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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】測定用具及び送液方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/08 20060101AFI20221025BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
G01N35/08 A
G01N37/00 101
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019568112
(86)(22)【出願日】2019-11-21
(86)【国際出願番号】 JP2019045560
(87)【国際公開番号】W WO2020110877
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2018224522
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 勤
(72)【発明者】
【氏名】今村 一彦
(72)【発明者】
【氏名】乾 延彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 良輔
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0111239(US,A1)
【文献】特開2018-36256(JP,A)
【文献】特開2005-218677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00
G01N 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛細管現象により液体の試料を採取する試料採取部と、上流側流路と、下流側流路とを有する測定用具本体と、
前記測定用具本体に着脱可能な蓋体とを備え
記蓋体が前記測定用具本体に取り付けられた状態で、前記試料採取部の上流側端部及び前記上流側流路の下流側端部が開口している空間が設けられており、
前記試料採取部の下流側端部に前記下流側流路が接続されており、
前記蓋体が前記測定用具本体から分離された状態で前記空間が開放状態とされ、前記蓋体が前記測定用具本体に取り付けられた際に、前記空間が閉じられ、前記上流側流路と前記試料採取部とが接続される、測定用具。
【請求項2】
前記蓋体が取り付けられて前記空間が閉じられた際の前記空間の体積が、100μL以下である、請求項1に記載の測定用具。
【請求項3】
前記上流側流路が前記空間に開口している部分よりも、前記試料採取部の前記空間に開口している部分の方が、前記蓋体側に位置している、請求項1又は2に記載の測定用具。
【請求項4】
前記上流側流路の途中に試薬収納部が設けられており、前記試薬収納部に試薬が収納されている、請求項1~のいずれか1項に記載の測定用具。
【請求項5】
前記上流側流路に送液するためのポンプをさらに備える、請求項1~のいずれか1項に記載の測定用具。
【請求項6】
前記測定用具本体が、第1の面と、前記第1の面と反対側の第2の面とを有し、前記第1の面側から、前記蓋体が前記測定用具本体に取り付けられる、請求項1~のいずれか1項に記載の測定用具。
【請求項7】
前記測定用具本体の前記第1の面に第1の凹部が設けられており、前記蓋体が前記測定用具本体に取り付けられた際に、前記第1の凹部と前記蓋体とで囲まれた前記空間が閉じられた状態とされる、請求項に記載の測定用具。
【請求項8】
前記第1の凹部の底面に前記上流側流路が開口している、請求項に記載の測定用具。
【請求項9】
前記測定用具本体の前記第1の面に前記試料採取部が開口している、請求項に記載の測定用具。
【請求項10】
前記試料採取部が、前記第1の面側から、前記第2の面側に向かって延ばされている、請求項に記載の測定用具。
【請求項11】
前記測定用具本体に、前記第1の凹部の周囲に、前記第1の凹部よりも深い第2の凹部が設けられており、前記蓋体が、前記第2の凹部に嵌まり合う挿入部を有する、請求項10に記載の測定用具。
【請求項12】
前記上流側流路が、前記第2の凹部と前記測定用具本体の前記第2の面との間を通る第1の流路部と、前記第1の流路部の下流側端部に接続されており、前記第1の面と前記第2の面とを結ぶ方向に延びる第2の流路部とを有し、前記第2の流路部の下流側端部が前記空間に開口しており、前記下流側流路が、前記試料採取部の下流側端部から前記第2の凹部と前記第2の面との間を通り、前記第2の凹部外に延ばされている、請求項11に記載の測定用具。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の測定用具を用いた送液方法であって、
前記蓋体を前記測定用具本体から取り外した状態で、前記試料採取部に毛細管現象により試料を採取する工程と、
前記蓋体を前記測定用具本体に取り付け、前記上流側流路と前記試料採取部とを結ぶ流路が構成されるように前記空間を閉じた状態とする工程と、
前記上流側流路から液体を送り、前記試料及び前記液体を前記下流側流路に流す工程とを備える、送液方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の試料を毛細管現象を用いて採取し、種々の測定に用いるための測定用具及び測定用具における送液方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、微量の血液を採取し得る血液定量採取キットが開示されている。この血液定量採取キットは、平板状のベース部と、キャピラリー部とを有している。キャピラリー部において、毛細管現象を利用して血液が採取される。次に、キャピラリー部を、ベース部に接続し、血液をベース部内に注入する。ベース部内において、一定量の血液が採取される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-218677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の血液定量採取キットでは、ベース部内に血液を定量採取できるが、しかる後、分析のために、ベース部から血液を取り出さねばならなかった。従って、ベース部内に血液が残存するおそれがあった。そのため、採取した血液をすべて使用することができないことがあった。よって、最終的な測定精度が低くなるおそれがあった。
【0005】
本発明の目的は、定量採取された液体の試料の損失が生じ難く、測定精度を高め得る、測定用具及び該測定用具における送液方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る測定用具は、毛細管現象により液体の試料を採取する試料採取部と、送液流路とを有する測定用具本体と、前記測定用具本体に着脱可能な蓋体とを備え、前記送液流路が、上流側流路と、下流側流路とを有し、前記蓋体が前記測定用具本体に取り付けられた状態で、前記試料採取部の上流側端部及び前記上流側流路の下流側端部が開口している空間が設けられており、前記試料採取部の下流側端部に前記下流側流路が接続されており、前記蓋体が前記測定用具本体から分離された状態で前記空間が開放状態とされ、前記蓋体が前記測定用具本体に取り付けられた際に、前記空間が閉じられ、前記上流側流路と前記試料採取部とが接続される。
【0007】
本発明に係る測定用具では、好ましくは、前記空間が閉じられた状態における前記空間の体積が、前記送液流路に供給される液体の体積よりも小さい。この場合には、上流側流路から液体を確実に試料採取部を介して下流側流路に送ることができる。より好ましくは、前記蓋体が取り付けられて前記空間が閉じられた際の前記空間の体積が、100μL以下である。
【0008】
本発明に係る測定用具では、好ましくは、前記上流側流路が前記空間に開口している部分よりも、前記試料採取部の前記空間に開口している部分の方が、前記蓋体側に位置している。その場合には、試料採取部において、より確実に液体の試料を採取することができる。
【0009】
本発明に係る測定用具では、前記上流側流路の途中に試薬収納部が設けられており、前記試薬収納部に試薬が収納されていてもよい。
【0010】
本発明に係る測定用具では、前記上流側流路に送液するためのポンプがさらに備えられていてもよい。
【0011】
本発明に係る測定用具の他の特定の局面では、前記測定用具本体が、第1の面と、前記第1の面と反対側の第2の面とを有し、前記第1の面側から、前記蓋体が前記測定用具本体に取り付けられる。
【0012】
本発明に係る測定用具のさらに別の特定の局面では、前記測定用具本体の前記第1の面に第1の凹部が設けられており、前記蓋体が前記測定用具本体に取り付けられた際に、前記第1の凹部と前記蓋体とで囲まれた前記空間が閉じられた状態とされる。
【0013】
本発明に係る測定用具のさらに他の特定の局面では、前記第1の凹部の底面に前記上流側流路が開口している。
【0014】
本発明では、好ましくは、前記測定用具本体の前記第1の面に前記試料採取部が開口している。この場合には、空間が開放されている状態において、試料採取部により、毛細管現象によって液体の試料を容易に採取することができる。
【0015】
本発明に係る測定用具の他の特定の局面では、前記試料採取部が、前記第1の面側から、前記第2の面側に向かって延ばされている。
【0016】
本発明に係る測定用具のさらに別の特定の局面では、前記測定用具本体に、前記第1の凹部の周囲に、前記第1の凹部よりも深い第2の凹部が設けられており、前記蓋体が、前記第2の凹部に嵌まり合う挿入部を有する。この場合には、蓋体を、測定用具本体に確実に固定することが容易である。
【0017】
本発明に係る測定用具のさらに他の特定の局面では、前記上流側流路が、前記第2の凹部と前記測定用具本体の前記第2の面との間を通る第1の流路部と、前記第1の流路部の下流側端部に接続されており、前記第1の面と前記第2の面とを結ぶ方向に延びる第2の流路部とを有し、前記第2の流路部の下流側端部が前記空間に開口しており、前記下流側流路が、前記試料採取部の下流側端部から前記第2の凹部と前記第2の面との間を通り、前記第2の凹部外に延ばされている。
【0018】
本発明に係る送液方法は、本発明に従って構成された測定用具を用いた送液方法であって、前記蓋体を前記測定用具本体から取り外した状態で、前記試料採取部に毛細管現象により試料を採取する工程と、前記蓋体を前記測定用具本体に取り付け、前記上流側流路と前記試料採取部とを結ぶ流路が構成されるように前記空間を閉じた状態とする工程と、前記上流側流路から液体を送り、前記試料及び前記液体を前記下流側流路に流す工程とを備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る測定用具及び送液方法によれば、試料採取部に定量採取された液体の試料が、下流側流路に確実に送液される。従って、液体の試料の損失が生じ難く、定量採取性に優れている。よって、下流側流路に送液された液体の試料を測定した場合、測定精度の低下が生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る測定用具の外観を示す斜視図である。
図2図2は、図1のA-A線に沿う部分の断面図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る測定用具において、蓋体が分離されて、空間が開放状態とされている状態を説明するための正面断面図である。
図4図4は、第1の実施形態の測定用具において、液体の試料を試料採取部に採取した状態を説明するための正面断面図である。
図5図5は、比較例の試料採取キットを説明するための斜視図である。
図6図6(a)は、比較例で用いられるキャピラリーを示す斜視図であり、図6(b)は、比較例で用いられるディスポーザブルチップを説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0022】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る測定用具の外観を示す斜視図であり、図2は、図1のA-A線に沿う部分の断面図である。図2では、液体の試料としての血液が試料採取部に採取された状態が示されている。
【0023】
測定用具1は、測定用具本体2と、測定用具本体2に着脱可能な蓋体3とを備える。
【0024】
測定用具本体2内には、毛細管現象により液体の試料を採取する試料採取部13と、送液流路とが設けられている。送液流路は、上流側流路11と、下流側流路12とを有する。
【0025】
上流側流路11と下流側流路12は、マイクロ流路である。マイクロ流路とは、流体の搬送に際し、マイクロ効果が生じるような微細な流路をいう。このようなマイクロ流路では、流体は、表面張力の影響を強く受け、通常の大寸法の流路を流れる流体とは異なる挙動を示す。
【0026】
マイクロ流路の横断面形状及び大きさは、上記のマイクロ効果が生じる流路であれば特に限定はされない。例えば、マイクロ流路に流体を流す際、ポンプや重力を用いる場合には、流路抵抗をより一層低下させる観点から、マイクロ流路の横断面形状がおおむね長方形(正方形を含む)の場合には、小さい方の辺の寸法で、20μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。また、マイクロ流体デバイスをより一層小型化する観点より、5mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましく、500μm以下がさらに好ましい。
【0027】
また、マイクロ流路の横断面形状がおおむね円形の場合には、直径(楕円の場合には、短径)が、20μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。マイクロ流体デバイスをより一層小型化する観点からは、直径(楕円の場合には、短径)が、5mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましく、500μm以下がさらに好ましい。
【0028】
一方、例えば、マイクロ流路に流体を流す際、毛細管現象をより一層有効に活用するときに、マイクロ流路の横断面形状がおおむね長方形(正方形を含む)の場合には、小さい方の辺の寸法で、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることがさらに好ましい。また、小さい方の辺の寸法で、200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。
【0029】
測定用具本体2は、基板4に、カバーシート5を積層することにより構成されている。基板4及びカバーシート5は、合成樹脂などの適宜の材料からなる。
【0030】
測定用具本体2は、第1の面2aと、第1の面2aとは反対側の第2の面2bとを有する。第1の面2a側から、蓋体3が、測定用具本体2に固定されている。
【0031】
蓋体3は、様々な材料で構成され得るが、ゴムやエラストマーなどの弾力性を有する材料からなることが好ましい。
【0032】
図3は、第1の実施形態に係る測定用具1において、蓋体3が分離されて、空間が開放状態とされている状態を説明するための正面断面図である。上流側流路11は、第1の流路部11aと、第2の流路部11bとを有する。第1の流路部11aは、基板4の面方向と平行な方向に延びている。第1の流路部11aの途中に試薬収納室11cが設けられている。試薬収納室11c内に、試薬6が配置されている。試薬6は、後述する血液と混合される。この試薬6としては、特に限定されないが、例えば界面活性剤、ラテックス溶液などを用いることができる。
【0033】
第1の流路部11aの下流側に、第2の流路部11bが連なっている。第2の流路部11bは、第1の面2aと第2の面2bとを結ぶ方向、すなわち基板4の厚み方向に延びている。
【0034】
測定用具本体2の第1の面2aには、第1の凹部14と、第2の凹部15とが設けられている。
【0035】
図2に戻り、蓋体3は、筒状の挿入部3aと、挿入部3aの一端に設けられたフランジ部3bとを有する。フランジ部3bの外径は、挿入部3aの外径よりも大きくなっている。挿入部3aは、図3に示した第2の凹部15に嵌まり合うように構成されている。蓋体3は、天板部3cを有する。天板部3cは、挿入部3aで囲まれた部分である。蓋体3を測定用具本体2に固定した場合、天板部3cの下面と、第1の面2aとの間に隙間が存在するように、挿入部3aの長さが選ばれている。また、第2の凹部15よりも第1の面2a側に第1の凹部14が設けられている。第1の凹部14の径は、フランジ部3bの径と同等とされている。試料採取部13は、第1の面2aに開口している。試料採取部13の下流側端部が下流側流路12に接続されている。試料採取部13が第1の面2aに開口している部分は、第2の流路部11bが凹部14に開口している底面14aよりも、蓋体3側に突出していることになる。
【0036】
試料採取部13は、毛細管現象により血液などの液体の試料を採取し得る寸法とされている。試料採取部13の径は、特に限定されないが、例えば、0.1~2mmの範囲とすればよい。試料採取部13の長さ、すなわち第1の面2aと第2の面2bとを結ぶ寸法は、採取する試料の大きさに応じて選択すればよい。例えば、1~40mm程度の寸法とすればよい。
【0037】
図2に示されているように、蓋体3を測定用具本体2に取り付けた状態では、第1の凹部14と蓋体3とで囲まれた、閉じた空間が設けられることになる。この空間は、蓋体3が測定用具本体2から分離された状態では開放状態とされる。蓋体3が測定用具本体2に取り付けられた状態では、上記空間が閉じられ、上流側流路11と試料採取部13とが接続されることになる。
【0038】
上記閉じられた空間の体積は、送液流路に供給される液体の体積よりも小さいことが望ましい。それによって、空間内を確実に液体が満たす。従って、液体を確実に試料採取部に送液することができる。
【0039】
上記閉じられた状態の空間の体積は、好ましくは100μL以下である。
【0040】
下流側流路12は、試料採取部13の下流側端部に接続されており、第2の凹部15と第2の面2bとの間を通り、第2の凹部15よりも外側に延ばされている。
【0041】
下流側流路12は、好ましくは、基板4内に設けられた測定部などに接続される。
【0042】
第1の流路部11aは、第2の凹部15と第2の面2bとの間において、第1の面2a及び第2の面2bと平行な方向に延ばされている。上流側流路11の第1の流路部11aには、ポンプPが接続される。ポンプPは、測定用具本体2の外部に配置されていてもよく、あるいは、測定用具本体2内に内蔵されてもよい。内蔵型のポンプとしては、例えば、光照射によりガスを発生させる光ガス発生剤を用いたマイクロポンプが好適に用いられる。
【0043】
次に、測定用具1を用いた血液の採取及び送液方法を説明する。
【0044】
初期状態では、蓋体3が、測定用具本体2に固定されている。あるいは、蓋体3は、予め測定用具本体2から分離されていてもよい。蓋体3が、測定用具本体2に固定されている場合には、まず、蓋体3を測定用具本体2から分離する。その結果、図3に示すように、試料採取部13が露出する。この状態で、試料採取部13の第1の面2aに開口している部分を血液と接触させる。特に限定されないが、試料採取部13が第1の面2aに開口している部分を、血液の液面に接触させる。それによって、血液が試料採取部13に毛細管現象により採取される。従って、図4に示すように、試料採取部13を血液Aが満たすこととなる。よって、試料採取部13の容積に応じた量の血液Aを正確に採取することができる。
【0045】
次に、図2に示すように、蓋体3を測定用具本体2に取り付ける。すなわち、第2の凹部15内に挿入部3aが嵌まり合うように、蓋体3を固定する。その結果、第1の凹部14と蓋体3で囲まれた空間が閉じられることになる。蓋体3の天板部3cの下面と、第1の面2aとの間に隙間が存在するように、挿入部3aの長さが選ばれている。従って、蓋体3を測定用具本体2に固定した状態で、上記空間が閉じられるとともに、上記空間に上流側流路11の第2の流路部11bと、試料採取部13とが接続されることになる。従って、上流側流路11、試料採取部13及び下流側流路12を有する送液流路が構成されることになる。この状態で、ポンプPを駆動し、液体を上流側流路11から送液する。この液体としては、試薬6を溶解する液体であってもよく、また試薬6として、液体試薬を用い、試薬6を送液してもよい。液体は、上流側流路11及び上記空間を経由し、試料採取部13に至る。従って、試料採取部13内の血液Aが、試薬6と反応し、下流側流路12に送られることになる。この場合、試料採取部13に採取されている量の血液Aが確実に試薬6と反応され、下流側流路12に送られる。あるいは、試薬6を用いない場合においても、試料採取部13に採取されていた量の血液Aを確実に回収することができる。
【0046】
従って、測定用具1では、血液Aのような液体の試料を確実に定量採取することができるだけでなく、採取された液体の試料の全量を確実に用いることができる。従って、下流側流路12に接続されている測定部において測定等を行った場合、測定のばらつきが小さい。
【0047】
以下、具体的な実施例及び比較例を説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0048】
(実施例)
材料としてポリスチレンを用いた測定用具本体2内に、以下の寸法の試料採取部を設けた。
【0049】
開口径0.8mm、長さ2mm、容積1μL。
【0050】
接続される下流側流路12の横断面の寸法は、幅0.5mm×深さ0.5mmとした。
【0051】
上記試料採取部に、毛細管現象により血液を採取した。下記の表1のサンプルNo.1~6の重量の測定用具に対し、それぞれ、上記のようにして血液を採取し、さらに血液吸引量を求めた。方法としては、血液採取前後の重量変化を計測後、比重で割り戻して血液吸引量を算出した。結果を下記の表1に示す。
【0052】
(比較例)
図5に示す血液採取キット101を用いた。血液採取キット101は、キャピラリー挿入部101bとプレート101aを有する。プレート101aに、キャピラリー挿入部101b及びディスポーザブルチップ挿入部101cが設けられている。プレート101aの下面に容器102が連結されている。血液の吸引に際しては、図6(a)に示すキャピラリー103を血液に浸漬し、血液を毛細管現象により採取する。このキャピラリー103を、プレート101aのキャピラリー挿入部101bに挿入し、血液を容器102内に取り出す。次にプレート101aを移動し、容器102上に、ディスポーザブルチップ挿入部101cを位置させる。その状態で、ディスポーザブルチップ104をディスポーザブルチップ挿入部101cから容器102内に挿入し、採取された血液を取り出す。このようにして取り出された血液の量を測定した。結果を下記の表2に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
表1と表2とを対比すれば明らかなように、比較例に比べ、実施例によれば、採取された血液量のほぼ全量を回収し得ることがわかる。また、比較例に比べて実施例では、回収率のばらつきが、非常に小さくなることがわかる。
【0056】
なお、本発明において、液体の試料としては血液に限らず、様々な体液や、体液以外の生化学試料、あるいは生化学用途以外の液体も用いることができる。
【符号の説明】
【0057】
1…測定用具
2…測定用具本体
2a…第1の面
2b…第2の面
3…蓋体
3a…挿入部
3b…フランジ部
3c…天板部
4…基板
5…カバーシート
6…試薬
11…上流側流路
11a…第1の流路部
11b…第2の流路部
11c…試薬収納室
12…下流側流路
13…試料採取部
14…第1の凹部
14a…底面
15…第2の凹部
101…血液採取キット
101a…プレート
101b…キャピラリー挿入部
101c…ディスポーザブルチップ挿入部
102…容器
103…キャピラリー
104…ディスポーザブルチップ
A…血液
P…ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6