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特許7164782活性エネルギー線硬化型コーティングニス、および積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型コーティングニス、および積層体
(51)【国際特許分類】
   C09D 193/04 20060101AFI20221026BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20221026BHJP
   C09D 4/00 20060101ALI20221026BHJP
   C09D 167/08 20060101ALI20221026BHJP
   C08F 220/10 20060101ALI20221026BHJP
   C08G 63/46 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
C09D193/04
C09D7/63
C09D4/00
C09D167/08
C08F220/10
C08G63/46
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022062195
(22)【出願日】2022-04-04
(62)【分割の表示】P 2021133876の分割
【原出願日】2021-08-19
【審査請求日】2022-06-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 智也
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-150469(JP,A)
【文献】特開2010-106191(JP,A)
【文献】特開2000-212493(JP,A)
【文献】特開2002-338848(JP,A)
【文献】特開2020-66649(JP,A)
【文献】特開2017-43743(JP,A)
【文献】特開2002-363446(JP,A)
【文献】特開2002-308935(JP,A)
【文献】国際公開第2017/164246(WO,A1)
【文献】特開2020-147730(JP,A)
【文献】特開2018-16688(JP,A)
【文献】国際公開第2017/099146(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00- 10/00
C09D 11/00- 13/00
C09D101/00-201/10
C08C 19/00- 19/44
C08F 6/00-246/00
C08F301/00
C08G 63/00- 64/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジン変性樹脂、重合禁止剤、および活性エネルギー線硬化型化合物を含むことを特徴とする、活性エネルギー線硬化型コーティングニスであって、
ロジン変性樹脂が、ロジン酸類(A)およびα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(B)の付加反応物と、ポリオール(C)と、脂肪酸(D)との反応物であり、
脂肪酸(D)が、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ひまし油脂肪酸、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸、ヌカ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、脱水ひまし油脂肪酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、および、リノレン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、
ロジン変性樹脂における脂肪酸(D)の配合量が、ロジン変性樹脂原料全配合量を基準として5~25質量%であり、
ロジン変性樹脂の重量平均分子量が、3,000~15,400である、活性エネルギー線硬化型コーティングニス。
【請求項2】
重合禁止剤が、分子中にピペリジン構造を有する化合物であることを特徴とする、請求項1記載の活性エネルギー線硬化型コーティングニス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロジン変性樹脂を用いた活性エネルギー線硬化型ニス、および積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙、プラスチックフィルム、シート、板等の各種基材の表面、又はその基材に印刷等により施された絵柄や模様、文字等の装飾の上にコーティングニスを塗工することにより、その基材自体の表面、或いは装飾加工面を保護することや、光沢処理することが広く行われている。このようなコーティングニスに、活性エネルギー線硬化型コーティングニスを使用する場合、コーティングニスを塗工してから紫外線を照射すると瞬時に硬化して高い光沢の皮膜が形成できるので、従来のビニール張り加工や、乾燥が必要な溶剤型コーティングニス等に比べて高い生産性が得られるという特徴がある。そして、活性エネルギー線硬化型コーティングニスは、有機溶剤等のVOCを大気中に放出しないので、環境保護の観点からも好ましい材料であり、雑誌の表紙、絵本、ポスター、カレンダー等の印刷物、美粧ケース等の紙器容器等に広く使用されている。このため、活性エネルギー線硬化型コーティングニスには、基材や印刷層を保護するための高い塗膜耐性や、美粧性を持たすための光沢などが要求される。
【0003】
印刷の高速化、省人化により、活性エネルギー線硬化型コーティングニスの高速乾燥性が求められている一方、コーティングニスの高速印刷対応化により蛍光灯由来の紫外線による、印刷機のインキツボ内での表面硬化(皮張り)といった印刷トラブルや、製品保管中の容器内での反応によるゲル化トラブルが発生している。また、そのため、活性エネルギー線硬化型コーティングニスには、印刷層の保護のための塗膜耐性と、印刷時以外では反応が進行しない保存安定性とを両立することが求められていた。
【0004】
高い塗膜耐性を得る方法として、例えば、特許文献1には、エポキシアクリレートと、2~4官能の(メタ)アクリレートモノマー、開始剤、ポリオキシアルキレン基を有するジメチルシリコン化合物を含有する活性エネルギー線硬化型コーティングワニスが開示されている。しかしながら、上記特許文献1のように、ジメチルシリコン化合物を使用することで、高い耐摩擦性やスリップ性は得られるが、光沢性は得られなかった。
【0005】
また、特許文献2は、ロジン変性樹脂などの動植物由来成分を含有する活性化エネルギー線硬化型ニスを開示している。ロジン変性樹脂などの動植物由来成分により優れた光沢性を発現している一方で、印刷機上及び製品保管における保存安定性評価結果は不十分である。
【0006】
このように、活性エネルギー線硬化型コーティングニスについて、種々の検討が行われているが、活性エネルギー線硬化型コーティングニスに要求される塗膜耐性と保存安定性において十分に満足できるものはなく、さらなる改善が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-196765号公報
【文献】特開2020-169256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、高い光沢性を有しながら、耐摩擦性、および、密着性といった塗膜耐性と、印刷機上及び製品保管における保存安定性とを両立できる活性エネルギー線硬化型コーティングニスおよびそれを用いた積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、ロジン変性樹脂と重合禁止剤とを使用することにより、優れた塗膜耐性と保存安定性を両立し得る活性エネルギー線硬化型コーティングニスが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、ロジン変性樹脂、および重合禁止剤、および活性エネルギー線硬化型化合物を含むことを特徴とする、活性エネルギー線硬化型コーティングニスであって、
ロジン変性樹脂が、ロジン酸類(A)およびα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(B)の付加反応物と、ポリオール(C)と、脂肪酸(D)との反応物であり、
脂肪酸(D)が、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ひまし油脂肪酸、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸、ヌカ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、脱水ひまし油脂肪酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、および、リノレン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、
ロジン変性樹脂における脂肪酸(D)の配合量が、ロジン変性樹脂原料全配合量を基準として5~25質量%であり、
ロジン変性樹脂の重量平均分子量が、3,000~15,400である、活性エネルギー線硬化型コーティングニスに関する。

【0015】
また、本発明は、重合禁止剤が、分子中にピペリジン構造を有する化合物であることを特徴とする、上記活性エネルギー線硬化型コーティングニスに関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、高い光沢性を有しながら、耐摩擦性、および、密着性といった塗膜耐性と、印刷機上及び製品保管における保存安定性とを両立できる活性エネルギー線硬化型コーティングニスおよびそれを用いた積層体を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、以下に記載の実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0020】
なお、本発明中に記載される「共役二重結合」とは、複数の二重結合が単結合を挟んで交互に連なっている結合を指す。ただし、芳香族化合物に含まれるπ電子共役系は、共役二重結合からは除かれる。
【0021】
<活性エネルギー線硬化型コーティングニス>
本発明の活性エネルギー線硬化型コーティングニスは、少なくともロジン変性樹脂と重合禁止剤と、活性エネルギー線硬化型化合物とを含む。
【0022】
<重合禁止剤>
本発明の活性エネルギー線硬化型コーティングニスは、重合禁止剤を含む。重合禁止剤は常法により添加し、使用することができる。活性化エネルギー線硬化型コーティングニスへの重合禁止剤の配合量は、硬化性を阻害しない観点から、活性エネルギー線硬化型コーティングニスの全質量を基準として、3質量%以下にすることが好ましく、0.01~1質量%の範囲で使用することがさらに好ましい。
【0023】
使用可能な重合禁止剤の具体例として、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、p-メトキシフェノール、t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、ピロガロール、1,1-ピクリルヒドラジル、フェノチアジン、p-ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、2,5-ジ-tert-ブチル-p-ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ-p-ニトロフェニルメチル、N-(3-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ジブチルクレゾール、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、グアヤコール、o-イソプロピルフェノール、ブチラルドキシム、メチルエチルケトキシム、およびシクロヘキサノンオキシム等が挙げられる。
特に、ピペリジン環上の2位および6位に各々2個ずつ(計4個)の炭化水素基を有する化合物である、2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体や2,2,6,6-テトラメチルピペリジン誘導体、1-アルキル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン誘導体または1-ヒドロ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン誘導体等のヒンダートアミン系から選択される1種以上の化合物を使用することが好ましく、印刷機械での硬化反応を阻害でき、優れた保存安定性を提供できる。
【0024】
<ロジン変性樹脂>
本発明におけるロジン変性樹脂とは、樹脂骨格中に、ロジン由来の骨格を含有する樹脂のことである。ロジン由来の骨格を含有することで、高速印刷時でのUV照射による硬化収縮を抑えることができ、乾燥被膜の平滑性を維持することができるため、光沢性と、基材に対する密着性が向上する。
【0025】
また、本発明におけるロジン変性樹脂は、ロジン酸類(A)に含まれる共役二重結合を有する有機酸とα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(B)とのディールスアルダー反応によって得られる化合物、ロジン酸類(A)のうち共役二重結合を有さない有機酸、およびその他の有機酸、それぞれにおけるカルボン酸とポリオール(C)との反応によってエステル結合を形成した化合物が有する水酸基と反応しエステル結合を形成したロジン変性樹脂が好ましい。
【0026】
また、本発明におけるロジン変性樹脂は、ロジン酸類(A)に含まれる共役二重結合を有する有機酸とα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(B)とのディールスアルダー反応によって得られる化合物、ロジン酸類(A)のうち共役二重結合を有さない有機酸、およびその他の有機酸、それぞれにおけるカルボン酸とポリオール(C)と、脂肪酸(D)との反応によってエステル結合を形成した化合物が有する水酸基と反応しエステル結合を形成したロジン変性樹脂が特に好ましい。
【0027】
<ロジン酸類(A)>
本発明におけるロジン変性樹脂を得るために用いるロジン酸類(A)とは、環式ジテルペン骨格を有する一塩基酸を指す。ロジン酸、不均化ロジン酸、水添ロジン酸、または前記化合物のアルカリ金属塩等を表し、具体的には、共役二重結合を有するアビエチン酸、およびその共役化合物である、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマル酸や、共役二重結合を有さないピマル酸、イソピマル酸、サンダラコピマル酸、およびデヒドロアビエチン酸等が挙げられる。またこれらのロジン酸類(A)を含有する天然樹脂として、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等が挙げられる。
【0028】
本発明におけるロジン変性樹脂を得るために用いるロジン酸類(A)の配合量は、樹脂原料の全配合量を基準として20~70質量%であることが好ましく、30~60質量%であることがより好ましい。ロジン酸類(A)の配合量が20質量%以上であれば、その樹脂を含む活性エネルギー線硬化型コーティングニスの光沢性が良好になり、配合量が70質量%以下であると、活性エネルギー線硬化型コーティングニスの耐摩擦性が良好となる。
【0029】
<α,β-不飽和カルボン酸またはその酸無水物(B)>
本発明におけるロジン変性樹脂を得るために用いるα,β-不飽和カルボン酸またはその酸無水物(B)としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸等およびこれらの酸無水物が例示される。ロジン酸類(A)との反応性を鑑みると、好ましくはマレイン酸またはその酸無水物である。
【0030】
本発明における、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(B)の配合量は、ロジン酸類(A)に対して、60~200の範囲であることが好ましく、70~180モル%の範囲であることがより好ましく、80~155モル%の範囲であることが特に好ましい。α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(B)の配合量を上記範囲内に調整した場合、対摩擦性、および密着性に優れるロジン変性樹脂を得ることが容易である。
【0031】
<(A)、(B)、および(D)以外のカルボン酸(以下「その他の有機酸類」ともいう)>
本発明におけるロジン変性樹脂を得るために、ロジン酸類(A)、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(B)、および脂肪酸(D)に加えて、その他の有機酸類を、単独または2種類以上用いることもできる。
その他の有機酸類の配合量は、樹脂原料の全配合量を基準として0~30質量%であることが好ましく、0~20質量%であることが更に好ましい。
【0032】
その他の有機酸類の具体的な例としては以下が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
(有機一塩基酸)
安息香酸、メチル安息香酸、ターシャリーブチル安息香酸、ナフトエ酸、オルトベンゾイル安息香酸等の芳香族一塩基酸、
共役リノール酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸、カレンジン酸等の共役二重結合を有するが環式ジテルペン骨格を有さない化合物
等が挙げられる。
【0034】
(脂環式多塩基酸またはその酸無水物)
1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸、3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸、4-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、およびこれらの酸無水物等が挙げられる。
【0035】
(その他の有機多塩基酸またはその酸無水物)
シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸などのアルケニルコハク酸、o-フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、およびこれらの酸無水物等が挙げられる。
【0036】
<ポリオール(C)>
ポリオール(C)は、ロジン酸類(A)に含まれる共役二重結合を有する有機酸とα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(B)とのディールスアルダー反応によって得られる化合物、ロジン酸類(A)のうち共役二重結合を有さない有機酸、脂肪酸(D)およびその他の有機酸、それぞれにおけるカルボン酸との反応によってエステル結合を形成する。本発明におけるロジン変性樹脂を得るために、以下に記載のポリオールを、単独または2種類以上用いることもできる。ポリオールの具体的な例としては以下が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
(直鎖状アルキレン2価ポリオール)
1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,2-デカンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,2-テトラデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、1,2-ヘキサデカンジオール等。
【0038】
(分岐状アルキレン2価ポリオール)
2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオ-ル、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ジメチロールオクタン、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール等。
【0039】
(環状2価ポリオール)
1,2-シクロヘプタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、水添ビスフェノールS、水添カテコール、水添レゾルシン、水添ハイドロキノン等の環状アルキレン2価ポリオール;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノン等の芳香族2価ポリオール。
【0040】
(その他の2価のポリオール)
ポリエチレングリコール(n=2~20)、ポリプロピレングリコール(n=2~20)、ポリテトラメチレングリコール(n=2~20)等の2価のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等。
【0041】
(3価のポリオール)
グリセリン、トリメチロ-ルプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール、3-メチルペンタン-1,3,5-トリオール、ヒドロキシメチルヘキサンジオール、トリメチロールオクタン等。
【0042】
(4価以上のポリオール)
ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジトリメチロ-ルプロパン、ジペンタエリスリト-ル、ソルビトール、イノシトール、トリペンタエリスリトール等の直鎖状、分岐状、および環状の4価以上のポリオール。
【0043】
<脂肪酸(D)>
脂肪酸(D)は、ロジン酸類(A)に含まれる共役二重結合を有する有機酸とα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(B)とのディールスアルダー反応によって得られる化合物、ロジン酸類(A)のうち共役二重結合を有さない有機酸、およびその他の有機酸、それぞれにおけるカルボン酸とポリオール(C)との反応によってエステル結合を形成した化合物が有する水酸基と反応しエステル結合を形成する。脂肪酸(D)の具体的な例としては以下が挙げられるが、これらに限定されるものではない。アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ひまし油脂肪酸、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸、ヌカ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、脱水ひまし油脂肪酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。
【0044】
本発明における、前記脂肪酸(D)の配合量は、樹脂原料の全配合量を基準として5~25質量%含むことが好ましい。脂肪酸(D)の配合量がこの範囲内の場合、その樹脂を含む活性エネルギー線硬化型コーティングニスの密着性が良好になるが、配合量が25質量%を超えると、活性エネルギー線硬化型コーティングニスの耐摩擦性が劣化する傾向があるため好ましくない。脂肪酸(D)の配合量は、樹脂原料の全配合量を基準として5~20質量%であることがより好ましい。
【0045】
本発明におけるロジン変性樹脂は、重量平均分子量が3,000~30,000であることが好ましく、3,000~15、000であることがより好ましい。重量平均分子量が3,000~30,000であることで、耐摩擦性と密着性が良好となる。
【0046】
本発明におけるロジン変性樹脂は、酸価が20~80mgKOH/gが好ましく、30~80mgKOH/gがより好ましく、40~80mgKOH/gがさらに好ましく、50~80mgKOH/gが特に好ましい。ロジン変性樹脂の酸価が上記範囲内である場合、当該樹脂を使用した活性エネルギー線硬化型コーティングニスは、優れた密着性を有する。
【0047】
また、ロジン変性樹脂の融点は50℃以上であることが好ましく、60~100℃の範囲がより好ましい。なお融点は、BUCHI社製のMeltingPointM-565を用い、昇温速度0.5℃/分の条件下で測定できる。
【0048】
本発明の活性エネルギー線硬化型コーティングニスは、ロジン変性樹脂を5~40質量%、活性エネルギー線硬化型化合物を20~70質量%含有するものであることが好ましい(但し、各成分の含有量の合計が100質量%とする)。
ここで、ロジン変性樹脂、および上記活性エネルギー線硬化型化合物は、後述するワニスの形態に調製して使用してもよい。
【0049】
本明細書において、活性エネルギー線硬化型化合物とは、分子内に(メタ)アクリロイル基を有する化合物を意味する。
本発明の活性エネルギー線硬化型コーティングニスを構成するために使用可能な活性エネルギー線硬化型化合物の具体例として、
2-エチルヘキシルアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアクリレート、テトラエチレングリコールモノフェニルエーテルアクリレート、アクリロイルモルホリン等の単官能活性エネルギー線硬化型化合物、
エチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(n=2~20)、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート(n=2~20)、アルキレン(炭素数4~12)グリコールジアクリレート、アルキレン(炭素数4~12)グリコールエチレンオキサイド付加物(2~20モル)ジアクリレート、アルキレン(炭素数4~12)グリコールプロピレンオキサイド付加物(2~20モル)ジアクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジアクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、水添ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(2~20モル)ジアクリレート、水添ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(2~20モル)ジアクリレート等の2官能活性エネルギー線硬化型化合物、
グリセリントリアクリレート、グリセリンエチレンオキサイド付加物(3~30モル)トリアクリレート、グリセリンプロピレンオキサイド付加物(3~30モル)トリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加物(3~30モル)トリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド付加物(3~30モル)トリアクリレート等の3官能活性エネルギー線硬化型化合物、
ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド付加物(4~40モル)テトラアクリレート、ペンタエリスリトールプロピレンオキサイド付加物(4~40モル)テトラアクリレート、ジグリセリンテトラアクリレート、ジグリセリンエチレンオキサイド付加物(4~40モル)テトラアクリレート、ジグリセリンプロピレンオキサイド付加物(4~40モル)テトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加物(4~40モル)テトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンプロピレンオキサイド付加物(4~40モル)テトラアクリレート等の4官能活性エネルギー線硬化型化合物、および
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールエチレンオキサイド付加物(6~60モル)ヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールプロピレンオキサイド付加物(6~60モル)ヘキサアクリレート等の多官能活性エネルギー線硬化型化合物
が挙げられる。活性エネルギー線硬化型化合物として、例示した化合物を単独で使用しても、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0050】
活性エネルギー線硬化型化合物は、要求される硬化皮膜特性に応じて、適宜選択することが可能である。必要に応じて、上記化合物に加えて、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、およびエポキシアクリレート等のオリゴマーを併用することも可能である。
【0051】
本発明の活性エネルギー線硬化型コーティングニスは、活性エネルギー線の照射によって硬化する。紫外線でコーティングニスを硬化させる場合は、コーティングニスに光重合開始剤を添加することが好ましい。一般に、光重合開始剤は、光により分子内で結合が開裂して活性種を生成するタイプと、分子間で水素引き抜き反応を起こして活性種を生成するタイプとの2種類に大別できる。
【0052】
前者として、例えば、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、ジエトキシアセトフェノン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパン}、4-(2-アクリロイル-オキシエトキシ)フェニル-2-ヒドロキシ-2-プロピルケトン等のアセトフェノン系、ベンゾイン、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトンとベンゾフェノンとの混合物、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系、ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステル、および3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0053】
後者として、例えば、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系、ミヒラーケトン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系、10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、およびカンファーキノン等がある。
光重合開始剤は、1種を単独で使用しても、必要に応じて2種以上を組合せて使用しても良い。
【0054】
本発明の活性エネルギー線硬化型コーティングニスに紫外線を照射して、コーティングニスを硬化させる場合、コーティングニスに光重合開始剤を添加するだけでよいが、硬化性をより向上させるために、光増感剤を併用することもできる。
光増感剤としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2-ジメチルアミノ)エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸(n-ブトキシ)エチル、および4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル等のアミン類が挙げられる。
【0055】
活性エネルギー線として紫外線を使用する場合、光重合開始剤の配合量は、活性エネルギー線硬化型コーティングニスの全質量を基準として、0.01~20質量%であることが好ましく、0.05~15質量%であることがより好ましい。上記配合量を0.01質量%以上とした場合、硬化反応が十分に進行する。また、上記配合量を20質量%以下とした場合、熱重合反応の発生を抑制し活性エネルギー線硬化型コーティングニスの安定性を好適な状態にすることが容易である。活性エネルギー線として、紫外線以外の電離放射線を使用する場合には、光重合開始剤を配合しなくてもよい。
【0056】
活性エネルギー線硬化型コーティングニスは、耐摩擦剤、ブロッキング防止剤、スベリ剤等の各種添加剤を、目的に応じて、さらに含んでもよい。各種添加剤は、常法によりコーティングニスに添加することができる。コーティングニスに対して各種添加剤を添加する場合、他のコーティングニス材料の効果を阻害しない範囲で配合量を調整することが好ましい。各種添加剤の配合量は、活性エネルギー線硬化型コーティングニス全質量を基準として、15質量%以下であることが好ましい
【0057】
<活性エネルギー線硬化型コーティングニス用ワニス>
本発明の活性エネルギー線硬化型コーティングニスは、ロジン変性樹脂を含む活性エネルギー線硬化型コーティングニス用ワニスから製造することもできる。
【0058】
活性エネルギー線硬化型コーティングニス用ワニスは、少なくともロジン変性樹脂と、活性エネルギー線硬化型化合物とを含み、ワニスの全質量を基準として、ロジン変性樹脂を30~80質量%と、活性エネルギー線硬化型化合物を20~70質量%とを含有することが好ましい。
【0059】
活性エネルギー線硬化型コーティングニス用ワニスにおけるロジン変性樹脂と活性エネルギー線硬化型化合物との配合比は、質量比で30:70~75:25の範囲が好ましく、35:65~70:30の範囲がさらに好ましい。
【0060】
本発明における活性エネルギー線硬化型コーティングニス用ワニスは、上記成分に加えて、さらに重合禁止剤を含んでもよい。このような実施形態では、重合禁止剤を常法により添加し、使用することができる。上記ワニスに重合禁止剤を添加する場合、その配合量は、活性エネルギー線硬化型コーティングニス用ワニスの全質を基準として、3質量%以下にすることが好ましく、0.01~1質量%の範囲で使用することがさらに好ましい。
【0061】
使用可能な重合禁止剤の具体例として、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、p-メトキシフェノール、t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、ピロガロール、1,1-ピクリルヒドラジル、フェノチアジン、p-ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、2,5-ジ-tert-ブチル-p-ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ-p-ニトロフェニルメチル、N-(3-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ジブチルクレゾール、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、グアヤコール、o-イソプロピルフェノール、ブチラルドキシム、メチルエチルケトキシム、およびシクロヘキサノンオキシム等が挙げられる。特に限定するものではないが、ハイドロキノン、p-メトキシフェノール、t-ブチルハイドロキノン、p-ベンゾキノン、2,5-ジ-tert-ブチル-p-ベンゾキノンからなる群から選択される1種以上の化合物を使用することが好ましい。
【0062】
活性エネルギー線硬化型コーティングニス用ワニスが含有する重合禁止剤は、活性エネルギー線硬化型コーティングニス中の重合禁止剤にも該当する。
活性エネルギー線硬化型コーティングニス用ワニス中の重合禁止剤の含有量は、活性エネルギー線硬化型コーティングニスが含有する重合禁止剤の全質量を基準として、0~80質量%であることが好ましく、0~60質量%であることがより好ましい。
【0063】
本発明における活性エネルギー線硬化型コーティングニス用ワニスは、例えば、常温から160℃の間の温度条件下で、上記成分を混合することで製造することができる。
具体的には、ロジン変性樹脂と、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加物トリアクリレートと、ハイドロキノンとを、100℃の温度条件下で、加熱溶融して得たワニス等を好適に使用することができる。
【0064】
活性エネルギー線の照射は、窒素ガス等の不活性ガス置換雰囲気下で実施することが好ましいが、大気中で照射しても差し支えない。活性エネルギー線を照射する前に、赤外線ヒーター等によって活性エネルギー線硬化型コーティングニスの塗布層を加温するか、又は活性エネルギー線を照射した後に、活性エネルギー線硬化型コーティングニスの硬化層を赤外線ヒーター等で加温することは、硬化を速く終了させるために有効である。
【0065】
本明細書において、活性エネルギー線とは、代表的に、紫外線、電子線、X線、α線、β線、γ線のような電離放射線、マイクロ波、高周波等を意味する。しかし、活性エネルギー線は、上記に限定されるものではなく、ラジカル性活性種を発生させ得るならば、いかなるエネルギー種でもよく、可視光線、赤外線、およびレーザー光線でもよい。
紫外線を発生するものとしては、例えば、LED、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、ヘリウム・カドミウムレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、およびアルゴンレーザーなどが挙げられる。
【0066】
本発明の活性エネルギー線硬化型コーティングニスは、各種基材や、フォーム用印刷物、各種書籍用印刷物、カルトン紙等の各種包装用印刷物、各種プラスチック印刷物、シール/ラベル用印刷物、美術印刷物、金属印刷物(美術印刷物、飲料缶印刷物、缶詰等の食品印刷物)などの印刷物に適用される。
【0067】
<積層体>
本発明の積層体は、本発明の活性エネルギー線硬化型コーティングニスを、基材上、または基材にインキを印刷した印刷物の印刷面上に印刷または塗工することによって得られる。基材としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。具体的には、アート紙、コート紙、キャスト紙などの塗工紙や上質紙、中質紙、新聞用紙などの非塗工紙、ユポ紙などの合成紙、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、OPP(2軸延伸ポリプロピレン)のようなプラスチックフィルムなどが挙げられる。
また、基材に印刷するインキとしては、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷等公知の印刷方法に適した任意のインキを使用することができる。
【0068】
本発明の活性エネルギー線硬化型コーティングニスを、基材上、または基材にインキを印刷した印刷物の印刷面上に印刷または塗工する方法としては、ロールコーター、グラビアコーター、フレキソコーター、エアドクターコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、トランスファーロールコーター、キスコーター、カーテンコーター、キャストコーター、スプレーコーター、ダイコーター、オフセット印刷(湿し水を使用する通常の平版及び湿し水を使用しない水無し平版)、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷等が挙げられる。
【実施例
【0069】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、本明細書に記載の「部」は質量部を表し、「%」は質量%を示す。
【0070】
以下の実施例で実施した各種測定の詳細は以下のとおりである。
(重量平均分子量)
重量平均分子量は、東ソー(株)製のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(HLC-8320)で測定した。検量線は標準ポリスチレンサンプルにより作成した。また、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、カラムとしてTSKgel SuperHM-M(東ソー(株)製)を3本用いた。測定は、流速0.6mL/分、注入量10μL、およびカラム温度40℃の条件下で行った。
【0071】
(酸価)
酸価は、中和滴定法によって測定した。具体的には、先ず、ロジン変性樹脂1gをキシレン:エタノール=2:1の質量比で混合した溶媒20mLに溶解させた。次いで、先に調製したロジン変性樹脂の溶液に、指示薬として3質量%のフェノールフタレイン溶液を3mL加えた後に、0.1mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液で中和滴定を行った。酸価の単位は、mgKOH/gである。
【0072】
(ロジン酸類の成分分析)
原料として使用するロジン酸類をガスクロマトグラフィー質量分析計で分析し、全ロジン酸ピーク面積100%に対する、各ピーク面積比(%)を求めた。より具体的には、ロジン酸類中に含まれ、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(B)とディールスアルダー付加反応を起こす共役系ロジン酸と、前記共役系ロジン酸以外との含有比を、それぞれ該当するピーク面積の比から求めた。
【0073】
(ディールスアルダー付加反応の進行の確認と、生成した上記付加反応物の定量)
ディールスアルダー付加反応の反応液をガスクロマトグラフィー質量分析計で分析し、原料として使用した、ロジン酸類(A)、およびα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(B)の検出ピークの減少によって反応の進行を確認した。検出ピークの減少に変化が見られない時点で反応を終了した。
【0074】
1.ロジン変性樹脂、ワニス、および活性エネルギー線硬化型コーティングニス組成物の調製
以下に示す実施例および比較例の処方に従い、ロジン変性樹脂、ワニス、および活性エネルギー線硬化型コーティングニス組成物をそれぞれ調製した。
なお、以下に示す処方で使用したガムロジンは、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(B)とディールスアルダー付加反応を起こす共役系ロジン酸の含有量が80質量%であり、前記共役系ロジン酸以外の含有量が20質量%であった。
【0075】
(合成例1)
攪拌機、水分離器付き還流冷却器、および温度計を備えた4つ口フラスコに、ガムロジン37部と無水マレイン酸19部とを仕込み、窒素ガスを吹き込みながら、180℃で1時間にわたって加熱することにより、反応混合物を得た。次いで、先に説明したように、反応混合物のガスクロマトグラフ質量分析によって、ディールスアルダー付加反応が完了したことを確認した。
次に、上記反応混合物に、テトラヒドロ無水フタル酸10部と、ネオペンチルグリコール25部と、トリメチロールプロパン9部と、触媒として、p-トルエンスルホン酸一水和物0.1部とを添加し、240℃で8時間にわたって脱水縮合反応を行い、樹脂1を得た。樹脂1の酸価は70であり、GPC測定ポリスチレン換算での重量平均分子量(Mw)は24,000であった。
【0076】
(合成例2)
攪拌機、水分離器付き還流冷却器、および温度計を備えた4つ口フラスコに、ガムロジン46部と無水マレイン酸13部とを仕込み、窒素ガスを吹き込みながら、180℃で1時間にわたって加熱することにより、反応混合物を得た。次に、上記反応混合物に、1,4-シクロヘキサンジメタノール4部と、ネオペンチルグリコール19部と、トリメチロールプロパン6部と、触媒として、p-トルエンスルホン酸一水和物0.1部とを添加し、240℃で8時間にわたって脱水縮合反応を行った後、トール油脂肪酸12部を添加し、3時間にわたって脱水縮合反応を行い、樹脂2を得た。樹脂2の酸価は52であり、Mw7,500であった。
【0077】
(合成例3)
合成例2と同様の操作にて、表1に示す配合組成で酸価55、Mw8,600の樹脂3を得た。
【0078】
(合成例4)
合成例2と同様の操作にて、表1に示す配合組成で酸価44、Mw33,700の樹脂4を得た。
【0079】
(合成例5)
合成例2と同様の操作にて、表1に示す配合組成で酸価35、Mw32,100の樹脂5を得た。
【0080】
(合成例6)
合成例2と同様の操作にて、表1に示す配合組成で酸価56、Mw4,100の樹脂6を得た。
【0081】
(合成例7)
合成例2と同様の操作にて、表1に示す配合組成で酸価78、Mw15,400の樹脂7を得た。
【0082】
(合成例8)
合成例2と同様の操作にて、表1に示す配合組成で酸価59、Mw28,300の樹脂8を得た。
【0083】
(比較例用樹脂A)
株式会社大阪ソーダ製のジアリルフタレート樹脂「DAP A」を使用した。
【0084】
(比較例用樹脂B)
攪拌機、水分離器付き還流冷却器、および温度計を備えた4つ口フラスコに、無水マレイン酸48部と、ネオペンチルグリコール31部と、トリメチロールプロパン21部と、触媒として、p-トルエンスルホン酸一水和物0.1部とを添加し、窒素ガスを吹き込みながら、240℃で9時間にわたって脱水縮合反応を行い、樹脂Bを得た。樹脂Bの酸価は21であり、GPC測定ポリスチレン換算での重量平均分子量(Mw)は25,000であった。
【0085】
(比較例用樹脂C)
攪拌機、水分離器付き還流冷却器、および温度計を備えた4つ口フラスコに、無水マレイン酸10部と、テトラヒドロ無水フタル酸37部と、1,4-シクロヘキサンジメタノール11部と、ネオペンチルグリコール21部と、トリメチロールプロパン11部と、触媒として、p-トルエンスルホン酸一水和物0.1部とを添加し、窒素ガスを吹き込みながら、240℃で7時間にわたって脱水縮合反応を行った後、トール油脂肪酸10部を添加し、3時間にわたって脱水縮合反応を行い、樹脂Cを得た。樹脂Cの酸価は23であり、GPC測定ポリスチレン換算での重量平均分子量(Mw)は22,000であった。
【0086】
【表1】
【0087】
なお、トール油脂肪酸としては、クレイトンコーポレーション製 SYLFAT FA1を使用した。
【0088】
(活性エネルギー線硬化型コーティングニス用ワニスの作成)
前記方法で得られた樹脂1~8、B、C、および、樹脂Aについて、それぞれ、樹脂を55部、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加物トリアクリレート44.9部、およびハイドロキノン0.1部を入れて混合し、これらを100℃で加熱溶融することで、ワニス1~8、A、B、Cを得た。なお、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加物トリアクリレートとしては、東亞合成社製アロニックスM-350を使用した。
【0089】
(活性エネルギー線硬化型コーティングニスの作成)
実施例1~11、比較例A~D
表2に記載の材料を混合し、50℃で30分撹拌することで実施例1~11、比較例A~Dの活性エネルギー線硬化型コーティングニスを得た。
なお、ワニスとしては、前記方法で得られた活性エネルギー線硬化型コーティングニス用ワニスを用いた。トリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加物トリアクリレートとしては、東亞合成社製アロニックスM-350を用いた。また、ポリストップ7300Pは、伯東株式会社製の分子中にピペリジン構造を有する化合物からなる重合禁止剤である。
【0090】
【表2】
【0091】
活性エネルギー線硬化型コーティングニスの評価
得られた実施例1~11、比較例A~Dの活性エネルギー線硬化型コーティングニスについて、下記の方法に従い、製品安定性と印刷皮膜適性を評価した。
【0092】
<安定性の評価>
(保存安定性の評価)
実施例1~11、比較例A~Dの活性エネルギー線硬化型コーティングニスを、密閉した容器中で60℃にて1週間静置した。撹拌後、80メッシュの金属メッシュにて濾過し、メッシュ上の凝集物の量を目視評価した。3で実用上問題ないレベルであると評価する。
5 : 凝集物が全くない。
4 : 僅かに小さな凝集物が存在する。
3 : 小さな凝集物が存在する。
2 : 小さな凝集物と、僅かに大きな凝集物が存在する。
1 : 大きな凝集物が多数存在する。
【0093】
(印刷機上安定性の評価)
実施例1~11、比較例A~Dの活性エネルギー線硬化型コーティングニスを、100mlの褐色ポリ瓶に60g入れ、蓋をせず、大気中・蛍光灯下で24時間放置した。その後、活性エネルギー線硬化型コーティングニスの表面硬化状態を目視評価した。3で実用上問題ないレベルであると評価する。
5 : 表面硬化が全く発生していない。
4 : 表面の一部(面積の1%未満)に、表面硬化が発生している。
3 : 表面の一部(面積の1%以上10%未満)に、表面硬化が発生している。
2 : 表面の一部(面積の面積の10%以上50%未満)に、表面硬化が発生している。
1 : 表面の一部(面積の50%以上)、又は全部に、表面硬化が発生している。
【0094】
<印刷皮膜適性の評価1>
FDカルトンX(東洋インキ(株)製の活性エネルギー線硬化型インキ)の墨インキを、RIテスター(明製作所製簡易展色装置)を用いて、マリコート紙(北越製紙社製コートボール紙)へ1g/m2の塗布量で印刷し、120W/cmの空冷メタルハライドランプ(東芝社製)1灯を用いて60m/minで紫外線を照射した。
次いで、硬化させたインキ層上に、実施例1~11、比較例A~Dの活性エネルギー線硬化型コーティングニスをバーコーター♯2にて塗工し、120W/cmの空冷メタルハライドランプ(東芝社製)1灯を用いて60m/minで紫外線を照射し積層体を得た。
【0095】
得られた積層体の光沢性、および耐摩擦性について、以下に従って評価した。各評価の結果を表3に示す。
【0096】
(光沢性)
上記のようにして得た積層体に対し、光沢計グロスメーターモデルGM-26((株)村上色彩技術研究所製)を用いて、試験サンプルの60°光沢値を測定した。得られた光沢値から光沢性を以下の基準に従い、5段階で評価した。光沢値の数値が高い程、光沢が良いことを表す。3で実用上問題ないレベルであると評価する。
5:光沢値が80以上である。
4:光沢値が60以上80未満である。
3:光沢値が40以上60未満である。
2:光沢値が20以上40未満である。
1:光沢値が20未満である。
【0097】
(耐摩擦性)
耐摩擦性は、上記のようにして得た積層体の印刷面(塗膜)に対し、JIS-K5701-1に準じて、試験を行い評価した、具体的には、学振型摩擦堅牢度試験機(テスター産業社製)を用いて、摩擦用紙として上質紙を500g加重で塗膜表面を500回往復させた。次いで、摩擦面(塗膜表面)の変化を目視にて観察し、以下の基準に従い5段階で評価した。3で実用上問題ないレベルであると評価する。
5:印刷面の変化なし。
4:印刷面の一部でキズが見られるが、剥離は見られない。
3:印刷面の一部(面積の10%未満)に剥離が見られる。
2:印刷面の一部(面積の10%以上50%未満)に剥離が見られる。
1:印刷面の一部(面積の50%以上)、又は全部に剥離が見られる。
【0098】
また、FDカルトンX(東洋インキ(株)製の活性エネルギー線硬化型インキ) の墨インキを、RIテスター(明製作所製簡易展色装置)を用いて、PETフィルムに対して1g/m2の塗布量で印刷し、120W/cmの空冷メタルハライドランプ(東芝社製)1灯を用いて60m/minで紫外線を照射た。
次いで、硬化させたインキ層上に、実施例1~11、比較例A~Dの活性エネルギー線硬化型コーティングニスをバーコーター♯2にて塗工し、120W/cmの空冷メタルハライドランプ(東芝社製)1灯を用いて60m/minで紫外線を照射し積層体を得た。またPETフィルムの代わりにPPフィルムを使用し、上記方法と同様にして積層体を得た。
【0099】
各積層体の密着性を以下に従って評価した。評価結果を表3に示す。
【0100】
(密着性)
上記のようにして得たPETフィルムおよびPPフィルムへの各積層体に対し、セロハンテープ剥離試験を行い、密着性を評価した。試験後の印刷物の表面を目視で観察し、密着性を以下の基準に従い、5段階で評価した。3で実用上問題ないレベルであると評価する。
5:印刷面の変化なし。
4:印刷面の一部でキズが見られるが、剥離は見られない。
3:印刷面の一部(面積の10%未満)に剥離が見られる。
2:印刷面の一部(面積の10~50%未満)に剥離が見られる。
1:印刷面の一部(面積の50%以上)、又は全部に剥離が見られる。
【0101】
【表3】
【0102】
表3に示すように、実施例1~11の活性エネルギー線硬化型コーティングニスおよび該ニスを用いた積層体は、保存安定性、印刷機上安定性、光沢性、耐摩擦性、密着性の全ての評価において、使用可能なレベルであり、優れた安定性と印刷皮膜適性とを両立できることが分かる。一方、比較例A~Dの活性エネルギー線硬化型コーティングニスおよび該ニスを用いた積層体では、安定性と印刷皮膜適性との両立は困難であった。
より詳細には、比較例Dの活性エネルギー線硬化型コーティングニスに見られるように、重合禁止剤が含まれていない時、ニス中で発生するラジカルをトラップできず、重合反応が進行するため、保存安定性、印刷機上安定性が低下した。
一方、比較例A~Cの活性エネルギー線硬化型コーティングニスでは、ロジン酸類(A)が含まれていないため、UV照射による硬化収縮を抑えられず、乾燥被膜の平滑性を維持することができないため、光沢性が低下していると考えられる。同様に、硬化収縮により乾燥被膜のカールが発生し、密着性が低下していると考えられる
比較例Bの活性エネルギー線硬化型コーティングニスでは、耐摩擦性が低下する結果となった。これは、酸成分がα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(B)のみで構成されており、樹脂の剛直性が不十分となることが、硬化膜の強度低下に影響したと考えられる。
【0103】
<印刷皮膜適性の評価2>
マリコート紙、PETフィルム、およびPPフィルムに、実施例1~11、比較例A~Dの活性エネルギー線硬化型コーティングニスをバーコーター♯2にて塗工し、120W/cmの空冷メタルハライドランプ(東芝社製)1灯を用いて60m/minで紫外線を照射し積層体を得た。
【0104】
得られた積層体に対し、光沢性、耐摩擦性、および密着性について、上記に従って同様の評価を行ったところ、いずれも実用上問題ないレベルを満たしていた。
【要約】
【課題】本発明の目的は、高い光沢性を有しながら、耐摩擦性、および、密着性といった塗膜耐性と、印刷機上及び製品保管における保存安定性とを両立できる活性エネルギー線硬化型コーティングニスおよびそれを用いた積層体を提供することである。
【解決手段】上記課題は、ロジン変性樹脂、重合禁止剤、および活性エネルギー線硬化型化合物を含むことを特徴とする、活性エネルギー線硬化型コーティングニス、および、該ニスを用いた積層体により解決できる。
【選択図】なし