(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】エンドトキシンの測定のための、改良された細菌エンドトキシン試験
(51)【国際特許分類】
G01N 33/579 20060101AFI20221026BHJP
G01N 33/569 20060101ALI20221026BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221026BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20221026BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20221026BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
G01N33/579
G01N33/569 B
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K9/08
A61K47/26
A61K47/12
(21)【出願番号】P 2020194005
(22)【出願日】2020-11-24
(62)【分割の表示】P 2018524545の分割
【原出願日】2016-07-27
【審査請求日】2020-12-21
(32)【優先日】2015-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ドイッチマン スヴェン
(72)【発明者】
【氏名】ラング ピエール
(72)【発明者】
【氏名】フォン ヴィンツィンゲローデ フリードリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ツェーリンガー ウルリッヒ
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-004758(JP,A)
【文献】Low Endotoxin Recovery (LER):概説,LAL Update(日本語版),30(2),生化学工業株式会社,2014年10月,1-8
【文献】KANG, Melissa,Association of plasma endotoxin, inflammatory cytokines and risk of colorectal adenomas,BMC Cancer,BioMed Central,2013年,13:91,1-8,http://www.biomedcentral.com/1471-2407/13/91
【文献】エンドトキシン試験法,第十八改正日本薬局方,PMDA,pp.99-102
【文献】Scientific Support, U.S.,Overcoming Assay Inhibition or Enhancement Technical Tips,Pharma&Biotech,Lonza,2002年,pp.1-3
【文献】Denise Bohrer,Interference in the limulus amebocyte lysate assay for endotoxin determination in peritoneal dialysis fluids and concentrates for hemodialysis,Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis,2001年,26,pp.811-818
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体を含む試料のリムルスアメーバ様細胞溶解物(LAL)アッセイ法におけるエンドトキシンマスキングの低下のためのおよび/またはエンドトキシン低回収(LER)作用を抑えるための方法であって、以下の順序で以下の段階:
(a)マグネシウムイオンを該試料に添加する段階、
(b)該試料を希釈する段階、および
(c)5.7~ 8.0のpH値を有する該試料を、エンドトキシンフリー水溶液に対して透析する段階
を含
み、該エンドトキシンマスキングおよび/または該LER作用が、
(i)該試料中に存在するエンドトキシン結合タンパク質;および/または
(ii)配合成分または緩衝液構成成分
によって引き起こされ、該配合成分または緩衝液構成成分が、クエン酸緩衝液またはリン酸緩衝液と組み合わされている、両親媒性化合物を含み、かつ該両親媒性化合物がポリソルベートである、前記方法。
【請求項2】
前記試料が製剤試料である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ポリソルベートがポリソルベート80である、請求項
1記載の方法。
【請求項4】
段階(a)における前記マグネシウムイオンが、MgCl
2の形態で添加される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
段階(a)において、マグネシウムイオンが、10~100mMの最終濃度まで添加される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
マグネシウムイオンが25~75mMの最終濃度まで添加される、請求項
5記載の方法。
【請求項7】
前記抗体が、ポリソルベート80およびクエン酸緩衝液と共に製剤化される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記抗体が、25mM(±10%)のクエン酸ナトリウム緩衝液および700mg/l(±10%)のポリソルベート80と共に製剤化され、6.0~6.5のpH値を有する、請求項
7記載の方法。
【請求項9】
抗体を含む試料のアリコートに公知の量のエンドトキシンをスパイクすることによる、エンドトキシン低回収(LER)陽性対照の作製をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記LER陽性対照が、請求項1記載の方法の段階(a)~(c)が実施されなかった場合に、LER作用を示す、請求項
9記載の方法。
【請求項11】
前記エンドトキシン低回収(LER)陽性対照の作製が、エンドトキシンをスパイクされたアリコートを振とうすることを含む、請求項
9記載の方法。
【請求項12】
前記アリコートを45分間~2時間振とうすることを含む、請求項
11記載の方法。
【請求項13】
前記エンドトキシン低回収(LER)陽性対照の作製が、
前記抗体を含む試料のアリコートに公知の量のエンドトキシンをスパイクし、エンドトキシンをスパイクされた試料のアリコートを60分間~2時間振とうすることによる、請求項
9記載の方法。
【請求項14】
前記エンドトキシン低回収(LER)陽性対照の作製が、抗体を含む試料の前記アリコートを対照エンドトキシン標準品(CSE)でスパイクすることを含む、請求項
9記載の方法。
【請求項15】
前記アリコートにスパイクされたCSEが、所定の濃度である、請求項
14記載の方法。
【請求項16】
前記所定の濃度が、0.5または5 EU/mlである、請求項
15記載の方法。
【請求項17】
前記抗体が治療的抗体である、請求項1記載の方法。
【請求項18】
前記抗体が抗CD20抗体リツキシマブである、請求項
17記載の方法。
【請求項19】
段階(b)において、前記試料のpH値が、10~50mMのTris/HCl緩衝液pH6.0~9.0で試料を希釈することによって調整される、請求項1記載の方法。
【請求項20】
前記試料のpH値が、10~50mMのTris/HCl緩衝液pH6.0~8.0で該試料を希釈することによって調整される、請求項
19記載の方法。
【請求項21】
段階(b)において試料が1:10の比で希釈される、請求項1記載の方法。
【請求項22】
段階(c)における透析の間、試料が6.0~8.0のpH値を有する、請求項1記載の方法。
【請求項23】
段階(c)において透析が室温で20~24時間を要する、請求項1記載の方法。
【請求項24】
段階(c)における透析のために、分子量カットオフ値が10kDaである膜が使用される、請求項1記載の方法。
【請求項25】
段階(c)における透析のために酢酸セルロース膜が使用される、請求項1記載の方法。
【請求項26】
段階(c)における透析のために水が2回交換される、請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において、エンドトキシンマスキングに起因するエンドトキシン低回収(low endotoxin recovery;LER)作用を抑える細菌エンドトキシン試験(BET)試料調製方法が報告される。
【背景技術】
【0002】
タンパク質治療物質(例えばモノクローナル抗体)は、しばしば、遺伝子形質転換された真核細胞および原核細胞、例えば細菌を用いて作製される。大腸菌(Escherichia coli)のような急速に増殖する細菌が、細菌による生産のために使用される。しかし、組換えタンパク質の増加および培養の間、毒性の高いリポ多糖(LPS)が培地中に分泌される。これらの構成成分は、細菌エンドトキシン(短いエンドトキシン)と呼ばれる。グラム陰性細菌は、細胞壁の不可欠な構成成分としてLPSを有している。グラム陰性細菌細胞は、約3.5×105個のLPS分子を含み、これらは合計で約4.9μm2の面積を占めている(Rietschel, 1994, FASEB J. 8:217-225(非特許文献1))。大腸菌(E. coli)の場合、LPSは細菌細胞表面全体の約4分の3に相当するということになる。グラム陰性細菌種の約10,000CFU(コロニー形成単位)が、1エンドトキシン単位(EU)に相当する(Rietschel, 1994, FASEB J. 8:217-225(非特許文献1))。EUは、エンドトキシンまたはLPSを意味する; 使用されるLPSによるが、1EUは、100pg LPSにほぼ等しい(1EU≒100pg LPS)。しかし、製品が組換え手段によって製造されない場合でも、大半の使用される試薬は、それらの製造が無菌条件下またはさらに滅菌条件下で行われることはめったにないため、エンドトキシンで汚染されている。したがって、LPSは、薬剤の製造時に滅菌条件および/または無菌条件を維持できない場合、いたるところで生じ得る汚染物質である。公知のすべての細菌化合物の内で、エンドトキシンは、哺乳動物に対して最も毒性が高い天然化合物の内の1つである。グラム陰性細菌の細胞壁中に存在するLPSは、ヒト血流に入った場合の発熱の誘発を含む、重大な免疫活性化を引き起こすことが公知である。LPSは、心血管系およびリンパ系にそれぞれ入った場合、極端に低い濃度(ピコグラム範囲)でせん妄作用を引き起こす。不運にも、細菌エンドトキシンは熱安定性であり、それらの毒性は、細菌細胞の存在にまったく関係していない。タンパク質治療物質はみな、それらの製造方法とは無関係に、極微量の細菌エンドトキシン(いわゆる「天然に存在するエンドトキシン」、NOE)で汚染されていると予測すべきか、またはみなすべきであることもまた、一般に公知である。したがって、エンドトキシン汚染は、依然として、治療的モノクローナル抗体のような薬剤の製造にとっての継続的な難題である。このことは、2012年6月に食品医薬品局(FDA)によって発行された「Guidance for Industry, pyrogen and endotoxin testing」(非特許文献2)の中で極めてはっきりと、強調して概説されている。
【0003】
(モノクローナル抗体のような)注射可能なタンパク質治療物質がヒト使用のために安全であることを確実にするためには、エンドトキシン試験を行わなければならない。一般に、エンドトキシン試験は、ゲル化法、比色法、または比濁法のリムルスアメーバ様細胞溶解物(LAL)技術(LALアッセイ法またはLAL試験とも名付けられている)を用いる、米国薬局方<85>、欧州薬局方2.6.14、または日本薬局方4.01の公定書収載の方法を用いて実施される。LALアッセイ法の公定書収載の名称は、細菌エンドトキシン試験(BET)である。BETは、所与の試料または物質中の、安全ではないレベルのエンドトキシン、特にグラム陰性細菌エンドトキシンの存在を検出するのに使用されている。
【0004】
LALアッセイ法は、希釈した試験試料を陽性対照と共に用いてルーチン的に実施され、この陽性対照は、公知の量の対照エンドトキシン標準品(CSE)がスパイクされた試料である。CSEは、(例えば、Lonza、Associates of Cape Cod, Inc.(ACC)またはCharles River Laboratories International, Inc.によって供給されている)規定の形態の市販されているエンドトキシンである。公定書収載のLALアッセイ法の方法の条件によれば、CSEは、50~200%という許容される回収率を達成するように、非干渉濃度(NIC)で希釈試料にスパイクされる。このアプローチは、薬学的製剤の試料マトリックスの構成成分ならびに保存条件が無希釈の製品試料中に存在するエンドトキシンのLAL反応性に強い影響を与える可能性があることは認識できていない。無希釈の製品試料にCSEのようなエンドトキシンがスパイクされ、その後にLALアッセイ法が行われる場合、ある種の生物学的製品においてエンドトキシン低回収(<50%)が観察された。このようなエンドトキシン低回収は、製品の配合が、界面活性剤のような両親媒性化合物を含む場合に、特に観察された。界面活性剤は、治療的タンパク質を可溶化するために、製品に添加される。このエンドトキシンのマスキングの結果として、LPS汚染が少ない場合に特に、エンドトキシンの検出が顕著に低下する。この現象は、スパイク後の試料希釈によってエンドトキシン回収を増やすことができない場合、「エンドトキシンマスキング」と呼ばれている。
【0005】
アッセイ法の阻害および/または向上を抑えるための、LALアッセイ法に関する様々な試料前処理が公知である。しかし、現在のところ、これらの試料前処理は、満足な結果をもたらしていない。したがって、エンドトキシンマスキングが原因でLALアッセイ法によって検出することができないエンドトキシ汚染が、薬剤の製造時に起こるというリスクが依然としてある。現在の知識に基づくと、以下の2つの異なるタイプのエンドトキシンマスキングが存在する:
1)試料中に存在するエンドトキシン結合タンパク質が原因で生じるエンドトキシンマスキング(「タンパク質マスキング」、Petsch, Anal. Biochem. 259, 1998, 42-47(非特許文献3))。例えば、例としてヒトリポタンパク質Apo A1、リゾチーム、リボヌクレアーゼA、またはヒトlgGとのタンパク質-エントドキシン凝集物の形成は、エンドトキシンのLAL反応性を低下させることが周知である(Emancipator, 1992; Petsch, Anal. Biochem. 259, 1998, 42-47(非特許文献4))。
2)薬学的製品中にしばしば存在するある種の配合成分または緩衝液構成成分が原因で生じるエンドトキシンマスキング。例えば、ポリソルベートとクエン酸またはリン酸のいずれかとの組合せが特に原因となって生じるエンドトキシンマスキングは、「エンドトキシン低回収」またはLERと呼ばれている(Chen, J. and Williams, K. L., PDA Letter 10, 2013, 14-16(非特許文献5)、Williams, American Pharmaceutical Review, October 28, 2013: Endotoxin Test Concerns of Biologics(非特許文献6))。エンドトキシンマスキングはまた、他の任意の緩衝液構成成分および非イオン系界面活性剤またはそれらの組合せが原因で生じる場合もある。
【0006】
LER作用が原因で、製造時に起こる潜在的なエンドトキシン汚染は、従来のLALアッセイ法が使用される場合には依然として過小評価されるか、または検出されない。LER作用は、薬学的製品にとっての継続的な難題である(Hughes, BioPharm. Asia March/April 2015, 14-25(非特許文献7))。
【0007】
したがって、本発明の根底にある技術的課題は、LER作用を抑えるための手段および方法の提供である。
【0008】
この技術的課題は、下記に詳述する本発明の方法によって克服された。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Rietschel, 1994, FASEB J. 8:217-225
【文献】2012年6月、食品医薬品局(FDA)、Guidance for Industry, pyrogen and endotoxin testing
【文献】Petsch, Anal. Biochem. 259, 1998, 42-47
【文献】Emancipator, 1992; Petsch, Anal. Biochem. 259, 1998, 42-47
【文献】Chen, J. and Williams, K. L., PDA Letter 10, 2013, 14-16
【文献】Williams, American Pharmaceutical Review, October 28, 2013: Endotoxin Test Concerns of Biologics
【文献】Hughes, BioPharm. Asia March/April 2015, 14-25
【発明の概要】
【0010】
本明細書において、エンドトキシンを定量するための改良されたLALアッセイ法が報告される。この改良されたLALアッセイ法は、両親媒性マトリックスがエンドトキシン測定を妨害する場合(Low-Endotoxin-Recovery; LER)に特に有用である。
【0011】
特に、本発明において、例えばMgCl2の形態のマグネシウムイオンを試料に添加すること; 試料を希釈すること; および5.7~8.0のpH値を有する試料を透析することを連続して実施することによって、LER作用を成功裡に抑えることができることが、意外にも見出された。または、言い換えると、本明細書において報告される試料調製方法は、LALアッセイ法におけるLER作用を抑えるために適している。
【0012】
より具体的には、本発明において、抗体を含む試料(例えば、治療的モノクローナル抗体の試料)の試料調製方法が見出された。本発明のこの試料調製方法は、LALアッセイ法が実施される場合に、意外にかつ予想外にLER作用を未然に防ぐという利点を有している。より具体的には、本発明は、BET(好ましくはLALアッセイ法)のための抗体を含む試料を調製するための方法に関し、この方法は、以下の順序で以下の段階を含む:
(a)好ましくはMgCl2の形態のマグネシウムイオンを試料に添加する段階、
(b)試料を希釈する段階、および
(c)5.7~9.0、好ましくは5.7~8.0のpH値を有する試料を、エンドトキシンフリー水溶液に対して透析する段階。
【0013】
したがって、本発明によれば、抗体を含む試料(例えば、治療的モノクローナル抗体の試料)は、本発明の試料調製方法の段階(a)~(c)を実施することによって処理される。驚くべきことに、これらの段階およびそれらの組合せにより、LALアッセイ法が実施される場合にLER作用を被らない試料が提供される。または、言い換えると、本明細書において提供される試料調製方法の段階(a)~(c)を実施した後、抗体を含む試料は、LAL酵素カスケードにおけるC因子に対して反応性である。したがって、本発明の試料調製方法は、LALアッセイ法によって細菌エンドトキシンを測定する前に実施すると有利である。したがって、本発明はまた、試料中のエンドトキシンを測定する(すなわち、検出および/または定量する)ための方法にも関する。具体的には、本明細書において提供されるエンドトキシン測定方法は、抗体(例えば治療的モノクローナル抗体)を含む試料中のエンドトキシンの測定(すなわち、検出および/または定量)を可能にする。具体的には、本発明は、抗体を含む(好ましくは、LER作用を示す)試料中の細菌エンドトキシンを測定するための方法に関し、この方法は、以下の順序で以下の段階を含む:
(a)好ましくはMgCl2の形態のマグネシウムイオンを試料に(すなわち、抗体を含む試料に)添加する段階、
(b)試料を希釈する段階、
(c)5.7~8.0のpH値を有する試料を、エンドトキシンフリー水溶液に対して透析する段階、および
(d)LALアッセイ法を用いることによって、試料中の細菌エンドトキシンを測定する段階。
【0014】
好ましくは、本発明の試料調製方法またはエンドトキシン測定方法において、1.5~5ml容の透明なガラス製のクリンプネック平底容器が使用される。最も好ましくは、これらの容器は、Macherey-Nagel GmbH製のスクリューネックガラスバイアル(1.5mlまたは4ml)である。
【0015】
エンドトキシン汚染は、モノクローナル抗体のような薬剤を製造する際の高いリスクである。先行技術では、特に治療的抗体についてのエンドトキシン試験は、従来のLALアッセイ法を用いて実施される。しかし、添付の実施例において実証されるように、LALアッセイ法は、LER作用を示す抗体製剤におけるエンドトキシン汚染を検出できない/過小評価する。未検出の/過小評価されたエンドトキシンは、任意の薬学的試料、特に、筋肉内または静脈内に投与される薬剤にとって、極めて危険な安全性リスクとなる。しかし、実用面で非常に重要であるにもかかわらず、LER作用の物理化学的メカニズムについては何も知られていない。したがって、先行技術は、LER作用を示す治療的製品中のエンドトキシンを正確に測定するための方法を提供できていない。
【0016】
本発明において、LER作用を未然に防ぎ、CSEスパイク試料からの満足な回収率をもたらす、確固とした物理化学的仕組みが発見された。具体的には、例示的な添付の実施例において実証されるように、本明細書において報告される方法により、所定の濃度(0.5または5.0EU/ml)で所与の試料にスパイクされたCSEの回収が可能になる。重要なことには、本明細書において提供される方法は、50%~200%の間の範囲の回収率をもたらし、このようにして、FDAの要件を満たす。したがって、本発明は、有利なことに、エンドトキシンを脱マスキングし、LER作用を抑えることができる方法を提供する。より具体的には、本発明において、驚くべきことに、段階(a)~(c)(すなわち、(a)試験される試料にマグネシウムイオンを添加する段階; (b)試験される試料を希釈する段階; および(c)試験される試料を透析する段階(その際、試料のpH値は5.7~8.0である))の特定の組合せおよび連続実施により、エンドトキシンについて試験される試料のLER作用が未然に防がれることが発見された。または、言い換えると、段階(a)~(c)を実施することにより、試料中のエンドトキシンが脱マスキングされ、したがって、LALアッセイ法によってエンドトキシンを検出することが可能になる。添付の実施例は、本明細書において提供される方法が、例えば製剤化されたリツキシマブ中のLER作用を抑えることを示している。対照的に、同じプロトコールによって、ネオレコルモン(NeoRecormon)(登録商標)(抗体は含まないがエポエチンベータを含む)について満足な結果を明らかにすることはできなかった。このことから、本明細書において提供される方法が、抗体製剤、好ましくは、モノクローナル抗体、クエン酸緩衝液、およびポリソルベート80を含む製剤におけるLER作用を未然に防ぐのに特に有用であることが示される。
【0017】
したがって、本明細書において提供される試料調製方法および本明細書において提供されるエンドトキシン測定方法は、有利なことに、LER作用を未然に防ぐ。したがって、これらの方法は、薬剤中のエンドトキシンの検出を向上させる。このことは、有害作用が少ない薬学的製品の製造につながる。結果として、本明細書において提供される方法は、消費者の健康状態を改善すると考えられ、重篤な患者の生命を救う可能性がある。
[本発明1001]
以下の順序で以下の段階を含む、リムルスアメーバ様細胞溶解物(LAL)アッセイ法のための、抗体を含む試料を調製するための方法:
(a)好ましくはMgCl2の形態のマグネシウムイオンを該試料に添加する段階、
(b)該試料を希釈する段階、および
(c)5.7~8.0のpH値を有する該試料を、エンドトキシンフリー水溶液に対して透析する段階。
[本発明1002]
以下の順序で以下の段階を含む、LER作用を示す抗体を含む試料中の細菌エンドトキシンを測定するための方法:
(a)好ましくはMgCl2の形態のマグネシウムイオンを該試料に添加する段階、
(b)該試料を希釈する段階、
(c)5.7~8.0のpH値を有する該試料を、エンドトキシンフリー水溶液に対して透析する段階、および
(d)LALアッセイ法を用いることによって、該試料中の細菌エンドトキシンを測定する段階。
[本発明1003]
抗体が治療的抗体である、本発明1001または1002の方法。
[本発明1004]
抗体がポリソルベート80と共に製剤化されている、本発明1001~1003のいずれかの方法。
[本発明1005]
抗体がクエン酸緩衝液と共に製剤化されている、本発明1001~1004のいずれかの方法。
[本発明1006]
抗体が、約25mMのクエン酸ナトリウム緩衝液および約700mg/lのポリソルベート80と共に製剤化され、約6.5のpH値を有する、本発明1001~1005のいずれかの方法。
[本発明1007]
抗体が抗CD20抗体リツキシマブである、本発明1001~1006のいずれかの方法。
[本発明1008]
段階(a)において、最終濃度が約25~75mMとなるまでマグネシウムイオンが添加される、本発明1001~1007のいずれかの方法。
[本発明1009]
段階(b)において、10~50mMのTris/HCl緩衝液pH6.0~9.0、好ましくは6.0~8.0で試料を希釈することによって、該試料のpH値が調整される、本発明1001~1008のいずれかの方法。
[本発明1010]
段階(b)において試料が1:10の比で希釈される、本発明1001~1009のいずれかの方法。
[本発明1011]
段階(c)における透析の間、試料が6.0~8.0のpH値を有する、本発明1001~1010のいずれかの方法。
[本発明1012]
段階(c)において透析が室温で約24時間を要する、本発明1001~1011のいずれかの方法。
[本発明1013]
段階(c)における透析のために、分子量カットオフ値が10kDaである膜が使用される、本発明1001~1012のいずれかの方法。
[本発明1014]
段階(c)における透析のために酢酸セルロース膜が使用される、本発明1001~1013のいずれかの方法。
[本発明1015]
段階(c)における透析のために水が2回交換される、本発明1001~1014のいずれかの方法。
[本発明1016]
試料のアリコートに公知の量のエンドトキシンをスパイクし、エンドトキシンをスパイクされた該試料のアリコートを60分間~2時間振盪することによって、エンドトキシン低回収(LER)陽性対照を作製する段階をさらに含む、本発明1002~1015のいずれかの方法。
[本発明1017]
抗体を含む試料を、LAL酵素カスケードにおけるC因子に対して反応性にするための、本発明1001~1016のいずれかの方法の使用。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書において提供される方法において、試料中に含まれる抗体は、細菌細胞もしくは真核細胞において生産され、かつ/または細菌細胞もしくは真核細胞から精製されていてよい。例えば、抗体は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞から生産および精製されていてよい。本発明の1つの局面において、試料(すなわち、抗体を含む試料)は、溶解させた固体試料である。本発明の別の局面において、試料(すなわち、抗体を含む試料)は、液状試料である。本明細書において提供される試料調製方法およびエンドトキシン測定方法において、抗体(すなわち、試料中に含まれる抗体)は、治療的抗体であると想定される。好ましくは、抗体(すなわち、試料中に含まれる抗体)は、モノクローナル抗体である。しかし、本明細書において提供される方法において、(試料中に含まれる)抗体はまた、ポリクローナル抗体であってもよい。本明細書において、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)または抗体断片もまた、それらが所望の生物活性を示す限り、「抗体」という用語に含まれる。抗体は、ヒト、ヒト化、またはラクダ化抗体であってよい。
【0019】
本明細書において提供される方法は、有利なことに、薬学的製剤のLER傾向がある試料を、LAL酵素カスケードにおけるC因子に対して反応性にする。LER作用は、非イオン系界面活性剤のような両親媒性化合物と共に製剤化されている生物学的製品において、特に、それら両親媒性化合物が緩衝剤としてのクエン酸またはリン酸と組み合わされている場合に、報告されている。添付の実施例は、本明細書において提供される方法が、そのような治療的製剤におけるLER作用を確実に未然に防ぐことを実証する。したがって、本明細書において提供される試料調製方法およびエンドトキシン測定方法において、前記治療的抗体(すなわち、試料中に含まれる治療的抗体)は、少なくとも1種の界面活性剤(好ましくはポリソルベート)と共に製剤化されていると想定される。
【0020】
しかし、前記治療的抗体は、LALカスケードのC反応性タンパク質中のリピドAキャビティに対する構造モチーフを含まないポリソルベートと共に製剤化されると想定される。より具体的には、ラウリン酸のような直鎖脂肪酸は、LALカスケードのリピドA分子中の脂肪酸を模倣することができる。これは、この分子もまた、12個の炭素原子を含み二重結合を含まない(すなわち、C:Dは12:0である)脂肪酸を含むためである。このような直鎖状脂肪酸は、悪い方にLALカスケードの邪魔をする場合がある。したがって、本明細書において提供される方法において、前記治療的抗体は、ラウリン酸のような直鎖状脂肪酸を含む界面活性剤と共には製剤化されないと想定される。ポリソルベート20は、ラウリン酸を含む。したがって、試料(特に、治療的抗体の試料)はポリソルベート20と共に製剤化されないことが、本明細書において提供される方法において想定される。また、リン酸緩衝液、特にリン酸ナトリウム緩衝液も、LALカスケードの邪魔をする場合がある。したがって、これらの緩衝液は、本明細書において提供される試料調製方法に対してそれほど有効ではない。したがって、本発明は、試料中に含まれる(治療的)抗体が、リン酸緩衝液で希釈されない、本明細書において提供される試料調製方法またはエンドトキシン測定方法に関する。本発明の1つの局面において、試料は、0.1mMより高濃度のリン酸緩衝液を含まず、かつその臨界ミセル濃度(CMC)の100分の1より高い濃度のポリソルベート20も含まない。本発明の好ましい局面において、試料は、リン酸緩衝液もポリソルベート20も含まないか、または標準的な検出方法を用いる場合の検出限界より少ない量のリン酸緩衝液および/もしくはポリソルベート20を含む。
【0021】
本発明の方法を用いることによって、添付の実施例において実証されるように、製剤化されたリツキシマブ試料ならびにリツキシマブプラセボ試料においてLER作用を抑えることができる。リツキシマブプラセボ試料は、抗体が存在しないという点のみ、リツキシマブ試料と異なる。この差異を除いて、リツキシマブプラセボ試料は、リツキシマブ製剤の他の構成成分すべて、例えば界面活性剤および緩衝液などを含む。このことから、本明細書において提供される方法が、特定のモノクローナル抗体を含む製剤に依存せず、例えば、LER作用を示すあらゆる製剤においてその作用を未然に防ぐために使用できることが、示される。このような製剤には、ポリソルベート80およびキレート化緩衝剤(例えばクエン酸ナトリウム)を含む製剤が含まれる。この製剤は、抗体、特にモノクローナル抗体にとって典型的である。したがって、前述の方法は、あらゆるモノクローナル抗体製剤においてLER作用を抑えるのに有用であると予想される。リツキシマブは、ポリソルベート80およびクエン酸ナトリウム緩衝液の混合物(すなわち、25mMクエン酸ナトリウム緩衝液pH6.5; 700mg/lポリソルベート80、および154mM NaCl)と共に製剤化されている。抗体を含む試料は、この配合を有していることが、本発明において想定される。
【0022】
添付の実施例は、ポリソルベート80およびクエン酸緩衝液と共に製剤化されている治療的抗体の例示的試料において、本明細書において提供される方法を用いることによってLER作用を抑えることができることを実証する。したがって、本明細書において提供される試料調製方法またはエンドトキシン測定方法において、試料(すなわち、抗体を含む試料)はポリソルベート80と共に製剤化されることが、好ましい。したがって、本明細書において提供される方法において、試料(すなわち、抗体を含む試料)はポリソルベート80を含むと想定される。好ましくは、試料は、500~1000mg/lのポリソルベート80、より好ましくは約700mg/lのポリソルベート80を含む。試料(すなわち、抗体を含む試料)がキレート化緩衝剤(例えばクエン酸緩衝液)と共に製剤化されることが、本明細書において提供される方法においてさらに想定される。該クエン酸緩衝液は、5~50mMのクエン酸緩衝液pH6.0~7.0、好ましくは25mMクエン酸緩衝液pH6.5であってよい。好ましくは、クエン酸緩衝液は、クエン酸ナトリウムバター(sodium citrate butter)である。例えば、本明細書において提供される方法において、試料(すなわち、抗体を含む試料)は、5~50mMのクエン酸Na、好ましくは25mMのクエン酸Naを含んでよい。最も好ましくは、試料は、ポリソルベート80およびクエン酸ナトリウム緩衝液を含む。例えば、試料は、約700mg/lのポリソルベート80、および5~50mM、好ましくは約25mMのクエン酸ナトリウム緩衝液を含んでよい。最も好ましくは、本明細書において提供される方法において、試料は、約25mMのクエン酸Na緩衝液および約700mg/lのポリソルベート80と共に製剤化され、約6.5のpH値を有する、抗体の試料である。
【0023】
本明細書において提供される試料調製方法またはエンドトキシン測定方法において、前記抗体(すなわち、試料中に含まれる抗体)は抗CD20抗体であることが好ましい。より好ましくは、抗体は、抗CD20抗体リツキシマブである。リツキシマブの重鎖および軽鎖のアミノ酸配列は、本明細書においてそれぞれSEQ ID NO: 1およびSEQ ID NO: 2として示される。当業者には、所与のアミノ酸配列からコード核酸配列を得る方法が容易に分かる。したがって、SEQ ID NO: 1およびSEQ ID NO: 2が分かれば、リツキシマブのコード核酸配列を簡単に得ることができる。リツキシマブは、例えばRituxan(登録商標)およびMabThera(登録商標)、またはZytux(登録商標)として市販されている。
【0024】
本明細書において提供される試料調製方法またはエンドトキシン測定方法の段階(a)において、例えばMgCl2の形態のマグネシウムイオン(Mg2+)が、試料に(すなわち、抗体を含む試料に)添加される。本明細書において、「塩化マグネシウム」または「MgCl2」という用語は、式MgCl2を有する化学的化合物、ならびにその様々な水和物MgCl2(H2O)x(すなわちMgCl2・xH2O)を意味する。例えば、本明細書において提供される方法の段階(a)において、MgCl2六水和物(すなわちMgCl2・6H2O)が試料に添加されてよい。例示的な添付の実施例は、段階(a)において最終濃度が10~100mM Mg2+となるまでマグネシウムイオンを添加すると、LER作用が著しく低減することを実証する。さらに、添付の実施例はまた、試料の緩衝剤の濃度の2倍であるMg2+濃度が、最も優れたエンドトキシン回収率をもたらすことも示している。例えば、リツキシマブを試料として使用した場合、最も優れたエンドトキシン回収率は、段階(a)においてマグネシウム塩MgCl2を添加した結果、Mg2+の最終濃度がクエン酸ナトリウム濃度の2倍となる(すなわち50mM Mg2+)場合に得られた。したがって、本明細書において提供される方法の段階(a)において、緩衝液(例えばクエン酸ナトリウム緩衝液)の濃度の2倍である最終Mg2+濃度が生じるように、塩(例えばMgCl2)の形態のマグネシウムイオンが添加されると想定される。例えば、本明細書において提供される方法において、好ましくは、マグネシウムイオンは、(段階(a)での)Mg2+の最終濃度が10~100mM Mg2+、より好ましくは25~75mM Mg2+、さらにより好ましくは40~75mM Mg2+、および最も好ましくは約50mM Mg2+(すなわち45~55mM Mg2+)となるように、試料に添加される。または、試料がマグネシウムイオンを既に含む場合は、Mg2+の添加量は、結果として生じる(段階(a)での)Mg2+の最終濃度が、好ましくは10~100mM、より好ましくは25~75mM、さらにより好ましくは40~75mM、および最も好ましくは約50mM Mg2+(すなわち45~55mM Mg2+)となるように、調整される。段階(a)の後、すなわち段階(b)において、試料が希釈される。しかし、段階(a)において、「濃度が・・となるまでマグネシウムイオンを添加すること」という用語またはその文法的変形および「最終濃度が・・となるまでマグネシウムイオンを添加すること」という用語またはその文法的変形は、段階(a)におけるMg2+の最終濃度を意味する。例えば、段階(a)においてMgCl2を(最終)濃度が45~55mM MgCl2となるまで添加することとは、段階(a)でのMgCl2の添加後にMgCl2の濃度が45~55mMであることを意味する。したがって、例えば、段階(b)において、試料が1:10(試料:緩衝液/水)の比で希釈される場合、マグネシウムイオンの濃度および同様にMgCl2の濃度は、4.5~5.5mMである。
【0025】
添付の実施例は、マグネシウムイオンの添加後のインキュベーション段階が、LALアッセイ法における回収率をさらに向上させることを実証する。したがって、本明細書において提供される方法において、マグネシウムイオンの添加後、試料は、好ましくは、30分間~6時間、より好ましくは1~4時間、最も好ましくは約1時間、インキュベートされる。本明細書において提供される方法の段階(a)の1つの優先される局面において、試料は、マグネシウムイオンの添加後、室温で約1時間、インキュベートされる。該インキュベーション段階の前および後に、(例えば、Heidolph Multi Reax振盪機において、高速(2,037rpm)で)試料を振盪してもよい。例えば、インキュベーション段階の前および後に、試料を30秒~10分間、好ましくは1分間、振盪してよい。
【0026】
本明細書において提供される試料調製方法またはエンドトキシン測定方法の段階(b)において、試料(すなわち、抗体を含む試料)は、希釈される。試料は、エンドトキシンフリー水で希釈されてよい。添付の実施例は、透析時の試料のpH値が5.7~8.0である場合、優れた回収率を得ることができることを実証している。透析時の試料のpH値が6.0~8.0である場合、さらに優れた回収率が得られた。透析時の試料のpH値が6.5~7.5である場合、最も優れた回収率が得られた。したがって、本発明の1つの局面は、試料が段階(b)においてエンドトキシンフリー水で希釈され、希釈後かつ透析前に、試料のpH値が5.7~8.0、より好ましくは6.0~8.0、最も好ましくは6.5~7.5に調整される、本明細書において提供される方法に関する。したがって、本発明の1つの局面において、本明細書において提供される方法の段階(b)において、試料のpH値はpH5.7~8.0、より好ましくはpH6.0~8.0に調整される。最も好ましくは、本明細書において提供される方法の段階(b)において、試料のpH値はpH6.5~7.5に調整される。例えば、試料のpH値は、pH5.7、pH5.8、pH5.9、pH6.0、pH6.1、pH6.2、pH6.3、pH6.4、pH6.5、pH6.6、pH6.7、pH6.8、pH6.9、またはpH7.0に調整されてよい。しかし、試料のpH値は、10~50mMの緩衝液、例えばTris/HCl緩衝液pH6.0~9.0で、より好ましくは10~50mMの緩衝液、例えばTris/HCl緩衝液pH6.0~8.0を用いて試料を希釈することによって段階(b)において調整されることが、本明細書において好ましい。したがって、本明細書において提供される方法の好ましい局面において、試料のpH値は、段階(c)において、10~50mMのTris/HCl緩衝液pH6.0~9.0を用いて試料を希釈することによって調整されると想定される。より好ましくは、試料のpH値は、10~50mMのTris/HCl緩衝液pH6.0~8.0を用いて試料を希釈することによって調整される。最も好ましくは、試料のpH値は、50mMのTris/HCl pH約7.0を用いて(段階(b)において)試料を希釈することによって調整される。したがって、本明細書において提供される方法において、段階(c)における透析の間、試料のpH値は、5.7~8.0、好ましくは6.0~8.0、より好ましくは6.5~7.5である。
【0027】
先に示したように、試料は、ポリソルベート80のような界面活性剤を含んでよい。添付の例示的な実施例は、とりわけ、界面活性剤(例えばポリソルベート80)を含む試料を希釈することにより、LALアッセイ法においてエンドトキシン分子に接近することが可能になることを実証する。理論に拘泥するものではないが、界面活性剤を含む試料をCMCに近い濃度まで希釈することにより、試料のミセル区画化が減り、したがってLER作用が低減すると考えられている。
【0028】
添付の実施例は、1:5~1:20の希釈率が、LALアッセイ法の回収率にかなり影響することを示している。したがって、本発明は、試料が段階(b)において、1:5~1:20(試料:緩衝液/水)、好ましくは1:10(試料:緩衝液/水)の比で希釈される、本明細書において提供される試料調製方法およびエンドトキシン測定方法に関する。本明細書において提供される方法において、抗体は、好ましくは、約25mMのクエン酸ナトリウム緩衝液および約700mg/lのポリソルベート80と共に製剤化されている。したがって、本明細書において提供される方法において、試料は、緩衝液の濃度が5~1.25mM、好ましくは2.5mMに低下するように、段階(b)において希釈されてよい。さらに、試料は、界面活性剤の濃度が140~35mg/l、好ましくは70mg/lに低下するように、段階(b)において希釈されてよい。添付の実施例において、試料は、抗体濃度が約10mg/mlである抗体製剤であった。これらの試料は、抗体濃度が2~0.5mg/mlになるように、本発明の方法の段階(b)において希釈された。したがって、本明細書において提供される方法において、試料は、抗体の濃度が2~0.5mg/ml、好ましくは1mg/mlに低下するように、段階(b)において希釈されてよい。本明細書において提供される方法において、無希釈の対照もまた、調製されてよい。該無希釈の対照は、無希釈の対照が(段階(b)において)希釈されないことを除いて、試験される試料と同じように処理される。本明細書において、「緩衝液/水」は、「緩衝液または水」を意味する。
【0029】
本明細書において提供される試料調製方法およびエンドトキシン測定方法の段階(c)において、試料は、エンドトキシンフリー水溶液に対して透析される。エンドトキシンフリー水溶液は、エンドトキシンフリー水であってよい。しかし、該エンドトキシンフリー水溶液はまた、例えば、塩MgCl2の形態で添加されるマグネシウムイオンを含むエンドトキシンフリー水溶液であってもよい。したがって、本発明の1つの局面は、エンドトキシンフリー水溶液が、段階(c)において、マグネシウムイオン、例えば2.5~10mM MgCl2を含む、本明細書において提供される方法に関する。
【0030】
透析を開始する前に、試料は、(例えば、Heidolph Multi Reax振盪機において、高速(2,037rpm)、室温で)、例えば30秒間~10分間、好ましくは1分間、振盪されてよい。好ましくは、段階(c)における透析は、1~48時間、より好ましくは4~24時間、最も好ましくは約24時間である。したがって、段階(c)において、透析は約24時間であることが好ましい。透析は、15~30℃、好ましくは室温(すなわち21±2℃)で実施されてよい。透析後に、試料は、(例えば、Heidolph Multi Reax振盪機において、高速(2,037rpm)、室温で)、例えば20分間~1時間、好ましくは(少なくとも)20分間、振盪されてよい。
【0031】
透析は、スピン透析器(Spin Dialyzer)(例えばHarvard SpinDIALYZER、カタログ番号74-0314)または高速スピン透析器(Fast Spin Dialyzer)(例えば、Harvard Fast Spin Dialyzer、カタログ番号74-0412)を用いることによって実施されてよい。(特に、高速スピン透析器が使用される場合)、スターラーの回転数が高い、すなわち、スターラーの回転数(frequency)が50~300rpm、好ましくは200~300rpmであることが好ましい。スターラーは、好ましくは、長さが20~60mmであり、直径(すなわち、横断面の寸法)が5~25mmである。より好ましくは、スターラーは、長さが約40mmであり、直径が約14mmである。スターラーは、最も好ましくは、加熱滅菌(例えば、250℃で4時間)された、長さが約40mmで直径が約14mmのマグネチックスターラーである。このようなスターラーは、OMNILABから入手することができる。実際は、透析は通常、スターラーを高回転数で用いて実施され、これにより、透析膜を通しての拡散が促進される。したがって、スターラーを高回転数で用いて透析することが、標準的な透析手順である。透析のために使用される容器の容積は、好ましくは500~5000ml、より好ましくは1000~3000ml、最も好ましくは1500~2500mlである。この容器は、直径が120mmで高さが240mmであってよい。例えば、透析のために使用される容器は、DURAN(登録商標)ビーカー、細長型、2000ml(例えば、OMNILAB、ドイツから入手可能、P/N:5013163)であってよい。高速スピン透析器は透析膜の面積が二倍であるため、高速スピン透析器を使用することが好ましく、したがって、より効率的で迅速な透析に適していると考えられている。
【0032】
段階(c)における透析のために、分子量カットオフ値が100Da~16kDa、好ましくは500Da~10kDa、最も好ましくは10kDaの膜が使用されることが想定される。段階(c)における透析のために、セルロースエステル膜または酢酸セルロース膜が使用されてよい。好ましくは、段階(c)における透析のために、酢酸セルロース膜が使用される。最も好ましくは、分子量カットオフ値が10kDaである酢酸セルロース膜が、透析時に使用される。
【0033】
したがって、本明細書において提供される方法の段階(c)において、透析は、好ましくは、分子量カットオフ値が10kDaである酢酸セルロース膜を用いることによって約24時間、実施される。透析前に、透析膜は、好ましくはエンドトキシンフリー水中で洗浄されてよい。特に、透析膜は、エンドトキシンフリー水中で、(例えば、振盪機SG 20(IDL GmbH、ドイツ)または同等物を用いて、50~300rpm、好ましくは100rpmで)振盪されてよい。例えば、透析膜は、10分~3時間、好ましくは1時間、エンドトキシンフリー水中でそれを振盪することによって、洗浄されてよい。この洗浄段階の後、透析膜は、好ましくは、新しいエンドトキシンフリー水の中に移され、10分(in)~3時間、好ましくは1時間、それを振盪することによって、再び洗浄される。
【0034】
透析は、1ml容の容器、例えば、分子量カットオフ値が500Da~10kDaの範囲である(例えば、分子量カットオフ値が10kDaである)膜(例えば酢酸セルロース膜)を装備された1ml容のスピン透析器(Harvard)容器中で実施されてよい。透析中に、水は、好ましくは交換され、より好ましくは、水は2回交換される。例えば、水は、2時間および20時間の透析の後に、または18時間および22時間の透析の後に、交換されてよい。好ましくは、水は、2時間および4時間の透析の後に交換される。
【0035】
本明細書において提供される方法において、段階(c)における透析の後に、試料は、(例えば、Heidolph Multi Reax振盪機において、高速(2,037rpm)、室温で)振盪されることが好ましい。好ましくは、試料(すなわち、抗体を含む試料)は、10分間~1時間、より好ましくは20分間、透析後に振盪される。振盪に加えて、または振盪の代わりに、試料は、透析後に超音波で処理されてもよい。したがって、本発明の1つの局面は、段階(c)において、透析後に試料が超音波で処理される、本明細書において提供される方法に関する。
【0036】
本明細書において提供される試料調製方法がLALアッセイ法と組み合わされる場合には、この組み合わされた方法は、試料にスパイクされた所定の量のCSEを定量的かつ再現的に検出するためのFDA要件を達成するため、有利である。好ましくは、本明細書において提供される方法のLALアッセイ法は、後述するようなLALアッセイ法である。
【0037】
添付の実施例は、Mg2+(すなわちマグネシウムイオン)の添加が、それによって透析容器の内部区画中にエンドトキシンを保持するというさらなる利点を有していることを示唆する。したがって、段階(c)における透析の結果、緩衝液(例えばクエン酸ナトリウム緩衝液)が除去されるだけで、エンドトキシンは除去されない。希釈段階は、界面活性剤によるLALカスケードの阻害を無効にするように、界面活性剤(例えばポリソルベート80)の濃度を低下させることができる。添付の実施例は、本発明の方法の段階が、次の順序: (1)Mg2+の添加、(2)希釈、および(3)透析で実施される場合に、特に再現可能にLER作用を抑えることができることを実証する。したがって、段階(1)、(2)、および(3)の組合せ、または特許請求の範囲の段階(a)、(b)、および(c)の組合せは、再現可能にLER作用を抑える。添加されるMg2+の好ましい量、希釈の好ましい程度、および透析のための好ましいパラメーターは、本明細書において詳しく前述および後述する。
【0038】
好ましい局面において、本発明は、LALアッセイ法のための、抗体を含む試料を調製するための本明細書において提供される方法に関し、この方法は、以下の順序で以下の段階を含む:
(a)例えばMgCl2の形態のマグネシウムイオンを、最終濃度が10~100mM、好ましくは40~75mM、最も好ましくは45~55mMとなるまで試料に添加する段階、
(b)1:5(試料:緩衝液)~1:20(試料:緩衝液)、好ましくは1:10(試料:緩衝液)の比で10~50mMのTris/HCl緩衝液pH6.0~8.0、好ましくは50mMのTris/HCl緩衝液pH約7.0を用いて試料を希釈する段階、
(c)5.7~8.0(好ましくは6.5~7.5)のpH値を有する試料を、エンドトキシンフリー水に対して1~48時間、好ましくは4~24時間、最も好ましくは24時間、透析する段階。好ましくは、分子量カットオフ値が10kDaである酢酸セルロース膜が使用され、2時間後および4時間後に水が交換される。最も好ましくは、高速スピン透析器が使用され、スターラーの回転数は、50~300rpm、好ましくは200rpmである。
【0039】
前述したように、抗体は、好ましくはモノクローナル抗体である。より好ましくは、抗体は、リツキシマブである。最も好ましくは、本明細書において提供される方法において、試料は、約25mMのクエン酸ナトリウム緩衝液(7.35mg/ml)および約700mg/lのポリソルベート80と共に製剤化され、約6のpH値を有する、抗体の試料である。
【0040】
「約」という用語および「~」という記号は、本明細書において同義的に使用され、提供される特定の値がある程度は変動してよいことを明示する。例えば、(例えば、約/~25mMのクエン酸ナトリウム緩衝液という文脈での)「約」または「~」は、±10%、好ましくは±5%、最も好ましくは±2%の範囲の変化量が、所与の値に含まれることを意味する。
【0041】
記載するように、本明細書において提供される試料調製方法はLALアッセイ法を組み合わされることが、本発明において想定される。LALアッセイ法は、低濃度のエンドトキシンを検出するという利点を有している。
【0042】
CSE検量線によって与えられるように、エンドトキシン検出の有効な下限値は、キネティック比色LAL技術において0.005EU/mLである。これらの技術のLAL試薬は、カブトガニから精製されたセリンプロテアーゼの酵素的増幅カスケード全体を含む。さらに最近になって開発されたEndoLISA(登録商標)アッセイ法(Hyglos GmbH、ドイツ)のエンドトキシン(CSE)検出の下限値は、製造業者によって0.05EU/mLであると述べられている(Hyglosの広告: Grallert et al. in: Nature Methods, Oct. 2011; p://www.hyglos.de/fileadmin/media/Application_note_EndoLISA_Nature_Methods_October_2011.pdf)。このEndoLISA(登録商標)アッセイ法では、リムルスカスケードの最初の酵素、すなわちC因子のみの組換え型を使用する。認定されたLAL試験とは異なり、EndoLISA(登録商標)アッセイ法は、LAL法によって検出されることが周知である広範な細菌エンドトキシンに結合することがまだ判明していないバクテリオファージにコードされたタンパク質によってマイクロタイタープレートを予めコーティングすることにより提供される、初期のエンドトキシン吸着段階を、さらに含む。
【0043】
具体的には、好ましい局面において、本発明は、ポリペプチドを含む試料中の細菌エンドトキシンを測定するための方法に関し、この方法は、以下の順序で以下の段階を含む:
(a)好ましくはMgCl2の形態のマグネシウムイオンを、最終濃度が10~100mM、好ましくは40~75mM、最も好ましくは45~55mMとなるまで試料に添加する段階、
(b)1:5(試料:緩衝液)~1:20(試料:緩衝液)、好ましくは1:10(試料:緩衝液)の比で10~50mMのTris/HCl緩衝液pH6.0~8.0、好ましくは50mMのTris/HCl緩衝液pH約7.0を用いて試料を希釈する段階、
(c)5.7~8.0(好ましくは6.5~7.5)のpH値を有する試料を、エンドトキシンフリー水に対して1~48時間、好ましくは4~24時間、最も好ましくは24時間、透析する段階。好ましくは、分子量カットオフ値が10kDaである酢酸セルロース膜が使用され、2時間後および4時間後に水が交換される。最も好ましくは、高速スピン透析器が使用され、スターラーの回転数は、50~300rpm、好ましくは200rpmである。
(d)LALアッセイ法を用いることによって、試料中の細菌エンドトキシンを測定する段階。
【0044】
前述したように、抗体は、好ましくはモノクローナル抗体である。より好ましくは、抗体は、リツキシマブである。最も好ましくは、本明細書において提供される方法において、試料は、約25mMのクエン酸ナトリウム緩衝液および約700mg/lのポリソルベート80と共に製剤化され、約6.5のpH値を有する、抗体の試料である。
【0045】
添付の実施例において記載されるように、「LER陽性対照」(「陽性LER対照」とも名付けられる)が、本明細書において提供されるエンドトキシン測定方法の段階(d)のLALアッセイ法において使用されてよい。該「LER陽性対照」は、本明細書において説明される方法の段階(a)~(c)が実施されなかった場合には、試験される試料(すなわち、抗体を含む試料)がLER作用を示すであろうことを実証するための指示物である。または、言い換えると、「LER陽性対照」は、(試験される試料中の)公知のスパイク量のエンドトキシンは、LALアッセイ法だけを用いても(すなわち、本明細書において提供される方法の段階(a)~(c)を実施しない)、回収できないことを示すために、LALアッセイ法において陽性対照として使用される。本発明において、試料にCSEをスパイクした後、試料が45分間~2時間、好ましくは約60分間~2時間、最も好ましくは約60分間振盪された場合にのみ、陽性LER作用を得ることができることが、意外にかつ予想外に判明した。
【0046】
したがって、本発明において、「LER陽性対照」は、エンドトキシンについて試験される試料のアリコートに(例えば、抗体を含む試料のアリコートに)公知の量のエンドトキシンをスパイクし、スパイクされた試料を45分間~2時間、好ましくは約60分間~2時間、最も好ましくは約60分間、振盪することによって、調製される。したがって、本発明は、試料のアリコートに公知の量のエンドトキシンをスパイクし、エンドトキシンをスパイクされた試料のアリコートを60分間以上(より好ましくは60分間~2時間)振盪することによってLER陽性対照を作製する段階をさらに含む、本明細書において提供されるエンドトキシン測定方法に関する。
【0047】
好ましくは、細菌エンドトキシンを測定するための本明細書において提供される方法において、「LER陽性対照」は、試験される試料のアリコートに、最終濃度が5.0EU/mlとなるまでCSEをスパイクすることによって、調製される。その後、スパイクされたアリコートは、(例えば、Heidolph Multi Reax振盪機において、高速(2,037rpm)、室温で)、60分間以上、最も好ましくは60分間、振盪される。振盪後、エンドトキシンをスパイクされたアリコートは、好ましくは、本明細書において提供される方法の段階(b)における試験される試料と同程度まで希釈される。好ましくは、スパイクされたアリコートは、エンドトキシンフリー水で希釈される。希釈後、スパイクされたアリコートは、好ましくは、(例えば、Heidolph Multi Reax振盪機において、高速(2,037rpm)、室温で)、例えば1分間、振盪される。
【0048】
したがって、「LER陽性対照」は、好ましくは、以下の順序で以下の手順によって調製される:
-試験される試料のアリコートに、最終濃度が5.0EU/mlとなるまでCSEをスパイクする段階。好ましくは、「LER陽性対照」は、1.5~5ml容の透明なガラス製のクリンプネック平底容器中で、より好ましくは、Macherey-Nagel GmbH製のスクリューネックガラスバイアル(1.5mlまたは4ml)中で調製される。
-スパイクされたアリコートを60分間以上(より好ましくは60分間~2時間、最も好ましくは60分間)、振盪する段階。好ましくは、スパイクされたアリコートは、高速(2,037rpm)、室温(すなわち21±2℃)で振盪される。最も好ましくは、スパイクされたアリコートは、Heidolph Multi Reax振盪機において、高速(2,037rpm)、室温で振盪される。
-スパイクされたアリコートを、エンドトキシンフリー水で希釈する段階。スパイクされたアリコートは、本明細書において提供される方法の段階(b)における試験される試料と同程度まで希釈される(すなわち、試験される試料が、段階(b)において1:10の比で希釈される場合、スパイクされたアリコートもまた、1:10の比で希釈される)。
-スパイクされたアリコートを(例えば1分間)振盪する段階。
【0049】
前述したように、「LER陽性対照」の調製時に、希釈が実施される。しかし、該希釈を除いて、「LER陽性対照」は、本明細書において提供される方法の段階(a)~(c)で説明されるようには処理されないことが、本発明において想定される。しかし、該「LER陽性対照」は、本明細書において説明される方法の段階(a)~(c)が実施されなかった場合には、試験される試料(すなわち、抗体を含む試料)がLER作用を示すであろうことを示すために、細菌エンドトキシンを測定するための方法の段階(d)で使用される。「LER陽性対照」は、LALアッセイ法が実施される際にすぐに使用できるように、段階(a)~(c)のいずれか1つの期間の間に(例えば透析期間の間に)調製されてよい。
【0050】
所与の材料(例えば、緩衝液または治療的抗体の試料)がLER作用を示すことを確認するために、例えば、エンドトキシン保持時間試験において、エンドトキシン含有量を経時的にモニターすることができる。エンドトキシン保持時間試験は、無希釈の試料にエンドトキシンをスパイクすること、およびエンドトキシンをスパイクされた試料をある期間にわたって保存することを必要とする。例えば、試料は、最長で数ヶ月、保存されてよい。好ましくは、保持時間試験において、エンドトキシンをスパイクされた試料は、数(例えば、7、最長で28)日間、保存され、所定の時点に、LALアッセイ法が実施される。回収率が、スパイクされたエンドトキシンの量の50%未満である場合、その試料がLER作用を示していることが示唆される。
【0051】
前述したように、LALアッセイ法は、希釈した試験試料を希釈した陽性対照(PPC)と共に用いてルーチン的に実施され、この陽性対照は、公知の量のスパイクされたCSEを含む試料である。したがって、本明細書において提供されるエンドトキシン測定方法の段階(d)で実施されるLALアッセイ法では、全試料が、スパイクされた対照エンドトキシン標準品(PPC)を含む場合およびスパイクされたエンドトキシンを含まない場合の2つ組で各時点に測定されることが想定される。その結果、所与の全試料について、本明細書において提供される試料調製方法または本明細書において提供されるエンドトキシン測定方法が、LALアッセイ法を用いることによって、試料中に存在するエンドトキシン(またはFDAによって要求されるように、少なくともその50~200%)を検出できるという好ましい効果を有しているかどうかを容易に試験することができる。したがって、本明細書において提供されるエンドトキシン測定方法の段階(d)のLALアッセイ法は、試験される試料(すなわち、抗体を含む試験される試料)と共に陽性対照(PPC)が試験されることを含むと想定される。該陽性対照は、公知の量のCSEがPPCにスパイクされていることを除いて、試験される試料と同一である。または、言い換えると、本明細書において提供される方法の段階(a)~(c)は、試験される試料と同じ方法で、PPCを用いて実施されなければならない。したがって、PPCは、本明細書において提供される方法の段階(a)の前に調製される。本発明において、試料にCSEをスパイクした後、試料が45分間~2時間、好ましくは約60分間~2時間、最も好ましくは約60分間振盪された場合にのみ、陽性LER作用を得ることができることが、意外にかつ予想外に判明した。したがって、本発明において、PPCは、スパイク後、(例えば、Heidolph Multi Reax振盪機において、高速(2,037rpm)で)、45分間~2時間、好ましくは約60分間~2時間、最も好ましくは約60分間、振盪される。より好ましくは、PPCは、スパイク後、(例えば、Heidolph Multi Reax振盪機において、高速(2,037rpm)で)、室温で約60分間、振盪される。
【0052】
したがって、本発明の好ましい局面は、抗体を含む試料中の細菌エンドトキシンを測定するための本明細書において提供される方法に関し、この方法は、以下の順序で以下の段階を含む:
(a0)-抗体を含む試料の第1のアリコートに公知の量のエンドトキシンをスパイクすること、および
-エンドトキシンをスパイクされたアリコートを60分間~2時間(好ましくは、室温で約60分間)振盪すること
によって、PPCを調製する段階、
(a)試験される試料の第2のアリコートおよびPPCにマグネシウムイオンを添加する段階、
(b)試験される試料の第2のアリコートおよびPPCを希釈する段階、
(c)5.7~8.0(好ましくは5.8~7.0)のpH値を有する試験される試料の第2のアリコートおよびPPCを、エンドトキシンフリー水溶液に対して透析する段階であって、試験される試料およびPPCが5.7~9.0のpH値を有する、段階、ならびに
(d)LALアッセイ法を用いることによって、試験される試料の第2のアリコート中およびPPC中の細菌エンドトキシンを測定する段階。
【0053】
本発明の1つの局面において、5.0EU/mlの最終エンドトキシン濃度が得られるように、PPCにエンドトキシンがスパイクされる。
【0054】
細菌エンドトキシンを測定するための本明細書において提供される方法に関連して開示されるあらゆる局面および定義は、必要に応じて変更を加えて、PPCが適用される場合の前記方法に当てはまる。したがって、本発明の好ましい局面は、抗体を含む試料中の細菌エンドトキシンを測定するための本明細書において提供される方法に関し、この方法は、以下の順序で以下の段階を含む:
(a0)-抗体を含む試料の第1のアリコートに公知の量のエンドトキシンをスパイクすること、および
-エンドトキシンをスパイクされたアリコートを60分間以上(好ましくは、室温で60分間)振盪すること
によって、PPCを調製する段階、
(a)好ましくはMgCl2の形態のマグネシウムイオンを、最終濃度が10~100mM、好ましくは40~75mM、最も好ましくは45~55mMとなるまで試料の第2のアリコートに添加する段階、
(b)1:5(試料:緩衝液)~1:20(試料:緩衝液)、好ましくは1:10(試料:緩衝液)の比で10~50mMのTris/HCl緩衝液pH6.0~8.0、好ましくは50mMのTris/HCl緩衝液pH約7.0を用いて、試料の第2のアリコートを希釈する段階、
(c)5.7~8.0(好ましくは6.5~7.5)のpH値を有する試料を、エンドトキシンフリー水に対して1~48時間、好ましくは4~24時間、最も好ましくは24時間、透析する段階。好ましくは、分子量カットオフ値が10kDaである酢酸セルロース膜が使用され、2時間後および4時間後に水が交換される。最も好ましくは、高速スピン透析器が使用され、スターラーの回転数は高い。
(d)LALアッセイ法を用いることによって、試料中の細菌エンドトキシンを測定する段階。
【0055】
さらに、本明細書において提供されるエンドトキシン測定方法において、水対照を利用することもできる。好ましくは、少なくとも2種の水対照が使用される; 一方が、エンドトキシンフリー水からなり、他方が、公知の量のエンドトキシンをスパイクされた(例えば、CSEの最終濃度が5.0EU/mlとなる)、エンドトキシンフリー水からなる。水対照は、試験される試料と同じ様式で処理される。
【0056】
先に示したように、本明細書において提供される試料調製方法および本明細書において提供されるエンドトキシン測定方法では、段階(a)において、試料が30分間~6時間、好ましくは1~4時間、最も好ましくは1時間、インキュベートされることが想定される。さらに、透析後に、試料は、(例えば、Heidolph Multi Reax振盪機において、高速(2,037rpm)、室温で)、例えば10分間~1時間、好ましくは20分間、振盪されることも想定される。したがって、本発明の1つの局面は、LALアッセイ法のための、抗体を含む試料を調製するための本明細書において提供される方法に関し、この方法は、以下の順序で以下の段階を含む:
(a)好ましくはMgCl2の形態のマグネシウムイオンを、最終濃度が10~100mM、好ましくは40~75mM、最も好ましくは45~55mMとなるまで試料に添加する段階; および試料を30分間~6時間、好ましくは1~4時間、最も好ましくは1時間、インキュベートする段階、
(b)1:5(試料:緩衝液)~1:20(試料:緩衝液)、好ましくは1:10(試料:緩衝液)の比で10~50mMのTris/HCl緩衝液pH6.0~8.0、好ましくは50mMのTris/HCl緩衝液pH約7.0を用いて試料を希釈する段階、
(c)5.7~8.0(好ましくは6.5~7.5)のpH値を有する試料を、エンドトキシンフリー水に対して1~48時間、好ましくは4~24時間、最も好ましくは24時間、透析する段階。(好ましくは、分子量カットオフ値が10kDaである酢酸セルロース膜が使用され、2時間後および4時間後に水が交換される。最も好ましくは、高速スピン透析器が使用され、スターラーの回転数は高い)。透析後、試料は、10分間~1時間、好ましくは20分間、振盪される。
【0057】
同様に、本発明のさらなる局面は、LER作用を示す抗体を含む試料中の細菌エンドトキシンを測定するための本明細書において提供される方法に関し、この方法は、以下の順序で以下の段階を含む:
(a)好ましくはMgCl2の形態のマグネシウムイオンを、最終濃度が10~100mM、好ましくは40~75mM、最も好ましくは45~55mMとなるまで試料に添加する段階; および試料を30分間~6時間、好ましくは1~4時間、最も好ましくは1時間、インキュベートする段階(試料は、インキュベーションの前および後に振盪されてよい)、
(b)1:5(試料:緩衝液)~1:20(試料:緩衝液)、好ましくは1:10(試料:緩衝液)の比で10~50mMのTris/HCl緩衝液pH6.0~8.0、好ましくは50mMのTris/HCl緩衝液pH約7.0を用いて試料を希釈する段階、
(c)5.7~8.0(好ましくは6.5~7.5)のpH値を有する試料を、エンドトキシンフリー水に対して1~48時間、好ましくは4~24時間、最も好ましくは24時間、透析する段階。(好ましくは、分子量カットオフ値が10kDaである酢酸セルロース膜が使用され、2時間後および4時間後に水が交換される。最も好ましくは、高速スピン透析器が使用され、スターラーの回転数は高い)。透析後、試料は、10分間~1時間、好ましくは20分間、振盪される。
(d)LALアッセイ法を用いることによって、試料中の細菌エンドトキシンを測定する段階。
【0058】
さらに、前述したように、本明細書において提供されるエンドトキシン測定方法では、PPCが調製されること、およびPPCがスパイク後に60分間~2時間振盪されることが想定される。したがって、本発明は、LER作用を示す抗体を含む試料中の細菌エンドトキシンを測定するための本明細書において提供される方法に関し、この方法は、以下の順序で以下の段階を含む:
(a0)-抗体を含む試料の第1のアリコートに公知の量のエンドトキシンを(例えば、最終濃度が5.0EU/mlとなるまで)スパイクすること、および
-エンドトキシンをスパイクされたアリコートを60分間~2時間(好ましくは、室温で60分間)振盪すること
によって、PPCを調製する段階、
(a)好ましくはMgCl2の形態のマグネシウムイオンを、最終濃度が10~100mM、好ましくは40~75mM、最も好ましくは45~55MgCl2となるまで、試料の第2のアリコートおよびPPCに添加する段階;(ならびに好ましくは、試料およびPPCを30分間~6時間、より好ましくは1~4時間、最も好ましくは1時間、インキュベートする段階(試料は、インキュベーションの前および後に振盪されてよい))、
(b)1:5(試料/PPC:緩衝液)~1:20(試料/PPC:緩衝液)、好ましくは1:10(試料/PPC:緩衝液)の比で10~50mMのTris/HCl緩衝液pH6.0~8.0、好ましくは50mMのTris/HCl緩衝液pH約7.0を用いて、試料およびPPCを希釈する段階、
(c)5.7~8.0(好ましくは6.5~7.5)のpH値を有する試料およびPPCを、エンドトキシンフリー水に対して1~48時間、好ましくは4~24時間、最も好ましくは24時間、透析する段階。(好ましくは、分子量カットオフ値が10kDaである酢酸セルロース膜が使用され、2時間後および4時間後に水が交換される。最も好ましくは、高速スピン透析器が使用され、スターラーの回転数は高い)。透析後、試料およびPPCは、10分間~1時間、好ましくは20分間、振盪される。
(d)LALアッセイ法を用いることによって、試料中およびPPC中の細菌エンドトキシンを測定する段階。
【0059】
さらに、先に示したように、本明細書において提供されるエンドトキシン測定方法では、「LER陽性対照」が調製され、LER作用を提示するために段階(d)において使用されることが想定される。したがって、本発明の好ましい局面は、LER作用を示す抗体を含む試料中の細菌エンドトキシンを測定するための本明細書において提供される方法に関し、この方法は、以下の順序で以下の段階を含む:
(a0)-抗体を含む試料の第1のアリコートに公知の量のエンドトキシンを(例えば、最終濃度が5.0EU/mlとなるまで)スパイクすること、および
-エンドトキシンをスパイクされたアリコートを60分間~2時間(好ましくは、室温で60分間)振盪すること
によって、PPCを調製する段階、
(a)好ましくはMgCl2の形態のマグネシウムイオンを、最終濃度が10~100mM、好ましくは40~75mM、最も好ましくは45~55mMとなるまで、試料の第2のアリコートおよびPPCに添加する段階; (ならびに好ましくは、試料およびPPCを30分間~6時間、より好ましくは1~4時間、最も好ましくは1時間、インキュベートする段階(試料は、インキュベーションの前および後に振盪されてよい))、
(b)1:5(試料/PPC:緩衝液)~1:20(試料/PPC:緩衝液)、好ましくは1:10(試料/PPC:緩衝液)の比で10~50mMのTris/HCl緩衝液pH6.0~8.0、好ましくは50mMのTris/HCl緩衝液pH約7.0を用いて、試料およびPPCを希釈する段階、
(c)5.7~8.0(好ましくは6.5~7.5)のpH値を有する試料およびPPCを、エンドトキシンフリー水に対して1~48時間、好ましくは4~24時間、最も好ましくは24時間、透析する段階。(好ましくは、分子量カットオフ値が10kDaである酢酸セルロース膜が使用され、2時間後および4時間後に水が交換される。最も好ましくは、高速スピン透析器が使用され、スターラーの回転数は高い)。透析後、試料およびPPCは、10分間~1時間、好ましくは20分間、振盪される。
(d)LALアッセイ法を用いることによって、試料中およびPPC中の細菌エンドトキシンを測定する段階であって、このLALアッセイ法において「LER陽性対照」が使用され、LER陽性対照が、
-試験される試料の第3のアリコートに、最終濃度が5.0EU/mlとなるまでCSEをスパイクすること;
-スパイクされたアリコートを60分間以上、最も好ましくは60分間、振盪すること;
-スパイクされたアリコートを、エンドトキシンフリー水で希釈すること(スパイクされたアリコートは、本明細書において提供される方法の段階(b)における試験される試料と同程度まで希釈される);
-スパイクされたアリコートを(例えば1分間)振盪すること
によって調製される、段階。
【0060】
したがって、本発明の好ましい局面は、LER作用を示す抗体を含む試料中の細菌エンドトキシンを測定するための本明細書において提供される方法に関し、この方法は、以下の順序で以下の段階を含む:
(a0)-抗体を含む試料の第1のアリコートに公知の量のエンドトキシンを最終濃度が5.0EU/mlとなるまでスパイクすること、および
-エンドトキシンをスパイクされたアリコートを室温で約60分間振盪すること
によって、PPCを調製する段階、
(a)好ましくはMgCl2の形態のマグネシウムイオンを、最終濃度が45~55mMとなるまで試料の第2のアリコートおよびPPCに添加する段階、試料およびPPCを1分間振盪する段階、試料およびPPCを1時間インキュベートする段階、ならびにインキュベーション後に試料およびPPCを再び振盪する段階、
(b)試料およびPPCを、1:10(試料/PPC:緩衝液)で50mM Tris/HCl緩衝液pH約7.0を用いて希釈する段階、
(c)分子量カットオフ値が10kDaである酢酸セルロース膜を用いることによって、5.7~8.0(好ましくは6.5~7.5)のpH値を有する試料およびPPCを、エンドトキシンフリー水に対して24時間、透析する段階であって、2時間後および4時間後に水が交換される段階(好ましくは、高速スピン透析器が使用され、スターラーの回転数は高い)、ならびに試料およびPPCを20分間振盪する段階、ならびに
(d)LALアッセイ法を用いることによって、試料中およびPPC中の細菌エンドトキシンを測定する段階であって、このLALアッセイ法において「LER陽性対照」が使用され、LER陽性対照が、
-試験される試料の第3のアリコートに、最終濃度が5.0EU/mlとなるまでCSEをスパイクすること、
-スパイクされたアリコートを60分間、振盪すること、
-スパイクされたアリコートを、1:10の比でエンドトキシンフリー水を用いて希釈すること、
-スパイクされたアリコートを(例えば1分間)振盪すること
によって調製される、段階。
【0061】
さらに、前述したように、水対照がLALアッセイ法において利用されることが想定される。例えば、エンドトキシンフリー水からなる水対照が、本明細書において提供されるエンドトキシン測定方法の段階(d)のLALアッセイ法において利用されてよい。別の水対照は、エンドトキシンをスパイクされたエンドトキシンフリー水からなってよい。エンドトキシンをスパイク後、水は、好ましくは、(例えば、Heidolph Multi Reax振盪機において、高速(2,037rpm)で)60分間以上、(例えば、室温で60分間)、振盪される。さらに、LALアッセイ法では、通常、標準品が、使用されるキットの取扱い説明書に従って調製される。
【0062】
段階(a0)、(a)、(b)、(c)、および(d)は、(a0)→(a)→(b)→(c)→(d)の順序で行われるべきである。しかし、透析膜の洗浄は、透析が始まる際にその段階が遂行されていることを条件として、任意の時点に実施されてよい。同様に、LER陽性対照の調製も、LALアッセイ法が始まる際にその段階が遂行されていることを条件として、任意の時点に実施されてよい。本発明の好ましい局面において、本明細書において提供されるエンドトキシン測定方法は、以下の段階を含む。
【0063】
段階(a00): 試料の調製
・試験される試料の濃度をPPCに合わせる(例えば、900μlの抗体+100μlのエンドトキシンフリー水)
・PPCを作製するために、試験される試料のアリコートにエンドトキシンをスパイクする(例えば、900μlの抗体+100μlの濃度50EU/mlのCSE(=最終濃度5.0EU/ml))
・水対照を調製する(例えば、1000μlのエンドトキシンフリー水)
・別の水対照を調製する(例えば、900μlのエンドトキシンフリー水+100μlの濃度50EU/mlのCSE(=最終濃度5.0EU/ml))
・(例えば、Heidolph Multi Reax振盪機において、高速(2,037rpm)で)、室温で約60分間、試料を振盪する
【0064】
段階(a01): 透析膜の洗浄
・例えば、10kDa酢酸セルロース(CA)膜を使用し、エンドトキシンフリー水(例えば、製造業者B. Braun(メルスンゲン)製の蒸留水300ml)を入れた結晶皿にそれらを入れる
・それらを注意深く1時間振盪する(振盪機SG 20(IDL GmbH、ドイツ)または同等物、50~300rpm、好ましくは100rpm)
・新しいエンドトキシンフリー水(例えば、製造業者B. Braun(メルスンゲン)製の蒸留水300ml)を入れた新しい結晶皿に、これらの膜を移す
・それらを1時間振盪する(振盪機SG 20(IDL GmbH、ドイツ)または同等物、50~300rpm、好ましくは100rpm)
【0065】
段階(a): 25~100mM、好ましくは50~100mMのマグネシウムイオン(Mg2+)の添加
・例えばMgCl2の形態のMg2+を、最終濃度が25~100mM、好ましくは50~100mMとなるまで段階(a0)の試料に添加する(例えば、50μlの1M MgCl2原液を段階(a0)の試料に添加する)
・(例えば、Heidolph Multi Reax振盪機において、高速(2,037rpm)、室温で)2~5分間、例えば1分間、振盪する
・試料を45~75分間、好ましくは60分間、室温でインキュベートする
・(例えば、Heidolph Multi Reax振盪機において、高速(2,037rpm)、室温で)1分間、振盪する
【0066】
段階(b): 希釈
・段階(a)の試料の内の1つを取り、緩衝液pH約7.0(例えば50mM Tris/HCl緩衝液pH約7.0)を用いてそれを1:10希釈する(例えば、895μlの50mM Tris緩衝液+105μlの試料)
・好ましくは、2つの希釈試料を調製する
・例えば、以下のとおりである:
○ Tris緩衝液で1:10希釈した抗体 ×2 (試料)
○ Tris緩衝液で1:10希釈した、5.0EU/mlをスパイクした抗体 ×2 (PPC)
○ Tris緩衝液で1:10希釈したLAL水 ×2 (バックグラウンド)
○ Tris緩衝液で1:10希釈した5.0EU/mlのLAL水 ×2 (標準品)
○ LAL水=加えて下さい
【0067】
段階(c): 透析
・(例えば、Heidolph Multi Reax振盪機において、高速(2,037rpm)、室温で)1分間、希釈試料すべてを振盪する
・それらを透析器(好ましくはFastSpinDIALYZER)に移す
・撹拌機上のビーカー1個につき1つの透析器を入れる
・ビーカーをエンドトキシンフリー水(例えば、製造業者B. Braun(メルスンゲン)製の蒸留水200ml)で満たす
・室温で24時間透析し、2時間後および4時間後にエンドトキシンフリー水を交換する
・スターラーの回転数は、(特に、FastSpinDIALYZERが使用される場合)、好ましくは50~300rpm、より好ましくは200rpmである。スターラーは、好ましくは、長さが20~60mmであり、直径が5~25mmである。より好ましくは、スターラーは、長さが約40mmであり直径が約14mmであるマグネチックスターラーである。
【0068】
段階(d): 振盪
・透析後、新しい容器(例えば、1.5ml容のスクリューバイアル)中に試料を移し、(例えば、Heidolph Multi Reax振盪機において、高速(2,037rpm)、室温で)20~60分間振盪する
【0069】
段階(d00): 「LER陽性対照」およびさらなる水対照の調製
1. (段階(d00)は、必ずしも段階(d)の後に実施される必要はない。段階(d00)は、LALアッセイ法が始まる際に「LER陽性対照」およびさらなる水対照が準備できていることを条件として、任意の時点に実施されてよい)。好ましくは、透析が終わる1時間前に、「LER陽性対照」(すなわち「陽性LER対照」)を調製する(例えば、900μlの抗体+100μlの濃度50EU/mlのCSE(=最終濃度5.0EU/ml))
・例えば以下の、さらなる水対照を調製する:
1. 900μlの抗体+100μlのLAL水
2. 1000μlのLAL水
・900μlのLAL水+100μlの濃度50EU/mlのCSE(=最終濃度5.0EU/ml)
・(例えば、Heidolph Multi Reax振盪機において、高速(2,037rpm)、室温で)1時間、振盪する
・エンドトキシンフリー水で試料を1:10希釈する
・(例えば、Heidolph Multi Reax振盪機において、高速(2,037rpm)、室温で)1分間、振盪する
【0070】
段階(e): LALアッセイ法
製造業者の取扱い説明書に従って標準品(すなわち、使用されるLALアッセイ法キット中に含まれる標準品)を調製し、以下のようにして測定を開始する:
(1)LAL試薬(Kinetic-QCL(商標)試薬)の調製:
・使用直前に、バイアル1つにつき2.6mlのLAL試薬水を用いて、カブトガニ、アメリカカブトガニ(Limulus polyphemus)のアメーバ様細胞から調製された溶解物および発色性基質を同時に凍結乾燥した混合物を元に戻す。
(2)CSE原液(50EU/ml、すなわち、標準物質S1と等価)の調製:
・分析証明書に記載されており、かつ50EU(またはIU)/mlを含む溶液を生じるように計算された体積のLAL試薬水中で、CSE調製物(大腸菌O55:B5-LPS、各バイアルは、50~200EUの凍結乾燥エンドトキシンを含む)を元に戻す。
・このCSE原液を振盪機上で高速で少なくとも15分間、勢いよく振盪する。
・使用前に、溶液を室温まで温まらせ、振盪機上で高速で15分間、勢いよく再び振盪する。
(3)CSE標準品の系列の調製:
・室温で、LAL試薬水を用いて1:10方式でCSE原液/標準品S1を希釈して(段階1)、CSE標準品の全系列を得る(50、5、0.5、0.05、および0.005EU/ml)
(4)96ウェルマイクロプレートELISAリーダー形式でのLAL解析:
・マイクロプレートの適切なウェルの中に、100μlのLAL試薬水ブランク、エンドトキシン標準品、製品試料、陽性製品対照を注意深く分注する。
・満たしたプレートをマイクロプレートリーダー中に置き、蓋を閉める。
・37℃±1℃で10分間以上、プレートをプレインキュベートする。
・8チャンネルマルチピペッターを用いて、100μlのKinetic-QCL(商標)試薬をマイクロプレートのすべてのウェル中に、最初の列(A1~H1)から始めて、使用される最後の列まで順に進んで、分注する。試薬はできるだけ迅速に添加する(気泡を避ける)。
・直ちにコンピューターキーボードのOKボタンをクリックして、試験を開始する。(注意: Kinetic-QCL(商標)アッセイ法は、マイクロプレートのカバーを取り除いた状態で実施する)
【0071】
本明細書において、「スパイクすること」とは、「添加すること」または「供給すること」を意味する。例えば、「試料に公知の量のCSEをスパイクすること」は、「試料に公知の量のCSEを添加すること」または「試料に公知の量のCSEを供給すること」を意味する。
【0072】
リポ多糖(LPS)としても公知であるエンドトキシンは、グラム陰性細菌の外膜中に存在する大型分子であり、動物、例えばヒトにおいて強い免疫応答を誘発する。前述したように、本発明は、抗体を含む試料中の細菌エンドトキシンを測定(すなわち、検出および定量)するための方法を提供し、この方法は、本明細書において説明される段階(a)~(d)(好ましくは、段階(a00)、(a01)、および(d00)も含む)を含む。
【0073】
1つの態様において、エンドトキシンは、大腸菌エンドトキシンであってよい。したがって、本明細書において提供されるエンドトキシン測定方法の段階(d)において測定される(すなわち、検出および/または定量される)エンドトキシンは、大腸菌エンドトキシンであってよい。例えば、LALアッセイ法の間に試料中にスパイクされるエンドトキシンは、大腸菌エンドトキシン(すなわち、大腸菌から精製されたエンドトキシン)であってよい。好ましくは、エンドトキシンは、市販の大腸菌エンドトキシン(例えば、対照エンドトキシン標準品、CSE)である。
【0074】
WHO国際エンドトキシン標準品(I.S.)は、細菌エンドトキシン試験のための最良の較正物質として国際的に認識されている、大腸菌O113:H10:Kに由来するエントドキシン調製物である。国際標準品の現在のロットは、「エンドトキシンのWHO国際標準品第3期I.S.」と呼ばれている。
【0075】
参照エンドトキシン標準品(RSE)は、WHO国際エンドトキシン標準品と対比して較正されたエントドキシン調製物である。RSEは、(USP、EP、JP、ChPのような)国の機関によって定められ、LALアッセイ法で使用するためのCSE(下記を参照されたい)を較正するために提供される。
【0076】
対照エンドトキシン標準品(CSE)は、RSEと対比して較正された、RSE以外のエンドトキシン調製物である。CSEは、大腸菌O113:H10:K(例えば、Associates of Cape Cod, Inc.)または大腸菌O55:B5(例えば、Charles River、Lonza)のような他の大腸菌株から製造される、供給業者に固有の高度に精製されたエンドトキシン調製物である。供給業者は、ヒト血清アルブミン、PEG、またはデンプンのような安定化剤を、自由裁量で添加する場合がある。CSEは、意図される用途に応じて、様々な濃度で供給される。
【0077】
抗体を含む試料中のエンドトキシンを測定する(すなわち、検出および/もしくは定量する)ための本明細書において提供される方法、または抗体を含む試料を調製するための本明細書において提供される方法には、LALアッセイ法においてLER作用を未然に防ぐという有利な効果がある。したがって、本発明の1つの局面は、LALアッセイ法において細菌エンドトキシンを測定する際にLER作用を抑えるための、本明細書において提供される試料調製方法または本明細書において提供されるエンドトキシン測定方法の使用に関する。
【0078】
より具体的には、本明細書において提供される試料調製方法または本明細書において提供されるエンドトキシン測定方法には、これらの方法によって、LER作用を示す抗体を含む試料がLAL酵素カスケードにおけるC因子に対して反応性になるという有利な効果がある。したがって、本発明の1つの局面は、LER作用を示す抗体を含む試料をLAL酵素カスケードにおけるC因子に対して反応性にするための、本明細書において提供される試料調製方法または本明細書において提供されるエンドトキシン測定方法の使用に関する。
【0079】
本明細書において、特に「細菌エンドトキシンを測定すること」という文脈における「測定すること」という用語またはその文法的変形は、エンドトキシンの検出および/または定量、好ましくは、エンドトキシンの検出および定量に関する。本発明において、エンドトキシン(例えば、CSEのような大腸菌エンドトキシン)は、好ましくは、LALアッセイ法によって測定される。
【0080】
「細菌エンドトキシン試験(bacterial endotoxins test)」または「細菌エンドトキシン試験(bacterial endotoxin test)」という用語は、本明細書において互換的に使用され、グラム陰性細菌由来のエンドトキシンを検出または定量するための試験のグループに関する。BETは、公定書収載の(すなわち、欧州薬局方もしくは米国薬局方または他の国家もしくは国際的な医薬品規格などの、規格としての機能を果たす概論に関係した)LALアッセイ法(リムルスアメーバ様細胞溶解物アッセイ法)を表す。さらに、本発明において、LALアッセイ法の間の試験される試料のpH値は、5.7~8.0、好ましくは6.0~8.0、より好ましくは6.5~7.5であることが好ましい。
【0081】
「LALアッセイ法」という用語は、当技術分野において一般に公知であり、ヒトおよび動物用の非経口薬物、生物学的製品、および医療機器に対するインビトロエンドトキシン試験に相当する。具体的には、LALアッセイ法は、カブトガニ(アメリカカブトガニまたはタキプレウス・トリデンタツス(Tachypleus tridentatus))に由来するアメーバ様細胞溶解物を用いて、グラム陰性細菌由来のエンドトキシを検出および定量するための試験である。例えば、細菌細胞の増殖、細胞分裂、植物の枝枯れ(vegetation dieback)、および細胞溶解の間に、LPS分子が、かなり制御不能かつ非特異的な様式で、細菌細胞表面から放出される。放出されたLPSは、強力な細菌毒素であり、グラム陰性細菌による重度の感染症の毒性症状発現および有害な作用(例えば、高熱、低血圧、および不可逆性ショック)の主な原因である(Rietschel, 1994, FASEB J. 8:217-225)。リピドA構成成分が、LPSのこの生物活性を担っている。希釈された塩溶液中で、LPSは、高分子凝集体(ミセル)を形成する。これらのミセルの形成、サイズ、および動態は、LPS濃度、様々な物理化学的パラメーター(例えば、温度、緩衝液の濃度(イオン強度)、およびpH)、ならびにリピドAの中心オリゴ糖であるO鎖の構造と相関関係がある(Aurell, 1998, Biochem. Biophys. Res. Comm. 253:119-123)。あらゆるグラム陰性細菌において高度に保存されているLPSのリピドA部分が、LALアッセイ法によって認識されるLPS分子の部分であり、これにより、この試験は、幅広いグラム陰性細菌供給源からのエンドトキシン汚染を調査するためのゴールドスタンダードおよび適切な手順となっている(Takada(1988)Eur. J. Biochem; 175:573-80)。
【0082】
LALアッセイ法の原理を以下に説明する。LALアッセイ法では、LPSの検出は、LALのゲル化を介して起こる。このLALのLPS活性化活性は、以下の様々な因子の影響を受ける:
-LPS-LPS凝集物の形成(Akama, 1984, In "Bacterial Endotoxin" (Eds. J. Y. Homma, S. Kanegasaki, O. Luderitz, T. Shiba and O. Westphal), Publisher Chemie)
-例えば、ヒトリポタンパク質Apo A1、リゾチーム、リボヌクレアーゼA、またはヒトlgGとの、タンパク質-LPS凝集物の形成(Emancipator, 1992, Infect Immun. 60:596-601; Petsch, 1998, Anal. Biochem. 259:42-47)
-細菌細胞からのLPSの抽出方法(Galanos, 1984, In "Bacterial Endotoxin" (Eds. J. Y. Homma, S. Kanegasaki, O. Luderitz, T. Shiba and O. Westphal), Publisher Chemie)
-細菌の種類; 腸内細菌科内でのLAL活性化活性は様々で、1000倍の幅がある(Niwa, 1984, In "Bacterial Endotoxin"(Eds. J. Y. Homma, S. Kanegasaki, O. Luderitz, T. Shiba and O. Westphal), Publisher Chemie)
【0083】
LALアッセイ法は、米国(US)、欧州(EP)、および日本(JP)の薬局方において統一されている。統一された薬局方の章(USP<85>、Ph. Eur. 2.6.14.、およびJP 4.01)において、LALアッセイ法のための以下の3種の技術が説明されている:
-ゲル化技術(エンドトキシンによって誘発されるゲル化に基づく)
-比濁技術(ゲル化によって引き起こされる濁度に基づく)
-比色技術(合成ペプチド-色素原複合体の分裂後の発色に基づく)。
【0084】
さらに、これら3種の技術は、以下の6種の異なる方法で使用される:
方法A: ゲル化法、限度試験
方法B: ゲル化法、半定量的試験
方法C: キネティック比濁法
方法D: キネティック比色法
方法E: 比色エンドポイント法
方法F: 比濁エンドポイント法
Ph.Eur./USP/JPによれば、これら6種の方法は、等価とみなすことができる。
【0085】
本発明の優先される局面は、キネティック比色法またはキネティック比濁法が、試料中の細菌エンドトキシンの測定のために使用される、本明細書において提供される試料調製方法および本明細書において提供されるエンドトキシン測定方法に関する。最も好ましくは、キネティック比色法が、本明細書において提供される試料調製方法およびエンドトキシン測定方法において使用される。この技術を用いることによって、エンドトキシンを光度測定によって検出することができる。この技術は、エンドトキシンとLALの反応によって発色性基質(すなわち、適切な発色性ペプチド)から放出される発色団を測定するためのアッセイ法である。キネティック比色アッセイ法は、反応混合物があらかじめ定められた吸光度に達するのに必要とされる時間(発生時間)または発色速度のいずれかを測定するための方法である。この試験は、溶解物製造業者によって推奨されるインキュベーション温度(通常、37±1℃である)で実施される。例えば、キネティック比色LALアッセイ法を実施するために、試料は、LALおよび発色性基質(すなわち、Ac-Ile-Glu-Ala-Arg-pNAのような適切な発色性ペプチド)を含む試薬と混合され、インキュベートプレートリーダー中に置かれてよい。次いで,色(例えば黄色)の出現について、試料をある期間にわたってモニターする。色の出現前に必要とされる時間(反応時間)は、存在するエンドトキシンの量に反比例する。つまり、多量のエンドトキシンが存在する場合、反応は速く起こり; 少量のエンドトキシンが存在する場合、反応時間は長くなる。未知の試料中のエンドトキシンの濃度は、検量線を用いて計算することができる。LALアッセイ法の間、すなわち、本明細書において提供されるエンドトキシン測定方法の段階(d)において、エンドトキシンの定量は、好ましくは、少なくとも二桁の範囲を網羅する(本発明の1つの局面では、0.005、0.05、0.5、5.0、および50.0EU/ml)標準的な検量線を用いて実施される。
【0086】
例えば、キネティック比色LAL技術の間、以下の反応が起こり得る。グラム陰性菌エンドトキシンが、LAL中の酵素前駆体の活性化を触媒する。活性化の初速度は、存在するエンドトキシンの濃度によって決まる。活性化された酵素は、無色の基質Ac-Ile-Glu-Ala-Arg-pNAからのp-ニトロアニリン(pNA)の分裂を触媒する。放出されるpNAは、インキュベーション期間の間、継続的に、405nmでの光度測定によって測定される。試料中のエンドトキシンの濃度は、公知の量のエンドトキシン標準品を含む溶液の反応時間と比較することによって、その反応時間に基づいて算出される。LALアッセイ法のために、LONZA社製のキット「リムルスアメーバ様細胞溶解物(LAL)Kinetic-QCL(商標)」(カタログ番号: 50-650U、50-650NV、50-650H; K50-643L、K50-643U)を、製造業者の取扱い説明書に従って使用してよい。LALアッセイ法を実施することにより、使用されるキットに含まれるエンドトキシン(例えば、LONZA社製のキット「リムルスアメーバ様細胞溶解物(LAL)Kinetic-QCL(商標)」、カタログ番号: 50-650U、50-650NV、50-650H; K50-643L、K50-643Uに含まれる大腸菌O55:B5エンドトキシン)を使用することが想定される。
【0087】
本発明において、LALアッセイ法の間の試験される試料のpH値は、5.7~9.0であることが好ましい。より好ましくは、LALアッセイ法の間の試験される試料のpH値は、5.8~8.0、さらにより好ましくはpH5.8~7.5、さらにより好ましくはpH5.8~7.0である。最も好ましくは、LALアッセイ法の間の試験される試料のpH値は、5.8~7.0である。例えば、LALアッセイ法の間の試験される試料のpH値は、pH5.7、pH5.8、pH5.9、pH6.0、pH6.1、pH6.2、pH6.3、pH6.4、pH6.5、pH6.6、pH6.7、pH6.8、pH6.9、またはpH7.0であってよい。したがって、LALアッセイ法の前に、試験溶液(すなわち、溶解させた固形試料または液体試料)のpH値は、pH5.7~8.0の間、より好ましくはpH5.8~pH7.0の間に調整されることが本発明において想定される。必要な場合には、pH値は、例えば、希釈、緩衝剤の添加、および/または中和によって、調整することができる。
【0088】
いくつかの物質(例えばβ-グルカン)は、ある程度、LAL試験に干渉する(明らかな例外は、水試料である)。干渉は、LALアッセイ法の阻害または向上であり得る。具体的には、干渉因子は、LAL試験から得られるLPS定量、したがってエンドトキシンの定量を増大させるか、または減少させ得る。したがって、本明細書において提供されるエンドトキシン測定方法の段階(d)において、PPCの回収が、50~200%の許容範囲にない場合には、干渉因子を取り除かなければならない。これは、本明細書において提供される方法の段階(b)における試料希釈によって実施することができる。具体的には、試料は、エンドトキシンフリー水またはエンドトキシンフリー緩衝液で(好ましくは、Tris/HCl緩衝液pH約7.0で)希釈されてよい。阻害/向上がない、最も程度の低い試料希釈(最も高い製品濃度)は、「非干渉濃度(NIC)」と呼ばれる。しかし、試料希釈の間、MVD(Maximum Valid Dilution=エンドトキシン限界値を測定できる、試料の最大可能希釈率)を超えてはならない。具体的には、異なるバッチの試験結果に基づいて、全バッチを網羅する試料希釈率が選択される(有効な試料希釈率または試料濃度)。または、言い換えると、PPCにおいて50~200%の回収率をもたらす試料希釈率が、本明細書において提供される方法の段階(b)において選択される。選択された処理によって、エンドトキシンを失わずに(すなわち、LER作用を示さずに)効果的に干渉がなくなることを証明するために、所定の濃度のエンドトキシンをスパイクされた試料(すなわちPPC)を用いることによって、「干渉因子試験」を実施することができる。
【0089】
したがって、本発明の1つの局面は、PPCが調製され、本明細書において提供されるエンドトキシン測定方法の段階(d)においてエンドトキシンについて試験される、本明細書において提供されるエンドトキシン測定方法に関する。スパイクされたエンドトキシン対照標準品の回収率が50~200%になる場合、試料は干渉因子を含んでいない。
【0090】
USP/Ph.Eur./JPに従うBETは、各試験結果を個別に評価することを可能にする内部対照(PPC)を含むため、USP/Ph.Eur./JPに従うBET法の検証は、正確なエンドトキシン結果を得るための前提条件ではない。
【0091】
「エンドトキシン低回収(LER)」または「LER作用」という用語は、当技術分野において公知であり、具体的にはポリソルベートとクエン酸またはリン酸のいずれかとの組合せによって引き起こされるエンドトキシンマスキングを説明するものである(Chen, J. and Williams, K. L., PDA Letter 10, 2013, 14-16)。エンドトキシンマスキングはまた、他の任意の緩衝液構成成分またはそれらの組合せが原因で生じる場合もある。所与の材料(例えば、緩衝液または治療的抗体の試料)がLER作用を示すことを確認するために、例えば、エンドトキシン保持時間試験において、エンドトキシン含有量を経時的にモニターすることができる。エンドトキシン保持時間試験は、無希釈の試料にエンドトキシンをスパイクすること、およびエンドトキシンをスパイクされた試料をある期間にわたって保存することを必要とする。例えば、試料は、最長で数日(several)、保存されてよい。好ましくは、保持時間試験において、エンドトキシンをスパイクされた試料は、数(例えば、7、最長で28)日間、保存され、所定の時点に、LALアッセイ法が実施される。回収率が、スパイクされたエンドトキシンの量の50%未満である場合、その試料がLER作用を示していることが示唆される。エンドトキシン回収率が50%未満であるが、中間時点のいずれかでのみ起こり、最後の時点には起こらない場合、試験試料がマスキング作用を示すとみなすことはできない。
【0092】
近年、FDAは、LER現象を十分に認識し、手引きを発行した(Hughes, P., et al., BioPharm. Asia March/April 2015, 14-25を参照されたい)。これらの手引きは、所定の量のCSEが先に無希釈試料にスパイクされた場合、薬学的検体中のエンドトキシン回収率の許容される限界値は、50~200%の間の範囲である(例えば、5.0EU/ml=100%)と定めている。試験される試料がLER作用を示す場合は、スパイクされたエンドトキシンの回収率は、スパイクされたエンドトキシンの全量の50%未満である。
【0093】
本明細書において提供される本発明の方法において、試料は、抗体、好ましくはモノクローナル抗体を含む。本明細書において、「試料」、「試験される試料」、「抗体を含む試料」、および「抗体を含む試験される試料」という用語は、同義的に使用され、エンドトキシンの存在および/または量について試験される、抗体を含むある特定の量の液体を指す。または、言い換えると、「試料」、「試験される試料」、「抗体を含む試料」、および「抗体を含む試験される試料」という用語は、本明細書において同義的に使用され、エンドトキシンの存在および/または量(好ましくは、存在および量)について試験される液体であって、抗体を含む、液体に関する。該「抗体を含む試験される試料」は、好ましくは、治療的抗体の試料である。「治療的抗体」という用語は、ヒトでの使用を目的とする、任意の抗体製剤に関する。抗体(例えば治療的抗体)は、好ましくは、ポリソルベート80またはクエン酸ナトリウム緩衝液と共に、より好ましくは、ポリソルベート80およびクエン酸ナトリウム緩衝液と共に製剤化されている。最も好ましくは、抗体は、約25mMのクエン酸ナトリウム緩衝液および約700mg/Lのポリソルベート80と共に製剤化され、pH値は約6.5である。該抗体(例えば治療的抗体)がモノクローナル抗体であることが、本発明において好ましい。最も好ましくは、該抗体(例えば治療的抗体)は、抗CD20抗体リツキシマブである。したがって、本発明において、試料は、マブセラ(登録商標)/リツキサン(登録商標)/ジツクス(登録商標)の試料であってよい。試験される試料(すなわち、抗体を含む試験される試料)がLER作用を提示する/示すことが、本発明において想定される。
【0094】
本明細書において、「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、具体的には、インタクトなモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つのインタクト抗体から形成された多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、および抗体断片を、それらが所望の生物活性を示す限り、包含する。ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、またはCDRグラフト化抗体もまた、含まれる。
【0095】
本明細書において使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体集団から得られた抗体を意味する。すなわち、この抗体集団の個々の抗体は、少量で存在し得る、天然に存在する可能性がある変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位を対象とする。さらに、様々な決定基(エピトープ)を対象とする様々な抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、その抗原上の単一の決定基を対象とする。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の抗体に汚染されずに合成できるという点で、有利である。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体集団から得られたものであるという抗体の特徴を示し、いずれかの特定の方法による抗体の作製を必要とするものとして構成されるべきではない。例えば、本発明の方法の試料に含まれるモノクローナル抗体は、Kohler, G. et al., Nature 256 (1975) 495によって最初に説明されたハイブリドーマ法によって作製されてもよく、または組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)によって作製されてもよい。
【0096】
本明細書において説明されるモノクローナル抗体は、好ましくは、宿主細胞、最も好ましくはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞での発現によって作製される。作製のために、抗体のVLを含むアミノ酸配列および/またはVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖および/または重鎖)をコードする、抗体をコードする単離された核酸が、1つまたは複数のベクター(例えば発現ベクター)に挿入される。これらが、宿主細胞中に導入される。宿主細胞は、(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列および抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、または(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクターおよび抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクターを含む(例えば、それらを用いて形質転換されている)。宿主細胞は、真核生物性、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはリンパ系細胞(例えば、Y0細胞、NS0細胞、Sp20細胞)であることができる。
【0097】
抗体を組換え作製する場合、例えば前述したような抗体をコードする核酸は、単離され、宿主細胞におけるその後のクローニングおよび/または発現のために、1つまたは複数のベクター中に挿入される。このような核酸は、従来の手順を用いて(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)、容易に単離および配列決定され得る。
【0098】
抗体をコードするベクターのクローニングまたは発現に適した宿主細胞には、本明細書において説明する原核細胞または真核細胞が含まれる。例えば、抗体は、グリコシル化およびFcエフェクター機能が必要とされない場合には特に、細菌において作製することができる。細菌における抗体断片および抗体ポリペプチドの発現については、例えば、US5,648,237、US5,789,199、およびUS5,840,523を参照されたい。(大腸菌における抗体断片の発現を説明するCharlton, K.A., In: Methods in Molecular Biology, Vol. 248, Lo, B.K.C. (ed.), Humana Press, Totowa, NJ (2003), pp. 245-254も参照されたい)。発現後、抗体は、可溶性画分中の細菌細胞ペーストから単離することができ、さらに精製することができる。
【0099】
原核生物に加えて、糸状菌または酵母などの真核微生物も、抗体をコードするベクターのための適切なクローニング宿主または発現宿主であり、これらには、グリコシル化経路が「ヒト化」されており、その結果、部分的または全面的にヒトグリコシル化パターンを有している抗体を産生する真菌株および酵母株が含まれる。Gerngross, T.U., Nat. Biotech. 22 (2004) 1409-1414; およびLi, H. et al., Nat. Biotech. 24 (2006) 210-215を参照されたい。
【0100】
グリコシル化抗体の発現のために適した宿主細胞はまた、多細胞生物(無脊椎動物および脊椎動物)にも由来する。無脊椎動物細胞の例には、植物細胞および昆虫細胞が含まれる。昆虫細胞と組み合わせて、特にスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションのために使用され得る多数のバキュロウイルス株が同定されている。
【0101】
植物細胞培養物もまた、宿主として使用することができる。例えば、US 5,959,177、US 6,040,498、US 6,420,548、US 7,125,978、およびUS 6,417,429(トランスジェニック植物において抗体を作製するためのPLANTIBODIES(商標)技術を説明している)を参照されたい。
【0102】
脊椎動物細胞もまた、宿主として使用され得る。例えば、懸濁液中で増殖するように順応させた哺乳動物細胞株が、有用である場合がある。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7); ヒト胚性腎臓株(例えばGraham, F.L. et al., J. Gen Virol. 36 (1977) 59-74で説明されている293または293細胞); 仔ハムスター腎臓細胞(BHK); マウスセルトリ細胞(例えば、Mather, J.P., Biol. Reprod. 23 (1980) 243-252で説明されているTM4細胞); サル腎臓細胞(CV1); アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76); ヒト子宮頸部癌腫細胞(HELA); イヌ腎臓細胞(MDCK); バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A); ヒト肺細胞(W138); ヒト肝臓細胞(Hep G2); マウス乳房腫瘍(MMT060562); 例えば、Mather, J.P. et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383 (1982) 44-68で説明されている、TRI細胞; MRC5細胞; およびFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株には、DHFR-CHO細胞(Urlaub, G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77 (1980) 4216-4220)を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞; ならびにY0、NS0、およびSp2/0などの骨髄腫細胞株が含まれる。抗体作製に適したいくつかの哺乳動物宿主細胞株の概要については、例えば、Yazaki, P. and Wu, A.M., Methods in Molecular Biology, Vol. 248, Lo, B.K.C. (ed.), Humana Press, Totowa, NJ (2004), pp. 255-268を参照されたい。
【0103】
「抗体断片」は、インタクト抗体の一部分を含む。「抗体断片」という用語は、例えば、(i)Fab断片、すなわち、VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン、およびCH1ドメインからなる一価の断片; (ii)F(ab')2断片、すなわち、ヒンジ領域の位置でジスルフィド架橋によって連結されている2つのFab断片を含む二価の断片; (iii)VHドメインおよびCH1ドメインからなるFd断片; (iv)抗体の単一の腕のVLドメインおよびVHドメインからなるFv断片; (v)VHドメインからなるdAb断片(Ward; 1989; Nature 341; 544-546); ならびに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)を含むか、あるいはそれらからなる、抗原(例えばCD20)に結合する能力を保持している抗原結合部分、すなわち、「抗原結合部位」(例えば、断片、部分配列、相補性決定領域(CDR))を含む。抗体断片または派生物は、F(ab')2断片、Fv断片、もしくはscFv断片、または単鎖抗体もさらに含む。
【0104】
好ましくは、本明細書において提供される方法において、抗体(すなわち、試料中に含まれる抗体)は、リツキシマブである。
【0105】
「リツキシマブ」(商品名マブセラ(登録商標)、リツキサン(登録商標)、ジツクス(登録商標))という用語は、タンパク質CD20に対するキメラモノクローナル抗体に関する。CD20は、癌性B細胞および正常B細胞の表面に存在する。リツキシマブはB細胞を破壊し、したがって、例えば、過剰な数のB細胞、活動が活発すぎるB細胞、または機能に障害があるB細胞を特徴とする疾患を治療するのに使用される。これには、多くのリンパ腫、白血病、移植拒絶、および自己免疫障害が含まれる。例えば、リツキシマブは、皮下製剤として慢性リンパ性白血病に使用される。しかし、リツキシマブは、通常、点滴静注によって投与される。骨髄中の幹細胞は、リツキシマブ治療後、B細胞が再び増えるのを可能にするCD20タンパク質を有していない。本明細書において使用される場合、「リツキシマブ」という用語はまた、米国、欧州、および日本からなる国家群より選択される国または地域において市販承認を得るのに必要な要件を満たしているあらゆる抗CD20抗体または抗CD20抗体断片も包含する。最も好ましくは、「リツキシマブ」という用語は、それぞれSEQ ID NO: 1およびSEQ ID NO: 2に示す重鎖および軽鎖のアミノ酸配列を有している抗体を意味する。当業者には、所与のアミノ酸配列からコード核酸配列を得る方法が容易に分かる。したがって、SEQ ID NO: 1およびSEQ ID NO: 2が分かれば、リツキシマブのコード核酸配列を簡単に得ることができる。
【0106】
商品名「ネオレコルモン(登録商標)」は、エポエチンベータを活性成分として含む薬学的製剤を意味する。エポエチンベータは、天然に存在するホルモンエリスロポエチンの合成種である。エリスロポエチンは、健常な腎臓によって産生され、骨髄を刺激して、体中に酸素を運ぶ赤血球を産生させる。エポエチンベータはまた、化学療法を受けているある種のタイプの癌の罹患者の症候性貧血を治療するのにも使用される。化学療法の副作用の内の1つは、癌細胞だけでなく健常な血液細胞も死滅させてしまうことである。エポエチンを注射すると、赤血球産生が増加し、貧血の症状を緩和するのを助ける。エポエチンは赤血球産生を増加させるため、エポエチンを与えられている人からは、より多くの血液を採取することができ、この血液は、手術中または手術後の輸血のために保存することができる。
【0107】
本明細書において提供される試料調製方法またはエンドトキシン測定方法の段階(d)において、試料(すなわち、抗体を含む試料)は、エンドトキシンフリー水溶液に対して透析され、その際、試料のpH値はpH5.7~pH8.0の間(好ましくは、pH6.0~8.0の間、より好ましくは、pH6.5~7.5の間)である。生化学において、透析は、透析チュ―ブのような半透性膜を通る際の拡散速度の差に基づいて溶液中の分子を分離する、一般に使用される方法である。透析は、医薬透析と同じ原理に基づいて機能する、一般的な実験室技術である。生命科学調査という状況において、透析の最も一般的な用途は、抗体のような大きい高分子から、塩、還元剤、または色素などの不必要な低分子を除去することである。透析はまた、バッファー交換および薬物結合研究のためにも使用される。
【0108】
拡散は、平衡状態に到達するまでの高濃度領域から低濃度領域への分子の正味の移動をもたらす、溶液中の分子のランダムな熱運動(ブラウン運動)である。透析では、試料および緩衝液(透析液と呼ばれる)が、差次的な拡散パターンを引き起こし、それによって、試料および透析液の両方中の分子の分離を可能にする半透膜によって、隔てられている。この膜の孔径が原因となって、試料中の大型分子(例えば抗体)は膜を通過することができず、したがって、試料容器からの拡散が制限される。これに反して、低分子(例えば、クエン酸Na緩衝液の構成成分)は、膜を通って自由に拡散し、溶液の体積全体にわたる平衡を達成し、それによって、試料および透析液中のこれらの分子の総濃度が変わる。ひとたび平衡に到達すると、分子の最終濃度は、関与している溶液の体積によって決まり、平衡になった透析液が新しい透析液で置き換えられる(または交換される)(以下の手順を参照されたい)場合には、拡散によって、試料中の低分子の濃度がさらに低下すると考えられる。
【0109】
例えば、試料から(すなわち、抗体を含む試料から)クエン酸Na緩衝液を除去するための下記の透析手順が、使用されてよい:
1. 分子量カットオフ値が10kDaである膜を入手し洗浄する
2. 透析チューブ、カセット、または装置の中に試料を充填する
3. (緩衝液を撹拌しながら)透析液を入れた外部容器の中に試料を置く
4. 室温で24時間透析する; この24時間の間に水を2回替える
適切な体積の透析液および複数回の緩衝液交換を用いることによって、試料内のクエン酸ナトリウム緩衝液の濃度を無視できるレベル(すなわち、最初の含有量の1~2%)まで低下させることができる。
【0110】
以下の非限定的な図および例を参照することによって、本発明をさらに説明する。図面ならびに実施例において、説明する実験のほとんどは、所定の番号を用いて示す。例えば、呼称[リツキシマブ117]は、その実験が、製剤化されたリツキシマブおよび/または製剤化されたリツキシマブプラセボを用いて実施されたことを意味し、参照番号は「117」である。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【
図1】12~16kDaのMWCOを用いることによる、リン酸およびポリソルベート20を含むネオレコルモン(登録商標)の透析の時間依存性。室温での表示された透析時間、凍結乾燥、および重量計測(weighting)後に得られた内側透析液の重量が示されている。灰色の棒の上部のデータは、2回の測定値の平均量(%)を示す。
【
図2】透析前にウシ血清アルブミン(BSA)で処理した、または処理していない12~16kDaの膜MWCOを用いることによる、リン酸およびポリソルベート20を含むネオレコルモン(登録商標)の透析。表示された時間後に得られた内側透析液中のリン酸(P)の含有量が示されている。左の棒は、透析前に膜が0.2%BSAで処理された場合のPの量を示す。右の棒は、BSAで処理されない場合のPの量に相当する。内側透析液から回収されたリン酸の光度測定試験は、Strominger(1959, J. Biol. Chem. 234: 3263-3267)に従って実施した。
【
図3A】(A)リツキシマブおよび(B)リツキシマブプラセボを試料として用いることにより、実施例2.1で説明するLER作用を抑えるためのプロトコールを実施することによって得られた[リツキシマブ115]および[リツキシマブ117]の回収率(%)。図中の「高速スピン」および「低速スピン」は、スターラーの回転数を意味する(すなわち、「高速スピン」は、スターラーの回転数が高いことを意味する)。この例示的プロトコールはまた、他の試料、好ましくはクエン酸ナトリウム緩衝液および界面活性剤としてのポリソルベート80を含む検体のための日常的な品質管理にも有用である。
【
図4A】LER作用を抑えるための改良プロトコールの概略図および該プロトコールを実施することによって得られた回収率。(A)(例えば、リツキシマブおよびリツキシマブプラセボにおける)LER作用を抑えるための本発明によるプロトコールの概略図。詳細なプロトコールは、実施例2.2で説明する。この例示的プロトコールはまた、他の試料、好ましくはクエン酸ナトリウム緩衝液および界面活性剤としてのポリソルベート80を含む検体のための日常的な品質管理にも有用である。
【
図4B】LER作用を抑えるための改良プロトコールの概略図および該プロトコールを実施することによって得られた回収率。(B)[リツキシマブ046]
図4(A)に従うプロトコールを実施した後にLERアッセイ法によって得られた、リツキシマブおよびリツキシマブプラセボの回収率(%)。さらなる詳細については、実施例2.2で説明するプロトコールを参照されたい。
【
図5】[リツキシマブ059]リツキシマブを試料として用いることにより、参照実施例2で説明するプロトコールを実施することによって得られた回収率(%)。
【
図6】リツキシマブを試料として用いることにより、参照実施例3で説明するプロトコールを実施することによって得られた回収率(%)。参照実施例2.2で説明するプロトコールを実施することによって得られた回収率[リツキシマブ061]。
【
図7A】リツキシマブを試料として用いることにより、参照実施例4で説明するプロトコールを実施することによって得られた回収率(%)。(A)参照実施例3.1で説明するプロトコールを実施することによって得られた回収率[リツキシマブ062]。
【
図7B】リツキシマブを試料として用いることにより、参照実施例4で説明するプロトコールを実施することによって得られた回収率(%)。(B)参照実施例3.2で説明するプロトコールを実施することによって得られた回収率[リツキシマブ063]。
【
図8A】リツキシマブを試料として用いることにより、参照実施例5で説明するプロトコールを実施することによって得られた回収率(%)。(A)参照実施例4.1で説明するプロトコールを実施することによって得られた回収率[リツキシマブ064]。
【
図8B】リツキシマブを試料として用いることにより、参照実施例5で説明するプロトコールを実施することによって得られた回収率(%)。(B)参照実施例4.2で説明するプロトコールを実施することによって得られた回収率[リツキシマブ065]。
【
図9】リツキシマブおよびリツキシマブプラセボを試料として用いることにより、参照実施例6で説明するプロトコールを実施することによって得られた回収率(%)。[リツキシマブ072]。
【
図10A】リツキシマブおよびリツキシマブプラセボを試料として用いることにより、参照実施例7で説明するプロトコールを実施することによって得られた回収率(%)。(A)[リツキシマブ079]インキュベーションなし。
【
図10B】リツキシマブおよびリツキシマブプラセボを試料として用いることにより、参照実施例7で説明するプロトコールを実施することによって得られた回収率(%)。(B)[リツキシマブ080]4時間のインキュベーション。
【
図10C】リツキシマブおよびリツキシマブプラセボを試料として用いることにより、参照実施例7で説明するプロトコールを実施することによって得られた回収率(%)。(C)[リツキシマブ081]1日のインキュベーション。
【
図10D】リツキシマブおよびリツキシマブプラセボを試料として用いることにより、参照実施例7で説明するプロトコールを実施することによって得られた回収率(%)。(D)[リツキシマブ082]3日間のインキュベーション。
【
図11A】リツキシマブを試料として用いることにより、参照実施例8で説明するLALアッセイ法を実施することによって得られた回収率(%)。(A)[リツキシマブ002]様々な希釈率を用いたLALアッセイ法。
【
図11B】リツキシマブを試料として用いることにより、参照実施例8で説明するLALアッセイ法を実施することによって得られた回収率(%)。(B)[リツキシマブ004]Lonza製CSEスパイクおよびACC製CSEスパイクの比較。
【
図11C】リツキシマブを試料として用いることにより、参照実施例8で説明するLALアッセイ法を実施することによって得られた回収率(%)。(C)[リツキシマブ005]様々な希釈率およびpH調整を用いたLALアッセイ法。
【
図12】リツキシマブを試料として用いることにより、参照実施例8で説明するLALアッセイ法を実施することによって得られた回収率(%)。透析および希釈のみでは、LER作用を抑えない[リツキシマブ011]。
【
図13】LER作用の時間依存性。リツキシマブを試料として用いることにより、参照実施例1で説明するスパイクおよびLALアッセイ法を実施することによって得られた回収率(%)を示す[リツキシマブ027]。スパイク後の振盪時間(すなわち、2秒~60分)が表示されている。
【
図14A】LER作用に対する緩衝液系の重要性。参照実施例10で説明するLALアッセイ法を実施することによって得られた回収率(%)が示される。(A)リツキシマブまたはクエン酸ナトリウムが試料として使用され、1:2、1:5、1:10、または1:20の比で希釈された場合のLALアッセイ法[リツキシマブ006]。
【
図14B】LER作用に対する緩衝液系の重要性。参照実施例10で説明するLALアッセイ法を実施することによって得られた回収率(%)が示される。(B)クエン酸ナトリウム、ポリソルベート80、またはクエン酸ナトリウムおよびポリソルベート80が試料として使用され、1:2、1:5、または1:10の比で希釈された場合のLALアッセイ法[リツキシマブ029]。
【
図15A】LER作用に対するMgCl
2の影響。参照実施例13で説明するLALアッセイ法を実施することによって得られた回収率(%)が示される。(A)濃度が10mMとなるまでMgCl
2を添加[リツキシマブ030]。
【
図15B】LER作用に対するMgCl
2の影響。参照実施例13で説明するLALアッセイ法を実施することによって得られた回収率(%)が示される。(B)濃度が50mMとなるまでMgCl
2を添加[リツキシマブ031]。
【
図15C】LER作用に対するMgCl
2の影響。参照実施例13で説明するLALアッセイ法を実施することによって得られた回収率(%)が示される。(C)濃度が25mMとなるまでMgCl
2を添加[リツキシマブ032]
【
図15D】LER作用に対するMgCl
2の影響。参照実施例13で説明するLALアッセイ法を実施することによって得られた回収率(%)が示される。(D)濃度が75mMとなるまでMgCl
2を添加[リツキシマブ033]。
【
図16】LER作用に対する機械的処置の影響。参照実施例14で説明するLALアッセイ法を実施することによって得られた回収率(%)が示される[リツキシマブ034]。図中の「振盪された」は、60分間振盪されたことを意味する。
【0112】
以下の実施例は、本発明の理解を助けるために提供され、本発明の真の範囲は添付の特許請求の範囲において説明される。本発明の趣旨から逸脱することなく、説明される手順に修正を加えてよいことが理解される。
【実施例】
【0113】
実施例1: 技術的機器および試薬
1. 技術的機器
1.1 マイクロプレートリーダーシステム(本明細書において「リーダー」とも呼ばれる)
・Infinite(登録商標)200 PRO、マルチモードマイクロプレートリーダー; Tecan(スイス)/Tecan Deutschland GmbH(ドイツ)、P/N: 30050303。
・Magellan V. 7.1ソフトウェア
・Costar(商標)細胞培養プレート、96ウェル、Fisher Scientific、P/N: 07-200-89。
1.2 振盪機システムおよびガラスバイアル
・Multi Reax; Heidolph、ドイツ、P/N: 545-10000-00。
・1.5ml容スクリューネックガラスバイアル(N8); Macherey-Nagel GmbH & Co. KG、ドイツ、P/N: 702004(100本)
・N 8 PPスクリューキャップ、黒色、クローズドトップ; Macherey-Nagel GmbH & Co. KG、ドイツ、P/N: 70250(100個)。
・4ml容スクリューネックガラスバイアル(N13); Macherey-Nagel GmbH & Co. KG、ドイツ、P/N: 702962(100本)
・N 13 PPスクリューキャップ、黒色、クローズドトップ; Macherey-Nagel GmbH & Co. KG、ドイツ、P/N: 702051(100個)。
1.3 透析機器
・SpinDIALYZER(商標)、容器体積1000μl; Harvard Apparatus、U.S.A.、P/N740314(1個)および740306(5個)、地域の販売代理店: Hugo Sachs Elektronik Harvard Apparatus, GmbH、ドイツ、P/N SP1 74-0306(5個)。備考: ロット番号032613の使用。
この透析器は、生物試料の透析のための単純な一方向装置である。20μl~5mlの範囲の試料体積に適応させるために広範囲の透析器サイズが利用可能である。(本明細書において使用される)1ml用のカタログ番号は74-0314である。膜のMWCOは、100~300,000Daの範囲である。ユニット全体は、事実上非反応性の材料であるPTFEで構築されている。
・高速SpinDIALYZER、容器容積1000μl、Harvard Apparatus、U.S.A.、P/N740510(1個)または740504(5個)、備考; 双方向膜システム、表面の膜および底面の膜。
この透析器は、高い試料回収率を目的とするPTFE製の再使用可能な試料容器であり、さらに速い透析速度のためには、より大きな膜表面積を提供するように設計し直された。超高速透析器は、容積が50μl~1500μlであり、本明細書では1000μlで用いられた。(本明細書において使用される)1ml用のカタログ番号は74-0412である。
・酢酸セルロース膜、500Da MWCO、Harvard Apparatus、U.S.A.、P/N: SP1 7425-CA500、地域の販売代理店: Hugo Sachs Elektronik Harvard Apparatus GmbH、ドイツ、P/N: SP1 7425-CA500。
・酢酸セルロース膜、10kDa MWCO、Harvard Apparatus、U.S.A.、P/N: SP1 7425-CA10K、地域の販売代理店: Hugo Sachs Elektronik Harvard Apparatus GmbH、ドイツ、P/N: SP1 7425-CA10K。
備考: リツキシマブに関するLER調査ならびにネオレコルモン(登録商標)に関するLER実験において、「標準的な」500Da MWCO膜に加えて試験される。
・酢酸セルロース膜、25kDa MWCO、Harvard Apparatus、U.S.A.、P/N: SP1 7425-CA25K、地域の販売代理店: Hugo Sachs Elektronik Harvard Apparatus GmbH、ドイツ、P/N: SP1 7425-CA25K。
備考: リツキシマブに関するLER調査ならびにネオレコルモン(登録商標)に関するLER実験において、「標準的な」500Da MWCO膜に加えて試験される。
・Aqua B. Braun、滅菌済みパイロジェンフリー水、1l、Braun Melsungen AG、ドイツ、P/N: 14090586。
・結晶皿、900ml、OMNILAB、ドイツ、P/N: 5144008。(備考: 透析膜をゆすぐために使用)
・DURAN(登録商標)ビーカー、細長型、2000ml、OMNILAB、ドイツ、P/N: 5013163。
・DURAN(登録商標)ビーカー、細長型、250ml、OMNILAB、ドイツ、P/N: 5013136。
1.4 常用的な実験機器
・オートクレーブシステム(備考: 透析容器の滅菌のために使用)
・epT.I.P.S.(登録商標)LoRetention-Reloads、PCRクリーン、0.5~10μl、Eppendorf、ドイツ、P/N: 0030072.057
・epT.I.P.S.(登録商標)LoRetention-Reloads、PCRクリーン、2~200μl、Eppendorf、ドイツ、P/N: 0030072.022
・epT.I.P.S.(登録商標)LoRetention-Reloads、PCRクリーン、50~1000μl、Eppendorf、ドイツ、P/N: 0030072.030
・Stripettes(登録商標)、個包装(Individual)、5ml、紙/可プラスチック包装、Fisher Scientific、P/N: 10420201。
【0114】
2. 試薬
2.1 キネティック比色LALアッセイ法およびLALに関連する試薬
・Kinetic-QCL(商標)キット; Lonza、スイス、P/N: 50-650Uまたは50-650H(すなわち「Lonzaキット」)。
・CHROMO-LAL、Associates of Cape Cod (AAC) Inc.(USA)製、P/N: C0031-5(すなわち「ACCキット」)。
・K-QCL用のエンドトキシン大腸菌O55:B5; Lonza、スイス、P/N: E50-643。
・エンドトキシン大腸菌O55:B5、2.5mg/バイアル; Lonza、スイス、P/N: N185。
・LAL試薬水-100ml; Lonza、スイス、P/N: W50-100。
・MgCl2、LALと共に使用するための10mM溶液、30ml容バイアル; Lonza、スイス、P/N: S50-641。
・分析用の塩化マグネシウム六水和物EMSURE(登録商標)ACS, ISO, Reag. Ph. Eur.、250g; Merck、ドイツ、P/N: 1.05833.0250。
・トリス緩衝液、LALと共に使用するための50mM溶液、30ml容バイアル; Lonza、スイス、P/N: S50-642。
2.2 タンパク質試薬
・ウシアルブミン画分V、極めて少量のエンドトキシン、脂肪酸を含まない、25g; Serva、ドイツ、P/N: 47299.04。
・アルブミン、ヒト血清、画分V、高純度; 1g; Merck、ドイツ、P/N: 126658-1GM。
【0115】
3. 試験される薬剤
本明細書において説明する実施例のために、リツキシマブ(を含む)およびネオレコルモン(登録商標)(エポエチンベータを含む)を使用した。さらに、リツキシマブおよびネオレコルモン(登録商標)の各々のプラセボも、本明細書において説明する方法において使用した。各試料のプラセボは、活性な治療成分を欠くことを除いて、試料と同一である。すなわち、リツキシマブプラセボはリツキシマブを含まないが、製剤の他のすべての構成成分は含む。
【0116】
実施例2: LER作用を抑えるための本発明の方法
実施例2.1: LER作用を抑えるためのプロトコール
本実施例では、リツキシマブおよびリツキシマブプラセボを試料として使用した。しかし、下記に考察するように、本明細書において説明するプロトコールは、薬学的抗体のあらゆる典型的な製剤においてLERを抑えるのに有用である。
【0117】
本実施例のために使用される材料
-膜:
・Harvard Apparatus(U.S.A.)製の10kDa酢酸セルロース(CA)膜、P/N: SP1 7425-CA10K
-透析器:
・高速SpinDIALYZER、容器容積1000μl; Harvard Apparatus、U.S.A.、P/N740510(1個)および740504(5個)
-試料バイアル:
・1.5ml容スクリューネックガラスバイアル(N8); Macherey-Nagel GmbH & Co. KG、ドイツ、P/N: 702004
・N8 PPスクリューキャップ、黒色、クローズドトップ; Macherey-Nagel GmbH & Co. KG、ドイツ、P/N: 70250
-結晶皿:
・900ml、Duran, VWR、ドイツ、P/N: 216-1817
-MgCl2-原液:
・水に溶解させた1M MgCl2(分析用の塩化マグネシウム六水和物EMSURE(登録商標)ACS, ISO, Reag. Ph. Eur.、250g; Merck、ドイツ、P/N: 1.05833.0250)
-Tris緩衝液、LALと共に使用するための(すなわち、エンドトキシンを含まない)50mM溶液、30ml容バイアル; Lonza、スイス、P/N: S50-642
-試料:
・リツキシマブプラセボおよびLAL水
【0118】
段階的なプロトコール:
段階1: 試料の調製
・900μlのリツキシマブプラセボ+100μlのLAL水 ×1
・900μlのリツキシマブプラセボ+100μlの濃度50EU/mlのCSE(=最終濃度5.0EU/ml) ×1
・1000μlのLAL水 ×1
・900μlのLAL水+100μlの濃度50EU/mlのCSE(=最終濃度5.0EU/ml) ×1
・RT(室温)で60分、試料を振盪する(すなわち、Heidolph Multi Reax振盪機において、高速(2,037rpm))
段階2: 透析膜の洗浄
・10枚の10kDa酢酸セルロース(CA)膜を使用し、300mlのAqua Braun(すなわち、製造業者B. Braun(メルスンゲン)製の蒸留水)を入れた結晶皿にそれらを入れる
・それらを1時間振盪する(振盪機SG 20(IDL GmbH、ドイツ)または同等物、50~300rpm、好ましくは100rpm)
・それらの膜を、新しいAqua Braun(同様に300ml)を入れた新しい結晶皿に移す
・それらを1時間振盪する(振盪機SG 20(IDL GmbH、ドイツ)または同等物、50~300rpm、好ましくは100rpm)
段階3: 最終MgCl2濃度を約50mM MgCl2とするMgCl2の添加
・50μlの1M MgCl2原液を、段階1の試料に添加する
・それらを1分振盪する(すなわち、Heidolph Multi Reax振盪機において、高速(2,037rpm)、室温)
・試料を室温で60分間インキュベートする
・それらを1分振盪する(すなわち、Heidolph Multi Reax振盪機において、高速(2,037rpm)、室温)
段階4: 希釈
・段階3の試料の内の1つを取り、緩衝液pH約7(すなわち、50mMのTris/HCl緩衝液pH約7)を用いてそれを1:10希釈する
○ 895μlの50mM Tris緩衝液+105μlの試料
・反復測定(すなわち、2つ組の測定)のために、それを2回実施する:
○ Tris緩衝液で1:10希釈したリツキシマブプラセボ ×2
○ Tris緩衝液で1:10希釈したリツキシマブプラセボ5.0EU/ml ×2
○ Tris緩衝液で1:10希釈したLAL水 ×2
○ Tris緩衝液で1:10希釈したLAL水5.0EU/ml ×2
段階5: 透析
・希釈試料すべてを1分間振盪する(すなわち、Heidolph Multi Reax振盪機において、高速(2,037rpm)、室温)
・FastSpinDIALYZER中に移す
・マグネチックスターラープレート上のビーカー(すなわち、DURAN(登録商標)ビーカー(baker)、細長型、2000ml、OMNILAB、ドイツ、P/N: 5013163)1個につき1つの透析器を入れる。スターラーの回転数が高くなるように(すなわち、「高速スピン」)調整する。スターラーの高回転数とは、50~300rpm、好ましくは200~300rpmを意味する。スターラーは、加熱滅菌(250℃で4時間)された、長さが約40mmで直径が約14mmのマグネチックスターラーである。
・ビーカーを200mlのAqua Braunで満たす
・室温(21±2℃)で、24時間透析し、2時間後および4時間後にAquaBraunを交換する
・透析後、新しい1.5ml容スクリューバイアル中に試料を移す。
段階6: 振盪
・試料を20分間振盪する(すなわち、Heidolph Multi Reax振盪機において、高速(2,037rpm)、室温)
段階7: 「LER陽性対照」(すなわち、陽性LER対照)およびさらなる水対照の調製
・透析が終わる1時間前にLER陽性対照を調製する
1. 900μlのリツキシマブプラセボ+100μlのLAL水
2. 900μlのリツキシマブプラセボ+100μlの濃度50EU/mlのCSE(=最終濃度5.0EU/ml))
3. 1000μlのLAL水
4. 900μlのLAL水+100μlの濃度50EU/mlのCSE(=最終濃度5.0EU/ml)
・1時間振盪する(すなわち、Heidolph Multi Reax振盪機において、高速(2,037rpm)、室温)
・試料をLAL水で1:10(試料:LAL水)希釈する
・1分間振盪する(すなわち、Heidolph Multi Reax振盪機において、高速(2,037rpm)、室温)
段階8: LALアッセイ法
・製造業者の取扱い説明書に従って標準品を調製し、LALアッセイ法を開始する(Kinetic-QCL(商標)アッセイ法; Lonza)
【0119】
結果および考察
図3(A)(すなわち[リツキシマブ117])および3(B)(すなわち[リツキシマブ115])で認めることができるように、前述の方法は、LER作用を抑えることができる。さらに、この方法を用いることによって、リツキシマブならびにリツキシマブプラセボにおいて、LER作用を抑えることができる。このことから、前述のプロトコールが、特定のモノクローナル抗体を含む製剤に依存しておらず、ポリソルベート80およびキレート化緩衝剤(例えばクエン酸ナトリウム)を含むあらゆる製剤においてLER作用を未然に防ぐのに使用できることが示される。この製剤は、抗体、特にモノクローナル抗体にとって典型的である。したがって、前述の方法は、あらゆる抗体製剤においてLER作用を抑えるのに有用であると予想される。
【0120】
Mg2+が、キレート化緩衝剤(例えばクエン酸ナトリウム)を含みLER作用を示す製剤におけるLAL反応性を回復させるための特別好ましい二価陽イオンであることが判明している。キレート化緩衝液(例えばクエン酸ナトリウム緩衝液)を除去するために、(Mg2+の添加後の)第2の段階は、透析を実施することである。Harvard製のspinDIALYZER(商標)が、透析のための好ましい機器である。
【0121】
界面活性剤(例えばポリソルベート80)は、LER作用の第2の原因である。一般に、生物試料中に界面活性剤(例えばポリソルベート80)が存在すると、その界面活性剤の臨界ミセル濃度(CMC)(通常、μM範囲)に到達した場合に、ミセルが形成する。ミセルは、C因子、すなわちLALカスケード反応の最初の酵素に相当するセリンプロテアーゼがLPSを介して活性化されるのを阻害する場合がある(Nakamura(1988a)J. Biochem. 103: 370-374)。モノクローナル抗体調製物において、無希釈の試料は通常、抗体の機能的可溶化を達成するために、CMCを上回っている。本明細書において調査された製品において、実際、界面活性剤のCMCは、それらのCMC(ポリソルベート80: 700mg/l(50倍過剰)を超えていたことから、ポリソルベート80はミセル形態で存在すると想定された。前述のプロトコールにおいて、界面活性剤の濃度は、界面活性剤の濃度がCMC値(ポリソルベート80: 14mg/lまたは10.6μM)に近くなる/より低くなるように、希釈によって低められる。CMC値に近い濃度に界面活性剤を希釈すると、ミセル区画化がなくなり、したがって、スパイクされるCSE分子がLAL酵素に接近可能になり得る。
【0122】
したがって、(例えば、クエン酸ナトリウムおよびポリソルベート80が薬学的製品の調剤のために使用される状況における)LER作用という問題は、この時点で解決されたとみなすことができる。結論として、安全で、状況に左右されない、再現可能な、薬学的製品の試験方法が、本明細書と共に提供される。
【0123】
要約すれば、リツキシマブおよびリツキシマブプラセボにおいて、前述のプロトコールは、驚くべきことにLER作用を抑える。対照的に、同じプロトコールによって、ネオレコルモン(登録商標)(抗体は含まないがエポエチンベータを含む)について満足な結果を明らかにすることはできなかった。このことから、本明細書において提供される方法が、抗体製剤、好ましくは、モノクローナル抗体、クエン酸緩衝液、およびポリソルベート80を含む製剤に特に有用であることが示唆される。
【0124】
実施例2.2: LER作用を抑えるための改良プロトコール(1)
本実施例において、やはりLER作用を抑える改良プロトコールが使用された。実施例2.1と比べて最も重要な変更点は、下記のとおりである:
1. 実施例2.2では、スピン透析器が使用された。一方、実施例2.1では、より効率的な透析容器を有しており、透析効率を高める(膜が、シリンダーの両側に存在する)FastSpinDIALYZERが使用される。
2. 実施例2.2では、透析膜のMWCOは500Daである。一方、実施例2.1では、透析膜のMWCOは10kDaである。
3. 実施例2.2では、希釈率は、エンドトキシンフリー水による1:10である。一方、実施例2.1では、希釈率は、Tris緩衝液pH約7(すなわちTris/HCL緩衝液pH約7)による1:10である。1:10の比でエンドトキシンフリー水を用いて試料を希釈することによって、試料のpH値は、約pH6.0に調整される。
4. 実施例2.2では、透析時間は4時間である。一方、実施例2.1では、透析時間は24時間である。
本実施例では、リツキシマブおよびリツキシマブプラセボを試料として使用した。しかし、実施例2.1に関して論じたのと同じ理由で、このプロトコールは、あらゆる典型的な抗体製剤においてLERを抑えるのに有用である。
具体的に、実施例2.2で使用されたプロトコールを以下に詳述する。
【0125】
プロトコールの概要
段階1: 「LER作用の設定」(下記の「LER陽性対照」も参照されたい):
リツキシマブ試料およびリツキシマブプラセボ試料に5EU/mlまたは0.5EU/ml(CSE; Lonza、大腸菌O055:B5)をスパイクし、混合物を最大速度(振盪機: Heidolph Multi Reax、高速(2,037rpm))で、室温で60分間振盪して、「陽性LER作用」試料を得た。
段階2: MgCl2の添加: 透析前に、最終濃度が約50mM MgCl2となるように2M MgCl2原液を添加する; 段階1のように1分間振盪。
段階3: 1:10希釈(1つの試料は、基準として希釈しない(無希釈)); 段階1のように1分間振盪。
段階4: 500Da膜を用いて4時間透析(0.2%BSAと共に30分間プレインキュベーション; 任意であり、必須ではない)、2時間後に水を一度交換。溶液を透析容器からガラスバイアル中に移し、室温(RT)(room temperature、すなわち21±2℃)で20分間、段階1のように振盪。
段階5: キネティックLALアッセイ法による測定。
【0126】
詳細なプロトコール
段階1: 試料の調製
・50mM MgCl2用の抗体溶液(リツキシマブ)の調製: 1本のチューブを877.5μlのリツキシマブ+97.5μlのCSEで満たす(50(5)EU CSE/mlの原液→最終濃度5(0.5)EU/ml)
・スパイクされていない対照: 877.5μlのリツキシマブプラセボ+97.5μlの水
・スパイクされていない水対照: 975μlの水(ブランクを差し引くため)
・使用するバイアル: 透明、平底、小さな開口部、1.5ml、Macherey & Nagel、商品番号(Ref. Nr)70213
・Heidolph Multi Reaxを高速(2,037rpm)で用いて、室温で1時間、振盪する
段階2: 最終濃度を50mM MgCl2とするMgCl2の添加
・原液1M MgCl2・6H2O: スパイクされた試料ならびにスパイクされていない試料(ブランク)に50μlの1M MgCl2原液を添加する。
段階3: 希釈
・50mM MgCl2を含むリツキシマブ試料: 900μlのエンドトキシンフリー水(すなわちLAL水)+100μl試料を添加することによって1:10希釈物を調製する
・水対照は、リツキシマブの代わりにエンドトキシンフリー水(すなわちLAL水)を用いて同じように処理する、すなわち1:10希釈する
段階4: 透析
・透析前に1分間振盪する(すなわち、Heidolph Multi Reax振盪機において、高速(2,037rpm)、室温)。
・MWCOが500Daの膜(任意で、0.2%BSAと共に30分間プレインキュベートした)が取り付けられた1ml容の透析器容器(Harvard Spin Dialyzer)に試料を入れる。
・1lのAqua Braun(すなわち、滅菌済みパイロジェンフリー水; B. Braun, メルスンゲンによって供給される)に対して24℃で4時間透析する; 2時間後に水を交換する。交換用の水も、24℃に調節しておいた。
・Spin Dialyzerは、撹拌しながら(テフロン(Teflon)マグネチックスターラー)、1lのAqua Braunを満たした複数の2l容ビーカーに(透析容器の数に応じて)割り当てる。
・1つの2l容ビーカーに最大で5個のDialyzerが存在する。
段階5: LER陽性対照の調製
また、本実施例では、LER陽性対照もLALアッセイ法において使用される。このLER陽性対照は、LALアッセイ法が開始する際に準備ができていることを条件として、任意の時点に調製してよい。有利には、LER陽性対照は、すべての試料が同時に試験準備が整うように、4時間の透析が終わる1時間前に調製される。LER陽性対照を調製するために、以下のプロトコールが使用される:
・900μlのリツキシマブ+100μlのCSE→最終濃度CSE: 5.0EU/ml。
・Heidolph Multi Reaxにおいて、高速(2,037rpm)、室温で1時間、振盪する。これらの条件下でのみ、最大LER作用(<1%回収率)が得られると考えられる。
・並行して、以下のブランクを調製する:
○ 5.0EU/ml CSEを含む水
○ 5.0EU/ml CSEを含む水; 1:10希釈されたもの(0.5EU/ml)。
段階6: LALアッセイ法
・すべての試料が調製された後に試験を開始する。
・すべての試料から、プレート中で反復測定(2回、すなわち、2つ組の測定)するために100μlのアリコート2つを使用する。このプレートをTecan Reader中、37℃で10分間、インキュベートする。
・100μlのLAL試薬(Kinetic-QCL(商標)アッセイ法; Lonza)を各試料に明確な順序で(機械表示に従って)添加する。
【0127】
結果および考察
実施例2.1で説明したプロトコールにより、最も優れた再現可能な回収率が得られた(水対照に関しても同様)。しかし、実施例2.2で説明したプロトコールにより、両方のCSEスパイク濃度の場合に50~95%の範囲の良好なCSE回収率が得られた(
図4(B)[リツキシマブ046])を参照されたい)。したがって、実施例2.2で使用されたプロトコールは、実施例2.1で説明したプロトコールの機能的等価物に相当する。
【0128】
参照実施例1: LER作用の時間依存性
先行技術では、所定の量のCSEを試料にスパイクした直後にLER作用が現れると仮定されている(C. Platco, 2014, “Low lipopolysaccharide recovery versus low endotoxin recovery in common biological product matrices”. American Pharmaceutical Review, September 01, 2014, pp. 1-6)。したがって、最初は、室温で、約2~10分というかなり短い時間、LPSスパイク後に試料を振盪した。しかし、この種のスパイクは、結果的に非効率的であることが分かり、いくつかの実験から、スパイクされた材料のマスキング効果は、この短い時間間隔(10分未満)の間にはその最大値にまだ達していないことが示された。スパイクのメカニズムが、LER作用を正確な方法で解析する際の重要な工程の内の1つであることが判明した(例えば、
図13[リツキシマブ027]を参照されたい)。これらのデータによれば、LER作用は動力学的現象であり、例えば、配合混合物のミセル中に侵入することによってCSE分子をマスクするのに時間を要する。したがって、LER作用を解析するための次の段階の前に2~10分間振盪すること(これはルーチン的な実施の代表例である)は不適切であり、LER作用の成立のための条件はまだ満たしていないため、LER作用に相当するとみなすことはできない。したがって、(LAL試験によって0%の回収率に達した場合に存在すると定められる)「陽性LER作用」を試験するための内部標準を、これらの実験に含めた。リツキシマブにおけるLER作用について動態研究を実施することによって、陽性LER作用が60分以上のインキュベーション期間を必要とすることが実証された。
【0129】
具体的には、最大限のLER作用に達するために、どれくらい長く振盪が実施されなければならないか(最大回転数(すなわちボルテックスする)、Heidolph Multi Reax振盪機において、高速(2,037rpm)、室温(21℃±2℃)、1.5ml容の透明なガラス製のクリンプネック平底容器中)を解析した。したがって、0.5EU/mlおよび5.0EU/mlを達成するために、バイアル中でリツキシマブ試料にCSEをスパイクした(Macherey-Nagel製のバイアル、1.5ml)。スパイク後、試料をそれぞれ60分間、30分間、10分間、5分間、または2秒間振盪した。その後、900μlのエンドトキシンフリー水(すなわちLAL水)と100μlの試料を混合することによって、1:10希釈物を調製した。希釈後、試料を再び1分間振盪した。続いて、試料を2つ組にしてLALアッセイ法で試験した。具体的には、各試料を100μlずつプレートに添加し、37℃で10分間、リーダー中でインキュベートした。次に、100μlの色素原を各試料に添加し、測定を実施した。この実験では、溶液はすべて室温であった。
図13[リツキシマブ027]で認めることができるように、試料を1:10の比で希釈した場合、対応する無希釈試料と比べてLER作用が小さい(すなわち、回収率が高い)。さらに、2秒間振盪した後、5.0EU/mlエンドトキシンを含む希釈試料の回収値は、依然として約50%であった。しかし、振盪(すなわちボルテックス)時間を長くすると、(30分の値を除いて)回収率が一貫して低下する。
図13[リツキシマブ027]を参照されたい。一方、無希釈試料は、2秒後に既に最大限のLER作用を示している。しかし、希釈試料もまた、60分間振盪(すなわちボルテックス)された試料において、顕著なLER作用を示した。
【0130】
この結果から、スパイクをしてからLPS分子を界面活性剤ミセル中に隠すのには時間が必要であると結論を下した。CSEの約100%のマスキングまたは0.5%未満の回収率が得られる場合、「陽性LER作用」は完全である。このプロセスは、室温で振盪時に最低1時間(例えば、振盪機: Heidolph Multi Reax、高速(2,037rpm)、1時間、室温、1.5~5ml容の透明なガラス製のクリンプネック平底中)を必要とするか、あるいは24時間を超える長期間の4℃での保存を必要とする。結果として生じる「陽性LER対照」は、グラフ表現における図面の右側の1本のバーとして、すべてのグラフプロット中に示している。
【0131】
参照実施例2: 回収率に対する、ヒト血清アルブミン(HSA)および様々なMgCl
2濃度の影響
エンドトキシンをスパイクされたリツキシマブ試料の回収率に対するHSAおよび様々なMgCl
2濃度の作用を明らかにするために、以下の実験を実施した。さらに、この実験では、回収率に対する透析の影響も解析した。より具体的には、「陽性LER作用」を得るために、スパイクされたリツキシマブ試料を60分間振盪した。透析に先立って、10~75mM MgCl
2を添加し、続いて、希釈を行った。BSAでブロックした膜は使用しなかった。透析後、0.01μg/ml HSAを添加するか、または添加しない。続いて、20分間の振盪を実施する。さらに、いくつかの試料は、まったく透析しなかった。具体的には、LALアッセイ法で試験した様々な試料を
図5(すなわち[リツキシマブ059])に示している。この実験において、LER作用は、透析を行わないいくつかの試料において抑えることができた。しかし、さらなる実験から、透析を行わない場合、再現可能にLER作用を抑えることはできないことが実証された。または、言い換えると、透析を行わない場合、LER作用を抑える場合もあれば、抑えない場合もある。したがって、試料を透析することにより、LER作用を抑えるための、状況に左右されにくい方法が得られる。
【0132】
試料は、Macherey-Nagel製の1.5ml容スクリューネックバイアル中で調製した。
【0133】
段階1: 試料の調製
・10mM MgCl2のための、スパイクされたリツキシマブの調製: 5.0EU/mlが得られるように、897μlのリツキシマブ+99.8μlのCSE
・50mM MgCl2のための、スパイクされたリツキシマブの調製: 5.0EU/mlが得られるように、889μlのリツキシマブ+98.8μlのCSE
・75mM MgCl2のための、スパイクされたリツキシマブの調製: 5.0EU/mlが得られるように、883μlのリツキシマブ+98.1μlのCSE
・10mM MgCl2のための、スパイクされた水の調製: 5.0EU/mlが得られるように、897μlの水+99.8μlのCSE
・50mM MgCl2のための、スパイクされた水の調製: 5.0EU/mlが得られるように、889μlの水+98.8μlのCSE
・75mM MgCl2のための、スパイクされた水の調製: 5.0EU/mlが得られるように、883μlの水+98.1μlのCSE
・60分間振盪する(Heidolph Multi Reax振盪機、高速(2,037rpm)、室温)
段階2: MgCl2の添加
・4MのMgCl2原液(すなわち、511.437mgのMgCl2・6H2Oを0.629mlの水に溶かしたもの)を使用した。
○ 10mM MgCl2の場合、スパイク試料に2.5μlの4M溶液を添加する。
○ 50mM MgCl2の場合、スパイク試料に12.5μlの4M溶液を添加する。
○ 75mM MgCl2の場合、スパイク試料に19μlの4M溶液を添加する。
・1分間振盪する(Heidolph Multi Reax振盪機、高速(2,037rpm)、室温)
段階3: 希釈
・1:10の比の希釈物を以下のように調製した:
・リツキシマブ1:10の調製: 常に900μlのLAL水+100μlの試料
・十分な透析器が入手できないため、水は1:10希釈しなかった。
・1分間振盪する(Heidolph Multi Reax振盪機、高速(2,037rpm)、室温)
段階4: 透析
・試料を1mL容の透析器の中に入れた。500Daの膜。しかし、膜をLAL水の中で洗浄した。
・1LのAqua Braunに対して24℃で4時間透析を実施し、2時間後に水を交換した。新しい水の温度も24℃であった。
・透析器を3つの2l容ビーカーの中に置くと、各ビーカー中には長いスターラー(すなわち撹拌子)があるため、回転した。
・各ビーカー中には常に4つの透析器がある。
段階5: 透析後のHSAの添加
・透析後、試料を分割した。HSA試料を調製するために、各試料を396μlずつ、別々のバイアルに加えた。HSAを含まない試料を調製する場合、400μlを別々のバイアルに加えた。
・HSA濃度を0.01μg/mlにするために、4μlの1μg/ml溶液を396μlの各試料に添加した。
・HSA原液を新しく調製した。
・20分間振盪する(Heidolph Multi Reax振盪機、高速(2,037rpm)、室温)
段階6: LER陽性対照の調製
・LER陽性対照は、他の試料と同時に準備が整うように、4時間の透析が終わる1時間前に調製する。
・5.0EU/mlが得られるように、900μlのリツキシマブ+様々なCSE原液の100μlのCSE
・1時間室温で振盪する(Heidolph Multi Reax振盪機、高速(2,037rpm))
段階7: LALアッセイ法
・二重測定(double determination)において、各試料を100μlずつプレートに添加した。
・37℃で10分間、リーダー中でインキュベーション。
・100μlの色素原を各試料に添加した。
・リーダー中での測定を開始。
【0134】
結果および考察
これらの結果を
図5に示す[リツキシマブ059]。この実験は、HSA処理が回収率を低下させ、したがって、本明細書において提供される方法において有用性が低いことを実証する。さらに、これらの結果から、満足のいく回収率を得るのに、透析膜のBSA処理は必要ではないことが示される。さらに、この実験は、50mM MgCl
2が回収にとって最適な値であり、10および75mM MgCl
2の場合は回収率が低くなることも実証する。しかし、75mM MgCl
2を用いた場合でも、満足のいく回収率が得られた。さらに、この実験は、MgCl
2を添加すると、透析を行わない場合でさえ、満足のいく範囲の回収率(70~100%)が得られることも示す。しかし、前述したように、透析を行わない場合、LER作用を再現可能に抑えることはできない。したがって、試料を透析することにより、LER作用を抑えるための、状況に左右されにくい方法が得られる。この実験[リツキシマブ059]において、水対照の値が高かった(値の一部は220%を超えた)ことが示されている。LER陽性対照は、満足のいく、すなわち0%の回収である。
【0135】
参照実施例3: MgCl
2添加後4時間のインキュベーション期間
この実験では、「陽性LER作用」を実現するために、リツキシマブ試料を60分間振盪した。MgCl
2添加後、無希釈試料を室温で4時間インキュベートした。このインキュベーション後、試料を2分間振盪した。LALアッセイ法で試験した様々な試料を
図5(B)[リツキシマブ061]に示している。
【0136】
試料は、Macherey-Nagel製の1.5ml容スクリューネックバイアル中で調製した。
【0137】
段階1: 試料の調製
・10mM MgCl2のための、スパイクされたリツキシマブ/水の調製: 5.0EU/mlが得られるように、897μlのリツキシマブ/水+99.8μlのCSE
・50mM MgCl2のための、スパイクされたリツキシマブ/水の調製: 5.0EU/mlが得られるように、889μlのリツキシマブ/水+98.8μlのCSE
・75mM MgCl2のための、スパイクされたリツキシマブ/水の調製: 5.0EU/mlが得られるように、883μlのリツキシマブ/水+98.1μlのCSE
・100mM MgCl2のための、スパイクされたリツキシマブ/水の調製: 5.0EU/mlが得られるように、877μlのリツキシマブ/水+97.5μlのCSE
・150mM MgCl2のための、スパイクされたリツキシマブ/水の調製: 5.0EU/mlが得られるように、866μlのリツキシマブ/水+96.3μlのCSE
・60分間振盪する(Heidolph Multi Reax振盪機、高速(2,037rpm)、室温)
段階2: MgCl2の添加
・4M MgCl2原液(すなわち、534.661mgのMgCl2・6H2Oを0.657mlの水に溶かしたもの)を使用した。
・10mM MgCl2の場合、スパイク試料に2.5μlの4M溶液を添加する。
・50mM MgCl2の場合、スパイク試料に12.5μlの4M溶液を添加する。
・75mM MgCl2の場合、スパイク試料に19μlの4M溶液を添加する。
・100mM MgCl2の場合、スパイク試料に25μlの4M溶液を添加する。
・150mM MgCl2の場合、スパイク試料に37μlの4M溶液を添加する。
・1分間振盪する(高速(2,037rpm)、室温)
段階3: 希釈
・1:10の比の希釈物を調製した: 900μlのLAL水+100μlの試料(すなわち、リツキシマブ試料または水試料)
・1分間振盪する(Heidolph Multi Reax振盪機、高速(2,037rpm)、室温)
段階4: LER陽性対照の調製
・5.0EU/mlが得られるように、900μlのリツキシマブ+100μlのCSE
・5.0EU/mlが得られるように900μlリツキシマブ+100μlのCSEを混合し、続いて、その試料をエンドトキシンフリー水で1:10希釈することによって、別のLER陽性対照を調製した。
段階5: 振盪
・すべての試料ならびにLER陽性対照を室温で1時間振盪した(Heidolph Multi Reax振盪機、高速(2,037rpm))。
段階6: LALアッセイ法
・二重測定において、各試料を100μlずつプレートに添加した。
・37℃で10分間、リーダー中でインキュベーション。
・100μlの色素原を各試料に添加した。
・リーダー中での測定を開始。
【0138】
結果および考察
この実験の結果を
図6(B)(すなわち[リツキシマブ061])に示している。この図から、50mM MgCl
2がCSE回収のための再現可能な最適値であり; 10、75、および150mMの場合は若干悪い結果を示すことが、再び実証される。MgCl
2添加後のインキュベーション期間を実施した場合、無希釈のリツキシマブ試料は、CSE回収をまったくもたらさなかった。
図6(B)(すなわち[リツキシマブ061])を参照されたい。しかし、1:10希釈物は、約50~60%の回収をもたらした(特に、10、50、75、または100mM MgCl
2が添加された場合)。水対照の値ならびにLER陽性対照は、満足のいくものであった。この実験では、透析を実施しなかった。しかし、いくつかの実験から、再現可能にLER作用を抑えるには透析が必要であることが示された。
【0139】
参照実施例4: MgCl
2添加後2時間および4時間のインキュベーション期間の比較
「陽性LER作用」を実現するために、リツキシマブ試料を60分間振盪した。MgCl
2添加後、無希釈試料を2時間または4時間インキュベートし、次いで、1:10希釈し、LALアッセイ法において測定した。LALアッセイ法で試験した様々な試料を
図7(A)および7(B)(すなわち、それぞれ[リツキシマブ062]および[リツキシマブ063])に示している。
【0140】
試料は、Macherey-Nagel製の1.5ml容スクリューネックバイアル中で調製した。
【0141】
段階1: 試料の調製
・10mM MgCl2のための、リツキシマブ/水の調製: 0.5および5.0EU/mlが得られるように、897μlのリツキシマブ/水+99.8μlの様々なCSE原液
・50mM MgCl2のための、リツキシマブ/水の調製: 0.5および5.0EU/mlが得られるように、889μlのリツキシマブ/水+98.8μlの様々なCSE原液
・75mM MgCl2のための、リツキシマブ/水の調製: 0.5および5.0EU/mlが得られるように、883μlのリツキシマブ/水+98.1μlの様々なCSE原液
段階2: 2つのLER陽性対照の調製
・0.5および5.0EU/mlが得られるように、900μlのリツキシマブ+100μlのCSE
・1:10の比でエンドトキシンフリー水を用いて、LER陽性対照の内の1つを希釈。
段階3: 振盪
・すべての試料ならびにLER陽性対照を1時間振盪する(Heidolph Multi Reax振盪機、高速(2,037rpm)、室温)。
段階4: MgCl2の添加
・4M MgCl2原液を使用した。
○ 10mM MgCl2の場合、スパイク試料に2.5μlの4M溶液を添加する。
○ 50mM MgCl2の場合、スパイク試料に12.5μlの4M溶液を添加する。
○ 75mM MgCl2の場合、スパイク試料に19μlの4M溶液を添加する。
・1分間振盪する(Heidolph Multi Reax振盪機、高速(2,037rpm)、室温)
段階5: インキュベーション期間
・(無希釈の)試料(ならびにLER陽性対照)を分割する。それぞれ、各試料の一方の半分(約500μl)を2時間インキュベートし、もう一方の半分を4時間インキュベートした。
段階6: 希釈
・2分間振盪する(Heidolph Multi Reax振盪機において、高速(2,037rpm)、室温)
・1:10の比の希釈物を調製した: 900μlのLAL水+100μlの試料(すなわち、リツキシマブ試料または水試料)
・1分間振盪する(Heidolph Multi Reax振盪機、高速(2,037rpm)、室温)
段階7: LALアッセイ法
・二重測定において、各試料を100μlずつプレートにアプライした。
・37℃で10分間、リーダー中でインキュベーション。
・100μlの色素原を各試料に添加した。
・リーダー中での測定を開始。
【0142】
結果および考察
これらの結果を
図7(A)および7(B)に示す(すなわち、それぞれ[リツキシマブ062]および[リツキシマブ063])。この実験で、0.5および5.0EU/mlエンドトキシンの回収率を測定した。10~75mM MgCl
2を試料に添加した場合、2時間インキュベートした試料(
図7(A)、すなわち[リツキシマブ062])および4時間インキュベートした試料(
図7(B)、すなわち[リツキシマブ063])において、回収率は同じであった。両方の実験において、回収率は非常に似ている。さらに、5.0EU/mlエンドトキシンがスパイクされた試料では、透析を行わない場合でさえ、満足のいく回収率(80~90%)が得られた。0.5EU/mlエンドトキシンがスパイクされた試料では、回収率は約35~45%であった。重要なことには、希釈(1:10の比)を行わない場合、同じく10~75mM MgCl
2の存在下で、完全なLERが観察され、すなわち回収率は0%である。水対照ならびにLER陽性対照は、満足のいくものであった。これらの実験では、透析は実施していない。しかし、さらなる実験から、透析を行わない場合、LER作用を抑える場合もあれば、抑えない場合もあることが実証された。したがって、試料を透析することにより、LER作用を抑えるための、状況に左右されにくい方法が得られる。
【0143】
参照実施例5: 様々な量のMgCl
2の添加後2時間のインキュベーション期間の場合と、様々な量のMgCl
2の添加後インキュベーション期間なしの場合との比較
「陽性LER作用」を実現するために、リツキシマブ試料を60分間振盪した。MgCl
2添加後、無希釈試料をインキュベートしないか、または2時間インキュベートした。次いで、1:10希釈し、LALアッセイ法において測定した。LALアッセイ法で試験した様々な試料を
図8(A)および8(B)(すなわち、それぞれ[リツキシマブ064]および[リツキシマブ065])に示している。
【0144】
参照実施例5.1: MgCl2添加後インキュベーション期間がない場合
この実験では、試料にMgCl2を添加した後にインキュベーションを実施しなかった。
【0145】
試料は、Macherey-Nagel製の1.5ml容スクリューネックバイアル中で調製した。
【0146】
段階1: 試料の調製
・10mM MgCl2のための、リツキシマブ/水の調製: 0.5および5.0EU/mlが得られるように、897μlのリツキシマブ/水+99.8μlの様々なCSE原液
・25mM MgCl2のための、リツキシマブ/水の調製: 0.5および5.0EU/mlが得られるように、895μlのリツキシマブ/水+99.4μlの様々なCSE原液
・50mM MgCl2のための、リツキシマブ/水の調製: 0.5および5.0EU/mlが得られるように、889μlのリツキシマブ/水+98.8μlの様々なCSE原液
段階2: 2つのLER陽性対照の調製
・0.5EU/mlおよび5.0EU/mlが得られるように、900μlのリツキシマブ+100μlのCSE
・1:10の比でエンドトキシンフリー水を用いて、LER陽性対照の内の1つを希釈。
段階3: 振盪
・すべての試料ならびにLER陽性対照を60分間振盪した(ボルテックスした)(Heidolph Multi Reax振盪機、高速(2,037rpm)、室温)。
段階4: MgCl2の添加
・4M MgCl2原液を使用した。
○ 10mM MgCl2の場合、スパイク試料に2.5μlの4M溶液を添加する。
○ 25mM MgCl2の場合、スパイク試料に6.25μlの4M溶液を添加する。
○ 50mM MgCl2の場合、スパイク試料に12.5μlの4M溶液を添加する。
・1分間振盪する(Heidolph Multi Reax振盪機、高速(2,037rpm)、室温)
段階5: 希釈
・1分間振盪する(Heidolph Multi Reax振盪機、高速(2,037rpm)、室温)
・1:10の比の希釈物を調製した。
・1分間振盪する(Heidolph Multi Reax振盪機、高速(2,037rpm)、室温)
段階6: LALアッセイ法
・二重測定において、各試料を100μlずつプレートにアプライした。
・37℃で10分間、リーダー中でインキュベーション。
・100μlの色素原を各試料に添加した。
・リーダー中での測定を開始。
【0147】
結果および考察
これらの結果を
図8(A)(すなわち[リツキシマブ064])に示す。結果を考察するために、参照実施例4.2を参照されたい。
【0148】
参照実施例5.2: MgCl
2添加後2時間のインキュベーション
この実験では、MgCl
2を添加した後に試料を2時間インキュベートした。参照実施例4.1の箇所で前述したように、
段階1~4を実施した。しかし、MgCl
2添加後、無希釈試料を室温(21℃)で2時間インキュベートした。インキュベーション後、以下の
段階5および6を実施した。LALアッセイ法で試験した様々な試料を
図8(B)(すなわち[リツキシマブ065])に示している。
【0149】
段階5: 希釈
・2分間振盪する(Heidolph Multi Reax振盪機、高速(2,037rpm)、室温)
・1:10の比の希釈物を調製した: 900μlのLAL水+100μlの試料(すなわち、リツキシマブ試料または水試料)
・1分間振盪する(Heidolph Multi Reax振盪機、高速(2,037rpm)、室温)
段階6: 2つのLER陽性対照の調製
・0.5および5.0EU/mlが得られるように、900μlのリツキシマブ+100μlのCSE
・1:10の比でエンドトキシンフリー水を用いて、LER陽性対照の内の1つを希釈。
段階7: 振盪
・すべての試料ならびにLER陽性対照を1時間振盪した(Heidolph Multi Reax振盪機、高速(2,037rpm)、室温)。
段階8: LALアッセイ法
・二重測定において、各試料を100μlずつプレートにアプライした。
・37℃で10分間、リーダー中でインキュベーション。
・100μlの色素原を各試料に添加した。
・リーダー中での測定を開始。
【0150】
結果および考察
参照実施例4.1の結果を
図8(A)に示している(すなわち[リツキシマブ064]); 参照実施例4.2の結果を
図8(B)に示している(すなわち[リツキシマブ065])。これら2つの実験において、希釈およびLAL測定は、MgCl
2の添加直後に(
図8(A)、[リツキシマブ064])、またはMgCl
2の添加後2時間、試料を休ませた後に(
図8(B)、[リツキシマブ065])、実施した。回収率の値はどれも非常に似ており、5.0EU/ml CSEがスパイクされた試料では、透析を行わない場合でさえ、満足のいく(60~80%)回収率が得られていた。興味深いことに、2時間のインキュベーション期間の後、25mM MgCl
2濃度の場合、100%の回収率が得られた。したがって、MgCl
2添加後のインキュベーション期間は、LER作用を減らすための有用な手段であるように思われる。しかし、0.5EU/ml CSEがスパイクされた試料の回収率の値は低く、約20~35%であった。このことから、Mg
2+の添加および希釈のほかに、透析が、LER作用を確実に抑えるために必要な段階であることが示される。これらの実験において、水対照の値は、満足のいくものであった。無希釈のLER陽性対照もまた、満足のいく、すなわち0%であった。
【0151】
参照実施例6: リツキシマブ試料およびリツキシマブプラセボ試料を用いた、様々な希釈率の比較
スパイク後、「陽性LER作用」を実現するために、リツキシマブ試料およびリツキシマブプラセボ試料を60分間振盪した。MgCl
2添加後、無希釈試料を1時間振盪し、1:2、1:5、1:10、または1:20の比で希釈した。その後、LALアッセイ法を実施した。LALアッセイ法で試験した様々な試料を
図9に示している(すなわち[リツキシマブ072])。
【0152】
具体的には、以下の実験が実施された:
段階1: 試料の調製
・25mM MgCl2のための、リツキシマブ/リツキシマブプラセボ/水の調製: 0.5および5.0EU/mlが得られるように、895μlのリツキシマブ/リツキシマブプラセボ/水+99.4μlの様々なCSE原液
段階2: 3つのLER陽性対照の調製
・0.5EU/mlおよび5.0EU/mlが得られるように、450μlのリツキシマブプラセボ+50μlのCSE(第1のLER陽性対照)
・0.5EU/mlおよび5.0EU/mlが得られるように、450μlのリツキシマブ+50μlのCSE(第2のLER陽性対照)
・0.5EU/mlおよび5.0EU/mlが得られるように、450μlのリツキシマブ+50μlのCSE。その後、この試料を1:10の比で希釈した(第3のLER陽性対照)。
段階3: 振盪
・すべての試料ならびにLER陽性対照を60分間振盪した(ボルテックスした)(Heidolph Multi Reax振盪機、高速(2,037rpm)、室温)。
段階4: MgCl2の添加
・4M MgCl2原液を使用した。
○ 25mM MgCl2の場合、スパイク試料に6.25μlの4M溶液を添加する。
・1分間振盪する(Heidolph Multi Reax振盪機中、高速(2,037rpm)、室温)
段階5: 希釈
・以下のように試料を希釈した:
○ 1:5の比での希釈: 400μlの水+100μlの試料
○ 1:10の比での希釈: 450μlの水+50μlの試料
○ 1:20の比での希釈: 475μlの水+25μlの試料
・3つのLER陽性対照の内の1つを1:10の比で希釈した。
・MgCl2を含まない水は希釈しなかった。
・1分間振盪する(Heidolph Multi Reax振盪機、高速(2,037rpm)、室温)
段階6: LALアッセイ法
・二重測定において、各試料を100μlずつプレートにアプライした。
・37℃で10分間、リーダー中でインキュベーション。
・100μlの色素原を各試料に添加した。
・リーダー中での測定を開始。
【0153】
結果および考察
これらの結果を
図9に示している(すなわち[リツキシマブ072])。重要なことには、リツキシマブおよびリツキシマブプラセボの結果は、有意な差を示していない。このことから、リツキシマブにおけるLER作用が、緩衝液系(すなわち、ポリソルベート80を含むクエン酸緩衝液)に主に基づいていること、および抗体(すなわちリツキシマブ)がLER作用に顕著な影響を与えていないことが、示される。しかし、この実験では、リツキシマブおよびリツキシマブプラセボの両方とも、回収率は満足のいくものではない。前述の実験において、水対照の値は、満足のいくものであった。無希釈のLER陽性対照もまた、満足のいく、すなわち回収率が0%であった。
【0154】
参照実施例7: リツキシマブ試料およびリツキシマブプラセボ試料における回収率に対する、MgCl
2添加前のインキュベーション期間の影響
以下の実験において、MgCl
2添加前のインキュベーション期間がリツキシマブ試料およびリツキシマブプラセボ試料の回収率に影響を与えるかどうかを試験した。具体的には、「陽性LER作用」を実現するために、リツキシマブ試料およびリツキシマブプラセボ試料を60分間振盪した。次いで、4℃で0時間~3日間、試料をインキュベートした。その後、濃度が50mMとなるまでMgCl
2を添加し、試料を希釈した。次いで、BSAでブロックされていない透析膜を用いて、透析を実施した。LALアッセイ法で試験した様々な試料を
図10に示している(すなわち、[リツキシマブ079]および[リツキシマブ082])。
【0155】
試料は、Macherey-Nagel製の1.5ml容スクリューネックバイアル中で調製した。
【0156】
段階1: 試料の調製
・50mM MgCl2のための、リツキシマブ/リツキシマブプラセボ/水の調製: 0.5または5.0EU/mlが得られるように、5,346μlのリツキシマブ/リツキシマブプラセボ/水+596μlの様々なCSE原液。
・60分間ボルテックスする(Heidolph Multi Reax振盪機、高速(2,037rpm)、室温)
・別の手順のために、各試料1mlずつを新しいバイアルに移した。
段階2: インキュベーション期間
・試料を0時間、4時間、1日、3日、または7日間、4℃の冷蔵庫の中に入れた。
・1日、3日、または7日間のインキュベーション期間の後、試料を2分間振盪した(Heidolph Multi Reax振盪機、高速(2,037rpm)、室温)。0時間および4時間のインキュベーション期間の後、試料は振盪しなかった。
段階3: MgCl2の添加
・5M MgCl2原液(すなわち、0.9055gのMgCl2を0.891mlの水に溶かしたもの)を使用した。
○ 50mM MgCl2の場合、スパイク試料に10μlの5M溶液を添加した。
・1分間振盪する(Heidolph Multi Reax振盪機、高速(2,037rpm)、室温)
段階4: 希釈
・1:10の比の希釈物を調製した: 900μlのLAL水+100μlの試料(すなわち、リツキシマブ試料、リツキシマブプラセボ試料、または水試料)
・MgCl2を含まない水は希釈しなかった。
・1分間振盪する(Heidolph Multi Reax振盪機、高速(2,037rpm)、室温)
段階5: 透析
・試料を1mL容の透析器の中に加えた。1lのAqua Braunに対して24℃で4時間透析を実施し、2時間後に水を交換した。新しい水の温度も24℃であった。事前にBSAと共にインキュベートしていない500Daの膜を使用した。
・透析器を3つの2l容ビーカーの中に置くと、各ビーカー中には長いスターラー(すなわち撹拌子)があるため、回転した。
・透析後、試料を新しい1.5ml容バイアルに移した。
段階6: 振盪
・20分間振盪する(Heidolph Multi Reax振盪機、高速(2,037rpm)、室温)
段階7: LER陽性対照の調製
・LER対照は、他の試料と同時に準備が整うように、4時間の透析が終わる1時間前に調製した。
・5.0EU/ml CSEが得られるように、900μlのリツキシマブまたはリツキシマブプラセボ+100μlのCSE
・1時間室温で振盪する(Heidolph Multi Reax振盪機、高速(2,037rpm))
段階8: LALアッセイ法
・二重測定において、各試料を100μlずつプレートにアプライした。
・37℃で10分間、リーダー中でインキュベーション。
・100μlの色素原を各試料に添加した。
・リーダー中での測定を開始。
【0157】
結果および考察
これらの結果を、
図10(A)(すなわち[リツキシマブ079]、インキュベーションなし)、
図10(B)(すなわち[リツキシマブ080]、4時間のインキュベーション)、
図10(C)(すなわち[リツキシマブ081]、1日のインキュベーション)、および
図10(D)(すなわち[リツキシマブ082]、3日間のインキュベーション)に示している。7日間のインキュベーションの結果は示していない。これらの結果もやはり、本明細書において説明するプロトコールを用いることにより、リツキシマブ試料およびリツキシマブプラセボ試料について優れた回収率を得ることができることを実証する。さらに、この実験は、MgCl
2添加前のインキュベーション期間によって回収率は改善しないことも実証する。具体的には、0~4時間のインキュベーション期間の場合、所望の範囲内(50~200%)の回収率が得られたのに対し、1日および3日というインキュベーション期間の場合、低い回収率が得られた(約20~30%)。インキュベーションを実施しなかった場合(すなわち0時間)、リツキシマブについて、非常に優れた回収率が得られた(70~80%)。5.0EU/ml CSEをスパイクされたリツキシマブプラセボについても、回収率は満足のいくものであった。0.5EU/ml CSEをスパイクされたリツキシマブプラセボの回収率は、ブランクが非常に高かったため、負の値であった。このことは、このブランク試料がエンドトキシンで汚染されていたことを示す可能性がある。この実験でも、水対照の回収率(80~120%)ならびにLER陽性対照の回収率(約0%)は、満足のいくものであった。
【0158】
参照実施例8: 最新技術のプロトコール(「LALアッセイ法」)およびその改変法では、リツキシマブでもリツキシマブプラセボでもLER作用を抑えることはできない
本実施例において、一般に公知であるLALアッセイ法によってリツキシマブ調製物およびリツキシマブプラセボ調製物中のエンドトキシンを検出できるかどうかを明らかにした。したがって、以下の材料を使用した:
[リツキシマブ002]: Lonza CSE+Lonza試薬(すなわちLonzaキット)
[リツキシマブ004]: それぞれACC CSEまたはLonza CSE+ACC試薬(すなわちACCキット)
[リツキシマブ005]: Lonza CSE+ACC試薬(すなわちACCキット)
【0159】
製造業者によって説明されているようにして、LALアッセイ法を正確に実施した。
【0160】
図11(A)~(C)(すなわち、それぞれ[リツキシマブ002]、[リツキシマブ004]、および[リツキシマブ005])から認めることができるように、いくつかの異なる希釈物を試験する場合でも、標準的なLALアッセイ法では、満足のいく回収率が得られなかった。具体的には、1つの実験(すなわち[リツキシマブ002])において、リツキシマブを96ウェルプレート(すなわちマイクロタイタープレート)中にピペットで分注し、最終濃度が0.5EU/mlまたは5.0EU/mlとなるまでLonza CSEをスパイクした。続いて、
図11(A)に示すような水による希釈(すなわち[リツキシマブ002])を、96ウェルプレート中で実施した。次いで、LALアッセイ法を実施した。しかし、
図11(A)(すなわち[リツキシマブ002])で認めることができるように、50%の回収率には到達しなかった。
【0161】
同様の実験(すなわち[リツキシマブ004])において、リツキシマブをマイクロタイタープレートのウェル中にピペットで分注し、最終濃度が0.5EU/mlまたは5.0EU/mlとなるまでLonza CSEおよびACC CSEをスパイクした。続いて、
図11(B)に示すような水による希釈(すなわち[リツキシマブ004])を、96ウェルプレート中で実施した。その後、測定を実施した。しかし、
図11(B)で認めることができるように、ACC CSEの場合は200%を超える回収率が得られ、Lonza CSEスパイクでは、またも、満足のいく回収率が得られなかった。
【0162】
さらなる実験において、pH調整がLALアッセイ法に与える影響を解析した。具体的には、1つの実験([リツキシマブ005])において、リツキシマブをマイクロタイタープレート中にピペットで分注し、そのプレート中でLonza CSEスパイクを実施した。続いて、
図11(C)[リツキシマブ005]に示すような水による希釈またはpH調整を実施した。しかし、希釈してもpH調整しても、50%の回収率は得られなかった(
図11(C)[リツキシマブ005]を参照されたい)。
【0163】
また、透析だけでも、満足のいく回収率は得られない。より具体的には、さらなる実験において、最終濃度が0.5および5.0EU/mlとなるまで、リツキシマブにCSEをスパイクした(すなわち900μlのリツキシマブ溶液を100μlのCSEと混合した)。続いて、4℃で4時間、1ml容Spin Dialyser(1ml容Teflon容器)中で、試料を透析し、その際、2時間後に水を1回交換した。透析膜のMWCOは100Daであった。次いで、
図12(すなわち[リツキシマブ011])に示す透析を、プレート中で実施した。続いて、LALアッセイ法を用いて、エンドトキシン回収を測定した。しかし、優れた回収率は、水対照についてしか得ることができなかった。リツキシマブの場合、最大回収率は5%未満であった(
図12、[リツキシマブ011]を参照されたい)。したがって、透析および希釈のみでは、LER作用を抑えない。
【0164】
参照実施例9: 保持時間試験
LER作用を確認しモニターするために、エンドトキシン保持時間試験において、エンドトキシン含有量を経時的にモニターした。したがって、様々な緩衝液の無希釈試料にエンドトキシンをスパイクし、ある期間にわたって(最長28日)保存した。適切な試料混合物のスパイク後にPPC中で回収される許容範囲のエンドトキシン値は、理論上のスパイク値(100%)の50~200%の範囲であると定められる。LER作用は、経時的なエンドトキシンの顕著な減少によって示される。具体的には、理論上のスパイク値の50%未満のエンドトキシン値という不利な傾向は、LER作用を暗示している。
【0165】
配合緩衝液のいくつかの構成成分をエンドトキシン保持時間試験で調査した(結果については、下記の表を参照されたい)。
【0166】
【0167】
上記の表から認めることができるように、ポリソルベート20およびNa2HPO4を含む緩衝液; ポリソルベート20およびNaH2PO4を含む緩衝液; ポリソルベート20、Na2HPO4
+、およびNaH2PO4を含む緩衝液; クエン酸Na、ポリソルベート80、およびNaClを含む緩衝液; クエン酸Naおよびポリソルベート80を含む緩衝液; ならびにポリソルベート80およびNaClを含む緩衝液がLER作用を示している。
【0168】
参照実施例10: LER作用に対する緩衝剤および界面活性剤の影響
いくつかの実験において、クエン酸および/またはポリソルベート80がLER作用に与える影響を解析した。具体的には、1つの実験において、リツキシマブおよび25mMクエン酸ナトリウム緩衝液を試料として使用した。スパイク前に、pHをpH7に調整した。続いて、CSEスパイクをプレート中で実施し、試料を水で希釈した。
図14(A)(すなわち[リツキシマブ006])から認めることができるように、希釈率1:10を用いることによって、クエン酸ナトリウムの場合に満足のいく回収率を得ることができた。しかし、リツキシマブの場合、50%の回収率に到達することはできなかった。
【0169】
別の実験において、25mMクエン酸ナトリウム緩衝液、ポリソルベート80、および両方の組合せを試料として使用した。具体的には、リツキシマブ中に存在する際の濃度を使用した(すなわち、ポリソルベート80: 0.7mg/ml; クエン酸ナトリウム: 9mg/ml)。これらの緩衝液系に、0.5および5.0EU/mlのLonza CSEまたはCape cod CSEをスパイクした(クエン酸ナトリウムは例外で、Lonzaのみをスパイクした。理由は、クエン酸ナトリウム緩衝液のACCスパイクは、前述の実験で既に実施し、
図14(A)(すなわち[リツキシマブ006])で示したからである)。スパイク後、水による1:2希釈または1:5希釈をプレート中で実施した。ポリソルベート80の場合、いくつかの試料は、50%~200%の間の満足のいく回収率をもたらした。一方、クエン酸ナトリウム緩衝液の場合、1:10希釈物のみが、50%~200%の間の満足のいく回収率をもたらした。このことから、クエン酸緩衝液が、ポリソルベート80と比べて、より顕著な影響をLER作用に与えることが示される。さらに、この実験で、クエン酸ナトリウムおよびポリソルベート80の組合せを試料として使用した場合、LER作用を抑えることはできなかった。この実験から、モノクローナル抗体製剤において、LER作用は、緩衝液の配合 (すなわち、クエン酸ナトリウム緩衝液およびポリソルベート80の組合せ)が原因で生じることが示される。
【0170】
これらの結果は、いくつかの異なる希釈物を試験した別の実験によって確認された。具体的には、25mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)、700mg/Lポリソルベート80、または両方のいずれかを含む試料(すなわち、リツキシマブの製剤)を調製した。これらの調製物ならびに水対照に、最終濃度が0.5または5.0EU/mlとなるまでLonza CSEをスパイクした。すべての試料を、ボルテックス機中、室温で1時間振盪した(振盪機: Heidolph Multi Reax、高速(2,037rpm)、1.5容の透明なガラス製のクリンプネック平底容器中)。続いて、
図14(B)(すなわち[リツキシマブ029])に示すような希釈を、エンドトキシンフリー水を用いて1.5ml容バイアル中で実施し、1分間(これまでのように)振盪する。振盪後、LALアッセイ法を実施した。具体的には、100μlの各試料を96ウェルプレートに加え、37℃で10分間、リーダー中でインキュベートした。次に、100μlの色素原を各試料に添加し、測定を実施した。
図14(B)(すなわち[リツキシマブ029])で認めることができるように、緩衝液(すなわちクエン酸ナトリウム緩衝液)のLER作用の方が、界面活性剤(すなわちポリソルベート80)のLER作用と比べて強い。ポリソルベート80は、比較的一定した回収率(約40~90%、
図14(B)、[リツキシマブ029]、右から2~5列目を参照されたい)を示しているのに対し、クエン酸緩衝液では、LER作用は希釈率によって左右されている。最も重要なことには、(モノクローナル抗体製剤においてそうであるように)ポリソルベート80がクエン酸緩衝液と組み合わされる場合、強くて再現可能なLER作用が現れる。
図14(B)(すなわち[リツキシマブ029])を参照されたい。これらの試料では、高い希釈率の場合でも、回収率はわずか約5~10%である。したがって、この実験から、どのように陽性LER作用を得ることができるかが示される。LER作用を抑える能力に関していくつかの手段および方法を試験することを可能にするため、この結果は、エンドトキシン測定の分野では先駆的である。
【0171】
緩衝剤および界面活性剤の影響を別々に解析する場合、ネオレコルモン(登録商標)およびリツキシマブの両方において、LER作用に対する緩衝剤の影響の方が、顕著であった(例えば、
図14(B)、すなわち[リツキシマブ029]を参照されたい)。驚くべきことに、これらのデータから、緩衝剤の除去の方が界面活性剤の除去よりも不可欠であることが示されている。両方の製剤中の緩衝剤の濃度が同程度である(リツキシマブ: 25mMクエン酸ナトリウムおよびネオレコルモン: 27.8mMリン酸ナトリウム)ことを考慮に入れると、この影響の理由は、緩衝剤の構造および/またはその物理化学的特性にあるに違いない。クエン酸ナトリウムは、周知のキレート化アニオンであるのに対し、リン酸では、この作用はそれほど顕著ではない。したがって、Mg
2+はキレート化緩衝剤によって錯体化されてLAL試験における濃度が低下することから、これらの知見もまた、LER作用を抑えるためにMg
2+添加が重要である理由の説明となり得る。
【0172】
参照実施例11: 標準的な物理的方法および生化学的方法では、LER作用によってマスクされたエンドトキシンは回収されない
(参照実施例9においてLER作用を有していると確認された緩衝液における)LER作用を抑えるために、様々な物理的方法および生化学的方法を試験した:
【0173】
エンドトキシンをスパイクされた試料を-30℃で凍結。この研究は、LERが、2~8℃と比べて、室温でより顕著であるという初期の知見に基づいている。結果: エンドトキシンをスパイクされた試料を凍結しても、LERは抑えられない。
【0174】
エンドトキシンをスパイクされた試料を70℃で30分間加熱。いくつかの製品で、加熱によってエンドトキシンマスキング作用が抑えられることが示されていたため(Dawson, 2005, LAL update. 22:1-6)、この研究を実施した。結果: エンドトキシンをスパイクされた試料を熱処理しても、LERは抑えられない。
【0175】
最大有効希釈倍数(MVD)まで、エンドトキシンをスパイクされた試料を希釈。試料希釈は、LAL阻害を抑えるための標準的方法であることから、この研究を実施した。結果:
図11(すなわち[リツキシマブ002]、[リツキシマブ004]、[リツキシマブ005])から認めることができるように、希釈だけでは、LER作用は抑えられない。
【0176】
エンドトキシンをスパイクされた試料に対するEndo Trapカラムの使用。これらのカラムは、アフィニティークロマトグラフィーによって溶液からエンドトキシンを除去する働きをする。エンドトキシン水溶液を用いて、試験を実施した。結果: カラムからエンドトキシンを回収することができなかった。
【0177】
参照実施例12: 透析による界面活性剤の除去
下記に詳述するように、市販されているいくつかの透析容器および膜(異なるサイズの分子量カットオフ(MWCO)を含む)を試験した。
【0178】
透析容器に適した膜が市販されており、例えば、酢酸セルロース(MWCO: 100~300,000Da)、再生セルロース(MWCO: 1,000~50,000Da)、またはセルロースエステル(MWCO: 100~500Da)である。本明細書において、酢酸セルロースおよびセルロースエステルが好ましく、酢酸セルロースが最も好ましい。
【0179】
透析に先立って、試験試料(すなわちリツキシマブ)を希釈した。このようにして、CMCに近づけ、透析膜を通って拡散すると予想される界面活性剤のモノマーの濃度を段階的に高くした。スパイクされたCSEの回収率の調査によって、リツキシマブの場合、再生セルロースは酢酸セルロースと比べてそれほど効率的ではないことが明らかになった。リツキシマブを用いた一連の実験において、MWCOが好ましくは約10kDaであることが確認された。このサイズは、i)透析プロセスを速め、かつii)酢酸セルロース(グルコースポリマーのアセチルエステル)の疎水的特徴がそのような種類の輸送プロセスを阻害しないと考えられる場合、界面活性剤の高次オリゴマー凝集体(ただしミセルではない)も膜を通過できるようにすると考えられているため、このサイズが好ましい。
【0180】
透析の最適条件を明らかにするための実験を実施して、ネオレコルモン(登録商標)における状況を模倣した。先に概説したように、緩衝剤および界面活性剤が、LER作用に主に影響を与えている、試料製剤中の化合物であった。ネオレコルモン(登録商標)の製剤を模倣するために、0.1mg/mlポリソルベート20を含む総体積0.5ml(2.7mg)の所定量のリン酸緩衝液を調製し、(スピン透析器中で)透析に供した。
図1に、MWCOが12~16kDaである酢酸セルロース透析膜を用いるこのような実験の非常に単純な例を示している。この図では、所与の時間後に内側透析液中に残存している物質が示されており、このようにして、透析の効率を実証している。具体的には、内側の透析容器中に残存している物質の重量を72時間(3日間)の期間にわたって解析した。結果はかなり意外であり、ネオレコルモン(登録商標)の完全かつ有効な透析が、室温での長い透析期間(24~48時間より長い)後にのみ実現することが示されている。この実験に基づくと、好ましい透析時間は20時間~一晩(例えば24時間)である。さらに、この結果から、Harvard Fast Dialyzerの方がHarvard Spin Dialyzerより好ましいことも示されている。前者は透析膜の面積が2倍であり、したがって、より速い透析につながる。
【0181】
図2では、透析の内側透析液区画中にリン酸を入れた場合の透析効率を示している。この実験では、試料にスパイクされたCSEの非特異的な吸光度を避けるために、透析膜(MWCO: 12~16kDa)を使用前に0.2%BSAで洗浄した(30分)。しかし、本明細書において提供される本発明の方法では、試料の希釈(例えば、1:10の比の希釈)により、界面活性剤の濃度を低下させる。
【0182】
参照実施例13: LER作用に対するMgCl
2の影響
試料にMgCl
2を添加することによってLER作用が低減し得ることが判明している(例えば、
図15(すなわち[リツキシマブ031]を参照されたい)。具体的には、Mg
2+の濃度がクエン酸ナトリウム濃度の2倍である(すなわち50mM Mg
2+)場合に、最も良い結果が認められた。
【0183】
具体的には、25mMクエン酸ナトリウム緩衝液pH6.5(すなわちクエン酸ナトリウム緩衝液pH6.5)、0.7mg/mlポリソルベート80、または両方を含む試料(pH6.5、すなわちリツキシマブの製剤)を調製した。これらの調製物ならびに水対照に、最終濃度が0.5または5.0EU/mlとなるまでLonza CSEをスパイクした。すべての試料を、室温で1時間振盪した(振盪機: Heidolph Multi Reax、高速(2,037rpm)、1.5容の透明なガラス製のクリンプネック平底容器中)。次いで、10mM、25mM、50mM、または75mMの濃度に達するように、MgCl
2を試料に添加した。続いて、
図15(A)、18(B)、18(C)、および18(D)(すなわち[リツキシマブ030~リツキシマブ033])に示すような希釈を、エンドトキシンフリー水を用いて1.5ml容バイアル中で実施し、1分間振盪した(すなわち、これまでのようにボルテックスした)。振盪後、LALアッセイ法を実施した。具体的には、100μlの各試料を96ウェルプレートに加え、37℃で10分間、リーダー中でインキュベートした。その後、100μlの色素原を各試料に添加し、測定を実施した。
図15(A)(すなわち[リツキシマブ030])で認めることができるように、すべての希釈試料において、MgCl
2(10mM)は、クエン酸の錯体形成作用を無効にすることができる。マグネシウムイオンは、ポリソルベート80ならびにクエン酸緩衝液を含む試料におけるLER作用を低減させる。この場合、5.0EU/mlについては約50%、0.5EU/mlについては約25%の回収率が達成された。水の対照値は、理論的に予想される値(すなわち70~130%)のあたりに及ぶ。さらに、
図15(A)、15(B)、15(C)、および15(D)(すなわち[リツキシマブ030]、[リツキシマブ031]、[リツキシマブ032]、および[リツキシマブ033])の比較から、クエン酸緩衝液の濃度の2倍であるMgCl
2濃度(すなわち50mM MgCl
2)が、最も優れた回収率をもたらすことが示される。25mMおよび75mM MgCl
2はMgCl
2の最適濃度ではないが、これらの濃度でもなお、クエン酸緩衝液のLERを抑える(回収率: 75~190%)。リツキシマブを試料として使用した同様の実験で、濃度が10mM、50mM、または75mM MgCl
2となるまでMgCl
2を添加し、その後1:10の比で希釈した場合(透析は行わない)のみ、最終濃度が5.0EU/mlとなるまでスパイクされたエンドトキシンの満足のいく回収率をもたらすことができることが実証された(
図5、すなわち[リツキシマブ059]を参照されたい)。
【0184】
参照実施例14: LER作用に対する機械的処置の影響
機械的処置(例えば、振盪および超音波処理)がミセルを分散させ、それによってLER作用を低減させるのに有用であるかどうかを試験した。
【0185】
具体的には、エンドトキシンフリー水(すなわちLAL水)およびリツキシマブに、最終濃度0.5および5.0EU/mlが得られるまでLonza CSEをスパイクした。次いで、これらの試料を、1時間超音波処理するか、または1時間振盪した(すなわち、1.5ml容の透明なガラス製のクリンプネック平底容器中、室温にて、Heidolph Multi Reax振盪機において高速(2,037rpm)でボルテックスした)。次いで、エンドトキシンフリー水を用いて、1:10(試料:水)希釈物を調製した。続いて、(透析前に0.2%BSA中で30分間インキュベートしておいた)12~16kD膜を用いることによって、希釈試料を透析した。透析は、2個の2l容ビーカー中で4時間行われた。外側透析液は、1lのAqua Braunとした。2時間の透析の後に、水を交換した。透析後、MgCl
2の最終濃度50mMが得られるように、(
図16、すなわち[リツキシマブ034]に示したように)試料の一部にMgCl
2を添加した。MgCl
2の添加後、全試料(MgCl
2を含まない試料も)20分間振盪した(例えば、これまでのようにボルテックスした)。続いて、LALアッセイ法を実施した。具体的には、100μlの各試料を96ウェルプレートに加え、37℃で10分間、リーダー中でインキュベートした。次に、100μlの色素原を各試料に添加し、測定を実施した。
図16(すなわち[リツキシマブ034])で認めることができるように、振盪によっても超音波によっても、回収率は向上していない。したがって、LERが引き起こすミセルを振盪または超音波処理によって機械的に分散させることは、それと比べて非効率的であると結論を下すことができる。しかし、MgCl
2(50mM)の添加によってLER作用は低減され、回収率の値が良くなり、最高で5~20%という結果になった。さらに、この実験もまた、LER作用を抑えるには、実施される様々な段階の順序が重要であることを実証している。具体的には、前述の(
図16、すなわち[リツキシマブ034]に示す)実験において、これらの段階の順序は、(a)希釈、(b)透析、および(c)MgCl
2の添加であった。この順序では、満足のいく回収率が得られなかった(
図16、すなわち[リツキシマブ034]を参照されたい)。しかし、
図3および4(すなわち、[リツキシマブ046]、[リツキシマブ115]、および[リツキシマブ117])で実証されるように、(a)MgCl
2の添加、(b)希釈、および(c)透析という順序の場合、FDAの要件を満たす回収率(すなわち50%~200%)が得られる。
【0186】
本発明は、以下のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列に関する。
【0187】
SEQ ID NO: 1: リツキシマブ重鎖、アミノ酸配列
【0188】
SEQ ID NO: 2: リツキシマブ軽鎖、アミノ酸配列
【配列表】