(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
F02M 37/00 20060101AFI20221026BHJP
F02M 37/20 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
F02M37/00 N
F02M37/00 M
F02M37/20 U
(21)【出願番号】P 2018179628
(22)【出願日】2018-09-26
【審査請求日】2021-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤関 健正
(72)【発明者】
【氏名】岡薗 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】野田 真司
(72)【発明者】
【氏名】林 宣博
(72)【発明者】
【氏名】森田 慎一
(72)【発明者】
【氏名】檀上 元
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-152966(JP,A)
【文献】特開2008-163829(JP,A)
【文献】特開2008-002514(JP,A)
【文献】特開2007-218222(JP,A)
【文献】特開2015-190335(JP,A)
【文献】特開平06-147064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00~37/54
F02D 41/02
F16K 31/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関において用いられる燃料を燃料タンク(TK)から供給するための燃料供給装置(100;100a;100b)であって、
前記燃料タンク内の燃料を吐出するポンプ(10;10b)と、
前記ポンプに接続されている燃料流路(82)から分岐し、前記ポンプから吐出された燃料の一部を前記燃料タンク内に戻すためのリターン流路(83;183)と、
前記リターン流路における流量を制御する弁装置(30;30a-30i)と、
を備え、
前記弁装置は、
ハウジング(301;301a;301c;301e;301f)と、
前記ハウジング内に設けられた内部流路(F1a-F10a;F1b-F10b)であって、前記燃料流路と前記燃料タンクの内部とにそれぞれ連通する内部流路と、
前記内部流路に配置された弁体(300;300a-300i)であって、前記ハウジング内を移動することにより、前記内部流路の最小流路断面積を変化させる弁体と、
前記弁体に接続され、温度に応じて荷重が変化することによって前記弁体を移動させるバネ部材(329;329e;329f)と、
を有し、
前記バネ部材は、前記ポンプが吐出する燃料の燃料温度が予め定められた蒸気発生温度以上の場合の前記最小流路断面積が、前記燃料温度が前記蒸気発生温度よりも低い場合の前記最小流路断面積よりも大きくなるように、前記弁体を移動させ
、
前記内部流路は、
前記燃料温度の高低に関わらず、前記燃料流路と前記燃料タンクの内部とを連通する第1流路と、
前記燃料温度が前記蒸気発生温度よりも低い場合に前記弁体により閉塞され、前記燃料温度が前記蒸気発生温度以上の場合に前記弁体により閉塞されない第2流路と、
を含む、燃料供給装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の燃料供給装置において、
前記ハウジングは、前記燃料が流出する流出部(304a)として、互いに異なる第1流出部(305)と第2流出部(306)とを有し、
前記第1流路は、前記第1流出部を含み、
前記第2流路は、前記第2流出部を含み、
前記第2流出部は、前記燃料温度が前記蒸気発生温度よりも低い場合に前記弁体により閉塞され、前記燃料温度が前記蒸気発生温度以上の場合に前記弁体により閉塞されない、
燃料供給装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の燃料供給装置において、
前記ハウジングは、前記第2流出部を囲み前記弁体と対面する弁体対面部(307)を、さらに有し、
前記第2流出部は、前記弁体対面部に前記弁体が接することにより閉塞され、
前記弁体対面部は、前記弁体に近づくほど開口断面積が大きくなるテーパ状に形成され、
前記弁体において前記弁体対面部と接する部分を含む閉塞端部(350)は、球面状の外表面形状を有する、
燃料供給装置。
【請求項4】
請求項
2または請求項
3に記載の燃料供給装置において、
前記ハウジングにおける前記燃料の流入部と、前記第2流出部と、を結ぶ仮想線は、前記ハウジングの中心部を通り、
前記弁体は、
前記ハウジング内を前記燃料の流入側領域と流出側領域とに区画する仕切部(310b)と、
前記流入部から前記第2流出部に向かう方向に前記仕切部の中央から突出し、前記第2流出部を閉塞可能に構成された閉塞突出部(320c)と、
を有し、
前記仕切部における前記閉塞突出部の周りには、前記流入側領域と前記流出側領域とを連通する1以上の第1貫通孔(312)が設けられ、
前記第1流路と前記第2流路とは、いずれも前記第1貫通孔を含み、
前記バネ部材は、前記仮想線を中心軸とするコイルバネにより形成されている、
燃料供給装置。
【請求項5】
内燃機関において用いられる燃料を燃料タンク(TK)から供給するための燃料供給装置(100;100a;100b)であって、
前記燃料タンク内の燃料を吐出するポンプ(10;10b)と、
前記ポンプに接続されている燃料流路(82)から分岐し、前記ポンプから吐出された燃料の一部を前記燃料タンク内に戻すためのリターン流路(83;183)と、
前記リターン流路における流量を制御する弁装置(30;30a-30i)と、
を備え、
前記弁装置は、
ハウジング(301;301a;301c;301e;301f)と、
前記ハウジング内に設けられた内部流路(F1a-F10a;F1b-F10b)であって、前記燃料流路と前記燃料タンクの内部とにそれぞれ連通する内部流路と、
前記内部流路に配置された弁体(300;300a-300i)であって、前記ハウジング内を移動することにより、前記内部流路の最小流路断面積を変化させる弁体と、
前記弁体に接続され、温度に応じて荷重が変化することによって前記弁体を移動させるバネ部材(329;329e;329f)と、
を有し、
前記バネ部材は、前記ポンプが吐出する燃料の燃料温度が予め定められた蒸気発生温度以上の場合の前記最小流路断面積が、前記燃料温度が前記蒸気発生温度よりも低い場合の前記最小流路断面積よりも大きくなるように、前記弁体を移動させ、
前記内部流路は、
前記燃料温度が前記蒸気発生温度よりも低い場合に前記燃料が流れる低温時流路(F1a;F3a;F10a)と、
前記燃料温度が前記蒸気発生温度以上の場合に前記燃料が流れる高温時流路(F1b;F3b;F10b)と、
を含み、
前記ハウジングは、前記燃料が流出する第3流出部(304)を有し、
前記弁体は、前記燃料温度が前記蒸気発生温度よりも低い場合に前記高温時流路を閉塞し、
前記弁体には、
前記高温時流路を閉塞する際に前記ハウジングの内壁面における前記第3流出部の端部を形成する開口を囲む凹部(323)と、
前記弁体の内部に形成された貫通孔であって、一端が前記凹部に露呈し、他端が前記ハウジングの内部に露呈する第2貫通孔(321;318)と、
が形成されており、
前記低温時流路は、前記第3流出部と前記第2貫通孔とを含み、
前記高温時流路は、
前記第3流出部を含み、
前記凹部において前記高温時流路を閉塞する際に前記ハウジングの内壁面に接触する閉塞端部(E1)と、前記ハウジングの内壁面と、の間の間隙(GP1;GP6)を含み、
前記第2貫通孔は含まず、
前記低温時流路において、前記最小流路断面積は、前記第2貫通孔の断面積であり、
前記高温時流路において、前記最小流路断面積は、前記第3流出部の断面積又は前記間隙の断面積であり、
前記第2貫通孔の断面積は、前記第3流出部の断面積又は前記間隙の断面積よりも小さい、
燃料供給装置。
【請求項6】
請求項
5に記載の燃料供給装置において、
前記第2貫通孔は、前記他端を含み前記ハウジングの内部に露呈する第1の貫通孔形成部(324)と、前記一端を含み前記凹部に露呈し、前記第1の貫通孔形成部に連なる第2の貫通孔形成部(325)と、からなり、
前記第1の貫通孔形成部の最小流路断面積S1と、前記第2の貫通孔形成部の最小流路断面積S2と、前記第3流出部の最小流路断面積S3とは、式(1)の大きさの関係を有し、
S1>S3>S2 ・・・(1)
前記間隙の最小流路断面積S4と、前記第3流出部の最小流路断面積S3とは、式(2)の大きさの関係を有する、
S4>S3 ・・・(2)
燃料供給装置。
【請求項7】
内燃機関において用いられる燃料を燃料タンク(TK)から供給するための燃料供給装置(100;100a;100b)であって、
前記燃料タンク内の燃料を吐出するポンプ(10;10b)と、
前記ポンプに接続されている燃料流路(82)から分岐し、前記ポンプから吐出された燃料の一部を前記燃料タンク内に戻すためのリターン流路(83;183)と、
前記リターン流路における流量を制御する弁装置(30;30a-30i)と、
を備え、
前記弁装置は、
ハウジング(301;301a;301c;301e;301f)と、
前記ハウジング内に設けられた内部流路(F1a-F10a;F1b-F10b)であって、前記燃料流路と前記燃料タンクの内部とにそれぞれ連通する内部流路と、
前記内部流路に配置された弁体(300;300a-300i)であって、前記ハウジング内を移動することにより、前記内部流路の最小流路断面積を変化させる弁体と、
前記弁体に接続され、温度に応じて荷重が変化することによって前記弁体を移動させるバネ部材(329;329e;329f)と、
を有し、
前記バネ部材は、前記ポンプが吐出する燃料の燃料温度が予め定められた蒸気発生温度以上の場合の前記最小流路断面積が、前記燃料温度が前記蒸気発生温度よりも低い場合の前記最小流路断面積よりも大きくなるように、前記弁体を移動させ
、
前記内部流路は、
前記燃料温度が前記蒸気発生温度よりも低い場合に前記燃料が流れる低温時流路(F4a)と、
前記燃料温度が前記蒸気発生温度以上の場合に前記燃料が流れる高温時流路(F4b)と、
を含み、
前記ハウジングは、前記燃料が流出する第3流出部(304)と、前記第3流出部を囲み前記弁体(300c)と対面する弁体対面部(307)と、を有し
、
前記弁体対面部は、前記弁体に近づくほど開口断面積が大きくなるテーパ状に形成され、
前記弁体において前記弁体対面部と接する部分を含む閉塞端部(350)は、球面状の外表面形状を有し、
前記弁体には、一端が前記ハウジングの内部に露呈し、他端が前記閉塞端部において前記第3流出部と対面する第3貫通孔(351)が形成されており、
前記低温時流路において、前記最小流路断面積は、前記第3貫通孔における最小流路断面積であり、
前記高温時流路において、前記最小流路断面積は、前記閉塞端部と前記弁体対面部との間の空隙(GP2)の最小流路断面積であり、
前記第3貫通孔における最小流路断面積は、前記閉塞端部と前記弁体対面部との間の空隙の最小流路断面積よりも小さい、
燃料供給装置。
【請求項8】
内燃機関において用いられる燃料を燃料タンク(TK)から供給するための燃料供給装置(100;100a;100b)であって、
前記燃料タンク内の燃料を吐出するポンプ(10;10b)と、
前記ポンプに接続されている燃料流路(82)から分岐し、前記ポンプから吐出された燃料の一部を前記燃料タンク内に戻すためのリターン流路(83;183)と、
前記リターン流路における流量を制御する弁装置(30;30a-30i)と、
を備え、
前記弁装置は、
ハウジング(301;301a;301c;301e;301f)と、
前記ハウジング内に設けられた内部流路(F1a-F10a;F1b-F10b)であって、前記燃料流路と前記燃料タンクの内部とにそれぞれ連通する内部流路と、
前記内部流路に配置された弁体(300;300a-300i)であって、前記ハウジング内を移動することにより、前記内部流路の最小流路断面積を変化させる弁体と、
前記弁体に接続され、温度に応じて荷重が変化することによって前記弁体を移動させるバネ部材(329;329e;329f)と、
を有し、
前記バネ部材は、前記ポンプが吐出する燃料の燃料温度が予め定められた蒸気発生温度以上の場合の前記最小流路断面積が、前記燃料温度が前記蒸気発生温度よりも低い場合の前記最小流路断面積よりも大きくなるように、前記弁体を移動させ
、
前記ハウジング(301c)には、前記ハウジングからの前記燃料の流出口(304)と、前記流出口を囲み前記弁体に対面する弁体対面部(307)と、が形成されており、
前記弁体と前記弁体対面部との間には、前記燃料温度が前記蒸気発生温度よりも高いか否かに関わらず、間隙(GP3)が設けられ、
前記間隙の大きさは、前記弁体(300d)の移動に応じて変化し、
前記燃料温度が前記蒸気発生温度よりも低い場合における前記間隙の最小流路断面積は、前記流出口の最小流路断面積
よりも小さく、
前記燃料温度が前記蒸気発生温度以上の場合における前記間隙の最小流路断面積は、前記流出口の最小流路断面積
以上である、
燃料供給装置。
【請求項9】
請求項1から請求項
8までのいずれか一項に記載の燃料供給装置において、
前記バネ部材は、前記弁体に対して前記ハウジング内への前記燃料の流入側に配置された第1バネ(330)と、前記弁体に対して前記ハウジングからの前記燃料の流出側に配置された第2バネ(340)と、を有し、
前記第1バネは、バイアスバネとして構成され、
前記第2バネは、形状記憶合金バネとして構成されている、
燃料供給装置。
【請求項10】
内燃機関において用いられる燃料を燃料タンク(TK)から供給するための燃料供給装置(100)であって、
前記燃料タンク内の燃料を吐出するポンプ(10)と、
前記ポンプに接続されている燃料流路(82)から分岐し、前記ポンプから吐出された燃料の一部を前記燃料タンク内に戻すためのリターン流路(83)と、
前記リターン流路における流量を制御する弁装置(30j)と、
を備え、
前記弁装置は、
ハウジング(301j)と、
前記ハウジング内に設けられた内部流路(F11a;F11b)であって、前記燃料流路と前記燃料タンクの内部とにそれぞれ連通する内部流路と、
前記内部流路に配置された弁体(300j)であって、前記内部流路の最小流路断面積を変化させる弁体と、
を有し、
前記内部流路は、
前記ポンプが吐出する燃料の燃料温度の高低に関わらず、前記燃料流路と前記燃料タンクの内部とを連通する第1流路と、
前記燃料温度が予め定められた蒸気発生温度よりも低い場合に前記弁体により閉塞され、前記燃料温度が前記蒸気発生温度以上の場合に前記弁体により閉塞されない第2流路と、
を含み、
前記第1流路は、第1流出部を含み、
前記第2流路は、第2流出部を含み、
前記弁体は、前記内部流路における前記燃料の流れる方向に積層された互いに熱膨張係数が異なる2種類の金属からなるバイメタルの板材により構成され、前記第2流出部を閉塞可能な位置に配置され、
前記第2流出部は、前記燃料温度が前記蒸気発生温度よりも低い場合に前記弁体により閉塞され、前記燃料温度が前記蒸気発生温度以上の場合に前記弁体により閉塞されない、
燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料タンク内の燃料を内燃機関に供給する燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料タンク内の燃料を内燃機関に供給する燃料供給装置として、燃料タンク内に配置されたポンプを有する燃料供給装置が用いられている。燃料タンク内の燃料温度は、内燃機関の動作状況や外部環境などに応じて非常に高くなることがある。この場合、燃料タンク内において燃料が気化して燃料蒸気(以下、「ベーパ」とも呼ぶ)となり、ポンプ内に吸入され得る。ポンプ内にベーパが吸入されると、ポンプの回転動力がベーパの圧縮仕事に利用されてしまう。このため、ポンプからの燃料供給量が少ない場合に、ポンプから燃料を供給できなくなるいわゆるベーパロックが起こり得る。そこで、特許文献1には、ベーパロックを防ぐために、内燃機関による燃料使用量よりも多い燃料をポンプから供給し、ポンプの下流に設けられたリターン流路から余剰分の燃料を燃料タンク内に戻す技術が開示されている。また、特許文献1には、リターン流路における流量を調整可能な電磁弁を配置し、内燃機関の燃料使用量が所定値未満の場合に電磁弁を開動作させ、所定値以上の場合に閉動作させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、燃料タンク内の燃料温度が低くベーパが発生しない状況であっても、内燃機関の燃料使用量が所定未満の場合には、一定量の燃料をポンプで汲み上げる必要がある。このため、ポンプ駆動のために無駄な電力を消費するという問題がある。このため、ベーパロック防止を目的とするポンプ駆動において無駄な電力消費を抑えることが可能な技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
[形態1]内燃機関において用いられる燃料を燃料タンク(TK)から供給するための燃料供給装置(100;100a;100b)であって、前記燃料タンク内の燃料を吐出するポンプ(10;10b)と、前記ポンプに接続されている燃料流路(82)から分岐し、前記ポンプから吐出された燃料の一部を前記燃料タンク内に戻すためのリターン流路(83;183)と、前記リターン流路における流量を制御する弁装置(30;30a-30i)と、を備え、前記弁装置は、ハウジング(301;301a;301c;301e;301f)と、前記ハウジング内に設けられた内部流路(F1a-F10a;F1b-F10b)であって、前記燃料流路と前記燃料タンクの内部とにそれぞれ連通する内部流路と、前記内部流路に配置された弁体(300;300a-300i)であって、前記ハウジング内を移動することにより、前記内部流路の最小流路断面積を変化させる弁体と、前記弁体に接続され、温度に応じて荷重が変化することによって前記弁体を移動させるバネ部材(329;329e;329f)と、を有し、前記バネ部材は、前記ポンプが吐出する燃料の燃料温度が予め定められた蒸気発生温度以上の場合の前記最小流路断面積が、前記燃料温度が前記蒸気発生温度よりも低い場合の前記最小流路断面積よりも大きくなるように、前記弁体を移動させ、前記内部流路は、前記燃料温度の高低に関わらず、前記燃料流路と前記燃料タンクの内部とを連通する第1流路と、前記燃料温度が前記蒸気発生温度よりも低い場合に前記弁体により閉塞され、前記燃料温度が前記蒸気発生温度以上の場合に前記弁体により閉塞されない第2流路と、を含む、燃料供給装置。
[形態2]内燃機関において用いられる燃料を燃料タンク(TK)から供給するための燃料供給装置(100;100a;100b)であって、前記燃料タンク内の燃料を吐出するポンプ(10;10b)と、前記ポンプに接続されている燃料流路(82)から分岐し、前記ポンプから吐出された燃料の一部を前記燃料タンク内に戻すためのリターン流路(83;183)と、前記リターン流路における流量を制御する弁装置(30;30a-30i)と、を備え、前記弁装置は、ハウジング(301;301a;301c;301e;301f)と、前記ハウジング内に設けられた内部流路(F1a-F10a;F1b-F10b)であって、前記燃料流路と前記燃料タンクの内部とにそれぞれ連通する内部流路と、前記内部流路に配置された弁体(300;300a-300i)であって、前記ハウジング内を移動することにより、前記内部流路の最小流路断面積を変化させる弁体と、前記弁体に接続され、温度に応じて荷重が変化することによって前記弁体を移動させるバネ部材(329;329e;329f)と、を有し、前記バネ部材は、前記ポンプが吐出する燃料の燃料温度が予め定められた蒸気発生温度以上の場合の前記最小流路断面積が、前記燃料温度が前記蒸気発生温度よりも低い場合の前記最小流路断面積よりも大きくなるように、前記弁体を移動させ、前記内部流路は、前記燃料温度が前記蒸気発生温度よりも低い場合に前記燃料が流れる低温時流路(F1a;F3a;F10a)と、前記燃料温度が前記蒸気発生温度以上の場合に前記燃料が流れる高温時流路(F1b;F3b;F10b)と、を含み、前記ハウジングは、前記燃料が流出する第3流出部(304)を有し、前記弁体は、前記燃料温度が前記蒸気発生温度よりも低い場合に前記高温時流路を閉塞し、前記弁体には、前記高温時流路を閉塞する際に前記ハウジングの内壁面における前記第3流出部の端部を形成する開口を囲む凹部(323)と、前記弁体の内部に形成された貫通孔であって、一端が前記凹部に露呈し、他端が前記ハウジングの内部に露呈する第2貫通孔(321;318)と、が形成されており、前記低温時流路は、前記第3流出部と前記第2貫通孔とを含み、前記高温時流路は、前記第3流出部を含み、前記凹部において前記高温時流路を閉塞する際に前記ハウジングの内壁面に接触する閉塞端部(E1)と、前記ハウジングの内壁面と、の間の間隙(GP1;GP6)を含み、前記第2貫通孔は含まず、前記低温時流路において、前記最小流路断面積は、前記第2貫通孔の断面積であり、前記高温時流路において、前記最小流路断面積は、前記第3流出部の断面積又は前記間隙の断面積であり、前記第2貫通孔の断面積は、前記第3流出部の断面積又は前記間隙の断面積よりも小さい、燃料供給装置。
[形態3]内燃機関において用いられる燃料を燃料タンク(TK)から供給するための燃料供給装置(100;100a;100b)であって、前記燃料タンク内の燃料を吐出するポンプ(10;10b)と、前記ポンプに接続されている燃料流路(82)から分岐し、前記ポンプから吐出された燃料の一部を前記燃料タンク内に戻すためのリターン流路(83;183)と、前記リターン流路における流量を制御する弁装置(30;30a-30i)と、を備え、前記弁装置は、ハウジング(301;301a;301c;301e;301f)と、前記ハウジング内に設けられた内部流路(F1a-F10a;F1b-F10b)であって、前記燃料流路と前記燃料タンクの内部とにそれぞれ連通する内部流路と、前記内部流路に配置された弁体(300;300a-300i)であって、前記ハウジング内を移動することにより、前記内部流路の最小流路断面積を変化させる弁体と、前記弁体に接続され、温度に応じて荷重が変化することによって前記弁体を移動させるバネ部材(329;329e;329f)と、を有し、前記バネ部材は、前記ポンプが吐出する燃料の燃料温度が予め定められた蒸気発生温度以上の場合の前記最小流路断面積が、前記燃料温度が前記蒸気発生温度よりも低い場合の前記最小流路断面積よりも大きくなるように、前記弁体を移動させ、前記内部流路は、前記燃料温度が前記蒸気発生温度よりも低い場合に前記燃料が流れる低温時流路(F4a)と、前記燃料温度が前記蒸気発生温度以上の場合に前記燃料が流れる高温時流路(F4b)と、を含み、前記ハウジングは、前記燃料が流出する第3流出部(304)と、前記第3流出部を囲み前記弁体(300c)と対面する弁体対面部(307)と、を有し、前記弁体対面部は、前記弁体に近づくほど開口断面積が大きくなるテーパ状に形成され、前記弁体において前記弁体対面部と接する部分を含む閉塞端部(350)は、球面状の外表面形状を有し、前記弁体には、一端が前記ハウジングの内部に露呈し、他端が前記閉塞端部において前記第3流出部と対面する第3貫通孔(351)が形成されており、前記低温時流路において、前記最小流路断面積は、前記第3貫通孔における最小流路断面積であり、前記高温時流路において、前記最小流路断面積は、前記閉塞端部と前記弁体対面部との間の空隙(GP2)の最小流路断面積であり、前記第3貫通孔における最小流路断面積は、前記閉塞端部と前記弁体対面部との間の空隙の最小流路断面積よりも小さい、燃料供給装置。
[形態4]内燃機関において用いられる燃料を燃料タンク(TK)から供給するための燃料供給装置(100;100a;100b)であって、前記燃料タンク内の燃料を吐出するポンプ(10;10b)と、前記ポンプに接続されている燃料流路(82)から分岐し、前記ポンプから吐出された燃料の一部を前記燃料タンク内に戻すためのリターン流路(83;183)と、前記リターン流路における流量を制御する弁装置(30;30a-30i)と、を備え、前記弁装置は、ハウジング(301;301a;301c;301e;301f)と、前記ハウジング内に設けられた内部流路(F1a-F10a;F1b-F10b)であって、前記燃料流路と前記燃料タンクの内部とにそれぞれ連通する内部流路と、前記内部流路に配置された弁体(300;300a-300i)であって、前記ハウジング内を移動することにより、前記内部流路の最小流路断面積を変化させる弁体と、前記弁体に接続され、温度に応じて荷重が変化することによって前記弁体を移動させるバネ部材(329;329e;329f)と、を有し、前記バネ部材は、前記ポンプが吐出する燃料の燃料温度が予め定められた蒸気発生温度以上の場合の前記最小流路断面積が、前記燃料温度が前記蒸気発生温度よりも低い場合の前記最小流路断面積よりも大きくなるように、前記弁体を移動させ、前記ハウジング(301c)には、前記ハウジングからの前記燃料の流出口(304)と、前記流出口を囲み前記弁体に対面する弁体対面部(307)と、が形成されており、前記弁体と前記弁体対面部との間には、前記燃料温度が前記蒸気発生温度よりも高いか否かに関わらず、間隙(GP3)が設けられ、前記間隙の大きさは、前記弁体(300d)の移動に応じて変化し、前記燃料温度が前記蒸気発生温度よりも低い場合における前記間隙の最小流路断面積は、前記流出口の最小流路断面積よりも小さく、前記燃料温度が前記蒸気発生温度以上の場合における前記間隙の最小流路断面積は、前記流出口の最小流路断面積以上である、燃料供給装置。
[形態5]内燃機関において用いられる燃料を燃料タンク(TK)から供給するための燃料供給装置(100)であって、前記燃料タンク内の燃料を吐出するポンプ(10)と、前記ポンプに接続されている燃料流路(82)から分岐し、前記ポンプから吐出された燃料の一部を前記燃料タンク内に戻すためのリターン流路(83)と、前記リターン流路における流量を制御する弁装置(30j)と、を備え、前記弁装置は、ハウジング(301j)と、前記ハウジング内に設けられた内部流路(F11a;F11b)であって、前記燃料流路と前記燃料タンクの内部とにそれぞれ連通する内部流路と、前記内部流路に配置された弁体(300j)であって、前記内部流路の最小流路断面積を変化させる弁体と、を有し、前記内部流路は、前記ポンプが吐出する燃料の燃料温度の高低に関わらず、前記燃料流路と前記燃料タンクの内部とを連通する第1流路と、前記燃料温度が予め定められた蒸気発生温度よりも低い場合に前記弁体により閉塞され、前記燃料温度が前記蒸気発生温度以上の場合に前記弁体により閉塞されない第2流路と、を含み、前記第1流路は、第1流出部を含み、前記第2流路は、第2流出部を含み、前記弁体は、前記内部流路における前記燃料の流れる方向に積層された互いに熱膨張係数が異なる2種類の金属からなるバイメタルの板材により構成され、前記第2流出部を閉塞可能な位置に配置され、前記第2流出部は、前記燃料温度が前記蒸気発生温度よりも低い場合に前記弁体により閉塞され、前記燃料温度が前記蒸気発生温度以上の場合に前記弁体により閉塞されない、燃料供給装置。
【0006】
本開示の一実施形態によれば、内燃機関において用いられる燃料を燃料タンク(TK)から供給するための燃料供給装置(100;100a;100b)が提供される。この燃料供給装置は、前記燃料タンク内の燃料を吐出するポンプ(10;10b)と、前記ポンプに接続されている燃料流路(82)から分岐し、前記ポンプから吐出された燃料の一部を前記燃料タンク内に戻すためのリターン流路(83;183)と、前記リターン流路における流量を制御する弁装置(30;30a-30i)と、を備える。弁装置は、ハウジング(301;301a;301c;301e;301f)と、前記ハウジング内に設けられた内部流路(F1a-F10a;F1b-F10b)であって、前記燃料流路と前記燃料タンクの内部とにそれぞれ連通する内部流路と、前記内部流路に配置された弁体(300;300a-300i)であって、前記ハウジング内を移動することにより、前記内部流路の最小流路断面積を変化させる弁体と、前記弁体に接続され、温度に応じて荷重が変化することによって前記弁体を移動させるバネ部材(329;329e;329f)と、を有する。前記バネ部材は、前記ポンプが吐出する燃料の燃料温度が予め定められた蒸気発生温度以上の場合の前記最小流路断面積が、前記燃料温度が前記蒸気発生温度よりも低い場合の前記最小流路断面積よりも大きくなるように、前記弁体を移動させる。
【0007】
この形態の燃料供給装置によれば、バネ部材は、ポンプが吐出する燃料の燃料温度が蒸気発生温度以上の場合の最小流路断面積が、蒸気発生温度よりも低い場合の最小流路断面積よりも大きくなるように、弁体を移動させるので、燃料蒸気が発生する状況においてリターン流路における流量を、燃料蒸気が発生しない状況における流量に比べて増大できる。このため、燃料蒸気が発生しない状況においてはベーパロック防止を目的としたポンプ回転数の上昇を実行せず、燃料蒸気が発生する状況においてのみかかるポンプ回転数の上昇を実行でき、ベーパロック防止を目的としたポンプ駆動のための無駄な電力消費を抑制できる。
【0008】
本開示は、燃料供給装置以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、燃料供給装置に用いられる弁装置、燃料供給装置を搭載した車両、燃料供給装置の製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態における燃料供給装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】第1実施形態の流量調整弁の概略構成を示す断面図である。
【
図3】第1実施形態の弁体が有する閉塞突起の詳細構成を示す透視斜視図である。
【
図4】第1実施形態の流量調整弁の概略構成を示す断面図である。
【
図5】第1実施形態における低温時の内部流路を示す説明図である。
【
図6】第1実施形態における高温時の内部流路を示す説明図である。
【
図7】第2実施形態における流量調整弁の概略構成および低温時の内部流路を示す説明図である。
【
図8】第2実施形態における流量調整弁の概略構成および高温時の内部流路を示す説明図である。
【
図9】第3実施形態における流量調整弁の概略構成および低温時の内部流路を示す説明図である。
【
図10】第3実施形態における流量調整弁の概略構成および高温時の内部流路を示す説明図である。
【
図11】第4実施形態における流量調整弁の概略構成および低温時の内部流路を示す説明図である。
【
図12】第4実施形態における流量調整弁の概略構成および高温時の内部流路を示す説明図である。
【
図13】第5実施形態における流量調整弁の概略構成および低温時の内部流路を示す説明図である。
【
図14】第5実施形態における流量調整弁の概略構成および高温時の内部流路を示す説明図である。
【
図15】第6実施形態における流量調整弁の概略構成および低温時の内部流路を示す説明図である。
【
図16】第6実施形態における流量調整弁の低温時の概略構成を示す説明図である。
【
図17】第6実施形態における流量調整弁の概略構成および高温時の内部流路を示す説明図である。
【
図18】第6実施形態における流量調整弁の高温時の概略構成を示す説明図である。
【
図19】第7実施形態における流量調整弁の概略構成および低温時の内部流路を示す説明図である。
【
図20】第7実施形態における流量調整弁の概略構成を示す断面図である。
【
図21】第7実施形態における流量調整弁の高温時の内部流路を示す断面図である。
【
図22】第8実施形態における流量調整弁の概略構成および低温時の内部流路を示す説明図である。
【
図23】第8実施形態における流量調整弁の概略構成および高温時の内部流路を示す説明図である。
【
図24】第9実施形態における流量調整弁の概略構成および低温時の内部流路を示す説明図である。
【
図25】第9実施形態における流量調整弁の概略構成および高温時の内部流路を示す説明図である。
【
図26】第10実施形態における流量調整弁の概略構成および低温時の内部流路を示す説明図である。
【
図27】第10実施形態における流量調整弁の概略構成および高温時の内部流路を示す説明図である。
【
図28】第11実施形態における流量調整弁の概略構成および低温時の内部流路を示す説明図である。
【
図29】第11実施形態における流量調整弁の概略構成を示す説明図である。
【
図30】第11実施形態における流量調整弁の概略構成および高温時の内部流路を示す断面図である。
【
図31】第12実施形態における燃料供給装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図32】第13実施形態における燃料供給装置の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
A.第1実施形態:
A1.全体構成:
図1に示す本実施形態の燃料供給装置100は、図示しない内燃機関において用いられる燃料を、燃料タンクTKから供給する。本実施形態において、上述の内燃機関は、車両に搭載されたエンジンであって、複数の気筒にそれぞれ噴射弁610が設けられた多気筒の点火式エンジンである。燃料供給装置100は、燃料タンクTK内に配置され、燃料タンクTK内の燃料を圧縮して燃料タンクTKの外部へと送る。
【0011】
燃料供給装置100には、低圧燃料流路85を介して、高圧ポンプ装置200が接続されている。高圧ポンプ装置200は、燃料供給装置100から送られてきた燃料を、さらに圧縮してデリバリパイプ600に供給する。低圧燃料流路85には、圧力センサ401が取り付けられている。圧力センサ401は、低圧燃料流路85における燃料の供給圧力(以下、「供給圧」と呼ぶ)を検出する。圧力センサ401は、制御装置500と電気的に接続されており、検出した供給圧を制御装置500に通知する。デリバリパイプ600は、高圧燃料流路250を介して、高圧ポンプ装置200に接続されている。高圧燃料流路250には、燃料の流れる方向を高圧ポンプ装置200からデリバリパイプ600に向かう方向に規制する逆止弁260が設けられている。デリバリパイプ600は、高圧ポンプ装置200から送られてきた燃料を蓄圧し、各噴射弁610へと分配する。デリバリパイプ600には、圧力センサ400が取り付けられている。圧力センサ400は、デリバリパイプ600における供給圧を検出する。圧力センサ400は、圧力センサ401と同様に、制御装置500と電気的に接続されており、検出した供給圧を制御装置500に通知する。
【0012】
制御装置500は、噴射弁610の動作と、燃料供給装置100が有する後述のポンプ(ポンプ10)の動作と、高圧ポンプ装置200の動作とを制御する。制御装置500は、エンジンの運転状況、例えば、エンジン負荷およびエンジン回転数に応じて燃料の目標噴射量を算出し、算出された目標噴射量となるように、噴射弁610の開弁デューティ比を制御する。開弁デューティ比とは、開弁周期内における開弁時間の割合を意味する。また、制御装置500は、エンジンの運転状況に応じて目標供給圧および目標噴射量を算出し、目標供給圧および目標噴射量となるように後述のポンプ10および高圧ポンプ装置200を制御する。このとき、制御装置500は、圧力センサ400から通知される供給圧に基づきフィードバック制御を行う。ポンプ10の制御とは、具体的には、ポンプ10を駆動するための図示しない電動モータへの印加電圧を制御することを意味し、本実施形態では、かかる印加電圧をデューティ制御することを意味する。また、高圧ポンプ装置200の制御とは、具体的には、高圧ポンプ装置200が有する後述の電磁スピル弁(電磁スピル弁210)の開閉動作を制御することにより、開弁期間を制御することを意味する。本実施形態において、制御装置500は、CPUとメモリとを有するコンピュータにより構成されたECU(Electronic Control Unit)により構成されている。制御装置500が有するCPUは、予めメモリに格納されている制御プログラムを実行することにより、上述の各制御を行う制御部として機能する。なお、制御装置500とは別体のECUを、燃料タンクTKの内部若しくは燃料タンクTKの外部近傍に設け、かかるECUがポンプ10を制御する機能を有してもよい。
【0013】
高圧ポンプ装置200は、電磁スピル弁210と、加圧室220と、プランジャ230とを備える。電磁スピル弁210は、本実施形態では、ソレノイド弁として構成されている。電磁スピル弁210は、制御装置500からの指示に応じて開弁動作を行うことにより、低圧燃料流路85と加圧室220とを互いに連通させる。また、電磁スピル弁210は、制御装置500からの指示に応じて閉弁動作を行うことにより、低圧燃料流路85と加圧室220とを遮断させる。加圧室220内には、プランジャ230が往復移動可能に配置されている。プランジャ230は、カムシャフト240の回転に応じて加圧室220内を往復移動する。これにより、加圧室220内の容積は変化する。なお、
図1では、プランジャ230は、カムシャフト240に直接接触しているように表されているが、プランジャ230は、プランジャ230を支持する支持部材を介してカムシャフト240に接していてもよい。また、この支持部材には、プランジャ230をカムシャフト240側へと付勢する弾性部材が接続されていてもよい。高圧ポンプ装置200による高圧燃料流路250を介した燃料の供給量の調整は、電磁スピル弁210の開弁および閉弁のタイミングと、プランジャ230の位置(カムシャフト240の位相)との関係を調整することにより実現される。
【0014】
燃料供給装置100は、ポンプ10と、フィルタ50と、残圧保持弁15と、逆止弁20と、流量調整弁30と、リリーフ弁40と、流入路81と、燃料流路82と、リターン流路83と、分岐流路84とを備える。流入路81と燃料流路82とリターン流路83と分岐流路84とは、いずれも燃料タンクTK内に配設された管により構成されている。
【0015】
ポンプ10は、いわゆるフィードポンプであり、フィルタ50および流入路81を介して燃料タンクTK内の燃料を汲み上げて圧縮し、燃料流路82へと吐出する。ポンプ10の回転数、換言するとポンプ10が有するインペラの回転速度は、制御装置500によって、エンジンの動作状態に応じて制御される。本実施形態において、燃料供給装置100は略円筒形の外観形状を有する。燃料供給装置100は、中心軸が水平方向とほぼ平行となるように燃料タンクTK内に配置されて用いられる、いわゆる横置きタイプのポンプである。フィルタ50は、いわゆるサクションフィルタであり、燃料内の異物を取り除き、ポンプ10内に異物が吸入されることを抑制する。
【0016】
逆止弁20は、燃料流路82において残圧保持弁15の下流側に設けられ、燃料の流れる方向をポンプ10から高圧ポンプ装置200に向かう方向に規制する。ポンプ10の駆動中においては、逆止弁20の上流側の燃圧と、逆止弁20の下流側の燃圧とは、ほぼ等しい。
【0017】
流量調整弁30は、リターン流路83に配置され、ポンプ10から吐出される燃料のうち、リターン流路83を介して燃料タンクTK内に戻す燃料の流量を制御する。本実施形態では、流量調整弁30は、燃料タンクTKに戻す燃料の流量を、ポンプ10が吐出する燃料の温度(以下、「燃料温度」と呼ぶ)に応じて調整する。より具体的には、燃料タンクTK内に戻す燃料の流量を、燃料温度が、燃料蒸気が発生する温度として予め定められた温度(以下、「蒸気発生温度」と呼ぶ)以上の場合には、蒸気発生温度未満の場合に比べて増加するように調整する。但し、流量調整弁30は電磁弁ではなく制御装置500により制御されない。すなわち、流量調整弁30は、燃料温度に応じて自律的に燃料タンクTKに戻る燃料の流量を制御する。かかる流量調整の詳細、および流量調整弁30の詳細構成については、後述する。流量調整弁30は、本開示における弁装置の下位概念に相当する。
【0018】
リリーフ弁40は、分岐流路84に配置され、ポンプ10と高圧ポンプ装置200との間における燃圧、即ち、燃料流路82における逆止弁20の下流側および低圧燃料流路85の燃圧が上限圧力以上になると開弁し、燃料を燃料タンクTK内に戻す。これにより、燃料流路82および低圧燃料流路85を構成する配管や逆止弁20が非常に高い燃圧により損傷することを抑制する。
【0019】
流入路81は、燃料タンクTK内の燃料を燃料供給装置100に流入するための流路である。流入路81の一端はフィルタ50に接し、他端はポンプ10に接続されている。燃料流路82は、ポンプ10から吐出された燃料を低圧燃料流路85に供給するための流路である。燃料流路82の一端はポンプ10に接続され、他端は低圧燃料流路85に接続されている。燃料流路82と低圧燃料流路85とは、例えば、燃料タンクTKに取り付けられた蓋部材が有するコネクタにより互いに接続されてもよい。リターン流路83は、ポンプ10から吐出された燃料の一部を燃料タンクTK内に戻すための流路である。リターン流路83の一端は、燃料流路82に逆止弁20の上流側で接続され、他端は燃料タンクTK内に開放されている。分岐流路84は、燃料流路82内の燃料を燃料タンクTKに戻すための流路である。分岐流路84の一端は燃料流路82に逆止弁20の下流側で接続され、他端はリリーフ弁40に接続されている。なお、分岐流路84は、リリーフ弁40が開弁されることにより燃料タンクTK内と連通する。
【0020】
上述のように、制御装置500は、エンジンの運転状況に応じて算出された目標供給圧と目標噴射量(エンジンにおける燃料の使用量)となるように、ポンプ10に対する印加電圧をデューティ制御している。本実施形態では、目標供給圧と目標噴射量とデューティ比とが対応付けられたマップ(以下、「ポンプ駆動マップ」と呼ぶ)が、制御装置500が有するメモリに予め格納されており、制御装置500は、かかるポンプ駆動マップを参照して印加電圧をデューティ制御している。ここで、上述のように、リターン流路83から燃料タンクTK内に戻る燃料の流量は、燃料温度が蒸気発生温度以上の場合には蒸気発温度未満の場合に比べて増加する。このため、燃料温度が蒸気発生温度未満の状態から蒸気発生温度以上に上昇すると、供給圧は低下する。この場合、制御装置500は、圧力センサ401により供給圧の低下を検出すると、目標供給圧および目標噴射量を実現するために、ポンプ10の駆動デューティ比を増加させる。これにより、ポンプ10から吐出される燃料量は、増加することになる。流量調整弁30は、この増加分がベーパロック防止のために必要な流量(以下、「ベーパロック防止流量」と呼ぶ)以上となるように、流量調整を行う。このような動作により、燃料蒸気が発生する状況において、目標噴射量、すなわちエンジンにおける燃料の使用量が少ない場合であっても、ベーパロック防止に必要な流量分の燃料をポンプ10から吐出させることができる。これにより、ポンプ10におけるベーパロックを防止できる。なお、ベーパロックとは、ポンプ10の回転動力が主としてポンプ10内に吸引された燃料蒸気の圧縮仕事に利用されてしまい、ポンプ10からの燃料の吐出量が極端に低下する現象を意味する。
【0021】
A2.流量調整弁の構成:
図2および
図4に示すように、流量調整弁30は、ハウジング301と、弁体300と、バネ部材329とを備える。なお、
図2および
図4は、流量調整弁30の中心軸を通る断面図を示す。
【0022】
ハウジング301は、中空の略円筒状の外観形状を有する。ハウジング301は、弁体300およびバネ部材329を収容する。ハウジング301には、流入部303と流出部304とが形成されている。ポンプ10から吐出された燃料は、流入部303からハウジング301内の内部空間302に流入する。また、内部空間302内の燃料は、流出部304から排出されて燃料タンクTK内へと戻る。内部空間302には、後述する内部流路が形成される。
図2には、流入部303と流出部304とを結ぶ仮想線VLが表されている。仮想線VLは、ハウジング301の中心軸とほぼ一致し、ハウジング301の中心部を通る。本実施形態において、ハウジング301は、樹脂により形成されている。かかる樹脂としては、例えば、燃料に対する耐性に優れる樹脂、例えば、ナイロン6やナイロン66等のポリアミド(PA)を用いてもよい。なお、樹脂に代えて金属によりハウジング301を構成してもよい。なお、流出部304は、本開示における第3流路部の下位概念に相当する。
【0023】
弁体300は、内部空間302内に形成される内部流路に配置され、ハウジング内を流路方向FDおよびその反対方向に移動することにより、内部流路の最小流路断面積を制御する。流路方向FDは、流入部303から流出部304に向かう方向である。弁体300の移動は、バネ部材329により制御される。ポンプ10から吐出された燃料の燃料温度が蒸気発生温度未満の時(以下、「低温時」と呼ぶ)には、
図2に示すように、弁体300は、ハウジング301の内壁面W1に接している。内壁面W1は、ハウジング301の内壁面のうち、流路方向FDの端部に位置する内壁面であり、流出部304に接続された内壁面である。これに対して、燃料温度が蒸気発生温度以上の時(以下、「高温時」と呼ぶ)には、
図4に示すように、弁体300は、内壁面W1と接しておらず、弁体300と内壁面W1との間には、間隙GP1が形成されている。内部流路の最小流路断面積の制御については、後ほど詳述する。本実施形態において、弁体300は、ハウジング301と同様な樹脂により形成されている。なお、樹脂に代えて金属により弁体300を構成してもよい。
【0024】
図2および
図4に示すように、弁体300は、仕切部310と閉塞突出部320とを備える。仕切部310は、内部空間302を、燃料の流入側領域と流出側領域とに区画する。仕切部310は、ハウジング301の内壁面に接しながら仮想線VLと平行な方向に摺動する。仕切部310は、略円筒形状の外観形状を有し、ハウジング301の中心軸とほぼ一致する中心軸を有する。仕切部310には凹部311が形成されている。凹部311は、流路方向FDとは反対方向に開口した略円筒状の窪みとして形成されている。凹部311の中心軸は、仕切部310の中心軸とほぼ一致する。仕切部310の径方向の外壁面には、径方向内側に窪んだ外壁側凹部が形成されている。外壁側凹部は、流入部303から内部空間302に流入した燃料を、流入側領域から流出側領域へと流通させる。
図2および
図4では、外壁側凹部を通る断面を表している。したがって、
図2および
図4に示すように、仕切部310は、外壁側凹部においてハウジング301との間に径方向の空隙が形成されるように配置されている。
【0025】
閉塞突出部320は、流路方向FDに沿って仕切部310の中央から突出し、流出部304を閉塞可能に構成されている。閉塞突出部320は略円筒状の外観形状を有し、ハウジング301の中心軸とほぼ一致する中心軸を有する。
図2に示すように、低温時には、閉塞突出部320における流路方向FDの端部である閉塞端部E1は、内壁面W1と接する。これにより、流出部304は、閉塞突出部320によって閉塞される。上述の「閉塞」とは、内部空間302における流出側領域のうちの流出部304の近傍の領域から、弁体300(閉塞端部E1)と内壁面W1との間を通って流出部304へと燃料が排出されないことを意味し、流出部304からまったく燃料が排出されないことを意味するものではない。
【0026】
閉塞突出部320における流路方向FDの端部には、凹部323が形成されている。
図3に示すように、凹部323は、流路方向FDに開口した略円筒状の窪みとして形成されている。凹部311の中心軸は、仕切部310の中心軸とほぼ一致する。凹部311は、低温時に流出部304と連通する。このとき、閉塞突出部320の閉塞端部E1は、かかる開口を囲むように内壁面W1と接する。
【0027】
図2~
図4に示すように、閉塞突出部320における流路方向FDの端部近傍の内部には、貫通孔321が形成されている。本実施形態において、貫通孔321は略T字の平面形状を有する。貫通孔321の一端は凹部323に露呈し、他端は内部空間302に露呈している。貫通孔321は、第1の貫通孔形成部324と、第2の貫通孔形成部325とからなる。第1の貫通孔形成部324は、閉塞突出部320を経方向に貫通する。したがって、第1の貫通孔形成部324は、その両端において内部空間302に露呈している。上述の貫通孔321において内部空間302に露呈している一端とは、第1の貫通孔形成部324の両端を意味する。第2の貫通孔形成部325は、流路方向FDに沿って形成され、一端が第1の貫通孔形成部324に連通し、他端は凹部323に露呈している。貫通孔321は、本開示における第2貫通孔の下位概念に相当する。
【0028】
バネ部材329は、第1バネ330と第2バネ340とを備える。第1バネ330は、内部空間302において流入側領域に配置されている。本実施形態において、第1バネ330は、いわゆるバイアスバネとして構成されたコイルバネである。第1バネ330の中心軸は、ハウジング301および弁体300の中心軸とほぼ一致する。本実施形態において、第1バネ330は、ステンレス鋼(SUS)により形成されている。なお、ステンレス鋼に代えて、鋼鉄や樹脂など、温度のよる荷重変化が第2バネ340に比べて小さな任意の材料によって形成してもよい。第1バネ330の流路方向FDの端部は、仕切部310の凹部311に接しており、流路方向FDと反対方向の端部は、ハウジング301の内壁面に接している。第1バネ330は、弁体300を流路方向FD方向に付勢する。
【0029】
第2バネ340は、内部空間302において、流出側領域に配置されている。本実施形態において、第2バネ340は、いわゆる形状記憶合金バネとして構成されたコイルバネである。第2バネ340の中心軸は、ハウジング301および弁体300の中心軸とほぼ一致する。本実施形態において、第2バネ340は、ニッケル(Ni)とチタン(Ti)の合金(Ni-Ti合金)により形成されている。なお、Ni-Ti合金に代えて、Ag-Cd合金(銀―カドミウム合金)、Cu-Au-Zn合金(銅―金―亜鉛合金)、In-Ti合金(インジウム―チタン合金)、In-Cd合金(インジウム―カドミウム合金)、Ti-Ni-Cu合金(チタン―ニッケル―銅合金)などの、温度のよる荷重変化が第1バネ330に比べて大きな任意の材料によって形成してもよい。第2バネ340の流路方向FDの端部は、ハウジング301の内壁面W1に接しており、流路方向FDと反対方向の端部は、仕切部310の流路方向FDの端面に接している。第2バネ340の直径は、閉塞突出部320の直径よりも大きく、第2バネ340は、閉塞突出部320を取り囲むように配置されている。第2バネ340は、弁体300を流路方向FDとは反対方向に付勢する。第2バネ340は、記憶合金バネであるため、温度に応じて発生させる荷重の大きさ、換言すると、流路方向FDとは反対方向に弁体300を付勢する力の大きさが異なる。具体的には、温度が高くなるにつれて荷重の大きさは大きくなる。
【0030】
上述のように、第1バネ330は弁体300を流路方向FDに付勢し、第2バネ340は弁体300を流路方向FDとは反対方向に付勢する。また、第2バネ340の発生荷重は、第2バネ340の温度が高くなるにつれて大きくなる。第2バネ340は、燃料が流入する内部空間302内に配置されているため、流入する燃料温度が高くなると、第2バネ340の温度も上昇する。このため、燃料温度が上昇するにつれて、弁体300が流路方向FDとは反対方向に受ける荷重は大きくなる。本実施形態では、燃料温度が蒸気発生温度未満の場合には、第2バネ340が弁体300を流路方向FDとは反対方向に押す力が、第1バネ330が弁体300を流路方向FDに押す力以下となり、燃料温度が蒸気発生温度以上の場合に、第2バネ340が弁体300を流路方向FDとは反対方向に押す力が、第1バネ330が弁体300を流路方向FDに押す力よりも大きくなるように、設定されている。このような第1バネ330と第2バネ340の荷重の大きさの制御により、低温時には、弁体300は、第1バネ330および第2バネ340の合計荷重により流路方向FDに付勢され、
図2に示すようにハウジング301の内壁面W1に押し付けられる。このため、流出部304は凹部323により閉塞される。他方、高温時には、弁体300は、第1バネ330および第2バネ340の合計荷重により流路方向FDとは反対方向に付勢され、
図4に示すように弁体300と内壁面W1との間には、間隙GP1が生じる。上述のような第1バネ330と第2バネ340の荷重の大きさの制御は、例えば、予め実験等により、第1バネ330および第2バネ340のうちの少なくとも一方のバネの太さ、巻数、直径を調整しておくことにより実現できる。
【0031】
A3.内部流路の詳細:
図5において太い実線の矢印で示すように、低温時において内部空間302には、内部流路F1aが形成される。内部流路F1aでは、燃料は、流入部303から仕切部310の外径方向の外側の空隙(円筒状の空隙)を通って流路方向FDに向かい、第1の貫通孔形成部324に流入する。そして、燃料は、第1の貫通孔形成部324から第2の貫通孔形成部325へと流入し、凹部323を通って流出部304へと至る。なお、内部流路F1aは、本開示における低温時流路の下位概念に相当する。
【0032】
ここで、本実施形態では、低温時に内部流路F1aを流れる燃料の流量は、ポンプ10の冷却と、ポンプ10のインペラに噛み込まれた異物の除去とを考慮して決定されている。以下、具体的に説明する。本実施形態の燃料供給装置100では、目標供給圧および目標噴射量が所定量よりも低い場合であっても、ポンプ10が汲み上げる燃料の流量を所定流量(以下、「ポンプ冷却流量」と呼ぶ)以上とすることにより、かかる燃料によってポンプ10を冷却するようにしている。そして、このポンプ冷却流量と、目標噴射量から求められる高圧ポンプ装置200への供給流量との差分だけ流量調整弁30から燃料が排出されるように、低温時における内部流路F1aを流れる流量が決定されている。また、ポンプ10の回転数が低い場合には、インペラに異物が噛み込み易くなる。そこで、本実施形態の燃料供給装置100では、目標供給圧および目標噴射量が所定量よりも低い場合であっても、ポンプ10が汲み上げる燃料の流量を所定流量(以下、「異物噛み込み防止流量」と呼ぶ)以上にしてインペラの回転トルクを増大させることにより、インペラにおける異物の噛み込みを防止するようにしている。そして、この異物噛み込み防止流量と、目標噴射量から求められる高圧ポンプ装置200への供給流量との差分だけ流量調整弁30から燃料が排出されるように、低温時における内部流路F1aを流れる流量が決定されている。一般に、異物噛み込み防止流量は、ポンプ冷却流量よりも大きい。したがって、低温時には、ポンプ10から吐出される燃料量が異物噛み込み防止流量以上(かつ、ベーパロック防止流量未満)となるように流量調整弁30が設定されることにより、ポンプ10の冷却と異物の噛み込み防止とが実現されている。なお、ベーパロック防止流量は、異物噛み込み防止流量よりも大きい。
【0033】
図6において太い実線の矢印で示すように、高温時において内部空間302には、内部流路F1bが形成される。内部流路F1bでは、燃料は、流入部303から仕切部310の外径方向の外側の空隙(円筒状の空隙)を通って流路方向FDに向かい、間隙GP1から凹部323に流入する。そして、燃料は、凹部323を通って流出部304へと至る。なお、内部流路F1bは、本開示における高温時流路の下位概念に相当する。高温時には、ポンプ10から吐出される燃料量がベーパロック防止流量以上となるように流量調整弁30が設定されることにより、ポンプ10の冷却と、異物の噛み込み防止と、ベーパロック防止とが実現されている。
【0034】
ここで、
図4に示すように、第1の貫通孔形成部324における流路断面積S1と、第2の貫通孔形成部325における流路断面積S2と、流出部304の流路断面積S3とは、下記式(1)の関係を有する。また、間隙GP1の流路断面積S4と、流出部304の流路断面積S3とは、下記式(2)の関係を有する。なお、間隙GP1の流路断面積は、帯状かつ環状の領域の面積である。
S1>S3>S2 ・・・(1)
S4>
S3 ・・・(2)
【0035】
上述の流路断面積とは、燃料の流れる方向に対して交差する方向の断面積を意味する。なお、交差する方向とは、直交する方向のみならず、燃料の流れる方向に対して90°を基準とした所定の角度範囲の角度だけずれて交差することも含む広い意味を有する。所定の角度範囲としては、例えば、-10°から+10°の範囲としてもよい。なお、第1の貫通孔形成部324、第2の貫通孔形成部325、流出部304、および間隙GP1の流路断面積は、それぞれ一定であるので、上述の各流路断面積S1、S2、S3、S4は、それぞれにおける最小流路断面積とも言うことができる。仕切部310の外径方向の外側の空隙(円筒状の空隙)の流路断面積は、上述の各流路断面積S1、S2、S3、S4よりも大きい。
【0036】
上述の式(1)の関係から、
図5に示す低温時の内部流路F1aの最小流路断面積は、第2の貫通孔形成部325の流路断面積S2が該当する。また、
図6に示す高温時の内部流路F1bの最小流路断面積は、流出部304の流路断面積S3が該当する。したがって、上記式(1)および(2)から、高温時の内部流路F1bの最小流路断面積は、低温時の内部流路F1aの最小流路断面積よりも大きい。ここで、内部流路を通る燃料の流量は、内部流路の最小流路断面積に比例するため、流量調整弁30を通過する燃料流量は、高温時には低温時よりも大きい。このため、高温時には、リターン流路83から燃料タンクTK内へと戻る燃料の流流量が低温時に比べて増大し、供給圧の低下量は大きい。したがって、上述したように、ポンプ10から吐出される燃料量は増加してベーパロック防止流量よりも多くなり、ベーパロックが防止される。他方、低温時には、燃料蒸気の発生が抑制されてベーパロックの発生は抑制される。このため、ベーパロック防止流量以上に燃料を吐出する必要が無い。したがって、リターン流路83から燃料タンクTK内へと戻る燃料の流量を高温時に比べて減少させることにより、ベーパロックの発生を抑制しつつ、ポンプ10の消費電力を抑制できる。
【0037】
以上説明した第1実施形態の燃料供給装置100によれば、バネ部材329は、高温時の最小流路断面積が低温時の最小流路断面積よりも大きくなるように、弁体300を移動させるので、燃料蒸気が発生する状況においてリターン流路83における流量を増大できる。このため、燃料蒸気が発生しない状況においてはベーパロック防止を目的としたポンプ10の回転数の上昇を実行せず、燃料蒸気が発生する状況においては、ポンプ10の回転数の上昇を実行でき、ベーパロック防止を目的としたポンプ10の駆動のための無駄な電力消費を抑制できる。加えて、流量調整弁30は、燃料温度が蒸気発生温度以上の場合の最小流路断面積が、蒸気発生温度よりも低い場合の最小流路断面積よりも大きくなるように、バネ部材329を用いて弁体300を移動させるので、電磁弁により弁装置を形成する構成に比べて、燃料供給装置100の製造コストを抑えることができる。
【0038】
また、高温時には、第2の貫通孔形成部325の断面積S2よりも大きな断面積を有する流出部304および間隙GP1を有する内部流路F1bに燃料を流すことができ、リターン流路83における流量を増大できる。また、低温時には、第2の貫通孔形成部325を含む内部流路F1bに燃料を流すことができ、リターン流路83における流量を低減できる。加えて、ハウジング301から燃料を流出するための流出部として、低温時流路と高温時流路とで、流出部304を共有しているので、互いに独立した複数の流出部を有する構成に比べて、流量の制御を容易にできる。
【0039】
また、燃料供給装置100では、第1の貫通孔形成部324における流路断面積S1と、第2の貫通孔形成部325における流路断面積S2と、流出部304の流路断面積S3とは、上記式(1)の関係を有し、間隙GP1の流路断面積S4と、流出部304の流路断面積S3とは、上記式(2)の関係を有するので、低温時流路における最低流量を、第2の貫通孔形成部325の最小流路断面積S2を調整することにより容易に調整できる。また、高温時流路における最低流量は、流出部304の最小流路断面積S3を調整することにより調整できる。
【0040】
また、燃料の流入側に配置されたバイアスバネである第1バネ330と、燃料の流出側に配置された形状記憶合金バネである第2バネ340とによりバネ部材329が構成されているので、電磁弁を用いて弁装置を形成する構成に比べて、燃料供給装置100の製造コストを抑えることができる。
【0041】
B.第2実施形態:
第2実施形態の燃料供給装置100は、流量調整弁30に代えて流量調整弁30aを備える点において、第1実施形態の燃料供給装置100と異なる。第2実施形態の燃料供給装置100におけるその他の構成は、第1実施形態の燃料供給装置100と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0042】
図7および
図8に示すように、第2実施形態の流量調整弁30aは、ハウジング301に代えてハウジング301aを備える点と、弁体300に代えて弁体300aを備える点とにおいて、第1実施形態の流量調整弁30と異なる。流量調整弁30aにおけるその他の構成は、流量調整弁30と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。なお、
図7では、低温時の内部流路F2aを太い実線の矢印により示している。また、
図8では、高温時の内部流路F2bを太い実線の矢印により示している。
【0043】
ハウジング301aは、流出部304に代えて流出部304aを備える点においてのみ第1実施形態のハウジング301と異なる。流出部304aは、第1流出部305と、第2流出部306とを備える。第1流出部305および第2流出部306は、いずれも円筒状の孔として形成されている。第1流出部305と第2流出部306とは流路方向FDに沿って互いに平行に形成されている。本実施形態において、第1流出部305の流路断面積と、第2流出部306の流路断面積とは、互いに等しい。
【0044】
弁体300aは、仕切部310と、閉塞突出部320aとを備える。仕切部310は、第1実施形態の仕切部310と同じであるので、その詳細な説明を省略する。閉塞突出部320aは、貫通孔321および凹部323が形成されていない点、および径が小さい点において、第1実施形態の閉塞突出部320と異なる。
【0045】
図7に示すように、低温時には、閉塞突出部320aの流路方向FDの閉塞端部E2は、ハウジング301の内壁面W1に接している。このとき、閉塞端部E2は、第2流出部306を閉塞する。但し、このとき、閉塞端部E2は、第1流出部305を閉塞しない。したがって、
図7に示すように、低温時の内部流路F1aでは、燃料は、流入部303から仕切部310の外径方向の外側の空隙(円筒状の空隙)を通って流路方向FDに向かい、第1流出部305へと至る。
【0046】
他方、
図8に示すように、高温時には、弁体300aは、流路方向FDとは反対方向に移動し、閉塞突出部320aの閉塞端部E2と、ハウジング301の内壁面W1との間には間隙が生じている。したがって、高温時の内部流路F1bでは、燃料は、流入部303から仕切部310の外径方向の外側の空隙を通って流路方向FDに向かい、第1流出部305および第2流出部306へと至る。すなわち、第2実施形態の燃料供給装置100では、高温時には、2つの流出部305、306から燃料が排出されることとなる。したがって、第1流出部305を通る流路は、燃料温度の高低に関わらず、リターン流路83と燃料タンクTK内とを連通する。
【0047】
ここで、低温時の内部流路F1aの最小流路面積は、第1流出部305の断面積である。また、高温時の内部流路F1bの最小流路断面積は、第1流出部305の断面積と第2流出部306の断面積の合計断面積である。したがって、第2実施形態においても、高温時の最小流路断面積は、低温時の最小流路断面積よりも大きい。なお、第1流出部305を通る流路、換言すると、内部流路F1aは、本開示における第1流路の下位概念に相当する。また、内部流路F1bのうち、第2流出部306を通る流路は、本開示における第2流路の下位概念に相当する。
【0048】
以上説明した第2実施形態の燃料供給装置100は、第1実施形態の燃料供給装置100と同様な効果を有する。加えて、高温時には、第1流出部305を通る流路に加えて第2流出部306を通る流路を、燃料の流路として用いることができるので、リターン流路83における流量を増大できる。また、低温時には、第1流出部305を通る流路と第2流出部306を通る流路のうち、第1流出部305を通る流路のみを燃料の流路として用いることができるので、リターン流路83における流量を低減できる。また、弁体300a内に燃料の流路が形成されていないので、かかる流路を通る燃料による弁体300aの移動への影響を抑えることができる。このため、第2流出部306の開閉(閉塞の有無)に対する温度のヒステリシスを小さくできる。
【0049】
C.第3実施形態:
第3実施形態の燃料供給装置100は、流量調整弁30に代えて、流量調整弁30bを備える点において、第1実施形態の燃料供給装置100と異なる。第3実施形態の燃料供給装置100におけるその他の構成は、第1実施形態の燃料供給装置100と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0050】
図9および
図10に示すように、第3実施形態の流量調整弁30bは、弁体300に代えて弁体300bを備える点において、第1実施形態の流量調整弁30と異なる。流量調整弁30bにおけるその他の構成は、流量調整弁30と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。なお、
図9では、低温時の内部流路F3aを太い実線の矢印により示している。また、
図10では、高温時の内部流路F3bを太い実線の矢印により示している。
【0051】
弁体300bは、仕切部310に代えて仕切部310bを備える。仕切部310bは、径方向の大きさがより大きい点と、複数の貫通孔312が形成されている点とにおいて、第1実施形態の仕切部310と異なり、その他の構成は仕切部310と同じである。仕切部310bの径方向の大きさは、第1実施形態の仕切部310よりも大きく、仕切部310bとハウジング301の内壁面との間の間隙は、非常に小さい。例えば、かかる間隙を、1mm(ミリメートル)以下としてよい。このため、第1実施形態とは異なり、低温時および高温時のいずれにおいても、内部流路として、仕切部310bの径方向外側の間隙は、ほぼ利用されない。また、仕切部310bとハウジング301の内壁面との間の間隙が非常に小さいことにより、弁体300bの流路方向FDおよびその反対方向への移動時において、弁体300bが傾くことが抑制される。このため、流量調整弁30bを通る燃料の流量を安定化できる。
【0052】
仕切部310bに形成されている複数の貫通孔312は、仕切部310bにおいて閉塞突出部320の周りに所定の間隔で環状に配置されている。各貫通孔312は、それぞれ内部空間302における流入側領域と流出側領域とを連通する。より具体的には、各貫通孔312において、一端は凹部311に露呈し、他端は内部空間302における閉塞突出部320の径方向外側の空間に露呈している。貫通孔312における流出側の開口は、第2バネ340の一端が接している部分に近い位置に形成されている。また、本実施形態において、各貫通孔312は、流路方向FDに沿って次第に径方向外側に向かうように形成されている。なお、各貫通孔312は、流路方向FDと平行に形成されてもよい。また、流路方向FDに沿って次第に径方向内側に向かうように形成されてもよい。貫通孔312は、本開示における第1貫通孔の下位概念に相当する。
【0053】
図9に示すように、低温時には、内部流路F3aが形成される。低温時には、閉塞突出部320bの流路方向FDの端面を有する閉塞端部E1は、ハウジング301の内壁面W1に接している。このとき、閉塞端部E1は、流出部304を閉塞する。したがって、
図9に示すように、低温時の内部流路F3aでは、燃料は、流入部303から凹部311に向かい、貫通孔312を通って閉塞突出部320の径方向外側の空間に至る。また、燃料は、閉塞突出部320の径方向外側の空間から貫通孔321に流入し、凹部323を通って流出部304に至る。
【0054】
図10に示すように、高温時には、内部流路F3bが形成される。高温時には、弁体300bは、流路方向FDと反対方向に移動し、閉塞突出部320の閉塞端部E1と、ハウジング301の内壁面W1との間には間隙GP1が生じている。したがって、高温時の内部流路F3bでは、燃料は、流入部303から凹部311に向かい、貫通孔312を通って閉塞突出部320の径方向外側の空間に至る。また、燃料は、閉塞突出部320の径方向外側の空間から、閉塞端部E1と内壁面W1との間の間隙GP1を通って流出部304に至る。通孔312を通って閉塞突出部320の径方向外側の空間に至った燃料は、第2バネ340に沿って流路方向FDを流れるので、燃料の熱は、第2バネ340に容易に伝導することとなる。
【0055】
ここで、複数の貫通孔312の合計流路断面積は、第2の貫通孔形成部325の流路断面積よりも大きい。このため、低温時の内部流路F3aの最小流路断面積と、高温時の内部流路F3bの最小流路断面積との大小関係は、第1実施形態と同じである。
【0056】
以上説明した第3実施形態の燃料供給装置100は、第1実施形態の燃料供給装置100と同様な効果を有する。加えて、低温時の内部流路F3aと内部流路F3bとは、いずれも仕切部310bにおける閉塞突出部320の周りに設けられた貫通孔312を含み、また、バネ部材329は、ハウジング301の仮想線VLを中心軸とするコイルバネである第1バネ330および第2バネ340により形成されている。さらには、閉塞突出部320の流出側の開口は、仕切部310bにおいて第2バネ340が接する位置に近い位置に形成されている。これらのことから、第2バネ340に多くの燃料を接触させることができ、燃料の熱を第2バネ340に容易に伝導させることができる。したがって、燃料温度の変化に対する流量調整弁30bから排出される燃料流量の変化の応答性を向上できる。
【0057】
また、仕切部310bとハウジング301の内壁面との間の間隙が非常に小さいことにより、弁体300bの流路方向FDおよびその反対方向への移動時において弁体300bが傾くことを抑制でき、流量調整弁30bを通る燃料の流量を安定化できる。
【0058】
D.第4実施形態:
第4実施形態の燃料供給装置100は、流量調整弁30に代えて流量調整弁30cを備える点において、第1実施形態の燃料供給装置100と異なる。第4実施形態の燃料供給装置100におけるその他の構成は、第1実施形態の燃料供給装置100と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0059】
図11および
図12に示すように、第4実施形態の流量調整弁30cは、ハウジング301に代えてハウジング301cを備える点と、弁体300に代えて弁体300cを備える点とにおいて、第1実施形態の流量調整弁30と異なる。流量調整弁30cにおけるその他の構成は、流量調整弁30と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。なお、
図11では、低温時の内部流路F4aを太い実線の矢印により示している。また、
図12では、高温時の内部流路F3bを太い実線の矢印により示している。
【0060】
ハウジング301cは、弁体対面部307を備える点においてのみ第1実施形態のハウジング301と異なる。弁体対面部307は、流出部304を囲み、弁体300cと対面する。弁体対面部307は、弁体300cに近づくほど開口断面積が大きくなるテーパ状に形成されている。弁体対面部307において流路方向FDの端部は流出部304に接続されている。
【0061】
弁体300cは、閉塞突出部320に代えて閉塞突出部320cを備える点においてのみ第1実施形態の弁体300と異なる。閉塞突出部320cは、流路方向FDの端部に閉塞端部350を有する。閉塞端部350は、球面状の外観形状を有する。
図11に示すように、低温時には、閉塞端部350は弁体対面部307に接し、閉塞端部350と弁体対面部307との接触部分には円環状のシールラインSLを形成される。かかるシールラインSLにより、閉塞端部350と弁体対面部307との間は閉塞され、内部空間302から、閉塞端部350と弁体対面部307との間を通って流出部304に至る燃料経路は遮断される。
【0062】
閉塞突出部320cには、貫通孔351が形成されている。貫通孔351は、第1の貫通孔形成部352と、第2の貫通孔形成部353と、第3の貫通孔形成部354とからなる。第1の貫通孔形成部352は、閉塞端部350よりも流入側において閉塞突出部320cを経方向に貫通する。したがって、第1の貫通孔形成部352は、その両端において内部空間302に露呈している。第2の貫通孔形成部353は、流路方向FDに沿って形成され、一端が第1の貫通孔形成部352に連通し、他端が第3の貫通孔形成部354に連通している。第3の貫通孔形成部354は、流路方向FDに沿って形成され、一端が第2の貫通孔形成部353に連通し、他端が閉塞端部350において流出部304と対面する。なお、第3の貫通孔形成部354の径は、第2の貫通孔形成部353の径よりも大きい。貫通孔351は、本開示における第3貫通孔の下位概念に相当する。
【0063】
図11に示すように、低温時には、内部流路F4aが形成される。低温時には、閉塞端部350は、弁体対面部307の内壁面に接し、シールラインSLが形成されている。このため、内部流路F4aでは、燃料は、流入部303から仕切部310の外径方向の外側の空隙(円筒状の空隙)を通って流路方向FDに向かい、第1の貫通孔形成部352に流入する。そして、燃料は、第1の貫通孔形成部352から第2の貫通孔形成部353、第3の貫通孔形成部354へとこの順序で流入し、第3の貫通孔形成部354を通って流出部304へと至る。内部流路F4aにおける最小流路断面積は、第2の貫通孔形成部353における流路断面積である。
【0064】
図12に示すように、高温時には、内部流路F4bが形成される。部流路F4bでは、燃料は、流入部303から仕切部310の外径方向の外側の空隙(円筒状の空隙)を通って流路方向FDに向かい、閉塞端部350と弁体対面部307との間の間隙GP2を通って流出部304に至る。内部流路F4bにおける最小流路断面積は、間隙GP2の最小流路断面積であり、かかる最小流路断面積は、第2の貫通孔形成部353の流路断面積よりも大きい。
【0065】
以上説明した第4実施形態の燃料供給装置100は、第1実施形態の燃料供給装置100と同様な効果を有する。加えて、低温時には、閉塞端部350と弁体対面部307との接触部分は円環状のシールラインSLを形成し、かかるシールラインSLにより、閉塞端部350と弁体対面部307との間は閉塞されるので、接触部分が面により形成される構成に比べて、接触部分にかかる圧力を高めることができる。このため、閉塞端部350と弁体対面部307との間のシール性(遮断性)を向上できる。
【0066】
E.第5実施形態:
第5実施形態の燃料供給装置100は、流量調整弁30に代えて流量調整弁30dを備える点において、第1実施形態の燃料供給装置100と異なる。第5実施形態の燃料供給装置100におけるその他の構成は、第1実施形態の燃料供給装置100と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0067】
図13および
図14に示すように、第5実施形態の流量調整弁30dは、ハウジング301に代えてハウジング301cを備える点と、弁体300に代えて弁体300dを備える点とにおいて、第1実施形態の流量調整弁30と異なる。流量調整弁30dにおけるその他の構成は、流量調整弁30と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。なお、
図13では、低温時の内部流路F5aを太い実線の矢印により示している。また、
図14では、高温時の内部流路F5bを太い実線の矢印により示している。ハウジング301cは、上述の第4実施形態におけるハウジング301cと同じであるので、その詳細な説明を省略する。
【0068】
弁体300dは、閉塞突出部320に代えて閉塞突出部320dを備える点と、ストッパ部370を備える点とにおいてのみ第1実施形態の弁体300と異なる。
【0069】
閉塞突出部320dは、大径部361と、小径部362とを備える。大径部361における流路方向FDとは反対方向の端部は、仕切部310に連なる。また、大径部361における流路方向FDの端部は、小径部362に連なる。大径部361の平均直径は、小径部362の平均直径よりも大きい。小径部362における流路方向FDとは反対方向の端部は、大径部361に連なる。小径部362における流路方向FDの端部363は、弁体対面部307と対面する。端部363は、球面状の外観形状を有する。
【0070】
ストッパ部370は、閉塞突出部320dが弁体対面部307に接触することを防ぐ。ストッパ部370は、流路方向FDに沿って配置された棒状の部材であり、流路方向FDとは反対方向の端部において大径部361に接続されている。大径部361においてストッパ部370が接続されている箇所は、大径部361における流路方向FDの端面であって、小径部362と接続された部分の径方向外側の部分である。本実施形態において、ストッパ部370は、周方向に沿った所定の間隔で並んだ複数配置されている。
図13および
図14に示すように、ストッパ部370の流路方向FDに沿った長さは、小径部362の流路方向FDに沿った長さよりも大きい。このため、
図11に示すように、低温時においてストッパ部370がハウジング301cの内壁面W1に接触した状況において、小径部362、より詳細には、端部363は、弁体対面部307に接していない。このため、
図13に示すように、低温時において、端部363と弁体対面部307との間には、間隙GP3が形成されている。また、図
14に示すように、高温時においても、端部363と弁体対面部307との間には、間隙GP3が形成されている。
【0071】
図13に示すように、低温時には、内部流路F5aが形成される。上述のように、低温時には、ストッパ部370がハウジング301cの内壁面W1に接触するため、弁体300dのそれ以上の流路方向FDへの移動が抑制される。そして、このとき、上述の間隙GP3が形成される。このため、内部流路F5aでは、燃料は、流入部303から仕切部310の外径方向の外側の空隙(円筒状の空隙)を通って流路方向FDに向かい、間隙GP3を通って流出部304へと至る。内部流路F5aにおける最小流路断面積は、間隙GP3の断面積である。
【0072】
図14に示すように、高温時には、内部流路F5bが形成される。高温時には、弁体300dが全体的に流路方向FDとは反対方向に移動するため、ストッパ部370は、ハウジング301cの内壁面W1から離れ、間隙GP3は、低温時に比べてより大きくなる。内部流路F5bでは、燃料は、上述の低温時の内部流路F5aと同じ経路を流れる。内部流路F5bにおける最小流路断面積は、流出部304の流路断面積または間隙GP3の断面積である。燃料温度が非常に高温であり、弁体300dが流路方向FDとは反対方向に大きく移動している状態においては、間隙GP3の流路断面積は、流出部304の流路断面積よりも大きくなる。この場合、内部流路F5bの最小流路断面積は、流出部304の断面積となる。これに対して、燃料温度が蒸気発生温度よりも少し高い程度の温度の場合、間隙GP3の流路断面積は、流出部304の流路断面積よりも小さくなる。したがって、この場合、内部流路F5bの最小流路断面積は、間隙GP3の流路断面積となる。そして、この高温時の間隙GP3の断面積は、低温時の間隙GP3の断面積よりも大きい。
【0073】
以上説明した第5実施形態の燃料供給装置100は、第1実施形態の燃料供給装置100と同様な効果を有する。加えて、弁体300dの移動に応じて、端部363(弁体300d)と弁体対面部307との間の間隙GP3の大きさが変化することにより、内部流路の最小流路断面積を変化させることができる。また、低温時におけるリターン流路83における燃料の流量は、間隙GP3の流路断面積を調整することにより調整できる。このとき、ストッパ部370の長さを調整することにより、間隙GP3の流路断面積を容易に調整できる。また、高温時におけるリターン流路83における燃料の流量は、流出部304の流路断面積の大きさを調整することにより容易に調整できる。
【0074】
F.第6実施形態:
第6実施形態の燃料供給装置100は、流量調整弁30に代えて流量調整弁30eを備える点において、第1実施形態の燃料供給装置100と異なる。第6実施形態の燃料供給装置100におけるその他の構成は、第1実施形態の燃料供給装置100と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0075】
図15~
図18に示すように、流量調整弁30eは、ハウジング301eと、弁体300eと、バネ部材329eとを備える。なお、
図15および
図17では、流量調整弁30eの中心を通り流路方向FDに沿った流量調整弁30eの断面を示している。
【0076】
ハウジング301eは、中空の略立方体の外観形状を有する。ハウジング301eは、弁体300eとバネ部材329eを収容する。ハウジング301eには、流入部303と流出部304aとが形成されている。流入部303は、第1実施形態の流入部303と同じ構成を有する。流出部304aは、第2実施形態の流出部304aと同じ構成を有する。すなわち、流出部304aは、第1流出部305および第2流出部306を備える。
【0077】
弁体300eは、平面視矩形の板状部材からなり、ハウジング301eの内壁面W2に接し、かつ、+X方向および-X方向(以下、単に「X方向」とも呼ぶ)に移動可能に配置されている。内壁面W2は、ハウジング301eの内壁面のうち、流路方向FDの端部に位置している。なお、内壁面W2には、弁体300eがX方向に移動するのをガイドする図示しないガイド部が形成されている。かかるガイド部を、例えばレール状の溝により形成してもよい。
【0078】
図16および
図18に示すように、弁体300eは、+X方向の端部かつ-Y方向の端部の位置に、負荷受け部380を有する。負荷受け部380は、バネ部材329eからの負荷を受けて弁体300eに伝える。負荷受け部380は、板状の外観形状を有し、一方の面はバネ部材329eを構成する後述する第1バネ330eの一端に接し、他端はバネ部材329eを構成する後述の第2バネ340eの一端に接している。
【0079】
バネ部材329eは、第1バネ330eと、第2バネ340eとを備える。第1バネ330eは、一端が負荷受け部380に接し、他端が支持部381に接している。支持部381は、板状の外観形状を有し、内壁面W3と直交するように、内壁面W3から+Y方向に突出して配置されている。内壁面W3は、ハウジング301eの内壁面のうち、最も-Y方向に位置し、流路方向FDに沿った壁面である。第1バネ330eは、負荷受け部380を介して弁体300eを+X方向に付勢する。第1バネ330eのその他の構成は、第1実施形態の第1バネ330と同じである。
【0080】
第2バネ340eは、一端がハウジング301eの内壁面W4に接し、他端が負荷受け部380に接している。内壁面W4は、ハウジング301eの内壁面のうち、最も+X方向に位置し、流路方向FDに沿った壁面である。第2バネ340eは、負荷受け部380を介して弁体300eを-X方向に付勢する。第2バネ340eのその他の構成については、第1実施形態の第2バネ340と同じである。
【0081】
図15および
図16に示すように、低温時には、弁体300eは、第2流出部306を閉塞し、第1流出部305を閉塞しない。このため、
図15に示すように、低温時の内部流路F6aでは、燃料は、流入部303から内部空間302eに流入して流路方向FDに流れ、第1流出部305へと至る。
【0082】
図17および
図18に示すように、高温時には、弁体300eは、低温時に比べて-X方向に移動し、第1流出部305および第2流出部306を閉塞しない。このため、
図17に示すように、高温時の内部流路F6bでは、燃料は、流入部303から内部空間302eに流入して流路方向FDに流れ、第1流出部305および第2流出部306に至る。
【0083】
ここで、低温時の内部流路F6aの最小流路面積は、第1流出部305の断面積である。また、高温時の内部流路F6bの最小流路断面積は、第1流出部305の断面積と第2流出部306の断面積の合計断面積である。したがって、第6実施形態においても、高温時の最小流路断面積は、低温時の最小流路断面積よりも大きい。
【0084】
以上説明した第6実施形態の燃料供給装置100は、第1実施形態の燃料供給装置100と同様な効果を有する。加えて、高温時には、第1流出部305を通る流路に加えて第2流出部306を通る流路を、燃料の流路として用いることができるので、リターン流路83における流量を増大できる。また、低温時には、第1流出部305を通る流路と第2流出部306を通る流路のうち、第1流出部305を通る流路のみを燃料の流路として用いることができるので、リターン流路83における流量を低減できる。また、弁体300e内に燃料の流路が形成されていないので、かかる流路を通る燃料による弁体300eの移動への影響を抑えることができる。このため、第1流出部305の開閉(閉塞の有無)に対する温度のヒステリシスを小さくできる。
【0085】
G.第7実施形態:
第7実施形態の燃料供給装置100は、流量調整弁30に代えて流量調整弁30fを備える点において、第1実施形態の燃料供給装置100と異なる。第7実施形態の燃料供給装置100におけるその他の構成は、第1実施形態の燃料供給装置100と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0086】
図19~
図21に示すように、第7実施形態の流量調整弁30fは、ハウジング301に代えてハウジング301fを備える点と、弁体300に代えて弁体300fを備える点と、バネ部材329に代えてバネ部材329fを備える点とにおいて、第1実施形態の流量調整弁30と異なる。流量調整弁30fにおけるその他の構成は、流量調整弁30と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。なお、
図19では、低温時の内部流路F7aを太い実線の矢印により示している。また、
図21では、高温時の内部流路F7bを太い実線の矢印により示している。
【0087】
図19および
図21に示すように、ハウジング301fは、雌ネジ形成部309を備える点においてのみ第1実施形態のハウジング301と異なる。雌ネジ形成部309は、弁体300fと螺合する雌ネジを形成する。雌ネジ形成部309は、ハウジング301fの内壁面のうち、円筒状の側面における流路方向FDの中央よりも流入側に位置する。雌ネジ形成部309は、中央に厚み方向の開口が形成された円筒状の外観形状を有し、外周面においてハウジング301fの内壁側面に連なる。雌ネジ形成部309には、雌ネジ部313と、複数の貫通孔314とが形成されている。
【0088】
雌ネジ部313は、雌ネジ形成部309における径方向中央において、厚さ方向、すなわち、流路方向FD沿って形成された雌ネジを有する。雌ネジ部313には、弁体300fが螺合する。雌ネジ部313に弁体300fが螺合することにより、ハウジング301の内部空間は、雌ネジ形成部309により、流入側の内部空間302aと、流出側の内部空間302bとに区画される。複数の貫通孔314は、雌ネジ部313の周りに周方向に所定の間隔だけ離れて配置されている。各貫通孔314は、いずれも雌ネジ形成部309を厚さ方向、すなわち、流路方向FDに貫通する。したがって、内部空間302aと、内部空間302bとは、複数の貫通孔314により互いに連通する。
【0089】
弁体300fは、軸部371と、流出対面部372とを備える。軸部371は、流路方向FDを長手方向とする略円柱形の外観形状を有する。軸部371は、自身の中心軸がハウジング301fの中心軸と一致するようにハウジング301fの内部に配置されている。軸部371における流路方向FDとは反対方向の端部の外周面には、雄ネジ部373が形成されている。雄ネジ部373は、雌ネジ形成部309の雌ネジ部313に螺合している。このため、軸部371が雌ネジ部313に螺合したまま回転することにより、軸部371は、流路方向FDおよびその反対方向に変位する。
【0090】
流出対面部372は、略円盤状の外観形状を有する。流出対面部372は、流出部304に対して流路方向FDとは反対方向に位置し、流出部304と対面する。流出対面部372の流路方向FDとは反対方向の端面の中央部には、軸部371の流路方向FDの端面が接合されている。流出対面部372の中心軸は、軸部371の中心軸と一致する。
【0091】
図20に示すように、バネ部材329fは、第1バネ330fと、第2バネ340fとからなる。第1バネ330fは、接続箇所のみにおいて第1実施形態の第1バネ330と異なる。第1バネ330fの一端は、ハウジング301fの内壁面に接続され、他端は流出対面部372の側面に接続されている。第2バネ340fは、接続箇所のみにおいて第1実施形態の第2バネ340と異なる。第2バネ340fの一端は、ハウジング301fの内壁面に接続され、他端は流出対面部372の側面に接続されている。ここで、流出対面部372において、第1バネ330fの接続箇所と、第2バネ340fの接続箇所とは、流出対面部372の中心を挟んで互い対向していない。したがって、
図20に示すように、流出対面部372の中心点CEと第1バネ330fの接続箇所とを結ぶ仮想線と、中心点CEと第2バネ340fの接続箇所とを結ぶ仮想線との間の角度θは、180°よりも小さい。
【0092】
図19に示すように、低温時には、内部流路F7aが形成される。低温時には、流出対面部372とハウジング301fの内壁面W1との間の間隙GP4は、比較的小さい。内部流路F7aでは、燃料は、流入部303から内部空間302aを流路方向FDに流れ、複数の貫通孔314を通って内部空間302bに至る。その後、燃料は、内部空間302bを流路方向FDに流れて、間隙GP4を通って流出部304に至る。
【0093】
図21に示すように、高温時には、内部流路F7bが形成される。高温時には、流出対面部372とハウジング301fの内壁面W1との間の間隙GP4は、比較的大きい。これは、燃料温度が高温になり、第2バネ340が第1バネ330に比べて大きく伸びるために、流出対面部372が回転変位し、これにより、軸部371も回転変位して、弁体300fが全体的に流路方向FDとは反対方向に変位するためである。内部流路F7bでは、燃料は、上述の内部流路F7aと同様に流れる。
【0094】
ここで、本実施形態では、低温時および高温時の間隙GP4の流路断面積は、複数の貫通孔314の合計流路断面積よりも小さく設定されている。このため、低温時の内部流路F7aの最小流路断面積と、高温時の内部流路F7bの最小流路断面積は、いずれも間隙GP4の断面積となる。そして、上述のように、高温時の間隙GP4の断面積は、低温時の間隙GP4の断面積に比べて大きい。したがって、第7実施形態の燃料供給装置100においても、他の実施形態の燃料供給装置100と同様に、高温時の内部流路の最小流路断面積は、低温時の内部流路の最小流路断面積よりも大きい。
【0095】
以上説明した第7実施形態の燃料供給装置100は、第1実施形態の燃料供給装置100と同様な効果を有する。加えて、低温時の内部流路F7aの最小流路断面積と、高温時の内部流路F7bの最小流路断面積は、いずれも間隙GP4の断面積であるので、流量調整弁30fにおける燃料流量は、間隙GP4の大きさを調整することにより制御できる。したがって、流量調整弁30fの製造時において流出部304の大きさの公差に対する条件を比較的緩くでき、歩留まりの低下を抑制できる。
【0096】
H.第8実施形態:
第8実施形態の燃料供給装置100は、流量調整弁30に代えて流量調整弁30gを備える点において、第1実施形態の燃料供給装置100と異なる。第8実施形態の燃料供給装置100におけるその他の構成は、第1実施形態の燃料供給装置100と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0097】
図22および
図23に示すように、第8実施形態の流量調整弁30gは、ハウジング301に代えてハウジング301aを備える点と、弁体300に代えて弁体300gを備える点とにおいて、第1実施形態の流量調整弁30と異なる。流量調整弁30gにおけるその他の構成は、流量調整弁30と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。なお、
図22では、低温時の内部流路F8aを太い実線の矢印により示している。また、
図23では、高温時の内部流路F8bを太い実線の矢印により示している。
【0098】
ハウジング301aは、第2実施形態のハウジング301aと同じである。第8実施形態の流量調整弁30gは、第2実施形態の流量調整弁30aと、第2実施形態の30bと、第4実施形態の30cとを組み合わせた構成を有する。したがって、第8実施形態の流量調整弁30gにおいて、第2、第3、および第4実施形態の各流量調整弁30a、30b、30cと同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0099】
図22に示すように、低温時の内部流路F8aでは、燃料は、流入部303から凹部311に向かい、貫通孔312を通って閉塞突出部320cの径方向外側の空間に至る。かかる燃料の一部は、閉塞突出部320cの径方向外側の空間から流路方向FDに流れ、第1流出部305に至る。また、残りの燃料は、閉塞突出部320cの径方向外側の空間から流路方向FDに流れ、第1の貫通孔形成部352に流入する。そして、燃料は、第1の貫通孔形成部352から第2の貫通孔形成部353、第3の貫通孔形成部354へとこの順序で流入し、第3の貫通孔形成部354を通って第2流出部306へと至る。
【0100】
図23に示すように、高温時の内部流路F8bでは、燃料は、流入部303から凹部311に向かい、貫通孔312を通って閉塞突出部320cの径方向外側の空間に至る。かかる燃料の一部は、閉塞突出部320cの径方向外側の空間から流路方向FDに流れ、第1流出部305に至る。また、残りの燃料は、閉塞突出部320cの径方向外側の空間から流路方向FDに流れ、閉塞端部350と弁体対面部307との間の間隙GP2を通って第2流出部306に至る。
【0101】
第8実施形態では、低温時の内部流路F8aにおける最小流路断面積は、第1流出部305の断面積と、第2の貫通孔形成部353の断面積の合計断面積である。これに対して、高温時の内部流路F8bにおける最小流路断面積は、第1流出部305の断面積と、間隙GP2の断面積の合計断面積である。本実施形態において、間隙GP2の断面積は、第2の貫通孔形成部353の断面積よりも大きい。このため、高温時には低温時に比べてリターン流路83における燃料の流量を増大できる。
【0102】
以上説明した第8実施形態の燃料供給装置100は、第1ないし第4実施形態の燃料供給装置100と同様な効果を有する。
【0103】
I.第9実施形態:
第9実施形態の燃料供給装置100は、流量調整弁30に代えて、流量調整弁30hを備える点において、第1実施形態の燃料供給装置100と異なる。第9実施形態の燃料供給装置100におけるその他の構成は、第1実施形態の燃料供給装置100と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0104】
図24および
図25に示すように、第9実施形態の流量調整弁30hは、ハウジング301に代えてハウジング301aを備える点と、弁体300に代えて弁体300hを備える点とにおいて、第1実施形態の流量調整弁30と異なる。流量調整弁30hにおけるその他の構成は、流量調整弁30と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。なお、
図24では、低温時の内部流路F9aを太い実線の矢印により示している。また、
図25では、高温時の内部流路F9bを太い実線の矢印により示している。
【0105】
ハウジング301aは、第2実施形態のハウジング301aと同じである。したがって、流出部304aは、第1流出部305および第2流出部306を備える。
【0106】
弁体300hは、仕切部310hと、閉塞突出部320hとを備える。弁体300hには、貫通孔315が形成されている。貫通孔315は、第1の貫通孔形成部316と、第2の貫通孔形成317とからなる。第1の貫通孔形成部316は、弁体300hの中心軸に沿って形成されており、一端は、凹部311に露呈している。他端は、第2の貫通孔形成317に連通している。第2の貫通孔形成317は、閉塞突出部320hにおける流路方向FDの端部近傍に形成されている。第2の貫通孔形成317は、閉塞突出部320hを径方向に貫く。
【0107】
仕切部310hは、中心軸に沿って第1の貫通孔形成部316の一部が形成されている点においてのみ、第1実施形態の仕切部310と異なる。閉塞突出部320hは、第1の貫通孔形成部316の一部と、第2の貫通孔形成317とが形成されている点においてのみ、第1実施形態の閉塞突出部320と異なる。
【0108】
図24に示すように、低温時には、内部流路F9aが形成される。低温時には、閉塞突出部320hの流路方向FDの閉塞端部E3は、ハウジング301aの内壁面W1に接している。このとき、閉塞端部E3は、第2流出部306を閉塞する。但し、このとき、閉塞端部E3は、第1流出部305を閉塞しない。したがって、低温時の内部流路F9aでは、燃料の一部は、流入部303から仕切部310の外径方向の外側の空隙(円筒状の空隙)を通って流路方向FDに向かい、第1流出部305へと至る。また、残りの燃料は、流入部303から凹部311に向かい、第1の貫通孔形成部316に流入して流路方向FDに流れて第2の貫通孔形成317に至る。その後、燃料は、第2の貫通孔形成317から内部空間302内に排出され、第1流出部305へと至る。
【0109】
図25に示すように、高温時には、内部流路F9bが形成される。高温時には、弁体300hは、流路方向FDとは反対方向に移動し、閉塞突出部320hの閉塞端部E3と、ハウジング301の内壁面W1との間には間隙GP5が生じている。したがって、高温時の内部流路F9bでは、燃料の一部は、流入部303から仕切部310hの外径方向の外側の空隙を通って流路方向FDに向かい、第1流出部305および第2流出部306へと至る。また、残りの燃料は、流入部303から凹部311に向かい、第1の貫通孔形成部316に流入して流路方向FDに流れて第2の貫通孔形成317に至る。その後、燃料は、第2の貫通孔形成317から内部空間302内に排出され、第1流出部305および第2流出部306へと至る。
【0110】
低温時の内部流路F9aの最小流路断面積は、第1流出部305の断面積が該当する。これに対して、高温時の内部流路F9bの最小流路断面積は、仕切部310hの外径方向の外側の空隙の断面積と第1の貫通孔形成部316の断面積の合計断面積が該当する。そして、本実施形態においても、他の実施形態と同様に、高温時の内部流路F9bの最小流路断面積は、低温時の内部流路F9aの最小流路断面積よりも大きい。
【0111】
以上説明した第9実施形態の燃料供給装置100は、第1実施形態の燃料供給装置100と同様な効果を有する。加えて、低温時および高温時のいずれにおいても、弁体300hの中心軸に設けられた第1の貫通孔形成部316を燃料が流れるので、弁体300hの流路方向FDおよびその反対方向への移動時において、弁体300hが傾くことが抑制される。
【0112】
J.第10実施形態:
第10実施形態の燃料供給装置100は、流量調整弁30に代えて、流量調整弁30iを備える点において、第1実施形態の燃料供給装置100と異なる。第10実施形態の燃料供給装置100におけるその他の構成は、第1実施形態の燃料供給装置100と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0113】
図26および
図27に示すように、第10実施形態の流量調整弁30iは、弁体300に代えて弁体300iを備える点において、第1実施形態の弁体300と異なる。流量調整弁30iにおけるその他の構成は、流量調整弁30と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。なお、
図26では、低温時の内部流路F10aを太い実線の矢印により示している。また、
図27では、高温時の内部流路F10bを太い実線の矢印により示している。
【0114】
弁体300iは、仕切部310iと、閉塞突出部320iとを備える。弁体300iには、貫通孔318が形成されている。貫通孔318は、弁体300iの中心軸に沿って形成され、弁体300iを流路方向FDに貫通する。仕切部310iは、貫通孔318の一部が形成されている点においてのみ、第1実施形態の仕切部310と異なる。閉塞突出部320iは、貫通孔321に代えて貫通孔318の一部が形成されている点においてのみ、第1実施形態の閉塞突出部320と異なる。貫通孔318は、一端が凹部311に露呈し、他端が凹部323に露呈している。
【0115】
図26に示すように、低温時には、内部流路F10aが形成される。低温時には、弁体300iの流路方向FDの閉塞端部E4は、流出部304の開口を囲むようにハウジング301の内壁面W1に接している。このため、内部流路F10aにおいて、燃料は、流入部303から凹部311に向かい貫通孔318に流入する。その後、燃料は、貫通孔318を流路方向FDに流れて凹部323に排出されて流出部304に至る。
【0116】
図27に示すように、高温時には、内部流路F10bが形成される。高温時には、弁体300iは、流路方向FDとは反対方向に移動し、閉塞突出部320iの閉塞端部E4と、ハウジング301の内壁面W1との間には間隙GP6が生じている。したがって、高温時の内部流路F10bでは、燃料の一部は、上述の低温時の内部流路F10aを通る燃料と同じ経路を通って流出部304に至る。また、残りの燃料は、流入部303から仕切部310iの外径方向の外側の空隙(円筒状の空隙)を通って流路方向FDに向かい、間隙GP6から流出部304に至る。
【0117】
低温時の内部流路F10aの最小流路断面積は、貫通孔318の断面積が該当する。これに対して、高温時の内部流路F10bの最小流路断面積は、仕切部310iの外径方向の外側の空隙(円筒状の空隙)の断面積と貫通孔318の断面積との合計断面積が該当する。そして、本実施形態においても、他の実施形態と同様に、高温時の内部流路F10bの最小流路断面積は、低温時の内部流路F10aの最小流路断面積よりも大きい。
【0118】
以上説明した第10実施形態の燃料供給装置100は、第1実施形態の燃料供給装置100と同様な効果を有する。加えて、低温時および高温時のいずれにおいても、弁体300iの中心軸に設けられた貫通孔318を燃料が流れるので、弁体300iの流路方向FDおよびその反対方向への移動時において、弁体300iが傾くことが抑制される。
【0119】
K.第11実施形態:
第11実施形態の燃料供給装置100は、流量調整弁30に代えて流量調整弁30jを備える点において、第1実施形態の燃料供給装置100と異なる。第11実施形態の燃料供給装置100におけるその他の構成は、第1実施形態の燃料供給装置100と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0120】
図28~
図30に示すように、流量調整弁30jは、ハウジング301eと、弁体300jと、固定部材390とを備える。なお、
図28および
図30では、流量調整弁30jの中心を通り流路方向FDに沿った流量調整弁30jの断面を示している。
【0121】
ハウジング301eは、第6実施形態のハウジング301aと同じである。すなわち、ハウジング301eは流出部304aを有し、流出部304aは第1流出部305および第2流出部306を有する。
【0122】
弁体300jは、板状の外観形状を有する。弁体300jは、互いに熱膨張係数が異なる2つの金属板部材が貼り合わされた構成を有するいわゆるバイメタルである。具体的には、弁体300jは、第1金属板材391と、第2金属板材392とを備える。第2金属板材392の熱膨張係数は、第1金属板材391の熱膨張係数よりも大きい。
【0123】
固定部材390は、弁体300jをハウジング301eの内壁面W2に固定する。
図29に示すように、固定部材390は、弁体300jにおける-X方向の端部近傍において、弁体300jをハウジング301eに固定している。このため、弁体300jにおける+X方向の端部は、変形により変位可能である。
【0124】
図28に示すように、低温時には、弁体300jは、変形しておらず、第2流出部306を閉塞し、第1流出部305を閉塞しない。このため、
図28において太い実線の矢印で示すように、低温時の内部流路F11aでは、燃料は、流入部303から内部空間302に流入して流路方向FDに流れ、第1流出部305へと至る。
【0125】
図30に示すように、高温時には、弁体300jは変形する。具体的には、第1金属板材391と第2金属板材392との熱膨張係数の相違から、弁体300jは、第1金属板材391が内側になるようにまるまって変形する。このとき、弁体300jの-X方向の端部が固定部材390により固定されていることから、弁体300jにおける+X方向の端部は、流入部303に向かう方向、すなわち、-Z方向に変位する。したがって、弁体300jは、第2流出部306を閉塞せず、弁体300jと第2流出部306との間には、間隙GP7が形成されている。
【0126】
図30において太い実線の矢印で示すように、高温時の内部流路F11bでは、燃料は、流入部303から内部空間302に流入して流路方向FDに流れ、第1流出部305および第2流出部306に至る。
【0127】
ここで、低温時の内部流路F11aの最小流路面積は、第1流出部305の断面積である。また、高温時の内部流路F11bの最小流路断面積は、第1流出部305の断面積と第2流出部306の断面積の合計断面積である。したがって、第11実施形態においても、他の実施形態と同様に、高温時の内部流路F11bの最小流路断面積は、低温時の内部流路F11aの最小流路断面積よりも大きい。
【0128】
以上説明した第11実施形態の燃料供給装置100は、第1実施形態の燃料供給装置100と同様な効果を有する。加えて、バネ部材329を用いずに弁体300jを構成できるので、弁体300jを簡素な構造で実現できる。
【0129】
L.第12実施形態:
図31に示す第12実施形態の燃料供給装置100aは、燃料タンクTKに代えて燃料タンクTK2を備える点と、ジェットポンプ70および移送用流路86を追加して備える点と、において、
図1に示す第1実施形態の燃料供給装置100と異なる。第12実施形態の燃料供給装置100aにおけるその他の構成は、第1実施形態の燃料供給装置100と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0130】
燃料タンクTK2は、第1貯留部98と、第2貯留部99とを備える。第1貯留部98と第2貯留部99とは、凹部97を挟んで配置され、凹部97の上部空間において互いに連通する。凹部97は、例えば、プロペラシャフトの配置に用いられる。
【0131】
ジェットポンプ70は、リターン流路83の端部、換言すると、流量調整弁30の流出部304に接続されている。また、ジェットポンプ70は、移送用流路86に接続されている。また、ジェットポンプ70は、第1貯留部98内に開放された流出口を備える。ジェットポンプ70は、リターン流路83から流入する燃料を、移送用流路86と第1貯留部98内とに分けて噴射する。ジェットポンプ70が第1貯留部98内に燃料を噴射することにより、第1貯留部98内に貯留されている燃料は、フィルタ50およびポンプ10に向かって流動する。
【0132】
移送用流路86は、第1貯留部98と第2貯留部99とに亘って配置された燃料流路である。移送用流路86の一端は、ジェットポンプ70に接続され、他端は、第2貯留部99内に開放されている。ジェットポンプ70が移送用流路86を介して第2貯留部99内に燃料を噴射することにより、第2貯留部99内の燃料は、第1貯留部98へと移送される。
【0133】
以上説明した第12実施形態の燃料供給装置100aは、第1実施形態の燃料供給装置100と同様な効果を有する。
【0134】
M.第13実施形態:
図32に示す第13実施形態の燃料供給装置100bは、燃料タンクTK内に設けられたサブタンクSTKの内に配置される。サブタンクSTKは、燃料タンクTK内に配置された燃料を貯留する容器であり、下方に流入開口95が設けられている。
【0135】
第13実施形態の燃料供給装置100bは、ポンプ10に代えてポンプ10bを備える点、リターン流路83に代えてリターン流路183を備える点と、残圧保持弁15および流量調整弁30がリターン流路183に配置されている点と、フィルタ50に代えてフィルタ51を備える点と、燃料流路181、逆止弁22、フィルタ収容部182、高圧フィルタ52、およびジェットポンプ188を追加して備える点と、において、第1実施形態の燃料供給装置100と異なる。第13実施形態の燃料供給装置100bにおけるその他の構成は、第1実施形態の燃料供給装置100と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0136】
ポンプ10bは、縦置き型のポンプであり、鉛直下方においてフィルタ51を通った燃料を吸引して、鉛直上方から排出する。燃料流路181は、ポンプ10bとフィルタ収容部182とを接続する燃料流路である。逆止弁22は、燃料流路181に配置され、ポンプ10bの鉛直上方に位置し、燃料流路181における燃料の流れる方向を、ポンプ10bからフィルタ収容部182に向かう方向に規制する。フィルタ収容部182は、高圧フィルタ52を収容し、また、高圧フィルタ52を通過した燃料を、燃料流路82およびリターン流路183へと導く。フィルタ収容部182は、燃料流路181と連通する。また、フィルタ収容部182は、高圧フィルタ52を挟んで燃料流路181とは反対側において、燃料流路82およびリターン流路183と連通する。フィルタ収容部182は、中心が円筒状に開口した円筒状の外観形状を有する。高圧フィルタ52は、燃料の圧力が低化することを抑制し、燃料流路181およびフィルタ収容部182内における燃料蒸気の発生を抑制する。高圧フィルタ52の外観形状は、フィルタ収容部182の外観形状を類似しており、中心が円筒状に開口した円筒状の形状である。
【0137】
リターン流路183は、一端がフィルタ収容部182に接続され、他端がサブタンクSTKにおける流入開口95の近傍において、ジェットポンプ188として構成されている。ジェットポンプ188は、オリフィスとして形成され、流量調整弁30から排出される燃料を噴射する。これにより、サブタンクSTKの外側に貯留されている燃料が流入開口95を介してサブタンクSTK内に流入し、フィルタ51へと導かれる。
【0138】
以上説明した第13実施形態の燃料供給装置100bは、第1実施形態の燃料供給装置100と同様な効果を有する。
【0139】
N.その他の実施形態:
(1)第2、6、8、9実施形態において、流出部304aは、2つの流出部305、306を備えていたが、第1実施形態等と同様に、1つの流出部のみを備えていてもよい。この構成においては、例えば、内部空間302内に互いに異なる2つの流路が形成されるようにハウジング301a、301eに流路形成部材を配置する、若しくは、ハウジング301a、301eに流路を形成するためのリブ等を設ける構成としてもよい。そして、弁体の移動により、低温時には一方の流路が閉塞されて他方は開放され、また、高温時にはいずれの流路も開放されるように構成してもよい。すなわち、一般には、内部流路は、燃料温度の高低に関わらず、燃料流路と燃料タンクTK、TK2の内部とを連通する第1流路と、燃料温度が蒸気発生温度よりも低い場合に弁体300、300a~300iにより閉塞され、燃料温度が上記発生温度以上の場合に弁体300、300a~300iにより閉塞されない第2流路とを含む構成を有する燃料供給装置を、本開示の燃料供給装置に適用できる。
【0140】
(2)第8実施形態において、貫通孔312を省略してもよい。この場合、仕切部310bの径方向外側の空間を、燃料が流れる程度の大きさに構成してもよい。また、第8実施形態において、貫通孔351を省略してもよい。
【0141】
(3)第13実施形態において、ジェットポンプ188は、サブタンクSTK内に配置されていたが、サブタンクSTKの外側、例えば、流入開口95の近傍のサブタンクSTKと燃料タンクTK2との間の位置に配置されてもよい。かかる構成においても、第13実施形態の燃料供給装置100bと同様な効果を有する。
【0142】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した技術的特徴に対応する各実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0143】
100;100a;100b 燃料供給装置、10;10b ポンプ、82 燃料流路、83;183 リターン流路、30;30a-30i 流量調整弁、301;301a;301c;301e;301f ハウジング、F1a-F10a;F1b-F10b 内部流路、300;300a-300i 弁体、329;329e;329f バネ部材