(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】スライドファスナー、並びにファスナーストリンガー及びファスナーチェーンの製造方法
(51)【国際特許分類】
A44B 19/12 20060101AFI20221025BHJP
A44B 19/42 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
A44B19/12
A44B19/42
(21)【出願番号】P 2021508494
(86)(22)【出願日】2019-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2019012987
(87)【国際公開番号】W WO2020194537
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】池口 祥人
(72)【発明者】
【氏名】高松 聡
(72)【発明者】
【氏名】桐田 美幸
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2011/004462(JP,A1)
【文献】国際公開第2015/025412(WO,A1)
【文献】実開昭56-158808(JP,U)
【文献】特開2006-247279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B19/12
B29D5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のファスナーストリンガー(2)にして、各々が、ファスナーテープ(3)とファスナーエレメント(4)を含む一対のファスナーストリンガー(2)と、
前記一対のファスナーストリンガー(2)を開閉するためのスライダー(5)を備えるスライドファスナー(1)であって、
前記ファスナーエレメント(4)は、前記ファスナーテープ(3)の長手方向に沿って螺旋状に延びるモノフィラメントを含み、
前記モノフィラメントは、前記ファスナーテープ(3)に対する前記ファスナーエレメント(4)の取付のための取付糸(45)又は前記ファスナーテープ(3)により被覆された被覆面(48)と、前記取付糸(45)又は前記ファスナーテープ(3)により被覆されない露出面(49)を有し、
前記被覆面(48)における光沢度と比較して前記露出面(49)における光沢度が減じられるように1以上の凹部(L1~L5,L9,D1)が前記露出面(49)に形成され
、
前記1以上の凹部(L1~L5,L9,D1)の最大深さは、0.1mm以下である、スライドファスナー。
【請求項2】
前記1以上の凹部は、前記ファスナーエレメント(4)同士が結合した状態において、一方のモノフィラメントの部分と他方のモノフィラメントの部分がファスナーテープ(3)の長手方向に沿って交互に配置された交互配置領域(R1,R2)で連続的に延びる少なくとも1つの連続凹部(L1,L2,L4,L5,L9)を含む、請求項1に記載のスライドファスナー。
【請求項3】
各ファスナーストリンガー(2)が、前記ファスナーテープ(3)に対して前記ファスナーエレメント(4)を取り付けるための取付糸(45)を有し、
前記1以上の凹部は、前記ファスナーエレメント(4)同士が結合した状態において一方の取付糸(45)と他方の取付糸(45)の間の領域で連続的に延びる少なくとも1つの連続凹部(L1,L2,L4,L5)を含む、請求項1又は2に記載のスライドファスナー。
【請求項4】
前記1以上の凹部は、前記ファスナーエレメント(4)同士が結合した状態において、前記ファスナーテープ(3)の長手方向に対して平行に延びる複数の連続凹部(L1~L3,L5)を含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のスライドファスナー。
【請求項5】
前記1以上の凹部は、前記ファスナーエレメント(4)同士が結合した状態において、前記ファスナーテープ(3)の長手方向に沿って蛇行して又はジグザグ状に又は連続ループを描くように延びる少なくとも1つの連続凹部(L4)を含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のスライドファスナー。
【請求項6】
前記モノフィラメントは、前記ファスナーテープ(3)の長手方向に沿って配置された複数の頭部(41)と、前記頭部(41)の端部に結合し、前記ファスナーテープ(3)の長手方向に対して交差するように延びる複数の脚部(42,43)を含み、
前記1以上の凹部は、一方のモノフィラメントの頭部(41)と他方のモノフィラメントの脚部(42,43)がファスナーテープ(3)の長手方向に沿って交互に配置された交互配置領域(R1)で連続的に延びる連続凹部(L1)を含み、又は、一方のモノフィラメントの脚部(42,43)と他方のモノフィラメントの脚部(42,43)がファスナーテープ(3)の長手方向に沿って交互に配置された交互配置領域(R2)で連続的に延びる連続凹部(L2)を含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のスライドファスナー。
【請求項7】
前記連続凹部(L1,L2)が設けられた前記脚部は、前記ファスナーテープ(3)に対して接触しないように設けられる、請求項6に記載のスライドファスナー。
【請求項8】
前記連続凹部(L1,L2)が設けられた前記脚部(42,43)は、前記ファスナーテープ(3)に対して接触するように設けられる、請求項6に記載のスライドファスナー。
【請求項9】
前記モノフィラメントは、前記ファスナーテープ(3)の長手方向に沿って配置された複数の頭部(41)と、前記頭部(41)の上端に結合した複数の上部脚部(42)と、前記頭部(41)の下端に結合した複数の下部脚部(43)と、前記上部脚部(42)と前記下部脚部(43)を結合するように延びる複数の反転部(44)を含み、
前記1以上の凹部は、前記ファスナーテープ(3)の長手方向に沿って前記複数の反転部(44)が配置された反転部配置領域(R3)において連続的に延びる1以上の連続凹部(L3)を含む、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のスライドファスナー。
【請求項10】
前記連続凹部(L3)は、前記ファスナーテープ(3)の長手方向に沿って直線状に延びる、請求項9に記載のスライドファスナー。
【請求項11】
前記1以上の凹部(L1~L5,D1)は、複数のドット状凹部(D1)を含む、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のスライドファスナー。
【請求項12】
前記モノフィラメントは、前記ファスナーテープ(3)の長手方向に沿って配置された複数の頭部(41)と、前記頭部(41)の上端に結合した複数の上部脚部(42)と、前記頭部(41)の下端に結合した複数の下部脚部(43)と、前記上部脚部(42)と前記下部脚部(43)を結合するように延びる複数の反転部(44)を含み、
前記複数のドット状凹部(D1)は、少なくとも前記上部脚部(42)の上面又は前記下部脚部(43)の下面に形成される、請求項11に記載のスライドファスナー。
【請求項13】
ファスナーチェーン(8)を搬送する工程にして、前記ファスナーチェーン(8)が一対のファスナーストリンガー(2)を含み、各ファスナーストリンガー(2)が、ファスナーテープ(3)とファスナーエレメント(4)を含み、前記ファスナーエレメント(4)は、前記ファスナーテープ(3)の長手方向に沿って螺旋状に延びるモノフィラメントを含み、前記モノフィラメントは、前記ファスナーテープ(3)に対する前記ファスナーエレメント(4)の取付のための取付糸(45)又は前記ファスナーテープ(3)により被覆された被覆面(48)と、前記取付糸(45)又は前記ファスナーテープ(3)により被覆されない露出面(49)を有する、工程、
前記ファスナーチェーン(8)の前記ファスナーエレメント(4)に対して表面処理を施す工程を含み、
前記表面処理は、前記被覆面(48)における光沢度と比較して前記露出面(49)における光沢度が減じられるように1以上の凹部(L1~L5,L9,D1)を前記露出面(49)に形成する処理を含
み、
前記1以上の凹部(L1~L5,L9,D1)の最大深さは、0.1mm以下である、ファスナーチェーンの製造方法。
【請求項14】
前記1以上の凹部は、前記ファスナーエレメント(4)同士が結合した状態において、一方のモノフィラメントの部分と他方のモノフィラメントの部分がファスナーテープ(3)の長手方向に沿って交互に配置された交互配置領域(R1,R2)で連続的に延びる少なくとも1つの連続凹部(L1,L2,L4,L5,L9)を含む、請求項13に記載のファスナーチェーンの製造方法。
【請求項15】
前記1以上の凹部は、前記ファスナーエレメント(4)同士が結合した状態において、前記ファスナーテープ(3)の長手方向に対して平行に延びる複数の連続凹部(L1~L3,L5,L9)を含む、請求項13又は14に記載のファスナーチェーンの製造方法。
【請求項16】
前記1以上の凹部は、前記ファスナーエレメント(4)同士が結合した状態において、前記ファスナーテープ(3)の長手方向に沿って蛇行して又はジグザグ状に又は連続ループを描くように延びる少なくとも1つの連続凹部(L4)を含む、請求項13乃至15のいずれか一項に記載のファスナーチェーンの製造方法。
【請求項17】
ファスナーテープ(3)に対してファスナーエレメント(4)を取り付けてファスナーストリンガー(2)を得る工程にして、前記ファスナーエレメント(4)は、前記ファスナーテープ(3)の長手方向に沿って螺旋状に延びるモノフィラメントを含み、前記モノフィラメントは、前記ファスナーテープ(3)に対する前記ファスナーエレメント(4)の取付のための取付糸(45)又は前記ファスナーテープ(3)により被覆された被覆面(48)と、前記取付糸(45)又は前記ファスナーテープ(3)により被覆されない露出面(49)を有する、工程と、
前記ファスナーストリンガー(2)の前記ファスナーエレメント(4)に対して表面処理を施す工程を含み、
前記表面処理は、前記被覆面(48)における光沢度と比較して前記露出面(49)における光沢度が減じられるように1以上の凹部(L1~L5,L9,D1)を前記露出面(49)に形成する処理を含
み、
前記1以上の凹部(L1~L5,L9,D1)の最大深さは、0.1mm以下である、ファスナーストリンガーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スライドファスナー、並びにファスナーストリンガー及びファスナーチェーンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ファスナーテープの色調に合わせてファスナーエレメントを構成するモノフィラメントのつや消しを行う場合がある。特許文献1は、モノフィラメントの表面層の表面に多数の凹部を有する粗面を形成することを開示する。同文献においては、ファスナーエレメントの成形工程(S3)の前、ファスナーエレメントの粗面化工程(S2)が行われる(同文献の
図8参照)。粗面化工程では、ショットブラスト装置のノズルからブラスト材が噴射され、モノフィラメントの表面層の表面に粗面が形成される(同文献の段落0022,
図9参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
螺旋状のモノフィラメントがファスナーテープに対して取り付けられる時、モノフィラメントの全表面が露出することはない。本願発明者は、この知見に照らして、モノフィラメントが無駄に粗面化されることが低減又は回避されたファスナーチェーン又はスライドファスナーを提供することの意義を新たに見出した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係るスライドファスナーは、一対のファスナーストリンガーにして、各々が、ファスナーテープとファスナーエレメントを含む一対のファスナーストリンガーと、一対のファスナーストリンガーを開閉するためのスライダーを含む。ファスナーエレメントは、ファスナーテープの長手方向に沿って螺旋状に延びるモノフィラメントを含む。モノフィラメントは、ファスナーテープに対するファスナーエレメントの取付のための取付糸又はファスナーテープにより被覆された被覆面と、取付糸又はファスナーテープにより被覆されない露出面を有する。被覆面における光沢度と比較して露出面における光沢度が減じられるように1以上の凹部が露出面に形成される。
【0006】
幾つかの実施形態では、1以上の凹部は、ファスナーエレメント同士が結合した状態において、
(i)一方のモノフィラメントの部分と他方のモノフィラメントの部分がファスナーテープの長手方向に沿って交互に配置された交互配置領域で連続的に延びる少なくとも1つの連続凹部;
(ii)ファスナーテープの長手方向に対して平行に延びる複数の連続凹部;及び/又は
(iii)ファスナーテープの長手方向に沿って蛇行して又はジグザグ状に又は連続ループを描くように延びる少なくとも1つの連続凹部を含む。
【0007】
幾つかの実施形態では、各ファスナーストリンガーが、ファスナーテープに対してファスナーエレメントを取り付けるための取付糸を有する。1以上の凹部は、ファスナーエレメント同士が結合した状態において一方の取付糸と他方の取付糸の間の領域で連続的に延びる少なくとも1つの連続凹部を含む。取付糸は、ファスナーテープのテープ組織に含まれない糸、若しくは、ファスナーテープのテープ組織に含まれる糸である。
【0008】
本開示の一態様に係るファスナーチェーンの製造方法は、
ファスナーチェーンを搬送する工程にして、ファスナーチェーンが一対のファスナーストリンガーを含み、各ファスナーストリンガーが、ファスナーテープとファスナーエレメントを含み、ファスナーエレメントは、ファスナーテープの長手方向に沿って螺旋状に延びるモノフィラメントを含み、モノフィラメントは、ファスナーテープに対するファスナーエレメントの取付のための取付糸又はファスナーテープにより被覆された被覆面と、取付糸又はファスナーテープにより被覆されない露出面を有する、工程、
ファスナーチェーンのファスナーエレメントに対して表面処理を施す工程を含み、
表面処理は、被覆面における光沢度と比較して露出面における光沢度が減じられるように1以上の凹部を露出面に形成する処理を含む。
【0009】
本開示の一態様に係るファスナーストリンガーの製造方法は、
ファスナーテープに対してファスナーエレメントを取り付けてファスナーストリンガーを得る工程にして、ファスナーエレメントは、ファスナーテープの長手方向に沿って螺旋状に延びるモノフィラメントを含み、モノフィラメントは、ファスナーテープに対するファスナーエレメントの取付のための取付糸又はファスナーテープにより被覆された被覆面と、取付糸又はファスナーテープにより被覆されない露出面を有する、工程と、
ファスナーストリンガーのファスナーエレメントに対して表面処理を施す工程を含み、
表面処理は、被覆面における光沢度と比較して露出面における光沢度が減じられるように1以上の凹部を露出面に形成する処理を含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様によれば、モノフィラメントが無駄に粗面化されることが低減又は回避されたファスナーチェーン又はスライドファスナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の一態様に係るスライドファスナーの概略的な正面図である。
【
図2】本開示の一態様に係るスライドファスナーの概略的な部分断面模式図であり、結合した左右のファスナーエレメントに複数の凹部が形成されることが示される。
【
図3】本開示の一態様に係るスライドファスナーにおいて結合した左右のファスナーエレメントの概略的な拡大正面図であり、各凹部が破線により示される。
【
図4】本開示の一態様に係るファスナーチェーンの製造方法に関する概略的な工程図である。
【
図5】本開示の一態様に係るファスナーチェーンの製造設備を示す概略図である。
【
図6】本開示の一態様に係るファスナーチェーンの製造設備においてファスナーエレメントに対してレーザーアブレーションが行われる態様を示す概略図である。
【
図7】本開示の一態様に係るファスナーチェーンの製造設備においてファスナーエレメントに対してレーザーアブレーションが行われる別の態様を示す概略図である。
【
図8】本開示の一態様に係るファスナーストリンガーの製造方法に関する概略的な工程図である。
【
図9】本開示の一態様に係るファスナーストリンガーの製造設備においてファスナーエレメントに対してレーザーアブレーションが行われる態様を示す概略図である。
【
図10】本開示の一態様に係るスライドファスナー又はファスナーチェーンの概略的な部分正面図であり、結合した左右のファスナーエレメントにおいて1つの凹部が蛇行して延びることを示す。
【
図11】本開示の一態様に係るスライドファスナー又はファスナーチェーンの概略的な部分正面図であり、結合した左右のファスナーエレメントにおいて1つの凹部がジグザグ状に延びることを示す。
【
図12】本開示の一態様に係るスライドファスナー又はファスナーチェーンの概略的な部分正面図であり、結合した左右のファスナーエレメントにおいて1つの凹部が連続ループを描くように延びることを示す。
【
図13】本開示の一態様に係るスライドファスナーの概略的な部分断面模式図であり、結合した左右のファスナーエレメントに1つの凹部が形成されることが示される。
【
図14】本開示の一態様に係るスライドファスナー又はファスナーチェーンの概略的な部分正面図であり、結合した左右のファスナーエレメントにおいて複数のドット状凹部が形成されることが示される。
【
図15】本開示の一態様に係るファスナーストリンガーの概略的な部分模式図であり、ファスナーエレメントがファスナーテープの組織に組み込まれた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、
図1乃至
図15を参照しつつ、本開示に係る様々な実施形態及び特徴について説明する。当業者は、過剰説明を要せず、各実施形態及び/又は各特徴を組み合わせることができ、この組み合わせによる相乗効果も理解可能である。実施形態間の重複説明は、原則的に省略する。参照図面は、発明の記述を主たる目的とするものであり、作図の便宜のために簡略化されている。各特徴は、本願に開示されたスライドファスナー、ファスナーチェーン、又はそれらの製造方法にのみ有効であるものではなく、本明細書に開示されていない他の様々なスライドファスナー、ファスナーチェーン、又はそれらの製造方法にも通用する普遍的な特徴として理解される。
【0013】
図1は、スライドファスナー1の概略的な正面図である。
図2は、スライドファスナー1の概略的な部分断面模式図であり、結合した左右のファスナーエレメント4に複数の凹部L1~L3が形成されることが示される。
図3は、スライドファスナー1において結合した左右のファスナーエレメント4の概略的な拡大正面図であり、各凹部L1~L3が破線により示される。
【0014】
スライドファスナー1は、一対のファスナーストリンガー2と、一対のファスナーストリンガー2を開閉するためのスライダー5を含む。各ファスナーストリンガー2は、ファスナーテープ3とファスナーエレメント4を有する。ファスナーテープ3は、織物又は編物又はこれらの混在物であり得る。ファスナーエレメント4は、コイル状エレメントであり、ファスナーテープ3の長手方向に沿って螺旋状に延びるモノフィラメントを含む。オプションとして、モノフィラメントの螺旋構造の内部に芯紐が配置される。モノフィラメントは、合成樹脂材料を含み、又は合成樹脂材料から成る。合成樹脂材料としては、ポリエステル、及びナイロンが挙げられるが、これに限られるべきではない。ファスナーエレメント4がファスナーテープ3の組織に組み込まれた、端的には、編み込まれた形態も想定される。スライダー5は、金属製又は樹脂製又はセラミックス製であり得るが、これに限られるべきではない。
【0015】
スライドファスナー1に関して、前後方向は、スライダー5の動きに基づいて理解される。一対のファスナーストリンガー2を閉じるべくスライダー5が動く方向が前方であり、一対のファスナーストリンガー2を開けるべくスライダー5が動く方向が後方である。必要に応じて、スライダー5により開閉される一対のファスナーストリンガー2が左右のファスナーストリンガー2b,2dと呼ばれることに留意されたい。左右方向は、前後方向に直交し、またファスナーテープ3のテープ面3a,3bに平行である(
図2参照)。言うまでも無く、スライドファスナー1に含まれるスライダー5の個数は、1つに限られない。スライドファスナー1は、オプションとして、スライダー5の前進を阻止する一対の前止め6と、スライダー5の後進を阻止する1つの後止め7を有する。スライドファスナー1に止め具が設けられない形態も想定される。
【0016】
図2に示すように、ファスナーエレメント4に含まれるモノフィラメントは、ファスナーテープ3に対するファスナーエレメント4の取付のための取付糸45又はファスナーテープ3により被覆された被覆面48と、取付糸45又はファスナーテープ3により被覆されない露出面49を有する。後述の説明から理解されるように、被覆面48における光沢度と比較して露出面49における光沢度が減じられるように1以上の凹部L1~L3が露出面49に形成される。これにより、被覆面48に対して粗面化処理を行うことが回避又は抑制される。場合によっては、粗面化処理されるモノフィラメントと粗面化処理されないモノフィラメントのために共通のモノフィラメントを使用することも促進される。端的には、粗面化されたファスナーエレメントのために専用の粗面化されたモノフィラメントを用意する負担が回避される。取付糸45は、ある場合、ファスナーテープ3のテープ組織に含まれない糸、例えば、縫製糸であり、別の場合、ファスナーテープ3のテープ組織に含まれる糸、例えば、経糸である。縫製糸は、単環縫い、本縫い、2重環縫いといった糸であり得る。
【0017】
特許文献1の場合、ブラスト材(例えば、鉄粉)がモノフィラメントに打撃を与えるに際してモノフィラメントが変色してしまうことが確認されている。具体的には、鉄粉の影響のため、モノフィラメントの色が黒色に近づいてしまう。従って、現実的には、特許文献1の方法では、ブラスト材により粗面を形成した後に染色する場合、染色が濃色に限定されてしまう。また、粗面を形成する前に染色する場合でも、染色が濃色に限定されてしまう。
【0018】
凹部L1~L3は、様々な方法でモノフィラメントの露出面49に形成され得る。例えば、凹部の形成のため、ファスナーテープ3に対して取り付けられたファスナーエレメント4のモノフィラメントに対してレーザー光線を照射することが挙げられる。レーザー光線の波長として、モノフィラメントの合成樹脂材料により十分に吸収される波長が選択される。レーザー光線のパワーに関して、モノフィラメントの合成樹脂材料を適度に除去することができるパワーが選択される。なお、レーザー光源としては、半導体レーザー素子及びファイバーレーザー光源といった固体レーザー光源を用いることができるが、これに限られるべきではない。ガスレーザー光源(例えば、エキシマレーザー光源)といった他のレーザー光源も採用可能である。モノフィラメントに対する凹部の形成のために最適化された光学系を用いることができる。光学系は、レンズ、反射板、光導波路(例えば、光ファイバ)、及びビームスプリッターといった1以上の光学素子を含むことができる。
【0019】
レーザー光線の照射の追加又は代替として、機械的な切削(例えば、切削具による切削)を採用することができる。機械的な切削に関しては、モノフィラメントの表面に十分な深さの凹部を形成することができるような硬さを有する切削具が選択される。切削具は、モノフィラメントの表面に接触することができる1以上の接触子を含むことができる。接触子の接触端は、鋭利に形状付けられ得る。
【0020】
レーザー光線の照射及び機械的な切削の追加又は代替として、モノフィラメントの変形のための熱付与を採用することができる。熱付与は、熱伝導、及び超音波振動の付与により達成可能である。例えば、接触子が昇温され、モノフィラメントの表面に接触し、そこに局所的な変形を生じさせる。このような方法で凹部を形成するため、モノフィラメントの色が黒色に近づくことはなく、染色の色は限定されない。
【0021】
被覆面48における光沢度と比較して露出面49における光沢度が減じられることは、露出面49に対して1以上の凹部が形成された結果である。露出面49において凹部が形成され、露出面49における光沢度が被覆面48における光沢度よりも減じられることにより、マット調の色彩のファスナーエレメント4を有するスライドファスナー1を提供できる。凹部における光吸収又は光反射又は光散乱により露出面49の光沢度が低下する。露出面49における光沢度と被覆面48における光沢度は、正常な視覚を有するヒトの目による観察に基づいて判断される。追加又は代替として、光沢度計が用いられる。被覆面48の光沢度と露出面49の光沢度の比較のため、共通の単位面積において光沢度が比較される。なお、比較される露出面49の単位面積には凹部が形成されているものとする。
【0022】
幾つかの形態では、粗面化されていないモノフィラメントの露出面49に対して選択的に1以上の凹部が形成され、露出面49における光沢度が被覆面48における光沢度よりも減じられる。粗面化されていないモノフィラメントは、通常、滑らかな表面を有する。従って、凹部が形成されない被覆面48は、滑らかな表面である。最適な方法ではないものの、粗面化されたモノフィラメントの露出面49に対して選択的に1以上の凹部を形成する形態も想定される。この場合も露出面49における光沢度が被覆面48における光沢度よりも減じられる。
【0023】
幾つかの形態では、凹部は、0.1mm以下又は未満の最大深さを有する。凹部の深さを適切な範囲とすることにより、ファスナーエレメント4の機械的な強度の低下を抑制することができる。また、スライドファスナー1における左右のファスナーエレメント4b,4dの結合強度の低下を抑制することができる。好適には、凹部の最大又は平均深さが、0.05mm以下に設定され、上述の機械的な強度低下又は結合強度の低下を抑制しつつ、減じられた光沢度が得られる。凹部の深さの測定のため、接触式の深さゲージ又は非接触式の距離計を用いることができる。
【0024】
図2及び
図3に示すように、ファスナーテープ3に対して取り付けられた状態において、モノフィラメントは、ファスナーテープ3の長手方向に沿って配置された複数の頭部41と、頭部41の上端に結合した複数の上部脚部42と、頭部41の下端に結合した複数の下部脚部43と、上部脚部42と下部脚部43を結合するように延びる複数の反転部44を含む。当業者には明らかなように、前後方向における頭部41の最大幅は、モノフィラメントの部分的な変形により増加されている。上部脚部42と下部脚部43を包括的に脚部と呼ぶ場合がある。また、上部脚部42は、下部脚部43よりもファスナーテープ3のテープ面3aからより離れて位置付けられる。下部脚部43は、上部脚部42よりもファスナーテープ3のテープ面3aの近くに位置付けられる。ファスナーテープ3のテープ面3aは、ファスナーエレメント4が配置されるテープ主面である。なお、上下方向は、上述の前後方向及び左右方向に直交する。
【0025】
図3に示すように、右側の交互配置領域R1において、左側のモノフィラメントの頭部41と右側のモノフィラメントの上部脚部42がファスナーテープの長手方向に沿って交互に配置される。左側の交互配置領域R1において、右側のモノフィラメントの頭部41と左側のモノフィラメントの上部脚部42がファスナーテープの長手方向に沿って交互に配置される。中央の交互配置領域R2において、一方のモノフィラメントの上部脚部42と他方のモノフィラメントの上部脚部42がファスナーテープの長手方向に沿って交互に配置される。左右の反転部配置領域R3において、ファスナーテープ3の長手方向に沿って複数の反転部44が配置される。
【0026】
結合した左右のファスナーエレメント4b,4dにおいて1以上の凹部が様々な態様で形成されることが想定される。
図3において、凹部L1~L3が破線により示される。凹部L1,L2は、左右のファスナーエレメント4b,4dが結合した状態において交互配置領域R1,R2で連続的に延びる。凹部L3は、反転部配置領域R3において連続的に延びる。レーザー光線が用いられる場合、ファスナーテープの長手方向において隣接する左側のモノフィラメントの頭部と右側のモノフィラメントの脚部が溶着しないようにレーザー光線が照射される。同様、ファスナーテープの長手方向において隣接する右側のモノフィラメントの頭部と左側のモノフィラメントの脚部が溶着しないようにレーザー光線が照射される。隣接する反転部についてはレーザー光線の照射によりお互いに溶着しても構わない。
【0027】
必ずしもこの限りではないが、凹部L1,L2は、ファスナーテープ3の長手方向に対して平行に直線的に延びる。同様、凹部L3は、ファスナーテープ3の長手方向に対して平行に直線的に延びる。凹部L1~L3のいずれか1つ又は全ては、0.1mm以下又は未満の最大深さを有し得る。
【0028】
各ファスナーストリンガー2が、ファスナーテープ3に対してファスナーエレメント4を取り付けるための取付糸45を有する。凹部L1~L2は、左右のファスナーエレメント4b,4d同士が結合した状態において左側の取付糸45と右側の取付糸45の間の領域で連続的に延びる。左側の連続凹部L1は、右側のモノフィラメントの頭部41と左側のモノフィラメントの脚部42,43が交互に配置された左側の交互配置領域R1で連続的に延びる。右側の連続凹部L1は、左側のモノフィラメントの頭部41と右側のモノフィラメントの脚部42,43が交互に配置された右側の交互配置領域R1で連続的に延びる。左側の取付糸45と右側の取付糸45の間に4本の凹部L1~L2が形成されるが、これに限られない。左側の取付糸45と右側の取付糸45の間に1,2,3,5本の凹部又は6本以上の凹部が形成され得る。なお、後述の説明から分かるように、凹部がファスナーテープの長手方向に対して平行に直線的に延びる態様以外の態様で延びる形態も想定される。
【0029】
図2において凹部が模式的に示されていることに留意されたい。凹部は、凹部の底側に向かって横幅が減じられるが、これに限られるべきではない。凹部は、凹部の底側に向かって一定の横幅を有する形態も想定される。なお、凹部の横幅は、凹部の深さ方向及び延在方向に直交する方向における幅を意味する。更には、レーザーアブレーションにより凹部が形成される場合、モノフィラメントの表面と凹部の側面の間の縁には隆起が生じ得る。このように凹部は、様々な断面形状を取り得る。
【0030】
図4は、ファスナーチェーン8の製造方法に関する概略的な工程図である。
図5は、ファスナーチェーン8の製造設備を示す概略図である。
図6は、ファスナーチェーン8の製造設備においてファスナーエレメント4に対してレーザーアブレーションが行われる態様を示す概略図である。
図7は、ファスナーチェーン8の製造設備においてファスナーエレメント4に対してレーザーアブレーションが行われる別の態様を示す概略図である。
【0031】
スライドファスナー1は、ファスナーチェーン8に対してスライダー5を取り付けることにより製造される。従って、スライドファスナー1の製造方法は、ファスナーチェーン8の製造方法を含む。ファスナーチェーン8の製造方法は、
図4に示すように、ファスナーチェーン8を搬送する工程と、ファスナーチェーン8のファスナーエレメント4に対して表面処理を施す工程を含む。表面処理は、被覆面48における光沢度と比較して露出面49における光沢度が減じられるように1以上の凹部を露出面49に形成する処理を含む。これにより上述と同様、被覆面48に対して粗面化処理を行うことが回避又は抑制される。場合によっては、粗面化処理されるモノフィラメントと粗面化処理されないモノフィラメントのために共通のモノフィラメントを使用することも促進される。端的には、粗面化されたファスナーエレメントのために専用の粗面化されたモノフィラメントを用意する負担が回避される。表面処理は、ファスナーエレメント4に対して染色する工程を含んでいても良いが、染色処理と露出面49に凹部を形成する処理の順序は問わない。また、染色以外の方法で着色しても良い。幾つかの場合、ファスナーストリンガー又はファスナーチェーンの染色の後、ファスナーエレメントに対して1以上の凹部を形成する。この場合、ファスナーエレメントに生じ得る色差を回避又は抑制することができる。すなわち、ファスナーストリンガー又はファスナーチェーンの染色の前、(例えば、レーザー光線の照射により)ファスナーエレメントに対して1以上の凹部を形成する場合、凹部とこれ以外の部分において色差が生じ得る。ファスナーストリンガー又はファスナーチェーンの染色の後、ファスナーエレメントに対して1以上の凹部を形成する場合、そのような色差の発生を回避又は抑制することができる。また、ファスナーストリンガー又はファスナーチェーンの染色の後、ファスナーエレメントに対して1以上の凹部を形成する場合、凹部の形成の有無(マット調の有無)に関わらずに所定色のファスナーストリンガー又はファスナーチェーンを製造して保管することができる。
【0032】
ファスナーチェーン8の搬送は、
図5に示すようなロール101~106を用いることができる。例えば、ロール101が押圧ロールであり、ロール102が回転ロールである。押圧ロールと回転ロールの間に挟まれたファスナーチェーン8は、回転ロールの回転に応じて下流側に搬送される。ロール103,104やロール105,106も同様に構成され得る。なお、ファスナーチェーン8は、
図1に示したスライドファスナー1に含まれる結合した状態の左右のファスナーストリンガー2に等しい。必ずしもこの限りではないが、ファスナーチェーン8は、
図1に示すスライドファスナー1に含まれるファスナーチェーンよりも長尺であり得る。
【0033】
ファスナーテープ3に対して取り付けられたファスナーエレメント4は、ファスナーチェーン8の搬送方向及びファスナーテープ3の長手方向に沿って螺旋状に延びるモノフィラメントを含む。モノフィラメントは、ファスナーテープ3に対するファスナーエレメント4の取付のための取付糸45又はファスナーテープ3により被覆された被覆面48と、取付糸45又はファスナーテープ3により被覆されない露出面49を有する。
【0034】
図5に示す形態では、レーザー加工機107が、ファスナーテープ3に対して取り付けられたファスナーエレメント4のモノフィラメントに対してレーザー光線を照射して1以上の凹部を形成する。レーザー加工機107は、固定式又は可動式であり得る。モノフィラメントに凹部が形成された後、ファスナーチェーン8は、下流側において切断具108により切断される。なお、ファスナーチェーン8の搬送方向においてレーザー加工機107よりも上流側に切断具108が配置される形態も想定される。
【0035】
レーザー加工機107は、1以上のレーザー光源を含み、オプションとして1以上の光学系を含む。例えば、空間的に離間した複数のレーザー光線出力を得るために複数の出射端を有するファイバーレーザー装置が採用される。複数の共振器を含むモノリシックな半導体レーザー素子も採用可能である。光学系が光ファイバを含む場合、レーザー光線の照射位置の変更が容易になり得る。なお、光ファイバは、コアとクラッドを有し、コアにおいてレーザー光が任意のモード、例えば、マルチモードで伝播する。
【0036】
レーザー加工機107の具体的な構成は様々であろう。例えば、
図6に示すように、単一のレーザー光源107aから出射されたシード光が光学系107bにより複数の光線に分波され、左右のファスナーエレメント(モノフィラメント)に対して照射される。レーザー加工機107が、複数の光源を有する形態も想定される。
図6に示す場合、ファスナーチェーン8が鉛直方向に関して直交するように配向された状態で搬送され、鉛直方向に対して平行にレーザー光線がモノフィラメントに対して照射される。
図7に示す別の場合、ファスナーチェーン8が鉛直方向に関して斜めに配向された状態で搬送され、鉛直方向に対して平行にレーザー光線がモノフィラメントに対して照射される。
図7に示す態様は、反転部44に対して凹部を形成するのに有利である。レーザー加工機107が、
図6に示す第1のレーザー照射部と
図7に示す第2のレーザー照射部の組み合わせを含む形態も想定される。
【0037】
図8は、ファスナーストリンガー2の製造方法に関する概略的な工程図である。
図9は、ファスナーストリンガー2の製造設備においてファスナーエレメント4に対してレーザーアブレーションが行われる態様を示す概略図である。ファスナーチェーン8の製造方法は、ファスナーチェーン8に含まれる一対のファスナーストリンガー2それぞれの製造方法を含む。
図8に示すように、ファスナーストリンガー2の製造方法は、ファスナーテープ3に対してファスナーエレメント4を取り付けてファスナーストリンガー2を得る工程と、ファスナーストリンガー2のファスナーエレメント4に対して表面処理を施す工程を含む。表面処理は、被覆面48における光沢度と比較して露出面49における光沢度が減じられるように1以上の凹部を露出面49に形成する処理を含む。これにより上述と同様、被覆面48に対して粗面化処理を行うことが回避又は抑制される。場合によっては、粗面化処理されるモノフィラメントと粗面化処理されないモノフィラメントのために共通のモノフィラメントを使用することも促進される。端的には、粗面化されたファスナーエレメントのために専用の粗面化されたモノフィラメントを用意する負担が回避される。
【0038】
ファスナーテープ3に対してファスナーエレメント4を取り付けることは、2重環縫いといった態様でファスナーエレメント4をファスナーテープ3に対して取付糸を用いて縫い付けることを含む。ファスナーテープ3に対して取り付けられるファスナーエレメント4は、例えば、押出機により押し出し成形された直線状のモノフィラメントをマンドレルにおいて螺旋状に巻くことにより得られる。モノフィラメントは、断面円形又は楕円の合成樹脂製の線材である。
図9に示すように、モノフィラメントの表面に凹部を形成するために上述と同様又は異なるレーザー加工機107を採用することができる。
【0039】
1以上の凹部は、ファスナーエレメント4同士が結合した状態において、ファスナーテープ3の長手方向に沿って蛇行して又はジグザグ状に又は連続ループを描くように延びる少なくとも1つの連続凹部L4を含むことができる。
図10は、結合した左右のファスナーエレメント4b,4dにおいて1つの凹部L4が蛇行して延びることを示す。
図11は、結合した左右のファスナーエレメント4b,4dにおいて1つの凹部L4がジグザグ状に延びることを示す。
図12は、結合した左右のファスナーエレメント4b,4dにおいて1つの凹部L4が連続ループを描くように延びることを示す。
【0040】
図10に示すように、凹部L4は、左側の交互配置領域R1、右側の交互配置領域R1、中央の交互配置領域R2において前後方向に沿って蛇行して延びる。この凹部L4の延在態様は、左側のモノフィラメントの頭部と脚部において左右方向に延びることと、左側及び右側のモノフィラメントの隣接部分において前後方向に延びることと、右側のモノフィラメントの頭部と脚部において左右方向に延びることを含む。
【0041】
図11に示すように、凹部L4は、左側の交互配置領域R1、右側の交互配置領域R1、中央の交互配置領域R2において前後方向に沿ってジグザグ状に延びる。この凹部L4の延在態様は、左側のモノフィラメントの脚部から右側のモノフィラメントの脚部に向けてファスナーテープの長手方向に交差するように直線的に延びることと、右側のモノフィラメントの脚部から左側のモノフィラメントの脚部に向けてファスナーテープの長手方向に交差するように直線的に延びることを含む。
【0042】
図12に示すように、凹部L4は、左側の交互配置領域R1、右側の交互配置領域R1、中央の交互配置領域R2において前後方向に沿って連続ループを描くように延びる。この凹部L4の延在態様は、左側のモノフィラメントの頭部及び脚部においてループを描くように延びることと、左側及び右側のモノフィラメントの隣接部分において前後方向に延びることと、右側のモノフィラメントの頭部及び脚部においてループを描くように延びることを含む。
【0043】
凹部は、モノフィラメントの上面に形成される場合に限られず、モノフィラメントの下面に形成されることもある。
図13は、ファスナーテープ3のテープ面3aが衣服の内向きに配置され、ファスナーテープ3のテープ面3bが衣服の外向き配置されるようにスライドファスナー1が衣服に縫い付けられる状態を示す。モノフィラメントは、左右のファスナーテープ3の間の隙間33において露出する露出面49を有し、この露出面49に凹部L5が形成される。凹部L5は、被覆面48における光沢度と比較して露出面49における光沢度が減じられるように形成される。これにより上述と同様、被覆面48に対して粗面化処理を行うことが回避又は抑制される。場合によっては、粗面化処理されるモノフィラメントと粗面化処理されないモノフィラメントのために共通のモノフィラメントを使用することも促進される。端的には、粗面化されたファスナーエレメントのために専用の粗面化されたモノフィラメントを用意する負担が回避される。
【0044】
凹部L5は、ファスナーテープ3の長手方向に対して平行に直線的に延びる。代替的に、凹部L5は、ファスナーテープ3の長手方向に沿って蛇行して又はジグザグ状に又は連続ループを描くように延びる。左右のファスナーテープ3の間の隙間33に複数の凹部L5が形成される形態も想定される。凹部L5は、交互配置領域R1及び/又はR2に形成される。
【0045】
凹部は、上述したような線状に限らず、ドット状であり得る。
図14は、結合した左右のファスナーエレメント4b,4dにおいて複数のドット状凹部D1が形成されることを示す。レーザー光線が用いられる場合、レーザー加工機107のスポット径を適切に設定することによりドット状の凹部を形成することができる。ドット状凹部D1は、0.1mm以下又は未満の最大深さを有する。ドット状凹部D1の最大径は、例えば、0.05~0.1mmである。
【0046】
ファスナーエレメント4は、ファスナーテープ3の構成糸である経糸とは別の取付糸45によりファスナーテープ3に対して取り付けられることに限られない。
図15に示すように、ファスナーテープ3の経糸が取付糸45として機能し、ファスナーテープ3の組織に対してファスナーエレメント4が組み込まれる形態も想定される。モノフィラメントは、ファスナーテープ3の経糸(又はファスナーテープ3自体)により被覆された被覆面と、ファスナーテープ3の経糸(又はファスナーテープ3自体)により被覆されない露出面を有する。ファスナーテープ3の経糸により被覆されたファスナーエレメント4の被覆面48における光沢度と比較して露出面49における光沢度が減じられるように1以上の凹部L9が露出面に形成される。上述したものと同様の利益が得られる。
【0047】
凹部L9をレーザー照射により形成する場合、ファスナーテープ3の経糸が延びる方向において隣接するファスナーエレメント4の脚部22の間のファスナーテープ3の中間領域3cを保護するため、レーザー照射が間欠的に行われ得る。なお、上述の実施形態と同様、左右のファスナーエレメントが結合した状態で、交互配置領域R1,R2を前後方向に連続的に延びる1以上の凹部L9が設けられ得る。同様、左右のファスナーエレメントが結合した状態で、左右の取付糸の間を前後方向に延びる1以上の凹部L9が設けられ得る。凹部L9は、上述の実施形態と同様、直線状、非直線状、ジグザグ状、連続ループ状に延び得る。
【0048】
上述の教示を踏まえると、当業者をすれば、各実施形態に対して様々な変更を加えることができる。請求の範囲に盛り込まれた符号は、参考のためであり、請求の範囲を限定解釈する目的で参照されるべきものではない。
【符号の説明】
【0049】
1 スライドファスナー
2 ファスナーストリンガー
3 ファスナーテープ
4 ファスナーエレメント
45 取付糸
48 被覆面
49 露出面