(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】LEDパッケージおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/50 20100101AFI20221025BHJP
H01L 33/54 20100101ALI20221025BHJP
【FI】
H01L33/50
H01L33/54
(21)【出願番号】P 2020209479
(22)【出願日】2020-12-17
(62)【分割の表示】P 2018566142の分割
【原出願日】2018-02-02
【審査請求日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2017017853
(32)【優先日】2017-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000131430
【氏名又は名称】シチズン電子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100160716
【氏名又は名称】遠藤 力
(72)【発明者】
【氏名】水野 俊之
(72)【発明者】
【氏名】橘田 芳仁
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-094578(JP,A)
【文献】特開2015-065236(JP,A)
【文献】特開2006-343409(JP,A)
【文献】特開2000-200928(JP,A)
【文献】特開2013-004807(JP,A)
【文献】特開2002-223008(JP,A)
【文献】特開2008-007779(JP,A)
【文献】特開2016-149386(JP,A)
【文献】特開2013-251393(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0127290(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に複数のLED素子を実装する工程と、
前記LED素子からの出射光の波長を変換する蛍光体粒子の表面の少なくとも一部に被覆層を形成して構成された波長変換粒子を含有する透明または透光性の第1の樹脂を前記基板上に充填して、前記複数のLED素子を封止する工程と、
前記基板および前記第1の樹脂を切断して前記複数のLED素子を分割する工程と、
前記切断により露出した前記第1の樹脂の切断面に、前記波長変換粒子を含有しない第2の樹脂による防湿コーティングを形成する工程と、
を有することを特徴とするLEDパッケージの製造方法。
【請求項2】
前記形成する工程では、吹付けまたは蒸着により前記切断面のみに前記防湿コーティングを形成する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第2の樹脂の吸水率は1%以下である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記切断面は前記第1の樹脂の側面であり、
前記形成する工程では、前記第1の樹脂の側面に前記第2の樹脂を塗布する、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第1の樹脂の上面を研磨する工程を更に含み、
前記形成する工程では、前記第1の樹脂の上面に前記防湿コーティングを形成する、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
基板と、
前記基板上に実装されたLED素子と、
前記LED素子からの出射光の波長を変換する蛍光体粒子の表面の少なくとも一部に被覆層を形成して構成された波長変換粒子を含有し、前記基板上に充填されて前記LED素子を封止する透明または透光性の第1の樹脂と、
前記波長変換粒子を含有せず、前記第1の樹脂の表面を被覆する第2の樹脂による防湿コーティングと、を有し、
前記基板の側面及び前記第1の樹脂の側面は、同一面を形成し、
前記防湿コーティングは、前記基板及び前記第1の樹脂の側面よりも外側に配置され、
前記第1の樹脂の前記表面は、前記被覆層が切断または研磨された前記波長変換粒子の面を含み、前記波長変換粒子の面を
前記第2の樹脂で保護することを特徴とするLEDパッケージ。
【請求項7】
基板と、
前記基板上に実装されたLED素子と、
前記LED素子からの出射光の波長を変換する蛍光体粒子の表面の少なくとも一部に被覆層を形成して構成された波長変換粒子を含有し、前記基板上に充填されて前記LED素子を封止する透明または透光性の第1の樹脂と、
前記波長変換粒子を含有せず、前記被覆層が切断または研磨された前記波長変換粒子の面を被覆する第2の樹脂による防湿コーティングと、を有し、
前記基板の側面及び前記第1の樹脂の側面は、同一面を形成し、
前記防湿コーティングは、前記基板及び前記第1の樹脂の側面よりも外側に配置される、ことを特徴とするLEDパッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDパッケージおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上にLED(発光ダイオード)素子が実装され、蛍光体を含有する透光性の樹脂によりそのLED素子が封止された発光装置(LEDパッケージ)が知られている。こうした発光装置では、LED素子からの光と、LED素子からの光により蛍光体を励起させて得られる光とを混合させることにより、用途に応じて白色光などが得られる。
【0003】
特許文献1には、LED素子を多数実装した基板上のLED素子を透光性樹脂で覆い、透光性樹脂の硬化後にLED素子の中間部の透光性樹脂を除去し、それによって形成された溝部に光反射性樹脂を充填し、光反射性樹脂の硬化後に光反射性樹脂をLED素子の周囲に残すように基板を切断して個々の発光ダイオードに分離する発光ダイオードの製造方法が記載されている。
【0004】
特許文献2には、蛍光体が混入した封止用透光部材で発光素子を封止して成る複数の面発光体が基板の表面部に形成され、基板の表面上で隣り合う面発光体間に散乱用透光部材が充填され、複数の面発光体および散乱用透光部材の露出面が透光性膜でコーティングされた面発光体ユニットが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-368281号公報
【文献】特開2015-026778号公報
【発明の概要】
【0006】
蛍光体の中には、例えば熱、湿度または紫外線などの外的要因からの劣化を防止するために、蛍光体粒子の表面に被覆層が形成されたものがある。こうした蛍光体粒子をLED素子の封止樹脂に含有させ、その封止樹脂に対して切断または研磨を行って個々のLEDパッケージを製造する場合には、その切断または研磨により一部の蛍光体粒子の被覆層も切断され、封止樹脂の切断面または研磨面において蛍光体粒子の破断面が露出する。すると、被覆層による劣化防止の効果が失われるため、切断面において蛍光体粒子の劣化が起こり、時間が経つにつれて、封止樹脂が部分的に変色したり、LEDパッケージの発光色が設計したものからずれたりする。
【0007】
本発明は、表面に被覆層が形成された蛍光体粒子を含有する封止樹脂を切断または研磨したときの、切断面または研磨面における蛍光体粒子の経時劣化を防止したLEDパッケージおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
基板上に複数のLED素子を実装する工程と、LED素子からの出射光の波長を変換する蛍光体粒子の表面の少なくとも一部に被覆層を形成して構成された波長変換粒子を含有する第1の透光性樹脂を基板上に充填して複数のLED素子を封止する工程と、第1の透光性樹脂を切断する工程と、露出した切断面である第1の透光性樹脂の側面に、波長変換粒子を含有しない第2の透光性樹脂による保護層を形成する工程とを有することを特徴とするLEDパッケージの製造方法が提供される。
【0009】
上記の形成する工程では、切断する工程で個片化されたLEDパッケージにおける第1の透光性樹脂の側面に第2の透光性樹脂を塗布することが好ましい。
【0010】
上記の切断する工程では、基板を切断せずに残し、形成する工程では、切断により形成された第1の透光性樹脂の溝部に第2の透光性樹脂を充填して硬化させ、硬化した第2の透光性樹脂および基板の厚さ方向の全体を切断することにより、第1の透光性樹脂の側面が第2の透光性樹脂により被覆されかつ個片化されたLEDパッケージを得ることが好ましい。
【0011】
上記の形成する工程では、第1の透光性樹脂の上面にも保護層を形成してもよい。
【0012】
また、基板と、基板上に実装されたLED素子と、LED素子からの出射光の波長を変換する蛍光体粒子の表面の少なくとも一部に被覆層を形成して構成された波長変換粒子を含有し、基板上に充填されてLED素子を封止する第1の透光性樹脂であって、側面が切断面であり、被覆層が切断された波長変換粒子をその切断面に含む第1の透光性樹脂と、波長変換粒子を含有せず、第1の透光性樹脂の切断面を被覆する第2の透光性樹脂による保護層とを有することを特徴とするLEDパッケージが提供される。
【0013】
また、基板上に複数のLED素子を実装する工程と、LED素子からの出射光の波長を変換する蛍光体粒子の表面の少なくとも一部に被覆層を形成して構成された波長変換粒子を含有する透明または透光性の第1の樹脂を基板上に充填して、複数のLED素子を封止する工程と、第1の樹脂の切断または研磨を行う工程と、切断により露出した第1の樹脂の切断面または第1の樹脂における研磨が行われた面に、波長変換粒子を含有しない第2の樹脂による保護層を形成する工程とを有することを特徴とするLEDパッケージの製造方法が提供される。
【0014】
切断または研磨を行う工程では、第1の樹脂を切断し、切断面は第1の樹脂の側面であり、形成する工程では、第1の樹脂の側面に第2の樹脂を塗布することが好ましい。
【0015】
切断または研磨を行う工程では、第1の樹脂を切断するとともに基板を切断せずに残し、切断面は第1の樹脂の側面であり、形成する工程では、第1の樹脂の切断により形成された第1の樹脂の溝部に第2の樹脂を充填して硬化させ、硬化した第2の樹脂および基板の厚さ方向の全体を切断することにより、第1の樹脂の側面が第2の樹脂により被覆されかつ個片化されたLEDパッケージを得ることが好ましい。
【0016】
切断または研磨を行う工程では、第1の樹脂の上面を研磨し、形成する工程では、第1の樹脂の上面に保護層を形成してもよい。
【0017】
複数のLED素子のそれぞれは、青色光を出射する青色LED素子であり、蛍光体粒子は、青色光の一部を吸収して赤色光を発するKSF蛍光体であることが好ましい。
【0018】
また、基板と、基板上に実装されたLED素子と、LED素子からの出射光の波長を変換する蛍光体粒子の表面の少なくとも一部に被覆層を形成して構成された波長変換粒子を含有し、基板上に充填されてLED素子を封止する透明または透光性の第1の樹脂と、波長変換粒子を含有せず、第1の樹脂の表面を被覆する第2の樹脂による保護層とを有し、第1の樹脂の表面は、被覆層が切断された波長変換粒子の破断面を含むことを特徴とするLEDパッケージが提供される。
【0019】
第2の樹脂は散乱材を含有することが好ましい。
【0020】
第2の樹脂は透明または透光性の樹脂であることが好ましい。
【0021】
上記のLEDパッケージおよびその製造方法によれば、表面に被覆層が形成された蛍光体粒子を含有する封止樹脂を切断または研磨したときの、切断面または研磨面における蛍光体粒子の経時劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】(A)~(C)は、LEDパッケージ1の製造工程を説明するための図である。
【
図3】
図1のIII-III線に沿ったLEDパッケージ1の断面図である。
【
図5】(C)~(E)は、LEDパッケージ2の製造工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、LEDパッケージおよびその製造方法を説明する。ただし、本発明は図面または以下に記載される実施形態には限定されないことを理解されたい。
【0024】
図1は、LEDパッケージ1の斜視図である。LEDパッケージ1は、発光素子としてLED素子を含み、蛍光体による波長変換を利用して白色光などを出射する発光装置であり、例えば各種の照明用のLED光源として利用される。LEDパッケージ1は、主要な構成要素として、実装基板10、LED素子20、封止樹脂30および透明樹脂膜40を有する。なお、LED素子20の個数は1個に限らず、LEDパッケージは、実装基板10上に複数のLED素子20が実装されたものであってもよい。
【0025】
実装基板10は、LED素子20を外部電源に接続するための図示しない2つの接続電極を有し、上面にLED素子20が実装される基板である。例えば、実装基板10は、セラミック基板であってもよいし、耐熱性および放熱性に優れたアルミニウムまたは銅などの金属基板と、LED素子20の配線パターンおよび接続電極が形成された絶縁性の回路基板とを貼り合わせたものであってもよい。あるいは、実装基板10は、LED素子20が実装され封止樹脂30が充填される凹部を有し、LED素子20を外部電源に接続するための2つのリード電極が設けられたLEDパッケージの基体であってもよい。
【0026】
LED素子20は、例えば、紫外域から青色領域にわたる波長の光を出射する窒化ガリウム系化合物半導体などで構成された素子である。以下では、LED素子20は、発光波長帯域が450~460nm程度の青色光を発光する青色LED素子であるとして説明するが、LED素子20は、他の波長の光を出射する素子であってもよい。LED素子20は実装基板10の上面にダイボンディングによって実装され、LED素子20の正負の電極は、2本のボンディングワイヤ21(以下、単にワイヤ21という)により、実装基板10上の接続電極に電気的に接続されている。LEDパッケージが複数のLED素子20を有する場合には、LED素子20同士もワイヤ21によって電気的に接続される。
【0027】
封止樹脂30は、第1の樹脂(または第1の透光性樹脂)の一例であり、透明であるか、または透光性を有する。透光性とは、完全に透明ではないが半透明で光を通すという意味である。封止樹脂30は、LED素子20からの出射光の波長を変換する蛍光体粒子(波長変換粒子)を含有し、実装基板10の上に充填されてLED素子20およびワイヤ21を一体的に封止する。蛍光体粒子は、封止樹脂30内に一様に分散していてもよいし、封止樹脂30内で下方に行くほど濃度が高くなるように、実装基板10の上面近くに沈降していてもよい。封止樹脂30は、例えば、エポキシ樹脂またはシリコーン樹脂などで構成される。
【0028】
封止樹脂30が含有する蛍光体は、1種類でも複数種類でもよい。例えば、封止樹脂30は、黄色蛍光体であるYAG蛍光体および赤色蛍光体であるKSF蛍光体を含有する。このうち、KSF蛍光体(K2SiF6:Mn4+)は、LED素子20が出射する青色光の一部を吸収して、610~650nmの波長域にピークをもつ赤色光を発する。この場合、LEDパッケージ1は、LED素子20からの青色光と、それによって黄色蛍光体および赤色蛍光体を励起させて得られる黄色光および赤色光とを混合させることで得られる白色光を出射する。
【0029】
透明樹脂膜40は、第2の樹脂(または第2の透光性樹脂)による保護層の一例であり、蛍光体粒子を含有せず、封止樹脂30の四方の側面を被覆する。後述するように、封止樹脂30の側面は、LEDパッケージ1の製造時に形成された切断面であり、透明樹脂膜40は、封止樹脂30の切断面に塗布された防湿コーティングである。なお、封止樹脂30の上面(実装基板10とは反対側の面)は切断面ではないため、透明樹脂膜40は、封止樹脂30の上面には設けられていない。透明樹脂膜40も、例えば、エポキシ樹脂またはシリコーン樹脂などで構成される。封止樹脂30と透明樹脂膜40の材質は、同じでもよいし、異なっていてもよい。また、封止樹脂30と透明樹脂膜40の光透過率は80%以上であり、吸水率は1%以下であることが好ましい。
【0030】
図2(A)~
図2(C)は、LEDパッケージ1の製造工程を説明するための図である。LEDパッケージ1の製造時には、まず、
図2(A)に示すように、実装基板10の上面にダイボンディングにより複数のLED素子20が固定され、各LED素子20の正負の電極が実装基板10上の接続電極にワイヤボンディングにより接続される(実装工程)。続いて、
図2(B)に示すように、上記の蛍光体を含有する封止樹脂30が実装基板10の上面に充填されて、各LED素子20およびそのワイヤ21が一体的に封止される(封止工程)。このとき、封止樹脂30を未硬化の状態に保ったまま、例えば数時間かけて封止樹脂30内の蛍光体を実装基板10およびLED素子20の上面に自然沈降させてから、封止樹脂30を硬化させてもよい。
【0031】
その後で、
図2(C)に示すように、切断線Lに沿って実装基板10および封止樹脂30が縦横に切断されて、複数のLED素子20が分割される(切断工程)。その上で、個片化されたLEDパッケージごとに、露出した切断面である封止樹脂30の側面に、例えば吹付けまたは蒸着などの方法により、透明樹脂膜40が塗布される(保護層の形成工程)。これにより、
図1に示すLEDパッケージ1が完成する。
【0032】
図3は、
図1のIII-III線に沿ったLEDパッケージ1の断面図である。
図3では、封止樹脂30の切断面の状態を説明するために、KSF蛍光体の粒子を誇張して図示しており、各要素の大きさの関係は必ずしも正確ではない。KSF蛍光体は水溶性であり、YAG蛍光体などと比べて耐湿性が低いため、
図3に拡大して示すように、KSF蛍光体の粒子61の表面には、被覆層(防湿コーティング)62が形成されている。以下では、被覆層62が形成された蛍光体粒子61のことを、便宜的に「波長変換粒子60」ともいう。
【0033】
LEDパッケージ1の製造時の切断工程において封止樹脂30が切断されると、
図3に示すように、封止樹脂30の側面では、被覆層62が切断された波長変換粒子60の破断面が露出する。KSF蛍光体は耐湿性が低く、このように波長変換粒子60自体が切断されることにより被覆層62の効果が失われる。このため、そのまま放置すると、空気中の水分などに起因してその切断面に含まれるKSF蛍光体が劣化して、出射光の色が設計したものとは異なる色になる。特に、封止樹脂30内で蛍光体粒子を沈降させる場合には、実装基板10の上面付近に蛍光体粒子が密集し、その部分が切断されるため、KSF蛍光体の劣化がより顕著に発生し得る。
【0034】
しかしながら、LEDパッケージ1では、封止樹脂30の切断面に透明樹脂膜40が塗布されていることにより、切断工程で波長変換粒子60の破断面が露出したとしても、その破断面は透明樹脂膜40によって覆われるので、外気には触れない。また、封止樹脂30の上面は切断面ではないため、波長変換粒子60の破断面が露出することはない。このため、LEDパッケージ1では、経時劣化し易いKSF蛍光体を使用する場合でも蛍光体の劣化が防止され、発光色の変色が防止される。また、透明樹脂膜40は光透過率の高い樹脂であるため、透明樹脂膜40が付加されていても、LEDパッケージ1の明るさの低下はほとんど起こらない。
【0035】
図4は、LEDパッケージ2の斜視図である。LEDパッケージ2は、主要な構成要素として、実装基板10、LED素子20、封止樹脂30および透明樹脂壁50を有する。LEDパッケージ2は、LEDパッケージ1の透明樹脂膜40が透明樹脂壁50に置き換えられている点を除けば、
図1のLEDパッケージ1と同じ構成を有する。
【0036】
透明樹脂壁50は、第2の樹脂(または第2の透光性樹脂)による保護層の一例であり、透明樹脂膜40と同様に、蛍光体粒子を含有せず、封止樹脂30の四方の側面を被覆する。透明樹脂壁50は、例えばLEDパッケージ1の透明樹脂膜40と同じ樹脂で構成されるが、透明樹脂膜40よりも側方の厚さが大きく、封止樹脂30を取り囲む枠樹脂に相当する。また、透明樹脂壁50についても、光透過率は80%以上であり、吸水率は1%以下であることが好ましい。
【0037】
図5(C)~
図5(E)は、LEDパッケージ2の製造工程を説明するための図である。LEDパッケージ2の製造時には、まず、実装基板10の上面に複数のLED素子20が実装され、上記の蛍光体を含有する封止樹脂30で各LED素子20およびワイヤ21が封止される。これらの工程に対応する図は、LEDパッケージ1についての
図2(A)および
図2(B)と同じであるため、ここでは図示を省略する。
【0038】
続いて、
図5(C)に示すように、例えば、実装基板10を残して封止樹脂30の厚さ方向の全体が削り取られて、溝部31が形成される。その上で、
図5(D)に示すように、封止樹脂30の溝部31に透明樹脂が充填され、その透明樹脂を硬化させることで透明樹脂壁50が形成される。さらに、
図5(E)に示すように、切断線Lに沿って透明樹脂壁50および実装基板10の厚さ方向の全体が切断されて、複数のLED素子20が分割される。これにより、
図4に示すLEDパッケージ2が完成する。
【0039】
LEDパッケージ2でも、LEDパッケージ1と同様に、経時劣化し易いKSF蛍光体を使用する場合でも蛍光体の劣化が防止され、発光色の変色が防止される。また、透明樹脂壁50は光透過率の高い樹脂であるため、LEDパッケージ2は側面からも光を出射することができ、広い指向性が確保される。
【0040】
個片化のための切断に限らず、LEDパッケージの製造時に、封止樹脂30を切断する工程か、または封止樹脂30の表面を研磨する工程があるならば、封止樹脂30の切断面または研磨面に保護層を形成することで、同様に蛍光体の劣化防止と発光色の変色防止の効果が得られる。
【0041】
図6は、LEDパッケージ3の断面図である。
図6では、
図3と同様に、LEDパッケージ3の鉛直方向の切断面を示している。LEDパッケージ3は、主要な構成要素として、実装基板10、LED素子20、封止樹脂30および透明樹脂膜40’を有する。LEDパッケージ3は、封止樹脂30の上面にも透明樹脂膜40’が設けられている点が
図1のLEDパッケージ1とは異なり、その他の点ではLEDパッケージ1と同じ構成を有する。
【0042】
透明樹脂膜40’は、第2の樹脂(または第2の透光性樹脂)による保護層の一例であり、蛍光体粒子を含有せず、封止樹脂30の四方の側面および封止樹脂30の上面を被覆する。LEDパッケージ3のように、蛍光体の劣化防止のための保護層は、封止樹脂30の側面だけでなく、封止樹脂30の露出面全体を被覆するように形成されていてもよい。例えば、LEDパッケージの製造時に封止樹脂30の上面を研磨する場合には、その研磨により生じた波長変換粒子60の破断面が封止樹脂30の上面に露出するので、封止樹脂30の上面にも透明樹脂膜40’を形成するとよい。
【0043】
なお、透明樹脂膜40よりも厚さが大きいLEDパッケージ2の透明樹脂壁50についても、封止樹脂30の四方の側面と封止樹脂30の上面とを被覆するように形成してもよい。
【0044】
図7は、LEDパッケージ4の断面図である。
図7でも、
図3と同様に、LEDパッケージ4の鉛直方向の切断面を示している。LEDパッケージ4は、LEDパッケージ1,3の透明樹脂膜40,40’が透明樹脂膜40’’に置き換えられている点が
図1,6のLEDパッケージ1,3とは異なり、その他の点ではLEDパッケージ1,3と同じ構成を有する。LEDパッケージ4の透明樹脂膜40’’は、第2の樹脂(または第2の透光性樹脂)による保護層の一例であり、封止樹脂30の上面のみに設けられている。LEDパッケージの製造時に、封止樹脂30の側面を切断する工程がなく、封止樹脂30の上面を研磨する工程があるならば、LEDパッケージ4のように、波長変換粒子60の破断面が露出する封止樹脂30の上面のみに透明樹脂膜40’’を形成してもよい。
【0045】
図8は、LEDパッケージ5の断面図である。
図8でも、
図3と同様に、LEDパッケージ5の鉛直方向の切断面を示している。LEDパッケージ5は、LEDパッケージ4の実装基板10がリードフレーム10’に置き換えられている点が
図7のLEDパッケージ4とは異なり、その他の点ではLEDパッケージ4と同じ構成を有する。
【0046】
リードフレーム10’は、LED素子20が載置されるダイパッド11と、ダイパッド11から離間した端子部12,13とを有する。ダイパッド11と端子部12の間、およびダイパッド11と端子部13の間には、それぞれ絶縁樹脂35が充填されている。これにより、ダイパッド11と端子部12とは互いに電気的に絶縁され、ダイパッド11と端子部13とも互いに電気的に絶縁されている。端子部12,13は、それぞれ断面略J字状に湾曲しており、端子部12の端部にはアウターリード部14が形成され、端子部13の端部にはアウターリード部15が形成されている。LED素子20は、ダイパッド11の載置面11a上に載置され、ワイヤ21を介して端子部12,13に電気的に接続されている。
【0047】
LEDパッケージ5の製造時には、封止樹脂30の側面を切断する工程はないが、封止樹脂30の上面を研磨することがある。このため、波長変換粒子60の破断面が露出する封止樹脂30の上面に、透明樹脂膜40’’が形成されている。上面に限らず、封止樹脂30の側面を研磨する場合にも、その研磨面に同様に透明樹脂膜が形成されていればよい。
【0048】
透明樹脂膜40,40’,40’’および透明樹脂壁50は、完全に透明なものに限らず、透光性を有する半透明の樹脂であってもよい。特に、LEDパッケージ2では、上方に光を出射させたい場合には、透明樹脂壁50を白色樹脂壁に替えてもよい。また、特に、封止樹脂30の上面を覆う透明樹脂膜40’,40’’は、散乱材を含有してもよい。散乱材を用いれば、透明樹脂膜内で光が拡散することで、封止樹脂30の上面全体を一様に発光させることが可能である。
【0049】
なお、KSF蛍光体以外の蛍光体を使用する場合でも、その蛍光体が粒子表面に劣化防止の被覆層が形成されたものであり、かつLEDパッケージの製造時に封止樹脂30を切断または研磨する工程があるならば、LEDパッケージ1~5と同様に透明樹脂膜40,40’,40’’または透明樹脂壁50を形成することにより、蛍光体の劣化防止と発光色の変色防止の効果が得られる。
【0050】
また、LED素子20の実装方法は、ワイヤボンディングに限らず、フリップチップであってもよい。また、LEDパッケージ1~5とは異なり、例えばLED素子20の上面に波長変換用の蛍光体板を載置する場合であっても、その蛍光体板の表面が切断面または研磨面であるならば、その表面に同様に透明樹脂膜または透明樹脂壁を形成することにより、蛍光体の劣化防止と発光色の変色防止の効果が得られる。