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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 27/12 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
F04B27/12 Q
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021539565
(86)(22)【出願日】2020-01-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-11
(86)【国際出願番号】 KR2020000026
(87)【国際公開番号】W WO2020145569
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2021-07-06
(31)【優先権主張番号】10-2019-0002224
(32)【優先日】2019-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516011246
【氏名又は名称】ハンオン システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,クァン ジン
(72)【発明者】
【氏名】キム,オク ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,セヨン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ジュン シグ
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0201697(US,A1)
【文献】特開2008-057336(JP,A)
【文献】特開2005-188508(JP,A)
【文献】国際公開第2014/103073(WO,A1)
【文献】特開2006-097587(JP,A)
【文献】特開2007-127118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 25/00-37/20
F04B 39/00-39/16
F04B 41/00-41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング(100)、
前記ケーシング(100)に回転可能に取り付けられる回転軸(200)、
前記回転軸(200)に連動して冷媒を圧縮する圧縮機構(300)、
前記回転軸(200)の先端面を支持するスラストプレート(610)、
前記スラストプレート(610)が収容されるチャンバ(114)、及び
前記チャンバ(114)にオイルを案内するスリット(115)、を含み、
前記スリット(115)の一部は、前記回転軸(200)と前記スラストプレート(610)との間の接触部位に対向して形成され、
前記ケーシング(100)は、ボア(116)、吸入室、吐出室、及びクランク室(S4)、を含み、
前記圧縮機構(300)は、前記回転軸(200)に連動して前記クランク室(S4)の内部で回転する斜板(310)、前記斜板(310)に連動して前記ボア(116)の内部で往復運動し、前記ボア(116)と共に圧縮室を形成するピストン(320)、及び前記回転軸(200)に対する前記斜板(310)の傾斜角を調節する傾斜調節機構、を含み、
前記傾斜調節機構は、前記吐出室の流体を前記クランク室(S4)に案内する流入流路(530)、及び前記クランク室(S4)の流体を前記吸入室に案内する排出流路(550)、を含み、
前記スリット(115)は、前記排出流路(550)と前記チャンバ(114)とを連通するように形成され、
前記ケーシング(100)は、前記チャンバ(114)が形成されるシリンダーブロック(110)、及び前記シリンダーブロック(110)に締結され、前記吸入室及び前記吐出室を有するリアハウジング(130)、を含み、
前記シリンダーブロック(110)は、前記リアハウジング(130)に対向する先端面を含み、
前記チャンバ(114)と前記スリット(115)は、前記回転軸(200)の先端部から前記シリンダーブロック(110)の先端面(118)まで延びて形成され、
前記チャンバ(114)は、前記スラストプレート(610)が収容される第1チャンバ(114a)、前記第1チャンバ(114a)と連通する第2チャンバ(114c)、及び前記第2チャンバ(114c)と連通して前記シリンダーブロック(110)の先端面(118)まで延びる第3チャンバ(114d)、を含み、
前記スリット(115)は、前記排出流路(550)を前記第1チャンバ(114a)、前記第2チャンバ(114c)、及び前記第3チャンバ(114d)と連通するように形成され、
前記シリンダーブロック(110)の先端面(118)には、前記チャンバ(114)のオイルを前記クランク室(S4)に回収するため、前記第3チャンバ(114d)と前記流入流路(530)とを連通するオイル回収孔(117)が形成されることを特徴とする圧縮機。
【請求項2】
前記第2チャンバ(114c)の内径は、前記第1チャンバ(114a)の内径よりも小さく形成されることを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記第1チャンバ(114a)と前記第2チャンバ(114c)との間には段差面(114b)が形成され、
前記段差面(114b)は、前記第1チャンバ(114a)の内周面と垂直に形成されることを特徴とする請求項2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記第3チャンバ(114d)の内径は、前記第2チャンバ(114c)の内径よりも大きく形成されることを特徴とする請求項2に記載の圧縮機。
【請求項5】
前記第3チャンバ(114d)は、前記リアハウジング(130)側に行くほど、前記第3チャンバ(114d)の内径が漸進的に増加するように形成されることを特徴とする請求項4に記載の圧縮機。
【請求項6】
前記第3チャンバ(114d)は、前記リアハウジング(130)側に行くほど、前記第3チャンバ(114d)の内径の増加率が増加してから減少するように形成されることを特徴とする請求項5に記載の圧縮機。
【請求項7】
前記スラストプレート(610)は、前記回転軸(200)の先端面を支持するベアリング面を含み、
前記ベアリング面には、少なくとも1つのオイル溝(616b)が形成されることを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
【請求項8】
前記オイル溝(616b)は、前記回転軸(200)の求心側から遠心側に延びて形成されることを特徴とする請求項7に記載の圧縮機。
【請求項9】
前記ベアリング面には、コーティング層が形成されることを特徴とする請求項7に記載の圧縮機。
【請求項10】
前記コーティング層は、PTFE材質で形成されることを特徴とする請求項9に記載の圧縮機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧縮機に関し、より詳しくは、駆動源から圧縮機構に回転力を伝達する回転軸を支持するスラストプレートの損傷を防止できるようにした圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車には室内の冷暖房のための空調装置(Air Conditioning;A/C)が設けられる。このような空調装置は、冷房システムの構成として、蒸発器から引き込まれた低温低圧の気相冷媒を高温高圧の気相冷媒に圧縮させて凝縮器に送る圧縮機を含んでいる。圧縮機としては、ピストンの往復運動によって冷媒を圧縮する往復式と、回転運動をしながら圧縮を行う回転式とがある。往復式としては、駆動源の伝達方式によって、クランクを用いて複数のピストンに伝達するクランク式、斜板が設けられた回転軸に伝達する斜板式などがあり、回転式としては、回転するロータリー軸とベーンを用いるベーンロータリー式、旋回スクロールと固定スクロールを用いるスクロール式がある。
【0003】
このような圧縮機は、通常、冷媒を圧縮する圧縮機構、及び駆動源から前記圧縮機構に回転力を伝達する回転軸を含む。また、圧縮機は、前記回転軸を前記回転軸の軸方向に支持する回転軸支持体をさらに含む。
【0004】
具体的に、特許文献1を参照すると、特許文献1の図1及び図2に示された圧縮機は、ケーシング、ケーシングの内部に備えられて冷媒を圧縮する圧縮機構(160,170,140)、ケーシングの外部に備えられる駆動源(例えば、エンジン)から圧縮機構(160,170,140)に回転力を伝達する回転軸(150)、及び回転軸(150)を回転軸(150)の軸方向に支持するスラストベアリング(153a,154,153b)を含んでいる。
【0005】
しかし、このような従来の圧縮機は、スラストベアリング(153a,154,153b)の構造が複雑であるため原価が上昇するという問題点があった。このような問題点を解消するため、特許文献1では、他の実施例(図3及び図4参照)では、スラストベアリング(153a,154,153b)に代えてスラストプレート(52)を使用している。
【0006】
しかしながら、たとえスラストプレート(52)の表面にコーティング層が形成されたとしても、スラストプレート(52)と回転軸(50)との間におけるオイルの供給不足によりコーティング層が剥がれ、結局、スラストプレート(52)が損傷するという問題点があった。また、特許文献1に開示されている従来の圧縮機は、スラストベアリング(153a,154,153b)またはスラストプレート(52)が収容されるチャンバが、円筒状に形成されるので、チャンバが形成されるシリンダーブロック(10,110)を金型から取り外す(金型抜き)ことが困難であるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国登録特許第10-1181157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、回転軸を支持するスラストプレートの損傷を防止できる圧縮機を提供することをその目的とする。また、本発明は、スラストプレートが収容されるチャンバを有するシリンダーブロックが金型から容易に取り外せる圧縮機を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による圧縮機は、ケーシング、前記ケーシングに回転可能に取り付けられる回転軸、前記回転軸に連動して冷媒を圧縮する圧縮機構、前記回転軸の先端面を支持するスラストプレート、前記スラストプレートが収容されるチャンバ、及び前記チャンバにオイルを案内するスリット、を含み、前記スリットの一部は、前記回転軸と前記スラストプレートとの間の接触部位に対向して形成されることを特徴とする。
【0010】
前記ケーシングは、ボア、吸入室、吐出室、及びクランク室、を含み、前記圧縮機構は、前記回転軸に連動して前記クランク室の内部で回転する斜板、前記斜板に連動して前記ボアの内部で往復運動し、前記ボアと共に圧縮室を形成するピストン、及び前記回転軸に対する前記斜板の傾斜角を調節する傾斜調節機構、を含み、前記傾斜調節機構は、前記吐出室の流体を前記クランク室に案内する流入流路、及び前記クランク室の流体を前記吸入室に案内する排出流路、を含み、前記スリットは、前記排出流路と前記チャンバとを連通するように形成されることを特徴とする。
【0011】
前記ケーシングは、前記チャンバが形成されるシリンダーブロック、及び前記シリンダーブロックに締結され、前記吸入室及び前記吐出室を有するリアハウジング、を含み、前記シリンダーブロックは、前記リアハウジングに対向する先端面を含み、前記チャンバと前記スリットは、前記回転軸の先端部から前記シリンダーブロックの先端面まで延びて形成されることを特徴とする。
【0012】
前記チャンバは、前記スラストプレートが収容される第1チャンバ、前記第1チャンバと連通する第2チャンバ、及び前記第2チャンバと連通して前記シリンダーブロックの先端面まで延びる第3チャンバ、を含むことを特徴とする。
【0013】
前記スリットは、前記排出流路を前記第1チャンバ、前記第2チャンバ及び前記第3チャンバと連通するように形成されることを特徴とする。
【0014】
前記第2チャンバの内径は、前記第1チャンバの内径よりも小さく形成されることを特徴とする。
【0015】
前記第1チャンバと前記第2チャンバとの間には段差面が形成され、前記段差面は、前記第1チャンバの内周面と垂直に形成されることを特徴とする。
【0016】
前記第3チャンバの内径は、前記第2チャンバの内径よりも大きく形成されることを特徴とする。
【0017】
前記第3チャンバは、前記リアハウジング側に行くほど、前記第3チャンバの内径が漸進的に増加するように形成されることを特徴とする。
【0018】
前記第3チャンバは、前記リアハウジング側に行くほど、前記第3チャンバの内径の増加率が増加してから減少するように形成されることを特徴とする。
【0019】
前記シリンダーブロックの先端面には、前記チャンバのオイルを前記クランク室に回収するために、前記第3チャンバと前記流入流路とを連通するオイル回収孔が形成されることを特徴とする。
【0020】
前記スラストプレートは、前記回転軸の先端面を支持するベアリング面を含み、前記ベアリング面には、少なくとも1つのオイル溝が形成されることを特徴とする。
【0021】
前記オイル溝は、前記回転軸の求心側から遠心側に延びて形成されてもよい。
前記ベアリング面には、コーティング層が形成されることを特徴とする。
【0022】
前記コーティング層は、PTFE材質で形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明による圧縮機は、ケーシング、ケーシングに回転可能に取り付けられる回転軸、該回転軸に連動して冷媒を圧縮する圧縮機構、該回転軸の先端面を支持するスラストプレート、スラストプレートが収容されるチャンバ、及びチャンバにオイルを案内するスリット、を含み、スリットの一部は、該回転軸とスラストプレートとの間の接触部位に対向して形成されることで、該回転軸とスラストプレートとの間にオイルを供給することにより、該回転軸を支持するスラストプレートの損傷を防止できる。また、チャンバは、内径が漸進的に増加しながらシリンダーブロックの先端面まで延びるように形成されることで、シリンダーブロックを金型から容易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明による圧縮機を示した断面図である。
図2図1のA部分拡大図である。
図3図1の圧縮機におけるシリンダーブロックの先端面を示した正面図である。
図4図3のI-I線に沿って切開して示した斜視図である。
図5図1の圧縮機におけるスラストプレートを示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明による圧縮機について添付の図面を参照して詳しく説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施例による圧縮機を示した断面図であり、図2は、図1のA部分拡大図であり、図3は、図1の圧縮機におけるシリンダーブロックの先端面を示した正面図である、図4は、図3のI-I線に沿って切開して示した斜視図であり、図5は、図1の圧縮機におけるスラストプレートを示した正面図である。図1図5を参照すると、本発明の一実施例による圧縮機は、ケーシング(100)、ケーシング(100)に回転可能に取り付けられる回転軸(200)、及び回転軸(200)を通じて駆動源(例えば、エンジン)(図示せず)から回転力を伝達されて冷媒を圧縮する圧縮機構(300)を含む。
【0027】
ケーシング(100)は、圧縮機構(300)が収容されるシリンダーブロック(110)、シリンダーブロック(110)の前方側に結合されるフロントハウジング(120)、及びシリンダーブロック(110)の後方側に結合されるリアハウジング(130)を含む。シリンダーブロック(110)の中心側には、回転軸(200)が挿入される軸受孔(112)、及び軸受孔(112)と連通して後述の回転軸支持体(600)を収容するチャンバ(114)が形成され、シリンダーブロック(110)の外周部側には、後述のピストン(320)が挿入されピストン(320)と共に圧縮室をなすボア(116)が形成され、ボア(116)と軸受孔(112)との間、及びボア(116)とチャンバ(114)との間には、後述の流入流路(530)及び後述の排出流路(550)が形成される。
【0028】
チャンバ(114)は、後述のスラストプレート(610)及び後述の弾性部材(620)が収容される第1チャンバ(114a)、第1チャンバ(114a)を基準として、軸受孔(112)の反対側で第1チャンバ(114a)と連通する第2チャンバ(114c)、及び第2チャンバ(114c)を基準として、第1チャンバ(114a)の反対側で第2チャンバ(114c)と連通する第3チャンバ(114d)を含む。
【0029】
第1チャンバ(114a)は、後述のスラストプレート(610)及び後述の弾性部材(620)が、軸受孔(112)を通じて第1チャンバ(114a)に挿入可能になるように、第1チャンバ(114a)の内径が軸受孔(112)の内径と同等なレベルに形成される。第2チャンバ(114c)は、後述の弾性部材(620)を支持するように、かつ後述のように第1チャンバ(114a)に流入するオイルが第1チャンバ(114a)に貯油されるように、第2チャンバ(114c)の内径が第1チャンバ(114a)の内径よりも小さく形成される。
【0030】
また、第1チャンバ(114a)の内径と第2チャンバ(114c)の内径との差によって、第1チャンバ(114a)と第2チャンバ(114c)との間には段差面(114b)が形成され、段差面(114b)は、オイルが第1チャンバ(114a)にさらに効果的に貯油されるように、第1チャンバ(114a)の内周面と垂直に形成される。すなわち、第1チャンバ(114a)のオイルが段差面(114b)に衝突してスワールが生じ、スワールにより第1チャンバ(114a)と第2チャンバ(114c)との間に隘路区間が生じ、隘路区間の内径が第2チャンバ(114c)の内径よりも小くなるように、段差面(114b)は第1チャンバ(114a)の内周面と垂直に形成される。
【0031】
第3チャンバ(114d)は、シリンダーブロック(110)が金型(図示せず)から取り外されるとき、第3チャンバ(114d)に挿入された金型(図示せず)が容易に取り外されるように、リアハウジング(130)に対向するシリンダーブロック(110)の先端面(118)まで延びて形成され、第3チャンバ(114d)の内径が第2チャンバ(114c)の内径よりも大きく形成される。また、第3チャンバ(114d)は、金型(図示せず)が第3チャンバ(114d)からより容易に取り外されるように、リアハウジング(130)側に行くほど、第3チャンバ(114d)の内径が漸進的に増加するコーン状(cone shape)に形成される。
【0032】
また、第3チャンバ(114d)は、金型(図示せず)が第3チャンバ(114d)からより一層容易に取り外されるように、リアハウジング(130)側に行くほど、第3チャンバ(114d)の内径の増加率が増加してから減少するように形成される。
【0033】
一方、シリンダーブロック(110)には、チャンバ(114)と後述の排出流路(550)とを連通するスリット(115)、及びチャンバ(114)と後述の流入流路(530)とを連通するオイル回収孔(117)が形成される。スリット(115)は、チャンバ(114)と後述の排出流路(550)との間の壁部を貫通して形成され、後述の排出流路(550)を第1チャンバ(114a)、第2チャンバ(114c)及び第3チャンバ(114d)と連通するように、回転軸(200)の先端部側からシリンダーブロック(110)の先端面(118)まで延びて形成される。ここで、スリット(115)の一部は、回転軸(200)と後述のスラストプレート(610)との間の接触部位に対向して形成される。
【0034】
オイル回収孔(117)は、チャンバ(114)と後述の流入流路(530)との間の壁部を貫通して形成され、第3チャンバ(114d)と後述の流入流路(530)とを連通するように、シリンダーブロック(110)の先端面(118)に彫り込まれて形成される。フロントハウジング(120)は、シリンダーブロック(110)を基準として、リアハウジング(130)の反対側でシリンダーブロック(110)に締結される。
【0035】
ここで、シリンダーブロック(110)とフロントハウジング(120)とは互いに締結され、シリンダーブロック(110)とフロントハウジング(120)との間にクランク室(S4)が形成される。クランク室(S4)には、後述の斜板(310)が収容される。リアハウジング(130)は、シリンダーブロック(110)を基準として、フロントハウジング(120)の反対側でシリンダーブロック(110)に締結される。
【0036】
また、リアハウジング(130)は、圧縮室に流入する冷媒が収容される吸入室、及び圧縮室から吐出される冷媒が収容される吐出室を含む。吸入室は、圧縮される冷媒をケーシング(100)の内部に案内する冷媒吸入管(図示せず)に連通される。吐出室は、圧縮された冷媒をケーシング(100)の外部に案内する冷媒吐出管(図示せず)に連通される。
【0037】
回転軸(200)は一方向に延びて形成され、一端部がシリンダーブロック(110)(より正確には、軸受孔(112))に挿入されて回転可能に支持され、他端部がフロントハウジング(120)を貫通してケーシング(100)の外部に突出し、駆動源(図示せず)に連結され、中間端部が圧縮機構(300)に連結される。圧縮機構(300)は、吸入室から圧縮室に冷媒を吸入し、吸入した冷媒を圧縮室で圧縮し、圧縮した冷媒を圧縮室から吐出室に吐出するように形成される。
【0038】
具体的に、圧縮機構(300)は、回転軸(200)に連動してクランク室(S4)の内部で回転する斜板(310)、斜板(310)に連動してボア(116)の内部で往復運動するピストン(320)を含む。斜板(310)は円板状に形成され、クランク室(S4)で回転軸(200)に傾くように締結される。ピストン(320)は、ボア(116)に挿入される一端部、及び一端部からボア(116)の反対側に延び、クランク室(S4)で斜板(310)に連結される他端部を含む。
【0039】
一方、本実施例による圧縮機は、吸入室及び吐出室を圧縮室と連通及び遮蔽するバルブ機構をさらに含む。バルブ機構は、シリンダーブロック(110)とリアハウジング(130)との間に介在するバルブプレート、シリンダーブロック(110)とバルブプレートとの間に介在する吸入リード、及びバルブプレートとリアハウジング(130)との間に介在する吐出リードを含む。
【0040】
また、本実施例による圧縮機は、回転軸(200)に対する斜板(310)の傾斜角を調節する傾斜調節機構をさらに含む。傾斜調節機構は、斜板(310)が回転軸(200)に締結されるものの、斜板(310)の傾斜角が可変可能に締結されるように、回転軸(200)に締結され回転軸(200)と共に回転するローター(510)、及び斜板(310)とローター(510)とを連結するスライディングピン(520)を含む。スライディングピン(520)は円筒状のピンで形成され、斜板(310)にはスライディングピン(520)が挿入される第1挿入孔が形成され、ローター(510)にはスライディングピン(520)が挿入される第2挿入孔が形成される。
【0041】
第1挿入孔は、スライディングピン(520)が、第1挿入孔の内部で回転可能になるように円筒状に形成される。第2挿入孔は、スライディングピン(520)が、第2挿入孔に沿って移動可能なように一方向に延びて形成される。また、傾斜調節機構は、クランク室(S4)の圧力を調節して斜板(310)の傾斜角を調節するように、吐出室の冷媒をクランク室(S4)に案内する流入流路(530)、吐出室から流入流路(530)に流入する冷媒量を調節する圧力調節バルブ(図示せず)、クランク室(S4)の冷媒を吸入室に案内する排出流路(550)、及び排出流路(550)を通過する冷媒の圧力を減圧させるオリフィスホール(560)を含む。
【0042】
また、本実施例による圧縮機は、第1チャンバ(114a)に収容され、回転軸(200)の一端部を回転軸(200)の軸方向に支持する回転軸支持体(600)をさらに含む。回転軸支持体(600)は、回転軸(200)の先端面に滑り接触するスラストプレート(610)、及びスラストプレート(610)を回転軸(200)側に加圧する弾性部材(620)を含む。スラストプレート(610)は、第1チャンバ(114a)の内周面に対向する外周面、段差面(114b)に対向する底面、及び回転軸(200)の先端面に対向する上面を有する円板状に形成される。
【0043】
ここで、スラストプレート(610)の上面は、回転軸(200)の先端面を支持するベアリング面であり、回転軸(200)との摩擦低減のために、例えばPTFEコーティング層がスラストプレート(610)の上面に形成される。また、スラストプレート(610)の上面には、スラストプレート(610)の上面と回転軸(200)の先端面との間にオイルを供給してスラストプレート(610)の上面と回転軸(200)の先端面との間の摩擦を減少させるため、スラストプレート(610)の上面に彫り込まれたオイル溝(616b)が形成される。
【0044】
オイル溝(616b)は、オイル溝(616b)によってスラストプレート(610)が変形することを防止できるように、オイル溝(616b)の深さがスラストプレート(610)の厚さの20%以下に形成される。また、オイル溝(616b)は、回転軸(200)が回転するとき、回転軸(200)の先端面とスラストプレート(610)の上面との間にオイルが一定に塗布されるように少なくとも1つに形成され、少なくとも1つのオイル溝(616b)は、回転軸(200)の回転方向に沿って配列され、各オイル溝(616b)は、回転軸(200)の求心側から回転軸(200)の遠心側に延びて形成され、放射状に形成される。
【0045】
また、オイル溝(616b)は、回転軸(200)が回転するとき、遠心力によって回転軸(200)の求心側からオイルを供給されるように形成される。
具体的に、回転軸(200)の先端面には、その回転軸(200)の先端面から彫り込まれたオイルポケット(210)が形成され、スラストプレート(610)には、第1チャンバ(114a)のオイルをオイルポケット(210)に案内するようにスラストプレート(610)を貫通してオイルポケット(210)と連通する連通孔(618)が形成され、オイルポケット(210)と連通孔(618)は回転軸(200)の求心側に形成され、オイル溝(616b)はオイルポケット(210)と連通される。
【0046】
ここで、オイルポケット(210)と連通孔(618)は、オイルポケット(210)のオイルが連通孔(618)を通じて第1チャンバ(114a)に排出されることを防止してオイルポケット(210)の貯油量を増加させるため、連通孔(618)の内径がオイルポケット(210)の内径よりも小さく形成される。
【0047】
以下、本実施例による斜板式圧縮機の作用効果について説明する。
駆動源(図示せず)から回転軸(200)に動力が伝達されると、回転軸(200)と斜板(310)が共に回転する。また、ピストン(320)は、斜板(310)の回転運動を直線運動に切り替えてボア(116)の内部で往復運動する。また、ピストン(320)が上死点から下死点に移動するとき、圧縮室は、バルブ機構により吸入室とは連通し吐出室とは遮蔽され、吸入室の冷媒を圧縮室に吸入する。
【0048】
ピストン(320)が下死点から上死点に移動するとき、圧縮室は、バルブ機構により吸入室及び吐出室と遮蔽され、圧縮室の冷媒を圧縮する。ピストン(320)が上死点に到達するとき、圧縮室は、バルブ機構により吸入室とは遮蔽され吐出室とは連通し、圧縮室で圧縮された冷媒を吐出室に吐出する。
【0049】
本実施例による圧縮機は、要求される冷媒吐出量に応じて、吐出室から流入流路(530)に流入する冷媒量が圧力調節バルブ(図示せず)により調節されて、クランク室(S4)の圧力が調節され、ピストン(320)に印加されるクランク室(S4)の圧力が調節されて、ピストン(320)のストロークが調節され、斜板(310)の傾斜角が調節されることで、冷媒吐出量を調節する。
【0050】
冷媒吐出量の減少が必要な場合、吐出室から流入流路(530)に流入する冷媒量が圧力調節バルブ(図示せず)により増加し、流入流路(530)を通じてクランク室(S4)に流入する冷媒量が増加することで、クランク室(S4)の圧力が増加する。これによって、ピストン(320)に印加されるクランク室(S4)の圧力が増加し、ピストン(320)のストロークが減少し、斜板(310)の傾斜角が減少することで、冷媒吐出量を減少させる。
【0051】
一方、冷媒吐出量の増加が必要な場合、吐出室から流入流路(530)に流入する冷媒量が圧力調節バルブ(図示せず)により減少し、流入流路(530)を通じてクランク室(S4)に流入する冷媒量が減少することで、クランク室(S4)の圧力が減少する。これによって、ピストン(320)に印加されるクランク室(S4)の圧力が減少し、ピストン(320)のストロークが増加し、斜板(310)の傾斜角が増加して、冷媒吐出量を増加させる。
【0052】
ここで、クランク室(S4)の圧力減少のためには、吐出室から流入流路(530)に流入する冷媒量が減少されなければならないだけでなく、クランク室(S4)の冷媒がクランク室(S4)の外部に排出されなければならず、このために、クランク室(S4)の冷媒を吸入室に案内する排出流路(550)、及び吸入室の圧力上昇を防止するように、排出流路(550)を通過する冷媒を減圧させるオリフィスホール(560)が備えられる。
【0053】
一方、このような圧縮機の運転過程で、回転軸(200)は回転軸支持体(600)によって支持され、回転軸支持体(600)がスラストプレート(610)を含むことで、荷重支持能力が向上し、回転軸支持体(600)の構造が単純化し、回転軸支持体(600)の形成に必要となる原価を節減できる。また、スラストプレート(610)がコーティング層を含むことで、回転軸(200)とスラストプレート(610)との間の摩擦を減少できる。
【0054】
また、コーティング層がPTFE材質で形成されることで、コーティング層の潤滑性能及び耐磨耗性を向上できる。また、スラストプレート(610)にオイル溝(616b)が形成され、スリット(115)、チャンバ(114)、連通孔(618)及びオイルポケット(210)を通じてオイル溝(616b)にオイルが供給されることで、回転軸(200)とスラストプレート(610)との間にオイルを供給できる。これによって、回転軸(200)とスラストプレート(610)との間の摩擦がさらに減少し、コーティング層が剥げられるようなスラストプレート(610)の損傷を防止することができる。
【0055】
具体的に、ケーシング(100)の内部には、各種の摺動部を潤滑させるためのオイルが充填されており、オイルは冷媒に含有されて冷媒と共に圧縮機の内部を移動できる。すなわち、吸入室にあったオイルは、冷媒と共に圧縮室、吐出室、流入流路(530)、クランク室(S4)、及び排出流路(550)を経て吸入室に循環され、各種の摺動部を潤滑させることができる。
【0056】
このとき、クランク室(S4)から排出流路(550)を通じて吸入室に移動していたオイル(より正確には、オイルを含有した冷媒)の一部は、スリット(115)を通じてチャンバ(114)に流入され、チャンバ(114)に流入されたオイルは、オイル溝(616b)に供給されて回転軸(200)の先端面とスラストプレート(610)との間の接触面を潤滑させた後、オイル回収孔(117)及び流入流路(530)を通じてクランク室(S4)に復帰する。
【0057】
具体的に、スリット(115)において、回転軸(200)の先端部とスラストプレート(610)との間の接触部位に対向する部位をスリットの第1部位(115a)とし、スリット(115)において弾性部材(620)に対向する部位をスリットの第2部位(115b)とすると、スリットの第1部位(115a)を通じて第1チャンバ(114a)に流入するオイルは、回転軸(200)の遠心側でオイル溝(616b)に供給され、スリットの第2部位(115b)を通じて第1チャンバ(114a)に流入するオイルは、連通孔(618)及びオイルポケット(210)を通じて回転軸(200)の求心側でオイル溝(616b)に供給される。
【0058】
オイル溝(616b)に供給されたオイルは、回転軸(200)の先端面とスラストプレート(610)との間の接触面を潤滑できる。回転軸(200)の先端面とスラストプレート(610)との間の接触面を潤滑させたオイルは、第1チャンバ(114a)、第2チャンバ(114c)、第3チャンバ(114d)、オイル回収孔(117)及び流入流路(530)を通じてクランク室(S4)に復帰することができる。
【0059】
ここで、本実施例による圧縮機は、スリット(115)が回転軸(200)とスラストプレート(610)との間の接触部位に対向して形成されることで、オイル溝(616b)にオイルを円滑かつ十分に供給することができる。すなわち、本実施例とは異なり、スリット(115)がスリットの第2部位(115b)のみを含むように形成(スリット(115)が回転軸(200)とスラストプレート(610)との間の接触部位に対向しないように形成)され、オイルが回転軸(200)の求心側でのみオイル溝(616b)に供給されるように形成されることもできるが、本実施例のようにスリット(115)がスリットの第2部位(115b)のみでなくスリットの第1部位(115a)まで含むように形成され、オイルが回転軸(200)の求心側のみでなく回転軸(200)の遠心側でもオイル溝(616b)に供給されるように形成されることで、オイル溝(616b)にオイルを円滑かつ十分に供給することができる。
【0060】
また、第2チャンバ(114c)の内径が第1チャンバ(114a)の内径よりも小さく形成されることで、第1チャンバ(114a)のオイルが第2チャンバ(114c)に流動されることが抑制され、第1チャンバ(114a)のオイル貯油量を増加させることができる。これによって、オイル溝(616b)にオイルを円滑かつ十分に供給することができる。
【0061】
また、第1チャンバ(114a)の内径と第2チャンバ(114c)の内径との差によって形成される段差面(114b)が、第1チャンバ(114a)の内周面と垂直に形成されることでスワールが生じる。これによって、第1チャンバ(114a)のオイルが第2チャンバ(114c)に流動されることがさらに抑制され、第1チャンバ(114a)のオイル貯油量がさらに増加し、オイル溝(616b)にオイルをさらに円滑かつ十分に供給することができる。
【0062】
また、クランク室(S4)のオイルの一部は、排出流路(550)、吸入室、圧縮室、吐出室、流入流路(530)を通じてクランク室(S4)に循環され、クランク室(S4)のオイルの一部は、排出流路(550)、スロット、チャンバ(114)、オイル回収孔(117)及び流入流路(530)を経てまたクランク室(S4)に循環されることで、オイル溝(616b)に比較的きれいなオイルを持続して供給することができる。これによって、オイルに含有されている異物が、回転軸(200)の先端面とスラストプレート(610)との間で摩擦を増加させるか、損傷を発生することを抑制可能である。
【0063】
また、スリット(115)が回転軸(200)の先端部側からシリンダーブロック(110)の先端面(118)まで延びて形成されることで、スリット(115)が第1チャンバ(114a)のみでなく第2チャンバ(114c)及び第3チャンバ(114d)を排出流路(550)と連通することができる。これによって、オイルの循環がさらに円滑に行なえる。
【0064】
また、シリンダーブロック(110)の先端面(118)側に開口する第3チャンバ(114d)の内径が第2チャンバ(114c)の内径よりも大きく形成されることで、シリンダーブロック(110)が金型(図示せず)から容易に取り外せる。また、第3チャンバ(114d)の内径がリアハウジング(130)側に行くほど、第3チャンバ(114d)の内径が漸進的に増加するように形成されることで、シリンダーブロック(110)が金型(図示せず)からより容易に取り外せる。
【0065】
また、リアハウジング(130)側に行くほど、第3チャンバ(114d)の内径の増加率が増加してから減少するように形成されることで、シリンダーブロック(110)が金型(図示せず)からより一層容易に取り外せる。
【0066】
一方、本実施例の場合、オイルの循環がさらに円滑に行われるように、スリット(115)が第1チャンバ(114a)のみでなく第2チャンバ(114c)及び第3チャンバ(114d)とも連通するように形成される。しかし、これらに限定されることなく、別に示してはいないが、スリット(115)は、第1チャンバ(114a)とのみ連通するように形成されてもよい。
【0067】
また、本実施例の場合、圧縮機構(300)がいわゆる可変容量斜板方式で形成され、流入流路(530)と排出流路(550)とが形成されることで、スリット(115)が排出流路(550)と連通するように形成される。しかし、これらに限定されることなく、別に示してはいないが、圧縮機構(300)がいわゆるスクロール方式で形成され、流入流路(530)と排出流路(550)が形成されていない場合、スリット(115)が他の流路(例えば、吐出室のオイルを吸入室に復帰させるオイル回収流路)と連通するように形成されてもよい。
【符号の説明】
【0068】
100 ケーシング
110 シリンダーブロック
112 軸受孔
114 チャンバ
114a 第1チャンバ
114b 段差面
114c 第2チャンバ
114d 第3チャンバ
115 スリット
115a スリットの第1部位
115b スリットの第2部位
116 ボア
117 オイル回収孔
118 先端面
120 フロントハウジング
130 リアハウジング
200 回転軸
210 オイルポケット
300 圧縮機構
310 斜板
320 ピストン
510 ローター
520 スライディングピン
530 流入流路
550 排出流路
560 オリフィスホール
600 回転軸支持体
610 スラストプレート
616b オイル溝
618 連通孔
620 弾性部材
図1
図2
図3
図4
図5