(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】550℃以上の温度でALDを使用してSi含有膜を堆積させるための前駆体及びプロセス
(51)【国際特許分類】
H01L 21/316 20060101AFI20221026BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20221026BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20221026BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
H01L21/316 X
H01L21/318 B
H01L21/31 C
C23C16/42
(21)【出願番号】P 2021535051
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(86)【国際出願番号】 US2019066333
(87)【国際公開番号】W WO2020131635
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-06-17
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】野田 直人
(72)【発明者】
【氏名】中川 尚久
(72)【発明者】
【氏名】ジラール、ジャンマルク
(72)【発明者】
【氏名】ワン、チーウェン
(72)【発明者】
【氏名】木津 たきお
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-539730(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0299848(US,A1)
【文献】特表2017-535077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
H01L 21/318
H01L 21/31
C23C 16/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の上にSi含有膜を形成させるための方法であって、前記方法が、
反応器中で前記基材を加熱して、550℃
よりも高い温度とする工程;
前記基材を、次式を有するSi含有前駆体を含むSi含有膜形成性組成物を含む蒸気に曝露させる工程:
SiR
1
yR
2
4-x-y(NH-SiR’
3)
x
[式中、x=2、3、4であり;y=0、1、2であり;R
1及びR
2は、それぞれ独立して、H、ハロゲン(Cl、Br、I)、C
1~C
4アルキル、イソシアネート、C
1~C
4アルコキシド、又は-NR
3R
4基(式中、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、H、C
1~C
4アルキルから選択されるが、但し、R
3=Hならば、R
4>C
1である)から選択され;それぞれのR’は、独立して、H、ハロゲン(Cl、Br、I)、又はC
1~C
4アルキルから選択される]、並びに
前記Si含有前駆体の少なくとも一部を、前記基材の上に堆積させて、原子層堆積法(ALD)プロセスによって、前記基材の上に前記Si含有膜を形成させる工程、
を含む、方法。
【請求項2】
前記基材を共反応剤に曝露させる工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記共反応剤が、O
3、O
2、H
2O、NO、N
2O、NO
2、H
2O
2、Oラジカル、及びそれらの組合せから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記共反応剤が、NH
3、NO、N
2O、ヒドラジン、N
2プラズマ、N
2/H
2プラズマ、NH
3プラズマ、アミン、及びそれらの組合せから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記基材を、550℃超~650℃以下の温度に加熱する工程をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記基材を、550℃超~750℃以下の温度に加熱する工程をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記
Si含有膜が、酸化ケイ素
膜である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
堆積された前記酸化ケイ素膜のWERが、加熱法SiO
2を用いて正規化して、2~4である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記Si含有前駆体が、SiH
2(NH-Si(CH
3)
3)
2、SiH(NH-Si(CH
3)
3)
3、SiHCl(NH-Si(CH
3)
3)
2、SiCl
2(NH-Si(CH
3)
3)
2、SiCl(NH-Si(CH
3)
3)
3、又はSi(NH-Si(CH
3)
3)
4から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記前駆体がH
2Si(NH-SiMe
3)
2である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記前駆体がHSi(NH-SiMe
3)
3である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記前駆体がSi(NH-SiMe
3)
4である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ALDプロセスが、熱的ALDである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
次式を有するSi含有前駆体を含む膜を堆積させるための組成物:
SiR
1
yR
2
4-x-y(NH-SiR’
3)
x
[式中、x
=3、4であり;y=0、1、2であり;R
1及びR
2は、それぞれ独立して、H、ハロゲン(Cl、Br、I)、C
1~C
4アルキル、イソシアネート、C
1~C
4アルコキシド、又は-NR
3R
4基(式中、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、H、C
1~C
4アルキルから選択されるが、但し、R
3=Hならば、R
4>C
1である)から選択され;それぞれのR’は、独立してH、ハロゲン(Cl、Br、I)、又はC
1~C
4アルキルから選択されるが、但し
、x=3且つy=1である場合には、R
1≠Hである]。
【請求項15】
前記Si含有前駆体が
、SiH(NH-Si(CH
3)
3)
3
、SiCl(NH-Si(CH
3)
3)
3、又はSi(NH-Si(CH
3)
3)
4から選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
基材の上にSi含有膜を形成させるための方法であって、前記方法が、
反応器中で基材を、550℃よりも高い温度にまで加熱する工程;及び
前記基材の表面の上に、次式を有するSi含有前駆体の、化学吸着される及び/又は物理吸着された膜を形成させる工程:
SiR
1
yR
2
4-x-y(NH-SiR’
3)
x
[式中、x=2、3、4であり;y=0、1、2であり;R
1及びR
2は、それぞれ独立して、H、ハロゲン(Cl、Br、I)、C
1~C
4アルキル、イソシアネート、C
1~C
4アルコキシド、又は-NR
3R
4基(式中、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、H、C
1~C
4アルキルから選択されるが、但し、R
3=Hならば、R
4>C
1である)から選択され;それぞれのR’は、独立して、H、ハロゲン(Cl、Br、I)、又はC
1~C
4アルキルから選択される]
を含む、方法。
【請求項17】
前記Si含有前駆体を含む前記化学吸着される及び/又は物理吸着された膜を、共反応剤と化学的に反応させる工程をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記共反応剤が、前記化学吸着される及び/又は物理吸着された膜の中の前記Si含有前駆体と反応して、反応生成物を生成し、前記反応生成物が前記基材の表面の上に第二の膜を形成する、請求
項17に記載の方法。
【請求項19】
前記共反応剤が、O
3、O
2、H
2O、NO、N
2O、NO
2、H
2O
2、Oラジカル、及びそれらの組合せから選択される、請求
項17に記載の方法。
【請求項20】
前記共反応剤が、NH
3、NO、N
2O、ヒドラジン、N
2プラズマ、N
2/H
2プラズマ、NH
3プラズマ、アミン、及びそれらの組合せから選択される、請求
項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮特許出願第6278373号明細書(出願日:2018年12月21日)及び米国仮特許出願第62900757号明細書(出願日:2019年9月16日)の利益を主張するものであり、それらのすべてを、すべての目的のために、参考として引用し本明細書に組み入れたものとする。
【0002】
開示されているのは、半導体製造プロセスにおいて、550℃以上、好ましくは550℃超且つ750℃以下の温度で原子層堆積法(ALD)プロセスを使用して、Si含有膜を堆積させるための前駆体及びプロセスである。
【背景技術】
【0003】
Si含有膜、たとえばSiO2及びSiNは、3D-NANDフラッシュメモリも含めた半導体デバイスにおける必須の機能性構成成分であり、インターポリ絶縁物、ブロッキング酸化物、トンネル酸化物層、及びピラーとして埋め込まれている。SiO2膜は、半導体デバイスにおいて各種の機能を果たしている。クリーニングプロセスによるエッチングに対して抵抗性を有し、そして高温に曝露され、それに続くアニーリング工程及び加工工程でも収縮しない、高品質のSiO2膜が必要とされている。3D NANDの製造及びその他の半導体デバイスの製造において、ALDは、超薄膜(典型的には、原子の単分子層から、ナノメートルの数十分の一まで)を、完全にコンフォーマルな方式で作製するための、キーとなる堆積技術である。SiO2のALDによって、半導体の製造において、特に、現行の半導体デバイスでは一般的な構造である、高いアスペクト比(HAR)を有するトレンチ及びホールを充填する場合には、SiO2層の均質な被覆及び所定の組成が得られる。たとえば、3D-NANDのデバイスにおけるホールは、30:1~150:1の範囲のアスペクト比を有している。ALDによって堆積させる、トレンチの上に高品質且つコンフォーマルなSiO2層を堆積させることは、特に500℃を超える温度でのALDでは、前駆体が限定されるために、依然として困難な挑戦課題に留まっている。高温(>500℃)では、ほとんどのSiO2ALD用前駆体は、完全なALD、すなわち、自己抑制性の成長挙動を示さなくなる傾向がある。それに引換え、パラシチック(parasitic)な化学蒸着法(CVD)(すなわち、成長に自己抑制性がない)は、その前駆体の熱分解が原因で、典型的には、貧弱な膜品質、汚染、及び非コンフォーマルな成長がもたらされ、ホール又はトレンチの構造の側面及び底面に比較して、上面では膜が厚くなる。しかしながら、高温のALDが望ましいが、その理由は、高温で膜を堆積させることによって、より低い温度(およそ500℃)で膜を堆積させ、次いで堆積の後でより高い温度(約600~900℃)でアニールするか、又は後の加工工程で単に高温に曝露させる場合に通常観察される収縮を防止することが可能となるからである。そのような熱収縮が、応力をもたらし、そしてクラッキングを起こす可能性がある。しかしながら、産業界及び研究者たちは、SiO2膜の高温(>500℃)でのALD堆積法を実施するのに十分な熱安定性を有し、そして適切な表面反応性を示して、これらの高い温度でのALDの自己抑制性の成長挙動を可能とするような分子を発見しようと奮闘してきた。
【0004】
500℃よりも高い温度でのALDプロセスに適した、加熱によるSiO2のALD用前駆体を見出すための努力が、これまで試みられてきた。
【0005】
米国特許出願公開第2017207082号明細書(Wangら)では、650℃以上の温度でのALDプロセスにおいて酸化ケイ素膜を堆積させるための、方法及び組成物が開示された。SiO膜を堆積させるためのALDプロセスで使用されたSiの前駆体I又はIIは、次のものであった:
R3-nXnSi-O-SiXnR3-n I
R3-nXnSi-O-SiXmR1
pR2-m-p-O-SiXnR3-n II
[式中、X=Cl、Br、又はIであり;R及びR1はそれぞれ独立して、水素原子、C1~C3アルキル基から選択され;n=1、2、又は3であり;m=0、1、又は2であり;そしてp=0又は1である]
【0006】
米国特許出願公開第2016225616号明細書(Liら)には、3D縦型NANDフラッシュメモリスタックとしての、たとえば、式I~IIIを有する化合物から選択されるケイ素前駆体を用いた装置を形成するための、SiO
2膜又はSiN膜の形成を含む3Dデバイスを製造するための方法及び前駆体が開示されている。その堆積プロセスには、周囲温度~1000℃の1種又は複数の温度でのALDが含まれている。
【化1】
【0007】
米国特許第9460912号明細書(Chandraら)には、600℃~800℃の1種又は複数の堆積温度及び50mTorr~760Torrの範囲の圧力で、酸化ケイ素含有膜を形成させるための組成物及びALDプロセスが開示されている。一つの態様においては、その組成物及びプロセスでは、以下に記載された式I、II、及びそれらの組合せを有する化合物から選択された、1種又は複数のケイ素前駆体を使用している。
R1R2
mSi(NR3R4)nXp I
及び
R1R2
mSi(OR3)n(OR4)qXp II
【0008】
米国特許第8460753号明細書(Xiaoら)には、加熱CVDプロセス、ALDプロセス又はサイクル式CVDプロセスを用い、以下の化合物からの1種から選択されるケイ素前駆体を用いて、HF溶液の中で、極端に低い湿式エッチング速度を有する、二酸化ケイ素又は酸化ケイ素膜を堆積させるための方法が開示されている:R1
nR2
mSi(NR3R4)4-n-m;及び環状シラザンの(R1R2SiNR3)p[式中、R1は、アルケニル又は芳香族、たとえばビニル、アリル、及びフェニルであり;R2、R3、及びR4は、H、直鎖状、分岐状若しくは環状のC1~C10を有するアルキル、直鎖状、分岐状若しくは環状のC2~C10を有するアルケニル、及び芳香族から選択され;n=1~3、m=0~2であり;p=3~4である]。その温度範囲は、100mT~1Tの圧力下で、400℃~700℃の間であった。
【0009】
国際公開第18063907号パンフレット(Hwangら)には、クロロジシラザン、ケイ素-ヘテロ原子化合物、並びに酸化ケイ素を含む膜として、ケイ素-ヘテロ原子化合物を形成するためにそれらの化合物を使用するALDプロセスも含めた堆積プロセスが記載されている。1,1,1,3,3-ペンタクロロジシラザン、1,1,3,3-テトラクロロジシラザン、又は1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロジシラザンの合成が開示された。350~500℃の温度範囲で、PEALD法を用いて窒化ケイ素膜を堆積させるために使用される、1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロジシラザンが開示された。
【0010】
米国特許出願公開第20070160774号明細書又は特開2005-213633号公報の特許出願(塚田ら)には、(H)n-Si-[N(R1)2]4-n(式中、R1=H、C1~4アルキル、トリメチルシリルであり;n=0~3であり;そして、RのすべてがHではない)で表されるアミノシランガスと、N2(H)4-x(R2)x(式中、R2=Me、Et、Phであり;x=0~4である)で表されるヒドラジンガスとによって、CVDチャンバー中、低温で、塩化アンモニウムを発生させることなく形成されるSiN膜が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
高温、典型的には>500℃、好ましくはおよそ700℃以上でALDプロセスに適用することが可能な、新しくそして新規なALD用前駆体を発見することは、より高い温度で達成可能なALDプロセスにそれらを適用しようとすると、高いステッブカバレージ(SC)と低い湿式エッチング速度(WER)とが必要となるために、挑戦課題である。したがって、それらの要件を満たすような前駆体を提供することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
開示されているのは、基材の上にSi含有膜を形成させるための方法である。方法には、以下の工程が含まれる:基材を、反応器中で550℃以上の温度に加熱する工程、基材を、次式を有するSi含有前駆体を含むSi含有膜形成性組成物を含む蒸気に曝露させる工程:
SiR1
yR2
4-x-y(NH-SiR’3)x
[式中、x=2、3、4であり;y=0、1、2であり;R1及びR2は、それぞれ独立して、H、ハロゲン(Cl、Br、I)、C1~C4アルキル、イソシアネート、C1~C4アルコキシド、又は-NR3R4基(式中、R3及びR4は、それぞれ独立して、H、C1~C4アルキルから選択されるが、但し、R3=Hならば、R4>C1である)から選択され;それぞれのR’は、独立して、H、ハロゲン(Cl、Br、I)、又はC1~C4アルキルから選択される]、並びにSi含有前駆体の少なくとも一部を、基材の上に堆積させて、ALDプロセスによって、基材の上にSi含有膜を形成させる工程。
【0013】
方法にはさらに、反応器の中で基材を加熱して550℃よりも高い温度とする工程、及び基材の表面の上に、次式を有するSi含有前駆体の、化学吸着される及び/又は物理吸着された膜を形成する工程が含まれる:
SiR1
yR2
4-x-y(NH-SiR’3)x
[式中、x=2、3、4であり;y=0、1、2であり;R1及びR2は、それぞれ独立して、H、ハロゲン(Cl、Br、I)、C1~C4アルキル、イソシアネート、C1~C4アルコキシド、又は-NR3R4基(式中、R3及びR4は、それぞれ独立して、H、C1~C4アルキルから選択されるが、但し、R3=Hならば、R4>C1である)から選択され;それぞれのR’は、独立して、H、ハロゲン(Cl、Br、I)、又はC1~C4アルキルから選択される]。
【0014】
開示されている方法には、以下の態様の一つ又は複数を含むことができる:
・ 方法がさらに、Si含有前駆体を含む化学吸着される及び/又は物理吸着された膜を、共反応剤と化学的に反応させる工程を含む;
・ 共反応剤が、化学吸着される及び/又は物理吸着された膜の中のSi含有前駆体と反応して、反応生成物を生成し、反応生成物が基材の表面の上の第二の膜を形成する;
・ 方法がさらに、基材を共反応剤に曝露させる工程を含む;
・ 方法がさらに、共反応剤を反応器に導入する工程を含む;
・ 共反応剤が、O3、O2、H2O、NO、N2O、NO2、H2O2、Oラジカル、及びそれらの組合せから選択される;
・ 共反応剤が、O2である;
・ 共反応剤が、O3である;
・ 共反応剤が、NH3、NO、N2O、ヒドラジン、N2プラズマ、N2/H2プラズマ、NH3プラズマ、アミン、及びそれらの組合せから選択される;
・ 共反応剤が、NH3である;
・ 方法がさらに、基材を含む反応器を、約400℃以上の温度にまで加熱する工程を含む;
・ 方法がさらに、基材を約550℃~約750℃の温度に加熱する工程を含む;
・ 方法がさらに、基材を、550℃超~750℃以下の温度に加熱する工程を含む;
・ 方法がさらに、基材を約550℃~約650℃の温度に加熱する工程を含む;
・ 方法がさらに、基材を、550℃超~650℃以下の温度に加熱する工程を含む;
・ ケイ素含有膜が、SiaObCcNd(ここで、a>0;b、c、d≧0である)の膜である:
・ ケイ素含有膜が、Hを低い濃度で含む;
・ ケイ素含有膜が、酸化ケイ素層である;
・ ケイ素含有膜が、窒化ケイ素層である;
・ 堆積された酸化ケイ素膜のWERが、形成された加熱法SiO2を用いて正規化して、4未満である;
・ 堆積された酸化ケイ素膜のWERが、加熱法SiO2を用いて正規化して、2~4である;
・ 基材が、パターンを有するウェーハである;
・ 基材が、10:1超のアスペクト比の、ホール又はトレンチを有するウェーハである;
・ 基材が、24:1超のアスペクト比の、ホール又はトレンチを有するウェーハである;
・ ケイ素含有膜が、フラッシュメモリデバイスの部品である;
・ 酸化ケイ素膜が、フラッシュメモリデバイスの部品である;
・ Si含有前駆体が、SiH2(NH-Si(CH3)3)2、SiHCl(NH-Si(CH3)3)2、SiCl2(NH-Si(CH3)3)2、SiH(NH-Si(CH3)3)3、SiCl(NH-Si(CH3)3)3、又はSi(NH-Si(CH3)3)4から選択される;
・ Si含有前駆体が、SiH2(NH-Si(CH3)3)2である;
・ Si含有前駆体が、SiHCl(NH-Si(CH3)3)2である;
・ Si含有前駆体が、SiCl2(NH-Si(CH3)3)2である;
・ Si含有前駆体が、SiH(NH-Si(CH3)3)3である;
・ Si含有前駆体が、SiCl(NH-Si(CH3)3)3である;
・ Si含有前駆体が、Si(NH-Si(CH3)3)4である;
・ H2Si(NH-SiMe3)2の熱分解温度が、約600℃である;
・ H2Si(NH-SiMe3)2が、約550℃~約650℃の間の温度範囲で、完全なALDを遂行する;
・ H2Si(NH-SiMe3)2が、約650℃の温度で、完全なALDを遂行する;
・ H2Si(NH-SiMe3)2が、約550℃よりも高い温度で、コンフォーマルな成長を維持する;
・ H2Si(NH-SiMe3)2が、約650℃の温度で、コンフォーマルな成長を維持する;
・ HSi(NH-SiMe3)3の熱分解温度が、約700℃である;
・ HSi(NH-SiMe3)3が、約550℃~約750℃の間の温度範囲で、完全なALDを遂行する;
・ HSi(NH-SiMe3)3が、約700℃の温度で、完全なALDを遂行する;
・ HSi(NH-SiMe3)3が、約550℃よりも高い温度で、コンフォーマルな成長を維持する;
・ HSi(NH-SiMe3)3が、約700℃の温度で、コンフォーマルな成長を維持する;
・ 反応器の温度範囲が、約200℃~約1000℃である;
・ 反応器の温度範囲が、約400℃~約800℃である;
・ 堆積温度が、加熱プロセスでは、約400℃~約800℃の範囲である;
・ 堆積温度が、加熱プロセスでは、約500℃~約750℃の範囲である;
・ 堆積温度が、加熱プロセスでは、約550℃~約700℃の範囲である;
・ 反応器の中の圧力が、約0.1mTorr~約1000Torrの間に保持される;
・ 反応器の中の圧力が、約0.1Torr~約400Torrの間に保持される;
・ 反応器の中の圧力が、約1Torr~約100Torrの間に保持される;
・ 反応器の中の圧力が、約1Torr~約10Torrの間に保持される;
・ ALDプロセスが、熱的ALDである;
・ ALDプロセスが、空間的ALDである;そして、
・ ALDプロセスが、時間的ALDである。
【0015】
さらに開示されているのは、次式を有するSi含有前駆体を含む膜を堆積させるための組成物である:
SiR1
yR2
4-x-y(NH-SiR’3)x
[式中、x=2、3、4であり;y=0、1、2であり;R1及びR2は、それぞれ独立して、H、ハロゲン(Cl、Br、I)、C1~C4アルキル、イソシアネート、C1~C4アルコキシド、又は-NR3R4基(式中、R3及びR4は、それぞれ独立して、H、C1~C4アルキルから選択されるが、但し、R3=Hであるならば、R4>C1である)から選択され;それぞれのR’は、独立して、H、ハロゲン(Cl、Br、I)、又はC1~C4アルキルから選択されるが、但し、x=2且つy=1であるならば、R1=H且つR2≠H、又はR2=H且つR1≠Hであり;さらには、x=3且つy=1であるならば、R1≠Hである]。開示された組成物には、以下の態様の一つ又は複数を含むことができる:
・ Si含有前駆体が、SiH2(NH-Si(CH3)3)2、SiH(NH-Si(CH3)3)3、SiHCl(NH-Si(CH3)3)2、SiCl2(NH-Si(CH3)3)2、SiCl(NH-Si(CH3)3)3、又はSi(NH-Si(CH3)3)4から選択される;
・ Si含有前駆体が、SiH2(NH-Si(CH3)3)2である;
・ Si含有前駆体が、SiH(NH-Si(CH3)3)3である;
・ Si含有前駆体が、SiHCl(NH-Si(CH3)3)2である;
・ Si含有前駆体が、SiCl2(NH-Si(CH3)3)2である;
・ Si含有前駆体が、SiCl(NH-Si(CH3)3)3である;
・ Si含有前駆体が、Si(NH-Si(CH3)3)4である;
・ Si含有前駆体が、約93%(w/w)~約100%(w/w)の範囲の純度を有する;そして
・ Si含有前駆体が、約99%(w/w)~約99.999%(w/w)の範囲の純度を有する。
【0016】
表記法及び命名法
以下の詳細な説明及び請求項において、多くの略号、符号、及び用語を使用するが、それらは当業界においては周知のものであり、以下のものが含まれる。
【0017】
本明細書で使用するとき、不定冠詞の「a」及び「an」は、一つ又は複数を意味している。
【0018】
本明細書で使用するとき、本文中又は請求項中での、「about(ほぼ)」又は「around(およそ)」又は「approximately(約)」は、記述された数値の±10%を意味している。
【0019】
本明細書で使用するとき、本文中又は請求項中での「室温」は、約20℃~約25℃を意味している。
【0020】
「周囲温度(ambient temperature)」という用語は、約20℃~約25℃の環境温度を指している。
【0021】
開示された実施態様において使用するとき、複数のR基を記述する文脈における、「独立して(independently)」という用語は、主題のR基が、同一又は異なった下付き文字又は上付き文字を担持する別のR基に対して、独立して選択されるだけではなく、さらには、同一のR基の各種のさらなる化学種に対しても独立して選択されるということを表していると理解されたい。たとえば、式MR1
x(NR2R3)(4-x)(ここでxは2又は3である)において、その2個又は3個のR1基が、相互に、又はR2に対して、又はR3に対して、同一であってもよいし、或いは同一である必要はない。さらには、特に断らない限り、別な式で使用したときでも、R基の値は相互に独立しているということも理解されたい。
【0022】
開示された実施態様において使用するとき、「ヒドロカルビル基」という用語は、炭素及び水素を含む官能基を指しており、「アルキル基」という用語は、炭素及び水素原子のみを含む飽和の官能基を指している。ヒドロカルビル基は、飽和であっても、或いは不飽和であってもよい。いずれの用語も、直鎖状、分岐状、又は環状の基を指している。直鎖状のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。分岐状のアルキル基の例としては、t-ブチルが挙げられるが、これに限定される訳ではない。環状のアルキル基の例としては、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
【0023】
開示された実施態様において使用するとき、略号「Me」はメチル基を指し、略号「Et」はエチル基を指し、略号「Pr」は、プロピル基を指している。
【0024】
開示された実施態様に引用されている、ありとあらゆる範囲は、「末端を含む(inclusively)」という用語の使用の有無に関係なく、それらの両末端を含んでいる(すなわち、「x=1~4である」、或いは「xは1~4の範囲である」という場合には、x=1、x=4、そしてそれらの間にあるすべての数が含まれる)。
【0025】
「基材(substrate)」という用語は、その上でプロセスが実施される、単一又は複数の物質を指している。基材が、その上でプロセスが実施される、単一又は複数の物質を有するウェーハを指していてもよい。それらの基材は、半導体、光電池、フラットパネル、又はLCD-TFTデバイスの製造に使用される各種の適切なウェーハであってよい。基材は、先行する製造工程で、その上に既に堆積されている、異なった物質の1層又は複数の層を有していてもよい。たとえば、それらのウェーハに、ケイ素層(たとえば、結晶質、非晶質、多孔性など)、ケイ素含有層(たとえば、SiO2、SiN、SiON、SiCOHなど)、金属含有層(たとえば、銅、コバルト、ルテニウム、タングステン、白金、パラジウム、ニッケル、ルテニウム、金など)、有機層たとえば、非晶質炭素若しくはホトレジスト、又はそれらの組合せが含まれていてもよい。さらには、それらの基材は、平面状であっても、或いはパターン化されていてもよい。基材には、MEMS、3D NAND、MIM、DRAM、又はFeRamデバイス用途における誘電体として使用される酸化物の層(たとえば、ZrO2ベースの物質、HfO2ベースの物質、TiO2ベースの物質、希土類酸化物ベースの物質、三元酸化物ベースの物質など)、又は電極として使用される窒化物ベースの膜(たとえば、TaN、TiN、NbN)が含まれていてもよい。通常の技能を有する当業者のよく認識するところであろうが、「膜(film)」又は「層(layer)」は、本明細書で使用される場合、ある表面の上に載置されるか又は広げられたあるいくつかの物質の厚みを指しており、その表面が、トレンチ又はラインであってもよい。本明細書及び請求項の全体を通じて、ウェーハ及びその上の各種の付随する層は、基材と呼ばれる。
【0026】
「ウェーハ」又は「パターン化されたウェーハ」という用語は、基材の上にケイ素含有膜のスタックを有するウェーハ、及びケイ素含有膜のスタックの上の、パターンエッチングのために形成された、パターン化されたハードマスク層を指している。「ウェーハ」又は「パターン化されたウェーハ」はさらに、アスペクト比を有するトレンチウェーハを指すこともまた可能である。
【0027】
本明細書においては、「膜(film)」及び「層(layer)」という用語は、相互に言い換え可能に使用できるということに注意されたい。膜が層に相当したり、層に関連していたりしてもよいし、層が膜を指していてもよいということを理解されたい。さらには、当業者のよく認識するところであろうが、「膜」又は「層」という用語は、本明細書で使用される場合、ある表面の上に載置されるか又は広げられたあるいくつかの物質の厚みを指しており、その表面とは、大はウェーハ全体から、小はトレンチ又はラインまでの範囲であってよい。
【0028】
本明細書においては、「堆積温度(deposition temperature)」及び「基材温度(substrate temperature)」という用語は、相互に言い換え可能に使用できるということに注意されたい。基材温度が、堆積温度に相当するか又はそれに関連してもよいこと、並びに、堆積温度が、基材温度を指すことも可能であることを理解されたい。
【0029】
本明細書においては、「前駆体」及び「堆積化合物」及び「堆積ガス」という用語は、その前駆体が、室温、常圧ではガス状態にある場合には、相互に言い換え可能に使用できることに注意されたい。前駆体が、堆積化合物又は堆積ガスに相当するか又は関連してもよいこと、並びに、堆積化合物又は堆積ガスが、前駆体を指すことも可能であることを理解されたい。
【0030】
本明細書で使用するとき、略号の「NAND」は、「Negated AND」又は「Not AND」ゲートを指しており;略号の「2D」は、平面上の基材の上の二次元のゲート構造物を指しており;略号の「3D」は、三次元又は垂直方向のゲート構造物を指しているが、この場合、そのゲート構造物は、垂直な方向に積み重ねられている。
【0031】
本明細書においては、元素周期律表からの、元素の標準的な略号を使用している。元素が、これらの略号によって呼ばれることがあるということは理解するべきであろう(たとえば、Siはケイ素を指しており、Nは窒素を指しており、Oは酸素を指しており、Cは炭素を指しており、Hは水素を指しており、Fはフッ素を指している、など)。
【0032】
開示された特定の分子が識別されるように、Chemical Abstract Serviceによって割り当てられた独自のCAS登録番号(すなわち、「CAS」)を提示している。
【0033】
本明細書及び請求項全体にわたって、ケイ素含有膜、たとえばSiN及びSiOが、それらの正しい化学量論を示すことなく、列記されていることにも注目されたい。ケイ素含有膜としては、純粋なケイ素(Si)層、たとえば結晶質Si、ポリケイ素(p-Si若しくは多結晶Si)、又は非晶質ケイ素;窒化ケイ素(SikNl)層;又は酸化ケイ素(SinOm)層;又はそれらの混合物が挙げられるが、ここでk、l、m、及びnは、両末端も含めて0.1~6の間の範囲である。窒化ケイ素がSikNlであるのが好ましいが、ここでk及びlはそれぞれ、0.5~1.5の範囲である。窒化ケイ素がSi3N4であれば、より好ましい。本明細書においては、以下において、SikNlを含む層を表すのに、SiNを使用することとする。酸化ケイ素がSinOmであるのが好ましいが、ここでnは0.5~1.5の範囲、mは1.5~3.5の範囲である。酸化ケイ素がSiO2であれば、より好ましい。本明細書においては、以下において、SinOmを含む層を表すのに、SiOを使用することとする。ケイ素含有膜はさらに、酸化ケイ素ベースの誘電体、たとえば有機ベース又は酸化ケイ素ベースの低k誘電体、たとえばApplied Materials,Inc.製のSiOCHの式を有するBlack Diamond II又はIII物質であってもよい。ケイ素含有膜には、SiaObNc(ここで、a、b、cは0.1~6の範囲)を含んでいてもよい。ケイ素含有膜にはさらに、たとえばB、C、P、As及び/又はGeのようなドーパントを含んでいてもよい。
【0034】
範囲は、本明細書においては、ほぼその一つの特定の値から、及び/又はほぼそのまた別の特定の値までとして表現される。そのような範囲が表現された場合、また別の実施態様は、前記範囲の中のあらゆる組合せと合わせて、その一つの特定の値から、及び/又は他の特定の値までであることを理解されたい。
【0035】
本明細書において、「一つの実施態様」又は「実施態様」と呼んだときには、その実施態様に関連して記述された特定の特色、構造、又は特性が、本発明の少なくとも一つの実施態様に含まれていてよいということを意味している。本明細書の中の各所において「一つの実施態様において」という文言が出現した場合、必ずしもそれが同一の実施態様を指している訳ではなく、或いは、別の、若しくは代替の実施態様が必ずしも、他の実施態様を相互に排除する訳でもない。同じことが、「実施(implementation)」という用語にも、あてはまる。
【0036】
本発明の本質及び目的をより良く理解するためには、添付の図面を参照しながら、以下における詳細な説明を参照するべきであるが、図面においては、類似の要素には同一又は類似の参照番号が付与されている。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】気相におけるBTBASの自己分解曲線である(熱分解試験)。
【
図2a】2TMSASの温度を上げていったときの、重量損失のパーセンテージを示す、熱重量分析(TGA)のグラフである。
【
図3a】3TMSASの温度を上げていったときの、重量損失のパーセンテージを示す、熱重量分析(TGA)のグラフである。
【
図4】気相における2TMSASの自己分解曲線である(熱分解試験)。
【
図5】気相における3TMSASの自己分解曲線である(熱分解試験)。
【
図6】2TMSASについての、O
3を用い、600℃、650℃、及び500℃での、ALDの膜厚み(nm)対ウェーハ上の堆積位置(mm)のグラフである。
【
図7】3TMSASについての、O
2及びO
3共反応剤を用い、650℃での、ALDの膜厚み(nm)対ウェーハ上の堆積位置(mm)のグラフである。
【
図8】3TMSASとBTBASとの間のFTIRの比較である。
【
図9】600℃でBTBASを熱分解した後の、XPSの結果である。
【
図10】750℃で3TMSASを熱分解した後の、XPSの結果である。
【
図11ab】
図11aは、600℃で、3TMSASを使用したSiO
2膜のALDの後でのXPSの結果であり、
図11bは、650℃で、3TMSAS使用したSiO
2膜のALDの後でのXPSの結果である。
【
図11c】700℃で、3TMSASを使用したSiO
2膜のALDの後でのXPSの結果である。
【
図12a】500℃で、BTBASを使用したSiO
2膜のALDの後でのXPSの結果である。
【
図12bc】
図12bは、550℃で、BTBASを使用したSiO
2膜のALDの後でのXPSの結果であり、
図12cは、650℃で、BTBASを使用したSiO
2膜のALDの後でのXPSの結果である。
【
図13ab】
図13aは、650℃で、2TMSASを使用したSiO
2膜のALDの後でのXPSの結果であり、
図13bは、600℃で、2TMSASを使用したSiO
2膜のALDの後でのXPSの結果である。
【
図13cd】
図13cは、500℃で、2TMSASを使用したSiO
2膜のALDの後でのXPSの結果であり、
図13dは、加熱によるSiO
2のXPSの結果である。
【
図14】3TMSASのALDにおける、側壁のステッブカバレージ(SC)(%)対温度のグラフである。
【
図15】SiO
2膜の2TMSASのALDについての、さまざまな温度における正規化したWERのグラフである。
【
図16】3TMSASのALDについての、湿式エッチング速度(WER)対温度のグラフである。
【
図17】SiO
2膜の、2TMSAS、3TMSAS、及びBTBASのALDについての、正規化したWER対温度のグラフである。
【
図18】650℃及び600℃での2TMSASについてのGPCを、650℃での3TMSAS、及び500℃でのBTBASと比較した図である。
【
図19ab】
図19aは、それぞれ650℃で、O
3及びO
2を用いた、2TMSASのALDであり、
図19bは、650℃で、O
2を用いた、2TMSASを使用したSiO
2膜のALDのXPS分析である。
【
図20】650℃での、パルス時間依存のO
3を用いた、2TMSASの、基材の位置全体にわたるALD膜厚みである。
【
図21】650℃での、O
3の密度依存性を用いた、2TMSASの、基材の位置全体にわたるALD膜厚みである。
【
図22ab】
図22aは、650℃で、50g/m
3のO
3密度を用い、2TMSASを使用した、SiO
2膜のALDの後のXPSの結果であり、
図22bは、650℃で、250g/m
3のO
3密度を用い、2TMSASを使用した、SiO
2膜のALDの後のXPSの結果である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
開示されているのは、半導体製造プロセス、たとえば3D NAND製造プロセスにおいて、ALDプロセスを使用し、好ましくは約550℃を超える温度、より好ましくは約550℃~約750℃の範囲の温度で、Si含有膜を堆積させるための前駆体及びプロセスである。開示されているのは、ALDプロセスを使用し、約550℃以上の温度で、パラシチックCVD反応を伴わずに、Si含有膜を堆積させるための前駆体及びプロセスである。さらに開示されているのは、3D NANDにおいてコンフォーマルなケイ素含有層を製造するための、ALDプロセスを使用し、約550℃以上の温度で、Si含有膜を堆積させるための前駆体及びプロセスである。それらのケイ素含有膜の例を挙げれば、SiaObCcNd(ここで、a>0;b、c、d≧0である)であってもよい。それらのケイ素含有膜には、Hを含んでいてもよいが、それは、低濃度たとえば、約0重量%(w/w)~約5%(w/w)であるのがよい。Si含有膜は、酸化ケイ素膜であっても、或いは窒化ケイ素膜であってもよい。
【0039】
ALDプロセスを使用し、約500℃を超える温度でSi含有膜を堆積させるための、開示された前駆体は、次式を有している:
SiR1
yR2
4-x-y(NH-SiR’3)x (I)
[式中、x=2、3、4であり;y=0、1、2であり;R1及びR2は、それぞれ独立して、H、ハロゲン(Cl、Br、I)、C1~C4アルキル、イソシアネート、C1~C4アルコキシド、又は-NR3R4基(式中、R3及びR4は、それぞれ独立して、H、C1~C4アルキルから選択されるが、但し、R3=Hならば、R4>C1である)から選択され;それぞれのR’は、独立して、H、ハロゲン(Cl、Br、I)、又はC1~C4アルキルから選択される]。式(I)において、好ましくは、x=2且つy=1の場合には、R1=R2=H、R1=Cl且つR2=H、又はR1=Cl且つR2=Cl、R’=CH3であり;そしてx=3且つy=1の場合には、R1=H又はCl、R’=CH3であり;そしてx=2、3、4且つy=1、2の場合には、R1=H又はCl(x=4)、R’=CH3である。
【0040】
式(I)において、x=2、y=1;R1=R2=H;R’=CH3である場合には、例として開示されたSi含有前駆体には、SiH2(NH-Si(CH3)3)2が含まれる。
【0041】
式(I)において、x=2、y=1;R1=Cl;R2=H;R’=CH3である場合には、例として開示されたSi含有前駆体には、SiHCl(NH-Si(CH3)3)2が含まれる。
【0042】
式(I)において、x=2、y=1;R1=Cl;R2=Cl;R’=CH3である場合には、例として開示されたSi含有前駆体には、SiCl2(NH-Si(CH3)3)2が含まれる。
【0043】
式(I)において、x=3、y=1;R1=H又はCl;R’=CH3である場合には、例として開示されたSi含有前駆体には、SiH(NH-Si(CH3)3)3又はSiCl(NH-Si(CH3)3)3が含まれる。
【0044】
式(I)において、x=2、3、y=0、1;x=4、y=0;R1=H又はCl(x=4)、R’=CH3である場合には、例として開示されたSi含有前駆体は、SiH2(NH-Si(CH3)3)2、SiCl2(NH-Si(CH3)3)2、SiHCl(NH-Si(CH3)3)2、SiH(NH-Si(CH3)3)3、SiCl(NH-Si(CH3)3)3、及びSi(NH-Si(CH3)3)4である。
【0045】
開示されたSi含有前駆体が、SiH2(NH-Si(CH3)3)2、SiHCl(NH-Si(CH3)3)2、SiCl2(NH-Si(CH3)3)2、SiH(NH-Si(CH3)3)3、SiCl(NH-Si(CH3)3)3、又はSi(NH-Si(CH3)3)4であってよい。開示されたSi含有前駆体が、H2Si(NH-SiMe3)2であってよい。開示されたSi含有前駆体が、HSi(NH-SiMe3)3であってよい。開示されたSi含有前駆体が、Si(NH-SiMe3)4であってよい。
【0046】
以下に開示されるSi含有前駆体は、J.Organometallic Chemistry,287(1985),p.305~320(Baruerら)において開示されている合成方法に従って合成することが可能であるが、それらの構造式、CAS番号、及び沸点を表1に示す。当業者のよく認識するところであろうが、これらの化合物を合成するための方法は、記載されたCAS番号を使用すれば入手することが可能である。
【0047】
【0048】
開示されるものは、次式を有するSi含有前駆体を含む膜を堆積させるための組成物であってよい:
SiR1
yR2
4-x-y(NH-SiR’3)x (II)
[式中、x=2、3、4であり;y=0、1、2であり;R1及びR2は、それぞれ独立して、H、ハロゲン(Cl、Br、I)、C1~C4アルキル、イソシアネート、C1~C4アルコキシド、又は-NR3R4基(式中、R3及びR4は、それぞれ独立して、H、C1~C4アルキルから選択されるが、但し、R3=Hならば、R4>C1である)から選択され;それぞれのR’は、独立してH、ハロゲン(Cl、Br、I)、又はC1~C4アルキルから選択されるが、但し、x=2且つy=1である場合には、R1=H且つR2≠Hであるか、又はR2=H且つR1≠Hであり、或いは、x=3且つy=1である場合には、R1≠Hである]。
【0049】
開示された組成物が、以下のものから選択されるSi含有前駆体であってよい:SiH2(NH-Si(CH3)3)2、SiHCl(NH-Si(CH3)3)2、SiCl2(NH-Si(CH3)3)2、SiH(NH-Si(CH3)3)3、SiCl(NH-Si(CH3)3)3、又はSi(NH-Si(CH3)3)4。
【0050】
開示されたSi含有前駆体には、少なくとも2個のSi-NH-Si基が含まれる。開示されたSi含有前駆体が、2個、3個、又は4個のSi-NH-Si基を含んでいるのが好ましい。
【0051】
開示されたSi含有前駆体が、蒸着法に適した性質を有しているのが好ましいが、そのような性質としてはたとえば、約0.1Torr(23℃)~約1,000Torr(23℃)の範囲の蒸気圧、20℃未満(好ましくは室温で液状である)、より好ましくは-20℃未満(凍結/解凍の問題を回避するため)の融点、使用可能な蒸気圧(1~100Torr)を得るのに必要な温度で、1週間あたり0容積(v/v)%~1%(v/v)の分解を示すことなどが挙げられる。
【0052】
開示されたSi含有前駆体が、ALDプロセスによってSi含有膜たとえば、SiO2及びSiNを堆積させるのに適しているのがよく、そして以下の利点を有しているのがよい:
a.室温で液状であるか、又は50℃未満の融点を有している;
b.熱的に安定であって、業界標準の方法(バブラー、液体の直接注入、蒸気吸引)を使用しても、粒子の生成や製品の分解を起こすことなく、適切な分散及び蒸発が可能である;
c.基材との適切な反応性を有していて、広い自己抑制性のALDウィンドウを可能とし、各種のSi含有膜たとえば、SiO2、SiN、又はSiCNなどの堆積が可能である;
d.ALDプロセスにおいてSi含有膜を形成するための、化学吸着された前駆体と共反応剤との適切な反応性を有している;そして
e.化学吸着された化学種が高い熱安定性を有していて、自己分解及び表面上でのパラシチックCVDの成長が防止される。
【0053】
開示されたSi含有前駆体は、理想的には液体であり、バブラーの中又は液体の直接注入系で蒸発されるが、PCT国際公開第2009/087609号パンフレット(Xuら)に開示されているもののような昇華器を使用して、ALD用前駆体の蒸発のために固体の前駆体を使用することもまた可能である。別な方法として、固体の前駆体を、溶媒と混合するかその中に溶解させて、液体の直接注入系で使用するための、使用可能な融点及び粘度としてもよい。
【0054】
プロセスの信頼性を確保する目的で、開示されたSi含有前駆体を、使用する前に、連続式若しくは分別バッチ式蒸留、又は昇華によって精製して、約93重量%(w/w)~約100%(w/w)の範囲、好ましくは約99%(w/w)~約99.999%(w/w)の範囲、より好ましくは約99%(w/w)~約100%(w/w)の範囲の純度とするのがよい。
【0055】
開示されたSi含有前駆体には、次の各種の不純物が含まれている可能性がある:望ましくない同種の(congeneric)化学種;溶媒;塩素化金属化合物;又はその他の反応生成物。一つの別の方法においては、それらの不純物の合計量が、0.1%w/w未満である。
【0056】
前駆体の合成においては、溶媒たとえば、ヘキサン、ペンタン、ジメチルエーテル、又はアニソールを使用することができる。開示されたSi含有前駆体の中での溶媒の濃度は、約0%(w/w)~約5%(w/w)、好ましくは約0%(w/w)~約0.1%(w/w)である。前駆体から溶媒を分離することは、両者が似た沸点を有している場合には、困難となり得る。混合物を冷却することによって、液状の溶媒の中に固体の前駆体を形成させ、濾過によってそれを分離してもよい。真空蒸留もまた使用することが可能ではあるが、但し、ほぼ前駆体反応生成物の分解点より上にまで加熱してはならない。
【0057】
一つの別な方法においては、開示されたSi含有前駆体には、5%(v/v)未満、好ましくは1%(v/v)未満、より好ましくは0.1%(v/v)未満、さらにより好ましくは0.01%(v/v)未満の、各種の、望ましくない同種の化学種、反応剤、又はその他の反応生成物しか含まれない。この別法では、より好ましいプロセス再現性を与えることができる。この別法では、開示されたSi含有前駆体を蒸留することによって製造してもよい。
【0058】
さらなる別法においては、開示されたSi含有前駆体に、5%(v/v)~50%(v/v)の間の、1種又は複数の同種のSi含有前駆体、反応剤、又はその他の反応生成物が含まれていてもよく、特に、その混合物が改良されたプロセスパラメーターを与えたり、或いは、目標化合物の単離が困難若しくは高コストであったりするような場合には、それがあてはまる。たとえば、2種のSi含有前駆体の混合物が、蒸着のために適した、安定な液状混合部を与えるということもあり得る。
【0059】
開示されたSi含有前駆体の中でのトレース量の金属及びメタロイドの濃度はそれぞれ、約0ppb~約100ppb、より好ましくは約0ppb~約10ppbの範囲であるのがよい。
【0060】
さらに開示されているのは、ALDプロセスを使用し、反応チャンバーの中で基材の上にSi含有層を形成させるための方法又はプロセスである。一つの実施態様においては、基材の上にSi含有膜を形成させるための方法には、以下の工程が含まれる:反応器の中で基材を加熱して550℃以上の温度とする工程、基材を、次式を有するSi含有前駆体を含むSi含有膜形成性組成物を含む蒸気に曝露させる工程:
SiR1
yR2
4-x-y(NH-SiR’3)x
[式中、x=2、3、4であり;y=0、1、2であり;R1及びR2は、それぞれ独立して、H、ハロゲン(Cl、Br、I)、C1~C4アルキル、イソシアネート、C1~C4アルコキシド、又は-NR3R4基(式中、R3及びR4は、それぞれ独立して、H、C1~C4アルキルから選択されるが、但し、R3=Hならば、R4>C1である)から選択され;それぞれのR’は、独立して、H、ハロゲン(Cl、Br、I)、又はC1~C4アルキルから選択される]、並びにSi含有前駆体の少なくとも一部を、基材の上に堆積させて、ALDプロセスによって、基材の上にSi含有膜を形成させる工程。方法にはさらに、基材を共反応剤に曝露させる工程も含まれるが、ここで共反応剤は、以下のものから選択される:O3、O2、H2O、NO、N2O、NO2、H2O2、Oラジカル、NH3、ヒドラジン、N2プラズマ、N2/H2プラズマ、NH3プラズマ、アミン、及びそれらの組合せ。また別の実施態様においては、基材の上にSi含有膜を形成させるための方法に、以下の工程が含まれる:反応器の中で基材を加熱して550℃超の温度とする工程、及び基材の表面上に、次式を有するSi含有前駆体の、化学吸着される及び/又は物理吸着された膜を形成させる工程:
SiR1
yR2
4-x-y(NH-SiR’3)x
[式中、x=2、3、4であり;y=0、1、2であり;R1及びR2は、それぞれ独立して、H、ハロゲン(Cl、Br、I)、C1~C4アルキル、イソシアネート、C1~C4アルコキシド、又は-NR3R4基(式中、R3及びR4は、それぞれ独立して、H、C1~C4アルキルから選択されるが、但し、R3=Hならば、R4>C1である)から選択され;それぞれのR’は、独立して、H、ハロゲン(Cl、Br、I)、又はC1~C4アルキルから選択される]。方法にはさらに、Si含有前駆体を含む、化学吸着される及び/又は物理吸着された膜を、共反応剤と化学的に反応させる工程が含まれるが、この場合、化学吸着される及び/又は物理吸着された膜の中のSi含有前駆体と反応する共反応剤が、基材の表面の上に第二の膜を形成する反応生成物を与える。方法は、半導体、光電池、LCD-TFT、フラットパネルタイプ、又はフラッシュメモリのデバイスを製造するのに有用となり得る。開示されたSi含有前駆体を使用し、当業者には公知のALD法を使用して、Si含有薄膜を堆積させてもよい。
【0061】
開示されたSi含有前駆体を使用する開示されたプロセスには、Si含有膜を堆積させるためのALDプロセスが含まれる。好適なALD法としては、熱的ALD、空間的ALD、及び時間的ALD法が挙げられる。好ましくは、好適なALD法ではプラズマを使用しないが、その理由は、そのタイプのALDを用いると、高いアスペクト比のコンフォーマルな膜を成長させることが極めて困難となるからである。好適なALDは、完全ではない自己抑制性の成長様式で操作され、それによって、いくぶんかのパラシチックなCVDが起きることが容認されているからであるということを理解されたい。そのようなパラシチックなCVDは、その堆積された膜が、整合性の要件を満たしている限りでは、問題とならない。
【0062】
反応チャンバーは、その中で蒸着方法が実施される、いかなるデバイスの閉鎖容器すなわちチャンバーであってもよいが、非限定的に例を挙げれば、たとえば以下のものである:平行板タイプの反応器、ホットウォールタイプの反応器、シングル-ウェーハ反応器、マルチ-ウェーハ反応器、又はその他のタイプの蒸着システム。例に挙げたこれらの反応チャンバーはすべて、ALD反応チャンバーとしても使用することができる。
【0063】
反応器には、1枚又は複数の、その上に薄膜が堆積される基材が含まれる。「基材」とは、一般的には、その上でプロセスが実施される物質と定義される。それらの基材は、半導体、光電池、フラットパネル、又はLCD-TFTデバイスの製造に使用される各種の適切な基材であってよい。好適な基材の例としては、ウェーハ、たとえばケイ素、SiGe、シリカ、ガラス、又はGeが挙げられる。基材には、先行する製造工程で、その上に既に堆積されている、異なった物質の1層又は複数の層を含んでいてもよい。たとえば、それらのウェーハに、以下の層が含まれていてもよい:ケイ素層(結晶質、非晶質、多孔質など)、ケイ素酸化物層、窒化ケイ素層、ケイ素オキシ窒化物層、炭素ドープされたケイ素酸化物(SiCOH)層、又はそれらの組合せ。それらに加えて、ウェーハには、銅、コバルト、ルテニウム、タングステン、及び/又はその他の金属層(たとえば、白金、パラジウム、ニッケル、ルテニウム、又は金)が含まれていてもよい。それらのウェーハに、たとえばタンタル、タンタル窒化物などのようなバリヤー層又は電極が含まれていてもよい。それらの層は、平坦であっても、パターン化されていてもよい。基材が、有機のパターン化されたホトレジスト膜であってもよい。基材には、3D NAND、MIM、DRAM、又はFeRam技術における誘電体として使用される酸化物の層(たとえば、ZrO2ベースの物質、HfO2ベースの物質、TiO2ベースの物質、希土類酸化物ベースの物質、三元酸化物ベースの物質など)、又は電極として使用される窒化物ベースの膜(たとえば、TaN、TiN、NbN)が含まれていてもよい。それらの開示されたプロセスでは、ウェーハの上に直接、又は、ウェーハの一番上にある層の1層又は2層以上(パターン化された層が基材を形成している場合)の上に直接、Si含有層を蒸着させることができる。さらには、通常の技能を有する当業者のよく認識するところであろうが、「膜(film)」又は「層(layer)」は、本明細書で使用される場合、ある表面の上に載置されるか又は広げられてあるいくつかの物質の厚みを指しており、表面は、トレンチ又はラインであってよい。本明細書及び請求項の全体を通じて、ウェーハ及びその上の各種の付随する層は、基材と呼ばれる。実際に使用される基材は、使用される特定の前駆体実施態様にも依存する。
【0064】
開示されたSi含有前駆体を使用する開示されたALDプロセスは、約200℃以上、好ましくは約550℃以上の温度を有する基材に対して実施するのがよい。開示されたSi含有前駆体を使用する開示されたALDプロセスは、550℃超から約750℃まで、より好ましくは550℃超から約700℃まで、又は550℃超から約650℃までの温度範囲を有する基材に対して実施するのがよい。
【0065】
開示された前駆体を使用する開示されたALDプロセスにおける基材の曝露時間は、1ミリ秒~5分、好ましくは1秒~60秒の範囲であるのがよい。開示された前駆体を使用する開示されたALDプロセスにおける共反応剤の曝露時間は、1ミリ秒~1分、好ましくは100ミリ秒~30秒の範囲であるのがよい。
【0066】
開示されたプロセスが、SiO2膜の熱的ALD、又はSiN膜の熱的ALDであるのがよい。
【0067】
反応チャンバー内部の圧力は、前駆体がその表面と反応するのに適した条件に維持する。たとえば、チャンバー内の圧力は、以下のように維持するのがよい:約0.1mTorr~約1000Torrの間、好ましくは約0.1Torr~約400Torrの間、より好ましくは約1Torr~約100Torrの間、さらにより好ましくは約1Torr~約10Torrの間。
【0068】
反応チャンバーの温度は、基材ホルダーの温度を調節するか、又は反応器の壁温を調節するかのいずれかで、調節することができる。基材を加熱するのに使用されるデバイスは、当業者には公知である。反応器の壁面を加熱することによって、十分な成長速度で、所望の物理的状態及び組成を有する所望される膜が得られるのに十分な温度とする。反応器の壁面を加熱してもよい温度範囲の例を非限定的に挙げれば、約200℃~約1000℃、好ましくは約400℃~約800℃である。反応器の壁面を加熱してもよい、また別の非限定的な温度の例としては、約550℃以上が挙げられる。加熱プロセスを実施する場合、堆積温度の範囲は、約400℃~約800℃、好ましくは約550℃~約750℃、より好ましくは550℃超~約700℃、或いは550℃超~約650℃がよい。
【0069】
開示されたSi含有前駆体に加えて、反応剤又は共反応剤を基材に対して曝露させてもよい。SiO2膜の堆積の場合には、共反応剤が、酸素含有ガスであってよい。酸素含有ガスとしては、酸化剤たとえば、O3、O2、H2O、NO、N2O、NO2、H2O2、Oラジカル、及びそれらの組合せ、好ましくはO3又はO2が挙げられるが、それらに限定される訳ではない。高温(たとえば、約550℃以上)での酸化物堆積の場合、典型的には、O3/O2の混合物が使用される。高温(たとえば、約550℃以上)で形成された酸化ケイ素膜は、フラッシュメモリデバイスの製造に使用することが可能であり、フラッシュメモリデバイスの一部とすることができる。
【0070】
ALDの順序としては、数種の化合物の逐次のパルスが挙げられる。たとえば、表面を、O2/O3、次いでH2Oに曝露させて、表面上でのヒドロキシル基の密度を上げることができる。共反応剤は、プラズマによって、インサイチュー又は別途のいずれでも活性化させることができる。本出願人の見出したところでは、基材の温度が550℃よりも高ければ、O3無しでも、O2が十分な共反応剤となり得る。
【0071】
別な方法として、SiN又はSiONの堆積では、共反応剤が窒素含有ガスであってもよい。窒素含有ガスとしては、以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:NH3、NO、N2O、ヒドラジン、第一級アミンたとえば、メチルアミン、エチルアミン、tertブチルアミン;第二級アミンたとえば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルメチルアミン、ピロリジン;第三級アミンたとえば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリシリルアミン;N2、N2/H2、それらの混合物、好ましくはNH3。共反応剤は、プラズマによって、インサイチュー又は別途のいずれでも活性化させることができる。N2又はN2/H2の場合には、プラズマ活性化が必要である。共反応剤が、NH3、NO、N2O、ヒドラジン、N2プラズマ、N2/H2プラズマ、NH3プラズマ、アミン、及びそれらの組合せから選択されてもよい。
【0072】
酸窒化ケイ素膜を堆積させる場合には、上述の共反応剤を単独又は組み合わせて使用してもよいが、その場合、反応剤を同時に流しても、或いは順次に流してもよい。
【0073】
開示されたALDプロセス又はその流れには、典型的には、パージ工程を設けることによって、堆積させた表面から過剰の共反応剤を除去する工程が含まれるが、それには、不活性ガスを用いて反応器をパージするか、又は基材を、高真空下及び/又はキャリヤーガスカーテンのセクターを通過させる。
【0074】
開示されたSi含有前駆体及び共反応剤は、順次に反応器の中に導入するか、或いは基材に曝露させるのがよい(ALD)。前駆体の導入すなわち曝露と、共反応剤の導入すなわち曝露との間に、不活性ガスを用いて反応器をパージしてもよい。別な方法として、基材を、前駆体に曝露させるための一つの領域から、共反応剤に曝露させるための別の領域へと、移動させてもよい(空間的ALD)。
【0075】
具体的なプロセスパラメーターに応じて、時間の長さを変えて、堆積を実施するのがよい。一般的には、必要とされる厚みを有する膜を製造するのに望ましいか、又は必要な時間、堆積を続けるのがよい。膜の厚みは、その特定された堆積プロセスに応じて、典型的には、原子の単分子層から数百ミクロンまで、好ましくは0.5~100nmの間、より好ましくは1~50nmの間で変化させることができる。堆積プロセスは、所望される膜を得るのに必要なだけ、複数回実施してもよい。
【0076】
ALDタイプのプロセスの非限定的な例の一つにおいては、開示されたSi含有前駆体の気相が、反応器の中に導入されるか、又は基材に曝露され、そこで、Si含有前駆体が、基材の上に、物理吸着又は化学吸着される。次いで、反応器をパージ及び/又は排気することによって、反応器から過剰な組成物を除去するのがよい。所望のガス(たとえば、O3)を反応器の中に導入するか又は基材に曝露させると、そこでそれが、物理吸着又は化学吸着された前駆体と自己抑制的に(in a self-limiting manner)反応する。過剰な還元ガスはすべて、反応器をパージする及び/又は真空にすることによって、反応器から除去する。所望される膜が、Si含有膜であるならば、この2工程プロセスによって、所望の膜厚が得られるか、又は必要とされる厚みを有する膜が得られるまで、繰り返してもよい。
【0077】
開示されたSi含有前駆体を共反応剤としてのO2又はO3酸化剤と共に使用する、開示された熱的ALDプロセスでは、(熱的に成長されたSiO2に対して正規化して)4未満のWER性能を有する高品質なSiO2膜を堆積させることができるが、これについては以下の実施例で説明する。
【実施例】
【0078】
以下の非限定的な実施例を用いて、本発明の実施態様をさらに説明する。しかしながら、これらの実施例が、包括的にすべてを含むものではなく、また本明細書において記述される本発明の範囲を限定するものでもない。
【0079】
以下の実施例において、本明細書において使用されるウェーハはすべて、むきだしのSiウェーハ及び/又はトレンチウェーハである。堆積させる前に、むきだしのSiウェーハを、1%のHF水溶液を用い、2分かけて処理してから、DI H2Oを用いてすすぎ洗いした。トレンチウェーハのクーポンの大きさは、30mm×20mmであり、トレンチウェーハのトレンチの大きさは、250nm×6umである。トレンチウェーハでのアスペクト比(AR)は、10:1より大、好ましくは24:1より大である。ここで使用される基材は、パターンを有するウェーハである。
【0080】
比較例1.気相中におけるBTBASの熱分解試験
熱分解は、高温での化学物質の自己熱分解試験である。熱分解温度では、化学物質が、いかなる共反応剤も無しに、分解を開始する。膜のALDに関しては、その温度が熱分解温度よりも高い場合には、前駆体が分解し、ALDプロセスは、前駆体の熱分解のために、CVDプロセスと区別がつかなくなる。純然たるALDとするためには、パラシチックなCVD反応を防止する目的で、前駆体を、熱分解温度よりも低い温度でのみ、適用することが可能である。
【0081】
BTBASは、次式のビス(tert-ブチルアミノ)シラン(CAS No.:186598-40-3)であって、
【化2】
500℃又は600℃未満の温度で、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、及び二酸化ケイ素膜のALD及び/又はCVDのために従来から使用されてきた液状の化学物質の前駆体である。BTBASには、Siとt-Buとの橋架けをしているSi-NH-C基が含まれているが、これは、2個のSi原子を橋架けしているSi-NH-Si基を有する本明細書で開示されたSi含有前駆体とは同じではない。以下の実施例から、開示されたSi含有前駆体が、BTBASに比較して、予想もされなかった結果を与えることがわかる。
【0082】
BTBASの熱分解試験のための条件は、以下のとおりである。BTBASの流量は2sccmであった;プロセスのバブル流量(bubble flow rate)は35sccmであった;キャリヤーガスのN2の流量は40sccmであった;加工時間は60分であった;加工圧力は5Torrであった;そして基材の温度は、50℃刻みで500~650℃の間で変化させた(すなわち、500℃、550℃、600℃、及び650℃)。堆積膜の厚みは、エリプソメトリーを使用して測定した。温度500℃での堆積膜の厚みは、0nmである。温度550℃での堆積膜の厚みは、4.4nmである。温度600℃での堆積膜の厚みは、40nmである。温度650℃での堆積膜の厚みは、160nmである。
【0083】
気相中でのBTBASの熱分解試験を
図1に示す。見られるように、550℃からわずかに熱分解が起きているが、このことは、550℃を超える温度では、BTBAS前駆体がALDに適していないということを意味している。
【0084】
実施例1.2TMSASの合成及び性質
2TMSASを、以下の工程により合成した。10mTorrの真空で乾燥させた、マグネチックスターラー及び温度計を取り付けた三口の1Lのフラスコを、-70℃の浴の中で冷却させた。このフラスコに、160gの1,1,1,3,3,3,ヘキサメチルジシラザン(HMDS)を仕込んだ。HMDSを冷却して-20℃未満としてから、ジクロロシラン(DCS)ガスを、マスフローコントローラー(MFC)に通して50sccmで、合計して25グラム導入した。次いで、反応液を真空下に保持し、撹拌し、6時間かけて室温にまで温めた。そのようにして得られた粗反応生成物を、次いで、濾過した。その後で、真空により、クロロトリメチルシラン(TMSCl)と過剰のHMDSを除去した。そのようにして残った溶液を、真空蒸留にかけた。反応生成物のH
2Si(NH-SiMe
3)
2を、60mTorr、60~65℃で回収すると、45%の収率で得られた。合成されたH
2Si(NH-SiMe
3)
2のTGAを、
図2aに示す。TGAのグラフは、約150℃で、残留物をわずか(<0.01%)しか残さない、クリーンな蒸発を示している。それに加えて、TGAの後では、TGパンの中には何の物質も残っていなかった。
図2bは、2TMSASの蒸気圧のグラフである。1Torrでの温度は約24℃であり、5Torrでは約48℃である。
【0085】
実施例2.3TMSASの合成及び性質
3TMSASを、以下の工程により合成した。マグネチックスターラー、温度計及び滴下漏斗を取り付けた、乾燥させた三口の1Lのフラスコに、600gの1,1,1,3,3,3,ヘキサメチルジシラザン(HMDS)を仕込み、N2ブランケット下、氷/水浴の中で冷却した。HMDS溶液の中に、温度を10℃未満に維持しながら、100gのSiHCl3を滴下した。溶液を、夜間に12時間かけて、徐々に室温にまで温めさせた。次いで、その溶液を水浴から油浴へ移し、還流させながらその溶液を20時間加熱した。その後で、真空により、クロロトリメチルシラン(TMSCl)と過剰のHMDSを除去した。その反応生成物を真空下に蒸留し、反応生成物を60mTorr、85~90℃で回収すると、60%の収率で得られた。その分子量は、292g/molである。
【0086】
合成された3TMSASのTGAを、
図3aに示す。そのTGAのグラフは、185℃で、残留物をわずか(<0.01%)しか残さない、クリーンな蒸発を示している。それに加えて、TGAの後では、TGパンの中には何の物質も残っていなかった。
【0087】
合成された3TMSASの蒸気圧を、
図3bに示す。1Torrでの温度が46℃、5Torrでは78℃である。
【0088】
実施例3.気相中における2TMSASの熱分解試験
2TMSASの熱分解試験のための条件は、以下のとおりである。サンプルの2TMSASの流量は2sccmであった;プロセスのバブル流量は35sccmであった;キャリヤーガスのN2の流量は40sccmであった;加工時間は60分であった;加工圧力は5Torrであった;そして基材の温度は、50℃刻みで600~750℃の間で変化させた(すなわち、600℃、650℃、700℃、及び750℃)。堆積膜の厚みは、エリプソメトリーを使用して測定した。600℃及び650℃の温度では、目に見えるような堆積膜は観察されなかった;温度700℃での堆積膜の厚みは、およそ31nmであり;温度750℃での堆積膜の厚みは、およそ107nmであった。
【0089】
気相中での2TMSASの熱分解試験を
図4に示す。見られるように、650℃で始めた熱分解試験で2時間経過後に、わずかな膜の生成が観察された。2TMSASは、600℃(熱分解温度)からわずかに熱分解の堆積が始まったが、これは、BTBASよりも50℃高い。このことは、2TMSASのALD温度ウィンドウがBTBASよりも50℃高い可能性を意味している。ここでは、熱分解堆積は、CVDプロセスである。したがって、熱分解温度よりも高い温度では、熱分解堆積のCVD挙動があるために、純粋なALDを得られないことがある。熱分解の開始温度ではALDが可能となり得るが、その理由は、ALDサイクルの際の前駆体のパルス時間が、熱分解の実験よりははるかに短いからである(たとえば、30秒対60分)。したがって、ALDプロセスの際の熱分解による堆積量は無視することができる。
【0090】
2TMSASの熱分解温度をBTBASのそれと比較すると、2TMSASの熱分解温度が約600℃であり、それは、BTBASのそれの550℃よりは、50℃高い。したがって、2TMSASは、550℃よりも高い高温酸化(HTO)ALDプロセスに適した前駆体であり、その温度では、BTBASはもはや不適切である。それに加えて、650℃でのパラシチックCVD速度が十分に低いので、2TMSASが、いくつかのALD用途で、(前記ALD用途が、最終の膜に寄与するこのレベルの加熱CVDに耐えうるのであれば)最高で650℃まで使用可能である。
【0091】
実施例4.気相中における3TMSASの熱分解試験
3TMSASの熱分解試験のための条件は、以下のとおりである。サンプルの3TMSASの流量は2sccmであった;プロセスのバブル流量は35sccmであった;キャリヤーガスのN2の流量は40sccmであった;加工時間は60分であった;加工圧力は5Torrであった;そして基材の温度は、50℃刻みで600~750℃の間で変化させた(すなわち、600℃、650℃、700℃、及び750℃)。堆積膜の厚みは、エリプソメトリーを使用して測定した。温度600℃及び650℃での堆積膜の厚みは0nmであり;温度700℃での堆積膜の厚みは1.2nmであり;温度750℃での堆積膜の厚みは10.1nmである。
【0092】
気相中での3TMSASの熱分解試験を
図5に示す。見られるように、700℃からの熱分解試験の1時間後では、わずかな膜の形成が観察された。3TMSASは、700℃(熱分解温度)からわずかに熱分解の堆積が始まったが、これは、BTBASよりも150℃高い。このことは、3TMSASのALD温度ウィンドウがBTBASよりも150℃高い可能性を意味している。ここでは、熱分解堆積は、CVDプロセスである。したがって、熱分解温度よりも高い温度では、熱分解堆積のCVD挙動があるために、純粋なALDが得られない。熱分解の開始温度ではALDが可能となり得るが、その理由は、ALDサイクルの際の前駆体のパルス時間が、熱分解の実験よりははるかに短いからである(たとえば、30秒対60分)。したがって、ALDプロセスの際の熱分解による堆積量は無視することができる。
【0093】
3TMSASの熱分解温度をBTBASのそれと比較すると、3TMSASの熱分解温度が約700℃であり、それは、BTBASのそれの550℃よりは、150℃高い。したがって、3TMSASは、550℃よりも高い高温酸化(HTO)ALDプロセスに適した前駆体であり、その温度では、BTBASはもはや不適切である。
【0094】
実施例5.650℃、600℃、及び500℃での、O3を用い、2TMSASを使用したALD。
650℃、600℃、及び500℃での、O3を用い、2TMSASを使用したALDの条件は以下のとおりである。2TMSASのためのパルス/パージ時間は10秒/60秒であった;サンプルの2TMSASの流量は2sccmであった;加工バブル流量は35sccmであった;加工圧力は5Torrであった;ALDのサイクル数は200であった;O3のパルス/パージ時間は15秒/30秒であった;O3の流量は100sccmであった;ウェーハは、1%HF水溶液を用いてクリーニングした。エリプソメトリーを使用して堆積膜の厚みを測定したところ、650℃、600℃、500℃で、それぞれ、47nm、41nm、及び18nmである。
【0095】
図6は、2TMSASについての、O
3を用い、600℃、650℃、及び500℃での、ALDの膜厚み(nm)対ウェーハ上の堆積位置(mm)のグラフである。共反応剤O
3を用い650℃での2TMSASは、共反応剤O
3を用い600℃での2TMSASよりは厚い膜を与え、そして共反応剤O
3を用い600℃での2TMSASは、650℃でのそれよりは平坦な膜を与えるが、このことは、600℃での2TMSASが、ほとんど均質な膜厚みを与えることを意味している。500℃で形成させた膜に比較して、共反応剤O
3を用いた2TMSASは、共反応剤O
3を用い500℃での2TMSASよりも、600℃及び650℃では、より厚い膜を与える。さらに、500℃で形成させた膜は、極めて平坦であり、このことは、500℃での2TMSASが、均質な膜厚みを与えたことを意味している。したがって、高温ALDにおいては、O
3を共反応剤として使用することができる。
【0096】
実施例6.共反応剤O
2を用い、650℃での3TMSASのALD
図5に見られるように、650℃というのは、3TMSASを用いたときに熱分解がまったく起きない温度である。O
2を用い650℃での3TMSASのALDの条件は、次のとおりである。3TMSASのためのパルス/パージ時間は10秒/60秒であった;サンプルの3TMSASの流量は2sccmであった;加工バブル流量は35sccmであった;加工圧力は5Torrであった;ALDのサイクル数は200であった;O
2のパルス/パージ時間は15秒/30秒であった;O
2の流量は100sccmであった;ウェーハは、1%HF水溶液を用いてクリーニングした。堆積膜の厚みは、エリプソメトリーを使用して測定した。
【0097】
図7は、3TMSASについての、O
2及びO
3を用い、650℃での、ALDの膜厚み(nm)対ウェーハ上の堆積位置(mm)のグラフである。共反応剤O
3と合わせた3TMSASでは、共反応剤O
2と合わせた3TMSASよりも、厚い膜が得られる。オゾンが、O
2よりも厚いプロファイルを与えた。O
2を用いた場合のWERは、7未満(およそ6.50)であって、O
3を用いた場合(4)よりも少し高い。したがって、高温ALDにおいては、O
2を共反応剤として使用することができる。
【0098】
実施例7.FTIR及びXPS:SiO
2のALD(3TMSAS対BTBAS)
BTBASが、550℃未満の温度では、SiO
2のALDを与えるが、550℃を超える温度では、パラシチックCVDが原因で、SiOCNの生成をもたらすということは公知である。SiO
2のALDの後で、550℃よりも高い温度でのBTBASのFTIRピークは、
図8に見られるように、500℃の場合のFTIRピークと比較するとシフトしているが、このことは、堆積された膜の組成が変化したことを示している。
図9に見られるように、600℃でBTBASを熱分解させた後では、BTBASが分解して、Si、N、C、及びOとなっている。
図8は、650℃での3TMSASのFTIRと、500℃でのBTBASのFTIRとが似ているということを示しているが、これは、パラシチックCVDが生成していないということを示唆している。したがって、650℃での3TMSASは、SiO
2のALDを与えている。
図10は、750℃での3TMSASの熱分解の後のXPSの結果であり、3TMSASが分解して、Si、O、C、及びNとなることを示す。
【0099】
図11a~
図11cはそれぞれ、600℃、650℃、及び700℃で、3TMSASを使用したSiO
2膜のALDの後での、XPSの結果である。600℃、650℃、及び700℃でのXPSの結果は、ALD堆積されたSiO
2膜の中には、SiとOだけが存在しているということを示している。したがって、SiO
2のALDのための堆積前駆体として使用された3TMSASは、約500℃を超える温度で、コンフォーマルな成長を維持することができる。さらには、SiO
2のALDのための堆積前駆体として使用された3TMSASは、最高約700℃までの温度で、コンフォーマルな成長を維持することができる。FTIRの結果とXPSの結果とを組み合わせると、ALD前駆体として使用された3TMSASが、約500℃~約700℃、又は約600℃~約700℃の温度範囲では、SiO
2のALDを完全に遂行できると結論づけられる。ALD前駆体として使用された3TMSASは、約700℃の温度では、SiO
2のALDを完全に遂行する。
【0100】
図12a~
図12cはそれぞれ、500℃、550℃、及び650℃で、BTBASを使用したSiO
2膜のALDの後での、XPSの結果である。500℃では、BTBASは、C及びNが検出できない、SiO
2膜のALDを与える。550℃では、Nが現れるが、このことは、SiO
2膜の中でパラシチックCVDが始まりかかっていることを意味している。650℃でのXPSの結果は、Si、O、N、及びC元素を示しているが、これは、堆積された膜の組成が変化し、パラシチックCVDが形成されていることを示唆している。
図9を参照すると、BTBASが600℃では既に分解されているので、BTBASは、ALD前駆体としては、約600℃以下の温度での使用に限定される。
図12bを参照すると、BTBASは、ALD前駆体としては、約550℃以下の温度での使用に限定されるのがよい。
【0101】
実施例8.O
3を用い、650℃及び600℃での、2TMSASを使用したSiO
2膜のALDのXPS分析
図13aは、650℃で、2TMSASを使用したSiO
2膜のALDの後でのXPSの結果である。
図13bは、600℃で、2TMSASを使用したSiO
2膜のALDの後でのXPSの結果である。
図13cは、500℃で、2TMSASを使用したSiO
2膜のALDの後でのXPSの結果である。
図13dは、加熱法SiO
2のXPSの結果である。
【0102】
600℃及び650℃についてのXPSの結果は、ALDで堆積されたSiO
2膜の中にはSi及びOだけが存在していることを示しているが、これは、
図13dに示した加熱によるSiO
2のXPSの結果に似ている。ALDのSiO
2膜の中の原子比を、次の表2に示した。
【0103】
【0104】
したがって、SiO2のALDのための堆積前駆体として使用される2TMSASは、600℃~650℃の温度でのコンフォーマルな成長を維持することが可能である。500℃でのSiO2のALDのための堆積前駆体として使用された2TMSASは、コンフォーマルな成長を遂行できていない。さらには、SiO2のALDのための堆積前駆体として使用された2TMSASは、最高約650℃までの温度で、コンフォーマルな成長を維持することができる。XPSの結果に基づけば、ALD前駆体として使用された2TMSASは、約600℃~約650℃の温度範囲では、SiO2の完全なALDを遂行すると結論される。ALD前駆体として使用された2TMSASは、約600℃の温度では、SiO2のALDを完全に遂行する。
【0105】
実施例9.各種の温度での、24:1トレンチにおける、O3を用いた2TMSASのステッブカバレージ(SC)
表3に、それぞれ600℃、650℃、及び500℃で、ALDのための前駆体として2TMSASを使用した場合の、24:1トレンチにおける、頂部、中間部、及び底部の壁面での、SEM画像から得られたステッブカバレージ(%)の結果を示す。トレンチをつけたウェーハはすべて、ALDチャンバーの中で同じ位置、すなわちALDチャンバーの入口から350~380mmのところに位置させた。見られるように、600℃でのステッブカバレージは、500℃の場合よりも良好であり、そして650℃でのステッブカバレージは、600℃及び500℃の場合よりも良好であるが、このことは、2TMSASが、高温での堆積、たとえば650℃のALDに適していることを意味している。
【0106】
【0107】
実施例10.3TMSASとBTBASとの間での、側壁のステッブカバレージ(SC)の比較
図14は、SiO
2膜の3TMSASのALDにおける、側壁のステッブカバレージ(%)対温度のグラフである。500℃では、3TMSASから堆積された膜は、SiO
2の純粋なALDであった。温度を500℃より高く、たとえば550℃とすると、BTBASから堆積された膜は、コンフォーマルではなくなるが、その理由は、500℃を超える温度は、
図1に見られるように、BTBASの自己分解温度よりも上であり、CVD成分が現れているからである。650℃では、BTBASから堆積された膜は、完全に、パラシチックなCVDプロセスを介して作製されていた。その一方で、3TMSASは、500℃を超える温度、さらにはほぼ700℃の温度でもコンフォーマルな成長を示すことを維持しているが、このことは、3TMSASが、500~700℃の間の温度範囲で、完全なALDを遂行する(すなわち、パラシチックのCVDプロセスが存在しないか、又はALD膜の品質に影響を与えない程度に十分に低い)ことを示唆している。
【0108】
実施例11.2TMSASについての各種の温度での正規化したWER
図15は、SiO
2膜の2TMSASのALDについての、各種の温度での正規化したWERのグラフである。WERは、熱的に成長させたSiO
2を用いて正規化される。WERは、膜品質についての、代替的な測定法である。WERが低いほど、膜の品質は良好である。別の見方をすると、そのWERが、熱的に成長させたSiO
2のWERに近いほど(熱的に成長させたSiO
2におけるWERを1とする)、そのSiO
2膜の品質が良好である。WERが低いほど、堆積の後でのクリーニングが良好となるが、その理由は、WERが低いことによって、クリーニングの際の、堆積された膜のロスが少なくなるからである。見られるように、温度が高いほど、WERが低い。さらには、温度が高いほど、ALDの厚みが良好になり(表3参照)、そして以下の実施例に見られるように、ALDのサイクルあたりの成長(growth per cycle=GPC)が良好となる。したがって、2TMSASは、高温、たとえば約600℃~約650℃の間の温度では、ALD前駆体として使用するのに適している。
【0109】
実施例12.3TMSASとBTBASとの間での湿式エッチング速度(WER)の比較
図16は、3TMSASの、SiO
2膜のALDにおける、湿式エッチング速度(WER)(熱的に成長させたSiO
2正規化)対温度のグラフである。WERは、膜品質についての、代替的な測定法である。WERが低いほど、膜の品質は良好である。別の見方をすると、そのWERが、熱的に成長させたSiO
2のWERに近いほど(熱的に成長させたSiO
2におけるWERを1とする)、そのSiO
2膜の品質が良好である。WERが低いほど、堆積の後でのクリーニングが良好となるが、その理由は、WERが低いことによって、クリーニングの際の、堆積された膜のロスが少なくなるからである。温度500℃でのBTBASのWERは、この温度での3TMSASよりは良好である。しかしながら、3TMSASは、700℃では、その適用することが可能な最大温度(この場合、およそ500℃)でのBTBASよりも良好な膜品質を与える。見られるように、3TMSASの700℃でのWERは、4未満である。
【0110】
実施例13.650℃及び600℃における、2TMSASと3TMSASとの間のWERの比較
図17は、トリスジメチルアミノシラン(3DMAS)、ヘキサクロロジシラン(HCDS)、及びBTBASを用いた、SiO
2膜のALDでの、2TMSAS及び3TMSASの正規化されたWERの比較である。温度650℃での2TMSASのWERは、比較対象の3種のすべてのシラン、3DMAS(650℃)、HCDS(650℃)、及びBTBAS(500℃)よりも低い。650℃での3TMSASのWERは、650℃での3DMAS、650℃でのHCDSのそれと同等ではあるが、500℃でのBTBASよりは低く、したがって、650℃での2TMSAS及び3TMSASは、500℃でのBTBASよりは良好な膜品質を与える。したがって、2TMSAS及び3TMSASは、高温ALDには適している。
【0111】
実施例14.O
3を用いた場合の、2TMSAS及び3TMSASと、BTBAS、3DMAS及びHCDSとでのGPCの比較
GPCは、各種の条件、たとえば出発基材、堆積温度などに依存する。そのGPCが、1サイクルあたり1層の単分子層という理論的最大値より低い場合には、その結果、膜が粗くなり、膜が閉じるのが遅くなる可能性があり、それによって、特に薄い膜(ほぼ5nmより薄い)となって、局所的な欠陥たとえばピンホールを生じやすくなる。
図18は、2TMSAS(650℃)及び3TMSAS(650℃)のGPCと、HCDS(650℃)、3DMAS(650℃)、及びBTBAS(500℃)のGPCとの比較である。温度650℃での2TMSASのGPCは、比較対象の3種のすべてのシラン、3DMAS(650℃)、HCDS(650℃)、及びBTBAS(500℃)のそれらよりも高い。温度650℃での3TMSASのGPCは、500℃でのBTBASとは同等であるが、650℃での3DMAS及び650℃でのHCDSのそれらよりは高い。
【0112】
実施例15.O3を用い、650℃及び600℃での2TMSASのトレース量の不純物の分析
トレース量の不純物の分析は、650℃及び600℃で2TMSASを用いた、20nmのALD膜についての二次イオン質量分析計(SIMS)により実施した。表4に列記した結果は、600℃及び650℃での2TMSASのALD膜では、H、C、及びNの濃度が低いということを示している。比較のために、各種の温度での3TMSAS及びBTBASのトレース量の不純物も列記している。見られるように、2TMSASの膜は、3TMSAS及びBTBASの膜に比較して、高い純度を有している。
【0113】
【0114】
実施例16.O3を用い、650℃及び600℃での2TMSASの表面粗さの分析
表5は、原子間力顕微鏡法(AFM)によって測定した表面粗さの結果(二乗平均平方根(RMS))である。650℃での2TMSASの膜は、極めて滑らかである。
【0115】
【0116】
実施例17.O
2を用い、650℃での2TMSASのALD
図4に見られるように、650℃というのは、2TMSASを用いたときに熱分解がまったく起きない最高の温度である。O
2を用い650℃での2TMSASのALDの条件は、次のとおりである。2TMSASのためのパルス/パージ時間は10秒/60秒であった;サンプルの2TMSASの流量は2sccmであった;加工バブル流量は35sccmであった;加工圧力は5Torrであった;ALDのサイクルは200サイクルであった;O
2のパルス/パージ時間は15秒/30秒であった;O
2の流量は100sccmであった;ウェーハは、1%HF水溶液を用いてクリーニングした。堆積膜の厚みは、エリプソメトリーを使用して測定したが、それはおよそ11.5nmである。
【0117】
図19aに、O
2を用い、650℃での2TMSASのALDを示す。比較のために、O
3を用い650℃での2TMSASのALDも示している。O
2を用い650℃での2TMSASのGPCは、O
3を用い650℃での2TMSASの3.7分の1である。
図19bは、650℃で、O
2を用いた、2TMSASを使用したSiO
2膜のALDのXPS分析である。XPS分析の示すところでは、O
2を用い2TMSASを使用して堆積させたALD膜の中には、N及びCが存在している。たとえば、50秒のエッチング時間では、Siが59%、Oが27.7%、Nが7.2%、そしてCが6.1%である。O
2の酸化力が、O
3のそれよりも低いために、2TMSAS及びO
2を用いたALDには、酸化されていないN及びCがいくぶんかは含まれていて、そのために、ALD膜の中に残っている。このことは、ある程度の量のN及びCを必要とするALD膜では、好ましいことがある。
【0118】
実施例18.O
3を用いた2TMSASのALDの、650℃でのパルス-時間依存性
図20は、650℃での、O
3のパルス時間依存性を用いた、2TMSASの、基材の位置全体にわたるALD膜厚みである。5秒及び15秒のO
3パルスを用いても、ALDの膜厚みプロファイルはほとんど同じである。このことは、SiO
2膜のALDに2TMSASを添加するには、5秒のO
3パルスが適しているということを意味しており、それにより、15秒のO
3パルスに比較して、顕著なコスト低減がもたらされるであろう。
【0119】
実施例19.650℃での、O
3の密度依存性を用いた2TMSASのALD
図21は、650℃での、O
3の密度依存性を用いた、2TMSASの、基材の位置全体にわたるALD膜厚みである。50g/m
3及び250g/m
3のO
3を用いた場合、ALDの膜厚みのプロファイルは、ほとんど同じである。このことは、SiO
2膜のALDに2TMSASを添加するには、50g/m
3のO
3が適していることを意味しており、それによって、顕著なコスト低減がもたらされるであろう。
図22aは、650℃で、50g/m
3のO
3密度を用い、2TMSASを使用した、SiO
2膜のALDの後のXPSの結果である。
図22bは、650℃で、250g/m
3のO
3密度を用い、2TMSASを使用した、SiO
2膜のALDの後のXPSの結果である。両方の図に見られるように、SiO
2膜には、40%のケイ素及び60%の酸素が含まれ、N及びCは存在しない。表6は、SEM画像から得られた、650℃で、24:1トレンチの中でのSiO
2のALDでのO
3密度依存性を有する、2TMSASのステッブカバレージを示している。トレンチ付きウェーハは、ALDチャンバーの入口から35~38cmのところに置かれていた。それらの結果は、約50g/m
3及び約250g/m
3のO
3密度でのステッブカバレージが、ほとんど同じであるということを示している。すべてのXPSの結果及びステッブカバレージの結果が、50g/m
3のO
3が、SiO
2膜のALDに2TMSASを添加することが適しており、それによって、250g/m
3のO
3の場合に比較して、顕著なコストの低減がもたらされるであろうということを示している。
【0120】
【0121】
本発明の特質を説明する目的で、本明細書において記述し、説明してきた、詳細、原料、工程、及び部材の配列には、添付の請求項で示した本発明の原理及び範囲から逸脱することなく、当業者によって多くのさらなる変更が可能であることは理解されたい。したがって、本発明は、上述の実施例における特定の実施態様及び/又は添付の図面に限定されるものではない。
【0122】
本発明の実施態様を示し記述してきたが、当業者であれば、本発明の精神及び教示から逸脱することなく、それらの修正・変更を実施することができるであろう。本明細書において記述された実施態様は、単なる例示にすぎず、本発明を限定するものではない。組成及び方法については多くの変更、修正が可能であり、それらは本発明の範囲内である。したがって、保護の範囲は、本明細書において記載された実施態様には限定されず、以下の請求項によってのみ限定されるが、その範囲には、請求項の主題の等価物すべてが含まれる。