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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】カチオン性脂質
(51)【国際特許分類】
   C07D 207/16 20060101AFI20221025BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20221025BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20221025BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20221025BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20221025BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20221025BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20221025BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
C07D207/16 CSP
A61K31/7088
A61K31/713
A61K47/22
A61K47/24
A61K47/28
A61K47/34
A61K48/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019561687
(86)(22)【出願日】2018-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2018047440
(87)【国際公開番号】W WO2019131580
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2017251870
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】506137147
【氏名又は名称】エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100194423
【弁理士】
【氏名又は名称】植竹 友紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕太
(72)【発明者】
【氏名】高橋 良典
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/104580(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/105131(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/095351(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/061259(WO,A2)
【文献】国際公開第2011/153493(WO,A2)
【文献】国際公開第2013/158579(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/095346(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化45】
[式中、L及びLはそれぞれ独立に炭素数3~10のアルキレン基、R及びRはそれぞれ独立に炭素数4~24のアルキル基又は炭素数4~24のアルケニル基を表し、Rは炭素数1~3のアルキル基を表し、Xは単結合又は-CO-O-を表す。]
【請求項2】
下記式(A1)~(A9)で表される化合物からなる群より選択される、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化46】
【請求項3】
下記式(A1)で表される、請求項1または2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化47】
【請求項4】
下記式(A2)で表される、請求項1または2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化48】
【請求項5】
下記式(A3)で表される、請求項1または2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化49】
【請求項6】
下記式(A4)で表される、請求項1または2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化50】
【請求項7】
下記式(A5)で表される、請求項1または2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化51】
【請求項8】
下記式(A6)で表される、請求項1または2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化52】
【請求項9】
下記式(A7)で表される、請求項1または2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化53】
【請求項10】
下記式(A8)で表される、請求項1または2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化54】
【請求項11】
下記式(A9)で表される、請求項1または2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化55】
【請求項12】
(I)請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩と、(II)中性脂質、ポリエチレングリコール修飾脂質、及びステロールからなる群から選ばれる少なくとも一種の脂質と、を含有する脂質複合体。
【請求項13】
(I)請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩と、(II)中性脂質、ポリエチレングリコール修飾脂質、及びステロールからなる群から選ばれる少なくとも一種の脂質と、(III)核酸と、を含有する組成物。
【請求項14】
(I)請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩と、(II)中性脂質、ポリエチレングリコール修飾脂質、及びステロールからなる群から選ばれる少なくとも一種の脂質とを含有する極性有機溶媒含有水溶液と、(III)核酸を含有する水溶液とを混合して混合液を得る工程と、混合液中の極性有機溶媒の含有率を減少させる工程と、を含む組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なカチオン性脂質に関する。
【背景技術】
【0002】
siRNA(small interfering RNA)、miRNA(micro RNA)、shRNA(short hairpin RNA、または、small hairpin RNA)発現ベクター、アンチセンスオリゴヌクレオチド等の核酸は、生体内で配列特異的な遺伝子発現抑制を誘導する核酸であり、核酸医薬として知られている。
【0003】
これらの核酸医薬の中でも、特にsiRNAが注目を集めている。siRNAは、19~23塩基対からなる二本鎖RNAであり、RNA干渉(RNA interference、RNAi)と呼ばれる配列特異的な遺伝子発現抑制を誘導する。
【0004】
siRNAは化学的には安定であるが、血しょう中のRNase(ribonuclease)により分解されやすい点、及び、単独では細胞膜を透過しにくいという点等において、治療用用途としての問題点を有している(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
上記の問題点に対して、カチオン性脂質を含有する微粒子内にsiRNAを封入することにより、封入されたsiRNAを血しょう中での分解から保護し、かつ脂溶性の細胞膜へ透過させることを可能とすることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
また、特許文献2~6には、siRNA等の核酸医薬の送達に用いられるカチオン性脂質であって、生分解能を向上させたカチオン性脂質が記載されている。
【0007】
また、カチオン性脂質を含有する微粒子は、保管期間中に凝集しやすいという安定性の問題点があり、ポリエチレングリコール修飾脂質(PEG脂質)を該微粒子に含有させて凝集を抑制する方法が知られている。さらに、特定のPEG脂質であるPEG-DPGを微粒子の構成成分とすることや該微粒子と脱イオン化された溶媒とからなる製剤とすることで、凝集抑制と核酸の送達効率とを改善する方法が、特許文献7に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2010/144740号パンフレット
【文献】国際公開第2011/153493号パンフレット
【文献】国際公開第2013/086354号パンフレット
【文献】国際公開第2013/158579号パンフレット
【文献】国際公開第2015/095346号パンフレット
【文献】国際公開第2016/104580号パンフレット
【文献】国際公開第2014/089239号パンフレット
【発明の概要】
【0009】
しかしながら、最近の進展にもかかわらず、細胞質への核酸送達に利用できるカチオン性脂質が依然として求められている。
【0010】
本発明は、以下の[1]から[14]に関する。
【0011】
[1]下記式(1)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化1】
[式中、L及びLはそれぞれ独立に炭素数3~10のアルキレン基、R及びRはそれぞれ独立に炭素数4~24のアルキル基又は炭素数4~24のアルケニル基を表し、Rは炭素数1~3のアルキル基を表し、Xは単結合又は-CO-O-を表す。]
【0012】
[2]下記式(A1)~(A9)で表される化合物からなる群より選択される、[1]に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化2-1】
【化2-2】
【0013】
[2a]上記式(A1)、(A2)、(A3)、(A4)、(A5)、(A6)、(A8)、または(A9)で表される化合物からなる群より選択される、[2]に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
[2b]上記式(A1)、(A2)、(A3)、(A4)、(A5)、(A6)、または(A9)で表される化合物からなる群より選択される、[2]に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
[2c]上記式(A1)、(A2)、(A4)、または(A6)で表される化合物からなる群より選択される、[2]に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
[2d]下記式(2)または(3)で表される、[1]に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化3】
[式中、L及びL、R~R、並びにXは上記式(1)と同義である。]
[2e]Rはメチル基である、[1]または[2d]に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【0014】
[3]下記式(A1)で表される、[1]または[2]に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化4】
【0015】
[4]下記式(A2)で表される、[1]または[2]に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化5】
【0016】
[5]下記式(A3)で表される、[1]または[2]に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化6】
【0017】
[6]下記式(A4)で表される、[1]または[2]に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化7】
【0018】
[7]下記式(A5)で表される、[1]または[2]に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化8】
【0019】
[8] 下記式(A6)で表される、[1]または[2]に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化9】
【0020】
[9]下記式(A7)で表される、[1]または[2]に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化10】
【0021】
[10]下記式(A8)で表される、[1]または[2]に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化11】
【0022】
[11]下記式(A9)で表される、[1]または[2]に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化12】
【0023】
[12](I)[1]~[11]、[2a]~[2e]のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩と、(II)中性脂質、ポリエチレングリコール修飾脂質、及びステロールからなる群から選ばれる少なくとも一種の脂質と、を含有する脂質複合体。
【0024】
[13](I)[1]~[11]、[2a]~[2e]のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩と、(II)中性脂質、ポリエチレングリコール修飾脂質、及びステロールからなる群から選ばれる少なくとも一種の脂質と、(III)核酸と、を含有する組成物。
【0025】
[14](I)[1]~[11]、[2a]~[2e]のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩と、(II)中性脂質、ポリエチレングリコール修飾脂質、及びステロールからなる群から選ばれる少なくとも一種の脂質とを含有する極性有機溶媒含有水溶液と、(III)核酸を含有する水溶液とを混合して混合液を得る工程と、混合液中の極性有機溶媒の含有率を減少させる工程と、を含む組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明のカチオン性脂質は以下の一以上の効果を有する。
(1)本発明のカチオン性脂質によれば、核酸を細胞質に効率よく放出することを可能とする。
(2)本発明のカチオン性脂質によれば、一定期間保管した場合に脂質複合体の粒子径の増大を抑制することを可能とする。
したがって、本発明のカチオン性脂質は、細胞質への核酸送達用の脂質としての利用可能性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】試験例1の結果を示すグラフである。
図2】試験例2の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。なお、本明細書に記載した全ての文献及び刊行物は、その目的にかかわらず参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする。
【0029】
<カチオン性脂質>
一実施形態において、本発明は、下記式(1)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩であり、カチオン性脂質として用いることができる。カチオン性脂質は、前記塩の水和物又は前記塩の溶媒和物であってもよい。
【0030】
【化13】
【0031】
式(1)中、L及びLはそれぞれ独立に炭素数3~10のアルキレン基、R及びRはそれぞれ独立に炭素数4~24のアルキル基又は炭素数4~24のアルケニル基を表し、Rは炭素数1~3のアルキル基を表し、Xは単結合又は-CO-O-を表す。
【0032】
本明細書において、「アルキル」とは、指定された数の炭素原子を有する直鎖状、環状または分岐状の飽和脂肪族炭化水素基を意味する。
本明細書において、「アルケニル」とは、指定された数の炭素原子および少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖または分岐の炭化水素基を意味する。例えば、モノエン、ジエン、トリエン及びテトラエンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本明細書において、「アルキレン」とは、指定された数の炭素原子を有する直鎖状、環状または分岐状の2価の飽和脂肪族炭化水素基を意味する。
本明細書において、「ハロゲン」は、F、Cl、Br、Iを意味する。
【0033】
本発明の化合物中の不斉原子(例えば、炭素など)は、ラセミ体または鏡像異性体が濃縮された形、例えば(R)-、(S)-または(R,S)-立体配置で存在し得る。
本発明の一実施形態は、下記式(2)または(3)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩である。
【化14】
式(2)または(3)中、L及びL、R~R、並びにXは上記式(1)と同義である。本実施形態の化合物はカチオン性脂質として用いることができる。カチオン性脂質は、前記塩の水和物又は前記塩の溶媒和物であってもよい。
【0034】
本発明の一実施形態は、上記式(1)~(3)中、L及びLはそれぞれ独立に炭素数3~10(例えば、炭素数3~8)のアルキレン基、R及びRはそれぞれ独立に炭素数4~24のアルキル基又は炭素数4~24のアルケニル基、Rは炭素数1~3のアルキル基を表し、Xは単結合又は-CO-O-で表される化合物又はその薬学的に許容される塩であり、カチオン性脂質として用いることができる。カチオン性脂質は、前記塩の水和物又は前記塩の溶媒和物であってもよい。
【0035】
本発明の一実施形態は、上記式(1)~(3)中、L及びLはそれぞれ独立に炭素数3~10(例えば、炭素数3~8)の直鎖状のアルキレン基であり、R及びRはそれぞれ独立に炭素数4~24の直鎖状または分岐状のアルキル基又は炭素数4~24の直鎖状のアルケニル基であり、Rは炭素数1~3のアルキル基であり、Xは-CO-O-である化合物又はその薬学的に許容される塩であり、カチオン性脂質として用いることができる。カチオン性脂質は、前記塩の水和物又は前記塩の溶媒和物であってもよい。
本発明の特定の一実施形態は、下記式(1a)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩である。
【化15】
式(1a)中、R及びRはそれぞれ独立に炭素数4~24のアルキル基又は炭素数4~24のアルケニル基であり、Rは炭素数1~3のアルキル基であり、n1およびn2はそれぞれ独立に3~10(例えば、3~8)の整数を表す。
【0036】
本発明の一実施形態において、本発明は、上記式(1)~(3)中、Xは-CO-O-であり、LはLと同一であり、RはRと同一である化合物又はその薬学的に許容される塩であり、カチオン性脂質として用いることができる。カチオン性脂質は、前記塩の水和物又は前記塩の溶媒和物であってもよい。
【0037】
本発明の一実施形態において、本発明は、上記式(1)~(3)中、L及びLはそれぞれ独立に炭素数3~10(例えば、炭素数3~8)の直鎖状のアルキレン基であり、Rは炭素数4~24の直鎖状又は分岐状のアルキル基又は炭素数4~24の直鎖状のアルケニル基であり、Rは炭素数4~24の直鎖状のアルキル基であり、Rは炭素数1~3のアルキル基であり、Xは単結合である化合物又はその薬学的に許容される塩である。本実施形態において好ましくは、L及びRの合計の炭素数が9~12である。本実施形態の化合物はカチオン性脂質として用いることができる。カチオン性脂質は、前記塩の水和物又は前記塩の溶媒和物であってもよい。
本発明の特定の一実施形態は、下記式(1b)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩である。
【化16】
式(1b)中、Rは炭素数4~24のアルキル基又は炭素数4~24のアルケニル基であり、Rは炭素数1~3のアルキル基であり、n1は3~10(例えば、3~8)の整数を表し、n2は6~33、好ましくは8~11の整数を表す。
【0038】
以下に実施形態の化合物の一例を示す。
【化17】
【0039】
本発明の一実施形態は、上記式(A1)、(A2)、(A3)、(A4)、(A5)、(A6)、(A8)、または(A9)のいずれかで表される化合物又はその薬学的に許容される塩であり、カチオン性脂質として用いることができる。カチオン性脂質は、前記塩の水和物又は前記塩の溶媒和物であってもよい。
本発明の一実施形態は、上記式(A1)、(A2)、(A3)、(A4)、(A5)、(A6)、または(A9)のいずれかで表される化合物又はその薬学的に許容される塩であり、カチオン性脂質として用いることができる。カチオン性脂質は、前記塩の水和物又は前記塩の溶媒和物であってもよい。
本発明の一実施形態は、上記式(A1)、(A2)、(A4)、または(A6)のいずれかで表される化合物又はその薬学的に許容される塩であり、カチオン性脂質として用いることができる。カチオン性脂質は、前記塩の水和物又は前記塩の溶媒和物であってもよい。
【0040】
本明細書において、カチオン性脂質とは、一つ以上の炭化水素基を含む脂質親和性領域と、生理的pHで中性またはプロトン化する極性基を含む親水性領域とを有する両親媒性分子である。即ち、本発明のカチオン性脂質は、プロトン化し、陽イオンを形成し得る。例えば上記式(1)で表される化合物は、下記式(1)’に示すように、ピロリジン環の窒素原子上の孤立電子対に水素イオンが配位した化合物(陽イオン性化合物)を包含する。当該陽イオン性化合物は、陰イオンとともに、下記式(1)’に示す塩、および当該塩の水和物又は溶媒和物を形成しうる。
【化18】
式(1)’中、L及びL、R~R、並びにXは上記式(1)と同義である。Zは陰イオン(対イオン)である。本実施形態の化合物はカチオン性脂質として用いることができる。
上記陽イオン性化合物と対になって、本実施形態のカチオン性脂質が含有し得る陰イオン(上記式(1)’におけるZ)としては、薬学的に許容されるものであれば特に限定されず、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン等の無機イオン;酢酸イオン、シュウ酸イオン、マレイン酸イオン、フマル酸イオン、クエン酸イオン、安息香酸イオン、メタンスルホン酸イオン等の有機酸イオン等が挙げられる。
本発明のカチオン性脂質は、幾何異性体、光学異性体等の立体異性体、互変異性体等が存在し得るが、本発明のカチオン性脂質は、これらを含め、全ての可能な異性体およびそれらの混合物を包含する。
【0041】
<カチオン性脂質の製造方法>
本発明のカチオン性脂質の製造方法について説明する。下記に、カチオン性脂質の合成スキームの一実施形態を示す。本明細書に記載されている化合物はすべて、化合物として本発明に含まれる。本発明の化合物は、以下のスキームにおいて記載されている方法の少なくとも1つに従って合成することができる。本発明のカチオン性脂質は、1つ又は2つ以上の不斉中心を備え得るため、合成された化合物は、(R)-もしくは(S)-立体異性体またはこれらの混合物(R,S)として生成され得る。特記しない限り、本明細書における特定の化合物の記載は、個々のエナンチオマーとそれらのラセミ混合物との両方を含むことを意図する。立体化学の決定及び立体異性体の分離のための方法は当業者には周知である。
【0042】
【化19】
(式中、L及びRはそれぞれ前記式(1)と同義であり、X及びYはそれぞれハロゲン原子であり、Rは式(1)における-L-X-R2--(L、X及びRはそれぞれ前記式(1)と同義)である。)
【0043】
式(1)のカチオン性脂質(Xが単結合である化合物)は、例えば、上記スキーム1に従って合成することができる。
(工程1-1:エステル化)
まず、アルコール(a1)とハロゲン置換カルボン酸 X-L-COOH(Xはハロゲン原子であり、Lは前記と同義)(好ましくは臭素置換カルボン酸)とを縮合剤の存在下で反応させてエステルのハロゲン化物(a2)を得る。縮合剤としては、例えば、1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド(EDC)塩酸塩、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)等が挙げられる。必要に応じて、塩基を加えても良い。塩基としては、例えば、N-メチルモルホリン(NMM)、トリエチルアミン(TEA)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)、ピリジン、ピコリン、ルチジン等が挙げられる。溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、塩化メチレン、クロロホルム、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル等が挙げられる。
あるいは、ハロゲン置換カルボン酸 X-L-COOH(Xはハロゲン原子であり、Lは前記と同義)(好ましくは臭素置換カルボン酸)を必要に応じてジメチルホルムアミドの存在下でオキザリルクロリドなどの求電子的ハロゲン化剤と反応させてカルボン酸塩化物に変換し、さらに、カルボン酸塩化物とアルコールとを反応させてエステルのハロゲン化物(a2)を得ることができる。溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロホルム、トルエン、ヘキサン等が挙げられる。
(工程1-2:アルキル鎖導入)
次いで、エステルのハロゲン化物(a2)とジ-tert-ブチル マロネートとを塩基の存在下で反応させる。これによりマロン酸ジエステルの活性メチレンの水素原子が引き抜かれて、アルキルエステル鎖が導入され、化合物(a3)を得る。塩基としては例えば水素化ナトリウム(NaH)が挙げられる。溶媒としては、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、DMF、N-メチルピロリジノン等が挙げられる。
(工程1-3:アルキル鎖導入)
次いで、化合物(a3)とハロゲン化アルキル(R-Y)(好ましくはヨウ化物)を塩基の存在下で反応させ、アルキル鎖を導入し、化合物(a4)を得る。塩基および溶媒は上記工程1-2と同様のものを使用できる。
(工程1-4:脱保護)
次いで、化合物(a4)のtert-ブチル基(tBu)を酸加水分解条件下で脱保護し、化合物(a5)を得る。脱保護に使用する酸としては、例えば、トリフルオロ酢酸(TFA)、塩酸等が挙げられる。溶媒としては、例えば、塩化メチレン等が挙げられる。
(工程1-5:脱炭酸)
次いで、化合物(a5)の脱炭酸によりモノカルボン酸(a6)を得る。脱炭酸反応は、例えば、溶媒中、加熱することにより行うことができる。溶媒としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類等が用いられる。
(工程1-6:還元工程)
化合物(a6)のカルボキシル基を還元剤の存在下でヒドロキシル基へと還元して化合物(a7)を得る。還元剤としては、例えばボラン(BH)-テトラヒドロフラン錯体、ボラン-ジメチルスルフィド錯体等のボラン錯体などが挙げられる。溶媒としては、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、ヘキサン、トルエンなどの炭化水素類、およびこれらの混合溶媒等が用いられる。
(工程1-7:エステル化)
得られたアルコール(a7)と1-メチル-ピロリジン-3-カルボン酸またはその誘導体(ハロゲン化水素塩など)とを縮合剤、塩基の存在下で反応させて最終物である化合物(a8)(R=L-X-R)(式(1)のカチオン性脂質に相当する化合物)が得られる。縮合剤および塩基としては工程1-1と同様のものを使用できる。
【0044】
なお、Xが-CO-O-である化合物を合成する際には、上記スキーム1の工程1-3において、後述する工程2-1に準じてカルボキシル基が保護された化合物(エステルのハロゲン化物)を調製し、これを化合物(a3)と反応させ、さらに得られた化合物について工程1-4~工程1-7を行い、最後にカルボキシル基の脱保護およびエステル化(R-OHとの反応)を行えばよい。
【0045】
【化20】
(式中、L及びRはそれぞれ前記式(1)と同義であり、X及びYはそれぞれハロゲン原子であり、Rは式(1)における-L-X-R2--(L、X及びRはそれぞれ前記式(1)と同義)である。)
上記スキーム2は、当業者が、異なる方法によって式(1)のカチオン性脂質(Xが単結合である化合物)を合成する方法を示したものである。
【0046】
(工程2-1:エステル化)
まず、ベンジルアルコールとハロゲン置換カルボン酸 X-L-COOH(Xはハロゲン原子であり、Lは前記と同義)とをエステル化反応させることでエステルのハロゲン化物(b1)を得る。エステル化条件は工程1-1と同様である。
(工程2-2:アルキル鎖導入)
次いで、工程1-2と同様に、エステルのハロゲン化物(b1)とジ-tert-ブチル マロネートとを塩基の存在下で反応させ、化合物(b2)を得る。
(工程2-3:アルキル鎖導入)
次いで、工程1-3と同様に、化合物(b2)とハロゲン化アルキル(R-Y)を塩基の存在下で反応させ、化合物(b3)を得る。
(工程2-4:脱保護)
次いで、工程1-4と同様に、化合物(b3)のtert-ブチル基(tBu)を酸加水分解条件下で脱保護し、化合物(b4)を得る。
(工程2-5:脱炭酸)
次いで、工程1-5と同様に、モノカルボン酸(b5)を得る。
(工程2-6:還元工程)
さらにこれを、工程1-6と同様に還元剤の存在下で還元して化合物(b6)を得る。
(工程2-7:エステル化)
得られた化合物(b6)と1-メチル-ピロリジン-3-カルボン酸またはその誘導体(ハロゲン化水素塩など)とを縮合剤、塩基の存在下でエステル化反応させて、化合物(b7)を得る。縮合剤および塩基としては工程1-1と同様のものを使用できる。
(工程2-8:脱保護)
続いて、還元条件下で、ベンジル保護基を脱保護して化合物(b8)を得る。脱保護は例えば、パラジウム/炭素等の金属触媒存在下、接触水素添加反応することにより行えばよい。
(工程2-9:エステル化)
最後に、化合物(b8)を縮合剤、塩基の存在下でアルコール(R-OH)と反応させることにより化合物(b9)(R=L-X-R)(式(1)のカチオン性脂質に相当する化合物)を得ることができる。縮合剤および塩基としては工程1-1と同様のものを使用できる。
【0047】
上記スキーム2では、工程2-6で得た化合物(b6)を1-メチル-ピロリジン-3-カルボン酸またはその誘導体でエステル化(工程2-7)した後に、アルコール(R-OH)とのエステル化反応(工程2-9)を行っているが、例えば下記のスキーム2’に示すように、工程2-6で得た化合物(b6)の水酸基を保護し、ベンジル基を脱保護、アルコール(R-OH)とのエステル化反応を行ったのちに、1-メチル-ピロリジン-3-カルボン酸またはその誘導体とのエステル化反応を行ってもよい。
【0048】
【化21】
(式中、L及びRはそれぞれ前記式(1)と同義であり、Rは式(1)における-L-X-R2--(L、X及びRはそれぞれ前記式(1)と同義)である。)
【0049】
(工程2-7’:保護)
工程2-6で得られた化合物(b6)の水酸基を保護する。例えば、N,N-ジメチルホルムアミドなどの溶媒中、イミダゾールなどの塩基の存在下で、tert-ブチルジメチルシリルクロリド(TBDMS-Cl)を作用させ、水酸基がtert-ブチルジメチルシリル基(TBDMS)で保護された化合物(b10)を得る。
(工程2-8’:脱保護)
続いて、還元条件下で、ベンジル保護基を脱保護して化合物(b11)を得る。脱保護は例えば、パラジウム/炭素等の金属触媒存在下、接触水素添加反応することにより行えばよい。
(工程2-9’:エステル化)
得られた化合物(b11)を縮合剤、塩基の存在下でアルコール(R-OH)と反応させることにより化合物(b12)得る。縮合剤および塩基としては工程1-1と同様のものを使用できる。
(工程2-10’:脱保護)
続いて、TBDMS基を脱保護して化合物(b13)を得る。脱保護は例えば、テトラヒドロフラン等の有機溶媒中でフッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(TBAF)などのフッ化物塩を作用させることにより行えばよい。
(工程2-11’:エステル化)
最後に、工程1-7と同様に、得られたアルコール(b13)と1-メチル-ピロリジン-3-カルボン酸またはその誘導体(ハロゲン化水素塩など)とを縮合剤、塩基の存在下で反応させることで、最終物である化合物(b14)(R=L-X-R)(式(1)のカチオン性脂質に相当する化合物)が得られる。
【0050】
【化22】
(式中、L及びRはそれぞれ前記式(1)と同義であり、Rは式(1)における-L-X-R(L、X及びRはそれぞれ前記式(1)と同義)である。)
【0051】
(工程2-11’’:エステル化)
あるいは、工程2-11’に代えて、カルボン酸またはその誘導体として、ピロリジン環の窒素原子を保護基(例えば、tert-ブトキシカルボニル基(tBu-O-CO-;Boc))で保護したものを用いて、工程1-7と同様に、アルコール(b13)と縮合剤、塩基の存在下で反応させ、化合物(b15)を得てもよい。
(工程2-12’’:脱保護・還元的アミノ化)
次いで、化合物(b15)のtert-ブトキシカルボニル基(Boc)を脱保護し、還元的アミノ化によりメチル化する。具体的には、化合物(b15)のBoc基をトリフルオロ酢酸(TFA)等の強酸を作用することにより脱保護してNHとし、該NHにホルムアルデヒドを作用させてイミン(イミニウムカチオン)を生成させ、さらに、NaBH(OAc)やNaBHCNなどの還元剤を作用させることで、最終物であるアミン化合物(b14)(R=L-X-R)(式(1)のカチオン性脂質に相当する化合物)が得られる。
【0052】
上記工程2-11’または工程2-11’’において、カルボン酸またはその誘導体として、ピロリジン環の3位炭素原子の立体配置が制御された原料、例えば、(3S)-1-メチル-ピロリジン-3-カルボン酸もしくは(3R)-1-メチル-ピロリジン-3-カルボン酸またはこれらの誘導体を用いることで、式(1)の化合物におけるピロリジン環の立体配置を制御することが可能である。
【0053】
なお、Xが-CO-O-である化合物(例えば式(1a)の化合物等)を合成する際には、上記スキーム2において、工程2-1に準じてカルボキシル基が保護された化合物(エステルの化合物)を調製し、これを工程2-3において化合物(b2)と反応させ、さらに得られた化合物を用いて続く工程を行い、工程2-8および工程2-9または工程2-8’および工程2-9’において脱保護してエステル化すればよい。この際、2つのカルボキシル基の保護基の種類を異なる脱保護条件で脱保護できるものとすることでRおよびRの異なる化合物を得ることも可能である。
【0054】
上記スキームでは、式(1)におけるRがメチル基である場合を例にとって合成方法を示したが、Rがメチル基以外の化合物についても、上記スキームに準じて、上記工程1-7または工程2-7において、1-メチル-ピロリジン-3-カルボン酸に代えて1-アルキル-ピロリジン-3-カルボン酸を用いることにより合成することができる。
【0055】
本発明の化合物の合成において、出発原料の製造が特に記載されていない限り、それらの化合物は公知であるか、または当技術分野で公知の類似の方法により、もしくは以下の実施例中に記載されているとおり、調製することができる。当業者であれば、上記のスキームが、単に本発明の化合物の代表的な調製法に過ぎないことを理解しており、他の周知の方法を同様に使用することができる。
【0056】
本発明の化合物の調製において、分子の官能基を保護することが必要かつ/又は望ましい場合がある。これは、当業者に周知の従来の保護基によって行うことができる。保護基は、その後の都合のよい段階で、当該技術分野で周知の方法を用いて除去することができる。なお、上記スキームで示した保護基(tert-ブチル保護基、tert-ブトキシカルボニル保護基、ベンジル保護基、tert-ブチルジメチルシリル保護基)は当業者に周知の他の保護基に置換することもできる。
【0057】
<脂質複合体>
本発明は、(I)上述したカチオン性脂質と、(II)中性脂質、ポリエチレングリコール修飾脂質及びステロールからなる群より選択される少なくとも一種の脂質と、を含有する脂質複合体を提供する。本発明の一実施形態として、脂質複合体は、(I)上述したカチオン性脂質と、(II)中性脂質、ポリエチレングリコール修飾脂質及びステロールからなる群より選択される少なくとも一種の脂質と、(III)核酸と、を含有する。したがって、本発明の脂質複合体は、核酸を含んでいても含んでいなくてもよい。本実施形態の脂質複合体は、核酸を細胞質に効率よく放出することを可能とする。また、本実施形態の脂質複合体は、一定期間(例えば1か月、1.5か月又は3か月)保管した場合に粒子径の増大が抑制され、優れた物理的安定性を示し得る。
【0058】
カチオン性脂質を含有する脂質と核酸とで形成される複合体の形態としては、例えば、核酸と脂質一重(一分子)層からなる膜(逆ミセル)との複合体、核酸とリポソームとの複合体、核酸とミセルとの複合体等が挙げられる。本発明の一実施形態の脂質複合体において、核酸はカチオン性脂質を含有する脂質で構成された微粒子内に封入されている。
【0059】
本実施形態の脂質複合体は、脂質複合体が含有する全脂質を基準として、上述したカチオン性脂質を、例えば10~100モル%、例えば20~90モル%、例えば40~80モル%含有する。カチオン性脂質は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0060】
核酸としては、siRNA、miRNA、shRNA発現ベクター、アンチセンスオリゴヌクレオチド、mRNA、リボザイム等が挙げられる。一実施形態において、核酸は、siRNA、miRNA、mRNAであってもよい。
【0061】
本実施形態の脂質複合体は、脂質複合体の全重量に対して、核酸を例えば0.01~50重量%、例えば0.1~30重量%、例えば1~10重量%含有する。
【0062】
本実施形態の脂質複合体は、脂質成分として、(I)上述したカチオン性脂質と、(II)中性脂質、ポリエチレングリコール修飾脂質、及びステロールからなる群より選択される少なくとも一種の脂質とを含有する。本実施形態の脂質複合体は、脂質複合体の全重量に対して、脂質成分を例えば50~100重量%、例えば70~99.99重量%、例えば90~99重量%含有する。
【0063】
中性脂質とは、生理的pHで、非電荷または中性の両性イオンの形のいずれかで存在する脂質を意味する。中性脂質としては、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、卵ホスファチジルコリン(EPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジアラキドイルホスファチジルコリン(DAPC)、ジベヘノイルホスファチジルコリン(DBPC)、ジリグノセロイルホスファチジルコリン(DLPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、スフィンゴミエリン、セラミド、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)等が挙げられる。中性脂質は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0064】
本実施形態の脂質複合体は、脂質複合体が含有する全脂質を基準として、中性脂質を、例えば0~50モル%、例えば0~40モル%、例えば0~30モル%含有してもよい。
【0065】
ポリエチレングリコール修飾脂質としては、PEG2000-DMG(PEG2000-ジミリスチルグリセロール)、PEG2000-DPG(PEG2000-ジパルミトイルグリセロール)、PEG2000-DSG(PEG2000-ジステアロイルグリセロール)、PEG5000-DMG(PEG5000-ジミリスチルグリセロール)、PEG5000-DPG(PEG5000-ジパルミトイルグリセロール)、PEG5000-DSG(PEG5000-ジステアロイルグリセロール)、PEG-cDMA(N-[(メトキシポリ(エチレングリコール)2000)カルバミル]-1,2-ジミリスチルオキシルプロピル-3-アミン)、PEG-C-DOMG(R-3-[(ω-メトキシ-ポリ(エチレングリコール)2000)カルバモイル)]-1,2-ジミリスチルオキシルプロピル-3-アミン)、ポリエチレングリコール(PEG)-ジアシルグリセロール(DAG)、PEG-ジアルキルオキシプロピル(DAA)、PEG-リン脂質、PEG-セラミド(Cer)等が挙げられる。
【0066】
PEG-ジアルキルオキシプロピルとしては、PEG-ジラウリルオキシプロピル、PEG-ジミリスチルオキシプロピル、PEG-ジパルミチルオキシプロピル、PEG-ジステアリルオキシプロピル等が挙げられる。
ポリエチレングリコール修飾脂質は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。また、上記ポリエチレングリコール修飾脂質は、PEG(ポリエチレングリコール)の末端がメトキシ化されていてもよい(MPEG;メトキシ(ポリエチレングリコール))。
【0067】
本実施形態の脂質複合体は、脂質複合体が含有する全脂質を基準として、ポリエチレングリコール修飾脂質を、例えば0~30モル%、例えば0~20モル%、例えば0~10モル%含有してもよい。
【0068】
ステロールはステロイド骨格を有するアルコールである。ステロールとしては、コレステロール、ジヒドロコレステロール、ラノステロール、β-シトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、エルゴカステロール、フコステロール、3β-[N-(N’,N’-ジメチルアミノエチル)カルバモイル]コレステロール(DC-Chol)等が挙げられる。ステロールは、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0069】
本実施形態の脂質複合体は、脂質複合体が含有する全脂質を基準として、ステロールを、例えば0~90モル%、例えば10~80モル%、例えば20~50モル%含有してもよい。
【0070】
本実施形態の脂質複合体における脂質成分の組み合わせは、特に限定されず、例えば、上述したカチオン性脂質、中性脂質及びステロールの組み合わせ、上述したカチオン性脂質、中性脂質、ポリエチレングリコール修飾脂質及びステロールの組み合わせ等が挙げられる。
【0071】
本実施形態の脂質複合体の「平均粒子径」は、体積平均、数平均、Z-平均のいずれかの方法で算出することができる。本実施形態の脂質複合体の平均粒子径(Z-平均)は、例えば10~1000nm、例えば30~500nm、例えば30~200nmであってよい。
本実施形態の脂質複合体は、保管期間中、粒子径が保管前と比べて極力増大しないものが好ましい。例えば、4℃で1.5ヶ月保管した場合の平均粒子径(Z-平均)の大きさが保管前の粒子径の大きさに対して1.25倍以下であるものが好ましく、1.2倍以下であるものがより好ましく、1.1倍以下であるものが特に好ましい。
【0072】
本実施形態の脂質複合体は、非特異的な吸着や免疫反応を抑制する観点から、例えば血液中等の約pH7.4の環境下において、表面の荷電がほとんどないことが好ましい。また、エンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれる際、エンドソーム膜との融合効率を向上させる観点から、低pH(例えば3.5~7.0)環境下で正に帯電することが好ましい。
【0073】
<組成物>
本発明は、(I)上述したカチオン性脂質と、(II)中性脂質、ポリエチレングリコール修飾脂質及びステロールからなる群より選択される少なくとも一種の脂質と、(III)核酸と、を含有する組成物を提供する。本発明の一実施形態として、組成物は、上述した核酸を含む脂質複合体を含有する。本実施形態の組成物は、核酸を細胞質に効率よく放出することを可能とする。本実施形態の組成物は、上述した脂質複合体、薬学的に許容される媒体、及び場合によりその他の添加剤を含有するものであってもよい。薬学的に許容される媒体、その他の添加剤については後述する。
【0074】
本発明の組成物は、組成物が含有する全脂質を基準として、上述したカチオン性脂質を、例えば10~100モル%、例えば20~90モル%、例えば40~70モル%含有する。カチオン性脂質は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0075】
核酸としては、上述したものと同様のものが挙げられる。本発明の組成物は、組成物の全重量に対して、核酸を例えば0.01~50重量%、例えば0.1~30重量%、例えば1~10重量%含有する。
【0076】
本発明の組成物は、脂質成分として、(I)上述したカチオン性脂質と、(II)中性脂質、ポリエチレングリコール修飾脂質、及びステロールからなる群より選択される少なくとも一種の脂質とを含有する。
【0077】
中性脂質としては、上述したものと同様のものが挙げられる。本発明の組成物は、組成物が含有する全脂質を基準として、中性脂質を、例えば0~50モル%、例えば0~40モル%、例えば0~30モル%含有してもよい。
【0078】
ポリエチレングリコール修飾脂質としては、上述したものと同様のものが挙げられる。本発明の組成物は、組成物が含有する全脂質を基準として、ポリエチレングリコール修飾脂質を、例えば0~30モル%、例えば0~20モル%、例えば0~10モル%含有してもよい。
【0079】
ステロールとしては、上述したものと同様のものが挙げられる。本発明の組成物は、組成物が含有する全脂質を基準として、ステロールを、例えば0~90モル%、例えば10~80モル%、例えば20~50モル%含有してもよい。
【0080】
本発明の組成物における脂質成分の組み合わせは、特に限定されず、例えば、上述したカチオン性脂質、中性脂質及びステロールの組み合わせ、上述したカチオン性脂質、中性脂質、ポリエチレングリコール修飾脂質及びステロールの組み合わせ等が挙げられる。
【0081】
本発明の組成物は、上述した成分の他にも、その他の添加剤として、ショ糖、ブドウ糖、ソルビトール、乳糖等の糖;グルタミン、グルタミン酸、グルタミン酸ナトリウム、ヒスチジン等のアミノ酸;クエン酸、リン酸、酢酸、乳酸、炭酸、酒石酸等の酸の塩等を含有してもよい。
【0082】
本発明の組成物は、医薬組成物として製剤化されていてもよい。医薬組成物の剤型としては、例えば注射剤が挙げられる。
【0083】
本発明の組成物は、例えば、凍結乾燥等により溶媒を除去した粉末状態であってもよく、液体状態であってもよい。本発明の一実施形態の組成物は、上述した実施形態の脂質複合体を含む粉末組成物である。粉末組成物は、液体状態の組成物(分散液)から例えば濾過、遠心分離等によって溶媒を除去して調製してもよいし、該分散液を凍結乾燥して調製してもよい。組成物が粉末状態である場合には、使用前に薬学的に許容される媒体に懸濁又は溶解させて注射剤として用いることができる。本発明の一実施形態の組成物は、上述した実施形態の脂質複合体および薬学的に許容される媒体を含む液体組成物である。組成物が液体状態である場合には、そのままで又は薬学的に許容される媒体に懸濁又は溶解させて注射剤として用いることができる。
【0084】
薬学的に許容される媒体としては、滅菌水;生理食塩水;ブドウ糖、D-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、塩化ナトリウム等の補助薬を含む等張液;リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液等の緩衝液等が挙げられる。本実施形態の組成物は、更に、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のアルコール等の溶解補助剤、安定剤、酸化防止剤、防腐剤、薬剤製造上一般に用いられる賦形剤、充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、潤滑剤、界面活性剤、分散剤、保存剤、矯味矯臭剤、無痛化剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0085】
組成物の患者への投与は、例えば、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射等の非経口用法により行うことができる。組成物の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法によっても異なる。組成物の投与対象は限定されず、各種動物に適用することができるが、特に、哺乳動物、好ましくはヒトおよび臨床試験、スクリーニング、実験における実験動物に適用することができる。
【0086】
<組成物の製造方法>
一実施形態において、本発明は、(I)上述したカチオン性脂質と、(II)中性脂質、ポリエチレングリコール修飾脂質及びステロールからなる群より選択される少なくとも一種の脂質とを含有する極性有機溶媒含有水溶液と、(III)核酸を含有する水溶液とを混合して混合液を得る工程(a)と、混合液中の極性有機溶媒の含有率を減少させる工程(b)とを備える、組成物の製造方法を提供する。本実施形態の製造方法によれば、核酸を細胞質に効率よく放出することが可能な組成物を製造することができる。
【0087】
水溶性の核酸と上述したカチオン性脂質との静電的相互作用、及び脂質間の疎水的相互作用により、脂質で構成された微粒子内に核酸が封入された脂質複合体を形成することができる。例えば、混合液中の極性有機溶媒の含有率を減少させることによって、(I)上述したカチオン性脂質と、(II)中性脂質、ポリエチレングリコール修飾脂質及びステロールからなる群より選択される少なくとも一種の脂質とを含む脂質成分の、極性有機溶媒含有水溶液に対する溶解度を変化させ、これにより、脂質複合体を形成させることができる。極性有機溶媒としては、エタノール等のアルコールが挙げられる。
【0088】
まず、工程(a)において、(I)上述したカチオン性脂質と、(II)中性脂質、ポリエチレングリコール修飾脂質及びステロールからなる群より選択される少なくとも一種の脂質とを溶解させた、極性有機溶媒含有水溶液と、(III)核酸を含有する水溶液とを混合して混合液を得る。極性有機溶媒含有水溶液中の極性有機溶媒の濃度は、核酸の水溶液と混合後も、脂質分子が溶解する条件を満たしていれば特に限定されない。一例をあげると、工程(a)の極性有機溶媒含有水溶液における極性有機溶媒の濃度は0~60重量%でありうる。
【0089】
続いて、工程(b)において、上記の混合液に水等を添加することにより、極性有機溶媒の含有率を減少させる。これにより、脂質複合体を形成させることができる。脂質複合体を効率よく形成させるためには、極性有機溶媒の含有率を急激に低下させることが好ましい。一例をあげると、工程(b)における最終の極性有機溶媒含有水溶液における極性有機溶媒の濃度は0~5重量%でありうる。
【0090】
また、工程(a)で得られた上記混合液を、透析によって、極性有機溶媒を除去し、溶媒を薬学的に許容される媒体に置換してもよい。透析過程で溶液中の極性有機溶媒の含有率が減少するため、これにより、脂質複合体を形成させることができる。
【0091】
本実施形態の組成物の製造方法によれば、核酸が効率よく微粒子内部に封入された脂質複合体を得ることができる。かかる脂質複合体は優れた物理的安定性を有し得る。例えば、一定期間(例えば1か月、例えば3か月)保管した場合に、粒子径の増大が抑制され得る。
【0092】
組成物に封入される核酸が核酸医薬である場合には、組成物を医薬組成物として利用することができる。例えば、本発明の組成物は、標的となる細胞質(例えば各種疾患の原因となる細胞質)にin vivoまたはin vitroで所望の核酸を導入する治療(例えば遺伝子治療)に用いることができる。よって本発明の一実施形態は、上述した脂質複合体を含む医薬組成物を用いる各種疾患の治療方法(特に遺伝子治療方法)を提供する。なお、投与の対象、投与の方法及び条件は上記と同様である。
【0093】
本発明の一実施形態は上記カチオン性脂質を含む核酸医薬送達用キットでありうる。また、当該キットは、各種標的細胞に対する治療(例えば遺伝子治療)などに好ましく用いることができる。本実施形態のキットにおいて、カチオン性脂質の保存状態は特に限定されず、それぞれの安定性(保存性)及び使用容易性等を考慮して溶液状又は粉末状など任意の状態に設定することができる。本実施形態のキットは、上記カチオン性脂質以外に、例えば、各種核酸、各種媒体(薬学的に許容される媒体、バッファ)、及び使用説明書(使用マニュアル)等を含んでもよい。本実施形態のキットは、標的細胞内に導入する所望の核酸および上記カチオン性脂質を含有する脂質を含む組成物または脂質複合体を調製するために使用される。調製した組成物または脂質複合体は、標的細胞への核酸送達のために有効に用いることができる。さらに、本発明の一実施形態は、上記カチオン性脂質を含む医薬組成物を含む核酸医薬送達用キットでありうる。本実施形態のキットは、上記医薬組成物以外に、例えば、各種媒体(薬学的に許容される媒体)、および使用説明書(使用マニュアル)等を含んでもよい。
【実施例
【0094】
以下に実施例、製造例および試験例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例、製造例中の化合物名は、ソフトウエア(商品名「ChemDraw Plugin ver.15.1」、パーキンエルマー社製)を用いて命名した。
本発明の化合物を合成するために利用される出発原料、試薬、酸、塩基、脱水剤、溶媒、および触媒はすべて、市販されているか、または当業者に公知の有機合成法によって生成することができる。さらに、本発明の化合物は、以下の実施例で示されている通り、当業者に公知の有機合成法により製造することができる。
【0095】
実施例において使用される略語は当業者に周知の慣用的な略語である。いくつかの略語を以下に示す。
DIPEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMAP:4-(ジメチルアミノ)ピリジン
DMSO:ジメチルスルホキシド
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
EDC・HCl:1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩
n-:ノルマル
tert-:ターシャリー
TFA:トリフルオロ酢酸
THF:テトラヒドロフラン
LAH:水素化アルミニウムリチウム
TBAF:フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム
H-NMR:プロトン核磁気共鳴スペクトルメトリー
【0096】
以下の実施例及び製造例中の「室温」は通常約10℃から約35℃を示す。%は特記しない限り重量パーセントを示す。
【0097】
プロトン核磁気共鳴スペクトルの化学シフトは、テトラメチルシランに対するδ単位(ppm)で記録されている。パターンの略語は、次の通りである。
s:シングレット、d:ダブレット、t:トリプレット、q:カルテット、quin:クインテット、m:マルチプレット、br:ブロード。
クロマトグラフィーに関しては、YAMAZEN社製パラレルプレップ{カラム:YAMAZEN社製 Hi-Flash Column(Silicagel)、サイズ;S(16×60mm)、M(20×75mm)、L(26×100mm)、2L(26×150mm)}、あるいはBiotage社製フラッシュ自動精製システムIsolera{カラム:SNAP Cartridge KP-Sil(10g、25g、50g、100g、340g)}を用いた。
【0098】
A.カチオン性脂質の合成
[製造例1]
ベンジル 9-ブロモノナノエートの合成
【化23】
【0099】
ベンジルアルコール(1.3mL,12.6mmol)、9-ブロモノナン酸(3.0g,12.65mmol)およびDMAP(155mg,1.27mmol)を塩化メチレン(25mL)に溶解し、氷冷下、EDC・HCl(2.67g,13.92mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、ジエチルエーテルで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)にて精製し、標記化合物(3.7g,11.31mmol)を得た。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):1.22-1.48(m,8H),1.58-1.71(m,2H),1.78-1.90(m,2H),2.30-2.40(m,2H),3.35-3.44(m,2H),5.12(s,2H),7.26-7.45(m,5H).
【0100】
[製造例2]
4-ペンチルノナン-1-オールの合成
【化24】
【0101】
(1)2-ペンチルヘプタン-1-オール合成
2-ペンチルヘプタン酸(2.0g,9.98mmol)をTHF(50mL)に溶解し、-78℃でボラン-THF錯体(1.0M,25.0mL,25.0mmol)を滴下した。室温まで昇温したのち終夜撹拌した。再び-78℃まで冷却し、ボラン-THF錯体(1.0M,10.0mL,10.0mmol)を追加したのち室温で終夜攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、ジエチルエーテルで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル)にて精製し、標記化合物(1.40g,7.49mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.89(t,J=7.2Hz,6H),1.24-1.35(m,19H),1.45-1.47(m,1H),1.62-1.71(m,1H),3.54(br d,J=5.5Hz,2H).
【0102】
(2)2-ペンチルヘプタナールの合成
オキザリルクロリド(1.3mL,15.0mmol)の塩化メチレン(1.0mL)溶液に、-78℃でDMSO(2.1mL,30.0mmol)の塩化メチレン(1.0mL)溶液を滴下した。30分攪拌したのち、製造例2-(1)で得た化合物(1.40g,7.49mmol)の塩化メチレン(2.0mL)溶液を加えた。1時間攪拌したのち、トリエチルアミン(5.2mL,37.5mmol)を加えた。室温まで昇温し2時間撹拌したのち、水を加え有機相を分離した。有機相を水および飽和食塩水で洗浄し、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/ジエチルエーテル)にて精製し、標記化合物(1.26g,6.82mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.89(t,J=6.8Hz,7H),1.19-1.34(m,13H),1.40-1.47(m,4H),1.57(s,1H),1.58-1.66(m,2H),2.15-2.28(m,1H),2.66(s,1H),9.56(d,J=3.3Hz,1H).
【0103】
(3)エチル 4-ペンチルノナン-2-エノエートの合成
エトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウムブロミド(2.23g,5.19mmol)のTHF(14mL)溶液に、-78℃でヘキサメチルジシラザンナトリウム-THF溶液(1M,5.2mL,5.19mmol)を滴下した。2時間で0℃まで昇温させたのち、製造例2-(2)で得られた化合物(0.48g,2.59mmol)のTHF(4.0mL)溶液にカニューラで滴下した。室温で終夜攪拌したのち、4時間加熱還流した。水を加えジエチルエーテルで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/ジエチルエーテル)にて精製し、標記化合物(0.28g,1.09mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.89(br t,J=7.2Hz,5H),0.87(br t,J=7.0Hz,6H),1.18-1.35(m,26H),1.38-1.46(m,3H),1.53-1.64(m,4H),2.09-2.24(m,1H),2.38(t,J=7.5Hz,3H),4.19(q,J=7.0Hz,2H),5.76(d,J=15.8Hz,1H),6.74(dd,J=15.6,9.4Hz,1H).
【0104】
(4)4-ペンチルノナン-1-オールの合成
製造例2-(3)で得た化合物(0.28g,1.10mmol)のTHF溶液(2.2mL)に、窒素雰囲気下、0℃でLAH-THF溶液(1M,2.2mL,2.2mmol)を滴下した。室温まで昇温したのち、18時間加熱還流した。0℃で、tert-ブチルメチルエーテル(4.6mL)で希釈したのち、水(0.078mL)、水酸化ナトリウム水溶液(15%,0.078mL)および水(0.234mL)を順次加えた。反応混合物を15分間攪拌したのち、セライトでろ過しジエチルエーテルで洗浄した。ろ液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/ジエチルエーテル)にて精製し、標記化合物(0.048g,0.22mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.89(t,J=7.2Hz,6H),1.19-1.33(m,21H),1.43(s,1H),1.47(br s,1H),1.50-1.58(m,2H),3.62(t,J=6.8Hz,2H).
【0105】
[製造例3]
3-ペンチルオクチル 9-ブロモノナノエートの合成
【化25】
【0106】
9-ブロモノナン酸(1.61g,6.77mmol)の塩化メチレン溶液(35mL)に、氷冷下、オキザリルクロリド(0.95mL,10.8mmol)を加えたのち、DMF(0.050mL,0.68mmol)を40分かけて加えた。室温で40分間攪拌したのち、減圧下濃縮しトルエンで共沸した。残渣を塩化メチレン(35mL)に溶解し、3-ペンチルオクタン-1-オール(1.36g,6.77mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、ジエチルエーテルで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/ジエチルエーテル)にて精製し、標記化合物(2.22g,5.28mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.89(t,J=7.3Hz,6H),1.22-1.35(m,22H),1.37-1.47(m,3H),1.53-1.66(m,5H),1.86(quin,J=7.2Hz,2H),2.29(t,J=7.5Hz,2H),3.41(t,J=7.0Hz,2H),4.09(t,J=7.2Hz,2H).
【0107】
[製造例4]
3-オクチルウンデカン-1-オールの合成
【化26】
【0108】
(1)(E)-エチル 2-ウンデセノエートの合成
エチル 2-(ジエトキシホスホリル)アセテート(5.0mL,25.3mmol)のTHF(40mL)懸濁液に、氷冷下、60%水素化ナトリウム(0.93g,23.2mmol)をゆっくり加えた。30分後、ノニルアルデヒド(3.6mL,21.1mmol)のTHF(40mL)溶液を滴下し、30分間攪拌した。室温で2時間攪拌したのち水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過後、溶媒を減圧下留去した。エチル 2-(ジエトキシホスホリル)アセテート(2.5mL,12.7mmol)のTHF(20mL)懸濁液に、氷冷下、60%水素化ナトリウム(1.0g,25.0mmol)をゆっくり加えたのち、先に得られた粗生成物のTHF溶液(20mL)を滴下した。1時間攪拌したのち水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/ジエチルエーテル)にて精製し、標記化合物(3.07g,14.6mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):1.22-1.35(m,14H),1.41-1.50(m,2H),2.15-2.23(m,2H),4.14-4.22(m,2H),5.81(dt,J=15.6,1.5Hz,1H),6.96(dt,J=15.6,7.0Hz,1H).
【0109】
(2)エチル 3-オクチルウンデカノエートの合成
臭化銅(I)(0.21g,1.45mmol)と塩化リチウム(0.12g,2.89mmol)とをTHF(40mL)に懸濁させ、室温で10分間攪拌した。氷冷下、製造例4-(1)で得た化合物(3.07g,14.46mmol)とクロロトリメチルシラン(2.2mL,17.4mmol)とを順次加え、20分間攪拌した。オクチルマグネシウムブロミド-THF溶液(2.0M,8.7mL,17.4mmol)を滴下し、さらに1.5時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、ジエチルエーテルで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/ジエチルエーテル)にて精製し、標記化合物(4.43g,13.58mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.88(t,J=7.1Hz,6H),1.19-1.33(m,34H),1.35-1.35(m,1H),1.84(br d,J=5.0Hz,1H),2.21(d,J=7.0Hz,2H),4.12(q,J=7.2Hz,2H).
【0110】
(3)3-オクチルウンデカン-1-オールの合成
製造例4-(2)で得た化合物(4.43g,13.56mmol)のTHF溶液(30mL)に、窒素雰囲気下、室温でLAH-THF溶液(2M,13.6mL,27.1mmol)を滴下した。65℃で5時間加熱しのち、氷冷下、水(1mL)、水酸化ナトリウム水溶液(2M,1mL)および水(2mL)を順次加えた。反応混合物を10分間攪拌したのち、セライトでろ過しジエチルエーテルで洗浄した。ろ液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/ジエチルエーテル)にて精製し、標記化合物(4.43g,quant)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.88(t,J=7.1Hz,6H),1.12(br s,1H),1.19-1.33(m,30H),1.39-1.44(m,2H),1.49-1.54(m,2H),3.62-3.71(m,2H).
【0111】
[製造例5]
3-オクチルウンデシル 6-ブロモヘキサノエートの合成
【化27】
【0112】
製造例4で得られた化合物(3.46g,12.16mmol)、6-ブロモヘキサン酸(2.61g,13.38mmol)およびDMAP(0.15g,1.22mmol)を塩化メチレン(22mL)に溶解し、氷冷下、EDC・HCl(2.91g,15.20mmol)を加え、室温で3日間撹拌した。反応混合物を減圧下濃縮しジエチルエーテルで希釈した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水および10%クエン酸水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)にて精製し、標記化合物(4.67g,10.09mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.88(t,J=7.0Hz,6H),1.21-1.32(m,30H),1.39(br s,1H),1.44-1.51(m,2H),1.57(q,J=7.0Hz,2H),1.66(quin,J=7.6Hz,2H),1.84-1.91(m,2H),2.31(t,J=7.4Hz,2H),3.40(t,J=6.7Hz,2H),4.09(t,J=7.2Hz,2H).
【0113】
[製造例6]
ベンジル 4-ブロモブタノエートの合成
【化28】
【0114】
4-ブロモブタン酸(2.94g,17.61mmol)の塩化メチレン溶液(88mL)に、室温で、オキザリルクロリド(1.6mL,18.5mmol)とDMF(0.40mL,1.8mmol)とを順次加えた。室温で30分間攪拌したのち、ベンジルアルコール(1.90g,17.61mmol)を加え、15分間攪拌した。反応混合物を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/ジエチルエーテル)にて精製し、標記化合物(3.64g,14.09mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):1.61(s,1H),2.21(quin,J=6.8Hz,2H),2.57(t,J=7.3Hz,2H),3.47(t,J=6.4Hz,2H),5.15(s,2H),7.33-7.40(m,5H).
【0115】
[製造例7]
4-ノニルトリデカン-1-オールの合成
【化29】
【0116】
(1)(E)-エチル 2-ドデセノエートの合成
60%水素化ナトリウム(1.28g,32.0mmol)の1,2-ジメトキシエタン(70mL)懸濁液に、氷冷下、エチル 2-(ジエトキシホスホリル)アセテート(6.4mL,32.0mmol)を滴下した。20分後、デシルアルデヒド(5.0mL,32.0mmol)の1,2-ジメトキシエタン(30mL)溶液を加え、室温で終夜攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過後、溶媒を減圧下留去した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ペンタン/ジエチルエーテル)にて精製し、標記化合物(5.18g,23.0mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.88(t,J=7.06Hz,4H),1.25-1.32(m,18H),1.45(dt,J=14.5,7.3Hz,2H),2.15-2.22(m,2H),4.15-4.26(m,2H),5.72-5.90(m,1H),6.96(dt,J=15.6,7.0Hz,1H).
【0117】
(2)エチル 3-ノニルドデカノエートの合成
製造例4-(2)の方法に準じ、製造例7-(1)で得た化合物(2.22g,9.80mmol)、臭化銅(I)(0.141g,0.98mmol)、塩化リチウム(0.083g,1.96mmol)、クロロトリメチルシラン(1.4mL,10.8mmol)、ノニルマグネシウムブロミド-THF溶液(1.0M,10.8mL,10.8mmol)およびTHF(53mL)から標記化合物(2.76g,7.84mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.77(t,J=7.0Hz,9H),1.04(br d,J=7.3Hz,1H),1.11-1.26(m,48H),1.29-1.39(m,1H),1.44(s,1H),1.68-1.84(m,1H),2.05-2.09(m,1H),2.09-2.16(m,2H),3.46(t,J=6.8Hz,1H),3.42-3.49(m,1H),4.01(q,J=7.0Hz,2H),4.07(q,J=7.3Hz,1H),5.70(dt,J=15.7,1.5Hz,1H),6.85(dt,J=15.8,7.0Hz,1H),7.15(s,1H).
【0118】
(3)3-ノニルドデカン-1-オールの合成
製造例4-(3)の方法に準じ、製造例7-(2)で得た化合物(2.76g,7.80mmol)、LAH-THF溶液(1M,10.1mL,10.1mmol)およびTHF(15mL)から標記化合物(1,34g,4.29mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.89(t,J=7.0Hz,6H),1.18(br s,2H),1.23-1.33(m,33H),1.43(br d,J=9.9Hz,1H),1.53(q,J=6.8Hz,2H),1.59(br s,1H),3.67(t,J=7.2Hz,2H).
【0119】
(4)3-ノニルドデカナールの合成
製造例2-(2)の方法に準じ、製造例7-(3)で得た化合物(0.30g,0.97mmol)、オキザリルクロリド(0.17mL,1.94mmol)、DMSO(0.27mL,3.88mmol)およびトリエチルアミン(0.68mL,4.85mmol)から標記化合物(0.30g,quant)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.89(t,J=7.0Hz,6H),1.15-1.38(m,1H),1.44(s,9H),1.55(s,1H),1.95(br s,1H),2.33(dd,J=6.6,2.6Hz,2H),9.77(t,J=2.4Hz,1H).
【0120】
(5)10-(3-メトキシアリル)ノナデカンの合成
(メトキシメチル)トリフェニルホスホニウムクロリド(1.10g,3.21mmol)のTHF(5.0mL)溶液に、-78℃で、ヘキサメチルジシラザンナトリウム-THF溶液(1M,3.2mL,3.2mmol)を滴下した。15分後、製造例7-(4)で得られた化合物(0.50g,1.60mmol)のTHF(2.0mL)溶液に、氷冷下、カニューラで滴下した。1.5時間攪拌したのち、水を加えジエチルエーテルで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/ジエチルエーテル)にて精製し、標記化合物(0.33g,0.98mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.89(t,J=7.0Hz,6H),1.20-1.35(m,28H),1.41-1.48(m,1H),1.55(s,1H),1.88(t,J=6.4Hz,1H),1.96-2.11(m 1H),3.52(s,1H),3.57(s,1H),4.32(q,J=7.3Hz,1H),4.69(dt,J=12.7,7.4Hz,1H),5.91(d,J=6.2Hz,1H),6.25(d,J=12.8Hz,1H).
【0121】
(6)4-ノニルトリデカナールの合成
製造例7-(5)で得た化合物(0.33g,0.97mmol)をTHF(2.0mL)に溶解し、室温で1N塩酸(2.95mL,2.95mmol)を加え70℃で加熱した。36時間後、水を加えジエチルエーテルで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、溶媒を減圧下留去し、標記化合物(0.28g,0.87mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.89(t,J=7.0Hz,7H),1.20-1.34(m,39H),1.44(s,1H),1.54-1.62(m,3H),2.37-2.43(m,2H),9.78(t,J=1.8Hz,1H).
【0122】
(7)4-ノニルトリデカン-1-オールの合成
製造例7-(6)で得た化合物(0.28g,0.88mmol)をエタノール(13mL)に溶解し、0℃で、水素化ホウ素ナトリウム(0.13g,3.50mmol)を加えた。1.5時間後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、塩化メチレンで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、溶媒を減圧下留去した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過後、溶媒を減圧下留去し、標記化合物(0.28g,0.86mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.89(t,J=7.0Hz,6H),1.20-1.33(m,37H),1.44(s,1H),1.49-1.65(m,3H),3.63(t,J=6.8Hz,2H).
【0123】
[製造例8]
ベンジル 5-ブロモペンタノエートの合成
【化30】
【0124】
製造例6の方法に準じ、5-ブロモペンタン酸(4.0g,22.1mmol)、ベンジルアルコール(2.3mL,22.1mmol)、塩化メチレン(110mL)、オキザリルクロリド(2.0mL,23.2mmol)およびDMF(0.17mL,2.21mmol)から標記化合物(5.39g,19.89mmol)を得た
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):1.62(s,1H),1.79-1.85(m,2H),1.88-1.93(m,2H),2.41(t,J=7.3Hz,2H),3.41(t,J=6.6Hz,2H),5.14(s,2H),7.33-7.40(m,5H).
【0125】
[製造例9]
3-ヘキシルノナン-1-オールの合成
【化31】
【0126】
(1)メチル 3-ヘキシルノナノエートの合成
製造例4-(2)の方法に準じ、メチル (E)-2-ノネノエート(3.6mL,18.92mmol)、臭化銅(I)(0.275g,1.92mmol)、塩化リチウム(0.160g,3.76mmol)、クロロトリメチルシラン(2.7mL,21.27mmol)、ヘキシルマグネシウムブロミド-THF溶液(2.0M,10.5mL,21.0mmol)およびTHF(50mL)から標記化合物(4.18g,16.27mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.86-0.91(m,7H),1.12-1.37(m,25H),1.79-1.87(m,1H),2.23(d,J=6.8Hz,2H),3.66(s,3H).
【0127】
(2)3-ヘキシルノナン-1-オールの合成
製造例4-(3)の方法に準じ、製造例9-(1)で得た化合物(4.0g,15.6mmol)、LAH-THF溶液(2.4M,13.0mL,31.2mmol)、THF(60mL)から標記化合物(2.33g,10.14mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.88(t,J=7.0Hz,6H),1.13(br s,1H),1.19-1.34(m,20H),1.41(br s,1H),1.49-1.57(m,4H),3.66(br d,J=5.5Hz,2H).
【0128】
[製造例10]
ベンジル 8-ブロモオクタノエートの合成
【化32】
【0129】
製造例1の方法に準じ、ベンジルアルコール(1.3mL,12.5mmol)、8-ブロモオクタン酸(3.06g,12.73mmol)およびDMAP(0.15g,1.25mmol)を塩化メチレン(60mL)に溶解し、氷冷下、EDC・HCl(2.99g,15.61mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、ジエチルエーテルで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)にて精製し、標記化合物(3.91g,12.5mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):1.22-1.48(m,6H),1.58-1.71(m,2H),1.78-1.90(m,2H),2.30-2.38(m,2H),3.33-3.45(m,2H),5.12(s,2H),7.28-7.44(m,5H).
【0130】
<カチオン性脂質の合成(1)>
[実施例A-1]
(3S)-2-{9-オキソ-9-[(3-ペンチルオクチル)オキシ]ノニル}ドデシル 1-メチルピロリジン-3-カルボキシレートの合成(カチオン性脂質1)
【化33】
【0131】
(1)9-ベンジル 1,1-ジ-tert-ブチル ノナン-1,1,9-トリカルボキシレートの合成
60%水素化ナトリウム(0.43g,10.85mmol)をDMF(40mL)に懸濁させ、氷冷下、ジ-tert-ブチル マロネート(2.2mL,9.87mmol)をゆっくり加え5分間攪拌したのち、冷却バスを取り外し20分間攪拌した。氷冷下、ヨウ化ナトリウム(0.44g,2.96mmol)と製造例1で得た化合物(3.39g,10.36mmol)を順次加えたのち、室温で15時間攪拌した。反応混合物を氷水バスで冷却し、水を加え、ジエチルエーテルで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)にて精製し、標記化合物(3.6g,7.78mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):1.25-1.33(m,9H),1.36(s,1H),1.39(s,1H),1.44-1.49(m,16H),1.56-1.67(m,3H),1.79(q,J=6.7Hz,2H),2.35(t,J=7.5Hz,2H),3.11(t,J=7.7Hz,1H),5.12(s,2H),7.32-7.39(m,5H).
【0132】
(2)1-ベンジル 9,9-ジ-tert-ブチル ノナデカン-1,9,9-トリカルボキシレートの合成
実施例A-1-(1)で得られた化合物(3.6g,7.78mmol)をDMF(36mL)に溶解し、水冷下、60%水素化ナトリウム(0.47g,11.67mmol)を加え10分間攪拌したのち室温で20分間攪拌した。1-ヨードデカン(3.3mL,15.56mmol)を加え室温で4時間攪拌した。反応混合物を氷水バスで冷却し、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、n-ヘプタンで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)にて精製し、標記化合物(3.4g,5.64mmol)を得た。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):0.83-0.93(m,3H),1.05-1.36(m,26H),1.44(s,18H),1.57-1.68(m,2H),1.71-1.82(m,4H),2.29-2.39(m,2H),5.11(s,2H),7.28-7.42(m,5H).
【0133】
(3)2-[9-(ベンジロキシ)-9-オキソノニル]ドデカン酸の合成
実施例A-1-(2)で得られた化合物(3.4g,5.64mmol)を塩化メチレン(11.2mL)に溶解し、氷冷下、TFA(5.6mL)を滴下し、室温で1.5時間攪拌した。反応混合物にトルエンを加え、減圧下、溶媒を留去した。トルエンの添加および留去を2回繰り返すことにより乾燥し、2-{9-[(2-ブチルオクチル)オキシ]-9-オキソノニル}-2-デシルマロン酸の粗生成物を得た。得られた粗生成物をキシレン(12mL)に溶解し、150℃で8時間攪拌した。反応混合物を室温に戻し、減圧下濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)にて精製し、標記化合物(2.26g,5.06mmol)を得た。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):0.81-0.95(m,3H),1.18-1.37(m,26H),1.39-1.52(m,2H),1.54-1.69(m,4H),2.28-2.41(m,3H),5.11(s,2H),7.28-7.40(m,5H).
【0134】
(4)ベンジル 10-(ヒドロキシメチル)イコサノエートの合成
実施例A-1-(3)で得た化合物(2.2g,4.93mmol)をTHF(25mL)に溶解し、-15℃でMボラン-THF錯体(0.92,8.0mL,7.39mmol)を滴下し、0℃で2時間撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、室温で5分間攪拌し、酢酸エチルで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)にて精製し、標記化合物(1.86g,4.30mmol)を得た。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):0.81-0.95(m,3H),1.12-1.38(m,31H),1.39-1.50(m,1H),1.58-1.72(m,2H),2.23-2.36(m,2H),3.48-3.59(m,2H),5.11(s,2H),7.28-7.41(m,5H).
【0135】
(5)ベンジル 10-{[(tert-ブチルジメチルシリル)オキシ]メチル}イコサノエートの合成
実施例A-1-(4)で得た化合物(700mg,1.62mmol)をDMF(3.2mL)に溶解し、室温でイミダゾール(165mg,2.43mmol)を加え溶解した。氷冷下、tert-ブチルジメチルシリルクロリド(293mg,1.94mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応液に水を加えたのち、ジエチルエーテルで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)にて精製し、標記化合物(810mg,1.48mmol)を得た。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):0.02(s,6H),0.77-0.97(m,12H),1.06-1.47(m,31H),1.64(br. s,2H),2.35(t,J=7.5Hz,2H),3.45(d,J=5.7Hz, 2H),5.11(s,2H),7.27-7.42(m,5H).
【0136】
(6)3-ペンチルオクチル 10-{[(tert-ブチルジメチルシリル)オキシ]メチル}イコサノエートの合成
実施例A-1-(5)で得た化合物(810mg,1.48mmol)を酢酸エチル(10mL)に溶解し、室温で10%パラジウム-炭素(158mg,50%含水)を加え、水素雰囲気下、常圧で4.5時間攪拌した。反応液を濾過し、酢酸エチルで洗浄した。濾液を減圧下濃縮し、カルボン酸の粗生成物(680mg)を得た。
得られたカルボン酸、3-ペンチルオクタン-1-オール(CAS 1443519-63-8)(416mg,2.08mmol)、DMAP(36mg,0.30mmol)を塩化メチレン(7.4mL)に溶解し、氷冷下、EDC・HCl(341mg,1.78mmol)を加え、室温で16時間撹拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)にて精製し、標記化合物(926mg,1.45mmol)を得た。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):0.02(s,5H),0.88(s,17H),1.12-1.46(m,46H),1.55(s,8H),2.21-2.34(m,2H),3.39-3.52(m,2H),4.00-4.13(m,2H).
【0137】
(7)3-ペンチルオクチル 10-(ヒドロキシメチル)イコサノエートの合成
実施例A-1-(6)で得た化合物(925mg,1.45mmol)をTHF(4.5mL)に溶解し、氷冷下、TBAF/THF溶液(1M,3.6mL)をゆっくり加えたのち、室温で1時間撹拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)にて精製し、標記化合物(584mg,1.11mmol)を得た。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):0.78-0.99(m,9H),1.26(d,J=2.9Hz,55H),1.50-1.75(m,8H),2.28(t,J=7.6Hz,2H),3.53(s,2H),4.08(t,J=7.0Hz,2H).
【0138】
(8)(3S)-2-{9-オキソ-9-[(3-ペンチルオクチル)オキシ]ノニル}ドデシル 1-メチルピロリジン-3-カルボキシレートの合成
実施例A-1-(7)で得た化合物(50mg,0.095mmol)、DIPEA(0.036mL,0.21mmol)、(3S)-1-メチルピロリジン-3-カルボン酸 塩酸塩(32mg,0.19mmol)およびDMAP(2.3mg,0.019mmol)を塩化メチレン(0.8mL)に溶解し、氷冷下、EDC・HCl(40mg,0.21mmol)を加え、室温で15時間撹拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル/メタノール)にて精製し、標記化合物(47mg,0.074mmol)を得た。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):0.82-0.96(m,9H),1.14-1.48(m,49H),1.51-1.73(m,4H),2.03-2.16(m,2H),2.28(t,J=7.5Hz,2H),2.35(s,3H),2.49(d,J=9.0Hz,1H),2.58-2.71(m,2H),2.76-2.92(m,1H),2.97-3.12(m,1H),3.98(d,J=5.7Hz,2H),4.08(s,2H).
【0139】
<カチオン性脂質の合成(2)>
[実施例A-2]
(3R)-2-{9-オキソ-9-[(3-ペンチルオクチル)オキシ]ノニル}ドデシル 1-メチルピロリジン-3-カルボキシレートの合成(カチオン性脂質2)
【化34】
【0140】
(1)(3R)-1-tert-ブチル 3-(2-{9-オキソ-9-[(3-ペンチルオクチル)オキシ]ノニル}ドデシル)ピロリジン-1,3-ジカルボキシレートの合成
実施例A-1-(8)の方法に準じ、実施例A-1-(7)で得た化合物(60mg,0.11mmol)、(R)-1-(tert-ブトキシカルボニル)ピロリジン-3-カルボン酸(49mg,0.23mmol)、EDC・HCl(48mg,0.25mmol)、DIPEA(0.039mL,0.23mmol)、DMAP(2.8mg,0.023mmol)および塩化メチレン(0.80mL)から標記化合物(80mg,0.11mmol)を得た。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):0.88(t,J=7.0Hz,9H),1.10-1.38(m,53H),1.46(s,9H),1.50-1.72(m,4H),1.99-2.19(m,2H),2.28(s,2H),2.90-3.17(m,1H),3.24-3.75(m,4H),3.97-4.03(m,2H),4.05-4.12(m,2H).
【0141】
(2)(3R)-2-{9-オキソ-9-[(3-ペンチルオクチル)オキシ]ノニル}ドデシル 1-メチルピロリジン-3-カルボキシレートの合成
実施例A-2-(1)で得られた化合物(80mg,0.11mmol)を塩化メチレン(2.2mL)に溶解し、室温でTFA(1.1mL)を滴下し0.5時間攪拌した。反応混合物にトルエンを加え、減圧下、溶媒を留去した。残渣を塩化メチレン(1mL)に溶解し、ホルムアルデヒド溶液(37%,0.25mL,3.3mmol)および硫酸ナトリウム(0.79g,5.54mmol)を室温で加え10分間攪拌した。ナトリウムトリ(アセトキシ)ボロヒドリド(117mg,0.55mmol)を加え、室温で16時間攪拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール)にて精製し、標記化合物(20mg,0.031mmol)を得た。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):0.82-0.96(m,9H),1.14-1.48(m,49H),1.51-1.73(m,4H),2.03-2.16(m,2H),2.23-2.32(m,2H),,2.35(s,3H),2.49(d,J=9.0Hz,1H),2.58-2.71(m,2H),2.76-2.92(m,1H),2.97-3.12(m,1H),3.98(d,J=5.7Hz,2H),4.04-4.12(m,2H).
【0142】
<カチオン性脂質の合成(3)>
[実施例A-3]
2-{9-オキソ-9-[(3-ペンチルオクチル)オキシ]ノニル}ドデシル 1-メチルピロリジン-3-カルボキシレートの合成(カチオン性脂質3)
【化35】
【0143】
(1)2-[9-(ベンジロキシ)-9-オキソノニル]ドデシル 1-メチルピロリジン-3-カルボキシレートの合成
実施例A-1-(4)で得た化合物(0.20g,0.46mmol)、DIPEA(0.161mL,0.92mmol)、1-メチルピロリジン-3-カルボン酸 塩酸塩(0.15g,0.92mmol)を塩化メチレン(2.0mL)に溶解し、EDC・HCl(0.19g,1.02mmol)を加え、室温で18時間撹拌した。反応混合物を減圧濃縮したのち、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール)にて精製し、標記化合物(0.15g,0.28mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.89(t,J=7.0Hz,3H),1.27(s,40H),1.61-1.67(m,3H),1.74-1.86(m,1H),2.07-2.13(m,2H),2.34-2.38(m,6H),2.47-2.52(m,1H),2.61-2.66(m,2H),2.85(t,J=8.8Hz,1H),3.02-3.07(m,1H),3.99(d,J=5.9Hz,2H),5.08(s,1H),5.12(s,2H),7.31-7.38(m,5H).
【0144】
(2)2-{9-オキソ-9-[(4-ペンチルノニル)オキシ]ノニル}ドデシル 1-メチルピロリジン-3-カルボキシレート合成
実施例A-1-(6)に準じ、実施例A-3-(1)で得た化合物(0.15g,0.28mmol)、10%パラジウム/炭素(0.30g,50%含水)、酢酸エチル(5mL)からカルボン酸の粗生成物を得た。
得られたカルボン酸、製造例2-(4)で得た化合物(0.048g,0.23mmol)、EDC・HCl(0.086g,0.45mmol)、DMAP(0.005g,0.05mmol)および塩化メチレン(1.0mL)から標記化合物(0.081g,0.14mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.86-0.91(m,9H),1.20-1.33(m,54H),1.56-1.65(m,5H),2.05-2.14(m,2H),2.29(t,J=7.7Hz,2H),2.36(s,3H),2.50(q,J=7.7Hz,1H),2.60-2.67(m,2H),2.86(t,J=8.8Hz,1H),3.01-3.07(m,1H),3.99(d,J=5.9Hz,2H),4.05(t,J=6.8Hz,2H),4.52(d,J=4.8Hz,1H),5.30(s,1H),5.40(br d,J=4.0Hz,1H),5.47-5.53(m,1H).
【0145】
<カチオン性脂質の合成(4)>
[実施例A-4]
2-ノニル-11-オキソ-11-[(3-ペンチルオクチル)オキシ]ウンデシル 1-メチルピロリジン-3-カルボキシレートの合成(カチオン性脂質4)
【化36】
【0146】
(1)1,1-ジ-tert-ブチル 9-(3-ペンチルオクチル)ノナン-1,1,9-トリカルボキシレートの合成
ジ-tert-ブチル マロネート(1.20g,5.56mmol)をTHF(26mL)に溶解し、氷冷下、60%水素化ナトリウム(0.22g,5.56mmol)を加え、15分間攪拌した。室温で10分間攪拌したのち、製造例3で得た化合物(2.22g,5.29mmol)のTHF(3mL)溶液を加えた。室温で18時間攪拌したのち、水を加えジエチルエーテルで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/ジエチルエーテル)にて精製し、標記化合物(1.79g,3.39mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.89(t,J=7.2Hz,6H),1.26(br s,12H),1.27-1.34(m,13H),1.46(s,13H),1.48(s,8H),1.54-1.64(m,5H),1.79(br d,J=7.0Hz,2H),2.28(t,J=7.5Hz,2H),3.11(t,J=7.7Hz,1H),3.19(s,1H),3.41(s,1H),4.08(t,J=7.2Hz,2H).
【0147】
(2)9,9-ジ-tert-ブチル 1-(3-ペンチルオクチル)オクタデカン-1,9,9-トリカルボキシレートの合成
実施例A-4-(1)で得られた化合物(0.96g,1.72mmol)をTHF(7.6mL)に溶解し、氷冷下、60%水素化ナトリウム(0.076g,1.89mmol)を加え、20分間攪拌した。室温で20分間攪拌したのち、1-ヨードノナン(0.44g,1.72mmol)のTHF(2mL)溶液を加えた。6時間加熱還流したのち、水を加えジエチルエーテルで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/ジエチルエーテル)にて精製し、標記化合物(0.59g,0.86mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.83-0.94(m,12H),1.13(br s,6H),1.27(br d,J=16.5Hz,43H),1.31-1.36(m,4H),1.41-1.48(m,28H),1.51-1.65(m,5H),1.70-1.85(m,6H),2.22-2.34(m,2H),4.02-4.15(m,2H).
【0148】
(3)2-ノニル-11-オキソ-11-[(3-ペンチルオクチル)オキシ]ウンデカン酸の合成
実施例A-1-(3)の方法に準じ、実施例A-4-(2)で得られた化合物(0.59g,0.86mmol)、塩化メチレン(2mL)、TFA(1mL)およびキシレン(2mL)から標記化合物(0.18g,0.35mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.84-0.92(m,9H),1.17-1.33(m,42H),1.36-1.51(m,4H),1.54-1.66(m,6H),2.24-2.37(m,3H),4.09(t,J=7.2Hz,2H).
【0149】
(4)3-ペンチルオクチル 10-(ヒドロキシメチル)ノナデカノエートの合成
製造例2-(1)の方法に準じ、実施例A-4-(3)で得た化合物(0.093g,0.18mmol)、ボラン-THF錯体(1M,0.35mL,0.35mmol)、ボラン-THF錯体(1M,0.53mL,0.53mmol)およびTHF(2.0mL)から標記化合物(0.068g,0.14mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.87-0.90(m,10H),1.27(br dd,J=11.4,7.3Hz,52H),1.40-1.46(m,7H),1.56-1.63(m,4H),2.28(t,J=7.5Hz,2H),3.53(d,J=5.5Hz,2H),4.08(t,J=7.2Hz,2H).
【0150】
(5)2-ノニル-11-オキソ-11-[(3-ペンチルオクチル)オキシ]ウンデシル 1-メチルピロリジン-3-カルボキシレートの合成
実施例A-4-(4)で得た化合物(0.069g,0.13mmol)、DIPEA(0.047mL,0.27mmol)、1-メチルピロリジン-3-カルボン酸 塩酸塩(0.044g,0.27mmol)およびDMAP(3mg,0.03mmol)を塩化メチレン(1mL)およびTHF(1mL)に溶解し、EDC・HCl(0.057g,0.30mmol)を加え、室温で18時間撹拌した。反応混合物を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール)にて精製し、標記化合物(0.046g,0.072mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.89(t,J=7.0Hz,3H),0.89(t,J=7.2Hz,6H),1.19-1.33(m,46H),1.41(br s,1H),1.58(q,J=7.0Hz,2H),1.60-1.66(m,3H),1.70(br s,1H),2.07-2.17(m,2H),2.29(t,J=7.5Hz,2H),2.36(s,3H),2.50(q,J=8.0Hz,1H),2.58-2.69(m,2H),2.85(t,J=9.0Hz,1H),3.05(tt,J=8.8,6.7Hz,1H),3.99(d,J=5.9Hz,2H),4.09(t,J=7.2Hz,2H).
【0151】
<カチオン性脂質の合成(5)>
[実施例A-5]
2-{6-[(3-オクチルウンデシル)オキシ]-6-オキソヘキシル}ドデシル 1-メチルピロリジン-3-カルボキシレートの合成
(カチオン性脂質5)
【化37】
【0152】
(1)1,1-ジ-tert-ブチル 6-(3-オクチルウンデシル)ヘキサン-1,1,6-トリカルボキシレートの合成
60%水素化ナトリウム(0.43g,10.62mmol)をTHF(21mL)に懸濁させ、氷冷下、ジ-tert-ブチル マロネート(2.4mL,10.6mmol)を滴下した。30分かけて室温まで昇温したのち、氷冷下、製造例5で得た化合物(4.67g,10.12mmol)とヨウ化ナトリウム(0.15g,1.01mmol)を加え、室温で18時間攪拌した。反応混合物に水を加え、ジエチルエーテルで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/ジエチルエーテル)にて精製し、標記化合物(2.9g,5.10mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.88(t,J=7.0Hz,6H),1.19-1.31(m,31H),1.31-1.36(m,5H),1.41-1.51(m,26H),1.55-1.58(m,2H),1.59-1.67(m,2H),1.79(q,J=7.3Hz,2H),2.27(t,J=7.5Hz,2H),3.10(t,J=7.5Hz,1H),4.07(t,J=7.2Hz,2H).
【0153】
(2)6,6-ジ-tert-ブチル 1-(3-オクチルウンデシル)ヘキサデカン-1,6,6-トリカルボキシレートの合成
実施例A-4-(2)の方法に準じ、実施例A-5-(1)で得られた化合物(2.25g,3.78mmol)、1-ヨードデカン(1.0g,3.78mmol)、60%水素化ナトリウム(0.17g,4.15mmol)およびTHF(16.7mL)から標記化合物(0.99g,1.32mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.01(s,1H),0.89(td,J=7.1,2.8Hz,9H),1.06-1.23(m,6H),1.26(br d,J=7.0Hz,34H),1.30-1.37(m,5H),1.40(br s,1H),1.42-1.49(m,18H),1.52-1.65(m,6H),1.71-1.85(m,4H),2.28(t,J=7.5Hz,2H),4.08(t,J=7.2Hz,2H).
【0154】
(3)2-{6-[(3-オクチルウンデシル)オキシ]-6-オキソヘキシル}ドデカン酸の合成
実施例A-1-(3)の方法に準じ、実施例A-5-(2)で得られた化合物(0.99g,1.34mmol)、塩化メチレン(3mL)、TFA(1.4mL)からジカルボン酸の粗生成物(1.01g)を得た。得られた粗生成物(0.84g)およびキシレン(3mL)から標記化合物(0.31g,0.55mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.89(t,J=7.0Hz,11H),1.23-1.36(m,60H),1.40(br s,1H),1.48(br dd,J=13.8,6.1Hz,2H),1.56-1.66(m,7H),2.29(t,J=7.5Hz,2H),2.33-2.36(m,1H),4.09(t,J=7.2Hz,2H).
【0155】
(4)3-オクチルウンデシル 7-(ヒドロキシメチル)ヘプタデカノエートの合成
製造例2-(1)の方法に準じ、実施例A-5-(3)で得た化合物(0.31g,0.54mmol)、ボラン-THF錯体(1M,1.1mL,1.1mmol)およびTHF(6.0mL)から標記化合物(0.19g,0.33mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.89(t,J=7.0Hz,10H),1.22-1.37(m,55H),1.40(br s,1H),1.43-1.47(m,1H),1.57(q,J=6.6Hz,3H),1.61-1.70(m,2H),2.29(t,J=7.5Hz,2H),3.54(d,J=5.5Hz,2H),4.09(t,J=7.2Hz,2H).
【0156】
(5)2-{6-[(3-オクチルウンデシル)オキシ]-6-オキソヘキシル}ドデシル 1-メチルピロリジン-3-カルボキシレートの合成
実施例A-4-(5)の方法に準じ、実施例A-5-(4)で得た化合物(0.19g,0.33mmol)、1-メチルピロリジン-3-カルボン酸 塩酸塩(0.11g,0.67mmol)、EDC・HCl(0.14g,0.73mmol)、DIPEA(0.116mL,0.67mmol)、DMAP(8mg,0.07mmol)および塩化メチレン(1.5mL)から標記化合物(0.055g,0.083mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.89(t,J=7.0Hz,9H),1.20-1.34(m,53H),1.40(br s,1H),1.57(q,J=6.8Hz,2H),1.61-1.66(m,3H),2.05-2.17(m,2H),2.29(t,J=7.5Hz,2H),2.37(s,3H),2.45-2.56(m,1H),2.64(dd,J=9.5,7.0Hz,1H),2.68(dt,J=9.1,6.5Hz,1H),2.90(t,J=8.8Hz,1H),3.06(quin,J=7.8Hz,1H),3.99(d,J=5.9Hz,2H),4.08(t,J=7.2Hz,2H).
【0157】
<カチオン性脂質の合成(6)>
[実施例A-6]
2-{4-[(4-ノニルトリデシル)オキシ]-4-オキソブチル}ドデシル 1-メチルピロリジン-3-カルボキシレートの合成(カチオン性脂質6)
【化38】
【0158】
(1)4-ベンジル 1,1-ジ-tert-ブチル ブタン-1,1,4-トリカルボキシレートの合成
実施例A-4-(1)の方法に準じ、ジ-tert-ブチル マロネート(2.65g,12.25mmol)、THF(58mL)、60%水素化ナトリウム(0.49g,12.25mmol)および製造例6で得た化合物(3.00g,11.67mmol)から標記化合物(2.93g,7.46mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):1.43-1.48(m,20H),1.66-1.72(m,2H),1.82-1.86(m,2H),2.40(t,J=7.5Hz,2H),3.13(t,J=7.5Hz,1H),5.12(s,2H),7.31-7.38(m,5H).
【0159】
(2)1-ベンジル 4,4-ジ-tert-ブチル テトラデカン-1,4,4-トリカルボキシレートの合成
実施例A-6-(1)で得られた化合物(2.93g,7.46mmol)をTHF(38mL)に溶解し、氷冷下、60%水素化ナトリウム(0.31g,7.83mmol)を加え、1時間攪拌した。1-ヨードデカン(2.10g,7.83mmol)のTHF(5mL)溶液を加え、終夜加熱還流した。水を加えジエチルエーテルで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/ジエチルエーテル)にて精製し、標記化合物(2.59g,4.85mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.89(t,J=7.2Hz,3H),1.09-1.20(m,2H),1.22-1.33(m,15H),1.45(s,18H),1.48-1.56(m,2H),1.59(s,1H),1.76-1.84(m,4H),2.37(t,J=7.3Hz,2H),5.12(s,2H),7.32-7.38(m,5H).
【0160】
(3)2-[4-(ベンジロキシ)-4-オキソブチル]ドデカン酸の合成
実施例A-1-(3)の方法に準じ、実施例A-6-(2)で得られた化合物(2.59g,4.87mmol)、塩化メチレン(11mL)およびTFA(5mL)からジカルボン酸の粗生成物(2.34g)を得た。得られた粗生成物(2.05g)およびキシレン(11mL)から標記化合物(1.58g,4.21mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.89(t,J=7.0Hz,3H),1.07-1.22(m,1H),1.24-1.32(m,16H),1.41-1.57(m,2H),1.60-1.74(m,4H),2.34-2.41(m,3H),5.10-5.15(m,2H),7.31-7.40(m,5H).
【0161】
(4)2-{4-[(4-ノニルトリデシル)オキシ]-4-オキソブチル}ドデシル 1-メチルピロリジン-3-カルボキシレートの合成
製造例2-(1)の方法に準じ、実施例A-6-(3)で得た化合物(1.58g,4.21mmol)、ボラン-THF錯体(1M,8.4mL,8.4mmol)およびTHF(48mL)から標記化合物(1.29g,3.54mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.89(t,J=7.0Hz,3H),1.24-1.34(m,22H),1.35-1.42(m,2H),1.46-1.50(m,1H),1.67(quin,J=7.7Hz,3H),2.36-2.39(m,2H),3.51-3.58(m,2H),5.13(s,2H),7.32-7.39(m,5H).
【0162】
(5)2-[4-(ベンジロキシ)-4-オキソブチル]ドデシル 1-メチルピロリジン-3-カルボキシレートの合成
実施例A-4-(5)の方法に準じ、実施例A-6-(4)で得た化合物(0.50g,1.4mmol)、1-メチルピロリジン-3-カルボン酸 塩酸塩(0.46g,2.76mmol)、EDC・HCl(0.58g,3.03mmol)、DIPEA(0.48mL,2.76mmol)、DMAP(34mg,0.28mmol)および塩化メチレン(2mL)から標記化合物(0.33g,0.71mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.88(t,J=7.0Hz,3H),1.23-1.36(m,23H),1.42(s,5H),1.63-1.69(m,3H),1.85(dt,J=6.3,3.3Hz,1H),2.06-2.11(m,2H),2.33-2.36(m,6H),2.49(q,J=7.7Hz,1H),2.59-2.64(m,2H),2.82(t,J=8.8Hz,1H),2.94(s,1H),3.02(br t,J=8.3Hz,1H),3.74(br t,J=6.2Hz,1H),3.96-4.00(m,2H),5.11(s,2H),7.31-7.37(m,5H).
【0163】
(6)2-{4-[(4-ノニルトリデシル)オキシ]-4-オキソブチル}ドデシル 1-メチルピロリジン-3-カルボキシレートの合成
実施例A-1-(6)に準じ、実施例A-6-(5)で得た化合物(0.18g,0.37mmol)、10%パラジウム/炭素(0.20g,50%含水)および酢酸エチル(9mL)からカルボン酸の粗生成物(0.15g)を得た。
得られたカルボン酸(0.086g,0.23mmol)、製造例7-(7)で得た化合物(0.050g,0.16mmol)、EDC・HCl(0.086g,0.45mmol)、DIPEA(0.074mL,0.45mmol)および塩化メチレン(1.0mL)から標記化合物(9mg,0.014mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.89(t,J=7.0Hz,9H),1.21-1.37(m,57H),1.57-1.70(m,7H),2.06-2.15(m,2H),2.30(t,J=7.5Hz,2H),2.36(s,3H),2.45-2.57(m,1H),2.64(ddd,J=9.4,6.8,2.9Hz,2H),2.85(t,J=8.8Hz,1H),3.00-3.08(m,1H),3.97-4.07(m,4H).
【0164】
<カチオン性脂質の合成(7)>
[実施例A-7]
ビス(3-ノニルドデシル) 6-{[(1-メチルピロリジン-3-カルボニル)オキシ]メチル}ウンデカンジオエートの合成(カチオン性脂質7)
【化39】
【0165】
(1)5-ベンジル 1,1-ジ-tert-ブチル ペンタン-1,1,5-トリカルボキシレートの合成
実施例A-4-(1)の方法に準じ、ジ-tert-ブチル マロネート(2.34g,10.84mmol)、THF(52mL)、60%水素化ナトリウム(0.26g,10.8mmol)および製造例8で得た化合物(2.8g,10.3mmol)から標記化合物(2.09g,5.77mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):1.26-1.41(m,3H),1.43-1.49(m,20H),1.55-1.60(m,1H),1.69(quin,J=7.6Hz,2H),1.78-1.86(m,2H),2.37(t,J=7.5Hz,2H),3.11(t,J=7.5Hz,1H),5.11(s,2H),7.31-7.40(m,5H).
【0166】
(2)1,9-ジベンジル 5,5-ジ-tert-ブチル ノナン-1,5,5,9-テトラカルボキシレートの合成
実施例A-7-(1)で得た化合物(2.09g,5.14mmol)をTHF(23mL)に溶解し、室温で、60%水素化ナトリウム(0.23g,5.66mmol)およびヨウ化ナトリウム(0.077g,0.51mmol)を順次加え、30分間攪拌した。反応混合物に製造例8で得た化合物(1.39g,5.14mmol)のTHF(2mL)溶液を加え、65℃で加熱した。3日後、氷水を加えジエチルエーテルで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジエチルエーテル/n-ペンタン)にて精製し、標記化合物(2.27g,3.80mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):1.13-1.20(m,4H),1.42(s,17H),1.58-1.70(m,4H),1.74-1.80(m,4H),2.35(t,J=7.6Hz,4H),5.10(s,4H),7.29-7.39(m,10H).
【0167】
(3)7-(ベンジロキシ)-2-[5-(ベンジロキシ)-5-オキソペンチル]-7-オキソペンタン酸の合成
実施例A-1-(3)の方法に準じ、実施例A-7-(2)で得られた化合物(2.27g,3.80mmol)、塩化メチレン(9mL)およびTFA(4.1mL)からジカルボン酸の粗生成物(2.02g)を得た。得られた粗生成物およびキシレン(10mL)から標記化合物(1.47g,3.34mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):1.27-1.41(m,5H),1.42-1.50(m,6H),1.59-1.70(m,7H),2.31-2.40(m,5H),5.12(s,4H),7.31-7.38(m,10H).
【0168】
(4)ジベンジル 6-(ヒドロキシメチル)ウンデカンジオエートの合成
製造例2-(1)の方法に準じ、実施例A-7-(3)で得た化合物(1.47g,3.33mmol)、ボラン-THF錯体(1M,6.7mL、6.7mmol)およびTHF(38mL)から標記化合物(1.14g,2.70mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):1.24-1.38(m,10H),1.42-1.47(m,3H),1.65(quin,J=7.2Hz,4H),1.71(br s,1H),2.37(t,J=7.5Hz,4H),3.50(br d,J=4.0Hz,2H),5.12(s,4H),7.31-7.39(m,7H).
【0169】
(5)ジベンジル 6-{[(1-メチルピロリジン-3-カルボニル)オキシ)メチル]ウンデカンジオエートの合成
実施例A-4-(5)の方法に準じ、実施例A-7-(4)で得た化合物(1.14g,2.68mmol)、1-メチルピロリジン-3-カルボン酸 塩酸塩(0.89g,5.36mmol)、EDC・HCl(1.13g,5.90mmol)、DIPEA(0.93mL,5.36mmol)、DMAP(0.066g,0.54mmol)および塩化メチレン(12mL)から標記化合物(0.56g,1.05mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):1.26-1.38(m,9H),1.59-1.70(m,5H),1.81(br s,1H),2.06-2.14(m,2H),2.34-2.40(m,7H),2.47-2.55(m,1H),2.58-2.68(m,2H),2.84(t,J=8.8Hz,1H),3.04(quin,J=7.7Hz,1H),3.98(d,J=5.9Hz,2H),5.13(s,4H),5.32(s,1H),7.28(s,1H),7.32-7.40(m,10H).
【0170】
(6)ビス(3-ノニルドデシル) 6―{[(1-メチルピロリジン-3-カルボニル)オキシ)メチル]ウンデカンジオエートの合成
実施例A-1-(6)に準じ、実施例A-7-(5)で得た化合物(0.56g,1.03mmol)、10%パラジウム/炭素(0.55g,50%含水)および酢酸エチル(27mL)からジカルボン酸の粗生成物(0.24g)を得た。
得られたカルボン酸(0.055g,0.15mmol)、製造例7-(3)で得た化合物(0.096g,0.31mmol)、EDC・HCl(0.118g,0.62mmol)、DIPEA(0.11mL,0.62mmol)、DMAP(4mg,0.031mmol)および塩化メチレン(0.7mL)から標記化合物(0.029g,0.030mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.88(t,J=7.0Hz,13H),1.12-1.45(m,84H),1.48-1.70(m,12H),2.09(q,J=7.3Hz,2H),2.28(t,J=7.6Hz,4H),2.36(s,3H),2.45-2.57(m,1H),2.63(br dd,J=8.9,6.9Hz,2H),2.83(br t,J=8.6Hz,1H),3.03(quin,J=7.7Hz,1H),3.94-4.02(m,2H),4.07(t,J=7.2Hz,4H).
【0171】
<カチオン性脂質の合成(8)>
[実施例A-8]
ビス(3-ペンチルオクチル) 9―{[(1-メチルピロリジン-4-カルボニル)オキシ]メチル}ヘプタデカンジオエートの合成(カチオン性脂質8)
【化40】
【0172】
(1)8-ベンジル 1,1-ジ-tert-ブチル オクタン-1,1,8-トリカルボキシレートの合成
実施例A-5-(1)の方法に準じ、ジ-tert-ブチル マロネート(1.5mL,6.70mmol)、製造例10で得た化合物(2.0g,6.39mmol)、60%水素化ナトリウム(0.27g,6.70mmol)、ヨウ化ナトリウム(0.096g,0.64mmol)およびTHF(60mL)から標記化合物(1.60g,3.57mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):1.23-1.36(m,8H),1.45(s,18H),1.58-1.69(m,2H),1.72-1.84(m,2H),2.30-2.40(m,2H),3.05-3.15(m,1H),5.11(s,2H),7.28-7.41(m,5H).
【0173】
(2)1,15-ジベンジル 8,8-ジ-tert-ブチル ペンタデカン-1,8,8,15-テトラカルボキシレートの合成
実施例A-7-(2)の方法に準じ、実施例A-8-(1)で得られた化合物(1.6g,3.57mmol)、製造例10で得た化合物(1.17g,3.75mmol)、ヨウ化ナトリウム(0.053g,0.36mmol)、60%水素化ナトリウム(0.16g,4.0mmol)およびTHF(15mL)から標記化合物(1.4g,2.07mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):1.03-1.17(m,4H),1.23-1.36(m,12H),1.43(s,18H),1.56-1.68(m,4H),1.70-1.80(m,4H),2.29-2.38(m,4H),5.11(s,4H),7.27-7.41(m,10H).
【0174】
(3)10-(ベンジロキシ)-2-[8-(ベンジロキシ)-8-オキソオクチル]-10-オキソデカン酸の合成
実施例A-1-(3)の方法に準じ、実施例A-8-(2)で得られた化合物(1.40g,2.06mmol)、塩化メチレン(10mL)およびTFA(2.4mL)からジカルボン酸の粗生成物(1.17g)を得た。得られた粗生成物およびキシレン(25mL)から標記化合物(0.83g,1.61mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):1.18-1.37(m,16H),1.38-1.71(m,8H),2.26-2.41(m,5H),5.11(s,4H),7.28-7.43(m,10H).
【0175】
(4)ジベンジル 9-(ヒドロキシメチル)ヘプタデカンジオエートの合成
製造例2-(1)の方法に準じ、実施例A-8-(3)で得た化合物(0.83g,1.59mmol)、ボラン-THF錯体(1M,4.0mL、4.0mmol)およびTHF(6.0mL)から標記化合物(0.72g,1.43mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):1.12-1.51(m,22H),1.56-1.72(m,4H),2.29-2.41(m,4H),3.47-3.58(m,2H),5.11(s,4H),7.28-7.44(m,10H).
【0176】
(5)ジベンジル 9-{[(1-メチルピロリジン-3-カルボニル)オキシ)メチル]ヘプタデカンジオエートの合成
実施例A-4-(5)の方法に準じ、実施例A-8-(4)で得た化合物(0.73g,1.43mmol)、1-メチルピロリジン-3-カルボン酸 塩酸塩(0.36g,2.14mmol)、EDC・HCl(0.438g,2.29mmol)、DIPEA(0.37mL,2.14mmol)、DMAP(0.035g,0.29mmol)および塩化メチレン(6mL)から標記化合物(0.81g,1.30mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):1.13-1.35(m,22H),1.58-1.69(m,5H),2.04-2.14(m,2H),2.29-2.39(m,7H),2.43-2.54(m,1H),2.57-2.67(m,2H),2.84(t,J=8.8Hz,1H),2.99-3.08(m,1H),3.97(d,J=5.7Hz,2H),5.11(s,4H),7.29-7.40(m,9H).
【0177】
(6)ビス(3-ヘキシルノニル) 9―{[(1-メチルピロリジン-3-カルボニル)オキシ)メチル]ヘプタデカンジオエートの合成
実施例A-1-(6)に準じ、実施例A-8-(5)で得た化合物(0.81g,1.30mmol)、10%パラジウム/炭素(0.028g,50%含水)および酢酸エチル(15mL)からジカルボン酸の粗生成物(0.66g)を得た。
得られたジカルボン酸(0.10g,0.23mmol)、製造例9-(2)で得た化合物(0.124g,0.54mmol)、EDC・HCl(0.113g,0.59mmol)、DIPEA(0.10mL,0.59mmol)、DMAP(6mg,0.050mmol)および塩化メチレン(5mL)から標記化合物(0.077g,0.090mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.88(t,J=7.0Hz,13H),1.18-1.35(m,64H),1.37-1.42(m,2H),1.52-1.66(m,9H),2.06-2.13(m,2H),2.25-2.32(m,4H),2.36(s,3H),2.45-2.53(m,1H),2.59-2.66(m,2H),2.85(t,J=8.8Hz,1H),3.00―3.08(m,1H),3.98(d,J=5.9Hz,2H),4.08(t,J=7.1Hz,4H).
【0178】
<カチオン性脂質の合成(9)>
[実施例A-9]
ビス(3-ペンチルオクチル) 9―{[(1-メチルピロリジン-3-カルボニル)オキシ]メチル}ヘプタデカンジオエートの合成(カチオン性脂質9)
【化41】
【0179】
実施例A-1-(6)に準じ、実施例A-8-(6)で得たジカルボン酸(0.10g,0.23mmol)、3-ペンチルオクタン-1-オール(CAS 1443519-63-8)(0.11g,0.54mmol)、EDC・HCl(0.11g,0.59mmol)、DIPEA(0.10mL,0.59mmol)、DMAP(6mg,0.050mmol)および塩化メチレン(5mL)から標記化合物(0.089g,0.11mmol)を得た。
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):0.88(t,J=7.2Hz,13H),1.17-1.34(m,56H),1.37-1.43(m,2H),1.53-1.69(m,10H),2.06-2.14(m,2H),2.28(t,J=7.5Hz,4H),2.36(s,3H),2.45-2.53(m,1H),2.58-2.66(m,2H),2.84(t,J=8.9Hz,1H),3.00-3.08(m,1H),3.98(d,J=5.7Hz,2H),4.08(t,J=7.1Hz,4H).
【0180】
<カチオン性脂質の合成(10)>
[比較例A’-1]
2-{9-オキソ-9-[(3-ペンチルオクチル)オキシ]ノニル}ドデシル 1-メチルアゼパン-4-カルボキシレートの合成(カチオン性脂質10)
【化42】
【0181】
(1)1-tert-ブチル 4-(2-{9-オキソ-9-[(3-ペンチルオクチル)オキシ]ノニル}ドデシル) アゼパン-1,4-ジカルボキシレートの合成
実施例A-1-(8)の方法に準じ、実施例A-1-(7)で得た化合物(60mg,0.11mmol)、1-(tert-ブトキシカルボニル)アゼパン-4-カルボン酸(56mg,0.23mmol)、EDC・HCl(48mg,0.25mmol)、DIPEA(0.039mL,0.23mmol)、DMAP(2.8mg,0.023mmol)および塩化メチレン(0.80mL)から標記化合物(81mg,0.11mmol)を得た。
【0182】
(2)2-{9-オキソ-9-[(3-ペンチルオクチル)オキシ]ノニル}ドデシル 1-メチルアゼパン-4-カルボキシレートの合成
実施例A-2-(2)の方法に準じ、比較例A’-1(1)で得られた化合物(81mg,0.11mmol)、TFA(1.1mL)、THF(1mL)、ホルムアルデヒド溶液(37%,0.080mL,1.1mmol)、硫酸ナトリウム(460mg,3.23mmol)およびナトリウムトリ(アセトキシ)ボロヒドリド(69mg,0.32mmol)から標記化合物(51mg,0.077mmol)を得た。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):0.88(t,J=7.0Hz,9H),1.14-1.49(m,49H),1.51-1.71(s,4H),1.73-2.10(m,5H),2.23-2.31(m,2H),2.34(s,3H),2.45-2.76(m,5H),3.92-3.98(m,2H),4.03-4.12(m,2H).
【0183】
<カチオン性脂質の合成(11)>
[比較例A’-2]
2-ブチルオクチル 9-ブロモノナノエートの合成(カチオン性脂質11)
【化43】
【0184】
実施例A-1-(8)の方法に準じ、実施例A-1-(7)で得た化合物(50mg,0.095mmol)、1-メチル-3-アゼチジンカルボン酸(22mg,0.19mmol)、EDC・HCl(40mg,0.21mmol)、DIPEA(0.033mL,0.19mmol)、DMAP(2.3mg,0.019mmol)および塩化メチレン(0.80mL)から標記化合物(30mg,0.048mmol)を得た。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):0.88(t,J=6.9Hz,9H),1.14-1.47(m,44H),1.61(s,8H),2.30(s,5H),3.26(s,3H),3.46-3.64(m,2H),3.99(d,J=5.9Hz,2H),4.08(t,J=7.1Hz,2H).
【0185】
合成したカチオン性脂質1~11を下記表Aに示す。
【表A-1】
【表A-2】
【表A-3】
【0186】
B.組成物の調製および解析
<組成物の調製(1)>
[実施例B-1]
実施例A-1のカチオン性脂質1を用いて組成物を調製した。核酸としては、センス鎖5’-GGAfUfCAfUfCfUfCAAGfUfCfUfUAfCT*T-3’(T:DNA、fU,fC=2’-Fluoro RNA、*=Phosphorothioate linkage)(配列番号1)、アンチセンス鎖5’-GfUAAGAfCfUfUGAGAfUGAfUfCfCT*T-3’(T:DNA、fU,fC=2’-Fluoro RNA、*=Phosphorothioate linkage)(配列番号2)の塩基配列からなる、Factor VII(血液凝固第VII因子)遺伝子の発現を抑制するsiRNAであり、アニーリング済みのもの(株式会社ジーンデザイン、以下「Factor VII siRNA」という場合がある。)を使用した。
【0187】
Factor VII siRNAを25mM酢酸ナトリウム水溶液(pH4.0)で80μg/mLに溶解し、siRNA希釈液とした。また、カチオン性脂質1、DSPC(日本精化株式会社)、Cholesterol(日本精化株式会社)、MPEG2000-DMG(日油株式会社,メトキシ(ポリエチレングリコール,分子量=2000)-ジミリスチルグリセロール)を60/8.5/30/1.5(モル比)の割合で総脂質濃度7.2mMとなるようにエタノールに溶解し、脂質溶液とした。siRNA希釈液と脂質溶液とを、それぞれ3mL/分、1mL/分の流速で投入して混合することにより、脂質複合体水溶液を得た。得られた脂質複合体水溶液を、透析膜(商品名「Float-A-Lyzer G2」、SPECTRUM社、100K MWCO)を用いた透析に供し、外液をリン酸緩衝液(PBS、pH7.4)に置換した。透析後、濃縮及び濾過滅菌を行い、実施例B-1の液体組成物を得た。
【0188】
[実施例B-2]
カチオン性脂質として、カチオン性脂質1の代わりに実施例A-2のカチオン性脂質2を用いた以外は実施例B-1と同様にして、実施例B-2の組成物を得た。
【0189】
[比較例B’-1]
カチオン性脂質として、カチオン性脂質1の代わりに比較例A’-1のカチオン性脂質10を用いた以外は実施例B-1と同様にして、比較例B’-1の組成物を得た。
【0190】
[比較例B’-2]
カチオン性脂質として、カチオン性脂質1の代わりに比較例A’-2のカチオン性脂質11を用いた以外は実施例B-1と同様にして、比較例B’-2の組成物を得た。
【0191】
<組成物の解析(1)>
実施例B-1、実施例B-2、比較例B’-1及び比較例B’-2の組成物について、脂質複合体へのsiRNAの封入率を測定した。
【0192】
具体的には、組成物をRNase Free Waterで希釈し、Quant-iT RiboGreen RNA Reagent(Invitrogen社)を使用して測定したsiRNA濃度(A)を、脂質複合体外液に存在するsiRNAとした。また、組成物を1% Triton X-100で希釈して測定したsiRNA濃度(B)を組成物中の全siRNA濃度とした。続いて、次式(F1)により、核酸の封入率を算出した。
封入率(%)=100-(A/B)×100 (F1)
【0193】
また、粒子径測定装置(商品名「Zetasizer Nano ZS」、Malvern社製)で脂質複合体の平均粒子径を測定した。
【0194】
表1に、siRNAの封入率ならびに脂質複合体の平均粒子径(Z-平均)および多分散指数を示す。
【0195】
【表1】
実施例B-1及び実施例B-2の組成物は、比較例B’-1及び比較例B’-2の組成物と同等の高いsiRNAの封入率を示すことが確認される。
【0196】
<組成物の調製(2)>
[実施例B-3]
カチオン性脂質として、カチオン性脂質1の代わりに実施例A-3のカチオン性脂質3を用いた以外は、組成物の調製(1)における実施例B-1と同様にして、実施例B-3の組成物を得た。
【0197】
[実施例B-4]
カチオン性脂質として、カチオン性脂質3の代わりに、実施例A-4のカチオン性脂質4を用いた以外は実施例B-3と同様にして、実施例B-4の組成物を得た。
【0198】
[実施例B-5]
カチオン性脂質として、カチオン性脂質3の代わりに、実施例A-5のカチオン性脂質5を用いた以外は実施例B-3と同様にして、実施例B-5の組成物を得た。
【0199】
[実施例B-6]
カチオン性脂質として、カチオン性脂質3の代わりに、実施例A-6のカチオン性脂質6を用いた以外は実施例B-3と同様にして、実施例B-6の組成物を得た。
【0200】
[実施例B-7]
カチオン性脂質として、カチオン性脂質3の代わりに、実施例A-7のカチオン性脂質7を用いた以外は実施例B-3と同様にして、実施例B-7の組成物を得た。
【0201】
[実施例B-8]
カチオン性脂質として、カチオン性脂質3の代わりに、実施例A-8のカチオン性脂質8を用いた以外は実施例B-3と同様にして、実施例B-8の組成物を得た。
【0202】
[実施例B-9]
カチオン性脂質として、カチオン性脂質3の代わりに、実施例A-9のカチオン性脂質9を用いた以外は実施例B-3と同様にして、実施例B-9の組成物を得た。
【0203】
[実施例B-10]
カチオン性脂質として、カチオン性脂質3の代わりに、実施例A-1のカチオン性脂質1を用いた以外は実施例B-3と同様にして、実施例B-10の組成物を得た。
【0204】
[比較例B’-3]
カチオン性脂質として、カチオン性脂質3の代わりに、特許文献2に記載された下記式(i)で表されるジ((Z)-ノナン-2-エン-1-イル)9-((4-(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)ヘプタデカンジオエート(以下、「ALN-319」という場合がある。)を、特許文献2に記載された方法にしたがって合成して用いた以外は実施例B-3と同様にして、比較例B’-3の組成物を得た。
【0205】
【化44】
【0206】
<組成物の解析(2)>
組成物の解析(1)と同様にして、実施例B-3~実施例B-10及び比較例B’-3の組成物について、脂質複合体へのsiRNAの封入率、及び脂質複合体の平均粒子径を測定した。表2に、siRNAの封入率、脂質複合体の平均粒子径(Z-平均)、および多分散指数を示す。
【表2】
【0207】
<組成物の解析(4)>
さらに、実施例B-3~実施例B-9および比較例B’-3の組成物を密閉したバイアルにて4℃で1.5ヶ月間保管し、脂質複合体の平均粒子径(保管後平均粒子径)を組成物の解析(1)と同様にして測定した。表3に、脂質複合体の平均粒子径(Z-平均)の変化を示す。表中、平均粒子径の変化(%)は、保管後平均粒子径/保管前平均粒子径×100で算出した。
【0208】
【表3】
【0209】
実施例B-3~実施例B-9の組成物は、1.5ヶ月保管後においても平均粒子径がほとんど変化せず、比較例B’-3の組成物よりも物理的に安定であることが示された。これらの結果は、本発明のカチオン性脂質が、一定期間保管した場合に脂質複合体の粒子径の増大を抑制し得ることを示す。
【0210】
C.試験例
[試験例1]
実施例B-1、実施例B-2、比較例B’-1および比較例B’-2の組成物を、脂質複合体に封入されたFactor VII siRNA濃度が3μg/mL又は30μg/mLとなるようにPBSで希釈した。各組成物を、ICRマウス(n=3)に10mL/kgの投与容量で尾静脈内投与し、投与1日後に麻酔下で採血を実施した。遠心により血液から血漿を分離し、血漿中のFactor VIIタンパク質濃度を市販のキット(商品名「BIOPHEN FVII」、HYPHEN BioMed社)により定量した。陰性対照として、PBSを投与した群に同様の処理を行った。
【0211】
PBS投与群(陰性対照)のFactor VIIタンパク質濃度を100%とし、組成物投与群のFactor VIIタンパク質濃度を相対値として算出した。結果を図1および表4に示す。
【0212】
【表4】
実施例B-1及び実施例B-2の組成物は、比較例B’-1及び比較例B’-2の組成物よりも、Factor VIIタンパク質の発現抑制効果が高いことが確認される。この結果は実施例の組成物が、核酸を細胞質に効率よく放出していることを示す。
【0213】
[試験例2]
実施例B-3~実施例B-10及び比較例B’-3の組成物を試験例1と同様にしてICRマウス(n=3)に投与し、PBS投与群(陰性対照)のFactor VIIタンパク質濃度を100%として、投与1日後の血漿中のFactor VIIタンパク質濃度の相対値を算出した。結果を図2および表5に示す。
【0214】
【表5】
上記試験例1~2の結果は、実施例の組成物が、核酸を細胞質へ放出可能であることを示す。
また、上記試験1~2の結果は、実施例B-1、実施例B-2、実施例B-3、実施例B-4、実施例B-5、実施例B-6、実施例B-8、実施例B-9及び実施例B-10の組成物(カチオン性脂質1,2,3,4,5,6,8,9)は、Factor VIIタンパク質の発現の抑制効果(特にsiRNA投与量が比較的高い場合)に優れることを示す。これらの結果から、これらの組成物は核酸を細胞質に効率よく放出することが確認される。
また、上記試験1~2の結果は、実施例B-1、実施例B-2、実施例B-3、実施例B-4、実施例B-5、実施例B-6、実施例B-9及び実施例B-10の組成物(カチオン性脂質1,2,3,4,5,6,9)が、siRNA投与量が少ない場合であっても、Factor VIIタンパク質の発現を抑制したことを示す。これらの結果から、これらの組成物は核酸を細胞質に効率よく放出することが確認される。
特に実施例B-1、実施例B-2、実施例B-4、実施例B-6及び実施例B-10の組成物(カチオン性脂質1,2,4,6)は、比較例B’-3の組成物よりも、Factor VIIタンパク質の発現抑制効果が高い。これらの組成物は核酸を細胞質により効率的に放出できることを示唆する。
【0215】
以上の結果から、本発明の一形態のカチオン性脂質によれば、核酸を細胞質に効率よく放出することが可能となる。また、本発明の一形態のカチオン性脂質によれば、一定期間保管した際に、脂質複合体の粒子径の増大を抑制することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0216】
本発明によれば、核酸を細胞質に放出することが可能なカチオン性脂質を提供することができる。
図1
図2
【配列表】
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