IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエーの特許一覧

特許7164591NOXおよびN20の変換における触媒およびその使用方法
<>
  • 特許-NOXおよびN20の変換における触媒およびその使用方法 図1
  • 特許-NOXおよびN20の変換における触媒およびその使用方法 図2
  • 特許-NOXおよびN20の変換における触媒およびその使用方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】NOXおよびN20の変換における触媒およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/80 20060101AFI20221025BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20221025BHJP
   B01D 53/90 20060101ALI20221025BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20221025BHJP
   B01J 37/30 20060101ALI20221025BHJP
   C01B 39/46 20060101ALI20221025BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20221025BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
B01J29/80 A
B01D53/86 222
B01D53/90 ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 400
B01J37/30
C01B39/46
F01N3/08 B
F01N3/10 A
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020501313
(86)(22)【出願日】2018-07-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 US2018041275
(87)【国際公開番号】W WO2019014115
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-07-02
(31)【優先権主張番号】62/530,880
(32)【優先日】2017-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002105
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー,スティーブン・ラッセル
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ウェンジョン
(72)【発明者】
【氏名】バッケル,ヘールト・マルテン
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-526388(JP,A)
【文献】特表2013-512086(JP,A)
【文献】特表2015-505290(JP,A)
【文献】特表2014-515723(JP,A)
【文献】特表2016-500562(JP,A)
【文献】特表2013-526406(JP,A)
【文献】特表2015-510484(JP,A)
【文献】特表2010-536692(JP,A)
【文献】特表2014-530097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/73 - 53/96
C01B 33/20 - 39/54
F01N 3/00 - 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄チャバザイト型の合成アルミノシリケートゼオライトおよび鉄ベータゼオライトを含むNOおよびNOの変換のための触媒。
【請求項2】
アルミナをさらに含む、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記鉄チャバザイト型の合成アルミノシリケートゼオライトが、該合成アルミノシリケートゼオライトの細孔内に残留有機材料を一切含まない、請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
前記鉄チャバザイト型の合成アルミノシリケートゼオライトが、3~5オングストロームの細孔開口を有する、請求項3に記載の触媒。
【請求項5】
前記鉄チャバザイト型の合成アルミノシリケートゼオライトが、3~10のシリカ対アルミナ比を有する、請求項4に記載の触媒。
【請求項6】
前記鉄チャバザイト型の合成アルミノシリケートゼオライトが、0.3以上10ミクロン未満の平均結晶サイズを有する、請求項5に記載の触媒。
【請求項7】
前記鉄チャバザイト型の合成アルミノシリケートゼオライトが、0.3~5.0ミクロンの平均結晶サイズを有する、請求項6に記載の触媒。
【請求項8】
前記鉄チャバザイト型の合成アルミノシリケートゼオライトが、0.5~5.0重量%の鉄を含む、請求項7に記載の触媒。
【請求項9】
前記鉄ベータゼオライトが、該鉄ベータゼオライトの細孔内に残留有機材料を一切含まない、請求項8に記載の触媒。
【請求項10】
前記鉄ベータゼオライトが、5~20のシリカ対アルミナ比を有する、請求項9に記載の触媒。
【請求項11】
前記鉄ベータゼオライトが、5~11のシリカ対アルミナ比を有する、請求項10に記載の触媒。
【請求項12】
前記鉄ベータゼオライトが、少なくとも0.5重量%の鉄を含む、請求項11に記載の触媒。
【請求項13】
前記鉄ベータゼオライトが、1~10重量%の鉄を含む、請求項12に記載の触媒。
【請求項14】
前記鉄ベータゼオライトが、0.1ミクロン超の平均結晶サイズを有する、請求項13に記載の触媒。
【請求項15】
前記鉄ベータゼオライトが、0.2~5ミクロンの平均結晶サイズを有する、請求項14に記載の触媒。
【請求項16】
プロセスガス流中のNおよびNO濃度を同時に低減する方法であって、前記プロセスガス流を、変換条件下で鉄チャバザイト型の合成アルミノシリケートゼオライトおよび鉄ベータゼオライトを含む触媒と接触させることを含む、方法。
【請求項17】
前記プロセスガスが前記触媒と接触する前にまたはそれと同時に、アンモニア、尿素、またはアンモニア発生化合物を前記プロセスガスに添加することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記アンモニア発生化合物が、カルバミン酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、および金属アミン錯体からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記アンモニア対NOの比が1:1である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記接触させることが、少なくとも0.5体積%の水の存在下で実施される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記接触させることが、少なくとも2体積%の水の存在下で実施される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記変換条件が、250~650℃の範囲の温度を含む、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年7月11日出願の米国仮出願第62/530,880号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、プロセスガス流中のNOおよびNO濃度を同時に低減する触媒および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
一酸化窒素および亜酸化窒素は汚染ガスとして知られており、大気中に進入するこれらの化合物の量を制限する努力がなされている。これらは、多くの産業プロセス中の排気ガスおよびプロセスガス流に見い出される。加えて、これらは、車、トラック、バスなどの移動車両の排気ガスに見い出される。選択的触媒還元は、亜酸化窒素および一酸化窒素を窒素および水に変換することにより、これらの化合物をプロセスガス流から除去するための既知の方法である。
【0004】
US20110286914は、シリカ対アルミナ比が5~20の範囲であり、金属含有量が少なくとも0.5重量%の有機物不含金属含有ゼオライトベータを開示している。この公開されている特許出願はまた、ゼオライトベータを使用する排気ガス中の窒素酸化物の選択的触媒還元の方法を開示している。
【0005】
US20130142727は、3~5オングストロームの範囲の細孔開口を有する微細孔性結晶材料を開示しており、この材料は、アルカリ土類、希土類、アルカリ類、またはそれらの混合物から選択される第1の金属と、鉄、銅、またはそれらの混合物から選択される第2の金属とを含み、シリカ対アルミナのモル比が3~10である。この公開されている特許出願は、排気ガス中の窒素酸化物の選択的触媒還元の方法も開示している。
【0006】
この反応においてより効果的でより安定な改善された触媒を開発して、保守または触媒の取替を行うことなくユニットをより長い期間にわたって操作できるようにすることが有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願公開第2011/0286914号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/0142727号明細書
【発明の概要】
【0008】
本発明は、鉄チャバザイトおよび鉄ベータゼオライトを含むNOおよびNOの変換のための触媒を提供する。
【0009】
本発明は、プロセスガス流中のNOおよびNO濃度を同時に低減する方法を提供し、本方法は、プロセスガス流を、変換条件下で鉄チャバザイトおよび鉄ベータゼオライトを含む触媒と接触させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】3種の異なる触媒のN2O分解を図示する。
図2】鉄チャバザイトおよび鉄ベータゼオライトを含む触媒のNO分解およびNO変換を図示する。
図3】鉄チャバザイトおよび鉄ベータゼオライトを含む触媒の水熱安定性を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、NOおよびNOの変換のための改善された触媒を提供する。本触媒は、鉄チャバザイトおよび鉄ベータゼオライトを含む。
【0012】
ベータゼオライトは、有機構造指向剤なしで作製されることが好ましい。得られたベータゼオライトは材料の細孔に残留有機材料を一切含まないため、有機成分を除去するために通常必要とされる処理が不要である。従来技術の触媒では、水酸化テトラエチルアンモニウム、ジベンジルメチルアンモニウム、および水酸化ジベンジルジメチルアンモニウムなどの有機構造指向剤が前駆体材料に使用されていた。これらの化合物のコストと、それらが製造後に細孔内に残留するのが常であるという事実とは、これらのベータゼオライト材料の合成における問題である。
【0013】
ベータゼオライトは、好ましくは、シリカ対アルミナ比が5~20である。シリカ対アルミナ比は、好ましくは12以下、より好ましくは5~11の範囲である。ベータゼオライトは、平均結晶サイズが、好ましくは0.1ミクロン超、より好ましくは0.2~5ミクロンである。
【0014】
上記のベータゼオライトを使用する鉄ベータゼオライトは、好ましくは少なくとも0.5重量%の鉄、より好ましくは1~10重量%の鉄を含む。本触媒はまた、アルミナを含有してもよい。
【0015】
鉄は、好ましくは、液相もしくは固体イオン交換、含浸、または直接合成による組み込みを含む、1つ以上の方法によって、触媒成分(チャバザイトおよびベータゼオライト)に添加される。好ましい実施形態では、鉄は、好ましくはイオン交換によって添加される。
【0016】
イオン交換法で使用される鉄は、典型的には鉄塩であり、これは、硝酸第二鉄、塩化第二鉄、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、またはそれらの混合物であってもよい。
【0017】
ベータゼオライトを作製するための1つの方法は、NaOHおよびアルミナ源を含む水溶液を作製することから始まる。アルミナ源は、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、硝酸アルミニウム、アルミニウムアルコラート、または硫酸アルミニウムであってもよい。次に、シリカ源を溶液に添加する。シリカは、シリカゲル、シリカゾル、シリカヒドロゾル、ヒュームドシリカ、反応性非晶質固体シリカ、ケイ酸、水ガラス、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、コロイド状ケイ酸塩、焼成シリカ、沈降ケイ酸塩、シリカアルミナ、および他の類似の材料を含んでもよい。次に、ベータゼオライト源を添加し、混合物を混合してゲルを形成する。ベータゼオライト源は、市販のベータゼオライトであってもよい。ゲルを加熱して生成物を形成し、このステップを所望の結晶サイズおよび純度が達成されるまで実施する。加熱は、ゲルを100~200℃の範囲の温度で最長200時間加熱することを含んでもよい。結晶化した材料が形成されたら、分離、洗浄、および乾燥によって処理してもよい。分離は、濾過、遠心分離、またはデカントを含む、当業者に既知のいいずれの方法によって実施してもよい。洗浄は、水またはアルコールを含むいずれの既知の薬剤を用いて実施してもよい。加えて、ナトリウムを、例えばイオン交換によってゼオライトから除去してもよい。
【0018】
別の実施形態では、ベータゼオライトは、種晶、SiO源、およびAl源の混合物を調製し、混合物を結晶化することによって作製してもよい。種晶はベータゼオライト結晶であってもよい。
【0019】
チャバザイトはまた、有機構造指向剤なしで作製されることが好ましい。これにより、鉄ベータゼオライトに関して上述したのと類似した利点がもたらされる。チャバザイトは、ナトリウム、カリウム、アルミナ、シリカ、および水の供給源を混合してゲルを形成し、次にそのゲルを80~200℃の範囲の温度で加熱することにより作製してもよい。次に、形成された結晶生成物をアンモニウム交換することができる。
【0020】
有機構造指向剤なしで調製されたチャバザイトは、好ましくは3~5オングストロームの細孔開口を有する。チャバザイトは、好ましくは、シリカ対アルミナ比が3~10である。チャバザイトは、平均結晶サイズが、好ましくは0.3~10ミクロン、好ましくは0.3~5.0ミクロンである。
【0021】
上記のチャバザイトを使用する鉄チャバザイトは、好ましくは0.5~5.0重量%の鉄を含む。鉄は、液相または固体イオン交換によって添加されてもよい。あるいは、鉄は、含浸によって添加されてもよいし、またはゼオライト合成ステップ中に添加されてもよい。
【0022】
鉄チャバザイトおよび鉄ベータゼオライトを含む触媒は、チャネル型もしくはハニカム型の金属板型または波板型の触媒形態であってもよい。あるいは、触媒は、ボール、礫、ペレット、タブレット、または押出物を含んでもよい充填層として存在してもよい。触媒はミクロスフェアの形態で存在してもよい。
【0023】
触媒は、ゼオライト材料の微粉末のスラリーを創出することによって形成されてもよく、その後、これを好適な結合剤と混合する。結合剤は、アルミナ、ベントナイト、シリカ、またはシリカアルミナを含んでもよい。次いで、スラリーを、ハニカムまたは複数のチャネルを備えた他の形状の形態で好適な基材上に堆積させてもよい。
【0024】
触媒は、鉄チャバザイトおよび鉄ベータゼオライトのブレンド、各層が個々の鉄チャバザイトもしくは鉄ベータゼオライト成分を含む複数の層、または各ゾーンが個々の鉄チャバザイトもしくは鉄ベータゼオライトを含む複数のゾーンを含んでもよい。触媒のブレンドは、ブレンドの体積全体にわたって互いに対する割合がほぼ同じである、鉄チャバザイトと鉄ベータゼオライトとの両方の体積を含んでもよい。別の実施形態では、触媒のブレンドは、複数の層またはゾーンに配置されてもよい。
【0025】
触媒は、プロセスガス流中のNOおよびNO濃度を同時に低減するための方法に使用することができる。プロセスにおいて、プロセスガス流は、変換条件下で触媒と接触する。変換条件には、250~650℃の範囲の温度が含まれてもよい。
【0026】
プロセスガスが触媒と接触する前にまたはそれと同時に、アンモニア、尿素、またはアンモニア発生化合物をプロセスガスに添加してもよい。アンモニア発生化合物は、カルバミン酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、または金属アミン錯体であってもよい。
【0027】
アンモニアに加えて、水の存在下で接触を行ってもよい。水は、プロセスガス、アンモニア、および水流を合わせたパーセンテージとして計算して、少なくとも0.5体積%、好ましくは少なくとも2体積%の量で存在してもよい。
【実施例
【0028】
比較例1
この例では、ある温度範囲でのNO変換を決定するために触媒を試験した。触媒は鉄チャバザイト触媒であった。試験条件は、9バールの圧力および40,000hr-1のGHSVで構成された。触媒を通過したガス混合物は、750ppmvのNO、400ppmvのNO、0.5体積%の酸素で構成され、残りは窒素であった。この例で測定された変換を図1に示す。
【0029】
比較例2
この例では、実施例1に記載したのと同じ条件下で、第2の触媒を試験した。触媒は鉄ベータゼオライト触媒であった。この例で測定された変換を図1に示す。
【0030】
実施例3
この実施例では、実施例1に記載したのと同じ条件下で、第3の触媒を試験した。触媒は鉄チャバザイト触媒と鉄ベータゼオライト触媒との両方を含んだ。この実施例で測定された変換を図1に示す。図1から分かるように、この触媒は、実施例1の触媒または実施例2の触媒のいずれよりも活性が高い。
【0031】
実施例4
この実施例では、鉄チャバザイトと鉄ベータゼオライトとの両方を含む触媒に対するNOの分解およびNOの変換が実証される。試験は、9バールの圧力および20,800hr-1のGHSVで実施した。触媒を通過したガス混合物は、1000ppmvのNO、400ppmvのNO、400ppmvのNH3、0.5体積%の水、2体積%の酸素で構成され、残りは窒素であった。400~550℃の範囲のいくつかの温度にわたるNO分解およびNO変換を図2に示す。
【0032】
実施例5
この実施例では、鉄チャバザイトおよび鉄ベータゼオライトを含む触媒の水熱安定性が実証される。触媒を、周囲圧力および100,000hr-1のGHSVで試験した。触媒を通過したガス混合物は、200ppmvのNO、300ppmvのNH3、11体積%の水、7.5体積%の酸素で構成され、残りは窒素であった。図3は、新しい触媒と、16時間および26時間かけて11%の水により760℃で水熱老化した後の同じ触媒とを使用したNOの変換を図示する。本触媒は、水熱老化後でも極めて安定である。
図1
図2
図3