(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】自己音声推定付き聴覚保護システムと関連する方法
(51)【国際特許分類】
G10L 21/0272 20130101AFI20221026BHJP
H04R 1/10 20060101ALI20221026BHJP
H04R 25/00 20060101ALI20221026BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
G10L21/0272 100B
H04R1/10 104Z
H04R25/00 H
H04R3/00 320
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018205424
(22)【出願日】2018-10-31
【審査請求日】2021-10-25
(32)【優先日】2017-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521511782
【氏名又は名称】ファルコム エー/エス
【氏名又は名称原語表記】FalCom A/S
【住所又は居所原語表記】Lautrupbjerg 7, 2750 Ballerup, Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セーレン ペダーセン
(72)【発明者】
【氏名】ピート ウェブスデル
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-163531(JP,A)
【文献】特開2014-230045(JP,A)
【文献】特開平10-257583(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0034765(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02242289(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10L 21/0272
H04R 1/10
H04R 3/00
H04R 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ユニット(34)と、
外耳道入力信号(16)を提供する外耳道マイクロフォン(14)と、
外耳道出力信号(22)であって、前記通信ユニット(34)からの第1出力信号(37C)に基づく前記外耳道出力信号(22)に基づいて音響出力信号(20)を提供するレシーバ(18)と、
前記外耳道出力信号(22)を受信、フィルタリングして、補償信号(28)を提供する補償モジュール(26)と、
前記外耳道マイクロフォン(14)と、前記補償モジュール(26)とに接続されて、前記外耳道入力信号(16)及び前記補償信号(18)に基づいて音声信号(32)を提供するミキサー(30)とを備え、
前記補償モジュール(26)は、フィルタコントローラ(60)と、一次フィルタ(62)と、二次フィルタ(64)とを備えており、前記一次フィルタは静的フィルタであり、前記一次フィルタの一次フィルタ係数は静的であり、前記二次フィルタ(64)は適応フィルタであって、前記二次フィルタ(64)の二次フィルタ係数は、前記音声信号(32)と、前記一次フィルタ(62)からの一次フィルタ出力信号とに基づいて、前記フィルタコントローラ(60)により制御され、前記フィルタコントローラは、入力であって、前記一次フィルタ(62)に接続され、前記一次フィルタ出力信号を前記フィルタコントローラ(60)への入力として受信する前記入力を有
し、
前記一次フィルタは、100Hzから500Hzの範囲の第1周波数帯内に、一定の第1ゲインを有する、
聴覚保護システム(2、2A)。
【請求項2】
前記一次フィルタ(62)は、無限インパルス応答(IIR)フィルタである、請求項1に記載の聴覚保護システム(2、2A)。
【請求項3】
前記二次フィルタ(64)は、有限インパルス応答(FIR)フィルタである、請求項1又は2に記載の聴覚保護システム(2、2A)。
【請求項4】
前記聴覚保護システム(2、2A)は、聴覚保護処理モジュール(37)及び外部マイクロフォン(37A)を備え、前記聴覚保護処理モジュール(37)は、前記外部マイクロフォン(37A)に接続されて、前記外部マイクロフォンから外部入力信号(37B)を受信し、前記外部入力信号に基づいて外部出力信号を提供するように構成されており、前記外耳道出力信号は前記外部出力信号に基づいている、請求項1から3のいずれか一項に記載の聴覚保護システム(2、2A)。
【請求項5】
前記一次フィルタ係数により、前記レシーバと、前記外耳道マイクロフォンの電気音響特性はモデル化される、請求項1から4のいずれか一項に記載の聴覚保護システム(2、2A)。
【請求項6】
前記一次フィルタ係数により、密閉された外耳道の音響特性はモデル化される、請求項1から5のいずれか一項に記載の聴覚保護システム(2、2A)。
【請求項7】
前記一次フィルタは、4kHzから8kHzの範囲の第2周波数帯内に、最大ゲインを有する、請求項1から
6のいずれか一項に記載の聴覚保護システム(2、2A)。
【請求項8】
前記一次フィルタは、1kHzから2kHzの範囲の第3周波数帯内に、極小ゲインを
有する、請求項1から
7のいずれか一項に記載の聴覚保護システム(2、2A)。
【請求項9】
前記一次フィルタは、30Hzから50Hzの範囲の第4周波数帯内で、線形増加するゲインを有する、請求項1から
8のいずれか一項に記載の聴覚保護システム(2、2A)。
【請求項10】
前記フィルタコントローラは、自己音声検出器を備え、前記自己音声検出器は、ユーザーの自己音声が存在するか否かを検出し、前記フィルタコントローラは、前記自己音声検出器が前記ユーザーの自己音声の存在を検出すると、前記二次フィルタ係数の適応を解除するように構成される、請求項1から
9のいずれか一項に記載の聴覚保護システム(2、2A)。
【請求項11】
前記フィルタコントローラ(60)は、前記自己音声検出器が前記ユーザーの自己音声の不在を検出すると、前記二次フィルタ係数の適応を実行するように構成される、請求項
10に記載の聴覚保護システム(2、2A)。
【請求項12】
聴覚保護システムユーザーの音声信号を推定する方法(100)であって、
外耳道出力信号であって、通信ユニットからの第1出力信号に基づく前記外耳道出力信号に基づいて、音響出力信号を提供すること(102)と、
外耳道マイクロフォンにより、外耳道入力信号を取得すること(104)と、
前記外耳道出力信号に基づいて、補償信号を提供すること(106)と、
前記外耳道入力信号及び前記補償信号に基づいて、音声信号を提供すること(108)と、を含み、
前記補償信号を提供すること(106)は、前記外耳道出力信号を一次フィルタ及び二次フィルタを用いてフィルタリングすること(110)を含んでおり、前記一次フィルタは静的フィルタであって、前記二次フィルタは適応フィルタであり、
前記補償信号を提供すること(106)は、前記音声信号と、前記一次フィルタからの一次フィルタ出力信号とに基づいて、前記二次フィルタの二次フィルタ係数を、フィルタコントローラを用いて適応することを含み、前記フィルタコントローラは、入力であって、前記一次フィルタに接続され、前記一次フィルタ出力信号を前記フィルタコントローラへの入力として受信する前記入力を有
し、
前記一次フィルタは、100Hzから500Hzの範囲の第1周波数帯内に、一定の第1ゲインを有する、方法(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、聴覚保護システムと、音声信号を推定する方法を含む、関連する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
騒音環境下では、ユーザーの聴覚を保護しながら、当該ユーザーに無線通信で他者と通信可能とすることが望ましい場合がある。さらに、環境音、及び/又は聴覚保護システムのレシーバによりプレイバックされた音声から、ユーザーの自己音声を集音し、分離するのは困難となりうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、聴覚保護装置のユーザーのユーザー音声信号の推定、及び/又は検出を向上する聴覚保護装置及び方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
開示の聴覚保護システムは、外耳道入力信号を提供する外耳道マイクロフォンと、外耳道出力信号に基づいて音響出力信号を提供するレシーバと、前記外耳道出力信号を受信、フィルタリングして、補償信号を提供する補償モジュールと、前記外耳道マイクロフォンと、前記補償モジュールとに接続されて、前記外耳道入力信号と前記補償信号とに基づいて音声信号を提供するミキサーとを有する。前記補償モジュールは、フィルタコントローラと、一次フィルタと、二次フィルタとを有する。前記一次フィルタは静的フィルタであって、前記一次フィルタの一次フィルタ係数は静的である。前記二次フィルタは適応フィルタであって、前記二次フィルタの二次フィルタ係数は、例えば前記音声信号に基づいて前記フィルタコントローラにより制御される。
【0005】
さらに開示の、聴覚保護システムユーザーの音声信号を推定する方法は、外耳道出力信号に基づいて、音響出力信号を提供することと、外耳道マイクロフォンにより、外耳道入力信号を取得することと、前記外耳道出力信号に基づいて補償信号を提供することと、前記外耳道入力信号及び前記補償信号とに基づいて音声信号を提供することとを含む。前記補償信号を提供することは、任意で前記外耳道出力信号を一次フィルタ及び二次フィルタでフィルタリングすることを含む。前記一次フィルタは静的フィルタであってもよく、前記二次フィルタは適応フィルタであってもよい。
【0006】
本開示の利点として、自己音声推定の正確性を維持した上で、電力効率の良い自己音声推定が実現できる。
【0007】
さらに、本開示は、フィルタ長さを短く保ったまま、ユーザーの自己音声をより正確に推定する方法、システム、装置を提示する。
【0008】
また、本開示の利点として、レシーバ,外耳道マイクロフォン、及び音響イヤーレスポンス(acoustic ear response)を含むプレイバックパス(play back path)の応答が的確にモデル化できる。さらに、自己音声推定は、自己音声推定により同じユーザーでも経時的に変化する、可変的、又は異なる様々な動作状況に対応可能であるという重要な利点もある。
【0009】
さらに、静的一次フィルタと、適応二次フィルタとの組み合わせにより、適応フィルタの数的サチュレーション(numerical saturation)のリスクを低減する、あるいは排除する。即ち、計算量がより少なくなり、よりシンプルな適応フィルタになる。
【0010】
また、本開示の利点として、タップ数が少ないので、適応フィルタが迅速に収束する。したがって、より迅速な自己音声推定が実現できる。
【0011】
上述の本発明の特徴及び利点と、他の特徴及び利点は、添付の図面を参照しつつ、以下の例示的な実施形態の詳細な記載によって当業者には容易に明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示に係る例示的聴覚保護装置を概略的に示す。
【
図4】本開示に係る例示的方法のフローチャートである。
【
図5】静的フィルタなしの、適応フィルタレスポンスを示す。
【
図6】静的フィルタを組み合わせた、適応フィルタレスポンスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
関連する場合に図面を参照しながら、各種実施形態及び詳細を以下で説明する。図面は縮尺通りに描写されていてもされていなくてもよく、類似の構造又は機能の要素は図面全体にわたって同じ参照番号により表されるという点に留意すべきである。また、図面は実施形態の説明を容易にすることを意図するものに過ぎないことに留意すべきである。図面は、本発明の包括的な説明としても、又は本発明の範囲に対する制限としても意図されていない。加えて、図示した実施形態は、示されるすべての態様又は利点を有する必要はない。特定の実施形態とともに記載される態様又は利点は必ずしも、その実施形態に限定されず、示されていない、又は明示的に説明されていなくても、任意の他の実施形態で実施可能である。
【0014】
聴覚保護システムが開示される。聴覚保護システムは、処理装置と、第1イヤーピース及び/又は第2イヤーピースを含む1又は複数のイヤーピースと、を備える。処理装置は、任意で第1イヤーピース及び第2イヤーピースに有線接続されてもよい。処理装置は、ユーザーの例えば胴体、腕、又は脚等、身体に装着されるように構成されてもよい。処理装置はヘルメットに取り付けられる又は一体化されるように構成されてもよい。
【0015】
第1イヤーピース及び/又は第2イヤーピース等のイヤーピースは、イヤーピースハウジングを備える。イヤーピースハウジングは、耳甲介内、及び外耳道内等、ユーザーの耳内に配置されるように構成されてもよい。任意で、イヤーピースハウジングは外耳道部と、外耳部とを有する。外耳道部は、第1端を有し、外耳道軸に沿って延在する。外耳道部の第1端は、イヤーピースがユーザーの耳内に挿入されると、ユーザーの鼓膜に向く。外耳道部の第1端には、外耳道開口が設けられてもよい。外耳道開口は、イヤーピースハウジングに対する音の出入りを可能とするものである。例えば、レシーバの音声と、外耳道マイクロフォンの音声とを分離するため、イヤーピースハウジングに複数の外耳道開口が設けられてもよい。イヤーピースの(1又は複数の)外耳道開口はそれぞれ、直径が0.5mmから3mmの範囲であってもよい。異なる外耳道開口は、直径が同じでも、異なっていてもよい。外耳道部は、長さ(外耳道軸に沿って測定)が2mmから20mmの範囲であってもよい。1又は複数の例示的イヤーピースにおいて、外耳道部は長さが3mmから15mmの範囲内である。したがって、ユーザーの外耳道壁によって、イヤーピースを外耳道内に固定でき、さらに/あるいは外耳道内面の鼓膜近傍で、外耳道を密閉することができる。イヤーピースは、聴覚保護器であってもよい。したがって、第1イヤーピース及び/又は第2イヤーピース等のイヤーピースは、(ユーザーの外耳道内に挿入されると)例えば外耳道壁と外耳道部との間を密閉する保護要素を有してもよい。保護要素は、発泡ポリマーから形成されてもよいし、発泡ポリマーを含んでもよい。保護要素は、外耳道部全周に設けられてもよい。保護要素は、少なくとも2mmの長さ(外耳道に沿った延長)を有してもよい。
【0016】
聴覚保護システムは、(第1)外耳道入力信号を提供するための、例えば第1外耳道マイクロフォンのような外耳道マイクロフォンを備える。任意で、外耳道マイクロフォンは、イヤーピースハウジング内の外耳道開口を介して、外耳道音響又は音声を検出するように構成される。1又は複数の例示的聴覚保護システムにおいて、聴覚保護システムは、それぞれ第1外耳道入力信号及び第2外耳道入力信号を提供する第1外耳道マイクロフォン及び/又は第2外耳道マイクロフォンを備える。外耳道マイクロフォンは、イヤーピースのイヤーピースハウジング内に配置されてもよい。例えば、第1外耳道マイクロフォンは第1イヤーピースの第1イヤーピースハウジング内に配置され、第2外耳道マイクロフォンは第2イヤーピースの第2イヤーピースハウジング内に配置される。第1イヤーピースがユーザーの左耳用に構成され、第2イヤーピースがユーザーの右耳用に構成されてもよいし、その逆であってもよい。
【0017】
聴覚保護システムは、(第1)外耳道出力信号に基づいて(第1)音響出力信号を提供する、例えば第1レシーバのようなレシーバを備える。1又は複数の例示的聴覚保護システムにおいて、聴覚保護システムは、それぞれ第1外耳道出力信号及び第2外耳道出力信号に基づいて、第1音響出力信号及び第2音響出力信号をそれぞれ提供する第1レシーバ及び/又は第2レシーバを備える。例えば、第1レシーバは第1イヤーピースの第1イヤーピースハウジング内に配置され、さらに/あるいは第2外耳道マイクロフォンは第2イヤーピースの第2イヤーピースハウジング内に配置される。レシーバは、外耳道部内の外耳道開口を介して、又は外耳道部内の出力ポートを介して音響出力信号を提供してもよい。
【0018】
聴覚保護システムは、(第1)外耳道出力信号を受信及び処理して、(第1)補償信号を提供する補償モジュールを備えてもよい。補償モジュールは、聴覚保護システムの処理装置内に配置されてもよい。補償モジュールは、第2外耳道出力信号を受信及びフィルタリングして、第2補償信号を提供するものであってもよい。
【0019】
聴覚保護システムは、(第1)ミキサーを備える。(第1)ミキサーは、(第1)外耳道マイクロフォンと、補償モジュールとに接続されて、(第1)外耳道入力信号と、(第1)補償信号とに基づいて(第1)音声信号を提供してもよい。聴覚保護システムは、第2ミキサーを備えてもよい。第2ミキサーは、第2外耳道マイクロフォンと、補償モジュールとに接続されて、第2外耳道入力信号と、第2補償信号とに基づいて、第2音声信号を提供してもよい。第1ミキサー及び/又は第2ミキサーは、聴覚保護システムの処理装置内に配置されてもよい。ミキサーは、外耳道入力信号から補償信号を減算するように構成されてもよい。例えば、第1ミキサーは第1外耳道入力信号から第1補償信号を減算するように構成されてもよい。第2ミキサーは第2外耳道入力信号から第2補償信号を減算するように構成されてもよい。
【0020】
聴覚保護システムは、通信ユニットと、トランシーバユニットとを備えてもよい。通信ユニットは、第1及び/又は第2音声信号を処理し、さらに/あるいはトランシーバユニットを介して第1及び/又は第2音声信号を送信するように構成されてもよい。通信ユニットは、通信信号を、トランシーバユニットを介してして受信し、さらに/あるいは処理するように構成されてもよい。
【0021】
補償モジュールは、(第1)フィルタコントローラ、(第1)一次フィルタ、(第1)二次フィルタを備えてもよい。(第1)一次フィルタは、静的フィルタであって、(第1)一次フィルタの(第1)一次フィルタ係数が静的であってもよい。(第1)二次フィルタは適応フィルタであって、例えば(第1)二次フィルタの(第1)二次フィルタ係数が、音声信号及び/又は(第1)一次フィルタからの(第1)一次フィルタ出力信号に基づいて(第1)フィルタコントローラにより制御される。(第1)フィルタコントローラは入力を有し、入力は(第1)ミキサーに接続されて、(第1)フィルタコントローラへの入力として、(第1)音声信号を受信するものであってもよい。(第1)フィルタコントローラは入力を有し、入力は(第1)一次フィルタに接続されて、(第1)一次フィルタ出力信号を(第1)フィルタコントローラへの入力として受信するものであってもよい。
【0022】
(第1)フィルタコントローラは、ユーザーの自己音声が存在するかを検出するように構成された自己音声検出器を備えてもよい。(第1)フィルタコントローラは、自己音声検出器がユーザーの自己音声の存在を検出すると、(第1)二次フィルタ係数の適応を見合わせる、停止、又は解除するように構成されてもよい。(第1)フィルタコントローラは、自己音声検出器がユーザーの自己音声の不在を検出すると、(第1)二次フィルタ係数の適応を開始又は実行するように構成されてもよい。したがって、ユーザーの自己音声への適応が阻止、あるいは少なくとも低減され、自己音声推定と電力効率の向上が図られる。自己音声推定向上のさらなる利点として、ヒアスルー・パス(hear-thru path)がアクティブである場合に存在し得る、音声信号のコムフィルタ効果が低減されることが挙げられる。
【0023】
(第1)フィルタコントローラは、フィルタ適応基準が満たされたか判定するように構成されてもよい。(第1)フィルタコントローラは、フィルタ適応基準が満たされたことに応じて、(第1)二次フィルタ係数の適応を開始、又は実行するように構成されてもよい。(第1)フィルタコントローラは、フィルタ適応基準が満たされないことに応じて、(第1)二次フィルタ係数の適応を見合わせる、停止、又は解除するように構成されてもよい。フィルタ適応基準が満たされたかを判定することは、通信ユニットからの第1出力信号、及び/又は第1外耳道入力信号(又は第1補償信号)がトーン入力を含むか(例えば、トーン内容を示すトーンパラメータが、トーン閾値を上回るか)を判定することを含む。ここで、通信ユニットからの第1出力信号、及び/又は第1外耳道入力信号(又は第1補償信号)が、トーン入力を含む場合に、フィルタ適応基準が満たされない。
【0024】
補償モジュールは、第2フィルタコントローラ、第2一次フィルタ、第2二次フィルタを備えてもよい。第2一次フィルタは、静的フィルタであって、第2一次フィルタの第2一次フィルタ係数は静的である。第2二次フィルタは適応フィルタであって、例えば第2二次フィルタの第2二次フィルタ係数が、音声信号及び/又は第2一次フィルタからの第2一次フィルタ出力信号に基づいて第2フィルタコントローラにより制御される。第2フィルタコントローラは入力を有し、入力は第2ミキサーに接続されて、第2フィルタコントローラへの入力として、第2音声信号を受信するものであってもよい。第2フィルタコントローラは入力を有し、入力は第2一次フィルタに接続されて、第2一次フィルタ出力信号を第2フィルタコントローラへの入力として受信するものであってもよい。
【0025】
第2フィルタコントローラは、ユーザーの自己音声が存在するかを検出するように構成された自己音声検出器を備えてもよい。第2フィルタコントローラは、自己音声検出器がユーザーの自己音声の存在を検出すると、第2二次フィルタ係数の適応を見合わせる、停止、又は解除するように構成されてもよい。第2フィルタコントローラは、自己音声検出器がユーザーの自己音声の不在を検出すると、第2二次フィルタ係数の適応を開始又は実行するように構成されてもよい。
【0026】
第2フィルタコントローラは、フィルタ適応基準が満たされたかを判定するように構成されてもよい。第2フィルタコントローラは、フィルタ適応基準が満たされたことに応じて、第2二次フィルタ係数の適応を開始、又は実行するように構成されてもよい。第2フィルタコントローラは、フィルタ適応基準が満たされないことに応じて、第2二次フィルタ係数の適応を見合わせる、停止又は解除するように構成されてもよい。フィルタ適応基準が満たされたかを判定することは、通信ユニットからの第2出力信号、及び/又は第2外耳道入力信号(又は第2補償信号)がトーン入力を含むか(例えば、トーン内容を示すトーンパラメータが、トーン閾値を上回るか)を判定することを含む。ここで、通信ユニットからの第2出力信号、及び/又は第2外耳道入力信号(又は第2補償信号)が、トーン入力を含む場合に、フィルタ適応基準は満たされない。
【0027】
補償モジュールにおいて、静的フィルタと適応フィルタを組み合わせることで、プレイバックモデルがより正確となり、自己音声推定の向上、及び/又は高速化が図られる。また、第1フィルタ及び/又は適応二次フィルタで使用される係数が減るので、電力消費がより改善(低減)される。
【0028】
さらに、本開示は適応二次フィルタでのゲインを低減できる。適応二次フィルタは、一次フィルタと、プレイバック伝達関数との間の差分をモデル化するためのみに必要であるので、リアルタイム動作は簡略化可能なのである。
【0029】
さらに、補償モジュールにおいて、静的フィルタと適応フィルタを組み合わせることで、適応二次フィルタにおいて、低周波数ゲイン低下を検出可能となる。これにより、イヤーピースの密閉が十分でないことを検出しやすく成り得る。
【0030】
第1一次フィルタ及び/又は第2一次フィルタ等の一次フィルタは、無限インパルス応答(IIR)フィルタであってもよい。一次フィルタは、N次フィルタであってもよい。ここでNは、例えば6又は8のように、4から10の間の範囲等、3から15の範囲内の整数である。IIRフィルタは、かなり少ない係数/次数で、プレイバックパス(レシーバ,外耳道マイクロフォン,及び/又は外耳道の音響特性)の共通特徴を示すことができるため、(1又は複数の)一次フィルタをIIRにより実現することは有利である。
【0031】
(第1)一次フィルタ係数により、(第1)レシーバ及び/又は(第1)外耳道マイクロフォンの電気音響特性をモデル化してもよい。第2一次フィルタ係数により、第2レシーバ及び/又は第2外耳道マイクロフォンの電気音響特性をモデル化してもよい。
【0032】
(第1)一次フィルタ係数により、密閉された外耳道等の外耳道の音響特性をモデル化してもよい。第2一次フィルタ係数により、密閉された外耳道等の外耳道の音響特性をモデル化してもよい。
【0033】
第1一次フィルタ及び/又は第2一次フィルタ等の一次フィルタは、一定の第1ゲイン又は略一定の第1ゲイン(±0.5dB)を第1周波数帯内に有してもよい。第1周波数帯は100Hzから500Hzであってもよい。
【0034】
第1一次フィルタ及び/又は第2一次フィルタ等の一次フィルタは、最大ゲインを第2周波数帯内に有してもよい。第2周波数帯は、第1周波数帯と重複しなくてもよい。第2周波数帯は4kHzから8kHzであってもよい。
【0035】
第1一次フィルタ及び/又は第2一次フィルタ等の一次フィルタは、第3周波数帯内に、極小ゲインを有してもよい。第3周波数帯は、第1周波数帯に重複しなくてもよい。第3周波数帯は、第2周波数帯に重複しなくてもよい。第3周波数帯は1kHzから2kHzであってもよい。
【0036】
第1一次フィルタ及び/又は第2一次フィルタ等の一次フィルタは、30Hzから50Hzの第4周波数帯内に、線形増加するゲインを有してもよい。
【0037】
第1二次フィルタ及び/又は第2二次フィルタ等の二次フィルタは、有限インパルス応答(FIR)フィルタであってもよい。第1二次フィルタ及び/又は第2二次フィルタの二次タップ数/二次係数は、20から38の範囲等40未満であってもよい。
【0038】
聴覚保護システムは、聴覚保護処理モジュールと、(第1)外部マイクロフォンとを備えてもよい。聴覚保護処理モジュールは(第1)外部マイクロフォンに接続されて、(第1)外部マイクロフォンから(第1)外部入力信号を受信し、(第1)外部入力信号に基づいて(第1)出力信号を提供するように構成されてもよい。(第1)外耳道出力信号は(第1)外部出力信号に基づいてもよい。聴覚保護処理モジュールは、聴覚保護システムの処理装置内に配置されてもよい。第1外部マイクロフォンは、第1イヤーピースの第1イヤーピースハウジング内に配置されてもよい。外部マイクロフォンは、イヤーピースのイヤーピースハウジング内に配置され、外部又は周囲の音を拾うように構成される。
【0039】
聴覚保護システムは、第2外部マイクロフォンを備えてもよい。聴覚保護処理モジュールは、第2外部マイクロフォンに接続されて、第2外部マイクロフォンから第2外部入力信号を受信し、第2外部入力信号に基づいて第2外部出力信号を提供するように構成されてもよい。第2外耳道出力信号は第2外部出力信号に基づいてもよい。第2外部マイクロフォンは、第2イヤーピースの第2イヤーピースハウジング内に配置されてもよい。
【0040】
聴覚保護システムユーザーの音声信号を推定する方法も開示される。方法は、例えばユーザーの外耳道に挿入されたイヤーピースのレシーバにより、外耳道出力信号に基づいて、音響出力信号を提供することを含む。イヤーピースは、外耳道を密閉、遮蔽、又は閉鎖してもよい。即ち、イヤーピースは外部音を少なくとも10dB減衰させてもよい。方法は、例えばユーザーの外耳道内に挿入されたイヤーピースの外耳道マイクロフォンにより、外耳道入力信号を取得することを含む。方法は、例えば本明細書に記載の補償モジュールにより、外耳道出力信号に基づいて補償信号を提供することを含む。方法は、外耳道入力信号及び補償信号に基づいて、音声信号を提供することを含む。補償信号を提供することは、外耳道出力信号を、例えば本明細書に記載の一次フィルタと、例えば本明細書に記載の二次フィルタとでフィルタリングすることを含んでもよい。第1フィルタは任意で静的フィルタであって、さらに/あるいは第2フィルタは任意で適応フィルタである。補償信号を提供することは、音声信号に基づいて、二次フィルタの二次フィルタ係数を適応することを含んでもよい。補償信号を提供することは、ユーザーの自己音声の存在を検出し、ユーザーの自己音声が検出された場合、任意で二次フィルタの二次フィルタ係数の適応を見送る、停止する、又は解除することを含んでもよい。1又は複数の例示的方法において、ユーザーの自己音声の存在は、音声信号に基づいて検出される。例えば、音声信号パラメータが第1閾値を超える場合に検出される。補償信号を提供することは、例えば音声信号に基づいて適応基準を満たすか否かを判定することと、さらに任意で適応基準が満たされた場合、音声信号に基づいて、二次フィルタの二次フィルタ係数を適応することを含んでもよい。適応基準は、ユーザーの自己音声が、例えば自己音声検出器で検出されない場合に満たされてもよい。
【0041】
補償信号を提供することは、外耳道出力信号を一次フィルタ及び二次フィルタによりフィルタリングして、二次フィルタ出力信号(補償信号とも称する)を取得することを含む。補償信号を提供することは、二次フィルタ出力信号/補償音声信号に基づいて、二次フィルタの二次フィルタ係数を適応することを含んでもよい。
【0042】
方法、あるいは方法の少なくとも一部は、本明細書に開示の聴覚保護システムにより実行されてもよい。
【0043】
図1は、第1イヤーピース4と、第2イヤーピース6と、処理装置8とを備える例示的聴覚保護システム2を概略的に示す。第1イヤーピース4は、第1ケーブル10を介して処理装置に接続され、第2イヤーピース6は、第2ケーブル12を介して処理装置8に接続される。
【0044】
聴覚保護システム2は、第1外耳道マイクロフォン14により検出された第1外耳道音響17に基づいて、外耳道入力信号(第1外耳道入力信号16)を提供する外耳道マイクロフォン(第1外耳道マイクロフォン14)を備える。聴覚保護システム2は、外耳道出力信号(第1外耳道出力信号22)に基づいて音響出力信号(第1音響出力信号20)を提供する、レシーバ(第1レシーバ18)を備える。第1外耳道マイクロフォン14と、第1レシーバ18とは、第1イヤーピース4の第1イヤーピースハウジング24内に配置される。
【0045】
聴覚保護システム2は、外耳道出力信号(第1外耳道出力信号22)を受信及びフィルタリングして、補償信号(第1補償信号28)を提供する補償モジュール(第1補償モジュール26)を備える。
【0046】
聴覚保護システム2は、外耳道マイクロフォン(第1外耳道マイクロフォン14)と補償モジュール(第1補償モジュール26)とに接続されて、外耳道入力信号(第1外耳道入力信号16)と、補償信号(第1補償信号28)とに基づいて音声信号(第1音声信号32)を提供するミキサー(第1ミキサー30)を備える。音声信号(第1音声信号32)は、通信ユニット34に供給されてさらに処理される、さらに/あるいは無線信号を受信及び/又は送信するように構成されたトランシーバユニット36を介して送信される。
【0047】
聴覚保護システム2は、第1聴覚保護処理モジュール37と、第1外部マイクロフォン37Aとを備える。第1聴覚保護処理モジュール37は、処理装置8内に配置され、第1外部マイクロフォン37Aは、第1イヤーピースハウジング24内に配置される。第1聴覚保護処理モジュール37は第1外部マイクロフォン37Aに接続されて、第1外部マイクロフォン37Aから第1外部入力信号37Bを受信し、第1外部入力信号37Bに基づいて第1外部出力信号を提供するように構成される。第1外耳道出力信号22は第1外部出力信号37B、及び/又は通信ユニット34からの第1出力信号37Cに基づいてもよい。第1外耳道出力信号22は、第1外部出力信号37Bと、通信ユニット34からの第1出力信号37Cとの和であってもよい。
【0048】
聴覚保護システム2は、第2外耳道マイクロフォン40により検出された第2外耳道音響43に基づいて、第2外耳道入力信号42を提供する第2外耳道マイクロフォン40を備える。聴覚保護システム2は、第2外耳道出力信号48に基づいて第2音響出力信号46を提供する、第2レシーバ44を備える。第2外耳道マイクロフォン40及び第2レシーバ44は、第2イヤーピース6の第2イヤーピースハウジング50内に配置される。
【0049】
聴覚保護システム2は、第2外耳道出力信号48を受信、フィルタリングして、第2補償信号54を提供する第2補償モジュール52を備える。
【0050】
聴覚保護システム2は、第2外耳道マイクロフォン40と第2補償モジュール52とに接続されて、第2外耳道入力信号42と、第2補償信号54とに基づいて第2音声信号58を提供する第2ミキサー56を備える。第2音声信号58は、通信ユニット34に供給されてさらに処理される、さらに/あるいは無線信号を受信及び/又は送信するように構成されたトランシーバユニット36を介して送信される。
【0051】
聴覚保護システム2は任意で第2聴覚保護処理モジュール59と、第2外部マイクロフォン59Aとを備える。第2聴覚保護処理モジュール59は、処理装置8内に設けられ、第2外部マイクロフォン59Aは第2イヤーピースハウジング50内に設けられる。第2聴覚保護処理モジュール59は、第2外部マイクロフォン59Aに接続されて、第2外部マイクロフォン59Aから第2外部入力信号59Bを受信し、第2外部入力信号59Bに基づいて第2外部出力信号を提供するように構成される。第2外耳道出力信号48は第2外部出力信号59B及び/又は通信ユニット34からの第2出力信号59Cに基づいてもよい。第2外耳道出力信号48は第2外部出力信号59Bと、通信ユニット34からの第2出力信号59Cとの和であってもよい。第1聴覚保護処理モジュール37と、第2聴覚保護処理モジュール59とは、単一の聴覚保護処理モジュール内に内蔵されてもよいし、通信ユニット34内に内蔵されてもよい。
【0052】
図2は、例えば第1補償モジュールとして使用される例示的補償モジュールのブロック図である。(第1)補償モジュール26は、第1フィルタコントローラ60と、第1一次フィルタ62と、第1二次フィルタ64とを備える。第1フィルタコントローラ60は第1音声信号32及び第1補償信号28を受信する。第1一次フィルタ62は、第1外耳道出力信号22を受信、フィルタリングして、一次フィルタ出力信号65を第1二次フィルタ64及び第1フィルタコントローラ60に提供するように構成される。第1二次フィルタ64は、第1フィルタコントローラ60からの第1制御信号65Aに応じて、一次フィルタ出力信号65をフィルタリングし、第1補償モジュールからの出力(第1補償信号28)として、二次フィルタ出力信号65Bを供給する。第1制御信号65Aは、第1二次フィルタ64の一次フィルタ係数を設定又は制御する。第1一次フィルタ62は、静的無限インパルス応答(IIR)フィルタであって、第1一次フィルタ62の一次フィルタ係数は静的である。第1二次フィルタ64は、適応有限インパルス応答(FIR)フィルタである。IIRフィルタと、FIRフィルタとを組み合わせることで、電力効率の良い、改善された外耳道レスポンスのモデル化が実現される。第1二次フィルタ64の二次フィルタ係数は、第1音声信号32と、第1一次フィルタ62からの一次フィルタ出力信号65とに基づいて、第1フィルタコントローラ60により制御される。
【0053】
図3は、例えば第2補償モジュールとして使用される例示的補償モジュールのブロック図である。第2補償モジュール52は、第2フィルタコントローラ66と、第2一次フィルタ68と、第2二次フィルタ70とを備える。第2フィルタコントローラ66は第2音声信号58及び第2補償信号54を受信する。第2一次フィルタ68は、第2外耳道出力信号48を受信、フィルタリングして、一次フィルタ出力信号65を第2二次フィルタ70及び第2フィルタコントローラ66に提供する。第2二次フィルタ70は、第2フィルタコントローラ66からの第2制御信号65Cに応じて、一次フィルタ出力信号65をフィルタリングし、第2補償モジュールからの出力(第2補償信号54)として、二次フィルタ出力信号65Bを供給する。第2制御信号72は、第2二次フィルタ70の一次フィルタ係数を設定又は制御する。第2一次フィルタ68は、静的無限インパルス応答(IIR)フィルタであって、第2一次フィルタ68の一次フィルタ係数は静的である。第2二次フィルタ70は、適応有限インパルス応答(FIR)フィルタである。IIRフィルタと、FIRフィルタとを組み合わせることで、電力効率の良い、改善された外耳道レスポンスのモデル化が実現される。第2二次フィルタ70の二次フィルタ係数は、第2音声信号58と、第2一次フィルタ68からの一次フィルタ出力信号65とに基づいて、第2フィルタコントローラ66により制御される。
【0054】
図4は、聴覚保護システムユーザーの音声信号を推定する例示的方法100のフローチャートである。方法100は、例えば第1外耳道出力信号22のような外耳道出力信号に基づいて、例えば第1音響出力信号20のような音響出力信号を提供すること102を含む。方法100は、例えば第1外耳道マイクロフォン14のような外耳道マイクロフォンにより例えば第1外耳道入力信号16のような外耳道入力信号を取得すること104と、例えば第1外耳道出力信号22のような外耳道出力信号に基づいて、例えば第1補償信号28のような補償信号を提供すること106を含む。方法100はさらに、例えば第1外耳道入力信号16及び第1補償信号28のような、外耳道入力信号及び補償信号に基づいて、例えば第1音声信号32のような音声信号を提供すること108を含む。方法100において、補償信号を提供すること108は、例えば第1外耳道出力信号22のような外耳道出力信号を、例えば第1一次フィルタ62のような一次フィルタと、例えば第1二次フィルタ64のような二次フィルタとによりフィルタリングすること110を任意で含む。例えば第1一次フィルタ62のような一次フィルタは静的フィルタで、例えば第1二次フィルタ64のような二次フィルタは、適応フィルタである。方法100において、補償信号を提供すること108は、例えば自己音声が検出されないなど、適応基準が満たされたかを、例えば音声信号に基づいて判定し、適応基準が満たされると、例えば音声信号に基づいて、二次フィルタの二次フィルタ係数を適応することを任意で含む。
【0055】
外耳道入力信号を取得すること104は、第2外耳道マイクロフォン44により、第2外耳道入力信号42を取得することを含んでもよい。補償信号を提供すること106は、第2外耳道出力信号48に基づいて第2補償信号54を提供することを含んでもよい。音声信号を提供すること108は、第2外耳道入力信号42及び第2補償信号54に基づいて、第2音声信号58を提供することを含んでもよい。方法100において、外耳道出力信号をフィルタリングすること110は、第2一次フィルタ68及び第2二次フィルタ70により、第2外耳道出力信号48をフィルタリングすることを含んでもよい。第2一次フィルタ68は静的フィルタで、第2二次フィルタ70は適応フィルタである。
【0056】
図5は、典型的な42係数型適応フィルタによって、イヤーレスポンスをモデル化した結果を示す(静的フィルタなし)。適応フィルタレスポンス82(外耳道のモデル)と、外耳道レスポンス80(実際の外耳道)との差が、100Hzで5dBよりも大きくなっており、低周波数(500Hz未満)では適応フィルタの性能は低い。
【0057】
図6は、32係数適応フィルタ(適応フィルタレスポンス84)と、静的フィルタ(静的フィルタ応答86)を使用して、外耳道レスポンス80(
図5と同様)をモデル化した結果を示す。適応フィルタ(例えば第1二次フィルタ)と、静的フィルタ(例えば第1一次フィルタ)との合成レスポンス88は、特に低周波数で、外耳道レスポンス80へより近似していることを示す。さらに、適応二次フィルタは高周波数で、低ゲインとなる。さらに、適応二次フィルタは、少なくとも8kHzまでは、ゲインの変化が比較的少ない。
【0058】
図7は、単一の外耳道入力信号(第1外耳道入力信号16)に基づいて、自己音声推定を行う例示的聴覚保護システム2Aを示す。
【0059】
本明細書で使用される「第1の」、「第2の」、「第3の」、「第4の」、「一次」、「二次」、「三次」等の用語は、具体的な順序を示すものではなく、各要素の特定に使用されている。さらに、本明細書で使用される「第1の」、「第2の」、「第3の」、「第4の」、「一次」、「二次」、「三次」等の用語は、何らかの順序や重要性を示すものではない。本明細書で使用される「第1の」、「第2の」、「第3の」、「第4の」、「一次」、「二次」、「三次」等の用語は、要素同士の区別に用いられている。本明細書及び他部で使用される「第1の」、「第2の」、「第3の」、「第4の」、「一次」、「二次」、「三次」等の用語は、あくまで参照として付されるものであって、特定の空間的、時間的順序を示すことを意図していない。さらに、第1の要素、第2の要素と称されたということで、必ずしも他方の存在が示唆されているとは限らない。
【0060】
特定の特徴を示し、記載してきたが、これらの特徴は、特許請求の範囲に記載された発明を限定することを意図していないことが理解され、特許請求の範囲に記載された発明の精神及び範囲から逸脱することなく種々の変更及び改変が行われてもよいことが当業者に明らかになるだろう。したがって、明細書及び図面は、限定するという観点ではなく、実例であると考えるべきである。特許請求の範囲に記載された発明は、全ての代替例、改変及び均等物を包含することを意図している。
【符号の説明】
【0061】
2、2A:聴覚保護システム
4:第1イヤーピース
6:第2イヤーピース
8:処理装置
10:第1ケーブル
12:第2ケーブル
14:第1外耳道マイクロフォン
16:第1外耳道入力信号
17:第1外耳道音響
18:第1レシーバ
20:第1音響出力信号
22:第1外耳道出力信号
24:第1イヤーピースハウジング
26:第1補償モジュール
28:第1補償信号
30:第1ミキサー
32:第1音声信号
34:通信ユニット
36:ワイヤレス・トランシーバ・ユニット
37:第1聴覚保護処理モジュール
37A:第1外部マイクロフォン
37B:第1外部出力信号
37C:通信ユニットからの第1出力信号
40:第2外耳道マイクロフォン
42:第2外耳道入力信号
43:第2外耳道音響
44:第2レシーバ
46:第2音響出力信号
48:第2外耳道出力信号
50:第2イヤーピースハウジング
52:第2補償モジュール
54:第2補償信号
56:第2ミキサー
58:第2音声信号
59:第2聴覚保護処理モジュール
59A:第2外部マイクロフォン
59B:第2外部出力信号
59C:通信ユニットからの第2出力信号
60:第1フィルタコントローラ
62:第1一次フィルタ
64:第1二次フィルタ
65:一次フィルタ出力信号
65A:第1制御信号
65B:二次フィルタ出力信号
66:第2フィルタコントローラ
68:第2一次フィルタ
70:第2二次フィルタ
72:第2制御信号
80:外耳道レスポンス
82:適応フィルタレスポンス
84:適応フィルタレスポンス
86:静的フィルタレスポンス
88:適応フィルタレスポンス及び静的フィルタレスポンスの合成レスポンス
100:聴覚保護システムユーザーの音声信号を推定する方法
102:外耳道出力信号に基づいて音響出力信号を提供すること
104:外耳道マイクロフォンにより外耳道入力信号を取得すること
106:外耳道出力信号に基づいて補償信号を提供すること
108:外耳道入力信号及び補償信号に基づいて音声信号を提供すること
110:一次フィルタ及び二次フィルタにより外耳道出力信号をフィルタリングすること