(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】ゲインを車速およびステアリングホイールトルクの関数として変化させることによる道路プロフィールの認識の改善
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20221025BHJP
B62D 119/00 20060101ALN20221025BHJP
B62D 101/00 20060101ALN20221025BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D119:00
B62D101:00
(21)【出願番号】P 2020532706
(86)(22)【出願日】2018-12-17
(86)【国際出願番号】 FR2018053324
(87)【国際公開番号】W WO2019122647
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-11-25
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511110625
【氏名又は名称】ジェイテクト ユーロップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フレゾン クエンティン
(72)【発明者】
【氏名】ムレール パスカル
(72)【発明者】
【氏名】ミシェリ アンドレ
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-149359(JP,A)
【文献】特開2017-211197(JP,A)
【文献】特開2017-200774(JP,A)
【文献】特開2011-225175(JP,A)
【文献】特開2014-227115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
B62D 119/00
B62D 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールと、閉ループ調整システムによって制御されるアシストモータとを備える自動車用パワーステアリングシステムであって、
前記閉ループ調整システムは、測定ステアリングホイールトルク(C
vm)および前記モータアシスタンスのモータトルク(C
m)の合計に相当するRFeからドライバに感じさせたいステアリングホイールトルクとして定義されるセットポイントステアリングホイールトルク(C
vc)を減算することによって、前記アシストモータの前記モータトルク(C
m)の一成分(<<偏差モータトルク>>と称す)を計算する少なくとも1つの<<セットポイントモニタリング>>ブランチ(2’)を用いることによって、前記アシストモータの前記モータトルク(C
m)を前記測定ステアリングホイールトルクの関数として決定し、
前記偏差モータトルク(TOL)は、特に車速(V
v)および前記測定ステアリングホイールトルク(C
vm)に基づく三次元マッピング(3)によって決定されるゲインと乗算される
ことを特徴とする自動車用パワーステアリングシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のパワーステアリングシステムにおいて、
前記三次元マッピング(3)は、
前記ゲイン(G)が厳密に1未満である少なくとも1つの感覚改善領域(5、7)と、
前記ゲイン(G)が厳密に1である少なくとも1つのアシスト領域(4、6)と、を備える
ことを特徴とするパワーステアリングシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のパワーステアリングシステムにおいて、
前記第1のアシスト領域(4、6)は、所定のステアリングホイールトルク閾値(C
vp)を超える範囲に存在する
ことを特徴とするパワーステアリングシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のパワーステアリングシステムにおいて、
前記所定のステアリングホイールトルク閾値(C
vp)は、測定ステアリングホイールトルクセンサの測定範囲以下である
ことを特徴とするパワーステアリングシステム。
【請求項5】
請求項3または4に記載のパワーステアリングシステムにおいて、
前記第1の感覚改善領域(5)の範囲は、所定の車速閾値(V
vp)以上であり、かつ前記測定ステアリングホイールトルク(C
vm)がゼロから前記所定のステアリングホイールトルク閾値(C
vp)までとなる範囲である
ことを特徴とするパワーステアリングシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のパワーステアリングシステムにおいて、
前記所定の速度閾値(V
vp)は、80km/h以下、好ましくは60km/h以下、あるいはさらに25km/h以下である
ことを特徴とするパワーステアリングシステム。
【請求項7】
請求項5または6に記載のパワーステアリングシステムにおいて、
前記第2のアシスト領域(6)の範囲は、車速(V
v)ゼロと前記所定の車速閾値(V
vp)との間であり、かつ前記所定のステアリングホイールトルク閾値(C
vp)よりも低い低速ステアリングホイールトルク閾値(C
vbv)と前記所定のステアリングホイールトルク閾値(C
vp)との間である
ことを特徴とするパワーステアリングシステム。
【請求項8】
請求項7に記載のパワーステアリングシステムにおいて、
前記低速ステアリングホイールトルク閾値(C
vbv)は、1Nm以下、または0.5Nm以下、あるいはさらに0.25Nm以下である
ことを特徴とするパワーステアリングシステム。
【請求項9】
請求項7または8に記載のパワーステアリングシステムにおいて、
前記第2の感覚改善領域(7)の範囲は、前記車速(V
v)ゼロから前記所定の車速閾値(V
vp)までであり、かつ前記測定ステアリングホイールトルク(C
vm)ゼロから前記低速ステアリングホイールトルク閾値(C
vbv)までである
ことを特徴とするパワーステアリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用パワーステアリングの分野に関し、より詳細には、ドライバによってステアリングホイールに加えられたトルクの関数としてのアシストモータのトルクのための閉ループ調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用パワーステアリングシステムは、ラックを操縦して車両の車輪を方向付けできるように、ドライバが力(<<印加ステアリングホイールトルク>>と称す)を加えるステアリングホイールを備える。調整システムによって制御される電動アシストモータは、アシストモータのトルクを与えて、印加すべきステアリングホイールトルクを低減することによって、車両の車輪の方向を変えようしているドライバをアシストできる。これを、ドライバが感じるステアリングホイールトルクと称す。
【0003】
最終的には、ドライバが感じるステアリングホイールトルクは、印加ステアリングホイールトルクと同じである。このステアリングホイールトルクがトルクセンサによって測定可能であるので、以下では、この測定(measured)ステアリングホイールトルクについて検討する。
【0004】
図3に示すように、パワーステアリングシステムの調整システム1は、アシストモータのトルクC
m(<<モータトルク>>と称す)を、特に、測定ステアリングホイールトルクC
vmの関数として、決定する。
【0005】
したがって、モータトルクCmは、測定ステアリングホイールトルクCvmに影響を与える。その逆も同様である。
【0006】
さらに、より効率的な調整システム1は、複数の電子およびソフトウエア機能(図示せず)を統合し、ドライバの期待に最適化されるように、測定ステアリングホイールトルクCvmを調節可能にする。例えば、それらの機能は、以下を改善できる。
-ステアリングホイールの回転方向の急変化などの外乱に対する調整システムの安定性、すなわち、収束性、
-動的乾燥摩擦、粘性、デタッチメント(detachment)(すなわち、ステアリングシステムの変位を引き起こすためにドライバが克服しなければならない力の閾値)、またはパワーステアリングシステムの慣性の感覚などのパワーステアリングシステムの機械的挙動の感覚、
-操縦の快適さ、すなわち、ドライバがステアリングホイールから手を離した状況におけるステアリングホイールの減衰、およびステアリングホイールを中央位置(すなわち、車両が直線軌道を追従するステアリングホイールの位置)に戻すことを可能にするステアリングホイールの復帰。
【0007】
一般に、閉ループ調整システム1は、以下を含む。
-セットポイントステアリングホイールトルクCvc(ドライバに感じさせたいステアリングホイールトルク、第1のアシスト法則を適用(A)することによって、測定ステアリングホイールトルクCvmおよびモータトルクCmの合計の関数(すなわち、RFeの関数)として決定される)をRFeから減算することによって偏差モータトルクTOLを計算するセットポイントモニタリングブランチ(branch)2、
-比例モータトルクCmpを、測定ステアリングホイールトルクCvmとセットポイントステアリングホイールトルクCvcとの差の関数として決定する比例ブランチKp、および
-微分モータトルクCmdを、測定ステアリングホイールトルクCvmの時間微分の関数として推定する微分ブランチKd。
【0008】
モータトルクCmは、各ブランチ2、Kp、Kdの成分、すなわち、微分モータトルクCmd、偏差モータトルクTOL、および比例モータトルクCmpの成分の合計である。
【0009】
各ブランチを検討すると、セットポイントモニタリングブランチ2の寄与は、セットポイントステアリングホイールトルクCvcをモニタリングするためにモータトルクCmを決定する際に、より重要な役割を有することが分かる。比例ブランチKpおよび微分ブランチKdの寄与は、それらの部分について、セットポイントステアリングホイールトルクCvcにより短時間で到達するために、すなわち、定常状態を成立させる時間を低減するために、動的変化量に追従して、調整システムを安定化させることを可能にする。
【0010】
調整システム1は、測定ステアリングホイールトルクCvmおよび、したがって、ドライバが感じるステアリングホイールトルクを制御することによって、道路プロフィール(profile)に関連する情報のフィードバックを低減する。
【0011】
車両が変位する表面の一組の固有物理特性を道路プロフィールと称す。道路プロフィールの例としては、グリップ(grip)、すなわち、溝、歩道、くぼみ、栗石、またはスピードバンプの存在に関連付けられた道路の変形の高さおよび深さが挙げられる。
【0012】
したがって、所定の状況において、調整システム1は、危険、不快、また反直感であり得る、かなり人工的な運転感覚をドライバに与える。
【0013】
セットポイントモニタリングブランチ2は、主に、少数の道路変形、すなわち、例えば高さの低い歩道などの主に0~5Hzの低周期に関する情報の上昇を低減する。比較として、道路における砂粒(grains)の周波数は、約50Hzであり、栗石の周波数は、その大きさによるが、5~30Hzである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
自動車メーカーは、測定ステアリングホイールトルクCvm、したがって、感じられたステアリングホイールトルクによって、ドライバが道路プロフィールに関連する情報、特に低周波数変形に関する情報を得ることを可能にしたい。したがって、測定ステアリングホイールトルクCvmによって、ドライバが常に車両の軌道を、調整システムの機能のすべてを劣化させることなく、判定できるようにしなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的は、以下の自動車用パワーステアリングシステムを提案することによって、上記欠点の全てまたは一部を改善することである。この自動車用パワーステアリングシステムは、ステアリングホイールと、閉ループ調整システムによって制御されるアシストモータとを備える。この調整システムは、測定ステアリングホイールトルクおよびアシストモータのモータトルクの合計に相当するRFeから、ドライバに感じさせたいステアリングホイールトルクとして定義されるセットポイントステアリングホイールトルクを減算することによって、アシストモータのモータトルクの一成分(<<偏差(deviation)モータトルク>>と称す)を計算する少なくとも1つの<<セットポイントモニタリング>>ブランチを用いることによって、アシストモータのモータトルクを測定ステアリングホイールトルクの関数として決定する。調整システムは、偏差モータトルクが、特に車速および測定ステアリングホイールトルクに基づく三次元マッピングによって決定されるゲインと乗算されることを特徴とする。
【0016】
アシストモータのトルク(<<モータトルク>>と称す)は、車両の車輪の方向を変えようとしているドライバをアシストするように、アシストモータによってパワーステアリングシステムのラックに加えられるトルクに相当する。
【0017】
測定ステアリングホイールトルクは、ドライバがパワーステアリングシステムのステアリングホイールに加える力(ドライバが感じるステアリングホイールトルクと同じ)に相当すると定義する。
【0018】
セットポイントステアリングホイールトルクは、ドライバに感じさせたいステアリングホイールトルクである。セットポイントステアリングホイールトルクは、第1のアシスト法則を適用することによって、RFe、すなわち、モータトルクおよび測定ステアリングホイールトルクの合計の関数として決定される。
【0019】
本発明によれば、セットポイントモニタリングブランチは、偏差モータトルクを、三次元マッピングによって車速および測定ステアリングホイールトルクの関数として決定されるゲインと乗算する。
【0020】
したがって、セットポイントモニタリングブランチによって決定されたモータトルクの成分は、可変である。
【0021】
好ましくは、ゲインは、0~1である。
【0022】
したがって、モータトルクの計算においてセットポイントモニタリングブランチの成分の値を低減することができる、すなわち、決定されたモータトルクは、本発明を用いずに適用された値よりも小さくなる。モータトルクを低減すれば、車両の車輪の方向を変更または維持しようとしているドライバに与えられるアシストが低減されることによって、運転体験を改善することができる。したがって、測定ステアリングホイールトルク、すなわち、ドライバが感じるステアリングホイールトルクは、より大きくなる。
【0023】
特に、ドライバは、道路の低周波での変形をより良く感じるようになる。
【0024】
好適には、ゲインは、複数の入力パラメータ、ここでは、少なくとも2つの入力パラメータ、すなわち、車速および測定ステアリングホイールトルクを使用する三次元マッピングによって決定される。
【0025】
したがって、ゲインは、車両の使用状況(life situation)を正確かつ完全に特徴付けるパラメータの関数として調節される。
【0026】
本発明の特徴によれば、ゲインは、車両の長軸方向の速度の関数として可変である。
【0027】
本発明の特徴によれば、ゲインは、測定ステアリングホイールトルクの絶対値の関数として可変である。
【0028】
本発明の特徴によれば、三次元マッピングは、ゲインが厳密に1未満である少なくとも1つの感覚改善領域と、ゲインが厳密に1に等しい少なくとも1つのアシスト領域とを備える。
【0029】
したがって、少なくとも1つの感覚改善領域において、本発明を用いずに決定されたモータトルクよりも小さいモータトルクによって、道路プロフィールの感覚を改善することができ、少なくとも1つのアシスト領域において、モータトルクは、本発明を用いずに決定されたモータトルクと同じであり、車両の車輪の方向を変えようとしているドライバをアシストする。
【0030】
本発明の特徴によれば、第1のアシスト領域は、所定のステアリングホイールトルク閾値を超える範囲に存在する。
【0031】
測定ステアリングホイールトルクが所定のステアリングホイールトルクよりも大きい場合、ドライバは、車両の車輪の方向を変更して、曲がった軌道をとろうとしている。したがって、パワーステアリングシステムは、そのような意図のドライバをアシストするために、最大性能、すなわち、本発明を用いずに決定されるモータトルクと同じモータトルクを発揮しなければならない。
【0032】
本発明の特徴によれば、所定のステアリングホイールトルク閾値は、測定ステアリングホイールトルクセンサの測定範囲以下である。
【0033】
本発明の特徴によれば、所定のステアリングホイールトルク閾値は、例えば、5Nm以下、好ましくは3Nm以下、またはさらに2Nm以下である。
【0034】
本発明の特徴によれば、第1の感覚改善領域の範囲は、所定の車速閾値以上であり、かつ測定ステアリングホイールトルクについては、所定のステアリングホイールトルク閾値以下である。
【0035】
測定ステアリングホイールトルクが所定のステアリングホイールトルクよりも小さい場合、ドライバは、実質的に直線軌道をとることを望んでいる。したがって、パワーステアリングシステムは、ドライバが車両の車輪の方向を変更することをアシストするよりも、道路プロフィールの感覚を助長しなければならない。
【0036】
したがって、車速が所定の車速閾値よりも大きく、かつ測定ステアリングホイールトルクが所定のステアリングホイールトルクよりも小さい場合、ゲインは、0と1との間で可変である。
【0037】
好ましくは、ゲインは、測定ステアリングホイールトルクがゼロと所定のステアリングホイールトルク閾値との間にある場合、0と1との間で直線状に変化する。
【0038】
本発明の特徴によれば、ゲインは、測定ステアリングホイールトルクが実質的に0に等しく、かつ車速が上昇(ascent)車速閾値、すなわち、プロフィールまたは上昇道路を感じる必要性がパワーステアリングシステムの機械的摩擦の感覚を低減する必要性に勝る場合の閾値よりも大きい場合に、実質的に0に等しい。上昇車速閾値は、所定の車速閾値よりも高い。
【0039】
これにより、車両が実質的に直線状の低い測定ステアリングホイールトルクかつ相対的に高い速度(すなわち、上昇車速閾値よりも大きな速度)で変位する場合は、道路プロフィールの感覚ができるだけ大きく改善される。
【0040】
上昇車速閾値より低く、測定ステアリングホイールトルクが実質的に0に等しい場合、ゲインは、車速がゼロと上昇車速閾値との間で、直線状に、または好ましくは非直線状に、変化する。実際に、車速が上昇車速閾値よりも低い場合、パワーステアリングシステムは、ドライバが摩擦などのステアリングシステムの機械的挙動の不備を感じないように、より効率的でなければいけなく、そしてステアリングホイールの復帰に関連して、操縦の快適さを改善しなければならない。道路プロフィールの感覚および操縦の快適さに関連して、ドライバの楽しみと安全との間に妥協点を見出さなければならない。
【0041】
本発明の特徴によれば、所定の速度閾値は、80km/h以下、好ましくは60km/h以下、あるいはさらに25km/h以下である。
【0042】
本発明の特徴によれば、第2のアシスト領域の範囲は、車速ゼロと所定の車速閾値との間であり、かつ所定のステアリングホイールトルク閾値よりも低い低速ステアリングホイールトルク閾値と所定のステアリングホイールトルク閾値との間である。
【0043】
車速が0と所定の車速閾値との間にあり、かつ測定ステアリングホイールトルクが低速ステアリングホイールトルク閾値と所定のステアリングホイールトルク閾値との間にある場合、車両は、駐車操作状況または操縦状況にある。したがって、パワーステアリングシステムは、ドライバが車両の車輪の方向を変更するのをアシストすることを促進しなければならない。そのため、ゲインは、1に等しい。
【0044】
本発明の特徴によれば、低速ステアリングホイールトルク閾値は、1Nm以下、または0.5Nm以下、あるいはさらに0.25Nm以下である。
【0045】
本発明の特徴によれば、第2の感覚改善領域の範囲は、車速ゼロから所定の車速閾値までであり、かつ測定ステアリングホイールトルクから低速ステアリングホイールトルク閾値までである。
【0046】
したがって、パワーステアリングシステムは、非常に低い速度において、ドライバの道路プロフィールの感覚を助長する。
【0047】
本発明は、非限定の例として与えられ、添付の図面を参照して説明される、本発明に係る実施形態に関する以下の記載からより良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】
図1は、本発明に係る、車速および測定ステアリングホイールトルクの関数としてのゲインの三次元マッピングを示す。
【
図2】
図2は、本発明に係るセットポイントモニタリングブランチを示す。
【
図3】
図3は、関連技術において公知であり、既に開示されている調整システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、本発明に係る、長軸方向車速V
vおよび測定ステアリングホイールトルクC
vmの関数としてのゲインGの三次元マッピング3を示す。長軸方向車速V
vは、時間当たりのキロメータ(km/h)の単位で表され、測定ステアリングホイールトルクC
vmは、ニュートンメータ(Nm)の単位で表される測定ステアリングホイールトルクC
vmの絶対値である。
【0050】
三次元マッピング3は、ゲインGが厳密に1未満である2つの感覚改善領域5、7と、ゲインGが厳密に1である2つのアシスト領域4、6とを含む。
【0051】
以下の数値および三次元マッピングは、例として与えられ、
図1に示す本発明の実施形態を参照する。
【0052】
第1のアシスト領域4は、2Nmに等しい所定のステアリングホイールトルク閾値Cvpを超える範囲に存在する。
【0053】
第1の感覚改善領域5の範囲は、25km/hに等しい所定の車速閾値Vvp以上であり、かつ測定ステアリングホイールトルクCvmがゼロから所定のステアリングホイールトルク閾値Cvpまでとなる範囲である。
【0054】
ゲインは、測定ステアリングホイールトルクCvmが実質的に0に等しく、かつ車速Vvが、所定の車速閾値Vvpよりも大きな、60km/hに等しい上昇車速閾値Vvrよりも大きい場合、実質的に0に等しい。
【0055】
ゲインGは、車速Vvが上昇車速閾値Vvrよりも大きい場合、測定ステアリングホイールトルクCvmと所定のステアリングホイールトルク閾値Cvpとの間では、0と1との間で直線状に変化する。
【0056】
上昇車速閾値Vvrより下で、測定ステアリングホイールトルクCvmが実質的に0に等しい場合、ゲインGは、直線状に変化する。
【0057】
ゲインGは、測定ステアリングホイールトルクCvmと所定のステアリングホイールトルク閾値Cvpとの間では、0と1との間で直線状に変化する。
【0058】
第2のアシスト領域6の範囲は、車速Vvゼロと所定の車速閾値Vvpとの間にあり、かつ所定のステアリングホイールトルク閾値Cvpよりも低い、0.5Nmに等しい低速ステアリングホイールトルク閾値Cvbvと所定のステアリングホイールトルク閾値Cvpとの間にある。
【0059】
第2の感覚改善領域7の範囲は、車速Vvゼロから所定の車速閾値Vvpまでであり、かつ測定ステアリングホイールトルクCvmゼロから低速ステアリングホイールトルク閾値Cvbvまでである。
【0060】
図2は、本発明に係る調整システムのセットポイントモニタリングブランチ2を示す。
【0061】
第1のステップにおいて、セットポイントモニタリングブランチは、測定ステアリングホイールトルクおよびモータトルクの合計RFeに対応する信号からセットポイントステアリングホイールトルク信号Cvcを減算することによって偏差モータトルクTOLを決定する。
【0062】
第2のステップCにおいて、セットポイントモニタリングブランチは、
図1に示す三次元マッピング3を使用してゲインGを決定する。したがって、第2のステップCは、入力として、車速V
vおよび測定ステアリングホイールトルクC
vmの絶対値Dを受け取る。
【0063】
最後に、セットポイントモニタリングブランチ2’は、偏差モータトルクTOLとゲインGとを乗算して、可変偏差モータトルクTOLvを決定するステップBを行う。
【0064】
ゲインGが0から1に変化する際、可変偏差モータトルクの値は、偏差モータトルクTOLよりも低い。
【0065】
このように、セットポイントモニタリングブランチ2’は、電動パワーステアリングのアシストモータのモータトルクC
mの数分の1に相当する可変偏差モータトルクTOL
vを計算する。
図3に示す関連技術のように、モータトルクC
mは、可変偏差モータトルクTOL
v、比例モータトルクC
mp、および微分モータトルクC
mdの合計である。
【0066】
したがって、セットポイントモニタリングにおけるセットポイントモニタリングブランチ2’の重みは、測定ステアリングホイールトルクCvmおよび車速Vvによって特徴付けられる車両の使用状態(life conditions)の関数として変化する。
【0067】
車両が回転を多く行う場合、すなわち、測定ステアリングホイールトルクCvmが大きい場合、より詳細には、所定のステアリングホイールトルクCvpよりも大きい場合、車両は、第1のアシスト領域4に存在する。この場合、ゲインGは、1に等しい。したがって、偏差モータトルクTOLは、可変偏差モータトルクTOLvに等しい。セットポイントモニタリングブランチ2’によってモータトルクCmの上記計算において取られる部分は、最大である。これは、車両の車輪の方向を変更するためにドライバアシストモータによって与えられるアシストが最大であることを意味する。道路変形に対するドライバの感覚を改善するよりも、車両の車輪の方向を変更することをアシストすることが優先される。
【0068】
車両が実質的に直線上を走行する場合、すなわち、測定ステアリングホイールトルクCvmが実質的に0に等しい場合、車両の車輪の方向を変更するためにアシストモータによって与えられるアシストは、道路プロフィールの感覚の改善に対して優先されない。実際に、ドライバは、車両の車輪を操縦する際のアシストを受けることよりも、車両の車輪の向きを知ることのほうを好む。したがって、ゲインG×偏差モータトルクTOLは、0に等しいので、可変偏差モータトルクTOLvは、0に等しい。この車両の使用状況において、セットポイントモニタリングブランチ2’をモータトルクCmの計算に組み入れることは抑制される。
【0069】
しかし、セットポイントモニタリングブランチ2’が抑制される、すなわち、ゲインGが0に等しいのは、車両が上昇車速閾値Vvrよりも大きな速度Vvに到達した場合だけである。実際に、車速Vvが上昇車速閾値Vvrよりも低い場合、セットポイントブランチは、パワーステアリングシステムの振動および機械的摩擦に対するドライバの感覚を低減できる。
【0070】
ドライバが車両を操縦して駐車操作を行う場合、車両は、第2のアシスト領域6に存在する。ゲインGは、最大値をとり、車両の操縦を容易にし、パワーステアリングシステムの振動および機械的摩擦に対するドライバの感覚を制限する。
【0071】
最後に、三次元マッピング3は、ドライバの感覚を乱し得るゲインの急な変化を生じさせないように、ゲインGをアシスト領域4、6と0に等しいゲインとの間で直線状に変化させる。
【0072】
三次元マッピング3は、ゲインGをアシスト領域4、6と0に等しいゲインとの間で直線状に変化させることができないこともある。
【0073】
当然ながら、本発明は、本明細書に記載された実施形態や添付の図面に示された実施形態に限定されない。特に種々の要素の構成の観点から、あるいは技術的な均等物による置き換えによって、本発明の保護の範囲を逸脱することなく、変更が可能である。