(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】ヒドロゲルコンタクトレンズ上に潤滑性コーティングを有するヒドロゲルコンタクトレンズ
(51)【国際特許分類】
G02C 7/04 20060101AFI20221025BHJP
C08F 126/10 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
G02C7/04
C08F126/10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020192513
(22)【出願日】2020-11-19
(62)【分割の表示】P 2019515429の分割
【原出願日】2017-09-14
【審査請求日】2020-11-19
(32)【優先日】2016-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520000722
【氏名又は名称】アルコン インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】チュ,ユンシン
(72)【発明者】
【氏名】プルーイット,ジョン・ダラス
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン,ジャレッド
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/145204(WO,A1)
【文献】特表2015-528831(JP,A)
【文献】特表2013-533518(JP,A)
【文献】特表2010-508547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/04
C08F 126/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソフトコンタクトレンズを製造するための方法であって、
(1)予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを得る工程であって、前記予備成形されたヒドロゲルコンタクトレンズは、ポリビニルアルコールベースのヒドロゲルコンタクトレンズである、工程と、
(2)前記予備成形されたヒドロゲルコンタクトレンズをポリアニオン性ポリマーの第一のコーティング水溶液と4.0以下のpHおよび25℃~80℃のコーティング温度で接触させて、前記予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであって、その上に前記ポリアニオン性ポリマーの層を有する前記予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであるソフトコンタクトレンズ前駆体を得る工程であって、前記ポリアニオン性ポリマーは、アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸または2-アクリルアミドグリコール酸、2-メタクリルアミドグリコール酸の1種または複数のホモポリマーまたはコポリマーである、工程と、
(3)工程(2)で得られた前記ソフトコンタクトレンズ前駆体を、アゼチジニウム基を有する水溶性および熱架橋性の親水性ポリマー物質を含む第二のコーティング水溶液中において60℃~140℃の温度で少なくとも30分にわたって加熱して、前記水溶性および熱架橋性の親水性ポリマー物質と前記ポリアニオン性ポリマーとを架橋させて、前記ポリアニオン性ポリマーの前記層上に共有結合的に結合されるヒドロゲルコーティングを有する、コーティングされたソフトコンタクトレンズを形成する工程と、
を含み、
前記コーティングされたソフトコンタクトレンズが、完全に水和された状態での指擦り試験の7サイクル後に2以下の摩擦等級を有し、前記摩擦等級は、
レンズ表面の滑りやすさを定性的に0~4の摩擦等級スケールで特徴付ける指触感触潤滑性試験によって決定され、指触感触潤滑性試験において、ソフトコンタクトレンズを指間で扱い、ソフトコンタクトレンズに、市販されているレンズ:DAILIES(登録商標)TOTAL1(登録商標)は摩擦等級0、ACCUVUE(登録商標)OASYS(商標)は摩擦等級1、ACCUVUE(登録商標)ADVANCE PLUS(商標)は摩擦等級2、DAILIES(登録商標)Aqua Comfort Plus(登録商標)は摩擦等級3、AIR OPTIX(登録商標)は摩擦等級4を有するとする4つの標準コンタクトレンズの摩擦等級と比較して数字を割り当て、摩擦等級の数値は、2人以上による前記コーティングされたソフトコンタクトレンズについての少なくとも2つの摩擦等級の数値を平均することによって得、
ただし、前記コーティングされたソフトコンタクトレンズの弾性モジュラスは、前記予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの弾性モジュラスと±10%以下の幅内で等しい、方法。
【請求項2】
前記予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、前記第一のコーティング水溶液と少なくとも1分の接触時間にわたって接触する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加熱の工程は、密封されたレンズパッケージ中で前記第二のコーティング水溶液中に浸漬された前記ソフトコンタクトレンズ前駆体を115℃~125℃の温度で30分~90分にわたってオートクレーブ処理することによって実施され、前記第二のコーティング水溶液は、6.7~7.6のpHを有する緩衝水溶液である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリアニオン性ポリマーは、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(メタクリル酸)(PMAA)、ポリ(アクリル酸-コ-メタクリル酸)(pAA-pMAA)、ポリ(エチルアクリル酸)(PEAA)、ポリ(アクリル酸-コ-エチルアクリル酸)(pAA-pEAA)、ポリ(メタクリル酸-コ-エチルアクリル酸)(pMAA-pEAA)、ポリ[2-アクリルアミドグリコール酸]、ポリ[2-メタクリルアミドグリコール酸]またはそれらの組合せである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記親水性ポリマー物質は、
(i)20重量%~95重量%の、ポリアミドアミン-エピクロロヒドリンまたはポリ(2-オキサゾリン-コ-エチレンイミン)-エピクロロヒドリンから誘導された第一のポリマー鎖と、
(ii)5重量%~80重量%の親水性残基および/または第二のポリマー鎖であって、前記親水性残基のそれぞれは、一級アミノ基、二級アミノ基、カルボキシル基、チオール基およびそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有する少なくとも1種の第一の親水性向上剤から誘導され、前記親水性残基は、前記第一の親水性向上剤の1つのアゼチジニウム基と、1つの一級もしくは二級アミノ、カルボキシルまたはチオール基との間にそれぞれ形成された1つまたは複数の共有結合を介して前記第一のポリマー鎖に共有結合的に結合され、
前記第二のポリマー鎖のそれぞれは、一級アミノ基、二級アミノ基、カルボキシル基、チオール基およびそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有する少なくとも1種の第二の親水性向上剤から誘導され、前記第二のポリマー鎖は、前記第二の親水性向上剤の1つのアゼチジニウム基と、1つの一級アミノ、二級アミノ、カルボキシルまたはチオール基との間にそれぞれ形成された1つまたは複数の共有結合を介して前記第一のポリマー鎖に共有結合的に結合される、親水性残基および/または第二のポリマー鎖と、
(iii)アゼチジニウム基であって、前記第一のポリマー鎖の一部または前記第一のポリマー鎖に共有結合的に結合されたペンダントもしくは末端基であるアゼチジニウム基と
を含む水溶性の親水性ポリマー物質である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記水溶性の親水性ポリマー物質は、5重量%~80重量%の第二のポリマー鎖を含み、前記第二のポリマー鎖のそれぞれが、1つの単独の一級もしくは二級アミノ、カルボキシルまたはチオール基を有するポリエチレングリコール、2つの末端一級もしくは二級アミノ、カルボキシルおよび/またはチオール基を有するポリエチレングリコール、1つまたは複数の一級もしくは二級アミノ、カルボキシルおよび/またはチオール基を有するマルチアームポリエチレングリコール、1つまたは複数の一級もしくは二級アミノ、カルボキシルおよび/またはチオール基を有するポリエチレングリコールデンドリマー、一級アミン含有多糖類、二級アミン含有多糖類、カルボキシル含有多糖類、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、あるいは(1)60重量%以下の1種または複数の反応性ビニル系モノマーおよび(2)1種または複数の非反応性の親水性ビニル系モノマーを含む組成の重合生成物である少なくとも1種の第二の親水性向上剤から誘導され、
前記1種または複数の反応性ビニル系モノマーは、カルボキシル、一級アミノまたは二級アミノ基を有するビニル系モノマーであり、
前記1種または複数の非反応性のビニル系モノマーは、ホスホリルコリン含有ビニル系モノマー、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン(NVP)、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルイソプロピルアミド、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリセロール(メタ)アクリレート、N-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-エチル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-メチル-5-メチレン-2-ピロリドン、1-エチル-5-メチレン-2-ピロリドン、5-メチル-3-メチレン-2-ピロリドン、5-エチル-3-メチレン-2-ピロリドン、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1500ダルトンまでの重量平均分子量を有するC
1~C
4-アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、アリルアルコール、ビニルアルコールおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ、特にポリビニルアルコールベースのヒドロゲルコンタクトレンズであって、その上にソフトで潤滑性のヒドロゲルコーティングを有する、非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ、特にポリビニルアルコールベースのヒドロゲルコンタクトレンズに関する。加えて、本発明は、そのようなコンタクトレンズを作製するための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
市場で最も入手可能な非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、使い捨てのプラスチック成形型およびビニル系モノマーと架橋剤との混合物を使用することを含む従来の注型成形技術に従い、主たるレンズ形成性成分としての1種または複数のヒドロキシル含有ビニル系モノマー(例えば、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリセロールなど)から製造される。従来の注型成形技術にはいくつかの欠点がある。例えば、従来の注型成形製作プロセスは、多くの場合、レンズ抽出工程を含み、そこで、有機溶媒を用いてレンズから未重合のモノマーを除去しなければならない。有機溶媒の使用は、コストが高くなり得、環境に優しくない。加えて、使い捨てのプラスチック成形型は、本来、寸法的なばらつきを有し、なぜなら、プラスチック成形型を射出成形する際、製造プロセス(温度、圧力、材料の性質)における変動の結果として成形型の寸法に変動が起こり得、およびさらにそのようにして得られた成形型が射出成形後に不均質な収縮を起こし得るためである。成形型におけるこれらの寸法の変化は、製造されたコンタクトレンズのパラメーター(ピーク屈折率、直径、基本曲線、中央の厚さなど)の変動および二重複合レンズにおける設計への忠実度の低下を招き得る。
【0003】
従来の注型成形技術における上述のような欠点は、いわゆるLightstream Technology(商標)(Alcon)を使用することによって克服することができ、その方法は、(1)実質的にモノマーを含まず、かつ実質的に精製された水溶性のエチレン性不飽和基を有するポリビニルアルコールプレポリマーを含むレンズ形成性組成物、(2)高い精度で製造された再使用可能な成形型および(3)化学照射線(例えば、UV)の空間的制限下での硬化を含み、これらについては、米国特許第5,508,317号明細書、米国特許第5,583,163号明細書、米国特許第5,789,464号明細書、米国特許第5,849,810号明細書、米国特許第6,800,225号明細書および米国特許第8,088,313号明細書に記載されている。Lightstream Technology(商標)に従って製造された非シリコーンヒドロゲルレンズ、例えばDAILIES(登録商標)AquaComfort Plus(登録商標)は、再使用可能な高精度の成形型を使用するために、高い一致性および元のレンズ設計に対する高い忠実度を有することができる。加えて、高い光学的特性を有するコンタクトレンズを、硬化時間が短く、製造収率が高く、かつレンズ抽出工程が不要であるために比較的低コストで製造することが可能であり、レンズの配合物を調製するための溶媒として水を使用するために環境に優しい。しかしながら、DAILIES(登録商標)AquaComfort Plus(登録商標)レンズは、良好な光学的特性、高い水分含量(約69重量%)、および良好な表面の濡れ性を有するものの、それらは、優れた着用快適性を確保するために必要とされる表面潤滑性を有さないことがあり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、優れた表面潤滑性を有する新規な非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズおよびそのようなコンタクトレンズを製造することを可能にする方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの態様では、本発明は、ソフトコンタクトレンズを製造するための方法であって、(1)予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを得る工程であって、予備成形されたヒドロゲルコンタクトレンズは、少なくとも50モル%の少なくとも1種のヒドロキシル含有ビニル系モノマーの繰り返し単位を含むポリマーで構成される、工程と、(2)予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズをポリアニオン性ポリマーの第一のコーティング水溶液と約4.0以下のpHおよび約25℃~約80℃のコーティング温度で接触させて、予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであって、その上にポリアニオン性ポリマーの層を有する予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであるソフトコンタクトレンズ前駆体を得る工程であって、ポリアニオン性ポリマーは、アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸または2-(メタ)アクリルアミドグリコール酸のホモポリマーまたはコポリマーである、工程と、(3)工程(2)で得られたソフトコンタクトレンズ前駆体を、アゼチジニウム基を有する水溶性および熱架橋性の親水性ポリマー物質を含む第二のコーティング水溶液中において約60℃~約140℃の温度で少なくとも30分にわたって加熱して、水溶性および熱架橋性の親水性ポリマー物質とポリアニオン性ポリマーとを架橋させて、ソフトコンタクトレンズであって、その上にヒドロゲルコーティングを有するソフトコンタクトレンズを形成する工程であって、ヒドロゲルコーティングは、ポリアニオン性ポリマーの層上に共有結合的に結合される、工程とを含み、完全に水和された状態のソフトコンタクトレンズは、指擦り試験の7サイクル後に約2以下の摩擦等級を有し、ただし、ソフトコンタクトレンズの弾性モジュラスは、予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの弾性モジュラスと約±10%以下の幅内で等しい、方法を提供する。
【0006】
別の態様では、本発明は、非シリコーンヒドロゲルレンズ体およびその上のヒドロゲルコーティングを含むソフトコンタクトレンズであって、非シリコーンヒドロゲルレンズ体は、シリコーンを含まず、かつ少なくとも50モル%の少なくとも1種のヒドロキシル含有ビニル系モノマーの繰り返し単位を含むヒドロゲル物質で構成され、コーティングは、第一の反応性官能基を有する第一のポリマー物質のアンカー層および第二の反応性官能基を有する第二のポリマー物質から誘導されたヒドロゲル層を含み、ヒドロゲル層は、1つの第一の反応性官能基と1つの第二の反応性官能基との間にそれぞれ形成された結合を介してアンカー層上に共有結合的に結合され、ヒドロゲルコーティングは、約0.1μm~約20μmの厚さを有し、ソフトコンタクトレンズは、非シリコーンヒドロゲルレンズ体の潤滑性より良好な表面潤滑性を有し、かつ室温で完全に水和されたとき、指擦り試験の7サイクル後に約2以下の摩擦等級と、約10重量%~約85重量%の水分含量と、約0.2MPa~約1.5MPaの弾性モジュラスとを有する、ソフトコンタクトレンズを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
別に定義をしない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および学術用語は、本発明が属する技術分野の当業者が普通に理解するのと同じ意味を有する。一般的に、本明細書において使用される命名法および実験室手順は、当業者に公知であり、一般的に採用されている。それらの手順では、従来の方法、例えば当業者により実施され、各種の一般的に引用される方法が使用される。用語が単数で与えられている場合でも、本発明者らは、その用語の複数形も考慮に入れている。一般的に、本明細書において使用される命名法および以下で記載される実験室手順は、当業者に公知であり、一般的に採用されているものである。
【0008】
本明細書で使用するとき、「約」という用語は、「約」を用いられた数が、引用された数プラスまたはマイナス引用された数の1~10%を含むことを意味する。
【0009】
「任意選択的な」または「任意選択的に」という用語は、それに続けて記載される事象または状況が起きることも起きないこともあり得ること、およびその記述が、事象または状況が起きる場合とそれが起きない場合とを含むことを意味する。
【0010】
「コンタクトレンズ」という用語は、着用者の眼の上、すなわち内部に位置さし得る構造物を指す。コンタクトレンズは、使用者の視力を補正、改良または変化させることができるが、必ずしもそうでなければならないわけではない。コンタクトレンズは、当業者に公知であるかまたは今後開発される適切ないかなる物質でもあり得、またソフトレンズ、ハードレンズまたはハイブリッドレンズであり得る。「非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ」という用語は、非シリコーンヒドロゲルのバルク(コア)物質を含むコンタクトレンズを指す。
【0011】
「ソフトコンタクトレンズ」という用語は、2.0MPa未満(好ましくは1.5MPa未満、より好ましくは1.0MPa未満)の弾性モジュラス(すなわちヤング率)を有するコンタクトレンズを指す。
【0012】
「ヒドロゲル」または「ヒドロゲル物質」という用語は、三次元ポリマーネットワーク(すなわちポリマーマトリックス)を有し、水に不溶性であるが、それが完全に水和されたときにポリマーマトリックス中に少なくとも10重量パーセントの水を保持することが可能な架橋されたポリマー物質を指す。
【0013】
本出願において使用するとき、「非シリコーンヒドロゲル」という用語は、理論的にケイ素を含まないヒドロゲルを指す。
【0014】
「シリコーンヒドロゲル」という用語は、少なくとも1種のシリコーン含有モノマー、または少なくとも1種のシリコーン含有マクロマー、または少なくとも1種の架橋性シリコーン含有プレポリマーを含む重合性組成物を共重合させることにより得られるシリコーン含有ヒドロゲルを指す。
【0015】
「表面親水性」という用語は、本明細書で使用するとき、表面と水との相互作用の程度を表す表面の性質を記述するものであり、それは、水ブレイクアップ時間(WBUT)によって測定される。WBUTの値が高いほど、その表面親水性が高い。
【0016】
本発明では、コンタクトレンズ(または医療用具)の「表面潤滑性」は、0~4の数値である摩擦等級で測定される。摩擦等級の数値が高いほど、その表面潤滑性が低い。
【0017】
本明細書で使用するとき、「親水性」という用語は、材料またはその一部が脂質よりも水と容易になじむであろうことを表す。
【0018】
「ビニル系モノマー」という用語は、1つの単独のエチレン性不飽和基を有する化合物を指す。
【0019】
「可溶性」という用語は、溶媒中での化合物または物質に関連して、化合物または物質が溶媒中に溶解されて、室温(すなわち約20℃~約30℃)で少なくとも約0.05重量%の濃度を有する溶液を与え得ることを意味する。
【0020】
「不溶性」という用語は、溶媒中での化合物または物質に関連して、化合物または物質が溶媒中に溶解されて、室温(先に定義)で約0.005重量%未満の濃度を有する溶液を与え得ることを意味する。
【0021】
「エチレン性不飽和基」という用語は、本明細書では広い意味で用いられ、少なくとも1つの>C=C<基を含む各種の基を包含することが意図されている。エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル
【化1】
、アリル、ビニル(-CH=CH
2)、1-メチルエテニル
【化2】
、スチレニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
「(メタ)アクリルアミド」という用語は、メタクリルアミドおよび/またはアクリルアミドを指す。
【0023】
「(メタ)アクリレート」という用語は、メタクリレートおよび/またはアクリレートを指す。
【0024】
「アクリル系モノマー」という用語は、1つの単独の(メタ)アクリロイル基を有するビニル系モノマーを指す。
【0025】
本明細書で使用するとき、「化学線で」という用語は、重合性組成物、プレポリマーまたは物質の硬化、架橋または重合に関連して、硬化(例えば、架橋および/または重合)が化学照射線、例えばUV/可視光照射線、イオン化照射線(例えば、ガンマ線またはX線照射線)、マイクロ波照射線などにより実施されることを意味する。加熱硬化法または化学線硬化法は、当業者に周知である。
【0026】
「親水性ビニル系モノマー」という用語は、本明細書で使用するとき、重合されて、水溶性であるか、または少なくとも10重量パーセントの水を吸収することが可能なホモポリマーを形成することが可能なビニル系モノマーを指す。
【0027】
「疎水性ビニル系モノマー」という用語は、重合されて、水に不溶性であるか、または10重量パーセント未満の水のみを吸収できるホモポリマーを形成することが可能なビニル系モノマーを指す。
【0028】
本出願において使用するとき、ポリマー物質(モノマー物質またはマクロマー物質も含む)の「分子量」という用語は、特に断らない限りまたは別の試験条件を示さない限り、重量平均分子量(Mw)を指す。
【0029】
「マクロマー」または「プレポリマー」という用語は、エチレン性不飽和基を含み、かつ700ダルトンよりも大きいMwを有する化合物またはポリマーを指す。
【0030】
本出願において使用するとき、「ビニル系架橋化剤」という用語は、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有する化合物を指す。「ビニル系架橋剤」という用語は、約700ダルトン以下のMwを有するビニル系架橋化剤を指す。
【0031】
本出願において使用するとき、「ポリマー」という用語は、1種または複数のモノマー、またはマクロマー、またはプレポリマー、またはそれらの組合せを重合/架橋させることにより形成される物質を意味する。
【0032】
「アルキル」という用語は、直鎖状または分岐状のアルカン化合物から水素原子を除去することにより得られる一価のラジカルを指す。アルキル基(ラジカル)は、有機化合物中で他の1つの基と1つの結合を作る。
【0033】
「アルキレンの二価の基」、または「アルキレンジラジカル」、または「アルキルジラジカル」という用語は、相互に言い換え可能であり、アルキルから1つの水素原子を除去することにより得られる二価のラジカルを指す。アルキレンの二価の基は、有機化合物中で他の基と2つの結合を作る。
【0034】
「アルキルトリラジカル」という用語は、アルキルから2つの水素原子を除去することにより得られる三価のラジカルを指す。アルキルトリラジカルは、有機化合物中で他の基と3つの結合を作る。
【0035】
「アルコキシ」または「アルコキシル」という用語は、直鎖状または分岐状のアルキルアルコールのヒドロキシル基から水素原子を除去することにより得られる一価のラジカルを指す。アルコキシ基(ラジカル)は、有機化合物中で他の1つの基と1つの結合を作る。
【0036】
本出願において、アルキルジラジカルまたはアルキルラジカルに関連した「置換された」という用語は、アルキルジラジカルまたはアルキルラジカルが、アルキルジラジカルまたはアルキルラジカルの1つの水素原子を置き換える、ヒドロキシ(-OH)、カルボキシ(-COOH)、-NH2、スルフヒドリル(-SH)、C1~C4アルキル、C1~C4アルコキシ、C1~C4アルキルチオ(アルキルスルフィド)、C1~C4アシルアミノ、C1~C4アルキルアミノ、ジ-C1~C4アルキルアミノ、ハロゲン原子(BrまたはCl)およびそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を含むことを意味する。
【0037】
本出願において、「オキサゾリン」という用語は、
【化3】
の化合物を指し、ここで、R
1は、水素、メチル、エチル、N-ピロリドニルメチル、N-ピロリドニルエチル、N-ピロリドニルプロピルまたは一価のラジカルの-alk-(OC
2H
4)
m3-OR’’(式中、alkは、C
1~C
4アルキルジラジカルであり、R’’は、C
1~C
4アルキル(好ましくはメチル)であり、およびm3は、1~10(好ましくは1~5)の整数である)である。
【0038】
本出願において、「ポリオキサゾリン」という用語は、
【化4】
の式を有する直鎖状のポリマーを指し、ここで、T
1およびT
2は、2つの末端基であり、R
1は、水素、メチル、エチル、N-ピロリドニルメチル、N-ピロリドニルエチル、N-ピロリドニルプロピルまたは一価のラジカルの-alk-(OC
2H
4)
m3-OR’’( 式中、alkは、C
1~C
4アルキルジラジカルであり、R’’は、C
1~C
4アルキル(好ましくはメチル)であり、およびm3は、1~10(好ましくは1~5)の整数である)であり、xは、5~500の整数である。ポリオキサゾリンセグメントは、
【化5】
の式の二価のポリマー鎖を有し、ここで、R
1およびxは、先に定義されたものである。
【0039】
本出願において、「ポリ(2-オキサゾリン-コ-エチレンイミン」という用語は、
【化6】
の式を有する統計的コポリマーを指し、ここで、T
1およびT
2は、末端基であり、R
1は、水素、メチル、エチル、N-ピロリドニルメチル、N-ピロリドニルエチル、N-ピロリドニルプロピルまたは一価のラジカルの-alk-(OC
2H
4)
m3-OR’’(式中、alkは、C
1~C
4アルキルジラジカルであり、R’’は、C
1~C
4アルキル(好ましくはメチル)であり、m3は、1~10(好ましくは1~5)の整数である)であり、xは、5~500の整数であり、zは、x以下の整数である。ポリ(2-オキサゾリン-コ-エチレンイミン)は、ポリオキサゾリンを加水分解することにより得られる。
【0040】
本出願において、「ポリ(2-オキサゾリン-コ-エチレンイミン)-エピクロロヒドリン」という用語は、ポリ(2-オキサゾリン-コ-エチレンイミン)をエピクロロヒドリンと反応させて、ポリ(2-オキサゾリン-コ-エチレンイミン)の二級アミン基の全部または大部分(≧90%)をアゼチジニウム基に転化させることによって得られるポリマーを指す。ポリ(2-オキサゾリン-コ-エチレンイミン)-エピクロロヒドリンの例は、米国特許出願公開第2016/0061995A1号明細書に開示されている(参照によりその全体が本明細書に援用される)。
【0041】
「エピクロロヒドリン官能化ポリアミン」または「エピクロロヒドリン官能化ポリアミドアミン」という用語は、ポリアミンまたはポリアミドアミンをエピクロロヒドリンと反応させて、ポリアミンまたはポリアミドアミンの二級アミン基の全部または大部分をアゼチジニウム基に転化させることによって得られるポリマーを指す。
【0042】
「ポリアミドアミン-エピクロロヒドリン」という用語は、エピクロロヒドリンで官能化されたアジピン酸-ジエチレントリアミンコポリマーを指す。
【0043】
本出願において「アゼチジニウム」または「3-ヒドロキシアゼチジニウム」という用語は、
【化7】
のプラスに帯電した二価のラジカル(または基もしくは残基)を指す。
【0044】
「アズラクトン」という用語は、式
【化8】
の一価のラジカルを指し、pは、0または1であり、
3Rおよび
4Rは、互いに独立して、C
1~C
8アルキル(好ましくはメチル)である。
【0045】
「アジリジン基」という用語は、式
【化9】
の一価のラジカルを指し、ここで、R
1は、水素、メチルまたはエチルである。
【0046】
「ビニルスルホン基」という用語は、式
【化10】
の一価のラジカルを指す。
【0047】
ポリマー物質または官能基に関連して「熱架橋性」という用語は、ポリマー物質または官能基が他の物質または官能基と比較的高い温度(約40℃~約140℃)で架橋(またはカップリング)反応することができる一方、ポリマー物質または官能基が、室温(すなわち約22℃~約28℃、好ましくは約24℃~約26℃、特に約25℃)では、約1時間かけても検出できる程度に他の物質または官能基と同一の架橋反応(またはカップリング反応)できないことを意味する。
【0048】
本出願において使用するとき、「ホスホリルコリン」という用語は、
【化11】
の一価の双性イオン基を指し、t1は、1~5の整数であり、およびR
1’’、R
2’’およびR
3’’は、互いに独立して、C
1~C
8アルキルまたはC
1~C
8ヒドロキシアルキルである。
【0049】
本出願において使用するとき、「反応性ビニル系モノマー」という用語は、カルボキシル基、一級アミノ基および二級アミノ基からなる群から選択される少なくとも1つの反応性官能基を有する各種のビニル系モノマーを指す。
【0050】
本出願において使用するとき、「非反応性のビニル系モノマー」という用語は、カルボキシル基、一級アミノ基、二級アミノ基、エポキシド基、イソシアネート基、アズラクトン基またはアジリジン基を含まない各種のビニル系モノマー(親水性、疎水性両方のビニル系モノマー)を指す。
【0051】
フリーラジカル重合開始剤は、光重合開始剤または熱重合開始剤のいずれでもあり得る。「光重合開始剤」という用語は、光を使用することにより、フリーラジカル架橋/重合反応を開始する化学物質を指す。「熱重合開始剤」という用語は、熱エネルギーを使用することにより、ラジカル架橋/重合反応を開始する化学物質を指す。
【0052】
「化学照射線の空間的制限」という用語は、化学線の形態のエネルギーの照射線を例えばマスクもしくはスクリーンまたはそれらの組合せによって方向付けて、空間的に制限された方法で、明瞭な辺縁境界を有する領域に衝突させる動作またはプロセスを指す。UV照射線の空間的制限は、照射線(例えば、UVおよび/または可視光線)透過領域、照射透過領域を囲む照射線(例えば、UVおよび/または可視光線)不透過領域、ならびに照射線不透過領域と照射線透過領域との間の境界である投影輪郭を有するマスクまたはスクリーンを使用することによって得られ、それらは、米国特許第6,800,225号明細書(
図1~11)および米国特許第6,627,124号明細書(
図1~9)、米国特許第7,384,590号明細書(
図1~6)および米国特許第7,387,759号明細書(
図1~6)の図面に概略的に示されている(これらのすべては、参照によりその全体が援用される)。マスクまたはスクリーンにより、マスクまたはスクリーンの投影輪郭によって決められる横断プロファイルを有する照射線(例えば、UV照射線および/または可視光線照射)のビームを空間的に投影することが可能となる。投影された照射線(例えば、UV照射線および/または可視光照射線)のビームは、成形型の第一の成形表面から第二の成形表面への投影されたビームの経路内に位置するレンズの配合物に衝突する照射線を限定する。そのようにして得られたコンタクトレンズは、第一の成形表面によって画定される前側表面、その反対に位置する第二の成形表面によって画定される後側表面、ならびに投影されたUVおよび/または可視光ビームの断面プロファイルによって画定されるレンズ端面を含む(すなわち照射線の空間的制限)。架橋のために使用される照射線は、照射線エネルギー、特にUV照射線(および/または可視光照射線)、ガンマ照射線、電子照射線または熱的照射線であり、照射線エネルギーは、実質的に平行なビームの形態であることが好ましく、それは、一方では良好な制限を与えるため、他方ではエネルギーを効率的に使用するためである。
【0053】
コンタクトレンズまたは物質に関して「モジュラス」または「弾性モジュラス」という用語は、引張モジュラス、すなわちヤング率を意味し、これは、コンタクトレンズまたは物質の剛性の尺度である。モジュラスは、ANSI Z80.20標準に従った方法を使用して測定することができる。シリコーンヒドロゲル物質またはコンタクトレンズの弾性モジュラスの測定法は、当業者によく知られている。例えば、すべて市販のコンタクトレンズは、報告された弾性モジュラス値を有する。
【0054】
「水接触角」という用語は、室温での平均水接触角(すなわちSessile Drop法によって測定した接触角)を指し、これは、少なくとも3つの個別のコンタクトレンズについての接触角の測定値を平均することによって得られる。
【0055】
ヒドロゲルコンタクトレンズ上のコーティングに関連して「耐久性」という用語は、ヒドロゲルコンタクトレンズ上のコーティングが所望のサイクル数の指擦り試験に耐えることができるかを示すことを目的とする。
【0056】
本明細書で使用するとき、コンタクトレンズ上のコーティングに関連する「指擦り試験で「j」回のサイクルに耐えられる」という用語は、実施例1に記載の手順に従った指擦り試験のjサイクル後、コンタクトレンズが、指擦り試験のjサイクル後の指擦り試験でもたらされた摩擦等級における約60%以下(好ましくは約50%以下、より好ましくは約40%以下、さらにより好ましくは約30%以下)の増大ΔFR
DR(j)を有することを意味し、ここで、
【数1】
であり、ここで、FR
0DRは、完全に水和された状態であり、指擦り試験にかけていないコンタクトレンズの摩擦等級であり、およびFR
jDRは、完全に水和された状態であり、jサイクルの指擦り試験にかけた後のコンタクトレンズの摩擦等級であり、ここで、jは、2の整数(好ましくは7、より好ましくは14、さらにより好ましくは30)である。
【0057】
「指擦り試験の1サイクル」という用語は、その上にコーティングを有するコンタクトレンズ(または医療用具)を、RENU(登録商標)多目的レンズケア溶液(または他の多目的レンズケア溶液)を使用し、(使い捨ての粉体非使用のラテックス手袋を着用して)20秒にわたって指で擦り、次いで生理食塩水を用いて濯ぐことを意味する。上述の手順を所定の回数、例えば2~30回繰り返すと、指擦り試験の繰り返し回数が指擦り試験のサイクル数である。
【0058】
「水溶液」または「水ベースの溶液」という用語は、相互に言い換え可能であり、水ベースの溶媒と、水ベースの溶媒中に溶解している1種または複数の溶質とからなる均質な混合物である溶液を指す。「水ベースの溶媒」という用語は、溶媒系の重量を基準にして少なくとも70重量%(好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、さらにより好ましくは少なくとも95重量%)の水と、最大で30重量%(好ましくは約20重量%以下、より好ましくは約10重量%以下、さらにより好ましくは約5重量%以下、特に約2重量%以下)の1種または複数の有機溶媒とからなる溶媒系を記述することを目的とする。「コーティング水溶液」という用語は、溶液中に溶質として少なくとも1種のポリマー性コーティング物質を含む水溶液を指す。
【0059】
「有機ベースの溶液」という用語は、有機ベースの溶媒と、有機ベースの溶媒中に溶解している1種または複数の溶質とからなる均質な混合物である溶液を指す。「有機ベースの溶媒」という用語は、1種または複数の有機溶媒と、溶媒系を基準にして40重量%未満、好ましくは約30重量%以下、より好ましくは約20重量%以下、さらにより好ましくは約10重量%以下、特に約5重量%以下の水とからなる溶媒系を記述することを目的とする。「有機ベースのコーティング溶液」という用語は、溶液中に溶質として少なくとも1種のポリマー性コーティング物質を含む有機ベースの溶液を指す。
【0060】
本発明は、一般的に、新規なクラスのソフトコンタクトレンズであって、非シリコーンヒドロゲルレンズ体(すなわち三次元のコンタクトレンズの形状を有する非シリコーンヒドロゲル基材)およびその上のソフトで潤滑性のヒドロゲルコーティングをそれぞれ含むソフトコンタクトレンズに関する。現在、市場にあるほとんど全部の非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、その上にいかなる恒久的なコーティングも有さず、なぜなら、それらのレンズのそれぞれのレンズ体がシリコーンを含まず、本来、親水性であり、濡れやすい表面を有するヒドロゲル物質から実質的になっているからである。非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズでは、その上に恒久的なコーティングを有するためのいかなる表面処理にかけることも必要ないと当技術分野で一般的に考えられている。対照的に、本発明のそれぞれのソフトコンタクトレンズは、それぞれのソフトコンタクトレンズのレンズ体が、本来、親水性であり、本来、濡れやすい表面を有する親水性ポリマー物質(すなわちヒドロゲル物質)から実質的になっているものの、その上に恒久的なヒドロゲルコーティングを有する。
【0061】
本発明は、予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ(これがレンズ体となる)上にソフトで潤滑性のヒドロゲルコーティングを適用することにより、非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの着用快適性を顕著に向上させることができるという発見に部分的に基づき、ただし、ソフトで潤滑性のヒドロゲルコーティングは、十分な厚さ(例えば、少なくとも0.1μm、(好ましくは少なくとも0.25μm、より好ましくは少なくとも0.5μm、さらにより好ましくは約1μm~約10μm)を有する。非シリコーンヒドロゲルレンズ体は、コンタクトレンズに必要とされるバルクな機械的強度および剛性を与えるため、ヒドロゲルコーティングは、水分含量および弾性モジュラス(軟かさとも言える)に関して制限がなく、可能な限りの水分を含むことが可能でありかつ可能な限りソフトであり得、それにより優れた着用快適性のための水リッチでスーパーソフトなスキンを有するコンタクトレンズを得ることができる。しかしながら、ヒドロゲルコーティングが薄すぎると、わずかな圧縮力がかかるのみでレンズのバルク物質上で全面的な崩壊を起こして、ソフトで潤滑性のヒドロゲルコーティングに伴う利点が失われる恐れがある。本発明のコンタクトレンズによって得られる着用快適性は、ヒドロゲルコーティングの厚さを増やすと増大するが、ある厚さ値以上では一定になるであろう。
【0062】
本発明は、さらに、十分な厚さを有するヒドロゲルコーティングを形成するために比較的厚い安定なアンカー層が必要であるという発見にも部分的に基づく。アンカー層が厚いほど、ヒドロゲルコーティングも厚くできる。少なくとも50モル%の少なくとも1種のヒドロキシル含有ビニル系モノマーの繰り返し単位および任意選択的にアミド含有ビニル系モノマーの繰り返し単位を含むポリマーで構成される予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上に、水ベースのコーティングプロセスを使用して、ポリアニオン性ポリマー(例えば、ポリアクリル酸またはポリメタクリル酸など)のアンカー層を適用することが可能であることが見出された。低いpH(すなわち約4.0未満)でヒドロキシル基とカルボキシル基(プロトン化された形態にある)との間に形成された水素結合は、非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズをポリアニオン性ポリマーの層に安定的に結合させるのに十分であると考えられる。水ベースのコーティングプロセスは、予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの性質に影響が全くないかまたは最小限の影響のみがあり、そのため、予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの有利な特質、例えば軟かさ、伸び、まばたきで誘発される潤滑剤の放出などがすべて維持されることも見出された。アンカー層としてのポリアニオン性ポリマーの層を有することにより、十分な厚さを有するヒドロゲル層を形成し、アンカー層上に共有結合的に結合させることが可能となる。
【0063】
1つの態様では、本発明は、ソフトコンタクトレンズを製造するための方法であって、(1)予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ(好ましくは予備成形されたポリビニルアルコールベースのヒドロゲルコンタクトレンズ)を得る工程であって、予備成形されたヒドロゲルコンタクトレンズは、少なくとも50モル%の少なくとも1種のヒドロキシル含有ビニル系モノマーの繰り返し単位を含むポリマーで構成される、工程と、(2)予備成形されたヒドロゲルコンタクトレンズを第一のポリアニオン性ポリマーのコーティング水溶液と約4.0以下(好ましくは約3.5以下、より好ましくは約3.0以下、さらにより好ましくは約0.5~約2.5)のpHおよび約25℃~約80℃(好ましくは約30℃~約75℃、より好ましくは約35℃~約70℃、さらにより好ましくは約40℃~約60℃)のコーティング温度で接触させて、予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであって、その上にポリアニオン性ポリマーの層を有する予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであるソフトコンタクトレンズ前駆体を得る工程であって、ポリアニオン性ポリマーは、アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸または2-(メタ)アクリルアミドグリコール酸の1種または複数のホモポリマーまたはコポリマーである、工程と、(3)工程(2)で得られたソフトコンタクトレンズ前駆体を、アゼチジニウム基を有する水溶性および熱架橋性の親水性ポリマー物質を含む第二のコーティング水溶液中において約60℃~約140℃の温度で少なくとも30分にわたって加熱して、水溶性および熱架橋性の親水性ポリマー物質とポリアニオン性ポリマーとを架橋させて、ポリアニオン性ポリマーの層上に共有結合的に結合されるヒドロゲルコーティングを有するソフトコンタクトレンズを形成する工程とを含み、完全に水和された状態のソフトコンタクトレンズは、指擦り試験の7サイクル後に約2以下(好ましくは約1.5以下、より好ましくは約1.0以下、さらにより好ましくは約0.5以下)の摩擦等級を有し、ただし、ソフトコンタクトレンズの弾性モジュラスは、約±10%以下(好ましくは約±8%、さらにより好ましくは約±6%)の幅内で予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの弾性モジュラスと等しい、方法を提供する。
【0064】
本発明では、予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、各種のレンズ製作プロセス(またはいわゆる「予備成形されたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ」)に従って製造され、レンズ形成性プロセス後のいかなる表面処理にもかけられない各種の非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであり、ただし、それは、少なくとも50モル%の1種または複数のヒドロキシル含有ビニル系モノマーの繰り返し単位を含むポリマーで構成される。ヒドロゲルコンタクトレンズを作製するのに適したヒドロキシル含有ビニル系モノマーは、当業者に公知である。ヒドロキシル含有ビニル系モノマーの好ましい例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、N-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコールおよびそれらの組合せ。任意選択的に、しかし好ましくは、予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、少なくとも50モル%の少なくとも1種のヒドロキシル含有ビニル系モノマーの繰り返し単位ならびに少なくとも1種のアミド含有ビニル系モノマー、少なくとも1種のカルボキシル含有アクリル系モノマーおよび/または少なくとも1種の一級もしくは二級アミノ基を有するアクリル系モノマーの繰り返し単位を含むポリマーで構成される。そのようなアミド含有ビニル系モノマー中のアミド基は、カルボキシル基と水素結合を形成することができると考えられる。
【0065】
アミド含有ビニル系モノマーの好ましい例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン(NVP)、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルイソプロピルアミド、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-エチル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-メチル-5-メチレン-2-ピロリドン、1-エチル-5-メチレン-2-ピロリドン、5-メチル-3-メチレン-2-ピロリドン、5-エチル-3-メチレン-2-ピロリドンおよびそれらの組合せ。
【0066】
カルボキシル含有アクリル系モノマーの好ましい例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸、2-アクリルアミドグリコール酸、2-メタクリルアミドグリコール酸またはそれらの組合せ。
【0067】
一級または二級アミノ基を有する好ましいアクリル系モノマーの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:N-2-アミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-2-メチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-2-エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-2-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-3-アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-3-メチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-3-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、2-アミノエチル(メタ)アクリレート、2-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3-アミノプロピル(メタ)アクリレート、3-メチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、3-エチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、3-アミノ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルアンモニウム2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートヒドロクロリド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートまたはそれらの組合せ。
【0068】
現在、市場で最も入手しやすい非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと1種または複数のビニル系モノマーとのコポリマー、および1種または複数のビニル系架橋剤、グリセロール(メタ)アクリレートと1種または複数のビニル系モノマーとのコポリマー、および1種または複数のビニル系架橋剤、架橋されたポリビニルアルコールから作製されている。
【0069】
予備成形されたヒドロゲルコンタクトレンズを製造するために、ヒドロゲルレンズの配合物は、典型的には、以下のいずれかである:(1)モノマー混合物であって、(a)少なくとも1種のヒドロキシル含有ビニル系モノマーおよび1種または複数の他の親水性ビニル系モノマーと、(b)ビニル系架橋剤、疎水性ビニル系モノマー、内部濡れ剤、フリーラジカル開始剤(光重合開始剤または熱重合開始剤)、UV吸収剤、視認性着色剤(例えば、染料、顔料またはそれらの混合物)、抗菌剤(例えば、好ましくは銀のナノ粒子)、生物活性剤およびそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の成分とを含むモノマー混合物、または(2)水溶液であって、1種または複数の水溶性のプレポリマーと、親水性ビニル系モノマー、ビニル系架橋剤、疎水性ビニル系モノマー、内部濡れ剤、フリーラジカル開始剤(光重合開始剤または熱重合開始剤)、UV吸収剤、視認性着色剤(例えば、染料、顔料またはそれらの混合物)、抗菌剤(例えば、好ましくは銀のナノ粒子)、生物活性剤およびそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の成分とを含む水溶液。得られた予備成形されたヒドロゲルコンタクトレンズを、次いで当業者に公知のように抽出溶媒を用いた抽出にかけて、そのようにして得られたレンズから未重合の成分を除去し、かつ水和プロセスにかけることができる。ヒドロゲルレンズの配合物中に存在する内部濡れ剤により、予備成形されたヒドロゲルコンタクトレンズの親水性(水ブレイクアップ時間、WBUTにより測定)および/または濡れ性(水接触角、WCAにより測定)を、内部濡れ剤なしの対照のヒドロゲルレンズの配合物から得られた対照の予備成形されたヒドロゲルコンタクトレンズと比較して改良できることを理解されたい。
【0070】
好ましい実施形態では、予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、ポリビニルアルコールベースのヒドロゲルコンタクトレンズである。より好ましくは、予備成形されたポリビニルアルコールベースのヒドロゲルコンタクトレンズは、水溶性の化学線で架橋可能なポリビニルアルコールプレポリマーを含む水性のレンズ形成性組成物を重合させることによって得られ、それは、ビニルアルコール(すなわち、
【化12】
)の繰り返し単位、式(I)の繰り返し架橋単位、および
【化13】
(式中、
R
3は、水素またはC
1~C
6アルキル基(好ましくは水素)であり得、
R
4は、C
1~C
6アルキレンの二価のラジカル(好ましくはC
1~C
4アルキレンの二価のラジカル、より好ましくはメチレンまたはブチレンの二価のラジカル、さらにより好ましくはメチレンの二価のラジカル)であり、
R
5は、水素またはC
1~C
6アルキル(好ましくは水素またはC
1~C
4アルキル、より好ましくは水素またはメチルまたはエチル、さらにより好ましくは水素またはメチル)であり、
R
6は、
【化14】
(式中、q1およびq2は、互いに独立して、ゼロまたは1であり、かつR
7およびR
8は、互いに独立して、C
2~C
8アルキレンの二価のラジカルであり、R
9はC
2~C
8アルケニルである)
のエチレン性不飽和基である)
を含む。
【0071】
好ましい実施形態では、R
4は、メチレンの二価のラジカルであり、R
5は、水素またはC
1~C
4アルキルであり、R
3は、水素であり、およびR
6は、
【化15】
(式中、q2は、ゼロであり、R
9は、ビニル(
*-CH=CH
2)または1-メチルエテニル(
*-C(CH
3)=CH
2)である)
のラジカルである。
【0072】
別の好ましい実施形態では、ポリビニルアルコールプレポリマーは、少なくとも約2,000ダルトンの重量平均分子量を有し、かつ約1モル%~約25モル%、好ましくは約2モル%~約15モル%の式(I)の繰り返し単位を含む。
【0073】
水溶性の化学線で架橋可能なポリビニルアルコールプレポリマーは、当業者公知の方法、例えば米国特許第5,583,163号明細書および米国特許第6,303,687号明細書に開示されているような方法で調製することができる(参照によりその全体が本明細書に援用される)。
【0074】
ポリビニルアルコールプレポリマーは、それ自体公知の方法、例えば有機溶媒、例えばアセトンを用いた沈殿、濾過および洗浄法、抽出および洗浄法、適切な溶媒中での抽出法、透析法または限外濾過法で精製することが好ましく、限外濾過法が特に好ましい。そのような精製プロセスの手段により、プレポリマーを極めて純粋な形態、例えば反応生成物、例えば塩および出発物質、例えば非ポリマー性の構成成分を含まないかまたは少なくとも実質的に含まない濃縮された水溶液の形態で得ることができる。
【0075】
本発明によるプロセスにおいて使用されるプレポリマーのための好ましい精製プロセスの限外濾過法は、それ自体公知の方法で実施することができる。限外濾過を例えば2~10回繰り返して実施することも可能である。別の方法として、選択される程度の純度になるまで限外濾過を連続的に実施することもできる。選択される純度は、原理的には、望む限り高いことができる。純度についての好適な尺度は、例えば、副生物として得られる溶解塩の濃度であり、それは、公知の方法で簡単に求めることができる。
【0076】
化学線で架橋可能な水溶性のポリビニルアルコールプレポリマーを(例えば、限外濾過法によって精製して、プレポリマーを形成するために使用した反応剤をほとんど除去して)実質的に純粋な形態にすることが有利であろう。そのようにすれば、化学照射線によって架橋させた後、事実上、コンタクトレンズをさらなる精製、例えば特に未重合成分を複雑な抽出にかける必要はない。さらに、架橋を水溶液中で起こさせて、それに続く溶媒の置き換えまたは水和工程を必要としないようにし得る。
【0077】
別の好ましい実施形態では、水性のレンズ形成性組成物は、第一の浸出性ポリマー潤滑剤および第二の浸出性ポリマー潤滑剤をさらに含み、第二の浸出性ポリマー潤滑剤は、第一の浸出性ポリマー潤滑剤と分子量またはポリマー組成の点で異なり(すなわち異なるモノマー単位から作られているか、または同一のモノマー単位ではあるが、パーセントが異なる)、好ましくは第一の浸出性ポリマー潤滑剤の分子量の少なくとも3倍である分子量を有する。2種以上のポリマー潤滑剤の平均分子量が相互にあまりにも大きく異なる場合、それらの放出が時間スケールを変えて起きる可能性があり、低分子量を有する潤滑剤が最初に放出され、より高い分子量を有する潤滑剤が後に放出されると考えられる。2種の潤滑剤間で分子量に少なくとも約3倍の差があるようにすると、より高い分子量の潤滑剤は、着用してから約6時間後に眼内に放出されるであろう。
【0078】
「浸出性ポリマー潤滑剤」という用語は、本明細書で使用するとき、非架橋性親水性ポリマーを指し、それは、共有結合的に結合されず、代わりにコンタクトレンズのポリマーマトリックスと会合するかまたはその中に捕捉され、およびそれは、コンタクトレンズおよび/または眼の表面の濡れ性を向上させるか、またはコンタクトレンズの表面の摩擦係数を下げることができる。
【0079】
本発明では、浸出性ポリマー潤滑剤は、好ましくは、電荷を有さない非架橋性の親水性ポリマー(すなわち化学線で架橋可能な基を有さない)である。各種の好適な親水性ポリマーを使用することができ、ただし、それらは、レンズ形成性物質との相溶性を有する(すなわち光学的にクリアなコンタクトレンズをもたらし得る)。非架橋性の(すなわち化学線で架橋可能な基を有さない)親水性ポリマーの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアミド、ポリイミド、ポリラクトン、N-ビニルピロリドンのホモポリマー、N-ビニルピロリドンと1種または複数の親水性ビニル系コモノマーとのコポリマー、(メタ)アクリルアミドのホモポリマー、(メタ)アクリルアミドと1種または複数の親水性ビニル系モノマーとのコポリマー、N-ビニル-N-メチルアセトアミドのホモポリマー、N-ビニル-N-メチルアセトアミドと1種または複数の親水性ビニル系モノマーとのコポリマー、C2~C3ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリルアミドのホモポリマー、C2~C3ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリルアミドと1種または複数の親水性ビニル系モノマーとのコポリマー、ホスホリルコリン含有ビニル系モノマーと1種または複数の親水性ビニル系モノマーとのコポリマー、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(2-エチルオキサゾリン)、ヘパリン多糖類、多糖類およびそれらの混合物。
【0080】
非架橋性の親水性ポリマー(すなわち浸出性ポリマー潤滑剤)の重量平均分子量Mwは、少なくとも10,000ダルトン、好ましくは少なくとも20,000ダルトン、より好ましくは少なくとも50,000ダルトンである。
【0081】
ポリビニルピロリドン(PVP)の例としては、分子量のグレードで特徴付けたポリマーのK-15、K-30、K-60、K-90、K-120などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
N-ビニルピロリドンと1種または複数のビニル系モノマーとのコポリマーとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ビニルピロリドン/酢酸ビニルのコポリマー、ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレートのコポリマー(例えば、ISP Corporation製のCopolymer 845、Copolymer 937、Copolymer 958)、ビニルピロリドン/ビニルカプロラクタム/ジメチル-アミノエチルメタクリレートのコポリマー。
【0083】
好適なポリオキシエチレン誘導体としては、例えば以下が挙げられる:n-アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル、n-アルキルポリオキシエチレンエーテル(例えば、TRITON(登録商標))、ポリグリコールエーテル界面活性剤(TERGITOL(登録商標))、ポリオキシエチレンソルビタン(例えば、TWEEN(登録商標))、ポリオキシエチル化グリコールモノエーテル(例えば、BRIJ(登録商標)、ポリオキシルエチレン9ラウリルエーテル、ポリオキシルエチレン10エーテル、ポリオキシルエチレン10トリデシルエーテル)またはエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマー。
【0084】
エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマーの例を非限定的に挙げると、ポロキサマーおよびポロキサミンであり、それは、例えば、以下の商品名として入手可能である:PLURONIC(登録商標)、PLURONIC-R(登録商標)、TETRONIC(登録商標)、TETRONIC-R(登録商標)またはPLURADOT(登録商標)。ポロキサマーは、PEO-PPO-PEOの構造を有するトリブロックコポリマーである(ここで、「PEO」は、ポリ(エチレンオキシド)であり、「PPO」は、ポリ(プロピレンオキシド)である)。
【0085】
かなりの数のポロキサマーが知られており、それらは、主として分子量とPEO/PPO比との違いである。ポロキサマーの例としては、以下が挙げられる:101、105、108、122、123、124、181、182、183、184、185、188、212、215、217、231、234、235、237、238、282、284、288、331、333、334、335、338、401、402、403および407。ポリオキシエチレンブロックとポリオキシプロピレンブロックとの順序を逆転させて、PPO-PEO-PPOの構造を有するブロックコポリマーを作ることも可能であり、それは、PLURONIC-R(登録商標)ポリマーとして知られている。
【0086】
ポロキサミンは、(PEO-PPO)2-N-(CH2)2-N-(PPO-PEO)2の構造を有するポリマーであり、各種の分子量およびPEO/PPO比のものが入手可能である。この場合にも、ポリオキシエチレンブロックとポリオキシプロピレンブロックとの順序を逆転させて、(PPO-PEO)2-N-(CH2)2-N-(PEO-PPO)2の構造を有するブロックコポリマーを作ることが可能であり、それは、TETRONIC-R(登録商標)ポリマーとして知られている。
【0087】
ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックコポリマーは、エチレンオキシドとプロピレンオキシド繰り返し単位とをランダムに混合して含む親水性ブロックを有するようにさらに設計され得る。ブロックの親水特性を維持させるためにエチレンオキシドが優れているであろう。同様に、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの繰り返し単位の混合物は、疎水性ブロックであり得る。そのようなブロックコポリマーは、PLURADOT(登録商標)の商品名として入手することができる。
【0088】
各種の非架橋性PVA、例えば低、中または高レベルでポリ酢酸ビニルを有するものを採用し得る。さらに、使用されるPVAは、少量の割合、例えば20%まで、好ましくは16%までの先に挙げたコポリマー単位を含み得る。20%未満、好ましくは16%未満のポリ酢酸ビニル単位含量を有する非反応性のPVAを使用することが好ましい。
【0089】
本発明において採用される非架橋性のポリビニルアルコールは、公知であり、例えばMowiol(登録商標)(KSE(Kuraray Specialties Europe)製)またはGohsenol(日本、日本合成化学製)のブランド名で市販されている。
【0090】
ホスホリルコリン含有ビニル系モノマーと1種または複数の親水性ビニル系モノマーとのコポリマーの例としては、Lipidure(登録商標)ポリマー(NOF製)が挙げられるが、これに限定されない。
【0091】
レンズの配合物中に浸出性ポリマー潤滑剤を加えても、それから得られるレンズの光透過性に悪影響を及ぼしてはならないことを理解されたい。浸出性潤滑剤は、異なる分子量を有する同一のポリマーであり得、または異なる分子量を有する異なるポリマーであり得る。
【0092】
予備成形されたポリビニルアルコールベースのヒドロゲルコンタクトレンズを以下の工程によって得ることが好ましい:先に述べた水溶性の化学線で架橋可能なポリビニルアルコールプレポリマーを含む水性のレンズ形成性組成物を再使用可能な成形型内に導入する工程、および化学照射線の空間的制限下で水性レンズ形成性組成物を硬化させる工程。
【0093】
本発明では、照射線を空間的に制限するのに適した再使用可能な成形型を使用することが好ましく、照射線(例えば、360nm~550nmの領域の光線を含む光源からの照射線)の投影されたビームが、照射線(例えば、UV照射線)が再使用可能な成形型の第一の成形表面から第二の成形表面への投影されたビームの行路に位置するレンズ形成性物質の混合物を照射することを制限する。そのようにして得られたコンタクトレンズは、第一の成形表面によって画定される前側表面、その反対に位置する第二の成形表面によって画定される後側表面、および投影された照射線ビームの断面プロファイルによって画定される(切れがよく高品質の)レンズ端面を含む(すなわち照射線の空間的制限)。照射線の空間的制限に適した再使用可能な成形型の例としては、以下の特許に開示されているものが挙げられるが、これらに限定されない:米国特許第6,627,124号明細書、米国特許第6,800,225号明細書、米国特許第7,384,590号明細書および米国特許第7,387,759号明細書(参照によりその全体が援用される)。
【0094】
例えば、好ましい再使用可能な成形型は、第一の成形表面を有する第一の半割型および第二の成形表面を有する第二の半割型を含む。好ましい再使用可能な成形型の2つの半割型は、相互に接触しないが、2つの半割型間に配置された環状に設計された狭いギャップが存在する。ギャップは、第一の成形表面と第二の成形表面との間に形成された成形型キャビティにつながっており、それにより過剰の混合物がギャップ内に流れ込むことができる。本発明では、いかなる設計を有するギャップも使用することが可能であることを理解されたい。
【0095】
好ましい実施形態では、第一の成形表面および第二の成形表面の少なくとも一方は、架橋照射線を透過させることができる。より好ましくは、第一の成形表面および第二の成形表面の一方は、架橋照射線透過性であるのに対し、他の成形表面が、架橋照射線をほとんど透過させない。
【0096】
再使用可能な成形型は、照射線透過性成形表面を有する半割型内に、半割型にまたは半割型上に構築または配列されたマスクを含むことが好ましい。マスクは、非透過性であるか、または照射線透過可能な成形表面の透過性と比べて少なくとも透過性が低い。マスクは、内向きに成形型キャビティに向けて広がって成形型キャビティを囲み、成形型キャビティ以外のすべての領域をマスクの陰に遮蔽するようになっている。
【0097】
マスクは、好ましくは、例えば光およびUVリソグラフィーにおいて公知のプロセスで製造することが可能な薄いクロム層であり得る。他の金属または金属酸化物も適切なマスク物質であり得る。マスクは、保護層、成形型または半割型に使用される物質が石英である場合、例えば二酸化ケイ素を用いてさらにコーティングされ得る。
【0098】
別の方法として、米国特許第7,387,759号明細書(参照によりその全体が援用される)に記載されているようにして、マスクは、UV/可視光線を含む物質から作られたマスキングカラーであり、それを通過する硬化エネルギーを実質的に阻止し得る。この好ましい実施形態では、マスクを有する半割型は、一般的に、円板形状の透過部分と、透過部分と密接にかみ合うように合わせた内径を有するマスキングカラーとを含み、前記透過部分は、光学的に明澄な物質で作られており、その中を硬化エネルギーが通過することを可能にし、マスキングカラーは、光阻止剤を含む物質から作製されており、硬化エネルギーがその中を通過することを実質的に阻止し、マスキングカラーは、一般的に、透過部分を受けるために中央に穴を有してワッシャーまたはドーナッツに類似しており、透過部分は、マスキングカラーの中央の開口部に圧入され、マスキングカラーは、ブッシングのスリーブの内部に取り付けられる。
【0099】
再使用可能な成形型は、以下から作ることができる:石英、ガラス、サファイア、CaF2、環状オレフィンコポリマー(例えば、Topas(登録商標)COCグレード8007-S10(透明で非晶質なエチレンとノルボルネンとのコポリマー(Ticona GmbH(Frankfurt,Germany)およびSummit(New Jersey)製)、Zeonex(登録商標)およびZeonor(登録商標)(Zeon Chemical LP(Louisville,KY)製))、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリオキシメチレン(DuPont製(Delrin))、Ultem(登録商標)(ポリエーテルイミド、G.E.Plastics製)、PrimoSpire(登録商標)など。半割型が再使用できるため、極端に高精度で再現性の高い成形型を製造する目的でそれらを製造するときに比較的高い経費を支出することが可能である。レンズが製造される領域、すなわちキャビティまたは実際の成形表面では、半割型が相互に接触しないため、接触の結果としての損傷が排除される。これにより、成形型の使用寿命を長くすることができ、これは、具体的には、製造されるコンタクトレンズに高い再現性を与え、レンズの設計に対して高い忠実度を与えることもできる。
【0100】
本発明では、予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの第一のコーティング水溶液との接触は、それを第一のコーティング水溶液中に浸漬させるか、またはそれに第一のコーティング水溶液をスプレーするかによって実施することができる。1つの接触プロセスは、予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを第一のコーティング水溶液の浴中に一定時間にわたって1回のみ浸漬させるか、または代わりに予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを一連の第一のコーティング水溶液の浴中にそれぞれの浴で一定の短時間として次々に浸漬させていくことを含む。別の接触プロセスは、第一のコーティング水溶液を1回のみスプレーすることを含む。しかしながら、当業者であれば、スプレー工程と浸漬工程との各種の組合せを含む多くの代替形態を設計することができるであろう。予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを第一のコーティング水溶液中に浸漬させることにより、接触工程を実施することが好ましい。
【0101】
第一のコーティング水溶液は、約4以下、好ましくは約3.5以下、より好ましくは約3.0以下、さらにより好ましくは約0.5~約2.5のpHを有する。
【0102】
第一のコーティング水溶液は、約25℃~約80℃(好ましくは約30℃~約75℃、より好ましくは約35℃~約70℃、さらにより好ましくは約40℃~約60℃)の温度(すなわちコーティング温度)を有する。
【0103】
予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、少なくとも約1分、好ましくは少なくとも約5分、より好ましくは少なくとも約10分、さらにより好ましくは少なくとも約30分の接触時間にわたって第一のコーティング水溶液と接触させる。
【0104】
本発明では、ポリアニオン性ポリマーは、以下である:1種または複数のアクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸または2-(メタ)アクリルアミドグリコール酸のホモポリマーまたはコポリマー、好ましくはポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(メタクリル酸)(PMAA)、ポリ(アクリル酸-コ-メタクリル酸)(pAA-pMAA)、ポリ(エチルアクリル酸)(PEAA)、ポリ(アクリル酸-コ-エチルアクリル酸)(pAA-pEAA)、ポリ(メタクリル酸-コ-エチルアクリル酸)(pMAA-pEAA)、ポリ(2-(メタ)アクリルアミドグリコール酸)またはそれらの組合せ、より好ましくはポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(メタクリル酸)(PMAA)、ポリ(アクリル酸-コ-メタクリル酸)(pAA-pMAA)またはそれらの組合せ。ポリアニオン性ポリマーは、少なくとも100,000ダルトン(好ましくは200,000~10,000,000ダルトン、より好ましくは300,000~5,000,000ダルトン、さらにより好ましくは400,000~3,000,000ダルトン)の重量平均分子量を有する。
【0105】
本発明の好ましい実施形態では、水溶性で熱架橋性の親水性ポリマー物質は、アゼチジニウム基を含み、かつスキームI
【化16】
(式中、X
1は、-S-
*、-OC(=O)-
*または-NR’-
*(式中、R’は、水素またはC
1~C
4の非置換もしくは置換されたアルキル基であり、および
*は、有機ラジカルを表す)
に示した架橋反応に従う、少なくとも1種のアゼチジニウム含有ポリマーと、少なくとも1種のカルボキシル、一級アミン、二級アミンまたはチオール基を有する少なくとも1種の親水性向上剤(すなわち濡れ剤)との部分的反応生成物である。
【0106】
本発明では、各種適切なアゼチジニウム含有ポリマーを使用することができる。アゼチジニウム含有ポリマーの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:エピクロロヒドリン官能化ポリアミン、アゼチジニウム含有ビニル系モノマーのホモポリマー、アゼチジニウム含有ビニル系モノマーと1種または複数のビニル系モノマーとのコポリマー。
【0107】
アゼチジニウム含有ポリマーがエピクロロヒドリン官能化ポリアミンであることが好ましい。エピクロロヒドリン官能化ポリアミンは、エピクロロヒドリンをポリアミンポリマーまたは二級アミノ基を含むポリマーと反応させることによって得ることができる。例えば、ポリアミンとジカルボン酸とから誘導される重縮合物であるポリ(アルキレンイミン)またはポリ(アミドアミン)(例えば、アジピン酸-ジエチレントリアミンコポリマー)をエピクロロヒドリンと反応させて、エピクロロヒドリン官能化されたポリマーを形成することができ、モノ-アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはモノ-アルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドのホモポリマーまたはコポリマーもエピクロロヒドリンと反応させてエピクロロヒドリン官能化ポリアミンを形成することができ、ポリ(2-オキサゾリン-コ-エチレンイミン)コポリマーをエピクロロヒドリンと反応させて、エピクロロヒドリン官能化ポリアミン(すなわちポリ(2-オキサゾリン-コ-エチレンイミン)-エピクロロヒドリン)を形成することができる。ポリアミンまたはポリアミドアミンポリマーをエピクロロヒドリン官能化させるための反応条件は、欧州特許第1465931号明細書に教示がある(参照によりその全体が本明細書に援用される)。好ましいエピクロロヒドリン官能化ポリアミンは、ポリアミドアミン-エピクロロヒドリン(PAE)またはポリ(2-オキサゾリン-コ-エチレンイミン)-エピクロロヒドリンである。
【0108】
ポリアミドアミン-エピクロロヒドリンは、例えば、Kymene(登録商標)またはPolycup(登録商標)樹脂(エピクロロヒドリン官能化されたアジピン酸-ジエチレントリアミンコポリマー)(Hercules製)のように市場で入手することが可能である。
【0109】
ポリ(2-オキサゾリン-コ-エチレンイミン)-エピクロロヒドリンは、米国特許出願公開第2016/0061995A1号明細書に記載の手順に従って調製することもできる(参照によりその全体が本明細書に援用される)。
【0110】
アゼチジニウム含有ビニル系モノマーのホモポリマーおよびコポリマーは、米国特許出願公開第2013/0337160A1号明細書に記載の手順に従って調製することもできる(参照によりその全体が本明細書に援用される)。
【0111】
本発明では、各種の適切な親水性向上剤を使用することができ、ただし、それらは、眼科的適合性があり、かつ少なくとも1種の一級もしくは二級アミノ基、少なくとも1種のカルボキシル基および/または少なくとも1種のチオール基を含む。
【0112】
好ましいクラスの親水性向上剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:一級アミノ、二級アミノ、カルボキシルもしくはチオール含有単糖類(例えば、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、1-チオールグリセロール、5-ケト-D-グルコン酸、ガラクトサミン、グルコサミン、ガラクツロン酸、グルコン酸、グルコサミニン酸(glucosaminic acid)、マンノサミン、サッカリン酸1,4-ラクトン、サッカライド酸、ケトデオキシノヌロソン酸(Ketodeoxynonulosonic acid)、N-メチル-D-グルカミン、1-アミノ-1-デオキシ-β-D-ガラクトース、1-アミノ-1-デオキシソルビトール、1-メチルアミノ-1-デオキシソルビトール、N-アミノエチルグルコンアミド)、一級アミノ、二級アミノ、カルボキシルもしくはチオール含有二糖類(例えば、コンドロイチン二糖ナトリウム塩、ジ(β-D-キシロピラノシル)アミン、ジガラクツロン酸、ヘパリン二糖、ヒアルロン酸二糖、ラクトビオン酸)および一級アミノ、二級アミノ、カルボキシルもしくはチオール含有オリゴサッカライド(例えば、カルボキシメチル-β-シクロデキストリンナトリウム塩、トリガラクツロン酸)ならびにそれらの組合せ。
【0113】
別の好ましいクラスの親水性向上剤は、1つまたは複数の(一級もしくは二級)アミノ、カルボキシルおよび/またはチオール基を有する親水性ポリマーである。より好ましくは、親水性向上剤としての親水性ポリマー中のアミノ(-NHR’、ここで、R’は、先に定義されたものである)、カルボキシル(-COOH)および/またはチオール(-SH)基の含量は、親水性ポリマーの全重量を基準にして約40重量%未満、好ましくは約30重量%未満、より好ましくは約20重量%未満、さらにより好ましくは約10重量%未満である。
【0114】
1つの好ましいクラスの親水性向上剤は、以下である:(一級もしくは二級)アミノまたはカルボキシル含有多糖類、例えばカルボキシメチルセルロース(-[C6H10-mO5(CH2CO2H)m]-(式中、m=1~3)の繰り返し単位の組成に基づいて評価してカルボキシル含量が約40%以下である)、カルボキシエチルセルロース(-[C6H10-mO5(C2H4CO2H)m]-(式中、m=1~3)の繰り返し単位の組成に基づいて評価してカルボキシル含量が約36%以下である)、カルボキシプロピルセルロース(-[C6H10-mO5(C3H6CO2H)m]-(式中、m=1~3)の繰り返し単位の組成に基づいて評価してカルボキシル含量が約32%以下である)、ヒアルロン酸(-(C13H20O9NCO2H)-の繰り返し単位の組成に基づいて評価してカルボキシル含量が約11%である)、コンドロイチン硫酸(-(C12H18O13NSCO2H)-の繰り返し単位の組成に基づいて評価してカルボキシル含量が約9.8%である)またはそれらの組合せ。
【0115】
別の好ましいクラスの親水性向上剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:モノ-アミノ(一級もしくは二級アミノ)、カルボキシルまたはチオール基を有するポリ(エチレングリコール)(PEG)(例えば、PEG-NH2、PEG-SH、PEG-COOH)、H2N-PEG-NH2、HOOC-PEG-COOH、HS-PEG-SH、H2N-PEG-COOH、HOOC-PEG-SH、H2N-PEG-SH)、1つまたは複数のアミノ(一級もしくは二級)、カルボキシルまたはチオール基を有するマルチアームPEG、1つまたは複数のアミノ(一級もしくは二級)、カルボキシルまたはチオール基を有するPEGデンドリマー、ジアミノ(一級もしくは二級)末端またはジカルボキシル末端の非反応性の親水性ビニル系モノマーのホモポリマーまたはコポリマー、モノアミノ(一級もしくは二級)末端またはモノカルボキシル末端の非反応性の親水性ビニル系モノマーまたはホスホリルコリン含有ビニル系モノマーのホモポリマーもしくはコポリマー、(1)約60重量%以下、好ましくは約0.1重量%~約30重量%、より好ましくは約0.5重量%~約20重量%、さらにより好ましくは約1重量%~約15重量%の1種または複数の反応性ビニル系モノマーおよび(2)少なくとも1種の非反応性の親水性ビニル系モノマーを含む組成物の重合生成物であるコポリマーならびにそれらの組合せ。
【0116】
本発明では、反応性ビニル系モノマーは、カルボキシル含有ビニル系モノマー、一級アミノ含有ビニル系モノマーまたは二級アミノ含有ビニル系モノマーであり得る。
【0117】
好ましいカルボキシル含有ビニル系モノマーの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アクリル酸、C1~C4アルキルアクリル酸(例えば、メタクリルエチルアクリル酸、プロピルアクリル酸、ブチルアクリル酸)、N,N-2-アクリルアミドグリコール酸、ベータメチル-アクリル酸(クロトン酸)、アルファ-フェニルアクリル酸、ベータ-アクリルオキシプロピオン酸、ソルビン酸、アンゲリカ酸、ケイ皮酸、1-カルボキシ-4-フェニルブタジエン-1,3、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、マレイン酸、フマル酸、トリカルボキシエチレンおよびそれらの組合せ。
【0118】
好ましい一級および二級アミノ含有ビニル系モノマーの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アミノ-C2~C6アルキル(メタ)アクリレート、C1~C6アルキルアミノ-C2~C6アルキル(メタ)アクリレート、アリルアミン、ビニルアミン、アミノ-C2~C6アルキル(メタ)アクリルアミド、C1~C6アルキルアミノ-C2~C6アルキル(メタ)アクリルアミドおよびそれらの組合せ。
【0119】
本発明では、非反応性のビニル系モノマーは、カルボキシル基、一級アミノ基、二級アミノ基、エポキシド基、イソシアネート基、アズラクトン基またはアジリジン基のいずれも含まないビニル系モノマーである。非反応性のビニル系モノマーは、好ましくは、親水性ビニル系モノマー、ホスホリルコリン含有ビニル系モノマーまたはそれらの組合せである。好ましい非反応性の親水性ビニル系モノマーの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン(NVP)、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルイソプロピルアミド、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリセロール(メタ)アクリレート、3-(メタ)アクリロイルアミノ-1-プロパノール、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]-アクリルアミド、N-メチル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-エチル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-メチル-5-メチレン-2-ピロリドン、1-エチル-5-メチレン-2-ピロリドン、5-メチル-3-メチレン-2-ピロリドン、5-エチル-3-メチレン-2-ピロリドン、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、1500ダルトンまでの重量平均分子量を有するC1~C4-アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、アリルアルコール、ビニルアルコールおよびそれらの組合せ。
【0120】
好ましい非反応性のホスホリルコリン含有ビニル系モノマーの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(別名、MPCまたは2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート)、(メタ)アクリロイルオキシプロピルホスホリルコリン(別名、3-((メタ)アクリロイルオキシ)プロピル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート)、4-((メタ)アクリロイルオキシ)ブチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-[(メタ)アクリロイルアミノ]エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)-エチルホスフェート、3-[(メタ)アクリロイルアミノ]プロピル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、4-[(メタ)アクリロイルアミノ]ブチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、5-((メタ)アクリロイルオキシ)ペンチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、6-((メタ)アクリロイルオキシ)ヘキシル-2’-(トリメチルアンモニオ)-エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2’-(トリエチルアンモニオ)エチル-ホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2’-(トリプロピルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2’-(トリブチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)プロピル-2’-(トリメチルアンモニオ)-エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)ブチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)ペンチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)ヘキシル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ビニルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ビニルオキシカルボニル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシカルボニル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)-エチルホスフェート、2-(ビニルカルボニルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)-エチルホスフェート、2-(アリルオキシカルボニルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ブテノイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、米国特許第5,461,433号明細書(参照によりその全体が本明細書に援用される)に記載されているものおよびそれらの組合せ。
【0121】
より好ましくは、親水性向上剤は、以下である:PEG-NH2、PEG-SH、PEG-COOH、H2N-PEG-NH2、HOOC-PEG-COOH、HS-PEG-SH、H2N-PEG-COOH、HOOC-PEG-SH、H2N-PEG-SH、1つまたは複数のアミノ、カルボキシルまたはチオール基を有するマルチアームPEG、1つまたは複数のアミノ、カルボキシルまたはチオール基を有するPEGデンドリマー、モノアミノ、モノカルボキシル、ジアミノまたはジカルボキシル末端の(メタ)アクリアミド、N-ビニルピロリドン(NVP)、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、グリセロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、400ダルトンまでの重量平均分子量を有するC1~C4-アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ビニルアルコール、N-メチル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-メチル-5-メチレン-2-ピロリドン、5-メチル-3-メチレン-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ホスホリルコリン含有ビニル系モノマーおよびそれらの組合せからなる群から選択される非反応性の親水性ビニル系モノマーのホモポリマーもしくはコポリマー、(1)約0.1重量%~約30重量%、好ましくは約0.5重量%~約20重量%、より好ましくは約1重量%~約15重量%の、アクリル酸、C1~C3アルキルアクリル酸、アリルアミンおよび/またはアミノ-C2~C4アルキル(メタ)アクリレートならびに(2)アクリアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、ホスホリルコリン含有ビニル系モノマー、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、グリセロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、400ダルトンまでの重量平均分子量を有するC1~C4-アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ビニルアルコールおよびそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の非反応性の親水性ビニル系モノマーを含む組成物の重合生成物であるコポリマー。
【0122】
最も好ましい親水性向上剤は、以下である:PEG-NH2、PEG-SH、PEG-COOH、モノアミノ、モノカルボキシル、ジアミノまたはジカルボキシル末端のポリビニルピロリドン、モノアミノ、モノカルボキシル、ジアミノまたはジカルボキシル末端のポリアクリルアミド、モノアミノ、モノカルボキシル、ジアミノまたはジカルボキシル末端のポリ(DMA)、モノアミノもしくはモノカルボキシル、ジアミノもしくはジカルボキシル末端のポリ(DMA-コ-NVP)、モノアミノ、モノカルボキシル、ジアミノまたはジカルボキシル末端のポリ(NVP-コ-N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート))、モノアミノ、モノカルボキシル、ジアミノまたはジカルボキシル末端のポリ(ビニルアルコール)、モノアミノ、モノカルボキシル、ジアミノまたはジカルボキシル末端のポリ[(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン]のホモポリマーまたはコポリマー、モノアミノ、モノカルボキシル、ジアミノまたはジカルボキシル末端のポリ(NVP-コ-ビニルアルコール)、モノアミノ、モノカルボキシル、ジアミノまたはジカルボキシル末端のポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド-コ-ビニルアルコール)、約0.1重量%~約30重量%、好ましくは約0.5重量%~約20重量%、より好ましくは約1重量%~約15重量%の(メタ)アクリル酸を有するポリ[(メタ)アクリル酸-コ-アクリルアミド]、約0.1重量%~約30重量%、好ましくは約0.5重量%~約20重量%、より好ましくは約1重量%~約15重量%の(メタ)アクリル酸を有するポリ[(メタ)アクリル酸-コ-NVP)、(1)ホスホリルコリン含有ビニル系モノマーおよび(2)約0.1重量%~約30重量%、好ましくは約0.5重量%~約20重量%、より好ましくは約1重量%~約15重量%の、アクリル酸、C1~C3アルキルアクリル酸、アリルアミンおよび/またはアミノ-C2~C4アルキル(メタ)アクリレートを含む組成物の重合生成物であるコポリマーならびにそれらの組合せ。
【0123】
官能基を有するPEGおよび官能基を有するマルチアームPEGは、例えば、PolyscienceおよびShearwater Polymers、inc.などの各種の商業的供給業者から入手することができる。
【0124】
1種または複数の非反応性の親水性ビニル系モノマーまたはホスホリルコリン含有ビニル系モノマーのモノアミノ、モノカルボキシル、ジアミノまたはジカルボキシル末端のホモポリマーもしくはコポリマーは、米国特許第6,218,508号明細書(参照によりその全体が本明細書に援用される)に記載されている手順に従って調製することができる。例えば、非反応性の親水性ビニル系モノマーのジアミノまたはジカルボキシル末端のホモポリマーもしくはコポリマーを調製するために、非反応性のビニル系モノマー、一級もしくは二級アミノまたはカルボキシル基を有する連鎖移動剤(例えば、2-アミノエタンチオール、2-メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、チオ乳酸または他のヒドロキシメルカプタン類、アミノメルカプタン類またはカルボキシル含有メルカプタン類)および任意選択的に他のビニル系モノマーを(一級もしくは二級アミノ基またはカルボキシル基を有する)反応性ビニル系モノマーとフリーラジカル開始剤の存在下において(熱的または化学線で)共重合させる。一般的に、連鎖移動剤の、反応性ビニル系モノマー以外のビニル系モノマー全部に対するモル比は、約1:5~約1:100であるのに対し、連鎖移動剤の反応性ビニル系モノマーに対するモル比は、1:1である。そのような調製法では、一級もしくは二級アミノ基またはカルボキシル基を有する連鎖移動剤を使用して、そのようにして得られる親水性ポリマーの分子量を調節し、かつ得られた親水性ポリマーに末端を形成して、親水性ポリマーが1つの末端一級もしくは二級アミノ基またはカルボキシル基を有するようにするのに対し、反応性ビニル系モノマーは、得られる親水性ポリマーに別の末端カルボキシル基または一級もしくは二級アミノ基を与える。同様に、非反応性の親水性ビニル系モノマーのモノアミノまたはモノカルボキシル末端のホモポリマーもしくはコポリマーを調製するために、非反応性のビニル系モノマー、一級もしくは二級アミノ基またはカルボキシル基を有する連鎖移動剤(例えば、2-アミノエタンチオール、2-メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、チオ乳酸または他のヒドロキシメルカプタン類、アミノメルカプタン類またはカルボキシル含有メルカプタン類)および任意選択的に他のビニル系モノマーを、反応性ビニル系モノマーを一切存在させずに(熱的または化学線で)共重合させる。
【0125】
非反応性の親水性ビニル系モノマーおよび反応性ビニル系モノマー(例えば、カルボキシル含有ビニル系モノマー、一級アミノ基含有ビニル系モノマーまたは二級アミノ基含有ビニル系モノマー)を含むコポリマーは、各種の周知のラジカル重合法に従って調製することもでき、または商業的供給業者から得ることもできる。メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンおよびカルボキシル含有ビニル系モノマー(またはアミノ含有ビニル系モノマー)を含むコポリマーは、NOF Corporationから得ることができる(例えば、LIPIDURE(登録商標)-Aおよび-AF)。
【0126】
少なくとも1つのアミノ、カルボキシルまたはチオール基を有する(親水性向上剤としての)親水性ポリマーの重量平均分子量Mwは、好ましくは、約500~約5,000,000、より好ましくは約1,000~約2,000,000、さらにより好ましくは約5,000~約1,000,000ダルトンである。
【0127】
水溶性で熱架橋性の親水性ポリマー物質は、米国特許出願公開第2016/0061995A1号明細書および米国特許出願公開第2013/0337160A1号明細書(参照によりその全体が本明細書に援用される)ならびに米国特許第8,529,057号明細書(参照によりその全体が本明細書に援用される)に開示されているプロセスに従って調製することができる。
【0128】
好ましい実施形態では、水溶性の熱架橋性ポリマー物質は、少なくとも1種のアゼチジニウム含有ポリマーおよび少なくとも1種の、一級アミノ基、二級アミノ基、カルボキシル基、チオール基およびそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有する親水性向上剤(すなわち濡れ剤)を含む水性の反応性溶液を約35℃~約85℃の温度に加熱し、その温度で十分な時間(約6時間以下、好ましくは約5時間、より好ましくは約2時間~約4時間)保持することによって得ることができる。水性の反応性溶液は、好ましくは、約70mM~約170mM(好ましくは約90mM~約150mM、より好ましくは約100mM~約130mM)の1種または複数のイオン性化合物を含み、少なくとも8.0(好ましくは少なくとも8.5、より好ましくは少なくとも9.0、さらにより好ましくは少なくとも9.5)のpHを有する。反応時間は、親水性向上剤をアゼチジニウム含有ポリマーのポリマー鎖上に共有結合的に結合させるのに十分な程度に長くするべきであるが、アゼチジニウム含有ポリマーのアゼチジニウム基が全部消費されることなく、かつアゼチジニウム含有ポリマーと親水性向上剤との間に形成された架橋が多すぎてゲル(すなわち非水溶物)が形成されることがないような程度に短くするべきであることを理解されたい。そのようにして得られるポリマー物質は、軽く架橋されたポリマー物質であり、それは、高度に分岐された構造を有し、依然として熱架橋性のアゼチジニウム基を含む。
【0129】
例えば、塩基(例えば、NaOH、KOH、NH4OHまたはそれらの混合物)または酸(例えば、HCl、H2SO4、H3PO4、クエン酸、酢酸、ホウ酸またはそれらの混合物)を添加することにより、反応性混合物のpHを調節する方法は、当業者によく理解されている。
【0130】
本発明では、反応性混合物中で各種のイオン性化合物を使用することができる。イオン性化合物がイオン張性調節剤として使用されるものおよび点眼液で使用されるイオン緩衝剤であることが好ましい。好ましいイオン張性調節剤の例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウムおよびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。好ましいイオン緩衝剤の例としては、以下が挙げられる:リン酸の各種の塩(例えば、NaH2PO4、Na2HPO4、Na3PO4、KH2PO4、K2HPO4、K3PO4またはそれらの混合物)、ホウ酸の各種の塩(例えば、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウムまたはそれらの混合物)、クエン酸の各種の塩(例えば、クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸一カリウム、クエン酸二カリウム、クエン酸三カリウムまたはそれらの混合物)、炭酸の各種の塩(例えば、Na2CO3、NaHCO3、K2CO3、KHCO3またはそれらの混合物)。
【0131】
水溶性の熱架橋性ポリマー物質を調製するための水性の反応性溶液は、所望の量のアゼチジニウム含有ポリマー、所望の量の少なくとも1種の反応性官能基を含む親水性向上剤および所望の量の他の成分(例えば、イオン緩衝剤、イオン張性調節剤など)を水(または水と少量の水溶性有機溶媒との混合物)中に溶解させて、水溶液を形成し、次いで必要に応じて水溶液のpHを調節することにより調製することができる。
【0132】
本発明では、水性の反応性溶液中での親水性向上剤のアゼチジニウム含有ポリマーに対する濃度比を選択して、得られる水溶性の熱架橋性ポリマー物質を水不溶性(すなわち室温で水100mLあたり0.005g未満の溶解度)とさせないようにし、かつアゼチジニウム含有ポリマーのアゼチジニウム基を約99%、好ましくは約98%、より好ましくは約97%、さらにより好ましくは約96%より多く消費させないようにしなければならない。
【0133】
好ましい実施形態では、水性の反応性溶液は、0.01重量%~約10重量%(好ましくは0.05重量%~約5重量%、より好ましくは0.08重量%~約1重量%、さらにより好ましくは0.1重量%~約0.4重量%)のアゼチジニウム含有ポリマーおよび約0.01重量%~約10重量%(好ましくは0.02重量%~約5重量%、より好ましくは0.05重量%~約2重量%、さらにより好ましくは0.08重量%~約1.0重量%)の少なくとも1種の反応性官能基(カルボキシル、一級アミノ、二級アミノ基)を有する親水性向上剤を含み、アゼチジニウム含有ポリマーの親水性向上剤に対する濃度比は、約1000:1~1:1000(好ましくは約500:1~約1:500、より好ましくは約250:1~約1:250、さらにより好ましくは約100:1~約1:100)である。
【0134】
好ましい実施形態では、水溶性の熱架橋性ポリマー物質は、以下を含む:(i)約20重量%~約95重量%の、ポリアミドアミン-エピクロロヒドリンまたはポリ(2-オキサゾリン-コ-エチレンイミン)-エピクロロヒドリンから誘導された第一のポリマー鎖、(ii)約5重量%~約80重量%の、親水性残基または一級アミノ基、二級アミノ基、カルボキシル基、チオール基およびそれらの組合せからなる群から選択される(好ましくはカルボキシル基である)少なくとも1種の反応性官能基を有する少なくとも1種の親水性向上剤から誘導された第二のポリマー鎖であって、親水性残基または第二のポリマー鎖は、ポリアミドアミン-エピクロロヒドリンまたはポリ(2-オキサゾリン-コ-エチレンイミン)-エピクロロヒドリンの1つのアゼチジニウム基と、親水性向上剤の1つのアミノ、カルボキシルまたはチオール基との間にそれぞれ形成された1つまたは複数の共有結合を介して第一のポリマー鎖に共有結合的に結合される、第二のポリマー鎖、および(iii)アゼチジニウム基であって、第一のポリマー鎖の一部または第一のポリマー鎖に共有結合的に結合されたペンダントもしくは末端基であるアゼチジニウム基。水溶性の熱架橋性ポリマー物質の組成は、先にスキームIで示した架橋反応において、そのようなポリマーのために使用した反応剤混合物の(反応剤の全重量を基準にした)組成によって決まる。例えば、反応剤混合物が反応剤(溶媒を除く)の全重量を基準にして約75重量%のポリアミドアミン-エピクロロヒドリンと約25重量%の少なくとも1種の親水性向上剤とを含む場合、そのようにして得られた化学変性ポリアミオアミン-エピクロロヒドリンは、約75重量%の、ポリアミドアミン-エピクロロヒドリンから誘導された第一のポリマー鎖と、約25重量%の、前記少なくとも1種の親水性向上剤から誘導された親水性残基または第二のポリマー鎖とを含む。
【0135】
加熱工程は、ソフトコンタクトレンズ前駆体を第二のコーティング水溶液(これは、パッケージング溶液(すなわちpH6.7~7.6の緩衝水溶液)である)中、密封したレンズパッケージ中において約115℃~約125℃の温度で約20~90分にわたってオートクレーブ処理することによって実施することが好ましい。オートクレーブ処理時、架橋反応に関わらなかったそれらのアゼチジニウム基は、加水分解されて、2,3-ジヒドロキシプロピル(HO-CH2-CH(OH)-CH2-)基となることが可能であり、かつレンズパッケージング溶液中に存在するアゼチジニウム含有ポリマー物質は、適切な場合、レンズの装着快適性を改良することが可能な非反応性のポリマー性濡れ剤に転換させることができると考えられる。したがって、オートクレーブ処理後の第二のコーティング水溶液は、眼科的に安全なものである。
【0136】
ソフトコンタクトレンズをオートクレーブ処理し保存するためのレンズパッケージ(または容器)は、当業者に周知である。本発明では、いかなるレンズパッケージも使用し得る。レンズパッケージは、ベースおよびカバーを含むブリスターパッケージであることが好ましく、カバーは、ベースに対して取り外し可能に密封されており、ベースは、滅菌されたパッケージング溶液およびコンタクトレンズを納めるためのキャビティを含む。
【0137】
レンズは、個別のパッケージ中に充填、密封、滅菌(例えば、加圧下において約120℃以上で少なくとも30分にわたるオートクレーブ処理)した後、使用者に届けられる。レンズパッケージの密封および滅菌法は、当業者によく理解されている。
【0138】
本発明では、パッケージング溶液は、少なくとも1種の緩衝剤と1種または複数の当業者に公知の他の成分とを含む。他の成分の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:張性剤、界面活性剤、抗菌剤、保存剤および潤滑剤(例えば、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン)。
【0139】
パッケージング溶液は、パッケージング溶液のpHを所望の範囲、例えば好ましくは約6.5~約7.5の生理学的に許容される範囲に維持するのに十分な量で緩衝剤を含む。各種の公知の生理学的に適合性のある緩衝剤を使用することができる。本発明におけるコンタクトレンズケア組成物の成分として好適な緩衝剤は、当業者に公知である。例としては、以下が挙げられる:ホウ酸、ホウ酸塩、例えばホウ酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸塩、例えばクエン酸カリウム、重炭酸塩、例えば重炭酸ナトリウム、トリス(2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール)、ビス-トリス(ビス-(2-ヒドロキシエチル)-イミノ-トリス-(ヒドロキシメチル)-メタン)、ビス-アミノポリオール、トリエタノールアミン、ACES(N-(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸)、BES(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸)、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)、MOPS(3-[N-モルホリノ]-プロパンスルホン酸)、PIPES(ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)、TES(N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]-2-アミノエタンスルホン酸)、それらの塩、リン酸塩緩衝剤、例えばNa2HPO4、NaH2PO4およびKH2PO4またはそれらの混合物。緩衝剤は、リン酸塩緩衝剤、ホウ酸塩緩衝剤またはそれらの組合せであることが好ましい。パッケージング溶液中のそれぞれの緩衝剤の量は、好ましくは、0.001重量%~2重量%、より好ましくは0.01重量%~1重量%、最も好ましくは約0.05重量%~約0.30重量%である。
【0140】
パッケージング溶液は、約200~約450ミリオスモル(mOsm)、好ましくは約250~約350mOsmの張性を有する。パッケージング溶液の張性は、張性に影響を与える有機または無機の物質を添加することによって調節することができる。眼に許容される好適な張性剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセロール、プロピレングリコール、ポリオール、マンニトール、ソルビトール、キシリトールおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0141】
本発明のパッケージング溶液は、25℃で約1センチポワズ~約5センチポワズの粘度を有する。
【0142】
好ましい実施形態では、パッケージング溶液は、好ましくは、約0.01重量%~約2重量%、より好ましくは約0.05重量%~約1.5重量%、さらにより好ましくは約0.1重量%~約1重量%、最も好ましくは約0.2重量%~約0.5重量%の、アゼチジニウム基を有する水溶性で熱架橋性の親水性ポリマー物質を含む。
【0143】
本発明のパッケージング溶液は、増粘性ポリマーを含むことができる。増粘性ポリマーは、好ましくは、ノニオン性である。溶液の粘度を上げることにより、レンズ上に膜が備えられ、それによりコンタクトレンズを快適に着用することが可能となる。増粘性の成分は、挿入のときの眼の表面に与えられる衝撃に対するクッションとしてもさらに機能し、さらに眼の炎症を緩和させるのにも役立つ。
【0144】
好ましい増粘性ポリマーとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:水可溶性のセルロースエーテル(例えば、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)またはそれらの混合物)、水溶性のポリビニルアルコール(PVA)、約2000より大(10,000,000ダルトンまで)の分子量を有する高分子量ポリエチレンオキシド、約30,000ダルトン~約1,000,000ダルトンの分子量を有するポリビニルピロリドン、N-ビニルピロリドンと少なくとも1種の7~20個の炭素原子を有するジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートとのコポリマーおよびそれらの組合せ。水可溶性セルロースエーテルおよびビニルピロリドンとジメチルアミノエチルメタクリレートとのコポリマーが最も好ましい増粘性ポリマーである。N-ビニルピロリドンとジメチルアミノエチルメタクリレートとのコポリマーは、ISPから、例えばCopolymer 845およびCopolymer 937として市販されている。
【0145】
増粘性ポリマーは、パッケージング溶液中において、パッケージング溶液の全量を基準にして約0.01重量%~約5重量%、好ましくは約0.05重量%~約3重量%、さらにより好ましくは約0.1重量%~約1重量%の量で存在する。
【0146】
パッケージング溶液は、約1200以下、より好ましくは600以下、最も好ましくは約100~約500ダルトンの分子量を有するポリエチレングリコールをさらに含み得る。
【0147】
少なくとも1種の架橋されたコーティングおよびパッケージング溶液が、ポリエチレングリコールセグメントを有するポリマー物質を含む場合、パッケージング溶液は、α-オキソ-多酸またはその塩を、ポリエチレングリコールセグメントの酸化分解のしやすさを抑制するのに十分な量で含むことが好ましい。共同所有の同時係属出願(その全体が本明細書に援用される米国特許出願第2004/0116564A1号明細書)は、オキソ-多酸またはその塩がPEG含有ポリマー物質の酸化分解のしやすさを抑制できることを開示している。
【0148】
α-オキソ-多酸またはその生体適合性塩の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:クエン酸、2-ケトグルタル酸もしくはリンゴ酸またはそれらの生体適合性の(好ましくは眼科的適合性の)塩。α-オキソ-多酸がクエン酸もしくはリンゴ酸またはそれらの生体適合性(好ましくは眼科的適合性)の塩(例えば、ナトリウム、カリウム塩など)であることがより好ましい。
【0149】
本発明では、パッケージング溶液は、ムチン様の物質、眼科的に有益な物質および/または界面活性剤をさらに含み得る。
【0150】
ムチン様の物質の例としては、ポリグリコール酸、ポリラクチドなどが挙げられるが、これらに限定されない。ムチン様の物質は、眼球の表面に長期間にわたって連続的に徐々に放出されて、ドライアイ症候群を治療するためのゲスト物質として使用することができる。ムチン様の物質は、有効量で存在することが好ましい。
【0151】
眼科的に有益な物質の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:2-ピロリドン-5-カルボン酸(PCA)、アミノ酸(例えば、タウリン、グリシンなど)、アルファヒドロキシル酸(例えば、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、マンデル酸およびクエン酸ならびにそれらの塩)、リノール酸およびガンマリノール酸ならびにビタミン類(例えば、B5、A、B6など)。
【0152】
界面活性剤は、ノニオン性、アニオン性および両性界面活性剤を含め、眼科的に許容されるものであれば事実上いかなるものでもあり得る。好ましい界面活性剤の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ポロキサマー(例えば、Pluronic(登録商標)F108、F88、F68、F68LF、F127、F87、F77、P85、P75、P104およびP84)、ポロアミン(例えば、Tetronic(登録商標)707、1107および1307、脂肪酸のポリエチレングリコールエステル(例えば、Tween(登録商標)20、Tween(登録商標)80)、C12~C18アルカンのポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレンエーテル(例えば、Brij(登録商標)35)、ポリオキシエチエンステアレート(Myrj(登録商標)52)、ポリオキシエチレンプロピレングリコールステアレート(Atlas(登録商標)G2612)ならびにMirataine(登録商標)およびMiranol(登録商標)の商品名の両性界面活性剤。
【0153】
パッケージング溶液中に存在する増粘性ポリマー、ポリエチレングリコール、ムチン様の物質、眼科的に有益な物質および界面活性剤は、ヒドロゲルコーティングのポリマーマトリックス中に閉じ込めることが可能であり、着用したときに眼内に放出されると考えられる。
【0154】
上に述べてきた本発明の方法は、例えば、現在入手可能な非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズから本発明の新規なクラスのソフトコンタクトレンズを製造するのに特に好適である。本発明の方法を修正して、この新規なクラスのソフトコンタクトレンズを製造するための別の方法に到達することも可能であることを理解されたい。
【0155】
例えば、ポリアニオン性ポリマーのアンカー層を、反応性官能基を有する他のポリマーの層と置き換えることが可能であり、ただし、当業者に公知の各種の方法、例えばグラフト、錯体化、部分取り込み(レンズ体中に部分的に貫入させる)などに従い、それは、安定な層を形成する。説明的に例を挙げれば、アゼチジニウム基と追加の反応性官能基(例えば、エポキシ、アジリジン、アズラクトン、イソシアネート基またはビニルスルホン)とを有するポリマーを、ヒドロキシル基とエポキシ(またはアジリジン、またはアズラクトン、またはイソシアネート、またはビニルスルホン)基との間のカップリング反応により、予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの表面にグラフト結合させて、予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上にアンカー層を形成することが可能である。アンカー層のアゼチジニウム基(または残存のエポキシ、アジリジン、アズラクトン、イソシアネートもしくはビニルスルホン基)は、カルボキシル、一級アミノ、二級アミノまたはチオール基およびアゼチジニウム(またはアジリジン、またはアズラクトン、またはイソシアネート、またはビニルスルホン)基を有する親水性ポリマー物質にグラフトするための反応性サイトとして機能して、分子間および分子内結合を通してヒドロゲルコーティングを形成することができる。
【0156】
別の方法として、予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、カルボキシル、一級アミノまたは二級アミノ基を有するモノマー単位を含む場合、アゼチジニウム、エポキシ、アジリジン、アズラクトンまたはイソシアネート基を有するポリマーを、そのような予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの表面に、カルボキシル基(または一級アミノ基、または二級アミノ基)と、アゼチジニウム基(またはエポキシ、またはアジリジン、またはアズラクトン、またはイソシアネート)基との間のカップリング反応に従ってグラフトさせて、予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上にアンカー層を形成することができる。アンカー層のアゼチジニウム基(または残存のエポキシ、アジリジン、アズラクトン、イソシアネートもしくはビニルスルホン基)は、カルボキシル、一級アミノ、二級アミノまたはチオール基およびアゼチジニウム(またはアジリジン、またはアズラクトン、またはイソシアネート、またはビニルスルホン)基を有する親水性ポリマー物質にグラフトするための反応性サイトとして機能して、分子間および分子内結合を通してヒドロゲルコーティングを形成することができる。
【0157】
当業者であれば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、一級アミノ基または二級アミノ基を含むカップリング反応を知っている。例えば、ヒドロキシルがイソシアネートと反応してウレタン結合が生成し、ヒドロキシルがエポキシまたはアジリジンと反応してエーテル結合(-O-)が生成し、ヒドロキシル基が触媒の存在下でアズラクトン基と反応してアミドアルキレンカルボキシ結合(-C(O)NH-アルキレン-C(O)-O-)が生成し、ヒドロキシル基がビニルスルホンと比較的高いpH(例えば、pH約9~10)で反応して、
【化17】
の結合が生成し、アミノ基-NHR
Oがアズラクトン基と(開環)反応して、アルキレン-ジアミド結合(-C(O)NH-アルキレン-C(O)NR
O-(式中、R
Oは、先に定義したものである)が生成し、アミノ基-NHR
Oがイソシアネート基と反応して尿素結合(-NR
O-C(O)-NH-(式中、R
Oは、先に定義したものである)が生成し、アミノ基-NHR
Oがエポキシまたはアジリジン基と反応してアミン結合(-C-NR
O-、ここで、R
Oは、先に定義したものである)が生成し、カルボキシル基がエポキシ基と反応してエステル結合が生成し、アゼチジニウム基
【化18】
が約40℃~140℃の温度でアミノ基(-NHR
O)またはカルボキシル基と反応して、結合(T
1T
2N-CH
2-CH(OH)-CH
2-E-、ここで、E=NR
O、COOまたはO)が生成する。
【0158】
別の態様では、本発明は、非シリコーンヒドロゲルレンズ体およびその上のヒドロゲルコーティングを含むソフトコンタクトレンズであって、非シリコーンヒドロゲルレンズ体は、シリコーンを含まず、かつ少なくとも50モル%の少なくとも1種のヒドロキシル含有ビニル系モノマーの繰り返し単位を含むヒドロゲル物質で構成され、コーティングは、第一の反応性官能基を有する第一のポリマー物質のアンカー層および第二の反応性官能基を有する第二のポリマー物質から誘導されたヒドロゲル層を含み、ヒドロゲル層は、1つの第一の反応性官能基と1つの第二の反応性官能基との間にそれぞれ形成された結合を介してアンカー層上に共有結合的に結合され、ヒドロゲルコーティングは、約0.1μm~約20μm(好ましくは約0.25μm~約17μm、より好ましくは約0.5μm~約15μm、さらにより好ましくは約1μm~約10μm)の厚さを有し、ソフトコンタクトレンズは、非シリコーンヒドロゲルレンズ体の潤滑性より良好な表面潤滑性を有し、かつ室温で完全に水和されたとき(すなわち約22℃~28℃の温度において)、指擦り試験の7サイクル後に約2以下(好ましくは約1.5以下、より好ましくは約1.0以下、さらにより好ましくは約0.5以下)の摩擦等級と、約10重量%~約85重量%の水分含量(好ましくは約15重量%~約80重量%、より好ましくは約30重量%~約75重量%)と、約0.2MPa~約1.5MPa(好ましくは約0.3MPa~約1.2MPa、より好ましくは約0.4MPa~約1.0MPa)の弾性モジュラスとを有する、ソフトコンタクトレンズを提供する。
【0159】
コンタクトレンズの水分含量および弾性モジュラスの測定方法は、当業者によく知られている。市販のヒドロゲルコンタクトレンズのすべては、それらのパッケージ中でそれらの2つのレンズ性能を有する。
【0160】
本発明では、第一の反応性官能基と第二の反応性官能基とは、異なり、かつ相互に共反応することができ、およびカルボキシル基、一級アミノ基、二級アミノ基、チオール基、アゼチジニウム基、エポキシ基、アジリジン基、アズラクトン基、イソシアネート基、ビニルスルホン基およびそれらの組合せからなる群の1つから選択される。第一の反応性官能基がカルボキシル基、一級アミノ基、二級アミノ基、チオール基またはそれらの組合せである場合、第二の反応性官能基は、アゼチジニウム基、エポキシ基、アジリジン基、アズラクトン基、イソシアネート基、ビニルスルホン基またはそれらの組合せである。第一の反応性官能基がアゼチジニウム基、エポキシ基、アジリジン基、アズラクトン基、イソシアネート基、ビニルスルホン基またはそれらの組合せである場合、第二の反応性官能基は、カルボキシル基、一級アミノ基、二級アミノ基、チオール基またはそれらの組合せである。
【0161】
上述のようなカップリング反応の他にも、当業者は、チオール基を含むカップリング反応も知っている。例えば、チオール基(-SH)がイソシアネートと反応してチオカルバメート結合(-N-C(O)-S-)が生成し、チオール基がエポキシまたはアジリジンと反応して、チオエーテル結合(-S-)が生成し、チオール基が酸塩化物、または臭化物基、または酸無水物基と反応して、チオエステル結合が生成し、チオール基が触媒の存在下でアズラクトン基と反応して、結合(-C(O)NH-CR
12R
12’-(CH
2)
p-C(O)-S-)が生成し、チオール基がチオール-エン反応条件下でチオール-エン反応に基づいてビニル基と反応して、チオエーテル結合(-S-)が生成し、チオール基が適切な反応条件下でMichael付加に基づいてビニルスルホンと反応して、
【化19】
の結合が生成し、チオール基がアゼチジニウム基
【化20】
と約40℃~140℃の温度で反応して、結合(T
1T
2N-CH
2-CH(OH)-CH
2-S-)が生成する。
【0162】
非シリコーンヒドロゲルレンズ体は、三次元のコンタクトレンズの形状を有する。本発明では、予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、表面処理(この場合、先に述べたコーティングプロセス)にかけた後に非シリコーンヒドロゲルレンズ体となる。
【0163】
好ましい実施形態では、(非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ体の)ヒドロゲル物質は、少なくとも50モル%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のヒドロキシル含有ビニル系モノマーの繰り返し単位を含む:ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、N-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコールおよびそれらの組合せ。好ましくは、ヒドロゲル物質は、少なくとも1種のアミド含有ビニル系モノマーの繰り返し単位、少なくとも1種のカルボキシル含有アクリル系モノマー(例えば、先に述べたもののいずれか1つ)の繰り返し単位、または少なくとも1種の、一級もしくは二級アミノ基を有するアクリル系モノマー(例えば、先に述べたもののいずれか1つ)の繰り返し単位をさらに含む。アミド含有ビニル系モノマー中のアミド基は、ポリアニオン性ポリマーのカルボキシル基と水素結合を形成して、ポリアニオン性ポリマーのアンカー層の形成を容易にすることができ、アクリル系モノマー中のカルボキシルまたは一級もしくは二級アミノ基は、レンズ体の表面上またはその近傍の反応性サイトとして、ポリマー物質をレンズ体にグラフトさせてアンカー層を形成するのに役立つことができると考えられる。
【0164】
好ましい実施形態では、非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ体は、ポリビニルアルコールベースのヒドロゲルコンタクトレンズ体である。ポリビニルアルコールベースのヒドロゲルコンタクトレンズ体は、上述の水溶性の化学線で架橋可能なポリビニルアルコールプレポリマーの架橋生成物であることが好ましい。
【0165】
非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ体は、ポリマーマトリックス、第一の浸出性ポリマー潤滑剤および第二の浸出性ポリマー潤滑剤を含むことが好ましく、第一および第二の浸出性ポリマー潤滑剤は、ポリマーマトリックスに対して共有結合的に結合されていないが、ポリマーマトリックス中に分散されており、第二の浸出性ポリマー潤滑剤は、第一の浸出性ポリマー潤滑剤の平均分子量の少なくとも約3倍の平均分子量を有する。
【0166】
好ましい実施形態では、第一のポリマー物質は、エポキシ基、アジリジン基、アズラクトン基、イソシアネート基、ビニルスルホン基またはそれらの組合せを含み、および第一のポリマー物質は、非シリコーンヒドロゲルレンズ体にグラフトされてアンカー層を形成する。それらの列記した反応性官能基を有する第一のポリマー物質を、1つのヒドロキシル基と1つのエポキシ(またはアジリジン、またはアズラクトン、またはイソシアネート、またはビニルスルホン)基との間のカップリング反応に従って、かつ任意選択的に1つのカルボキシル(または一級アミノ、または二級アミノ)基と1つのエポキシ(またはアジリジン、またはアズラクトン、またはイソシアネート、またはビニルスルホン)基との間のカップリング反応に従ってレンズ体に対してグラフトさせることが可能であることを理解されたい。
【0167】
本発明では、本発明のソフトコンタクトレンズ上のヒドロゲルコーティングの厚さは、平均の厚さを指し、それは、完全に水和された状態(すなわちリン酸塩緩衝溶液中、pH約7.3±0.2)のコンタクトレンズの断面についてAFMを用いて測定することができる。
【0168】
好ましい実施形態では、ヒドロゲルコーティングは、少なくとも150%(好ましくは少なくとも175%、より好ましくは少なくとも200%、さらにより好ましくは少なくとも250%、最も好ましくは少なくとも300%)の水膨潤比を有する。
【0169】
本出願において使用するとき、本発明のソフトコンタクトレンズのヒドロゲルコーティングに関連して「水膨潤比」という用語は、AFMを用い、
【数2】
に従って求めた数値を意味し、ここで、WSRは、ヒドロゲルコーティングの水膨潤比であり、L
Wetは、完全に水和された状態(すなわちリン酸塩緩衝溶液中、pH約7.3±0.2)のコンタクトレンズの断面についてAFMを用いて測定した、完全に水和された状態のソフトコンタクトレンズのヒドロゲルコーティングの平均厚さであり、およびL
Dryは、(空気中で乾燥させた)乾燥状態のかつ実質的に乾燥雰囲気中でのコンタクトレンズの断面についてAFMを用いて測定した、乾燥状態のソフトコンタクトレンズのヒドロゲルコーティングの平均厚さである。
【0170】
(本発明のソフトコンタクトレンズの)ヒドロゲルコーティングの水膨潤比は、ヒドロゲルコーティングに含まれる平衡水分含量(すなわち完全に水和させたときの水分含量)に比例すると考えられる。ヒドロゲルコーティングの水膨潤比が高いほど、ヒドロゲルコーティングの平衡水分含量が高くなる。さらに、(本発明のソフトコンタクトレンズの)ヒドロゲルコーティングの水膨潤比は、ヒドロゲルコーティングのメッシュサイズに比例し、それにより、ヒドロゲルコーティングの軟かさ(すなわち表面弾性モジュラス)にも比例するとも考えられる。ヒドロゲルコーティングのメッシュサイズは、ヒドロゲルの架橋密度に反比例する一方、架橋鎖の長さに比例する。ヒドロゲルコーティングの水膨潤比が高いほど、ヒドロゲルコーティングは、軟かくなる(またはヒドロゲルコーティングの表面弾性モジュラスが低くなる)。したがって、水膨潤比は、ヒドロゲルコーティングの平衡水分含量と軟かさとの両方の良好な指標となり得る。水分含量が高く、軟かさが高いと、そのようなヒドロゲルコーティングは、ソフトコンタクトレンズに優れた着用快適性を与えることができる。
【0171】
本発明の各種の実施形態を特定の用語、デバイス、方法を使用して記述してきたが、そのような記述は、単に説明のためのみのものである。使用した用語は、限定のための用語というよりも説明のための用語である。当業者により、以下の請求項で示される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく変更形態および変形形態がなされ得ることを理解されたい。さらに、以下で説明するように、各種の実施形態の態様は、全面的もしくは部分的のいずれで相互に置き換えられ得、または各種の方式で組み合わされおよび/もしくは同時に使用され得ることも理解されたい。
【0172】
1.ソフトコンタクトレンズを製造するための方法であって、
(1)予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを得る工程であって、予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、少なくとも50モル%の少なくとも1種のヒドロキシル含有ビニル系モノマーの繰り返し単位を含むヒドロゲル物質で構成される、工程と、
(2)予備成形されたヒドロゲルコンタクトレンズをポリアニオン性ポリマーの第一のコーティング水溶液と約4.0以下のpHおよび約25℃~約80℃のコーティング温度で接触させて、予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであって、その上にポリアニオン性ポリマーの層を有する予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであるソフトコンタクトレンズ前駆体を得る工程であって、ポリアニオン性ポリマーは、アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸、2-アクリルアミドグリコール酸または2-メタクリルアミドグリコール酸のホモポリマーまたはコポリマーである、工程と、
(3)工程(2)で得られたソフトコンタクトレンズ前駆体を、アゼチジニウム基を有する水溶性および熱架橋性の親水性ポリマー物質を含む第二のコーティング水溶液中において約60℃~約140℃の温度で少なくとも30分にわたって加熱して、水溶性で熱架橋性の親水性ポリマー物質とポリアニオン性ポリマーとを架橋させて、ポリアニオン性ポリマーの層上に共有結合的に結合されるヒドロゲルコーティングを有するソフトコンタクトレンズを形成する工程と
を含み、完全に水和された状態のソフトコンタクトレンズは、指擦り試験の7サイクル後に約2以下の摩擦等級を有し、ただし、ソフトコンタクトレンズの弾性モジュラスは、予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの弾性モジュラスと約±10%以下の幅内で等しい、方法。
【0173】
2.第一のコーティング水溶液は、約3.5以下のpHを有する、発明1に記載の方法。
【0174】
3.第一のコーティング水溶液は、約3.0以下のpHを有する、発明1に記載の方法。
【0175】
4.第一のコーティング水溶液は、約0.5~約2.5のpHを有する、発明1に記載の方法。
【0176】
5.コーティング温度は、約30℃~約75℃である、発明1~4のいずれか一項に記載の方法。
【0177】
6.コーティング温度は、約35℃~約70℃である、発明1~4のいずれか一項に記載の方法。
【0178】
7.コーティング温度は、約40℃~約60℃である、発明1~4のいずれか一項に記載の方法。
【0179】
8.予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、第一のコーティング水溶液と少なくとも1分の接触時間にわたって接触される、発明1~7のいずれか一項に記載の方法。
【0180】
9.予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、第一のコーティング水溶液と少なくとも5分の接触時間にわたって接触する、発明1~7のいずれか一項に記載の方法。
【0181】
10.予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、第一のコーティング水溶液と少なくとも10分の接触時間にわたって接触する、発明1~7のいずれか一項に記載の方法。
【0182】
11.予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、第一のコーティング水溶液と少なくとも30分の接触時間にわたって接触する、発明1~7のいずれか一項に記載の方法。
【0183】
12.加熱工程は、密封したレンズパッケージ中で第二のコーティング水溶液中に浸漬されたソフトコンタクトレンズ前駆体を約115℃~約125℃の温度で約30分~約90分にわたってオートクレーブ処理することによって実施され、第二のコーティング水溶液は、6.7~7.6のpHを有する緩衝水溶液である、発明1~11のいずれか一項に記載の方法。
【0184】
13.完全に水和された状態のソフトコンタクトレンズは、指擦り試験の7サイクル後に約1.5以下の摩擦等級を有する、発明1~12のいずれか一項に記載の方法。
【0185】
14.完全に水和された状態のソフトコンタクトレンズは、指擦り試験の7サイクル後に約1.0以下の摩擦等級を有する、発明1~12のいずれか一項に記載の方法。
【0186】
15.完全に水和された状態のソフトコンタクトレンズは、指擦り試験の7サイクル後に約0.5以下の摩擦等級を有する、発明1~12のいずれか一項に記載の方法。
【0187】
16.ソフトコンタクトレンズの弾性モジュラスは、予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの弾性モジュラスと約±8%以下の幅内で等しい、発明1~15のいずれか一項に記載の方法。
【0188】
17.ソフトコンタクトレンズの弾性モジュラスは、予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの弾性モジュラスと約±6%以下の幅内で等しい、発明1~15のいずれか一項に記載の方法。
【0189】
18.ソフトコンタクトレンズであって、非シリコーンヒドロゲルレンズ体およびその上のヒドロゲルコーティングを含み、非シリコーンヒドロゲルレンズ体は、シリコーンを含まず、かつ少なくとも50モル%の少なくとも1種のヒドロキシル含有ビニル系モノマーの繰り返し単位を含むヒドロゲル物質で構成され、ヒドロゲルコーティングは、第一の反応性官能基を有する第一のポリマー物質のアンカー層および第二の反応性官能基を有する第二のポリマー物質から誘導されたヒドロゲル層を含み、ヒドロゲル層は、1つの第一の反応性官能基と1つの第二の反応性官能基との間にそれぞれ形成された結合を介してアンカー層上に共有結合的に結合され、ソフトコンタクトレンズは、非シリコーンヒドロゲルレンズ体の潤滑性より良好な表面潤滑性を有し、かつ室温(すなわち約22℃~28℃の温度)で完全に水和されたとき、指擦り試験の7サイクル後に約2以下の摩擦等級と、約10重量%~約85重量%の水分含量と、約0.2MPa~約1.5MPaの弾性モジュラスとを有する、ソフトコンタクトレンズ。
【0190】
19.ヒドロゲルコーティングは、約0.1μm~約20μmの厚さを有する、発明18に記載のソフトコンタクトレンズ。
【0191】
20.第一の反応性官能基と第二の反応性官能基とは、相互に異なり、かつ相互に共反応性であり、およびカルボキシル基、一級アミノ基、二級アミノ基、チオール基、アゼチジニウム基、エポキシ基、アズラクトン基、アジリジン基、イソシアネート基、ビニルスルホン基およびそれらの組合せからなる群から選択される、発明18または19に記載のソフトコンタクトレンズ。
【0192】
21.第一の反応性官能基は、カルボキシル基、一級アミノ基、二級アミノ基、チオール基またはそれらの組合せである一方、第二の反応性官能基は、アゼチジニウム基、エポキシ基、アジリジン基、アズラクトン基、イソシアネート基、ビニルスルホン基またはそれらの組合せである、発明20に記載のソフトコンタクトレンズ。
【0193】
22.第一の反応性官能基は、アゼチジニウム基、エポキシ基、アジリジン基、アズラクトン基、イソシアネート基、ビニルスルホン基またはそれらの組合せである一方、第二の反応性官能基は、カルボキシル基、一級アミノ基、二級アミノ基、チオール基またはそれらの組合せである、発明20に記載のソフトコンタクトレンズ。
【0194】
23.第一の反応性官能基は、カルボキシル基であり、および第二の反応性官能基は、アゼチジニウム基である、発明18~21のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【0195】
24.第一のポリマー物質は、アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸、2-(メタ)アクリルアミドグリコール酸およびそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種のカルボキシル含有アクリル系モノマーのホモポリマーまたはコポリマーであるポリアニオン性ポリマーである、発明18~23のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【0196】
25.ヒドロゲル層は、1つのカルボキシル基と1つのアゼチジニウム基との間にそれぞれ形成された結合を介してポリアニオン性ポリマーのアンカー層上に共有結合的に結合される、発明24に記載のソフトコンタクトレンズ。
【0197】
26.第一のポリマー物質は、エポキシ基を含み、かつ非シリコーンヒドロゲルレンズ体にグラフトされてアンカー層を形成する、発明18~22のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【0198】
27.第一のポリマー物質は、アジリジン基を含み、かつ非シリコーンヒドロゲルレンズ体にグラフトされてアンカー層を形成する、発明18~22のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【0199】
28.第一のポリマー物質は、アズラクトン基を含み、かつ非シリコーンヒドロゲルレンズ体にグラフトされてアンカー層を形成する、発明18~22のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【0200】
29.第一のポリマー物質は、イソシアネート基を含み、かつ非シリコーンヒドロゲルレンズ体にグラフトされてアンカー層を形成する、発明18~22のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【0201】
30.第一のポリマー物質は、ビニルスルホン基を含み、かつ非シリコーンヒドロゲルレンズ体にグラフトされてアンカー層を形成する、発明18~22のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【0202】
31.第二のポリマー物質は、アゼチジニウム基、カルボキシル基、一級アミノ基、二級アミノ基、チオール基およびそれらの組合せからなる群から選択される第二の反応性官能基を含む水溶性の親水性ポリマー物質である、発明18~30のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【0203】
32.ソフトコンタクトレンズは、完全に水和されたとき、室温(すなわち約22℃~28℃)で約15重量%~約80重量%の水分含量を有する、発明18~31のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【0204】
33.ソフトコンタクトレンズは、完全に水和されたとき、室温(すなわち約22℃~28℃)で約30重量%~約75重量%の水分含量を有する、発明18~31のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【0205】
34.ソフトコンタクトレンズは、完全に水和されたとき、約0.3MPa~約1.2MPaの弾性モジュラスを有する、発明18~33のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【0206】
35.ソフトコンタクトレンズは、完全に水和されたとき、約0.4MPa~約1.0MPaの弾性モジュラスを有する、発明18~33のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【0207】
36.コーティングは、約0.25μm~約17μmの厚さを有する、発明18~35のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【0208】
37.コーティングは、約0.5μm~約15μmの厚さを有する、発明18~35のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【0209】
38.コーティングは、約1μm~約10μmの厚さを有する、発明18~35のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【0210】
39.ソフトコンタクトレンズは、指擦り試験の7サイクル後に約1.5以下の摩擦等級を有する、発明18~38のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【0211】
40.ソフトコンタクトレンズは、指擦り試験の7サイクル後に約1.0以下の摩擦等級を有する、発明18~38のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【0212】
41.ソフトコンタクトレンズは、指擦り試験の7サイクル後に約0.5以下の摩擦等級を有する、発明18~38のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【0213】
42.ヒドロゲルコーティングは、少なくとも150%の水膨潤比を有する、発明18~41のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【0214】
43.ヒドロゲルコーティングは、少なくとも175%の水膨潤比を有する、発明18~41のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【0215】
44.ヒドロゲルコーティングは、少なくとも200%の水膨潤比を有する、発明18~41のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【0216】
45.ヒドロゲルコーティングは、少なくとも250%の水膨潤比を有する、発明18~41のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【0217】
46.ヒドロゲルコーティングは、少なくとも300%の水膨潤比を有する、発明18~41のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【0218】
47.ヒドロゲル物質は、水溶性の化学線で架橋可能なポリビニルアルコールプレポリマーの架橋生成物である、発明1~17のいずれか一項に記載の方法または発明18~46のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【0219】
48.水溶性の化学線で架橋可能なポリビニルアルコールプレポリマーは、少なくとも60モル%の、ビニルアルコール(すなわち、
【化21】
)の繰り返し単位、式(I)の繰り返し架橋単位、および
【化22】
(式中、
R
3は、水素またはC
1~C
6アルキル基(好ましくは水素)であり得、
R
4は、C
1~C
6アルキレンの二価のラジカル(好ましくはC
1~C
4アルキレンの二価のラジカル、より好ましくはメチレンまたはブチレンの二価のラジカル、さらにより好ましくはメチレンの二価のラジカル)であり、
R
5は、水素またはC
1~C
6アルキル(好ましくは水素またはC
1~C
4アルキル、より好ましくは水素またはメチルまたはエチル、さらにより好ましくは水素またはメチル)であり、
R
6は、
【化23】
(式中、q1およびq2は、互いに独立して、ゼロまたは1であり、かつR
7およびR
8は、互いに独立して、C
2~C
8アルキレンの二価のラジカルであり、R
9は、C
2~C
8アルケニルである)
のエチレン性不飽和基である)
を含む、発明47に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0220】
49.式(I)のR3は、水素である、発明48に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0221】
50.式(I)のR4は、C1~C4アルキレンの二価のラジカルである、発明48または49に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0222】
51.式(I)のR5は、水素またはC1~C4アルキルである、発明48~50のいずれか一項に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0223】
52.式(I)のR5は、水素またはメチルまたはエチル(好ましくは水素またはメチル)である、発明48~50のいずれか一項に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0224】
53.式(I)において、R
4は、メチレンの二価のラジカルであり、R
5は、水素またはC
1~C
4アルキルであり、R
3は、水素であり、およびR
6は、
【化24】
(式中、q2は、ゼロであり、R
9は、ビニル(
*-CH=CH
2)または1-メチルエテニル(
*-C(CH
3)=CH
2)である)
のラジカルである、発明48に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0225】
54.ポリビニルアルコールプレポリマーは、少なくとも約2,000ダルトンの重量平均分子量を有し、かつ約1モル%~約25モル%(好ましくは約2モル%~約15モル%)の式(I)の繰り返し単位を含む、発明48~53のいずれか一項に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0226】
55.前記少なくとも1種のヒドロキシル含有ビニル系モノマーは、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、N-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコールおよびそれらの組合せからなる群から選択される、発明1~17のいずれか一項に記載の方法または発明18~46のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【0227】
56.ヒドロゲル物質は、少なくとも1種のアミド含有ビニル系モノマーの繰り返し単位をさらに含む、発明55に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0228】
57.前記少なくとも1種のアミド含有ビニル系モノマーは、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン(NVP)、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルイソプロピルアミド、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-エチル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-メチル-5-メチレン-2-ピロリドン、1-エチル-5-メチレン-2-ピロリドン、5-メチル-3-メチレン-2-ピロリドン、5-エチル-3-メチレン-2-ピロリドンおよびそれらの組合せからなる群から選択される、発明56に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0229】
58.ヒドロゲル物質は、少なくとも1種のカルボキシル含有アクリル系モノマーの繰り返し単位をさらに含む、発明55~57のいずれか一項に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0230】
59.カルボキシル含有アクリル系モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸、2-アクリルアミドグリコール酸、2-メタクリルアミドグリコール酸およびそれらの組合せからなる群から選択される、発明58に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0231】
60.ヒドロゲル物質は、少なくとも1種の、一級もしくは二級アミノ基を有するアクリル系モノマーの繰り返し単位をさらに含む、発明55~59のいずれか一項に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0232】
61.一級もしくは二級アミノ基を有するアクリル系モノマーは、N-2-アミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-2-メチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-2-エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-2-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-3-アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-3-メチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-3-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、2-アミノエチル(メタ)アクリレート、2-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3-アミノプロピル(メタ)アクリレート、3-メチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、3-エチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、3-アミノ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルアンモニウム2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートヒドロクロリド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびそれらの組合せからなる群から選択される、発明60に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0233】
62.予備成形された非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、第一の浸出性ポリマー潤滑剤および第二の浸出性ポリマー潤滑剤を含み、第二の浸出性ポリマー潤滑剤は、分子量の点またはポリマー組成(すなわち異なるモノマー単位で作られているか、または同一のモノマー単位であるが、異なるパーセントで作られている)の点で第一の浸出性ポリマー潤滑剤と異なる、発明1~17および47~61のいずれか一項に記載の方法または発明18~61のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【0234】
63.第二の浸出性ポリマー潤滑剤は、第一の浸出性ポリマー潤滑剤の重量平均分子量の少なくとも3倍である重量平均分子量を有する、発明62に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0235】
64.第一および第二の浸出性ポリマー潤滑剤は、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアミド、ポリイミド、ポリラクトン、N-ビニルピロリドンのホモポリマー、N-ビニルピロリドンと1種または複数の親水性ビニル系コモノマーとのコポリマー、(メタ)アクリルアミドのホモポリマー、(メタ)アクリルアミドと1種または複数の親水性ビニル系モノマーとのコポリマー、N-ビニル-N-メチルアセトアミドのホモポリマー、N-ビニル-N-メチルアセトアミドと1種または複数の親水性ビニル系モノマーとのコポリマー、C2~C3ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリルアミドのホモポリマー、C2~C3ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリルアミドと1種または複数の親水性ビニル系モノマーとのコポリマー、ホスホリルコリン含有ビニル系モノマーと1種または複数の親水性ビニル系モノマーとのコポリマー、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(2-エチルオキサゾリン)、ヘパリン多糖類、多糖類およびそれらの混合物からなる群から選択される非架橋性の親水性ポリマーである、発明62または63に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0236】
65.第一および第二の浸出性ポリマー潤滑剤は、非架橋性のポリビニルアルコールである、発明62、または63、または64に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0237】
66.ポリアニオン性ポリマーは、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(メタクリル酸)(PMAA)、ポリ(アクリル酸-コ-メタクリル酸)(pAA-pMAA)、ポリ(エチルアクリル酸)(PEAA)、ポリ(アクリル酸-コ-エチルアクリル酸)(pAA-pEAA)、ポリ(メタクリル酸-コ-エチルアクリル酸)(pMAA-pEAA)、ポリ[2アクリルアミドグリコール酸]、ポリ[2-メタクリルアミドグリコール酸]またはそれらの組合せである、発明1~17および47~65のいずれか一項に記載の方法または発明24~25および31~65のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【0238】
67.ポリアニオン性ポリマーは、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(メタクリル酸)(PMAA)、ポリ(アクリル酸-コ-メタクリル酸)(pAA-pMAA)またはそれらの組合せである、発明66に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0239】
68.ポリアニオン性ポリマーは、少なくとも100,000ダルトンの重量平均分子量を有する、発明66または67に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0240】
69.ポリアニオン性ポリマーは、200,000~10,000,000ダルトンの重量平均分子量を有する、発明66または67に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0241】
70.ポリアニオン性ポリマーは、300,000~5,000,000ダルトンの重量平均分子量を有する、発明66または67に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0242】
71.ポリアニオン性ポリマーは、400,000~3,000,000ダルトンの重量平均分子量を有する、発明66または67に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0243】
72.水溶性の熱架橋性ポリマー物質は、
(i)約20重量%~約95重量%の、ポリアミドアミン-エピクロロヒドリンから誘導された第一のポリマー鎖と、
(ii)約5重量%~約80重量%の、一級アミノ基、二級アミノ基、カルボキシル基、チオール基およびそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有する少なくとも1種の第一の親水性向上剤からそれぞれ誘導された親水性残基であって、ポリアミドアミン-エピクロロヒドリンの1つのアゼチジニウム基と、第一の親水性向上剤の1つの一級アミノ、二級アミノ、カルボキシルまたはチオール基との間にそれぞれ形成された1つまたは複数の共有結合を介して第一のポリマー鎖に共有結合的に結合される、親水性残基と、
(iii)アゼチジニウム基であって、第一のポリマー鎖の一部または第一のポリマー鎖に共有結合的に結合されたペンダントもしくは末端基であるアゼチジニウム基と
を含む、発明1~17および47~71のいずれか一項に記載の方法または発明31~67のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【0244】
73.水溶性の熱架橋性ポリマー物質は、
(i)約20重量%~約95重量%の、ポリアミドアミン-エピクロロヒドリンから誘導された第一のポリマー鎖と、
(ii)約5重量%~約80重量%の、一級アミノ基、二級アミノ基、カルボキシル基、チオール基およびそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有する少なくとも1種の第二の親水性向上剤からそれぞれ誘導された第二のポリマー鎖であって、ポリアミドアミン-エピクロロヒドリンの1つのアゼチジニウム基と、第二の親水性向上剤の1つの一級アミノ、二級アミノ、カルボキシルまたはチオール基との間にそれぞれ形成された1つまたは複数の共有結合を介して第一のポリマー鎖に共有結合的に結合される、第二のポリマー鎖と、
(iii)アゼチジニウム基であって、第一のポリマー鎖の一部または第一のポリマー鎖に共有結合的に結合されたペンダントもしくは末端基であるアゼチジニウム基と
を含む、発明1~17および47~71のいずれか一項に記載の方法または発明31~71のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【0245】
74.水溶性の熱架橋性ポリマー物質は、
(i)約20重量%~約95重量%の、ポリ(2-オキサゾリン-コ-エチレンイミン)-エピクロロヒドリンから誘導された第一のポリマー鎖と、
(ii)約5重量%~約80重量%の、一級アミノ基、二級アミノ基、カルボキシル基、チオール基およびそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有する少なくとも1種の第一の親水性向上剤からそれぞれ誘導された親水性残基であって、ポリ(2-オキサゾリノン-コ-エチレンイミン)-エピクロロヒドリンの1つのアゼチジニウム基と、第一の親水性向上剤の1つの一級アミノ、二級アミノ、カルボキシルまたはチオール基との間にそれぞれ形成された1つまたは複数の共有結合を介して第一のポリマー鎖に共有結合的に結合される、親水性残基と、
(iii)アゼチジニウム基であって、第一のポリマー鎖の一部または第一のポリマー鎖に共有結合的に結合されたペンダントもしくは末端基であるアゼチジニウム基と
を含む、発明1~17および47~71のいずれか一項に記載の方法または発明31~71のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【0246】
75.水溶性の熱架橋性ポリマー物質は、
(i)約20重量%~約95重量%の、ポリ(2-オキサゾリン-コ-エチレンイミン)-エピクロロヒドリンから誘導された第一のポリマー鎖と、
(ii)約5重量%~約80重量%の、一級アミノ基、二級アミノ基、カルボキシル基、チオール基およびそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有する少なくとも1種の第二の親水性向上剤からそれぞれ誘導された第二のポリマー鎖であって、ポリ(2-オキサゾリノン-コ-エチレンイミン)-エピクロロヒドリンの1つのアゼチトジニウム基と、第二の親水性向上剤の1つの一級アミノ、二級アミノ、カルボキシルまたはチオール基との間にそれぞれ形成された1つまたは複数の共有結合を介して第一のポリマー鎖に共有結合的に結合される、第二のポリマー鎖と、
(iii)アゼチジニウム基であって、第一のポリマー鎖の一部または第一のポリマー鎖に共有結合的に結合されたペンダントもしくは末端基であるアゼチジニウム基と
を含む、発明1~17および47~71のいずれか一項に記載の方法または発明31~71のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【0247】
76.第一の親水性向上剤は、一級アミン含有単糖類、二級アミン含有単糖類、カルボキシル含有単糖類、チオール含有単糖類、一級アミン含有二糖類、二級アミン含有二糖類、カルボキシル含有二糖類、チオール含有二糖類、一級アミン含有オリゴサッカライド、二級アミン含有オリゴサッカライド、カルボキシル含有オリゴサッカライド、チオール含有オリゴサッカライドまたはそれらの組合せである、発明72または74に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0248】
77.第二の親水性向上剤は、1つの単独の一級もしくは二級アミノ、カルボキシルまたはチオール基を有するポリエチレングリコール、2つの末端の一級もしくは二級アミノ、カルボキシルおよび/またはチオール基を有するポリエチレングリコール、1つまたは複数の一級もしくは二級アミノ、カルボキシルおよび/またはチオール基を有するマルチアームポリエチレングリコール、1つまたは複数の一級もしくは二級アミノ、カルボキシルおよび/またはチオール基を有するポリエチレングリコールデンドリマーである、発明73または74に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0249】
78.第二の親水性向上剤は、(1)約60重量%以下の1種または複数の反応性ビニル系モノマーおよび(2)1種または複数の非反応性の親水性ビニル系モノマーを含む組成物の重合生成物であるコポリマーである、発明73または74に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0250】
79.前記1種または複数の反応性ビニル系モノマーは、カルボキシル基を有するビニル系モノマーである、発明78に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0251】
80.前記1種または複数の反応性ビニル系モノマーは、アクリル酸、C1~C4アルキルアクリル酸(例えば、メタクリルエチルアクリル酸、プロピルアクリル酸、ブチルアクリル酸)、N-2-(メタ)アクリルアミドグリコール酸、ベータメチル-アクリル酸(クロトン酸)、アルファ-フェニルアクリル酸、ベータ-アクリルオキシプロピオン酸、ソルビン酸、アンゲリカ酸、ケイ皮酸、1-カルボキシ-4-フェニルブタジエン-1,3、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、マレイン酸、フマル酸、トリカルボキシエチレンおよびそれらの組合せからなる群から選択される、発明79に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0252】
81.前記1種または複数の反応性ビニル系モノマーは、アクリル酸、メチルアクリル酸またはそれらの組合せである、発明79に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0253】
82.前記1種または複数の反応性ビニル系モノマーは、一級または二級アミノ基を有するビニル系モノマーである、発明78に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0254】
83.前記1種または複数の反応性ビニル系モノマーは、アミノ-C2~C6アルキル(メタ)アクリレート、C1~C6アルキルアミノ-C2~C6アルキル(メタ)アクリレート、アリルアミン、ビニルアミン、アミノ-C2~C6アルキル(メタ)アクリルアミド、C1~C6アルキルアミノ-C2~C6アルキル(メタ)アクリルアミドおよびそれらの組合せである、発明82に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0255】
84.前記1種または複数の非反応性のビニル系モノマーは、ホスホリルコリン含有ビニル系モノマー、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン(NVP)、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルイソプロピルアミド、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリセロール(メタ)アクリレート、N-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-エチル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-メチル-5-メチレン-2-ピロリドン、1-エチル-5-メチレン-2-ピロリドン、5-メチル-3-メチレン-2-ピロリドン、5-エチル-3-メチレン-2-ピロリドン、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1500ダルトンまでの重量平均分子量を有するC1~C4-アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、アリルアルコール、ビニルアルコールおよびそれらの組合せからなる群から選択される、発明78~83のいずれか一項に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0256】
85.前記1種または複数の非反応性のビニル系モノマーは、アクリアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、ホスホリルコリン含有ビニル系モノマー、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、グリセロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、400ダルトンまでの重量平均分子量を有するC1~C4-アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ビニルアルコールおよびそれらの組合せからなる群から選択される、発明78~83のいずれか一項に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0257】
86.前記1種または複数の非反応性のビニル系モノマーは、ホスホリルコリン含有ビニル系モノマーである、発明78~83のいずれか一項に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0258】
87.前記1種または複数の非反応性のビニル系モノマーは、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、(メタ)アクリロイルオキシプロピルホスホリルコリン、4-((メタ)アクリロイルオキシ)ブチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-[(メタ)アクリロイルアミノ]エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)-エチルホスフェート、3-[(メタ)アクリロイルアミノ]プロピル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、4-[(メタ)アクリロイルアミノ]ブチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、5-((メタ)アクリロイルオキシ)ペンチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、6-((メタ)アクリロイルオキシ)ヘキシル-2’-(トリメチルアンモニオ)-エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2’-(トリエチルアンモニオ)エチル-ホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2’-(トリプロピルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2’-(トリブチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)プロピル-2’-(トリメチルアンモニオ)-エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)ブチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)ペンチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)ヘキシル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ビニルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ビニルオキシカルボニル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシカルボニル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)-エチルホスフェート、2-(ビニルカルボニルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)-エチルホスフェート、2-(アリルオキシカルボニルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ブテノイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェートまたはそれらの組合せである、発明78~83のいずれか一項に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0259】
88.組成物は、約50重量%以下の前記1種または複数の反応性ビニル系モノマーを含む、発明78~87のいずれか一項に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0260】
89.組成物は、約0.1重量%~約30重量%の前記1種または複数の反応性ビニル系モノマーを含む、発明78~87のいずれか一項に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0261】
90.組成物は、約0.5重量%~約20重量%の前記1種または複数の反応性ビニル系モノマーを含む、発明78~87のいずれか一項に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0262】
91.組成物は、約1重量%~約15重量%の前記1種または複数の反応性ビニル系モノマーを含む、発明78~87のいずれか一項に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0263】
92.第二の親水性向上剤は、一級アミン含有多糖類、二級アミン含有多糖類、カルボキシル含有多糖類、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸またはそれらの組合せである、発明73または75に記載の方法またはソフトコンタクトレンズ。
【0264】
当業者であれば、上記の本開示により、本発明を実施することが可能となるであろう。本明細書に記載された各種の実施形態に対する各種の修正形態、変更形態および組合せがなされ得る。読者が具体的な実施形態およびその利点をより良く理解できるようにするために、以下の実施例を参照することが提案される。本明細書および実施例が例示的なものであることを理解されたい。
【実施例】
【0265】
実施例1
指擦り試験。
製品説明書に従い、リン酸塩緩衝化生理食塩水(PBS)(または多目的レンズケア溶液)を用いてレンズを20秒にわたって指で擦り、フレッシュなPBSが入っているケースに戻す。上記手順を所定の回数、例えば1~30回(すなわち清浄化および浸漬サイクルを模した指擦り試験の繰り返し数)繰り返す。本出願において使用するとき、「指擦り試験の「i」サイクル」という用語(例えば、7サイクルの指擦り試験)は、清浄化および浸漬サイクルを模して上述の指擦り試験を「i」回(例えば、7回)繰り返すことを意味する。
【0266】
潤滑性の評価。
レンズの潤滑性は、指触感触潤滑性試験を使用して評価し、この試験は、レンズ表面の滑りやすさを定性的に0~4の摩擦等級スケールで特徴付ける。摩擦等級が高いほど、滑りやすさ(すなわち潤滑性)が低い。
【0267】
市販されているレンズ:DAILIES(登録商標)TOTAL1(登録商標)、ACCUVUE(登録商標)OASYS(商標)、ACCUVUE(登録商標)ADVANCE PLUS(商標)、DAILIES(登録商標)Aqua Comfort Plus(登録商標)およびAIR OPTIX(登録商標)をそれぞれ0、1、2、3および4の摩擦等級(以下ではFRと表記する)に割り当てる。それらを、試験にかけているレンズの摩擦等級を決定するための標準レンズとして使用する。
【0268】
サンプルをPBS中に入れ、それぞれ30分ずつ少なくとも2回濯ぎ、その後、フレッシュなPBSに移してから評価にかける。評価前に石鹸溶液を用いて両手を洗い、DI水を用いて確実に濯ぎ、次いでKimWipe(登録商標)タオルで乾かす。指間でサンプルを扱い、先に記載した上記の標準レンズと比較してそれぞれのサンプルに数字を割り当てる。例えば、レンズがAIR OPTIX(登録商標)レンズよりもごくわずかに良好であると判断したら、それらに3の数字を割り当てる。摩擦等級の数値は、2人以上による1つのコンタクトレンズについての少なくとも2つの摩擦等級の結果を平均し、かつ/または1人による2つ以上のコンタクトレンズ(レンズの製造バッチが同じもの)の摩擦等級を平均化することによって得る。
【0269】
表面の濡れ性試験。
コンタクトレンズ上での水接触角(WCA)は、コンタクトレンズの表面の濡れ性の一般的な尺度である。具体的には、水接触角が小さいことは、より濡れやすい表面に対応する。コンタクトレンズの平均接触角(Sessile Drop法)は、AST,Inc.(Boston,Massachusetts)製のVCA 2500 XE接触角測定デバイスを使用して測定する。この装置は、前進接触角(θa)、または後退接触角(θr)、または静止(sessile)(静的)接触角を測定することができる。特に断らない限り、水接触角は、静止(静的)接触角である。その測定は、完全に水和されたコンタクトレンズについて、下記のブロット乾燥の直後に実施する。コンタクトレンズをバイアルから取り出し、約200mLのフレッシュなDI水を用いて3回洗浄して、緩く付着しているパッケージ添加物をレンズ表面から取り除く。次いで、そのレンズをほとんど毛羽立ちのないクリーンクロス(Alpha Wipe TX1009)上にのせ、十分に軽く押さえて表面の水を除き、接触角装置の測定台上にのせ、乾燥空気を吹き付けてブロー乾燥させ、かつ最後に液滴(sessile drop)接触角を、製造業者によって提供されたソフトウェアを使用して自動的に計測する。接触角を測定するために使用するDI水は、18MΩより高い抵抗率を有し、その液滴の容積は、2μLである。典型的には、コーティングしていないシリコーンヒドロゲルレンズ(オートクレーブ処理後)は、約120度の液滴接触角を有する。ピンセットおよび試験台は、イソプロパノールを用いて十分に洗浄し、DI水で濯いでからコンタクトレンズと接触させる。
【0270】
実施例2
PAAコーティング溶液。溶液ポリアクリル酸(PAA)溶液は、Carpobol 907粉体を約0.5重量%のPAA濃度となるように水中に溶解させ、次いでギ酸を添加してpHを調節することにより調製する。次いで、このPAA溶液を希釈して、0.1%重量%のPAAおよび0.75重量%のギ酸の最終的なPAAディップ溶液とする。
【0271】
IPC生理食塩水。ポリ(AAm-コ-AA)(90/10)の部分ナトリウム塩(約90%の固形分含量、ポリ(AAm-コ-AA)90/10、Mw:200,000)は、Polysciences、Inc.から購入し、受け入れたままで使用する。PAE(Kymene、アゼチジニウム含量0.46、NMR分析法)は、Ashlandから水溶液として購入し、受け入れたままで使用する。IPC生理食塩水は、約0.07(w/w)%のポリ(AAm-コ-AA)(90/10)および約0.15%のPAE(初期のアゼチジニウムミリモル当量:約8.8ミリモル)をPBS(約0.044(w/w)%のNaH2PO4・H2O、約0.388(w/w)%のNa2HPO4・2H2O、約0.79(w/w)%のNaCl)中に溶解させ、かつpH7.2~7.4に調節することにより調製する。次いで、そのIPC生理食塩水を約70℃で約4時間、加熱予備処理を行う(加熱予備処理)。この加熱予備処理中、ポリ(AAm-コ-AA)とPAEとが部分的に(すなわちPAEのアゼチジニウム基をすべて消費しない)相互に架橋されて、IPC生理食塩水中で分岐状のポリマーネットワークの内部にアゼチジニウム基を含む水溶性で熱架橋性の親水性ポリマー物質が形成される。加熱予備処理後、0.22ミクロンのポリエーテルスルホン[PES]膜フィルターを使用してそのIPC生理食塩水を濾過し、冷却して室温に戻す。次いで、その最終のIPC生理食塩水に10ppmの過酸化水素を添加して、汚染微生物の成長を防止し、かつ0.22ミクロンのPES膜フィルターを使用して、そのIPC生理食塩水を濾過する。
【0272】
ヒドロゲルコーティング。DAILIES(登録商標)AquaComfort Plus(登録商標)(DACP)コンタクトレンズ上へのヒドロゲルコーティングの適用は、1回のPAA-ディップコーティングプロセスおよびIPCコーティングプロセスを含み、次のようにして実施される。Alcon(登録商標)製のDACPコンタクトレンズ(約69重量%の水分含量および約0.98MPaの弾性モジュラスを有する)をコーティング前に一夜以上にわたって脱イオン水(DI水)中に浸漬させ、次いでPAAディップ溶液(上で調製したもの)中に、60rpmで穏やかに振盪させながら室温で2分、5分または10分にわたって浸漬させる。次いで、そのPAAコーティングしたDACPレンズを水中で2分にわたって濯ぎ、0.6mLのIPC生理食塩水の入っているポリプロピレン製のレンズパッケージングシェル(1つのシェルあたり1つのレンズ)中に入れる(レンズを入れる前に半分の生理食塩水を入れておく)。次いで、フォイルを用いてそれらのブリスターを密封し、約121℃で約45分にわたってオートクレーブ処理すると、ヒドロゲルコーティングされたDACPコンタクトレンズ(すなわち、その上に架橋されたコーティング(PAA-x-親水性ポリマー物質)を有するDACPレンズ)が形成される。
【0273】
PAAディップおよびIPCコーティングプロセスを経ていない対照のDACPレンズをPBS中にパッケージして、121℃で45分にわたってオートクレーブ処理する。
【0274】
レンズの性質、例えば弾性モジュラス、水分含量および破断時伸びは、ヒドロゲルコーティングを形成するための表面処理プロセスによっても変化しない。
【0275】
対照のDACPコンタクトレンズおよびヒドロゲルコーティングされたDACPレンズの指潤滑性(すなわち摩擦等級)および水接触角を2回測定し、1回目は、(PBSに30分以上浸漬させた後の)直接のアウト-オブ-パック(いわゆる「OOP潤滑性」または「OOP摩擦等級」)についてのものであり、他は、実施例1に記載の手順に従った指擦り試験の7サイクル後(いわゆる「A7CMR潤滑性」または「A7CMR摩擦等級」)である。得られた結果を表1に示す。
【0276】
【0277】
結果が示すように、指擦り試験なしでは、対照物(摩擦等級:3)と比較してヒドロゲルコーティングされたレンズは、すべてより良好な潤滑性(摩擦等級:0または0~1)を有し、かつ指擦り試験の7サイクル後に潤滑性がわずかに低下するが、対照物(アウト-オブ-パッケージのDACPレンズ)と比較しても依然としてより潤滑性が高い。
【0278】
実施例3
PAAコーティング溶液。ポリアクリル酸(PAA)溶液は、Carpobol 907粉体を水に溶解させて所望の濃度とし、次いでギ酸を添加してpHを調節することにより調製する。2種のPAA溶液を調製し、1つの溶液は、0.1重量%のPAAおよび0.1重量%のH2SO4を含み、他の溶液は、0.1重量%のPAAおよび0.74重量%のギ酸を含む。
【0279】
IPC生理食塩水。IPC生理食塩水は、実施例2に記載の手順に従って調製する。
【0280】
ヒドロゲルコーティング。DACPコンタクトレンズ上にヒドロゲルコーティングを適用することは、1回のPAA-ディップコーティングプロセスとIPCコーティングプロセスとを含み、実施例2に記載された手順で実施され、ただし、そのPAA浸漬時間は、5分である。
【0281】
PAAディップおよびIPCコーティングプロセスを経ていない対照のDACPレンズをPBS中にパッケージして、121℃で45分にわたってオートクレーブ処理する。
【0282】
対照DACPコンタクトレンズおよびヒドロゲルコーティングされたDACPレンズのアウトオブパックの指潤滑性(すなわち摩擦等級)は、(PBSに30分以上浸漬させた後の)直接のアウト-オブ-パック(OOP)について求める。両方のPAAディップ溶液からのヒドロゲルコーティングされたDACPコンタクトレンズは、すべて対照(摩擦等級:3)と比較してより良好な潤滑性(摩擦等級:0)を有することが見出される。
【0283】
実施例4
PAAコーティング溶液。ポリアクリル酸(PAA)溶液は、Carpobol 907粉体を水中に溶解させて約0.02重量%のPAA濃度になるようにすることにより調製する。
【0284】
IPC生理食塩水。IPC生理食塩水。IPC生理食塩水IPC生理食塩水は、実施例2に記載の手順に従って調製する。
【0285】
ヒドロゲルコーティング。DACPコンタクトレンズ上にヒドロゲルコーティングを適用することは、1回のPAA-ディップコーティングプロセスとIPCコーティングプロセスとを含み、実施例2に記載された手順で実施され、ただし、そのPAA浸漬時間は、2分または4分のいずれかである。
【0286】
ヒドロゲルコーティングされたDACPコンタクトレンズは、すべて対照(摩擦等級:3)と比較してより良好なOOP指潤滑性(摩擦等級:0)を有する。1回の追加のオートクレーブ処理後、0.5の摩擦等級に見られるように(摩擦等級ゼロから高くなっていて)、そのOOP指潤滑性がわずかに低下する。15サイクルの指擦り試験後に摩擦等級1および30サイクルの指擦り試験後に摩擦等級3で示されるようにOOP指潤滑性が低下する。
【0287】
実施例5
PAAコーティング溶液。ポリアクリル酸(PAA)溶液は、Carpobol 907粉体を水中に溶解させて約0.04重量%のPAA濃度になるようにすることにより調製する。
【0288】
IPC生理食塩水。IPC生理食塩水。IPC生理食塩水IPC生理食塩水は、実施例2に記載の手順に従って調製する。
【0289】
ヒドロゲルコーティング。DACPコンタクトレンズ上にヒドロゲルコーティングを適用することは、1回のPAA-ディップコーティングプロセスとIPCコーティングプロセスとを含み、実施例2に記載された手順で実施され、ただし、そのPAA浸漬時間は、2分、4分または8分である。
【0290】
ヒドロゲルコーティングされたDACPコンタクトレンズは、すべて対照(摩擦等級:3)と比較してより良好なOOP指潤滑性(摩擦等級:0)を有する。1回の追加のオートクレーブ処理(すなわち全部で2回のオートクレーブ処理)後でも、そのOOP指潤滑性に変化がないままである。15サイクルの指擦り試験後に摩擦等級0.5および30サイクルの指擦り試験後に摩擦等級2(PAA溶液中に8分にわたって浸漬させたとき)または3(PAA溶液中に2分にわたって浸漬させたとき)に示されているように指潤滑性が低下する。より長いPAA浸漬時間および/またはより高いPAA濃度にすると、ヒドロゲルコーティングの耐久性を改良することができる(すなわち、指潤滑性に及ぼされる指擦り試験の悪影響が小さくなるかまたは消滅する)。