(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】電動弁および冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20221025BHJP
F25B 41/35 20210101ALI20221025BHJP
【FI】
F16K31/04 K
F25B41/35
(21)【出願番号】P 2021128211
(22)【出願日】2021-08-04
(62)【分割の表示】P 2018022811の分割
【原出願日】2018-02-13
【審査請求日】2021-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】中川 大樹
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-174130(JP,A)
【文献】特開2008-032094(JP,A)
【文献】特開2016-037995(JP,A)
【文献】特開2006-307975(JP,A)
【文献】特開2017-044347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/00 - 31/04
F16K 1/00 - 1/54
F25B 41/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体を含む可動ユニットと弁本体を含む固定ユニットとにより構成されるネジ送り機構を備え、駆動手段によって前記可動ユニットを回転駆動することにより軸方向に進退移動させる電動弁であって、
前記可動ユニットの可動側ストッパの平坦面と前記固定ユニットの固定側ストッパの平坦面とが周方向を衝突方向として当接することにより、当該可動ユニットの前記軸方向における移動が規制されるように構成され、
前記可動側ストッパは、前記可動ユニットのネジ部とともに径方向に移動可能であり、前記可動ユニットのマグネットロータの上部が前記径方向に支持されていなく、
前記可動側ストッパと前記固定側ストッパとのうち一方の平坦面は、他方と当接する主当接領域と、該主当接領域の径方向両側に配置される副当接領域と、を有し、
前記副当接領域は、前記可動ユニットが前記固定ユニットに対して移動可能な
前記径方向寸法以上の幅を有することを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記可動側ストッパと前記固定側ストッパの当接面積は、前記主当接領域の面積と等しくなることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記可動側ストッパは、前記可動ユニットと前記固定ユニットとの中心軸同士が一致した基準状態から、径方向において所定の可動寸法だけ移動できるように設けられ、
前記主当接領域は、前記基準状態において他方のストッパと当接することを特徴とする請求項1又は2に記載の電動弁。
【請求項4】
前記可動寸法は、前記ネジ送り機構における雄ネジ部と雌ネジ部との有効半径の差を含むことを特徴とする請求項3に記載の電動弁。
【請求項5】
前記固定ユニットは、前記可動ユニットと螺合するネジ部と、前記可動ユニットの被案内部を前記軸方向に案内する案内部と、を有し、
前記可動寸法は、前記案内部と前記被案内部との内外径の差を含むことを特徴とする請求項3に記載の電動弁。
【請求項6】
前記可動ユニットは、前記可動側ストッパを有する部材と、他の部材と、を有して構成され、
前記可動寸法は、前記可動側ストッパを有する部材と、前記他の部材と、の間の隙間の大きさを含むことを特徴とする請求項4又は5に記載の電動弁。
【請求項7】
前記可動側ストッパおよび前記固定側ストッパは、それぞれ、周方向寸法よりも径方向寸法の方が大きい突起部に形成されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の電動弁。
【請求項8】
前記可動側ストッパと前記固定側ストッパとのうち前記他方は、当接領域を含む部分が、前記一方における前記主当接領域および前記副当接領域を含む部分よりも硬度が高い樹脂によって形成されていることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の電動弁。
【請求項9】
圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、請求項1~8のいずれか1項に記載の電動弁が、前記膨張弁として用いられていることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁および冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電動弁として、ネジ送り機構を備え、弁体を有するロータ等の可動ユニットを回転駆動して軸方向に進退移動させるものが知られている。このような電動弁として、ロータに移動ストッパを設けるとともにガイド部材に固定ストッパを設けたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された電動弁では、ストッパ同士が周方向を衝突方向として当接することによりロータの回転が規制され、ロータの下降を停止させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたようにストッパ同士の当接によって可動ユニットの下降を停止させる構成においては、当接時に生じる面圧が所定値となるようにストッパの当接面積が設定される。ところで、ネジ送り作用によって可動ユニットを移動させるためには、可動ユニットと、可動ユニットを支持する固定ユニットと、の間に多少の余裕(隙間)を持たせる必要があり、可動ユニットが径方向において若干移動し得る。可動ユニットが移動するとストッパ同士の当接の態様も変化し、当接面積が変動してしまう。当接面積が設計値よりも小さくなると面圧が高くなり、ストッパが摩耗してしまう可能性があった。
【0005】
本発明の目的は、ストッパの摩耗を抑制することができる電動弁および冷凍サイクルシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動弁は、弁体を含む可動ユニットと弁本体を含む固定ユニットとにより構成されるネジ送り機構を備え、駆動手段によって前記可動ユニットを回転駆動することにより軸方向に進退移動させる電動弁であって、前記可動ユニットの可動側ストッパの平坦面と前記固定ユニットの固定側ストッパの平坦面とが周方向を衝突方向として当接することにより、当該可動ユニットの前記軸方向における移動が規制されるように構成され、前記可動側ストッパは、前記可動ユニットのネジ部とともに径方向に移動可能であり、前記可動ユニットのマグネットロータの上部が前記径方向に支持されていなく、前記可動側ストッパと前記固定側ストッパとのうち一方の平坦面は、他方と当接する主当接領域と、該主当接領域の径方向両側に配置される副当接領域と、を有し、前記副当接領域は、前記可動ユニットが前記固定ユニットに対して移動可能な前記径方向寸法以上の幅を有することを特徴とする。
【0007】
このような本発明によれば、可動側ストッパと固定側ストッパとのうち一方が主当接領域と副当接領域とを有し、副当接領域の幅が、可動ユニットが固定ユニットに対して移動可能な径方向寸法以上であることで、可動ユニットが径方向に移動した場合であっても、他方の当接領域のうち主当接領域からはみ出した部分は、副当接領域と当接する。これにより、ストッパ同士の当接面積の変動を抑制することができ、ストッパの摩耗を抑制することができる。また、このような構成によれば、ストッパ同士の当接面積を大きくして面圧を低下させることができる。このため、ストッパの摩耗を抑制し、2つのストッパの長寿命化を図ることができる。
【0008】
この際、本発明の電動弁では、前記可動側ストッパは、前記可動ユニットと前記固定ユニットとの中心軸同士が一致した基準状態から、径方向において所定の可動寸法だけ移動できるように設けられ、前記主当接領域は、前記基準状態において他方のストッパと当接することが好ましい。このような構成によれば、他方の当接領域全体が常に一方に対して当接し、ストッパ同士の当接面積を略一定に保つことができ、ストッパの摩耗を抑制することができる。
【0009】
さらに、本発明の電動弁では、前記可動寸法は、前記ネジ送り機構における雄ネジ部と雌ネジ部との有効半径の差を含むことが好ましい。このような構成によれば、ネジ部同士の間に生じるガタによって可動ユニットが移動した場合に、ストッパ同士の当接面積を略一定に保って摩耗を抑制することができる。
【0010】
また、本発明の電動弁では、前記固定ユニットは、前記可動ユニットと螺合するネジ部と、前記可動ユニットの被案内部を前記軸方向に案内する案内部と、を有し、前記可動寸法は、前記案内部と前記被案内部との内外径の差を含んでもよい。このような構成によれば、案内部と被案内部との間に生じるガタによって可動ユニットが移動した場合に、ストッパ同士の当接面積を略一定に保って摩耗を抑制することができる。
【0011】
また、本発明の電動弁では、前記可動ユニットは、前記可動側ストッパを有する部材と、他の部材と、を有して構成され、前記可動寸法は、前記可動側ストッパを有する部材と、前記他の部材と、の間の隙間の大きさを含んでもよい。このような構成によれば、可動側ストッパを有する部材が他の部材に対して移動した場合であっても、ストッパ同士の当接面積を略一定に保って摩耗を抑制することができる。
【0012】
また、本発明の電動弁では、前記可動側ストッパおよび前記固定側ストッパは、それぞれ、周方向寸法よりも径方向寸法の方が大きい突起部に形成されていることが好ましい。このような構成によれば、ストッパ同士の当接面積を大きくして面圧を低下させることができる。
【0013】
また、本発明の電動弁では、前記可動側ストッパと前記固定側ストッパとのうち前記他方は、当接領域を含む部分が、前記一方における前記主当接領域および前記副当接領域を含む部分よりも硬度が高い樹脂によって形成されていることが好ましい。一方のストッパ(主当接領域および副当接領域を有するストッパ)は、他方のストッパと当接する部分が一定でないのに対し、他方のストッパは、その当接領域全体が一方のストッパと当接することとなる。従って、他方のストッパの方が一方のストッパよりも摩耗が進行しやすい。そこで、他方のストッパのうち当接領域を含む部分の硬度を、一方のストッパのうち主当接領域および副当接領域を含む部分の硬度よりも高くすることにより、2つのストッパを長寿命化することができる。
【0014】
本発明の冷凍サイクルシステムは、圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、上記のいずれかに記載の電動弁が、前記膨張弁として用いられていることを特徴とする。このような本発明によれば、上記のようにストッパの摩耗が抑制されていることで、電動弁の全開時や全閉時にストッパを機能させやすく、流量不良を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電動弁及び冷凍サイクルシステムによれば、可動側ストッパと固定側ストッパとのうち一方が主当接領域と副当接領域とを有し、副当接領域の幅が可動寸法以上であることで、ストッパ同士の当接面積を略一定に保ってストッパの摩耗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る電動弁が全閉状態となった様子を示す断面図である。
【
図2】前記電動弁において可動ユニットが全開状態となった様子を示す断面図である。
【
図3】前記電動弁の可動側ストッパを示す断面図である。
【
図4】前記電動弁の固定側ストッパを示す断面図である。
【
図5】前記可動側ストッパと前記固定側ストッパとが当接した様子を示す断面図である。
【
図6】前記可動側ストッパと前記固定側ストッパとが当接した様子を示す断面図である。
【
図7】前記可動側ストッパが形成された突起部および前記固定側ストッパが形成された突起部を示す斜視図である。
【
図8】前記電動弁が用いられる冷凍サイクルシステムを示す概略構成図である。
【
図9】変形例の電動弁のストッパを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の電動弁1Aは、
図1、2に示すように、弁本体2と、支持部材3と、ロータ4と、駆動手段としてのステッピングモータ5と、を備え、
図8に示すように、例えばパッケージエアコンやルームエアコン等の空気調和機の冷凍サイクル100に設けられるものである。
図8において、符号200は室外ユニットに搭載された室外熱交換器、300は室内ユニットに搭載された室内熱交換器、400は四方弁を構成する流路切換弁、500は圧縮機である。電動弁1A、室外熱交換器200、室内熱交換器300、流路切換弁400、及び圧縮機500は、それぞれ導管によって図示のように接続され、ヒートポンプ式の冷凍サイクルを構成している。尚、アキュムレータ、圧力センサ、温度センサ等は図示を省略してある。尚、本実施形態では、ロータ4の軸方向をZ方向とし、Z方向に略直交する2方向をX方向およびY方向とする。
【0018】
尚、
図1の断面図は、後述する各ストッパの当接面が見えるように、Z方向およびこの当接面を通る面を断面としたものであり、Y方向の手前側から奥側を見たものである。このとき、互いに当接する2つの当接面は同時には見えないが、説明の都合上、
図1には2つの断面を描写している。断面に対してY方向手前側に位置する当接面については、奥側から手前側を見た様子を描写している。また、
図2~6、9、10についても同様である。
【0019】
弁本体2は、円筒状に形成され、一端側において開口した第1開口部21と、側面において開口した第2開口部22と、を有する。第1開口部21には第1継手管101が接続され、第2開口部22には第2継手管102が接続されている。また、第1開口部21には弁座部材23が設けられている。以下では、弁本体2における第1開口部21が形成された側をZ方向下側とし、その反対側をZ方向上側とする。
【0020】
支持部材3は、XY平面に沿って延びる円板状のフランジ部31と、Z方向に沿って延びる円筒状のホルダ部32と、を有する。フランジ部31は、弁本体2の他端側(Z方向上側)を塞ぐように取り付けられ、弁本体2の内側に弁室2Aが形成される。弁本体2と支持部材3とは、取付金具3aにより互いに固定され、固定ユニット20を構成する。
【0021】
ホルダ部32は、フランジ部31よりもZ方向上側に、雌ネジ部321を有し、さらに上側に第1の案内部322を有する。また、ホルダ部32は、フランジ部31よりもZ方向下側に第2の案内部323を有する。第1の案内部322の内径は雌ネジ部321の内径よりも大きく、第2の案内部323の内径は雌ネジ部321の内径よりも小さい。
【0022】
ホルダ部32のZ方向上端には、径方向外側に突出した突起部としてのストッパ突起324が形成されている。ストッパ突起324のうちZ方向上側における一部が、ロータ4の閉方向移動を規制する固定側ストッパ6Uとなる。ストッパ突起324は、ホルダ部32の円筒部分から径方向外側に離れた位置においてZ方向下側に突出した部分を有し、この突出部分が、ロータ4の開方向移動を規制する固定側ストッパ6Dとなる。
【0023】
ロータ4は、Z方向に沿って延びる棒状に形成され、先端(Z方向下端)に形成された弁体としてのニードル部41と、Z方向略中央部に形成された雄ネジ部42と、雄ネジ部42よりもZ方向上側に形成された第1の被案内部43と、第1の被案内部43よりもZ方向上側に形成された突起部としてのストッパ突起44と、ニードル部41と雄ネジ部42との間に形成された第2の被案内部45と、を有する。
【0024】
具体的には、ロータ4は、ロータ軸11と弁棒4Aとの2つの部材によって構成されている。ニードル部41および第2の被案内部45は弁棒4Aに形成されている。雄ネジ部42、第1の被案内部43およびストッパ突起44は、ロータ軸11に形成されている。ロータ軸11の上端の開口には、固定金具12が嵌合されている。そして、この固定金具12の下端と、弁棒4Aの上端の拡径部4A1と、の間には、弁ばね13が介装され、弁棒4Aを弁座23側に向けて(即ち閉方向に)付勢するように構成されている。また、弁棒4Aは、ロータ軸11に対しZ方向および回転方向に摺動可能となっている。
【0025】
ニードル部41は、弁座部材23に着座可能であって、ロータ4がZ方向に沿って進退移動することによって弁座部材23に対して接離する。これにより、弁座部材23に形成された弁ポート23aの開度が調節される。
【0026】
雄ネジ部42は、支持部材3の雌ネジ部321と螺合する。これにより、ロータ4が支
持部材3に支持され、後述する可動ユニット10と固定ユニット20とによってネジ送り
機構が構成される。
【0027】
第1の被案内部43は、その外径が雄ネジ部42の外径よりも大きい円筒状に形成され、支持部材3の第1の案内部322の内側に配置される。第2の被案内部45は、その外径が雄ネジ部42の外径よりも小さく、第2の案内部323の内側に配置される。
【0028】
ストッパ突起44は、第1の被案内部43に連続する円筒部分から径方向外側に突出するとともに、この円筒部分から径方向外側に離れた位置においてZ方向下側に突出した部分を有する。このZ方向下側に突出した部分は、ロータ4の閉方向移動を規制する可動側ストッパ7Uとなる。
【0029】
ステッピングモータ5は、ケース51と、マグネットロータ52と、ステータコイル53と、を有する。ケース51は、弁本体2のZ方向上端部に対し、上記の取付金具3aとともに溶接等によって固定されている。これにより、弁本体2およびケース51の内側が気密に保たれるようになっている。
【0030】
マグネットロータ52は、その外周部が多極に着磁されたものであって、ロータ4の上端部に上記の固定金具12により固定されている。これにより、マグネットロータ52とロータ4とが同時に回転するようになっている。即ち、マグネットロータ52とロータ4とが可動ユニット10を構成する。マグネットロータ52は、ロータ4との固定部からZ方向下側に向かって延びる円筒部521と、円筒部521の内周面から径方向内側に突出した突起部としてのストッパ突起522と、を有する。ストッパ突起522のうちZ方向上側における一部が、ロータ4の開方向移動を規制する可動側ストッパ7Dとなる。
【0031】
ステータコイル53には、適宜な制御手段によって制御された電源からパルス電流が供給されるようになっている。ステータコイル53にパルス電流が供給されると、パルス数に応じて可動ユニット10がZ方向を軸方向として回転する。ネジ送り機構を構成する可動ユニット10は、回転することによってZ方向に進退移動する。これにより、弁ポート23aの開度が調節され、第1継手管101から第2継手管102に向かって流れる流体の流量、又は、第2継手管102から第1継手管101に向かって流れる流体の流量が調節される。
【0032】
可動ユニット10を回転させて閉方向(Z方向下側)に移動させていくと、ニードル部41が弁座部材23に着座する際に、
図1に示すように、可動ユニット10の可動側ストッパ7Uと、固定ユニット20の固定側ストッパ6Uと、が周方向を衝突方向として当接する。これにより、可動ユニット10の閉方向への移動が規制される。
【0033】
一方、可動ユニット10を回転させて開方向(Z方向上側)に移動させていくと、ニードル部41が弁座部材23から所定距離だけ離れた際に、
図2に示すように、可動ユニット10の可動側ストッパ7Dと、固定ユニット20の固定側ストッパ6Dと、が周方向を衝突方向として当接する。これにより、可動ユニット10の開方向への移動が規制される。
【0034】
このように可動ユニット10が固定ユニット20に対してZ方向に移動できるように、ロータ4と支持部材3との間の各部には、所定の隙間が形成されている。本実施形態では、雌ネジ部321と雄ネジ部42との間、第1の案内部322と第1の被案内部43との間、及び、第2の案内部323と第2の被案内部45との間の計3箇所に隙間が形成されており、第1の案内部322と第1の被案内部43との間の隙間が最小となっている。第1の案内部322と第1の被案内部43との間の隙間の大きさは、第1の案内部322の内径(半径)と第1の被案内部43の外径(半径)との差であり、可動寸法ΔLとなる。可動寸法ΔLとは、可動ユニット10と固定ユニット20との中心軸同士が一致した基準状態からXY平面内の各方向(径方向)で可動ユニット10が移動できる寸法(片側寸法)である。
【0035】
ここで、固定側ストッパ6Uおよび可動側ストッパ7Uの詳細について
図3、4を参照しつつ説明する。可動側ストッパ7Uは長方形状の当接領域71を有する。当接領域71の径方向寸法(幅)をW1とする。一方、固定側ストッパ6Uは、主当接領域61と、副当接領域62、63と、を有する。主当接領域61は、基準状態において当接領域71と当接する部分であり、長方形状に形成されている。従って、主当接領域61の径方向寸法はW1となる。また、基準状態におけるストッパ同士の当接面積は、当接領域71の面積(主当接領域61の面積)と等しくなる。
【0036】
副当接領域62、63は、主当接領域61の両側に配置されており、その径方向寸法W2、W3は、いずれも可動寸法ΔLよりも大きい。尚、副当接領域62の径方向寸法W2と副当接領域63の径方向寸法W3とは、互いに等しくてもよいし異なっていてもよい。
【0037】
可動ユニット10が可動寸法ΔLの範囲内で径方向外側に最大限移動した場合、ストッパ同士は
図5に示すように当接する。可動側ストッパ7Uの当接領域71は、固定側ストッパ6Uに対し、主当接領域61と径方向外側の副当接領域62とに跨って当接する。このとき、当接領域71の全体が固定側ストッパ6Uに当接することとなり、ストッパ同士の当接面積は当接領域71の面積と等しくなる。
【0038】
可動ユニット10が可動寸法ΔLの範囲内で径方向内側に最大限移動した場合、ストッパ同士は
図6に示すように当接する。可動側ストッパ7Uの当接領域71は、固定側ストッパ6Uに対し、主当接領域61と径方向内側の副当接領域63とに跨って当接する。このとき、当接領域71の全体が固定側ストッパ6Uに当接することとなり、ストッパ同士の当接面積は当接領域71の面積と等しくなる。
【0039】
このように、可動ユニット10が可動寸法ΔLの範囲内で移動した場合であっても、当接領域71は固定側ストッパ6Uの当接領域からはみ出すことがなく、ストッパ同士の当接面積は、基準状態と同様に当接領域71と等しくなり略一定に保たれる。
【0040】
また、
図7に示すように、固定側ストッパ6Uが形成されたストッパ突起324の径方向寸法は、W1+W2+W3となり、ストッパ突起324の周方向(可動ユニット10の回転軸を中心とする回転方向)寸法R1よりも大きい。また、可動側ストッパ7Uが形成されたストッパ突起44の径方向寸法は、W1となり、ストッパ突起44の周方向寸法R2よりも大きい。
【0041】
以上に説明したように、可動ユニット10の閉方向移動を規制するストッパにおいて、固定側ストッパ6Uが主当接領域61と副当接領域62、63とを有するものとしたが、可動ユニット10の開方向移動を規制するストッパにおいても同様に、固定側ストッパ6Dは主当接領域と副当接領域とを有する。また、可動ユニット10の開方向移動を規制するストッパにおいても、可動側ストッパ7Dが形成されたストッパ突起522の径方向寸法はその周方向寸法よりも大きい。
【0042】
また、固定側ストッパ6U、6Dの当接領域を含むストッパ突起324と、可動側ストッパ7Uの当接領域を含むストッパ突起44と、は互いに異なる樹脂によって形成されている。さらに、ストッパ突起324と、可動側ストッパ7Dの当接領域を含むストッパ突起522と、は互いに異なる樹脂によって形成されている。尚、樹脂が異なるとは、基材が異なる場合だけでなく、同じ基材に対して量や種類が異なる添加物が添加されている場合も含み、硬度等の性質が異なることを意味する。
【0043】
具体的には、開方向または閉方向の移動を規制する一対の可動側ストッパと固定側ストッパとのうち、副当接領域を有していないストッパ(例えば
図5に示す閉方向規制用の可動側ストッパ7U)の方が、主当接領域および副当接領域を有するストッパ(例えば
図5に示す閉方向規制用の固定側ストッパ6U)よりも硬度が高い樹脂によって形成されている。尚、ストッパを形成する樹脂の硬度の指標は、樹脂材料に対して用いられるものであればよく、ロックウェル硬度やデュロメーター硬度等が例示される。
【0044】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。即ち、固定側ストッパ6Uが主当接領域61と副当接領域62、63とを有し、副当接領域62、63の径方向寸法W2、W3が可動寸法ΔL以上であることで、可動側ストッパ7Uの当接領域71全体が、常に固定側ストッパ6Uに対して当接する。従って、可動ユニット10の移動に関わらず、ストッパ同士の当接面積を略一定に保つことができ、面圧を変動しにくくしてストッパの摩耗を抑制することができる。
【0045】
また、可動寸法ΔLが、第1の案内部322と第1の被案内部43との半径同士の差であることで、第1の案内部322と第1の被案内部43との間に生じるガタによって可動ユニット10が移動した場合に、ストッパ同士の当接面積を略一定に保って摩耗を抑制することができる。
【0046】
また、固定側ストッパ6U、6Dおよび可動側ストッパ7U、7Dのそれぞれが形成された各ストッパ突起が、周方向寸法よりも径方向寸法の方が大きく形成されていることで、ストッパ同士の当接面積を大きくして面圧を低下させることができる。
【0047】
また、副当接領域を有していないストッパの方が、主当接領域および副当接領域を有するストッパよりも硬度が高い樹脂によって形成されていることで、2つのストッパを長寿命化することができる。主当接領域および副当接領域を有するストッパは、相手方のストッパと当接する部分が一定でないのに対し、副当接領域を有していないストッパは、その当接領域全体が相手方のストッパと当接することとなる。従って、副当接領域を有していないストッパの方が、主当接領域および副当接領域を有するストッパよりも摩耗が進行しやすい。そこで、副当接領域を有していないストッパを、主当接領域および副当接領域を有するストッパの硬度よりも高くすることにより、2つのストッパを長寿命化することができる。
【0048】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
【0049】
例えば、前記実施形態では、固定側ストッパが主当接領域と副当接領域とを有し、即ち、固定側ストッパの方が可動側ストッパよりも径方向寸法が大きいものとしたが、
図9に示すように、可動側ストッパ9Uの方が固定側ストッパ8Uよりも径方向寸法が大きいものとしてもよい。可動側ストッパ9Uは、主当接領域91と、副当接領域92、93と、を有する。副当接領域92、93は、主当接領域91の径方向両側に形成され、いずれも可動寸法ΔL以上の径方向寸法を有する。
図9に示すような形態においても前記実施形態と同様に、ストッパ同士の当接面積を略一定に保つことができ、面圧を変動しにくくしてストッパの摩耗を抑制することができる。
【0050】
また、可動ユニットの閉方向移動を規制するストッパと、開方向移動を規制するストッパと、のうち一方にのみ前記実施形態のような主当接領域および副当接領域が設定されていてもよい。
【0051】
また、前記実施形態では、可動ユニット10と固定ユニット20との間の各部に形成された隙間のうち、第1の案内部322と第1の被案内部43との間の隙間が最小であり、副当接領域62、63の径方向寸法W2、W3がこの隙間の大きさ(可動寸法ΔL)以上であるものとしたが、他の部分に設定された隙間が最小である場合には、この最小の隙間の大きさを可動寸法とし、副当接領域の径方向寸法はこの可動寸法以上であればよい。例えば、ロータ4の雄ネジ部42と支持部材3の雌ネジ部321との間に設定された隙間が最小となる場合には、副当接領域の径方向寸法はこの隙間の大きさ以上であればよい。尚、雄ネジ部42と雌ネジ部321との間の隙間の大きさは、ネジ部同士の有効半径(=有効径の1/2)の差である。ここで、有効径とは、JISB0101に定義されるものであり、ネジ溝の幅がネジ山の幅に等しくなる様な仮想的な円筒(又は円錐)の直径である。
【0052】
また、前記実施形態では、可動寸法ΔLが、可動ユニット10と固定ユニット20との間に形成された隙間の大きさのみによって決まるものとしたが、可動ユニットが複数部材によって構成される場合、これらの部材間に生じる隙間の大きさが可動寸法に含まれることがある。例えば、前記実施形態における第2の案内部323と第2の被案内部45との間の隙間の大きさによって可動寸法が決まる場合には、この可動寸法には、弁棒4Aにおける第3の案内部325と、ロータ軸11における第3の被案内部49と、の間の隙間の大きさも含まれる。
【0053】
また、上記のようにネジ部同士の有効半径の差によって可動寸法が決まる場合においても、可動ユニットが、可動側ストッパを有する部材と、ネジ部を有する部材と、を備えていれば、これらの部材間に生じる隙間の大きさが可動寸法に含まれる。このように、可動寸法には、可動側ストッパを有する部材と、他の部材と、の間の隙間の大きさを含めてもよい。
【0054】
また、前記実施形態では、固定側ストッパ6U、6Dおよび可動側ストッパ7U、7Dのそれぞれが形成された各ストッパ突起が、その周方向寸法よりもその径方向寸法の方が大きく形成されているものとしたが、このような構成に限定されない。例えば、ストッパ突起の基端部に加わる負荷が大きい場合には、ストッパ突起の周方向寸法を径方向寸法よりも大きくしてもよい。このような構成によれば、ストッパ突起の基端部における破断を抑制することができる。
【0055】
また、前記実施形態では、固定側ストッパの当接領域を含むストッパ突起全体と、可動側ストッパの当接領域を含むストッパ突起と、が互いに異なる樹脂によって形成されているものとしたが、これらのストッパ突起のうち当接領域を含む部分(表面)のみが互いに異なる樹脂によって形成されていてもよい。また、これらのストッパ突起は、同じ樹脂によって形成されていてもよい。2つのストッパ突起をいずれも樹脂製とすれば、樹脂製のストッパ突起と金属製のストッパ突起とを組み合わせる場合と比較して、ストッパの摩耗を抑制することができる。また、2つのストッパのうち少なくとも一方が金属によって形成されていてもよい。
【0056】
また、前記実施形態では、固定ユニット20の支持部材3が雌ネジ部321を有するとともに可動ユニット10のロータ4が雄ネジ部42を有するものとしたが、
図10に示す電動弁1Bのように、雄ネジ部33を有する支持部材3Bと、雌ネジ部46を有するロータ4Bと、を備える構成としてもよい。電動弁1Bでは、ロータ4Bが、内周面に雌ネジ部46が形成された筒状のロータ本体47を有し、支持部材3Bが、外周面に雄ネジ部33が形成された筒状部材34を有する。筒状部材34が筒状のロータ本体47に収容されてネジ部同士が螺合し、ロータ4Bにおける棒状の弁棒48が筒状部材34に挿通されている。
【0057】
電動弁1Bにおいても、固定側ストッパ6Uが可動側ストッパ7Uに対して主当接領域および副当接領域を有している。これにより、ストッパ同士の当接面積が略一定に保たれ、摩耗が抑制されている。
【0058】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0059】
1A、1B 電動弁
321 雌ネジ部
322 第1の案内部
324 ストッパ突起(突起部)
41 ニードル部(弁体)
42 雄ネジ部
43 第1の被案内部
44 ストッパ突起(突起部)
5 ステッピングモータ(駆動手段)
6U、6D 固定側ストッパ
61 主当接領域
62、63 副当接領域
7U、7D 可動側ストッパ
71 当接領域
10 可動ユニット
20 固定ユニット