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特許7164601修飾反応組成物を用いるSSZ-39の合成方法
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  • 特許-修飾反応組成物を用いるSSZ-39の合成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】修飾反応組成物を用いるSSZ-39の合成方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
C01B39/48
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020519021
(86)(22)【出願日】2018-06-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-20
(86)【国際出願番号】 US2018038237
(87)【国際公開番号】W WO2018236836
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2020-02-12
(31)【優先権主張番号】62/521,949
(32)【優先日】2017-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/685,059
(32)【優先日】2018-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512110499
【氏名又は名称】セイケム インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】モールトン,ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】リトル,チャールズ ビー.
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05958370(US,A)
【文献】国際公開第2016/166245(WO,A1)
【文献】特開2017-081809(JP,A)
【文献】特開2015-134698(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0264428(US,A1)
【文献】特開2017-039638(JP,A)
【文献】特表平11-502804(JP,A)
【文献】DUSSELIER, M. et al.,CHEMISTRY OF MATERIALS,米国,2015年03月30日,Vol.27,pp.2695-2702
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20 - 39/54
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
純度90重量%以上のSSZ-39ゼオライトを製造する方法であって:
少なくとも一つのケイ素の酸化物;
フォージャサイト;
少なくとも一つの、SSZ-39ゼオライト製造用の有機構造指向剤(OSDA);
少なくとも一つの、SSZ-39ゼオライト製造用のOSDAではない孔充填剤(PFA);
アルカリ金属水酸化物;および
水、
を含む水性反応混合物を形成する工程;および
該反応混合物を、純度90重量%以上のSSZ-39ゼオライトの結晶を形成するのに十分な結晶化条件下で水熱的に処理する工程、
を含み、
前記少なくとも一つのOSDAが、N,N-ジメチル-3,5-ジメチルピペリジニウムヒドロキシド(PIPPY)を含み、
前記少なくとも一つのPFAが
4,4-ジメチルモルホリニウムヒドロキシド、
テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、
ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(BnTMAH)、
ジエチルジメチルアンモニウムヒドロキシド(DEDMAH)、
ジイソプロピルジメチルアンモニウムヒドロキシド(DiPDMAH)、
ジメチルジプロピルアンモニウムヒドロキシド(DMDPAH)、
メチルトリエチルアンモニウムヒドロキシド(MTEAH)、
テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、
メチルトリブチルアンモニウムヒドロキシド(MTBAH)、
メチルトリプロピルアンモニウムヒドロキシド(MTPAH)、
テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、
1,1-ジエチルピロリジニウムヒドロキシド、
1,1-ジプロピルピロリジニウムヒドロキシド、
1-ブチル-1-メチルピペリジニウムヒドロキシド、
テトラプロピルホスホニウムヒドロキシド(TPPOH)、
から選択されるものの一つ、またはそれらの二つ以上の混合物を含み、
前記水性反応混合物の成分比は、
Si/Alが15~90、
O/Siが3~40、
OH /Siが0.4~0.8(但し、OH /Siは、OSDA、PFAおよびアルカリ金属水酸化物を含む全ての供給源からのヒドロキシドを含む)、および
/Siが0.03~0.25(但し、Q =OSDA+PFA)
を満たす、方法。
【請求項2】
前記少なくとも一つのSSZ-39ゼオライト製造用のOSDAが、シス-PIPPYおよびトランス-PIPPYから選択される一つ、または二つの混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも一つのSSZ-39ゼオライト製造用のOSDAが、シス-PIPPYおよびトランス-PIPPYの混合物であって、該トランス-PIPPYの含有量が20重量%を超える、混合物である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記水性反応混合物が、種晶量のSSZ-39ゼオライトを、該水性反応混合物中で用いるシリカおよびフォージャサイトの重量に基づいて0.1%~10%の量でさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも一つのケイ素の酸化物が、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、ケイ酸ナトリウム、シリカヒドロゲル、ケイ酸、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、TEOS以外のテトラ-低級-(C-C)-アルキルオルトシリケート、およびシリカヒドロキシドのうちの一つ、または二つ以上の混合物を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも一つのケイ素の酸化物;
フォージャサイト;
少なくとも一つの、SSZ-39ゼオライト製造用の有機構造指向剤(OSDA);
少なくとも一つの、SSZ-39ゼオライト製造用のOSDAではない孔充填剤(PFA);
アルカリ金属水酸化物;および

含む水性反応組成物であって、
前記少なくとも一つのOSDAが、N,N-ジメチル-3,5-ジメチルピペリジニウムヒドロキシド(PIPPY)を含み、
前記少なくとも一つのPFAが
4,4-ジメチルモルホリニウムヒドロキシド、
テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、
ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(BnTMAH)、
ジエチルジメチルアンモニウムヒドロキシド(DEDMAH)、
ジメチルジプロピルアンモニウムヒドロキシド(DMDPAH)、
ジイソプロピルジメチルアンモニウムヒドロキシド(DiPDMAH)、
メチルトリエチルアンモニウムヒドロキシド(MTEAH)、
テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、
メチルトリブチルアンモニウムヒドロキシド(MTBAH)、
メチルトリプロピルアンモニウムヒドロキシド(MTPAH)、
テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、
1,1-ジエチルピロリジニウムヒドロキシド、
1,1-ジプロピルピロリジニウムヒドロキシド、
1-ブチル-1-メチルピペリジニウムヒドロキシド、
テトラプロピルホスホニウムヒドロキシド(TPPOH)、
から選択されるものの一つ、またはそれらの二つ以上の混合物を含み、
前記水性反応組成物の成分比は、
Si/Alが15~90、
O/Siが3~40、
OH /Siが0.4~0.8(但し、OH /Siは、OSDA、PFAおよびアルカリ金属水酸化物を含む全ての供給源からのヒドロキシドを含む)、および
/Siが0.03~0.25(但し、Q =OSDA+PFA)
を満たす、
純度90重量%以上のSSZ-39ゼオライト製造用水性反応組成物。
【請求項7】
前記少なくとも一つのSSZ-39ゼオライト製造用のOSDAが、シス-PIPPYおよびトランス-PIPPYから選択される一つ、または二つの混合物である、請求項6に記載のSSZ-39ゼオライト製造用水性反応組成物。
【請求項8】
前記少なくとも一つのSSZ-39ゼオライト製造用のOSDAが、シス-PIPPYおよびトランス-PIPPYの混合物であって、該トランス-PIPPYの含有量が20重量%を超える、混合物である、請求項6又は7に記載のSSZ-39ゼオライト製造用水性反応組成物。
【請求項9】
前記組成物が、種晶量のSSZ-39ゼオライトを、該組成物中で用いるシリカおよびフォージャサイトの重量に基づいて0.1%~10%の量でさらに含む、請求項6~8のいずれか一項に記載のSSZ-39ゼオライト製造用水性反応組成物。
【請求項10】
前記少なくとも一つのケイ素の酸化物が、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、ケイ酸ナトリウム、シリカヒドロゲル、ケイ酸、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、TEOS以外のテトラ-低級-(C-C)-アルキルオルトシリケート、およびシリカヒドロキシドのうちの一つ、または二つ以上の混合物を含む、請求項6~9のいずれか一項に記載のSSZ-39ゼオライト製造用水性反応組成物。
【請求項11】
前記SSZ-39製造用のOSDAの量が、低減された量であり、該低減された量が、前記SSZ-39ゼオライトの結晶を形成するのに十分な結晶化条件下、前記水中で、前記少なくとも一つの孔充填剤(PFA)を用いることなく、前記ケイ素酸化物の少なくとも一つの供給源および前記フォージャサイトおよびアルカリ金属の水酸化物または塩と組み合わせる場合に、前記SSZ-39ゼオライトを製造するのに用いられるであろう該少なくとも一つのOSDAの第一の量よりも少ない第二の量であり;かつ、前記水性反応組成物が、前記第二の量の該少なくとも一つのOSDAを、該少なくとも一つのOSDAの該第一の量と該第二の量との差である量の該少なくとも一つの孔充填剤(PFA)と共に含む、請求項6~10のいずれか一項に記載のSSZ-39ゼオライト製造用水性反応組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第119条の下、米国特許仮出願第62/521,949号(2017年6月19日出願、発明の名称「修飾OSDA製剤を用いるSSZ-39の合成方法」)および米国特許仮出願第62/685,059号(2018年6月14日出願、発明の名称「修飾反応組成物を用いるSSZ-39の合成方法」)の優先権を主張し、これらの出願の両方とも、その全体が参照として本明細書中で援用される。
【0002】
本発明は、ゼオライト合成の方法に関し、特に、修飾有機構造指向剤(OSDA)製剤を用いるSSZ-39の合成方法であって、該OSDAのうちのいくつかが、それ自身がSSZ-39のOSDAではない一つ以上の他の有機基剤で置き換えられる、方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ゼオライトCu-SSZ-39は、ディーゼル燃料内燃機関のテールパイプ中の窒素酸化物の選択的接触還元(SCR)のための有望な触媒であることが示されてきた。SSZ-39の合成は、米国特許第5,958,370号(「‘370特許」)で広く教示されてきた。‘370特許は、その全体が参照として本明細書中で援用される。‘370特許は、OSDA(370特許中でテンプレート剤と呼ばれる)を用いることによるSSZ-39および他のゼオライトの合成についての詳細について参照され得る。‘370特許は、多くのそのようなOSDAを開示しており、特に、SSZ-39の合成におけるヒドロキシドとして通常提供されるN,N-ジメチル-3,5-ジメチルピペリジニウムカチオンが挙げられる。N,N-ジメチル-3,5-ジメチルピペリジニウムヒドロキシドは、本明細書中でPIPPYと称され得る。PIPPYは、通常、3、5位でのシスおよびトランス異性体の混合物として存在することが公知である。本明細書中でPIPPYを参照する場合、特に他に言及しなければ、PIPPYは、シスおよびトランス異性体の不特定な混合物を意味する。
【0004】
他の重要なSSZ-39用のOSDAは、N,N-ジメチル-2,6-ジメチルピペリジニウムヒドロキシドである。さらなるSSZ-39用のOSDAは、米国特許出願公開第2016/0122192号に開示され、特に、上記のおよび他の2,6-ジメチル異性体が‘192出願に開示されている。これらの2,6-異性体は、例えば、N-メチル-N-エチル-、N,N-ジエチル-およびN-エチル-N-プロピル-2,6-ジメチルピペリジンである。上記の‘370特許は、SSZ-39の製造での使用が公知である多くのOSDAを開示する。別の公知のSSZ-39用のOSDAは、テトラエチルホスホニウムヒドロキシドである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第5,958,370号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0122192号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したそれらの特定のOSDAを含み、ゼオライトの調製について当該分野で公知であり、特にPIPPYおよびその異性体を含む種々のSSZ-39用のOSDAの多くは比較的高価である。OSDAは、通常、SSZ-39ゼオライトの調製方法において最も高価な成分である。従って、少なくともこの理由により、より低コストの成分を用いてより低コストで実施され得る、ゼオライト、特にSSZ-39ゼオライトの製造方法を考え出すことが当該分野で必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの実施態様では、本発明は、SSZ-39を製造する方法であって、反応混合物が、SSZ-39の製造に公知の一つ以上のOSDAのブレンドを、一つ以上の孔充填剤(本明細書中でPFAと称され得る)と共に含む方法に用いられる組成物に関する。本発明によれば、PFAはまた、有機第四級アンモニウムまたはホスホニウムの水酸化物または塩であるが、SSZ-39の製造用のOSDAではないPFAである。
【0008】
理論に縛られるわけではないが、以下の理由により、PFAの添加は、OSDAのより効率的な使用をもたらすと考えられている。OSDAは、PFAの非存在下で、ゼオライト合成の三つの機能を提供すると考えられている:従来のゼオライト合成におけるOSDAは、構造指向剤として機能し(そのためこの名称がついている)、孔充填剤として機能し、かつ、電荷の中和を提供する。本発明によるPFAは、ゼオライト合成、および特にSSZ-39ゼオライト合成において、いくつかまたは全ての孔の充填、電荷の中和、または孔の充填および電荷の中和の両方の役割を提供する。このことにより、OSDAが主にその構造指向特性において機能する一方で、PFAが孔充填および電荷中和機能において機能することが可能になる。このことは、ゼオライト、例えば、SSZ-39を製造する反応を促進すると考えられるが、その理由は、孔充填機能に使われるいずれのOSDAも、構造指向機能には用いられないからである。
【0009】
本発明の実施態様によれば、ゼオライト、特にSSZ-39を調製するための方法が提供され、この方法では、SSZ-39用のOSDAの一部が、SSZ-39用のOSDAではない有機基剤である孔充填剤(PFA)の一つ以上で置き換えられる。得られるSSZ-39ゼオライトの製造方法は、反応混合物中で低減された量のSSZ-39用のOSDAを用いて実施することができる。OSDAのいくらかをPFAで置き換えることによる他の利点は、SSZ-39等のゼオライトをより経済的な方法で得ることができるということである。
【0010】
SSZ-39の場合、N,N-ジメチル-3,5-ジメチルピペリジニウムヒドロキシド(PIPPY)は、SSZ-39の優れた構造指向剤である。本発明者らは、SSZ-39を製造するための構造指向機能を達成するのに十分なOSDAが存在する限り、PFAであるがSSZ-39のOSDAではない代替の有機基剤を用いて、OSDAの他の二つの機能、すなわち、孔充填および電荷中和の役割が達成され得ることを発見した。
【0011】
一つの実施態様では、本発明の方法は、とりわけ、SSZ-39ゼオライトを製造するのに通常またはその他の場合に必要とされるかまたは用いられるであろうOSDAの量を決定する工程、このように決定されたOSDAの量の一部をPFAで置き換える工程、および、次いで、低減された量のOSDAをPFAと共に用いて、当該分野で公知の手順に従ってゼオライト合成を実行する工程を含む。
【0012】
従って、一つの実施態様では、本発明は、SSZ-39ゼオライトを製造する方法であって:
少なくとも一つのケイ素の酸化物;
フォージャサイト;
少なくとも一つの、SSZ-39ゼオライト製造用の有機構造指向剤(OSDA);
少なくとも一つの、SSZ-39ゼオライト製造用のOSDAではない孔充填剤(PFA);
アルカリ金属水酸化物;および
水、
を含む水性反応混合物を形成する工程;および
該水性反応混合物を、SSZ-39ゼオライトの結晶を形成するのに十分な結晶化条件下で水熱的に処理する工程、
を含む、方法を提供する。
【0013】
一つの実施態様では、この方法において、前記少なくとも一つのSSZ-39ゼオライト製造用のOSDAが、PFAの非存在下で前記SSZ-39ゼオライトを形成するのに必要とされるであろう量よりも少ない量で前記水性反応混合物中に存在する。
【0014】
一つの実施態様では、前記方法が、さらに:
前記結晶化条件下、前記水中で、前記少なくとも一つの孔充填剤(PFA)を用いることなく、前記ケイ素酸化物の少なくとも一つの供給源および前記フォージャサイトおよびアルカリ金属の水酸化物または塩と組み合わせる場合に、前記SSZ-39ゼオライトを製造するのに用いられるであろう該少なくとも一つのOSDAの第一の量を決定すること;および
該少なくとも一つのOSDAの該第一の量よりも少ない第二の量の該少なくとも一つのOSDAを、該少なくとも一つのOSDAの該第一の量と該第二の量との差に基づいて決定した量の該少なくとも一つの孔充填剤(PFA)と共に用いて、前記水性反応混合物を形成すること、を含む。
【0015】
一つの実施態様では、前記方法において、前記少なくとも一つのSSZ-39ゼオライト製造用のOSDAが、PIPPY、シス-PIPPY、トランス-PIPPY、一つ以上の2,6-ジメチル-N,N-ジアルキルピペリジニウム(該アルキル基は、同一であっても異なっていてもよく、かつ、1~4個の炭素原子の範囲内である)、およびテトラエチルホスホニウムヒドロキシドから選択される一つ、または二つ以上の混合物である。一つの実施態様では、前記方法において、前記少なくとも一つのSSZ-39ゼオライト製造用のOSDAが、シス-PIPPYおよびトランス-PIPPYの混合物であって、該トランス-PIPPYの含有量が20重量%を超える、混合物である。一つの実施態様では、前記方法において、前記少なくとも一つのPFAが、以下に定義する一般式(I)を有する第四級アンモニウムまたはホスホニウムヒドロキシドである。
【0016】
一つの実施態様では、前記方法において、前記少なくとも一つのPFAが、以下から選択されるものの一つ、または二つ以上の混合物を含む:4,4-ジメチルモルホリニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(BnTMAH)、ジエチルジメチルアンモニウムヒドロキシド(DEDMAH)、ジイソプロピルジメチルアンモニウムヒドロキシド(DiPDMAH、ジメチルジプロピルアンモニウムヒドロキシド(DMDPAH)、メチルトリエチルアンモニウムヒドロキシド(MTEAH)、コリンヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、メチルトリブチルアンモニウムヒドロキシド(MTBAH)、メチルトリプロピルアンモニウムヒドロキシド(MTPAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、1,1-ジエチルピロリジニウムヒドロキシド、1,1-ジプロピルピロリジニウムヒドロキシド、1-ブチル-1-メチルピペリジニウムヒドロキシド、テトラプロピルホスホニウムヒドロキシド(TPPOH)、またはその任意の二つ以上の混合物。
【0017】
一つの実施態様では、前記方法において、前記水性反応混合物が、種晶量のSSZ-39ゼオライトをさらに含む。一つの実施態様では、前記方法において、前記少なくとも一つのケイ素の酸化物が、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、ケイ酸ナトリウム、シリカヒドロゲル、ケイ酸、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、TEOS以外のテトラ-低級-(C-C)-アルキルオルトシリケート、およびシリカヒドロキシドのうちの一つ、または二つ以上の混合物を含む。
【0018】
一つの実施態様では、本発明は、以下のものを含む組成物に関する:
少なくとも一つのケイ素の酸化物;
フォージャサイト;
少なくとも一つの、SSZ-39ゼオライト製造用の有機構造指向剤(OSDA);
少なくとも一つの、SSZ-39ゼオライト製造用のOSDAではないPFA;
アルカリ金属水酸化物;および
水。
【0019】
一つの実施態様では、前記少なくとも一つのSSZ-39ゼオライト製造用のOSDAが、前記PFAの非存在下で前記SSZ-39ゼオライトを形成するのに必要とされるであろう量よりも少ない量で前記組成物中に存在する。一つの実施態様では、前記組成物中の前記PFAの量が、(1)該PFAの非存在下で前記SSZ-39ゼオライトを形成するのに必要とされるであろう前記OSDAの量と、(2)該組成物中に実際に存在する該OSDAの量との差を表す量にほぼ等しい。一つの実施態様では、前記少なくとも一つのPFAが、本明細書中に定義する一般式(I)を有する第四級アンモニウムまたはホスホニウムヒドロキシドである。一つの実施態様では、前記組成物中の前記少なくとも一つのPFAが、上記PFAのリストから選択されるものの一つ、または二つ以上の混合物を含む。一つの実施態様では、前記組成物中の前記少なくとも一つのSSZ-39ゼオライト製造用のOSDAが、PIPPY、シス-PIPPY、トランス-PIPPY、一つ以上の2,6-ジメチル-N,N-ジアルキルピペリジニウム(該アルキル基は、同一であっても異なっていてもよく、かつ、1~4個の炭素原子の範囲内である)、およびテトラエチルホスホニウムヒドロキシドから選択される一つ、または二つ以上の混合物である。一つの実施態様では、前記少なくとも一つのSSZ-39ゼオライト製造用のOSDAが、シス-PIPPYおよびトランス-PIPPYの混合物であって、該トランス-PIPPYの含有量が20重量%を超える、混合物である。
【0020】
一つの実施態様では、上記組成物が、種晶量のSSZ-39ゼオライトをさらに含む。一つの実施態様では、前記組成物中の前記少なくとも一つのケイ素の酸化物が、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、ケイ酸ナトリウム、シリカヒドロゲル、ケイ酸、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、TEOS以外のテトラ-低級-(C-C)-アルキルオルトシリケート、およびシリカヒドロキシドのうちの一つ、または二つ以上の混合物を含む。上述の組成物は、本発明の方法に有用である。一つの実施態様では、上記組成物において、前記SSZ-39製造用のOSDAの前記量が、低減された量であり、該低減された量が、前記結晶化条件下で、前記少なくとも一つの孔充填剤(PFA)を用いることなく、前記水中で、前記ケイ素酸化物の少なくとも一つの供給源および前記フォージャサイトおよびアルカリ金属の水酸化物または塩と組み合わせる場合に、SSZ-39ゼオライトを製造するのに用いられるであろう該少なくとも一つのOSDAの第一の量の決定に基づき;かつ、前記水性反応混合物が、該少なくとも一つのOSDAの第一の量よりも少ない第二の量の該少なくとも一つのOSDAを、該少なくとも一つのOSDAの該第一の量と該第二の量との差に基づいて決定した量の該少なくとも一つの孔充填剤(PFA)と共に含む。
【0021】
本発明は、公知のOSDAを、それ自身はOSDAではないが、SSZ-39および他のゼオライトの合成に用いられる公知のOSDAの孔充填機能および電荷中和機能を提供するか、増大させるか、かつ/または置き換えるPFAで部分的に置き換えることにより、SSZ-39および他のゼオライトを製造するためのより効率的な手段を提供する。
【0022】
本明細書中に記載の方法の工程および構造は、ケイ素およびアルミニウムの酸化物を含み、かつ、焼成後に、これらの生成物を製造するための市販の方法に用いられるであろうようなゼオライト構造(例えば、SSZ-39)を有するゼオライトまたは結晶材料を調製するための方法を実施するための完全なシステムまたは方法のフローを提供しない場合もあることが理解されるべきである。本発明は、現在当該分野で用いられている技術および装置と組み合わせて実施され得、かつ、通常実用されている材料、装置および方法の工程の大部分のみを、本発明を理解するのに必要であるとして含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明のいくつかの実施態様に従ってSSZ-39ゼオライトで得られ、反応混合物中のOH/Si比に対してプロットしたケイ素/アルミニウム比を図示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
上記のように、本発明は、以下の工程を含む、SSZ-39ゼオライトを製造する方法を提供する:
少なくとも一つのケイ素の酸化物;
フォージャサイト;
少なくとも一つの、SSZ-39ゼオライト製造用の有機構造指向剤(OSDA);
少なくとも一つの、SSZ-39ゼオライト製造用のOSDAではない孔充填剤(PFA);
アルカリ金属水酸化物;および
水、
を含む水性反応混合物を形成する工程;および
該水性反応混合物を、SSZ-39ゼオライトの結晶を形成するのに十分な結晶化条件下で水熱的に処理する工程。
【0025】
一つの実施態様では、前記少なくとも一つのSSZ-39ゼオライト製造用のOSDAが、PFAの非存在下で該SSZ-39ゼオライトを形成するのに必要とされるであろう量よりも少ない量で前記水性反応混合物中に存在する。
【0026】
一つの実施態様では、前記方法が、さらに:
前記結晶化条件下、前記少なくとも一つの孔充填剤(PFA)を用いることなく、前記ケイ素酸化物の少なくとも一つの供給源および前記水中の前記フォージャサイトおよびアルカリ金属の水酸化物または塩と組み合わせる場合に、前記SSZ-39ゼオライトを製造するのに用いられるであろう該少なくとも一つのOSDAの第一の量を決定すること;および
該少なくとも一つのOSDAの該第一の量よりも少ない第二の量の該少なくとも一つのOSDAを、該少なくとも一つのOSDAの該第一の量と該第二の量との差に基づいて決定した量の該少なくとも一つの孔充填剤(PFA)と共に用いて、前記水性反応混合物を形成すること、を含む。
【0027】
一つの実施態様では、本発明は、以下を含む組成物に関する:
少なくとも一つのケイ素の酸化物;
フォージャサイト;
少なくとも一つの、SSZ-39ゼオライト製造用の有機構造指向剤(OSDA);
少なくとも一つの、SSZ-39ゼオライト製造用のOSDAではないPFA;
アルカリ金属水酸化物;および
水。
【0028】
この組成物において、PFAの量は、上記のように決定され得る。上述の組成物は、本発明の方法に有用である。
【0029】
SSZ-39を形成するために用いるのに必要とされる少なくとも一つのOSDAの量、およびこの量を決定する方法は、当該分野で公知であり、かつ、この量は、ゼオライトの技術における当業者によって決定することができる。本発明によれば、PFAは、このように決定された量の少なくとも一つのOSDAのいくらかの部分を置き換えてSSZ-39を製造するのに用いられる。一つの実施態様では、PFAは、SSZ-39を製造するために、このように決定された量の少なくとも一つのOSDAに追加して用いられ得る。言い換えれば、PFAおよびOSDAの全モル量に対するPFAのモル量の比が、0を超えるが1未満である。
【0030】
一つの実施態様では、前記少なくとも一つのOSDAが、前記PFAの非存在下で該SSZ-39ゼオライトを形成するのに他の場合には必要とされるであろう量よりも少ない量で水性反応混合物中に存在する。例えば、PFAの非存在下、すなわち、SSZ-39を製造するための「通常の」方法において、成分のモル比は、ケイ素の酸化物を1とすると、これに基づいて、次のようになるであろう:
1.0 SiO/0.02-0.06 Al/3-40 HO/0.07-0.20 OSDA/0.50-0.70 OH
式中、OSDAは、例えばPIPPYであり、かつ、PFAは存在しない。
【0031】
本発明では、OSDAのいくらかがPFAで置き換えられ、その結果、例えば、成分のモル比は、ケイ素の酸化物を1とすると、これに基づいて、次のようになるであろう:
1.0 SiO/0.02-0.06 Al/3-40 HO/0.07-0.20(OSDA+PFA)/0.50-0.70 OH
式中、OSDAは、例えば、PIPPYであり、かつ、PFAは、例えば、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)であり、かつ、使用する実際のOSDAおよび使用する実際のPFAによっては、OSDAおよびPFA の相対量がごくわずかに変わる場合があり得る。任意の所与のOSDAと任意の所与のPFAとの間の相互作用の性質は、第一の原則から確実性をもって予測することができないので、それぞれの最適な量は、OSDAとPFAとの組み合わせ毎に実験的に決定されなければならない。OSDAとPFAとの任意の組み合わせの最適な量を決定するのに必要とされる試験は、比較的単純であり、かつ、難しくなく時間もかからない。従って、本発明におけるOSDAおよびPFAの全モル量は、SSZ-39を製造するために他の場合にはPFAを用いることなくそれ単独で用いられるであろうOSDAのモル量にのみほぼ等しくてもよい。
【0032】
本明細書中で用いられるように、PFAおよびOSDAの両方またはいずれかについて言及する場合は、明示されていようとなかろうと、二つ以上のPFAの混合物を任意の組み合わせで用いることができ、かつ、二つ以上のOSDAの混合物を任意の組み合わせで用い得ることを理解すべきである。
【0033】
本明細書中で用いられる、用語「OSDA」、「SSZ-39用のOSDA」、「SSZ-39ゼオライトを製造するのに用いられるであろうOSDA」および関連する用語は、SSZ-39ゼオライトを製造するのに適した当該分野で公知のOSDAを意味し、米国特許第5,958,370号および米国特許出願公開第2016/0122192号に開示されたOSDAが挙げられるが、これらに限定されない。別の公知のSSZ-39用のOSDAは、テトラエチルホスホニウムヒドロキシドである。有力なSSZ-39ゼオライト用のOSDAのさらなる供給源は、J.E.Schmidt,M.W.Deem,C.M.LewおよびT.M.Davis、「8環式ゼオライトAEIの計算的に指向された合成(Computationally-Guided Synthesis of the 8-Ring Zeolite AEI)」、Top.Catal.58(2015)410-415に開示され、この論文は、SSZ-39の結晶型およびその孔に基づいた計算的作業により発見された種々の有力なOSDAを報告する。上述の特許、公開された出願および論文は、最も一般的に公知のまたは提案されたSSZ-39用のOSDAのリスト、およびSSZ-39ゼオライトの製造方法について参照され得る。
【0034】
一つの実施態様では、前記少なくとも一つのSSZ-39用のOSDAが、PIPPY、シス-PIPPY、トランス-PIPPY、一つ以上の2,6-ジメチル-N,N-ジアルキルピペリジニウムヒドロキシド(該アルキル基は、同一であっても異なっていてもよく、かつ、1~4個の炭素原子の範囲内である)、およびテトラエチルホスホニウムヒドロキシドから選択される一つ、または二つ以上の混合物である。一つの実施態様では、前記少なくとも一つのOSDAが、米国特許出願公開第2016/0264428号に記載される、シス-PIPPYおよびトランス-PIPPYの混合物であって、トランス-PIPPYのPIPPYに対する含有量が増加された混合物である(この公開公報は、PIPPYのトランス含有量を増加させることについてのさらなる詳細について参照され得る)。これらは好ましいが、本発明は、本明細書中に開示され、かつ本明細書中および上記で定義されるSSZ-39製造用の公知のOSDAのうちのいずれかを用いて実施することができる。
【0035】
他に特定しない限り、本明細書中に開示される種々のオニウムイオン含有OSDAおよびPFAの対アニオンはヒドロキシドであることが理解される。所望するアルカリ性を得るのに十分な追加の基剤(ヒドロキシド)が混合物中に存在する場合は、ヒドロキシドの代わりに、ハライドまたはカーボネートまたは他の非干渉的アニオンを用いることができるであろうことに留意すべきである。追加の基剤(ヒドロキシド)は、通常、既に組成物中に含まれるアルカリ金属水酸化物よりも多い。OSDAおよびPFAが全てヒドロキシドの形態であることが好ましい。
【0036】
本明細書中で用いられる、用語「孔充填剤」、「PFA」、「SSZ-39ゼオライト製造用のOSDAではない孔充填剤」および関連する用語は、本明細書中で定義されるように、SSZ-39ゼオライトを製造することが公知ではないか、またはそれ自身がSSZ-39ゼオライトを製造することに適していない、第四級アンモニウムまたはホスホニウム部位を意味する。言い換えれば、PFAは、SSZ-39の製造における使用が公知である上記で定義されたOSDA以外の第四級アンモニウムまたはホスホニウム化合物である。PFAの特定の例が本明細書中に開示されるが、非常に広範囲の第四級アンモニウムまたはホスホニウム部位が、それらがSSZ-39製造用のOSDAではない限り、PFAとして利用され得ると考えられる。一つの実施態様では、PFAは、本発明に従ってOSDAと組み合わせた量で用いられる場合、SSZ-39以外のゼオライトの形成をもたらさない。いくつかの実施態様では、もしPFAの量が増えすぎて、かつOSDAが減りすぎると、SSZ-39ゼオライトとは異なるゼオライトが形成され得ることに留意すべきである。従って、用いられるOSDAの量に対する用いられるPFAの量は、少量での方法を実施し、次いで形成されたゼオライトを決定および/または識別することにより、実験的に容易に決定することができる。本発明は、好ましくは微量または少量を超えない他のゼオライトを含むSSZ-39ゼオライトを製造するために用いられることが意図される。
【0037】
本明細書中で用いられる「微量」のSSZ-39以外のゼオライトは、反応で形成したゼオライトの全量に基づき、2重量%未満であり、「少量」のSSZ-39以外のゼオライトは、反応で形成したゼオライトの全量に基づき、2重量%以上であるが10重量%未満である。
【0038】
一つの実施態様では、前記少なくとも一つのPFAが、一般式(I)を有する第四級アンモニウムまたはホスホニウムヒドロキシドである:
【0039】
【化1】
【0040】
ここで、一般式(I)において、
Aは、NまたはPであり、
、R、RおよびRのそれぞれは、独立して、C-C18アルキル、および未置換であってもC-Cアルキルで置換されていてもよいC-C10芳香族から選択されるが、該PFAが前記水性反応混合物中で可溶のままである場合、R、R、RおよびRのうちの任意の二つは、一つ以上のOおよび/またはNヘテロ原子を含んでいてもよい5員または6員環を形成してもよく、かつ、
は、無機アニオン(例えば、フルオライド、クロライド、ブロマイド、ヨーダイド、ヒドロキシド、スルフェート、ニトレート、ホスフェート、スルホネート)、または有機アニオン(例えば、ホルメート、アセテート、ピバレートおよびプロピオネート)から選択されるアニオンである。これは有力なアニオンの包括的なリストであることを意図しておらず、他のアニオンも、それらが干渉性でない(non-interfering)限り含まれ得るであろう。
【0041】
一つの実施態様では、前記少なくとも一つのPFAが、以下のものから選択される:
4,4-ジメチルモルホリニウムヒドロキシド、
テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、
ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(BnTMAH)、
ジエチルジメチルアンモニウムヒドロキシド(DEDMAH)、
ジメチルジプロピルアンモニウムヒドロキシド(DMDPAH)、
ジイソプロピルジメチルアンモニウムヒドロキシド(DiPDMAH)、
メチルトリエチルアンモニウムヒドロキシド(MTEAH)、
コリンヒドロキシド、
テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、
メチルトリブチルアンモニウムヒドロキシド(MTBAH)、
メチルトリプロピルアンモニウムヒドロキシド(MTPAH)、
テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、
1,1-ジエチルピロリジニウムヒドロキシド、
1,1-ジプロピルピロリジニウムヒドロキシド、
1-ブチル-1-メチルピペリジニウムヒドロキシド、
テトラプロピルホスホニウムヒドロキシド(TPPOH)、
またはそれらの任意の二つ以上の混合物。全ての場合において、当該分野で公知であるように、十分なアルカリ性が反応混合物中に存在する限り、ヒドロキシドは、上記Xの定義に従って対応する塩で置き換えられ得る。
【0042】
一つの実施態様では、前記少なくとも一つのケイ素の酸化物が、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、無機ケイ酸塩(好ましくは、ケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウム)、シリカヒドロゲル、ケイ酸、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、TEOS以外のテトラ-低級-(C-C)-アルキルオルトシリケート、およびシリカヒドロキシドのうちの一つ、または二つ以上の混合物を含む。適切なケイ素の酸化物は、例えば、W.R.Grace社から市販されているLUDOX(登録商標)Colloidal Silicaなどのコロイダルシリカ、および、他には、PQ Brand N Sodium Silicateである。
【0043】
一つの実施態様では、存在するOSDAの低減された量は、結晶化を遅くし得、かつ、生成物のSi/Al比を低下させ得ると考えられる。これを最小化するため、一つの実施態様では、PFAを、シス異性体よりも強力なSSZ-39用のOSDAであることが公知である高トランス含有量のPIPPYと共に用いる。このことは、本出願人の米国特許出願公開第2016/0264428号に記載されるように、トランス異性体を増加した量で含むPIPPYの供給源を用いることにより、達成され得る。
【0044】
反応混合物のためのアルミニウムオキシドの代表的な供給源は、フォージャサイトである。フォージャサイトを用いる場合、それはSSZ-39生成物中のケイ素のうちのいくらかの供給源でもある。フォージャサイトは、例えば、ZeoliteXまたはZeoliteYまたはZeoliteUSYとして、Zeolyst Internationalから広く市販されている。一つの実施態様では、フォージャサイトが脱アルミニウム化されない。
【0045】
代表的には、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウム、ルビジウムのヒドロキシド等のアルカリ金属水酸化物を、シリカを溶解してSSZ-39の前駆体の一つであるケイ酸塩を形成するために、反応混合物中で用いる。OSDA、PFAおよび無機基剤により供給されるアルカリ性の相対量は、とりわけ、製法における水の量、および所望される生成物のSi/Al比に依存して変動する。OSDAは、ヒドロキシドイオンのいくらかを提供するために用いられ得、かつ、PFAは、任意のアルカリ金属水酸化物に加えて、残りまたは残りの大部分を提供し得る。アルカリ金属水酸化物の低コストのため、任意の追加の有機基剤ではなく、NaOHまたはKOHなどのアルカリ金属水酸化物を用いることが通常は好ましい。例えば、ヒドロキシドイオン用の有機基剤(例えば、OSDAまたはPFA)の塩形態からハライドのイオン交換を行って、必要とされるアルカリ金属水酸化物の量を低減することが有益であり得る。アルカリ金属カチオンは、合成されたSSZ-39材料の中の荷電子電荷のバランスをとるために、このSSZ-39材料の部分として残存する。これは、H、または金属イオン(例えば、Cu++)で置き換えて、所望の生成物(例えば、Cu-SSZ-39)を形成することができる。
【0046】
一つの実施態様では、本発明に従って製造されたSSZ-39ゼオライトは、7~12の範囲内にあるケイ素-アルミニウム比(「SAR」)を有する。一つの実施態様では、本発明に従って製造されたSSZ-39ゼオライトは、8~11の範囲内にあるSARを有する。一つの実施態様では、本発明に従って製造されたSSZ-39ゼオライトは、9~10の範囲内にあるSARを有する。より高いまたはより低いSAR値を有する本発明のゼオライトを製造することは容易に可能であるが、これらのSSZ-39ゼオライトの多くの用途のためには、これらの範囲内のSARが最も望ましいと考えられる。これらのゼオライトのSARは、従来の分析により決定され得る。この比は、ゼオライト結晶の剛直な原子骨格中の比を表し、かつ、触媒用途でまたはゼオライトの孔内で任意の他の形態で用いられるいかなるバインダー中のケイ素またはアルミニウムも含まない。
【0047】
一つの実施態様では、反応混合物および得られたゼオライトは、フッ素、フッ素含有化合物およびフルオライドイオンを含まないかまたは実質的に含まない。このようなフッ素含有部位は、不純物として、または微量で存在し得ることが理解される。従って、一つの実施態様では、反応混合物および得られたゼオライトは、意図的に添加されたフッ素、フッ素含有化合物およびフルオライドイオンを含まないかまたは実質的に含まない。
【0048】
SSZ-39を形成する方法の以下の実施例は、米国特許第5,958,370号から得られるが、この特許は、ゼオライトおよび特にSSZ-39の形成のさらなる情報の参考とされ得る。米国特許第5,958,370号の全ての開示は、本明細書中で参照として援用される。‘370号特許に記載された方法は、必要に応じて当業者により改変され得る。以下の実施例では、同様であるが幾分か異なる方法が記載される。この方法(改変を含む)は、通常、「結晶化条件」と称され得る。「結晶化条件」を用いる同様の方法の記載は、米国特許第9296620号中に見出され得る。
【0049】
通常は室温で調製される反応混合物は、密封された容器内に導入され、かつ、穏やかな攪拌または静的状態を用いて、SSZ-39ゼオライトの結晶が形成されるまで高温で維持される。水熱処理は、通常、自己生成圧力下、100℃~200℃、好ましくは135℃~170℃、代表的には約160℃の温度で、密封、加熱された容器内で行われる。結晶化期間は、代表的には、1~約3日である。しかしながら、米国特許出願第2016/0264428号に記載されるように、OSDAとしてのPIPPYについては、高トランス含有量のPIPPYを用いることにより、反応時間を著しく短縮することができる。
【0050】
水熱処理工程の間に、SSZ-39結晶を、反応混合物から自発的に核形成させることができる。あるいは、より多くのSSZ-39を結晶化させるため、いくらかのSSZ-39結晶が種晶として反応混合物に添加されてもよい。SSZ-39結晶を種晶材料として用いることは、完全な結晶化が起こるために必要な時間を短縮するのに有利であり得る。さらに、種晶添加は、いかなる望ましくない相に対しても核形成および/またはSSZ-39の形成を促進することにより、得られる生成物の上昇した純度をもたらすことができる。種晶として用いる場合、SSZ-39結晶は、反応混合物で用いるシリカおよびフォージャサイトの重量の1~10%の量で添加される。
【0051】
ゼオライト結晶が一旦形成されると、固体生成物は、濾過等の標準的な物理的分離技術により、反応混合物から分離される。結晶は水で洗浄され、次いで、例えば、90℃~150℃で8~24時間乾燥されて、このように合成されたSSZ-39ゼオライト結晶が得られる。乾燥工程は、大気圧または真空下で行うことができる。このように形成されたゼオライトは、その後焼成して、有機基剤(例えばOSDAおよびPFA)を除去してもよい。
【0052】
本発明によれば、最初に組み合わせられ、次いで、反応させられて本明細書中に記載のSSZ-39を形成する反応混合物または組成物は、特定の成分を、以下の広い範囲および好ましい範囲の成分比で含む:
【0053】
【表1】
【実施例
【0054】
これらの実施例は、発明の特徴を説明するため、および発明のより良い理解を提供するために提供されるものであり、特許請求の範囲で定義される発明の範囲を限定することを意図するものではない。一般に、本発明の実施態様において、化学量論は以下のように表してもよく、式中、QOHはPFAであり、かつ、PIPPYはOSDAの一例である:
1.0 SiO/0.02-0.04 Al/3-12 HO/0.03-0.20(QOH+PIPPY)/0.50-0.65 OH
1.0 SiO/0.02-0.05 Al/12-40 HO/0.03-0.17(QOH+PIPPY)/0.60-0.75 OH
また、別の実施態様では、化学量論は以下のように表してもよく、この式中においても、QOHはPFAであり、かつ、PIPPYはOSDAの一例である:
1.0 SiO/0.02-0.05 Al/3-40 HO/0.03-0.20(QOH+PIPPY)/0.50-0.75 OH
【0055】
以下の範囲は実施例であり、かつ、実際の化学量論は変動し得る。
【0056】
PIPPYおよびPFAを用いる合成の一般的手順
例えば、Ludox(登録商標)AS-40またはPQ Brand N Sodium Silicateまたは2つのある組み合わせ等のケイ素酸化物、または他の適切な二酸化ケイ素の供給源を、テフロン(登録商標)コーティングされた磁気攪拌棒と共に、PTFEカップに添加する。次いで、十分なPIPPY、PFAとして第四級アンモニウムヒドロキシドまたは塩、および必要に応じて、追加のアミンを添加して、本明細書中に記載されるように決定した相対量のPIPPYおよびPFAで、所望の第四級化合物-Si比を達成する。このとき、アルカリ金属水酸化物を添加する。必要に応じて、水の含有量を調節することにより、反応混合物中での望ましいHO/Si比を達成する。数分の攪拌後、ケイ素酸化物が溶解したときに、十分なフォージャサイトを添加することにより、所望のSi/Al比を達成する。混合物を、均一になるまで70℃で攪拌する。攪拌棒を取り除き、次いで、カップを、24~48時間にわたって、140℃~160℃のオーブン中で、回転または攪拌しながら、あるいは回転または攪拌なしで、オートクレーブ中に置く。オートクレーブを冷却し、内容物を取り出して遠心分離またはデカンテーションにより分離する。固体を水で2回洗浄し、125℃で一晩空気中で乾燥させる。代表的な収量は、ゲルのSi/Al比によるが、0.2~0.7グラムである。粉末のXRD分析は、SSZ-39(AEI骨格)は実質的に実施例で形成された唯一の生成物であるが、実質的な量の他のゼオライト相は比較例で形成されることを示す。生成物のSi/Al組成は、X線蛍光(XRF)を用いて測定される。本発明実施例および比較例の両方についての結果を、以下の表に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】
【0061】
【表6】
【0062】
【表7】
【0063】
【表8】
【0064】
【表9】
【0065】
上記実施例、および上記に示す化学量論のほとんどは、比較的より低い水含有量を有するいくつかの実施例および比較的より高い水含有量を有するいくつかの実施例を含むことに留意すべきである。本発明は、これらのより低い水含有量およびより高い水含有量の両方で、ならびにこれらの水含有量の間で、等しく良好に作用し、かつ、確かに、本明細書中に開示される水含有量の全範囲にわたって作用する。このことは、多くの他の実施例の比較的より低い水含有量とより高い水含有量との間の水含有量を含む本発明実施例46~49により実証される。
【0066】
本発明は、反応混合物中で使用するOSDAが少ないので、母液(これからSSZ-39結晶が分離される)中の「余剰の」OSDAが少ないという利点を提供する。この利点を実証するため、SSZ-39を先行技術に従って調製した場合(すなわち、PFAを添加しない)の残留OSDA(例えば、PIPPY)について、ならびにSSZ-39を本発明に従って調製した場合のOSDA(例えば、PIPPY)および残留PFAの両方について、母液を分析する。3つのサンプルを調製し、1つのサンプルはOSDAとしてのPIPPYのみを含みかつPFAは含まず、1つのサンプルは80重量%の水性PIPPYおよび20重量%のPFAとしての水性MTEAHを含み、かつ、1つのサンプルは、80重量%の水性PIPPYおよび20重量%のPFAとしての水性TEAHを含み、かつ、SSZ-39形成反応は、実施例中で上記されるように実施される。SSZ-39の分離後に残存する母液の残存するPIPPYおよびPFAを分析する。サンプルをHPLC分析に供した。PIPPY、MTEAHおよびTEAHの検出されたレベルを、これらの化合物のそれぞれの既知の濃度の標準に対して定量する。
【0067】
以下の表は、3つのサンプルのそれぞれの母液中のPIPPYおよび2つのPFAのそれぞれの量を、100万分の1の単位(ppm)で示す。
【0068】
例C-20では、出発ゲルは、0.17のPIPPY-Si比を有し、かつ、7.8の水-Si比を有した。PIPPY濃度は、約160,000ppm(80%シス、20%トランス)であった。結晶化が完了した後、およそ103,000ppmが残存した。本発明実施例28および29において、約30,000ppmの初期濃度では、出発ゲル中の20mol%のPIPPYがMTEAHおよびTEAHでそれぞれ置き換えられた。MTEAHおよびTEAHのほとんどはSSZ-39合成で取り込まれ、かつ、約2000~3000ppmのみが溶液中に残存していた。
【0069】
【表10】
【0070】
上記表から明らかであるように、PFAを含む2つのサンプルでは、PIPPYのみを含みかつPFAを含まないサンプルと比較して、母液中のPIPPYの濃度が顕著に低減される。このことは、本発明実施例におけるPIPPYおよびPFAの両方の取り込みと一致し、このことは、PFAの存在が、なお高純度のSSZ-39を得ながら、反応混合物中でより少量のPIPPYまたは他のOSDAの使用をもたらしかつ可能にすることを示す。このことは、PFAが、PFAとしてのSSZ-39の結晶中に配合されたことを明確に示す。得られた母液の組成の有機窒素がより少ないことは、排水をバイオ処理しなければならない場合に有益であり得る。
【0071】
本発明の実施態様のさらなる利点は、PFAをPIPPYまたは他のOSDAと共に用いることにより、生成物中のSi/Al比を、反応混合物ゲル(これから生成物であるSSZ-39ゼオライト結晶が得られる)に対するOH/Si比の変化により調整しかつ制御することが可能となるということである。図1に示すように、PFAを例えばPIPPYと共に含む反応混合物は、広範囲のOH/Si比にわたってSSZ-39の形成に適合し、かつ、PIPPYまたは他のOSDAのみを含む製法と比較して同じまたはより高いSi/Al比を有する生成物を生じる。さらに、図1に示すように、OH/Si比を低減することにより、より高いSi/Al比を有する生成物が得られた。
【0072】
本発明の原理を、例示の目的で提供されたある特定の実施態様に関連して説明してきたが、本明細書を読めば、その種々の改変が当業者に明らかになるであろうことが理解されるべきである。従って、本明細書中で開示した発明は、このような改変を、添付の特許請求の範囲の範囲内に入るとして含むことが意図されることが理解されるべきである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲の範囲によってのみ限定される。

図1