(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】有機溶剤系グラビアインキ、それを用いた印刷物及び積層体
(51)【国際特許分類】
C09D 11/102 20140101AFI20221026BHJP
C09D 11/106 20140101ALI20221026BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20221026BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20221026BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20221026BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
C09D11/102
C09D11/106
B65D65/40 D
B32B27/40
B32B27/32 B
B32B27/30 Z
(21)【出願番号】P 2021039598
(22)【出願日】2021-03-11
【審査請求日】2021-10-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591183153
【氏名又は名称】トーヨーカラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤乘 徳治郎
(72)【発明者】
【氏名】栃木 浩介
(72)【発明者】
【氏名】成廣 治憲
(72)【発明者】
【氏名】坂本 昌平
(72)【発明者】
【氏名】河野 孝佳
【審査官】林 建二
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-062138(JP,A)
【文献】特開2010-248466(JP,A)
【文献】特開2018-016708(JP,A)
【文献】特開2018-127545(JP,A)
【文献】国際公開第2018/012453(WO,A1)
【文献】特開2021-008544(JP,A)
【文献】特開2020-180259(JP,A)
【文献】特許第6886065(JP,B1)
【文献】特開2018-184584(JP,A)
【文献】特開2020-189903(JP,A)
【文献】特開2019-011435(JP,A)
【文献】特開2018-135411(JP,A)
【文献】特開2015-160948(JP,A)
【文献】特開平06-136313(JP,A)
【文献】国際公開第2018/056293(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、バインダー樹脂、
シリカ粒子、及び有機溶剤を含み、以下(1)~(
5)を満たす
包装ラミネート用有機溶剤系グラビアインキ。
(1)前記グラビアインキの固形分質量中の塩素含有率が、10質量%以下である。
(2)前記バインダー樹脂が、ウレタン樹脂(A)及び樹脂(B)を含み、
バインダー樹脂全質量中、前記ウレタン樹脂(A)と前記樹脂(B)との質量比(ウレタン樹脂(A)の質量:樹脂(B)の質量)が、95:5~30:70であり、
前記バインダー樹脂の含有量が、前記グラビアインキの全質量を基準として、4~
15質量%であり、
前記バインダー樹脂の塩素含有率が、5質量%以下であり、かつ、硝化度が、1質量%以下であり、
前記樹脂(B)が、ポリビニル
ブチラール樹脂
及び塩素化ポリオレフィン樹脂を含む。
(3)前記グラビアインキ質量中に水を0.1~10質量%含有する。
(4)前記有機溶剤が、アルコール系有機溶剤及びグリコールエーテル系有機溶剤からなる群より選ばれる、沸点100~160℃である有機溶剤を含む。
(5)前記シリカ粒子の平均粒子径が、1~10μmであり、前記シリカ粒子の含有量が、前記グラビアインキの全質量を基準として0.1~3質量%である。
(ただし、樹脂(B)は、ウレタン樹脂(A)を除く。沸点100~160℃のアルコール系有機溶剤は、グリコールエーテル系有機溶剤である場合を除く。)
【請求項2】
前記
樹脂(B)が、更に、セルロースエステル樹脂、及びロジン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する、請求項
1に記載の
包装ラミネート用有機溶剤系グラビアインキ。
【請求項3】
前記ウレタン樹脂(A)が、ポリエステルポリオールに由来する構成単位を65質量%以上含む、請求項1
又は2に記載の
包装ラミネート用有機溶剤系グラビアインキ。
【請求項4】
前記ウレタン樹脂(A)が、水酸基を有する、請求項1~
3いずれかに記載の
包装ラミネート用有機溶剤系グラビアインキ。
【請求項5】
前記顔料が、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー234及びC.I.ピグメントイエロー185からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する、請求項1~
4いずれかに記載の
包装ラミネート用有機溶剤系グラビアインキ。
【請求項6】
前記顔料が、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントバイオレット19及びC.I.ピグメントレッド122からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する、請求項1~
4いずれかに記載の
包装ラミネート用有機溶剤系グラビアインキ。
【請求項7】
前記顔料が、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4及びC.I.ピグメントブルー16からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する、請求項1~
4いずれかに記載の
包装ラミネート用有機溶剤系グラビアインキ。
【請求項8】
請求項1~
7いずれか
に記載の有機溶剤系グラビアインキを組み合わせてなる、イエローインキ、マゼンタインキ及びシアンインキを含む、
包装ラミネート用有機溶剤系グラビアインキセット。
【請求項9】
基材1上に、請求項1~
7いずれかに記載の
包装ラミネート用有機溶剤系グラビアインキ又は請求項
8に記載の
包装ラミネート用有機溶剤系グラビアインキセットから形成された印刷層を有する印刷物。
【請求項10】
請求項
9に記載の印刷物の印刷層上に、更に基材2を有する積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶剤系グラビアインキ、それを用いた印刷物及び積層体に関する。
特に、本発明は、安全性に優れた有機溶剤系グラビアインキであって、ラミネート積層体として優れたラミネート強度を有し、ハイライト転移性、トラッピング性にも優れたインキに関する。また、それを用いた印刷物及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
グラビアインキは、紙やプラスチック基材に美粧性、機能性を付与させる目的で広く用いられている。グラビアインキを包装材料に用いる場合、中でも食品包材等のパッケージに用いる場合、一般的には、プラスチックフィルム等の基材にグラビアインキを印刷してグラビア印刷物を得た後、得られたグラビア印刷物を他のプラスチックフィルムと貼り合わせてラミネート加工した積層体を用いる。そして、プラスチックフィルム等の基材やラミネート構成は、パッケージの内容物や使用目的に応じて、様々な種類の中から適宜選択される。
【0003】
通常、上記プラスチックフィルムを用いてなるパッケージはゴミとして廃棄されるが、リサイクルされる場合もある。パッケージをリサイクルする場合、まず、パッケージに含まれる樹脂の種類毎に分別し、不純物を除去、粉砕、洗浄したものを原料として溶融しペレットにする。そして、得られたペレットを加工して新たな製品とする場合が多い。
しかしながら、上記リサイクル方法では、パッケージに含まれるインキ層(印刷層)の大半は除去されずに残存する。そして、上記溶融工程では通常200℃以上の熱がかかるため、インキ層が、ハロゲン元素や1級芳香族アミンを多量に含む場合、ハロゲンガスや酸性ガスである塩化水素が発生し、設備が損傷する、又は人体の健康が脅かされる恐れがある。
【0004】
一方、特許文献1に記載されているように、従来のグラビアインキは、バインダー樹脂としてウレタン樹脂に、さらに塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂を併用して用いることが多い。しかしながら、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂を併用する主な目的は顔料分散性の向上であるので、ハロゲン元素を低減するために当該樹脂を除くと、顔料分散性が低下し、インキ特性の不具合を引き起こす。
また、特許文献2に記載されているように、ウレタン樹脂と併用する樹脂として、ニトロセルロース等も候補として考えられるが、当該樹脂はNOXガスの発生が懸念される。
また、特許文献3には、フレキソ印刷において、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂を使用せず、ポリビニルブチラール樹脂やセルロース系樹脂を使用する技術が開示されているが、グラビア印刷での使用については何ら開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-016708号公報
【文献】特開2019-123810号公報
【文献】特開2014-62138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ハイライト転移性、トラッピング性、版かぶり性等の印刷適性が良好であり、耐ブロッキング性に優れ、積層体とした場合に経時でのラミネート強度劣化が少ない、安全性に優れる有機溶剤系グラビアインキを提供することを目的とする。
また本発明は、耐ブロッキング性に優れる印刷物を提供することを目的とする。さらに本発明は、経時でのラミネート強度劣化が少ない、安全性に優れる積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記した課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、以下に記載の有機溶剤系グラビアインキが課題解決に有効であることを見出した。
【0008】
本発明は、顔料、バインダー樹脂、及び有機溶剤を含み、以下(1)~(3)を満たす有機溶剤系グラビアインキに関する。
(1)前記グラビアインキの固形分質量中の塩素含有率が、10質量%以下である。
(2)前記バインダー樹脂が、ウレタン樹脂(A)及び樹脂(B)を含み、前記バインダー樹脂の塩素含有率が、5質量%以下であり、かつ、硝化度が、1質量%以下である。
(3)前記グラビアインキ質量中に水を0.1~10質量%含有する。
(ただし、樹脂(B)は、ウレタン樹脂(A)を除く。)
【0009】
本発明は、樹脂(B)が、環構造を有する、上記有機溶剤系グラビアインキに関する。
【0010】
本発明は、樹脂(B)が、ポリビニルアセタール樹脂、セルロースエステル樹脂、及びロジン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する、上記有機溶剤系グラビアインキに関する。
【0011】
本発明は、有機溶剤が、アルコール系有機溶剤及びグリコールエーテル系有機溶剤からなる群より選ばれる、沸点100~160℃である有機溶剤を含む、上記有機溶剤系グラビアインキに関する。
【0012】
本発明は、更に、シリカ粒子を含む、上記有機溶剤系グラビアインキに関する。
【0013】
本発明は、顔料が、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー234及びC.I.ピグメントイエロー185からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する、上記有機溶剤系グラビアインキに関する。
【0014】
本発明は、顔料が、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントバイオレット19及びC.I.ピグメントレッド122からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する、上記有機溶剤系グラビアインキに関する。
【0015】
本発明は、顔料が、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4及びC.I.ピグメントブルー16からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する、上記有機溶剤系グラビアインキに関する。
【0016】
本発明は、上記有機溶剤系グラビアインキを組み合わせてなる、イエローインキ、マゼンタインキ及びシアンインキを含む、有機溶剤系グラビアインキセットに関する。
【0017】
本発明は、基材1上に、上記有機溶剤系グラビアインキ又は上記有機溶剤系グラビアインキセットから形成された印刷層を有する印刷物に関する。
【0018】
本発明は、上記印刷物の印刷層上に、更に基材2を有する積層体に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、ハイライト転移性、トラッピング性、版かぶり性等の印刷適性が良好であり、耐ブロッキング性に優れ、積層体とした場合に経時でのラミネート強度劣化が少ない、安全性に優れる有機溶剤系グラビアインキを提供することができる。
また本発明は、耐ブロッキング性に優れる印刷物を提供することができる。さらに本発明は、経時でのラミネート強度劣化が少ない、安全性に優れる積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態である有機溶剤系グラビアインキは、顔料、バインダー樹脂、及び有機溶剤を含み、以下(1)~(3)を満たすことを特徴とする。
(1)前記グラビアインキの、固形分総質量中の塩素含有率が、10質量%以下である。
(2)前記バインダー樹脂が、ウレタン樹脂(A)及び樹脂(B)を含み、前記バインダー樹脂の塩素含有率が、5質量%以下であり、かつ、硝化度が、1質量%以下である。
(3)前記グラビアインキ総質量中に水を0.1~10質量%含有する。
(ただし、樹脂(B)は、ウレタン樹脂(A)を除く。)
上記において、塩素含有率とは、インキの固形分質量を基準とした場合の塩素原子の含有率(質量%)、又は、バインダー樹脂の質量を基準とした場合の塩素原子の含有率(質量%)である。
グラビアインキ及びバインダー樹脂の塩素含有率が上記範囲であると、環境安全性に優れ、且つ、経時でのラミネート強度の低下を抑制することができる。また、バインダー樹脂の硝化度が1質量%以下であると、NOXガスの発生が抑えられ、ラミネート強度の低下を抑制することができる。また、グラビアインキ総質量中に水を0.1~10質量%含有することで、ハイライト部転移性や版かぶり性等の印刷適性を向上させることができる。
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明するが、これらは本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその趣旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
本明細書において、「有機溶剤系グラビアインキ」は、「インキ」又は「グラビアインキ」と表記する場合がある。また、本明細書において、「有機溶剤系グラビアインキからなる印刷層」は「印刷層」又は「インキ層」と表記する場合がある。また、「部」は「質量部」を意味する。
【0022】
<バインダー樹脂>
本発明の有機溶剤系グラビアインキは、バインダー樹脂を含む。バインダー樹脂とは有機溶剤系グラビアインキに用いられる樹脂成分を指し、いわゆる結着樹脂である。そして、本発明におけるバインダー樹脂は、ウレタン樹脂(A)及びウレタン樹脂を除く樹脂(B)を含むものである。樹脂を併用することで、印刷適性、ラミネート強度及び耐ブロッキング性が向上し、さらにインキの経時安定性が向上する。
また、本発明におけるバインダー樹脂は、後述するように、塩素含有率が5質量%以下であり、硝化度が1質量%以下であることが重要である。
まず、ウレタン樹脂(A)及び樹脂(B)について説明する。
【0023】
[ウレタン樹脂(A)]
ウレタン樹脂(A)は、本発明のグラビアインキにおいてラミネート強度の向上、顔料分散性、印刷適性向上の役割を担うものである。
ウレタン樹脂(A)はウレタン結合を有する樹脂であればよく、公知の樹脂から適宜選択して用いることができる。ウレタン樹脂(A)としては、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとからなるウレタン樹脂;ポリオールとポリイソシアネートとからなる末端イソシアネートのウレタンプレポリマーと、ポリアミンのような鎖伸長剤とを反応させることにより得られるウレタンウレア樹脂;が挙げられ、好適に用いられる。このようなウレタン樹脂の製造方法としては例えば、特開2013-256551号公報、特開2018-127545号公報、特開2013-213109号公報に記載の方法が挙げられる。
【0024】
上記ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ひまし油ポリオール、水素添加ひまし油ポリオール、ダイマージオール、水添ダイマージオールが挙げられる。ポリオールは、好ましくはポリエーテルポリオール、及びポリエステルポリオールからなる群より選ばれる少なくとも一種である。
【0025】
(ポリエーテルポリオール)
上記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、及びこれらの共重合体であるポリエーテルポリオールが好適なものとして挙げられる。
【0026】
(ポリエステルポリオール)
上記ポリエステルポリオールとしては、例えば、多塩基酸とジオールの縮合物が挙げられる。
多塩基酸は例えば、セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、コハク酸等の炭素数2~20の二塩基酸が好適に用いられる。
ジオールは、分岐状ジオールを含むことが好ましく、上記分岐状ジオールとしては、例えば、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(以下、BEPGと略記する)、2-メチル-1,3-プロパンジオール(以下、MPOと略記する)、3-メチル-1,5-ペンタンジオール(以下、MPDと略記する)、ネオペンチルグリコール(以下、NPGと略記する)、1,2-プロピレングリコール(以下、PGと略記する)、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,3-ブタンジオール、ジプロピレングリコールが挙げられる。
また一実施形態として、上記ジオールは、分岐状ジオールと直鎖状ジオールとを含むことが好ましい。上記直鎖状ジオールとしては、例えば、エチレングリコール(以下、EGと略記する)、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール(以下、1,3-PDと略記する)、1,4-ブタンジオール(以下、1,4-BDと略記する)、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,4-ブチンジオール、1,4-ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールが挙げられる。
中でも、好ましくは炭素数8以下、より好ましくは炭素数6以下の直鎖状ジオールであり、EG、1,3-PD、1,4-BD、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール等が好適に用いられる。
【0027】
ラミネート強度の観点から、ポリエステルポリオールを構成するジオール中の分岐状ジオール及び直鎖状ジオールの質量比(分岐状ジオールの質量:直鎖状ジオールの質量)は、好ましくは10:90~90:10であり、より好ましくは20:80~80:20であり、さらに好ましくは30:70~70:30である。
【0028】
ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールの数平均分子量は、各々独立して、好ましくは500~5,000の範囲である。
【0029】
(ポリイソシアネート)
上記ポリイソシアネートとしては、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知のポリイソシアネートを使用できる。このようなポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートが挙げられる。これらは3量体となってイソシアヌレート環構造を形成していてもよい。
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートが挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートが挙げられる。
脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加された4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネートが挙げられる。
中でも好ましくは、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネートの3量体からなる群から選ばれる少なくとも一種である。
これらのポリイソシアネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
(ポリアミン)
上記ポリアミンとしては、特に制限されず、ジアミン系又は多官能アミン系を用いることができる。また、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピルジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の水酸基を有するポリアミンを用いてもよい。
好ましくは分子量500以下のポリアミンであり、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン、p-フェニレンジアミン等が好適に用いられる。
これらのポリアミンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0031】
ウレタン樹脂(A)は、上述のとおり、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールからなる群より選ばれる少なくとも一種のポリオールに由来する構成単位を含むものが好ましい。
ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールからなる群より選ばれる少なくとも一種のポリオールに由来する構成単位の含有率は、ウレタン樹脂(A)の固形分質量を基準として、好ましくは5~95質量%であり、より好ましくは20~90質量%であり、更に好ましくは30~85質量%である。
また、ポリエステルポリオールに由来する構成単位の含有率は、ウレタン樹脂(A)の固形分質量を基準として、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは55質量%以上、特に好ましくは65質量%以上である。上記含有率であると、印刷適性、ラミネート強度、及び耐ブロッキング性に優れるものとなる。
【0032】
ウレタン樹脂(A)は、印刷適性の観点から、重量平均分子量が10,000~100,000であることが好ましく、ガラス転移点が0℃以下であることが好ましい。ガラス転移点は、より好ましくは-60℃~0℃であり、さらに好ましくは-40~-5℃である。
ウレタン樹脂(A)は、印刷適性及びラミネート強度の観点から、アミン価及び/又は水酸基価を有するものが好ましい。アミン価は、好ましくは0.5~20mgKOH/gであり、より好ましくは1~15mgKOH/gである。水酸基価は、好ましくは0.5~30mgKOH/gであり、より好ましくは1~20mgKOH/gである。
【0033】
[樹脂(B)]
バインダー樹脂はさらに、ウレタン樹脂(A)を除く樹脂(B)を含む。
樹脂(B)として好ましくは、環構造を有する樹脂であり、より好ましくは、アセタール環構造、芳香族環構造、脂環族環構造及びピラノース環構造からなる群より選ばれる少なくとも一種の環構造を有する樹脂であり、さらに好ましくは、アセタール環構造を有する樹脂である。これらの環構造は二重結合を有していてもよいし、アルキル基又はその他の置換基を有していてもよい。
【0034】
樹脂(B)は、環構造を有する構成単位を、樹脂(B)の質量を基準として好ましくは40~95質量%の範囲で含み、より好ましくは50~90質量%の範囲で含む。
樹脂(B)が、環構造を有する構成単位を上記範囲で含むと、顔料分散が促進され、ハイライト転移性、版かぶり性等の印刷適性が良好となる。また、ラミネート強度に優れ、経時劣化を抑制することができる。さらに、耐ブロッキング性に優れるものとなる。
本明細書において、環構造を有する単量体の質量には、メチル基やニトロ基のような環構造に置換もしくは隣接した基も含む。例えば、樹脂(B)がスチレン-アクリル樹脂であり、α-メチルスチレン由来の構成単位が50質量%、アクリルモノマーとしてブチルメタクリレート由来の構成単位が50質量%である場合、環構造の含有率は50質量%である。
【0035】
環構造を有する構成単位の含有率は、以下の式により算出してもよい。
式:環構造を有する構成単位の含有率(質量%)
=環構造を有する単量体の質量×100/樹脂(B)を構成する全単量体の合計質量
【0036】
環構造を有する樹脂としては、例えば、ポリビニルアセタール樹脂、セルロースエステル樹脂、ロジン樹脂、ポリスチレン樹脂、環構造を有するポリエステル樹脂、環構造を有するアクリル樹脂、及びこれらの共重合樹脂が挙げられ、より好ましくは、ポリビニルアセタール樹脂、セルロースエステル樹脂、及びロジン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有するものである。
【0037】
(ポリビニルアセタール樹脂)
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをブチルアルデヒド及び/又はホルムアルデヒド等のアルデヒドと反応させてアセタール環化したものであり、ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位及びアセタール環基を含むことが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂は、アセタール環を60~90質量%、ビニルアルコール単位を5~30質量%、酢酸ビニル単位を0.5~10質量%含むことが好ましく、より好ましくは、アセタール環としてブチラール環を有するポリビニルブチラール樹脂である。
ポリビニルアセタール樹脂の重量平均分子量は、好ましくは10,000~100,000、より好ましくは10,000~80,000である。ポリビニルアセタール樹脂のガラス転移点は、好ましくは50~80℃であり、より好ましくは60~75℃である。
【0038】
(セルロースエステル樹脂)
セルロースエステル樹脂として好ましくは、セルロースアセテートアルキネート樹脂であり、例えば、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートが好適に用いられる。
セルロースエステル樹脂は、アルキル基を有するものが好ましい。上記アルキル基は、好ましくは炭素数10以下のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が好適に用いられる。アルキル基は置換基を有していてもよい。
セルロースエステル樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5,000~200,000であり、より好ましくは10,000~10,000であり、さらに好ましくは15,000~80,000である。セルロースエステル樹脂のガラス転移点は、好ましくは120℃~180℃であり、より好ましくは130~170℃である。
ウレタン樹脂(A)とセルロースエステル樹脂とを併用することで、印刷適性、耐ブロッキング性等が向上する。
【0039】
(ロジン樹脂)
ロジン樹脂とは、ロジン酸(例えば、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、デヒドロアビエチン酸)由来の構造単位を主成分として有するものをいう。ここで主成分とは50質量%以上であることを指す。ロジン酸又はロジン樹脂は水素化されていてもよい。
ロジン樹脂として好ましくは、ロジン変性フェノール樹脂、ロジンエステル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、及び重合ロジン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種である。
ロジン樹脂の酸価は、好ましくは350mgKOH/g以下であり、より好ましくは250mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは150mgKOH/g以下である。
一実施形態として、酸価は100mgKOH/g以下が好ましく、50mgKOH/g以下であることがより好ましい。
ロジン樹脂の軟化点は、好ましくは60~180℃であり、より好ましくは70~150℃である。本明細書において、軟化点とは、環球法による測定値であり、JISK2207に準拠して測定することができる。
【0040】
《ロジンエステル》
ロジン樹脂は、分子量が1,000以下の低分子ポリオールとロジン酸とのエステル縮合樹脂であるロジンエステルが好ましい。低分子ポリオールは、好ましくは、1分子中の水酸基数が2~4(以下、2~4官能と略記する場合がある)であり、分子量が50~500である。このような低分子ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,10-デカンジオール等の2官能低分子ポリオール;グリセリン、トリメチロールプロパン等の3官能低分子ポリオール;エリスリトール、ペンタエリスリトール等の4官能低分子ポリオール;が好適に用いられる。中でも、3官能及び/又は4官能の低分子ポリオールが好ましい。
ロジンエステルの重量平均分子量は、好ましくは500~2,000であり、より好ましくは500~1,500である。
【0041】
(塩素化ポリオレフィン樹脂)
本発明のグラビアインキは、基材への接着性、及びラミネート強度向上の観点から、本発明の効果を損なわない範囲で、バインダー樹脂として塩素化ポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。塩素化ポリオレフィン樹脂とは、下記一般式(2)で表される、α-オレフィンの重合体の水素を塩素置換した構造を有するものである。
一般式(2): CH2=CH-R3
(一般式(2)中、R3は炭素数1以上のアルキル基である。)
塩素化ポリオレフィン樹脂は、柔軟性を持つアルキル基を分枝構造として有するため、低温下でも粘稠な液体であり、極少量の使用量で基材接着性を向上させることができる。塩素化ポリオレフィン樹脂のポリオレフィン構造は、特に制限されず、例えば、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン系不飽和炭化水素の単独重合体又は共重合体を含有する樹脂が挙げられる。中でも、ポリプロピレン構造(すなわち塩素化ポリプロピレン構造)を含むものがより好ましい。
この場合、ポリエステル構造単位を有するウレタン樹脂(A)と併用した場合に優れた基材密着性、ラミネート強度が得られる。
【0042】
塩素化ポリオレフィン樹脂は、塩素含有率が25~45質量%であることが好ましく、26~40質量%であることがより好ましい。ここで塩素含有率とは、塩素化ポリオレフィン樹脂の質量を基準とした場合の塩素原子の含有量(質量%)をいう。
塩素含有率の測定方法は、後述の[バインダー樹脂の塩素含有率]の記載を援用できる。
【0043】
後述する有機溶剤への溶解性の観点から、塩素化ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5,000~40,000である。
耐ブロッキング性の観点から、塩素化オレフィン樹脂の含有率は、グラビアインキの質量を基準として、好ましくは、0.1~2質量%であり、より好ましくは0.2~1質量%である。
【0044】
(その他の樹脂)
樹脂(B)は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の樹脂を含んでよく、例えば、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ゴム、環化ゴム、塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ケトン樹脂、エチレン-ビニルアセテート樹脂、エチレン-ビニルアルコール樹脂、スチレン-マレイン酸樹脂、カゼイン、アルキッド樹脂が挙げられる。
樹脂(B)は、極性基を有するものが好ましく、当該極性基は、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、アシル基、及びカルボニル基から選ばれる基が好ましい。
【0045】
本発明のグラビアインキは、印刷基材への接着性及び顔料分散性の観点から、グラビアインキの全質量を基準として、バインダー樹脂を、好ましくは4~25質量%の範囲で含み、より好ましくは6~15質量%の範囲で含む。
バインダー樹脂中、ウレタン樹脂(A)と樹脂(B)との質量比(ウレタン樹脂(A)の質量:樹脂(B)の質量)は、好ましくは95:5~30:70であり、より好ましくは95:5~40:60であり、さらに好ましくは90:5~50:50である。
上記範囲とすることで、印刷適性、ラミネート強度及び耐ブロッキング性が向上し、さらにインキの経時安定性が向上する。
【0046】
[バインダー樹脂の塩素含有率]
上記塩素含有率は、バインダー樹脂の質量を基準とした場合の塩素原子の含有率(質量%)である。本発明におけるバインダー樹脂は、塩素含有率が5質量%以下であることが重要であり、0である場合を含む。塩素含有率が5質量%以下であると、環境安全性に優れ、且つ、遊離塩素が発生し難いため経時でのラミネート強度の低下を抑制することができる。
上記塩素含有率は、好ましくは4質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以下である。塩素含有率が上記範囲であると、経時でのラミネート強度劣化をさらに抑制できる。
なお、上記ウレタン樹脂(A)の塩素含有率としては、0.5質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以下であることがなお好ましく、0.1質量%以下であることが更に好ましい。また、上記樹脂(B)の塩素含有率としては、5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがなお好ましく、3質量%以下であることが更に好ましい。
【0047】
塩素含有率は、イオンクロマトグラフィー(IC)や、ICP質量分析装置(ICP-MS)等公知の方法を用いて測定することができる。測定機器としては、例えば、ICでは島津製作所製LC-20ADsp、ICP-MSではAgilent Technologies製Agilent 7700xが挙げられる。
また、塩素含有率は、インキを構成する各原料の塩素含有率から、以下の式により簡易的に算出することができる。
式:バインダー樹脂固形分総質量中の塩素含有率(%)
=バインダー樹脂固形分総質量中の塩素の質量/バインダー樹脂の固形分総質量(%)
式:グラビアインキ固形分総質量中の塩素含有率(%)
=インキ固形分総質量中の塩素の質量/インキの固形分総質量(%)
【0048】
本発明において塩素含有率は、JIS K 0127(2013)に準拠して測定されることが好ましい。この測定方法では、燃焼法にて前処理を行ったサンプルをイオンクロマトグラフ法で定量する。
【0049】
[バインダー樹脂の硝化度]
硝化度とは、硝酸エステルのエステル化の度合いを窒素含有量(質量%)で表したものであり、例えば、市販のニトロセルロースは通常10~12質量%である。
本発明におけるバインダー樹脂は、硝化度が1質量%以下であることが重要であり、0である場合を含む。硝化度が1質量%以下であることで、NOXガス発生を抑制でき、より安全性の高いインキを提供することができる。
バインダー樹脂の硝化度は、好ましくは0.6質量%以下であり、より好ましくは0.4質量%以下であり、更に好ましくは0.2質量%以下である。
なお、上記ウレタン樹脂(A)の硝化度としては、0.3質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以下であることがなお好ましく、0.1質量%以下であることが更に好ましい。また、上記樹脂(B)の硝化度としては、0.8質量%以下であることが好ましく、0.6質量%以下であることがなお好ましく、0.4質量%以下であることが更に好ましい。
【0050】
<顔料>
本発明の有機溶剤系グラビアインキは、顔料を含む。顔料としては、一般のインキ、塗料、及び記録剤等に使用されている無機顔料、有機顔料が挙げられる。
【0051】
[有機顔料]
本発明における顔料は、好ましくは有機顔料であり、例えば、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系、カーボンブラック系が挙げられる。
【0052】
有機顔料として好ましくは、黒色顔料、藍色顔料、赤色顔料、及び黄色顔料からなる群より選ばれる少なくとも一種である。なお、C.I.ピグメントブラック7は有機顔料として扱うものとする。
以下に限定されないが、好適な顔料の例を、C.I.ピグメントナンバーで示す。なお、以下の顔料は例えば、DIC社製SYMULERシリーズ、FASTOGENシリーズ、PERRINDOシリーズ、QUINDOシリーズ、FANCHONシリーズの各色シリーズ、大日精化社製セイカファストオレンジシリーズ、セイカファストイエローシリーズ、セイカファストレッドシリーズ、クロモファインブルーシリーズ、クロモファイングリーンシリーズ、トーヨーカラー社製リオノールブルーシリーズ、リオノールレッドシリーズ、リオノールイエローシリーズ、リオノゲンバイオレットシリーズ等から入手することができる。
【0053】
黒色顔料として、例えば、C.I.ピグメントブラック7が挙げられる。
【0054】
藍色顔料として、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー16が挙げられる。
本発明のグラビアインキをシアンインキとして用いる場合、上記C.I.ピグメントブルーの顔料を含むことが好ましい。より好ましくは、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4及びC.I.ピグメントブルー16からなる群より選ばれる少なくとも一種の顔料を含むものである。
【0055】
緑色顔料として、例えば、C.I.ピグメントグリーン7が挙げられる。
【0056】
赤色顔料として、例えば、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントバイオレット19が挙げられる。
本発明のグラビアインキをマゼンタインキとして用いる場合、上記C.I.ピグメントレッド及び/又はC.I.ピグメントバイオレットの顔料を含むことが好ましい。より好ましくは、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントバイオレット19、及びC.I.ピグメントレッド122からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むものである。
【0057】
紫色顔料として、例えば、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット37が挙げられる。
【0058】
黄色顔料として、例えば、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー234、C.I.ピグメントイエロー185が挙げられる。
本発明のグラビアインキをイエローインキとして用いる場合、上記C.I.ピグメントイエローの顔料を含むことが好ましい。より好ましくは、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー234、及びC.I.ピグメントイエロー185からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むものである。
【0059】
橙色顔料として、例えば、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ64が挙げられる。
【0060】
これらの有機顔料は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用して用いてもよい。
なお一実施形態において、本発明のグラビアインキは、好ましくはC.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントイエロー234及びC.I.ピグメントイエロー185からなる群より選ばれる少なくとも一種の顔料を含むことが好ましい。これは、上記顔料を含むことで、インキの安全性を向上させることができるためである。
【0061】
[無機顔料]
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、リトボン、アンチモンホワイト、石膏等の白色無機顔料が挙げられる。中でも、白色を呈し、着色力、隠ぺい力、耐薬品性、耐候性に優れる観点から、好ましくは酸化チタンである。酸化チタンは、印刷性能の観点から、シリカ及び/又はアルミナで処理されているものが好ましい。
【0062】
白色以外の無機顔料としては、例えば、アルミニウム粒子、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、ジルコンが挙げられる。
アルミニウムは粉末又はペースト状であるが、取扱い性及び安全性の面からペースト状で使用することが好ましい。また、リーフィング又はノンリーフィングを使用するかは、輝度感及び濃度の点から適宜選択される。
【0063】
顔料の平均粒子径は、好ましくは10~200nmの範囲であり、より好ましくは50~150nmの範囲である。
インキ中の顔料の含有量は、グラビアインキの濃度・着色力を確保するために、グラビアインキの質量を基準として、好ましくは1~60質量%の範囲であり、グラビアインキの固形分質量を基準として、好ましくは10~90質量%の範囲である。
【0064】
<有機溶剤>
本発明の有機溶剤系グラビアインキは、有機溶剤を含む。
本発明の有機溶剤系グラビアインキにおける「有機溶剤系」とは、グラビアインキの液状媒体が、有機溶剤を主成分として有するものをいう。ここで主成分とは、グラビアインキ中の液状媒体の質量を基準として50質量%以上であることを指し、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。
【0065】
当該有機溶剤は、エステル系有機溶剤とアルコール系有機溶剤との混合溶剤を含むことが好ましい。
エステル系有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好適に用いられる。
アルコール系有機溶剤は、好ましくは沸点100℃未満のアルコール系有機溶剤であり、例えば、n-プロパノール、イソプロパノール、エタノール、その他の沸点が100℃未満の脂肪族アルコールが好適に使用できる。
エステル系有機溶剤と、沸点100℃未満のアルコール系有機溶剤との質量比率(エステル系有機溶剤の質量:沸点100℃未満のアルコール系有機溶剤の質量)は、好ましくは95:5~40:60であり、より好ましくは90:10~50:50である。
本発明のグラビアインキは、トルエン等の芳香族有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系有機溶剤は使用しないことが好ましい。
【0066】
[アルコール系有機溶剤及びグリコールエーテル系有機溶剤からなる群より選ばれる、沸点100~160℃である有機溶剤]
本発明のグラビアインキは、さらに、アルコール系有機溶剤及びグリコールエーテル系有機溶剤からなる群より選ばれる、沸点100~160℃である有機溶剤を含むことが好ましい。上記溶剤を含むことで、顔料分散性、印刷適性が向上する。
ただし、沸点100~160℃のアルコール系有機溶剤は、グリコールエーテル系有機溶剤である場合を除くものとする。
【0067】
上記沸点が100~160℃であるアルコール系有機溶剤としては、例えば、3-メチル-1-ブタノール(沸点131℃)、2-メチル-1-ブタノール(沸点128℃)、2,2ジメチル-1-プロパノール(沸点113℃)、3-メチル-2-ブタノール(沸点112.5℃)、2-メチル-2-ブタノール(沸点102℃)、イソブタノール(沸点108℃)、2-ペンタノール(沸点119.3℃)が挙げられる。
上記アルコール系有機溶剤の沸点は、好ましくは100~150℃であり、より好ましくは100~140℃であり、さらに好ましくは100~130℃である。上記アルコール系有機溶剤は、第三級炭素原子及び/又は第四級炭素原子を含むことが好ましい。
これらアルコール系有機溶剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用して用いてもよい。
【0068】
上記沸点が100~160℃であるグリコールエーテル系有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールエーテル類、及びプロピレングリコールエーテル類からなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
グリコールエーテル系有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル(沸点124.5℃)、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル(沸点151.0℃)、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル(沸点141.8℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点121.0℃)、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル(沸点149.8℃)が挙げられる。
【0069】
エチレングリコールエーテル類としては、エチレングリコールモノアルキルエーテルが好ましく、プロピレングリコールエーテル類としては、プロピレングリコールモノアルキルエーテルが好ましい。
前記エチレングリコールモノアルキルエーテル及びプロピレングリコールモノアルキルエーテルにおけるアルキルエーテル基は、炭素数1~4のものが好ましい。
エチレングリコールモノアルキルエーテルとして好ましくは、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノ(イソ)プロピルエーテルであり、プロピレングリコールモノアルキルエーテルとして好ましくは、プロピレングリコールモノメチルエーテルである。
グリコールエーテル系有機溶剤は、エステル化されていてもよく、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートが挙げられる。
これらグリコールエーテル系有機溶剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用して用いてもよい。エチレングリコールモノアルキルエーテル及びプロピレングリコールモノアルキルエーテルを併用することがより好ましい。
【0070】
上記グリコールエーテル系有機溶剤の沸点は、好ましくは100~150℃であり、より好ましくは100~140℃であり、さらに好ましくは100~130℃である。
【0071】
上記沸点が100℃~160℃であるアルコール系有機溶剤及びグリコールエーテル系有機溶剤の含有率は、グラビアインキの質量を基準として、0.5~15質量%であり、より好ましくは1~10質量%であり、さらに好ましくは1~8質量%であり、特に好ましくは1~5質量%である。
沸点が100℃~160℃である、アルコール系有機溶剤及びグリコールエーテル系有機溶剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の溶剤を用いると、グラビア印刷においてハイライト転移性、トラッピング性等の印刷適性に優れる。また臭気の観点でも良好である。
上記アルコール系有機溶剤及びグリコールエーテル系有機溶剤は、後述する水と併用することで相乗効果が生じ、水と有機溶剤とが親和して顔料分散性を向上させる。また、印刷時版面におけるインキの乾燥速度がコントロールされ、ハイライト転移性、トラッピング性等が向上する。また、ウレタン樹脂(A)と樹脂(B)とを含むバインダー樹脂により顔料分散性を向上させ、積層体とした場合のラミネート強度が良好となる。
【0072】
<水>
本発明の有機溶剤系グラビアインキは、グラビアインキの質量を基準として水を0.1~10質量%含むことが重要である。所定量の水を含むことで、ウレタン樹脂(A)及び樹脂(B)による顔料分散性が向上し、ハイライト転移性、版かぶり性、トラッピング性等の印刷適性が向上する。
水の含有率は、好ましくは0.5~7質量%であり、より好ましくは0.5~5質量%であり、さらに好ましくは0.5~4質量%である。
また、上述したように、沸点が100~160℃であるアルコール系有機溶剤、グリコールエーテル系有機溶剤と併用することで、印刷適性が更に向上する。
【0073】
「水」と「アルコール系有機溶剤及びグリコールエーテル系有機溶剤からなる群より選ばれる、沸点100~160℃である有機溶剤」との配合比(水の質量:アルコール系有機溶剤及びグリコールエーテル系有機溶剤からなる群より選ばれる、沸点100~160℃である有機溶剤の質量)は、好ましくは95:5~5:95であり、より好ましくは90:10~10:90であり、さらに好ましくは80:20~20:80である。
「水」と「アルコール系有機溶剤及びグリコールエーテル系有機溶剤からなる群より選ばれる、沸点100~160℃である有機溶剤」とを合計した含有量は、グラビアインキの質量を基準として、好ましくは1~20質量%であり、より好ましくは2~15質量%であり、さらに好ましくは3~10質量%であり、特に好ましくは3~8質量%である。
【0074】
<シリカ粒子>
本発明のグラビアインキは、さらに、シリカ粒子を含むことができる。シリカ粒子を含むことで、重ね印刷時のインキの濡れ・広がりが促進され、トラッピング性が向上し、ハイライト転移性も維持される。上記効果は、水、アルコール系有機溶剤、グリコールエーテル系有機溶剤と併用した際に顕著である。
シリカ粒子は、天然産、合成品、あるいは結晶性、非結晶性、あるいは疎水性、親水性のものが挙げられる。シリカ粒子の合成法は、乾式、湿式法があり、乾式法では燃焼法、アーク法、湿式法では沈降法、ゲル法が知られており、いずれの方法で合成されたものでもよい。また、シリカ粒子は、表面に親水性官能基を有する親水性シリカでもよいし、親水性官能基をアルキルシラン等で変性して疎水化した疎水性シリカでもよい。好ましくは親水性シリカである。
このようなシリカ粒子としては、例えば、東ソー・シリカ社製のニップジェルシリーズ、ニップシルシリーズ、水澤化学社製のミズカシルシリーズが挙げられる。
【0075】
シリカ粒子は、インキ層の表面に凹凸を作るため、平均粒子径が1~10μmであることが好ましい。より好ましくは1~8μmであり、さらに好ましくは1~6μmである。シリカ粒子の平均粒子径は、粒度分布における積算値50%(D50)での粒径を意味し、コールターカウンター法によって求めることができる。
シリカ粒子の比表面積は、BET法で50~600m2/gであることが好ましい。より好ましくは100~450m2/gである。本発明のグラビアインキで使用するシリカ粒子は、平均粒子径又はBET法比表面積の異なるものを2種以上組み合わせて使用できる。
【0076】
シリカ粒子の含有率は、グラビアインキの質量を基準として、好ましくは0.1~3質量%であり、より好ましくは0.2~2.5質量%であり、さらに好ましくは0.2~2質量%であり、特に好ましくは0.2~1.5質量%である。
【0077】
<その他添加剤>
本発明のグラビアインキは、必要に応じて、体質顔料、顔料分散剤、レベリング剤、消泡剤、ワックス、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤等のその他添加剤を含むことができる。
【0078】
<有機溶剤系グラビアインキの塩素含有率>
本発明のグラビアインキは、グラビアインキの固形分質量中の塩素含有率が10質量%以下であることが重要であり、0である場合を含む。塩素含有率が10質量%以下であると、環境安全性に優れ、且つ、遊離塩素が発生し難いため経時でのラミネート強度の低下を抑制することができる。
上記塩素含有率は、好ましくは9質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下であり、さらに好ましくは7質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以下である。塩素含有率が上記範囲であると、経時でのラミネート強度劣化をさらに抑制できる。
塩素含有率を上記範囲内とするために、例えば、あらかじめ塩素含有量が判明しているバインダー樹脂、顔料及び添加剤等を適宜組み合わせてもよい。
【0079】
塩素含有率の測定方法は、上述する[バインダー樹脂の塩素含有率]の項の記載を援用することができる。
【0080】
<有機溶剤系グラビアインキの製造>
本発明の有機溶剤系グラビアインキは、ウレタン樹脂(A)及び樹脂(B)を含むバインダー樹脂、顔料等を、有機溶剤中に溶解及び/又は分散することにより製造することができる。具体的には、例えば、顔料をウレタン樹脂(A)、樹脂(B)及び有機溶剤を含む混合物をあらかじめ羽根つき撹拌機等で混合しておき、分散機を用いて顔料分散体を製造し、得られた顔料分散体に、必要に応じて他の樹脂や化合物、添加剤及び有機溶剤等を配合することにより製造することができる。水は分散機で分散処理するときに含んでいてもよいし、得られた顔料分散体に対して後から添加して混合してもよい。
分散機としては、一般に使用されるものを用いることができ、例えば、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター及びサンドミルその他のビーズミルが挙げられ、ビーズミルの使用が好ましい。顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機のメディアビーズのサイズ、メディアビーズの充填率、分散時間、顔料分散体の流出速度、顔料分散体の粘度等を適宜調節することにより、調整することができる。
【0081】
グラビアインキの粘度は、使用する原材料の種類や量、例えばウレタン樹脂、顔料、有機溶剤の種類や含有量を適宜選択することにより調整することができる。インキ中の顔料分散の度合い及び粒度分布を調節することによりインキの粘度を調整することもできる。
グラビアインキの粘度は、高速なグラビア印刷に適合させる観点から、好ましくは10~1,000mPa・sの範囲であり、より好ましくは15~700mPa・sの範囲であり、さらに好ましくは20~500mPa・sの範囲である。上記粘度は、B型粘度計を用いて25℃において測定された値である。B型粘度計としては、例えば、トキメック社製のものが挙げられる。
【0082】
本発明のグラビアインキは、グラビア印刷ならではの凹版を用いる場合において、印刷適性(ハイライト転移性、トラッピング性(重ね印刷適性))、及び、その後ラミネートした後のラミネート強度等で効果を発揮するものである。
したがって、版を使用せずインクジェットノズルからインキを吐出するインクジェット用インキとしての使用形態は、印刷のメカニズムが全く異なるため、本発明の実施形態に含まれない。
【0083】
<有機溶剤系グラビアインキセット>
本発明の有機溶剤系グラビアインキセットは、イエローインキ、マゼンタインキ及びシアンインキの3色で構成されたインキセットである。
イエローインキは、顔料として、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー234及びC.I.ピグメントイエロー185からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。
マゼンタインキは、顔料として、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントバイオレット19、及びC.I.ピグメントレッド122からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。
シアンインキは、顔料として、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4及び/又はC.I.ピグメントブルー16を含有することが好ましい。
上記組み合わせであると、重ね印刷された状態であっても本願課題に対し優れた効果を発揮する。特にトラッピング性が向上するので上記組み合わせでのインキセットが好ましい。
【0084】
<有機溶剤系グラビアインキの印刷方法及び印刷物>
本発明の印刷物は、基材1上に、本発明の有機溶剤系グラビアインキ又はインキセットから形成された印刷層を有するものであって、グラビアインキを下記基材1上にグラビア印刷機で印刷し、オーブン等でインキを乾燥させて定着することで得られる。
グラビア印刷は公知の方法から適宜選択できる。すなわち、輪転する凹版(グラビア版)及びそれに接触するドクターブレードを備えた複数色印刷可能なグラビア印刷機を用い、グラビアインキはインキ容器(インキパン)から供給される。粘度調整として専用の粘度コントローラーを用いてもよい。また、印刷用の基材1は巻き取り方式で供給され、印刷物は印刷後に乾燥ユニットを通る。乾燥ユニットの温度としては30~100℃であることが好ましい。また、印刷速度は50~250m/分であることが好ましい。
【0085】
<積層体>
本発明の積層体は、上述する印刷物の印刷層上に、更に基材2を有するものであり、少なくとも基材1、印刷層、基材2をこの順に有している。
本発明の積層体は、印刷物の印刷層上に、接着剤層を介して基材2が配置された構成であることが好ましい。すなわち、少なくとも基材1、印刷層、接着剤層、基材2をこの順に有する使用形態であることが好ましい。
【0086】
接着剤層を構成する接着剤としては、例えば、アンカーコート剤、溶融(熱可塑性)ポリオレフィン樹脂、ウレタン系接着剤が挙げられるがこれらに限定されない。
アンカーコート剤としては、ポリイミン系、イソシアネート系、ポリブタジエン系、チタン系等のアンカーコート剤が好適に用いられる。
ウレタン系接着剤としては、ポリオール及びイソシアネート硬化剤の混合物からなるウレタン系接着剤が好適に用いられ、当該ポリオールとしては、ポリエステル系、ポリエーテル系等が挙げられる。ウレタン系接着剤の市販品としては、例えば、東洋モートン株式会社製のTM-250HV/CAT-RT86L-60、TM-550/CAT-RT37、TM-314/CAT-14B等が挙げられる。
【0087】
接着剤層を介して基材2を配置する方法は特に制限されず、例えば、アンカーコート剤を介して、溶融ポリエチレン樹脂を積層して基材2と貼り合わせるエクストルジョンラミネート(押し出しラミネート)法;印刷層上にウレタン系等の接着剤を塗工し、その上に基材2を積層するドライラミネート法若しくはノンソルベントラミネート法;印刷層上に直接溶融ポリプロピレンを圧着して積層するダイレクトラミネート法;のような公知のラミネート方法が挙げられる。
【0088】
[基材1]
基材1としては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂;ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する)、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリ乳酸等のポリヒドロキシカルボン酸;ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート)のような脂肪族ポリエステル系樹脂等の生分解性樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂;ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、又はそれらの混合物等の熱可塑性樹脂よりなるフィルムやこれらの積層体が挙げられる。中でも、ポリエステル系樹脂、ポリアミド樹脂、又はポリオレフィン樹脂からなるフィルムが好ましい。
基材1の印刷される面には、コロナ放電処理等をされていることが好ましく、シリカ及び/又はアルミナ等が蒸着されていてもよい。
【0089】
[基材2]
基材2としては、基材1と同様のものが挙げられ、同一でも異なっていてもよい。基材2は、熱可塑性基材(シーラントと称する場合がある)であることが好ましく、無延伸ポリエチレン基材、無延伸ポリプロピレン基材、無延伸ポリエステル基材等がより好ましい。
【実施例】
【0090】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における部及び%は、特に注釈の無い場合、質量部及び質量%を表す。
【0091】
(水酸基価)
水酸基価は、試料1gをアセチル化させたとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 0070に準拠して測定した。
【0092】
(酸価)
酸価は、試料1g中に含有する遊離脂肪酸、樹脂酸等を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 0070に準拠して測定した。
【0093】
(アミン価)
アミン価は、試料1g中に含有するアミノ基を中和するのに必要とする塩酸の当量と同量の水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 0070に準拠して測定した。
即ち、試料を0.5~2g精秤した(試料固形分:Sg)。精秤した試料にメタノール/メチルエチルケトン=60/40(質量比)の混合溶液50mLを加え溶解させた。得られた溶液に指示薬としてブロモフェノールブルーを加え、得られた溶液を0.2mol/Lエタノール性塩酸溶液(力価:f)で滴定を行なった。溶液の色が緑から黄に変化した点を終点とし、この時の滴定量(AmL)を用い、下記式によりアミン価を求めた。
(式)アミン価=(A×f×0.2×56.108)/S[mgKOH/g]
【0094】
(重量平均分子量)
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置(東ソー株式会社製HLC-8220)を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として求めた。下記に測定条件を示す。
カラム:下記カラムを直列に連結して使用した。
東ソー株式会社製TSKgelSuperAW2500
東ソー株式会社製TSKgelSuperAW3000
東ソー株式会社製TSKgelSuperAW4000
東ソー株式会社製TSKgelguardcolumnSuperAWH
検出器:RI(示差屈折計)
測定条件:カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
【0095】
(ガラス転移点(Tg))
ガラス転移点は、示差走査熱量測定測定(DSC)により求めた。測定は、株式会社リガク製DSC8231を使用し、測定温度範囲-70~250℃、昇温速度10℃/分の条件で行った。DSC曲線におけるガラス転移に基づく吸熱開始温度と終了温度との中点をガラス転移点とした。
【0096】
(塩素含有率)
塩素含有率は、JIS K0127(2013)に準拠して測定した。即ち、透明基板上に、インキ又はバインダー樹脂をそれぞれ2.0μmになるように塗布し塗膜を形成した。80℃で乾燥させ、0.5g削り取った。削り取った塗膜を燃焼法にて前処理を行い、得られたサンプルのハロゲン含有量を、イオンクロマトグラフィーで定量し、ハロゲン含有率を求めた。
【0097】
<ウレタン樹脂の合成>
(合成例1)ウレタン樹脂PU1
3-メチル1,5ペンタンジオール(MPD)とセバシン酸(SA)の縮合物である、数平均分子量2,000のポリエステルポリオール(以下「MPD/SA」)100部、1,4-ブタンジオール(以下「1,4-BD」)1部、イソホロンジイソシアネート(以下「IPDI」)28.5部及び酢酸エチル32.1部を混合して、窒素雰囲気下で90℃5時間反応させて、末端イソシアネートのウレタンプレポリマーを得た。
次いで、イソホロンジアミン(以下「IPDA」)11.0部、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン(以下「AEA」)1.0部、ジブチルアミン(以下「DBA」)1.0部及び混合溶剤1(酢酸エチル/イソプロパノール=70/30(質量比))298.1部を攪拌混合し、得られた末端イソシアネートのウレタンプレポリマーを40℃で徐々に添加した。
80℃で1時間反応させ、固形分30質量%、アミン価6.5mgKOH/g、水酸基価3.8mgKOH/g、重量平均分子量50,000のウレタン樹脂PU1の溶液を得た。ウレタン樹脂PU1の塩素含有率は0質量%、硝化度が0質量%である。
【0098】
(合成例2~3)ウレタン樹脂PU2~PU3
表1に示す原料を用い、合成例1と同様の方法により、ウレタン樹脂PU2~PU3の溶液を得た。ウレタン樹脂PU2及びPU3は、各々塩素含有率が0質量%、硝化度が0質量%である。
【0099】
表1中の略称は下記の通りである。
・MPD/SA:3-メチル1,5ペンタンジオールとセバシン酸の縮合物であるポリエステルポリオール、数平均分子量2,000
・NPG/SA:ネオペンチルグリコールとセバシン酸の縮合物であるポリエステルポリオール、数平均分子量2,000
・NPG/AA:ネオペンチルグリコールとアジピン酸の縮合物であるポリエステルポリオール、数平均分子量2,000
・PEG:ポリエチレングリコール、数平均分子量1,000
・PPG:ポリプロピレングリコール、数平均分子量1,000
・1,4-BD:1,4-ブタンジオール
・IPDI:イソホロンジイソシアネート
・IPDA:イソホロンジアミン
・AEA:N-(2-アミノエチル)エタノールアミン
・DBA:ジブチルアミン
・混合溶剤1:酢酸エチル/イソプロパノール(IPA)=70/30(質量比)
【0100】
実施例において、樹脂(B)として以下のものを用いた。
・PVB溶液:ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位及びビニルブチラール単位を有し、ブチラール環基を73質量%含むポリビニルブチラール樹脂(ガラス転移点70℃、重量平均分子量50,000、塩素含有率0質量%、硝化度0質量%)の酢酸エチル/イソプロパノール=1/1混合溶剤による固形分30%溶液
・CAP溶液:セルロースアセテートプロピオネート樹脂(イーストマンケミカル社製CAP-504-0.2、ガラス転移点160℃、重量平均分子量40,000、塩素含有率0質量%、硝化度0質量%)の固形分30%酢酸エチル溶液
・ロジン樹脂溶液:ペンタエリスリトールロジンエステル(ハリマ化成社製 ハリエスターP、軟化点100℃、酸価10mgKOH/g、重量平均分子量1,500、塩素含有率0質量%、硝化度0質量%)の固形分30%酢酸エチル溶液
・塩化ビニル-酢酸ビニル溶液:塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂(日信化学社製 ソルバインTA3、塩素含有率47.1質量%、硝化度0質量%)の固形分30%酢酸エチル溶液
硝化綿溶液:ニトロセルロース(ICI Novel enterprises社製、硝化度12質量%、塩素含有率0質量%)の固形分30%イソプロパノール溶液
・塩素化ポリプロピレン溶液:塩素化ポリプロピレン樹脂(重量平均分子量30,000、塩素含有率30質量%、硝化度0質量%)の固形分30%酢酸エチル溶液
【0101】
<グラビアインキの製造>
[実施例1]グラビアインキC1
ウレタン樹脂PU1溶液40部、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)溶液10部、C.I.ピグメントブルー15:3(トーヨーカラー社製、製品名:LIONOL BLUE FG-7330、塩素含有率0質量%、硝化度0質量%)10部、シリカ粒子(親水性シリカ、平均粒子径3.0μm、比表面積300m2/g)0.8部、混合溶剤2(n-プロピルアセテート/イソプロパノール=70/30(質量比))36部を混合し、ビーズミルで20分間分散して顔料分散体を得た。得られた顔料分散体に、塩素化ポリプロピレン溶液0.8部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点121.0℃)3.5部、及び水1.5部を攪拌混合し、有機溶剤系グラビアインキC1を得た。
【0102】
[実施例2~71]グラビアインキC2~C24(シアン色)、R1~R24(マゼンタ色)、Y1~23(イエロー色)
表2~表4に示す原料と配合に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、グラビアインキC2~C24、R1~R24、Y1~23を得た。
【0103】
[実施例72~76]グラビアインキセットS1~S5
実施例にて得られたグラビアインキを表5のように組み合わせてグラビアインキセットS1~S5を得た。
【0104】
[比較例1~7]グラビアインキSS1~SS7
表6に示す原料と配合に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、グラビアインキSS1~SS7を得た。
【0105】
以下に、使用した顔料の塩素含有率を示す。
・C.I.ピグメントブルー15:4(塩素含有率0質量%)
・C.I.ピグメントブルー16(塩素含有率0質量%)
・C.I.ピグメントレッド146(塩素含有率5.8質量%)
・C.I.ピグメントレッド185(塩素含有率0質量%)
・C.I.ピグメントレッド57:1(塩素含有率0質量%)
・C.I.ピグメントバイオレット19(塩素含有率0質量%)
・C.I.ピグメントレッド122(塩素含有率0質量%)
・C.I.ピグメントイエロー14(塩素含有率10.8質量%)
・C.I.ピグメントイエロー180(塩素含有率0質量%)
・C.I.ピグメントイエロー234(塩素含有率0質量%)
・C.I.ピグメントイエロー185(塩素含有率0質量%)
・C.I.ピグメントグリーン7(塩素含有率50質量%)
【0106】
<グラビアインキの評価>
実施例及び比較例で得られたグラビアインキを用いて、ハイライト転移性を評価した。
また、上記グラビアインキを用いて、印刷物及びラミネート積層体を作製し、耐ブロッキング性、トラッピング性、初期ラミネート強度、経時ラミネート強度を評価した。評価方法は以下のとおりである。結果を表2~6に示す。
【0107】
[ハイライト転移性]
グラビアインキの粘度を、混合溶剤1を用いて16秒(ザーンカップ#3(離合社製)、25℃)に調整した。30℃の高温条件下、グラビア版を取り付けたグラビア印刷機を用いて、片面にコロナ放電処理を施した二軸延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(フタムラ化学株式会社製FOR、厚み20μm)の処理面に印刷を行った。グラビア版は、網点グラデーション柄部分を有するグラビア版(円周600mmφ)であり、印刷速度は200m/分とした。印刷物について、ハイライト(網点面積5%以上10%以下)印刷部分における印刷柄のカスレの面積の割合を目視で評価した。
グラビアインキセットを用いる場合は、各色用グラビア版のセットを用いて各ユニットにインキを設置し、シアン色、マゼンタ色、イエロー色の順で印刷を行い、評価した。
(評価基準)
A(優):カスレがなく、非印刷部の汚れもない
B(良):カスレが面積比5%未満で見られる
C(可):カスレが面積比5%以上、15%未満で見られる
D(不可):カスレが面積比15%以上で見られる
【0108】
[印刷物の作製]
実施例及び比較例で得られたグラビアインキを、混合溶剤2を用いて、粘度が15秒(25℃、ザーンカップNo.3)となるように希釈した。次いで、ヘリオ175線ベタ版(版式コンプレスト、100%ベタ柄)を用いて、厚み20μmのポリプロピレンフィルムのコロナ放電処理面に、印刷速度100m/分で印刷し、印刷物を得た。
グラビアインキセットを用いる場合は、各色用グラビア版のセットを用いて各ユニットにインキを設置し、シアン色、マゼンタ色、イエロー色の順で印刷を行い、評価した。
【0109】
[トラッピング性]
得られた印刷物の印刷層上に、東洋インキ社製リオアルファSF121紅(紅インキ)を重ねて印刷を行った。印刷条件は、上記[ハイライト転移性]に記載の条件を用いた。紅インキが印刷層上にどの程度濡れ広がるかを目視で評価した。
(評価基準)
A(優):印刷された部分にムラが無い
B(良):印刷された部分に僅かにムラがある
C(可):印刷された部分にやや目立つムラがある
D(不可):印刷部の全体に渡り大きなムラがある、あるいはまだら模様がある
【0110】
[耐ブロッキング性]
得られた印刷物を4cm×4cmのサイズに切り出し、切り出したサンプルの印刷面と、同じサイズの厚み20μmのポリプロピレンフィルムの未処理面と、を重ね合わせて試験片とした。試験片に、温度40℃、相対湿度80%の雰囲気下で10kgfの荷重をかけ、24時間後フィルム間を剥がし、印刷面からのインキの剥離状態を目視で判断した。
(評価基準)
A(優):インキ被膜が剥離せず、剥離抵抗がない
B(良):インキ被膜が剥離せず、剥離抵抗が小さい
C(可):インキ被膜の剥離面積が1%以上、5%未満であり、剥離抵抗の小さい
D(不可):インキ被膜の剥離面積が5%以上である、又は、剥離抵抗が大きい
【0111】
[ラミネート積層体の製造]
上記得られた印刷物の印刷層上に、ウレタン系ラミネート接着剤(東洋モートン社製TM320/CAT13B、固形分30%酢酸エチル溶液)を、乾燥後塗布量が2.0g/m2となるように塗工し乾燥した後、接着剤層上に、厚み50μmの未延伸ポリエチレン(PE)フィルムを貼り合わせて、積層体を得た。
【0112】
[初期ラミネート強度]
得られた積層体を15mm幅に切り出し、引張り試験機を用いて引っ張り速度300mm/分で90度剥離試験を行い、ラミネート強度(N/15mm)を測定した。
(評価基準)
A(優):ラミネート強度が1.5N/15mm以上
B(良):ラミネート強度が1.0N/15mm以上、1.5N/15mm未満
C(可):ラミネート強度が0.5N/15mm以上、1.0N/15mm未満
D(不可):ラミネート強度が0.5N/15mm未満
【0113】
[経時ラミネート強度]
得られたラミネート積層体を、温度30℃、相対湿度50%環境下で7日間静置した。経時後の積層体を用いた以外は、[初期ラミネート強度]に記載の方法と同様にして、ラミネート強度(N/15mm)を測定した。
(評価基準)
A(優):ラミネート強度が1.5N/15mm以上
B(良):ラミネート強度が1.0N/15mm以上、1.5N/15mm未満
C(可):ラミネート強度が0.5N/15mm以上、1.0N/15mm未満
D(不可):ラミネート強度が0.5N/15mm未満
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
上記実施例で示したように、本発明の有機溶剤系グラビアインキは本願課題を全て解決し、固形分中の塩素含有率が本願要件を満たす実施例1~76は、経時後のラミネート強度に優れていた。
中でも、沸点100~160℃のアルコール系有機溶剤、グリコールエーテル系有機溶剤に加え水を含む実施例であって、水の含有量が0.3質量%超えて含む実施例(実施例13、37、60以外)のグラビアインキは、ハイライト転移性に優れていた。また、シリカ粒子を含む実施例(実施例2、26、50以外)はトラッピング性に優れていた。
一方、比較例に記載のインキは、以下の結果となった。
水を含有しないSS1はハイライト転移性とトラッピング性に劣り、水が10質量%を超えるSS2はハイライト転移性と耐ブロッキング性が劣る。またインキ固形分中又はバインダー樹脂中の塩素含有率が本願発明の範囲を超えているSS3~SS7は、7日後のラミネート強度が劣る結果であった。さらに、ウレタン樹脂(A)を含み樹脂(B)を含まないSS5は耐ブロッキング性及びラミネート強度が劣り、樹脂(B)を含みウレタン樹脂(A)を含まないSS7は、ラミネート強度が劣る結果であった。
【0121】
(参考合成例1)ウレタン樹脂PU4の水性分散体
還流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管、撹拌装置、及び温度計を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、数平均分子量2000の「MPD/AA」77.6部、数平均分子量2000のポリエチレングリコール(PEG)8部、2,2-ジメチロールブタン酸(DMBA)14.4部、及びメチルエチルケトン(MEK)40.6部を混合、撹拌しながら昇温した。沸点温度でイソホロンジイソシアネート(IPDI)62.2部を1時間かけて滴下し、更に4時間沸点反応させて末端イソシアネートプレポリマーとし、その後30℃まで冷却してからイソプロピルアルコール100部を加えて、末端イソシアネートプレポリマーの溶剤溶液を得た。AEAを15.7部及びイソプロピルアルコール400部を混合したものに、得られた末端イソシアネートプレポリマー溶液全量を室温で徐々に添加して、40℃で2時間反応させ、溶剤型ウレタン樹脂溶液を得た。次に、28%アンモニア水5.9部及びイオン交換水485.8部を上記溶剤型ウレタン樹脂溶液に徐々に添加して中和することにより水溶化し、さらに共沸下でメチルエチルケトン及びイソプロピルアルコールを留去した後、更に水を加えて水性化、粘度調整を行ない、酸価35mgKOH/g、水酸基価45mgKOH/g、固形分25%、重量平均分子量45,000、塩素含有率0質量%、硝化度0質量%のウレタン樹脂PU4の水性分散体を得た。
【0122】
(参考合成例2)ウレタン樹脂PU5の水性分散体
還流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管、撹拌装置、及び温度計を備えた4ツ口の2000mlフラスコに、数平均分子量2000のポリテトラメチレングルコール74.3部、数平均分子量2000のポリエチレングリコール3部、ジメチロールブタン酸13部、ビス(2-ヒドロキシプロピル)アニリン8部、及び1,4-シクロヘキサンジメタノール1.7部を仕込み、乾燥窒素で置換し、100℃まで昇温した。撹拌下、イソホロンジイソシアネ-ト41.3部を20分間で滴下し、温度を徐々に140℃まで昇温した(NCO/0H=0.98)。さらに30分間反応させ、ウレタン樹脂を得た。次に、冷却しながら28%アンモニア水8.9部を含む蒸留水750部を加え、酸価37mgKOH/g、水酸基価11mgKOH/g、固形分25%、重量平均分子量約40,000、塩素含有率0質量%、硝化度0質量%のウレタン樹脂PU5の水性分散体を得た。
【0123】
(比較例7)水系グラビアインキSS7
上記ウレタン樹脂PU4の水性分散体を45部、C.I.ピグメントレッド185を15部、ポリエチレンワックス水性分散体2部、28%アンモニア水0.2部、アジピン酸ジヒドラジド0.2部、及び混合溶剤3(水/イソプロパノール=80/20(質量比))37.6部を攪拌混合し、ビーズミルであるアイガーミルで顔料分散処理を行い、水系グラビアインキSS7を得た。
【0124】
(比較例8)水系グラビアインキSS8
ウレタン樹脂PU5の水性分散体を用いた以外は比較例7と同様の方法で、水系グラビアインキSS8を得た。
【0125】
上記水系グラビアインキSS7及び水系グラビアインキSS8のバインダー樹脂の塩素含有率は0質量%、硝化度は0質量%であり、インキ固形分質量中の塩素含有率は0質量%であった。
【0126】
水系グラビアインキSS7及びSS8は、グラビアインキの固形分質量中の塩素含有率は0質量%である。水系グラビアインキSS7及びSS8の粘度を、混合溶剤3を用いて15秒(ザーンカップ#3、25℃)に調整し、有機溶剤系グラビアインキと同様の評価を行ったところ、
SS7は、ハイライト転移性がC、トラッピング性がC、耐ブロッキング性がD、初期ラミネート強度がB、経時ラミネート強度がBであった。
SS8は、ハイライト転移性がC、トラッピング性がC、耐ブロッキング性がD、初期ラミネート強度がB、経時ラミネート強度がBであった。