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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】金属錯体
(51)【国際特許分類】
   C07F 15/00 20060101AFI20221025BHJP
   B01J 31/22 20060101ALI20221025BHJP
   B01J 31/24 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
C07F15/00 E CSP
B01J31/22 Z
B01J31/24 Z
C07F15/00 B
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021035264
(22)【出願日】2021-03-05
(62)【分割の表示】P 2018532106の分割
【原出願日】2016-12-19
(65)【公開番号】P2021098722
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2021-04-02
(31)【優先権主張番号】1522437.1
(32)【優先日】2015-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】501323583
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ リーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン・フィリップ・マースデン
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・コルンバ・マッゴーワン
(72)【発明者】
【氏名】ロバータ・ラナーロ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ジョン・ブラッカー
【審査官】安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-516649(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1618822(CN,A)
【文献】特表平10-508055(JP,A)
【文献】特表2001-510443(JP,A)
【文献】特表2004-537588(JP,A)
【文献】国際公開第2007/147897(WO,A1)
【文献】特開2003-286294(JP,A)
【文献】特表2004-537583(JP,A)
【文献】特表2019-501165(JP,A)
【文献】Ito, Masato; Tejima, Noriko; Yamamura, Masahiro; Endo, Yoshinori; Ikariya, Takao,Synthesis and Structure of Protic Amine Tethered Rhodium(III) Peralkylcyclopentadienyl Complexes,Organometallics,2010年,29(8),1886-1889
【文献】Philippopoulos, Athanassios I.; Hadjiliadis, Nick; Hart, Claire E.; Donnadieu, Bruno; Mc Gowan, Patr,Transition-Metal Derivatives of a Functionalized Cyclopentadienyl Ligand. 15. Synthesis and Struc,Inorganic Chemistry,1997年,36(9),1842-1849
【文献】Philippopoulos, Athanassios I.; Poilblanc, Rene; Hadjiliadis, Nick,Organometallic Rh(I) and Rh(III) complexes with [2-(dimethylamino)ethyl]cyclopentadiene,Inorganica Chimica Acta,1998年,283(1),24-29
【文献】Jutzi, Peter; Kristen, Marc O.; Neumann, Beate; Stammler, Hans-Georg,Rhodium and Iridium Complexes with the 1-(2-(Dimethylamino)ethyl)-2,3,4,5-tetramethylcyclopentadieny,Organometallics,1994年,13(10),3854-61
【文献】Hanasaka, Fumihiro; Fujita, Ken-Ichi; Yamaguchi, Ryohei,Synthesis of New Iridium N-Heterocyclic Carbene Complexes Bearing a Functionalized Cp* Ligand and,Organometallics,2006年,25(19),4643-4647
【文献】Paisner, Sara N.; Lavoie, Gino G.; Bergman, Robert G.,Formation of planar-chiral alkylphosphine- and aniline-substituted cyclopentadienyl metal complex,Inorganica Chimica Acta,2002年,334,253-275
【文献】Esteruelas, Miguel A.; Fernandez, Francisco J.; Lopez, Ana M.; Onate, Enrique,Stabilization of a Chelate Tautomer of Phenylacetylide,Organometallics,2003年,22(9),1787-1789
【文献】Paisner, S. N.; Bergman, R. G.,High performance liquid chromatography for facile analytical separation of the enantiomers of chi,Journal of Organometallic Chemistry,2001年,621(1-2),242-245
【文献】Grotjahn, Douglas B.; Joubran, Camil; Combs, David; Brune, Daniel C.,High Arenophilicity and Water Tolerance in Direct Derivatization of Peptides and Proteins by Metal,Journal of the American Chemical Society,1998年,120(45),11814-11815
【文献】Varela-Fernandez, Alejandro; Garcia-Yebra, Cristina; Varela, Jesus A.; Esteruelas, Miguel A.; Saa,Osmium-Catalyzed 7-endo Heterocyclization of Aromatic Alkynols into Benzoxepines,Angewandte Chemie, International Edition,2010年,49(25),4278-4281, S4278/1-S4278/23
【文献】Batuecas, Maria; Esteruelas, Miguel A.; Garcia-Yebra, Cristina; Onate, Enrique,Redox Isomerization of Allylic Alcohols Catalyzed by Osmium and Ruthenium Complexes Containing a,Organometallics,2010年,29(9),2166-2175
【文献】Li, Longjin; Zhou, Wei; Zhang, Guozheng; Pang, Zhen,Chelate ring closing and opening behavior in cyclopentadienyl cobalt(III) complexes with pendant,Journal of Organometallic Chemistry,2010年,695(4),588-594
【文献】Molander, Gary A.; Sommers, Erin M.,Chromium(III) catalyzed synthesis of allenes from propargyl derivatives via a carbometalation-elimin,Tetrahedron Letters,2005年,46(13),2345-2349
【文献】Xu, Jiansheng; Mu, Xiaoyue; Zhang, Yuetao; Su, Qing; Ni, Jianguo; Mu, Ying,Constrained geometry nitrogen-functionalized diphenylcyclopentadienyl chromium (III) complex: Sy,Journal of Chemical Research,2006年,(9),552-554
【文献】Organometallics,1999年,18(16),2944-2946
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
B01J
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
(式中、
Mは、イリジウムであり、
及びLは、独立に、ハロゲン、ニトリル、アミン、ホスフィン、又5員若しくは6員の複素環から選択され、又はL及びLは、一緒になって、ジアミン、ジホスフィン、及置換又は非置換ビピリジンから選択される二座配位子であり、
ここで、L基及びL基は、非置換であり、又はハロ、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、-OR、-NR、-CN、-SOで任意選択で置換されており、
は、Hであり、
は、H、メチル、エチル、フェニル、ベンジル、イソプロピル、又は、tert-ブチルを表し
及びRは、それぞれ独立に、H、メチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、及び、tert-ブチルから選択され、
又はR及びRは、それらが結合している、共有の、隣接の又は非隣接の炭素原子と共に5員又は6員の炭素環を一緒に形成し、
はR 、R及びRのうちの1つとは、それらが結合している原子と一緒になって3~8員の複素環を形成し、
、C 1~6アルキルであり
pは、0又は1以上であり、
nは、2、3、又は4から選択され、
mは、0、1、2、3又は4から選択され、
及び 、各出現において、独立に、H、C1~6アルキル又はC1~6ハロアルキルから選択される)
の金属錯体。
【請求項2】
pが、0である、請求項1に記載の金属錯体。
【請求項3】
式(II):
【化2】
(式中、Xは、1、2又は3つのアニオン分子であり、
Mは、イリジウムであり、
及びLは、独立に、ハロゲン、ニトリル、アミン、ホスフィン、又5員若しくは6員の複素環から選択され、又はL及びLは、一緒になって、ジアミン、ジホスフィン、及置換又は非置換ビピリジンから選択される二座配位子であり、
ここで、L基及びL基は、非置換であり、又はハロ、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、-OR、-NR、-CN、-SOで任意選択で置換されており、
は、Hであり、
は、H、メチル、エチル、フェニル、ベンジル、イソプロピル、又は、tert-ブチルを表し
及びRは、それぞれ独立に、H、メチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、及び、tert-ブチルから選択され、
又はR及びRは、それらが結合している、共有の、隣接の又は非隣接の炭素原子と共に5員若しくは6員の炭素環を一緒に形成し、
はR 、R及びRのうちの1つとは、それらが結合している原子と一緒になって員の複素環を形成し、
、C 1~6アルキルであり
pは、1以上であり、
nは、2、3、又は4から選択され、
mは、0、1、2、3又は4から選択され、
及び 、各出現において、独立に、H、C1~6アルキル又はC1~6ハロアルキルから選択される)
による化合物であってもよい、金属錯体。
【請求項4】
Xが、任意の好適なモノアニオン性、ジアニオン性又はトリアニオン性の分子から選択される、請求項3に記載の金属錯体。
【請求項5】
pが、2である、請求項3に記載の金属錯体。
【請求項6】
Xが、水酸化物イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、酢酸イオン、ギ酸イオン、フッ素酸イオン、亜フッ素酸イオン、臭素酸イオン、亜臭素酸イオン、ヨウ素酸イオン、亜ヨウ素酸イオン、塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、炭酸水素イオン、次亜フッ素酸イオン、次亜塩素酸イオン、次亜臭素酸イオン、次亜ヨウ素酸イオン、過フッ素酸イオン、過塩素酸イオン、過臭素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、クロム酸イオン、シアン酸イオン、シアン化物イオン、リン酸二水素イオン、亜リン酸二水素イオン、硝酸イオン、シュウ酸水素イオン、硫酸水素イオン、亜硫酸水素イオン、過マンガン酸イオン、亜硝酸イオン、チオシアン酸イオン、水素化物イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、過酸化物イオン、[B[3,5-(CF、B(C 、Al(OC(CF 、硫酸イオン、亜硫酸イオン、硫化物イオン、過硫酸イオン、チオ硫酸イオン、次亜硫酸イオン、リン酸水素イオン、亜リン酸水素イオン、メタケイ酸イオン、炭酸イオン、過炭酸イオン、シュウ酸イオン、安息香酸イオン、酒石酸イオン、ホウ酸イオン、ホウ化物イオン、クエン酸イオン、次亜リン酸イオン、窒化物イオン、リン酸イオン、リン化物イオン及び亜リン酸イオンから選択され、任意選択でXが、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン若しくはテトラフルオロホウ酸イオンである、請求項3に記載の金属錯体。
【請求項7】
、メチルである、請求項1~6のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項8】
mが、0又は4である、請求項1~7のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項9】
及びLが、独立に、ハロ、C1~10アルキルニトリル、又は5員若しくは6員のヘテロアリール環から選択され、又はL及びLが、一緒になって、ビピリジン若しくはC1~10アルキルジホスフィンである、請求項1~のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項10】
、メチルである、請求項1~のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項11】
nが、3である、請求項1~10のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項12】
以下から選択される、金属錯体。
【化3】
【化4】
【請求項13】
化合物が、以下から選択される、請求項3に記載の金属錯体。
【化5】
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の金属錯体を反応混合物に添加することを含む、触媒プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属錯体に関する。金属錯体は、テザーリガンドを含む。金属錯体は、触媒反応において、触媒として使用されうる。触媒反応は、例えば水素借用のための、自動トランスファープロセスでありうる。
【背景技術】
【0002】
文献では、不均一系の触媒と均一系の触媒との双方が、水素の自動トランスファープロセス又は水素借用を促進すると報告されている。不均一系の触媒は、均一系の触媒よりもいくつかの利点を有し、例えば、それらの、反応混合物からの回収の容易さである。しかし、高圧及び高温が必要とされることが多く、したがって、均一系の触媒の使用が、不均一系の触媒よりも、低温で高選択的に反応が起きることを可能にすることが多い。
【0003】
Griggと共同研究者らは、1981年に、均一系の触媒を介した最初の水素借用反応を報告した(R.Grigg,T.R.B.Mitchell,S.Sutthivaiyakit and N.Tongpenyai,J.chem.Soc.Chem.Commun,1981,611~612)。著者らは、その場で生成された金属ホスフィン錯体を使用して、アルコールによるアミンのN-アルキル化を達成し、金属ホスフィン触媒を予備形成した。イリジウム、ルテニウム及びロジウム錯体が調べられ、最良の結果が、予備形成されたロジウム-ホスフィン錯体、RhH(PPhで得られた。基質の範囲は、比較的揮発性であるアルコールのみに限定された。
【0004】
Griggらによって報告されたこの最初の例以来、多大な努力が、アミンのアルキル化のためのより良好な触媒を開発するためになされてきた。いくつかの他の錯体が、水素借用反応において合成され、試験された。最良の活性及び収率をもたらした触媒としては、ルテニウム系触媒が挙げられた。
【0005】
1982年に、Murahashiと共同研究者らは、脂肪族アミン及び[RuCl(PPh]を有するアリールアミンが、[RuH(PPh]を使用したアルコールでのN-アルキル化のための要求にかなう基質であることを明示した(S.-I.Murahashi,K.Kondo and T.Hakata,Tetrahedron Lett.,1982,23,229~232)。これらの2つの例における基質の範囲は、依然としてきわめて限定的であり、反応条件は厳しく、高温(180℃)を必要としている。
【0006】
更に最近、より良好な触媒系が報告された。Williamsと共同研究者らは、ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(dppf)又はDPEphosのいずれかを添加することにより活性化される[Ru(Ρ-シメン)Clが、第一級アルコールによるアミンのアルキル化のための活性な触媒系であることを明示した(M.H.S.A.Hamid,C.L.Allen,G.W.Lamb,A.C.Maxwell,H.C.Maytum,A.J.A.Watson and J.M.J.Williams,J.Am.Chem.Soc.,2009,131,1766~1774)に概要が記されている)。ホスフィン配位子のうちの1つである添加剤を添加することにより、良好な収率を達成することができる。[Ru(Ρ-シメン)Clが触媒として単独で使用されたとき、N-アルキル化は緩やかに進行した。この触媒系は、官能基の広い耐性を示したが、これは、第二級アルコールが基質として使用されたときには作用しなかった。反応を促進するために更なる配位子を添加することは、望ましくない。更に、実行可能な反応速度をもたらすために添加剤に信頼を置くことは、望ましくない。したがって、追加の配位子を含有させる必要性を取り除くことが、本発明の特定の実施形態の目的である。
【0007】
Bellerと共同研究者らは、このルテニウム錯体のファミリーを更に改善し、[Ru(CO)12]が、第一級アルコールと第二級アルコールとの双方を使用して第一級アミン及び第二級アミンのN-アルキル化を促進することを報告した(A.Tillack,D.Hollmann,D.Michalik and M.Beller,Tetrahedron Lett.,2006,47,8881~8885、及びA.Tillack,D.Hollmann,K.Mevius,D.Michalik,S.Bahn and M.Beller,European J.Org.Chem.,2008,4745~4750)。より高い収率を得るために、ホスフィン配位子が触媒量で添加された。
【0008】
二量体イリジウム錯体η-(ペンタメチルシクロペンタジエニル)イリジウム(III)ジクロリド[CpIrClもまた、水素借用において適用されてきた(参考のために、K.Fujita and R.Yamaguchi,Synlett,2005,560~571を参照されたい)。このイリジウム二量体は、第一級及び第二級アミンのN-アルキル化において有効に使用されてきた。第一級及び第二級アルコールが使用されうるが、嵩高い基質では、生成物を高収率で得るために触媒負荷がイリジウム5mol%まで増加した。耐性のありうる官能基はきわめて広く、電子吸引基と電子供与性基との双方、例えばエーテル、エステル、ハロゲン、ニトロの各基及びニトリル基を含む。
【0009】
他のイリジウム錯体、例えば二量体[CpIrI(SCRAM)は、プロトン性溶媒中、例えば水及びt-アミルアルコール中で、より良好な活性を示してきた。
【0010】
最初の例のうちの1つは、二量体[CpIrI(SCRAM)であり、これは、塩基を添加しなくても水中で良好な収率をもたらし、進行させた(O.Saidi,A.J.Blacker,M.M.Farah,S.P.Marsden and J.M.J.Williams,Chem.Commun.,2010,46,1541~1543)。
【0011】
最近、単量体のイリジウム触媒が、溶媒として水を使用するN-アルキル化反応において高い活性を示した(R.Kawahara,K.Fujita and R.Yamaguchi,Adv.Synth.Catal.,2011,353,1161~1168)。基質の範囲は、広かったが、高収率を達成するためには高濃度(7M)が必要とされ、第二級アルコールは、第一級アミンのアルキル化のためにしか有効に使用できなかった。
【0012】
水素借用において使用される触媒の活性を改善するために、N-複素環式カルベン(NHC)を含有する新規なイリジウム錯体が調べられた(A.da Costa,M.Viciano,M.Sanau,S.Merino,J.Tejeda,E.Peris and B.Royo,Organometallics,2008,27,1305~1309;A.Prades,R.Corberan,M.Poyatos and E.Peris,Chem.-A.Eur.J.,2008,14,11474~11479;D.Gnanamgari,E.L.O.Sauer,N.D.Schley,C.Butler,C.D.Incarvito and R.H.Crabtree,Organometallics,2009,28,321~325)。これらの触媒で得られた収率は、[CpIrClで得られた結果に匹敵したが、基質の範囲は、より限定的であった。
【0013】
一般に、イリジウム二量体[CpIrClが、水素借用プロセスのための強力な触媒であると受け入れられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【文献】R.Grigg,T.R.B.Mitchell,S.Sutthivaiyakit and N.Tongpenyai,J.chem.Soc.Chem.Commun,1981,611~612
【文献】S.-I.Murahashi,K.Kondo and T.Hakata,Tetrahedron Lett.,1982,23,229~232
【文献】M.H.S.A.Hamid,C.L.Allen,G.W.Lamb,A.C.Maxwell,H.C.Maytum,A.J.A.Watson and J.M.J.Williams,J.Am.Chem.Soc.,2009,131,1766~1774
【文献】A.Tillack,D.Hollmann,D.Michalik and M.Beller,Tetrahedron Lett.,2006,47,8881~8885
【文献】A.Tillack,D.Hollmann,K.Mevius,D.Michalik,S.Bahn and M.Beller,European J.Org.Chem.,2008,4745~4750
【文献】K.Fujita and R.Yamaguchi,Synlett,2005,560~571
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、好ましくは改善された触媒活性を有する代替的な金属錯体を提供することを目的とする。触媒反応において、金属錯体の改良された(すなわち低減された)負荷を有する金属錯体を提供することが、本発明の目的である。本発明の金属錯体を含む触媒反応の速度を増大させることもまた、本発明の目的である。本発明は、基質上の官能基への高い耐性;基質、第一級又は第二級アルコール、及び第一級又は第二級アミン(基質、アルコール及びアミンは、本発明の金属錯体によって媒介される触媒反応中に存在する)における置換についてのこれらの改善を達成することを目的とする。従来技術の金属錯体が明示してきた溶媒に対する耐性は、限定的であった。したがって、本発明は、極性溶媒、双極性溶媒及び無極性溶媒、例えば水及び他の非プロトン性溶媒、DMF、NMP又はDMSO等の溶媒の範囲内で触媒活性を有する金属錯体を提供することを目的とする。本発明の特定の実施形態は、キラルなアミンを調製するエナンチオ選択的な方法論を潜在的に提供することを目的としている。
【0016】
本発明は、上記の目的のうちのいくつか又はすべてを満たし、従来技術の問題を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によって、テザーリガンドを有する金属錯体が提供される。テザーリガンドは、置換された又は非置換のシクロペンタジエニルアルキルアミン、例えばテトラメチル-シクロペンタジエニルアルキルアミンであってもよい。本発明の第1の態様では、式(I)
【化1】
(式中、
Mは、遷移金属であり、
及びLは、独立に、ハロゲン、ニトリル、アミン、ホスフィン、ホスファイト、スルホン酸エステル、N-複素環式カルベン、又は5員若しくは6員の複素環から選択され、又はL及びLは、一緒になって、ジアミン、ジホスフィン、ジホスファイト、ジスルホン酸エステル、アミノ酸又はその誘導体、アミノアルコール、アミノスルホンアミド、N-複素環式カルベン、ジケトネート、及び置換又は非置換ビピリジンから選択される二座配位子であり、
ここで、L基及びL基は、非置換であり、又はハロ、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、-OR、-NR、-CN、-SOで任意選択で置換されており、
及びRは、それぞれ独立に、H、置換された又は非置換の、C1~14アルキル、C1~14ハロアルキル、C3~8炭素環、及び3~8員の複素環、フェニル置換C1~14アルキル、フルオラスタグ又は固体支持体を表し、
又はR及びRは、一緒になって3~8員の複素環を形成し、
及びRは、それぞれ独立に、H、ハロ、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル、C3~6シクロアルキル、及び-ORA1から選択され、
又はR及びRは、それらが結合している、共有の、隣接の又は非隣接の炭素原子と共に3~8員の炭素環(任意選択で5員又は6員の炭素環)を一緒に形成し、
又はR及びRのうちの1つと、R及びRのうちの1つとは、それらが結合している原子と一緒になって3~8員の複素環を形成し、
は、ハロ、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル及びC3~6シクロアルキル、Cアリール、又は5員若しくは6員のヘテロアリールから選択され、
又は2つの隣接するR基は、それらが結合している原子と一緒になって5員若しくは6員の炭素環を形成し、
pは、0又は1以上であり、
nは、1~10から選択され、
mは、0、1、2、3又は4から選択され、
、R及びRA1は、各出現において、独立に、H、C1~6アルキル又はC1~6ハロアルキルから選択される)
の金属錯体が提供される。
【0018】
当業者には明らかなように、式(I)の金属錯体は、pの値に依存する非イオン性又はカチオン性分子であってもよい。pが0であるとき、式(I)の金属錯体は非イオン性である。pが1又は2であるとき、金属錯体はカチオン性である。実施形態では、pは0又は2である。実施形態では、pは0である。実施形態では、pは2である。pが1又は2であるとき、金属錯体は、式(II)による化合物でありうる。したがって、本発明は、式(II):
【化2】
(式中、Xは、1、2又は3つのアニオン分子であり、pは1以上であり、他の基は、本明細書のいずれかにおいて定義された定義に基づく)
による化合物を提供する。
【0019】
Xは、任意の1、2又は3つの好適なモノアニオン性、ジアニオン性又はトリアニオン性の分子から選択されてもよい。Xは、水酸化物イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、酢酸イオン、ギ酸イオン、フッ素酸イオン、亜フッ素酸イオン(fluorite)、臭素酸イオン、亜臭素酸イオン、ヨウ素酸イオン、亜ヨウ素酸イオン(iodite)、塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、炭酸水素イオン、次亜フッ素酸イオン、次亜塩素酸イオン、次亜臭素酸イオン、次亜ヨウ素酸イオン、過フッ素酸イオン(perfluorate)、過塩素酸イオン、過臭素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、クロム酸イオン、シアン酸イオン、シアン化物イオン、リン酸二水素イオン、亜リン酸二水素イオン、硝酸イオン、シュウ酸水素イオン、硫酸水素イオン、亜硫酸水素イオン、過マンガン酸イオン、亜硝酸イオン、チオシアン酸イオン、水素化物イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、過酸化物イオン、[B[3,5-(CF(BARF)、B(C 、Al(OC(CF 、硫酸イオン、亜硫酸イオン、硫化物イオン、過硫酸イオン、チオ硫酸イオン、次亜硫酸イオン、リン酸水素イオン、亜リン酸水素イオン、メタケイ酸イオン、炭酸イオン、過炭酸イオン、シュウ酸イオン、安息香酸イオン、酒石酸イオン、ホウ酸イオン、ホウ化物イオン、クエン酸イオン、次亜リン酸イオン、窒化物イオン、リン酸イオン、リン化物イオン及び亜リン酸イオンから選択されてもよい。
【0020】
任意選択で、Xは、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン又はテトラフルオロホウ酸イオンから選択される、1、2又は3つの(任意選択で1又は2つの)アニオン分子であってもよい。
【0021】
好ましくは、Xは、1又は2つのアニオン分子の存在を表してもよい。分子の数は、金属錯体の電荷及びアニオン上の電荷に依存する。例えば、pは2であってもよく、したがって金属錯体は+2の電荷を有し、アニオンは、上に挙げたXのうちの任意のものであってもよく、任意選択で、ヘキサフルオロリン酸、ヘキサフルオロアンチモン酸又はテトラフルオロホウ酸の、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンであってもよく、これらは双方とも-1の電荷を有しており、したがって、Xは、2Cl、2PF、2BF又は2SbFを表してもよい。
【0022】
同様に、pは1であってもよく、したがってXは、Cl、PF、BF又はSbFのそれぞれのうちの1つを表してもよい。
【0023】
Xは、Cl、PF、BF、SbF、2Cl、2PF、2BF又は2SbFを表してもよい。
【0024】
任意選択で、Rは、C1~6アルキル、例えばメチルである。任意選択で、mは、0又は4、例えば4である。
【0025】
好ましい実施形態では、mは4であり、Rはメチルである。したがって、式(I)のシクロペンタジエニル環は、テトラメチルシクロペンタジエニル環であってもよい。したがって、好ましい一実施形態では、式(I)の金属錯体は、式(III)による金属錯体である。
【化3】
【0026】
本明細書で開示される任意のカチオン性化合物は、1、2又は3つの(任意選択で1又は2つの)アニオン分子であるXを更に含んでもよい。式(III)の金属錯体は、式(IVa)又は(IVb)による金属錯体でありうる。
【化4】
【0027】
Mは、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、コバルト、ニッケル、パラジウム、白金、鉄又はオスミウムであってもよい。Mは、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、コバルト、ニッケル、パラジウム又は白金であってもよい。好ましい実施形態では、Mは、イリジウム又はロジウムである。任意選択で、Mは、イリジウムである。
【0028】
化合物が式(IVa)による化合物である実施形態では、Mはイリジウムであり、nは3である。化合物が式(IVb)による化合物である実施形態では、Mは、イリジウム又はロジウムである。化合物が式(IVb)による化合物である実施形態では、Mは、イリジウム又はロジウムであり、Xは、本明細書のいずれかにおいて見出されるXの定義から選択される1つ又は2つのアニオン、例えばCl、PF、BF、SbF、2Cl、2PF、2BF又は2SbFである。
【0029】
及びLは、独立に、ハロゲン、ニトリル、アミン、ホスフィン、又は5員若しくは6員の複素環から選択されてもよく、又はL及びLは、一緒になって、ジアミン、ジホスフィン、及び置換若しくは非置換ビピリジンから選択される二座配位子であり、
ここで、L基及びL基は、非置換であり、又はハロ、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、-OR、-NR、-CN、-SOで任意選択で置換されている。
【0030】
及びLは、独立に、以下から選択される:ハロ、C1~10アルキルニトリル、C6~10アリールニトリル、C3~10シクロアルキルニトリル、C5~10ヘテロアリールニトリル、C3~10ヘテロシクロアルキルニトリル、ビピリジン、C1~10アルキルアミン、C6~10アリールアミン、C3~10シクロアルキルアミン、C5~10ヘテロアリールアミン、C3~10ヘテロシクロアルキルアミン、C1~10アルキルホスフィン、C6~10アリールホスフィン、C3~10シクロアルキルホスフィン、C5~10ヘテロアリールホスフィン、C3~10ヘテロシクロアルキルホスフィン、C1~10アルキルスルホネート、C6~10アリールスルホネート、C3~10シクロアルキルスルホネート、C5~10ヘテロアリールスルホネート、C3~10ヘテロシクロアルキルスルホネート、C3~6シクロアルキルホスフィン、C1~10アルキルスルホン酸エステル、N-ヘテロ環状カルベン又はピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル;又はL及びLは、一緒になって、以下から選択される二座配位子である:ビピリジン、C1~10アルキルジアミン、C6~10アリールジアミン、C3~10シクロアルキルジアミン、C5~10ヘテロアリールジアミン、C3~10ヘテロシクロアルキルジアミン、C1~10アルキルジホスフィン、C6~10アリールジホスフィン、C3~10シクロアルキルジホスフィン、C5~10ヘテロアリールジホスフィン、C3~10ヘテロシクロアルキルジホスフィン、C1~10アルキルジスルホネート、C6~10アリールジスルホネート、C3~10シクロアルキルジスルホネート、C5~10ヘテロアリールジスルホネート、C3~10ヘテロシクロアルキルジスルホネート、アミノ酸(全20種のタンパク質原性アミノ酸、非中性α-アミノ酸、例えばフェニルグリシン及びtert-ロイシン、及びβ-アミノ酸、例えば3-アミノプロピオン酸を包含する)又はそれらの誘導体、N-ヘテロ環状カルベン、含まれるのはイミジザロリリデン、イミダゾリニリデン、チアゾリリデン、オキサゾリリデン、トリアゾリリデン、ベンズイミダゾリリデン、ピロリジニリデン、「アブノーマル」イミダゾリリデン又はジアミドカルベンカルベン、及びジケトネート、例えばアセチルアセトネート、1-アリール-1,3-ブタンジオネート、1-ヘテロアリール-1,3-ブタンジオネート、1,3-ジアリール-1,3-プロパンジオネート、1,3-ジヘテロアリール-1,3-プロパンジオネート及び1-アリール、3-ヘテロアリール-1,3-プロパンジオネート;
ここで、L基及びL基は、非置換であり、又はハロ、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、-OR、-NR、-CN、-SOで任意選択で置換されている。
【0031】
及びLは、独立に、水素、C1~10アルキルニトリル、C6~10アリールニトリル、C1~10アルキルアミン、C6~10アリールアミン、ホスフィン、又は5員若しくは6員の複素環から選択されてもよく、又はL及びLは、一緒になって、C1~10アルキルジアミン、C6~10アリールジアミン、ジホスフィン、及び置換若しくは非置換ビピリジンから選択される二座配位子であり、
ここで、L基及びL基は、非置換であり、又はハロ、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、-OR、-NR、-CN、-SOで任意選択で置換されている。
【0032】
及びLは、独立に、ハロゲン、C1~10アルキルニトリル、C6~10アリールニトリル、C1~10アルキルアミン、C6~10アリールアミン、ホスフィン、又は5員若しくは6員の複素環から選択されてよく、又はL及びLは、一緒になって、C1~10アルキルジアミン、C6~10アリールジアミン、C1~10アルキルジホスフィン、及び置換若しくは非置換ビピリジンから選択される二座配位子であり、
ここで、L基及びL基は、非置換であり、又はハロ、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、-OR、-NR、-CN、-SOで任意選択で置換されている。
【0033】
及びLは、独立に、ハロ、C1~10アルキルニトリル、又は5員若しくは6員のヘテロアリール環から選択され、又はL及びLは、一緒になって、ビピリジン若しくはC1~10アルキルジホスフィン(例えばPhPCHPPh)である。
【0034】
及びLは、独立に、クロロ、ヨード、アセトニトリル若しくはピリジンから選択され、又はL及びLは、一緒になって、ビピリジン若しくはPhPCHPPhである。
【0035】
好ましい実施形態では、L及びLは、クロロ、ヨード又はアセトニトリルである。
【0036】
実施形態では、pは、0、1、2又は3であってもよい。任意選択で、pは、0又は2であってもよい。
【0037】
pが0であるとき、L及びLは、好ましくはハロ、例えばClである。pが2であるとき、L及びLは、好ましくはアセトニトリルである。
【0038】
pが0でないとき、L及びLは、金属中心に供与共有結合を形成することが可能な配位子であってもよい。したがって、pが0でないとき、M-L結合及びM-L結合は、供与共有結合であってもよい。
【0039】
及びRは、独立に、H、メチル、エチル、フェニル、ベンジル、イソプロピル、tert-ブチル、フルオラスタグ、固体支持体から選択され、又はR及びRのうちの1つと、R及びRのうちの1つとは、それらが結合している原子と一緒になって5員若しくは6員の複素環を形成している。一実施形態では、RはHであり、Rは、H、メチル、エチル、フェニル、ベンジル、イソプロピル、tert-ブチル、フルオラスタグ、固体支持体から選択され、又はRと、R及びRのうちの1つとは、それらが結合している原子と一緒になって5員若しくは6員の複素環を形成している。フルオラスタグは、CHCHOCHCH17であってもよい。
【0040】
、R及びRは、Hであってもよく、Rは、H、メチル、エチル、フェニル、ベンジル、イソプロピル、tert-ブチル、フルオラスタグ及び固体支持体から選択されてもよく、又はR及びRを保持するN原子に隣接する原子上のR及びRは、R及びRが結合している原子と一緒になって5員若しくは6員の複素環を形成している。
【0041】
あるいは、R及びRは、独立に、H、メチル、エチル、フェニル、ベンジル、イソプロピル、tert-ブチル、フルオラスタグ又は固体支持体から選択されてもよく、R及びRは、それぞれ独立に、H、メチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル又はtert-ブチルから選択され、又はR及びRは、それらが結合している、共有の、隣接の又は非隣接の炭素原子と共に5員若しくは6員の炭素環を形成する。
【0042】
好ましくは、R及びRは、H及びMeから選択される。実施形態では、R及びRのうちの少なくとも1つは、Hである。そのため、実施形態では、本発明は、RとRとが双方ともHではない錯体は包含しない。
【0043】
及びRは、H、C1~6アルキル、シクロアルキル、フェニル、又は5員又は6員のヘテロアリール環であってもよく、又はR及びRのうち1つと、R及びRのうち1つとは、それらが結合している原子と一緒になって3~8員の環を形成し、又はR及びR及びそれらが結合している共有の、隣接の若しくは非隣接の炭素原子は、3~8員の(好ましくは5員若しくは6員の)シクロアルキル環若しくはシクロアルキレン環若しくはフェニル環を形成する。R及びRは、H、メチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル又はtert-ブチルであってもよい。好ましくは、R及びRは、H及びイソプロピルである。実施形態では、nは、1~6、任意選択で1~4である。
【0044】
好ましい実施形態では、nは、2、3又は4である。nが3であることが、とりわけ好ましい。実施形態で、nは3であり、R及びRは、Hである。特定の実施形態では、pが0であるときnは3であり、pが0でないときnは3~6である。
【0045】
当業者により認められるように、R及びR及びそれらが結合している共有の炭素原子が環を形成するとき、その環は、スピロ環の外観を有することになる。例えば、以下に示す構造等である:
【化5】
【0046】
当業者により認められるように、R及びR及びそれらが結合している隣接の炭素原子が環を形成するとき、その環は、以下に示す構造の外観を有してもよく、例えば以下である:
【化6】
【0047】
当業者によって認められるように、R及びR及びそれらが結合している非隣接の炭素原子が環を形成するとき、その環は、以下に示す構造の外観を有してもよく、例えば以下である:
【化7】
【0048】
好ましい一実施形態では、式(I)の金属錯体は、式(V)による金属錯体である:
【化8】
【0049】
好ましい一実施形態では、L及びLは、クロロ、ヨード又はアセトニトリルであり、R及びRは、H及びMeから選択され、pは、0又は2である。好ましい実施形態では、L及びLは、クロロ、ヨード又はアセトニトリルであり、R及びRは、H及びMeから選択され、pは、0又は2であり、pが2であるときXが存在し、Xは、2Cl又は2SbFを表す。
【0050】
本発明の金属錯体は、以下である:
【化9】
【化10】
【0051】
上に示すカチオン性種は、上に定義したXを更に含んでもよい。具体的には、Xは、2Cl又は2SbF であってもよい。Xは、2BF 、2PF 、2Cl又は2SbF であってもよい。
【0052】
本発明の金属錯体は、以下である:
【化11】
【化12】
【0053】
本発明の、特に好ましい金属錯体は、以下である:
【化13】
【0054】
一実施形態では、本発明の金属錯体は、以下ではない:
【化14】
【0055】
実施形態では、pが0であるとき、Mはロジウムではない。本発明の一実施形態では、pが0であるときMはイリジウムであり、pが2であるときMはイリジウム又はロジウムである。
【0056】
本発明の一態様では、触媒プロセスが提供される。触媒プロセスは、本発明の金属錯体を反応混合物に添加することを含む。反応混合物は、任意選択で、溶媒及び少なくとも1種の(好ましくは少なくとも2種の)出発材料を更に含む。出発材料は、任意選択で、アミン及びアルコールである。アミンは、任意選択で、第一級脂肪族アミン、第一級芳香族アミン、第一級ヘテロ芳香族アミン、第二級二脂肪族アミン、第二級二芳香族アミン、第二級ジヘテロ芳香族アミン、第二級アリール(ヘテロアリール)アミン、第二級アルキル/芳香族アミン、第二級アルキル/ヘテロ芳香族アミン、第一級スルホンアミド、第二級N-アルキルスルホンアミド、第二級N-アリールスルホンアミド、第二級N-ヘテロアリールスルホンアミド、第一級スルフィンアミド、第二級N-アルキルスルフィンアミド、第二級N-アリールスルフィンアミド、第二級N-ヘテロアリールスルフィンアミド、第一級カルバメート、第二級N-アルキルカルバメート、第二級N-アリールカルバメート、第二級N-ヘテロアリールカルバメート、第一級アミド、第二級N-アルキルアミド、第二級N-アリールアミド、第二級N-ヘテロアリールアミド、第一級尿素、第二級N-アルキル尿素、第二級N-アリール尿素、第二級N-ヘテロアリール尿素である。アルコールは、第一級脂肪族、アリル、ベンジル若しくはヘテロベンジル、又は第二級脂肪族、第二級ベンジル、第二級ヘテロベンジル又は第二級アリルであってもよい。アルコール成分とアミン成分との双方は、ハロゲン、アルキル基、アルコール、アルコキシ基、遊離アミン、アルキルアミン、カルボニル基、カルボキシル基、アルケン、ニトリル、スルフィド、スルホキシド、スルホン、スルフィンアミド、スルホンアミド、カルバメート、尿素及びアミドを含む官能性置換基を更に含んでもよい。
【0057】
このプロセスは、任意選択で、生成物を生じる工程を更に含んでもよい。任意選択で、生成物は、N-アルキル化生成物、例えばアミンである。
【0058】
溶媒は、工業的に適用可能な任意の溶媒であってよく、Henderson et al,Green CHem.,2011,13,854で検討されているもので例示されるが、これらに限定されない。任意選択で、溶媒は、トルエン、1,4-ジオキサン、2-メチルテトラヒジドロフラン、アセトニトリル、t-アミル-アルコール、t-ブタノール、酢酸イソプロピル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、水、及びそれらの混合物から選択されうる。
【0059】
本発明の実施形態は、これ以降、添付の図面を参照しながら更に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1図1は、異なるN置換基を有する本発明の金属錯体と、比較例の錯体との、反応速度を示すグラフである。
図2図2は、異なる対イオンを有する本発明の金属錯体と、比較例の錯体との、反応速度を示すグラフである。
図3図3a及び3bは、イリジウム錯体とロジウム錯体との、異なる2種の溶媒中での反応速度を示すグラフである。
図4】本発明のイリジウム錯体と、比較例のイリジウム錯体とについての、溶媒範囲における収率を示す棒グラフである。
図5図5は、ロジウム錯体と、比較例のロジウム錯体とについての、溶媒範囲における収率を示す棒グラフである。
図6-1】図6a及び6bは、イリジウム錯体と、比較例のイリジウム錯体との、異なる溶媒中での反応速度を示すグラフである。
図6-2】図6c及び6dは、イリジウム錯体と、比較例のイリジウム錯体との、異なる溶媒中での反応速度を示すグラフである。
図7図7は、本発明のイリジウム錯体のいくつかの基質の範囲及び官能基の耐性を、比較例の錯体[CpIrClについてのいくつかのデータと共に示す。
図8図8は、中性の及びイオン性のイリジウム錯体と、中性の及びイオン性のロジウム錯体との反応速度を示すグラフである。
図9図9は、中性の及びイオン性のイリジウム錯体と、中性の及びイオン性のロジウム錯体との反応速度を示すグラフである。
図10図10は、本発明のイリジウム錯体と、比較例のイリジウム錯体との、溶媒範囲における収率を示す棒グラフである。
図11-1】図11a及び11bは、イリジウム錯体の温度依存度を示すグラフである。
図11-2】図11cは、イリジウム錯体の温度依存度を示すグラフである。
図12図12は、異なるイリジウム錯体の負荷についての反応速度を示すグラフである。
図13図13は、異なるイリジウム錯体の負荷についての反応速度を示すグラフである。
図14図14は、鎖長の、触媒活性への効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下に付与するのは、本出願で使用されている用語の定義である。本明細書で定義されていない任意の用語は、当業者がその用語を理解するであろう通常の意味を採る。
【0062】
用語「ハロ」は、周期表のグループ17、ハロゲンのうちの1つを指す。具体的には、この用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指す。好ましくは、この用語は、ヨウ素又は塩素を指す。
【0063】
用語「アルキル」は、直鎖状又は分枝状の炭化水素鎖を指す。アルキル環は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14個の炭素原子を含有する「C1~14アルキル」であってもよい。例えば、用語「アルキル」は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル及びn-ヘキシルを包含する。アルキレン基は、同様に、直鎖状又は分枝状であってもよく、分子の残部に結合している2つの場所を有していてもよい。更に、アルキレン基は、例えば、この段落に列挙されているアルキル基のうちの1つに相当してもよい。アルキル基及びアルキレン基は、非置換であってもよく、1つ以上の置換基で置換されていてもよい。可能な置換基が、以下に記載される。アルキル基のための置換基は、ハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素及びヨウ素、OH、C1~6アルコキシであってもよい。
【0064】
用語「アルコキシ」は、酸素を介して分子に結合しているアルキル基を指す。これには、アルキル部分が直鎖状又は分枝状であってもよい部分が挙げられ、例えばC1~6アルコキシ中に1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を含有してもよく、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル及びn-ヘキシルであってもよい。したがって、アルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペントキシ及びn-ヘキソキシであってもよい。アルコキシ基のアルキル部分は、非置換であってもよく、又は1つ以上の置換基で置換されていてもよい。可能な置換基が、以下に記載される。アルキル基のための置換基は、ハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素及びヨウ素、OH、C1~6アルコキシであってもよい。
【0065】
用語「C1~4ハロアルキル」又は「C1~6ハロアルキル」は、各出現において、独立に、例えばフッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選ばれた少なくとも1個のハロゲン原子で置換された炭化水素鎖を指す。ハロゲン原子は、炭化水素鎖上の任意の位置に存在してもよい。例えば、「C1~4ハロアルキル」又は「C1~6ハロアルキル」は、クロロメチル、フルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロエチル、例えば1-クロロメチル及び2-クロロエチル、トリクロロエチル、例えば1,2,2-トリクロロエチル、2,2,2-トリクロロエチル、フルオロエチル、例えば1-フルオロメチル及び2-フルオロエチル、トリフルオロエチル、例えば1,2,2-トリフルオロエチル及び2,2,2-トリフルオロエチル、クロロプロピル、トリクロロプロピル、フルオロプロピル、トリフルオロプロピルを指してもよい。
【0066】
用語「C2~6アルケニル」は、少なくとも1つの二重結合を含有して2、3、4、5又は6個の炭素原子を有する分枝状又は直鎖状の炭化水素鎖を指す。二重結合は、E異性体又はZ異性体として存在してもよい。二重結合は、炭化水素鎖の任意の可能な位置にあってもよい。例えば、「C2~6アルケニル」は、エテニル、プロペニル、ブテニル、ブタジエニル、ペンテニル、ペンタジエニル、ヘキセニル及びヘキサジエニルであってもよい。
【0067】
用語「C2~6アルキニル」は、少なくとも1つの三重結合を含有して2、3、4、5又は6個の炭素原子を有する、分枝状又は直鎖状の炭化水素鎖を指す。三重結合は、炭化水素鎖の任意の可能な位置にあってもよい。例えば、「C2~6アルキニル」は、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル及びヘキシニルであってもよい。
【0068】
用語「C1~6ヘテロアルキル」は、1、2、3、4、5又は6個の炭素原子、及び鎖中の任意の炭素の間に位置する又は鎖の末端に位置するN、O及びSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含有する、分枝状又は直鎖状の炭化水素鎖を指す。例えば、炭化水素鎖は、1又は2個のヘテロ原子を含有してもよい。C1~6ヘテロアルキルは、炭素又はヘテロ原子を介して分子の残部に結合してもよい。例えば、「C1~6ヘテロアルキル」は、C1~6N-アルキル、C1~6N,N-アルキル、又はC1~6O-アルキルであってもよい。
【0069】
用語「炭素環式」は、環系を含有する飽和又は不飽和の炭素を指す。「炭素環式」系は、単環式であっても縮合多環式環系であってもよく、例えば二環式又は三環式であってもよい。「炭素環式」部分は、単環式系中に3~14個の炭素原子、例えば3~8個の炭素原子を含有してもよく、多環式系中に7~14個の炭素原子を含有してもよい。「炭素環式」は、シクロアルキル部分、シクロアルケニル部分、アリール環系、及び芳香族部分を含む縮合環系を包含する。
【0070】
用語「複素環式」は、N、O又はSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含有する飽和又は不飽和の環系を指す。「複素環式」系は、1、2、3又は4個の、例えば1又は2個の、ヘテロ原子を含有してもよい。用語「複素環式」系は、単環式であっても縮合多環式環系であってもよく、例えば二環式又は三環式であってもよい。「複素環式」部分は、単環式系中に3~14個の炭素原子、例えば3~8個の炭素原子を含有してもよく、多環式系中に7~14個の炭素原子を含有してもよい。「複素環式」は、ヘテロシクロアルキル部分、ヘテロシクロアルケニル部分及びヘテロ芳香族部分を包含する。例えば、複素環式基は、オキシラン、アジリジン、アゼチジン、オキセタン、テトラヒドロフラン、ピロリジン、イミダゾリジン、スクシニミド、ピラゾリジン、オキサゾリジン、イソキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン及びテトラヒドロピランであってもよい。
【0071】
用語「C3~8シクロアルキル」は、3、4、5、6、7又は8個の炭素原子を含有する飽和の炭化水素環系を指す。例えば、「C3~8シクロアルキル」は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチルであってもよい。
【0072】
用語「C3~6シクロアルケニル」又は「C3~8シクロアルケニル」は、芳香族ではない、それぞれ3、4、5若しくは6個の炭素原子、又は3、4、5、6、7若しくは8個の炭素原子を含有する不飽和の炭化水素環系を指す。環は、その環系が芳香族でないならば、1つを超える二重結合を含有してもよい。例えば、「C3~8シクロアルキル」は、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプテニル、シクロヘプタジエン、シクロオクテニル及びシクロアタジニルであってもよい。
【0073】
用語「C3~10ヘテロシクロアルキル」は、3、4、5、6、7若しくは8個の炭素原子、及びN、O及びSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を環内に含有する飽和の炭化水素環系を指す。例えば、1、2又は3個の、任意選択で1又は2個のヘテロ原子があってもよい。「C3~10ヘテロシクロアルキル」は、任意の炭素原子又はヘテロ原子を介して、分子の残部に結合されてもよい。「C3~10ヘテロシクロアルキル」は、分子の残部に、1つ以上の、例えば1つ又は2つの結合を有していてもよく、これらの結合は、環内の原子のうちの任意のものを介していてもよい。例えば、「C3~10ヘテロシクロアルキル」は、オキシラン、アジリジン、アゼチジン、オキセタン、テトラヒドロフラン、ピロリジン、イミダゾリジン、スクシニミド、ピラゾリジン、オキサゾリジン、イソキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン及びテトラヒドロピランであってもよい。
【0074】
用語「C3~10ヘテロシクロアルケニル」は、3、4、5、6、7若しくは8個の炭素原子、及びN、O及びSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を環内に含有する、芳香族ではない、不飽和の炭化水素環系を指す。例えば、1、2又は3個の、任意選択で1又は2個の、ヘテロ原子があってもよい。「C3~10ヘテロシクロアルケニル」は、任意の炭素原子又はヘテロ原子を介して、分子の残部に結合されてもよい。「C3~10ヘテロシクロアルケニル」は、1つ以上の、例えば1又は2つの、分子の残部への結合を有していてもよく、これらの結合は、環内の原子のうちの任意のものを介していてもよい。例えば、「C3~10ヘテロシクロアルキル」は、テトラヒドロピリジン、ジヒドロピラン、ジヒドロフラン、ピロリンであってもよい。
【0075】
用語「芳香族」は、概して置換基に適用されるときに、環内又は環系内に、共役π系に寄与するすべての原子が同一平面内にある共役π系内に4nの+2電子を有する、単環系又は多環式環系を意味する。
【0076】
用語「アリール」は、芳香族炭化水素環系を指す。この環系は、環内で、共役π系に寄与するすべての原子が同一平面内にある共役π系内に4n+2個の電子を有する。例えば、「アリール」は、フェニル及びナフチルであってもよい。アリール系自体は、他の基で置換されていてもよい。
【0077】
用語「ヘテロアリール」は、単環内に又は縮合環系内に、O、N及びSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を有する芳香族炭化水素環系を指す。環又は環系は、共役π系に寄与するすべての原子が同一平面内にある共役π系内に4n+2個の電子を有する。例えば、「ヘテロアリール」は、イミダゾール、チアン、フラン、チアントレン、ピロール、ベンズイミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリジン、ピリミジン及びインドールであってもよい。
【0078】
「アシル」により、例えば、ヒドロキシル基の除去によって有機酸から誘導される有機基が意味され、例えば式R-C(O)-(式中、Rは、H、C1~6アルキル、C3~8シクロアルキル、フェニル、ベンジル又はフェネチル基から選択されてもよく、例えばRは、H又はC1~3アルキルである)を有する基である。一実施形態では、アシルは、アルキル-カルボニルである。アシル基の例としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル及びブチリルなどが挙げられるが、これらに限定されない。特定のアシル基は、アセチルである。
【0079】
「ホスフィン」により、リン原子に結合された3つの有機基を有する有機リン化合物、例えばトリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン又はビスシクロヘキシルフェニルホスフィンが意味される。ホスフィンは、同じ基のうちの3つ、又は3つの異なる基に結合しているリン原子であってもよく、例えばホスフィンは、P(Rであってもよく、又はホスフィンは、3つの異なる基(PRC1C2C3)若しくは同じ基のうちの2つ及び他の異なる基(PRC1(RC2)に結合していてもよい。したがって、本発明の任意の化合物のホスフィンは、RRC1C2C3(式中、RC1、RC2及びRC3は、それぞれ独立に、各出現において、C1~10アルキル、C6~10アリール、C3~10シクロアルキル、C5~10ヘテロアリール及びC3~10ヘテロシクロアルキルから選択される)であってもよい。任意選択で、RC1、RC2及びRC3は、それぞれ独立に、各出現において、C6~10アリール、C3~10シクロアルキル、例えばフェニル及びシクロヘキシルから選択される。
【0080】
「ジホスフィン」は、同様に、2個のリン原子(それぞれが、双方のリン原子に結合している更なる置換基を有する2つの有機置換基を有する)を有する有機リン化合物であり、例えば2-2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル(BINAP)である。したがって、ジホスフィンは、RC1C2P-R-PRC4C5(式中、RC1、RC2、RC4及びRC5は、それぞれ独立に、各出現において、C1~10アルキル、C6~10アリール、C3~10シクロアルキル、C5~10ヘテロアリール及びC3~10ヘテロシクロアルキルから選択され、Rは、C1~10アルキレン、C6~10アリーレン、C3~10シクロアルキレン、C5~10ヘテロアリーレン、C3~10ヘテロシクロアルキレン、ビ-C6~10アリーレン、ビ-C3~10シクロアルキレン、ビ-C5~10ヘテロアリーレン及びビ-C3~10ヘテロシクロアルキレンから選択される)であってもよい。任意選択で、RC1、RC2、RC4及びRC5は、それぞれ独立に、各出現において、C1~10アルキル、C6~10アリール、C3~10シクロアルキルから選ばれ、Rは、C1~10アルキレン、C6~10アリーレン、C3~10シクロアルキレン、ビ-C6~10アリーレン、ビ-C3~10シクロアルキレンから選択され、例えばフェニル、シクロヘキシルナフチル及びビナフチルである。
【0081】
「二座配位子」は、金属中央に結合することが可能な2個の原子を有する単一の分子である。二座配位子は、ニトリル、アミン、ホスフィン又はスルホン酸エステルであってもよく、1つのアミン基の存在等により分子はアミンと名づけられることになると当業者によって認められる。したがって、例えば、アミンである二座配位子は、単一のアミン基(金属中央への第1の結合点として作用する)、及び同一の又は異なる官能基(金属中央への第2の結合点として作用する)を含んでもよい。
【0082】
「フルオラスタグ」は、高度にフッ素化された基である。フルオラスタグは、フッ素化された溶媒に向けて、又はフルオラスな固体相抽出へ、親和性を付与するのに十分にフッ素化されている。フルオラスタグは、金属錯体に直接結合されていてもよく、又はリンカー基が金属錯体とフルオラスタグとの間に存在してもよい。例えば、フルオラスタグは、C17であってもよい。例示的なフルオラスタグ及びリンカーは、CHCHOCHCH17である。
【0083】
部分が置換されているとき、それは、化学的に可能であって原子価要件と一致する部分上の任意の点で置換されていてもよい。部分は、1つ以上の置換基、例えば1、2、3又は4つの置換基で置換されていてもよく、任意選択で、基上に1又は2つの置換基がある。2つ以上の置換基が存在するとき、置換基は、同一であっても異なっていてもよい。置換基は、OH、NHR、アミジノ、グアニジノ、ヒドロキシグアニジノ、ホルムアミジノ、イソチオウレイド、ウレイド、メルカプト、C(O)H、アシル、アシルオキシ、カルボキシ、スルホ、スルファモイル、カルバモイル、シアノ、アゾ、ニトロ、ハロ、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、C1~6ハロアルキル、C3~8シクロアルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、アリール、ヘテロアリール又はアルカリルから選択されてもよい。置換されることになる基がアルキル基であるとき、置換基は、=Oでありうる。Rは、H、C1~6アルキル、C3~8シクロアルキル、フェニル、ベンジル又はフェネチルの各基から選択されてもよく、例えばRは、H又はC1~3アルキルである。部分が2つ以上の置換基で置換されていてその置換基のうちの2つが隣接しているとき、隣接している置換基は、そこで置換基が置換されている部分の原子と共にC4~8環を形成してもよく、ここで、C4~8環は、4、5、6、7又は8個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の炭化水素環であり、又は4、5、6、7又は8個の炭素原子、及び1、2又は3個のヘテロ原子を有する、飽和又は不飽和の炭化水素環である。
【0084】
置換基は、化学的に可能であるところの位置に存在しているだけであり、当業者であれば、どの置換基が化学的に可能でどれが可能でないかを、不適当な努力なしに決定する(実験で又は理論的に、のいずれかで)ことができる。
【0085】
本発明は、本発明の金属錯体の塩を想定する。これらの塩としては、金属錯体の酸付加塩及び塩基塩などが挙げられる。これらは、化合物の、酸付加塩であってもよく塩基塩であってもよい。更に、本発明は、化合物の溶媒和物を想定する。これらは、化合物の、水和物の形態であっても他の溶媒和物の形態であってもよい。
【0086】
好適な酸付加塩は、非毒性塩を形成する酸から形成される。例としては、酢酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カンシル酸塩、クエン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、1,5-ナフタレンジスルホン酸塩、2-ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロト酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/水素リン酸塩/二水素リン酸塩、糖酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩及びトリフルオロ酢酸塩などが挙げられる。
【0087】
好適な塩基塩は、非毒性塩を形成する塩基から形成される。例としては、アルミニウム、アルギニン、ベンザチン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ジオールアミン、グリシン、リジン、マグネシウム、メグルミン、オラミン、カリウム、ナトリウム、トロメタミン及び亜鉛などの各塩が挙げられる。酸及び塩基の半塩はまた、例えば半硫酸塩及び半カルシウム塩が形成されてもよい。好適な塩についての参考のために、Stahl and Wermuthによる「Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use」(Wiley-VCH,Weinheim,Germany,2002)を参照されたい。
【0088】
式(I)の金属錯体の塩は、3つの方法のうちの1つ以上で調製されてもよい:
(i)本発明の化合物を、所望の酸又は塩基と反応させることによって
(ii)本発明の化合物の好適な前駆体から、酸不安定性保護基若しくは塩基不安定性保護基を除去することによって、又は所望の酸若しくは塩基を使用して、好適な環状前駆体、例えばラクトン若しくはラクタムを開環することによって
(iii)本発明の化合物のうちの1種の塩を、適当な酸若しくは塩基と反応させることにより又は好適なイオン交換カラムの手段により、別の塩に変換することによって。
又は(iv)塩メタセシスによって。
【0089】
3種の反応はすべて、典型的には溶液中で実施される。得られた塩は、沈殿して取り出し、ろ過により回収されてもよく、又は溶媒の蒸発により回収されてもよい。得られた塩におけるイオン化の程度は、完全なイオン化から、ほとんど非イオン化まで、多様であってもよい。
【0090】
本発明の金属錯体は、非溶媒和物形態と溶媒和物形態との双方で存在してもよい。用語「溶媒和物」は、本明細書では、本発明の化合物、及び化学量論的な量の1種以上の薬学的に許容される溶媒分子を含む、分子錯体を説明するために使用され、例えばエタノールである。用語「水和物」は、その溶媒が水であるときに、採られる。
【0091】
本明細書で以下、任意の式の金属錯体への言及は、塩、溶媒和物及びそれらの錯体への言及、並びにそれらの塩の溶媒和物及び錯体への言及を含む。
【0092】
本発明の金属錯体は、本明細書で以下に定義されて本発明の等方的に標識された金属錯体である、すべての多形体及び結晶晶癖及びその異性体(光学、幾何及び互変異性体を含む)を含む、本明細書で定義されている多数の式の金属錯体を含む。
【0093】
本発明はまた、本発明の、すべての工業的に許容される同位体で標識された金属錯体も含み、ここで、1個以上の原子は、同一の原子番号を有する原子で置き換えられるが、それは、自然において最も一般に見出される原子質量又は質量数とは異なる、原子質量又は質量数である。
【0094】
本発明の金属錯体中に含めるのに好適な同位体の例としては、水素、例えばH及びH、炭素、例えば11C、13C及び14C、塩素、例えば36Cl、フッ素、例えば18F、ヨウ素、例えば123I及び125I、窒素、例えば13N及び15N、酸素、例えば15O、17O及び18O、リン、例えば32P、及び硫黄、例えば35Sの同位体などが挙げられる。
【0095】
本発明の金属錯体の調製プロセスの工程のうちの一部では、反応させたくない潜在的な反応性官能基を保護すること、及びその結果これらの保護基を開裂することが必要である。こうした事例では、互換性のある任意の保護基が使用されうる。詳細には、T.W.Greene(Protective Groups in Organic Synthesis,A.Wiley-lnterscience Publication,1981)によって、又はP.J.Kocienski(Protecting groups,Georg Thieme Verlag,1994)によって記載されているもの等の保護及び脱保護の方法が使用されうる。先行方法において使用されている上記の反応法及び新規な出発物質の調製法のうちのすべては、それらの性能又は調整法のための従来の適当な試薬及び反応条件であり、並びに所望の生成物を単離するための手法は、先行文献及びその実施例及び調製法への参照を伴って当業者に周知なものとなる。
【0096】
更に、本発明の金属錯体及びその製造のための中間体は、様々な周知の方法、例えば結晶化又はクロマトグラフィーに従って精製されうる。本発明の金属錯体は、単結晶形態、若しくは結晶形態の混合物で存在してもよく、又はそれらは非晶質であってもよい。
【実施例
【0097】
本発明の触媒金属錯体を使用するアルコールアミノ化反応のための一般合成方法トルエン(0.5mL)中イリジウム錯体の実施例3(4.4mg、0.01mmol)の撹拌懸濁液へ、窒素下、対応するアルコール(1.0mmol)及び対応するアミン(1.0mmol)を添加した。得られた水溶液を、110℃で18時間にわたり加熱した。溶媒を、減圧下で除去し、ろ過により又はフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、生成物のアミンを得た。
【0098】
リガンド及びリガンド前駆体の合成
中間体1:N-Boc-4-(2’-アミノエチル)-3,5-ジメチル-ヘプタ-2,5-ジエン-4-オール
【化15】
リチウムワイヤー(516mg、74.0mmol)をヘキサンで洗浄し、小片に切断してEtO(15mL)中に懸濁させた。2-ブロモ-2-ブテン(1.8mL、18mmol、シス異性体とトランス異性体との混合物)を、混合物の一部に添加し、反応が開始するまで撹拌し、溶媒の還流によって観察し、EtO(10mL)中2-ブロモ-2-ブテン(2.0mL、20mmol)の別のアリコートを滴下で添加して緩やかな還流を維持した。懸濁液を、RTで2時間攪拌し、次いで-78℃に冷却した。N-Boc-β-アラニンメチルエステル(2.40g、12.0mmol)のEtO(10mL)中溶液を滴下で添加し、混合物をRTまで加温し、一晩撹拌して、飽和の水性NHCl(60mL)を注意深く添加してクエンチした。相を分離し、生成物をEtO(2×30mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をNaSOで脱水し、溶媒を減圧下で除去した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO、ヘキサン-EtOAc(95:5)で溶出)により精製して、中間体1を、トランス-トランス異性体とシス-トランス異性体との1:1混合物である無色の油状物として得、これを、他の精製一切なしで使用した(1.50g、5.30mmol、44%)。
=0.30(ヘキサン-EtOAc 80:20);H NMR(500MHz,CDCl,δ/ppm):5.65-5.59(2H,m,トランス-トランス異性体の2CH),5.44-5.34(2H,m,トランス-シス異性体の2CH),5.18-5.10(2H,m,2NH),3.30-3.22(4H,m,2H-2’),1.95-1.86(4H,m,2H-1’),1.77(6H,s,2CH),1.69-1.60(18H,m,6CH),1.44(18H,s,2C(CH);13C NMR(125MHz,CDCl,δ/ppm):156.1(C(O)),139.7(CCH),139.0(CCH),137.7(CCH),123.1(トランス-シス異性体のCH),118.6(トランス-トランス異性体のCH),80.7(C(CH),79.8(C-4),78.9(C-4),39.1(C-1’),36.7(C-2’),28.4(C(CH),23.3(CH),22.7(CH),14.7(CH),14.4(CH),13.2(CH),12.5(CH);IR(νmax,ニート,cm-1):3387(N-HとO-H),2976,2933,1696(C=O),1509,1452,1366,1279,1250,1173;HRMS(ESI+)m/z:C1629NNaO(M+Na)の計算値:306.2040,実測値:306.2034。
【0099】
中間体2:N-Boc-4-(3’-アミノプロピル)-3,5-ジメチル-ヘプタ-2,5-ジエン-4-オール
【化16】
リチウムワイヤー(340mg、48.6mmol)をヘキサンで洗浄し、小片に切断してEtO(10mL)中に懸濁させた。2-ブロモ-2-ブテン(2.4mL、24mmol、シス異性体とトランス異性体との混合物)のEtO(10mL)中溶液を滴下で添加し、懸濁液をRTにて2時間撹拌した。EtO(8.0mL)に溶解させたN-Boc-2-ピロリドン(1.50g、8.10mmol)を滴下で添加し、混合物をRTにて2時間撹拌し、飽和の水性NHCl(40mL)を注意深く添加してクエンチした。2つの相を分離し、生成物をEtO(3×20mL)で抽出した。合わせた有機相をNaSOで脱水し、溶媒を減圧下で除去した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO、ヘキサン-EtOAc(90:10~80:20)で溶出)により精製して、中間体2を、トランス-トランス異性体とトランス-シス異性体との混合物(分数、多量(トランス-シス)/少量(トランス-トランス):2/1)である無色の油状物として得、これを、他の精製一切なしで使用した(1.10g、5.70mmol、70%)。
=0.60(ヘキサン-EtOAc 70:30);H NMR(500MHz,CDCl,δ/ppm):5.58(2H,dq,J=1.0,6.5Hz,トランス-トランス異性体の2CH),5.35(2H,dq,J=1.0,6.5Hz,トランス-シス異性体の2CH),4.59(2H,br s,2NH),3.14(4H,br s,2H-3’),1.84-1.81(2H,m,2OH),1.76-1.75(4H,m,2H-1’),1.67-1.59(24H,m,8CH),1.53-1.49(4H,m,2H-2’),1.43(18H,s,2C(CH);13C NMR(125MHz,CDCl,δ/ppm):156.1(C(O)),140.0(CCH),139.5(CCH),138.0(CCH),122.7(トランス-シス異性体のCH),122.6(トランス-シス異性体のCH),118.3(トランス-トランス異性体のCH),80.6(C(CH),79.5(C-4),79.0(C-4),41.1(C-3’),36.8(C-1’),35.0(C-1’),28.4(C(CH),24.5(C-2’),24.2(C-2’),23.4(CH),22.8(CH),14.7(CH),14.4(CH),13.2(CH),12.6(CH);HRMS(ESI+)m/z:C1731NNaO(M+Na)の計算値:320.2196,実測値:320.2200.分光学的データは文献値(M.Ito,N.Tejima,M.Yamamura,Y.Endo及びT.Ikariya,Organometallics,2010,29,1886~1889)と一致している。
【0100】
中間体3:N-Boc-4-(4’-アミノブチル)-3,5-ジメチル-ヘプタ-2,5-ジエン-4-オール
【化17】
リチウムワイヤー(4.37mg、63.0mmol)をヘキサンで洗浄し、小片に切断してEtO(10mL)中に懸濁させた。2-ブロモ-2-ブテン(1.3mL、13mmol、シス異性体とトランス異性体との混合物)を、混合物の一部に添加し、反応が開始するまで撹拌し、溶媒の還流によって観察し、EtO(10mL)中2-ブロモ-2-ブテン(2.0mL、20mmol)の別のアリコートを滴下で添加し、懸濁液をRTにて2時間撹拌した。N-Boc-2-ピペリジノン(3.00g、15.0mmol)のEtO(20mL)中溶液を滴下で添加し、混合物を1時間撹拌し、飽和の水性NHCl(60mL)を注意深く添加してクエンチした。相を分離し、生成物をEtO(2×30mL)で抽出した.合わせた有機相をNaSOで脱水し、溶媒を減圧下で除去した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO、ヘキサン-EtOAc(90:10)で溶出)により精製して、中間体3を、トランス-トランス異性体とトランス-シス異性体との混合物(分数、多量(トランス-シス)/少量(トランス-トランス):3/2)である無色の油状物として得、これを、他の精製一切なしで使用した(940mg、3.00mmol、20%)。
=0.50(ヘキサン-EtOAc 70:30);H NMR(500MHz,CDCl,δ/ppm):5.57(2H,q,J=6.5Hz,トランス-トランス異性体の2CH),5.34(2H,dq,J=1.3,7.5Hz,トランス-シス異性体の2CH),4.54(2H,br s,2NH),3.12(4H,br s,2H-4’),1.84-1.71(6H,m,2H-1’と2OH),1.69-1.60(24H,m,8CH),1.53-1.46(8H,m,4CH),1.44(18H,s,2C(CH);13C NMR(125MHz,CDCl,δ/ppm):156.1(C(O)N),140.2(CCH),139.6(CCH),138.1(CCH),122.5(トランス-シス異性体のCH),122.4(トランス-シス異性体のCH),118.9(トランス-トランス異性体のCH),118.1(トランス-トランス異性体のCH),80.8(C(CH),79.4(C-4),79.1(C-4),40.4(C-4’),39.4(C-1’),37.6(C-1’),28.4(C(CH),23.4(CH),22.8(CH),20.7(CH),20.5(CH),14.8(CH),14.4(CH),13.4(CH),13.2(CH),12.6(CH),12.4(CH);IR(νmax,ニート,cm-1):3364(N-HとO-H),2975,2933,2865,1695(C=O),1515,1454,1366,1251,1172,1003;HRMS(ESI+)m/z:C1833NNaO(M+Na)の計算値:334.2353,実測値:334.2357。
【0101】
中間体4:N-Boc-N-メチル-4-(3’-アミノプロピル)-3,5-ジメチル-ヘプタ-2,5-ジエン-4-オール
【化18】
リチウムワイヤー(150mg、22.0mmol)をヘキサンで洗浄し、小片に切断してEtO(10mL)中に懸濁させた。2-ブロモ-2-ブテン(1.2mL、12mmol、シス異性体とトランス異性体との混合物)のEtO(10mL)中溶液を滴下で添加し、懸濁液をRTにて2時間撹拌した。メチルN-Boc-N-メチル-4-アミノブタノエート(1.20g、5.19mmol)のEtO(10mL)中溶液を滴下で添加し、RTにて90分間撹拌し、飽和の水性NHCl(40mL)を注意深く添加してクエンチした。相を分離し、生成物をEtO(3×20mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をNaSOで脱水し、溶媒を減圧下で除去した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO、ヘキサン-EtOAc(90:10)で溶出)により精製して、中間体4を、トランス-トランス異性体とトランス-シス異性体との1:1混合物である無色の油状物として得、これを、他の精製一切なしで使用した(540mg、1.74mmol、33%)。
=0.40(ヘキサン-EtOAc 80:20);H NMR(500MHz,CDCl,δ/ppm):5.62-5.56(2H,m,トランス-トランス異性体の2CH),5.42-5.30(2H,m,トランス-シス異性体の2CH),3.27-3.24(4H,m,2H-3’),2.87(6H,br s,2H-1’’),1.86-1.76(4H,m,2H-1’),1.74(2H,s,2OH),1.69-1.61(18H,m,6CH),1.62-1.59(4H,m,2CH),1.46(24H,s,2CHと2C(CH);13C NMR(125MHz,CDCl,δ/ppm):156.0(C(O)N),140.1(CCH),139.6(CCH),138.1(CCH),122.5(CH),119.0(CH),118.2(CH),80.7(C(CH),79.1(C-4),51.6(C-3’),34.0(C-1’’),29.7(C-1’),28.4(C(CH),23.4(CH),22.8(CH),21.9(C-2’),14.8(CH),14.4(CH),13.4(CH),13.2(CH),12.6(CH),12.4(CH);IR(νmax,ニート,cm-1):3474(O-H),2973,2931,1759(C=O),1695(C=C),1481,1454,1395,1365,1171;HRMS(ESI+)m/z:C1833NNaO(M+Na)の計算値:334.2353,実測値:334.2349。
【0102】
中間体5:4-(3’-ジメチルアミノプロピル)-3,5-ジメチル-ヘプタ-2,5-ジエン-4-オール
【化19】
リチウムワイヤー(530mg、76.0mmol)をヘキサンで洗浄し、小片に切断してEtO(10mL)中に懸濁させた。2-ブロモ-2-ブテン(1.5mL、15mmol、シス異性体とトランス異性体との混合物)を、混合物の一部に添加し、反応が開始するまで撹拌し、溶媒の還流によって観察し、ETO(15mL)中2-ブロモ-2-ブテン(2.5mL、25mmol)の別のアリコートを滴下で添加し、懸濁液をRTにて2時間撹拌した。エチルN,N-ジメチル-4-アミノブタノエート(2.80g、18.0mmol)のEtO(15mL)中溶液を滴下で添加し、RTにて60分間撹拌し、飽和の水性NHCl(50mL)を注意深く添加してクエンチした。相を分離し、生成物をEtO(2×40mL)で抽出した。合わせた有機相をNaSOで脱水し、溶媒を減圧下で除去した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO、ヘキサン-EtOAc(60:40~0:100)で溶出)により精製して、中間体5を、トランス-トランス異性体とトランス-シス異性体との1:1混合物である無色の油状物として得、これを、他の精製一切なしで使用した(1.70g、7.54mmol)、41%)。
=0.38(DCM-MeOH 80:20);H NMR(500MHz,CDCl,δ/ppm):5.65(2H,q,J=5.7Hz,トランス-トランス異性体の2CH),5.58(1H,q,J=6.5Hz,トランス-シス異性体のCH),5.40(1H,q,J=7.3Hz,トランス-シス異性体のCH),2.33-2.28(4H,m,2CH),2.24(6H,s,2H-1’’),2.20(6H,s,2H-1’’),2.07-1.91(4H,m,2CH),1.83-1.61(18H,m,6CH),1.59-1.51(4H,m,2CH),1.49-1.46(6H,m,2CH);13C NMR(125MHz,CDCl,δ/ppm):139.8(CCH),139.0(CCH),138.8(CCH),122.9(トランス-シス異性体のCH),118.5(トランス-トランス異性体のCH),117.5(トランス-シス異性体のCH),79.8(C-4),78.9(C-4),60.6(C-3’),45.1(C-1’’),37.6(C-1’),36.4(C-1’),23.6(CH),22.1(CH),21.9(CH),14.8(CH),13.5(CH),13.3(CH),12.5(CH),12.4(CH);IR(νmax,ニート,cm-1):3394(O-H),2944,2919,2859,2821,2779,1459,1378,1039,1014;HRMS(ESI+)m/z:C1428NO(M+H)の計算値:226.2165,実測値:226.2167。
【0103】
中間体6:N,N-ジメチル-3-(テトラメチルシクロペンタジエニル)プロパン-1-アミンヒドロクロリド
【化20】
中間体5(970mg、4.30mmol)のメタノール(2.5mL)中撹拌溶液へ、HClのEtO(2.6mL、5.2mmol)中2M溶液を添加した。溶液を室温にて2時間撹拌し、溶媒を減圧下で除去した。得られた黄色の沈殿物(1.14g)を、他の精製一切なしで次の反応に使用した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO、DCM-MeOH(90:10)で溶出)での少量の粗材料(478mg)の生成により、中間体6を、特性決定に使用する異性体混合物にある淡黄色の固体として得た(239mg、0.984mmol、55%)。
=0.50(DCM-MeOH 90:10);mp 117.5-118.6℃(DCM-EtO);H NMR(500MHz,CDCl,δ/ppm):8.54(1H,br s,NH),2.73-2.66(2H,m,H-1),2.68-2.41(1H,m,CH),2.59-2.53(6H,m,2H-1’),2.48-2.23(2H,m,CH),1.92-1.63(2H,m,CH),1.80-1.75(9H,m,3CH),0.98(3H,d,J=7.5Hz,CH);13C NMR(125MHz,CDCl,δ/ppm):139.7(CCH),139.6(CCH),139.0(CCH),136.7(CCH),136.4(CCH),136.1(CCH),134.5(CCH),133.9(CCH),132.9(CCH),58.6(C-1),58.2(C-1),55.3(CH),51.6(CH),49.1(CH),43.7(C-1’),43.6(C-1’),43.5(CH),43.3(CH),25.8(CH),25.1(CH),24.7(CH),23.3(CH),22.9(CH),14.2(CH),11.9(CH),11.8(CH),11.6(CH),11.3(CH),11.0(CH);IR(νmax,ニート,cm-1):3403(N-H),2961,2856,2763,2580,2517,2479,1655,1487,1443,1377,1172,1058,1041,1020,1006;HRMS(ESI+)m/z:C1426N(M+H)の計算値:208.2060,実測値:208.2062。
【0104】
中間体7:エチル4-(2’-1H’’,1H’’,2H’’,2H’’-ペルフルオロデシルオキシアセタミド)ブタノエート
【化21】
DMAP(3.48g、28.5mmol)の撹拌懸濁液、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミドヒドロクロリド(2.73g、14.3mmol)及びエチル4-アミノブタノエートヒドロクロリド(1.59g、9.50mmol)のDCM(160mL)中撹拌溶液へ、0℃にて、1H’,1H’,2H’,2H’-ペルフルオロデシルオキシ酢酸を少量のアリコート(4.96g、9.50mmol)で添加した。反応混合物をRTにて加温し、18時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣をEtOAc(100mL)中に溶解し、1Mの水性HCl(100mL)と2つの相とを分離した。生成物をEtOAc(3×100mL)で抽出し、合わせた有機抽出物をブライン(100mL)で洗浄し、NaSOで脱水した。溶媒を減圧下で除去し、中間体7を、無色の油状物(5.77g、9.09mmol、96%)として得た。
H NMR(500MHz,CDCl,δ/ppm):6.67(1H,br s,NH),4.13(2H,q,J=7.0Hz,OCH),3.98(2H,s,H-2’),3.83(2H,t,J=6.4Hz,H-1’’),3.35(2H,q,J=7.0Hz,H-4),2.52-2.42(2H,m,H-2’’),2.36(2H,t,J=7.2Hz,H-2),1.87(2H,ap五重線,J=7.1Hz,H-3),1.25(3H,t,J=7.0Hz,CH);13C NMR(125MHz,CDCl,δ/ppm):173.2(C-1 or C-1’),168.9(C-1 or C-1’),70.5(C-2’),63.5(C-1’’),60.5(OCH),38.3(C-4),31.7(C-2),31.4(t,J=21.7Hz,C-2’’),24.6(C-3),14.1(CH),8個の炭素(7×CF,1×CF)は観測されず;19F NMR(282MHz,CDCl,δ/ppm):-80.8(t,J=10.0Hz),-113.2(五重線,J=14.4Hz),-121.6,-121.9,-122.7,-123.6,-126.1,1個のフッ素は観測されず;IR(νmax,ニート,cm-1):3339(N-H),2938,1732(C=O),1666(C=O),1536,1446,1372,1348,1325,1235,1199,1144,1116,1029;HRMS(ESI+)m/z:C181917NO(M+H)の計算値:636.1037,実測値:636.1041。
【0105】
中間体8:エチル4-((2’-1H’’,1H’’,2H’’,2H’’-ペルフルオロデシルオキシエチル)アミノ)ブタノエート
【化22】
中間体7(2.20g、3.47mmol)及び2-フルオロピリジン(328μL、3.82mmol)のDCM(8.0mL)中撹拌溶液へ、-78℃にて、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(613μL、3.64mmol)を滴下で添加した。溶液を-78℃にて10分間撹拌し、次いで0℃にて加温した。トリエチルシラン(610μL、3.82mmol)を滴下で添加し、溶液を、0℃にて10分間、RTにて5時間撹拌した。ジエチル2,6-ジメチル-1,4-ジヒドロピリジン-3,5-ジカルボキシレート(1.23g、4.86mmol)を添加し、得られた混合物を15時間撹拌し、その後、DCM(15mL)及び飽和の水性NaHCO(10mL)でクエンチした。2つの相を分離し、生成物をDCM(2×30mL)で抽出した。合わせた有機相をNaSOで脱水し、溶媒を減圧下で除去した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO、DCM-MeOH(95:5)で溶出)での精製により、中間体8を、無色の油状物として得た(688mg、1.11mmol、32%)。
=0.35(DCM-MeOH 90:10);H NMR(500MHz,CDCl,δ/ppm):4.12(2H,q,J=7.0Hz,OCH),3.75(2H,t,J=6.8Hz,H-1’’),3.61(2H,t,J=5.0Hz,H-2’),3.35(1H,br s,NH),2.84(2H,t,J=5.0Hz,H-1’),2.73(2H,t,J=7.2Hz,H-4),2.47-2.38(2H,m,H-2’’),2.73(2H,t,J=7.2Hz,H-2),1.87(2H,ap五重線,J=7.2Hz,H-3),1.24(3H,t,J=7.0Hz,CH);13C NMR(125MHz,CDCl,δ/ppm):173.4(C-1),69.8(C-2’),62.9(C-1’’),60.4(OCH),48.8(C-4 or C-1’),48.6(C-4 or C-1’),32.0(C-2),31.5(t,J=21.3Hz,C-2’’),24.6(C-3),14.1(CH),8個の炭素(7×CF,1×CF)は観測されず;19F NMR(282MHz,CDCl,δ/ppm):-80.8(t,J=9.9Hz),-113.4,-121.7,-121.9,-122.7,-123.6,-126.1,1個のフッ素は観測されず;IR(νmax,ニート,cm-1):3342(N-H),2935,1729(C=O),1656,1543,1444,1370,1348,1199,1145,1134,1016,1029;HRMS(ESI+)m/z:C182017NNaO(M+Na)の計算値:644.1064,実測値:644.1066。
【0106】
中間体9:エチル4-(N-Boc-(2’-1H’’,1H’’,2H’’,2H’’-ペルフルオロデシルオキシエチル)アミノ)ブタノエート
【化23】
ジ-tert-ブチルジカーボネート(600mg、2.73mmol)のDCM(8.0mL)中撹拌溶液へ、0℃にて、中間体8(1.54g、2.49mmol)のDCM(4.0mL)中溶液を添加した。溶液を0℃にて30分間攪拌し、次いでRTにて16時間攪拌した。溶媒を減圧下で除去し、フラッシュクロマトグラフィー(SiO、ヘキサン-EtOAc(85:15)で溶出)での精製により、中間体9を、無色の油状物として得た(1.30g、1.80mmol、72%)。
【0107】
=0.36(ヘキサン-EtOAc 80:20);H NMR(500MHz,CDCl,δ/ppm):4.12(2H,q,J=7.0Hz,OCH),3.72(2H,t,J=6.7Hz,H-1’’),3.57(2H,br s,H-1’or H-2’),3.37(2H,br s,H-1’or H-2’),3.27(2H,br s,H-4),2.44-2.32(2H,m,H-2’’),2.28(2H,t,J=7.3Hz,H-2),1.84(2H,ap五重線,J=7.3Hz,H-3),1.45(9H,s,C(CH),1.25(3H,t,J=7.0Hz,CH);13C NMR(125MHz,CDCl,δ/ppm):173.2(C-1),155.6(C(O)N),79.6(C(CH),69.9&69.7(CH,回転異性体),62.9(CH),60.3(CH),47.7&47.2(CH,回転異性体),46.9(CH),31.6(t,J=21.2Hz,C-2’’),31.5(C-2),28.4(C(CH),23.9&23.5(CH,回転異性体),14.2(CH),8個の炭素(7×CF,1×CF)は観測されず;19F NMR(282MHz,CDCl,δ/ppm):-80.8(t,J=10.0Hz),-113.4(五重線,J=15.5Hz),-121.7,-121.9,-122.7,-123.6,-126.1,1個のフッ素は観測されず;IR(νmax,ニート,cm-1):2980,2935,1736(C=O),1729,1693(C=O),1656,1543,1479,1444,1413,1370,1367,1348,1236,1201,1199,1144,1134,1132,1116,1030;HRMS(ESI+)m/z:C232917NO(M+H)の計算値:722.1769,実測値:722.1778。
【0108】
中間体10:4-(N-Boc-(2’’-1H’’’,1H’’’,2H’’’,2H’’’-ペルフルオロデシルオキシエチル)アミノプロピル)-3,5-ジメチル-ヘプタ-2,5-ジエン-4-オール
【化24】
リチウムワイヤー(300mg、43.2mmol)をヘキサンで洗浄し、小片に切断してEtO(10mL)中に懸濁させた。2-ブロモ-2-ブテン(1.0mL、10mmol、シス異性体とトランス異性体との混合物)を、混合物の一部に添加し、反応が開始するまで撹拌し、溶媒の還流によって観察し、EtO(10mL)中で希釈した2-ブロモ-2-ブテン(1.33mL、13.0mmol)の別のアリコートを滴下で添加し、懸濁液をRTにて2時間撹拌した。有機リチウムの濃度は、メントール(1.0mmol)及び2,2’-ビピリジル(0.1mmol)の滴定により求めた。中間体9(1.35g、1.87mmol)をEtO(10mL)中に溶解し、-78℃にて冷却した。滴定した有機リチウム(7.48mmol)を滴下で添加し、溶液を-78℃にて30分間撹拌し、その後、RTまで60分間加温した。飽和の水性NHCl(15mL)を添加し、2つの相を分離した。水性相をEtO(3×50mL)で抽出し、合わせた有機抽出物をNaSOで脱水し、溶媒を減圧下で除去した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO、ヘキサン-EtOAc(90:10~85:15)で溶出)により精製して、中間体10を、トランス-トランス異性体とトランス-シス異性体との1:1混合物である淡黄色の油状物として得た(849mg、1.08mmol、58%)。トランス-トランス異性体の純粋な画分を、クロマトグラフィーによる精製の後に得、それを特性決定に使用した。
=0.36(ヘキサン-EtOAc 80:20);H NMR(500MHz,CDCl,δ/ppm):5.63-5.59(2H,m,H-2とH-6),3.75-3.70(2H,m,H-1’’’),3.57(2H,br s,H-1’’or H-2’’),3.37(2H,br s,H-1’’or H-2’’),3.26(2H,br s,H-3’),2.46-2.33(2H,m,H-2’’’),1.86-1.58(10H,m,2CHと2CH),1.55-1.44(15H,m,2CHとC(CH);13C NMR(125MHz,CDCl,δ/ppm):155.7(C(O)N),138.1(CCH),118.9(CH),80.3(C-4),79.4(C(CH),69.8(CH),62.9(C-1’’’),48.8(CH),46.7(CH),31.6(t,J=21.2Hz,C-2’’’),28.4(C(CH),22.9(CH),12.3(CH),11.6(CH),9個の炭素(1×CH,7×CF,1×CF)は観測されず;19F NMR(282MHz,CDCl,δ/ppm):-80.7(t,J=9.7Hz),-113.4,-121.7,-121.9,-122.7,-123.6,-126.1,1個のフッ素は観測されず;IR(νmax,ニート,cm-1):3449(O-H),2976,1674(C=O),1479,1416,1367,1237,1202,1170,1144,1006;HRMS(ESI+)m/z:C293817NNaO(M+Na)の計算値:810.2422,実測値:810.2417。
【0109】
中間体11:(R)-N-Boc-4-(3’-アミノ-3’-イソプロピル)プロピル-3,5-ジメチル-ヘプタ-2,5-ジエン-4-オール
【化25】
リチウムワイヤー(300mg、43.2mmol)をヘキサンで洗浄し、小片に切断してEtO(10mL)中に懸濁させた。2-ブロモ-2-ブテン(1.0mL、10mmol、シス異性体とトランス異性体との混合物)を、混合物の一部に添加し、反応が開始するまで撹拌し、溶媒の還流によって観察し、EtO(10mL)中2-ブロモ-2-ブテン(1.3mL、13mmol)の別のアリコートを滴下で添加し、懸濁液をRTにて2時間撹拌した。有機リチウムの濃度を、メントール(1.0mmol)及び2,2’-ビピリジル(0.1mmol)での滴定により求めた。(R)-N-t-ブトキシカルボニル-5-イソプロピル-2-ピロリジノン(Smrcina et al,Tetrahedron,1997,53,12867に従って調製)(500mg、2.20mmol)をEtO(6.0mL)中で希釈し、0℃にて冷却した。滴定した有機リチウム(4.40mmol)を滴下で添加し、溶媒を0℃にて30分間撹拌し、その後、RTまで60分間加温した。飽和の水性NHCl(30mL)を注意深く添加し、2つの相を分離した。生成物をEtO(2×30mL)で抽出した。合わせた有機相をNaSOで脱水し、溶媒を減圧下で除去した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO、ヘキサン-EtOAc(90:10)で溶出)により精製して、中間体11を、トランス-トランス異性体とトランス-シス異性体との混合物(分数、多量(トランス-シス)/少量(トランス-トランス):3/1)である無色の油状物として得、これを、更なる精製なしで使用した(184mg、0.542mmol、25%)。
=0.74(ヘキサン-EtOAc 80:20);[α]=+7.8(c=1.0,CHCl);H NMR(500MHz,CDCl,δ/ppm):5.57(2H,q,J=6.2Hz,トランス-トランス異性体の2CH),5.43-5.27(2H,m,トランス-シス異性体の2CH),4.30(2H,br s,2NH),3.49-3.37(2H,m,2H-3’),1.96-1.51(30H,m,8CHと2CHと2H-1’’),1.43(18H,s,2C(CH),1.39-1.16(4H,m,2CH),0.91-0.85(12H,m,4H-2’’);13C NMR(125MHz,CDCl,δ/ppm):156.2(C(O)),140.2(CCH),139.7(CCH),138.2(CCH),122.6(CH),122.5(CH),122.4(CH),118.1(CH),80.8(C(CH),79.5(C-4),78.8(C-4),56.1(C-3’),36.3(CH),34.3(CH),32.5(CH),28.4(C(CH),27.0(CH),26.6(CH),23.5(CH),22.8(CH),19.2(CH),17.8(CH),14.8(CH),14.7(CH),14.4(CH),13.2(CH),12.6(CH);HRMS(ESI+)m/z:C2037NNaO(M+Na)の計算値:362.2666,実測値:362.2672。
中間体12:4-(3’-ジエチルアミノプロピル)-3,5-ジメチルヘプタ-2,5-ジエン-4-オール
【化26】
リチウムワイヤー(470mg、67.0mmol)をヘキサンで洗浄し、小片に切断してEtO(15mL)中に懸濁させた。2-ブロモ-2-ブテン(1.6mL、16mmol、シス異性体とトランス異性体との混合物)を、混合物の一部に添加し、反応が開始するまで撹拌し、溶媒の還流によって観察し、EtO(15mL)中2-ブロモ-2-ブテン(2.0mL、20mmol)の別のアリコートを滴下で添加し、懸濁液をRTにて2時間撹拌した。エチルN,N-ジエチル-4-アミノブタノエート(3.00g、16.0mmol)のEtO(10mL)中溶液を滴下で添加し、RTにて90分間撹拌し、飽和の水性NH4Cl(100mL)を注意深く添加してクエンチした。相を分離し、生成物をEtO(2×40mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をNaSOで脱水し、溶媒を減圧下で除去した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO、ヘキサン-EtOAc(80:20~0:100)で溶出)により精製して、中間体12を、トランス-トランス異性体とトランス-シス異性体との1:1混合物である無色の油状物として得、これを、他の精製一切なしで使用した(3.70g、14.7mmol、92%)。
=0.39(DCM-MeOH 90:10);H NMR(500MHz,CDCl,δ/ppm):5.63(2H,q,J=6.7Hz,トランス-トランス異性体の2CH),5.59-5.55(1H,m,トランス-シス異性体のCH),5.38(1H,q,J=7.2Hz,トランス-シス異性体のCH),2.56-2.48(8H,m,4H-1’’),2.45-2.35(4H,m,2H-3’),2.04-1.87(4H,m,2CH),1.78-1.73(4H,m,2CH),1.64-1.46(24H,m,8CH),1.04-0.99(12H,m,4H-2’’);13C NMR(125MHz,CDCl,δ/ppm):139.9(CCH),139.3(CCH),122.5(トランス-シス異性体のCH),118.3(トランス-トランス異性体のCH),117.4(トランス-シス異性体のCH),79.7(C-4),79.0(C-4),54.4(C-3’),54.1(C-3’),45.8(C-1’’),45.6(C-1’’),37.5(C-1’),36.4(C-1’),23.7(CH),21.8(CH),21.6(CH),14.8(CH),14.2(CH),13.4(CH),13.2(CH),12.6(CH),10.5(C-2’’),10.2(C-2’’);IR(νmax,ニート,cm-1):3408(O-H),2970,2813,2813,1455,1377,1293,1195,1066;HRMS(ESI+)m/z:C1632NO(M+H)の計算値:254.2478,実測値:254.2484。
中間体13:N,N-ジエチル-3-(テトラメチルシクロペンタジエニル)プロパン-1-アミン
【化27】
Itoら(Organometallics,2010,29,1886)により報告されたシクロペンタジエニルの合成のための一般方法をわずかに改変したバージョンにより、以下のように調製した。中間体12(1.29g、5.09mmol)のメタノール(3.0mL)中撹拌溶液へ、HClのEtO(3.0mL、6.0mmol)中2M溶液を添加した。得られた溶液を室温にて4時間撹拌し、溶媒を減圧下で除去した。フラッシュクロマトグラフィー(Al、pH9.5±0.5、DCM-MeOH(99:1)で溶出)での精製により、中間体13を、3種の異性体の非吸収性混合物にある淡黄色の油状物として得た(705mg、2.99mmol、60%)。
=0.60(中和の酸化アルミニウム,DCM-MeOH 95:5);H NMR(500MHz,CDCl,δ/ppm):2.65-2.40(1H,m,CH),2.52(4H,q,J=7.3Hz,2H-1’),2.47-2.41(2H,m,H-1),2.35-2.11(2H,m,H-3),1.82-1.77(9H,m,3CH),1.75-1.78(2H,m,H-2),1.05-0.96(9H,m,CHと2H-2’);13C NMR(125MHz,CDCl,δ/ppm):142.2(CCH),138.4(CCH),138.3(CCH),138.1(CCH),135.6(CCH),135.3(CCH),134.5(CCH),134.0(CCH),133.6(CCH),55.9(CH),53.4(CH),53.1(CH),52.7(CH),52.0(CH),51.5(CH),49.4(CH),46.9(C-1’),27.8(CH),26.7(CH),25.6(CH),24.3(CH),23.7(CH),22.4(CH),21.0(CH),14.2(CH),14.1(CH),11.8(CH),11.7(CH),11.6(CH),11.1(CH),11.0(CH);IR(νmax,ニート,cm-1):2968,2934,2870,2799,1742,1656,1445,1381,1294,1201,1070;HRMS(ESI+)m/z:C1630N(M+H)の計算値:236.2373,実測値:236.2376。
中間体14:N-Boc-4-(4’-アミノブチル)-3,5-ジメチル-ヘプタ-2,5-ジエン-4-オール
【化28】
リチウムワイヤー(437mg、63.0mmol)をヘキサンで洗浄し、小片に切断してEtO(10mL)中に懸濁させた。2-ブロモ-2-ブテン(1.3mL、13mmol、シス異性体とトランス異性体との混合物)を混合物の一部に添加し、反応が開始するまで撹拌し、溶媒の還流によって観察し、EtO(10mL)中2-ブロモ-2-ブテン(2.0mL、20mmol)の別のアリコートを滴下で添加し、懸濁液をRTにて2時間撹拌した。N-Boc-2-ピペリジノン(3.00g、15.0mmol)のEtO(20mL)中溶液を滴下で添加し、混合物を1時間撹拌し、飽和の水性NHCl(60mL)を注意深く添加してクエンチした。相を分離し、生成物をEtO(2×30mL)で抽出した。合わせた有機相をNaSOで脱水し、溶媒を減圧下で除去した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO、ヘキサン-EtOAc(90:10)で溶出)により精製して、中間体14を、トランス-トランス異性体とトランス-シス異性体との混合物(分数、多量(トランス-シス)/少量(トランス-トランス):3/2)である無色の油状物として得、これを、他の精製一切なしで使用した(940mg、3.00mmol、20%)。
=0.50(ヘキサン-EtOAc 70:30);H NMR(500MHz,CDCl,δ/ppm):5.57(2H,q,J=6.5Hz,トランス-トランス異性体の2CH),5.34(2H,dq,J=1.3,7.5Hz,トランス-シス異性体の2CH),4.54(2H,br s,2NH),3.12(4H,br s,2H-4’),1.84-1.71(6H,m,2H-1’と2OH),1.69-1.60(24H,m,8CH),1.53-1.46(8H,m,4CH),1.44(18H,s,2C(CH);13C NMR(125MHz,CDCl,δ/ppm):156.1(C(O)N),140.2(CCH),139.6(CCH),138.1(CCH),122.5(トランス-シス異性体のCH),122.4(トランス-シス異性体のCH),118.9(トランス-トランス異性体のCH),118.1(トランス-トランス異性体のCH),80.8(C(CH),79.4(C-4),79.1(C-4),40.4(C-4’),39.4(C-1’),37.6(C-1’),28.4(C(CH),23.4(CH),22.8(CH),20.7(CH),20.5(CH),14.8(CH),14.4(CH),13.4(CH),13.2(CH),12.6(CH),12.4(CH);IR(νmax,ニート,cm-1):3364(N-HとO-H),2975,2933,2865,1695(C=O),1515,1454,1366,1251,1172,1003;HRMS(ESI+)m/z:C1833NNaO(M+Na)の計算値:334.2353,実測値:334.2357。
中間体15:(S)-tert-ブチル2-{(4E/Z)-3-[(2E)-ブタ-2-エン-2-イル]-3-ヒドロキシ-4-メチルヘキサ-4-エン-1-イル}ピロリジン-1-カルボキシレート
【化29】
リチウムワイヤー(300mg、43.2mmol)をヘキサンで洗浄し、小片に切断してEtO(10mL)中に懸濁させた。2-ブロモ-2-ブテン(1.0mL、10mmol、シス異性体とトランス異性体との混合物)を、混合物の一部に添加し、反応が開始するまで撹拌し、溶媒の還流によって観察した。これに続いて、EtO(10mL)中2-ブロモ-2-ブテン(1.3mL、13mmol)の残部を滴下で添加し、懸濁液をRTにて1時間撹拌した。有機リチウムの濃度を、メントール(1.0mmol)及び2,2’-ビピリジル(0.1mmol)の滴定により求めた。(2S)-N-t-ブトキシカルボニル-2-(3’-メトキシ-3’-オキソ-1’-プロピル)ピロリジン(Org.Lett.,2008,10,3045)(100mg、0.40mmol)をEtO(3.0mL)中で希釈し、-78℃にて冷却した。滴定した有機リチウム(1.60mmol)を滴下で添加し、溶媒を5分間撹拌し、その後、RTまで加温し、90分間撹拌した。飽和の水性NHCl(25mL)を注意深く添加し、2つの相を分離した。生成物をEtO(3×20mL)で抽出した。合わせた有機相をNaSOで脱水し、溶媒を減圧下で除去した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO、ヘキサン-EtOAc(80:20)で溶出)により精製して、中間体15を、トランス-トランス及びトランス-シス異性体の3:1混合物である無色の油状物として得、これを、更なる精製なしで使用した(91mg、0.27mmol、61%)。
=0.32(ヘキサン-EtOAc 80:20);[α]=-30.5(c=1.0,CHCl);H NMR(500MHz,CDCl,δ/ppm):5.61(2H,q,J=6.6,トランス-トランス異性体の2CH),5.40-5.31(2H,m,トランス-シス異性体の2CH),3.43-3.38(2H,m,2 NCH),3.36-3.31(4H,m,4NHCH),1.93-1.77(10H,m,2×CHと2×CH),1.73-1.55(30H,m,10×CH),1.35-1.25(4H,m,2×CH);13C NMR(125MHz,CDCl,δ/ppm):154.8,139.5,138.3,137.8,122.5,122.5,118.9,78.9,57.5,56.9,46.4,46.1,33.1,30.8,28.7,28.5,23.7,23.4,23.2,14.8,14.4,13.4,13.2,12.3(COHの1個の炭素シグナルが見えない);HRMS(ESI+)m/z:C2035NNaO(M+Na)の計算値:360.2515,実測値:360.2509。
【0110】
金属錯体の合成
実施例1
RhCl[η:η-C(CH(CHN(CHCHOCHCH17)H]
【化30】
中間体10(386mg、0.490mmol)のメタノール(4.0mL)中撹拌溶液へ、RhCl水和物(51mg、0.25mmol)を添加した。混合物を還流にて20時間加熱し、溶媒を減圧下で除去した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO、DCM-MeOH(97:3~95:5)で溶出)での精製により、標題化合物を赤色の固体として得た(74mg、88μmol、35%)。
=0.53(DCM-MeOH 97:3);mp 133.3-134.6℃(DCM-ヘキサン,v/v=1/2);H NMR(500MHz,CDCl,δ/ppm):3.85-3.76(1H,m,CH),3.73-3.49(4H,m,2CH),2.91-2.84(1H,m,CH),2.79-2.67(2H,m,CH),2.45-2.31(2H,m,H-2’’),2.25-1.91(4H,m,2CH),1.76(3H,s,CH),1.73(3H,s,CH),1.67(3H,s,CH),1.64(3H,s,CH);13C NMR(125MHz,CDCl,δ/ppm):103.0(d,J=7.5Hz,CRh),94.3(d,J=8.8Hz,CRh),93.2(d,J=8.0Hz,CRh),92.0(d,J=9.1Hz,CRh),85.1(d,J=9.6Hz,CRh),69.0(C-3),62.7(CH),50.7(CH),48.3(CH),31.4(t,J=21.2Hz,C-2’’),27.0(CH),19.4(CH),9.9(CH),9.4(CH),9.1(CH),9.1(CH),8個の炭素(7×CF,1×CF)は観測されず;19F NMR(282MHz,CDCl,δ/ppm):-80.8(t,J=9.8Hz),-113.3,-121.6,-121.9,-122.7,-123.5,-126.1,1個のフッ素は観測されず;IR(νmax,ニート,cm-1):3272(N-H),2918,1487,1440,1370,1331,1243,1200,1145,1114,1006;HRMS(ESI+)m/z:C242717 35ClNORh(M-Cl,100%)の計算値:806.0559,実測値:806.0552,C242717 37ClNORh(M-Cl,35%)の計算値:808.0539,実測値:808.0533;C2427Cl17NORhの元素分析計算値:C,34.22;H,3.23;N,1.66;実測値C,34.40;H,3.20;N,1.60。
【0111】
実施例2
[Rh{η:η-C(CH(CHNH}{CHCN}][SbF
【化31】
既知のロジウム錯体[ClRh{η:η-C(CH(CHNH}](Ito et al,Organometallics,2010,29,1886)(50mg、0.14mmol)のアセトニトリル(4.0mL)中撹拌溶液へ、ヘキサフルオロアンチモン酸銀(96mg、0.28mmol)を添加した。混合物を70℃にて24時間加熱し、粗生成物をCelite(登録商標)のパッドを通してろ過し、MeCNで洗浄し、溶媒を減圧下で除去した。MeCN-EtO(v/v=1/2)からの結晶化により精製して、標題化合物を、黄色の粉末として得た(71mg、90μmol、61%)。MeCN-EtO(v/v=1/2)からの再結晶により単結晶が実現した。
mp>250℃(MeCN);H NMR(500MHz,DMSO,δ/ppm):4.22(2H,br s,NH),2.59(2H,br s,H-3),2.17-2.11(2H,m,H-1),2.06-2.01(8H,m,H-2と2CHCN),1.70(6H,s,2CH),1.44(6H,s,2CH);13C NMR(125MHz,DMSO,δ/ppm):119.0(C≡N),102.7-101.4(m,CRh),86.1-85.2(m,CRh),41.3(C-3),29.8(C-2),18.7(C-1),7.4(CH),7.2(CH),2.1(CHCN),1個の炭素(CRh)は観測されず;IR(νmax,ニート,cm-1):3328(N-H),3284(N-H),2321,2291,1594,1455,1370,1163,1083,1021;HRMS(ESI+)m/z:C1220NRh121Sb(M-[SbF ]-2MeCN,100%)の計算値:515.9593,実測値:515.9588;C1220NRh123Sb(M-[SbF ]-2MeCN,68%)の計算値:517.9598,実測値:517.9590;C162612RhSbの元素分析計算値:C,23.02;H,3.14;N,5.03;実測値C,23.20;H,3.10;N,4.90。
【0112】
実施例3
IrCl[η:η-C(CH(CHNH
【化32】
IrCl水和物(670mg、2.24mmol)及びNaHCO(190mg、2.24mmol)のメタノール(15mL)中撹拌懸濁液へ、中間体2(1.34g、4.48mmol)を添加した。マイクロ波加熱を、反応混合物に、設定温度130℃、圧力120psiで2時間施し、RTにて冷却した後、溶媒を減圧下で除去した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO、DCM-MeOH(98:2)で溶出)での精製により、標題化合物を黄色の固体として得た(427mg、0.968mmol、44%)。DCM-ヘキサン(v/v=1/3)からの再結晶により単結晶が実現した。
=0.67(DCM-MeOH 90:10);mp>250℃(DCM-ヘキサン,v/v=1/3);H NMR(500MHz,CDCl,δ/ppm):3.94(2H,br s,NH),2.72-2.68(2H,m,H-3),2.18(2H,t,J=6.3Hz,H-1),1.96-1.91(2H,m,H-2),1.78(6H,s,2CH),1.67(6H,s,2CH);13C NMR(125MHz,CDCl,δ/ppm):90.8(CIr),88.7(CIr),41.9(C-3),30.7(C-2),19.2(C-1),9.2(CH),9.0(CH),1個の炭素(CIr)は観測されず;IR(νmax,ニート,cm-1):3234(N-H),3153(N-H),2948,2877,1593,1444,1376,1269,1240,1165,1083,1038;HRMS(ESI+)m/z:C1220 35Cl191IrN(M-Cl,50%)の計算値:404.0885,実測値:404.0883;C1220 37Cl191IrNとC1220 35Cl193IrN(M-Cl,100%)の計算値:406.0900,実測値:406.0901;C1322 37Cl193IrN(M-Cl,26%)の計算値:408.0879,実測値:408.0878;C1220ClIrNの元素分析計算値:C,32.65;H,4.57;N,3.17;Cl,16.06;実測値C,32.95;H,4.50;N,3.00,Cl,16.00。
【0113】
実施例4
IrCl[η:η-C(CH(CHN(CH)H]
【化33】
IrCl水和物(70mg、0.23mmol)及びNaHCO(20mg、0.23mmol)のメタノール(3.0mL)中撹拌懸濁液へ、中間体4(143mg、0.46mmol)を添加した。マイクロ波加熱を、反応混合物に、設定温度140℃、圧力200psiで2時間施し、RTにて冷却した後、溶媒を減圧下で除去した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO、DCM-MeOH(98:2)で溶出)での精製により、標題化合物を黄色の固体として得た(32mg、0.070mmol、30%)。DCMからの徐再結晶により単結晶が実現した。
=0.47(DCM-MeOH 90:10);mp 186.4-187.0℃(DCM-ヘキサン);H NMR(500MHz,CDCl,δ/ppm):4.22(1H,br s,NH),2.86-2.81(1H,m,H-3),2.77-2.73(1H,m,H-3),2.72(3H,d,J=6.0Hz,NCH),2.24-2.17(1H,m,CH),2.15-2.10(2H,m,CH),2.00-1.93(1H,m,CH),1.71(3H,s,CH),1.70(3H,s,CH),1.66(3H,s,CH),1.64(3H,s,CH);13C NMR(125MHz,CDCl,δ/ppm):97.5(CIr),85.7(CIr),85.4(CIr),53.3(C-3),39.6(NCH),26.1(CH),19.3(CH),9.3(CH),9.2(CH),9.1(CH),9.0(CH),2個の炭素(CIr)は観測されず;IR(νmax,ニート,cm-1):3178(N-H),2990,2970,2923,1738,1455,1374,1228,1217,1064,1028;HRMS(ESI+)m/z:C1322 35Cl191IrN(M-Cl,50%)の計算値:418.1041,実測値:418.1044;C1322 37Cl191IrNとC1322 35Cl193IrN(M-Cl,100%)の計算値:420.1056,実測値:420.1052;C1322 37Cl193IrN(M-Cl,23%)の計算値:422.1035,実測値:422.1029;C1322ClIrNの元素分析計算値:C,34.28;H,4.87;N,3.08;Cl,15.57;実測値C,34.40;H,4.80;N,3.00;Cl,15.30。
【0114】
実施例5
IrCl[η-C(CH(CHNMe HCl]
【化34】
IrCl水和物(100mg、0.334mmol)のメタノール(3.0mL)中撹拌懸濁液へ、中間体6(321mg、1.32mmol)を添加した。マイクロ波加熱を、反応混合物に、設定温度120℃、圧力90psiで1時間施した。得られた混合物から、橙色の固体をろ過し、減圧下で乾燥して、標題化合物を橙色の粉末(155mg、0.153mmol、93%)として得た。塩酸塩の形成は、NMRシグナルを文献(Organometallics,2010,29,1886)で報告された類似の錯体と比較することによって決定した。
H NMR(500MHz,DMSO,δ/ppm):10.11(2H,br s,NH),3.11-3.08(4H,m,2H-3),2.72(12H,s,4NCH),2.10(4H,t,J=8.3Hz,2H-1),1.84-1.79(4H,m,2H-2),1.70(12H,s,4CH),1.64(12H,s,4CH);13C NMR(125MHz,DMSO,δ/ppm):94.1(CIr),92.1(CIr),89.9(CIr),56.1(C-3),42.0(NCH),22.1(C-2),20.2(C-1),8.3(CH),8.2(CH);IR(νmax,ニート,cm-1):3011,1453,1406,1375,1031;HRMS(ESI+)m/z:C2848 35Cl 37Cl191IrとC2848 35Cl 191Ir193IrN(M-[2HCl]-Cl,63%)の計算値:901.2102,実測値:901.2112;C2848 35Cl37Cl 191Ir,C2848 35Cl 37Cl191Ir193IrNとC2848 35Cl37Cl193Ir(M-[2HCl]-Cl,100%)の計算値:903.2106,実測値:903.2109;C2848 37Cl 191Ir,C2848 35Cl37Cl 191Ir193IrNとC2848 35Cl 37Cl193Ir(M-[2HCl]-Cl,65%)の計算値:905.2097,実測値:905.2102;C2850ClIrの元素分析計算値:C,33.24;H,4.98;N,2.77;Cl,21.02;実測値C,33.10;H,4.90;N,2.60;Cl,20.60。
【0115】
実施例6
IrCl[η:η-C(CH(CHN(CH
【化35】
実施例5(107mg、0.106mmol)のDCM(10mL)中懸濁液へ、カリウムtert-ブトキシド(25mg、0.22μmol)を添加し、反応混合物を室温にて15時間撹拌した。混合物をCelite(登録商標)のパッドを通してろ過し、DCMで洗浄し、溶媒を減圧下で除去した。DCM-ヘキサンからの結晶化により、標題化合物を、橙色の固体(93mg、0.20mmol、90%)として得た。DCM-ヘキサン(v/v=1/2)からの徐再結晶により単結晶が実現した。
=0.90(DCM-MeOH 90:10);mp 198.3-199.5℃(DCM-ヘキサン,v/v=1/2);H NMR(500MHz,CDCl,δ/ppm):2.77(6H,s,2NCH),2.60-2.58(2H,m,H-3),2.15-2.08(4H,m,2CH),1.60(6H,s,2CH),1.59(6H,s,2CH);13C NMR(125MHz,CDCl,δ/ppm):89.1(CIr),84.7(CIr),80.6(CIr),64.2(C-3),52.7(NCH),25.3(CH),19.0(CH),9.3(CH),9.1(CH);IR(νmax,ニート,cm-1):2917,1477,1448,1435,1375,1029,1002;HRMS(ESI+)m/z:C1424 35Cl191IrN(M-Cl,49%)の計算値:432.1198,実測値:432.1197;C1424 37Cl191IrNとC1424 35Cl193IrN(M-Cl,100%)の計算値:434.1213,実測値:434.1215;C1424 37Cl193IrN(M-Cl,27%)の計算値:436.1195,実測値:436.1193;C1424ClIrNの元素分析計算値:C,35.82;H,5.15;N,2.98;Cl,15.10;実測値C,36.20;H,5.15;N,2.90;Cl,14.75。
【0116】
実施例7
IrI[η:η-C(CH(CHNH
【化36】
実施例3(70mg、0.16mmol)の脱気アセトン(10mL)中撹拌溶液へ、ヨウ化ナトリウム(52mg、0.35mmol)を添加した。反応混合物を還流にて18時間加熱し、RTへ冷却し、溶媒を減圧下で除去した。残渣を、DCM(20mL)及び水(15mL)中に溶解し、2つの相を分離した。生成物を、DCM(2×20mL)で抽出し、合わせた有機相をブライン(40mL)で洗浄し、NaSOで脱水した。溶媒を減圧下で除去した。DCM-ヘキサン(v/v=1/2)からの結晶化での精製により、標題化合物を、橙色の固体(72mg、0.12mmol、75%)として得た。
=0.88(DCM-MeOH 90:10);mp>250℃(DCM);H NMR(500MHz,CDCl,δ/ppm):3.92(2H,br s,NH),2.58-2.54(2H,m,H-3),2.20(2H,t,J=6.3Hz,H-1),2.05(6H,s,2CH),1.92(6H,s,2CH),1.85-1.81(2H,m,H-2);13C NMR(125MHz,CDCl,δ/ppm):89.8(CIr),89.7(CIr),81.1(CIr),42.5(C-3),29.1(C-2),19.3(C-1),12.2(CH),10.1(CH);IR(νmax,ニート,cm-1):3214(N-H),3139(N-H),2908,1579,1458,1371,1309,1262,1157,1070,1022;HRMS(ESI+)m/z:C1220191IrN(M-I,64%)の計算値:496.0241,実測値:496.0237;C1220193IrN(M-I,100%)の計算値:498.0264,実測値:498.0263;C1220IrNの元素分析計算値:C,23.09;H,3.23;N,2.24;実測値C,23.55;H,3.30;N,2.20.Cについての元素分析データは範囲外(±0.4)であったが、現在までの最良値であった。
【0117】
実施例8
IrI[η:η-C(CH(CHN(CH
【化37】
実施例6(93mg、0.20mmol)の脱気アセトン(12mL)中撹拌溶液へ、ヨウ化ナトリウム(66mg、0.44mmol)を添加した。反応混合物を還流にて17時間加熱し、それを室温まで冷却し、溶媒を減圧下で除去した。残渣をDCM(30mL)及び水(30mL)に溶解し、2つの相を分離した。生成物をDCM(2×30mL)で抽出し、合わせた有機相をNaSOで脱水し、溶媒を減圧下で除去した。DCM-ヘキサン(v/v=1/2)からの結晶化での精製により、標題化合物を、明赤色の結晶として得た(125mg、0.192mmol、96%)。
mp 203.0-204.7℃(CHCl);H NMR(500MHz,CDCl,δ/ppm):3.13(6H,s,2NCH),2.57(2H,br s,H-3),2.05(4H,s,2CH),1.87(6H,s,2CH),1.82(6H,s,2CH);13C NMR(125MHz,CDCl,δ/ppm):88.0(CIr),86.7(CIr),85.1(CIr),64.9(C-3),58.9(NCH),24.9(CH),18.4(CH),12.4(CH),11.0(CH);IR(νmax,ニート,cm-1):2906,1452,1439,1374,1364,1029;HRMS(ESI+)m/z:C1424191IrN(M-I,54%)の計算値:524.0554,実測値:524.0551;C1424193IrN(M-I,100%)の計算値:526.0578,実測値:526.0574;C1424IrNの元素分析計算値:C,25.78;H,3.71;N,2.15;I,38.91;実測値C,26.15;H,3.70;N,2.00;I,38.45.Iについての元素分析データは範囲外(±0.4)であったが、現在までの最良値であった。
【0118】
実施例9
(R)-IrCl[η:η-C(CH(CH(CH(CH(CH)NH
【化38】
IrCl水和物(80mg、0.27mmol)及びNaHCO(23mg、0.27mmol)のメタノール(3.0mL)中撹拌懸濁液へ、中間体11(184mg、0.542mmol)を添加した。マイクロ波加熱を、反応混合物に、設定温度125℃、圧力130psiで2時間施し、RTまで冷却した際に、溶媒を減圧下で除去した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO、DCM-MeOH(97:3)で溶出)、続いてDCM-ヘキサン(v/v=1/3)からの結晶化での精製により、標題化合物を黄色の固体として得た(35mg、0.072mmol、27%)。DCM-ヘキサン(v/v=1/3)からの再結晶により単結晶が実現した。
=0.71(DCM-MeOH 95:5);[α]=-12.18(c=1.0,CHCl);mp 250.8-252.9℃(分解,DCM-ヘキサン,v/v=1/3);H NMR(500MHz,CDCl,δ/ppm):4.08(1H,br s,NH),3.27(1H,br s,NH),2.43-2.30(2H,m,H-3とH-1),2.19-2.02(2H,m,H-1とH-2),1.94-1.82(1H,m,H-1’),1.78(3H,s,CH),1.77(3H,s,CH),1.69(6H,s,2CH),1.57-1.42(1H,m,H-2),0.98-0.95(6H,m,2H-2’);13C NMR(125MHz,CDCl,δ/ppm):90.6(CIr),90.2(CIr),90.0(CIr),59.2(C-3),33.4(C-2),33.3(C-1’),20.3(C-1),18.2(C-2’),18.1(C-2’),9.3(CH),9.1(CH),9.0(CH),8.9(CH),2個の炭素(CIr)は観測されず;IR(νmax,ニート,cm-1):3299(N-H),3207(N-H),2962,2920,2876,1575,1478,1455,1369,1338,1282,1261,1186,1168,1102,1059,1034;HRMS(ESI+)m/z:C1526 37Cl191IrNとC1526 35Cl193IrN(M-Cl,100%)の計算値:448.1369,実測値:448.1368;C1526ClIrNの元素分析計算値:C,37.26;H,5.42;N,2.90;Cl,14.67;実測値C,37.60;H,5.40;N,2.80;Cl,14.40.
【0119】
実施例10
[Ir[η:η-C(CH(CHNH}{ビピリジル}][Cl]
【化39】
実施例3(70mg、0.16mmol)のクロロホルム(3.0mL)中撹拌溶液へ、2,2’-ビピリジル(25mg、0.16mmol)を添加した。反応混合物をRTにて一晩撹拌し、溶媒を、その体積の半分まで緩やかに蒸発させた。得られた沈殿物をろ過して、標題化合物を淡黄色の結晶(90mg、0.15mmol、94%)として得た。クロロホルムからの徐結晶化により単結晶が実現した。
mp 197.6-199.2℃(分解,CHCl);H NMR(500MHz,MeOD,δ/ppm):8.92(2H,d,J=5.7Hz,2H-5’),8.65(2H,d,J=8.0Hz,2H-2’),8.30(2H,ap dt,J=8.0,1.4Hz,2H-3’),7.84(2H,ddd,J=8.0,5.7,1.3Hz,2H-4’),2.49-2.45(2H,m,H-3),2.44-2.41(2H,m,H-1),1.96-1.92(2H,m,H-2),1.80(6H,s,2CH),1.41(6H,s,2CH);13C NMR(125MHz,MeOD,δ/ppm):157.4(C-1’),153.6(C-5’),142.5(C-3’),130.6(C-4’),126.0(C-2’),101.2(CIr),97.5(CIr),80.3(CIr),43.1(C-3),29.7(C-2),19.4(C-1),8.2(CH),8.1(CH);IR(νmax,ニート,cm-1):3448(N-H),3365(N-H),3116,3043,1698,1607,1472,1446,1314,1210,1162,1076,1033;HRMS(ESI+)m/z:C2228 191IrN(M-2Cl,56%)の計算値:262.5939,実測値:262.5944;C2228 193IrN(M-2Cl,100%)の計算値:263.5951,実測値:263.5960;C2228ClIrN・2HOの元素分析計算値:C,41.70;H,5.09;N,6.63;Cl,11.19;実測値C,41.60;H,5.40;N,6.20;Cl,11.20.Nについての元素分析データは範囲外(±0.4)であったが、現在までの最良値であった。
【0120】
実施例11
[Ir{η:η-C(CH(CHNH}{CHCN}][SbF
【化40】
実施例3(120mg、0.272mmol)のアセトニトリル(8.0mL)中撹拌溶液へ、ヘキサフルオロアンチモン酸銀(200mg、0.582mmol)を添加した。混合物をRTにて4時間撹拌し、粗生成物をCelite(登録商標)のパッドを通してろ過し、MeCNで洗浄し、溶媒を減圧下で除去した。DCMからの沈殿での精製により、標題化合物を、淡黄色の粉末として得た(174mg、0.188mmol、70%)。MeCN-EtO(v/v=1/4)からの再結晶により単結晶が実現した。
mp>250℃(MeCN-EtO,v/v=1/4);H NMR(500MHz,CDCN,δ/ppm):4.38(2H,br s,NH),2.60-2.56(2H,m,H-3),2.30-2.25(2H,m,H-1),1.97(6H,s,2CHCN),1.92-1.87(2H,m,H-2),1.86(6H,s,2CH),1.65(6H,s,2CH);13C NMR(125MHz,CDCN,δ/ppm):100.6(CIr),98.9(CIr),81.4(CIr),42.7(C-3),29.8(C-2),18.9(C-1),9.4(CH),9.1(CH),2個の炭素(C≡N及びCHCN)は観測されず;IR(νmax,ニート,cm-1):3313(N-H),3274(N-H),2946,2315,1654,1597,1457,1365,1279,1191,1083,1030;HRMS(ESI+)m/z:C1220191Ir121Sb(M-[SbF ]-2MeCN,43%)の計算値:604.0139,実測値:604.0139;C1220191Ir123SbとC1220193Ir121Sb(M-[SbF ]-2MeCN,100%)の計算値:606.0156,実測値:606.0157;C1220193Ir123Sb(M-[SbF ]-2MeCN,53%)の計算値:608.0167,実測値:608.0164;C162612IrSbの元素分析計算値:C,20.80;H,2.84;N,4.55;実測値C,21.20;H,2.80;N,4.50。
【0121】
実施例12
RhCl[η-C(CH(CHNEt HCL]
【化41】
中間体13(182mg、0.672mmol)のメタノール(5.0mL)中撹拌溶液へ、RhCl水和物(70mg、0.33mmol)を添加した。反応混合物を還流にて22時間加熱し、室温まで冷却し、溶媒を減圧下で除去した。DCM-ヘキサン(v/v=1/3)からの結晶化により、標題化合物を、赤色の固体として得た(130mg、0.147mmol、89%)。塩酸塩の形成は、NMRシグナルを、文献(Organometallics,2010,29,1886)で報告されている類似の錯体と比較することによって決定した。
mp>250℃(MeOH);H NMR(500MHz,DMSO,δ/ppm):10.14(2H,br s,2NH),3.09-3.06(12H,m,6NCH),2.22(4H,t,J=8.3Hz,2H-1),1.84-1.80(4H,m,2H-2),1.70(12H,s,4CH),1.63(12H,s,4CH),1.19(12H,t,J=7.3Hz,4NCHCH);13C NMR(125MHz,DMSO,δ/ppm):100.1(d,J=8.8Hz,CRh),99.1(d,J=7.5Hz,CRh),97.9(d,J=8.0Hz,CRh),50.2(NCH),46.0(NCH),21.4(C-2),20.5(C-1),8.6(CH),8.4(CH),1個の炭素(CH)は観測されず;IR(νmax,ニート,cm-1):3214,3140,2933,2856,2756,2724,1581,1491,1453,1370,1355,1309,1263,1157,1114,1070,1023;C3258ClRhの元素分析計算値:C,43.22;H,6.57;N,3.15;実測値C,43.65;H,6.35;N,2.90.Cについての元素分析データは範囲外(±0.4)であったが、現在までの最良値であった。
【0122】
実施例13
RhCl[η:η-C(CH(CHN(CHCH)H]
【化42】
実施例12(40mg、50μmol)のDCM(5.0mL)中懸濁液へ、カリウムtert-ブトキシド(11mg、0.10mmol)を添加した。混合物を室温にて72時間撹拌し、Celite(登録商標)のパッドを通してろ過し、DCMで洗浄し、溶媒を減圧下で除去した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO、DCM-MeOH(99:1)で溶出)での精製により、標題化合物を橙色の固体として得た(6mg、16μmol、16%)。
=0.57(DCM-MeOH 90:10);mp 175.1-176.4℃(DCM);H NMR(500MHz,CDCl,δ/ppm):3.58-3.53(1H,m,H-3),3.30(1H,br s,NH),2.84-2.73(2H,m,NCH),2.68-2.61(1H,m,H-3),2.19-1.99(4H,m,2CH),1.77(3H,s,CH),1.72(3H,s,CH),1.67(3H,s,CH),1.62(3H,s,CH),1.10(3H,t,J=7.3Hz,CH);13C NMR(125MHz,CDCl,δ/ppm):105.1(d,J=7.5Hz,CRh),94.8(d,J=8.8Hz,CRh),93.1(d,J=8.8Hz,CRh),90.1(d,J=7.5Hz,CRh),83.8(d,J=8.8Hz,CRh),45.3(NCH),44.6(NCH),26.0(C-2),19.3(C-1),13.7(CH),9.9(CH),9.4(CH),9.3(CH),9.2(CH);IR(νmax,ニート,cm-1):3469(N-H),3217(N-H),2917,1651,1448,1374,1063,1028;HRMS(ESI+)m/z:C1424 35ClNRh(M-Cl,100%)の計算値:344.0640,実測値:344.0640。
【0123】
実施例14
RhCl[η-C(CH(CHNHCl]
【化43】
中間体14(298mg、0.964mmol)のメタノール(8.0mL)中撹拌溶液へ、RhCl水和物(100mg、0.478mmol)を添加した。反応混合物を還流にて22時間加熱し、次いで室温まで冷却し、溶媒を減圧下で除去した。MeOH-EtO(v/v=1/2)からの結晶化により、標題化合物を、橙色の固体として得た(65mg、0.081mmol、34%)。塩酸塩の形成は、NMRシグナルを、文献(Organometallics,2010,29,1886)で報告された類似の錯体と比較することによって決定した。
H NMR(500MHz,DMSO,δ/ppm):8.05(6H,br s,2NH),2.75(4H,br s,2H-4),2.15(4H,br s,2H-1),1.67(12H,s,4CH),1.63-1.57(16H,m,2CHと4CH),1.48(4H,br s,2CH);13C NMR(125MHz,DMSO,δ/ppm):99.4(d,J=7.5Hz,CRh),99.3(d,J=7.5Hz,CRh),99.1(d,J=7.5Hz,CRh),38.3(C-4),26.9(CH),23.9(CH),22.7(C-1),8.7(CH),8.6(CH);IR(νmax,ニート,cm-1):3370(N-H),3100(N-H),2965,2914,1706,1591,1567,1479,1400,1367,1024;HRMS(ESI+)m/z:C2644Rh 35Cl(M-[2HCl]-Cl,100%)の計算値:695.0675,実測値:695.0673,C2644Rh 35Cl 37Cl(M-[2HCl]-Cl,100%)の計算値:697.0649,実測値:697.0647;C2644Rh 35Cl37Cl(M-[2HCl]-Cl,33%)の計算値:699.0627,実測値:699.0620。
【0124】
実施例15
RhCl[η:η-C(CH(CHNH
【化44】
実施例14(52mg、0.065mmol)のDCM(10mL)中撹拌溶液へ、カリウムtert-ブトキシド(16mg、0.14mmol)を添加し、混合物を室温にて72時間撹拌した。それをCelite(登録商標)のパッドを通してろ過し、DCMで洗浄し、溶媒を減圧下で除去した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO、DCM-MeOH(97:3)で溶出)での精製により、標題化合物を、橙色の固体として得た(14mg、38μmol、29%)。
=0.53(DCM-MeOH 90:10);H NMR(500MHz,CDCl,δ/ppm):3.23-3.19(2H,m,H-4),2.87(2H,br s,NH),2.11-2.09(2H,m,CH),2.07-2.01(2H,m,CH),1.86-1.79(2H,m,CH),1.66(6H,s,2CH),1.64(6H,s,2CH);13C NMR(125MHz,CDCl,δ/ppm):100.9(d,J=11.3Hz,CRh),96.7(d,J=10.0Hz,CRh),89.3(d,J=10.0Hz,CRh),43.9(C-4),28.9(CH),22.9(CH),21.5(CH),9.7(CH),9.0(CH);HRMS(ESI+)m/z:C1322NRh35Cl(M-Cl,100%)の計算値:330.0490,実測値:330.0492,C1322NRh37Cl(M-Cl,33%)の計算値:332.0461,実測値:332.0457。
【0125】
実施例16
RhI[η:η-C(CH(CHNH
【化45】
既知の(Organometallics,2010,29,1886)ロジウム錯体RhCl[η:η-C(CH(CHNH](30mg、85μmol)の脱気アセトン(5.0mL)中撹拌溶液へ、ヨウ化ナトリウム(28mg、0.19mmol)を添加した。反応混合物を還流にて20時間加熱し、次いでRTまで冷却し、溶媒を減圧下で除去した。残渣をDCM(15mL)中に溶解し、水(2×15mL)及びブライン(15mL)で洗浄した。有機相をNaSOで脱水し、溶媒を減圧下で除去した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO、DCM-MeOH(98:2)で溶出)での精製により、標題化合物を、暗赤色の固体として得た(27mg、0.050mmol、60%)。
=0.87(DCM-MeOH 90:10);mp>250℃(DCM-ヘキサン,v/v=1/2);H NMR(500MHz,CDCl,δ/ppm):3.17(2H,br s,NH),2.56-2.53(2H,m,H-3),2.17-2.13(2H,m,H-1),2.14(6H,s,2CH),2.00(6H,s,2CH),1.94-1.89(2H,m,H-2);13C NMR(125MHz,CDCl,δ/ppm):97.5(d,J=7.5Hz,CRh),97.0(d,J=7.5Hz,CRh),90.5(d,J=7.5Hz,CRh),40.0(C-3),28.8(C-2),19.5(C-1),12.7(CH),10.6(CH);IR(νmax,ニート,cm-1):3223(N-H),3149(N-H),2942,2908,1580,1458,1370,1354,1145,1129,1015,924;HRMS(ESI+)m/z:C1220NRhI(M-I)の計算値:407.9690,実測値:407.9693;C1220NRhの元素分析計算値:C,26.96;H,3.77;N,2.62;実測値C,27.50;H,3.80;N,2.50.Cについての元素分析データは範囲外(±0.4)であったが、現在までの最良値であった。
【0126】
実施例17
(R)-IrCl[η:η-C(CH(CHCH{CHCHCH}NH]
【化46】
IrCl水和物(70mg、0.20mmol)及びNaHCO(19.7mg、0.20mmol)の撹拌懸濁液を、メタノール(3.0mL)中で調製し、窒素下に置いた。中間体15(158mg、0.50mmol)を懸濁液に添加した。マイクロ波加熱を、設定温度125℃、圧力130psiで2時間施した。これに続いて、溶媒を減圧下で除去した。シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液DCM/MeOH、95:5)での精製により、黄色の固体(42.9mg、0.10mmol、38%)を得た。DCM/ヘキサン(v/v=1:3)を使用する再結晶により単結晶が実現した。
=0.51(DCM/MeOH,95:5).mp(分解)250.6-251.5℃(DCM-ヘキサン,v/v=1/3).H NMR(500MHz,CDCl,δ/ppm):(ジアステレオマーの混合物)4.59-4.57(1H,m,NH),3.78-3.72(1H,m,CH),3.43-3.29(2H,m,CH),3.12-3.07(1H,m,NCH),2.87-2.77(1H,m,CH),2.66-2.58(1H,m,CH),2.41-1.78(14H,m,14CH),1.73-1.71(24H,m,24CH),1.53-1.46(2H,m,CH)(1×NHシグナルが見えない);13C NMR(125MHz,CDCl,δ/ppm):(ジアステレオマーの混合物)95.2(CIr),93.0(CIr),91.6(CIr),89.9(CIr),89.0(CIr),88.6(CIr),85.0(CIr),81.9(CIr),63.8(NCH),59.8(NCH),49.8(CH),48.6(CH),35.0(CH),31.4(CH),31.3(CH),31.2(CH),23.2(CH),22.9(CH),20.4(CH),20.2(CH),9.2(CpCH),9.1(CpCH),9.1(CpCH),9.1(CpCH),9.0(CpCH),9.0(CpCH),8.9(CpCH),8.9(CpCH),2個のCIrが見えない.IR(νmax,ニート,cm-1):3427,3150,2959,2920,2854,1451,1368,700;HRMS(ESI+)m/z:C1524 35Cl191IrN(M-Cl,50%)の計算値:444.1204,実測値:444.1198;C1524 37Cl191IrNとC1524 35Cl193IrN(M-Cl,100%)の計算値:446.1201,実測値:446.1213;C1524 37Cl193IrN(M-Cl,26%)の計算値:448.1197,実測値:448.1195;C1524ClIrNの元素分析計算値:C,37.42%;H,5.02%;N,2.91%;実測値:C,37.00%;H,4.90%;N,2.80%。
【0127】
実施例18
[Ir{η:η-C(CH(CHNH}{2,4-ジフルオロ-N-フェニルピコリンアミド}][PF
【化47】
実施例3(50mg、0.11mmol)及び2,4-ジフルオロ-N-フェニルピコリンアミド(30.4mg、0.13mmol)のエタノール(20mL)中懸濁液を30分間撹拌して還流させた。エタノール(10mL)中NHPF(42.4mg、0.26mmol)を添加し、混合物を一晩還流させた。RTまで冷却した後、残った固体をろ過し、溶媒をろ液から減圧下で除去した。EtOH/ヘキサンからの沈殿での精製により、標題化合物を、明黄色の粉末として得た(63.5mg、0.0848mmol、77%)。MeOH/EtOからの再結晶によって単結晶が実現した。
H NMR(500MHz,CDOD,δ/ppm):8.80(1H,d,J=5.3Hz,H-4),8.27(1H,td,J=7.7,1.3Hz,H-6),8.15(1H,d,J=7.9Hz,H-7),7.86(1H,ddd,J=7.4,5.7,1.4Hz,H-5),7.41-7.12(2H,m,H-8,H-10),7.08(1H,br s,H-9),2.81(1H,br s,H-3),2.52-2.44(2H,m,H-3,H-1),2.24(1H,m,H-1),2.09(1H,m,H-2),1.88,(3H,s,CH),1.85(1H,br s,H-2),1.57(3H,s,CH),1.45(3H,s,CH),0.89(3H,s,CH);13C NMR(125MHz,CDOD,δ/ppm):211.0(CO),154.5(C-Py),152.9(C-4),141.9(C-6),130.8(C-5),128.1(C-7),112.8(C-9),105.4(C-10),98.1(C-8),91.4(C-Ir),86.2(C-Ir),43.7(C-3),30.3(C-2),19.9(C-1),8.6(CH),その他の炭素原子は観測されず;IR(vmax,ニート,cm-1):3589(N-H),3111(N-H),1629,1603,1501,840,557;HRMS(ESI+)m/z:C2427 191IrNO(M-PF ,60%)の計算値:602.1728,実測値:602.1722;C2427 193IrNO(M-PF ,100%)の計算値:604.1751,実測値:604.1749。
【0128】
実施例19
[Ir{η:η-C(CH(CHNH}{4-フルオロ-N-フェニル-2-メチルチオピコリンアミド}][PF
【化48】
実施例3(50mg、0.11mmol)及び4-フルオロ-N-フェニル-2-メチルチオピコリンアミド(32mg、0.13mmol)のエタノール(20mL)中懸濁液を30分間撹拌して還流させた。エタノール(10mL)中NHPF(42.4mg、0.26mmol)を添加し、混合物を一晩還流させた。RTまで冷却した後、残った固体をろ過し、溶媒をろ液から減圧下で除去した。EtOH/ヘキサンからの沈殿での精製により、標題化合物を、明橙色の粉末(78.6mg、0.10mmol、94%)として得た。EtOH/ヘキサンからの再結晶によって単結晶が実現した。
H NMR(500MHz,CDOD,δ/ppm):8.14(1H,dd,J=7.9,1.1Hz,H-7),8.01(1H,t,J=7.8Hz,H-6),7.74(1H,dd,J=7.7,1.5Hz,H-5),7.17(4H,m,H-8-11),2.99(3H,s,CH-4),2.82(1H,m,H-3),2.38(2H,m,H-3,H-1),2.17(1H,m,H-1),2.10(3H,s,CH),2.01(1H,m,H-2),1.84(1H,m,H-2),1.61(3H,s,CH),1.43(3H,s,CH),1.36(3H,s,CH);13C NMR(125MHz,CDOD,δ/ppm):197.0(CS),163.6(C-F),140.8(C-6),129.1(C-5),124.7(C-7),123.3(C-8,C-11),116.6(C-9,C-10),91.1(C-Ir),88.5(C-Ir),88.0(C-Ir),81.9(C-Ir),44.7(C-3),30.5(C-2),29.9(CH-4),20.0(C-1),10.7(CH),9.4(CH),9.1(CH),8.3(CH),その他の炭素原子は観測されず;IR(vmax,ニート,cm-1):3315(N-H),3271(N-H),3128,3044,1601,1543,1509,1470,1405,1237,1190,1162,1044,837,762,556;HRMS(ESI+)m/z:C2530191IrNS(M-H-2PF ,60%)の計算値:614.1750,実測値:614.1737;C2530193IrNS(M-H-2PF ,100%)の計算値:616.1774,実測値:616.1762。
【0129】
実施例20
[Ir{η:η-C(CH(CHNH}{dppm}][BF
【化49】
実施例3(50mg、0.11mmol)、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン(42.3mg、0.11mmol)及びNaBF(24.2mg、0.22mmol)のエタノール(10mL)中懸濁液を、一晩、撹拌し、加熱還流させた。RTまで冷却した後、溶媒を減圧下で除去し、残渣をメタノールで処理して、ろ過した。ろ液からの溶媒を、減圧下で再度除去した。MeOH/EtOからの沈殿での精製により、標題化合物を、淡黄色の粉末として得た(72.7mg、0.078mmol、71%)。MeOH/EtO又はMeCN/EtOからの再結晶によって単結晶が実現した。
H NMR(500MHz,CDOD,δ/ppm):7.74(6H,m,Ph),7.67(6H,m,Ph),7.58(4H,m,Ph),7.38(4H,m,Ph),5.49(2H,s,H-4),2.69(2H,m,H-3),2.33(6H,t,J=4.0Hz,2CH),2.23(2H,m,H-1),1.95(2H,m,H-2),1.26(6H,m,2CH);13C NMR(125MHz,CDOD,δ/ppm):134.6(Ph),133.5(Ph),133.1(Ph),131.7(Ph),130.9(Ph),99.3(C-Ir),54.9(C-4),42.4(C-3),26.0(C-2),19.9(C-1),10.7(CH),9.1(CH),その他の炭素原子は観測されず;31P NMR(121MHz,CDOD,δ/ppm):-46.3;IR(vmax,ニート,cm-1):3391(N-H),1574,1437,1097,1058,721,699,650,621,541,508;HRMS(ESI+)m/z:C3741 191IrNP(M-H-2BF ,60%)の計算値:752.2320,実測値:752.2335;C3741 193IrNP(M-H-2BF ,100%)の計算値:754.2343,実測値:754.2341。
【0130】
実施例21
[IrCl{η:η-C(CH(CHNH}{ピリジン}][BF
【化50】
実施例3(50mg、0.11mmol)及びNaBF(24.2mg、0.22mmol)のエタノール(5mL)中懸濁液を撹拌し、ピリジン(18μL、0.22mmol)を添加した。混合物を、一晩、加熱還流させた。RTまで冷却した後、混合物をろ過し、溶媒を減圧下で除去した。MeOH/EtOからの沈殿での精製により、標題化合物を、淡黄色の粉末として得た(43.6mg、0.076mmol、69%)。MeOH/EtOからの再結晶化によって単結晶が実現した。
H NMR(500MHz,CDOD,δ/ppm):8.83(2H,m,H-4),8.04(1H,tt,J=7.7,1.6Hz,H-6),7.61(2H,m,H-5),2.86(1H,m,H-3),2.60(1H,m,H-3),2.34(2H,m,H-1),2.05(2H,m,H-2),1.76(3H,s,CH),1.66(3H,s,CH),1.62(3H,s,CH),1.15(3H,s,CH);13C NMR(125MHz,CDOD,δ/ppm):154.8(C-4),140.8(C-6),128.2(C-5),96.6(C-Ir),93.8(C-Ir),90.1(C-Ir),83.1(C-Ir),77.8(C-Ir),43.6(C-3),30.3(C-2),19.8(C-1),9.1(CH),8.8(CH),8.7(CH),8.2(CH);IR(vmax,ニート,cm-1):3276(N-H),3221(N-H),1579,1449,1058,1020,767,697,551,527,518;HRMS(ESI+)m/z:C1220Cl191IrN(M-Py-BF ,60%)の計算値:404.0890,実測値:404.0879;C1220Cl193IrN(M-Py-BF ,100%)の計算値:406.0914,実測値:406.0897。
【0131】
実施例22
イリジウム触媒-N-置換基の効果
【化51】
【0132】
実施例3、4及び6の金属錯体を、比較例の金属錯体[CpIrClと共に、上に示す反応に供した。金属錯体のうちのそれぞれについての収率を、経時的に測定し、図1に示す。単体のアミノ(実施例3)金属錯体及びメチルアミノ(実施例4)金属錯体は、ほとんど同等に活性であり、[CpIrClよりもはるかに活性である。第三級アミンで誘導した触媒の実施例6は、[CpIrClに比べて、わずかに低い収率を有し、ただし、24時間後の最終的変換は匹敵していた。
【0133】
実施例23
イリジウム触媒:対イオンの効果
【化52】
【0134】
実施例3及び実施例7の金属錯体を、[CpIrClと共に、上記反応に供した。金属錯体のそれぞれについての収率を経時的に測定し、図2に示す。ジクロロ錯体は、ジヨード錯体よりも活性が高く、より速い反応速度を示す。しかし、24時間では、双方の錯体がほぼ同一の最終収率をもたらす。実施例3と実施例7との双方が、比較例の錯体[CpIrClよりも有意に活性である。
【0135】
実施例24
中性のロジウム錯体とイリジウム錯体との比較
【化53】
【0136】
実施例3の金属錯体を、2種の異なる溶媒、トルエン中及びt-アミルアルコール中で上記反応に供した。上のスキームに示す、同等の既知のロジウム触媒を、同じ反応に供した。2つの反応の経時的な収率を、図3a(トルエン)及び図3b(t-アミルアルコール)で示す。実施例3のイリジウム触媒は、同等のロジウム錯体よりも確実に活性ではあるが、差の性能は、いくらかの溶媒感受性を示す程度である。
【0137】
実施例25
イリジウム錯体-溶媒耐性
【化54】
【0138】
実施例3の金属錯体及び比較例の金属錯体[CpIrClを、いくつかの溶媒中で、上に示した反応で試験した。各溶媒中の2種の錯体についての24時間後の最終収率を、図4に示す。すべての溶媒(TBMEを除く)中で、最終収率は、本発明の金属錯体についてのほうが高い。
【0139】
同様に、既知の、実施例13のロジウム金属錯体を、上に示したものと同一の反応における溶媒の範囲内で、しかし異なる溶媒で、試験した。収率を図5に示す。ロジウム触媒の収率をイリジウム錯体の収率と比較すると、本発明のイリジウム錯体は、同等のロジウム錯体よりも有意に良好である。
【0140】
図6a~dは、実施例3の金属錯体についての、上で試験した溶媒系の選択における経時的な収率を示す。実施例3の錯体は、24時間での絶対変換(図4)又は個別の運動解析(図6a~d)との双方による測定で、[CpIrClよりも良好な溶媒耐性を示す。
【0141】
実施例26
イリジウム触媒を使用する基質の範囲
【0142】
図7は、官能基の範囲についての基質耐性及び収率を示す。反応条件は、以下の通りである:
【化55】
以下の文字は、この、図7に示す特定の化合物の一般手順からの偏差を表し:は、130℃で実施される反応であり、、2等量のアミンを使用した、、2等量のアルコールを使用した、、2mol%のイリジウムを使用した。実施例3の錯体によって、基質の広い範囲が達成され、[CpIrClよりも優れた性能が、いくつかの事例において明確に明示されている。
【0143】
実施例27
ロジウムの、中性の触媒対イオン性の触媒の比較
【化56】
【0144】
実施例2のイオン性のロジウム錯体と、実施例13で最初に示したロジウム錯体とを、上記反応に供した。反応速度のプロットを、図8に示す。実施例2のイオン性のロジウム錯体は、既知の中性のロジウム錯体よりも速い反応速度を示す。
【0145】
実施例28
イリジウムの、中性の触媒対イオン性の触媒の比較
【化57】
【0146】
上記の実施例27と類似の方法で、中性のロジウム錯体(実施例3)と、イオン性のイリジウム錯体(実施例11)とを、上記反応に供した。反応速度を図9に示す。イオン性のイリジウム錯体(実施例11)は、中性のジクロリド錯体よりも有意に活性であり、ひいては比較例の錯体[CpIrClよりも有意に活性であり、図1及び図2を参照されたい。
【0147】
実施例29
イリジウム錯体-溶媒耐性
【0148】
実施例14にあるように、実施例11のイオン性錯体を、溶媒の範囲で試験した。24時間後のイオン性錯体での反応についての最終収率を図10に示し、図4に示す結果及び実施例14と比較している。イオン性の錯体は、少なくともジクロロイド錯体と同様の広い溶媒適合性を示し、通常、より活性である。
【0149】
実施例30
イリジウム触媒の温度性能
【化58】
【0150】
実施例3のイリジウム触媒、実施例11のイオン性錯体、及び比較例の錯体[CpIrClを、異なる温度範囲にわたり、上記反応に供した。得られた反応速度を、図11a(実施例3)、11b(実施例11)及び11c(比較例の錯体)に示す。実施例3の錯体は、比較例の錯体[CpIrClよりも、低温での反応への感度が劣っているように見える。イオン性の錯体(実施例11)は、80℃に至るまで良好な活性を示し、110℃での比較例の錯体よりも、80℃にて良好な活性を示す。
【0151】
実施例31
イリジウム錯体-低触媒負荷での性能
【化59】
【0152】
上に示す反応条件下、実施例3及び実施例11の金属錯体は、それぞれ0.1mol%のIr及び0.075mol%のIrの負荷に至るまで、24時間で、優れた(ほぼ完全な)変換をもたらした。図12及び図13に結果を示す。対照的に、比較例の錯体[CpIrClは、2mol%にて100%の変換を達成することができず、図1及び図2を参照されたい。
【0153】
実施例32
触媒活性へのn(テザーにおけるリンカーの長さ)の効果
【化60】
【0154】
ロジウム触媒の触媒活性への鎖長の効果を調べた。テザーが異なる長さ(n=2、3及び4)である、テザーリガンドを有する3種の触媒を、比較例のロジウム二量体[CpRhClに対して試験した。2、3及び4個の炭素原子のテザー炭素鎖長を有する錯体を試験した。テザー鎖内に3個の炭素原子(n=3(図14でo=1))を有する錯体の触媒活性は、他の試験したテザーリガンド及び比較例の二量体の触媒活性よりも有意に良好であった。データを図14に示す。
【0155】
本明細書の記述及び特許請求の範囲を通じて、用語「含む」及び「含有する」及びそれらのバリエーションは、「含むがこれらに限定されない」を意味し、それらは、他の、部分、添加剤、成分、整数又は工程を排除しないことが意図される。本明細書の記述及び特許請求の範囲を通じて、文脈が他のことを求めない限り、単数は複数を包含する。特に、不特定の物品が使用されるところでは、明細書は、文脈が他のことを求めない限り、複数並びに単数が想定されると理解される。
【0156】
本発明の、特定の態様、実施形態又は実施例に関連して記載される、特徴、整数、特性、化合物、化学的部分又は基は、本明細書に記載の、任意の他の態様、実施形態又は実施例と不適合でない限り、それらに適用可能であると理解される。本明細書(添付の、特許請求の範囲、要約及び図面を含む)で開示されている特徴のうちのすべて、及び/又はそこで開示されている任意の方法又はプロセスの工程のうちのすべては、こうした特徴及び/又は工程のうちの少なくともいくつかが互いに排他的である組合せを除き、任意の組合せにおいて組み合わされてもよい。本発明は、任意の先行する実施形態の詳細に、限定されない。本発明は、本明細書(添付の、特許請求の範囲、要約及び図面を含む)で開示されている特徴の、任意の新規な1つ若しくは任意の新規な組合せに延在し、又はそこで開示されている任意の方法若しくはプロセスの工程の、任意の新規な1つ若しくは任意の新規な組合せに延在する。
【0157】
読み手の関心は、本出願との関連において、本明細書と同時に出願された、又は本明細書に先行して出願された、かつ本出願についての公開調査に公開されている、すべての論文及び文献に向けられ、すべてのこうした論文及び文献の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図7
図8
図9
図10
図11-1】
図11-2】
図12
図13
図14