(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】波動歯車減速機用モータユニット
(51)【国際特許分類】
H02K 7/116 20060101AFI20221026BHJP
F16H 1/32 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
H02K7/116
F16H1/32 B
(21)【出願番号】P 2021016973
(22)【出願日】2021-02-04
(62)【分割の表示】P 2016133624の分割
【原出願日】2016-07-05
【審査請求日】2021-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000107147
【氏名又は名称】日本電産シンポ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】岡村 暉久夫
(72)【発明者】
【氏名】井上 仁
(72)【発明者】
【氏名】米村 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】顏 國智
(72)【発明者】
【氏名】▲ウー▼ 耿彰
(72)【発明者】
【氏名】林 秀瑛
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-177243(JP,U)
【文献】特開2010-004582(JP,A)
【文献】特開2010-144839(JP,A)
【文献】特開2014-206265(JP,A)
【文献】特開2008-115896(JP,A)
【文献】実開昭60-034751(JP,U)
【文献】特開2015-092098(JP,A)
【文献】特開2012-050271(JP,A)
【文献】特開2000-175391(JP,A)
【文献】特開2005-312223(JP,A)
【文献】特開2007-336759(JP,A)
【文献】実開平03-091052(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/116
F16H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びる筒状のケーシングと、
前記ケーシング内に該ケーシングに対して相対回転可能に配置され、内周側に内歯を有する環状の内歯歯車と、
前記内歯歯車の径方向内方に配置されるとともに前記軸線方向の一方側が前記ケーシングに固定され、且つ、外周側に前記内歯と噛み合う外歯を有する、可撓性の環状の外歯歯車と、
前記外歯歯車の径方向内方に配置され、回転によって、前記外歯歯車を径方向に変形させる楕円状のカムと、
を備えた波動歯車減速機に対して、取り付けられるモータユニットであって、
前記軸線方向に延びる回転軸部と、
前記回転軸部に対して、該回転軸部と一体で回転可能に設けられたロータ部と、
前記ロータ部に対向して配置されたステータ部と、
前記回転軸部、前記ロータ部及び前記ステータ部を覆い、且つ、該ステータ部が固定されたモータケーシングと、を備え、
前記モータケーシングは、前記ロータ部及び前記ステータ部を前記軸線方向の他方側から覆うカバー部を有し、
前記回転軸部は、前記軸線方向の他方側に延び、前記カバー部を貫通し、且つ前記カムに接続され、
前記カバー部は、支持部を有し、
前記支持部は、前記軸線方向の他方側に延び、前記回転軸部の一部を覆い、且つ前記回転軸部を回転可能に支持し、前記モータケーシングに前記波動歯車減速機が取り付けられた状態で、前記外歯歯車の内方に位置
し、
前記回転軸部と該回転軸部の一部を覆う前記支持部との間には、前記軸線方向に並んで複数の軸受が配置されており、
前記軸受の1つは、前記回転軸部と、前記支持部の前記軸線方向の他方側端部との間に配置される、波動歯車減速機用モータユニット。
【請求項2】
請求項
1に記載の波動歯車減速機用モータユニットにおいて、
前記回転軸部は、
前記先端部分に位置し、前記カムが有する挿入孔内 に挿入される挿入部と、
前記挿入部に対して前記軸線方向の一方側に位置し、該挿入部よりも大きい外径を有する大径部と、を有する、波動歯車減速機用モータユニット。
【請求項3】
請求項
1または2に記載の波動歯車減速機用モータユニットにおいて、
前記カバー部は、径方向内周側に、前記波動歯車減速機が組み合わされた状態で、該波動歯車減速機に設けられた凹部が位置付けられる凸部を有する、波動歯車減速機用モータユニット。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか一つに記載の波動歯車減速機用モータユニットにおいて、
前記ロータ部は、前記軸線方向において、前記ステータ部に対向して配置されている、波動歯車減速機用モータユニット。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか一つに記載の波動歯車減速機用モータユニットにおいて、
前記ロータ部は、前記ステータ部を挟んで配置される2つの磁界発生部を有する、波動歯車減速機用モータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波動歯車減速機用モータユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電動機の回転軸の回転を減速して出力する減速機として、様々な構成の減速機が知られている。例えば特許文献1には、波動歯車機構を利用した減速機が開示されている。この波動歯車減速機は、楕円状のウェーブジェネレータと、該ウェーブジェネレータの外周に位置する軸受を介して接触するとともに、外周にスプライン状の歯を有し且つ円形に形成された可撓性のフレクスプラインと、該フレクスプラインの歯数よりも多いスプライン状の歯をリング状に有し且つ前記フレクスプラインの外周に噛み合って嵌合するサーキュラスプラインとを有する。
【0003】
上述の波動歯車減速機構では、例えば、前記ウェーブジェネレータに入力軸を接続し、前記サーキュラスプラインを固定し、前記フレクスプラインを出力軸に連結した場合、前記ウェーブジェネレータが時計方向に1回転すると、前記フレクスプラインが反時計方向に、前記サーキュラスプラインとの歯数差分だけ回転する。一方、前記フレクスプラインを固定し、前記サーキュラスプラインを出力軸に連結した場合には、前記サーキュラスプラインが、前記フレクスプラインとの歯数差分だけ回転する。
【0004】
このように、上述の波動歯車減速機では、前記ウェーブジェネレータに入力された回転を、前記サーキュラスプラインと前記フレクスプラインとの歯数差によって減速して、前記フレクスプラインまたは前記サーキュラスプラインから出力する。
【0005】
前記特許文献1の
図1には、波動歯車減速機が、駆動モータの回転軸に対して接続された構成が開示されている。
図1の構成では、装置全体の重量が重くなるとともに、回転軸に波動歯車減速機を接続するカップリング部によって、装置全体の大きさが大きくなり且つ長さが長くなる。そのため、前記特許文献1に開示されている構成では、減速機と駆動モータとを一体化することにより、装置全体のコンパクト化を図っている。具体的には、前記特許文献1に開示されている構成では、駆動モータの回転子と、減速機のウェーブジェネレータとが一体で形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述の特許文献1に開示されるように、減速機と駆動モータとを一体化する場合、専用の減速機及び駆動モータを個別に設計する必要がある。そのため、用途に合わせて、様々な種類の減速機及び駆動モータを設計する必要があり、汎用性という点で問題がある。
【0008】
一方、上述の特許文献1の
図1に示すように、別体の駆動モータと減速機とを組み合わせる場合には、減速機の汎用性は確保できるものの、上述の特許文献1に記載されているように減速機及び駆動モータを組み合わせることによって得られる装置が大型化する。
【0009】
本発明の目的は、波動歯車減速機用モータユニットにおいて、波動歯車減速機に対してコンパクトに取り付け可能な構成を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態に係る波動歯車減速機用モータユニットは、軸線方向に延びる筒状のケーシングと、前記ケーシング内に該ケーシングに対して相対回転可能に配置され、内周側に内歯を有する環状の内歯歯車と、前記内歯歯車の径方向内方に配置されるとともに前記軸線方向の一方側が前記ケーシングに固定され、且つ、外周側に前記内歯と噛み合う外歯を有する、可撓性の環状の外歯歯車と、前記外歯歯車の径方向内方に配置され、回転によって、前記外歯歯車を径方向に変形させる楕円状のカムと、を備えた波動歯車減速機に対して、取り付けられるモータユニットである。このモータユニットは、前記軸線方向に延びる回転軸部と、前記回転軸部に対して、該回転軸部と一体で回転可能に設けられたロータ部と、前記ロータ部に対向して配置されたステータ部と、前記回転軸部、前記ロータ部及び前記ステータ部を覆い、且つ、該ステータ部が固定されたモータケーシングと、を備える。前記モータケーシングは、前記ロータ部及び前記ステータ部を前記軸線方向の他方側から覆うカバー部を有する。前記回転軸部は、前記軸線方向の他方側に延び、前記カバー部を貫通し、且つ前記カムに接続される。前記カバー部は、支持部を有する。前記支持部は、前記軸線方向の他方側に延び、前記回転軸部の一部を覆い、且つ前記回転軸部を回転可能に支持し、前記モータケーシングに前記波動歯車減速機が取り付けられた状態で、前記外歯歯車の内方に位置する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態に係る波動歯車減速機用モータユニットによれば、波動歯車減速機に対してコンパクトに取り付け可能な構成を有する波動歯車減速機用モータユニットが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態に係るモータユニットを含む動力ユニットの概略構成を示す断面図である。
【
図2】
図2は、波動歯車減速機の概略構成を示す断面図である。
【
図3】
図3は、外歯歯車、内歯歯車及びカムを、軸線方向の一方側から見た図である。
【
図4】
図4は、モータユニットの概略構成を示す断面図である。
【
図5】
図5は、モータユニットを厚み方向から見た場合において、モータユニットにおけるロータマグネットとコイル部との位置関係を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。なお、図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。また、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0014】
なお、以下の説明では、モータユニットの回転軸と平行な方向を「軸線方向」または「高さ方向」、回転軸に直交する方向を「径方向」、回転軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。ただし、上記の「平行な方向」は略平行な方向も含むものとする。また、上記の「直交する方向」は略直交する方向も含むものとする。
【0015】
また、以下の説明において、「軸線方向の一方側」は、前記回転軸と平行な方向において、動力ユニットのモータユニット側を意味し、「軸線方向の他方側」は、前記回転軸と平行な方向において、動力ユニットの波動歯車減速機側を意味する。
【0016】
(全体構成)
図1に、本発明の実施形態に係る波動歯車減速機用モータユニット3(以下、単にモータユニットいう)を含む動力ユニット1の概略構成を示す。動力ユニット1は、波動歯車減速2と、モータユニット3とを備える。動力ユニット1は、モータユニット3の後述する回転軸52の回転を、波動歯車減速機2によって減速して、出力する。動力ユニット1は、例えば、ロボットの関節や電動車いす等の車輪を駆動させる動力源として利用可能である。
【0017】
波動歯車減速機2及びモータユニット3は、それぞれ、円柱状である。動力ユニット1は、波動歯車減速機2とモータユニット3とをそれらの高さ方向(
図1における上下方向)に重ねた状態で、それらの外周側が複数のボルト4によって接続されている。動力ユニット1は、全体として円柱状である。
【0018】
(波動歯車減速機)
図1及び
図2に示すように、波動歯車減速機2は、高さ方向(
図1及び
図4における上下方向)よりも径方向(
図1及び
図4における左右方向)の寸法が大きい扁平状に形成されている。波動歯車減速機2は、モータユニット3の後述する回転軸52とともに回転するカム12によって、外歯歯車14に波動を与えることにより、該外歯歯車14または内歯歯車15に、カム12の回転を伝達する。
【0019】
具体的には、波動歯車減速機2は、ケーシング11と、カム12と、軸受13と、外歯歯車14と、内歯歯車15と、クロスローラー軸受16とを備える。
【0020】
ケーシング11は、軸線Xが延びる方向(以下、軸線方向という)に延びる円筒状である。この軸線Xは、波動歯車減速機2がモータユニット3に取り付けられた状態で、モータユニット3の回転軸52の軸線Xと一致する。よって、前記軸線方向は、モータユニット3の回転軸52の軸線方向と一致する。
【0021】
ケーシング11には、ケーシング11を前記軸線方向に貫通するネジ穴11aが、周方向に複数、設けられている。ネジ穴11aには、モータユニット3と波動歯車減速機2とを接続するためのボルト4(
図1参照)が挿入される。なお、ネジ穴11aは、後述するようにケーシング11に対して前記軸線方向の一方側(モータユニット3側)に配置される外歯歯車14に形成された貫通孔14dと繋がって、ボルト4の挿入穴を構成する。
【0022】
カム12は、ケーシング11の内方に配置されている。カム12は、モータユニット3の回転軸52と接続されていて、回転軸52と一体で回転する。
【0023】
詳しくは、カム12は、前記軸線方向から見て楕円状の板状部材である。カム12は、その厚み方向が前記軸線方向と一致するように、ケーシング11の内方に配置されている。
【0024】
カム12は、該カム12を前記軸線方向に貫通する貫通孔12a(挿入孔)を有する。カム12は、貫通孔12aにおける前記軸線方向の他方側の開口部分に凹部12bを有する。
【0025】
カム12は、ケーシング11に対し、前記軸線方向に直交する方向から見て、前記軸線方向の他方側に配置されている。これにより、ケーシング11は、カム12よりも前記軸線方向の一方側に空間Sを有する。波動歯車減速機2とモータユニット3とが接続された状態で、空間S内に、モータユニット3の後述する支持部64が位置する。
【0026】
カム12は、貫通孔12aにおいて凹部12bが設けられている開口部とは反対側の開口部分(前記軸線方向の一方側の開口部分)を囲むように形成された複数のボルト穴12cを有する(
図2参照)。複数のボルト穴12cには、モータユニット3における回転軸52の貫通孔52aを挿通するボルトが締結される(
図1参照)。
図1に示すように、カム12とモータユニット3の回転軸52とをボルトによって接続することにより、カム12は、モータユニット3の回転軸52と一体で回転する。したがって、カム12は、前記軸線方向から見て、軸線Xを中心に回転する。
【0027】
ケーシング11の内方には、カム12を囲むように、フランジ付きの円筒状に形成された外歯歯車14及び円環状に形成された内歯歯車15が配置されている。すなわち、カム12の径方向外方には、外歯歯車14が位置し、外歯歯車14の径方向外方には内歯歯車15が配置されている。
図3に、波動歯車減速機2を前記軸線方向の他方側から見た場合において、外歯歯車14、内歯歯車15及びカム12の位置関係を示す。なお、
図3では、ケーシング11の記載を省略している。
【0028】
前記軸線方向から見て、カム12と外歯歯車14との間には、軸受13が配置されている。軸受13は、カム12と外歯歯車14との間に配置され、カム12の回転に応じてカム12の径方向に移動可能である。これにより、楕円状のカム12が回転した際に、カム12の長軸方向の端部が軸受13を介して外歯歯車14の内周側を径方向外方に向かって押圧する。
【0029】
外歯歯車14は、
図2に示すように、可撓性を有する薄板によって、フランジ付きの円筒状に形成されている。具体的には、外歯歯車14は、カム12を径方向外方から覆う円筒部14aと、円筒部14aにおける前記軸線方向の一方側に、径方向外方に向かって延びるフランジ部14bとを有する。
【0030】
円筒部14aは、外周面に、複数の外歯31(
図3参照)が周方向に一定のピッチで形成されている。外歯31は、円筒部14aの外周面に、前記軸線方向に延びるように形成されている。円筒部14aは、その内周面がカム12の外周に配置された軸受13に接触している。これにより、楕円状のカム12が回転することにより、カム12の長軸方向の端部が、軸受13を介して、円筒部14aに径方向に変形を生じさせる。このように、楕円状のカム12が回転することにより、外歯歯車14の円筒部14aに対して径方向に波動を与えることができる。
【0031】
フランジ部14bは、前記軸線方向から見て円環状に形成されている。フランジ部14bは、
図1及び
図2に示すように、外周側がケーシング11における前記軸線方向の一方側に固定されている。フランジ部14bは、外周側に、外歯歯車14の他の部分に比べて厚い厚肉部14cを有する。フランジ部14bが外周側に厚肉部14cを有することによって、波動歯車減速機2は、前記軸線方向における一方側端部(モータユニット3側端部)の内周側に、凹部2aを有する。この凹部2a内には、波動歯車減速機2とモータユニット3とが組み合わされた状態で、モータユニット3の後述する凸部63cが位置する。このような構成により、モータユニット3と波動歯車減速機2とを容易に位置決めした状態で組み合わせることができる。
【0032】
厚肉部14cには、厚み方向に貫通する貫通孔14dが周方向に複数形成されている。貫通孔14dは、外歯歯車14の厚肉部14cをケーシング11における前記軸線方向の一方側に配置した状態で、ケーシング11のネジ穴11aに対応する位置に設けられる。
【0033】
なお、円筒部14aから径方向外方に突出するフランジ部14bの長さは、上述のように円筒部14aがカム12の回転によって押圧された場合に容易に変形可能な長さを有する。
【0034】
内歯歯車15は、
図3に示すように、円環状の部材であり、内周面に、複数の内歯32が周方向に一定のピッチで形成されている。内歯32は、内歯歯車15の内周面に、前記軸線方向に延びるように形成されている。内歯歯車15は、カム12、軸受13及び外歯歯車14の円筒部14aを、径方向外方から囲むように配置されている。内歯歯車15は、外歯歯車14がカム12の長軸方向の端部によって径方向に押圧されて変形した場合に内歯歯車15の内歯32が外歯歯車14の外歯31に対して噛み合うように、外歯歯車14に対し、周方向の一部に所定の隙間を有する。
【0035】
なお、
図2に示すように、内歯歯車15には、前記軸線方向の一方側に、接続リング20が固定されている。この接続リング20は、クロスローラー軸受16を介してケーシング11の内面によって回転可能に支持されている。なお、接続リング20は、内歯歯車15に対して複数のボルト6によって固定されている。クロスローラー軸受16の構成は、一般的なクロスローラー軸受の構成と同様なので、詳しい説明を省略する。
【0036】
図3に示すように、内歯歯車15の内歯32の数は、外歯歯車14の外歯31の数よりも多い。このように外歯31の歯数と内歯32の歯数とが異なるため、カム12の回転によって、外歯歯車14を径方向に変形させて外歯歯車14の外歯31を内歯歯車15の内歯32に順に噛み合わせることにより、内歯歯車15の回転速度を、カム12の回転速度に対して減速させすることができる。
【0037】
したがって、以上の構成により、モータユニット3の後述する回転軸52の回転を、波動歯車減速機2によって減速して、内歯歯車15によって出力することができる。
【0038】
(モータユニット)
モータユニット3は、アキシャルギャップ型のブラシレスモータである。モータユニット3は、
図1及び
図4に示すように、高さ方向よりも径方向(
図1及び
図4における左右方向)の寸法が大きい扁平状である。
【0039】
図4に示すように、モータユニット3は、モータケーシング51と、回転軸52(回転軸部)と、ロータ部3aと、ステータ部3bとを備える。モータケーシング51は、軸線Xが延びる方向(以下、軸線方向という)に延びる円柱状に形成されている。この軸線Xは、後述する回転軸52の軸線Xと一致する。モータケーシング51は、前記軸線方向の他方側を回転軸52が貫通している。
【0040】
モータケーシング51内に、ロータ部3a及びステータ部3bが収容される。すなわち、モータケーシング51は、ロータ部3a及びステータ部3bを覆っている。なお、ロータ部3aは、ロータヨーク53b,54bと、ロータマグネット55,56(磁界発生部
)とを有する。ステータ部3bは、コイルコア部57を有する。
【0041】
モータケーシング51は、外周側に、モータユニット3を波動歯車減速機2と接続するためのボルト4が挿入されるボルト穴51aを複数有する。
図1に示すように、モータケーシング51は、回転軸52が貫通している部分が波動歯車減速機2側に位置するように、波動歯車減速機2に取り付けられる。
【0042】
モータケーシング51は、前記軸線方向に延びる有底円筒状の第1カバー61と、第1カバー61の開口を覆う第2カバー62(カバー部)とを有する。第1カバー61は、ロータ部3a及びステータ部3bにおける前記軸線方向の半分を覆う。第2カバー62は、ロータ部3a及びステータ部3bにおける前記軸線方向の半分を覆う。すなわち、第2カバー62は、ロータ部3a及びステータ部3bを前記軸線方向の他方側から覆う。第2カバー62は、回転軸52が貫通している。
【0043】
第2カバー62は、ロータ部3a及びステータ部3bにおける前記軸線方向の半分を覆うケーシング部63と、回転軸52を回転可能に支持する支持部64とを有する。
【0044】
ケーシング部63は、モータケーシング51の側壁の一部を構成する円筒部63aと、ロータ部3a及びステータ部3bにおける前記軸線方向の他方側を覆う平板部63bとを有する。円筒部63aは、前記軸線方向に延びる円筒状である。平板部63bは、その厚み方向が前記軸線方向と一致する。前記軸線方向から見て、平板部63bの中央部分には、支持部64が設けられている。
【0045】
平板部63bは、外周側の厚さ寸法よりも内周側の厚さ寸法が大きい。これにより、第2カバー62は、径方向内周側に、凸部63cを有する。この凸部63cは、モータユニット3と波動歯車減速機2とが組み合わされた状態で、波動歯車減速機2の凹部2a内に位置する。これにより、モータユニット3を波動歯車減速機2に取り付ける際に、モータユニット3を波動歯車減速機2に対して位置決めすることができる。
【0046】
支持部64は、前記軸線方向においてケーシング部63からモータケーシング51の外方に向かって延びる円筒状である。すなわち、支持部64は、ケーシング部63から前記軸線方向の他方側に延びている。支持部64は、ケーシング部63と一体である。
【0047】
支持部64は、
図4に示すように、貫通孔64aを有する。貫通孔64a内には、回転軸52が回転可能に配置されている。すなわち、貫通孔64a内には、回転軸52と回転軸52の一部を覆う支持部64との間に、回転軸52を回転可能に支持する複数の支持軸受65,66が配置されている。支持軸受65,66は、前記軸線方向に並んで配置されている。なお、貫通孔64aの内周面には、前記軸線方向において支持軸受65,66が位置する部分の間に突出部64bが設けられている。これにより、貫通孔64aの内周面と回転軸52との間で、支持軸受65,66が前記軸線方向に移動することを防止できる。
【0048】
以上の構成により、モータケーシング51の一部を構成する支持部64によって、回転軸52を回転可能に支持できるため、モータをユニット化することができる。しかも、支持軸受65,66を、前記軸線方向に並べて配置することにより、回転軸52を安定した状態で回転可能に支持することができる。
【0049】
図4に示すように、回転軸52は、前記軸線方向に延びる円筒状である。回転軸52は、モータケーシング51内に、モータケーシング51と同心に配置されている。回転軸52には、回転軸52と波動歯車減速機2のカム12とを固定するためのボルト(
図1参照)が挿入される貫通孔52aが、周方向に複数、設けられている。なお、この貫通孔52aは、内周面の少なくとも一部にねじ部が設けられたねじ穴である。
【0050】
回転軸52は、前記軸線方向に接続された2つの部材を含む。詳しくは、回転軸52は、ロータヨーク53bを有する第1回転軸53と、ロータヨーク54bを有する第2回転軸54とを有する。第1回転軸53及び第2回転軸54は、前記軸線方向に接続されている。
【0051】
第1回転軸53及び第2回転軸54は、それぞれ、軸部53a,54aと、ロータヨーク53b,54bとを有する。軸部53a,54aは、前記軸線方向に延びる円筒状であり、該軸線方向に接続されている。具体的には、軸部53a,54aは、前記軸線方向に延びてボルト5が貫通可能な貫通孔(ねじ穴)を有する。貫通孔は、回転軸52の貫通孔52aを構成する。これにより、第1回転軸53及び第2回転軸54は、ボルト5によって、軸部53a,54aが接続される。
【0052】
第2回転軸54の軸部54aは、前記軸線方向の他方側端部に、突出部54c(挿入部)を有する。突出部54cは、軸部54aと同心の円筒状である。突出部54cは、軸部54aよりも外径が小さい。すなわち、軸部54aは、突出部54cよりも大きい外径を有する大径部である。
【0053】
突出部54cは、波動歯車変速機2とモータユニット3とが組み合わせられた状態で、波動歯車変速機2のカム12の貫通孔12a内に位置する。このとき、軸部54aは、カム12の貫通孔12aの周縁部に当たる。これにより、モータユニット3の回転軸52によってカム12の位置決めを行うことができる。
【0054】
また、上述の構成により、モータユニット3の回転軸52及び波動歯車減速機2のカム12の回転中心を容易に合わせることができる。これにより、モータユニット3と波動歯車減速機2とを容易に組み合わせることができる。
【0055】
ロータヨーク53b,54bは、軸部53a,54aから径方向外方に向かって延びている。ロータヨーク53b,54bは、前記軸線方向から見て円盤状である。ロータヨーク53b,54bは、前記軸線方向に所定の間隔を有するように平行に配置されている。なお、前記平行とは、ロータヨーク53b,54bに固定される後述のロータマグネット55,56がコイルコア部57に接触しない程度に、ロータヨーク53b、54bが傾いている場合も含む。
【0056】
本実施形態では、軸部53aとロータヨーク53bとは単一の部品であり、軸部54aとロータヨーク54bとは単一の部品である。軸部53aとロータヨーク53bとは別部品であってもよいし、軸部54aとロータヨーク54bとは別部品であってもよい。
【0057】
ロータマグネット55,56は、円環状であり、ロータヨーク53b,54bにおける対向する面に、固定されている(
図4参照)。すなわち、ロータマグネット55は、ロータヨーク53bにおけるロータヨーク54b側の面に固定されている。ロータマグネット56は、ロータヨーク54bにおけるロータヨーク53b側の面に固定されている。図示しないが、ロータマグネット55,56は、周方向に交互に異なる磁極を有する。
【0058】
コイルコア部57は、例えば、前記軸線方向に延びる円柱状に形成されている。コイルコア部57は、
図5に模式的に示すように、モータユニット3を軸線方向から見て、モータケーシング51内に周方向に複数(本実施形態の例では6個)、配置されている。
図4に示すように、コイルコア部57は、それぞれ、円環状板58によって前記軸線方向に挟まれている。円環状板58の外周面は、前記モータケーシング51の内周面に固定されている。すなわち、コイルコア部57は、モータの固定子に相当する。コイルコア部57は、特に図示しないが、側面上に巻かれたコイルを有する。
【0059】
ロータマグネット55,56とコイルコア部57との間には、回転軸52の軸線方向に隙間が形成されている。以上のような構成を有するアキシャルギャップ型のモータユニット3は、同じ出力性能を有するラジアルギャップ型のモータに比べて、高さ方向(軸線方向)にコンパクトに構成されている。
【0060】
また、ロータマグネット55,56は、コイルコア部57を前記軸線方向に挟み込む位置に配置されている。すなわち、ロータ部3aは、ステータ部3bを挟んで配置される2つの磁界発生部を有する。これにより、ロータマグネットがコイルコア部57に対して一方にのみ配置されている構成に比べて、モータユニット3の出力を2倍にすることができる。したがって、モータユニット3の出力向上を図れる。
【0061】
上述の構成により、波動歯車減速機2は、前記軸線方向においてカム12の一方側に空間Sを有する。波動歯車減速機2とモータユニット3とを組み合わせることにより、空間S内にモータユニット3の支持部64が位置する。これにより、モータユニット3と波動歯車減速機2とをコンパクトな構成によって接続することができる。
【0062】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0063】
前記実施形態では、モータユニット3の支持部64と回転軸52との間には、回転軸52の軸線方向に並んで軸受が2つ配置されている。しかしながら、支持部64と回転軸52との間に3つ以上、軸受を配置してもよい。
【0064】
前記実施形態では、モータユニット3の回転軸52は、カム12の貫通孔12aに挿入される突出部54cを有する。しかしながら、回転軸52に突出部54cを設けなくてもよい。また、前記実施形態では、第2カバー62のケーシング部63は、波動歯車減速機2とモータユニット3とが組み合わせられた状態で、波動歯車減速機2の凹部2a内に位置する凸部63cを有する。しかしながら、モータユニット3に凸部63c及び波動歯車減速機に凹部2aを設けなくてもよい。
【0065】
前記実施形態では、ステータ部3bのコイルコア部57を、ロータ部3aのロータマグネット55,56によって前記軸線方向に挟み込んでいる。しかしながら、ロータマグネットをコイルコア部57に対して前記軸線方向の一側のみに配置してもよい。また、ロータ部は、ロータマグネットの代わりにコイルなどの磁界発生部を有していてもよい。
【0066】
前記実施形態では、モータユニット3は、アキシャルギャップ型のモータである。しかしながら、モータユニットは、ラジアルギャップ型のモータなど、他の構成を有するモータであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、波動歯車減速機に取り付けられるモータユニットに利用可能である。
【符号の説明】
【0068】
2 波動歯車減速機
2 a 凹部
3 モータユニット
3 a ロータ部
3 b ステータ部
1 1 ケーシング
1 2 カム
1 2 a 貫通孔( 挿入孔)
1 4 外歯歯車
1 5 内歯歯車
3 1 外歯
3 2 内歯
5 1 モータケーシング
5 2 回転軸( 回転軸部)
5 4 a 軸部( 大径部)
5 4 c 突出部( 挿入部)
5 5 ロータマグネット( 磁界発生部)
5 6 ロータマグネット( 磁界発生部)
6 1 第1 カバー
6 2 第2 カバー( カバー部)
6 3 ケーシング部
6 3 a 円筒部
6 3 b 平板部
6 3 c 凸部
6 4 支持部
X 軸線
S 空間