(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】セラミックス構造体
(51)【国際特許分類】
C04B 38/06 20060101AFI20221025BHJP
C04B 41/85 20060101ALI20221025BHJP
F28F 21/04 20060101ALI20221025BHJP
F28F 3/08 20060101ALI20221025BHJP
F28D 9/00 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
C04B38/06 E
C04B41/85 H
F28F21/04
F28F3/08 301Z
F28D9/00
(21)【出願番号】P 2021569758
(86)(22)【出願日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2020044085
(87)【国際公開番号】W WO2021140775
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-04-20
(31)【優先権主張番号】P 2020000554
(32)【優先日】2020-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000237868
【氏名又は名称】エヌジーケイ・アドレック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】抜水 一輝
(72)【発明者】
【氏名】二本松 浩明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴志
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0283873(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0186845(US,A1)
【文献】実開昭62-13384(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 38/06
C04B 41/85
F28F 21/04
F28F 3/08
F28D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向に直交する第1方向に伸びる複数の貫通孔が設けられているセラミックス製の第1トラス構造体と、
厚み方向に直交するとともに第1方向とは異なる第2方向に伸びる複数の貫通孔が設けられているセラミックス製の第2トラス構造体と、を備えており、
第1トラス構造体と第2トラス構造体が、厚み方向に積層された一体成型品であ
り、
第1トラス構造体及び第2トラス構造体の材料が、SiC粒子を主体とし、SiC粒子間に金属Siが含まれるSi-SiC質であるセラミックス構造体。
【請求項2】
厚み方向において、第1トラス構造体の両側に第2トラス構造体が積層されている請求項1に記載のセラミックス構造体。
【請求項3】
第1方向と第2方向が成す角度が、10度以上90度以下である請求項1または2に記載のセラミックス構造体。
【請求項4】
第1方向と第2方向が成す角度が、80度以上90度以下である請求項3に記載のセラミックス構造体。
【請求項5】
第1トラス構造体及び第2トラス構造体を構成している骨格の表層部分の開気孔率が5%未満である請求項
1から4のいずれか一項に記載のセラミックス構造体。
【請求項6】
厚み方向に直交するとともに、第1方向および第2方向とは異なる第3方向に伸びる複数の貫通孔が設けられているセラミックス製の第3トラス構造体を更に備え、
第1方向と第3方向が成す角度θ1、第2方向と第3方向が成す角度θ2、第1方向と第2方向が成す角度θ3としたときに、下記式(1)及び(2)を満たす請求項
1から5のいずれか一項に記載のセラミックス構造体。
50度≦θ1、θ2≦70度・・・(1)
θ1+θ2+θ3=180度・・・(2)
【請求項7】
厚み方向に直交する一方向に伸びる複数の貫通孔が設けられているセラミックス製のトラス構造体が、厚み方向に複数積層されている一体成型品のセラミックス構造体であって、
各トラス構造体が、前記貫通孔が厚み方向に直交する二方向以上に伸びるように積層されて
おり、
各トラス構造体の材料が、SiC粒子を主体とし、SiC粒子間に金属Siが含まれるSi-SiC質であるセラミックス構造体。
【請求項8】
請求項
1から6のいずれか一項に記載のセラミックス構造体を備えた熱交換部材であって、
第1トラス構造体の貫通孔が、第1熱媒体を流通させるための流路であり、
第2トラス構造体の貫通孔が、第2熱媒体を流通させるための流路である熱交換部材。
【請求項9】
請求項
1から6のいずれか一項に記載のセラミックス構造体を備えた断熱部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年1月6日に出願された日本国特許出願第2020-000554号に基づく優先権を主張する。その出願の全ての内容は、この明細書中に参照により援用されている。本明細書は、セラミックス構造体に関する技術を開示する。特に、トラス構造を有するセラミックス構造体に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
国際公開WO2018/047784号(以下、特許文献1と称する)に、トラス構造(ハニカム構造)を有するセラミックス構造体が開示されている。トラス構造を有するセラミックス構造体は、軽量でありながら高強度であるという特徴を備えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図8に、特許文献1のセラミックス構造体の概略図を示している。
図8に示すように、セラミックス構造体400では、表層402と裏層404の間に、一方向(Y方向)に伸びる隔壁422が設けられている。表層402と裏層404と隔壁422によって、トラス構造が構成されている。また、表層402と裏層404と隔壁422によって、Y方向伸びる複数の貫通孔424が形成されている。なお、特許文献1のセラミックス構造体は、一体成型品であり、押出成型によって製造されている。セラミックス構造体400は、貫通孔424を設けることによって軽量化を実現している。また、セラミックス構造体400は、トラス構造を有しているので、高強度化も実現している。具体的には、セラミックス構造体400は、隔壁422(貫通孔424)が伸びる方向(Y軸方向)、及び、表層402(裏層404)に直交する厚み方向(Z軸方向)に対して高強度である。しかしながら、セラミックス構造体400は、X軸方向(Y軸方向及びZ軸方向に直交する方向)、特に、X軸方向の剪断力に対して比較的弱い。セラミックス構造体400は、特定の方向における強度が比較的弱くなるので、汎用性が低い(用途が限定的である)。本明細書は、汎用性の高いセラミックス構造体を実現する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書で開示するセラミックス構造体は、厚み方向に直交する第1方向に伸びる複数の貫通孔が設けられているセラミックス製の第1トラス構造体と、厚み方向に直交するとともに第1方向とは異なる第2方向に伸びる複数の貫通孔が設けられているセラミックス製の第2トラス構造体を備えていてよい。また、第1トラス構造体と第2トラス構造体が、厚み方向に積層されていてよい。
【0005】
また、本明細書で開示するセラミックス構造体は、厚み方向に直交する一方向に伸びる複数の貫通孔が設けられているセラミックス製のトラス構造体が、厚み方向に複数積層されている一体成型品のセラミックス構造体であってよい。このセラミックス構造体では、各トラス構造体が、上記貫通孔が厚み方向に直交する二方向以上に伸びるように積層されていてよい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施例のセラミックス構造体の斜視図を示す。
【
図3】トラス構造体を構成する骨格に含まれる特定元素の濃度分布を示す。
【
図4】第1貫通孔と第2貫通孔の位置関係を説明する図を示す。
【
図5】第2実施例のセラミックス構造体の斜視図を示す。
【
図6】第1-第3貫通孔の位置関係を説明する図を示す。
【
図7A】第3実施例のセラミックス構造体の斜視図を示す。
【
図7B】第3実施例のセラミックス構造体について、
図7Aと異なる角度から観察した斜視図を示す。
【
図8】従来のトラス構造体の特徴を説明する図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書で開示するセラミックス構造体は、厚み方向に直交する一方向に伸びる複数の貫通孔が設けられているセラミックス製のトラス構造体が、厚み方向に複数積層されていてよい。セラミックス構造体は、各トラス構造体が一体となった一体成型品であってよい。一体成型品とは、焼成前の成形体の時点で各トラス構造体が一体的に構成されており、一体的に構成された成形体を焼成することにより、焼成後の各トラス構成体が一体的に構成されていることを意味する。また、各トラス構造体が、貫通孔が厚み方向に直交する二方向以上に伸びるように積層されていてよい。すなわち、このセラミックス構造体は、少なくとも、厚み方向に直交する第1方向に伸びる複数の貫通孔が設けられているセラミックス製の第1トラス構造体と、厚み方向に直交するとともに第1方向とは異なる第2方向に伸びる複数の貫通孔が設けられているセラミックス製の第2トラス構造体を備えていてよい。また、第3方向に伸びる貫通孔が設けられているセラミックス製の第3トラス構造体(第3方向≠第1,第2方向)、第4方向に伸びる貫通孔が設けられているセラミックス製の第4トラス構造体(第4方向≠第1,第2,第3方向)等を備えていてもよい。
【0008】
各トラス構造体は、表層と、裏層と、表層と裏層を接続しているとともに厚み方向に直交する一方向に伸びる隔壁を備えていてよい。表層と裏層と隔壁によって、複数の貫通孔が形成されていてよい。特定のトラス構造体の表層は、厚み方向においてそのトラス構造体の表層上に積層されているトラス構造体の裏層を兼ねていてよい。すなわち、第1トラス構造体の表層上に第2トラス構造体が積層されている場合、第1トラス構造体の表層が第2トラス構造体の裏層であってよい。なお、セラミックス構造体の表面及び裏面は、平坦面であってよい。
【0009】
上記したセラミックス構造体は、貫通孔の壁面を画定する隔壁が、厚み方向に直交する二方向以上に伸びている。そのため、特定のトラス構造体において強度が比較的弱い方向から加わる力に対して、他のトラス構造体が強度を補うことができる。具体的には、特定のトラス構造体に着目すると、その特定のトラス構造体は、厚み方向に直交するとともに貫通孔(隔壁)が伸びる方向に直交する特定方向(以下、横方向という)から加わる力に対して比較的弱い。しかしながら、上記したセラミックス構造体は、特定のトラス構造体上に積層されている他のトラス構造体が横方向から加わる力に抗するので、セラミックス構造体の面方向の強度バランスを改善することができる。その結果、上記したセラミックス構造体は、「特定方向からの力に比較的弱い」という従来のセラミックス構造体の課題が解決され、種々の目的で用いることができる。すなわち、上記セラミックス構造体は汎用性が高い。
【0010】
なお、厚み方向において、同じ方向に伸びる貫通孔を有するトラス構造体が連続して積層されていてもよい。例えば、厚み方向において、第1方向に伸びる貫通孔を有する第1トラス構造体が、連続して積層されていてもよい。すなわち、厚み方向に直交する方向のうちの少なくとも二方向に貫通孔が伸びるように各トラス構造体が積層されていれば、各トラス構造体の積層順は任意に変更することができる。但し、特定のトラス構造体における横方向の強度を補うという観点より、厚み方向において、特定のトラス構造体の両側に、貫通孔が伸びる方向が異なる他のトラス構造体が積層されていることが好ましい。すなわち、第1方向に伸びる貫通孔を有する第1トラス構造体の両側に、第1方向とは異なる第2方向に伸びる貫通孔を有する第2トラス構造体が積層されていることが好ましい。
【0011】
上記したように、セラミックス構造体は、少なくとも二方向(第1方向と第2方向)に伸びる貫通孔を有している。第1方向と第2方向が非平行であれば、セラミックス構造体の面方向における強度バランスを改善することができる。例えば、第1方向と第2方向が成す角度(鋭角)が10度以上90度以下であれば、第1トラス構造体と第2トラス構造体が互いに強度を補い、面方向における強度バランスが良好に改善される。特に、第1方向と第2方向が成す角度(鋭角)が80度以上90度以下、すなわち、第1方向と第2方向がほぼ直交する関係であれば、面方向における強度バランスをさらに良好に改善することができる。
【0012】
なお、セラミックス構造体が異なる三方向以上に伸びる貫通孔を有している場合、任意の二方向において上記関係を満足していればよい。例えば、セラミックス構造体が、第1方向に伸びる第1貫通孔を有する第1トラス構造体、第2方向(≠第1方向)に伸びる第2貫通孔を有する第2トラス構造体、第3方向(≠第1方向,第2方向)に伸びる第3貫通孔を有する第3トラス構造体を有するセラミックス構造体において、第1方向と第3方向が成す角度θ1、第2方向と第3方向が成す角度θ2、第1方向と第2方向が成す角度θ3としたときに、下記式(1)及び(2)を満たしていてよい。下記式(1)及び(2)を満足することにより、少なくとも第1貫通孔と第2貫通孔(第1方向と第2方向)が成す角度θ3を60度以上にすることができ、互いに横方向の強度を補うことができる。
50度≦θ1、θ2≦70度・・・(1)
θ1+θ2+θ3=180度・・・(2)
【0013】
セラミックス構造体を構成する各トラス構造体は、同一の材料で形成されていてよい。例えば、各トラス構造体の材料は、SiC質、ムライト質、ZrO2質、Si-SiC質であってよい。なお、「Si-SiC質」とは、SiC粒子を主体とし、SiC粒子間に金属Siが含まれる材料のことを意味する。各トラス構造体をSi-SiC質で形成することにより、各トラス構造体を構成する骨格の表層部分の開気孔率を低くすることができ各トラス構造体自体の強度が向上する。各トラス構造体の骨格の開気孔率は、例えば5%未満であってよく、3%以下であってよく、特に好ましくは1%以下であってよい。トラス構造を構成する骨格は、実質的に気孔を有していないものであってもよい。骨格の気孔率を5%未満とすることにより、骨格の強度及び熱伝導率をさらに向上させることができる。各トラス構造体の骨格の開気孔率は、JIS R 1655(ファインセラミックスの水銀圧入法による成形体気孔径分布試験方法)に準拠して測定することができる。
【0014】
上記したように、本明細書で開示するセラミックス構造体は、各トラス構造体が一体となった一体成型品であるにも関わらず、各トラス構造体に形成されている貫通孔が厚み方向に直交する二方向以上に伸びている。このようなセラミックス構造体は、例えば、可燃性の材料で目的とする形状を形成した後、この材料にセラミックス材料(セラミックススラリー)を含浸させた中間体を形成し、中間体を焼成することによって製造することができる。可燃性の材料としては、例えば、紙、布、樹脂が挙げられる。用いる可燃性の材料によっては、各トラス構造体を構成している骨格の表層部分と比較して、骨格の内部には多孔質材料の材料成分が残り易い。そのため、各トラス構造体を構成している骨格の表層部分と比較して、骨格の内部に、炭素とカルシウムの少なくとも一方の元素(可燃性の多孔質材料に典型的に含まれている元素)が多く含まれていてよい。例えば、セラミックス構造体(各トラス構造体)がSi-SiC質で形成されている場合、骨格の表層部分は主成分(全体の50wt%超)がSiCで残部が金属Siであり、骨格の内部は主成分が金属Siで残部が炭素、及び/又は、カルシウムであってよい。
【0015】
上記したように、本明細書で開示するセラミックス構造体は、複数の貫通孔を備えるトラス構造体が厚み方向に積層されている。そのため、セラミックス構造体を軽量にすることができるとともに、厚み方向の断熱性を高く(表裏面間の熱伝導率を低く)することができる。また、貫通孔が複数方向に伸びるように各トラス構造体が積層されているので、面方向における強度バランスを向上させることができる。このような特徴を活かし、セラミックス構造体を、断熱部材(あるいは、断熱部材の構成部材)として好適に利用することができる。また、一体成型品でありながら貫通孔が複数方向に伸びているという特徴を活かし、セラミック構造体を、熱交換器の熱交換部材としても好適に利用することができる。なお、熱交換部材として用いる場合、第1トラス構造体の貫通孔を第1熱媒体を流通させるための流路とし、第2トラス構造体の貫通孔を第2熱媒体を流通させるための流路として利用することによって、第1熱媒体と第2熱媒体の熱交換を行うことができる。なお、セラミック構造体を熱交換部材として用いる場合、セラミックス構造体の材料として、熱伝導率が高いSiC質、Si-SiC質が好ましい。
【実施例】
【0016】
(第1実施例)
図1から
図4を参照し、セラミックス構造体100について説明する。なお、
図1では、略立方体のセラミックス構造体100を示しているが、セラミックス構造体100は、表面2及び裏面4のサイズ(X軸方向長さ及びY軸方向長さ)が厚み(Z軸方向長さ)より格段に大きい平板状の場合もある。
【0017】
図1に示すように、セラミックス構造体100は、第1トラス構造体10と第2トラス構造体20を備えている。第1トラス構造体10と第2トラス構造体20は、厚み方向(Z軸方向)に交互に積層されている。すなわち、厚み方向の端部に位置するトラス構造体を除き、第1トラス構造体10の両側に第2トラス構造体20が積層され、第2トラス構造体20の両側に第1トラス構造体10が積層されている。第1トラス構造体10と第2トラス構造体20は、貫通孔の伸びる方向を除き、実質的に同じ構造である。第1トラス構造体10は、Y軸方向(第1方向の一例)に伸びる複数の第1貫通孔14を有している。第1貫通孔14は、第1トラス構造体10の表層と、裏層と、表層と裏層の間に設けられている隔壁12によって画定されている。第2トラス構造体20は、Y軸方向及びZ軸方向に直交するX軸方向(第2方向の一例)に伸びる複数の第2貫通孔24を有している。第3貫通孔24は、第2トラス構造体20の表層と、裏層と、表層と裏層の間に設けられている隔壁22によって画定されている。
【0018】
図2に示すように、各トラス構造体10,20において、表層16と裏層18に隔壁12,22が接続され、複数の貫通孔14(24)が形成されている。上記したように第1トラス構造体10と第2トラス構造体20は実質的に同じ構造である。そのため、以下では第1トラス構造体10について説明する。隔壁12は、表層16及び裏層18に対して傾斜した状態で接続し、トラス構造(第1トラス構造体10)を実現している。表層16、裏層18及び隔壁12は、一体成型されており、表層16と隔壁12、裏層18と隔壁12の間に明確な境界はない。また、第1トラス構造体10の表層16と第2トラス構造体20の裏層18、及び、第1トラス構造体10の裏層18と第2トラス構造体20の表層16の間にも明確な境界はない。すなわち、
図1に示すセラミックス構造体100は、第1トラス構造体10及び第2トラス構造体20が一体となった一体成型品である。なお、
図2に示すトラス構造体10,20がセラミックス構造体100の最表層(Z軸方向+側端部)に位置する場合、表層16がセラミックス構造体100の表面2である。同様に、トラス構造体10,20がセラミックス構造体100の最裏層(Z軸方向-側端部)に位置する場合、裏層18がセラミックス構造体100の裏面4である。
【0019】
セラミックス構造体100は、紙などの可燃性の下地材にSiCスラリーを含浸させた中間体を形成し、その後金属Siを接触させた状態で焼成することによって製造されている。そのため、セラミックス構造体100を構成する骨格(表層16,裏層18,隔壁12)の表面部分は、主成分がSiCで残部が金属Siである。また、骨格の内部は、主成分が金属Siで残部が下地材に含まれる元素(炭素、及び/又は、カルシウム)である。なお、骨格の表面の開気孔率は1%以下である。
【0020】
図3は、セラミックス構造体100を構成している骨格に含まれる下地材の成分の濃度分布を示している。グラフの横軸は、骨格の厚み(例えば
図2に示す表層16の厚み31、隔壁12の厚み32)を、一端から他端までの距離(%)で示している。縦軸は、下地材に由来する元素(C,Ca)の割合を示している。
図3に示すように、骨材の表面部分には「C」,「Ca」がほとんど含まれていない。「C」及び「Ca」は、骨格の表面から所定深さ経過した後に出現し始め、骨格の中心に向かうに従って増加している。
【0021】
(セラミックス構造体100の変形例)
図1に示すように、セラミックス構造体100では、第1貫通孔14がY軸方向に伸びており、第2貫通孔24がX軸方向に伸びている。すなわち、セラミックス構造体100では、第1貫通孔14が伸びる方向(第1方向)と第2方向が伸びる方向(第2方向)が成す角度が90度である。しかしながら、第1方向と第2方向が成す角度は90度でなくてもよい。
図4に示すように、第1方向(第1貫通孔14が伸びる方向)対して第2方向(第2貫通孔が伸びる方向24)が成す角度が10度以上90度以下の範囲α1であれば、第1トラス構造体10と第2トラス構造体20の強度を互いに補うことができる。なお、第1方向に対して第2方向が成す角度が80度以上90度以下の範囲α2(すなわち、ほぼ直角)であれば、第1トラス構造体10と第2トラス構造体20の互いの補強効果が最大限に発揮される。
【0022】
セラミックス構造体100では、厚み方向において、同じ方向に伸びる貫通孔を有するトラス構造体が連続して積層されていてもよい。すなわち、厚み方向において、第1トラス構造体10(または第2トラス構造体20)が、2回以上連続して積層されていてもよい。この場合、連続して積層される第1トラス構造体10(または第2トラス構造体20)の厚み、及び/又は、貫通孔サイズが異なっていてもよい。
【0023】
(第2実施例)
図5を参照し、セラミックス構造体200について説明する。セラミックス構造体200は、セラミックス構造体100の変形例であり、第1トラス構造体10と第2トラス構造体20の間に第3トラス構造体30が設けられている。セラミックス構造体200について、セラミックス構造体100と同じ構成については、セラミックス構造体100に付した参照番号と同一の参照番号を付すことにより説明を省略することがある。
【0024】
第3トラス構造体30は、第3方向に伸びる複数の第3貫通孔34を備えている。第3貫通孔34が伸びる方向(第3方向)は、第1貫通孔14が伸びる方向(第1方向:Y軸方向)及び第2貫通孔24が伸びる方向(第2方向:X軸方向)と異なる。セラミックス構造体200では、第3貫通孔34と第1貫通孔14が成す角度は45度であり、第3貫通孔34と第2貫通孔24が成す角度も45度である。
【0025】
(第2実施例の変形例)
セラミックス構造体200において、各トラス構造体10,20,30の積層順は変更することができる。セラミックス構造体200においても、セラミックス構造体100と同様に、厚み方向において、同じ方向に伸びる貫通孔を有するトラス構造体が連続して積層されていてもよい。例えば、厚み方向において、第1トラス構造体10が連続して積層されていてもよい。この場合、連続して積層されるトラス構造体10の厚み、及び/又は、貫通孔サイズが異なっていてもよい。
【0026】
また、セラミックス構造体200においても、第1貫通孔14が伸びる方向(第1方向),第2貫通孔24が伸びる方向(第2方向),第3貫通孔34が伸びる方向(第3方向)を変更することができる。但し、第1方向と第3方向が成す角度θ1と、第2方向と第3方向が成す角度θ2と、第1方向と第2方向が成す角度θ3の合計角度(θ1+θ2+θ3)が180度になるように、各々の方向を調整する。また、
図6に示すように、角度θ1は50度以下に調整し、角度θ2は70度以下に調整する。角度θ3は、60度以上に調整する。すなわち、下記式(1)及び(2)を満足するように、各貫通孔14,24及び34が伸びる方向を調整する。下記式(1)及び(2)を満足することにより、少なくとも角度θ3が60度以上に調整されるので、各トラス構造体10,20,30を互いに補強することができる。
50度≦θ1、θ2≦70度・・・(1)
θ1+θ2+θ3=180度・・・(2)
【0027】
(第3実施例)
図7A及び
図7Bを参照し、セラミックス構造体300について説明する。
図7Bは、
図7Aとは反対側から観察した(面50を示す)斜視図を示している。セラミックス構造体300は、セラミックス構造体100,200の変形例であり、セラミックス構造体200と同様に、第1トラス構造体310と第2トラス構造体320の間に第3トラス構造体330が設けられている。セラミックス構造体300について、セラミックス構造体100,200と同じ構成については、セラミックス構造体100,200に付した参照番号と下二桁の数字が同じ参照番号を付すことにより説明を省略することがある。
【0028】
セラミックス構造体300は、表面302及び裏面304の形状が正三角形である。セラミックス構造体300は、貫通孔が伸びる方向が異なるトラス構造体310,320,330を備えている。第1トラス構造体310の貫通孔14が伸びる方向(第1方向)と、第2トラス構造体320の貫通孔24が伸びる方向(第2方向)が成す角度は60度である。また、第1トラス構造体310の貫通孔14が伸びる方向(第1方向)と、第3トラス構造体330の貫通孔34が伸びる方向(第3方向)が成す角度も60度である。よって、第2方向と第3方向が成す角度も60度である。セラミックス構造体300は、上記式(2)を満足している。セラミックス構造体300では、貫通孔を、セラミックス構造体300の側面に直交するように配置することができる。そのため、例えば、セラミックス構造体300を各貫通孔に流体(熱媒体)を流通させる熱交換部材として利用する場合、流体の移動抵抗を低減することができる。
【0029】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0030】
10:第1トラス構造体
14:第1トラス構造体の貫通孔
20:第2トラス構造体
24:第2トラス構造体の貫通孔
100:セラミックス構造体