(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】車両を製造するための方法と製造設備及び車体の表面処理のための表面処理設備
(51)【国際特許分類】
B62D 65/18 20060101AFI20221026BHJP
C25D 13/00 20060101ALI20221026BHJP
C25D 13/12 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
B62D65/18 B
C25D13/00 307Z
C25D13/12 Z
(21)【出願番号】P 2019569954
(86)(22)【出願日】2018-06-12
(86)【国際出願番号】 EP2018065528
(87)【国際公開番号】W WO2018234105
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2020-12-16
(31)【優先権主張番号】102017113343.7
(32)【優先日】2017-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521118488
【氏名又は名称】アイゼンマン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】マティーアス フォン クラウラント
【審査官】川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-341762(JP,A)
【文献】特開平01-172078(JP,A)
【文献】特開2012-121652(JP,A)
【文献】実開昭63-113019(JP,U)
【文献】特開平05-213247(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0199893(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 65/18
B61B 13/00
B05C 13/00 - 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を製造するための方法であって、
複数の作業ステップ(12.i、14.i、18.i、20.i)を実施するために車体(10)が複数の処理設備(20.i-j;66、66’、66”)を通って搬送され、連続する2つの作業ステップ(12.i、12.i+1、14.i、14.i+1、18.i、18.i+1、20.i、20.i+1)で車体(10)に異なる種類の作業を実施する方法において、
前記車体(10)は、該車体(10)の表面処理のための表面処理設備(16)で、少なくとも防錆処理から最終組み立てまで、少なくとも領域的に無人搬送システム(22)によって搬送され、前記無人搬送システム(22)は複数の無軌道式の搬送台車(28)を有し、該搬送台車(28)は、走行床(30)上を走行し、それぞれ固有の駆動システム(40)を搭載して互いに独立に駆動及び移動される、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記車体(10)は、前記表面処理設備(16)で実施されるすべての作業ステップ(20.i)中に、前記無人搬送システム(22)によって搬送される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記車体(10)は、ボディシェル設備(12)、及び/又は防錆設備(14)、及び/又は組み立て設備(18)で、前記表面処理設備(16)と同じ無人搬送システム(22)によって搬送される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
接続装置(38)によって互いに連結されている、搬送台車シャシ(36)と、少なくとも1つの車体(10)の固定装置(32)とを有する搬送台車を使用する、ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記車体(10)は、少なくとも1つの作業ステップ(12.i、14.i、18.i、20.i)を実施するために、少なくとも1つの処理設備(20.i-j;66、66’、66”)を通して搬送され、該処理設備(20.i-j;66、66’、66”)は処理トンネル(70)が収容されているハウジング(68)を備えて、前記処理トンネル(70)とは分離された搬送台車シャシ(36)用の走行スペース(80)を含み、前記処理トンネル(70)と前記走行スペース(80)は、前記搬送台車シャシ(36)が前記走行スペース(80)内で動くように接続貫通孔(78)によって互いに接続されており、前記固定装置(32)は前記処理トンネル(70)内に搬送され、前記接続装置(38)が前記接続貫通孔(78)を貫通して延びている、ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの処理設備(20.i-j;66)を使用し、該処理設備(20.i-j;66)は、前記接続貫通孔(78)を備えたトンネル底部(88)を有し、前記処理トンネル(70)の下方に走行スペース(80)が配置されている、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記処理トンネル(70)内に走行スペースハウジング(86)が収容されている少なくとも1つの処理設備(20.i-j、66’、66”)を使用し、走行スペースハウジング(86)は前記処理トンネル(70)の内部で走行スペース(80)を少なくとも一部の領域で限定し、前記処理トンネル(70)は接続貫通孔(78)を有する、ことを特徴とする請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの処理設備(20.i-j、66’)を使用し、前記走行スペースハウジング(86)は断熱手段(88)を提供する、ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
搬送台車(28)を使用し、該搬送台車(28)は全方向駆動システム(40)を有し、前記搬送台車(28)は前記全方向駆動システム(40)によって停止状態から任意の方向に走行できる、ことを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
車体(10)の表面処理のための複数の処理設備(20.i-j;66、66’、66”)を有する表面処理設備において、
複数の無軌道式の搬送台車(28)を有する無人搬送システム(22)が設けられており、各搬送台車(28)にはそれぞれ1つの車体(10)が固定され、前記搬送台車(28)は走行床(30)上を走行し、前記搬送台車(28)はそれぞれ固有の駆動システム(40)を搭載して互いに独立に駆動可能及び移動可能である、ことを特徴とする表面処理設備。
【請求項11】
各搬送台車(28)は、搬送台車シャシ(36)と、少なくとも1つの車体(10)の固定装置(32)とを有し、前記搬送台車シャシ(36)と前記固定装置(32)は互いに連結されている、ことを特徴とする請求項10に記載の表面処理設備。
【請求項12】
少なくとも1つの作業ステップ(12.i、14.i、18.i、20.i)を実施するための前記車体(10)は、搬送システム(22)によって少なくとも1つの処理設備(20.i-j、66、66’、66”)を搬送可能であり、前記処理設備(20.i-j、66、66’、66”)は、処理トンネル(70)が配置されているハウジング(68)を備え、前記処理トンネル(70)は分離された搬送台車シャシ(36)用の走行スペース(80)を含み、
前記処理トンネル(70)と前記走行スペース(80)は、搬送台車シャシ(36)が走行スペース(80)内で動くように接続貫通孔(78)によって互いに接続されており、前記固定装置(32)は処理トンネル(70)内に搬送され、
接続装置(38)は前記接続貫通孔(78)を貫通して延びている、ことを特徴とする請求項11に記載の表面処理設備。
【請求項13】
少なくとも1つの処理設備(20.i-j;66)は前記接続貫通孔(78)を備えたトンネル底部(88)を有し、前記走行スペース(80)は前記処理トンネル(70)の下方に配置されている、ことを特徴とする請求項12に記載の表面処理設備。
【請求項14】
少なくとも1つの処理設備(20.i-j、66’、66”)に関し、走行スペースハウジング(86)が前記処理トンネル(70)内に配置され、前記走行スペースハウジング(86)は、前記走行スペース(80)を前記処理トンネル(70)内で少なくとも領域的に限定し、前記接続貫通孔(78)を有する、ことを特徴とする請求項12又は13に記載の表面処理設備。
【請求項15】
少なくとも1つの処理設備(20.i-j、66’)に関し、前記走行スペースハウジング(86)は断熱手段(88)を備える、ことを特徴とする請求項14に記載の表面処理設備。
【請求項16】
前記搬送台車(28)は全方向駆動システム(40)を有し、該全方向駆動システム(40)によって、前記搬送台車(28)は停止状態から任意の方向に走行できる、ことを特徴とする請求項
10~15の何れか一項に記載の表面処理設備。
【請求項17】
車両を製造するための表面処理設備を備えた製造設備(16)において、
前記表面処理設備(16)は、請求項10~16の何れか一項に記載の表面処理設備(16)である、ことを特徴とする製造設備。
【請求項18】
前記表面処理設備(16)と同じように、前記車体(10)のための無人搬送システム(22)が、塗装前のボディシェル設備(12)、及び/又は防錆設備(14)、及び/又は最終組み立て設備(18)において存在することを特徴とする請求項17に記載の製造設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の作業ステップを実施するために車体が複数の処理設備を通って搬送され、連続する2つの作業ステップで車体に異なる種類の作業を実施する車両の製造方法に関する。
【0002】
更に、本発明は、複数の処理設備を備えた車体の表面処理のための表面処理設備に関する。
【0003】
更に、本発明は、表面処理設備を備えた車両を製造するための製造設備に関する。
【背景技術】
【0004】
ボディシェル設備で個々の部品から車体が組み立てられ、防錆設備で特に電気泳動浸漬塗装によって防錆を施された後、最終組み立て設備に到達する前に表面処理設備で表面処理が行われる。表面処理は全体として比較的多くの個々の処理ステップを含んでおり、原則として電気泳動浸漬塗装の乾燥で始まる。したがってボディシェル設備は車体前段階、即ち車体を組み立てる際の個々のフェーズにおける作業が行われ、最終組み立て設備では車体後段階、即ち完成した車体の内外に部品及びコンポーネントを組み付ける際の個々のフェーズにおける作業が行われる。ここではそのような車体前段階も車体後段階も車体の概念に包含される。したがってボディシェルに関して、既に最初の板金部品から、中間段階のすべての車体構造、及び最終的な車体まで車体として理解できる。
【0005】
その結果として車体を製造する設備では、車体が特定の順序で通過しなければならない多様な作業ステップが行われ、そこで車体に様々な種類の作業が実施される。そのような作業には、車体への能動的な作用又は車体の変更若しくは追加が行われる措置、例えば個々の部品のボディシェルへの組み立て若しくは最終組み立て、材料の塗布又は車体の乾燥における措置も、車体への能動的な措置が行われない措置、例えば検査や車体の水分蒸発なども含まれる。表面処理設備では、そのような作業の枠内で車体は種々の設備区域において様々な方法で処理される。
【0006】
すべての作業ステップに対して作業設備があり、それらを使って又はそれらにおいて相応の作業が行われる。表面処理設備ではそのような作業設備は処理設備として適切に設計されている。
【0007】
例えばボディシェル設備では、板金部品は様々な方法で互いに接続される。
【0008】
防錆設備における防錆のための電気泳動浸漬処理では、1つの作業ステップしか実施できない。防錆のための処理全体は、防錆のために電気泳動浸漬処理が実施される場合でも原則として複数の作業ステップを含む。別のそのような作業ステップは、例えば同様に浸漬プロセスによって実施できる前処理である。浸漬ではない若しくは浸漬単独ではない技術を含め、防錆を施すために選択される技術に応じて、複数の作業ステップが必要となる場合もある。
【0009】
表面処理設備の様々な作業ステップは、本質的に塗布ステップ、温度調整ステップ及び機能ステップに細分化でき、表面処理設備における個々の作業ステップに対して1以上の処理設備が必要となり設けることができる。
【0010】
塗布ステップでは、車体にコーティング又は材料が付与される。例えばこれにはフィラー、ベースコート又はトップコートの塗布、或いはアンダーボディ保護のための材料又はシームシーリング及び絶縁材料のための材料の塗布が含まれる。
【0011】
温度調整ステップでは車体が温度調整される。車体の「温度調整」とは、車体を最初にまだ達していない特定の温度にもたらすことを意味する。それは温度の上昇のこともあれば温度の低下のこともある。車体の水分蒸発も、ここでは「温度調整」の枠内における処理に数えられる。
【0012】
機能ステップでは、全プロセス及び全手順を支援する措置が行われる。例えばこれには検査の実施、必要な品質基準を満たさない車体の表面部分の再加工が含まれる場合がある。別の機能ステップは、例えば車体を格納設備に一時的に格納及び/又は保管する措置である。
【0013】
最終組み立て設備では、車体の表面処理後に車両を組み立てるために必要な相応に多様な作業ステップが実施される。
【0014】
市場から知られている車両を製造するための製造設備において、特にそのような設備に属する表面処理設備に関連するシステムでは、車体は種々の作業段階で有軌道式搬送システムによって搬送され、それらのシステムにおいて車体は数珠つなぎに列をなしてほぼ不変の順序で設備を通して搬送される。そのような有軌道式搬送システムにおいて事前に決定された順序と処理手順を変更することは、およそ入替え装置がある場合のみ可能である。この場合、相応の対応する支線を確保しなければならず、それにより構造の複雑さ及びそれに伴うコストは非常に高くなる。種々の作業設備又は処理設備で使用できるこのような様々な搬送システムとして、例えばチェーンコンベア、シャトルとターンテーブルを備えた又は備えていないローラーコンベア、並びにオーバーヘッドコンベアが知られている。車体は、それ自体知られているように、いわゆるスキッドに一時的に固定されてよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、この考えを考慮した、冒頭に記載した種類の方法、表面処理設備及び製造設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この課題は、冒頭に記載した種類の方法において、車体は少なくとも防錆処理から最終組み立てまで、少なくとも一部の領域で複数の無軌道式搬送台車を有する無人搬送システムによって搬送され、無軌道式搬送台車は走行床上を走行し、それぞれ固有の駆動システムを搭載して互いに独立に駆動及び移動されることによって解決される。
【0017】
本発明によれば、少なくとも表面処理設備において、処理設備と無人搬送システムとの調整を達成することが可能であり、それにより車体は極めてフレキシブルに互いに独立に搬送できるため、個々の車両の生産手順又は個別の製造プロセスの短期的な変更も可能である。
【0018】
表面処理設備で実施されるすべての作業ステップで、車体が無人搬送システムによって搬送されると、特に効果的である。
【0019】
車体は、ボディシェル設備及び/又は防錆設備及び/又は組み立て設備において、表面処理設備と同じ無人搬送システムによって搬送されると、設備全体にとって非常に有利である。
【0020】
したがって公知のシステムとは異なり、理想的にはすべての作業技術及び処理技術に対して、個々の作業設備又は処理設備の無人搬送システムへの同調が実現されている。例えばボディシェル設備と表面処理設備で同一の搬送システムを利用できるが防錆設備では利用できない場合でも、搬送システムをボディシェルと表面処理の別々に設計する必要がないという顕著な利点が得られる。
【0021】
接続装置によって互いに連結されている、搬送台車シャシと、少なくとも1つの車体の固定装置とを有する搬送台車を使用すると、特に好都合である。
【0022】
このような搬送システムは、少なくとも1つの作業ステップを実施するために、車体が少なくとも1つの処理設備を通して搬送され、処理設備は、処理トンネルが収容されているハウジングを備えて、処理トンネルとは分離された搬送台車シャシ用の走行スペースを含んでおり、処理トンネルと走行スペースは、搬送台車シャシが走行スペース内で動くように接続貫通孔によって互いに接続されており、固定装置が処理トンネル内に連行され、接続装置が接続貫通孔を貫通して延びていると、特によく使用できる。そうすることによって、処理領域の搬送領域からの分離が引き起こされる。処理の種類によっては、このような分離は必要ない。場合により相応の床部による分離のみを行うことができ、この床部の上方の領域は固有の側壁又は天井部によって限定されている必要はない。
【0023】
接続貫通孔を備えたトンネル底部を有し、処理トンネルの下方に走行スペースが配置されている、少なくとも1つの処理設備を使用することが好ましい。
【0024】
代替的又は追加的に、有利には処理トンネル内に走行スペースハウジングが収容されている少なくとも1つの処理設備を使用し、走行スペースハウジングは処理トンネルの内部で走行スペースを少なくとも一部の領域で限定し、処理トンネルは接続貫通孔を有する。
【0025】
更に代替的又は追加的に、走行スペースハウジングが断熱手段を提供する、少なくとも1つの処理設備を使用することができる。これは処理設備が乾燥機である場合に特に有利である。
【0026】
全方向駆動システムを有する搬送台車を使用し、全方向駆動システムによって搬送台車は停止状態から任意の方向に走行できると、特に有利である。
【0027】
このような全方向駆動装置を使用すると、搬送台車をその場で回転又は転向させることができる。更にコーナリングすることなく車両を横方向にずらすことが可能である。そうすることによって車両は省スペースでラインから外れて、特定の作業設備や処理設備に向かって走行したり、後続の搬送台車に追い越させたりすることができる。逆に、搬送台車は、第2の搬送台車が作業設備又は処理設備内にある間に、第1の搬送台車が第2の搬送台車を追い越すように制御することもできる。
【0028】
上記の課題は、冒頭に記載した種類の表面処理設備において、複数の無軌道式搬送台車を有する無人搬送システムが設けられており、搬送台車にはそれぞれ1つの車体を固定でき、搬送台車は走行床上を走行し、更に搬送台車(28)はそれぞれ固有の駆動システムを搭載して互いに独立に駆動可能及び移動可能であることによって解決される。
【0029】
これにより達成される利点は、この方法について上で説明された利点に対応している。
【0030】
好ましくは、各搬送台車は、搬送台車シャシと、少なくとも1つの車体の固定装置とを有し、搬送台車シャシと固定装置は互いに連結されている。
【0031】
したがって、少なくとも1つの作業ステップを実施するために、搬送システムによって車体を少なくとも1つの処理設備に通して搬送可能であり、処理設備は処理トンネルを収容しているハウジングを備え、処理トンネルとは分離された搬送台車シャシ用の走行スペースを含んでおり、処理トンネルと走行スペースは、搬送台車シャシが走行スペース内で動くように接続貫通孔によって互いに接続されており、固定装置は処理トンネル内に連行され、接続装置は接続貫通孔を貫通して延びていると好都合である。
【0032】
実施される作業ステップに応じて、少なくとも1つの処理設備が接続貫通孔を備えたトンネル底部を有し、走行スペースが処理トンネルの下方に配置されていることが好都合であり得る。
【0033】
代替的又は追加的に、少なくとも1つの処理設備において処理トンネル内に走行スペースハウジングが収容されており、走行スペースハウジングは処理トンネルの内部で走行スペースを少なくとも一部の領域で限定し、処理トンネルは接続貫通孔を有することが有利であり得る。
【0034】
同様に代替的又は追加的に、少なくとも1つの処理設備において走行スペースハウジングが断熱手段を提供できる。
【0035】
上で説明したように、搬送台車は、搬送台車が停止状態から任意の方向に走行できるようにする全方向駆動システムを有すると好都合である。
【0036】
上記の課題は、冒頭に記載した種類の製造設備において、表面処理設備は上記の特徴の幾つか又はすべてを備えた表面処理設備であると好都合である。これらの利点は、プロセス及び表面処理設備に関連して説明した利点に対応している。
【0037】
防錆設備において、車体のために表面処理設備と同じ無人搬送システムが存在すると同様に好都合であり得る。
【0038】
更に、塗装前のボディシェル設備、及び/又は防錆設備、及び/又は最終組み立て設備において、車体のために表面処理設備と同じ無人搬送システムが存在すると有利である。
【0039】
以下に本発明の実施形態を、図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】自動車の生産における一連の作業ステップを略示しており、特に車体が異なる機能の複数の作業ステップで様々な方法で処理される、車体のための表面処理設備が示されている。
【
図2】搬送台車シャシが接続装置を介して製作物の固定装置と接続されている、車体のための無人搬送システムの無軌道式搬送台車の斜視図である。
【
図3】環境センサシステムを備えた車体のための無人搬送システムの変化した搬送台車の斜視図である。
【
図4】
図2及び
図3による搬送システムと協働する作業ステップのための処理設備の断面図であり、処理トンネルが示されており、そのトンネル底部は接続装置と相補的な、搬送台車シャシのための走行スペースに続く接続貫通孔を備えており、固定装置は処理トンネル内に配置され、搬送台車シャシは走行スペース内に配置されている。
【
図5】処理トンネルに組み込まれた搬送台車シャシのための走行スペースを有する、変化した処理設備の断面図である。
【
図6】処理トンネルに組み込まれた搬送台車シャシのための走行スペースが存在する、
図2及び
図3による搬送システムと協働する塗布ステップのための塗装キャビンの断面図である。
【
図7】例示的な
図2及び
図3による搬送システムに基づいて可能である、自動車の製造設備のレイアウトを略示している。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、目的物を製造するための製造設備8を略示しており、ここでは車体10を製造するための設備8が示されている。設備8自体は個々の設備12、14、16及び18を含む。車体10はボディシェル設備12の後で防錆設備14に入り、続いて表面処理設備16を通過する。次に、車体10は最終組み立て設備18に来て、運転準備の整った車両が組み立てられる。車体10は、見やすくするために参照番号を1つだけ付けている。
【0042】
設備12、14、16及び18では、連続する様々な作業ステップを実施でき、それらのうちボディシェル設備12、防錆設備14及び組み立て設備18の様々な作業ステップは、それぞれの設備の参照番号にインデックス「.i」を加えて、即ち12.i、14.i若しくは18.iが示されている。表面処理設備16の様々な作業ステップのみが固有の参照番号20.iを持つ。インデックス「.i」は、それぞれi=1~nの作業ステップを実施しなければならないことを表わす。この場合、nはそれぞれ作業ステップ12.i、14.i、18.i及び20.iの総数を表し、これらの作業ステップで車体10が様々な方法で処理されることを示す。したがって1つの作業ステップだけを実施する必要がある場合、nは1に等しい。2つの作業セクションが連続する場合、これらはインデックス「i」と「i+1」を付ける。
【0043】
ボディシェル設備では、プレス工場で製造された板金部品が車体10につなぎ合わされる。これは異なるボディシェルステップ12.iで、様々な公知の技術によって行われる。例えばスポット溶接、ウェブ溶接、圧接、リベット留め、及び接着が挙げられる。したがってここでは車体10に対して作業が行われる。
【0044】
防錆設備14において車体10は防錆処理を受ける。防錆設備14では個々の防錆ステップ14.iが実施され、防錆設備14は電気泳動浸漬塗装のためのそれ自体公知のシステムとして構成できる。これは本実施形態に該当し、
図1にKTL(陰極浸漬塗装)槽14Aによって略示されている。しかしまた他の防錆処理、例えば吹付け又は噴霧などにより防錆を施すこともできる。防錆設備14には、通常前処理のための少なくとも1つの処理設備も含まれる。
【0045】
組み立て設備18において、車体10は作業ステップ18.iで運転準備の整った車両に必要なコンポーネントと部品を装備される。
【0046】
表面処理設備16では、複数の異なる作業ステップ20.iが実施され、車体10は様々な方法で処理され、場合によっては作業ステップ20.i自体が複数の作業プロセスを含む。
図1では種々の作業ステップ20.iが、破線で囲まれている。
【0047】
したがって連続する異なる作業ステップ20.iは、それぞれ参照番号20と連続するインデックス「.i」、即ち20.1、20.2、20.3などによって表示される。作業ステップ20.iに必要な処理設備は、ステップ20.iの参照番号に加えてインデックス「-j」を付けている。ステップ20.iに必要な処理設備が1つだけの場合は、この処理設備は参照番号20.i-1を付け、1つの作業ステップ20.iに対して複数の処理設備がある場合は、対応する処理装置20.i-1、20.i-2などがある。
【0048】
残りの設備12、14及び18では、関連する作業手順12.i、14.i及び18.iに対して作業設備又は処理設備が存在するが、ここでは別個に図示されず参照番号は付されていない。
【0049】
車体10は表面処理設備16において、それぞれ2つの連続する作業ステップ20.iと20.i+1で異なる方法で処理される。このことは、一連の作業ステップ20.iには、車体10が同じ方法で処理されるかなり多くのステップ20.iが存在することを意味する。連続する2つの作業ステップ20.iと20.i+1の間の違いは、ここでは処理の種類が変わることによって定義される。したがって上で説明した区分の意味で、塗布ステップ、温度調整ステップ及び機能ステップの間で移行すると処理の種類が変化する。
【0050】
この例示的な実施形態では、表面処理設備16において関連する処理装置20.i-jで、例示的に以下の作業ステップ20.iが実施される。
20.1 第1の温度調整ステップ
20.1-1 KTLドライヤー
20.1-2 KTL冷却装置
20.1-3 KTL水分蒸発装置
20.2 第1の機能ステップ
20.2-1 検査/研磨設備
20.2-2 格納設備
20.3 第1の塗布ステップ
20.3-1 アンダーボディ保護(PVC)塗布装置
20.3.2 シームシーリング(NAD)塗布装置
20.4 第2の温度調整ステップ
20.4-1 PVC乾燥機
20.5 第2の塗布ステップ
20.5-1 フィラー塗布装置
20.6 第3の温度調整ステップ
20.6-1 フィラー乾燥機
20.7 第2の機能ステップ
20.7-1 検査/研磨設備
20.8 第3の塗布ステップ
20.8-1 ベースコート(BC)塗装装置
20.9 第4の温度調整ステップ
20.9-1 BC乾燥機
20.10 第4の塗布ステップ
20.10-1 トップコート(CC)塗装装置
20.11 第5の温度調整ステップ
20.11-1 CC乾燥機
20.12 第3の機能ステップ
20.12-1 格納庫
【0051】
車体10は、1つの作業ステップ20.iから次の作業ステップ20.i+1へ、及び個々の作業ステップ20.i、即ち20.1、20.2、20.nを実行する際に、同一の搬送システム22で搬送され、ここでnは実行される作業ステップの数を表す。本実施形態では、n=12である。このために、搬送システム22と処理装置20.i-jは互いに同調されており、これは以下で明らかになる。
【0052】
防錆設備14のKTL槽14Aと第1の温度調整ステップ20.1との間には引渡し装置24があり、それによって処理される車体10を防錆設備14の搬送システムから表面処理設備16の搬送システム22に引き渡すことができる。同様に、表面処理設備16における第3の機能ステップ20.12、即ち最後の作業ステップと、最終組み立て設備18との間には引渡し装置26があり、これにより処理済み車体10を表面処理設備16の搬送システム22から最終組み立て設備18の搬送システムに引き渡すことができる。
【0053】
防錆設備14及び/又は最終組み立て設備18における搬送システムが表面処理設備16と同一の搬送システム22である場合、引渡し装置24及び/又は引渡し装置26は存在しない。KTL槽14Aが存在する場合に該当するように、ボディシェル設備12で防錆設備14と同じ搬送システムが利用されない場合は、これら両設備の間にはここでは特に示されていない引渡し装置が存在する。
【0054】
搬送システム22は、車体10を載せて搬送する複数の無軌道式搬送台車28を備えた無人搬送システムであり、
図1及び
図7ではそれらのうち1台の搬送台車28のみが参照番号を付けている。搬送台車28は走行床30上を走行できる。無人搬送システムの取り扱いと制御は基本的に従来技術により公知であり、この意味で設備8は、個別の図示されない上位の中央制御装置、搬送台車28の位置特定及び姿勢検出のための装置、データ伝送装置、及び搬送台車28の移動を可能にする適切なインフラストラクチャを含む。
【0055】
車体10は、防錆設備14における電気泳動浸漬処理、及び関連する乾燥プロセス、即ち第1の温度調整ステップ20.1で、車体10を無人搬送システム22とは異なる同一の搬送システム、例えばオーバーヘッドレールシステムで搬送することも可能である。したがってこの場合、第1の温度調整ステップ20.1と第1の機能ステップ20.2との間に引渡しステーション(ここでは特に図示せず)がある。
【0056】
図2及び
図3はそれぞれ異なる安全コンセプトに従う個々の搬送台車28を示している。各搬送台車28は、車体10を固定できる固定装置32を備えている。この目的のために固定装置32は、それ自体公知の方法で車体10に設けた相手部材と協働する軸受ピンを備えた支持プロファイル34を有し、車体10を固定装置32に固定できるようになっている。固定装置32はまた異なる寸法と構成を有する様々な車体10に合わせて、そのような軸受ピンの複数のセットを有することができるので、固定装置32は種々のタイプの車体に対してフレキシブルに利用できる。
【0057】
したがって固定装置32は、例えばそれ自体公知のスキッドなどの車体運搬具に車体10を固定することなく、車体10を直接受容する。しかしながら特に示されていない変化例では、固定装置は、そのようなスキッドを受容して、そのスキッドに車体10を載せるように設計することもできる。
【0058】
搬送台車28は、走行床30上を進み、固定装置32を支持する搬送台車シャシ36を有する。搬送台車シャシ36は、2つの上方に突出する支持ブレース38aの形態の接続装置38を介して固定装置32と連結されている。
図2及び
図3では支持ブレース38aのみを見ることができる。
【0059】
図5及び
図6に示されているように、搬送台車シャシ36に視覚的に目立つ警告塗装又は警告接着テープを施すことができる。
【0060】
各搬送台車28は、それぞれ固有の駆動システム40を搭載しているので搬送台車28は互いに独立に駆動及び移動できる。
【0061】
駆動システム40は全方向性であるため、搬送台車28は停止状態から任意の方向に走行することができる。この目的のために全方向駆動システム40は、それ自体公知のオムニドライブモジュール42を備えている。代替的に、例えばそれ自体従来技術から公知の全方向ホイール又はメカナムホイールも存在できる。
【0062】
オムニドライブモジュール42は、駆動輪46が搬送台車28の前進のために駆動できるだけでなく、その都度垂直回転軸48を中心に回動できるように、下方に突出する駆動輪46と連結された駆動ユニット44を含む。
【0063】
すべてのオムニドライブモジュール42の駆動輪46が、その垂直軸48に対して
図2及び3に示す回転位置にある場合は、駆動輪46を回転させると搬送台車28は
図2に矢印50で略示されているように長手方向に沿って移動する。駆動輪46をすべてその垂直軸48に対してすべて90°回転させると、搬送台車28は停止状態から、即ち事前のコーナリングなしで、
図2に矢印52で略示されているように長手方向50に対して垂直に走行できる。オムニドライブモジュール42を相応に制御することにより、その場での回転又は斜め走行も実現できる。そうすることによって搬送台車28は省スペースでラインから外れて、特定の作業ステップ20.iに移動したり、狭い空間内で操縦したりできる。例えば特定の加工装置が一方の側のみに設けられている場合、搬送台車28は処理設備内で180°回転することができる。
【0064】
図2に示されている搬送台車28は、進行方向前方と後方に衝撃吸収体56として設計された機械的保護装置54を含む。第1の搬送台車28が第2の搬送台車28又はその他の障害物に到達した場合、衝撃は衝撃吸収体56によって緩衝され、搬送台車28とこれに支持されている車体10の双方の損傷を防ぐ。
【0065】
図3に示される搬送台車28は、搬送台車シャシ36の進行方向前方と後方に取り付けたセンサ60を含む環境センサシステム58を有する。この環境センサシステム58によって搬送台車28の移動経路にある障害物が、他の搬送台車28であれ搬送台車28の移動範囲に出現する他の対象物であれ検出されて、上記の中央制御装置に送信され、中央制御装置は搬送台車28の目標までの代替ルートを計算して相応の制御命令を搬送台車28に転送する。
【0066】
搬送台車28はそのエネルギー供給のために、自家発電装置62を搭載している。これは走行運転時、即ち搬送台車28の移動中に、外部エネルギー源とは独立にオムニドライブモジュール42及びその他の電気消費機器の電力供給を保証するエネルギー供給装置と理解されるべきである。
【0067】
本実施形態では、発電装置62は、電池又はコンデンサの形態で提供できる再充電可能な電気エネルギーの再充電可能なエネルギー貯蔵装置64を備えて設計される。代替的に、圧縮ガス駆動装置のエネルギー源として圧縮ガス貯蔵装置が存在してもよい。
【0068】
処理設備66について、
図4は設備12、14、16、18で個々の作業ステップに対して使用される作業設備又は処理設備の基本コンセプトを示している。処理設備66は、特に表面処理設備16における温度調整ステップ20.1、20.4、20.6、20.9、20.11の1つ、又は塗布ステップ20.3、20.5、20.8、20.10の1つに対して設けることができる理装置20.i-jを示す。したがって処理設備66は、本実施形態で存在する処理装置20.i-j、及び特に図示されていない他の設備12、14及び18の作業設備及び処理設備の例示である。
【0069】
以下に説明する処理設備78のそれぞれの構成要素は、構成要素の基本的な機能のみを反映している。例えば乾燥機のハウジングは、例えば塗装キャビンのハウジングとは異なる公知の方法で設計されている。
【0070】
処理設備66は、処理トンネル70を限定し、側壁72、天井部74及びトンネル底部76を含むハウジング68を含む。トンネル底部76は、処理トンネル70の下方に配置されている搬送台車シャシ36の走行スペース80に通じる、搬送台車28の接続装置38と相補的な接続貫通孔78を有する。
【0071】
図1では、機能的に処理設備と同様に構成された処理装置20.i-jにおいて、処理トンネル70と走行スペース80の分離が形成されており、それぞれ破線で示されている。見やすくするためにKTL乾燥機20.1-1においてのみ処理設備66、処理トンネル70及び走行スペース80が参照番号を付けている。検査/研磨装置20.2-1及び20.7-1では、例えば走行スペースと処理トンネルの分離は示されていない。搬送システム22のコンポーネントと部品が処理中に影響を受けるリスクがない場合は、分離を省くことができる。
【0072】
走行スペース80は、処理設備78の周囲に対して開いていてよい。いずれにせよ走行スペース80のために別個のハウジングが存在する必要はない。
図4は、走行スペース80の横にハウジング68を支持する支柱84のみを示している。特に図示されていない変化例で、処理トンネル70の下方に延びている走行スペース80は固有のハウジングによって限定されている。代替的にハウジング68の側壁72もトンネル底部76を超えて下方に延びて、走行スペース80を横方向に限定してもよい。
【0073】
車両10を載せた搬送台車28が処理設備66に進入すると、搬送台車28の接続装置38がトンネル底部76の接続貫通孔78内にいわば糸のように通される。次に車体10が処理トンネル70を通して搬送されると、搬送台車シャシ36は走行スペース80内を移動し、処理トンネル70内の固定装置32を連行し、その際に処理接続手段38、即ち本実施形態では支持ブレース38a及び38bはトンネル底部76内の接続貫通孔78を通って延びる。
【0074】
図4に見られるように、本実施形態において接続貫通孔は支持ブレース38a、378に合わせて垂直の貫通スロット82として設計されている。この場合、トンネル内雰囲気は相応の流動状況において特に対策を講じることなく処理トンネル70から接続貫通孔78を通って走行スペース80にほぼ自由に流入できる。
【0075】
乾燥機では、トンネル雰囲気が溶剤で汚染されている。塗装装置において、特にトンネル雰囲気が塗料オーバースプレーを運び、それが搬送台車シャシ36上に堆積する可能性がある。
【0076】
処理トンネル70からのトンネル雰囲気のこのような流出を防ぐために、少なくとも搬送台車38と接続貫通孔90を通るトンネル雰囲気との接触が少なくとも低減される遮蔽手段84が補完的に設けられる。同様に走行スペース92から処理トンネル82への雰囲気の逆流を低減して、処理トンネル82内の安定した雰囲気を維持することができる。変化例において走行スペース80にわずかな過剰圧力を作用させることもできる。
【0077】
搬送台車28の走行床30は、
図4による処理設備66において処理トンネル70の下方又はトンネル底部76の下方の高さレベルに配置されている。
【0078】
図5は、搬送台車28の走行床30が処理トンネル70若しくはそのトンネル底部76と同じ高さレベルに配置されている変化した処理設備66´を示す。この目的のために、処理トンネル70内に走行スペースハウジング86が収容されて、処理トンネル70の内部で走行スペース80は限定している。この場合はそれに応じてトンネル底部76はなく走行スペースハウジング86が、ここでは垂直貫通スロット82の形態の接続貫通孔78を備えている。特に処理設備66´が乾燥機である場合、走行スペースハウジング86は、走行スペース80を処理トンネル70に対して断熱する断熱手段88を提供するように整えられている。
【0079】
図6は、更に変化した処理設備66”を塗装キャビン90の例で示しており、その中で塗布ステップ20.3、20.5、20.6、20.8及び/又は20.10を実施することができる。塗装キャビン90の処理トンネル70内にはそれ自体公知の塗装ロボット92が配置されている。処理トンネル70の天井部74は、通常のようにフィルタカバー96を備えた空気供給スペース94の下側境界として形成されている。空気供給スペース94からキャビン空気が処理トンネル70内に入って、下方に向かう流動経路でオーバースプレーを受容した後、透過性トンネル底部74を通って処理トンネル70の下方の領域98に流入する。領域98には分離装置100があり、その助けにより連行されたオーバースプレーがキャビン空気から取り除かれる。次いでこの浄化されたキャビン空気は、場合により所定の調整を施した後、循環により再び空気供給スペース94に案内される。そのような分離装置はそれ自体公知であり、したがって詳しく説明する必要はない。
【0080】
塗装キャビン90においても走行スペース80は、処理トンネル70内に配置された走行スペースハウジング86によって限定されている。しかしながら塗装キャビン90の場合は、走行スペースハウジング86は断熱手段として設計される必要はなく、単に保護カバー102を提供すればよい。
【0081】
上述のように、処理装置20.i-jは、処理設備66、66´又は66”と同じコンセプトで設計されているため、搬送台車28の接続装置38はトンネル底部76若しくは走行スペースハウジング86及びそこにそれぞれ存在する及び遮蔽手段84と協働できる。それらとは別に、それぞれの処理装置20.i-jにはそれぞれの処理に必要な装置が存在している。これらは例えば塗布ステップのための塗布装置における塗装ロボット及び/又はハンドリングロボットであり、又は検査/研磨設備に付属の照明装置であり、同様に処理装置20.i-jの運転に必要な技術、例えば塗装キャビンにおける空気収支のための技術の形態である。
【0082】
無軌道式搬送台車28を備えた無人搬送システム22により、搬送台車28に固定された車体10は個別に移動でき、その搬送経路は他の車体10の搬送経路に依存しない。
【0083】
軌道式搬送台車を備えた市場で知られている設備では、搬送経路に沿った各作業ステップ20.i-jに対して、この作業ステップ20.iのためだけに1以上の別個の処理装置20.i-jが存在する。そのためそのような設備では、
図1に示された作業ステップ20.iのそれぞれに対して、対応する表面処理設備の空間的作業ゾーンが1以上の付属の処理装置20.i-jと共に定義されており、搬送台車28及びその上に固定された車体10はこれらのゾーンを所定の順序で通過しなければならない。
【0084】
これに対して無人搬送システム22は、処理手順において異なる時点で実施されなければならない同様の処理ステップ20.iのために、それぞれ同一の処理設備を使用することを可能にする。特にこれは温度調整ステップ20.1、20.4、20.6、20.9、20.11及び機能ステップ20.2、20.7、20.12に対して可能である。これは塗布ステップ20.3、20.5、20.8、20.10に対しても可能である。
【0085】
このコンセプトは、
図7による設備レイアウトに示されている。そこでは表面処理設備16は唯一の温度調整設備104を備え、温度調整ステップ20.1、20.4、20.6、20.9、20.11が実施される。この目的のために温度調整設備104は、相応の温度領域と水分蒸発領域を含んでいる。
【0086】
表面処理設備16は、作業20.2、20.7及び20.12のための唯一の検査/研磨設備106及び唯一の格納設備108を含んでいる。
【0087】
KTL槽14Aの後で車体10は引渡し装置24によって搬送システム22の搬送台車28に引き渡され、搬送台車28によって温度調整設備104を通して案内される。この場合、温度調整設備104はKTL乾燥機20.1-1、KTL冷却装置20.1-2、及び第1の温度調整ステップ20.1のためのKTL水分蒸発装置20.1-2として機能する。
【0088】
その後、搬送台車22は車体10を検査/研磨設備106に搬送し、オーディ/研磨設備106は第1の機能ステップ20.2のための検査/研磨装置20.2-1を提供する。このステップで車体10の中間格納が行われる場合は、格納設備108が機能ステップ20.2のための格納装置20.2-2として機能する。
【0089】
ここで、第1の塗布ステップ20.3は、アンダーボディ保護(PVC)塗布装置20.3-1及びシームシーリング(NAD)塗布装置20.3.2で行われる。
【0090】
第2の温度調整ステップ20.4を実施するために、車体10は再び温度調整設備104内に移送され、温度調整設備104はこのときはPVC乾燥機20.4-1として機能する。
【0091】
続いて第2の塗布ステップ20.5で、フィラー塗布装置20.5-1においてフィラー(下塗り塗料)の塗布が行われる。
【0092】
ここで、車体10は再び第3の温度調整20.6のために温度調整設備104に搬送され、温度調整設備104はこのときは充填乾燥機20.6-1として機能する。
【0093】
次に、第2の機能ステップ20.7のために、車体10は検査/研磨設備106に2回目に移送され、検査/研磨設備106はこのときは検査/研磨装置20.7-1として作動する。
【0094】
第3の塗布ステップ20.8のために、車体10は搬送台車28に載ってベースコート(BC)塗装装置20.8-1に運ばれ、続いて第4の温度調整ステップ20.9のために温度調整設備104に4回目に移送され、温度調整設備104はこの場合はしたがってBC乾燥機20.9-1として作用する。
【0095】
第4の塗布ステップ20.10は、いまやトップコート(CC)塗装装置20.10-1で実施され、その後で車体10は第5の温度調整200.11のために5回目に温度調整設備104を通して案内される。したがって温度調整設備104はCC乾燥機20.11-1の機能を満たす。
【0096】
車体10は、引渡し装置26によって組み立て設備18に引き渡される前に、第3の機能ステップ20.12で一時的に格納設備108に格納することができ、格納設備108はこの場合は格納庫20.12-1の機能を引き受ける。
【0097】
変化例では塗布ステップ20.3(PVC/NAD)、20.5(フィラー)、20.8(BC)及び20.10(CC)は、単一の適切に柔軟に動作可能な多機能塗布設備110で実施され、多機能塗布設備110はこのときは塗布・塗装装置20.3-1、20.3-2、20.5-1、20.8-1、20.10-1の機能を満たし、車体10が相応の回数通過する。
【0098】
多機能塗布設備110は
図7では、処理装置20.3-1、20.3-2、20.5-1、20.8-1、及び20.10-1を包囲する破線の長方形として示されている。
【0099】
変化例では、多機能塗布設備110は、個々の塗布・塗装装置20.3-1、20.3-2、20.5-1、20.8-1及び20.10-1を共通のハウジング内に収容することができ、その場合これらは連続キャビンではなくバッチキャビンとして設計することもできる。その場合、個々の塗布・塗装装置20.3-1、20.3-2、20.5-1、20.8-1及び20.10-1は搬送経路に沿って配置することができ、搬送経路は塗布・塗装装置20.3-1、20.3-2、20.5-1、20.8-1及び20.10-1に沿って延びており、そこから搬送台車22が必要な塗布・塗装装置20.3-1、20.3-2、20.5-1、20.8-1、又は20.10-1に進入する。
【0100】
車体10に特有の手順を調整するために、各車体10は、例えば実施されるべき製品特性や実施される作業ステップを記憶したデータ記憶装置を搭載している。これらのデータは、車体10が固定されている搬送台車28によって読み出され、そのために各搬送台車28によって相応のデータ転送/メモリユニットが携行される。
【0101】
搬送台車28は、特定の作業ステップ20.iのために、その都度接近する処理装置20.i-jと直接通信することができる。塗布装置20.iの場合、搬送台車28によって送信されたデータに基づいて、装置に適切なコーティング材料が供給される。更に塗装キャビン90では、例えば塗装ロボット92が、塗装ロボット92の移動シーケンス及び塗布工程の塗布パラメータを規定する塗布プログラムを受け取る。
【0102】
無人搬送システム22の使用により、とりわけ設備システムとその制御を、工業生産過程を現代の情報通信技術と結合することを目指す組み合わされるコンセプト「インダストリー4.0」との統合が可能になる。無人搬送システム22はプロセス手順における高い柔軟性を可能にし、特定の車体10に対する手順の変更や、種々異なる車体10の処理順序の変更も、搬送台車28の搬送経路の可変性に基づいて可能である。
【0103】
それぞれの処理装置20.i-jの配置は、ほぼ任意に行うことができる。この場合、処理装置20.i-jの設備内、特にそのインフラストラクチャにおける位置決めは、必要とされ設備内で供給される塗料、水、空気などの媒体、又は必要とされる設備部分、例えば空気収支や高電圧発生などのためのコンポーネントなどを基準にして調整することができる。