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特許7164570軟質接触部を備えた封止型レチクル貯蔵器具
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】軟質接触部を備えた封止型レチクル貯蔵器具
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/66 20120101AFI20221025BHJP
   H01L 21/673 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
G03F1/66
H01L21/68 U
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020133043
(22)【出願日】2020-08-05
(65)【公開番号】P2021033291
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2020-08-05
(31)【優先権主張番号】62/887,753
(32)【優先日】2019-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/929,748
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506017182
【氏名又は名称】家登精密工業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】GUDENG PRECISION INDUSTRIAL CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】9F.,No.2,Sec.4,Zhongyang Rd.,Tucheng Dist.,New Taipei,Taiwan236
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】荘 家和
(72)【発明者】
【氏名】▲温▼ 星閔
(72)【発明者】
【氏名】薛 新民
(72)【発明者】
【氏名】李 怡萱
(72)【発明者】
【氏名】邱 銘乾
【審査官】菅原 拓路
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-184442(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0214287(US,A1)
【文献】特開2008-032915(JP,A)
【文献】特開2008-087811(JP,A)
【文献】特開2006-103795(JP,A)
【文献】特開2021-033290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/66
H01L 21/673
B65D 85/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レチクル貯蔵器具であって、
シーリングおよび前記シーリングを包囲しているカバーを備えた頂部蓋を有し、
キャリヤおよび前記キャリヤを包囲している周辺構造体を備えた底部蓋を有し、
前記周辺構造体は、前記頂部蓋と前記底部蓋が互いに係合すると、前記カバーに向き、
前記頂部蓋と前記底部蓋が互いに係合した場合に前記カバーと前記周辺構造体との間に延びて前記頂部蓋と前記底部蓋の接触を緩衝するよう構成された軟質接触部材を有し、
前記頂部蓋の前記カバーは、下向きの係合面を有し、前記軟質接触部材は、前記下向き係合面に沿って延びるとともに該下向き係合面を包む、レチクル貯蔵器具。
【請求項2】
前記軟質接触部材は、前記頂部蓋を前記底部蓋に係合させる前の状態において、前記器具の内側から外側に延びる、請求項1記載のレチクル貯蔵器具。
【請求項3】
前記軟質接触部材は、前記底部蓋の前記周辺構造体の上向きの係合面に接触するよう構成された下向きの封止面を有する、請求項2記載のレチクル貯蔵器具。
【請求項4】
前記軟質接触部材は、下向きの封止面および前記下向き封止面から下方に延びる少なくとも1つのリブを有し、前記少なくとも1つのリブは、前記底部蓋の前記周辺構造体の上向きの係合面に接触するよう構成されている、請求項2記載のレチクル貯蔵器具。
【請求項5】
前記下向きの係合面は、前記下向きの係合面から下方に延びる複数のピラーを有し、前記軟質接触部材は、前記複数のピラーの周りに延びるように又は前記複数のピラーと一体に形成され、前記周辺構造体は、前記複数のピラーに対応した複数の収容空所を有し、前記複数のピラーの各々は、前記頂部蓋と前記底部蓋の接触を緩衝するよう構成された少なくとも1つの弾性構造体を有する、請求項1記載のレチクル貯蔵器具。
【請求項6】
前記底部蓋の前記周辺構造体と前記キャリヤとの間には少なくとも1つのトレンチが形成されている、請求項1記載のレチクル貯蔵器具。
【請求項7】
前記頂部蓋および前記底部蓋は、前記軟質接触部材によって気密封止されるレチクル収容空間を形成する、請求項1記載のレチクル貯蔵器具。
【請求項8】
前記頂部蓋は、前記レチクル収容空間の気密封止状態を壊さずに前記レチクル収容空間内に受け入れられたレチクルと接触するよう前記頂部蓋から延びる少なくとも1つの保持ピンをさらに有する、請求項7記載のレチクル貯蔵器具。
【請求項9】
レチクル貯蔵器具であって、
シーリングおよび前記シーリングを包囲しているカバーを備えた頂部蓋を有し、
キャリヤおよび前記キャリヤを包囲している周辺構造体を備えた底部蓋を有し、
前記周辺構造体は、前記頂部蓋と前記底部蓋が互いに係合すると、前記カバーに向き、
前記頂部蓋の前記カバーの下向きの係合面に取り付けられ、前記頂部蓋の前記カバーの前記下向きの係合面に平行な方向に延びる第1の軟質接触部材を有し、
前記底部蓋の前記周辺構造体の上向きの係合面に取り付けられ、前記底部蓋の前記周辺構造体の前記上向きの係合面に平行な方向に延びる第2の軟質接触部材を有し、
前記第1の軟質接触部材と前記第2の軟質接触部材は、前記頂部蓋が前記底部蓋に係合すると、互いに接触して前記頂部蓋と前記蓋相互間との接触を緩衝する、レチクル貯蔵器具。
【請求項10】
前記第1の軟質接触部材の内側は、前記第2の軟質接触部材の外側と接触する、請求項9記載のレチクル貯蔵器具。
【請求項11】
前記第1の軟質接触部材の少なくとも一部は、前記頂部蓋の前記カバーを包む、請求項9記載のレチクル貯蔵器具。
【請求項12】
前記第1の軟質接触部材の硬度は、前記第2の軟質接触部材の硬度よりも高い、請求項9記載のレチクル貯蔵器具。
【請求項13】
前記頂部蓋の前記カバーは、下向きの係合面および前記下向き係合面から下方に延びる複数のピラーを有し、前記周辺構造体は、前記複数のピラーに対応した複数の収容空所を有し、前記複数のピラーの各々は、前記頂部蓋と前記底部蓋の接触を緩衝するよう構成された少なくとも1つの弾性構造体を有する、請求項9記載のレチクル貯蔵器具。
【請求項14】
前記底部蓋の前記周辺構造体と前記キャリヤとの間には少なくとも1つのトレンチが形成されている、請求項9記載のレチクル貯蔵器具。
【請求項15】
前記頂部蓋および前記底部蓋は、前記第1および前記第2の軟質接触部材によって気密封止されるレチクル収容空間を形成する、請求項9記載のレチクル貯蔵器具。
【請求項16】
前記頂部蓋は、前記レチクル収容空間の気密封止状態を壊さずに前記レチクル収容空間内に受け入れられたレチクルと接触するよう前記頂部蓋から延びる少なくとも1つの保持ピンをさらに有する、請求項15記載のレチクル貯蔵器具。
【請求項17】
レチクル貯蔵器具であって、
シーリングおよび前記シーリングを包囲しているカバーを備えた頂部蓋と、
キャリヤおよび前記キャリヤを包囲している周辺構造体を備えた底部蓋と、
前記頂部蓋から下方に延びるキャップによって固定された少なくとも1つの保持ピンとを有し、
前記カバーは、前記頂部蓋と前記底部蓋が互いに係合すると、前記周辺構造体に向き、
前記頂部蓋の前記カバーは、下向きの係合面および前記下向き係合面から下方に延びる複数のピラーを有し、前記周辺構造体は、前記複数のピラーに対応した複数の収容空所を有し、前記複数のピラーの各々は、少なくとも1つの弾性構造体を有する、レチクル貯蔵器具。
【請求項18】
前記頂部蓋と前記底部蓋が互いに係合すると、前記カバーと前記周辺構造体との間に延びるよう構成された少なくとも1つの軟質接触部材をさらに有する、請求項17記載のレチクル貯蔵器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レチクル貯蔵器具、特に軟質接触部を備えた封止型(すなわち、気密封止型)レチクルポッドに関する。
【背景技術】
【0002】
既知のレチクルポッドは、一般に、外側ポッドおよび内側ポッドを含み、外側ポッドは、レチクルポッドの始まりの層であり、内側ポッドは、外側ポッド内に収容される。幾つかの形式の外側ポッドは、頂部蓋および底部蓋で構成されている場合がある。同様に、内側ポッドは、頂部蓋および底部蓋で構成される場合があり、この内側ポッドは、この中にレチクルを収容する。
【0003】
極紫外(EUV)レチクルのための汚染制御の度合いは、主として、粒子やダストが内側ポッドに入るのを阻止するための内側ポッドの頂部蓋と底部蓋の組み合わせで決まる。頂部蓋および底部蓋を備えた内側ポッド向きの従来設計は、内部ポッド環境と外部環境との流体連通を阻止するための気密手段を用いており、その目的は、ポッドの内側と外側との間の空気流を止め、したがって、内側ポッド内のレチクルが汚染されるのを阻止することにある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、内側ポッド向きのかかる気密設計には幾つかの欠点があると言える。例えば、内側ポッドの頂部蓋および底部蓋は、通常、金属構造のものであり、したがって、頂部蓋と底部蓋の激しい接触に起因して粒子を生じさせる場合があり、それにより内側ポッド内に受け入れられているウェーハが汚染される。さらに、内側ポッドの有効封止状態は、頂部蓋と底部蓋の金属接触インターフェースの粗さに基づいて判定される場合があり、粗さの要件は、有効封止状態を達成するには極めて厳しくなければならない。コストが比較的増大する。
【0005】
したがって、内側ポッドの従来型気密設計において存在する上述の欠点を解決して内側ポッド内に受け入れられているレチクルを汚染しないようにするための解決手段を開発することが要望され続けている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、レチクル貯蔵器具であって、レチクル貯蔵器具が、シーリングおよびシーリングを包囲しているカバーを備えた頂部蓋と、キャリヤおよびキャリヤを包囲している周辺構造体を備えた底部蓋とを有し、周辺構造体は、頂部蓋と底部蓋が互いに係合すると、カバーに向き、レチクル貯蔵器具が、頂部蓋と底部蓋が互いに係合した場合にカバーと周辺構造体との間に延びて頂部蓋と底部蓋の接触を緩衝するよう構成された軟質接触部材をさらに有することを特徴とするレチクル貯蔵器具を提供することにある。軟質接触部材は、レチクル貯蔵器具の内側から外側に延びる。
【0007】
好ましい一実施形態では、頂部蓋のカバーは、下向きの係合面を有し、軟質接触部材は、下向き係合面に沿って延びるとともにこの下向き係合面を包む。
【0008】
好ましい一実施形態では、軟質組織部材は、底部蓋の周辺構造体の上向きの係合面に接触するよう構成された下向きの封止面を有する。
【0009】
好ましい一実施形態では、軟質接触部材は、下向きの封止面および下向き封止面から下方に延びる少なくとも1つのリブを有し、少なくとも1つのリブは、底部蓋の周辺構造体の上向きの係合面に接触するよう構成されている。
【0010】
好ましい一実施形態では、頂部蓋のカバーは、下向きの係合面および下向きの係合面から下方に延びる複数のピラーを有し、周辺構造体は、複数のピラーに対応した複数の収容空所を有し、複数のピラーの各々は、頂部蓋と底部蓋の接触を緩衝するよう構成された少なくとも1つの弾性構造体を有する。
【0011】
本発明のもう一つの目的は、レチクル貯蔵器具であって、レチクル貯蔵器具がシーリングおよびシーリングを包囲しているカバーを備えた頂部蓋と、キャリヤおよびキャリヤを包囲している周辺構造体を備えた底部蓋とを有し、周辺構造体は、頂部蓋と底部蓋が互いに係合すると、カバーに向き、レチクル貯蔵器具が頂部蓋のカバーの下向きの係合面に沿って側方に延びる第1の軟質接触部材と、底部蓋の周辺構造体の上向きの係合面に沿って側方に延びる第2の軟質接触部材とをさらに有し、第1の軟質接触部材と第2の軟質接触部材は、頂部蓋が底部蓋に係合すると、互いに接触して頂部蓋と蓋相互間との接触を緩衝することを特徴とするレチクル貯蔵器具を提供することにある。
【0012】
好ましい一実施形態では、第1の軟質接触部材の内側は、第2の軟質接触部材の外側と接触する。
【0013】
好ましい一実施形態では、第1の軟質接触部材の少なくとも一部は、頂部蓋のカバーを包む。
【0014】
好ましい一実施形態では、第1の軟質接触部材の硬度は、第2の軟質接触部材の硬度よりも高い。
【0015】
本発明の利点および特徴を本発明の原理によって例示された以下の説明および図面により詳細に説明する。
【0016】
本開示内容の上述の特徴および利点ならびに他の特徴および利点は、以下の詳細な説明の図面を参照すると良好に理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】レチクル貯蔵器具の平面図である。
図1B】レチクル貯蔵器具の側面図である。
図2】レチクル貯蔵器具の斜視図である。
図3】レチクル貯蔵器具のAA線矢視断面図である。
図4A】本発明に係るレチクル貯蔵器具の一実施形態を示す図である。
図4B】本発明に係るレチクル貯蔵器具の別の実施形態を示す図である。
図5図4Aに示された頂部蓋の底面図である。
図6A】本発明に係るレチクル貯蔵器具の別の一実施形態を示す図である。
図6B】本発明に係るレチクル貯蔵器具のさらに別の実施形態を示す図である。
図7A】本発明のレチクル貯蔵器具の別の実施形態の分解組立図である。
図7B】本発明のレチクル貯蔵器具の別の実施形態の断面図である。
図8】本発明に係るレチクル貯蔵器具の別の実施形態の断面図である。
図9】レチクル貯蔵器具のBB線矢視断面図である。
図10】レチクル貯蔵器具の別の実施形態のBB線矢視断面図である。
図11】レチクル貯蔵器具のさらに別の実施形態のBB線矢視断面図である。
図12図10に示されたピラーの特定の構造を示す図である。
図13図8の別の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示内容の一部をなす添付の図面を参照して種々の例示の実施形態について詳細に説明する。また、これらの実施形態を達成するために実施可能な実施例によりこれら実施形態を説明するが、当業者がこれら実施形態を達成することができようにするのに十分な細部が提供されている。理解されるように、これらの実施形態の精神および範囲から逸脱することなく、他の実施形態を使用することができるとともに他の変更を行うことができる。加うるに、上記内容にもかかわらず、「一実施形態では」という語句が幾つか見受けられる場合、これらの語句は、必ずしも、同一のまたは単一の一実施形態を示しているわけではない。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味に解されることはなく、これら実施形態の範囲は、特許請求の範囲の記載によってのみ定められる。
【0019】
明細書全体および添付の特許請求の範囲の記載において別段の指定がなければ、以下の用語の各々は、以下に具体的に定められた意味を持っている。本明細書で用いられているように、別段の指定がなければ、「または」という用語は、包括的な意味に解されるべきであり、かつ「または/および」という用語と均等である。別段の指定がなければ、「~によれば(~に係る)」という用語は、排他的な意味に解されてはならず、かかる用語により、本明細書に記載されていない他の多くの要因への言及をなすことができる。加うるに、原文明細書全体において、“a”、“one”および“the”という用語は、複数の意味でも用いられる。「~内に(内の)」という用語は、本明細書においては、「~内に(内の)」と「~上に(上の)」の両方を意味するよう用いられている。
【0020】
本発明の目的は、気密封止状態を形成することができるレチクル貯蔵器具を提供することにある。図1Aおよび図1Bは、それぞれ、レチクル貯蔵器具の平面図および側面図である。レチクル貯蔵器具は、頂部蓋(101)および底部蓋(102)を有する。レチクル(図示せず)を頂部蓋(101)と底部蓋(102)との間に収容することができる。上述のレチクル貯蔵器具の特定の特徴は、頂部蓋(101)が1つまたは2つ以上の軟質(弾性)接触部材によって底部蓋(102)と係合すると、収容状態のレチクルが封止されることにある。図示していないが、レチクル貯蔵器具をさらに外側ポッド内に入れることができる。本発明に係るレチクル貯蔵器具は、主として、内側ポッドに関する。頂部蓋(101)および底部蓋(102)は、これらの周辺面に、外側ポッドと結合するための構造体または接触部を備えるのが良い。
【0021】
図1Aは、本発明に係るレチクル貯蔵器具が中央領域およびこの中央領域を包囲している4つの縁部を備えていることを示す平面図である。かかるレチクル収容空間は、一般に、中央領域の下に位置する。レチクル貯蔵器具は、中央領域と縁部との間に軟質接触部材(図示せず)を備えており、その結果、頂部蓋(101)が底部蓋(102)と係合すると、密閉収容空間が形成され、それによりレチクル貯蔵器具に気密封止状態が与えられる。図1Bの頂部蓋(101)と底部蓋(102)との間に設けられている1つまたは2つ以上の軟質接触部材によって空気流を止めることができる。図1Aおよび図2に示されているように、頂部蓋(101)は、この頂部上に空気埋め戻しのために用いられる複数の入口穴(符号が付与されていない)および粒子を濾過するために用いられるフィルタ(図示せず)をさらに備えるのが良い。
【0022】
図2は、本発明に係るレチクル貯蔵器具のAA線およびBB線に沿って取った斜視図である。図3図4A図4B図6Aおよび図6Bは、AA線矢視断面図であり、軟質接触部材の別々の実施形態を示している。さらに、図8は、BB線矢視断面図である。
【0023】
図3を参照すると、頂部蓋(101)は、シーリング(天井)(201)および水平にかつシーリング(201)から下方に延びるカバー(202)を有する。カバー(202)は、比較的大きな厚みを有する。図の一部分しか示されていないが、カバー(202)は、シーリング(201)を包囲するとともに頂部蓋(101)の4つの縁まで延びていることが予想される。底部蓋(102)は、キャリヤ(203)および周辺構造体(204)を有する。キャリヤ(203)は、レチクルを担持するための担持面を提供する。キャリヤ(203)は、レチクル収容領域を画定するための複数の指示または拘束片を提供することができる。底部蓋(102)の4つの縁に沿って延びる周辺構造体(204)は、キャリヤ(203)を包囲し、この周辺構造体は、キャリヤ(203)の担持面よりも僅かに低い。幾つかの実施形態では、周辺構造体(204)は、キャリヤ(203)の担持面よりも高くても良い。
【0024】
頂部蓋(101)と底部蓋(102)が互いに係合すると、キャリヤ(203)およびシーリング(201)ならびにカバー(202)は、レチクル収容スペースを画定する。頂部蓋(101)のカバー(202)は、互いに完全には接触しない状態で底部蓋(102)の周辺構造体(204)に向く。変形例として、カバー(202)および周辺構造体(204)は、互いに部分的に接触状態にあっても良い。頂部蓋(101)のカバー(202)は、下向きの係合面(205)を有し、底部蓋(102)の周辺構造体(204)は、上向きの係合面(206)を有する。頂部蓋(101)が底部蓋(102)と係合する場合、下向きの係合面(205)は、上向き係合面(206)に向き、両方の表面は、互いに平行である。この実施形態では、下向き係合面(205)は、上向き係合面(206)の面積よりも大きな面積を有する。軟質接触部材(207)が、頂部蓋(101)が底部蓋(102)と係合するとカバー(202)と周辺構造体(204)との間に延びるよう構成されている。また、軟質接触部材(207)は、器具の内側から外側に延びている。内側は、レチクル収容空間の側であり、外側は、器具の外側である。以下において、下向き係合面(205)に設けられた軟質接触部材(207)の種々の実施形態について説明する。しかしながら、幾つかの他の実施形態では、軟質接触部材(207)は、底部蓋(102)の周辺構造体(204)に取り付けられても良い。軟質接触部材により、頂部蓋(101)と底部蓋(102)との衝突を緩和することができる。
【0025】
本発明に係る軟質接触部材は、この部材が頂部蓋および/または底部蓋よりも低い硬度を有することを指示している。一般に、頂部蓋および底部蓋は、金属で作られ、軟質接触部材は、金属の硬度よりも比較的低い硬度を有する材料、例えば、プラスチックまたは樹脂から選択されるのが良い。
【0026】
図4Aは、本発明に係る軟質接触部材の一実施形態を示しており、この場合、頂部蓋と底部蓋は、完全には係合しない。軟質接触部材(400)は、カバー(202)の下向き係合面(205)を包み、軟質接触部材(400)は、器具の上述の内側および外側周りに形成された特性の折り畳み構造体を有し、それにより、下向き係合面(205)の周囲およびコーナー部が完全に包まれるようになる。軟質接触部材(400)は、周辺構造体(204)の上向き係合面(206)と全体として平行である下向きの封止面(401)を有し、その結果、軟質接触部材(400)の下向き封止面(401)は、上向き係合面(206)に効果的に接触して空隙の発生を回避することができるようになっている。図示のように、軟質接触部材(400)は、下向き封止面(401)と反対の側に形成された係合部材(402)を有し、この係合部材(402)は、軟質接触部材(400)を下向き係合面(205)にしっかりと取り付けることができるようカバー(202)中に挿入可能でありまたは埋め込み可能である。他の実施形態では、係合部材(402)を無視することができ、軟質接触部材(400)を下向き係合面(205)にくっつけることができる。
【0027】
図4Bは、本発明に係る別の実施形態としての軟質接触部材を示しており、この場合、頂部蓋と底部蓋は、完全には互いに係合しない。上述の実施形態とは異なり、軟質接触部材(400′)は、下向きの封止面(401)を有し、この下向き封止面には下方に延びる少なくとも1つのリブ(403)が形成されている。この実施形態は、内側および外側周りにそれぞれ形成された2つのリブ(403)を有する。他の実施形態では、軟質接触部材は、これよりも少ないまたはこれよりも多いリブ(403)を有することができる。図示されていないが、リブ(403)は、カバー(202)に沿って延びることが予想される。頂部蓋(101)と底部蓋(102)が互いに係合する場合、リブ(403)は、周辺構造体(204)の上向き係合面(206)と接触し、したがって、レチクル収容空間が気密封止されるようになっている。
【0028】
図5は、図4Aの頂部蓋(101)の平面図であり、シーリング(201)は、カバー(202)によって包囲され、軟質接触部材(400)は、カバー(202)に沿って延びてその下向き係合面を包んでいる。この実施形態では、軟質接触部材(400)は、頂部蓋のカバー(202)に沿って均等に延びている。他の考えられる実施形態では、軟質接触部材(400)は、この延長部を横切って上向き部および下向き部を有しても良い。
【0029】
図6Aは、頂部蓋と底部蓋が互いに係合する本発明の別の実施形態を示している。第1の軟質接触部材(600)がカバー(202)の下向き係合面(205)に取り付けられるとともにこの下向き係合面(205)からある高さにわたって下方に延びている。第2の軟質接触部材(601)が周辺構造体(204)の上向き係合面(206)に取り付けられるとともにこの上向き係合面(206)からある高さにわたって上方に延びている。第1および第2の軟質接触部材(600,601)の高さは、互いに同一であっても良く異なっていても良い。好ましくは、第1および第2の軟質接触部材(600,601)の高さは、第1および第2の軟質接触部材(600,601)がそれぞれ上向きおよび下向き係合面(205,206)と接触して良好な気密封止状態を形成することができるよう同一である。好ましくは、頂部蓋(101)と底部蓋(102)が互いに係合する場合、第1の軟質接触部材(600)の内側は、空隙を形成しないよう第2の軟質接触係合面(601)の外側と完全に接触することができる。第1および第2の軟質接触部材(600,601)は、それぞれ下向きおよび上向き係合面(205,206)中に部分的に挿入されまたは埋め込まれて動きが回避される。
【0030】
図6Bは、頂部蓋と底部蓋が互いに係合することはない本発明のさらにもう1つの実施形態を示している。上述の実施形態とは異なり、第1の軟質接触部材(600′)は、下向き係合面(205)を包む側方延長部をさらに有する。したがって、頂部蓋(101)と底部蓋(102)が互いに係合する場合、第2の軟質接触部材(601)は、第1の軟質接触部材(600′)の内側に接触するだけでなく軟質接触部材(600′)の下向きの封止にも接触し、それにより気密封止作用が増大している。注意する価値のあることとして、かかる頂部蓋および底部蓋が軟質接触部材を備えている場合、任意の接触部材における過度の変形がこれらの接触下において望ましくなく、このことは、頂部蓋と底部蓋との間に形成された空隙の発生を阻止するためである。
【0031】
図7Aは、別の実施形態の分解組立図、図7Bは、その断面図である。第1の軟質接触部材(700)がカバー(202)の下向き係合面(205)に取り付けられている。第2の軟質接触部材(701)が埋め込みまたは固定手段によって第1の軟質接触部材(700)に取り付けられている。第1の軟質接触部材(700)は、第2の軟質接触部材(701)の材料よりも硬い材料、例えば、PEEKのようなプラスチックである。換言すると、この第1の実施形態にかかる軟質接触部材(700)は、フレームと類似している。
【0032】
図8は、別の一実施形態の断面図である。軟質接触部材(800)が周辺構造体(204)に沿って延びるトレンチ中に部分的に埋め込まれ、かくして、軟質接触部材(800)を周辺構造体(204)の上向き係合面(206)から部分的に突き出た状態で露出させることができる。カバー(202)は、軟質接触部材(800)を下向き係合面(205)に接触させて気密封止状態を形成している。軟質接触部材(800)の断面形状は、任意の別の形状であって良い。
【0033】
加うるに、図3図4A図4B図6A図6B図7Bおよび図8に示されているように、上述の周辺構造体(204)と上述のキャリヤ(203)との間に少なくとも1つのトレンチ(214)が形成されるのが良い。上述の実施形態が軟質接触部材によって得られる気密封止状態を呈するにもかかわらず、このトレンチ(214)は、粒子捕捉をさらに助けることができ、それにより、粒子がキャリヤに飛び移る困難性が増す。
【0034】
図9は、BB線矢視断面図であり、本発明に係るレチクル貯蔵器具のコーナー部構造を示しており、このコーナー部構造は、頂部蓋(101)および底部蓋(102)を緩衝するための手段を有する。頂部蓋(101)のカバー(202)は、多数のピラー(212)を有し、これらピラー(212)は、頂部蓋(101)の4つのコーナー部のところにまたはカバー上に比較的大きな面積を備えた他の位置の所に設けられるのが良く、これらピラーは、カバー(202)から下方に延びている。多数のこれらに対応した収容空所(213)が底部蓋(102)の周辺構造体(204)に形成されており、これら収容空所は、頂部蓋(101)のカバー(202)を底部蓋(102)の周辺構造体(204)の上方に持ち上げることができるよう対応のピラー(212)を受け入れるよう構成されており、それにより、効果的な緩衝作用が達成される。一実施形態では、ピラー(212)の露出部の高さは、収容空所(213)の有効収容深さよりも大きく、その結果、頂部蓋(101)は、図1には明確には示されていないが頂部蓋(101)を底部蓋(102)の上方に僅かに持ち上げることができるようになっている。上述の軟質接触部材(400,400′,600′)は、これらピラー(212)周りに延びても良くまたはこれらピラー(212)と一体に形成されても良い。
【0035】
図10は、BB線矢視断面図であるが、別の実施形態を示している。上記とは異なり、ピラー(912)は、それぞれ取り付け部材(9121)およびばね(9122)の底部に結合した弾性終端部(9123)である2つの弾性構造体を有する。弾性終端部(9123)の材料は、PEEKまたはフッ素化ゴムであるのが良く、かかる材料を底部蓋との接触を緩衝するようになった任意の形状に形成することができる。図11は、ピラーの別の一実施形態を示している。図12と一緒に参照すると、ピラー(1012)は、弾性フレーム(1100)および弾性フレーム(1100)の底部に結合した終端部(1101)を有する。弾性フレーム(1100)は、垂直方向に圧縮可能である複数の互いに連結されたフレームで構成され、フレームの各々は、二次元に延びている。弾性フレーム(1100)は、ピラー(1012)の垂直圧縮中にピラー(1012)に対してバッファとなる複数の中空部を有する。終端部(1101)は、硬質または軟質材料から選択することができ、かかる終端部を底部蓋と係合するようになった任意の形状に形成することができる。
【0036】
図13は、図8の別の構成例を示しており、この構成例では、少なくとも1つの保持ピン(1300)が頂部蓋のシーリング(201)のところ設けられた状態で下方に延びている。保持ピン(1300)は、頂部蓋に対して相対的に動くことができない部材である。断面図に示されているように、保持ピン(1300)は、全体としてT字形に形成され、その頂部は、キャップ(1301)によって固定されている。頂部蓋と底部蓋が互いに係合する場合、保持ピン(1300)の終端部は、レチクル(R)の頂面と接触し、それにより、保持ピン(1300)は、頂部蓋をある高さにわたって僅かに持ち上げることができるが、保持ピン(1300)の高さは、カバー(202)が軟質接触部材(800)から分離することがないよう、したがってレチクル収容空間に対する気密封止状態を維持することができるよう選択されている。
【0037】
とりわけ、本発明にかかるレチクル貯蔵器具は、頂部蓋と底部蓋との間に軟質接触部材を提供する設計を提供しており、それにより器具または内側ポッドに気密封止状態が与えられるとともに器具に関する粒子抑制効果が高められる。
【0038】
上述の細部は、上述の実施形態の組み合わせの製造および使用に関する完全な説明を提供している。かかる記載内容の精神および範囲から逸脱することなく種々の実施形態を想到することができる。かくして、これら実施形態は、添付の特許請求の範囲に記載された本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
101 頂部蓋
102 底部蓋
201 シーリング(天井)
202 カバー
203 キャリヤ
204 周辺構造体
205 下向き係合面
206 上向き係合面
207,400,400′,600,600′,601,700,701,800 軟質接触部材
212 ピラー
214 トレンチ
401 下向き封止面
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13