限の効能のために全身療法が得策ではない、使用を提供する。特定の実施態様において、本発明は、重度のADを有する患者における外用コルチコステロイドへの依存性を低減するための、医薬品の製造における本発明のIL-4R阻害剤の使用を提供する。特定の実施態様において、本発明は、重度のADを有する患者における重度のADを処置する、またはそう痒を低減するための方法におけるIL-4R阻害剤の使用であって、IL-4R阻害剤がそれを必要とする対象に投与される、使用を提供する。特定の実施態様において、本発明は、重度のADを有する対象における外用コルチコステロイドへの依存性を低減するための方法におけるIL-4R阻害剤の使用であって、IL-4R阻害剤がそれを必要とする対象に投与される、使用を提供する。
【0023】
本発明の他の実施態様は、次の詳細な説明の総論から明らかになると予想される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を説明する前に、本発明は、記載された特定の方法および実験条件に限定されず、そのような方法および条件は変更が可能であることを理解されたい。また、本明細書において使用される用語は、特定の実施態様のみを説明することを目的としており、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、それにより限定されることを意図しないことも理解されたい。
【0025】
別段の指定がない限り、本明細書において使用される全ての専門用語や科学用語は、本発明が属する分野の当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。本明細書で使用される場合、用語「約」は、特定の列挙された数値に関して使用される場合、その値が、列挙された値から1%以下で変動し得ることを意味する。例えば、本明細書で使用される場合、表現「約100」は、99および101ならびにその間にある全ての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4など)を包含する。本明細書で使用される場合、用語「処置する」、「処置すること」などは、一時的または永続的のいずれかで症状を軽減したり、症状の原因をなくしたりすること、または指定された障害または状態の症状の出現を予防したり、もしくは遅延させたりすることを意味する。
【0026】
本明細書に記載されたものに類似した、またはそれらと同等なあらゆる方法および材料を本発明の実施において使用できるが、好ましい方法および材料をここに記載する。本明細書で述べられた全ての公報は、参照によって本明細書に組み入れ、それら全体が記載されたものとする。
【0027】
重度のアトピー性皮膚炎を処置するための方法
本発明は、IL-4R阻害剤を含む治療用組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を包含する。本明細書で使用される場合、表現「それを必要とする対象」は、アトピー性皮膚炎の1つまたはそれ以上の症状または徴候を呈示する、および/またはアトピー性皮膚炎と診断されているヒトまたは非ヒト動物を意味する。
【0028】
「アトピー性皮膚炎」(AD)は、本明細書で使用される場合、強烈なそう痒(例えば、重度の痒み)および鱗状の乾燥した湿疹性の病変を特徴とする炎症性皮膚疾患を意味する。用語「アトピー性皮膚炎」としては、これらに限定されないが、表皮バリアの機能不全、アレルギー(例えば、特定の食物、花粉、カビ、チリダニ、動物などに対するアレルギー)、放射線への曝露、および/または喘息によって引き起こされるかまたはそれに関連するADが挙げられる。本発明は、中程度から重度または重度のADを有する患者を処置する方法を包含する。「中程度から重度のAD」は、本明細書で使用される場合、強烈なそう痒を起こす広範にわたる皮膚病変を特徴とし、これは、持続的の細菌、ウイルスまたは真菌感染を合併することが多い。中程度から重度のADはまた、患者における慢性ADも包含する。多くのケースにおいて、慢性病変は、皮膚の肥厚化したプラーク、苔癬化および繊維状の丘疹を包含する。また中程度から重度のADに罹患した患者は、一般的に、体の皮膚の20%より多くが罹患しているか、または目、手および体の折り目も含めた皮膚領域の10%が罹患している。中程度から重度のADはまた、外用コルチコステロイドでの頻繁な処置を必要とする患者に存在するものともみなされる。また患者が、外用コルチコステロイドまたはカルシニューリン阻害剤のいずれかによる処置に対して耐性または難治性である場合、その患者も、中程度から重度のADを有すると称される場合もある。
【0029】
特定の好ましい実施態様において、用語「それを必要とする対象」は、重度のADを有する患者を指す。「重度のAD」は、本明細書で使用される場合、中程度の効力および高い効力のTCSならびに/または免疫抑制剤療法での処置に対して難治性の慢性的な再発性ADを指す。重度のADは、体表面積の20%より多くが、慢性の強烈なそう痒を起こす病変に罹患していることも特徴とする。特定の実施態様において、この用語は、効能のある外用コルチコステロイド(TCS)での処置を支持するEichenfieldの基準(Eichenfieldら、2014、J.Am.Acad.Dermatol.70:338~351)に従って、慢性ADを指す。特定の実施態様において、この用語は、全身性コルチコステロイドおよび/または非ステロイド系免疫抑制剤での処置への耐性を有する慢性ADを有する患者を包含する。また重度のADを有する患者は、疾患の頻繁な増悪または再燃を示す場合もある。特定の実施態様において、用語「重度のAD」は、医師による包括的評価(IGA)スコアが4の患者を指す。
【0030】
本明細書で使用される場合、「再燃」は、「増悪」とも称され、これは、療法の漸増を引き起こす徴候および/または症状の増加を指し、ここで療法の漸増とは、免疫抑制剤療法(例えば、シクロスポリンA)の用量の増加、より高い効力のTCSクラスへのスイッチ、または別の経口免疫抑制薬の開始であり得る。特定の実施態様において、本発明は、重度のADを有する患者における再燃または増悪の回数を低減する方法であって、治療有効量のIL-4R阻害剤を、それを必要とする患者に投与することを含む、方法を包含する。
【0031】
特定の実施態様において、用語「それを必要とする対象」は、全身性免疫抑制剤での処置に対して耐性であるか、非応答性であるか、または不十分な応答性を有する対象を包含する。本発明は、全身性免疫抑制剤での処置に対して耐性であるか、非応答性であるか、または不十分な応答性を有する対象または患者におけるADを処置する方法を包含する。用語「全身性免疫抑制剤に対して耐性であるか、非応答性であるか、または不十分な応答性を有する」は、本明細書で使用される場合、ADを有する対象または患者において、全身性免疫抑制剤で処置したが免疫抑制剤が治療作用を有さないことを指す。一部の実施態様において、この用語は、患者のコンプライアンス低下、ならびに/または毒性作用および副作用、ならびに/または投与された免疫抑制剤によるADの症状を低減する、緩和する、または減少させる効果がないことを指す。一部の実施態様において、この用語は、全身性免疫抑制剤による処置に対して難治性の、中程度から重度のADまたは重度のADに罹っている患者を指す。一部の実施態様において、この用語は、免疫抑制剤での処置にもかかわらず制御不能なADを有する患者を指す。一部の実施態様において、「全身性免疫抑制剤に対して耐性であるか、非応答性であるか、または不十分な応答性を有する」患者は、1つまたはそれ以上のAD関連パラメーターの改善を示さない場合もある。AD関連パラメーターの例は、本明細書の他所に記載される。例えば、全身性免疫抑制剤での処置は、そう痒または湿疹面積および重症度指標(EASI)スコアまたは体表面積(BSA)スコアの減少をもたらさない場合もある。一部の実施態様において、この用語は、全身性免疫抑制剤で処置されたが、それ以降に再発したか、および/またはADの増悪または再燃の増加を示す、重度のADを有する患者を指す。特定の実施態様において、この用語は、患者に対する安全性および健康上のリスクに加えて最適下限の効能のために免疫抑制剤療法が得策ではない、重度のADを有する患者を指す。一部の実施態様において、本発明は、初期に全身性免疫抑制剤で1カ月以上で処置されたが、1つまたはそれ以上のAD関連パラメーターにおける減少を示さない患者における中程度から重度のADまたは重度のADを処置する方法を包含する。例えば、本発明の方法は、全身性免疫抑制剤で処置されており、10%以上の体表面積(BSA)スコアまたは3以上の医師による包括的評価(IGA)スコアを有する、慢性的な再発性ADを有する患者を処置するのに使用することができる。
【0032】
特定の実施態様において、用語「それを必要とする対象」は、重度のADを有する患者であって、その疾患がTCSで適切に制御できない患者、経口免疫抑制剤で適切に制御されないか、それに対して不耐性である患者、または免疫抑制剤での処置が、その時点で、以下に従って医師により医学上望ましくないとみなされた場合の患者を包含する:
(A)これまでに、免疫抑制剤に曝露されていないこと(このような患者は、その時点で、以下の理由からこのような処置の候補ではない):
・医療上の禁忌;
・免疫抑制剤の活性物質または賦形剤への過敏症;
・免疫抑制剤に干渉する薬物療法の同時の使用;または
・免疫抑制剤によって誘発された腎臓損傷に対する感受性の増加、重篤な感染症のリスクの増加など。
または
(B)これまでに、免疫抑制剤に曝露されており、このような患者は、以下の理由から免疫抑制剤を継続または再開すべきではない場合:
・以前の不耐性および/または許容できない毒性
・不十分な応答、これは、最長6週間の高用量(5mg/kg/日)の後に維持用量(2から3mg/kg/日)に漸減させた免疫抑制剤におけるADの再燃、または維持用量で最短3カ月の後の再燃と定義される。再燃は、療法の漸増を引き起こす徴候および/または症状の増加と定義され、ここで療法の漸増とは、免疫抑制剤用量の増加、より高い効力のTCSクラスへのスイッチ、または別の経口免疫抑制薬の開始であり得る;または
・処方情報で特定されたものを超える用量または持続時間で免疫抑制剤を要すること。
【0033】
特定の実施態様において、用語「それを必要とする対象」は、全身療法の候補である、中程度から重度または重度のADを有する患者を包含する。用語「全身療法」は、本明細書で使用される場合、治療剤(例えば、経口投与されるコルチコステロイド)および他の免疫抑制剤または免疫調節剤が全身投与されることを指す。本発明の文脈において、用語「全身性免疫抑制剤」としては、これらに限定されないが、シクロスポリンA、メトトレキセート、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、全身性または経口コルチコステロイド、およびインターフェロン-ガンマが挙げられる。特定の実施態様において、この用語はまた、免疫生物学的物質、例えば腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)阻害剤(例えば、抗TNFα抗体、例えばインフリキシマブ)、CD11a阻害剤(例えば、抗CD11a抗体、例えばエファリズマブ)、IgE阻害剤(例えば、オマリズマブ)、CD20阻害剤(例えば、リツキシマブ)も包含する。全身性免疫抑制剤などの全身療法は、再燃の短期間の処置のために、または疾患を制御するための一時的な手段として使用することができるが、その使用は、顕著な副作用、例えば、子供の成長遅延、クッシング症候群、高血圧、グルコース不耐性、ミオパチー、骨壊死、緑内障および白内障によって限定される。全身性免疫抑制剤の使用はまた、ぶり返し現象のリスクも有しており、その場合、疾患の症状は、処置の中断後に著しく悪化する可能性がある。特定の実施態様において、用語「全身療法」、「全身性治療剤」および「全身性免疫抑制剤」は、本開示にわたり同義的に使用される。
【0034】
特定の実施態様において、用語「それを必要とする対象」は、定期的な免疫抑制剤での処置に加えて、6カ月より長く、1年より長く、2年より長く、約5年より長く、約7年より長く、または約10年より長く、1回またはそれ以上のTCSが投与された、中程度から重度または重度のADを有する患者を包含する。特定の実施態様において、用語「それを必要とする対象」は、これまでに、シクロスポリンA、IgE阻害剤、TNFアルファ阻害剤、CD11a阻害剤、CD20阻害剤、IL-4R阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体、例えばデュピルマブ)、抗生物質、全身性免疫抑制剤、外用コルチコステロイド、経口コルチコステロイド、カルシニューリン阻害剤および光線療法からなる群から選択される治療で処置されたことがある、中程度から重度または重度のADを有する患者を包含する。患者は、TCSおよび/または免疫抑制剤の有害な副作用を最小化するかまたは回避することを希望する場合がある。本発明は、患者における中程度から重度または重度のADを処置する方法であって、TCSと同時に、IL-4R阻害剤を投与することを含み、投薬量は、TCSの有害な副作用が最小化または予防されるように調整される、方法を包含する。特定の実施態様において、本発明は、中程度から重度または重度のADを有する患者におけるTCSへの依存性を低減する方法であって、効能のあるTCSと同時に、治療有効量のIL-4R阻害剤を投与することを含み、患者が使用するTCSの量は、IL-4R阻害剤が投与されない患者と比較して約50%低減される、方法を包含する。特定の実施態様において、本発明は、中程度から重度または重度のADを有する患者におけるTCSへの依存性を低減する方法であって、効能のあるTCSと同時に、治療有効量のIL-4R阻害剤を投与することを含み、患者が使用するTCSの量は、IL-4R阻害剤での処置の前に患者が使用する量と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%低減される、方法を包含する。特定の実施態様において、IL-4R阻害剤およびTCSの投与は、単独療法と比較して、ADの処置において相加または相乗的な活性をもたらす。
【0035】
用語「TCS」は、本明細書で使用される場合、グループI、グループII、グループIIIおよびグループIVの外用コルチコステロイドを包含する。世界保健機関の解剖治療分類法によれば、コルチコステロイドは、ヒドロコルチゾンと比較したその活性に基づいて、弱い(グループI)、中程度に効能のある(グループII)および効能のある(グループIII)および非常に効能のある(グループIV)と分類される。グループIV TCS(非常に効能のある)は、ヒドロコルチゾンの最大600倍の効能があり、その例としては、プロピオン酸クロベタゾールおよびハルシノニドが挙げられる。グループIII TCS(効能のある)は、ヒドロコルチゾンの50から100倍もの効能があり、その例としては、これらに限定されないが、吉草酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ジフルコルトロン、ヒドロコルチゾン-17-ブチレート、フランカルボン酸モメタゾン、およびアセポン酸メチルプレドニゾロンが挙げられる。グループII TCS(中程度に効能のある)は、ヒドロコルチゾンの2から25倍もの効能があり、その例としては、これらに限定されないが、酪酸クロベタゾン、およびトリアムシノロンアセトニドが挙げられる。グループI TCS(軽度)は、ヒドロコルチゾンを包含する。
【0036】
重度のADを有する患者は、ADを処置するために中程度の効力のまたは高い効力のTCSを処方されることが多い。このような処置は、例えば、2カ月より長い、3カ月より長い、4カ月より長い、5カ月より長い、または6カ月より長い可能性がある。従来技術においてTCSでの処置は有害な副作用を引き起こすことが公知である。特定の態様において、本発明は、重度のADを有する患者における、TCSの使用またはTCSへの依存性を低減する、および/もしくはTCSの有害な副作用を低減する方法であって、IL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量を、それを必要とする患者に投与する工程を含む、方法を包含する。特定の実施態様において、IL-4R阻害剤は、中程度の効力のまたは高い効力のTCSと組み合わせて投与され、ここで投与されるTCSの量は、患者の重度のADが処置されるように、および/または1つまたはそれ以上のAD関連パラメーターが顕著に改善されるように、同様に、TCSによる副作用および毒性が最小化されるかもしくは予防されるように、徐々に低減される。特定の実施態様において、本発明は、TCSまたは免疫抑制剤の低減または中止の際のぶり返しのリスクを低減するかまたはなくす方法であって、バックグラウンド療法で制御不能な重度のADを有する患者を選択すること、およびIL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量をそれを必要とする患者に投与することを含む方法を包含する。特定のさらなる実施態様において、患者は、初期において、同時に投与されるバックグラウンド療法と組み合わせてIL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量が投与され;それに続いて徐々にバックグラウンド療法が低減される。特定の実施態様において、バックグラウンド療法は、TCS、カルシニューリン阻害剤、全身性免疫抑制剤およびエモリエント剤からなる群から選択される治療剤を含む。一実施態様において、重度のADを有する患者は、初期において全身性免疫抑制剤で処置され、ここで全身性免疫抑制剤は、シクロスポリンAである。特定の実施態様において、バックグラウンド療法の量は、IL-4R阻害剤が投与されない患者と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%低減される。
【0037】
本発明は、それを必要とする対象における1つまたはそれ以上のアトピー性皮膚炎(AD)関連パラメーターを改善することによって重度のADを処置するための方法であって、重度のADを有する患者を選択する工程であって、患者は、全身性免疫抑制剤療法に対して耐性であるか、不十分な応答性を有するか、または不耐性である、工程、およびIL-4R阻害剤を含む医薬組成物を対象に投与する工程を含む、方法を包含する。一実施態様において、IL-4R阻害剤を含む医薬組成物は、効能のあるTCSと組み合わせて投与される。
【0038】
「AD関連パラメーター」の例としては:(a)医師による包括的評価(IGA);(b)アトピー性皮膚炎の病変体表面積(BSA);(c)湿疹面積および重症度指標(EASI);(d)SCORAD;(e)5-Dそう痒スケール;および(f)そう痒数値評価スケール(NRS)が挙げられる。「AD関連パラメーターにおける改善」は、IGA、BSA、EASI、SCORAD、5-Dそう痒スケール、またはNRSの1つまたはそれ以上のベースラインからの減少を意味する。本明細書で使用される場合、用語「ベースライン」は、AD関連パラメーターに関して、本発明の医薬組成物を投与する前または投与したときの対象に関するAD関連パラメーターの数値を意味する。
【0039】
AD関連パラメーターが「改善された」かどうかを決定するために、パラメーターは、ベースライン時に、および本発明の医薬組成物投与後の1つまたはそれ以上のタイムポイントで定量化される。例えば、AD関連パラメーターは、本発明の医薬組成物での最初の処置後の、1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目、14日目、15日目、22日目、25日目、29日目、36日目、43日目、50日目、57日目、64日目、71日目、85日目に;または1週目、2週目、3週目、4週目、5週目、6週目、7週目、8週目、9週目、10週目、11週目、12週目、13週目、14週目、15週目、16週目、17週目、18週目、19週目、20週目、21週目、22週目、23週目、24週目、もしくはそれより長い期間の最後に測定することができる。処置開始後の特定のタイムポイントにおけるパラメーターの値と、ベースライン時におけるパラメーターの値との差を使用して、AD関連パラメーターが「改善」された(例えば、減少した)かどうかを確認することができる。AD関連パラメーターは、その全体を本明細書に組み入れる米国特許公報第20140072583号に記載されている。本発明の文脈において、「それを必要とする対象」は、例えば、処置前に、例えばIGA、BSA、EASI、SCORAD、5D-そう痒、および/またはNRSスコアなどの1つまたはそれ以上のAD関連パラメーターの上昇を呈示する(または呈示していた)対象を包含していてもよい。例えば、本発明の方法は、3以上または4以上のIGA;または10%より多くのBSAを有する患者に、IL-4R阻害剤を投与することを含む。
【0040】
一態様によれば、本発明は、中程度から重度または重度のADを処置する、またはそう痒を低減する、またはAD関連パラメーターを改善する方法であって、(1)中程度から重度または重度のADを有する患者を選択する工程であって、患者は、:(a)患者が、シクロスポリンA(CsA)に対する不十分な応答または不耐性の確認された病歴を有する;(b)患者が、4以上のベースラインにおけるピークのそう痒NRSを有すること;(c)患者が、3以上のベースラインにおけるIGAスコアを有すること;(d)患者が、4のベースラインにおけるIGAスコアを有すること;および(e)患者が、喘息、アレルギー性鼻炎、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、膨疹、アレルギーおよび環境のアレルゲンからなる群から選択される並行する疾患または障害を有することからなる群から選択される特性を有する、工程;および(2)治療有効量のIL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量を、それを必要とする患者に投与する工程を含む、方法を提供する。特定の実施態様において、IL-4R阻害剤の投与は:(i)EASIにおけるベースラインからの70%より多くの減少;(ii)IL-4R阻害剤の第1の用量の投与後の2週目までの、EASIにおけるベースラインからの約75%の減少;(iii)IL-4R阻害剤の第1の用量の投与後の16週目までの、そう痒NRSにおけるベースラインからの50%より多くの減少;(iv)IL-4R阻害剤の第1の用量の投与後の2週目までの、ピークのそう痒NRSにおける4ポイント以上の改善;(v)IL-4R阻害剤の第1の用量の投与後の16週目までの、IGAスコアにおける2ポイントの改善;(vi)IL-4R阻害剤の第1の用量の投与後の16週目までの、0または1のIGAスコアが達成されるようなIGAにおけるベースラインからの減少;(vii)再燃または増悪の回数における低減;および(viii)皮膚感染の発生率における低減;および(vii)例えば、皮膚疾患の生活の質指標(DLQI)または他のあらゆる本明細書で開示された患者報告式のアウトカムによって決定されるような、生活の質の改善からなる群から選択される作用をもたらす。特定の実施態様において、IL-4R阻害剤は、抗IL-4R抗体またはその抗原結合フラグメント(例えばデュピルマブ)である。特定の実施態様において、IL-4R阻害剤は、第2の治療剤と組み合わせて投与される。特定の実施態様において、第2の治療剤は、外用コルチコステロイドおよび外用カルシニューリン阻害剤からなる群から選択される。特定の実施態様において、IL-4R阻害剤の各用量は、50~600mgを含み、各用量は、直前の用量の1週間または2週間後に投与される。一実施態様において、抗IL-4R抗体の各用量は、300mgを含み、各用量は、週1回または2週毎に1回投与される。特定の具体的な実施態様において、1つまたはそれ以上の用量は、600mgを含む第1の用量、それに続く1つまたはそれ以上の二次用量を含み、ここで各二次用量は、300mgを含み、各二次用量は、直前の用量の1週間または2週間後に投与される。
【0041】
一態様によれば、本発明は、中程度から重度の、または重度のADを有する患者における、ADを処置する、またはそう痒を低減する、またはAD関連パラメーターを改善するための方法であって、患者はこれまでに、IL-4R阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体、例えばデュピルマブ)で処置されたことがある、方法を包含する。特定の実施態様において、患者はこれまでに、4週間より前に、8週間より前に、12週間より前に、または20週間より前にデュピルマブで処置されたことがある。特定の実施態様において、本発明は、IL-4R阻害剤での先行の処置を、4週間より前に、8週間より前に、または12週間より前に中断している患者における、中程度から重度または重度のADを処置する方法を包含する。本方法は、この態様によれば、それを必要とする患者をIL-4R阻害剤で再処置することを含み、ここで再処置は、患者の疾患が処置されるか、または少なくとも1つのAD関連パラメーターが改善されるようにIL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量を投与することを含む。特定の実施態様において、患者の再処置は、IL-4R阻害剤の投与の際に、EASIスコアにおけるベースラインから70%より多くの低減、および/またはそう痒NRSにおけるベースラインから50%より多くの低減スコアをもたらす。
【0042】
特定の実施態様において、本発明の方法は、1つまたはそれ以上のAD関連バイオマーカー(例えば、IgE)の上昇したレベルを示す患者を処置するのに使用することができる。AD関連バイオマーカーは、その全体を本明細書に組み入れる米国特許公報第20140072583号に記載されている。例えば、本発明の方法は、IgEまたはTARCまたはペリオスチンの上昇したレベルを有する患者に、IL-4R阻害剤を投与することを含む。本発明の文脈において、「それを必要とする患者」は、例えば、処置前に、例えばIgEおよび/またはTARCなどの1つまたはそれ以上のAD関連バイオマーカーの上昇したレベルを呈示する(または呈示していた)対象を包含していてもよい。特定の実施態様において、「それを必要とする対象」は、よりADになりやすいか、またはAD関連バイオマーカーの上昇したレベルを示す可能性がある集団のサブセットを包含していてもよい。
【0043】
一部の実施態様において、本明細書に記載の方法は、1歳以下の子供における重度のADを処置するのに使用することができる。例えば、本発明の方法は、1カ月未満、1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月または12カ月未満の乳児を処置するのに使用することができる。他の実施態様において、本発明は、18歳以下の子供および/または青年を処置する方法を包含する。例えば、本発明の方法は、17歳未満、16歳、15歳、14歳、13歳、12歳、11歳、10歳、9歳、8歳、7歳、6歳、5歳、4歳、3歳、または2歳未満の子供または青年を処置するのに使用することができる。
【0044】
特定の態様によれば、本発明は、中程度から重度または重度のアトピー性皮膚炎(AD)を処置する、またはAD関連パラメーターを改善するための方法であって、(a)中程度から重度または重度のADを有する患者を選択する工程であって、患者は:(i)患者が、4のベースラインにおけるIGAスコアを有すること;(ii)患者が、3以上のベースラインにおけるIGAスコアを有すること;(iii)患者が、6歳から18歳の間であること;(iv)患者が、外用AD療法で制御不能な疾患を有すること;(v)患者が、外用AD療法への不十分な応答の確認された病歴を有するか、または有害な副作用もしくは安全性のリスクのために、患者にとって外用療法が得策ではないこと;(vi)患者が、これまでに、外用コルチコステロイド、外用カルシニューリン阻害剤、抗ヒスタミン、エモリエント剤、皮膚科学的な治療剤、全身性グルココルチコイド、非ステロイド系全身性免疫抑制剤、シクロスポリンA、アザチオプリン、紫外線療法、および光線療法からなる群から選択される薬物療法または手順で処置されたことがあること;および(vii)患者が、食物アレルギー、喘息、季節性アレルギー、アレルギー性鼻炎、ハウスダストアレルギー、およびアレルギー性結膜炎からなる群から選択される併存する疾患または障害を有することからなる群から選択される特性を有する、工程;ならびに(b)治療有効量のIL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量を、それを必要とする患者に投与する工程を含む、方法を包含する。特定の実施態様において、IL-4R阻害剤の投与は:(i)IL-4R阻害剤の第1の用量の投与後の2週目までの、EASIスコアにおけるベースラインから30%より多くの低減;(ii)そう痒NRSにおけるベースラインから50%より多くの低減;および(iii)IL-4R阻害剤の第1の用量の投与後の12週目までの、0または1のIGAスコアが達成されるようなIGAスコアにおけるベースラインからの低減からなる群から選択される治療作用をもたらす。特定の実施態様において、IL-4R阻害剤は、外用コルチコステロイド、外用カルシニューリン阻害剤、抗ヒスタミン、エモリエント剤、抗細菌性の治療剤、ならびに閉塞性気道疾患のための治療剤、肺の障害および/またはアレルギー反応からなる群から選択される第2の治療剤と組み合わせて投与される。
【0045】
インターロイキン-4受容体阻害剤
本発明の方法は、インターロイキン-4受容体(IL-4R)阻害剤を含む治療用組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。本明細書で使用される場合、「IL-4R阻害剤」(本明細書では「IL-4R阻害剤」、「IL-4Rαアンタゴニスト」、「IL-4Rブロッカー」、「IL-4Rαブロッカー」などとも称される)は、IL-4RαまたはIL-4Rリガンドに結合するかまたはそれと相互作用し、1型および/または2型IL-4受容体の正常な生物学的シグナル伝達機能を阻害または減弱するあらゆる薬剤である。ヒトIL-4Rαは、配列番号11のアミノ酸配列を有する。1型IL-4受容体は、IL-4Rのα鎖およびγc鎖を含む二量体受容体である。2型IL-4受容体は、IL-4Rのα鎖およびIL-13Rのα1鎖を含む二量体受容体である。1型IL-4受容体は、IL-4と相互作用し、それにより刺激されるが、2型IL-4受容体は、IL-4およびIL-13の両方と相互作用し、それらにより刺激される。したがって、本発明の方法で使用できるIL-4R阻害剤は、IL-4媒介シグナル伝達、IL-13媒介シグナル伝達、またはIL-4媒介シグナル伝達とIL-13媒介シグナル伝達の両方をブロックすることによって機能する可能性がある。したがって本発明のIL-4R阻害剤は、IL-4および/またはIL-13と1型または2型受容体との相互作用を防ぐことができる。
【0046】
IL-4R阻害剤のカテゴリーの非限定的な例としては、低分子量のIL-4R阻害剤、抗IL-4Rアプタマー、ペプチドベースのIL-4R阻害剤(例えば、「ペプチボディ」分子)、「レセプターボディ」(例えば、IL-4R要素のリガンド結合ドメインを含む操作された分子)、およびヒトIL-4Rαと特異的に結合する抗体または抗体の抗原結合フラグメントが挙げられる。本明細書で使用される場合、IL-4R阻害剤としてはさらに、IL-4および/またはIL-13と特異的に結合する抗原結合タンパク質も挙げられる。
【0047】
抗IL-4Rα抗体およびその抗原結合フラグメント
本発明の特定の例示的な実施態様によれば、IL-4R阻害剤は、抗IL-4Rα抗体またはその抗原結合フラグメントである。用語「抗体」は、本明細書で使用される場合、ジスルフィド結合によって相互連結した、4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子、加えてその多量体(例えば、IgM)を包含する。典型的な抗体において、各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書では、HCVRまたはVHと略記される)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書では、LCVRまたはVLと略記される)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL1)を含む。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより高度に保存された領域が散在する相補性決定領域(CDR)と称される超可変領域にさらに細かく分類できる。各VHおよびVLは、3つのCDRおよび4つのFRで構成されており、これらは、アミノ末端からカルボキシ末端にかけて以下の順番:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置される。本発明の様々な実施態様において、抗IL-4R抗体(またはそれらの抗原結合部位)のFRは、ヒト生殖細胞系配列と同一であってもよいし、または天然にもしくは人工的に改変されていてもよい。アミノ酸コンセンサス配列は、2またはそれより多くのCDRのサイドバイサイドの分析に基づき定義することができる。
【0048】
用語「抗体」はまた、本明細書で使用される場合、完全抗体分子の抗原結合フラグメントも包含する。抗体の「抗原結合部位」、抗体の「抗原結合フラグメント」などの用語は、本明細書で使用される場合、抗原と特異的に結合して複合体を形成する、あらゆる天然に存在する、酵素的に入手可能な、合成の、または遺伝子操作されたポリペプチドまたは糖タンパク質を包含する。抗体の抗原結合フラグメントは、あらゆる好適な標準的な技術、例えばタンパク質分解による消化、または抗体の可変ドメインおよび場合により定常ドメインをコードするDNAの操作および発現を含む組換え遺伝子工学技術を使用して、例えば完全抗体分子から誘導することができる。このようなDNAは、公知であるか、および/または例えば商業的な供給源、DNAライブラリー(例えば、ファージ-抗体ライブラリーなど)から容易に入手することも可能であり、または合成することもできる。DNAは、配列決定して、化学的に、または分子生物学技術を使用することによって操作することができ、例えば、1つまたはそれ以上の可変および/または定常ドメインを好適な配置に配置すること、またはコドンを導入すること、システイン残基を入れる、アミノ酸を修飾する、付加するまたは欠失させることなどが可能である。
【0049】
抗原結合フラグメントの非限定的な例としては:(i)Fabフラグメント;(ii)F(ab’)2フラグメント;(iii)Fdフラグメント;(iv)Fvフラグメント;(v)単鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAbフラグメント;および(vii)抗体の高度可変領域を模擬するアミノ酸残基からなる最小認識単位(例えば、単離された相補性決定領域(CDR)、例えばCDR3ペプチド)、または拘束性FR3-CDR3-FR4ペプチドが挙げられる。他の操作された分子、例えばドメイン特異的な抗体、単一ドメイン抗体、ドメインが欠失した抗体、キメラ抗体、CDRグラフト化抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば1価ナノボディ、2価ナノボディなど)、小モジュール免疫薬(SMIP)、およびサメ可変IgNARドメインも、本明細書で使用される場合、表現「抗原結合フラグメント」のなかに包含される。
【0050】
抗体の抗原結合フラグメントは、典型的には、少なくとも1つの可変ドメインを含むと予想される。可変ドメインは、あらゆるサイズまたはアミノ酸組成を有していてもよく、一般的に、1つまたはそれ以上のフレームワーク配列と隣接するかまたはそれと共にフレーム内にある少なくとも1つのCDRを含むと予想される。VLドメインに付随してVHドメインを有する抗原結合フラグメントにおいて、VHおよびVLドメインは、あらゆる好適な配置で互いに存在していてもよい。例えば、可変領域は、二量体であってもよく、VH-VH、VH-VLまたはVL-VL二量体を含有していてもよい。代替として、抗体の抗原結合フラグメントは、単量体のVHまたはVLドメインを含有していてもよい。
【0051】
特定の実施態様において、抗体の抗原結合フラグメントは、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合で連結された少なくとも1つの可変ドメインを含有していてもよい。本発明の抗体の抗原結合フラグメント中で見出される可能性がある可変および定常ドメインの非限定的な例示的な配置としては:(i)VH-CH1;(ii)VH-CH2;(iii)VH-CH3;(iv)VH-CH1-CH2;(v)VH-CH1-CH2-CH3;(vi)VH-CH2-CH3;(vii)VH-CL;(viii)VL-CH1;(ix)VL-CH2;(x)VL-CH3;(xi)VL-CH1-CH2;(xii)VL-CH1-CH2-CH3;(xiii)VL-CH2-CH3;および(xiv)VL-CLが挙げられる。上記で列挙した例示的な配置のいずれかを含む可変および定常ドメインのあらゆる配置において、可変および定常ドメインは、互いに直接連結されていてもよいし、または完全または部分的なヒンジまたはリンカー領域によって連結されていてもよい。ヒンジ領域は、単一のポリペプチド分子中の隣接する可変および/または定常ドメイン間にフレキシブルなまたはややフレキシブルな連結をもたらす、少なくとも2つの(例えば、5、10、15、20、40、60個またはそれより多くの)アミノ酸からなっていてもよい。さらに、本発明の抗体の抗原結合フラグメントは、互いに、および/または1つまたはそれ以上の単量体のVHまたはVLドメインと(例えば、ジスルフィド結合によって)非共有結合で会合した、上記で列挙した可変および定常ドメイン配置のいずれかのホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を含んでいてもよい。
【0052】
用語「抗体」はまた、本明細書で使用される場合、多重特異性を有する(例えば、二重特異性の)抗体も包含する。多重特異性抗体または抗体の抗原結合フラグメントは、典型的には、少なくとも2つの異なる可変ドメインを含むと予想され、ここで各可変ドメインは、別個の抗原または同じ抗原上の異なるエピトープと特異的に結合することが可能である。あらゆる多重特異性抗体の様式を、当業界において利用可能な慣例的な技術を使用して、本発明の抗体または抗体の抗原結合フラグメントに関する使用に適合させることができる。例えば、本発明は、二重特異性抗体の使用を含む方法であって、免疫グロブリンの1つのアームは、IL-4Rαまたはそのフラグメントに特異的であり、免疫グロブリンの他のアームは、第2の治療標的に特異的であるか、または治療成分にコンジュゲートしている、方法を包含する。本発明に関して使用可能な例示的な二重特異性様式としては、これらに限定されないが、例えば、scFvベースまたはダイアボディの二重特異性様式、IgG-scFv融合、二重可変ドメイン(DVD)-Ig、クアドローマ、ノブ-イントゥー-ホール、共通の軽鎖(例えば、ノブ-イントゥー-ホールを含む共通の軽鎖など)、CrossMab、CrossFab、(SEED)ボディ、ロイシンジッパー、デュオボディ(Duobody)、IgG1/IgG2、二重作用性Fab(DAF)-IgG、およびMab2二重特異性様式が挙げられる(例えば、前述の様式の総論に関して、Kleinら、2012、mAbs 4:6、1~11、およびそこで引用された文献を参照)。二重特異性抗体はまた、例えばペプチド/核酸コンジュゲーションを使用して構築することもでき、その場合、直交性の化学反応性を有する天然にはないアミノ酸を使用して、部位特異的な抗体-オリゴヌクレオチドコンジュゲートを生成し、次いでこれを、既定の組成、原子価および幾何学的配置を有する多量体の複合体に自己集合させる。(例えば、Kazaneら、J.Am.Chem.Soc.[Epub:2012年12月4日を参照])。
【0053】
本発明の方法で使用される抗体は、ヒト抗体であってもよい。用語「ヒト抗体」は、本明細書で用いられる場合、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列由来の可変および定常領域を有する抗体を包含することが意図される。本発明のヒト抗体は、それにもかかわらず、例えばCDR中、特定にはCDR3中に、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロでランダムまたは部位特異的突然変異誘発によって、またはインビボで体細胞突然変異によって導入された突然変異)を包含していてもよい。しかしながら、用語「ヒト抗体」は、本明細書で使用される場合、別の哺乳類種、例えばマウスの生殖細胞系由来のCDR配列がヒトフレームワーク配列上にグラフト化された抗体を包含することは意図されない。
【0054】
本発明の方法で使用される抗体は、組換えヒト抗体であってもよい。用語「組換えヒト抗体」は、本明細書で用いられる場合、組換え手段によって製造、発現、作製または単離される全てのヒト抗体、例えば、宿主細胞(以下でさらに説明される)にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現された抗体、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリー(以下でさらに説明される)から単離された抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子に関してトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、Taylorら(1992)Nucl.Acids Res.20:6287-6295を参照)、または他のDNA配列へのヒト免疫グロブリン遺伝子配列のスプライシングを含む他のあらゆる手段によって製造、発現、作製または単離された抗体を包含することが意図される。このような組換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列由来の可変および定常領域を有する。しかしながら、特定の実施態様において、このような組換えヒト抗体は、インビトロでの変異誘発(またはヒトIg配列に関するトランスジェニック動物が使用される場合、インビボでの体細胞変異誘発)に供されることから、組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系VHおよびVL配列由来でありそれに関連するが、インビボにおけるヒト抗体の生殖細胞系レパートリー中に天然に存在しない可能性がある配列である。
【0055】
特定の実施態様によれば、本発明の方法で使用される抗体は、IL-4Rαと特異的に結合する。用語「特異的に結合する」などは、抗体またはその抗原結合フラグメントが、生理学的な条件下で比較的安定な抗原との複合体を形成することを意味する。抗体が抗原と特異的に結合するかどうかを決定するための方法は当業界において周知であり、その例としては、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴などが挙げられる。例えば、本発明の文脈で使用される場合、IL-4Rαと「特異的に結合する」抗体は、表面プラズモン共鳴アッセイで測定した場合、約1000nM未満、約500nM未満、約300nM未満、約200nM未満、約100nM未満、約90nM未満、約80nM未満、約70nM未満、約60nM未満、約50nM未満、約40nM未満、約30nM未満、約20nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約1nM未満、約0.5nM未満、約0.25nM未満、約0.1nM未満または約0.05nM未満のKDでIL-4Rαまたはその部分と結合する抗体を包含する。しかしながら、ヒトIL-4Rαと特異的に結合する単離された抗体は、他の抗原、例えば他の(非ヒト)種由来のIL-4Rα分子への交差反応性を有する可能性がある。
【0056】
本発明の特定の例示的な実施態様によれば、IL-4R阻害剤は、米国特許第7,608,693号に記載の抗IL-4R抗体のアミノ酸配列のいずれかを含む、重鎖可変領域(HCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)、および/または相補性決定領域(CDR)を含む、抗IL-4Rα抗体、またはその抗原結合フラグメントである。特定の例示的な実施態様において、本発明の方法に関して使用できる抗IL-4Rα抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)および配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む。特定の実施態様によれば、抗IL-4Rα抗体またはその抗原結合フラグメントは、3つのHCDR(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)および3つのLCDR(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含み、HCDR1は、配列番号3のアミノ酸配列を含み;HCDR2は、配列番号4のアミノ酸配列を含み;HCDR3は、配列番号5のアミノ酸配列を含み;LCDR1は、配列番号6のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号7のアミノ酸配列を含み;LCDR3は、配列番号8のアミノ酸配列を含む。一部の実施態様において、抗IL-4R抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1を含むHCVRおよび配列番号2を含むLCVRを含む。特定の例示的な実施態様によれば、本発明の方法は、配列番号3-配列番号4-配列番号5-配列番号6-配列番号7-配列番号8のHCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列を含む抗IL-4R抗体、またはその生物学的に同等なものの使用を含む。特定の実施態様において、本発明の方法は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗IL-4R抗体の使用を含む。一部の実施態様において、抗IL-4R抗体は、配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む例示的な抗体は、「デュピルマブ」と称されそのようなものとして当業界において公知の完全ヒト抗IL-4R抗体である。特定の例示的な実施態様によれば、本発明の方法は、デュピルマブまたはその生物学的に同等なものの使用を含む。用語「生物学的に同等なもの」は、本明細書で使用される場合、類似の実験条件下で、単回用量または複数回用量のいずれかで同じモル用量で投与される場合、吸収の速度および/または程度がデュピルマブのそれらと有意差を示さない薬学的に等価なものまたは薬学的な代替物である、抗IL-4R抗体もしくはIL-4R結合タンパク質またはそれらのフラグメントを指す。本発明の文脈において、この用語は、それらの安全性、純度および/または効力においてデュピルマブと臨床的に意味のある差を有さない、IL-4Rに結合する抗原結合タンパク質を指す。
【0057】
本発明の方法に関して使用できる他の抗IL-4Rα抗体としては、例えば、AMG317と称されそのようなものとして当業界において公知の抗体(Correnら、2010、Am J Respir Crit Care Med.、181(8):788~796)、またはMEDI9314、または米国特許第7,186,809号、米国特許第7,605,237号、米国特許第7,638,606号、米国特許第8,092,804号、米国特許第8,679,487号、もしくは米国特許第8,877,189号に記載の抗IL-4Rα抗体のいずれかが挙げられる。
【0058】
本発明の方法に関して使用される抗IL-4Rα抗体は、pH依存性の結合特徴を有していてもよい。例えば、本発明の方法で使用するための抗IL-4Rα抗体は、中性pHと比較して、酸性pHで低減したIL-4Rαへの結合を呈示してもよい。代替として、本発明の抗IL-4Rα抗体は、中性pHと比較して、酸性pHでその抗原への強化された結合を呈示してもよい。表現「酸性pH」は、約6.2未満、例えば、約6.0、5.95、5.9、5.85、5.8、5.75、5.7、5.65、5.6、5.55、5.5、5.45、5.4、5.35、5.3、5.25、5.2、5.15、5.1、5.05、5.0、またはそれ未満のpH値を包含する。本明細書で使用される場合、表現「中性pH」は、約7.0から約7.4のpHを意味する。表現「中性pH」は、約7.0、7.05、7.1、7.15、7.2、7.25、7.3、7.35、および7.4のpH値を包含する。
【0059】
特定の場合において、「中性pHと比較して、酸性pHで低減したIL-4Rαへの結合」は、中性pHでIL-4Rαに結合する抗体のKD値に対する酸性pHでIL-4Rαに結合する抗体のKD値の比率を単位として表される(または逆もまた同様)。例えば、抗体またはその抗原結合フラグメントは、本発明の目的に関して、抗体またはその抗原結合フラグメントが約3.0またはより大きい酸性/中性のKD比率を呈示する場合、「中性pHと比較して、酸性pHで低減したIL-4Rαへの結合」を呈示するとみなすことができる。特定の例示的な実施態様において、本発明の抗体または抗原結合フラグメントの酸性/中性のKD比率は、約3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、20.0、25.0、30.0、40.0、50.0、60.0、70.0、100.0であってもよいし、またはそれより大きくてもよい。
【0060】
pH依存性の結合特徴を有する抗体は、例えば、中性pHと比較して、酸性pHで低減した(または強化された)特定の抗原への結合に関して抗体の集団をスクリーニングすることによって得ることができる。加えて、アミノ酸レベルでの抗原結合ドメインの改変によって、pH依存性特徴を有する抗体を得ることができる。例えば、抗原結合ドメインの(例えば、CDR内の)1つまたはそれ以上のアミノ酸をヒスチジン残基で置換することによって、中性pHと比べて酸性pHで抗原結合が低減した抗体を得ることができる。本明細書で使用される場合、表現「酸性pH」は、6.0またはそれより低いpHを意味する。
【0061】
医薬組成物
本発明は、IL-4R阻害剤を患者に投与することを含む方法であって、IL-4R阻害剤は、医薬組成物中に含有されている、方法を包含する。本発明の医薬組成物は、好適な担体、賦形剤、および好適な移動、送達、耐性などを提供する他の薬剤と共に製剤化される。多数の適切な製剤が、全ての薬剤師に公知の処方集:Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、 Easton、PAに見出すことができる。これらの製剤としては、例えば、粉末剤、ペースト剤、軟膏剤、ゼリー剤、ワックス剤、オイル、脂質、脂質(カチオン性またはアニオン性)を含有する小胞(例えばLIPOFECTIN(商標))、DNAコンジュゲート、無水の吸収ペースト、水中油型および油中水型乳剤、乳剤、カーボワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、およびカーボワックスを含有する半固体混合物が挙げられる。Powellら「Compendium of excipients for parenteral formulations」PDA(1998)J Pharm Sci Technol 52:238~311も参照されたい。
【0062】
本発明の方法に従って患者に投与される抗体の用量は、患者の年齢およびサイズ、症状、状態、投与経路などに応じて様々であってもよい。用量は、典型的には体重または体表面積に従って計算される。状態の重症度に応じて、処置の頻度および持続時間を調整することができる。抗IL-4R抗体を含む医薬組成物を投与するための有効な投薬量およびスケジュールは、経験的に決定することができる;例えば、患者の進行を定期的な評価によってモニターし、それに応じて用量を調整することができる。さらに、投薬量を種間で概算することは、当業界において周知の方法を使用して実行することができる(例えば、Mordentiら、1991、Pharmaceut.Res.8:1351)。本発明に関して使用できる抗IL4R抗体の特定の例示的な用量およびそれを含む投与レジメンは、本明細書の他所で開示される。
【0063】
IL-4R阻害剤を含む医薬組成物を投与するのに使用できる様々な送達系が公知であり、例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセルへのカプセル化、突然変異ウイルスを発現することが可能な組換え細胞、受容体媒介エンドサイトーシスが挙げられる(例えば、Wuら、1987、J.Biol.Chem.262:4429~4432を参照)。投与方法としては、これらに限定されないが、皮内、筋肉内、腹膜内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口経路が挙げられる。組成物は、あらゆる便利な経路によって、例えば点滴またはボーラス注射によって、上皮または粘膜皮膚の内層(例えば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜など)を介した吸収によって投与してもよいし、他の生物活性薬剤と共に投与してもよい。
【0064】
本発明の医薬組成物は、標準的な針およびシリンジを用いて皮下または静脈内に送達することができる。加えて、皮下送達に関して、本発明の医薬組成物を送達することにおいてペン型送達デバイスの適用が容易である。このようなペン型送達デバイスは、再使用できるものであってもよいし、または使い捨てであってもよい。再使用可能なペン型送達デバイスは、一般的に、医薬組成物を含有する入れ替え可能なカートリッジを利用する。カートリッジ中の医薬組成物の全てが投与されカートリッジが空になったら、空のカートリッジを容易に廃棄して、医薬組成物を含有する新しいカートリッジと入れ替えることができる。次いでペン型送達デバイスを再使用することができる。使い捨てのペン型送達デバイスでは、入れ替え可能なカートリッジはない。そうではなく、使い捨てのペン型送達デバイスは、デバイス内のリザーバ中に保持された医薬組成物で充填されている。リザーバ中の医薬組成物が空になると、デバイス全体が廃棄される。
【0065】
多数の再使用可能なペン型および自己注射器送達デバイスが、本発明の医薬組成物の皮下送達に適用される。例として、いくつか例を挙げれば、これらに限定されないが、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford,Inc.、Woodstock、UK)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems、Bergdorf、Switzerland)、HUMALOG MIX75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co.、Indianapolis、IN)、NOVOPEN(商標)I、IIおよびIII(Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson、Franklin Lakes、NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、およびOPTICLIK(商標)(Sanofi-Aventis、Frankfurt、Germany)が挙げられる。本発明の医薬組成物の皮下送達に適用される使い捨てのペン型送達デバイスの例として、いくつか例を挙げれば、これらに限定されないが、SOLOSTAR(商標)ペン(Sanofi-Aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)、およびKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)、SURECLICK(商標)自己注射器(Amgen、Thousand Oaks、CA)、PENLET(商標)(Haselmeier、Stuttgart、Germany)、EPIPEN(Dey,L.P.)、およびHUMIRA(商標)ペン(Abbott Labs、Abbott Park IL)が挙げられる。
【0066】
特定の状況において、医薬組成物は、制御放出システムで送達することができる。一実施態様において、ポンプを使用することができる(Langer、上記;Sefton、1987、CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201を参照)。別の実施態様において、高分子材料を使用することができる;Medical Applications of Controlled Release、Langer and Wise(編)、1974、CRC Pres.、Boca Raton、Floridaを参照されたい。さらに別の実施態様において、制御放出システムは、組成物の標的の近位に設置することができ、したがって、全身用量の画分のみを必要とする(例えば、Goodson、1984、Medical Applications of Controlled Release、上記、第2巻、115~138頁を参照)。他の制御放出システムは、Langer、1990、Science 249:1527~1533による総論で論じられている。
【0067】
注射製剤としては、静脈内、皮下、皮内および筋肉内注射、点滴などのための剤形を挙げることができる。これらの注射製剤は、公知の方法によって製造することができる。例えば、注射製剤は、例えば、慣習的に注射剤に使用される滅菌水性媒体または油性媒体中に、上述される抗体またはその塩を溶解させること、懸濁すること、または乳化することによって製造することができる。注射剤のための水性媒体として、例えば、生理的食塩水、グルコースおよび他の補助剤を含有する等張溶液などがあり、これらは、適切な可溶化剤、例えばアルコール(例えば、エタノール)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(硬化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50mol)付加物)]などと組み合わせて使用することができる。油性媒体として、例えば、ゴマ油、ダイズ油などが採用され、これらは、可溶化剤、例えば安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと組み合わせて使用することができる。このようにして製造された注射剤は、適切なアンプル中に充填することができる。
【0068】
有利には、上述した経口または非経口の使用のための医薬組成物は、活性成分の用量に適合させた単位用量の剤形に製造される。このような単位用量の剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤などが挙げられる。
【0069】
本発明に関して使用することができる抗IL-4R抗体を含む例示的な医薬組成物は、例えば、米国特許第8,945,559号に開示されている。
【0070】
投与レジメン
本発明は、週約4回、週2回、週1回、2週毎に1回、3週毎に1回、4週毎に1回、5週毎に1回、6週毎に1回、8週毎に1回、12週毎に1回の投与頻度で、または治療応答が達成される限りそれより低い頻度で、IL-4R阻害剤を対象に投与することを含む方法を包含する。抗IL-4R抗体の投与を含む特定の実施態様において、約25mg、50mg、150mg、200mg、または300mgの量での週1回の投与が採用される。抗IL-4R抗体の投与を含む特定の実施態様において、約25mg、50mg、150mg、200mg、または300mgの量での2週毎に1回の投与が採用される。
【0071】
本発明の特定の実施態様によれば、所定の期間にわたりIL-4R阻害剤の複数の用量が対象に投与されてもよい。本発明のこの態様による方法は、IL-4R阻害剤の複数の用量を対象に逐次的に投与することを含む。本明細書で使用される場合、「逐次的に投与すること」は、IL-4R阻害剤の各用量が、異なるタイムポイントで、例えば、予め決定されたインターバル(例えば、数時間、数日、数週または数カ月)で隔てられた異なる日に、対象に投与されることを意味する。本発明は、患者に、IL-4R阻害剤の単一の初回用量、それに続いてIL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の二次用量、場合によりそれに続いてIL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の三次用量を逐次的に投与することを含む方法を包含する。
【0072】
用語「初回用量」、「二次用量」、および「三次用量」は、IL-4R阻害剤の投与の時系列を指す。したがって、「初回用量」は、処置レジメンの開始時に投与される用量(「ベースラインの用量」とも称される)であり;「二次用量」は、初回用量の後に投与される用量であり;「三次用量」は、二次用量の後に投与される用量である。初回、二次、および三次用量は全て、同じ量のIL-4R阻害剤を含有していてもよいが、一般的に、投与頻度に応じて互いに異なっていてもよい。しかしながら、特定の実施態様において、初回、二次および/または三次用量に含有されるIL-4R阻害剤の量は、処置の経過中において互いに異なる(例えば、必要に応じて多くまたは少なく調整される)。特定の実施態様において、初回用量は、第1の量の抗体またはその抗原結合フラグメントを含み、1つまたはそれ以上の二次用量はそれぞれ、第2の量の抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。一部の実施態様において、抗体またはそのフラグメントの第1の量は、第2の量の抗体またはその抗原結合フラグメントの1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、または5倍である。特定の実施態様において、1つまたはそれ以上の(例えば、1、2、3、4、または5つの)用量は、「負荷用量」として処置レジメンの開始時に投与され、それに続いてより低い頻度で後続の用量(例えば、「維持用量」)が投与される。例えば、IL-4R阻害剤は、約300mgまたは約600mgの負荷用量で、それに続いて約25mgから約400mgの1つまたはそれ以上の維持用量で、それを必要とする患者に投与されてもよい。一実施態様において、初回用量および1つまたはそれ以上の二次用量はそれぞれ、10mgから600mgのIL-4R阻害剤、例えば、100mgから400mgのIL-4R阻害剤、例えば、10mg、25mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、400mgまたは500mgのIL-4R阻害剤を包含する。
【0073】
1つの例示的な本発明の実施態様において、各二次および/または三次用量は、直前の用量の1から14週(例えば、1週、1週半、2週、2週半、3週、3週半、4週、4週半、5、5週半、6週、6週半、7週、7週半、8週、8週半、9週、9週半、10週、10週半、11週、11週半、12週、12週半、13週、13週半、14週、14週半、またはそれより多くの週)の後に投与される。語句「直前の用量」は、本明細書で使用される場合、一連の複数回投与におけるその次の用量の投与の前に患者に投与されるIL-4R阻害剤の用量であって、その間に介在する用量がないことを意味する。
【0074】
本発明のこの態様による方法は、あらゆる数のIL-4R阻害剤の二次および/または三次用量を患者に投与することを含んでいてもよい。例えば、特定の実施態様において、1つのみの単一の二次用量が患者に投与される。他の実施態様において、2つまたはそれより多くの(例えば、2、3、4、5、6、7、8つ、またはそれより多くの)二次用量が患者に投与される。同様に、特定の実施態様において、1つのみの単一の三次用量が患者に投与される。他の実施態様において、2つまたはそれより多くの(例えば、2、3、4、5、6、7、8つ、またはそれより多くの)三次用量が患者に投与される。
【0075】
複数の二次用量を含む実施態様において、各二次用量は、他の二次用量と同じ頻度で投与されてもよい。例えば、各二次用量は、直前の用量の1から6週間後に患者に投与されてもよい。同様に、複数の三次用量を含む実施態様において、各三次用量は、他の三次用量と同じ頻度で投与されてもよい。例えば、各三次用量は、直前の用量の2から4週間後に患者に投与されてもよい。代替として、二次および/または三次用量が患者に投与される頻度は、レジメンの経過中に変更してもよい。
【0076】
本発明の方法は、特定の実施態様によれば、外用コルチコステロイド(TCS)をIL-4R阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体)と組み合わせて対象に投与することを含む。本明細書で使用される場合、表現「と組み合わせて」は、TCSが、IL-4R阻害剤の前に、その後に、またはそれと並行して投与されることを意味する。用語「と組み合わせて」はまた、IL-4R阻害剤およびTCSの逐次投与または同時投与も包含する。
【0077】
例えば、TCSが、IL-4R阻害剤の「前に」投与される場合、IL-4R阻害剤の投与から、72時間より長い期間、約72時間、約60時間、約48時間、約36時間、約24時間、約12時間、約10時間、約8時間、約6時間、約4時間、約2時間、約1時間、約30分、約15分または約10分前に投与することができる。IL-4R阻害剤の「後に」投与される場合、TCSは、IL-4R阻害剤の投与から、約10分、約15分、約30分、約1時間、約2時間、約4時間、約6時間、約8時間、約10時間、約12時間、約24時間、約36時間、約48時間、約60時間、約72時間、または72時間より長い期間後に投与することができる。IL-4R阻害剤と「並行する」投与は、TCSが、別個の剤形で、IL-4R阻害剤投与から5分未満以内に(IL-4R阻害剤投与の前に、その後に、またはそれと同時に)対象に投与されるか、またはTCSとIL-4R阻害剤の両方を含む単一の組み合わされた投薬製剤として対象に投与されることを意味する。
【0078】
投薬
本発明の方法に従って対象に投与されるIL-4R阻害剤の量(例えば、抗IL-4R抗体)は、一般的に、治療有効量である。本明細書で使用される場合、語句「治療有効量」は、(a)1つまたはそれ以上のAD関連パラメーター(本明細書の他所に記載した通り)における改善;および/または(b)アトピー性皮膚炎の1つまたはそれ以上の症状または徴候における検出可能な改善の1つまたはそれ以上をもたらすIL-4R阻害剤の量を意味する。本発明の文脈において、「治療有効量」は、(a)EASIにおけるベースラインからの少なくとも70%の減少;(b)そう痒における少なくとも30%の低減;(c)IGAにおけるベースラインからの2ポイント以上の減少;(d)NRSにおけるベースラインからの4ポイント以上の減少;(e)スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)の皮膚定着における減少;(f)IgEまたはTARCなどのAD関連バイオマーカーのレベルにおける低減;(g)TCSの使用における少なくとも20%の低減;および/または(h)再燃またはADの増悪の数における低減の1つまたはそれ以上をもたらすIL-4R阻害剤の量を包含する。
【0079】
抗IL-4R抗体のケースにおいて、免疫学的に有効な量は、約0.05mgから約600mg、例えば、約0.05mg、約0.1mg、約1.0mg、約1.5mg、約2.0mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、約240mg、約250mg、約260mg、約270mg、約280mg、約290mg、約300mg、約310mg、約320mg、約330mg、約340mg、約350mg、約360mg、約370mg、約380mg、約390mg、約400mg、約410mg、約420mg、約430mg、約440mg、約450mg、約460mg、約470mg、約480mg、約490mg、約500mg、約510mg、約520mg、約530mg、約540mg、約550mg、約560mg、約570mg、約580mg、約590mg、または約600mgの抗IL-4R抗体であり得る。特定の実施態様において、10mg、25mg、50mg、75mg、150mg、または300mgの抗IL-4R抗体が対象に投与される。
【0080】
個々の用量中に含有されるIL-4R阻害剤の量は、対象の体重1キログラム当たりの抗体のミリグラムの単位(すなわち、mg/kg)で表すことができる。例えば、IL-4R阻害剤は、対象の体重1kg当たり約0.0001から約100mgの用量で対象に投与されてもよい。
【0081】
選択された実施態様
実施態様1において、本発明は、重度のアトピー性皮膚炎(AD)を処置する方法であって、(a)重度のADを有する患者を選択する工程であって、患者は、全身性免疫抑制剤療法に対して耐性であるか、不十分な応答性を有するか、または不耐性であり、および/または前記療法が得策ではない、工程;および(b)それを必要とする患者に、インターロイキン4受容体(IL-4R)阻害剤の1つまたはそれ以上の用量を投与する工程を含む方法を包含する。
【0082】
実施態様2において、本発明は、療法が、患者に対する安全性および健康上のリスクに加えて最適下限の効能のために得策ではない、実施態様1に記載の方法を包含する。
【0083】
実施態様3において、本発明は、全身性免疫抑制剤は、シクロスポリンA、メトトレキセート、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、全身性コルチコステロイド、およびインターフェロン-ガンマからなる群から選択される、実施態様1または2に記載の方法を包含する。
【0084】
実施態様4において、本発明は、全身性免疫抑制剤は、シクロスポリンA(CSA)である、実施態様3に記載の方法を包含する。
【0085】
実施態様5において、本発明は、患者は、以前にCSAに曝露されておらず、医療上の禁忌、CSAまたは賦形剤に対する過敏症、CSAとの併用が禁止された付随的な薬物療法の使用、CSAによって誘発された腎臓損傷に対する感受性の増加、CSAによって誘発された肝臓傷害に対する感受性の増加、および重篤な感染症のリスクの増加からなる群から選択される状態のためにCSA療法が得策ではない、実施態様4に記載の方法を包含する。
【0086】
実施態様6において、本発明は、患者は、以前にCSAに曝露されており、不耐性、許容できない毒性、不十分な応答、患者の体重1kg当たり5mg/日より高い用量でCSAが必要なこと、および1年を超える持続時間にわたりCSA投与が必要なことからなる群から選択される状態のためにCSA療法が得策ではない、実施態様4に記載の方法を包含する。
【0087】
実施態様7において、本発明は、患者はこれまでに、シクロスポリンA、IgE阻害剤、TNFアルファ阻害剤、CD11a阻害剤、CD20阻害剤、抗生物質、外用コルチコステロイド、経口コルチコステロイド、カルシニューリン阻害剤および光線療法からなる群から選択される治療剤で処置されたことがある、実施態様1~3のいずれか一項に記載の方法を包含する。
【0088】
実施態様8において、本発明は、そう痒を処置または低減する方法であって、(a)重度のADを有する患者を選択する工程であって、患者は、全身性免疫抑制剤療法に対して耐性であるか、不十分な応答性を有するか、または不耐性である、工程;および(b)IL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量を、それを必要とする患者に投与する工程を含む、方法を包含する。
【0089】
実施態様9において、本発明は、全身性免疫抑制剤は、シクロスポリンA、メトトレキセート、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、全身性コルチコステロイド、およびインターフェロン-ガンマからなる群から選択される、実施態様8に記載の方法を包含する。
【0090】
実施態様10において、本発明は、全身性免疫抑制剤は、シクロスポリンA(CSA)である、実施態様8または9に記載の方法を包含する。
【0091】
実施態様11において、本発明は、患者は、重度のADを有する、実施態様8~10のいずれか一項に記載の方法を包含する。
【0092】
実施態様12において、本発明は、IL-4R阻害剤の投与は、患者のそう痒におけるベースラインからの少なくとも30%の低減をもたらす、実施態様8~11のいずれか一項に記載の方法を包含する。
【0093】
実施態様13において、本発明は、重度のADを処置する方法であって、(a)重度のADを有する患者を選択する工程であって、患者は、これまでに、シクロスポリンA、IgE阻害剤、TNFアルファ阻害剤、CD11a阻害剤、CD20阻害剤、抗生物質、IL-4R阻害剤、デュピルマブ、全身性免疫抑制剤、外用コルチコステロイド、経口コルチコステロイド、カルシニューリン阻害剤および光線療法からなる群から選択される治療で処置されたことがある、工程;および(b)IL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量を、それを必要とする患者に投与する工程を含む、方法を包含する。
【0094】
実施態様14において、本発明は、患者は、治療に対して耐性であるか、不十分な応答性を有するか、または不耐性である、実施態様13に記載の方法を包含する。
【0095】
実施態様15において、本発明は、療法は、患者に対する安全性および健康上のリスクに加えて最適下限の効能のために得策ではない、実施態様13または14に記載の方法を包含する。
【0096】
実施態様16において、本発明は、1つまたはそれ以上の用量は、50~600mgのIL-4R阻害剤を含む、実施態様1~15のいずれか一項に記載の方法を包含する。
【0097】
実施態様17において、本発明は、1つまたはそれ以上の用量は、300mgのIL-4R阻害剤を含む、実施態様1~15のいずれか一項に記載の方法を包含する。
【0098】
実施態様18において、本発明は、IL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量は、週1回、2週毎に1回、3週毎に1回、または4週毎に1回投与される、実施態様16または17に記載の方法を包含する。
【0099】
実施態様19において、本発明は、IL-4R阻害剤は、初回用量で、それに続いて1つまたはそれ以上の二次用量で投与される、実施態様1~15のいずれか一項に記載の方法を包含する。
【0100】
実施態様20において、本発明は、初回用量は、50~600mgのIL-4R阻害剤を含み、各二次用量は、25~400mgのIL-4R阻害剤を含む、実施態様19に記載の方法を包含する。
【0101】
実施態様21において、本発明は、初回用量は、600mgのIL-4R阻害剤を含み、各二次用量は、300mgのIL-4R阻害剤を含む、実施態様20に記載の方法を包含する。
【0102】
実施態様22において、本発明は、各二次用量は、直前の用量の1週間後に投与される、実施態様19または20に記載の方法を包含する。
【0103】
実施態様23において、本発明は、各二次用量は、直前の用量の2週間後に投与される、実施態様19または20に記載の方法を包含する。
【0104】
実施態様24において、本発明は、IL-4R阻害剤の投与は、(a)湿疹面積および重症度指標(EASI)スコアにおけるベースラインからの少なくとも75%の減少;(b)そう痒数値評価スケール(NRS)スコアにおけるベースラインからの少なくとも30%の減少;(c)アトピー性皮膚炎の病変体表面積(BSA)スコアにおけるベースラインからの少なくとも25%の減少;(d)医師による包括的評価(IGA)スコアにおけるベースラインからの2ポイント以上の減少;および(e)NRSスコアのベースラインからの3ポイント以上の減少からなる群から選択される少なくとも1つのAD関連パラメーターにおける改善をもたらす、実施態様1~23のいずれか一項に記載の方法を包含する。
【0105】
実施態様25において、本発明は、IL-4R阻害剤の投与は、包括的個人徴候スコア(GISS)、患者向け湿疹尺度(POEM)、患者評価式の病院不安およびうつ病スケール(HADS)および患者報告式の皮膚疾患の生活の質指標(DLQI)からなる群から選択される少なくとも1つの患者関連のアウトカムにおける改善をもたらす、実施態様1~24のいずれか一項に記載の方法を包含する。
【0106】
実施態様26において、本発明は、IL-4R阻害剤の投与は、患者における再燃または増悪の回数を減少させる、実施態様1~25のいずれか一項に記載の方法を包含する。
【0107】
実施態様27において、本発明は、IL-4R阻害剤は、皮下投与される、実施態様1~26のいずれか一項に記載の方法を包含する。
【0108】
実施態様28において、本発明は、IL-4R阻害剤は、第2の治療剤と同時に投与される、実施態様1~27のいずれか一項に記載の方法を包含する。
【0109】
実施態様29において、本発明は、第2の治療剤は、外用コルチコステロイド、カルシニューリン阻害剤、およびエモリエント剤からなる群から選択される、実施態様28に記載の方法を包含する。
【0110】
実施態様30において、本発明は、外用コルチコステロイドは、低い効力のTCS、中程度の効力のTCSおよび高い効力のTCSからなる群から選択される、実施態様29に記載の方法を包含する。
【0111】
実施態様31において、本発明は、患者によって使用される外用コルチコステロイドの量は、IL-4R阻害剤の第1の用量の投与後、徐々に低減される、実施態様30に記載の方法を包含する。
【0112】
実施態様32において、本発明は、患者によって使用される外用コルチコステロイドの量は、IL-4R阻害剤の第1の用量の投与後4週間で少なくとも約20%低減される、実施態様31に記載の方法を包含する。
【0113】
実施態様33において、本発明は、患者によって使用される外用コルチコステロイドの量は、IL-4R阻害剤の第1の用量の投与後4週間で約50%低減される、実施態様31または32に記載の方法を包含する。
【0114】
実施態様34において、本発明は、IL-4R阻害剤は、IL-4Rαに結合し、IL-4および/またはIL-13と、1型または2型IL-4受容体との相互作用を妨げる抗体またはその抗原結合フラグメントである、実施態様1~33のいずれか一項に記載の方法を包含する。
【0115】
実施態様35において、本発明は、抗体またはその抗原結合フラグメントは、IL-4およびIL-13と、1型および2型IL-4受容体の両方との相互作用を予防する、実施態様34に記載の方法を包含する。
【0116】
実施態様36において、本発明は、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)および配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む、実施態様34または35に記載の方法を包含する。
【0117】
実施態様37において、本発明は、抗体またはその抗原結合フラグメントは、3つのHCDR(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)および3つのLCDR(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含み、HCDR1は、配列番号3のアミノ酸配列を含み;HCDR2は、配列番号4のアミノ酸配列を含み;HCDR3は、配列番号5のアミノ酸配列を含み;LCDR1は、配列番号6のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号7のアミノ酸配列を含み;LCDR3は、配列番号8のアミノ酸配列を含む、実施態様34または35に記載の方法を包含する。
【0118】
実施態様38において、本発明は、HCVRは、配列番号1のアミノ酸配列を含み、LCVRは、配列番号2のアミノ酸配列を含む、実施態様37に記載の方法を包含する。
【0119】
実施態様39において、本発明は、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、実施態様36または37に記載の方法を包含する。
【0120】
実施態様40において、本発明は、IL-4R阻害剤は、デュピルマブまたはその生物学的に同等なものである、実施態様1~38のいずれか一項に記載の方法を包含する。
【0121】
実施態様41において、本発明は、抗体またはその抗原結合フラグメントは、MEDI9314またはAMG317である、実施態様34に記載の方法を包含する。
【0122】
実施態様42において、本発明は、中程度から重度または重度のアトピー性皮膚炎(AD)を処置する、またはAD関連パラメーターを改善するための方法であって、(a)中程度から重度または重度のADを有する患者を選択する工程であって、患者は:(i)患者が、4のベースラインにおけるIGAスコアを有すること;(ii)患者が、3以上のベースラインにおけるIGAスコアを有すること;(iii)患者が、6歳から18歳の間であること;(iv)患者が、外用AD療法で制御不能な疾患を有すること;(v)患者が、外用AD療法への不十分な応答の確認された病歴を有するか、または有害な副作用もしくは安全性のリスクのために、患者にとって外用療法が得策ではないこと;(vi)患者が、これまでに、外用コルチコステロイド、外用カルシニューリン阻害剤、抗ヒスタミン、エモリエント剤、皮膚科学的な治療剤、全身性グルココルチコイド、非ステロイド系全身性免疫抑制剤、シクロスポリンA、アザチオプリン、紫外線療法、および光線療法からなる群から選択される薬物療法または手順で処置されたことがあること;ならびに(vii)患者が、食物アレルギー、喘息、季節性アレルギー、アレルギー性鼻炎、ハウスダストアレルギー、およびアレルギー性結膜炎からなる群から選択される併存する疾患または障害を有することからなる群から選択される特性を有する、工程;および(b)治療有効量のIL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量を、それを必要とする患者に投与する工程を含む、方法を包含する。
【0123】
実施態様43において、本発明は、患者は、重度のADを有し、6歳から11歳の間であり、4のベースラインにおけるIGAスコアを有し、外用療法で制御不能な疾患を有する、実施態様42に記載の方法を包含する。
【0124】
実施態様44において、本発明は、IL-4R阻害剤は、実施態様34~41のいずれか一項に記載の抗IL-4R抗体である、実施態様42または43に記載の方法を包含する。
【0125】
実施態様45において、本発明は、IL-4R阻害剤の各用量は、患者の体重1kg当たり1、2、3、4または5mgを含み、各用量は、直前の用量の1~4週間後に投与される、実施態様42~44のいずれか一項に記載の方法を包含する。
【0126】
実施態様46において、本発明は、各用量は、20~600mgのIL-4R阻害剤を含み、各用量は、直前の用量の1~4週間後に投与される、実施態様42~44のいずれか一項に記載の方法を包含する。
【0127】
実施態様47において、本発明は、IL-4R阻害剤の投与は、(i)IL-4R阻害剤の第1の用量の投与後の2週目までの、EASIスコアにおけるベースラインから30%より多くの低減;(ii)そう痒NRSにおけるベースラインから50%より多くの低減;および(iii)IL-4R阻害剤の第1の用量の投与後の12週目までの、0または1のIGAスコアが達成されるようなIGAスコアにおけるベースラインからの低減からなる群から選択される作用をもたらす、実施態様42~46のいずれか一項に記載の方法を包含する。
【0128】
実施態様48において、本発明は、IL-4R阻害剤は、外用コルチコステロイド、外用カルシニューリン阻害剤、抗ヒスタミン、エモリエント剤、抗細菌性の治療剤、および閉塞性気道疾患のための治療剤からなる群から選択される第2の治療剤と組み合わせて投与される、実施態様42~47のいずれか一項に記載の方法を包含する。
【実施例】
【0129】
以下の実施例は、当業者にどのように本発明の方法および組成物を作製および使用するかの十分な開示と説明が提供されるように記載されたものであり、発明者らが発明と考えているものの範囲を限定することは意図されない。使用される数値(例えば、量、温度など)に関する精度を保証する努力がなされてきたが、ある程度の実験誤差および偏差を考慮すべきである。別段の指定がない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度はセ氏度であり、圧力は大気圧であるかまたはそれに近い。
【実施例1】
【0130】
シクロスポリンAで適切に制御されないまたはそれに対して不耐性であるか、またはこの処置が医学上望ましくない場合の重度のアトピー性皮膚炎(AD)を有する成人患者における抗IL-4R抗体の臨床試験
これは、32週の二重盲検のランダム化プラセボ対照並行群間比較研究であり、シクロスポリンA(CSA)が、十分な効能を実証されていないこと、許容できない副作用を有していたこと、またはCSAの開始が医学上望ましくないことのいずれかを有する重度のADを有する成人に投与されるデュピルマブの効能、安全性および忍容性を確認するためのものである。
【0131】
デュピルマブは、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖;配列番号1/2を含むHCVR/LCVRアミノ酸配列の対;ならびに配列番号3~8を含む重鎖および軽鎖CDR配列を含む、完全ヒト抗IL-4R抗体である。
【0132】
この研究は、2週のスクリーニング期間、2週の中程度の効力のTCSの標準化期間、16週の処置期間、および12週の安全性追跡調査期間を含む。この研究は、これまでにTCSに対する不十分な応答も実証されたこれらの患者におけるデュピルマブ処置を評価するためになされる。全ての患者が、この重度の集団の標準的治療処置を反映するために、バックグラウンドの同時療法として同時の中程度の効力のTCSを受けた。
【0133】
研究の目的
研究の第一の目的は、経口CSAで適切に制御されないか、もしくはそれに対して不耐性であるか、またはこの処置がその時点で医学上望ましくない場合の重度のADを有する成人患者において、同時の外用コルチコステロイド(TCS)と共に投与されるプラセボと比較した、デュピルマブの2用量レジメンの効能を評価することである。
【0134】
研究の第二の目的は、経口CSAで適切に制御されないか、またはそれに対して不耐性であるか、またはこの処置がその時点で医学上望ましくない場合の重度のADを有する成人患者において、TCSと同時に投与されるプラセボと比較した、デュピルマブの2用量レジメンの安全性および忍容性を評価することである。
【0135】
研究設計
この研究は、2週のスクリーニング期間、2週の中程度の効力のTCSの標準化期間、16週の処置期間、および12週の安全性追跡調査期間を含む。この研究は、これまでにTCSに対する不十分な応答も実証されたこれらの重度のADを有する患者におけるデュピルマブ処置を評価するためになされる。全ての患者が、この重度の集団の標準的治療処置を反映するために、バックグラウンドの同時療法として同時の中程度の効力のTCSを受けた。
【0136】
インフォームドコンセントを提供した後、患者を、スクリーニング来院時の研究の適格性について評価した。患者は、ランダム化の前に、-28日目から-15日目の間にスクリーニングを受けた。この2週のスクリーニング期間中、TCS処置は、医師の裁量でなされた。
【0137】
-14日目から始めて、全ての患者が標準化したTCS処置レジメンを開始させ、標準化した中程度の効力のレジメンを処置期間の最後(16週目)まで継続した。12週の経過観察期間中、患者は、耐えられないAD疾患活動性のために、医師の裁量でTCSを受け続けることができた。
【0138】
患者はまた、モイスチャライザーを、ランダム化(ベースライン/1日目)の直前に少なくとも連続7日間、少なくとも1日2回適用することも必要であり、研究の間中、少なくとも1日2回を継続した。
【0139】
ベースライン時(1日目)の適格基準を満たし続けている患者は、評価を受け、1:1:1の比率でランダム化されて、週1回(qw)または2週毎に1回(q2w)のいずれかで、デュピルマブ300mgの皮下(SC)注射(1日目の600mgのSC負荷用量の後)、または負荷用量のためのプラセボを含めて適合する注射可能なプラセボを受けた。デュピルマブが投与されない週(q2wレジメンで)の間、患者は、注射可能なプラセボを受けた。盲検化を維持するために、全ての患者は、1日目から16週目(処置期間)の各週に注射(活性またはプラセボ)を受けた。
【0140】
患者を、1)疾患重症度のベースラインの評価(医師による包括的評価[IGA]3対IGA4)、および2)これまでにCSAに曝露されていないという確認された病歴と、その時点でCSA処置の候補ではないこと、または継続または再開すべきではないこれまでのCSA曝露によって階層化した。
【0141】
処置期間の最後に、安全性に関して、患者を追加の12週間追跡調査した。
【0142】
研究集団
重度のADを有する成人、男性および女性の患者は、その疾患がTCSで適切に制御できない患者、経口CSAで適切に制御されないか、またはそれに対して不耐性である患者、またはCSA処置が、その時点で、以下に従って医師により医学上望ましくないとみなされた場合の患者であり得る:
(A)これまでに、CSAに曝露されていないこと(このような患者は、その時点で、以下の理由からCSA処置の候補ではない):
・医療上の禁忌;
・CSAの活性物質または賦形剤への過敏症;
・CSAに干渉する薬物療法の同時の使用;または
・CSAによって誘発された腎臓損傷に対する感受性の増加、重篤な感染症のリスクの増加など。
または
(B)これまでに、CSAに曝露されており、このような患者は、以下の理由から、CSAを継続または再開すべきではない:
・以前の不耐性および/または許容できない毒性
・不十分な応答、これは、最長6週間の高用量(5mg/kg/日)の後に維持用量(2から3mg/kg/日)に漸減させたCSAにおけるADの再燃、または維持用量で最短3カ月の後の再燃と定義される。再燃は、療法の漸増を引き起こす徴候および/または症状の増加と定義され、ここで療法の漸増とは、CSA用量の増加、より高い効力のTCSクラスへのスイッチ、または別の経口免疫抑制薬の開始であり得る;または
・処方情報で特定されたものを超える用量または持続時間でCSAを要すること。
【0143】
試験対象患者基準:患者は、研究への組み入れに適格であるために、以下の基準を満たす必要があった:
(1)効能のあるTCSでの処置が指示された重度の慢性ADを有する(米国皮膚科学会の合意基準[Eichenfieldら、2014、J.Am.Acad.Dermatol.70:338~351]に従って)、18歳またはそれ以上の男性または女性;
(2)スクリーニングおよびベースラインの来院時における湿疹面積重症度指標(EASI)スコアが20以上であること(Leshemら、2015、doi:10.1111/bjd.13662[印刷に先行して電子出版された])。最初のスクリーニング来院時のEASIスコアが18または19のいずれかである場合、最初のスクリーニングの48時間以内にEASIスコアの1回の再評価が許容される;
(3)スクリーニングおよびベースラインの来院時におけるIGAスコアが3以上(0から4のIGAスケールで);
(4)スクリーニングおよびベースラインの来院時におけるAD関与の体表面積(BSA)が10%以上;
(5)以下のいずれかの医師による確認された病歴:
(A)これまでに、CSAに曝露されておらず、その時点で、以下の理由からCSA処置の候補ではない:
・医療上の禁忌(例えば、薬物療法時における制御不能な高血圧)、もしくは
・禁止された同時の薬物療法(例えば、スタチン、ジゴキシン、マクロライド系抗生物質、バルビツール薬、抗発作薬、非ステロイド性抗炎症薬、利尿薬、アンギオテンシン転換酵素阻害剤、セイヨウオトギリソウなど)の使用、もしくは
・CSAによって誘発された腎臓損傷(クレアチニンの上昇)および肝臓傷害(機能試験値の上昇)に対する感受性の増加、もしくは
・重篤な感染症のリスクの増加、もしくは
・CSA活性物質または賦形剤への過敏症、または
(B)これまでに、CSAに曝露されており、以下の理由からCSA処置を継続または再開すべきではない場合:
・不耐性および/または許容できない毒性(例えば、クレアチニンの上昇、肝機能試験値の上昇、制御不能な高血圧、感覚異常、頭痛、吐き気、多毛症など)、もしくは
・CSAに対する不十分な応答(最長6週間の高用量[5mg/kg/日]の後に維持用量[2から3mg/kg/日]に漸減させたCSAにおけるADの再燃、または維持用量で最短3カ月の後の再燃と定義される)。再燃は、療法の漸増を引き起こす徴候および/または症状の増加と定義され、ここで療法の漸増とは、用量の増加、より高い効力のTCSクラスへのスイッチ、または別の全身性非ステロイド系免疫抑制薬の開始であり得る;もしくは
・処方情報で特定されたものを超える5mg/kg/日より高い用量または持続時間(>1年)でCSAを要すること;
(6)TCSでの処置に対して不十分な応答の確認された近年の(スクリーニング来院前の6カ月以内の)病歴。
注釈:不十分な応答は、少なくとも28日間または製品の処方情報により推奨された最大持続時間(例えば、極めて高い効能のあるTCSの場合、14日)のどちらか短い方の期間にわたり適用された、中程度からより高い効力のTCSの1日1回のレジメン(必要に応じて±TCI)での処置にもかかわらず、寛解または低い疾患活動性状態(0=解消から2=軽度のIGAに匹敵)を達成し維持できないことと定義される;
(7)外用エモリエント剤(モイスチャライザー)の安定な用量を、ベースラインの来院の直前に少なくとも連続7日間、1日2回適用されたこと;
(8)診療施設への来院および研究関連の手順に応じる意思がありそれが可能であること;
(9)署名されたインフォームドコンセントを提出すること;および
(10)研究関連の質問票を理解し全ての記入が可能であること。
【0144】
除外基準:以下の基準のいずれかを満たす患者を研究から除外した:(1)先行のデュピルマブ臨床研究への参加;(2)スクリーニング前の8週間以内または5半減期(既知の場合)以内のいずれか長い方における被験薬での処置;(3)コルチコステロイドまたは研究で使用されるTCS製品に含有される他のあらゆる成分に対する過敏症および/または不耐性;(4)スクリーニング前の4週間以内における、全身性CSA、全身性コルチコステロイド、または光線療法、およびスクリーニング前の8週間以内における、アザチオプリン(AZA)、メトトレキセート(MTX)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、またはヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤;(5)スクリーニング来院前の1週間以内におけるTCIでの処置;(6)以下のような生物製剤での処置:(a)スクリーニング来院前の6カ月以内、またはリンパ球数が正常に戻るまでのいずれか長い方における、これらに限定されないが、リツキシマブなどのあらゆる細胞枯渇剤;(b)スクリーニング来院前の5半減期(既知の場合)または16週間以内のいずれか長い方における、他の生物製剤;(7)ベースラインの来院時に、総表面病変の30%以上が、中程度の効力のTCSで安全に処置できない薄皮の領域(例えば、顔、頸部、間擦領域、生殖器領域、皮膚萎縮の領域)にあること;(8)スクリーニング期間中の、処方箋が必要なモイスチャライザー、またはセラミド、ヒアルロン酸、尿素、もしくはフィラグリン分解産物などの添加剤を含有するモイスチャライザーでのAD処置の開始(患者は、スクリーニング来院前に開始されている場合、このようなモイスチャライザーの安定な用量の使用を継続することができる);(9)スクリーニング来院の4週間以内における日焼けブース/パーラーの定期的な使用(1週間当たり2回より多くの訪問);(10)研究処置中のあらゆる禁止された薬物療法および手順の計画または予想された使用;(11)スクリーニング来院前の12週間以内における生きた(弱毒化した)ワクチンでの処置;(12)スクリーニング来院前の2週間以内における、全身性抗生物質、抗ウイルス剤、駆虫薬、抗原虫薬、または抗真菌剤での処置を必要とする活動性慢性または急性感染症、またはスクリーニング来院前の1週間以内における表皮の感染症。注釈:患者は、感染症が回復してから2週間後すぐに、スポンサーのメディカルモニターの許可を得て再スクリーニングすることができる;(13)免疫抑制の既知のまたは疑いのある病歴、例えば、感染症が回復したかどうかにかかわらず、医師の判断により、侵襲性日和見感染(例えば、結核[TB]、ヒストプラスマ症、リステリア症、コクシジオイデス症、ニューモシスチス症、アスペルギルス症)の病歴など;または異常に高頻度の、再発性の、または長期の感染;(14)以下のTB基準のいずれか1つの存在:(a)スクリーニング来院時における陽性のツベルクリン皮膚試験;(b)スクリーニング来院時における陽性の血液QuantiFERON(登録商標)-TBまたはT-スポット試験;または(c)先行のTB感染と一致する結果(例えば、これらに限定されないが、根尖瘢痕、根尖の線維症、または複数の石灰化肉芽腫など)を伴う、スクリーニング時またはスクリーニング来院前の3カ月以内における胸部X線(後前面および側面像)(放射線医学的な報告が利用可能でなければならない)。これは、非乾酪性の肉芽腫を包含しない。注釈:これらの3つのTB試験はいずれも、規制当局または倫理委員会によって必要なときのみ地域のガイドラインに従って国別に実行される;(15)スクリーニング時におけるヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の病歴または陽性のHIV血清反応;(16)スクリーニング来院時における陽性のB型肝炎表面抗原(HBsAg)、B型肝炎コア抗体(HBcAb)、またはC型肝炎抗体(HCV Ab);(17)ベースライン時における、研究薬物中止の基準として列挙されたいずれかの条件の存在;(18)研究の評価に干渉する可能性がある皮膚特徴の存在;(19)完全に処置された子宮頸の上皮内癌、完全に処置され回復した非転移性扁平上皮または皮膚の基底細胞癌を除いた、スクリーニング来院前の5年以内における悪性腫瘍の病歴;(20)ランダム化の前に臨床的および(必要に応じて)実験的評価によって活動性感染が除外されない限り、活動性内部寄生生物感染の診断;内部寄生生物感染の疑いまたはその高いリスク;(21)スクリーニング来院の2年以内におけるアルコールまたは薬物乱用の病歴;(22)医師の判断において研究への患者の参加に悪影響を与えると予想される重度の併存する疾患。例としては、これらに限定されないが、期待寿命が短い患者、制御不能な糖尿病を有する患者(ヘモグロビンA1c[HbA1c]≧9%)、心臓血管に関する状態を有する患者(例えば、ニューヨーク心臓協会の分類に従ってステージIIIまたはIVの心不全)、重度の腎臓の状態(例えば、透析患者)、肝胆道の状態(例えば、チャイルド-ピューのクラスBまたはC)、神経学的状態(例えば、脱髄疾患)、活動性の主要な自己免疫疾患(例えば、狼瘡、炎症性腸疾患、リウマチ様関節炎など)、神経炎症性疾患、他の重度の内分泌学的な、胃腸の、代謝の、肺の、またはリンパの疾患が挙げられる。この基準で除外される患者の個別の理由は研究文書に記載される(チャートノート、症例報告書[CRF]など);(23)医師の意見において、新しいおよび/または理解が不十分の疾患を示唆する可能性がある他のあらゆる医学的または精神状態(スクリーニング時の重要な実験値の異常を含む)は、この臨床試験への参加の結果として研究患者に不当なリスクをもたらす可能性があり、患者の参加を信頼できなくする可能性があり、または研究の評価に干渉する可能性がある。この基準で除外される患者の個別の理由は研究文書に記載される(チャートノート、CRFなど);(24)研究への患者の参加中の計画または予想された主要な外科手術;(25)患者が、調査チームのメンバーまたは患者の近親者であること;(26)妊娠したもしくは授乳中の女性、または研究中に妊娠または授乳する予定がある女性;および(27)生殖能があり性的に活発な場合、十分な避妊を使用する意思がない女性。
【0145】
研究処置
研究薬物:患者は、16週の処置期間中、デュピルマブ300mgのqw SC注射(1日目の600mgの負荷用量後)、またはデュピルマブ300mgのq2w SC注射(1日目の600mgの負荷用量後)のいずれかを受けた。デュピルマブが投与されない週(q2wレジメンで)の間、患者は、注射可能なプラセボを受けた。
【0146】
プラセボ:患者は、16週の処置期間中に、適合させたプラセボ(1日目のプラセボの「負荷用量」後)の注射を週1回受けた。
【0147】
バックグラウンド処置
外用コルチコステロイド:-14日目から始めて、全ての患者は、以下のガイドラインに従って、標準化したレジメンを使用してTCSでの処置を受ける必要があった:
・活動性病変を有する領域に中程度の効力のTCS1日1回を適用すること。
・低い効力のTCSが、薄皮の領域(顔、頸部、間擦、および生殖器領域、皮膚萎縮の領域など)に、または中程度の効力のTCSでの継続された処置が安全ではないとみなされる領域に1日1回使用されるべきである。
・局所または全身性のTCS毒性の徴候に関して患者をモニターし、必要に応じて処置を止めること。
【0148】
患者は、中程度の効力の場合、トリアムシノロンアセトニド0.1%クリームまたはフルオシノロンアセトニド0.025%軟膏を使用し、低い効力の場合、ヒドロコルチゾン1%クリームを使用することが推奨される。患者がこれらのステロイドのいずれかとの耐性の問題を有する場合、または一部の国でそれが市販されていない場合、それを研究参照マニュアルに記載される一覧からの同じ効力を有する製品で代用してもよい。TCSで処置された領域に、モイスチャライザーは、TCSが適用されないときに1日1回のみ適用されるべきである(すなわち、1日の間に同じ領域にモイスチャライザーとTCSを同時に使用しない)。例えば、午後にTCSを適用した場合、午後にTCSで処置された領域にモイスチャライザーを使用すべきではないが、午前中にその領域に適用される。モイスチャライザーは、TCSで処置されていない領域に、午前と午後に1日2回適用すべきである。
【0149】
研究中に使用される外用製品のタイプ、量、頻度、および効力は、自宅で、患者により薬物療法日記に記録される。患者は、16週目までに、各診療施設への来院時にTCSチューブを戻し、これらのチューブの重さを現場スタッフによって量り、使用されたTCSの実際の量を決定する。12週の安全性経過観察期間中、チューブの重さを量ることはもはや必要でなくなる。
【0150】
16週のプラセボ対照の研究処置期間中、中程度の効力のTCSの投与頻度は、4週毎に1回、以下のプロトコールで特定された漸減アルゴリズムにより、症状に基づき(IGAスコア)調整される:
【0151】
29日目(4週目)に:*1日1回(qd)投与の患者が0のIGAを達成する場合、患者は、57日目(8週目)まで1日おき(qod)の投与にスイッチし;*qd投与の患者が0のIGAを達成しない場合、患者は、57日目(8週目)までqdの投与を維持した。
【0152】
57日目(8週目)に:*qd投与の患者が0のIGAを達成する場合、患者は、85日目(12週目)までqod投与にスイッチし;*qd投与の患者が0のIGAを達成しない場合、患者は、85日目(12週目)までqdの投与を維持し;*qod投与の患者が0のIGAを維持する場合、患者は、85日目(12週目)まで週2回の投与にスイッチし;*qod投与の患者が0のIGAを維持しない場合、患者は、85日目(12週目)までqdの投与にスイッチした。
【0153】
85日目(12週目)に:*qd投与の患者が0のIGAを達成しない場合、患者は、113日目(16週目)までqdの投与を維持し;*qd投与の患者が0のIGAを達成する場合、患者は、113日目(16週目)までqod投与にスイッチし;*qod投与の患者が0のIGAを維持する場合、患者は、113日目(16週目)まで週2回の投与にスイッチし;*週2回の投与の患者が0のIGAを維持する場合、患者は、113日目(16週目)まで週2回の投与を維持し;*週2回の投与の患者が0のIGAを維持しない場合、患者は、113日目(16週目)までqod投与にスイッチした。
【0154】
エモリエント剤:全ての患者は、モイスチャライザー(エモリエント剤)を、ランダム化(ベースライン/1日目)の直前に少なくとも連続7日間、少なくとも1日2回適用し、研究の間中(全32週間)継続することが必要であった。しかしながら、皮膚乾燥の十分な評価を可能にするために、モイスチャライザーは、各診療施設への来院前の少なくとも8時間、このような評価のために指示された非病変皮膚の領域上に適用すべきではない。全てのタイプのモイスチャライザーが許容されるが、患者は、スクリーニング期間中または研究中に、処方箋が必要なモイスチャライザーまたは添加剤を含有するモイスチャライザーでの処置を開始させなくてもよい。患者は、スクリーニング来院前に開始されている場合、安定な用量の処方箋が必要なモイスチャライザーまたは添加剤を含有するモイスチャライザーの使用を継続してもよい。
【0155】
救済処置
医学上必要な場合(すなわち、耐えられないADの症状を制御するために)、ADの救済処置を研究患者に提供してもよく、このような処置は、少なくとも7日の外用処置後に適切に応答しない患者に対して、高い効力のTCSから開始して、必要な場合、全身薬物療法に漸増させるものである。
【0156】
研究エンドポイント
研究における一次エンドポイントは、16週目における湿疹面積および75の重症度指標(EASI)(ベースラインから75%以上の改善)を有する患者の比率である。
【0157】
二次エンドポイントは、以下の通りである:
【0158】
効能:・以前にCSAを使用していた患者に関して、16週目における75のEASI(ベースラインから75%以上の改善)を有する患者の比率;・16週目における、0または1のIGA(5ポイントのスケールで)およびベースラインからの2ポイント以上の低減を有する患者の比率;・そう痒数値評価スケール(NRS)におけるベースラインから16週目までの変化のパーセント;・16週目における、そう痒NRSが3以上の改善(低減)を有する患者の比率;・EASIスコアにおけるベースラインから16週目までの変化のパーセント;・体表面積(BSA)パーセントにおけるベースラインから16週目までの変化;・アトピー性皮膚炎評価スコア(SCORAD)におけるベースラインから16週目までの変化のパーセント;・16週目における50のSCORAD(ベースラインから50%以上の改善)を有する患者の比率;・包括的個人徴候スコア(GISS)(紅斑、浸潤/丘疹形成、表皮剥離、苔癬化)におけるベースラインから16週目までの変化のパーセント;・皮膚疾患の生活の質指標(DLQI)におけるベースラインから16週目までの変化;・患者向け湿疹尺度(POEM)におけるベースラインから16週目までの変化;・病院不安およびうつ病スケール(HADS)におけるベースラインから16週目までの変化;・そう痒NRSにおけるベースラインから2週目までの変化のパーセント;・16週目までのTCSの平均週1回の用量。
【0159】
安全性および忍容性:・処置中の期間にわたるベースラインからの全身処置を必要とする皮膚感染の処置中に発生した有害事象(TEAE)の発生率;・処置中の期間にわたるベースラインからの処置中に発生した重篤な有害事象(TESAE)の発生率;・処置中の期間にわたるベースラインからの処置中止に至るTEAEの発生率;・処置中の期間にわたるベースラインからのTEAEの全体的な発生率。
【0160】
手順および評価
全体的な安全性は、TEAE、バイタルサイン、身体検査、心電図(ECG)、および臨床的な安全性の実験室試験のモニター/評価によって評価される。
【0161】
他の尺度としては、薬物動態(PK)評価、デュピルマブに対する抗薬物抗体(ADA)出現の可能性、および調査試験が挙げられる。
【0162】
効能手順
研究中に様々なパラメーターを収集して、AD重症度の尺度、ADの同時処置の使用、および患者によって報告されたAD症状の尺度およびQOLなどのデュピルマブの効能/有効性を評価する。効能は、そう痒NRS、そう痒分類尺度、POEM、HADS、DLQI、欧州生活の質-5項目法(European Quality of Life-5 Dimensions:EQ-5D)、疾患の患者全般評価、処置の患者全般評価、喘息管理質問票(Asthma Control Questionnaire:ACQ-5)、副鼻腔アウトカム試験(Sino-Nasal Outcome Test:SNOT-22)、病気休暇/学校の休みの日数の評価、IGA、EASI、AD関与のBSA、GISSおよびSCORADを使用して評価される。
【0163】
そう痒NRS、そう痒分類尺度、POEM、HADS、DLQI、欧州生活の質-5項目法(EQ-5D)、疾患の患者全般評価、処置の患者全般評価、IGA、EASI、AD関与のBSA、GISSおよびSCORADは、その全体を本明細書に組み入れる米国公開特許公報第20140072583号に記載されている。
【0164】
Juniperの喘息管理質問票:JuniperのACQの5項目質問法は、喘息管理を評価するための認可された質問票である。質問票は、喘息の病歴を有し、(参加国で認可された翻訳が利用できるかどうかに基づき)質問票の提示に使用される言語を流暢に話す患者のサブセットにのみ適用される。
【0165】
副鼻腔アウトカム試験:SNOT-22は、QOLに対する慢性鼻副鼻腔炎の影響を評価するための認可された質問票である。質問票は、鼻粘膜および/または副鼻腔の慢性炎症状態(例えば、慢性鼻炎/鼻副鼻腔炎、鼻ポリープ、アレルギー性鼻炎)を有し、質問票の提示に使用される言語を流暢に話す患者のサブセットにのみ適用される。
【0166】
病気休暇/学校の休みの日数の評価:学校に採用または登録された患者は、最後の研究評価から、病気休暇/学校の休みの日数を報告することが求められる。
【0167】
包括的個人徴候スコア:ADの病変(紅斑、浸潤/丘疹形成、表皮剥離、および苔癬化)の個人の要素は、EASI重症度格付け基準を使用して4ポイントのスケール(0=なし~3=重度)で包括的に格付けされる(すなわち、それぞれ解剖学的な領域によってではなく全身に関して評価される)。
【0168】
探索的バイオマーカー試験
この研究で分析されるバイオマーカーは、TARCおよび血清総IgEである。これらは、AD関連バイオマーカーおよびデュピルマブ処置に対する応答のさらなる理解のための探索的評価である。胸腺および活性化制御ケモカインおよび総IgEは、Th2活性のマーカーであり、IL-4/13シグナル伝達の下流である。これらの分析物は、薬物のTh2活性および薬力学的作用の尺度として評価される。これらの結果は、薬物レベルでのデュピルマブ活性のモデリングに使用することもできる。胸腺および活性化制御ケモカインのレベルはまた、ADの疾患活動性および重症度とも密接に関連していたことから、効能の探索的マーカーとして評価される。これらのマーカーはまた、処置応答の予測において、それらの潜在的価値に関しても評価することができる。
【0169】
安全性の評価
有害事象および重篤な有害事象をモニターすることによって安全性を研究の間中評価した。
【0170】
有害事象(AE)は、医薬品が投与された対象または臨床調査対象におけるあらゆる不都合な医療上の出来事である。それゆえに、AEは、医薬(調査)製品に関連するとみなされるかどうかにかかわらず、あらゆる予後不良のおよび予期せぬ徴候(異常な検査所見を含む)、一時的に医薬品の使用に関連する症状または疾患であり得る。またAEは、一時的に研究薬物の使用に関連する既存の状態のあらゆる悪化(すなわち、頻度および/または強度のあらゆる臨床的に有意な変化);医師が臨床的に有意とみなした異常な検査所見;およびあらゆる不都合な医療上の出来事も包含する。
【0171】
重篤な有害事象(SAE)は、好ましくないあらゆる医療上の出来事であり、いずれかの用量で死に至るもの;生命を脅かすもの;治療のための入院または入院期間の延長が必要であるもの;永続的なまたは顕著な能力障害/機能不全をもたらすもの;先天異常/先天性欠陥であるもの;または重要な医学的事象であるものである。
【0172】
結果
研究期間の最後に、デュピルマブ投与は、経口シクロスポリンAで適切に制御されないか、またはそれに対して不耐性であるか、またはこの処置がその時点で医学上望ましくない場合の重度のADを有する患者において、重度および/または難治性ADを含むADを処置することが予測される。デュピルマブで処置された患者は、プラセボと比較して、少なくとも1つのAD関連パラメーターにおける有意な改善を示す。デュピルマブで処置された患者は、プラセボより最大50%少ないTCSを使用する。
【0173】
ベースラインの人口統計およびベースラインの疾患の特徴は処置グループ間で類似していた(表1)。
【0174】
【0175】
プラセボと比較して、両方のデュピルマブ用量レジメン(300mgのqw+TCS;300mgのq2w+TCS)は、AD、そう痒、生活の質および精神的健康の客観的徴候における改善を反映する複数の臨床アウトカムにわたりロバストな効能を実証した。両方のデュピルマブ用量レジメンに関して、16週目における一次エンドポイントが達成された。プラセボ+TCSと比較して、デュピルマブq2w+TCSは、そう痒数値評価スケール;睡眠不足に関するアトピー性皮膚炎評価スコアの視覚的アナログスケール;患者向け湿疹尺度;および皮膚疾患の生活の質指標によって測定したところ、患者によって報告された痒み、睡眠、皮膚症状、生活の質(QoL)および健康状態を顕著に改善した。表2に、SAPで特定されたエンドポイントの階層におけるエンドポイントに関する一次および二次効能結果を示す。
【0176】
【0177】
エンドポイントの順番を、SAPにおける事前に特定された階層試験の順番で追跡した。AE関連のエンドポイントを除き全ての二次エンドポイントが5%の有意水準で統計学的に有意であった。
【0178】
表3は、患者報告式のアウトカムおよびベースライン値に対する改善の一部を要約する。
【0179】
【0180】
【0181】
安全性:デュピルマブに加えて同時のTCSでの処置は、十分な忍容性が認められ、16週の処置期間中に許容できる安全性プロファイルを実証した。表4に、16週の処置期間中の選択されたAEを要約する。
【0182】
【0183】
研究中に死亡は起こらなかった。処置中に有害事象(TEAE)が発生した患者のパーセンテージは全ての処置グループにわたり類似していた。重篤な有害事象は、処置グループ間で均一に分布していた(各グループ中2つの事象)。組み合わされたデュピルマブで処置されたグループにおいて、プラセボと比較して重度のTEAEはほとんどなかった。デュピルマブでの処置は、感染率を増加させず、感染および侵襲における有害事象は全ての処置グループにおいて同等の率で生じた。組み合わされたデュピルマブで処置されたグループでは、プラセボと比較して皮膚感染もより少なかった。デュピルマブで処置されたグループにおいて、結膜炎の発生率がより高く、300mgのQWグループより300mgのQ2Wグループで、より多くの事象が起こった。唯一の事象は強度において重度であり、結膜炎のAEのための処置を中止した患者はいなかった。注射部位反応はデュピルマブグループにおいてより多くよく見られ、300mgのq2wグループより300mgのqwグループにおいてより高い率であった;重度のISRは見られなかった。
【0184】
結論
このデュピルマブ+TCS対プラセボ+TCSの16週の研究において、16週目におけるEASI-75の一次効能エンドポイントは、両方のデュピルマブ用量レジメンに関して満足できるものであった。16週目におけるEASI-75の応答率は、プラセボ+TCSグループにおいて29.6%、デュピルマブ300mgのq2w+TCS、およびデュピルマブ300mgのqw+TCSそれぞれにおいて62.6%、および59.1%であった。全ての事前に特定された主要な二次および他の二次効能エンドポイントは、デュピルマブ300mgのqw+TCSグループに関して、皮膚感染の発生率のエンドポイントまでも満足できるものであった。
【0185】
同時にTCSを使用したデュピルマブは、許容できる安全性プロファイルで全般的に十分な耐性を示した。
【0186】
CsAに対する不耐性または不十分な応答の病歴を有するか、またはCsAでの処置がそれ以外の理由で医学上得策ではない患者において、デュピルマブおよび同時のTCSは、TCS単独と比較して、許容できる安全性プロファイルで、患者報告式の痒み、睡眠、皮膚症状、およびQoLを顕著に改善した。
【実施例2】
【0187】
中程度から重度または重度のADを有する小児集団におけるデュピルマブの薬物動態、安全性および効能:フェーズ2aの臨床試験からの結果
この実施例は、中程度から重度のADを有する青年(12~17歳)および外用薬物療法によって制御不能な重度のADを有する子供(6~11歳)を包含するフェーズ2aの多施設非盲検漸増用量逐次コホート研究(NCT02407756)を記載する。患者は、2mg/kgまたは4mg/kgの単回投与の皮下のデュピルマブと8週間の経過観察、それに続いて4回の週1回の2mg/kgまたは4mg/kgの用量を受けた。
【0188】
研究の目的
研究の第一の目的は、中程度から重度のAD(12歳以上18歳未満の青年)または重度のAD(6歳以上12歳未満の子供)を有する小児患者におけるデュピルマブの安全性およびPKを特徴付けることであった。研究の第二の目的は、中程度から重度のAD(12歳以上18歳未満の青年)または重度のAD(6歳以上12歳未満の子供)を有する小児患者におけるデュピルマブの免疫原性および効能を調査することであった。
【0189】
研究設計
これは、外用処置によって適切に制御されない中程度から重度のAD(12歳以上18歳未満の青年)または重度のAD(6歳以上12歳未満の子供)を有する小児患者における皮下投与される(SC)デュピルマブの単回投与および反復用量の安全性、忍容性、薬物動態(PK)、免疫原性、および効能を調査するフェーズ2aの多施設非盲検漸増用量逐次コホート研究として実行された。
【0190】
2つの逐次漸増SC用量コホート:300mgの最大用量までの用量コホート1(2mg/kg)および用量コホート2(4mg/kg)を計画した。各用量コホートにおいて、およそ36から40人の患者が、2つの年齢のサブセット:サブセットA(12歳以上18歳未満の青年)およびサブセットB(6歳以上12歳未満の子供)に登録されるように計画された。登録および研究投与を、コホート1A(2mg/kg、若年層の年齢のサブセット)から開始し、順次、コホート1B(2mg/kg、子供の6歳以上12歳未満のサブセット)、コホート2A(4mg/kg、若年層の年齢のサブセット)、およびコホート2B(4mg/kg、子供の6歳以上12歳未満サブセット)に進めた;前のコホートからのデータの安全性の調査は、次のコホートに進む前に実行した。
【0191】
この研究は、スクリーニング期間(-35日目から-1日目)、ベースラインの来院、パートA(単回投与処置とそれに続く8週のやや密集したPKサンプリング期間を包含する)、およびパートB(4週の反復用量処置期間[4回の週1回の用量]とそれに続く8週の経過観察期間を包含する)からなっていた。
【0192】
患者は、研究処置を継続しながら、必要に応じて同時の薬物療法(禁止された薬物療法を除く)を受けた。処置の使用頻度およびタイプを記録した。医学上必要な場合、研究患者に救済処置を提供した。救済処置は、医学上適切な場合、救済を全身薬物療法に拡大させる前に、より集中的な外用処置(薬物療法および/または手順)を行うことを包含していた。パートA(単回投与処置および8週のやや密集したPKサンプリング期間)中に全身性コルチコステロイドまたは全身性非ステロイド系免疫抑制薬(例えば、シクロスポリン、メトトレキセート、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリンなど)での救済を受けた患者は、このような救済処置を、パートBの開始の前(すなわち、研究処置の反復用量の投与を開始する前)の少なくとも2週間中止することが必要であった;反復用量の処置期間中にこれらの救済処置のいずれかを受けた患者は、研究薬物を中止した。
【0193】
用量漸増:コホート1Aから投与を開始した。コホート1Aに登録された最初の8人の患者の全てを少なくとも2週間観察したら、次のコホート(1B)に進み、2週目(15日目)の安全性評価を完了させ、データを再調査した。コホート1Aおよび/または1Bに登録された最初の20人の患者の全てを少なくとも2週間観察したら、コホート2Aで用量を漸増させ、2週目(15日目)の安全性評価を完了させ、データを再調査した。コホート2Aに登録された最初の8人の患者の全てを少なくとも2週間観察したら、次のコホート(2B)に進み、2週目(15日目)の安全性評価を完了させ、データを再調査した。
【0194】
研究集団
研究集団は、外用薬物療法で適切に制御されなかった中程度から重度のAD(ベースライン時に12歳以上18歳未満の青年)または重度のAD(ベースライン時に6歳以上12歳未満の子供)を有する小児患者を包含していた。
【0195】
試験対象患者基準:患者は、研究への組み入れに適格であるために、以下の基準を満たす必要があった:(1)ベースライン時に6歳以上18歳未満の男性または女性;(2)スクリーニングの少なくとも1年前に確立された米国皮膚科学会の基準に従ったADの診断(Eichenfieldら、2014、J.Am.Acad.Dermatol.70:338~51);(3)外用AD薬物療法での外来患者処置の十分な経過に対する不十分な応答の最近の病歴(スクリーニング来院前の6カ月以内)が確認された患者、または外用AD療法がそれ以外の理由で(例えば、副作用または安全性のリスクのために)得策ではない患者。注釈:本開示の目的に関して、不十分な応答は、中程度から高い効力のTCSのレジメン(必要に応じて±TCI)で少なくとも28日間処置したにもかかわらず、寛解または低い疾患活動性の状態(医師による包括的評価[IGA]が0=解消から2=軽度に匹敵する)を達成および維持できなかったことを示す。可能性のある処置の利益より重要である可能性がある副作用または安全性のリスクには、処置に対する不耐性、超過敏反応、顕著な皮膚萎縮、および全身吸収に関する副作用が含まれていた。許容できる文書調査には、TCIの処方有りまたは無しのTCSおよび処置アウトカムを記録した同時のチャートノート、または患者を処置する医師とのコミュニケーションに基づく医師の文書調査が含まれていた。文書調査が不十分であった場合、患者が上記で述べた規定された処置の長さでの中程度からより高い効力のTCS(±TCI)で効果がないことが示された後、可能性のある患者を再スクリーニングすることも可能であった。(4)ベースライン時におけるIGA:a.12歳以上18歳未満の青年においてIGA=3または4;b.6歳以上12歳未満の子供においてIGA=4;(5)少なくとも10%の体表面積(BSA)がベースライン時におけるAD病変の影響を受けていたこと。注釈:この試験対象患者基準は、ADの影響を受けたBSAはベースライン時に実行される評価に基づくべきであるということを明確にするために、元の基準から改変された。(6)診療施設への来院および研究関連の手順に応じる意思がありそれが可能であること;(7)親/介護者または法定後見人が、(8)親または法定後見人が、署名されたインフォームドコンセントを提供しなければならないという研究の要件を理解できること。7歳以上(または地域の規制および要件に従ってIRB/IECにより決定された年齢を超える)の患者は、研究に登録するためのインフォームドアセントも提供しなければならず、別個のIAFまたはICFのいずれかに署名し日付を入れなければならなかった;および(9)親または法定後見人/患者は、必要に応じて、研究関連の質問票を理解し全ての記入が可能でなければならなかった。
【0196】
除外基準:以下の基準のいずれかを満たした患者を研究から除外した:(1)ベースラインの来院前の8週間以内または5半減期(既知の場合)以内のいずれか長い方における被験薬での処置;(2)ベースラインの来院前の2週間以内における以下の処置:a.全身性コルチコステロイド、b.免疫抑制/免疫修飾薬(例えば、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、インターフェロン-ガンマ、ヤヌスキナーゼ阻害剤、アザチオプリンまたはメトトレキセート)、c.ADのための光線療法;(3)以下のような生物製剤での処置:a.これに限定されないが、ベースラインの来院前の6カ月以内またはリンパ球が正常に戻るまでのいずれか長い方におけるリツキシマブなどのあらゆる細胞枯渇剤、b.5半減期以内(既知の場合)またはベースラインの来院前の4カ月以内のいずれか長い方における他の生物製剤;(4)研究処置中のあらゆる禁止された薬物療法および手順の計画または予想された使用;(5)ベースラインの来院前の3カ月以内における生きた(弱毒化した)ワクチンでの処置;(6)ベースラインの来院前の4週間以内における、全身性抗生物質、抗ウイルス剤、抗原虫薬、もしくは抗真菌剤での処置を必要とする活動性慢性または急性感染症、またはベースラインの来院前の1週間以内における表皮の感染症;(7)既知のまたは疑いのある免疫不全、例えば、感染症が回復したかどうかにかかわらず、侵襲性日和見感染(例えば、結核、ヒストプラスマ症、リステリア症、コクシジオイデス症、ニューモシスチス症、アスペルギルス症)の病歴など、またはそれ以外の、免疫機能が低減した状態を示唆する異常な頻度または長い持続時間の回帰感染;(8)ヒト免疫不全ウイルス感染の既知の病歴;(9)スクリーニング時におけるB型またはC型肝炎での活動性感染、またはスクリーニング時に報告されたB型またはC型肝炎での活動性感染の前病歴;(10)スクリーニング期間中における正常値上限(ULN)の3倍より多くの、長期の(2週間以上間をあけた繰り返しの試験によって確認された)トランスアミナーゼ(アラニンアミノトランスフェラーゼ[ALT]および/またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ[AST])の上昇;(11)ベースライン時における、研究処置中止の基準として列挙されたいずれかの条件の存在;(12)研究の評価に干渉する可能性がある皮膚の共存症の存在;(13)完全に処置された子宮頸の上皮内癌および完全に処置され回復した非転移性扁平上皮または皮膚の基底細胞癌を除いた、ベースラインの来院前の5年以内における悪性腫瘍の病歴;(14)ベースラインの来院前の12カ月以内における臨床的な内部寄生状態(すなわち、蠕虫感染)の病歴、または蠕虫感染の高いリスク、例えば、後で行われる医学的評価(例えば、検便、血液試験など)によって寄生体の感染/侵襲の可能性が除外されない限り、内部寄生が流行している地域内での居留またはそのような地域への最近の旅行(ベースラインの来院前の12カ月以内における)であって、ここでそのような環境は、寄生体への曝露(例えば、田舎またはスラム地域への長期滞在、水道の欠如、非加熱の、加熱が不十分な、またはそれ以外の汚染の可能性がある食物の消費、保有者および媒介体との密接な接触など)に等しい;(15)スクリーニング来院前の2年以内におけるアルコールまたは薬物乱用の病歴;(16)研究への患者の参加に悪影響を与えると予想される重度の併存する疾患。例としては、これらに限定されないが、期待寿命が短い患者、制御不能な糖尿病を有する患者(ヘモグロビンA1c≧9%)、心臓血管に関する状態を有する患者(例えば、ニューヨーク心臓協会の分類に従ってステージIIIまたはIVの心不全)、重度の腎臓の状態(例えば、透析患者)、肝胆道の状態(例えば、チャイルド-ピューのクラスBまたはC)、神経学的状態(例えば、脱髄疾患)、活動性の主要な自己免疫疾患(例えば、狼瘡、炎症性腸疾患、リウマチ様関節炎など)、および他の重度の内分泌学的な、胃腸の、代謝の、肺の、またはリンパの疾患が挙げられる;(17)新しいおよび/または理解が不十分の疾患を示唆したスクリーニング時の重要な実験値の異常を含む他のあらゆる医学的または精神状態は、この臨床試験への参加の結果として研究患者に不当なリスクをもたらす可能性があり、患者の参加を信頼できなくする可能性があり、または研究の評価に干渉する可能性があった;(18)研究への患者の参加中の計画された主要な外科手術;(19)患者が、調査チームのメンバーまたは患者の近親者であった;および(20)妊娠している、授乳中である、または研究中に妊娠または授乳する予定であった女性患者、または研究期間の間中および研究薬物の最後の用量から120日後まで十分な避妊方法を使用する意思がない妊娠の可能性がある女性患者。
【0197】
研究処置
滅菌デュピルマブ薬物製品150mg/mLを、水性緩衝化ビヒクル、pH5.0中に提供した。これを、引き出し可能な2.0mLの体積または300mgのデュピルマブを含む2.5mL(150mg/mL)を含有する5mLのバイアル中に供給した。医師または他の資格を有する研究員によって研究薬物が以下の用量および投与スケジュールでSC投与された:
・用量コホート1の場合:パートAにおける単回用量として1日目に2mg/kg、次いで、パートBにおける反復用量として1日目から3週目に週1回。
・用量コホート2の場合:パートAにおける単回用量として1日目に4mg/kg、次いで、パートBにおける反復用量として1日目にから3週目に週1回。
【0198】
2回連続した週に同じ部位に注射されないように、研究薬物の皮下注射部位を、異なる腹部の四分の一区(へそおよびウエストの領域は回避)、大腿上部、および上腕の間で変更するようにした。起こり得る注射部位反応の十分な評価を可能にするために、正常に見える皮膚の領域のみに研究薬物を投与するようにした。
【0199】
一次および二次エンドポイント
一次的な目的は、6歳以上18歳未満の小児AD患者におけるデュピルマブのPKプロファイルを特徴付けることであった。
二次エンドポイントは以下の通りであった:
・ TEAEの発生率
・ 湿疹面積および重症度指標(EASI)におけるベースラインからの変化のパーセント
・ アトピー性皮膚炎評価スコア(SCORAD)スコアにおけるベースラインからの変化のパーセント
・ そう痒数値評価スケール(NRS)におけるベースラインからの変化のパーセント
・ 0または1のIGAスコアを有する患者のパーセンテージ
・ ADに罹患したBSAの%におけるベースラインからの変化。
【0200】
研究の変数および手順
安全性および忍容性を、バイタルサイン、身体検査、臨床的な実験室試験、および臨床評価によって評価した。インフォームドコンセント/アセントの時からそれらの最後の研究来院までに経験した全ての有害事象(AE)をモニターするために、患者に質問した。デュピルマブレベルのアッセイのために血清サンプルを収集し、デュピルマブの濃度データを使用してPKパラメーターを計算した。ADAのアッセイ、および探索的分析のために、血清サンプルを収集した。ADの程度および重症度を測定するそう痒NRS、SCORAD、およびEASI、ならびにADの全体的な重症度を評価するIGAを使用して、特定の診療施設への来院時の研究中における効能を評価した。
【0201】
結果
(A)ベースラインにおける疾患の特徴
この研究には、中程度から重度のADを有する12歳以上18歳未満の若年層患者(ベースラインにおける3または4のIGAスコア)および重度のADを有する6歳以上12歳未満の子供(ベースラインにおける4のIGAスコア;各年齢グループに関しては試験対象患者基準を参照)が登録された。それゆえに、ベースライン時における疾患の特徴は、2つの年齢グループ間で異なっていた。
【0202】
12歳以上18歳未満の若年層患者:特定された年齢範囲内のADを有すると診断された若年層患者の比率は、全般的に、各用量コホートにおける患者の大部分が5歳より前に診断された用量コホート間で類似していた(表1)。ADの平均持続時間も用量コホート間で類似していた。予想通りに、各用量コホート内のより高い年齢のサブセット中の患者は、それより若い患者より長いADの持続時間を有していた。全てのAD評価の平均ベースライン値は、中程度から重度のADと一致した。ベースライン時における平均EASIスコア、平均そう痒NRSスコア、平均BSAおよびSCORADスコアの差はわずかであり、非ランダム化グループにおいて予測されたものと一致していた(表5)。まとめると、ベースラインにおける疾患の特徴は、2つの用量コホート間で同等であった。
【0203】
【0204】
6歳以上12歳未満の患者:特定された年齢範囲内のADを有すると診断された6歳以上12歳未満の患者の比率は、全般的に、各用量コホートにおける患者の大部分が5歳より前に診断された用量コホート間で類似していた(表2)。ADの平均持続時間も用量コホート間で類似していた。予想通りに、各用量コホート内のより高い年齢のサブセット中の患者は、それより若い患者より長いADの持続時間を有していた。全てのAD評価の平均ベースライン値は、重度/中程度のADと一致した。ベースライン時における平均EASIスコアの差、平均そう痒NRSスコア、平均BSAおよびSCORADスコアは、わずかであり、非ランダム化グループで予想されたものと一致した(表6)。まとめると、ベースラインにおける疾患の特徴は、2つの用量コホート間で同等であった。
【0205】
【0206】
(B)病歴
病歴を、一般質問票を使用して評価し、特定のアトピー性疾患の病歴を、広範なアトピーの病歴を引き出す的を絞った質問票を使用して収集した。
【0207】
12歳以上18歳未満の若年層患者:全ての若年層患者(100%)において、一般質問票を使用したところ少なくとも1つの病歴が見出された。全患者の30%以上において報告された最も一般的な非ADのMedDRA PTは、食物アレルギー(45.0%)、喘息(45.0%)、ハウスダストアレルギー(35.0%)、季節性アレルギー(35.0%)、アレルギー性鼻炎(35.0%)、および動物に対するアレルギー(30.0%)であった。11人(27.5%)の患者にアレルギー性結膜炎の病歴があった。
【0208】
特定のアトピー性疾患質問票に基づいて、アトピー性/アレルギー性状態の家族歴を有する患者の比率は2つの用量コホート間で類似していた。患者の家族歴における最も一般的なアトピー性/アレルギー性状態は、ADであった(全体で37.5%)。2mg/kgの用量コホートにおける患者の家族歴における最も一般的なアトピー性/アレルギー性状態はADであったが(50.0%)、それに対して4mg/kgの用量コホートでは他のアレルギーであった(30.0%)。AD以外の最も一般的な現状におけるアトピー性/アレルギー性状態は他のアレルギーであった(全体で60.0%;2mg/kgの用量コホートでは55.0%、および4mg/kgの用量コホートでは65.0%)。まとめると、全ての患者の30.0%が、現状におけるアレルギー性結膜炎の病歴を示し、37.5%が、現状における喘息の病歴を有しており、これらはどちらも、4mg/kgの用量コホートにおいてより高い比率の患者で報告された。全ての患者の5パーセントが、現在のところ回復したアトピー性/アレルギー性状態を有していた。最も一般的な現在のところ回復したアトピー性/アレルギー性状態は喘息であった。これは、両方の用量コホートで類似の頻度であったことが報告された。
【0209】
6歳以上12歳未満の患者:全ての6歳以上12歳未満の患者(100%)において、一般質問票を使用したところ少なくとも1つの病歴が見出された。全患者の30%以上で報告された最も一般的な非ADのMedDRA PTは、食物アレルギー(67.6%)、アレルギー性鼻炎(51.4%)、ハウスダストアレルギー(48.6%)、喘息(43.2%)、および季節性アレルギー(35.1%)であった。9人(24.3%)の患者にアレルギー性結膜炎の病歴があった。全般的に、病歴は用量コホート間で類似していた。用量コホート間の差には、4mg/kgの用量コホートにおける、食物アレルギー(73.7%、61.1%)、牛乳アレルギー(15.8%、5.6%)、およびアレルギー性結膜炎(31.6%、16.7%)の、それぞれ2mg/kgの用量コホートより高い発生率が包含されていた。動物に対するアレルギー(38.9%、5.3%)、真菌アレルギー(16.7%、5.3%)、およびアレルギー性鼻炎(61.1%、42.1%)の発生率は、2mg/kgの用量コホートにおいて、それぞれ4mg/kgの用量コホートより高かった。
【0210】
特定のアトピー性疾患質問票に基づいて、アトピー性/アレルギー性状態の家族歴を有する患者の比率は、4mg/kgの用量コホートにおいて、2mg/kgの用量コホートより高かった。患者の家族歴における最も一般的なアトピー性/アレルギー性状態は、ADであった(全体で32.4%)。2mg/kgの用量コホートにおける患者の家族歴における最も一般的なアトピー性/アレルギー性状態はアレルギー性鼻炎であったが(33.3%)、それに対して4mg/kgの用量コホートではADであった(36.8%)。AD以外の最も一般的な現状におけるアトピー性/アレルギー性状態は、他のアレルギーおよび食物アレルギーであった(それぞれ全体で64.9%)。現状における食物アレルギーの発生率は、4mg/kgの用量コホート(73.7%)において、2mg/kgの用量コホート(55.6%)より高かった。まとめると、全ての患者の21.6%が、現状におけるアレルギー性結膜炎の病歴を示し、43.2%が、現状における喘息の病歴を有しており、これらは両方、4mg/kgの用量コホートにおいてより高い比率の患者で報告された。
【0211】
(C)以前の薬物療法/手順
先行の薬物療法/手順を、研究薬物の第1の投与の前になされた薬物療法または実行された手順と定義した。
【0212】
12歳以上18歳未満の若年層患者:全ての若年層患者は、少なくとも1回の先行の薬物療法を受けた。最も一般的に使用された(全ての患者の50%以上)治療クラスによる先行の薬物療法は、コルチコステロイド皮膚用製剤(97.5%)、全身性の使用のための抗ヒスタミン剤(67.5%)、および他の皮膚用製剤(67.5%)であった。先行の薬物療法の使用は、全般的に2つの用量コホート間で類似していた。コルチコステロイドの皮膚用製剤は、効能のあるもの(グループIII;全体で87.5%の患者)、弱いもの(グループI;全体で35.0%の患者)、中程度に効能のあるもの(グループII;全体で27.5%の患者)、および非常に効能のあるもの(グループIV;12.5%)を包含していた。合計7人(17.5%)の若年層患者が、全身性グルココルチコイドの使用の過去を有していた。13人の患者が、シクロスポリンおよびアザチオプリンを包含する先行の非ステロイド系全身性免疫抑制剤の使用を報告した。9人(22.5%)の若年層患者が、少なくとも1回の先行の手順を報告した。1人より多くの患者における最も一般的に報告された先行の手順が、紫外線(UV)光療法(全体で7.5%の患者)および光線療法(全体で5.0%の患者)であった。
【0213】
6歳以上12歳未満患者:全ての6歳以上12歳未満の患者は、少なくとも1回の先行の薬物療法を受けた。最も一般的に使用された(全ての患者の50%以上)治療クラスによる先行の薬物療法は、コルチコステロイド皮膚用製剤(97.3%)、全身性の使用のための抗ヒスタミン剤(91.9%)、エモリエント剤および保護剤(70.3%)、ならびに他の皮膚用製剤(70.3%)であった。先行の薬物療法の使用は、全般的に2つの用量コホート間で類似していた。コルチコステロイドの皮膚用製剤は、効能のあるもの(グループIII;全体で83.8%の患者)、中程度に効能のあるもの(グループII;全体で43.2%の患者)、弱いもの(グループI;全体で29.7%の患者)、および非常に効能のあるもの(グループIV;10.8%)を包含していた。先行の全身性グルココルチコイドの使用が、11人(29.7%)の患者で報告された。10人の患者が、シクロスポリンおよびアザチオプリンを包含する先行の非ステロイド系全身性免疫抑制剤の使用を報告した。7人(18.9%)患者が、少なくとも1回の先行の手順を報告した。全体で1人より多くの患者により報告された先行の手順は、紫外線療法(全体で10.8%の患者)および光線療法(全体で5.4%の患者)を包含していた。
【0214】
(D)同時の薬物療法および手順
12歳以上18歳未満の若年層患者:ほとんどの若年層患者(97.5%)が、研究全体の間に少なくとも1回の同時の薬物療法を受けた。研究全体にわたり最も一般的に(全体で25%以上の患者)使用された治療クラスによる同時の薬物療法は、コルチコステロイド皮膚用製剤(75.0%)、全身性の使用のための抗ヒスタミン剤(67.5%)、エモリエント剤および保護剤(45.0%)、他の皮膚用製剤(42.5%)、ならびに閉塞性気道疾患のための薬物(27.5%)であった。まとめると、患者の77.5%が、研究中にADのための同時の処置を使用し、2mg/kgの用量コホートでは患者の85.0%であり、4mg/kgの用量コホートでは患者の70.0%であった。あらゆるTCSの使用は、2mg/kgの用量コホートにおいて、4mg/kgの用量コホートより高かった。両方の用量コホートで最も一般的に使用されたTCSは、効能のある(グループIII)TCSであった。TCIの使用も、2mg/kgの用量コホートにおいて、4mg/kgの用量コホートより高かった。タクロリムスが、両方の用量コホートで最も一般的に使用されたTCIであった。いずれかの同時のAD薬物療法を使用した若年層患者の数は、パートBの期間中より(11[27.5%])パートAの期間(31[77.5%])中でより高かった。青年におけるTCSおよびTCIの使用は、パートAの期間中、両方の用量コホートで、パートBの期間と比較してより高かった。全身性コルチコステロイドの使用は低く、パートAとパートBとで同等であった。
【0215】
6歳以上12歳未満患者:ほとんどの6歳以上12歳未満の患者(97.3%)が、研究全体の間に少なくとも1回の同時の薬物療法を受けた。研究全体にわたり最も一般的に(全体で25%以上の患者)使用された治療クラスによる同時の薬物療法は、全身性の使用のための抗ヒスタミン剤(89.2%)、コルチコステロイド皮膚用製剤(89.2%)、エモリエント剤および保護剤(75.7%)、他の皮膚用製剤(48.6%)、共存症として喘息との重複を表す場合がある閉塞性気道疾患のための薬物(40.5%)、および全身性の使用のための抗菌剤(27.0%)であった。まとめると、6歳以上12歳未満の患者の91.9%が、研究中にADのための同時の処置を使用し、2mg/kgの用量コホートでは患者の88.9%であり、4mg/kgの用量コホートでは患者の94.7%であった。いずれのTCSの使用も用量コホート間で類似しており、両方の用量コホートで最も一般的に使用されたTCSは、効能のある(グループIII)TCSであった。TCIの使用は、2mg/kgの用量コホートにおいて、4mg/kgの用量コホートより高かった。タクロリムスが、両方の用量コホートで最も一般的に使用されたTCIであった。いずれかの同時のAD薬物療法の使用を必要とした6歳以上12歳未満の患者の数は、パートBの期間中より(10[27%])パートAの期間(33[89.2%])中でより高かった。TCSおよびTCIの使用も、両方の用量コホートで、パートBの期間中よりパートAの期間中でより高かった。6歳以上12歳未満のグループにおいて、パートAまたはパートBのいずれの期間中でも全身性免疫抑制剤の使用は必要ではなかった。
【0216】
(E)効能
40人の青年/38人の子供(平均湿疹面積および重症度指標[EASI]±SD=31.7±16.00/35.9±17.22)を登録した;22.5%の青年/16.2%の子供が、1回以上以前の全身処置に応答しなかった。デュピルマブの薬物動態プロファイルは、成人(標的介在薬の性質)と類似していた。成人と比較して新しい安全性シグナルは検出されなかった。
【0217】
若年層患者グループにおいて、2mg/kgまたは4mg/kgのいずれかの単回用量として投与されたデュピルマブは、2週目で患者における疾患活動性の顕著で急速な低減を誘導した(EASIスコアにおいて、2mg/kgおよび4mg/kgの用量それぞれでベースラインから34%および51%の低減)。デュピルマブの繰り返しの週1回の用量は、両方の用量コホートの患者において疾患の重症度のさらなる改善をもたらした。12週目に、若年層の2mg/4mgコホートにおいて、ベースラインにおけるEASIが66.4%/69.7%、ピークのそう痒数値評価スケール(NRS)が30.8%/37.6%顕著に改善され;10%/35%が医師包括的評価(IGA)0~1を達成した。
【0218】
2mg/kgまたは4mg/kgのいずれかの単回用量として投与されたデュピルマブは、2週目で患者における疾患活動性の顕著で急速な低減を誘導した(EASIスコアにおいて、2mg/kgおよび4mg/kgの用量それぞれでベースラインから37%および33%の低減)。デュピルマブの繰り返しの週1回の用量は、両方の用量コホートの患者において疾患の重症度のさらなる改善をもたらした。12週目に、子供の2mg/4mgコホートにおいて、ベースラインにおけるEASIが76.2%/63.4%、ピークのそう痒NRSが41.6%/39.6%顕著に改善され;16.7%/21.1%が0~1のIGAを達成した。
【0219】
まとめると、研究された両方の用量レジメンは、両方の小児の年齢のグループにおいて顕著な臨床上の利益を示した。2mg/kgおよび4mg/kgデュピルマブの単回用量は、両方の年齢のグループでADの徴候および症状における急速な低減をもたらした。繰り返しの週1回の用量は、両方の年齢のグループにおいて単回用量より改善されたより永続的な応答を提供した。この臨床応答は、ベースライン時に高い疾患活動性を有し、それらの疾患の全ての承認された利用可能な療法が失敗していた患者で見られた。
【0220】
結論
4週間にわたり2mg/kgおよび4mg/kgの単回および繰り返しの週1回の用量として投与されたデュピルマブは、この研究に組み入れられた両方の小児の年齢のグループで一般的に安全であり十分な耐性を示した。ADを有する小児患者において、デュピルマブの薬物動態プロファイルは、成人と一致した;デュピルマブは、類似の安全性プロファイルを有する成人の臨床試験で観察された速度より速く、臨床上の利益(痒みの改善など)を提供した。
【実施例3】
【0221】
処置の中断はデュピルマブの効能または長期安全性に影響を与えなかった:フェーズ3の非盲検試験
臨床の場では、処置の中断が起こる可能性がある。この研究の目的は、デュピルマブの長期安全性および効能に対する処置の中断の作用を示すことである。
【0222】
この実施例は、3年までのデュピルマブ処置の現行の多施設非盲検試験(NCT01949311)の中間分析を提供する。中程度から重度のアトピー性皮膚炎(AD)を有する成人を、先行のデュピルマブ試験への参加の後に登録した。デュピルマブ未投与患者(これまでに曝露されていない)および再処置された(親の研究と非盲検研究との間の間隔は13週より長い)患者における52週目[Wk]における安全性および効能を評価した。
【0223】
この分析では、1,491人の処置された患者のうち、116人の未投与患者および290人の再処置患者が包含されていた(52週の前に終えたまたはやめた患者を包含する)。未投与および再処置患者は、それぞれ、432.5および371.0件の有害事象/100人年(patient year)(AE/100PY)、11.7および5.4件の重篤なAE/100PY、ならびに2.6%および2.8%のAEによる処置中断を示した;死亡はなかった。52週において、49.1%/50.7%の未投与/再処置患者は、0または1の医師による包括的評価スコアを有し、73.3%/80.7%がEASI-75(親の研究のベースラインから)を達成した;52週におけるピークのそう痒数値評価スケールスコアは、未投与および再処置患者において、親の研究のベースラインから64.9%および60.6%減少した。まとめると、52週より前の全てのタイムポイントにおける効能評価は、グループ間で類似の結果を示した。
【0224】
結論として、3カ月を超えるデュピルマブ処置の中断は、中程度から重度のADを有する成人において、未処置患者と比較して、安全性または効能エンドポイントに対して作用がなかった。
【実施例4】
【0225】
シクロスポリンでの全身処置の候補であったアトピー性皮膚炎を有する成人患者におけるデュピルマブの効能および安全性:1年の試験からのサブグループ分析
アトピー性皮膚炎(AD)は、長期にわたる全身療法を必要とする数十年続く可能性がある慢性炎症性皮膚疾患である。シクロスポリン(CsA)は、迅速で広範な免疫抑制作用を提供するが、その長期使用は、高血圧ならびに腎臓および肝臓の機能不全などの安全性の懸念のために制限される。デュピルマブは、インターロイキン(IL)-4受容体アルファに対して向けられた完全ヒトモノクローナル抗体であり、2型サイトカインであるIL-4およびIL-13を阻害する。デュピルマブの長期安全性および効能を、フェーズ3の臨床試験(NCT02260986)で調査した。
【0226】
この実施例は、中程度から重度のADおよび外用コルチコステロイド(TCS)に対する不十分な応答の病歴を有する成人における、1年の二重盲検ランダム化プラセボ対照並行群間研究を記載する。患者を、3:1:3(デュピルマブ300mgを、週1回[qw]、2週毎に1回[q2w]、またはプラセボ)にランダム化した。患者は、同時の低いおよび/または中程度の効力のTCSを受け、TCSは、臨床応答に基づいて漸減および中止することが可能であった。外用カルシニューリン阻害剤は、TCSが得策ではないとみなされた領域に使用することができた。
【0227】
ここで本発明者らは、集団の2つの患者サブセット:CsAに対する不十分な応答または不耐性の確認された病歴を有するか、またはADの重症度に基づきCsAを考慮されていたが、禁忌または不適切であるとしてCsA処置を受けなかった患者(CsA不適格、n=126)、および残りのCsA適格サブセットの患者(n=497)において、デュピルマブ対プラセボの効能および安全性を比較した。
【0228】
CsA不適格患者は、湿疹面積および重症度指標(EASI)によって評価したところ、平均して、CsA適格患者より重度の疾患を有していた(平均ベースライン±SDのEASIスコアが、36.9±13.09対31.5±12.66であった;名目上のp<0.001[事後分析])。両方のサブセットの52週目において、デュピルマブ処置は、EASIにおける75%の改善を達成した患者の比率(CsA不適格:プラセボで18.6%、デュピルマブq2w/qwで52.4%/50.0%;CsA適格:プラセボで22.4%、デュピルマブq2w/qwで69.1%/67.0%)を増加させた。デュピルマブ処置はまた、52週目でピークのそう痒数値評価スケールにおける4ポイント以上の改善を達成した患者の比率も増加させた(CsA不適格:プラセボで12.3%、デュピルマブq2w/qwで42.9%/35.6%;CsA適格:プラセボで13.0%、デュピルマブq2w/qwで53.8%/39.7%)。処置グループは、処置中に発生した類似の有害事象(TEAE)率を有していた(CSA不適格:88.5%、91.7%/88.5%;CSA適格:88.3%、87.2%/81.7%)。
【0229】
さらなる分析において、52週におけるデュピルマブ対プラセボ(PBO)の効能および安全性を、集団の2つの患者(pt)サブセット:初期にCsAで処置されたがCsAに対する応答が不十分であるかまたは不耐性であった患者(サブセットA;n=114)、および残りの研究集団の患者(サブセットB;n=509)で比較した。サブセットAの患者は、湿疹面積および重症度指標(EASI)によって評価したところ、平均して、サブセットBの患者より重度の疾患を有していた(平均ベースライン±SDのEASIスコアが、37.0±12.70対31.6±12.77であった;名目上のp<0.0001[事後分析])。両方のサブセットの52週目において、デュピルマブ処置は、EASIにおける75%の改善を達成した患者の比率;およびピークのそう痒数値評価スケールにおける4ポイント以上の改善を達成した患者の比率を増加させた(表7)。処置グループは、処置中に発生した類似の有害事象(TEAE)率を有していた(サブセットA:88.9%、90.9%/87.0%;サブセットB:83.5%、87.5%/82.2%)。
【0230】
【0231】
最も一般的なTEAEは、上気道感染症、鼻咽頭炎、結膜炎、ADの増悪、および注射部位反応であった。
【0232】
結論として、CsAに対する不十分な応答または不耐性の確認された病歴に関係なく、さらに、これらの患者がベースライン時に疾患活動性を顕著に増加させていたとしても、デュピルマブでの長期にわたる処置は、ADの徴候および症状を顕著に改善した。同様に、デュピルマブは、CsA適格患者におけるADの徴候および症状も改善した。
【実施例5】
【0233】
シクロスポリンでの処置の候補であったアトピー性皮膚炎を有する成人患者におけるデュピルマブの効能および安全性:2つのフェーズ3のランダム化試験のプールされた二次サブグループの分析
導入:外用処置に対して難治性のアトピー性皮膚炎(AD)を有する患者(pt)は、全身処置の候補である。シクロスポリン(CsA)は、この適応に承認されている;しかしながら、その臨床的使用は、主として高血圧ならびに腎臓および肝臓の機能不全などの安全性の懸念のために制限される。デュピルマブは、完全ヒト抗インターロイキン(IL)-4受容体アルファモノクローナル抗体であり、IL-4およびIL-13の両方のシグナル伝達を強く阻害する。デュピルマブは、中程度から重度のADを有する患者を用いた2つの同じように設計されたフェーズ3の試験(NCT02277743およびNCT02277769)において許容できる安全性プロファイルを有しながら、ADアウトカムを改善することが報告されている。
【0234】
目的および方法:プールされた集団における2つのサブセット:CsAに対する不十分な応答または不耐性の確認された病歴を有するか、またはADの重症度に基づきCsAを考慮されていたが、禁忌または不適切であるとしてCsA処置を受けなかった患者(CsA不適格、n=288)、および残りのCsA適格サブセットの患者(n=1091)において、デュピルマブ対プラセボの効能および安全性を評価するためのものである。疾患が外用薬物療法によって適切に制御されなかった、または外用処置が医学上得策ではない中程度から重度のADを有する患者(N=1379)は、ランダム化されて、16週間にわたり2週毎に1回(q2w)または週1回(qw)でプラセボ(PBO)またはデュピルマブ300mgの皮下注射を受けた。
【0235】
結果:CsA不適格患者は、湿疹面積および重症度指標によって評価したところ、平均して、CsA適格患者より重度の疾患を有していた(EASI;平均ベースライン±SDのEASIスコアが、36.1±14.54対32.1±13.35であった;名目上のp<0.0001)。両方のサブセットにおいて、デュピルマブ処置は、EASIにおける75%の改善に至った患者;0~1の医師による包括的評価を達成した患者;またはピークのそう痒数値評価スケールにおいて4ポイント以上の改善を報告した患者の比率を増加させた(表8)。これらの研究における処置中に発生した最も一般的な有害事象は、鼻咽頭炎、ADの増悪、および注射部位反応であった。両方のサブセットにおいて、細菌性結膜炎(CsA不適格1.1%、PBOで3.8%/4.2%、デュピルマブq2w/qw;CsA適格0.3%、0.6%/1.1%)および結膜炎の割合(CsA不適格2.3%、1.9%/4.2%;CsA適格0.3%、5%/3.3%)は、デュピルマブグループにおいて、PBOグループより数値的に高かった。
【0236】
【0237】
さらなる分析において、デュピルマブ対プラセボの効能および安全性を、プールされた集団の2つのサブセット:CsAに対する不十分な応答または不耐性の確認された病歴を有していた患者(サブセットA;n=255)、および残りの研究集団の患者(サブセットB;n=1124)において比較した。サブセットAの患者は、湿疹面積および重症度指標によって評価したところ、平均して、サブセットBの患者より重度の疾患を有していた(EASI;平均ベースライン±SDのEASIスコアが、37.2±14.69対32.0±13.29であった;名目上のp<0.0001)。両方のサブセットにおいて、デュピルマブ処置は、EASIにおける75%の改善に至った患者(表5);0~1の医師による包括的評価を達成した患者(表9);またはピークのそう痒数値評価スケールにおいて4ポイント以上の改善を報告した患者(表9)の比率を増加させた。
【0238】
【0239】
結論:16週のデュピルマブ単独療法は、CsAでの処置に適格ではない両方の患者において、加えてCsA処置に適格な患者においても、ADの徴候および症状を顕著に改善する(これらの患者がベースライン時に疾患活動性を顕著に増加させていたとしても)。
【実施例6】
【0240】
中程度から重度のアトピー性皮膚炎を有する成人患者での長期にわたるフェーズ3の研究におけるデュピルマブの薬物動態
この実施例は、中程度から重度のアトピー性皮膚炎を有する成人におけるデュピルマブの効能および安全性を評価するために実行された2つの長期にわたるフェーズ3の研究からの薬物動態(PK)データを提供する。
【0241】
方法:臨床試験は、3:1:3のプラセボ、デュピルマブ300mg、2週毎に1回(q2w)およびデュピルマブ300mg、週1回(qw)にランダム化された740人の成人患者における、皮下のデュピルマブと同時の外用コルチコステロイド(TCS)の52週のランダム化多施設二重盲検プラセボ対照試験(NCT02260986)であった;デュピルマブにランダム化された患者は、600mgの負荷用量を受けた。デュピルマブ300mgのqwの非盲検延長研究(NCT01949311)は、先行の研究に参加した患者で継続中であり、最大68週間処置された1076人の患者からの結果も報告される。この実施例は、様々なタイムポイントで血液サンプルからの血清で測定され、記述統計を使用して分析された機能的なデュピルマブ濃度を記載する。
【0242】
結果:ランダム化研究において、血清中のデュピルマブの平均の機能的な濃度は、2週目から16週目にかけて増加し、q2wおよびqw処置グループにおいてそれぞれ80mg/Lおよび185mg/Lが達成された。その結果が、TCSを受けていない患者からの公開されたデータと一致したことから、同時の使用はデュピルマブのPKに影響を与えないことが示唆される。定常状態の濃度を、処置の残りで維持した。52週の試験のqwグループにおける濃度は、非盲検延長研究において、20週目から68週目にかけて類似していた。
【0243】
結論:血清中のデュピルマブの平均の機能的な濃度は、両方の研究で一致していたことから、長期処置中にPKにおける時間依存性の変化がないことが示唆される。
【実施例7】
【0244】
中程度から重度のアトピー性皮膚炎を有する成人患者でのフェーズ3の確認研究におけるデュピルマブの薬物動態
この実施例は、中程度から重度のアトピー性皮膚炎を有する成人におけるデュピルマブ単独療法の効能および安全性を評価するために実行された2つのフェーズ3の研究からの薬物動態(PK)データを記載する。
【0245】
方法:研究は、1379人の成人患者におけるデュピルマブ皮下投与の多施設ランダム化二重盲検プラセボ対照研究であった;それぞれの持続時間は16週間であった(NCT02277743およびNCT02277769)。患者を、1:1:1のプラセボ、デュピルマブ300mg、週1回(qw)、およびデュピルマブ300mg、2週毎に1回(q2w)にランダム化した;デュピルマブにランダム化した患者は、600mgの負荷用量を受けた。ここでは、様々な薬物動態学的なタイムポイントで血液サンプルからの血清で測定され、記述統計を使用して分析された機能的なデュピルマブ濃度を提供する。
【0246】
結果:血清中のデュピルマブの平均の機能的な濃度は、2週目から16週目にかけて増加し、デュピルマブ300のq2wおよびデュピルマブ300のqw処置グループでそれぞれ約75mg/Lおよび180mg/Lが達成され、16週目での比率(qw:q2w)は2.4であった。12週目における平均Ctrough値から、デュピルマブのCtrough値は、両方の用量レジメンで12から16週目で定常状態になったことが指示された。600mgの負荷用量は、q2w用量で定常状態への迅速なアプローチを可能にし、12週目のCtroughの約80%を4週目までに達成することを可能にする。qw用量の場合、12週目のCtroughの約67%が4週目までに達成された。
【0247】
結論:フェーズ3の研究におけるデュピルマブの薬物動態プロファイルは、初期フェーズの臨床研究と一致し、16週目におけるCtroughの比率は、研究されたq2wおよびqwレジメンの場合の相当する用量に近かった。
【実施例8】
【0248】
中程度から重度のアトピー性皮膚炎を有する成人患者でのシトクロムP450基質の薬物動態に対するデュピルマブの作用:非盲検のフェーズI試験
この研究は、5種のCYPアイソフォーム特異的な基質のPKに対するデュピルマブの作用、加えて非盲検フェーズ1試験(NCT02647086)におけるデュピルマブの安全性および効能を評価した。
【0249】
方法:中程度から重度のADを有する成人は、1および36日目に、ミダゾラム、オメプラゾール、S-ワルファリン、カフェイン、およびメトプロロール(それぞれCYP3A、CYP2C19、CYP2C9、CYP1A2、およびCYP2D6によって代謝された)からなる経口カクテルを受けた。8日目に、600mgの負荷用量としてデュピルマブを皮下投与し、続いて15日目から50日目に300mgの週1回の用量を投与した。PKパラメーターには、1日目におよび36日目に測定されたAUClast(ゼロ時間から最後の定量可能な濃度の時間までの血漿濃度-時間曲線下の面積)およびCmax(最大の観察された血漿濃度)の相乗平均比率(GMR)が包含され、一方で効能評価には、湿疹面積および重症度指標(EASI)スコア(スケール0~72)の変化が包含されていた。
【0250】
結果:合計14人の患者を、研究に登録し(ベースラインにおける平均EASIスコア[SD]=29.2[14.2])、13人が研究を終えた。AUClastおよびCmax両方のGMRおよび90%信頼区間(表10)から、ミダゾラム、オメプラゾール、S-ワルファリンまたはカフェインのPKに対する有意義なデュピルマブの作用はないことが示される。メトプロロール曝露におけるわずかな増加に基づいて、デュピルマブによるIL-4/IL-13シグナル伝達の遮断は、CYP2D6の活性に対して、臨床的な関連性はほとんどないかないとみなされる小さい数値的作用を有する可能性がある。合計3人の患者は、少なくとも1つの有害事象(AE)を有していた;処置の中止に至った1つの重篤なAE(全身性炎症反応症候群)があった。平均EASI(SD)スコアは、35および50日目にそれぞれ59.3%(37.6)および87.2%(13.4)減少した。
【0251】
【0252】
結論:この研究から、IL-4Rαを介したデュピルマブによるIL-4/IL-13シグナル伝達の遮断は、中程度から重度のADを有する成人患者において、CYP3A、CYP2C19、CYP2C9、CYP1A2またはCYP2D6の活性に対する有意義な作用はないことが示された。以前の研究と一致して、デュピルマブは、許容できる安全性プロファイルを有し、ADを有する患者に実質的な臨床上の利益を提供した。
【0253】
本発明は、本明細書に記載された具体的な実施態様によって範囲を限定されないものとする。実際に、本明細書に記載されたものに加えて、本発明の様々な改変が、前の記載および添付の図面の説明から当業者には明らかになると予想される。このような改変は、添付の特許請求の範囲内に含まれるものとする。
【配列表】