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  • 特許-ケイ化ウランの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】ケイ化ウランの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/06 20060101AFI20221025BHJP
   G21C 21/02 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
C01B33/06
G21C21/02 200
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019564402
(86)(22)【出願日】2018-06-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-20
(86)【国際出願番号】 US2018037438
(87)【国際公開番号】W WO2019018082
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-04-30
(31)【優先権主張番号】62/523,302
(32)【優先日】2017-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/005,928
(32)【優先日】2018-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】ラホーダ、エドワード、ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ミドルバーグ、サイモン
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-050030(JP,A)
【文献】米国特許第03100183(US,A)
【文献】米国特許第03331666(US,A)
【文献】米国特許第06120706(US,A)
【文献】国際公開第2014/191700(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/06
G21C 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化ウランを生成し、
当該二酸化ウランを炭素と反応させて炭化ウランを生成し、
当該炭化ウランを、過剰水素の存在下で、シラン、ハロゲン化ケイ素、シロキサンまたはそれらの組み合わせから成るケイ素系反応物と反応させてケイ化ウラン生成物を得るステップを含む方法。
【請求項2】
前記二酸化ウランがフッ化ウランから生成される、請求項1の方法。
【請求項3】
前記フッ化ウランは、六フッ化ウラン(UF)、フッ化ウラニル(UO)および四フッ化ウラン(UF)の中から選択される、請求項2の方法。
【請求項4】
前記二酸化ウランは、炭酸ウラニルアンモニウム法、重ウラン酸アンモニウム法および総合乾式ルート法から成る群より選択したプロセスによって生成される、請求項1の方法。
【請求項5】
前記ケイ素系反応物は、直鎖状、枝分かれ状または環状の1~6個のケイ素原子を有する、請求項1の方法。
【請求項6】
前記ケイ素系反応物はSi2n+2という一般化学式で表され、ここに、nは1~6の整数であり、Xは水素、ハロゲン化物およびそれらの組み合わせから成る群より選択されることを特徴とする、請求項1の方法。
【請求項7】
前記ケイ化ウラン生成物はUSiである、請求項1の方法。
【請求項8】
前記ケイ化ウラン生成物を得た後、残留炭素をハロゲン化ケイ素および過剰ハロゲン化物と反応させることによって当該残留炭素を除去する、請求項1の方法。
【請求項9】
前記ハロゲン化物は、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物およびそれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項8の方法。
【請求項10】
前記ケイ化ウラン生成物におけるウラン対ケイ素比は、二酸化ウラン、炭化ウランおよびケイ素系反応物のうちの1つ以上を形成するために使用される原料化合物の比率を変えることにより変動することを特徴とする、請求項1の方法。
【請求項11】
前記方法はロータリーキルンで行われる、請求項1の方法。
【請求項12】
各ステップが、前記ケイ化ウラン生成物の目標となる化学量論に関わる反応物の融点を下回る温度で行われる、請求項1の方法。
【請求項13】
前記ケイ化ウラン生成物を生成するステップが500~800Kの温度範囲で行われる、請求項1の方法。
【請求項14】
前記ケイ化ウラン生成物が生成される温度を超えるが前記ケイ化ウラン生成物の融点を下回る温度で前記ケイ化ウラン生成物を均質化するステップをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項15】
ケイ化ウラン原子燃料を生成する方法であって、
(1)UF+H+2HO→UO+6HF
(2)
(i)UO+3C→UC+2COと
(ii)UO+2C→UC+CO
のいずれかまたは両方、および
(3)3UC+(2SiXまたはSiOのいずれか)+2X→USi+3CX
のステップを含み、ここに、XはH、Cl、F、Br、Iおよびそれらの組み合わせから成る群より選択されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の権利に関する陳述
本発明は、エネルギー省との契約第DE-NE0008222号に基づく政府支援の下でなされたものである。米国政府は、本発明に対して一定の権利を有している。
【0002】
本発明は原子燃料に使用するケイ化ウランの製造方法に関し、具体的には、中間物の炭化ウランからケイ化ウランを製造するプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
商用原子燃料は、主に、濃縮ウランおよび劣化ウラン(すなわち、天然ウラン鉱石に比べてウラン235同位体比が濃縮または欠乏しているウラン)の供給原料としてUFを使用するプロセスによって作製されてきた。濃縮されたUFは、原子燃料ペレットの製造に必要なセラミック焼結性が得られるように選択されたプロセスによって、UOに転換される。
【0004】
初期にReeseらに付与された1961年出願の米国特許第3,168,369号およびBlundellらに付与された1962年出願の米国特許第3,235,327号は、六フッ化ウランから原子炉用の二酸化ウラン原子燃料を製造するのに必要な基本的反応および一般的技術をすべて記載している。
【0005】
その後、UFをウラン酸化物に転換するプロセスに関して多数の米国特許が付与された。例えば、米国特許第4,830,841号およびその中で引用されている米国特許は、加熱炉、ロータリーキルン、流動床などでUFを二酸化ウランに転換する手順を記載している。
【0006】
米国特許第4,397,824号および米国特許第5,875,385などの他の米国特許は、原子炉燃料を製造するための単一ステップのプロセスを開示している。ウラン酸化物固体粉末を製造するための単一ステッププロセスの一例として、米国特許第5,752,158号は、2つの気体反応物ストリームを一体化させることによってUFからウラン酸化物固体粉末および気体HFを製造する単一ステップ修正直接ルート(ModifiedDirect Route)(MDR)法を記載している。この2つの反応物ストリームのうち第1のストリームは、随意的に酸素(O)と混合したUFを含み、第2のストリームは、水素(Hまたは水素含有化合物)と酸素(酸素含有化合物)の混合物である。両気体反応物ストリームは、UFが、火炎反応によって容易に分離可能な固体ウラン酸化物および気体HF生成物に迅速に転換されるような温度および組成で一体化される。
【0007】
中間乾式ルート(Intermediate Dry Route)法を含む、二酸化ウラン粉末を得るための別の単一ステップ乾式プロセス(すなわちUFのUOへの直接還元)は広く使用されており、例えば米国特許第4,889,663号および米国特許第4,397,824号に記載されている。フッ化ウラニルUOの水蒸気加水分解後に熱加水分解を行う乾式転換プロセスによって得られる粉末は、焼結し易いという利点がある。生成される粉末は非常に活性が高いが、取り扱いが難しく、加工した生のペレットは非常にもろい。したがって、慎重な取り扱いが必要であり、特別の注意を払わなければ多くの不良品が生じる。
【0008】
米国特許第6,656,391号は、硝酸ウラニル六水和物(UNH)とUFの両方からUO/Uを共に生成するための湿式重ウラン酸アンモニウム(ADU)法の使用を開示している。特に、このプロセスで生成したUO/Uは、次に、UOを生成するためにか焼炉で処理される。ADU法で生成されるUO粉末は、安定だが活性度は中程度(すなわち、定常的に達成できる最終ペレット密度は約97.5%)にとどまる。
【0009】
Siなどのケイ化ウラン燃料は、金属ウランと金属ケイ素を混合し、1665℃を超える温度で融解するのが従来の製造方法である。UFは、最も一般的な商業ウラン原材料である。USiを製造する際、まず、複数ステップより成るプロセスでUFを金属ウランに転換する必要があるが、この方法はコストが高く、大規模製造への適用が難しい。
【0010】
例えば、次の高温プロセスによって、非常に腐食性の高いHF雰囲気が形成される。
UF+H→2HF+UF
次のような手順でウランを分離するには高温プロセスに頼る必要があり、金属ウランが生成される。
UF+2Mg→U+2MgF
生成した金属ウランを金属ケイ素と混合し、次式により1652℃を超える温度でUSiを製造する。
3U+2Si→USi
金属ウランは非常に密度が高い。ウランの量が多くなると核分裂プロセスが始まる可能性があるので、ひとつのバッチに使用する金属ウランは少量にとどめる。したがって、大規模製造およびバッチ製造を行うにあたり、これらのステップの各々には臨界の問題がある。
【0011】
より安全で経済的な方法が望まれる。
【発明の概要】
【0012】
本願で説明する方法は、ケイ化ウランの生成に金属ウランおよび金属ケイ素を使用する際の問題に対処するものである。
【0013】
さまざまな局面において、本願で説明する方法は、二酸化ウランを生成し、当該二酸化ウランを炭素の供給源と反応させて炭化ウランを生成し、当該炭化ウランを過剰水素の存在下でシラン、ハロゲン化ケイ素、シロキサンまたはそれらの組み合わせから成るケイ素系反応物と反応させてケイ化ウランを生成することから成る方法である。
【0014】
当該二酸化ウランは、炭酸ウラニルアンモニウム法、重ウラン酸アンモニウム法および総合乾式ルート(integrated dry route)法から成る群より選択したプロセスまたは他の既知の適当なプロセスによって生成することができる。
【0015】
当該二酸化ウランは、フッ化ウランから生成することができる。さまざまな局面において、当該フッ化ウランは、六フッ化ウラン(UF)、フッ化ウラニル(UO)および四フッ化ウラン(UF)から選択することができる。
【0016】
本願で説明する方法または当該方法の1つ以上のステップは、さまざまな局面において、ロータリーキルンで行うことができる。当該方法において当該ケイ化ウランを生成するステップは、既報のSiHの分解温度を大きく超えない温度(例えば約623K~673K(摂氏約350~400度)を超える温度)で行うことができる。ただし、ケイ化ウランを生成するステップの温度は、約500K~800K(摂氏約227~527度)、好ましくは約500K~700K(摂氏約227~427度)の温度範囲にわたる。本方法の先行ステップは、反応物の融点を下回る温度で行うことができる。例えば、目標となるケイ化ウランの目標となる化学量論の融点を下回る温度で行うが一般的である。
【0017】
目標となるケイ化ウランは、USiでよい。ただし、ウラン・ケイ素生成物におけるウラン対ケイ素比は、ケイ化ウラン、炭化ウラン、ならびに水素化ケイ素およびハロゲン化ケイ素のうちの1つの生成に使用される原料化合物の比を変えることによって変動させることができる。
【0018】
ケイ化ウランを生成する反応の終了後に、目標となるUSiに比べて化学量論的にばらつきのある相の成分を減らすために、高温での均質化ステップが必要なことがある。これは、目標物質の融点(例えばUSiの場合、摂氏1665度)を最高とする温度で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
添付の図面を参照することにより、本発明の特徴と利点の理解が深まるであろう。
図1】0~2000Kの温度範囲にわたるいくつかの反応物(H、Cl、FおよびBr)のギブズの自由エネルギー値(eV)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本願で使用する「a」、「an」および「the」に先導される単数形は、文脈からそうでないことが明らかでない限り、複数形をも包含する。
【0021】
特許請求の範囲を含み、本願では、特段の指示がない限り、量、値または特性を表すあらゆる数字は、すべての場合において「約」という用語により修飾されると理解されたい。したがって、数字と一緒に「約」という用語が明示されていない場合でも、数字の前に「約」という語があるものと読み替えることができる。したがって、別段の指示がない限り、以下の説明で記載されるすべての数値パラメータは、本発明に基づく組成物および方法が指向する所望の特性に応じて変わる可能性がある。最低限のこととして、また均等論の適用を特許請求の範囲に限定する意図はないが、本願に記載された各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数を勘案し、通常の丸め手法を適用して解釈するべきである。
【0022】
本願で述べるあらゆる数値範囲は、そこに内包されるすべての断片的部分を含むものとする。例えば、「1~10」という範囲は、記述された最小値1と最大値10との間(最小値と最大値を内包)のすべての断片的部分を含むことを意図している。すなわち、最小値は1以上、最大値は10以下である。
【0023】
「ロータリーキルン」あるいは「か焼炉」という用語は、回転管熱加水分解炉を意味し、例えば、米国特許第6,136,285号に概説したように加熱器手段、入力端に粉末供給手段、および反応生成物出口付近に注入器手段を有し、当該注入器は例えば蒸気、気体HOおよびHのうちの1つ以上を逆流注入するためのものであることを特徴とする加熱炉や、他の同等の市販の加熱炉が含まれる。
【0024】
本願で説明する方法は、二酸化ウランを炭素と反応させて生成した炭化ウランを、シラン、ハロゲン化ケイ素、シロキサンまたはそれらの組み合わせから成るケイ素系反応物ならびに過剰水素と反応させてケイ化ウランを生成することを特徴とする方法である。
【0025】
本願で説明する方法は、さまざまな局面において、二酸化ウランを生成させ、当該二酸化ウランを黒鉛やカーボンブラックなどの任意の炭素源からの炭素と反応させて炭化ウランを生成させ、当該炭化ウランを直鎖状、枝分かれ状または環状のケイ素系反応物と反応させることを特徴とする。ケイ素系反応物は、シラン(例えばSiH、Si、Si、Si10、Si12またはSi14)、ハロゲン化ケイ素(例えばSiF、SiHF、SiF、SiCl、Si、SiまたはSi10l4など)、またはシロキサン(例えばSiO)から選択することができ、それを過剰水素(H)の存在下で反応させてケイ化ウランを生成させる。さまざまな局面において、ケイ素系反応物はSi2n+2という一般化学式で表すことができ、ここに、nは1~6であり、Xは水素、ハロゲン化物およびそれらの組み合わせから成る群より選択される。別の局面において、ケイ素系反応物は、2n+2Xより少ない分子数から成る環状構造であってよい。
【0026】
本願の方法の模式的な例を以下に示すが、二酸化ウランを生成するための既知の任意の適当な方法が使える。
UF+H+2HO→UO+6HF
二酸化ウランから炭化ウランへの転換は、以下のように行うことができる。
UO+3C→UC+2CO
または
UO+2C→UC+CO
以下に例示する反応で、炭化ウランを化学量論量のケイ化物と反応させる。
3UC+2SiX+2X→USi+3CX
ここに、XはHであるのが好ましい。その場合、反応式は次のようになる。
3UC+2SiH+2H→USi+3CH
Xは、F、Cl、BおよびIから成る群より選択したハロゲン化物、またはHとハロゲン化物の混成でもよい。Xがハロゲン化物の場合、添付の図に示すようにハロゲン化物系内のギブズの自由エネルギーが高いため、熱力学的に反応がより難しいことがわかる。
【0027】
ウラン酸化物を生成するための既知の適当な方法には、例えば、炭酸ウラニルアンモニウム(AUC)法、重ウラン酸アンモニウム(ADU)法、および総合乾式ルート(IDR)法が含まれる。当業者であれば、二酸化ウランを生成するための任意の供給源または方法を用いれば十分であることがわかるであろう。
【0028】
例示的な炭酸ウラニルアンモニウム(AUC)法は、さまざまな局面において、次の式で表される2段階プロセスである。
UF+5HO+10NH+3CO→(NH(UO(CO)+6NH
(NH(UO(CO)+H→UO+4NH+3CO+3H
AUC沈殿物の化学組成は、沈殿溶液のC/U比に応じて変動がある。C/U比が7.5以上の場合、沈殿物の組成は(NH(UO(CO)となる。UOへの転換によって40~300μmサイズの離散粒子が形成され、直接的なペレット化が可能である。
【0029】
例示する重ウラン酸アンモニウム(ADU)法は、さまざまな局面において、UFと水を反応させてフッ化ウラニル溶液を生成させるかまたは硝酸ウラニル溶液を生成させ、水酸化アンモニウム溶液を加えてADU沈殿物を得る。窒素中でADU沈殿物をか焼し、蒸気・水素ガス混合物によって還元させると、反応生成物はUO粉末に転換される。この反応は概して次の式で表される。
UF+2HO(例えばUF水溶液)→UO+4HF
(華氏約120度(摂氏約48.9度))
UO+2NHOH→UO(NH+2HF
(華氏約70度(摂氏約21度))
UO(NH+H+2HO(例えば水素雰囲気中のUO(NHおよび蒸気)
→UO+2NHOH
(華氏約1100度(摂氏約593.3度))
【0030】
総合乾式ルート(IDR)法は、一般的には単一段階で、例えばロータリーキルンのようなキルンで、UFを蒸気および水素と混合してUOとHFガスを生成させることにより、セラミック級二酸化ウラン(UO)粉末に転換する。例示するプロセスでは、六フッ化ウランガスをキルンまたはか焼炉に吹き込み、華氏1100度(摂氏約593.3度)、大気圧下で蒸気および過剰水素と混合させる。この反応は、一般的に次の式で表すことができる。
UF+H+HO→UO+6HF
反応後に残った過剰水素は燃やして除去し、HFガスはHF溶液として捕集される。
【0031】
上記または他の反応で生成される二酸化ウランは、いずれも粉末状である。UO粉末は、か焼炉またはロータリーキルンで、還元雰囲気を形成するために水素雰囲気中で固体炭素と結合される。この炭素は、例えば黒鉛やカーボンブラックなどの任意の適当な炭素源から得ることができる。二酸化ウランと炭素が反応すると、炭化ウランに加えて、一酸化炭素、二酸化炭素、または一酸化炭素と二酸化炭素の混成物が生成する。過剰水素と反応生成物である一酸化炭素および/または二酸化炭素は気体の可能性があり、それを燃やすか、または他の適当な方法で除去する。反応生成物の炭化ウランは固体である。
【0032】
炭化ウランの利点として、ウランは共有結合性が高く、有効原子価はゼロに近い。例えば炭化ウランのUSiへの転換は、ケイ素による炭素の置換を伴う。ケイ素の導入にはいくつかの方法があり、例えば、か焼炉で過剰水素ガス(H)の存在下で、炭化ウラン粉末を例えば過剰なシランガス(SiH)と反応させる。当該粉末およびガスは、約500~800K(摂氏約227~527度)、好ましくは500~700K(摂氏約227~427度)の温度範囲で大気圧下のか焼炉内で回転させ、USiおよびメタンガスを生成させる。この反応は次式で表される。
3UC+2SiH+2H→USi+3CH
過剰なシランおよび水素が、USiへの反応を促進する。反応生成物のメタンは、排出するか、燃やすか、または任意の適当な方法で除去する。
【0033】
さまざまな局面において、SiHおよびHガスの添加速度を変えて反応物の比率を変化させることにより、USi以外のケイ化ウラン化合物を生成することができる。他のケイ化ウランの例には、USi1.78、USi、USiおよびUSiが含まれる。実際的には、ケイ化ウランの混成物が生成される。当業者であれば、反応物の比率を操作することによって、所望の生成物が増えるように反応を促進できることがわかるであろう。
【0034】
シランおよびいくつかのハロゲン化ケイ素を用いて、いくつかの反応系が熱力学的に研究された。3UC+2SiH+2Hというシランの反応は、図1のグラフのダイヤ記号で示すようにギブズの自由エネルギーが負である。3UC+2SiX+2X→USi+3CX(ここに、XはBr、Cl、FおよびIからから成る群より選択した元素)により一般的に表されるハロゲン化ケイ素の反応は、図1のグラフでバツ記号(Br)、四角記号(Cl)、および三角記号(F)で示すようにギブズの自由エネルギーが正であるため、自由エネルギーが負のシランほどに望ましい反応系ではない。ヨウ素は図示していないが、自由エネルギーはやはり正であり、グラフ上で臭素の上方にプロットされると予想される。
【0035】
一般化学式Si2n+2におけるXがHであるシランの反応が好ましいが、Xがハロゲン化物またはHとハロゲン化物の両方であるハロゲン化ケイ素の反応は、USiおよび他のケイ化ウラン反応生成物から微量の残留炭素を除去するうえで有用である可能性がある。ハロゲン化ケイ素を用いた反応も、ロータリーキルンで、シランを用いた反応の場合と同じ温度範囲および同じ圧力下で行われる。ケイ化ウランの生成後に、微量の残留炭素を除去するために、ハロゲン化ケイ素を用いた均質化のステップを行ってもよい。これは、目標となるケイ化ウラン材料の融点を最高とする温度で行うことができる。
【0036】
本願で説明する方法は、USiを生成するために金属ケイ素を使用する従来の方法よりはるかに経済的であり、摂氏500度を超え、かつ目標となるケイ化ウラン(例えばUSi、USi1.78、USi、USi、USiまたはそれらの組み合わせ)の目標となる化学量論の融点を下回る温度で作動する機器内で実施できる。したがって、腐食性の溶融材料を扱う必要がなくなるため、安全性が大幅に向上する。
【0037】
本願で言及したすべての特許、特許出願、刊行物または他の開示資料は、各々の参考文献が参照により明示的に本願に組み込まれるように、その全体が参照により本願に組み込まれる。本願で参照により組み込まれると言及されたすべての参考文献およびあらゆる資料またはそれらの一部分は、本願に記載された既存の定義、言明または他の開示資料と矛盾しない範囲でのみ本願に組み込まれる。したがって、本願に記載の開示事項は、必要な範囲において、それと矛盾する、参照により本願に組み込まれた資料に取って代わり、本願に明示的に記載された開示事項が決定権をもつ。
【0038】
本発明を、さまざまな例示的な実施態様を参照して説明してきた。本願に記載の実施態様は、開示された発明のさまざまな実施態様のさまざまな詳細度の例示的な特徴を示すものとして理解されたい。したがって、特に断らない限り、可能な範囲において、開示した実施態様における1つ以上の特徴、要素、構成部品、成分、構造物、モジュールおよび/または局面は、本発明の範囲から逸脱することなく、当該開示した実施態様における他の1つ以上の特徴、要素、構成部品、成分、構造物、モジュールおよび/または局面との間で、複合、分割、置換えおよび/または再構成が可能であることを理解されたい。したがって、通常の技量を有する当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、例示的な実施態様のいずれにおいてもさまざまな置換え、変更または組み合わせが可能であることを理解するであろう。当業者はまた、本願を検討すれば、本願に記載された本発明のさまざまな実施態様に対する多くの均等物に気付くか、あるいは単に定常的な実験を用いてかかる均等物を確認できるであろう。したがって、本発明は、さまざまな実施態様の説明によってではなく、特許請求の範囲によって限定される。
図1