(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】紫外線吸収剤及びその製造方法、組成物、成形体、塗膜
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20221026BHJP
C07D 251/20 20060101ALI20221026BHJP
C08K 5/3492 20060101ALI20221026BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
C09K3/00 104C
C07D251/20
C08K5/3492
C08L101/00
(21)【出願番号】P 2022111368
(22)【出願日】2022-07-11
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2021116306
(32)【優先日】2021-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591183153
【氏名又は名称】トーヨーカラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】千葉 優美香
(72)【発明者】
【氏名】辰巳 僚一
(72)【発明者】
【氏名】槇 大輔
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/132247(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第1298126(EP,A1)
【文献】独国実用新案第202008010003(DE,U1)
【文献】特開平9-176135(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第1107143(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
C07D 251/20
C08K 5/3492
C08L 101/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)~(3)で示す化合物からなる群から選ばれる1種以上の紫外線吸収色素、ならびにNa、Mg、Al、K、Ca、およびFeからなる群から選ばれる1種以上の金属原子を含む金属成分を含む紫外線吸収剤であって、前記金属成分の含有量が前記紫外線吸収剤に対して0.1~50000ppmである、紫外線吸収剤。
【化1】
(一般式(1)~(3)中、R
1b~R
1g、R
2a~R
2g、及びR
3a~R
3gは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトリル基、ニトロ基、スルホ基、R
7、Ar
1、及び下記一般式(4-1)~(4-3)で示す基からなる群より選択されるいずれかを表す。
R
7は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルケニル基、炭素数1~20のアルコシキ基、及び炭素数1~20のアルケニルオキシ基からなる群より選択されるいずれかを表し、水酸基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトリル基、ニトロ基、カルボキシル基、またはスルホ基の置換基を有してもよく、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルケニル基、炭素数1~20のアルコシキ基、及び炭素数1~20のアルケニルオキシ基の炭素原子と炭素原子の間が一つまたは複数の-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、または-NHCO-で連結されていてもよい。
Ar
1は、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアリールオキシ基、及びビフェニル基からなる群より選択されるいずれかを表し、水酸基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数1~20のアルコシキ基、炭素数1~20のアルケニルオキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトリル基、ニトロ基、カルボキシル基、またはスルホ基の置換基を有してもよい。
一般式(2)~(3)中、R
4、R
5、R
6は、それぞれ独立に、水酸基、R
7、及びAr
1からなる群より選択されるいずれかを表す。
一般式(4-1)
【化2】
一般式(4-1)中、X
1は、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、及び-NHCO-からなる群より選択されるいずれかを表し、R
8は、水素原子、水酸基、R
7、及びAr
1からなる群より選択されるいずれかを表す。ただし、一般式(4-1)中の*は、一般式(1)~(3)のナフタレン環との結合部位を表す。
一般式(4-2)
【化3】
一般式(4-2)中、X
2、X
3は、それぞれ独立に、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、及び-NHCO-からなる群より選択されるいずれかを表し、R
9は、炭素数6~20のアリーレン基を表し、R
10は、R
7またはAr
1を表す。ただし、一般式(4-2)中の*は、一般式(1)~(3)のナフタレン環との結合部位を表す。
一般式(4-3)
【化4】
一般式(4-3)中、X
4、X
5は、それぞれ独立に、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、及び-NHCO-からなる群より選択されるいずれかを表し、R
11は、直鎖または分岐鎖状の炭素数1~20のアルキレン基、または炭素数6~20のアリーレン基を表し、R
12は、R
7またはAr
1を表し、nは1~20である。ただし、一般式(4-3)中の*は、一般式(1)~(3)のナフタレン環との結合部位を表す。)
【請求項2】
前記紫外線吸収色素は、下記式(A)、(B)および(C)で示す化合物からなる群から選ばれる1種以上の化合物を含む、請求項1に記載の紫外線吸収剤。
【化5】
【請求項3】
前記金属成分がAlを含む、請求項1に記載の紫外線吸収剤。
【請求項4】
請求項1に記載の紫外線吸収剤、ならびに一般式(1)~(3)で示す化合物以外の化合物であるトリアジン環含有化合物、ベンゾトリアゾール環含有化合物、およびベンゾフェノン環含有化合物からなる群から選択される少なくとも1種以上の第2の紫外線吸収剤を含む、組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の紫外線吸収剤、および波長450~650nmの可視波長域の光を遮光する色材を含む、組成物。
【請求項6】
前記色材は、2種類以上の有彩色着色剤を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の紫外線吸収剤、ならびにフタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、スクアリリウム化合物、シアニン化合物、およびジケトピロロピロールからなる群から選択される1種以上の近赤外線吸収剤を含み、
前記近赤外線吸収剤は波長600~1500nmの波長領域に極大吸収を有する、組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の紫外線吸収剤、および樹脂を含む、組成物。
【請求項9】
前記樹脂が熱可塑性樹脂を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の紫外線吸収剤、光重合性化合物、及び光重合開始剤を含む、組成物。
【請求項11】
請求項4~10のいずれか1項に記載の組成物から成形されてなる、成形体。
【請求項12】
請求項4~10のいずれか1項に記載の組成物から形成されてなる、塗膜。
【請求項13】
請求項1~3のいずれか1項に記載の紫外線吸収剤の製造方法であって、
前記紫外線吸収色素の合成反応液に水を含む貧溶媒を加えて分液し、金属成分を取り除く工程;前記分液及び濾過後にアルコール又は水、もしくはその混合液を用いて前記紫外線吸収色素を洗浄する工程;アルコール又は水、もしくはその混合液に前記紫外線吸収色素をリスラリーして洗浄する工程;及び、酸溶液を用いて前記紫外線吸収色素をリスラリーして洗浄する工程からなる群から選択される1つ以上の工程を行うことにより、前記紫外線吸収色素に含まれる金属成分の含有量を調整する、紫外線吸収剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線吸収剤及びその製造方法、組成物、成形体、塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂に紫外線吸収剤を配合して成形体及び塗膜に紫外線吸収性を付与している。太陽光のうち可視域より短波長域(100~400nm)の光の紫外線は、近年では波長400nm未満の紫外線のみならず、400~420nm程度の可視光短波長領域の光も有機物及び人体にダメージを与えることが指摘されている。そのため、特定の用途においては、可視光短波長域の光まで吸収できる紫外線吸収剤が求められている。
【0003】
例えば、医薬品薬剤及び化粧品等の包装材料において、内容物の有機物が太陽光などに含まれる紫外線の作用によって劣化する。また、ビタミンなどの特定の成分は、400~420nm程度の可視光短波長領域の光で劣化するため、より長波領域の光を吸収できる紫外線吸収剤が求められている。
【0004】
また、ディスプレイ表示装置において、偏光板保護フィルム等の光学フィルムに紫外線吸収剤を添加して、これら光学フィルムの変色を防止することが一般的である。また、反射防止フィルムに含まれる近赤外線吸収剤の紫外線による劣化を防ぐため、反射防止フィルムに紫外線吸収剤が添加されている。また、有機ELディスプレイの発光素子には、蛍光材料及び燐光材料等の各種有機物が使用されており、これら有機物の紫外線による劣化を防ぐため、ディスプレイの表面フィルム、基材、粘着剤、及び偏光板表面の塗膜などに紫外線吸収剤が添加されている。
【0005】
その他、光学レンズ、太陽電池、ウィンドウフィルムなどの様々な用途でも、材料中の有機物を保護する目的で、紫外線および400~420nm程度の可視光短波長領域の光を吸収する紫外線吸収剤が求められている。また、近年は前記用途の成形体及び塗膜において、高い紫外線遮蔽性、耐熱性および耐光性のさらなる向上が求められており、加熱又は長期経時での紫外線の暴露による着色及び劣化が生じにくく、優れた可視透明性及び紫外線遮蔽性を保持するものが望まれている。
【0006】
例えば、特許文献1及び特許文献2には、400~420nm程度の可視光短波長領域を吸収するベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-177696号公報
【文献】特表2016-514756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の紫外線吸収剤は、400~420nm程度の可視光短波長領域の光を吸収するものの、耐熱性及び耐光性が低く、加熱又は長期経時での紫外線の暴露によって紫外線吸収性が低下する問題があった。また、十分な紫外線遮蔽性を得るために紫外線吸収剤の添加量を増やすと塗膜及び成形体の透明性が低下する問題があった。
【0009】
本発明の一実施形態は、400nm未満の紫外線のみならず、400~420nm程度の可視光短波長領域の光も吸収する優れた紫外線吸収性に加え、耐熱性、耐光性、及び透明性を有する紫外線吸収剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態は以下の通りである。
【0011】
<1> 下記一般式(1)~(3)で示す化合物からなる群から選ばれる1種以上の紫外線吸収色素、ならびにNa、Mg、Al、K、Ca、およびFeからなる群から選ばれる1種以上の金属原子を含む金属成分を含む紫外線吸収剤であって、前記金属成分の含有量が前記紫外線吸収剤に対して0.1~50000ppmである、紫外線吸収剤。
【0012】
【化1】
(一般式(1)~(3)中、R
1b~R
1g、R
2a~R
2g、及びR
3a~R
3gは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトリル基、ニトロ基、スルホ基、R
7、Ar
1、及び下記一般式(4-1)~(4-3)で示す基からなる群より選択されるいずれかを表す。
R
7は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルケニル基、炭素数1~20のアルコシキ基、及び炭素数1~20のアルケニルオキシ基からなる群より選択されるいずれかを表し、水酸基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトリル基、ニトロ基、カルボキシル基、またはスルホ基の置換基を有してもよく、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルケニル基、炭素数1~20のアルコシキ基、及び炭素数1~20のアルケニルオキシ基の炭素原子と炭素原子の間が一つまたは複数の-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、または-NHCO-で連結されていてもよい。
Ar
1は、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアリールオキシ基、及びビフェニル基からなる群より選択されるいずれかを表し、水酸基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数1~20のアルコシキ基、炭素数1~20のアルケニルオキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトリル基、ニトロ基、カルボキシル基、またはスルホ基の置換基を有してもよい。
一般式(2)~(3)中、R
4、R
5、R
6は、それぞれ独立に、水酸基、R
7、及びAr
1からなる群より選択されるいずれかを表す。
一般式(4-1)
【化2】
一般式(4-1)中、X
1は、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、及び-NHCO-からなる群より選択されるいずれかを表し、R
8は、水素原子、水酸基、R
7、及びAr
1からなる群より選択されるいずれかを表す。ただし、一般式(4-1)中の*は、一般式(1)~(3)のナフタレン環との結合部位を表す。
一般式(4-2)
【化3】
一般式(4-2)中、X
2、X
3は、それぞれ独立に、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、及び-NHCO-からなる群より選択されるいずれかを表し、R
9は、炭素数6~20のアリーレン基を表し、R
10は、R
7またはAr
1を表す。ただし、一般式(4-2)中の*は、一般式(1)~(3)のナフタレン環との結合部位を表す。
一般式(4-3)
【化4】
一般式(4-3)中、X
4、X
5は、それぞれ独立に、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、及び-NHCO-からなる群より選択されるいずれかを表し、R
11は、直鎖または分岐鎖状の炭素数1~20のアルキレン基、または炭素数6~20のアリーレン基を表し、R
12は、R
7またはAr
1を表し、nは1~20である。ただし、一般式(4-3)中の*は、一般式(1)~(3)のナフタレン環との結合部位を表す。)
【0013】
<2> 前記紫外線吸収色素は、下記式(A)、(B)および(C)で示す化合物からなる群から選ばれる1種以上の化合物を含む、<1>に記載の紫外線吸収剤。
【化5】
【0014】
<3> 前記金属成分がAlを含む、<1>または<2>に記載の紫外線吸収剤。
【0015】
<4> <1>~<3>のいずれか1つに記載の紫外線吸収剤、ならびに一般式(1)~(3)で示す化合物以外の化合物であるトリアジン環含有化合物、ベンゾトリアゾール環含有化合物、およびベンゾフェノン環含有化合物からなる群から選択される少なくとも1種以上の第2の紫外線吸収剤を含む、組成物。
【0016】
<5> <1>~<3>のいずれか1つに記載の紫外線吸収剤、および波長450~650nmの可視波長域の光を遮光する色材を含む、組成物。
【0017】
<6> 前記色材は、2種類以上の有彩色着色剤を含む、<5>に記載の組成物。
【0018】
<7> <1>~<3>のいずれか1つに記載の紫外線吸収剤、ならびにフタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、スクアリリウム化合物、シアニン化合物、およびジケトピロロピロールからなる群から選択される1種以上の近赤外線吸収剤を含み、前記近赤外線吸収剤は波長600~1500nmの波長領域に極大吸収を有する、組成物。
【0019】
<8> <1>~<3>のいずれか1つに記載の紫外線吸収剤、および樹脂を含む、組成物。
【0020】
<9> 前記樹脂が熱可塑性樹脂を含む、<8>に記載の組成物。
【0021】
<10> <1>~<3>のいずれか1つに記載の紫外線吸収剤、光重合性化合物、及び光重合開始剤を含む、組成物。
【0022】
<11> <4>~<10>のいずれか1つに記載の組成物から成形されてなる、成形体。
【0023】
<12> <4>~<10>のいずれか1つに記載の組成物から形成されてなる、塗膜。
【0024】
<13> <1>~<3>のいずれか1つに記載の紫外線吸収剤の製造方法であって、前記紫外線吸収色素の合成反応液に水を含む貧溶媒を加えて分液し、金属成分を取り除く工程;前記分液及び濾過後にアルコール又は水、もしくはその混合液を用いて前記紫外線吸収色素を洗浄する工程;アルコール又は水、もしくはその混合液に前記紫外線吸収色素をリスラリーして洗浄する工程;及び、酸溶液を用いて前記紫外線吸収色素をリスラリーして洗浄する工程からなる群から選択される1つ以上の工程を行うことにより、前記紫外線吸収色素に含まれる金属成分の含有量を調整する、紫外線吸収剤の製造方法。
【発明の効果】
【0025】
上記の実施形態によれば、400nm未満の紫外線のみならず、400~420nm程度の可視光短波長領域の光も吸収する優れた紫外線吸収性に加え、耐熱性、耐光性、及び透明性を有する紫外線吸収剤、それを用いた組成物、成形体、および塗膜を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態の紫外線吸収剤の粉末X線回折による回折パターンの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[紫外線吸収剤]
本発明の一実施形態の紫外線吸収剤は、下記一般式(1)~(3)で示す化合物から選ばれる1種以上の紫外線吸収色素(以下、「紫外線吸収色素(A)」とも記す。)、ならびにNa、Mg、Al、K、Ca、およびFeからなる群から選ばれる1種以上の金属原子を含む金属成分(以下、「金属成分(B)」とも記す。)を含み、金属成分(B)の含有量が紫外線吸収剤に対して0.1~50000ppmである。
【0028】
【0029】
一般式(1)~(3)中、R1b~R1g、R2a~R2g、及びR3a~R3gは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトリル基、ニトロ基、スルホ基、R7、Ar1、及び下記一般式(4-1)~(4-3)で示す基からなる群より選択されるいずれかを表す。
R7は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルケニル基、炭素数1~20のアルコシキ基、及び炭素数1~20のアルケニルオキシ基からなる群より選択されるいずれかを表し、水酸基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトリル基、ニトロ基、カルボキシル基、またはスルホ基の置換基を有してもよく、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルケニル基、炭素数1~20のアルコシキ基、及び炭素数1~20のアルケニルオキシ基の炭素原子と炭素原子の間が一つまたは複数の-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、または-NHCO-で連結されていてもよい。
Ar1は、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアリールオキシ基、及びビフェニル基からなる群より選択されるいずれかを表し、水酸基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数1~20のアルコシキ基、炭素数1~20のアルケニルオキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトリル基、ニトロ基、カルボキシル基、またはスルホ基の置換基を有してもよい。
【0030】
一般式(2)~(3)中、R4、R5、R6は、それぞれ独立に、水酸基、R7、及びAr1からなる群より選択されるいずれかを表す。
【0031】
【0032】
一般式(4-1)中、X1は、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、及び-NHCO-からなる群より選択されるいずれかを表し、R8は、水素原子、水酸基、R7、及びAr1からなる群より選択されるいずれかを表す。ただし、一般式(4-1)中の*は、一般式(1)~(3)のナフタレン環との結合部位を表す。
【0033】
【0034】
一般式(4-2)中、X2、X3は、それぞれ独立に、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、及び-NHCO-からなる群より選択されるいずれかを表し、R9は、炭素数6~20のアリーレン基を表し、R10は、R7またはAr1を表す。ただし、一般式(4-2)中の*は、一般式(1)~(3)のナフタレン環との結合部位を表す。
【0035】
【0036】
一般式(4-3)中、X4、X5は、それぞれ独立に、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、及び-NHCO-からなる群より選択されるいずれかを表し、R11は、直鎖または分岐鎖状の炭素数1~20のアルキレン基、または炭素数6~20のアリーレン基を表し、R12は、R7またはAr1を表し、nは1~20である。ただし、一般式(4-3)中の*は、一般式(1)~(3)のナフタレン環との結合部位を表す。
【0037】
本発明の実施形態の紫外線吸収剤は、トリアジン環に結合するナフタレン環をもつ紫外線吸収色素(A)の作用により、400nm未満の紫外線領域に加え、400~420nm程度の可視光短波長領域の光を吸収できる。また、紫外線吸収剤は、Na、Mg、Al、K、Ca、およびFeからなる群から選ばれる1種以上の金属原子を含む金属成分(B)を適当量含むことにより、従来よりも優れた耐光性、耐熱性、及び紫外線吸収性を確保できるという予想外の顕著な効果を有している。また、高い紫外線吸収性により、少量の紫外線吸収色素(A)でも波長吸収が可能であるため、紫外線吸収色素(A)の添加量を抑制でき、成形体及び塗膜の透明性低下の抑制、及び透明性を改善する効果を有している。
【0038】
このような効果が得られるメカニズムを以下のように推測する。すなわち、本発明の実施形態の紫外線吸収剤に含まれる紫外線吸収色素(A)は、分子構造に非共有電子対をもつトリアジン環部位を含むため、紫外線吸収色素(A)と金属原子との間で錯体を形成し、金属イオンを色素骨格内に取り込みやすい。その結果、紫外線吸収色素の結晶性が向上して、加熱及び光照射による劣化が生じにくくなり、耐熱性及び耐光性が向上したと推測する。一方、紫外線吸収色素が金属イオンを取り込みすぎると、紫外線吸収色素成分が低下することから、紫外線吸収性が低下すると考えられるが、紫外線吸収剤に対し、金属原子を含む金属成分(B)の合計量を0.1~50000ppm(より好ましくは、0.1~10000ppm、または、0.1~1000ppm)とすることにより、色素骨格内への金属イオンの取り込み量を適度にできるため、優れた紫外線吸収性を維持できる。
【0039】
<紫外線吸収色素(A)>
紫外線吸収色素(A)は、一般式(1)~(3)で示す化合物からなる群から1種以上選ばれ、それぞれ単独でも組み合わせてよい。一般式(1)~(3)で示す化合物は、400nm未満の紫外線領域に加え400~420nm程度の可視光短波長領域の光を吸収する。
【0040】
一般式(1)~(3)のなかでも一般式(1)の化合物が最も長波まで吸収することができ、より長波長の光まで吸収する観点では最も好ましく、例えば、下記式で示す化合物が挙げられる。
【0041】
【0042】
また、一般式(3)は、一般式(1)~(3)のなかでは最大吸収波長が最も短波であるが、無色に近いという観点では最も好ましく、例えば、下記式で示す化合物が挙げられる
【0043】
【0044】
また、一般式(2)は、より長波長の光まで吸収、かつ無色に近いという両者のバランスを取ることができる観点で好ましく、例えば、下記式で示す化合物が挙げられる。
【0045】
【0046】
吸収したい波長領域によって、一般式(1)~(3)のいずれかを選択もしくは組み合わせることが好ましい。
【0047】
紫外線吸収剤は、紫外線吸収色素(A)を含有し、さらに紫外線吸収剤100質量部に対し金属成分(B)を0.1~50000ppm含有する。金属成分(B)を適当量含むことにより、紫外線吸収色素(A)の添加による成形体及び塗膜の透明性低下を抑制し、透明性を改善できる。
【0048】
<紫外線吸収色素(A)の製造方法>
紫外線吸収色素(A)に含まれる一般式(1)~(3)で示す化合物の合成方法は、トリアジン構造を有する化合物の公知の合成法を使用して合成できる。一般式(1)の合成法として、例えば、塩化シアヌルにナフトールを、三塩化アルミニウムを用いて付加反応させる方法等が挙げられる。一般式(2)の合成法として、例えば、2,4-ジクロロ-6-フェニル―1,3,5-トリアジンにナフトールを、三塩化アルミニウムを用いて付加反応させる方法等が挙げられる。一般式(3)の合成法として、例えば、2-クロロ-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジンにナフトールを、三塩化アルミニウムを用いて付加反応させる方法等が挙げられる。他にも、例えば、2-ヒドロキシ-1-ナフトエ酸メチルとベンズアミジン塩酸塩を、ナトリウムメトキシドを用いて縮合環化反応させる方法等も挙げられるが、これらの合成法は代表的な製造法を記載したものであり、この限りでない。
【0049】
<金属成分(B)>
紫外線吸収剤に含まれる金属成分(B)は、Na、Mg、Al、K、Ca、およびFeからなる群から選ばれる1種以上の金属原子を含む。前記金属原子のうち、Alは前記合成法で用いられる酸触媒としてよく使用できることから、合成後の精製の方法によりAl量をコントロールすることで金属成分(B)の含有量をコントロールできる。また、紫外線吸収色素(A)の合成法によっては上記金属原子が全く含まれないこともあるため、紫外線吸収色素(A)を合成した後に別途、上記金属原子を添加して金属成分(B)の含有量をコントロールもよい。金属原子の測定には様々な方法が知られている。金属成分(B)の含有量は、例えば、紫外線吸収剤に硝酸を加えてマイクロウェーブで分解処理した溶液を、適当な濃度に希釈して誘導結合プラズマ発光分析(ICP)を用いて簡便に定量することができる。金属成分(B)の含有量は、紫外線吸収剤に対して0.1~50000ppmが好ましく、0.1~10000ppmがより好ましく、0.1~1000ppmがさらに好ましく、また1~48200ppmであってもよい。なお、金属成分(B)の含有量とは、Na、Mg、Al、K、Ca、およびFeの各イオンの含有量の合計値を意味する。
【0050】
<紫外線吸収色素(A)の精製方法>
金属成分(B)の含有量を調整するための合成後の紫外線吸収色素(A)の精製方法としては、紫外線吸収色素(A)の合成反応液に水を含むメタノール等の貧溶媒を加えて分液し、金属成分を取り除く方法;上記分液及び濾過後のウェットケーキ(金属成分の除去工程により濃縮された化合物)にメタノール等のアルコール又は水、もしくはその混合液をふりかけて洗浄する方法;ウェットケーキをメタノール等のアルコール又は水、もしくはその混合液にリスラリーして洗浄する方法;、ウェットケーキに1~5%程度の希釈塩酸等の酸溶液をふりかけてリスラリーして洗浄する方法などが挙げられるが、その限りでない。
【0051】
紫外線吸収剤は、一般式(1)で示す化合物のCuKα線によるX線回折パターンにおいて、少なくともブラッグ角2θ(±0.3°)が7.6°、および13.2°に回折ピークを有し、これらの回折ピークの比率(XRD比率)が1:1.3~1:0.7であり、一般式(2)で示す化合物のCuKα線によるX線回折パターンにおいて、少なくともブラッグ角2θ(±0.3°)が8.0°、および14.5°に回折ピークを有し、これらの回折ピークの比率(XRD比率)が1:1.3~1:0.7であり、一般式(3)で示す化合物のCuKα線によるX線回折パターンにおいて、少なくともブラッグ角2θ(±0.3°)が8.1°、および16.3°に回折ピークを有し、これらの回折ピークの比率(XRD比率)が1:1~1:0.3であることが好ましい。
【0052】
例えば、一般式(1)で示す化合物の場合、ブラッグ角2θ(±0.3°)が7.6°、13.2°の回折ピークの比率が1:0.6以下の場合、結晶性が強く粒子が大きく成長し、成形体及び塗膜などの透明性が低下する恐れがある。また、上記比率が1:1.4以上の場合、結晶性が低く粒子が細かいが、凝集力が強いために成形体及び塗膜などの透明性が低下する恐れがある。上記X回折パターンを有する紫外線吸収剤を用いることで、結晶性と凝集力のバランスを適切に取ることができ、成形体及び塗膜の透明性をより向上できる。粉末X線回折スペクトルの測定方法、回折ピーク強度比の算出方法については後述する。
【0053】
本発明の実施形態の紫外線吸収剤は、組成物中に溶解または粒子として存在できる。前記粒子は、平均一次粒子径5nm~100μm程度が好ましく、10nm~10μm程度がより好ましく、20nm~500nm程度がさらに好ましい。紫外線吸収剤は、適度な平均一次粒子径の粒子を有することで透明性の低下を抑制できる。なお、平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡を使用して1,000~10,000倍の拡大画像中の一次粒子20個程度について、一次粒子の長径を算術平均して求めることができる。
【0054】
<紫外線吸収剤の製造方法>
紫外線吸収剤は、例えば、紫外線吸収色素(A)に含まれる化合物を合成し、その後、紫外線吸収色素(A)の金属成分(B)の含有量を調整することにより製造することができ、例えば、金属成分(B)は、<紫外線吸収色素(A)の精製方法>により含有量を低減させたり、紫外線吸収色素(A)を合成した後に別途、金属原子を添加して含有量を増加させたりすることができる。
例えば、紫外線吸収色素(A)に含まれる化合物の合成に必要な材料を三角フラスコに仕込み、撹拌して反応液を取得し、反応液を少しずつ水を含むメタノール等の貧溶媒を加えて分液し、金属成分を取り除く、さらに、上記分液及び濾過後のウェットケーキ(金属成分の除去工程により濃縮された化合物)にアルコール又は水、もしくはその混合液をふりかけて洗浄することにより、金属成分(B)の含有量を低減させた紫外線吸収剤の製造することができる。
【0055】
〔組成物〕
本発明の実施形態の組成物は、一般式(1)~(3)で示す化合物以外の化合物であるトリアジン環含有化合物、ベンゾトリアゾール環含有化合物、およびベンゾフェノン環含有化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の第二の紫外線吸収剤(以下、「紫外線吸収剤(C)」とも記す。)を含有できる。紫外線領域全体を幅広い遮蔽を一般式(1)~(3)で示す化合物からなる群から選ばれる1種以上の紫外線吸収色素(A)で行うよりも紫外線吸収色素(A)と紫外線吸収剤(C)に含まれる上記化合物を組み合わせることで、紫外線領域を幅広く、かつ波長400~420nm程度の可視光短波長領域を簡易かつより効果的に遮蔽することができる。また、紫外線吸収色素(A)と紫外線吸収剤(C)に含まれる上記化合物が互いの化合物を保護するため、より良好な耐光性および耐熱性が得られる。
【0056】
[紫外線吸収剤(C)]
紫外線吸収剤(C)のうち、ベンゾトリアゾール環含有化合物は、一般的に波長360nm以下の光を吸収する化合物であり、例えば、2-(5メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、オクチル-3[3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネートと2-エチルヘキシル-3-[3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネートの混合物、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-tブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、5%の2-メトキシ-1-メチルエチルアセテートと95%のベンゼンプロパン酸の混合物、3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ,C7-9側鎖および直鎖アルキルエステルの化合物、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-エチルヘキシル-3-[3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネート、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチル-フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-3-t-ブチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1-3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-3-メチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチル-フェノール、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]等が挙げられる。
【0057】
紫外線吸収剤(C)に使用できる市販品は、BASFジャパン社製「TINUVIN P」、「TINUVIN PS」、「TINUVIN 109」、「TINUVIN 234」、「TINUVIN 326」、「TINUVIN 328」、「TINUVIN 329」、「TINUVIN 360」、「TINUVIN 384-2」、「TINUVIN 900」、「TINUVIN 928」、「TINUVIN 99-2」、「TINUVIN 1130」、株式会社ADEKA製「アデカスタブLA-29」、大塚化学社製「RUNA-93」等が挙げられる。
【0058】
紫外線吸収剤(C)のうち、一般式(1)~(3)で示す化合物以外の化合物であるトリアジン環含有化合物は、一般的に波長360nm以下の光を吸収する化合物であり、例えば、2-[4,6-ジ(2,4-キシリル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-オクチルオキシフェノール、2‐[4,6‐ビス(2,4‐ジメチルフェニル)‐1,3,5‐トリアジン‐2‐イル]‐5‐[3‐(ドデシルオキシ)‐2‐ヒドロキシプロポキシ]フェノール、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンと(2-エチルヘキシル-グリシド酸エステルの反応生成物、2,4-ビス「2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル」-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3-5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2’-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2’-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシロキシフェノール(III-5)ビスエチルヘキシロキシフェノール、メトキシフェニルトリアジン等が挙げられる。
【0059】
一般式(1)~(3)で示す化合物以外の化合物であるトリアジン環含有化合物の市販品は、ケミプロ化成社製「KEMISORB 102」、BASFジャパン社製「TINUVIN 400」、「TINUVIN 405」、「TINUVIN 460」、「TINUVIN 477-DW」、「TINUVIN 479」、「TINUVIN 1577」、株式会社ADEKA製「アデカスタブLA-46」、「アデカスタブLA-F70」、サンケミカル社製「CYASORB UV-1164」等が挙げられる。
【0060】
紫外線吸収剤(C)のうち、ベンゾフェノン環含有化合物は、一般的に波長360nm以下の光を吸収する化合物であり、例えば、2,4-ジ-ヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルフォン酸ナトリウム、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2,2-ジ-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、ヘキシル2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)ベンゾエート、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、1,4-ビス(4-ベンゾイル-3-ヒドロキシフェノキシ)ブタン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルフォニックアシッド、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0061】
ベンゾフェノン環含有化合物の市販品は、ケミプロ化成社製「KEMISORB 10」、「KEMISORB 11」、「KEMISORB 11S」、「KEMISORB 12」、「KEMISORB 111」、シプロ化成社製「SEESORB 101」、「SEESORB 107」、株式会社ADEKA製「アデカスタブ1413」等が挙げられる。
【0062】
紫外線吸収剤(C)の含有量は、組成物の不揮発分中、0.005~50質量%が好ましく、0.01~40質量%がより好ましい。目的の分光カット率によって紫外線吸収剤の含有量を設計することができる。
【0063】
紫外線吸収色素(A)を含む紫外線吸収剤の含有量は、組成物の不揮発分中、0.005~50質量%が好ましく、0.01~40質量%がより好ましい。目的の分光カット率によって紫外線吸収剤の含有量を設計することができる。
【0064】
[色材(D)]
本発明の実施形態の組成物は、波長450~650nmの可視波長域に対して、波長域の80%以上を遮光する色材(以下、「色材(D)」とも記す。)を含有できる。色材(D)は、2種類以上の有彩色着色剤を含むことが好ましい。本発明の実施形態の紫外線吸収剤は、420nm以下の波長を強く吸収するため、450~650nmの特定の波長領域を吸収する有彩色着色剤と組み合わせることで、700nm以下の波長をカットして近赤外線領域の光を利用できるため、例えば、目的に応じ適宜分光を調整するバンドパス材料として使用できる。また、紫外線吸収剤が色材(D)を紫外線から保護するため、組成物全体の耐光性および耐熱性が向上する。
【0065】
色材(D)は、例えば、青色色素、黄色色素、紫色色素、赤色色素等が挙げられる。
有機色素は、有機顔料を用いてもよく、例えば、ジケトピロロピロール系顔料、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、アミノアントラキノン、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、又はビオラントロン等のアントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、スレン系顔料、金属錯体系顔料等が挙げられる。
また、有機色素として、染料を用いてもよく、例えば、アントラキノン系染料、モノアゾ系染料、ジスアゾ系染料、オキサジン系染料、アミノケトン系染料、キサンテン系染料、キノリン系染料、トリフェニルメタン系染料などが挙げられる。染料を用いる際には、アニオン性染料、カチオン性染料の極性基を用いて樹脂中に取り込み有機溶剤への溶解性を付与する方法が有効となる。
【0066】
(青色色素)
青色顔料は、例えば、C.I.ピグメントブルー1、1:2、9、14、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、19、25、27、28、29、33、35、36、56、56:1、60、61、61:1、62、63、66、67、68、71、72、73、74、75、76、78、79等が挙げられる。なお、「C.I.」は、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 発行)を意味する。
【0067】
青色染料は、例えば、C.I.アシッドブルー1、2、3、4、5、6、7、8、9、11、13、14、15、17、19、21、22、23、24、25、26、27、29、34、35、37、40、41、41:1、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、62、62:1、63、64、65、68、69、70、73、75、78、79、80、81、83、8485、86、88、89、90、90:1、91、92、93、95、96、99、100、103、104、108、109、110、111、112、113、114、116、117、118、119、120、123、124、127、127:1、128、129、135、137、138、143、145、147、150、155、159、169、174、175、176、183、198、203、204、205、206、208、213、227、230、231、232、233、235、239、245、247、253、257、258、260、261、262、264、266、269、271、272、273、274、277、278、280等が挙げられる。
【0068】
また、例えば、C.I.ダイレクトブルー1、2、3、4、6、7、8、8:1、9、10、12、14、15、16、19、20、21、21:1、22、23、25、27、29、31、35、36、37、40、42、45、48、49、50、53、54、55、58、60、61、64、65、67、79、96、97、98:1、101、106、107、108、109、111、116、122、123、124、128、129130、130:1、132、136、138、140、145、146、149、152、153、154、156、158、158:1、164、165、166、167、168、169、170、174、177、181、184、185、188、190、192、193、206、207、209、213、215、225、226、229、230、231、242、243、244、253、254、260、263等が挙げられる。
【0069】
(黄色色素)
黄色顔料は、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、1:1、2、3、4、5、6、9、10、12、13、14、16、17、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、41、42、43、48、53、55、61、62、62:1、63、65、73、74、75,81、83、87、93、94、95、97、100、101、104、105、108、109、110、111、116、117、119、120、126、127、127:1、128、129、133、134、136、138、139、142、147、148、150、151、153、154、155、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、172、173、174、175、176、180、181、182、183、184、185、188、189、190、191、191:1、192、193、194、195、196、197、198、199、200、202、203、204、205、206、207、208等が挙げられる。
【0070】
黄色染料は、例えば、C.I.アシッドイエロー2,3、4、5、6、7、8、9、9:1、10、11、11:1、12、13、14、15、16、17、17:1、18、20、21、22、23、25、26、27、29、30、31、33、34、36、38、39、40、40:1、41、42、42:1、43、44、46、48、51、53、55、56、60、63、65、66、67、68、69、72、76、82、83、84、86、87、90、94、105、115、117、122、127、131、132、136、141、142、143、144、145、146、149、153、159、166、168、169,172、174、175、178、180、183、187、188、189、190、191、192、199等が挙げられる。
【0071】
また、例えば、C.I.ダイレクトイエロー1、2、4、5、12、13、15、20、24、25、26、32、33、34、35、41、42、44、44:1、45、46、48、49、50、51、61、66、67、69、70、71、72、73、74、81、84、86、90、91、92、95、107、110、117、118、119、120、121、126、127、129、132、133、134等が挙げられる。
【0072】
(紫色色素)
紫色顔料は、例えば、C.I.ピグメントバイオレット1、1:1、2、2:2、3、3:1、3:3、5、5:1、14、15、16、19、23、25、27、29、31、32、37、39、42、44、47、49、50等が挙げられる。
【0073】
紫色染料は、例えば、C.I.アシッドバイオレット1、2、3、4、5、5:1、6、7、7:1、9、11、12、13、14、15、16、17、19、20、21、23、24、25、27、29、30、31、33、34、36、38、39、41、42、43、47、49、51、63、67、72、76、96、97、102、103、109等が挙げられる。
【0074】
また、例えば、C.I.ダイレクトバイオレット1、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16、17、18、21、22、25、26、27、28、29、30、31、32、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、45、51、52、54、57、58、61、62、63、64、71、72、77、78、79、80、81、82、83、85、86、87、88、93、97等が挙げられる。
【0075】
(赤色色素)
赤色顔料は、例えば、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、12、14、15、16、17、21、22、23、31、32、37、38、41、47、48、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、49:2、50:1、52:1、52:2、53、53:1、53:2、53:3、57、57:1、57:2、58:4、60、63、63:1、63:2、64、64:1、68、69、81、81:1、81:2、81:3、81:4、83、88、90:1、101、101:1、104、108、108:1、109、112、113、114、122、123、144、146、147、149、151、166、168、169、170、172、173、174、175、176、177、178、179、181、184、185、187、188、190、193、194、200、202、206、207、208、209、210、214、216、220、221、224、230、231、232、233、235、236、237、238、239、242、243、245、247、249、250、251、253、254、255、256、257、258、259、260、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276等が挙げられる。
【0076】
赤色顔料と同様に作用するオレンジ色顔料は、例えば、C.I.ピグメントオレンジ36、38、43、51、55、59、61等のオレンジ色顔料等が挙げられる。
【0077】
赤色染料は、例えば、C.I.アシッドレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、23、24、25、25:1、26、26:1、26:2、27、29、30、31、32、33、34、35、36、37、39、40、41、42、43、44、45、47、50、52、53、54、55、56、57、59、60、62、64、65、66、67、68、70、71、73、74、76、76:1、80、81、82、83、85、86、87、88、89、91、92、93、97、99、102、104、106、107、108、110、111、113、114、115、116、120、123、125、127、128、131、132、133、134、135、137、138、141、142、143、144、148、150、151、152、154、155、157、158、160、161、163、164、167、170、171、172、173、175、176、177、181、229、231、237、239、240、241、242、249、252、253、255、257、260、263、264、266、267、274、276、280、286、289、299、306、309、311、323、333、324、325、326、334、335、336、337、340、343、344、347、348、350、351、353、354、356、388等が挙げられる。
【0078】
また、例えば、C.I.ダイレクトレッド1、2、2:1、4、5、6、7、8、10、10:1、13、14、15、16、17、18、21、22、23、24、26、26:1、28、29、31、33、33:1、34、35、36、37、39、42、43、43:1、44、46、49、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、67、67:1、68、72、72:1、73、74、75、77、78、79、81、81:1、85、86、88、89、90、97、100、101、101:1、107、108、110、114、116、117、120、121、122、122:1、124、125、127、127:1、127:2、128、129、130、132、134、135、136、137、138、140、141、148、149、150、152、153、154、155、156、169、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、186、189、204、211、213、214、217、222、224、225、226、227、228、232、236、237、238等が挙げられる。
【0079】
色材(D)において染料は、良好な分光特性を有し、発色性に優れるものの、耐光性、耐熱性に問題がある。そのため、これらの問題を改善するために、塩基性染料は、有機酸及び過塩素酸を用いて造塩化する造塩化合物して用いることが好ましい。有機酸は、有機スルホン酸、有機カルボン酸が好ましい。中でもトビアス酸等のナフタレンスルホン酸、過塩素酸が耐性の面で好ましい。
また、アニオン基を有する樹脂と造塩化して用いることが好ましく、ベタイン構造を有する樹脂と有機酸とともに造塩する造塩化合物として用いることも好ましい。
また、酸性染料、直接染料を含むアニオン性染料は、カチオン性基を有する化合物又はカチオン性基を有する樹脂をカウンターイオンとして用いた造塩化合物として用いることが耐熱性、耐光性、耐溶剤性の面で好ましい。また、造塩化合物の合成には、カチオン基を有する樹脂を用いることが好ましく、側鎖にカチオン基を有する樹脂と有機酸とともに造塩して用いることがより好ましい。
また、アニオン性染料はスルホンアミド化してスルホン酸アミド化合物として用いることでも、耐性の面で好ましく使用できる。
【0080】
色材(D)は、塗工用途において、青色顔料にPigment.Blue.15:3もしくはPigment.Blue.15:6、黄色色素にPigment.Yellow.139、紫色色素にPigment.Violet.23を用いることが好ましい。また、成形用途において、青色顔料にPigment.Blue.15:3もしくはPigment.Blue.15:6、黄色色素にPigment.Yellow.147、赤色色素にSolvent.Red.52を用いることが好ましい。
【0081】
色材(D)の含有量は、組成物の不揮発分中、0.005~50質量%が好ましく、0.005~20質量%がより好ましく、0.5~50質量%がさらに好ましい。目的の分光カット率によって紫外線吸収剤の含有量を設計することができる。
【0082】
本発明の実施形態の組成物は、必要に応じて色素誘導体を添加することができる。
【0083】
色素誘導体は、有機色素残基に酸性基、塩基性基、中性基などを有する化合物である。色素誘導体は、例えば、スルホ基、カルボキシ基、リン酸基などの酸性置換基を有する化合物及びこれらのアミン塩、スルホンアミド基又は末端に3級アミノ基などの塩基性置換基を有する化合物、フェニル基又はフタルイミドアルキル基などの中性置換基を有する化合物が挙げられる。
有機色素は、例えば、ジケトピロロピロール系顔料、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チアジンインジゴ系顔料、トリアジン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、ベンゾイソインドール等のインドール系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、ナフトール系顔料、スレン系顔料、金属錯体系顔料、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、等が挙げられる。
【0084】
色素誘導体は、それぞれ単独または2種以上を併用して使用できる。
【0085】
[近赤外線吸収剤(E)]
本発明の実施形態の組成物は、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、インジゴ化合物、インモニウム化合物、アントラキノン化合物、ピロロピロール化合物、スクアリリウム化合物、およびクロコニウム化合物からなる群から選ばれる1種以上の近赤外線吸収剤(以下、「近赤外線吸収剤(E)とも記す。」を含有でき、近赤外線吸収剤(E)は波長600~1500nmの波長領域に極大吸収を有する。これにより、目的に応じ適宜分光を調整でき、本発明の実施形態の紫外線吸収剤が近赤外線吸収剤(E)の劣化を抑制するため、耐久性が向上する。
【0086】
近赤外線吸収剤(E)は、波長600~1500nmに極大吸収を有する化合物である。なお、極大吸収は、800~1000nmが好ましい。
【0087】
シアニン化合物は、国際公開第2006/006573号、国際公開第2010/073857号、特開2013-241598号公報、特開2016-113501号公報、特開2016-113504号公報等;フタロシアニン化合物は、特開平4-23868号公報、特開平06-192584号公報、特開2000-63691号公報、国際公開第2014/208514号等;ナフタロシアニン化合物は、特開平11-152414号公報、特開2000-86919号公報、特開2009-29955号公報、国際公開第2018/186490号等;インジゴ化合物は、特開2013-230412号公報等;インモニウム化合物は、特開2005-336150号公報、特開2007-197492号公報、特開2008-88426号公報等;アントラキノン化合物は、特開昭62-903号公報、特開平1-172458号公報等;ピロロピロール化合物は、特開2009-263614号公報、特開2010-90313号公報、特開2011-068731号公報;スクアリリウム化合物は、特開2011-132361号公報、特開2016-142891号公報、国際公開第2017/135359号、国際公開第2018/225837号、特開2019-001987号公報、国際公開第2020/054718号等;クロコニウム化合物は、国際公開第2019/021767号等に記載の化合物が挙げられる。
【0088】
(スクアリリウム化合物)
スクアリリウム化合物は、下記一般式(4)で表される化合物が好ましい。
【0089】
【0090】
一般式(4)中、R1~R4は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、-OR10、-COR11、-COOR12、-OCOR13、-NR14R15、-NHCOR16、-CONR17R18、-NHCONR19R20、-NHCOOR21、-SR22、-SO2R23、-SO2OR24、-NHSO2R25、-SO2NR26R27、-B(OR28)2、および-NHBR29R30からなる群より選択されるいずれかを表す。R10~R30は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、およびアラルキル基からなる群より選択されるいずれかを表す。なお、-COOR12のR12が水素の場合(すなわち、カルボキシル基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、カルボネート基)、塩の状態であってもよい。また、-SO2OR24のR24が水素原子の場合(すなわち、スルホ基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、スルホネート基)、塩の状態であってもよい。また、R1とR2、R3とR4は互いに結合して環を形成してもよい。
【0091】
「置換基」としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、-OR100、-COR101、-COOR102、-OCOR103、-NR104R105、-NHCOR106、-CONR107R108、-NHCONR109R110、-NHCOOR111、-SR112、-SO2R113、-SO2OR114、-NHSO2R115、または-SO2NR116R117等が挙げられる。
R100~R117は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、またはアラルキル基を表す。なお、-COOR102のR102が水素の場合(すなわち、カルボキシル基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、カルボネート基)、塩の状態であってもよい。また、-SO2OR114のR114が水素原子の場合(すなわち、スルホ基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、スルホネート基)、塩の状態であってもよい。
【0092】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
アルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~12がさらに好ましく、1~8が特に好ましい。アルキル基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよい。
アルケニル基の炭素数は、2~20が好ましく、2~12がさらに好ましく、2~8が特に好ましい。アルケニル基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよい。
アルキニル基の炭素数は、2~20が好ましく、2~12がさらに好ましく、2~8が特に好ましい。アルキニル基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよい。
アリール基の炭素数は、6~25が好ましく、6~15がさらに好ましく、6~10が特に好ましい。
アラルキル基のアルキル部分は、上記アルキル基と同様である。アラルキル基のアリール部分は、上記アリール基と同様である。アラルキル基の炭素数は、7~40が好ましく、7~30がさらに好ましく、7~25が特に好ましい。
ヘテロアリール基は、単環または縮合環が好ましく、単環または縮合数が2~8の縮合環がさらに好ましく、単環または縮合数が2~4の縮合環が特に好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子が好ましい。ヘテロアリール基は、5員環または6員環が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成する炭素原子の数は3~30が好ましく、3~18がさらに好ましく、3~12が特に好ましい。
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、およびアラルキル基は置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては上述した「置換基」が挙げられる。
【0093】
スクアリリウム化合物は、耐光性、耐熱性の観点から、下記一般式(5)で表される化合物がより好ましい。
【0094】
【0095】
一般式(5)中、R5~R8は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、-OR50、-COR51、-COOR52、-OCOR53、-NR54R55、-NHCOR56、-CONR57R58、-NHCONR59R60、-NHCOOR61、-SR62、-SO2R63、-SO2OR64、-NHSO2R65、-SO2NR66R67、-B(OR68)2、および-NHBR69R70からなる群より選択されるいずれかを表す。R50~R70は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、およびアラルキル基を表す。なお、-COOR52のR52が水素の場合(すなわち、カルボキシル基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、カルボネート基)、塩の状態であってもよい。また、-SO2OR64のR64が水素原子の場合(すなわち、スルホ基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、スルホネート基)、塩の状態であってもよい。また、R5とR6、R7とR8はお互いに結合して環を形成してもよい。
【0096】
「置換基」は、上述の「置換基」と同様の意義である。
【0097】
以下、スクアリリウム化合物の具体例を示す。なお、本発明の実施形態はこれらに限定されない。
【0098】
【0099】
【0100】
(ピロロピロール化合物)
ピロロピロール化合物は、下記一般式(6)で表される化合物が好ましい。
【0101】
【0102】
一般式(6)中、R1x及びR1yは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R2及びR3は、互いに結合して環を形成してもよく、R4は、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、-BR4xR4y又は金属原子を表し、R4は、R1x、R1y及びR3からなる群から選ばれる少なくとも1つと共有結合又は配位結合してもよく、R4xR4yは、それぞれ独立に、置換基を表す。一般式(6)は、特開2009-263614号公報、特開2011-68731号公報、及び国際公開第2015/166873号に記載されている。
【0103】
R1x及びR1yは、それぞれ独立に、アリール基又はヘテロアリール基が好ましく、アリール基がより好ましい。また、R1x及びR1yが表すアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基は、置換基を有してもよく、無置換であってもよい。置換基としては、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-OCOR11、-SOR12、-SO2R13等が挙げられる。R11~R13は、それぞれ独立に、炭化水素基又はヘテロアリール基を表す。また、置換基としては、例えば、特開2009-263614号公報の段落0020~0022に記載の置換基が挙げられる。なかでも、置換基としては、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-OCOR11、-SOR12、-SO2R13が好ましい。R1x及びR1yで表される基としては、分岐アルキル基を有するアルコキシ基、又は-OCOR11で表される基を置換基として有するアリール基であることが好ましい。分岐アルキル基の炭素数は、3~30が好ましく、3~20がより好ましい。
【0104】
R2及びR3の少なくとも一方は電子吸引性基が好ましく、R2は電子吸引性基を表し、R3はヘテロアリール基を表すことがより好ましい。ヘテロアリール基は、5員環又は6員環が好ましい。また、ヘテロアリール基は、単環又は縮合環が好ましく、単環又は縮合数が2~8の縮合環が好ましく、単環又は縮合数が2~4の縮合環がより好ましい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の数は、1~3が好ましく、1~2がより好ましい。ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられる。ヘテロアリール基は、窒素原子を1個以上有することが好ましい。一般式(6)における2個のR2同士は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、一般式(6)における2個のR3同士は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0105】
R4は、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、又は-BR4xR4yで表される基であることが好ましく、水素原子、アルキル基、アリール基、又は-BR4xR4yで表される基であることがより好ましく、-BR4xR4yで表される基であることが特に好ましい。R4xR4yが表す置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基が好ましく、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基がより好ましく、アリール基が特に好ましい。これらの基は、更に置換基を有してもよい。一般式(6)における2個のR4同士は同一または異なっていてもよい。
【0106】
以下、ピロロピロール化合物の具体例を示す。以下の構造式中、Meはメチル基、Phはフェニル基を表す。また、ピロロピロール化合物としては、例えば、特開2009-263614号公報の段落0016~0058、特開2011-68731号公報の段落0037~0052、特開2014-130343号公報の段落0014~0027、国際公開第2015/166873号の段落0010~0033に記載の化合物が挙げられる。なお、本発明の実施形態はこれらに限定されない。
【0107】
【0108】
(ナフタロシアニン化合物)
ナフタロシアニン化合物は、下記一般式(7)で表される化合物が好ましい。
【0109】
【0110】
一般式(7)中、R1~R24は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、ニトリル基、カルボキシル基、スルホン基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリールチオ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、または置換基を有してもよいスルファモイル基を表す。
Zは、一般式(8)で示す単量体単位を含む重合体部位、または一般式(9)で表すリン化合物部位であり、*は、Alとの結合手である。)
【0111】
【0112】
一般式(8)中、Xは、-CONH-R25-、-COO-R26-、-CONH-R27-O-、または-COO-R28-O-を表し、R25~R28は、炭素原子と炭素原子の間が、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、または-NHCO-で連結されていてもよいアルキレン基もしくはアリーレン基を表す。R31は水素原子またはメチル基を表す。)
【0113】
【0114】
一般式(9)中、R29およびR30は、それぞれ独立に、水酸基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシル基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表し、R29とR30は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0115】
以下、ナフタロシアニン化合物の具体例を示す。なお、本発明はこれらに限定されない。
【0116】
【0117】
近赤外線吸収剤(E)の含有量は、組成物の不揮発分中、0.005~50質量%が好ましく、0.01~40質量%がより好ましい。目的の分光カット率によって紫外線吸収剤の含有量を設計することができる。
【0118】
[樹脂]
本発明の実施形態の組成物は、樹脂を含有できる。樹脂は、例えば、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【0119】
本発明の実施形態の紫外線吸収剤、および熱可塑性樹脂を含む組成物を説明する。組成物は、例えば、成形体用途に使用できる。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエステ樹脂ル、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、シクロオレフィン樹脂等が挙げられる。
【0120】
(ポリオレフィン樹脂)
ポリオレフィン樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン-1、およびポリ-4-メチルペンテン、ならびにこれらの共重合体等が挙げられる。
ポリエチレンは、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等が挙げられる。
ポリプロピレンは、例えば、結晶性または非晶性ポリプロピレン等が挙げられる。
これらを用いた共重合体は、例えば、エチレン-プロピレンのランダム、ブロックあるいはグラフト共重合体、α-オレフィンとエチレンあるいはプロピレンの共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体等が挙げられる。
これらの中でも結晶性または非晶性ポリプロピレン、エチレン-プロピレンのランダム、ブロックあるいはグラフト共重合体が好ましく、プロピレン-エチレンブロック共重合体がより好ましい。また、安価、かつ、比重が小さいために成形品を軽量化できる観点から、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0121】
ポリオレフィン樹脂の数平均分子量は、30,000~500,000程度である。
【0122】
ポリオレフィン樹脂のメルトフローレイト(MFR)は、1~100(g/10分)が好ましい。なお、MFRはJISK-7210に準拠して求めた数値である。
【0123】
(ポリカーボネート樹脂)
ポリカーボネート樹脂は、非晶性樹脂であり、芳香族ジヒドロキシ化合物に、ホスゲン或いは炭酸ジエステル等のカーボネート前駆体を反応させて合成する。ホスゲンを用いる合成反応の場合は、例えば、界面法が好ましい。また、炭酸ジエステルを用いる合成反応の場合、溶融状で反応させるエステル交換法が好ましい。
【0124】
芳香族ジヒドロキシ化合物は、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。また、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4’-ジヒドロキシジフェニル類を混合して使用してもよい。
【0125】
カーボネート前駆体は、例えば、ホスゲン、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類等が挙げられる。
【0126】
芳香族ジヒドロキシ化合物およびカーボネート前駆体は、それぞれ単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0127】
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、15,000~30,000が好ましく、16,000~27,000がより好ましい。なお、本明細書における粘度平均分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算される値である。
【0128】
ポリカーボネート樹脂の市販品は、例えば、ユーピロンH-4000(三菱エンジニアリングプラスチック社製、粘度平均分子量16,000)ユーピロンS-3000(三菱エンジニアリングプラスチック社製、粘度平均分子量23,000)、ユーピロンE-2000(三菱エンジニアリングプラスチック社製、粘度平均分子量27,000)等が挙げられる。
【0129】
(ポリアクリル樹脂)
ポリアクリル樹脂は、メタクリル酸メチルおよび/またはメタクリル酸エチル等のモノマーおよび必要に応じて使用する他のモノマーを公知の方法で重合した化合物である。ポリアクリル樹脂は、例えば、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体等が挙げられる。前記モノマーの他に、例えば、ブタジエン、α-メチルスチレン、無水マレイン酸等のモノマーを加えて重合することもでき、モノマー量と分子量によって耐熱性、流動性、衝撃性を調整することができる。
【0130】
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂は、分子の主鎖にエステル結合を有する樹脂であり、ジカルボン酸(その誘導体を含む)と、ジオール(2価アルコールまたは2価フェノール)とから合成した重縮合物;ジカルボン酸(その誘導体を含む)と、環状エーテル化合物とから合成した重縮合物;環状エーテル化合物の開環重合物等が挙げられる。ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸とジオールでの重合体によるホモポリマー、複数の原料を使用するコポリマー、これらを混合するポリマーブレンド体等が挙げられる。なお、ジカルボン酸の誘導体とは、酸無水物、エステル化物等である。ジカルボン酸は、脂肪族および芳香族の2種類のジカルボン酸があり、耐熱性が向上する観点から、芳香族ジカルボン酸がより好ましい。
【0131】
芳香族ジカルボン酸は、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、クロルフタル酸、ニトロフタル酸、p-カルボキシルフェニル酢酸、m-フェニレンジグリゴール酸、p-フェニレンジグリコール酸、ジフェニルジ酢酸、ジフェニル-p,p’-ジカルボン酸、ジフェニル-4,4’-ジ酢酸、ジフェニルメタン-p,p’-ジカルボン酸、ジフェニルエタン-m,m’-ジカルボン酸、スチルベンジルカルボン酸、ジフェニルブタン-p,p’-ジカルボン酸、ベンゾフェノン-4,4’-ジカルボン酸、ナフタリン-1,4-ジカルボン酸、ナフタリン-1,5-ジカルボン酸、ナフタリン-2,6-ジカルボン酸、ナフタリン-2,7-ジカルボン酸、p-カルボキシフェノキシ酢酸、p-カルボキシフェノキシブチル酸、1,2-ジフェノキシプロパン-p,p’-ジカルボン酸、1,5-ジフェノキシペンタン-p,p’-ジカルボン酸、1,6-ジフェノキシヘキサン-p,p’-ジカルボン酸、p-(p-カルボキシフェノキシ)安息香酸、1,2-ビス(2-メトキシフェノキシ)-エタン-p,p’-ジカルボン酸、1,3-ビス(2-メトキシフェノキシ)プロパン-p,p’-ジカルボン酸、1,4-ビス(2-メトキシフェノキシ)ブタン-p,p’-ジカルボン酸、1,5-ビス(2-メトキシフェノキシ)-3-オキシペンタン-p,p’-ジカルボン酸等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸は、例えば、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、コルク酸、マゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。
【0132】
2価アルコールは、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,4-ジオール、cis-2-ブテン-1,4-ジオール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらの中でもエチレングリコール、ブタン-1,4-ジオール、シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
2価フェノールは、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールA等が挙げられる。
環状エーテル化合物は、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0133】
ジカルボン酸及び2価アルコールは、それぞれ単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0134】
(ポリアミド樹脂)
ポリアミド樹脂は、結晶性樹脂であり、例えば、カルボン酸成分と、アミノ基を2個以上有する化合物(Am)とを脱水縮合反応させて合成できる。
【0135】
カルボン酸成分は、例えば、アジピン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。なお、カルボン酸成分は、3以上のカルボキシル基を有する化合物を使用できる。
アミノ基を2個以上有する化合物(Am)は、例えば、公知のものを使用することができ、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン;イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン等の脂環式ポリアミンを含む脂肪族ポリアミン;フェニレンジアミン、キシリレンジアミン等の芳香族ポリアミン;1,3-ジアミノ-2-プロパノール、1,4-ジアミノ-2-ブタノール、1-アミノ-3-(アミノメチル)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン-1-オール、4-(2-アミノエチル)-4,7,10-トリアザデカン-2-オール、3-(2-ヒドロキシプロピル)-o-キシレン-α,α’-ジアミン等のジアミノアルコールが挙げられる。
ポリアミド樹脂の市販品は、例えば、6ナイロン(東レ社製)、66ナイロン(東レ社製)、610ナイロン(東レ社製)等が挙げられる。
【0136】
(ポリエーテルイミド樹脂)
ポリエーテルイミド樹脂は、ガラス転移温度が180℃超の非晶性樹脂であり、透明性良好で高強度、高耐熱性、高弾性率および広範な耐薬品性を有している。そのため自動車、遠隔通信、航空宇宙、電気/電子、輸送およびヘルスケアなどの多様な用途で広範に使用されている。
ポリエーテルイミド樹脂の製造プロセスの1つは、ビスフェノールA二ナトリウム塩(BPA・Na2)などのジヒドロキシ芳香族化合物のアルカリ金属塩とビス(ハロフタルイミド)との重合によるものである。得られたポリエーテルイミドの分子量は2つの方法で制御できる。第1の方法は、ジヒドロキシ芳香族化合物のアルカリ金属塩に対して、モル過剰のビス(ハロフタルイミド)を使用することである。第2の方法は、末端キャッピング剤を形成する無水フタル酸などの単官能性化合物の存在下でビス(無水ハロフタル酸)を調製することである。無水フタル酸は、有機ジアミンの一部と反応してモノハロ-ビス(フタルイミド)を形成する。モノハロ-ビス(フタルイミド)は、成長中のポリマー鎖におけるフェノキシド末端基との反応による重合ステップにおいて、末端キャッピング剤として働く。
ポリエーテルイミド樹脂の市販品は、例えば、ULTEM(サウジ基礎産業公社製)等が挙げられる。
【0137】
(シクロオレフィン樹脂)
シクロオレフィン樹脂は、主鎖および又は側鎖に脂環構造を有する非晶性樹脂である。脂環構造の種類は、例えば、ノルボルネン重合体、単環の環状オレフィン重合体、環状共役ジエン重合体、およびビニル脂環式炭化水素重合体、ならびにこれらの水素化物等が挙げられる。これらの中でも成形性と透明性に優れることから、ノルボルネン重合体が好ましい。ノルボルネン単量体は、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3,7-ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8-ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3-エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン(慣用名:テトラシクロドデセン)等が挙げられる。
シクロオレフィン樹脂の市販品は、例えば、トパス(ポリプラスチックス社製)、アペル(三井化学社製)等が挙げられる。
【0138】
(ポリビニルアセタール樹脂)
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化して得られるポリビニルアセタールが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルブチラール樹脂より好ましい。ポリビニルブチラール樹脂は、例えば、ポリビニルアルコールとブチルアルデヒドを酸性条件下で反応させて合成できる。
【0139】
熱可塑性樹脂は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0140】
紫外線吸収剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましく、0.05~1質量部がより好ましい。
【0141】
紫外線吸収剤と熱可塑性樹脂を含む組成物は、例えば、紫外線吸収剤を高濃度で配合したマスターバッチとして製造することが好ましい。マスターバッチを作製し、次いで、希釈樹脂(熱可塑性樹脂)と溶融混錬して成形体を作製すると、マスターバッチを経ず作製した成形体と比較して、紫外線吸収剤を成形体中に均一に分散し易く、紫外線吸収剤の凝集を抑制できるこれにより、成形体の透明性が向上する。
マスターバッチは、例えば、紫外線吸収剤と熱可塑性樹脂を溶融混練し、ペレタイザーを使用してペレット状に製造できる。なお、紫外線吸収剤の凝集を防ぐため、予め、紫外線吸収剤とワックスを溶融混練した分散体を作製した後、熱可塑性樹脂と共に、溶融混錬してマスターバッチを作製することが好ましい。ここで、分散体の作製は、例えば、ブレンドミキサー又は3本ロールミルを用いることが好ましい。
【0142】
組成物をマスターバッチとして作製する場合、紫外線吸収剤の配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、0.5~3質量部がより好ましい。マスターバッチ(X)と希釈用樹脂(Y)との質量比は、X/Y=1/5~1/100が好ましい。この範囲にすると成形品は、良好な光特性が得やすい。
【0143】
また、本発明の実施形態の組成物は、液状マスターバッチを作製し、次いで、希釈樹脂(熱可塑性樹脂)とともに溶融混錬して成形体を作製することができる。
液状マスターバッチは、紫外線吸収剤を液体樹脂に溶解もしくは分散させて得られる。
【0144】
液体樹脂は、25℃の粘度が8,000mPa・s以下の樹脂である。なお、粘度は、10~5,000mPa・sが好ましく、100~3,000mPa・sがより好ましい。上記範囲内であると、紫外線吸収剤を液状マスターバッチ中に容易に分散できる。本明細書における粘度はJIS K7117-1:1999に従ってB型粘度計を用いて25℃で測定した値である。
【0145】
液体樹脂の含有量は、液状マスターバッチ100質量部中、50質量%以上が好ましく、60~95質量%がより好ましく、70~90質量%がさらに好ましい。この範囲内であることにより、例えば、溶融混錬の際、溶融粘度を抑制できるため、紫外線吸収剤を分散し易くなる。この液状マスターバッチを使用すると、透明性が高い成形体が得られる。
【0146】
また、液体樹脂の数平均分子量(Mn)は、100~3000が好ましく、200~2000がより好ましく、500~1500がさらに好ましく、1000~1500が特に好ましい。Mnが100以上により成形体の成形性と透明性を両立し易い。また、Mnが3000以下により、分散性と帯電防止性が向上する。
【0147】
液体樹脂は、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等のエポキシ系樹脂、脂肪族ポリエステル樹脂、ポリアルキレングリコール樹脂、ポリエーテルエステル樹脂、またはアセチルクエン酸トリブチル等が挙げられるが、主剤樹脂がポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリカーボネートなどの高い成型温度が必要な場合にも、耐熱性が高く、帯電防止性も優れる点で、脂肪族ポリエステル、ポリアルキレングリコール樹脂、ポリエーテルエステル樹脂、またはアセチルクエン酸トリブチルが好ましい。
【0148】
(脂肪族ポリエステル樹脂)
脂肪族ポリエステル樹脂は、脂肪族多価カルボン酸と多価アルコールとの反応によって得られる樹脂である。
【0149】
脂肪族多価カルボン酸は、カルボキシル基を2つ以上有する脂肪族カルボン酸である。脂肪族多価カルボン酸は、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、トリカルバリル酸、1,3,6-ヘキサントリカルボン酸、1,3,5-ヘキサントリカルボン酸等が挙げられる。
【0150】
多価アルコールは、水酸基を2つ以上有するアルコールである。多価アルコールは、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-オクタデカンジオール等の脂肪族グリコール及びジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール等が挙げられる。
【0151】
脂肪族カルボン酸および多価アルコールは、それぞれ単独または2種類以上併用して使用できる。
【0152】
脂肪族ポリエステル樹脂の凝固点は、-5℃以下が好ましく、-50℃~-10℃がより好ましい。
【0153】
脂肪族ポリエステル樹脂の市販品は、例えば、アデカサイザーPN‐170(株式会社ADEKA製、25℃での粘度800mPa・s、凝固点-15℃、アジピン酸ポリエステル)、アデカサイザーP-200(株式会社ADEKA製、25℃での粘度2,600mPa・s、凝固点-20℃、アジピン酸ポリエステル)、アデカサイザーPN-250(株式会社ADEKA製、25℃での粘度4,500mPa・s、凝固点-20℃、アジピン酸ポリエステル)等が挙げられる。
【0154】
(ポリエーテル樹脂)
ポリエーテル樹脂は、アルキレンオキシ基の繰り返し単位を有する樹脂である。アルキレンオキシ基の炭素数は1~6が好ましい。ポリエーテル樹脂は、25℃における粘度が10,000mPa・s以下が好ましい。この粘度であれば、液状マスターバッチ用途の使用に適している。なお、アルキレンオキシ基の炭素数は、2~4が好ましい。これにより相溶性が向上する一方、吸水性を抑制できる。
【0155】
ポリエーテル樹脂は、例えば、いずれも繰り返し単位中の炭素数が2であるポリエチレングリコール、いずれも繰り返し単位中の炭素数が3であるポリトリメチレングリコールおよびポリプロピレングリコール、及びいずれも繰り返し単位中の炭素数が4であるポリテトラメチレングリコールおよびポリブチレングリコール等が挙げられる。
【0156】
(ポリエーテルエステル樹脂)
ポリエーテルエステル樹脂は、脂肪族多価カルボン酸樹脂とアルキレングリコール樹脂とのエステル化合物である。
【0157】
ポリエーテルエステル樹脂の市販品は、例えば、アデカサイザーRS‐107(株式会社ADEKA製、25℃での粘度20mPa・s、凝固点-47℃、アジピン酸エーテルエステル系樹脂)、アデカサイザーRS-700(株式会社ADEKA製、25℃での粘度30mPa・s、凝固点-53℃、ポリエーテルエステル系樹脂)等が挙げられる。
【0158】
ポリエーテルエステル樹脂の凝固点は、-5℃以下が好ましく、-50℃~-10℃がより好ましい。
【0159】
本明細書の組成物は、可塑剤分散液を作製し、次いで、希釈樹脂(熱可塑性樹脂)とともに溶融混錬して成形体を作製することができる。
【0160】
紫外線吸収剤の含有量は、可塑剤分散液中、0.1~30質量%が好ましい。
【0161】
可塑剤分散液は、紫外線吸収剤を可塑剤に溶解もしくは分散して作製する。
【0162】
可塑剤は、例えば、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、ポリエステル、リン酸エステル、クエン酸エステル、エポキシ化植物油、セバシン酸エステルなどが挙げられる。これらの中でもトリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール-ジ-n-ヘプタノエートが好ましく、トリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエートがより好ましい。
【0163】
可塑剤は、単独または2種類以上併用して使用できる。
【0164】
可塑剤の含有量は、可塑剤分散液中、60~99.9質量%が好ましい。
【0165】
(樹脂型分散剤)
本発明における液状マスターバッチ、及び可塑剤分散液は樹脂型分散剤を含んでもよい。これにより、液状マスターバッチ及び可塑剤分散液中で、紫外線吸収剤がより均一に分散されるため、成形体はさらに高い透明性が得られる。また、樹脂型分散剤を含むことで、液状マスターバッチ及び可塑剤分散液の保存安定性が向上する。
【0166】
樹脂型分散剤は、紫外線吸収剤及び色材に吸着する性質を有する吸着部位と、紫外線吸収剤及び色材以外の成分と相溶性のある緩和部位とを有する樹脂である。樹脂型分散剤は、塩基性分散剤、酸性分散剤、中性分散剤又は両性分散剤等が挙げられる。樹脂型分散剤の主骨格は、例えば、ポリウレタン骨格、ポリオレフィン骨格、ポリ(メタ)アクリル骨格、ポリエステル骨格、ポリアミド骨格、ポリカーボネート骨格、ポリエーテル骨格、ポリシロキサン骨格、ポリビニル骨格、ポリイミド骨格、ポリウレア骨格等が挙げられ、さらにこれらの骨格の複合樹脂でもよい。また、樹脂型分散剤の分子構造に制限は無く、ランダム構造、ブロック構造、鎖状構造、櫛型構造又は星型構造等が挙げられる。
【0167】
また、樹脂型分散剤が酸性基又は塩基性基を有する場合、その一部もしくは全てが中和されていてもよい。
【0168】
酸性基としては、例えば、スルホ基、フェノール部位、リン酸基またはカルボキシル基が挙げられる。これらの中でもカルボキシル基が好ましい。
【0169】
塩基性基としては、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、及び4級アンモニウム塩部位が挙げられる。中でも、3級アミノ基、及び4級アンモニウム塩部位が好ましい。
【0170】
上記分散剤のうち少量の添加量で分散体の粘度が低くなるという理由から、塩基性官能基を有する樹脂型分散剤及び塩基性官能基を有する高分子分散剤が好ましく、窒素原子含有グラフト共重合体、側鎖に3級アミノ基、4級アンモニウム塩基、含窒素複素環などを含む官能基を有する、窒素原子含有アクリル系ブロック共重合体、ウレタン系樹脂型分散剤及びウレタン系高分子分散剤などが好ましい。
【0171】
樹脂型分散剤は、単独または2種類以上併用して使用できる。
【0172】
樹脂型分散剤の含有量は、紫外線吸収剤100質量部に対して5~200質量%程度が好ましく、10~100質量%程度がより好ましい。
【0173】
樹脂型分散剤の市販品は、例えば、ビックケミー・ジャパン社製のDisperbyk-101、103、107、108、110、111、116、130、140、154、161、162、163、164、165、166、170、171、174、180、181、182、183、184、185、190、2000、2001、2020、2025、2050、2070、2095、2150、2155またはAnti-Terra-U、203、204、またはBYK-P104、P104S、220S、6919、またはLactimon、Lactimon-WSまたはBykumen等、日本ルーブリゾール社製のSOLSPERSE-3000、9000、13000、13240、13650、13940、16000、17000、18000、20000、21000、24000、26000、27000、28000、31845、32000、32500、32550、33500、32600、34750、35100、36600、38500、41000、41090、53095、55000、76500等、BASF社製のEFKA-46、47、48、452、4008、4009、4010、4015、4020、4047、4050、4055、4060、4080、4400、4401、4402、4403、4406、4408、4300、4310、4320、4330、4340、450、451、453、4540、4550、4560、4800、5010、5065、5066、5070、7500、7554、1101、120、150、1501、1502、1503等、味の素ファインテクノ社製のアジスパーPA111、PB711、PB821、PB822、PB824等が挙げられる。
【0174】
なお、樹脂型分散剤が有機溶剤に溶解した状態の場合は、液体樹脂を添加し、減圧して加熱し、溶媒を留去して使用することが好ましい。その場合、これを含有する液状マスターバッチも有機溶剤を含まないため、工程面でも使用しやすい。
【0175】
<液状マスターバッチの製造方法>
液状マスターバッチは、紫外線吸収剤と液状樹脂を混合することで作製できる。なお、作製には、樹脂型分散剤を用いることが好ましい。混合には、例えば、ニーダー、2本ロールミル、3本ロールミル、ボールミル、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、またはアトライター等の装置を使用できる。
【0176】
<可塑剤分散液の製造方法>
可塑剤分散液は、紫外線吸収剤と可塑剤を混合することで作製できる。なお、作製には、樹脂型分散剤を用いることが好ましい。混合には、前記「液状マスターバッチの製造方法」で説明した装置を使用できる。
【0177】
本明細書の組成物は、熱可塑性樹脂、紫外線吸収剤以外に任意成分として、酸化防止剤、光安定剤、分散剤、ワックス等を含有できる。
【0178】
紫外線吸収剤と熱可塑性樹脂を含む組成物は、例えば、塗料として使用できる。
【0179】
熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度が、30℃以上の樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は、例えば、ニトロセルロース、ポリエステル等が挙げられる。
【0180】
塗料は、樹脂型分散剤としてカルボキシル基を有する樹脂型分散剤を含んでもよい。カルボキシル基を有する樹脂型分散剤の分子構造は、櫛型又は直鎖状等が挙げられる。
【0181】
(櫛型の樹脂型分散剤)
カルボキシル基を有する櫛型の樹脂型分散剤としては、例えば、下記(S1)又は(S2)が挙げられる。
【0182】
[樹脂型分散剤(S1)]
樹脂型分散剤(S1)は、国際公開第2008/007776号、特開2008-029901号公報、及び特開2009-155406号公報等の公知の方法で製造することができる。
例えば、水酸基を有する重合体の水酸基と、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基との反応生成物である樹脂型分散剤;及び水酸基を有する化合物の水酸基と、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基との反応生成物の存在下に、エチレン性不飽和単量体を重合した重合体である樹脂型分散剤等が挙げられる。
【0183】
[樹脂型分散剤(S2)]
樹脂型分散剤(S2)は、国際公開第2008/007776号、特開2009-155406号公報、特開2010-185934号公報、及び特開2011-157416号公報等の公知の方法で製造することができる。
例えば、水酸基を有する化合物の水酸基と、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基との反応生成物の存在下に、水酸基、t-ブチル基あるいはオキセタン骨格、ブロックイソシアネートなどの熱架橋基を有するエチレン性不飽和単量体とそれ以外を重合した側鎖をもつ樹脂型分散剤;さらにその側鎖の水酸基にイソシアネート基を有するエチレン性不飽和単量体を反応させて得られる樹脂型分散剤等が挙げられる。
【0184】
(直鎖状の樹脂型分散剤)
直鎖状の樹脂型分散剤は、公知の方法を利用して製造することができ、例えば、特開2009-251481号公報、特開2007-23195号公報、及び特開平8-143651号公報、に示されるような公知の方法を利用して合成することができる。直鎖の分散剤の製造方法の一例として、カルボキシル基を有する分散剤は、片末端に1つの水酸基を有するビニル系重合体を原料として、トリカルボン酸無水物を水酸基に付加することによって製造することができる。
【0185】
(その他の樹脂型分散剤)
その他の樹脂型分散剤としては、紫外線吸収剤及び色材に吸着する性質を有する親和性部位と、紫外線吸収剤や色材担体と相溶性のある部位とを有し、添加紫外線吸収剤及び色材に吸着して着色剤担体への分散を安定化する作用を有するものであればよく、前述と重複するものも含めて、具体的には、ポリウレタン、ポリアクリレート等のポリカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸(部分)アミン塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドリン酸塩、水酸基含有ポリカルボン酸エステル、これらの変性物、ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミド及びその塩等の油性分散剤、(メタ)アクリル酸-スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコ-ル、ポリビニルピロリドン等の水溶性樹脂、水溶性高分子化合物、ポリエステル系、変性ポリアクリレート系、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加化合物、リン酸エステル系等が用いられ、これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。
塩基性官能基を有する高分子分散剤としては、窒素原子含有グラフト共重合体、側鎖に3級アミノ基、4級アンモニウム塩基、含窒素複素環などを含む官能基を有する、窒素原子含有アクリル系ブロック共重合体及びウレタン系高分子分散剤などが挙げられる。
【0186】
樹脂型分散剤の市販品は、前記同様である。
【0187】
次に、本発明の実施形態の紫外線吸収剤、および光硬化性樹脂を含む組成物を説明する。組成物は、例えば、ハードコート層、トップコート層、各種積層体の中間層などの塗膜層用途に使用できる。この場合、組成物は、紫外線吸収剤、光重合性化合物および光重合開始剤を含むことが好ましい。また、組成物中の紫外線吸収剤は光硬化性部位を含むことがより好ましい。また、組成物は、樹脂を含有できる。また、組成物は、光硬化性組成物として公知の添加剤及び必要に応じて有機溶剤を含有できる。
【0188】
光重合性化合物は、モノマーおよびオリゴマーを含む。光重合性化合物は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、エステルアクリレート、メチロール化メラミンの(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート等の各種アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルホルムアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0189】
光重合開始剤は、例えば、アセトフェノンアセトフェノン環含有化合物、ベンゾイン環含有化合物、ベンゾフェノン環含有化合物、チオキサントン環含有化合物、トリアジン環含有化合物、オキシムエステル系化合物、ホスフィン系化合物、キノン系化合物、ボレート系化合物、カルバゾール環含有化合物、イミダゾール環含有化合物、チタノセン系化合物等が挙げられる。これらの中でも高感度の面でオキシムエステル系化合物が好ましい。
【0190】
次に、本発明の実施形態の紫外線吸収剤、および熱硬化性樹脂を含む、組成物を説明する。組成物は、例えば、塗料、粘着剤用途に使用できる。この場合、組成物は、紫外線吸収剤、熱硬化性樹脂を含むことが好ましく、さらに硬化剤を含むことが好ましい。換言すると組成物は、紫外線吸収剤、熱硬化性樹脂(粘着性樹脂)、および硬化剤を含有することが好ましい。
【0191】
粘着性樹脂は、ガラス転移温度が-50~-20℃の樹脂である。粘着性樹脂の種類は、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル、ウレタン樹脂等が挙げられる。また、粘着性樹脂は、硬化剤と反応可能な官能基を有することが好ましい。官能基は、例えば、カルボキシル基、水酸基等が挙げられる。
【0192】
硬化剤は、例えば、イソシアネート硬化剤、エポキシ硬化剤、アジリジン硬化剤、金属キレート硬化剤等が挙げられる。
【0193】
≪成形体≫
本発明の実施形態の成形体は、紫外線吸収剤と樹脂などを含む組成物を溶融混錬して成形して作製することができる。組成物がマスターバッチである場合、マスターバッチと希釈樹脂を溶融混錬して成形体を作製することが好ましい。なお、本発明の実施形態において成型体は型に樹脂を投入し物品を得るものである。また、成形体は、プラスチックフィルムなど型を使用せずに得た物品と成型体を含む。なお、希釈樹脂は、既に説明した熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
【0194】
溶融混練には、例えば、単軸混練押出機、二軸混練押出機、タンデム式二軸混練押出機等を用いることが好ましい。溶融混錬温度は、熱可塑性樹脂の種類により異なるが、通常150~320℃程度である。
【0195】
成形方法は、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形などが挙げられる。押出成形は、例えば、コンプレッション成形、パイプ押出成形、ラミネート成形、Tダイ成形、インフレーション成形、溶融紡糸等が挙げられる。
【0196】
成形温度は、希釈樹脂の軟化点によるが、通常160~320℃である。
【0197】
本発明の実施形態の成形体は、例えば、医薬品包装材、食品包装材、ディスプレイ、ガラス中間膜、光学レンズ、太陽電池、ウィンドウフィルム、眼鏡レンズ用途に使用することができる。
【0198】
医薬品包装材及び食品包装材は、熱可塑性樹脂に、例えば、ポリエステル樹脂、及びシクロオレフィン樹脂等を使用することが好ましい。これら成形体は、柔軟性および視認性が向上し、内容物の劣化を抑制できる。
【0199】
ディスプレイ、ガラス中間膜、光学レンズ、太陽電池用途で使用できる成形体は、熱可塑性樹脂から構成されている成形体であれば何でもよいが、所望の波長に対して透明な性質を有する樹脂からなるフィルムであることが好ましい。このような成形体を構成する樹脂としては、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート系樹脂、脂環構造を有するオレフィンポリマー系樹脂(脂環式オレフィンポリマー系樹脂)、セルロースエステル系樹脂などが挙げられる。
【0200】
≪塗膜≫
本発明の実施形態の塗膜は、紫外線吸収剤と樹脂を含む組成物、および有機溶剤などを含む塗料を基板などに塗工して乾燥し作製することができる。例えば、ハードコート層、トップコート層、各種積層体の中間層などの塗膜層、粘着剤層などが挙げられる。
【0201】
ハードコート層、トップコート層、各種積層体の中間層などの塗膜層は、例えば、ディスプレイ用材料、センサー用材料、光学制御材料、各種産業用被覆材、自動車用部品、家電製品、住宅等の建材、トイレタリー用品などの用途で、基材などに塗工して紫外線を遮蔽する膜を形成し、有機材料などの劣化を抑制することができる。
【0202】
粘着剤層は、例えば、剥離シート上に塗工し、乾燥することで粘着剤層を形成し、粘着剤層上に基材を貼り合わせて粘着シートを作製できる。
【0203】
本明細書の粘着シートは、例えば、ディスプレイ(例えば、テレビ、パソコン、スマホ等)、自動車用部品、センサー用部材、家電製品、住宅等の建材、ガラス中間膜用途などの用途で、各基材に貼り合わせる使用することが好ましい。粘着シートは、本発明の実施形態の紫外線吸収剤を含むことで、バックライト及び太陽光に含まれる紫外線、並びに可視光の短波長領域の光を吸収し、目及び人体への悪影響を抑制すること、並びにディスプレイの表示素子の劣化を抑制することができる。なお、シート、フィルムおよびテープは同義語である。
【0204】
<用途および効果>
本発明の実施形態の紫外線吸収剤、組成物、成形体および塗膜を後述の用途に用いることで、波長400nm未満の紫外線、および400~420nm程度の可視光短波長領域の光から、有機物及び人体に与えるダメージを低減することが可能である。
【0205】
ディスプレイ用途では、例えば、テレビ、パソコン、スマホ等に使用できる光学フィルム等で使用できる。本発明の実施形態の成形体もしくは塗膜を使用した積層体は、ディスプレイのバックライトに含まれる紫外線及び可視光の短波長領域の光を吸収することで、目への悪影響を抑制することができ、また、太陽光に含まれる紫外線及び可視光の短波長領域の光を吸収することで、ディスプレイの表示素子の劣化を抑制できる。
【0206】
ガラス中間膜用途では、例えば、自動車及び建築物等の合わせガラス等で使用できる。上記の組成物を含む成形体を使用した合わせガラスは、太陽光に含まれる紫外線及び可視光の短波長領域の光を吸収することで、目及び人体への悪影響を抑制することができる。
【0207】
レンズ用途では、例えば、眼鏡及び光学センサー等に使用できるレンズ等で使用できる。上記の組成物を含む成形体を使用したレンズは、例えば、眼鏡用途では太陽光に含まれる紫外線及び可視光の短波長領域の光を吸収することで、目及び人体への悪影響を抑制することができ、光学センサー用途ではノイズに成り得る不要な波長の光をカットすることで、センサーの感度を高めることができる。
【0208】
医薬品薬剤及び化粧品等の包装材料では、内容物であるビタミンなどの特定の成分は、400~420nm程度の可視光短波長領域の光においても劣化するため、従来の紫外線吸収剤に比べ劣化をより低減することができる。
【0209】
一般的に、紫外線および400~420nm程度の可視光短波長領域の光は樹脂を劣化するため、本発明の実施形態の紫外線吸収剤を使用すると樹脂を使用する用途全般において樹脂の劣化を低減できるため、成形体及び塗膜の寿命を延ばし、結果として廃棄物を削減できる。
【0210】
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値または下限値は、他の段階の数値範囲の上限値または下限値と任意に組み合わせることができる。
【0211】
本発明は2021年7月14日出願の日本特許出願番号2021-116306の主題に関連し、その全開示内容を参照により本明細書に取り込む。
【実施例】
【0212】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。なお、本発明は実施例に限定されない。また、「質量部」は「部」、「質量%」は「%」と記載する。
【0213】
<紫外線吸収色素(A-1)の製造方法>
(紫外線吸収色素A-1)
300mL三角フラスコに、ニトロベンゼンを160部、塩化シアヌルを8部、塩化アルミニウムを17.4部仕込み、撹拌して懸濁させた。次に、氷水で冷却しながら、2-ナフトールを21.9部、少しずつ添加した。その後、徐々に室温に戻しながら終夜撹拌し、反応液(A‘-1)を得た。一方、500mLビーカーに水を38.1部、35%塩酸を10.0部、メタノールを45.0部仕込み、反応液(A‘-1)を少しずつ滴下した。30分撹拌後、ろ別し、紫外線吸収色素(A-1)を含むウェットケーキ(a-1)を得た。
【0214】
【0215】
<紫外線吸収剤1~4の製造方法>
[紫外線吸収剤1]
ウェットケーキ(a-1)に、メタノール45gをふりかけて洗浄し、濾別してウェットケーキ(a-2)を得た。得られたウェットケーキ(a-2)を80℃で終夜乾燥し、紫外線吸収色素(A-1)を含む紫外線吸収剤1を得た。
【0216】
(化合物の同定方法) 本発明の実施形態の一般式(1)~(3)で示される紫外線吸収色素(A)の同定には、NMRを用いた。
<測定条件>
装置:BRUKER AVANCE400
共振周波数:400MHz(1H-NMR)
溶媒:ジメチルスルホキシド-d8
1H-NMRの内部標準物質として、テトラメチルシランを用い、ケミカルシフト値はδ値(ppm)、カップリング定数はHertzで示した。また、sはsinglet、dはdoublet、mはmultipletの略とする。得られたNMRスペクトルの内容は以下のとおりである。
δ=12.05(s,3H),8.70(d,J=8.4Hz,3H),8.07(d,J=8.8Hz,3H),7.93(d,J=8.0Hz,3H),7.46-7.50(m,3H),7.38-7.42(m,3H),7.34(d,J=9.2Hz,3H)
【0217】
上記の通り、紫外線吸収色素(A-1)のNMR測定を行った結果、上記構造を支持する結果が得られた。他の紫外線吸収色素も上記同様にNMRで構造同定を行ったがデータは省略する。
【0218】
(金属成分の測定方法)
本発明の実施形態の紫外線吸収剤の金属成分(B)の測定には、ICP発光分析を用いた。
【0219】
<測定条件>
紫外線吸収剤1を約0.2g精秤し、マイクロウェーブ試料前処理装置(Milestone General社製のMLS-1200MEGA)で分解処理(分解試薬として精密分析用硝酸2mLを添加)を行った。次いで、得られた分解液に超純水を加え、濾過した後の濾液25mLをメスフラスコで定容する。この溶液をICP発光分析(株式会社バリアン製、720-ES ICP オプティカル・エミッション・スペクトロメーター)で測定し、金属イオンを定量した。尚、本実施例で示す金属成分(B)の含有量とは、Na、Mg、Al、K、Ca、およびFeの各イオンの含有量の合計値を意味する。
紫外線吸収色素1の金属分析を行った結果、Na:1432ppm、Mg:836ppm、Al:42750ppm、K:147ppm、Ca:2428ppm、Fe:548ppmの結果が得られた。金属成分(B)の合計値は、48141ppmであった。
【0220】
上記の通り、本明細書では紫外線吸収剤1を例にしてICP発光分析による金属原子の測定を行った。他の紫外線吸収剤も上記と同様に測定した。測定結果を表1に示す。
【0221】
(紫外線吸収剤の粉末X線回折測定方法)
紫外線吸収剤のX線回折パターンの測定には、粉末X線回折装置を用いた。
粉末X線回折測定は、日本工業規格JIS K0131(X線回折分析通則)に準じて、回折角(2θ)が、3°から35°の範囲で測定した。
【0222】
測定条件は下記の通りとした。
X線回折装置:株式会社リガク製RINT2100
サンプリング幅:0.02°
スキャンスピード:2.0°/min
発散スリット:1°
発散縦制限スリット:10mm
散乱スリット:2°
受光スリット:0.3mm
管球:Cu
管電圧:40kV
管電流:40mA
【0223】
図1に、紫外線吸収剤の粉末X線回折による回折パターンの一例を示す。
図1において、X軸はブラッグ角(2θ)、Y軸は回折ピークの強度(count)である。以下に回折ピークの強度比の算出方法を説明する。
【0224】
図1における回折パターンのバックグランド除去は、通常の方法で行った。例として、ブラッグ角(2θ)7.6°の低角度側のすその6°付近と高角度側のすその8.5°付近に接する直線を引き、この直線上の値をバックグラウンドとして除去した。同様にして、ブラッグ角(2θ)13.2°の低角度側のすその12°付近と高角度側のすその14°付近に接する直線を引き、この直線上の値をバックグラウンドとして除去した。ブラッグ角(2θ)7.6°のピーク強度をIα、13.2°のピーク強度をIβとし、回折ピークの強度比はIα/Iβとして算出した。
【0225】
[紫外線吸収剤2]
ウェットケーキ(a-2)をメタノール100g中に戻して室温で30分リスラリーを行い、濾別してウェットケーキ(a-3)を得た。得られたウェットケーキ(a-3)を80℃で終夜乾燥し、紫外線吸収色素(A-1)を含む紫外線吸収剤2を得た。
【0226】
[紫外線吸収剤3]
ウェットケーキ(a-3)を得た後、水45gをふりかけて洗浄し、濾別してウェットケーキ(a-4)を得た。得られたウェットケーキ(a-4)を80℃で終夜乾燥し、紫外線吸収色素(A-1)を含む紫外線吸収剤3を得た。
【0227】
[紫外線吸収剤4]
ウェットケーキ(a-4)を水150g中に戻して室温で30分リスラリーを行い、濾別してウェットケーキ(a-5)を得た。得られたウェットケーキ(a-5)を80℃で終夜乾燥し、紫外線吸収色素(A-1)を含む紫外線吸収剤4を得た。
【0228】
<紫外線吸収色素(A-2)の製造方法>
【0229】
(紫外線吸収色素A-2)
300mL三角フラスコに、クロロベンゼンを160部、2,4-ジクロロ-6-フェニル-1,3,5-トリアジンを8部、塩化アルミニウムを11.8部仕込み、撹拌して懸濁させた。次に、氷水で冷却しながら、2-ナフトールを12.8部、少しずつ添加した。その後、徐々に室温に戻しながら終夜撹拌し、反応液(A‘-2)を得た。一方、500mLビーカーに水を38.1部、35%塩酸を10.0部、メタノールを45.0部仕込み、反応液(A‘-2)を少しずつ滴下した。30分撹拌後、ろ別し、紫外線吸収色素(A-2)を含むウェットケーキ(a-6)を得た。
【0230】
【0231】
<紫外線吸収剤5~8の製造方法>
[紫外線吸収剤5~8]
紫外線吸収剤1~4と同様の方法で、ウェットケーキ(a-7)~(a-10)を得て、紫外線吸収色素(A-2)を含む紫外線吸収剤5~8を得た。
【0232】
<紫外線吸収色素(A-3)の製造方法>
(紫外線吸収色素A-3)
300mL三角フラスコに、トルエンを160部、2-クロロ-4、6-ジフェニル-1,3,5-トリアジンを8部、塩化アルミニウムを8.0部仕込み、撹拌して懸濁させた。次に、氷水で冷却しながら、2-ナフトールを6.5部、少しずつ添加した。その後、徐々に室温に戻しながら終夜撹拌した。一方、500mLビーカーに水を38.1部、35%塩酸を10.0部、メタノールを45.0部仕込み、先の反応液を少しずつ滴下した。30分撹拌後、ろ別し、紫外線吸収色素(A-3)を含むウェットケーキ(a-11)を得た。
【0233】
【0234】
<紫外線吸収剤9~12の製造方法>
[紫外線吸収剤9~12]
紫外線吸収剤1~4と同様の方法で、ウェットケーキ(a-12)~(a-15)を得て、紫外線吸収色素(A-3)を含む紫外線吸収剤9~12を得た。
【0235】
<紫外線吸収剤13の製造方法>
[紫外線吸収剤13]
300mL三角フラスコに、キシレンを160部、塩化シアヌルを8部、塩化アルミニウムを17.4部仕込み、撹拌して懸濁させた。次に、2-ナフトールを21.9部、少しずつ添加した。その後、80℃で6時間撹拌し、反応液(A‘-3)を得た。一方、500mLビーカーに水を38.1部、35%塩酸を10.0部、メタノールを45.0部仕込み、反応液(A’-3)を少しずつ滴下した。30分撹拌後、ろ別し、紫外線吸収色素(A-1)を含むウェットケーキ(a-16)を得た。得られたウェットケーキ(a-16)を80℃で終夜乾燥し、乾燥物を得た。
メタンスルホン酸1000部に、前記乾燥物40.0部を、撹拌しながら徐々に加え、4時間撹拌し溶解させた。次いで、溶解液を25℃の水8000部に撹拌しながら30分かけて徐々に滴下し、濾過、水洗浄を行い、80℃で乾燥させ、紫外線吸収色素(A-1)を含む紫外線吸収剤13を得た。
【0236】
<紫外線吸収剤14の製造方法>
[紫外線吸収剤14]
紫外線吸収剤13を300部、塩化ナトリウムを1500部、ジエチレングリコールを400部、3L双腕型ニーダーに仕込み、ドウを形成後、材料温度60℃で6時間混練した。得られたドウ(混錬された塊)を取出し、ドウの約10重量倍量の水にリスラリーして25℃で1.5時間撹拌後、濾過した。さらに再びリスラリーし、濾過水洗してペースト顔料を得、加熱オーブンにて80℃で48時間乾燥させ、紫外線吸収色素(A-1)を含む紫外線吸収剤14を得た。
【0237】
<紫外線吸収剤15の製造方法>
[紫外線吸収剤15]
300mL三角フラスコに、安息香酸メチルを160部、2,4-ジクロロ-6-フェニル-1,3,5-トリアジンを8部、塩化アルミニウムを11.8部仕込み、撹拌して懸濁させた。次に、氷水で冷却しながら、2-ナフトールを12.8部、少しずつ添加した。その後、徐々に室温に戻しながら終夜撹拌した。一方、500mLビーカーに水を38.1部、35%塩酸を10.0部、メタノールを45.0部仕込み、先の反応液を少しずつ滴下した。30分撹拌後、ろ別し、紫外線吸収色素(A-2)を含むウェットケーキ(a-17)を得た。得られたウェットケーキ(a-17)を80℃で終夜乾燥し、乾燥物を得た。
メタンスルホン酸1000部に、前記乾燥物40.0部を、撹拌しながら徐々に加え、4時間撹拌し溶解させた。次いで、溶解液を25℃の水8000部に撹拌しながら30分かけて徐々に滴下し、濾過、水洗浄を行い、80℃で乾燥させ、紫外線吸収色素(A-2)を含む紫外線吸収剤15を得た。
【0238】
<紫外線吸収剤16の製造方法>
[紫外線吸収剤16]
300mL三角フラスコに、キシロールを128部、安息香酸メチルを32部、2-クロロ-4、6-ジフェニル-1,3,5-トリアジンを8部、塩化アルミニウムを8.0部仕込み、撹拌して懸濁させた。次に、氷水で冷却しながら、2-ナフトールを6.5部、少しずつ添加した。その後、徐々に室温に戻しながら終夜撹拌した。一方、500mLビーカーに水を38.1部、35%塩酸を10.0部、メタノールを45.0部仕込み、先の反応液を少しずつ滴下した。30分攪拌後、ろ別し、紫外線吸収色素(A-3)を含むウェットケーキ(a-18)を得た。得られたウェットケーキ(a-18)を80℃で終夜乾燥し、乾燥物を得た。
メタンスルホン酸1000部に、前記乾燥物40.0部を、撹拌しながら徐々に加え、4時間撹拌し溶解させた。次いで、溶解液を25℃の水8000部に撹拌しながら30分かけて徐々に滴下し、濾過、水洗浄を行い、80℃で乾燥させ、紫外線吸収色素(A-3)を含む紫外線吸収剤16を得た。
【0239】
<紫外線吸収剤17の製造方法>
[紫外線吸収剤17]
メタンスルホン酸1000部に、紫外線吸収剤1を40.0部撹拌しながら徐々に加え、4時間撹拌し溶解させた。次いで、溶解液を0℃の水50000部に撹拌しながら30分かけて徐々に滴下し、濾過、水洗浄を行い、80℃で乾燥させ、紫外線吸収色素(A-1)を含む紫外線吸収剤17を得た。
【0240】
<紫外線吸収剤18の製造方法>
[紫外線吸収剤18]
紫外線吸収剤3を35.0部、ジエチレングリコール350部を混合し、120℃で3時間加熱撹拌した。濾過、温水洗浄を行い、80℃で乾燥させ、一般式(1)で示される紫外線吸収色素(A-1)を含む紫外線吸収剤18を得た。
【0241】
<紫外線吸収剤19の製造方法>
[紫外線吸収剤19]
紫外線吸収剤1の代わりに紫外線吸収剤9を用いる以外は、紫外線吸収剤17の製造と同じ方法で、紫外線吸収色素(A-3)を含む紫外線吸収剤19を得た。
【0242】
<紫外線吸収剤20の製造方法>
[紫外線吸収剤20]
紫外線吸収剤3の代わりに紫外線吸収剤11を用いる以外は、紫外線吸収剤18の製造と同じ方法で、紫外線吸収色素(A-3)を含む紫外線吸収剤20を得た。
【0243】
<紫外線吸収剤21の製造方法>
(紫外線吸収色素A-4)
紫外線吸収色素(A-1)の製造において、2-ナフトール21.9部の代わりに1,3-ジヒドロキシナフタレン24.3部を添加した以外は同様な方法で製造し、紫外線吸収色素(A-4)を含むウェットケーキ(a-19)を得た。ウェットケーキ(a-19)に、メタノール45gをふりかけ洗浄し、濾別してウェットケーキ(a-20)を得た。次いで、前記ウェットケーキ(a-20)をメタノール100g中に戻して室温で30分リスラリーを行い、濾別した。さらに、水45gをふりかけて洗浄し、濾別してウェットケーキ(a-21)を得た。得られたウェットケーキ(a-21)を80℃で終夜乾燥し、紫外線吸収色素(A-4)を含む紫外線吸収剤21を得た。
【0244】
<紫外線吸収剤22の製造方法>
(紫外線吸収色素A-5)
紫外線吸収剤21の製造において、1,3-ジヒドロキシナフタレン24.3部の代わりに6-ブロモ-2-ナフトール33.9部を添加した以外は同様な方法で製造し、紫外線吸収剤(A-5)を含む紫外線吸収剤22を得た。
【0245】
【0246】
<紫外線吸収剤23の製造方法>
(紫外線吸収色素A-6)
紫外線吸収色素(A-3)の製造において、2-ナフトール6.5部の代わりに6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸メチル9.1部を添加した以外は同様な方法で製造し、紫外線吸収色素(A-6)を含むウェットケーキ(a-22)を得た。ウェットケーキ(a-22)に、メタノール45gをふりかけて洗浄し、濾別してウェットケーキ(a-23)を得た。次いで、ウェットケーキ(a-23)をメタノール100g中に戻して室温で30分リスラリーを行い、濾別した。さらに、水45gをふりかけて洗浄し、濾別してウェットケーキ(a-24)を得た。得られたウェットケーキ(a-24)を80℃で終夜乾燥し、紫外線吸収色素(A-6)を含む紫外線吸収剤23を得た。
【0247】
<紫外線吸収剤24の製造方法>
(紫外線吸収色素A-7)
紫外線吸収剤23の製造において、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸メチル9.1部の代わりに6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸8.4部を添加した以外は同様な方法で製造し、紫外線吸収剤(A-7)を含む紫外線吸収剤24を得た。
【0248】
【0249】
<紫外線吸収剤25の製造方法>
(紫外線吸収色素A-8)
紫外線吸収剤23の製造において、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸メチル9.1部の代わりに2-ナフトール-6-スルホン酸ナトリウム水和物11.0部を添加した以外は同様な方法で製造し、紫外線吸収剤(A-8)を含む紫外線吸収剤25を得た。
【0250】
<紫外線吸収剤26の製造方法>
(紫外線吸収色素A-9)
紫外線吸収色素(A-2)の製造において、2,4-ジクロロ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン8部、2-ナフトール12.8部、塩化アルミニウム11.8部の代わりに、2-(4-ビフェニリル)-4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン8部、2-ナフトール9.5部、塩化アルミニウム8.8部を添加した以外は同様な方法で製造し、紫外線吸収色素(A-9)を含むウェットケーキ(a-25)を得た。ウェットケーキ(a-25)に、メタノール45gをふりかけて洗浄し、濾別してウェットケーキ(a-26)を得た。次いで、ウェットケーキ(a-26)をメタノール100g中に戻して室温で30分リスラリーを行い、濾別した。さらに、水45gをふりかけて洗浄し、濾別してウェットケーキ(a-27)を得た。得られたウェットケーキ(a-27)を80℃で終夜乾燥し、紫外線吸収色素(A-9)を含む紫外線吸収剤26を得た。
【0251】
【0252】
<紫外線吸収剤27の製造方法>
(紫外線吸収色素A-10)
300mL三角フラスコに、紫外線吸収剤1を8部、N-メチル-2-ピロリドンを80部仕込み、撹拌して溶解させた。次に、リン酸三カリウムを5.4部仕込み、撹拌して懸濁させた。次いで、1-ヨードブタンを5.8部仕込み、撹拌しながら110℃まで加熱し、3時間撹拌して反応液を得た。一方、1Lビーカーに水400部を仕込み、前記反応液を少しずつ滴下した。一晩撹拌後、濾別し、ウェットケーキ(a-28)を得た。ウェットケーキ(a-28)を水400gに再度リスラリーし、3時間攪拌後、濾別してウェットケーキ(a-29)を得た。得られたウェットケーキ(a-29)を80℃で終夜乾燥し、得られた乾燥物を80メッシュで粉砕し、紫外線吸収色素A-10を含む紫外線吸収剤27を得た。
【0253】
<紫外線吸収剤28の製造方法>
(紫外線吸収色素A-11)
500mL三角フラスコに、N-メチル-2-ピロリドンを100部、紫外線吸収剤24を10部を仕込んで溶解した。次いで、2-エチルヘキシルグリシジルエーテルを6.7部、3,5-ルチジンを0.3部仕込み、120℃に昇温して6時間撹拌し、反応液を得た。反応液を50℃以下に冷却後、前記反応液に35%塩酸を40部、メタノールを200部、少しずつ滴下した。30分撹拌後、ろ別し、得られたウェットケーキ(a-30)をメチルエチルケトン100部に戻し、40℃で30分撹拌した。次いで、メタノールを100部添加し、氷冷しながら30分攪拌後に濾別した。得られたウェットケーキ(a-31)をメタノール100部に戻し、30分撹拌後、ろ別した。得られたウェットケーキ(a-32)を80℃で終夜乾燥し、紫外線吸収色素A-11を含む紫外線吸収剤28を得た。
【0254】
【0255】
<紫外線吸収剤29の製造方法>
(紫外線吸収色素A-12)
300mL三角フラスコに98%硫酸を100部、紫外線吸収剤9を10部、2-クロロ-2メチルプロパンを9.9部仕込み、氷浴中で10℃以下に保ちながら6時間撹拌し、反応液を得た。次に、氷200部、水400部の混合液に前記反応液を少しずつ滴下した。30分撹拌後、ろ別し、得られたウェットケーキ(a-33)をメタノール/水=10/1の混合液450部中に戻して室温で30分リスラリーを行い、濾別した。次いで得られたウェットケーキ(a-34)を50℃以上の水100部中に戻して室温で30分リスラリーを行い、濾別した。得られたウェットケーキ(a-35)を80℃で終夜乾燥し、紫外線吸収色素A-12を含む紫外線吸収剤29を得た。
【0256】
<紫外線吸収剤30の製造方法>
(紫外線吸収色素A-13)
500mL三角フラスコに、N-メチル-2-ピロリドンを100部、紫外線吸収剤24を10部、メチルヒドロキノンを0.01部、メタクリル酸グリシジルを6.8部、N,N-ジメチルベンジルアミンを0.3部仕込み、100℃に昇温して4時間撹拌した後、40℃まで降温させ反応液を得た。次いで、前記反応液に、メタノールを100部、35%塩酸を50部、水を50部、少しずつ滴下した。30分撹拌後、ろ別し、得られたウェットケーキ(a-36)をメタノール100部に戻し、30分撹拌後、ろ別した。次いで、得られたウェットケーキ(a-37)を水100部に戻し、30分攪拌後、ろ別した。得られたウェットケーキ(a-38)を60℃で減圧乾燥し、紫外線吸収色素A-13を含む紫外線吸収剤30を得た。
【0257】
【0258】
<比較材料1の製造方法>
[比較材料1]
ウェットケーキ(a-1)を80℃で終夜乾燥し、一般式(1)で示される紫外線吸収色素(A-1)を含む比較材料1を得た。
【0259】
<比較材料2の製造方法>
[比較材料2]
反応液(A‘-1)に水を加えて抽出・分液操作を行い、得られた有機層に5%重曹水と飽和食塩水を加えて分液した。得られた有機層を減圧濃縮し比較材料2を得た。
【0260】
<比較材料3の製造方法>
[比較材料3]
ウェットケーキ(a-6)を80℃で終夜乾燥し、一般式(1)で示される紫外線吸収色素(A-2)を含む比較材料3を得た。
【0261】
<比較材料4の製造方法>
[比較材料4]
反応液(A‘-2)に水を加えて抽出・分液操作を行い、得られた有機層に5%重曹水と飽和食塩水を加えて分液した。得られた有機層を減圧濃縮し比較材料4を得た。
【0262】
<比較材料5の製造方法>
[比較材料5]
ウェットケーキ(a-11)を80℃で終夜乾燥し、紫外線吸収色素(A-3)を含む比較材料5を得た。
【0263】
<比較材料6の製造方法>
[比較材料6]
反応液(A‘-3)に水を加えて抽出・分液操作を行い、得られた有機層に5%重曹水と飽和食塩水を加えて分液した。得られた有機層を減圧濃縮し比較材料6を得た。
【0264】
<比較材料7の製造方法>
[比較材料7]
比較材料1を35.0部、ジエチレングリコール350部を混合し、120℃で3時間加熱撹拌した。濾過、温水洗浄を行い、80℃で乾燥させ、一般式(1)で示される紫外線吸収色素(A-1)を含む比較材料7を得た。
【0265】
<比較材料8の製造方法>
[比較材料8]
メタンスルホン酸1000部に、比較材料2を40.0部撹拌しながら徐々に加え、4時間撹拌し溶解させた。次いで、溶解液を0℃の水50000部に撹拌しながら30分かけて徐々に滴下し、濾過、水洗浄を行い、80℃で乾燥させ、紫外線吸収色素(A-1)を含む比較材料8を得た。
【0266】
<比較材料9の製造方法>
[比較材料9]
比較材料1の代わりに比較材料5を用いる以外は、比較材料7の製造と同じ方法で、紫外線吸収色素(A-3)を含む比較材料9を得た。
【0267】
<比較材料10の製造方法>
[比較材料10]
比較材料2の代わりに比較材料6を用いる以外は、比較材料8の製造と同じ方法で、紫外線吸収色素(A-3)を含む比較材料10を得た。
【0268】
表1に、得られた紫外線吸収剤1~30および比較材料1~10の金属量、X線回折ピークの比率を示す。
【0269】
【0270】
<溶液分光>
(実施例1-1~1-30、比較例1-1~1-10)
【0271】
紫外線吸収剤1~30、比較材料1~10について、紫外~可視吸収スペクトルを測定した。結果を表2に示す。また、吸光度測定用の溶液調整方法、および測定条件は以下の通りである。
【0272】
<溶液調整方法>
(実施例1-1)
紫外線吸収剤1を1部、テトラヒドロフランを1000部混合し、完全に溶解させた。続いて、先の溶解液2部、テトラヒドロフラン98部を均一に混合し、濃度20ppmの溶液を調整した。
【0273】
紫外線吸収剤2~30、比較材料1~10についても、表2に記載の濃度になるように調整した。
【0274】
<測定条件>
装置:U-3500(株式会社日立製作所製)
測定波長:300~700nm
溶媒:テトラヒドロフラン
濃度:表1に記載
【0275】
紫外~可視吸収スペクトルの評価基準は以下の通りである。AA、A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
AA:波長400nmの吸光度が0.8以上
A:波長400nmの吸光度が0.4以上、0.8未満
B:波長400nmの吸光度が0.2以上、0.4未満
C:波長400nmの吸光度が0.2未満
【0276】
【0277】
表2に示す通り、金属成分が50000ppm以下であると、波長400nmにおける吸光度が高く、吸収性が良好であることがわかった。また、金属成分が10000ppm以下では、より吸収性が良好であった。
【0278】
<成形体>
【0279】
実施例において使用した紫外線吸収剤(C)を以下に示す。
(C-1):TINUVIN 326(BASFジャパン社製、ベンゾトリアゾール系)
(C-2):TINUVIN 400(BASFジャパン社製、トリアジン系)
(C-3):アデカスタブ1413(株式会社ADEKA製、ベンゾフェノン系)
【0280】
実施例において使用した色材(D)を以下に示す。
(D-1)C.I.ピグメントブルー PB15:6
(D-2)C.I.ソルベントレッド SR52
(D-3)C.I.ピグメントイエロー PY147
【0281】
実施例において使用した近赤外線吸収剤(E)を以下に示す。
【0282】
【0283】
実施例において使用した熱可塑性樹脂を以下に示す。
(F-1)ポリエチレン(サンテックLD M2270、MFR=7g/10min、旭化成ケミカルズ社製)
(F-2-2)ポリエチレン(ノバテックUJ790、MFR=50g/10min、日本ポリエチレン社製)
(F-3)ポリプロピレン(ノバテックPP FA3EB、MFR=10.5g/10min、日本ポリプロ社製)
(F-4)ポリプロピレン(プライムポリプロJ226T、MFR=20g/10min、プライムポリマー社製)
(G-1)ポリエステルMA-2101M(ポリエステル、ユニチカ社製、結晶性樹脂、融点264℃、MFR45g/10min(280℃/2.16kg))
(G-2)ユーピロンS-3000(ポリカーボネート樹脂、三菱エンジニアリングプラスチックス社製、非晶性樹脂、ガラス転移温度145℃、MFR15g/10min(300℃/1.2kg))
(G-3)トパス6013M-07(シクロオレフィン樹脂、ポリプラスチックス社製、非晶性樹脂、ガラス転移温度142℃、MFR13g/10min(260℃/2.16kg))
(G-4)アペル(シクロオレフィン樹脂、三井化学社製、非晶性樹脂、ガラス転移温度135℃、MFR11g/10min以上(260℃/2.16kg))
(G-5)アミランCM3001-N(ポリアミド、東レ社製、結晶性樹脂、融点265℃、MFR7g/10min以上(235℃/2.16kg))
(G-6)ULTEM(ポリエーテルイミド、サウジ基礎産業公社製、非晶性樹脂、ガラス転移温度217℃、MFR8g/10min以上(337℃/6.6kg))
【0284】
実施例において使用した液体樹脂を以下に示す。
(H-1):ユニオールD-1200(日油社製、ポリアルキレングリコール樹脂、ポリプロピレングリコール樹脂、数平均分子量1200、粘度200mPa・s)
(H-2):PEG-400(三洋化成工業社製、ポリアルキレングリコール樹脂、ポリプロピレングリコール樹脂、数平均分子量400、粘度90mPa・s)
(H-3):ユニオールD-400(日油社製、ポリアルキレングリコール樹脂、ポリプロピレングリコール樹脂、数平均分子量400、粘度100mPa・s)
(H-4):アデカサイザーRS-107(株式会社ADEKA製、エーテルエステル樹脂、アジピン酸エーテルエステル樹脂、数平均分子量430、粘度20mPa・s)
(H-5):アデカサイザーRS-700(株式会社ADEKA製、エーテルエステル樹脂、数平均分子量550、粘度30mPa・s)
(H-6):アデカサイザーPN-250(株式会社ADEKA製、脂肪酸ポリエステル、アジピン酸ポリエステル、数平均分子量2100、粘度4,500mPa・s)
(H-7):アデカサイザーPN-350(株式会社ADEKA製、脂肪酸ポリエステル、アジピン酸ポリエステル、数平均分子量4500、粘度10,000mPa・s)
【0285】
実施例において使用した可塑剤を以下に示す。
(I-1)トリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート
(I-2)トリエチレングリコール-ジ-n-ヘプタノエート
【0286】
<樹脂型分散剤(J)>
(樹脂型分散剤溶液(J-1)の製造)
不揮発分60%であるビックケミー・ジャパン社製のBYK-LPN6919に、BYK-LPN6919と同量の液体樹脂(H-4)を加え、100℃に加熱し減圧して溶剤を留去することにより、BYK-LPN6919の不揮発分/液体樹脂(H-4)=1/1の樹脂型分散剤溶液(J-1)を得た。
【0287】
[エチレン性不飽和単量体(b-5)の合成]
撹拌機、温度計を備えた反応容器に、メタクリル酸2-イソシアナトエチル60部、3-(ジメチルアミノ)プロピルアミン29部、テトラヒドロフラン(THF)120部を仕込み、室温で5時間撹拌した。FT-IRで反応が完結していることを確認したのち、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去し、淡黄色透明の液体の、下記のエチレン性不飽和単量体(b-5)を73部得た(収率82%)。得られた化合物の同定は、1H-NMRで実施した。
【0288】
[エチレン性不飽和単量体(b-9)の合成]
撹拌機、温度計を備えた反応容器に、エチレン性不飽和単量体(b-5)の合成で得られた、エチレン性不飽和単量体(b-5)6.6部、イオン交換水5部を仕込み、室温で撹拌したのち、35%塩酸水溶液8部を滴下した。アミン価測定で反応が完結していることを確認し、淡黄色透明液体の、エチレン性不飽和単量体(b-9)水溶液を20部得た。得られた化合物の同定は、1H-NMRで実施した。
【0289】
【0290】
(樹脂型分散剤溶液(J-2)の製造)
ガス導入管、コンデンサー、撹拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽に、メチルメタクリレート17.7部、n-ブチルメタクリレート53.2部、テトラメチルエチレンジアミン13.2部を仕込み、窒素を流しながら50℃で1時間撹拌し、系内を窒素置換した。次に、ブロモイソ酪酸エチル2.6部、塩化第一銅5.6部、PGMAc100部を仕込み、窒素気流下で、110℃まで昇温して第一ブロックの重合を開始した。4時間重合後、重合溶液をサンプリングして不揮発分測定を行い、不揮発分から換算して重合転化率が98%以上であることを確認した。
次に、この反応槽に、PGMAc20部、第二ブロックモノマーとしてエチレン性不飽和単量体(b-5)21.2部、エチレン性不飽和単量体(b-9)水溶液27部(不揮発分38%)を投入し、110℃・窒素雰囲気下を保持したまま撹拌し、反応を継続した。2時間後、重合溶液をサンプリングして不揮発分測定を行い、不揮発分から換算して第二ブロックの重合転化率が98%以上であることを確認し、反応溶液を室温まで冷却して重合を停止した。
先に合成したブロック共重合体溶液に不揮発分が40質量%になるようにPGMAcを添加した。このようにして、不揮発分当たりのアミン価が50mgKOH/g、4級アンモニウム塩価が20mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)9,800、不揮発分が40質量%の樹脂型分散剤溶液を得た。
さらに、この樹脂型分散剤溶液の不揮発分と同量の液体樹脂(H-4)を加え、100℃に加熱し減圧してPGMAcと水を留去することにより、この樹脂型分散剤溶液の不揮発分/液体樹脂(H-4)=1/1の樹脂型分散剤溶液(J-2)を得た。
【0291】
(実施例2-1)
<マスターバッチの製造>
紫外線吸収色素1を2部と、ポリオレフィン樹脂(F-1)を98部とを同じ供給口からスクリュー径30mmの二軸押出機(株式会社日本製鋼所製)に投入し、240℃で溶融混錬した上で、ペレタイザーを用いてペレット状にカッティングしてマスターバッチ(K-1)を作製した。
【0292】
<フィルム成形>
希釈樹脂のポリオレフィン樹脂(F-1)90部に対して、得られたマスターバッチ(K-1)10部を混合し、T-ダイ成形機(東洋精機社製)を用いて、温度180℃で溶融混合し、厚さ250μmのフィルム(X-1)を成形した。
【0293】
(実施例2-2~2-30、比較例2-1~2-10)
実施例2-1と同様に、表3に記載の材料を用いて、厚さ250μmのフィルム(X-2)~(X-30)、(XX-1)~(XX-10)を成形した。なお、以下表中でフィルムを成形体と表記する。
【0294】
[紫外線吸収性]
得られたフィルムの透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(株式会社島津製作所製)を用いて測定し、以下の条件を満たすか否かを評価した。AA、A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
AA:波長400~420nmの光透過率が全領域にわたって1%未満:非常に良好
A:波長400~420nmの光透過率が全領域にわたって1%以上5%未満:良好
B:波長400~420nmの光透過率が全領域にわたって5%以上10%未満:実用域
C:波長400~420nmの光透過率が全領域にわたって10%以上:実用不可
【0295】
[透明性]
得られたフィルムの透明性を目視評価した。評価基準は以下の通りである。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:濁りが全く認められない。:良好
B:濁りが若干認められる。:実用域
C:明らかに濁りが認められる。:実用不可
【0296】
[耐光性]
得られたフィルムをキセノンウェザーメーターで、60W/m2の照度(波長300~400nm)で1000時間暴露した。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:極大吸収波長の吸光度の減少率が10%未満:良好
B:極大吸収波長の吸光度の減少率が10%以上、30%未満:実用域
C:極大吸収波長の吸光度の減少率が30%以上:実用不可
【0297】
【0298】
(実施例2-31)
<マスターバッチの製造>
紫外線吸収色素1を2部と、ポリエステル(G-1)を98部と、を同じ供給口からスクリュー径30mmの二軸押出機(株式会社日本製鋼所製)に投入し、240℃で溶融混錬した上で、ペレタイザーを用いてペレット状にカッティングしてマスターバッチ(K-31)を製造した。
【0299】
<フィルム成形>
希釈樹脂のポリエステル(G-1)95部に対して、得られたマスターバッチ(K-31)10部を混合し、T-ダイ成形機(東洋精機社製)を用いて、温度180℃で溶融混合し、厚さ250μmのフィルム(X-31)を成形した。
【0300】
(実施例2-32~2-60、比較例2-11~2-20)
実施例2-31と同様に、表4-1に記載の材料を用いて、厚さ250μmのフィルム(X-32)~(X-60)、(XX-11)~(XX-20)を成形した。
【0301】
(実施例2-61)
<液状マスターバッチの製造>
紫外線吸収剤1を10部と、液体樹脂(H-1)を90部と、をロールで混錬することにより、液状マスターバッチ(K-61)を製造した。
【0302】
<フィルム成形>
希釈樹脂の熱可塑性樹脂(G-1)99.5部に対して、得られた液状マスターバッチ(K-61)0.5部を混合し、T-ダイ成形機(東洋精機社製)を用いて、温度300℃で溶融混合し、厚さ250μmのフィルム(X-61)を成形した。
【0303】
(実施例2-62~2-90)
実施例2-61と同様に、表4-2に記載の材料を用いて、厚さ250μmのフィルム(X-62)~(X-90)を成形した。
【0304】
(実施例2-91)
<液状マスターバッチの製造>
紫外線吸収色素1を10部、樹脂型分散剤(J-1)を20部と、液体樹脂(H-1)を70部と、をビーズミルで分散することにより、液状マスターバッチ(K-91)を製造した。
【0305】
<フィルム成形>
希釈樹脂の熱可塑性樹脂(G-1)99.5部に対して、得られた液状マスターバッチ(K-91)0.5部を混合し、T-ダイ成形機(東洋精機社製)を用いて、温度300℃で溶融混合し、厚さ250μmのフィルム(X-91)を成形した。
【0306】
(実施例2-92~2-120)
実施例2-91と同様に、表4-2に記載の材料を用いて、厚さ250μmのフィルム(X-92)~(X-120)を成形した。
【0307】
(実施例2-121)
<可塑剤分散液の製造>
紫外線吸収剤1を10部と、可塑剤(I-1)を90部と、をビーズ分散することにより、可塑剤分散液(K-121)を製造した。
【0308】
<フィルム成形>
希釈樹脂の熱可塑性樹脂(G-1)98部に対して、得られた可塑剤分散液(K-121)2部を混合し、T-ダイ成形機(東洋精機社製)を用いて、温度280℃で溶融混合し、厚さ250μmのT-ダイフィルム(X-121)を成形した。
【0309】
(実施例2-122~2-150)
実施例2-121と同様に、表4-3に記載の材料を用いて、厚さ250μmのフィルム(X-122)~(X-150)を成形した。
【0310】
(実施例2-151)
<可塑剤分散液の製造>
紫外線吸収色素1を10部、樹脂型分散剤(J-1)を20部と、可塑剤(I-1)を70部と、をビーズミルで分散することにより、可塑剤分散液(K-151)を製造した。
【0311】
<フィルム成形>
希釈樹脂の熱可塑性樹脂(G-1)99.5部に対して、得られた可塑剤分散液(K-151)0.5部を混合し、T-ダイ成形機(東洋精機社製)を用いて、温度280℃で溶融混合し、厚さ250μmのフィルム(X-151)を成形した。
【0312】
(実施例2-152~2-180)
実施例2-151と同様に、表4-3に記載の材料を用いて、厚さ250μmのフィルム(X-152)~(X-180)を成形した。
【0313】
【0314】
【0315】
【0316】
[紫外線吸収性]
得られたフィルムの透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(株式会社島津製作所製)を用いて測定し、以下の条件を満たすか否かを評価した。AA、A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
AA:波長400~420nmの光透過率が全領域にわたって1%未満:非常に良好
A:波長400~420nmの光透過率が全領域にわたって1%以上5%未満:良好
B:波長400~420nmの光透過率が全領域にわたって5%以上10%未満:実用域
C:波長400~420nmの光透過率が全領域にわたって10%以上:実用不可
【0317】
[透明性]
得られたフィルムの透明性を目視評価した。評価基準は以下の通りである。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:濁りが全く認められない。:良好
B:濁りが若干認められる。:実用域
C:明らかに濁りが認められる。:実用不可
【0318】
<ヘーズ値>
得られたフィルムに対し、ヘーズメーターでヘーズ値を測定し、下記基準で評価した。AAA、AA、A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
AAA:0.2未満:極めて良好
AA:0.2以上0.5未満:非常に良好
A:0.5以上2未満:良好
B:2以上5未満:良好
C:5以上:実用不可
【0319】
[耐光性]
得られたフィルムをキセノンウェザーメーターで、60W/m2の照度(波長300~400nm)で1000時間暴露した。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:極大吸収波長の吸光度の減少率が10%未満:良好
B:極大吸収波長の吸光度の減少率が10%以上、30%未満:実用域
C:極大吸収波長の吸光度の減少率が30%以上:実用不可
【0320】
【0321】
【0322】
表4-4及び表4-5に示す通り、本発明の実施形態の成形体は、400~420nmの可視光短波長領域において、単位重量当たりの紫外線吸収性が高く、耐光性が高い。また、少量添加で実用域に至るためフィルムの透明性が高く、ヘーズが低いことがわかった。
【0323】
(実施例3-1)
<マスターバッチの製造>
紫外線吸収色素1を2部と熱可塑性樹脂(G-1)を98部と、を同じ供給口からスクリュー径30mmの二軸押出機(株式会社日本製鋼所製)に投入し、300℃で溶融混錬した上で、ペレタイザーを用いてペレット状にカッティングしてマスターバッチ(K-31)を製造した。
【0324】
<フィルム成形>
希釈樹脂の熱可塑性樹脂(G-1)90部に対して、得られたマスターバッチ(K-31)10部を混合し、T-ダイ成形機(東洋精機社製)を用いて、温度300℃で溶融混合した。次いで、20分間300℃で滞留させた。その後、厚さ250μmのフィルム(Y-1)を成形した。
【0325】
(実施例3-2~3-150、比較例3-1~3-10)
実施例3-1と同様に、表4-1~4-3に記載の材料を用いて、厚さ250μmのフィルム(Y-2)~(Y-150)、(YY-1)~(YY-10)を成形した。
【0326】
[紫外線吸収性]
得られたフィルムの透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(株式会社島津製作所製)を用いて測定し、以下の条件を満たすか否かを評価した。AA、A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
AA:波長400~420nmの光透過率が全領域にわたって1%未満:非常に良好
A:波長400~420nmの光透過率が全領域にわたって1%以上5%未満:良好
B:波長400~420nmの光透過率が全領域にわたって5%以上10%未満:実用域
C:波長400~420nmの光透過率が全領域にわたって10%以上:実用不可
【0327】
[耐熱性]
得られたフィルム(Y-1)~(Y-150)について、実施例(2-31)~(2-180)、比較例(2-11)~(2-20)で得られたフィルム(X-31)~(X-180)、(XX-11)~(XX-20)との紫外線吸収性の差を比較し評価した。評価基準は以下の通りである。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:波長400~420nmの光透過率の差が1%未満:良好
B:波長400~420nmの光透過率の差が1%以上5%未満:実用域
C:波長400~420nmの光透過率の差が5%以上:実用不可
【0328】
なお、実施例3-1~3-150および比較例3-1~3-10の原料および配合比は、それぞれ実施例2-31~2-180および比較例2-11~2-20と同一であるため、表5-1及び表5-2には結果のみを記載する。
【0329】
【0330】
【0331】
表5-1及び表5-2に示す通り、本発明の実施形態の紫外線吸収剤を用いた成形体は、フィルム成形時の溶融混合時の滞留時間による紫外線吸収性の変化率が小さい。よって。良好な耐熱性を保有していることが確認された。
【0332】
(実施例4-1)
<紫外線領域吸収マスターバッチの製造>
紫外線吸収剤3を1部、紫外線吸収剤C-1を1部、紫外線吸収剤ポリエステル(G-1)を98部と、を同じ供給口からスクリュー径30mmの二軸押出機(株式会社日本製鋼所製)に投入し、240℃で溶融混錬した上で、ペレタイザーを用いてペレット状にカッティングしてマスターバッチ(K-121)を製造した。
【0333】
<フィルム成形>
希釈樹脂のポリエステル(G-1)90部に対して、得られたマスターバッチ(K-121)10部を混合し、T-ダイ成形機(東洋精機社製)を用いて、温度180℃で溶融混合し、厚さ250μmのフィルム(Z-1)を成形した。
【0334】
(実施例4-2~4-3)
実施例4-1と同様に、表6-1に記載の材料を用いて、厚さ250μmのフィルム(Z-2)~(Z-3)を成形した。
【0335】
[分光特性]
得られたフィルムの透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(株式会社島津製作所製)を用いて測定し、以下の条件を満たすか否かを評価した。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:波長400~420nmの光透過率が全領域にわたって1%未満:非常に良好
B:波長400~420nmの光透過率が全領域にわたって1%以上5%未満:良好
C:波長400~420nmの光透過率が全領域にわたって5%以上実用不可
【0336】
[耐光性]
得られたフィルムをキセノンウェザーメーターで、60W/m2の照度(波長300~400nm)で1000時間暴露した。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:極大吸収波長の吸光度の減少率が10%未満:良好
B:極大吸収波長の吸光度の減少率が10%以上、30%未満:実用域
C:極大吸収波長の吸光度の減少率が30%以上:実用不可
【0337】
[耐熱性]
実施例3と同様の方法で耐熱性を評価した。評価基準は以下の通りである。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:波長400~420nmの光透過率の差が1%未満:良好
B:波長400~420nmの光透過率の差が1%以上5%未満:実用域
C:波長400~420nmの光透過率の差が5%以上:実用不可
【0338】
[透明性]
得られたフィルムの透明性を目視評価した。評価基準は以下の通りである。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:濁りが全く認められない。:良好
B:濁りが若干認められる。:実用域
C:明らかに濁りが認められる。:実用不可
【0339】
(実施例4-4)
<紫外・可視光領域吸収マスターバッチの製造>
紫外線吸収剤3を1部、色材D-1を1部、色材D-2を1部、色材D-3を1部、紫外線吸収剤ポリエステル(G-1)を96部、を同じ供給口からスクリュー径30mmの二軸押出機(株式会社日本製鋼所製)に投入し、240℃で溶融混錬した上で、ペレタイザーを用いてペレット状にカッティングしてマスターバッチ(K-124)を製造した。
【0340】
<フィルム成形>
希釈樹脂のポリエステル(G-1)90部に対して、得られたマスターバッチ(K-124)10部を混合し、T-ダイ成形機(東洋精機社製)を用いて、温度180℃で溶融混合し、厚さ250μmのフィルム(Z-4)を成形した。
【0341】
(実施例4-5~4-6)
実施例4-4と同様に、表6-1記載の材料を用いて、厚さ250μmのフィルム(Z-5)~(Z-6)を成形した。
【0342】
[分光特性]
得られたフィルムの透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(株式会社島津製作所製)を用いて測定し、以下の条件を満たすか否かを評価した。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:波長400~650nmの光透過率が全領域にわたって1%未満であり、:良好
B:波長400~650nmの光透過率が1%以上5%未満:実用域
C:波長400~650nmの光透過率が5%以上:実用不可
【0343】
実施例4-1と同様の方法で、耐光性と耐熱性を評価した。
【0344】
(実施例4-7)
<紫外・近赤外領域マスターバッチの製造>
紫外線吸収剤3を1部、近赤外収集色素E-1を1部、紫外線吸収剤ポリエステル(G-1)を98部と、を同じ供給口からスクリュー径30mmの二軸押出機(株式会社日本製鋼所製)に投入し、240℃で溶融混錬した上で、ペレタイザーを用いてペレット状にカッティングしてマスターバッチ(K-127)を製造した。
【0345】
<フィルム成形>
希釈樹脂のポリエステル(G-1)90部に対して、得られたマスターバッチ(K-127)10部を混合し、T-ダイ成形機(東洋精機社製)を用いて、温度180℃で溶融混合し、厚さ250μmのフィルム(Z-7)を成形した。
【0346】
(実施例4-8~4-11)
実施例4-7と同様に、表6-1に記載の材料を用いて、厚さ250μmのフィルム(Z-8)~(Z-11)を成形した。
【0347】
[分光特性]
得られたフィルムの透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(株式会社島津製作所製)を用いて測定し、以下の条件を満たすか否かを評価した。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:波長400~420nmかつ波長700~800nmの光透過率が全領域にわたって1%未満:良好
B:波長400~420nmかつ波長700~800nmの光透過率が全領域にわたって1%以上5%未満:実用域
C:波長400~420nmかつ波長700~800nmの光透過率が全領域にわたって5%以上:実用不可
【0348】
実施例4-1と同様の方法で、耐光性と耐熱性を評価した。
【0349】
(実施例4-12)
<紫外・近赤外領域吸収マスターバッチの製造>
紫外線吸収剤3を1部、紫外線吸収剤C-1を1部、近赤外収集色素E-1を1部、紫外線吸収剤ポリエステル(G-1)を97部と、を同じ供給口からスクリュー径30mmの二軸押出機(株式会社日本製鋼所製)に投入し、240℃で溶融混錬した上で、ペレタイザーを用いてペレット状にカッティングしてマスターバッチ(K-132)を製造した。
【0350】
<フィルム成形>
希釈樹脂のポリエステル(G-1)90部に対して、得られたマスターバッチ(K-132)10部を混合し、T-ダイ成形機(東洋精機社製)を用いて、温度180℃で溶融混合し、厚さ250μmのフィルム(Z-12)を成形した。
【0351】
(実施例4-13~4-16)
実施例4-12と同様に、表6-1に記載の材料を用いて、厚さ250μmのフィルム(Z-13)~(Z-16)を成形した。
【0352】
[分光特性]
得られたフィルムの透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(株式会社島津製作所製)を用いて測定し、以下の条件を満たすか否かを評価した。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:波長300~420nmかつかつ波長700~800nmの光透過率が全領域にわたって1%未満:良好
B:波長300~420nmかつ波長700~800nmの光透過率が全領域にわたって1%以上5%未満:実用域
C:波長300~420nmかつ波長700~800nmの光透過率が全領域にわたって5%以上:実用不可
【0353】
実施例4-1と同様の方法で、耐光性と耐熱性を評価した。結果を表6-2に示す。
【0354】
【0355】
【0356】
<塗料>
(実施例5-1)
以下の組成で撹拌混合を行い、塗料を調整した。
紫外線吸収剤1 0.5部
ポリエステル(バイロンGK250、東洋紡社製) 9.5部
メチルエチルケトン 90.0部
【0357】
(実施例5-2~5-20、比較例5-1~5-10)
表7に示すように、実施例5-1と同様に調整し、それぞれ実施例5-2~5-30、比較例5-1~5-10の塗料を得た。
【0358】
<塗膜の形成>
得られた塗料を厚さ1000μmのガラス基板にバーコーターを用いて乾燥膜厚で10μmとなるよう塗布し、100℃2分で乾燥させて塗膜を形成した。
【0359】
(塗膜の評価)
得られた塗膜を、以下の方法で評価した。
【0360】
[紫外線吸収性]
得られた塗工物の透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(株式会社島津製作所製)を用いて測定し、以下の条件を満たすか否かを評価した。AA、A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
AA:波長400~420nmの光透過率が全領域にわたって1%未満:非常に良好
A:波長400~420nmの光透過率が全領域にわたって1%以上5%未満:良好
B:波長400~420nmの光透過率が全領域にわたって5%以上10%未満:実用域
C:波長400~420nmの光透過率が全領域にわたって10%以上:実用不可
【0361】
[耐光性]
得られた塗工物をキセノンウェザーメーターで、60W/m2の照度(波長300~400nm)で1000時間暴露した。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:極大吸収波長の吸光度の減少率が10%未満:良好
B:極大吸収波長の吸光度の減少率が10%以上、30%未満:実用域
C:極大吸収波長の吸光度の減少率が30%以上:実用不可
【0362】
[透明性]
得られた塗工物の透明性を目視評価した。なお評価基準は以下の通りである。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:濁りが全く認められない。良好
B:濁りが若干認められる。実用域
C:明らかに濁りが認められる。実用不可
【0363】
【0364】
表7に示す通り、本発明の実施形態の紫外線吸収剤を用いた塗膜は、400~420nmの可視光短波長領域における紫外線吸収性が高く、耐光性が高い。少量添加で実用域に至るため塗工物の透明性を損なわないことがわかった。
【0365】
<光硬化性組成物>
(実施例6-1)
以下の組成で、各原料を撹拌混合し、光硬化性組成物を調整した。
紫外線吸収剤1 1.0部
光重合性化合物(多官能アクリレート「KAYARAD DPHA」日本化薬社製)
18.0部
光重合開始剤(IGM ResinBV製「Omnirad 184」)1.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 80.0部
【0366】
(実施例6-2~6-30、比較例6-1~6-10)
表8に示すように、実施例6-1と同様に調整し、それぞれ実施例6-2~6-30、比較例6-1~6-10の光硬化性組成物を得た。
【0367】
(塗膜の形成)
上記の光硬化性組成物をバーコーターを用いて厚さ1mmのガラス基板に乾燥膜厚で6μmとなるよう塗布した。得られた塗布層を、100℃1分で乾燥したのち、高圧水銀ランプで400mJ/cm2の紫外線を照射して硬化し塗工物を形成した。
【0368】
(塗膜の評価)
得られた塗膜を、以下の方法で評価した。
【0369】
[紫外線吸収性]
得られた塗工物の透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(株式会社島津製作所製)を用いて測定し、以下の条件を満たすか否かを評価した。AA、A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
AA:波長400~420nmの光透過率が全領域にわたって1%未満:非常に良好
A:波長400~420nmの光透過率が全領域にわたって1%以上5%未満:良好
B:波長400~420nmの光透過率が全領域にわたって5%以上10%未満:実用域
C:波長400~420nmの光透過率が全領域にわたって10%以上:実用不可
【0370】
[耐光性]
得られた塗工物をキセノンウェザーメーターで、60W/m2の照度(波長300~400nm)で1000時間暴露した。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:極大吸収波長の吸光度の減少率が10%未満:良好
B:極大吸収波長の吸光度の減少率が10%以上、30%未満:実用域
C:極大吸収波長の吸光度の減少率が30%以上:実用不可
【0371】
[透明性]
得られた塗工物の透明性を目視評価した。なお評価基準は以下の通りである。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:濁りが全く認められない。良好
B:濁りが若干認められる。実用域
C:明らかに濁りが認められる。実用不可
【0372】
[耐擦傷性]
塗工物を学振試験機にセットし、スチールウールを用いて、荷重250gで10回学振させた。取り出した塗工物について、キズのつき具合を以下の5段階の目視評価に従って判断した。数値が大きいほど、硬化膜の耐擦傷性が良好であることを示す。
[評価基準]
5:キズが全くない。
4:僅かにキズが付いている。
3:キズは付いているが、基材は見えていない。
2:キズが付き、一部硬化膜が剥がれている。
1:硬化膜が剥がれてしまい、基材が剥き出しの状態。
【0373】
【0374】
表8に示す通り、本発明の実施形態の紫外線吸収剤を用いた塗膜は、400~420nmの可視光短波長領域における紫外線吸収性が高く、耐光性が高い。少量添加で実用域に至るため塗工物の透明性を損なわないことがわかった。また、良好な耐擦傷性があることがわかった。
【0375】
<粘着剤>
(粘着性樹脂(L-1)の製造例)
撹拌機、還流冷却機、窒素導入管、温度計、滴下管を備えた反応装置を使用して、窒素雰囲気下にてn-ブチルアクリレート96.0部と、2-ヒドロキシルエチルアクリレート4.0部の合計量のうちの50%、及び重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチルニトリルを0.2部、溶剤として酢酸エチルを150部反応槽に仕込み、前記合計量の残りの50%と適量の酢酸エチルを滴下槽に仕込んだ。次いで、加熱を開始して反応槽内での反応開始を確認してから、還流下、滴下管の内容物、及び0.01部の2,2’-アゾビスイソブチルニトリルの酢酸エチル希釈液を滴下した。滴下終了後、還流状態を維持したまま5時間反応を行った。反応終了後、冷却し、適量の酢酸エチルを添加することで、アクリル系樹脂である粘着性樹脂(L-1)を得た。得られた粘着剤樹脂(L-1)の重量平均分子量は50万、不揮発分は40%、粘度は3,200mPa・sであった。
【0376】
(粘着性樹脂(L-2)の製造例)
撹拌機、還流冷却機、窒素導入管、温度計、滴下管を備えた反応装置を使用して、窒素雰囲気下にてn-ブチルアクリレート96.0部と、アクリル酸4.0部の合計量のうちの50%、及び重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチルニトリルを0.2部、溶剤として酢酸エチルを150部反応槽に仕込み、前記合計量の残りの50%と適量の酢酸エチルを滴下槽に仕込んだ。次いで、加熱を開始して反応槽内での反応開始を確認してから、還流下、滴下管の内容物、及び0.01部の2,2’-アゾビスイソブチルニトリルの酢酸エチル希釈液を滴下した。滴下終了後、還流状態を維持したまま5時間反応を行った。反応終了後、冷却し、適量の酢酸エチルを添加することで、アクリル系樹脂である粘着性樹脂(L-2)を得た。得られた粘着剤樹脂(L-2)の重量平均分子量は60万、不揮発分は40%、粘度は4,000mPa・sであった。
【0377】
(実施例7-1)
粘着性樹脂として、粘着性樹脂(L-1)の不揮発分100部に対して、紫外線吸収剤1を1.0部混合し、シランカップリング剤としてKBM-403(信越化学工業社製)を0.1部、硬化剤としてトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(略号:TDI-TMP、NCO価=13.2、不揮発分=75%)を0.4部加え、よく撹拌し粘着剤を得た。その後、この粘着剤を厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート基材の剥離フィルム上に、乾燥後の厚みが50μmになるように塗布し、100℃の熱風オーブンで2分間乾燥させた。そして、粘着剤層側に25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り合せ、この状態で室温にて7日間エージングさせ、粘着シートを得た。
【0378】
(実施例7-2~7-30、比較例7-1~7-10)
表9に示すように、実施例7-1と同様に調整して、それぞれ実施例7-2~7-30、比較例7-1~7-10の粘着シートを得た。
【0379】
(粘着シートの評価)
[粘着力]
得られた粘着シートを幅25mm・縦150mmの大きさに準備した。23℃、相対湿度50%雰囲気下、前記粘着シートから剥離性フィルムを剥がして露出した粘着剤層をガラス板に貼り付け、2kgロールで1往復圧着した。24時間放置した後に引張試験機を用いて180度方向に300mm/分の速度で引き剥がす180°ピール試験において粘着力を測定し、下記の評価基準に基づいて評価を行った(JIS Z0237:2000に準拠)。Aが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:粘着力が10N以上であり、良好。
C:粘着力が10N未満であり、実用不可。
【0380】
[保持力]
得られた粘着シートを幅25mm・縦150mmの大きさに準備した。JIS Z0237:2000に準拠して前記粘着シートから剥離性シートを剥がして、研磨した幅30mm・縦150mmのステンレス板の下端部幅25mm・横25mmの部分に粘着剤層を貼着し、2kgロールで1往復圧着した後、40℃雰囲気で1kgの荷重をかけ、7万秒放置することで保持力を測定した。評価は、粘着シート貼付面上端部が下にずれた長さを測定した。Aが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:粘着シートのずれた長さが0.5mm未満である。良好。
C:粘着シートのずれた長さが0.5mm以上である。実用不可。
【0381】
[紫外線吸収性]
得られた粘着シートの透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(株式会社島津製作所製)を用いて測定し、以下の条件を満たすか否かを評価した。AA、A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
AA:波長400~420nmの光透過率が全領域にわたって1%未満:非常に良好
A:波長400~420nmの光透過率が全領域にわたって1%以上5%未満:良好
B:波長400~420nmの光透過率が全領域にわたって5%以上10%未満:実用域
C:波長400~420nmの光透過率が全領域にわたって10%以上:実用不可
【0382】
[耐光性]
得られた粘着シートをキセノンウェザーメーターで、60W/m2の照度(300~400nm)で1000時間暴露した。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:極大吸収波長の吸光度の減少率が10%未満:良好
B:極大吸収波長の吸光度の減少率が10%以上、30%未満:実用域
C:極大吸収波長の吸光度の減少率が30%以上:実用不可
【0383】
[透明性]
得られた粘着シートの透明性を目視評価した。なお、評価基準は以下の通りである。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:濁りが全く認められない。良好
B:濁りが若干認められる。実用域
C:明らかに濁りが認められる。実用不可
【0384】
【0385】
表9に示す通り、本発明の実施形態の紫外線吸収剤を用いた塗膜は、400~420nmの可視光短波長領域における紫外線吸収性が高く、耐光性が高い。少量添加で実用域に至るため粘着シートの透明性を損なわないことがわかった。また、良好な粘着力と保持力があることがわかった。
【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、400nm未満の紫外線のみならず、400~420nm程度の可視光短波長領域の光も吸収する優れた紫外線吸収性に加え、耐熱性、耐光性、及び透明性を有する紫外線吸収剤の提供を目的とする。
【解決手段】特定のトリアジン環含有化合物1種以上の紫外線吸収色素、ならびにNa、Mg、Al、K、Ca、およびFeからなる群から選ばれる1種以上の金属原子を含む金属成分を含む紫外線吸収剤であって、前記金属成分の含有量が前記紫外線吸収剤に対して0.1~50000ppmである、紫外線吸収剤。
【選択図】
図1