(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】接合用導電性ペースト
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20221026BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20221026BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20221026BHJP
B22F 7/04 20060101ALI20221026BHJP
B22F 7/08 20060101ALI20221026BHJP
B22F 9/00 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
H01L21/52 D
H01B1/22 A
B22F1/00 K
B22F1/00 L
B22F1/00 M
B22F1/00 N
B22F7/04 D
B22F7/08 C
B22F9/00 B
(21)【出願番号】P 2018037566
(22)【出願日】2018-03-02
【審査請求日】2021-02-24
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「戦略的省エネルギー技術革新プログラム/実用化開発/高熱伝導性高耐熱接合材の開発(インキュベーション研究開発+実用化開発)」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】519372065
【氏名又は名称】デュポン エレクトロニクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松浦 有美
(72)【発明者】
【氏名】吉池 由佳
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-179403(JP,A)
【文献】特開2003-154253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
H01B 1/22
B22F 1/00
B22F 7/04
B22F 7/08
B22F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電層を含む基板を準備する工程と、
前記導電層の上に導電性ペーストを塗布する工程であって、
前記導電性ペーストが、
100重量部の金属粉、
5~20重量部の溶媒、および、
0.01~5重量部の分散剤を含み、前記分散剤が
、ポリヒドロキシ脂肪酸
である、工程と、
塗布された前記導電性ペーストの上に電子部品を搭載する工程と、
前記導電性ペーストを加熱して、前記導電層と前記電子部品とを接合する工程とを含
み、
前記ポリヒドロキシ脂肪酸が、以下の構造式を持つ、電子デバイスの製造方法:
【化1】
(qは1~10、x+yは5~30)。
【請求項2】
導電層を含む基板を準備する工程と、
前記導電層の上に導電性ペーストを塗布する工程であって、
前記導電性ペーストが、
100重量部の金属粉、
5~20重量部の溶媒、および、
0.01~5重量部の分散剤を含み、前記分散剤が、ポリヒドロキシ脂肪酸である、工程と、
塗布された前記導電性ペーストの上に電子部品を搭載する工程と、
前記導電性ペーストを加熱して、前記導電層と前記電子部品とを接合する工程とを含み、
前記ポリヒドロキシ脂肪酸が、ポリヒドロキシステアリン酸を含む、電子デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記金属粉の粒径(D50)が、0.01~3μmである、請求項1
または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記金属粉が、銀、銅、金、ニッケル、パラジウム、プラチナ、ロジウム、アルミニウム、これらの合金、およびこれらの組合せからなる群から選択された1つを含む、請求項1
~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記導電性ペーストが、さらに0.01~1.0重量部のセルロース、樹脂またはその混合物を含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記導電層が、金属層である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記電子部品が、半導体チップ、ICチップ、チップ抵抗、チップコンデンサ、チップインダクタ、センサーチップ、およびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項1~
6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記電子部品が、銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、プラチナ、これらの合金、およびこれらの組合せからなる群より選択されるメタライゼーション層を含む、請求項1~
7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記加熱の温度が、140~400℃である、請求項1~
8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
100重量部の金属粉、5~20重量部の溶媒、および、0.01~5重量部の分散剤を含み、前記分散剤が
、ポリヒドロキシ脂肪酸
であり、
前記ポリヒドロキシ脂肪酸が、以下の構造式を持つ、接合用導電性ペースト:
【化2】
(qは1~10、x+yは5~30)。
【請求項11】
100重量部の金属粉、5~20重量部の溶媒、および、0.01~5重量部の分散剤を含み、前記分散剤が、ポリヒドロキシ脂肪酸であり、
前記ポリヒドロキシ脂肪酸が、ポリヒドロキシステアリン酸を含む、接合用導電性ペースト。
【請求項12】
前記金属粉の粒径(D50)が、0.01~3μmである、請求項1
0または11に記載の接合用導電性ペースト。
【請求項13】
前記金属粉が、銀、銅、金、ニッケル、パラジウム、プラチナ、ロジウム、アルミニウム、これらの合金、およびこれらの組合せからなる群から選択された1つを含む、請求項
10~12のいずれか1項に記載の接合用導電性ペースト。
【請求項14】
前記接合用導電性ペーストが、さらに0.01~1.0重量部のセルロース、樹脂またはその混合物を含む、請求項
10~
13のいずれか1項に記載の接合用導電性ペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合用導電性ペーストおよびこれを用いた電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスは半導体チップのような電子部品を有し、その電子部品は基板の導電層に導電性ペーストで接合されている。電子部品は、導電層の上に塗布された導電性ペーストの上にマウントされた後、導電性ペーストを加熱することで、基板の導電層と物理的にも電気的にも接合する。製造工程において、接合前のマウントされた電子部品と導電性ペーストの層との接着が不十分だと、電子部品が剥離して、電子デバイスに欠陥を与える原因になる問題があった。
【0003】
特許文献1は、塗布直後や塗布から所定時間経過後に銅基板の表面に凝集物が生じるのを防止し、予備乾燥膜にクラックが生じて接合力が低下するのを防止することができる、接合材およびその接合材を用いて電子部品を接合する方法を開示している。銀微粒子と溶剤と(分散剤としての)2-ブトキシエトキシ酢酸(BEA)と(反応抑止剤としての)ベンゾトリアゾール(BTA)を含む銀ペーストからなる接合材を銅基板上に塗布し、その接合材上に電子部品を配置した後、この電子部品に圧力を加えながら加熱することにより、銀ペースト中の銀を焼結させて銀接合層を形成し、この銀接合層を介して電子部品を銅基板に接合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的の1つは、製造工程において、接合前のマウントされた電子部品を導電性ペーストの層に十分に接着させるための導電性ペースト、およびこれを用いた電子デバイスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題を解決するための手段の一例は、
導電層を含む基板を準備する工程と、
前記導電層の上に導電性ペーストを塗布する工程であって、
前記導電性ペーストが、
100重量部の金属粉、
5~20重量部の溶媒、および、
0.01~5重量部の分散剤を含み、前記分散剤が、アリルエーテルコポリマー、ポリヒドロキシ脂肪酸、およびこれらの混合物からなる群から選択される、工程と、
塗布された前記導電性ペーストの上に電子部品を搭載する工程と、
前記導電性ペーストを加熱して、前記導電層と前記電子部品とを接合する工程とを含む、電子デバイスの製造方法である。
【0007】
本発明の課題を解決するための手段の別の例は、100重量部の金属粉、5~20重量部の溶媒、および、0.01~5重量部の分散剤を含み、前記分散剤が、アリルエーテルコポリマー、ポリヒドロキシ脂肪酸、およびこれらの混合物からなる群から選択される、接合用導電性ペーストである。
【0008】
ここで、別の実施態様では、前記金属粉の粒径(D50)が、0.01~3μmである。また、別の実施態様では、前記金属粉が、銀、銅、金、ニッケル、パラジウム、プラチナ、ロジウム、アルミニウム、これらの合金、およびこれらの組合せからなる群から選択された1つを含む。
【0009】
また、別の実施態様では、前記アリルエーテルコポリマーが、ポリカルボン酸およびアリルエーテルの共重合体である。
【0010】
また、別の実施態様では、前記アリルエーテルコポリマーが、以下の構造式を持つ:
【0011】
【0012】
(pは5~60、zは4~80、Rは水素またはアルキル基である)、
または
【0013】
【0014】
(nは1~78、mは5~100、Rは水素またはアルキル基である)。
【0015】
また、別の実施態様では、前記ポリヒドロキシ脂肪酸が、以下の構造式を持つ:
【0016】
【0017】
(qは1~10、x+yは5~30)。
【0018】
ここで、別の実施態様では、前記ポリヒドロキシ脂肪酸が、ポリヒドロキシステアリン酸を含む。
【0019】
また、別の実施態様では、前記導電性ペーストが、さらに0.01~1.0重量部のセルロース、樹脂またはその混合物を含む。
【0020】
ここで、別の実施態様では、前記導電層が、金属層である。
【0021】
また、別の実施態様では、前記電子部品が、半導体チップ、ICチップ、チップ抵抗、チップコンデンサ、チップインダクタ、センサーチップ、およびこれらの組合せからなる群より選択される。また、別の実施態様では、前記電子部品が、銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、プラチナ、これらの合金、およびこれらの組合せからなる群より選択されるメタライゼーション層を含む。
【0022】
また、別の実施態様では、前記加熱の温度が、140~400℃である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、製造工程において、接合前のマウントされた電子部品を導電性ペーストの層に十分に接着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】電子デバイスの断面の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
電子デバイスは、少なくとも導電層を含む基板と、導電層の上の導電性ペーストと、電子部品とを含んでいる。基板の導電層と電子部品は、導電性ペーストによって接合される。以下、
図1を参照して、電子デバイス100の製造方法の一例を説明する。なお、ある実施態様における数値範囲の下限値および上限値は、それぞれ別の実施態様における数値範囲の上限値および下限値と組み合わせることができる。
【0026】
基板
まず、導電層103を含む基板101を準備する。基板101は、特に限定されることはない。一実施態様では、基板101は、シリコン基板、ガラス基板、セラミック基板である。別の実施態様では、基板101は、セラミック基板である。別の実施態様では、セラミック基板は、アルミナ基板、窒化アルミ基板、または窒化珪素基板である。
【0027】
導電層
導電層103は、良導体および半導体を含む概念である。ある実施態様において、導電層103は、電子回路、電極、または電子パットである。ある実施態様において、導電層103は、金属層である。別の実施態様において、金属層は、銀、銅、金、ニッケル、パラジウム、プラチナ、これらの合金を含む。別の実施態様において、導電層103は、銅層または銀層である。
【0028】
導電性ペースト
導電性ペースト105は、接合用の導電性ペーストである。導電性ペースト105は、良導体と良導体、良導体と半導体、または半導体と半導体を接合することができる。導電性ペースト105は、導電層103の上に塗布される。塗布された導電性ペースト105は、ある実施態様において50~500μmの厚さ、別の実施態様において80~300μmの厚さ、別の実施態様において100~200μmの厚さ、を有する。ある実施態様において、導電性ペースト105は、スクリーン印刷で塗布される。別の実施態様において、スクリーン印刷のためにメタルマスクが用いられる。
【0029】
以下、導電性ペースト105の組成について説明する。導電性ペースト105は、金属粉、溶媒、および分散剤を含む。
【0030】
金属粉
ある実施態様において、金属粉は、銀、銅、金、ニッケル、パラジウム、プラチナ、ロジウム、アルミニウム、これらの合金、および、これらの組合せからなる群から選択される。別の実施態様において、金属粉は、銀、銅、ニッケル、それらの合金、および、これらの組合せからなる群から選択される。別の実施態様において、金属粉は、銀、銅、それらの合金、および、それらの組合せである。別の実施態様において、金属粉は、銀である。
【0031】
ある実施態様において、金属粉の形状は、フレーク状、球形、不定形、あるいはそれらの混合粉である。別の実施態様において、球形である。
【0032】
ある実施態様において、金属粉の粒径(D50)は0.01μm以上、別の実施態様において0.02μm以上、別の実施態様において0.03μm以上、別の実施態様において0.04μm以上、別の実施態様において0.05μm以上、別の実施態様において0.07μm以上、別の実施態様において0.1μm以上、別の実施態様において0.15μm以上、別の実施態様において0.2μm以上である。ある実施態様において、金属粉の粒径(D50)は3μm以下、別の実施態様において2μm以下、別の実施態様において1.8μm以下、別の実施態様において1.5μm以下、別の実施態様において1μm以下、別の実施態様において0.8μm以下、別の実施態様において0.5μm以下、別の実施態様において0.4μm以下、別の実施態様において0.3μm以下である。ある実施態様において、金属粉は、このような粒径(D50)を2種類有する混合粉である。このような粒径であると、比較的低温で良好な接合強度が得られる。またこのような粒径であると分散剤が付着することで、金属粉粒子間の距離が適当に保たれるため、導電性ペーストに適当な粘度およびレオロジーを与えうるという効果がある。なお、本願における粒径(D50)は、マイクロトラックX-100型を用いてレーザー回折法、または、動的光散乱式粒径分布測定装置(LB550、株式会社堀場製作所)で測定する体積平均粒子径(D50)である。
【0033】
金属粉は、導電性ペースト105の総重量に対して、ある実施態様において60.0重量%以上、別の実施態様において72.0重量%以上、別の実施態様において80.0重量%以上、別の実施態様において85.0重量%以上である。金属粉は、導電性ペースト105の総重量に対して、ある実施態様において97.0重量%以下、別の実施態様において95.0重量%以下、別の実施態様において93.0重量%以下である。
【0034】
溶媒
金属粉は、溶媒に分散して導電性ペースト105を構成する。溶媒は、導電性ペースト105を基板101あるいは導電層103の上に塗布しやすいように粘度を調節するためにも使用し得る。溶媒の全てもしくは多くは、加熱工程もしくは任意の乾燥工程において、導電性ペースト105から蒸発する。
【0035】
溶媒の分子量は、ある実施態様において600以下、別の実施態様において520以下、別の実施態様において480以下、別の実施態様において440以下、別の実施態様において400以下、別の実施態様において350以下、別の実施態様において300以下、別の実施態様において250以下、別の実施態様において230以下、別の実施態様において200以下である。溶媒の分子量は、ある実施態様において10以上、別の実施態様において100以上、別の実施態様において120以上、別の実施態様において140以上、別の実施態様において150以上、別の実施態様において180以上である。
【0036】
溶媒の沸点は、ある実施態様において100~450℃、別の実施態様において120~420℃、別の実施態様において130~410℃、別の実施態様において140~400℃、別の実施態様において150~320℃、別の実施態様において200~290℃である。溶媒は、ある実施態様において有機溶媒である。
【0037】
溶媒は、ある実施態様において、2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオールモノイソブチラート(テキサノール(登録商標))、1-フェノキシ-2-プロパノール、ターピネオール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(カルビトールアセテート(カルビトール(登録商標))、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(ジブチルカルビトール)、ジブチルアセテートプロピレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート(ブチルカルビトールアセテート)、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル、ソルベントナフサ、および、これらの組合せからなる群から選択される。溶媒は、別の実施態様において、2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオールモノイソブチラート(テキサノール)、ターピネオール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート(ブチルカルビトールアセテート)、ソルベントナフサ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステルおよびこれらの組合せからなる群から選択される。溶媒は、別の実施態様において、2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオールモノイソブチラート(テキサノール)、ターピネオール、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステルおよびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0038】
導電性ペースト105の粘度は、チタン製コーンプレートC20/1°を用いたレオメータ(HAAKETM MARSTMIII、Thermo Fisher Scientific Inc.)で測定したとき、シアレート10s-1において、ある実施態様において5~300Pa・s、別の実施態様において9~200Pa・s、別の実施態様において12~100Pa・sである。
【0039】
溶媒は、金属粉を100重量部としたとき、5~20重量部である。ある実施態様において5.0重量部以上、別の実施態様において6.5重量部以上、別の実施態様において7.8重量部以上、別の実施態様において8.8重量部以上である。溶媒は、金属粉を100重量部としたとき、ある実施態様において20.0重量部以下、別の実施態様において18.0重量部以下、別の実施態様において15.0重量部以下である。溶媒は、導電性ペースト105の総重量に対して、ある実施態様において2.0重量%以上、別の実施態様において4.0重量%以上、別の実施態様において6.0重量%以上、別の実施態様において7.5重量%以上である。溶媒は、導電性ペースト105の総重量に対して、ある実施態様において25.0重量%以下、別の実施態様において20.0重量%以下、別の実施態様において15.0重量%以下である。
【0040】
分散剤
分散剤は、アリルエーテルコポリマー、ポリヒドロキシ脂肪酸、およびこれらの混合物からなる群から選択される。ここで、コポリマーとは2種以上のモノマーを用いて生成される共重合体である。
【0041】
ある実施態様において、アリルエーテルコポリマーは、ポリカルボン酸およびアリルエーテルの共重合体である。ある実施態様において、ポリカルボン酸は無水マレイン酸である。ある実施態様において、アリルエーテルはポリエチレングリコールモノアリルエーテルである。別の実施態様において、アリルエーテルコポリマーがポリカルボン酸およびアリルエーテルの共重合体であるとき、主鎖にポリカルボン酸を含み、側鎖にアリルエーテル由来物を含む。また、主鎖にポリカルボン酸以外を含んでいてもよい。
【0042】
ある実施態様において、アリルエーテルコポリマーが、以下の構造式を持つ:
【0043】
【0044】
(pは5~60、zは4~80、Rは水素またはアルキル基である)、
または
【0045】
【0046】
(nは1~78、mは5~100、Rは水素またはアルキル基である)。
【0047】
上式において、pは、ある実施態様において5以上、別の実施態様において6以上、別の実施態様において8以上、別の実施態様において9以上である。pは、ある実施態様において60以下、別の実施態様において56以下、別の実施態様において42以下、別の実施態様において35以下、別の実施態様において30以下、別の実施態様において25以下、別の実施態様において18以下、別の実施態様において15以下、別の実施態様において11である。zは、ある実施態様において4以上、別の実施態様において6以上、別の実施態様において8以上、別の実施態様において9以上である。zは、ある実施態様において80以下、別の実施態様において56以下、別の実施態様において42以下、別の実施態様において35以下、別の実施態様において30以下、別の実施態様において25以下、別の実施態様において22以下、別の実施態様において20である。
【0048】
上式において、nは、ある実施態様において1以上、別の実施態様において5以上、別の実施態様において6以上、別の実施態様において8以上である。nは、ある実施態様において78以下、別の実施態様において65以下、別の実施態様において55以下、別の実施態様において42以下、別の実施態様において35以下、別の実施態様において28以下、別の実施態様において20以下、別の実施態様において16以下、別の実施態様において12以下である。mは、ある実施態様において5以上、別の実施態様において6以上、別の実施態様において8以上、別の実施態様において9以上である。mは、ある実施態様において100以下、別の実施態様において85以下、別の実施態様において60以下、別の実施態様において51以下、別の実施態様において42以下、別の実施態様において31以下、別の実施態様において25以下である。
【0049】
上式において、Rは、ある実施態様において水素またはアルキル基である。Rは、別の実施態様において水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、またはtert-ブチル基である。Rは、別の実施態様において水素、メチル基、エチル基、プロピル基またはイソプロピル基である。Rは、別の実施態様において水素またはメチル基である。Rは、別の実施態様において水素である。Rは、別の実施態様においてメチル基である。
【0050】
アリルエーテルコポリマーの分子量は、ある実施態様において5,000~45,000、別の実施態様において6,000~41,000、別の実施態様において7,000~35,000、別の実施態様において8,000~25,000、別の実施態様において10,000~20,000である。
【0051】
ある実施態様では、アリルエーテルコポリマーは、Malialim(登録商標)AKM151160、AKM0531、AAB0851、AFB1521、AWS0851、SC0505K、SC1015F、SC0708A、HKM-50A、またはHKM-150A(日油株式会社)である。
【0052】
ある実施態様において、ポリヒドロキシ脂肪酸が、以下の構造式を持つ:
【0053】
【0054】
(qは1~10、x+yは5~30)。
【0055】
ポリヒドロキシ脂肪酸の分子量は、ある実施態様において100~5,000、別の実施態様において120~4,200、別の実施態様において135~3,800、別の実施態様において150~2,800、別の実施態様において185~2,100、別の実施態様において250~1,800、別の実施態様において280~1,500、別の実施態様において330~1,000、別の実施態様において400~800である。
【0056】
上式において、qは、ある実施態様において1以上、別の実施態様において2以上、別の実施態様において3以上である。qは、ある実施態様において10以下、別の実施態様において9以下、別の実施態様において8以下、別の実施態様において7以下、別の実施態様において6以下、別の実施態様において5以下、別の実施態様において4以下である。x+yは、ある実施態様において5以上、別の実施態様において6以上、別の実施態様において8以上、別の実施態様において10以上、別の実施態様において12以上である。x+yは、ある実施態様において30以下、別の実施態様において28以下、別の実施態様において22以下、別の実施態様において19以下、別の実施態様において17以下、別の実施態様において16以下、別の実施態様において15である。
【0057】
別の実施態様では、ポリヒドロキシ脂肪酸は、ポリヒドロキシステアリン酸、ポリヒドロキシラウリン酸、ポリヒドロキシミリスチン酸、ポリヒドロキシパルミチン酸、ポリヒドロキシオレイン酸、またはそれらの混合物である。別の実施態様では、ポリヒドロキシ脂肪酸は、ポリヒドロキシステアリン酸を含む。別の実施態様では、ポリヒドロキシ脂肪酸は、ポリヒドロキシステアリン酸である。
【0058】
別の実施態様では、ポリヒドロキシステアリン酸は、以下のいずれかの構造式を持つ、またはこれらの構造式の混合物である:
【0059】
【0060】
(q’は0~10、x+yは5~30)、
または
【0061】
【0062】
q’は0~10、x+yは5~30)。
【0063】
上式において、q’は、ある実施態様において0以上、別の実施態様において1以上、別の実施態様において2以上である。q’は、ある実施態様において10以下、別の実施態様において9以下、別の実施態様において8以下、別の実施態様において7以下、別の実施態様において6以下、別の実施態様において5以下、別の実施態様において4以下である。x+yは、ある実施態様において5以上、別の実施態様において6以上、別の実施態様において8以上、別の実施態様において10以上、別の実施態様において12以上である。x+yは、ある実施態様において30以下、別の実施態様において28以下、別の実施態様において22以下、別の実施態様において19以下、別の実施態様において17以下、別の実施態様において16以下、別の実施態様において15である。
【0064】
ある実施態様では、ポリヒドロキシ脂肪酸は、アジスパー(登録商標)PA111(味の素ファインテクノ株式会社)である。
【0065】
分散剤は、金属粉を100重量部としたとき、0.01~5.0重量部である。ある実施態様において0.1重量部以上、別の実施態様において0.2重量部以上、別の実施態様において0.3重量部以上、別の実施態様において0.4重量部以上、別の実施態様において0.5重量部以上、別の実施態様において0.7重量部以上、別の実施態様において0.9重量部以上、である。分散剤は、金属粉を100重量部としたとき、ある実施態様において3.0重量部以下、別の実施態様において2.0重量部以下、別の実施態様において1.5重量部以下、別の実施態様において1.0重量部以下、別の実施態様において0.7重量部以下、別の実施態様において0.6重量部以下、である。
なお、分散剤は、アリルエーテルコポリマーおよびポリヒドロキシ脂肪酸以外を更に含んでいてもよい。
【0066】
セルロースまたは樹脂
任意で、導電性ペースト105は、セルロース、樹脂またはその混合物を含む。樹脂は、アリルエーテルコポリマーおよびポリヒドロキシ脂肪酸を含まない。セルロース、樹脂またはその混合物は、少量添加することで、導電性ペーストの粘度を調整し得る。セルロース、樹脂またはその混合物は、溶媒に可溶性である。セルロース、樹脂またはその混合物は、1,000以上の分子量(Mw)をもつ。セルロース、樹脂またはその混合物の分子量は、ある実施態様において5,000~900,000、別の実施態様において8,000~780,000、別の実施態様において10,000~610,000、別の実施態様において18,000~480,000、別の実施態様において25,000~350,000、別の実施態様において32,000~200,000、である。なお、本願における分子量(Mw)は、重量平均分子量を意味する。分子量は、高速液体クロマトグラフィー(Alliance 2695、日本ウォーターズ株式会社)等で測定され得る。
【0067】
セルロースは、ある実施態様において、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、それらの誘導体、および、それらの混合物からなる群から選択される。樹脂は、ポリビニルブチラール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、および、それらの混合物からなる群から選択される。セルロースは、別の実施態様において、エチルセルロースである。樹脂は、別の実施態様において、熱可塑性樹脂である。
【0068】
セルロース、樹脂またはその混合物のガラス転移点は、ある実施態様において-30~250℃、別の実施態様において10~180℃、別の実施態様において80~150℃、である。
【0069】
セルロース、樹脂またはその混合物は、金属粉を100重量部としたとき、ある実施態様において0.01重量部以上、別の実施態様において0.05重量部以上、別の実施態様において0.1重量部以上、である。セルロース、樹脂またはその混合物は、金属粉を100重量部としたとき、ある実施態様において1.0重量部以下、別の実施態様において0.6重量部以下、別の実施態様において0.4重量部以下、別の実施態様において0.2重量部以下、である。セルロース、樹脂またはその混合物は、上記のように少量の添加であると、接合層の十分な導電性を保ちつつ、導電性ペーストに適度な粘度を与えることが出来うる。
【0070】
添加剤
導電性ペースト105の所望する特性に合わせて、乳化剤、安定剤、可塑剤などの添加剤をさらに含めることができる。ある実施態様において、導電性ペースト105は、ガラスフリットを含まない。ある実施態様において、導電性ペースト105は、硬化剤および架橋材を含まない。ある実施態様において、導電性ペースト105は、熱硬化性樹脂を含まない。
【0071】
電子部品
塗布された導電性ペースト105の上に電子部品107を搭載する。電子部品107は、電気的に機能するものであれば、特に限定されない。ある実施態様において、電子部品107は、半導体チップ、ICチップ、チップ抵抗、チップコンデンサ、チップインダクタ、センサーチップ、およびこれらの組合せからなる群より選択される。別の実施態様において、電子部品107は、半導体チップである。別の実施態様において、半導体チップは、LEDチップである。別の実施態様において、半導体チップは、SiチップまたはSiCチップである。
【0072】
ある実施態様において、電子部品107は、銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、プラチナ、これらの合金、およびこれらの組合せからなる群より選択されるメタライゼーション層を含んでいる。別の実施態様において、メタライゼーション層は、金および/またはニッケルを含んでいる。別の実施態様において、電子部品107は、ニッケル、金、およびこれらの合金からなる群から選択された1つを含むメタライゼーション層を含む。別の実施態様において、メタライゼーション層は、金層およびニッケル層の積層構造を含んでいる。ある実施態様において、電子部品107がメタライゼーション層を有する場合、メタライゼーション層は、導電性ペースト105の層と接する。別の実施態様において、メタライゼーション層は、メッキである。
【0073】
導電性ペースト105の層は加熱され、金属粉の焼結によって、導電層103と電子部品107とを接合する。ある実施態様では、導電性ペースト105は、金属と金属とを接合する。加熱の温度は、ある実施態様において140~400℃、別の実施態様において180~350℃、別の実施態様において200~300℃、別の実施態様において220~290℃である。導電性ペースト105は、比較的低温で接合させることができるため、電子部品107の熱によるダメージを抑えられる。加熱には、オーブンまたはダイボンダーを用いることが出来る。加熱時間は、ある実施態様において1秒以上、別の実施態様において10秒以上、別の実施態様において30秒以上、別の実施態様において50秒以上、別の実施態様において1分以上、別の実施態様において3分以上、別の実施態様において5分以上、別の実施態様において8分以上、別の実施態様において10分以上、別の実施態様において20分以上、別の実施態様において30分以上、である。加圧は、ある実施態様において90分以下、別の実施態様において70分以下、別の実施態様において60分以下、別の実施態様において45分以下、別の実施態様において30分以下、別の実施態様において20分以下、別の実施態様において15分以下、別の実施態様において10分以下、別の実施態様において5分以下である。
【0074】
ある実施態様において、加熱雰囲気は、不活性雰囲気またはエアー雰囲気である。別の実施態様において、不活性雰囲気は、N2雰囲気である。別の実施態様において、加熱雰囲気は、エアー雰囲気である。
【0075】
任意で、加熱中に電子部品107を加圧する。加圧により電子部品107は、導電層103により強く接合し得る。加圧は、ある実施態様において0.1MPa以上、別の実施態様において1MPa以上、別の実施態様において5MPa以上、別の実施態様において7MPa以上、別の実施態様において15MPa以上、別の実施態様において25MPa以上、である。加圧は、ある実施態様において45MPa以下、別の実施態様において40MPa以下、別の実施態様において36MPa以下、別の実施態様において25MPa以下、別の実施態様において15MPa以下、である。別の実施態様において、電子部品107は、加圧することなく接合される。加圧には、ダイボンダーを用いることが出来る。上記の加熱の温度および時間は、加圧の程度によって調節することができる。例えば、ある実施態様では、加圧が10MPa以上のときは、加熱時間は、15分以下とすることができる。
【0076】
任意で、上記加熱前に、塗布された導電性ペースト105の層を乾燥する。乾燥温度は、ある実施態様において40~150℃、別の実施態様において50~120℃、別の実施態様において60~100℃である。乾燥時間は、ある実施態様において10~150分、別の実施態様において15~80分、別の実施態様において17~60分、別の実施態様において20~40分である。
【0077】
任意で、塗布された導電性ペーストの上に電子部品を搭載した後、上記接合のための加熱(以下、本加熱とも言う)の前に、導電性ペースト105の層を予備加熱する。予備加熱の温度は、ある実施態様において80~180℃、別の実施態様において100~170℃、別の実施態様において120~160℃である。予備加熱時間は、ある実施態様において1秒以上、別の実施態様において3秒以上である。予備加熱時間は、ある実施態様において60秒以下、別の実施態様において30秒以下、別の実施態様において15秒以下、別の実施態様において10秒以下である。予備加熱をすることで、電子部品107が導電性ペースト105の層の表面により良好に接着し得る。特定の理論には拘束されないものの、本願発明の本加熱において導電性ペースト中の金属粉が焼結し電子部品107と導電層103とを結合する一方、予備加熱によって電子部品107と接触する導電性ペースト105の層の表面が粘着質となるため、製造プロセス中に、本加熱まで、電子部品107を比較的固く接着し、剥離することなく導電性ペースト105の層上に保持し得ると考えられる。予備加熱には、オーブンまたはダイボンダーを用いることが出来る。
【0078】
ある実施態様において、予備加熱は、N2雰囲気またはエアー雰囲気である。別の実施態様において、予備加熱は、エアー雰囲気である。
【0079】
任意で、予備加熱中に電子部品107を予備加圧する。予備加圧により電子部品107は、導電性ペースト105の層により強く接着し得る。予備加圧は、ある実施態様において0.1MPa以上、別の実施態様において0.5MPa以上、別の実施態様において1MPa以上、別の実施態様において2MPa以上、別の実施態様において3MPa以上である。予備加圧は、ある実施態様において10MPa以下、別の実施態様において8MPa以下、別の実施態様において6MPa以下である。別の実施態様において、電子部品107は、予備加熱中、予備加圧することなく接着される。予備加圧には、ダイボンダーを用いることが出来る。
【0080】
本発明者らによる鋭意検討の結果、接合用の導電性ペーストが特に分散剤を含み、分散剤が、アリルエーテルコポリマー、ポリヒドロキシ脂肪酸、およびこれらの混合物からなる群から選択されることで、そのような導電性ペーストが、接合前のマウントされた電子部品と導電性ペーストの層との接着強度を顕著に向上させる効果を有することが見いだされた。本発明者らは、従来の一般的な導電性ペーストでは、接合前のマウントされた電子部品と導電性ペーストの層との接着強度を向上させる効果は得られないが、特に分散剤としてアリルエーテルコポリマー、ポリヒドロキシ脂肪酸、およびこれらの混合物からなる群から選択されたものを用いたときに、そのような導電性ペーストが、接合前のマウントされた電子部品と導電性ペーストの層との接着強度を顕著に向上させる効果を有することを見出した。
【0081】
特定の理論に限定されないが、本発明においては、接合用の導電性ペーストが特に分散剤を含み、分散剤が、アリルエーテルコポリマー、ポリヒドロキシ脂肪酸、およびこれらの混合物からなる群から選択されることで、分散剤が金属粉粒子に付着し、金属粉粒子同士が適当な距離を保ちうる。よって、導電性ペーストが良好な粘度およびレオロジーを持つ導電性ペーストが得られるため、導電層上に塗布しても表面が窪むことなく平滑な表面もつ導電性ペースト層が形成できる。結果として、平滑な表面を持つ導電性ペースト層に電子部品を搭載すると、導電性ペースト105の層および電子部品107との間に間隙がなく接触面積が増えるため、より接着強度が向上するという効果が得られたと考えられる。
【実施例】
【0082】
本発明は以下の実施例によって説明されるが、それらに限定されない。
【0083】
実施例1、2の導電性ペーストを以下の手順によって調製した。
100重量部の銀粉を、10重量部のテキサノール溶液に分散させて導電性ペーストとした。銀粉は、粒径(D50)が0.4μmである球形銀粉および粒径(D50)が1.6μmであるフレーク状銀粉の混合粉であった。テキサノール溶液は、9.59重量部のテキサノール、0.4重量部のエチルセルロース(Ethocel(登録商標)N4、分子量44,265、Dow Chemical Company)および0.01重量部の界面活性剤を含んでいた。分散は、ミキサーで各材料を混ぜた後、三本ロールミルにかけて行った。分散剤は、以下のものを用いた。
実施例1:―Malialim(登録商標)AKM531:アリルエーテルコポリマー(重量平均分子量:15,000、日本油脂株式会社)
実施例2:―Malialim(登録商標)AFB1521:アリルエーテルコポリマー(重量平均分子量:30,000、日本油脂株式会社)
【0084】
また、比較例1として分散剤を含まない導電性ペースト、および比較例2~4として以下の分散剤を含む導電性ペーストも準備した。
比較例2:―Duomeen(登録商標)TDO:N-tallow alkyltrimethylenedi-,oleates(AkzoNobel社)
比較例3:―Solsperse(登録商標)71000:ポリエーテルを側鎖にもつポリエチレンイミン系化合物(Lubrizol社)
比較例4:―HIPLAAD(登録商標)ED119:脂肪族カルボン酸およびヒドロキシアルキルアミン混合物(楠本化成株式会社)
【0085】
導電性ペーストの粘度は、15~30Pa・sであった。粘度の測定には、レオメータ(HAAKETM MARSTM III、チタン製コーンプレート:C20/1°、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いた。
【0086】
次に、導電性ペーストを銅基板に塗布して、導電性ペースト層を得た。銅プレート(25mm幅、34mm長さ、1mm厚)に、10mm幅の間隔を空けてスコッチテープ(登録商標)(MagicTM MP-18 透明テープ、3M)を貼った。スコッチテープ(登録商標)の間にスクレーパーを用いて導電性ペーストを塗布した後、スコッチテープ(登録商標)を剥がして、角型パターン(10mm幅、10mm長さ、150μm厚)の導電性ペースト層を形成した。導電性ペーストの層をオーブンにて80℃30分乾燥させた。
【0087】
乾燥後、導電性ペースト層の接着性を調べた。角型パターンの上面に、銅チップ(3mm幅、3mm長さ、1mm厚)を載せた。ダイボンダー(T-3002M、Tresky社製)を用いて、銅チップを温めながら(150℃)10秒間軽く押して(5MPa)角型パターンの上面に接着させた。銅プレートを上面および下面を逆さに返して銅チップが剥がれて落下してしまった場合はNGとした。一方、銅プレートを逆さに返しても銅チップが剥がれなかった場合はOKとした。また、銅チップの接着強度をデジタルフォースゲージ(RZ-10、アイコーエンジニアリング株式会社)で測定した。
【0088】
結果を表1に示す。比較例1~4に示すように、分散剤を添加しない導電性ペースト、および単に分散剤としてDuomeen(登録商標)、Solsperse(登録商標)または、HIPLAAD(登録商標)を添加した導電性ペーストを用いた場合、銅チップは容易に剥がれてしまい、接着強度も0または0.04N低かった。実施例1および2に示すように、分散剤としてMalialim(登録商標)を添加した場合は、銅チップは剥がれることはなく、接着強度も十分高かった。
【0089】
【0090】
次に、実施例3として、異なる分散剤を用いて接着性をみた。分散剤は、ポリヒドロキシ脂肪酸(アジスパー(登録商標)PA111、味の素ファインテクノ株式会社)を用いた。
【0091】
100重量部の銀粉を、0.4重量部の分散剤および11重量部のターピネオール溶液の混合溶液に分散させて導電性ペーストとした。銀粉は、粒径(D50)が60nmである球形銀粉50重量部および粒径(D50)が200nmである球形銀粉50重量部の混合粉であった。ターピネオール溶液は、8.5重量部のターピネオール、2.2重量部の1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル、0.1重量部のエチルセルロース(エトセル(登録商標)STD10、分子量77,180、Dow Chemical Company)、0.2重量部の還元剤を含んでいた。分散は、ミキサーで各材料を混ぜた後、三本ロールミルにかけて行った。導電性ペーストの粘度は、実施例1同様に測定し、60Pa・sであった。
【0092】
次に、実施例1、2同様に、角型パターンを形成し、銅チップを搭載して接着させた。接着させた銅チップは、銅プレートを上面および下面を逆さに返しても剥がれることなく、良好に接着した。
【0093】
上記実施例により、本発明の導電性ペーストを用いれば、製造プロセス中、特に接合のための本加熱前に、マウントされた電子部品と導電性ペースト層とを十分に接着させることができることが確認された。