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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】細胞加工システム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20221026BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12M3/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018125388
(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公開番号】P2020000194
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000253019
【氏名又は名称】澁谷工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(72)【発明者】
【氏名】米田 健二
(72)【発明者】
【氏名】出口 直也
【審査官】幸田 俊希
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-038309(JP,A)
【文献】特開2011-115107(JP,A)
【文献】特開2017-169502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12M 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に細胞を収容可能な複数の収容ボックスと、上記収容ボックスを移動させる移動手段と、内部で細胞の加工作業を行うとともに上記収容ボックスが接続可能な複数の処理ユニットと、上記移動手段を制御する制御手段とを備えた細胞加工システムにおいて、
上記処理ユニットは、上記収容ボックスが接続された状態で、その内部で上記細胞の加工作業の一部の処理を行うように構成されるとともに、各処理ユニットでの処理に要する処理時間を所要の単位時間以内に設定し、
また、上記単位時間以内に終了できない処理について、当該処理に要する単位時間数と同数の当該処理を行う処理ユニットを設け、
上記制御手段は、上記収容ボックスを上記複数の処理ユニットに対して所定の順序で接続させるように移動手段を制御し、上記複数の処理ユニットに上記収容ボックスが接続された状態で上記単位時間が経過すると、収容ボックスを処理ユニットより離脱させて、次の処理ユニットへと移動させ
上記単位時間以内に終了できない処理については、単位時間経過ごとに上記単位時間数と同数の処理ユニットに上記収容ボックスを順次接続させて、上記単位時間数と同数の処理ユニットによって分割して処理を行うことを特徴とする細胞加工システム。
【請求項2】
内部に細胞を収容可能な複数の収容ボックスと、上記収容ボックスを移動させる移動手段と、内部で細胞の加工作業を行うとともに上記収容ボックスが接続可能な複数の処理ユニットと、上記移動手段を制御する制御手段とを備えた細胞加工システムにおいて、
上記処理ユニットは、上記収容ボックスが接続された状態で、その内部で上記細胞の加工作業の一部の処理を行うように構成されるとともに、各処理ユニットでの処理に要する処理時間を所要の単位時間以内に設定し、
また、上記単位時間以内に終了できない処理について、当該処理に要する単位時間数と同数の当該処理を行う処理ユニットを設け、
上記制御手段は、上記収容ボックスを上記複数の処理ユニットに対して所定の順序で接続させるように移動手段を制御し、上記複数の処理ユニットに上記収容ボックスが接続された状態で上記単位時間が経過すると、収容ボックスを処理ユニットより離脱させて、次の処理ユニットへと移動させ、
上記単位時間以内に終了できない処理については、上記単位時間数と同数の処理ユニットのいずれかに上記収容ボックスを接続させて処理を開始し、上記単位時間が経過すると当該処理ユニットにおいて処理を続行させたまま、当該処理ユニットとは異なる処理ユニットに後続の収容ボックスを接続させて処理を開始することを特徴とする細胞加工システム。
【請求項3】
内部に細胞を収容可能な複数の収容ボックスと、上記収容ボックスを移動させる移動手段と、内部で細胞の加工作業を行うとともに上記収容ボックスが接続可能な複数の処理ユニットと、上記移動手段を制御する制御手段とを備えた細胞加工システムにおいて、
上記処理ユニットは、上記収容ボックスが接続された状態で、その内部で上記細胞の加工作業の一部の処理を行うように構成されるとともに、各処理ユニットでの処理に要する処理時間を所要の単位時間以内に設定し、
また、上記処理ユニットの内部を除染する除染手段を備えるとともに、当該除染手段による除染時間を上記単位時間以内に設定し、
上記制御手段は、上記収容ボックスを上記複数の処理ユニットに対して所定の順序で接続させるように移動手段を制御し、上記複数の処理ユニットに上記収容ボックスが接続された状態で上記単位時間が経過すると、収容ボックスを処理ユニットより離脱させて、次の処理ユニットへと移動させ、
さらに上記制御手段は、除染を行う処理ユニットには収容ボックスを接続させず、上記除染手段によって当該処理ユニットの除染作業を開始し、
上記単位時間が経過すると、制御手段は、上記除染が終了した処理ユニットに上記収容ボックスを接続させるとともに、次に除染作業を行う処理ユニットには収容ボックスを接続させず、上記除染手段によって当該処理ユニットの除染作業を開始することを特徴とする細胞加工システム。
【請求項4】
上記収容ボックスが、細胞を培養するインキュベータとして機能することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の細胞加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は細胞加工システムに関し、詳しくは複数の処理によって構成された細胞の加工作業を行う細胞加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、患者から採取した細胞を培養し、これを治療に用いる治療方法が知られており、これに伴い上記細胞に対して様々な加工作業を行うための細胞加工システムが提案されている。
ここで、上記細胞を培養するための細胞の加工作業は複数の処理によって構成されているが、上記細胞の加工作業の全てを一つのアイソレータの内部で行うと、当該細胞の加工作業が完了するまで他の細胞に対する細胞の加工作業を行うことができず、大量に細胞を培養することができないという問題がある。
そこで、上記細胞の加工作業のうち一部の処理を行うように構成された処理ユニットを複数設けるとともに、細胞を収容した収容ボックスを上記細胞の加工作業の処理順序に沿って上記処理ユニットに接続するようにした培養システムが提案されている(特許文献1)。
当該特許文献1の培養システムによれば、各処理ユニットにおいて細胞の加工作業を分業して行うことから、細胞の加工作業の全てを一つのアイソレータの内部で行う場合に比べて、効率的に行うことが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-38309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、培養する細胞ごとにそれぞれ異なる細胞の加工作業が設定され、また細胞の加工作業を構成する処理の処理時間が統一されていないことから、ある処理ユニットで処理が終了しても、他の処理ユニットでの処理が終了するまで待機しなければならない場合が生じ、非効率的であった。
このような問題に鑑み、本発明は共通する処理から構成される細胞の加工作業をより効率的に実施し、細胞を大量に加工することが可能な細胞加工システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち請求項1の発明にかかる細胞加工システムは、内部に細胞を収容可能な複数の収容ボックスと、上記収容ボックスを移動させる移動手段と、内部で細胞の加工作業を行うとともに上記収容ボックスが接続可能な複数の処理ユニットと、上記移動手段を制御する制御手段とを備えた細胞加工システムにおいて、
上記処理ユニットは、上記収容ボックスが接続された状態で、その内部で上記細胞の加工作業の一部の処理を行うように構成されるとともに、各処理ユニットでの処理に要する処理時間を所要の単位時間以内に設定し、
また、上記単位時間以内に終了できない処理について、当該処理に要する単位時間数と同数の当該処理を行う処理ユニットを設け、
上記制御手段は、上記収容ボックスを上記複数の処理ユニットに対して所定の順序で接続させるように移動手段を制御し、上記複数の処理ユニットに上記収容ボックスが接続された状態で上記単位時間が経過すると、収容ボックスを処理ユニットより離脱させて、次の処理ユニットへと移動させ
上記単位時間以内に終了できない処理については、単位時間経過ごとに上記単位時間数と同数の処理ユニットに上記収容ボックスを順次接続させて、上記単位時間数と同数の処理ユニットによって分割して処理を行うことを特徴としている。
また請求項2の発明にかかる細胞加工システムは、内部に細胞を収容可能な複数の収容ボックスと、上記収容ボックスを移動させる移動手段と、内部で細胞の加工作業を行うとともに上記収容ボックスが接続可能な複数の処理ユニットと、上記移動手段を制御する制御手段とを備えた細胞加工システムにおいて、
上記処理ユニットは、上記収容ボックスが接続された状態で、その内部で上記細胞の加工作業の一部の処理を行うように構成されるとともに、各処理ユニットでの処理に要する処理時間を所要の単位時間以内に設定し、
また、上記単位時間以内に終了できない処理について、当該処理に要する単位時間数と同数の当該処理を行う処理ユニットを設け、
上記制御手段は、上記収容ボックスを上記複数の処理ユニットに対して所定の順序で接続させるように移動手段を制御し、上記複数の処理ユニットに上記収容ボックスが接続された状態で上記単位時間が経過すると、収容ボックスを処理ユニットより離脱させて、次の処理ユニットへと移動させ、
上記単位時間以内に終了できない処理については、上記単位時間数と同数の処理ユニットのいずれかに上記収容ボックスを接続させて処理を開始し、上記単位時間が経過すると当該処理ユニットにおいて処理を続行させたまま、当該処理ユニットとは異なる処理ユニットに後続の収容ボックスを接続させて処理を開始することを特徴としている。
そして請求項3の発明にかかる細胞加工システムは、内部に細胞を収容可能な複数の収容ボックスと、上記収容ボックスを移動させる移動手段と、内部で細胞の加工作業を行うとともに上記収容ボックスが接続可能な複数の処理ユニットと、上記移動手段を制御する制御手段とを備えた細胞加工システムにおいて、
上記処理ユニットは、上記収容ボックスが接続された状態で、その内部で上記細胞の加工作業の一部の処理を行うように構成されるとともに、各処理ユニットでの処理に要する処理時間を所要の単位時間以内に設定し、
また、上記処理ユニットの内部を除染する除染手段を備えるとともに、当該除染手段による除染時間を上記単位時間以内に設定し、
上記制御手段は、上記収容ボックスを上記複数の処理ユニットに対して所定の順序で接続させるように移動手段を制御し、上記複数の処理ユニットに上記収容ボックスが接続された状態で上記単位時間が経過すると、収容ボックスを処理ユニットより離脱させて、次の処理ユニットへと移動させ、
さらに上記制御手段は、除染を行う処理ユニットには収容ボックスを接続させず、上記除染手段によって当該処理ユニットの除染作業を開始し、
上記単位時間が経過すると、制御手段は、上記除染が終了した処理ユニットに上記収容ボックスを接続させるとともに、次に除染作業を行う処理ユニットには収容ボックスを接続させず、上記除染手段によって当該処理ユニットの除染作業を開始することを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
上記発明によれば、複数の処理によって構成された細胞の加工作業を複数の処理ユニットによって分業して行うが、各処理の処理時間を所要の単位時間以内で終了させることで、各処理ユニットから同時に収容ボックスを離脱させることができ、また同時に次の処理に移行することができる。
つまり、本発明の培養システムによれば、流れ作業的に前の処理を行う処理ユニットから次の処理を行う処理ユニットへと、上記単位時間ごとに収容ボックスを移動させることが可能であるため、細胞の加工作業を効率的に実施し、細胞を大量に加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施例にかかる細胞加工システムの構成図
図2】処理ユニットの除染を行う際の動作を示した図
図3】所要の処理ユニットにおいて単位時間以内に処理が完了できない場合の動作を示した図
図4図3に示す動作と異なる動作を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図示実施例について説明すると、図1は細胞の加工を行う細胞加工システム1を示し、患者から採取した細胞に対して、複数の処理からなる一連の加工作業を行うものとなっている。 細胞に対する加工とは、細胞・組織の人為的な増殖(培養)・分化、細胞の株化、細胞の活性化等を目的とした薬剤処理、生物学的特性改変、非細胞成分との組み合わせまたは遺伝子工学的改変等を施すことを指し、本実施例における加工作業としては、細胞を含んだ細胞懸濁液を遠心分離する遠心分離処理と、当該遠心分離した細胞をウェルプレートに播種する播種処理とを行い、その後細胞を所定時間静置して細胞を培養し、さらに上記遠心分離処理および播種処理を繰り返すことで、細胞を増殖させるものとなっている。
本実施例にかかる細胞加工システム1は、内部に細胞を収容可能な複数の収容ボックスBと、上記細胞を収容ボックスBに収容するための収容アイソレータ2と、内部で遠心分離処理や播種処理を行うように構成された5台の処理ユニットUと、収容ボックスBから培養した細胞を回収するための回収アイソレータ3とを備え、これらは図示しない制御手段によって制御されるようになっている。
上記複数の収容ボックスBは、それぞれ制御手段によって制御される図示しない移動手段によって個別に移動可能となっており、収容ボックスBを移動させて上記収容アイソレータ2、5台の処理ユニットU、上記回収アイソレータ3に順次接続させることで、一連の加工作業を自動的に行うことが可能となっている。
【0009】
上記収容ボックスBとしては、特開2016-13058号公報に記載されているアイソレータに接続可能なインキュベータや、特許5177086号公報に記載されているようなアイソレータに接続可能で培養に適した流体が供給されるパーソナルボックスを用いることができ、内部は無菌状態に維持されるとともに、細胞の培養に好適な環境が維持されて所定期間に亘って培養をするインキュベータとして機能するようになっている。
また、特開2004-154099号公報には、気体を通過させ微生物を通過させないフィルタを介して外部と通気される培養容器収納ボックスが開示されており、これを収容ボックスBとすることもできる。この場合は、収容ボックスBごと別途備えた大型のインキュベータに収納させて培養することができる。
上記収容ボックスBを移動させる移動手段としては、従来公知のAGV(Automatic Guided Vehicle)を用いることができ、上記制御手段からの無線指示に基づいて、人工知能(AI)による無軌道での自動運転によるものや、床に設置されたガイドレールや床に印刷した磁気ガイド等の軌道に従って移動するものなど様々なタイプを採用することができる。
なお上記移動手段は、収容ボックスBに一体的に設けることも可能であるが、収容ボックスBと別体に設けて、これらを移動させる際に当該移動手段に保持させるようにしてもよい。
【0010】
そして上記収容ボックスBは、上記収容アイソレータ2、回収アイソレータ3、ならびに処理ユニットUに対し、接続手段4を介して無菌状態を維持したまま接続可能となっている。
このような接続手段4として、例えば上記特開2016-13058号公報に記載されるような構成を用いることができる。簡単に説明すると、収容ボックスBと処理ユニットU(ならびに収容アイソレータ2、回収アイソレータ3)との間に、これらが備える開閉扉を囲繞するような筒状部材を設け、さらにこれらが接続された際に形成される上記筒状部材の内部空間に除染媒体を供給する除染手段を備えたものとなっている。
上記除染媒体によって外部に露出されていた部分が除染されるため、上記収容ボックスBおよび処理ユニットUの開閉扉を開放することで、無菌状態を維持したままこれらの内部空間を連通させることができる。
【0011】
上記収容アイソレータ2および回収アイソレータ3には、従来公知のアイソレータを用いることができ、内部が図示しない無菌エア供給手段によって無菌状態に維持されている。またこれらの内部は除染手段5によって除染することが可能となっている。
本実施例において、上記収容アイソレータ2で行う作業としては、まず上記パスボックス2bを介して培養すべき細胞を含んだ細胞懸濁液がバイアル等の容器に収容された状態で供給される。
次に、収容アイソレータ2では、この容器に収容された細胞懸濁液を上記処理ユニットUで処理可能な遠沈管等の容器へと移し替え、これを上記収容ボックスBに収容する。
また回収アイソレータ3で行う作業としては、まず上記収容ボックスBを介して上記処理ユニットUで処理された細胞を収容した培養容器が供給される。次に、この細胞をその後の治療や実験等に用いるために所定量ずつ容器に小分けする作業を行う。
そして、上記収容アイソレータ2および回収アイソレータ3には、上記収容ボックスBが接続可能となっており、また作業者が装着するグローブ2a、3aやパスボックス2b、3bが設けられている。
このうち上記収容アイソレータ2のパスボックス2bには、細胞の加工作業に必要な資材や細胞を収容した容器等を外部より搬入することが可能となっており、これら資材や容器の表面をアルコール等の殺菌剤で殺菌したり、上記収容アイソレータ2に設けた除染手段5を用いて除染することが可能となっている。
殺菌や除染が完了したら、当該パスボックス2bと上記収容アイソレータ2とを連通させることで、上記資材や容器を収容アイソレータ2に移載することができる。
【0012】
上記処理ユニットUとしては、例えば従来公知のアイソレータを用いることができ、内部は無菌状態に維持されるとともに、後述する除染手段5によって内部を除染することが可能となっている。
そして本実施例の処理ユニットUは、それぞれ上記細胞の加工作業の一部の処理を行うように構成され、細胞の加工作業を構成する一連の処理手順に従って整列して設けられている。
具体的には、図示左方の処理ユニットUから、1回目の遠心分離処理を行う第1遠心分離ユニットU1、1回目の播種処理を行う第1播種ユニットU2、2回目の遠心分離処理を行う第2遠心分離ユニットU3、2回目の播種処理を行う第2播種ユニットU4、培養された培養液中の細胞を回収する3回目の遠心分離処理を行う第3遠心分離ユニットU5の順に設けられている。
そして各処理ユニットUの内部には、制御手段によって制御されるロボットRや、上記処理を行うための装置が設けられており、上記ロボットRは収容ボックスBに収容された培養容器の搬出入や、上記装置で行う処理の一部を行うようになっている。なお上記ロボットRに代えて、上記作業を行うことが可能なその他の装置を設けてもよい。
また、各処理ユニットU1~U5は、図示するように処理の順番で一列に整列させる必要はなく、効率的に処理を実行できるよう配置すればよい。
【0013】
上記第1~第3遠心分離ユニットU1、U3、U5の内部には、上記遠心分離処理を行うための装置として、細胞懸濁液を遠沈管へと分注する分注装置や、当該遠沈管内の細胞懸濁液を遠心分離する遠心分離装置や、遠心分離が完了した遠沈管から上澄みを除去して、培養液や生理食塩液を追加する液体供給装置が設けられている。
また上記第1、第2播種ユニットU2、U4の内部には、上記播種処理を行うための装置として、遠沈管から細胞を取り出して、培養容器としてのウェルプレートに形成されたウェルに分注する播種装置が設けられている。
なお、上記各装置を用いた上記遠心分離処理や播種処理の詳細な手法および手順については従来公知であるため、これ以上の説明については省略する。
【0014】
また本実施例では、上記第1播種ユニットU2における播種処理と、上記第2遠心分離ユニットU3における2回目の遠心分離処理との間で、播種した細胞を所定期間培養するようになっており、第1播種ユニットU2および第2遠心分離ユニットU3の近傍には、複数の収容ボックスBを待機させることが可能な第1培養位置P1が設定されている。
これと同様、上記第2播種ユニットU4における播種処理と、上記第3遠心分離ユニットU5における3回目の遠心分離処理との間にも培養処理が必要であり、上記第2播種ユニットU4および第3遠心分離ユニットU5の近傍には第2培養位置P2が設定されている。
【0015】
さらに本実施例の細胞加工システム1は、上記遠心分離処理や播種処理に使用する遠沈管やウェルプレートおよびピペットといった資材や、培養液および試薬等を処理ユニットUに供給するための複数の資材ボックスBmと、上記資材ボックスBmに資材等を供給するための資材アイソレータ6とを備えている。
上記資材ボックスBmは上記収容ボックスB同様、制御手段によって制御される移動手段によって移動可能に設けられ、また処理ユニットUおよび資材アイソレータ6に対して上記接続手段4を介して接続することが可能となっている。
また上記資材アイソレータ6も上記収容アイソレータ2や回収アイソレータ3と同様、上記除染手段5によって内部が無菌状態に維持されるとともに、グローブ6aやパスボックス6bを備えており、パスボックス6bにおいて殺菌もしくは除染を行った資材等を資材アイソレータ6に搬入し、資材アイソレータ6の内部で包装を開封して必要な数量を資材ボックスBmに収容させる。
このような構成により、上記制御手段が上記移動手段によって資材ボックスBmを上記資材アイソレータ6と5台の処理ユニットUとの間で移動させることで、各処理ユニットUの処理に必要な資材等の供給や、不要となった使用済みの資材等の回収を自動的に行うことが可能となっている。
なお、処理ユニットUへの資材ボックスBmの接続および離脱は、収容ボックスBの動作と連動させてもよいが、必ずしも連動させることを要するものではなく、資材ボックスBmを独立して動作させて処理ユニットUに予め上記資材等を準備できるようにすればよい。
【0016】
さらに本実施例の細胞加工システム1は、上記処理ユニットUおよび各アイソレータ2、3、6を除染するための除染手段5と、使用済みの収容ボックスBを除染するための収容ボックス除染手段7と、使用済みの資材ボックスBmを除染するための資材ボックス除染手段8とを備えている。
上記除染手段5は、各処理ユニットUに設けられたユニット用除染装置5Aと、各アイソレータ2、3、6に設けられたアイソレータ用除染装置5Bからなり、過酸化水素水溶液等の除染溶液を供給する送液装置5aと、各除染装置5A、5Bに除染溶液を分配する配管5bとを備えている。
上記送液装置5aは配管5bを介して、各除染装置5A、5Bに対して個別に除染溶液を供給し、各除染装置5A、5Bにおいて除染媒体として過酸化水素蒸気を発生させることが可能となっている。
また分岐した配管5aのそれぞれには制御手段によって制御可能な開閉弁5cが設けられており、制御手段が所要の開閉弁5cを開放することで、対応する所要の除染装置5A、5Bに除染溶液を供給し、除染媒体を発生させることが可能となっている。
【0017】
収容ボックス除染手段7は、上記接続手段4を介して上記収容ボックスBを複数接続することが可能となっており、使用済みの収容ボックスBは上記移動手段によって移動して、当該収容ボックスBに接続されるようになっている。
そして収容ボックス除染手段7は、接続された収容ボックスBの内部に過酸化水素蒸気等の除染媒体を供給することで、複数の収容ボックスBの内部を同時に除染することが可能となっている。
これと同様、上記資材ボックス除染手段8も、上記接続手段4を介して上記資材ボックスBmを複数接続することが可能となっており、同様に過酸化水素蒸気等の除染媒体を供給することで、接続された複数の資材ボックスBmの内部を同時に除染することが可能となっている。
【0018】
以下、上記構成を有する細胞加工システム1を用いた上記細胞の加工作業の手順について説明する。図1は上記収容アイソレータ2、5台の処理ユニットU、上記回収アイソレータ3にそれぞれ上記収容ボックスBが接続され、その内部で上述したような作業もしくは処理が行われている状態を示している。
まず上記細胞加工システム1による加工作業の作業開始時には、上記収容アイソレータ2、5台の処理ユニットU、上記回収アイソレータ3に収容ボックスBが接続されておらず、これらの内部は予め除染されている。
また上記収容ボックス除染手段7により収容ボックスBの内部も予め除染され、さらに、資材アイソレータ6の内部は除染され、資材ボックス除染手段8により資材ボックスBmの内部も予め除染されている。
【0019】
細胞加工システム1を作動させて加工作業を開始すると、制御手段は最初の第1収容ボックスBを上記移動手段により上記収容アイソレータ2へと移動させ、さらに上記接続手段4を介して接続させる。
接続手段4の除染が終了すると、収容アイソレータ2および収容ボックスBの開閉扉が自動的に開放され、収容アイソレータ2と収容ボックスBとが無菌状態を維持した状態で連通する。
収容アイソレータ2では、グローブ2aを装着した作業者が上述した処理を行い、細胞懸濁液を収容した遠沈管が収容ボックスBに移載された後、収容アイソレータ2および収容ボックスBの開閉扉が自動的に閉鎖されることで、収容アイソレータ2での処理が終了する。
この収容アイソレータ2での処理に要する処理時間は、例えば90分以内に終了するように設定されており、本実施例ではこの90分を単位時間として設定するようになっている。
なお以下の説明において、アイソレータでの作業や各処理ユニットUにおける処理には、上記接続手段4によって収容ボックスBを接続し、その後上記処理が終了して収容ボックスBを離脱させるまでの動作を含むものとする。
【0020】
次に上記制御手段は、第1収容ボックスBを上記収容アイソレータ2から次の第1遠心分離ユニットU1に接続させ、それとは別に、新たな第2収容ボックスBを上記収容アイソレータ2に接続させる。
まず第1遠心分離ユニットU1では、上記第1収容ボックスBが接続され、上記接続手段4の除染が終了すると、第1収容ボックスBおよび第1遠心分離ユニットU1の開閉扉が自動的に開放され、ロボットRが第1収容ボックスBから遠沈管を取り出し、遠心分離装置等によって上述した遠心分離処理が自動的に開始される。
遠心分離の終了した細胞を収容した遠沈管が第1収容ボックスBに収容されると、第1収容ボックスBおよび第1遠心分離ユニットU1の開閉扉が閉鎖され第1収容ボックスBが離脱されて、第1遠心分離ユニットU1の処理が終了する。
そしてこの第1遠心分離ユニットU1での処理に要する処理時間も90分以内に終了するように設定され、すなわち上記単位時間以内に終了するようになっている。
一方上記収容アイソレータ2では、上記第1遠心分離ユニットU1に上記第1収容ボックスBが接続されるのと同時に、新たな第2収容ボックスBが接続され、収容アイソレータ2において上述した処理が行われるようになっている。
そして、上記第1遠心分離ユニットU1における処理と、収容アイソレータ2における処理とは、いずれも上記単位時間以内に終了することから、これらの収容ボックスBを同じタイミングで離脱させることが可能となっている。
【0021】
次に上記制御手段は、第1収容ボックスBを上記第1遠心分離ユニットU1から次の第1播種ユニットU2に接続させ、第2収容ボックスBを上記収容アイソレータ2から次の第1遠心分離ユニットU1に接続させ、それとは別に、新たな第3収容ボックスBを上記収容アイソレータ2に接続させる。
上述したように、第1遠心分離ユニットU1での処理と、上記収容アイソレータ2での処理は上記単位時間以内に終了していることから、上記第1、第2収容ボックスBを上記第1遠心分離ユニットU1および収容アイソレータ2から同時に離脱させることができる。
そのため、上記第1~第3収容ボックスBを、それぞれ第1播種ユニットU2、第1遠心分離ユニットU1、収容アイソレータ2に同時に接続することができ、それぞれに処理を開始することができる。
そしてこの第1播種ユニットU2での処理に要する処理時間も90分以内に終了するように設定され、すなわち上記単位時間以内に終了するようになっており、第1播種ユニットU2、第1遠心分離ユニットU1、収容アイソレータ2を同じタイミングで離脱することができる。
【0022】
次に上記制御手段は、第1収容ボックスBを上記第1播種ユニットU2から上記第1培養位置P1に移動させ、第2収容ボックスBを上記第1遠心分離ユニットU1から次の第1播種ユニットU2に接続させ、第3収容ボックスBを上記収容アイソレータ2から次の第1遠心分離ユニットU1に接続させ、それとは別に、新たな第4収容ボックスBを上記収容アイソレータ2に接続させる。
第1収容ボックスBは、上記第1培養位置P1において所定期間静置され、これによりウェルプレートに播種された細胞が培養されるようになっている。
この第1培養位置P1での細胞の培養期間は、細胞の種類や用途によって異なるが、上記単位時間である90分より長く設定されており、当該培養期間が終了するまで第1収容ボックスBを第1培養位置P1に待機させる必要がある。
このため、第1収容ボックスBが上記第1培養位置P1に移動した後、上記単位時間が経過すると、上記第1播種ユニットU2、第1遠心分離ユニットU1、収容アイソレータ2から各収容ボックスBが離脱することとなる。
そこで本実施例では、上記第1収容ボックスBを上記第1培養位置P1に位置させたまま、第2収容ボックスBを上記第1播種ユニットU2から上記第1培養位置P1に移動させる。
このように、上記第1収容ボックスBに収容された細胞の培養期間が終了するまで、上記単位時間が経過するごとに、第1播種ユニットU2に接続された収容ボックスBを順次上記第1培養位置P1に移動させ、当該第1培養位置P1において複数の収容ボックスBを待機させる。
一方、前の処理ユニットUである第1播種ユニットU2、第1遠心分離ユニットU1、並びに上記収容アイソレータ2には、順次新たな収容ボックスBが接続されて、上記処理や作業が行われるようになっている。
【0023】
上記第1培養位置P1における、細胞の培養期間は、上記単位時間の正の整数倍に設定されており、これにより第1収容ボックスBに収容された細胞の培養期間が終了すると、その他の処理ユニットUでの処理も終了するようになっている。
第1培養位置P1での培養期間が終了すると上記制御手段は、第1収容ボックスBを上記第1培養位置P1から第2遠心分離ユニットU3に接続させ、第1培養位置P1には第2、第3収容ボックスBなどの複数の収容ボックスBを待機させる。
一方、制御手段は、その前まで上記第1播種ユニットU2に接続されていた第m収容ボックスBを次の上記第1培養位置P1に接続させ、上記第1遠心分離ユニットU1に接続されていた第n収容ボックスBを次の第1播種ユニットU2に接続させ、上記収容アイソレータ2に接続されていた第o収容ボックスBを次の第1遠心分離ユニットU1に接続させ、それとは別に、新たな第p収容ボックスBを上記収容アイソレータ2に接続させる。
第2遠心分離ユニットU3では、上記第1遠心分離ユニットU1と同様の遠心分離処理が行われ、この第2遠心分離ユニットU3での処理に要する処理時間も上記単位時間以内に終了するようになっている。
【0024】
その後、詳細な説明は省略するが、上記第1収容ボックスBは上記第2播種ユニットU4に接続された後、上記第2培養位置P2において細胞の培養を行い、さらに第3遠心分離ユニットU5に接続されると、最後に上記回収アイソレータ3に接続される。
上記回収アイソレータ3において第1収容ボックスBの細胞が回収されると、制御手段は第1収容ボックスBを上記収容ボックス除染手段7に移動させて、第1収容ボックスBの内部を除染させる。
除染が終了した第1収容ボックスBは、その後再度上記収容アイソレータ2に接続され、引き続き行われる加工作業に使用されることとなる。
そして、上記第2播種ユニットU4および第3遠心分離ユニットU5における処理時間および、上記回収アイソレータ3における作業時間も、単位時間以内に終了するように設定されている。
このため、上記第1収容ボックスBやこれに後続する収容ボックスBを、上記単位時間が経過するごとに上記アイソレータ2、3や処理ユニットUから同時に離脱させることができ、次の処理を行う処理ユニットUやアイソレータ2、3において同時に接続させることができる。
【0025】
このように、本実施例よれば、2つのアイソレータ2、3および5台の処理ユニットUにおいて、同じ単位時間以内で処理を行うことから、処理が終了した収容アイソレータ2や処理ユニットUから同時に収容ボックスBを離脱させ、次の処理ユニットUや回収アイソレータ3に同時に接続することが可能となっている。
つまり、複数の処理からなる細胞の加工作業を、流れ作業的に行うとともにその処理時間を揃えることで、処理時間の違いから他の処理ユニットUでの処理が終了するまで収容ボックスBを待機させる必要がなくなり、大量の細胞であっても効率的に加工を続けることができるようになっている。
【0026】
次に、図2を用いて、本実施例の細胞加工システム1を構成する収容ボックスBを除染する手順について説明する。本実施例では、図1で説明した細胞の加工作業を行いながら、各アイソレータ2、3や各処理ユニットUの除染を行うことが可能となっている。
図2(a)は、上記第1遠心分離ユニットU1で除染を行っている状態を示し、このとき第1遠心分離ユニットU1には上記収容ボックスBを接続しないようになっている。
上記制御手段は、除染手段5を制御して、上記第1遠心分離ユニットU1への配管5bに設けられた開閉弁5cのみを開放し、当該第1遠心分離ユニットU1へと除染溶液を供給して、ユニット用除染装置5Aにより除染媒体を発生させるようになっている。
一方、制御手段はその他の各処理ユニットUや各アイソレータ2、3への配管5bに設けられた開閉弁5cを閉鎖しており、除染溶液がこれらの処理ユニットUやアイソレータ2、3に供給されないようになっている。
従って、除染溶液の供給されない処理ユニットUやアイソレータ2、3では、通常通りの処理が行われるようになっている。
そして、上記除染手段5による除染時間は上記単位時間以内に設定されており、このため第1遠心分離ユニットU1における除染が終了するのと同じタイミングで、その他のアイソレータ2、3や処理ユニットUから収容ボックスBを離脱するようになっている。
【0027】
そして図2(b)は、図2(a)の状態から単位時間が経過して、除染が終了した第1遠心分離ユニットU1に、それまで上記収容アイソレータ2に接続されていた収容ボックスBを接続させ、これに対し第1遠心分離ユニットU1の次に除染を行う第1播種ユニットU2には収容ボックスBを接続せず、当該第1播種ユニットU2において除染作業を行う状態を示している。
このとき制御手段は、上記除染手段5を制御して、当該第1播種ユニットU2に除染溶液を供給させて、当該第1播種ユニットU2の除染を行うようになっている。
その後制御手段は、上記除染手段5を制御して、上記第2遠心分離ユニットU3、第2播種ユニットU4、第3遠心分離ユニットU5の順に除染作業を行い、上述したように除染作業を行う処理ユニットUには収容ボックスBを接続しないようになっている。
なお、第1播種ユニットU2に続いて第2遠心分離ユニットU3の除染を行う際には、第1播種ユニットU2の除染が終了した直後に直ちに第2遠心分離ユニットU3の除染を行うことも可能であるが、実際の収容ボックスと同じ動作に基づいて、上記第1培養位置における上記培養期間が終了してから、第2遠心分離ユニットU3の除染を行うようにしてもよい。これは第2播種ユニットU4と第3遠心分離ユニットU5においても同じである。
【0028】
このように本実施例によれば、他の処理ユニットUにおいて細胞の加工作業を行いながら、所要の処理ユニットUでは除染作業を行うことが可能であり、除染作業を行うために細胞加工システム1全体を停止させることなく加工作業を続行できることから、効率的に細胞の加工作業を行うことが可能となっている。
【0029】
次に、図3はいずれかの処理ユニットUで行う処理について、処理時間を上記単位時間以内に設定できない場合の実施例を示している。
上記第1実施例では、遠心分離処理した細胞を播種処理によってウェルプレートのウェルに分注しているため、上記各培養位置P1、P2で培養された細胞の数は増大しており、上記第2、第3遠心分離ユニットU3、U5で処理する細胞の数は、第1遠心分離ユニットU1で処理する細胞の量よりも多くなる。
このため、第2、第3遠心分離ユニットU3、U5において、上記単位時間以内にすべての細胞を処理することができない場合が発生する。対応として上記単位時間を延ばすことも考えられるが、その場合他の処理ユニットUにおいて早期に処理が終了することとなり、時間が無駄となって非効率的となる。
【0030】
そこで本実施例では、上記単位時間以内に終了させることができない処理を行う処理ユニットUについて、当該処理ユニットUでは単位時間以内で処理を中断するよう設定するとともに、当該処理に要する単位時間数と同数の当該処理を行う処理ユニットUを設けるようにしたものである。
仮に、一台の第3遠心分離ユニットU5で処理を行った場合に、上記遠心分離処理に160分を要するとした場合、単位時間を90分とすると2単位時間が必要となり、第3遠心分離ユニットU5は2台必要となる。
図3(a)は、第3遠心分離ユニットU5をU5a、U5bとして2台設け、第1収容ボックスBが第1の第3遠心分離ユニットU5aに接続された状態を示している。
第1の第3遠心分離ユニットU5aに接続された第1収容ボックスB1からは、単位時間以内に処理可能な量に見合う細胞が収容されたウェルプレートだけが移載され、その後第1の第3遠心分離ユニットU5aでは当該処理可能な量の細胞に対して上記遠心分離処理を行う。この時、その他の細胞については第1収容ボックスB1内に収容したままとすることができる。
そして単位時間が経過すると、第3遠心分離ユニットU5では遠心分離処理の終了した細胞を収容した遠沈管が第1収容ボックスB1に戻されるようになっている。
【0031】
このようにして上記単位時間が経過すると、制御手段は上記第1収容ボックスB1を次の第2の第3遠心分離ユニットU5bに接続させ、一方上記第1の第3遠心分離ユニットU5aには、後続の第2収容ボックスB2を接続させる。
第2の第3遠心分離ユニットU5bでは、第1の第3遠心分離ユニットU5aで処理しなかった残りのウェルプレートの細胞に対して遠心分離処理が行われ、上記単位時間以内に上記残りの細胞に対する処理を完了させる。
このようにすることで、単位時間以内に終了させることができない処理についても、分割して処理を行うことで上記第1実施例と同様、全ての収容ボックスBを単位時間ごとに処理ユニットUから離脱させながら、効率的に加工作業を行うことが可能となっている。
【0032】
図4は、上記第3遠心分離ユニットU5を2台設けた場合における、他の動作を説明する図となっている。
この実施例では、上記図3で説明した動作に対し、第3遠心分離ユニットU5に収容ボックスBを接続したら、上記単位時間を超過させて、当該収容ボックスBに収容されたすべての細胞に対して遠心分離処理を行うものとなっている。
図4(a)は、第1の第3遠心分離ユニットU5aに第1収容ボックスB1を接続した状態を示しており、このとき第2の第3遠心分離ユニットU5bには収容ボックスBは接続されていない。
制御手段は、第1の第3遠心分離ユニットU5aにおいて遠心分離処理を開始するが、上述したように処理に160分要するため、上記単位時間以内に処理を終了させることができないことから、90分の単位時間を超えて遠心分離処理を続行するようになっている。
【0033】
そして図4(b)は、図4(a)の状態から単位時間が経過し、制御手段は、上記第1の第3遠心分離ユニットU5aに上記第1収容ボックスB1を接続させたまま、第2収容ボックスB2をもう一方の第2の第3遠心分離ユニットU5bに接続させた状態を示している。
第1の第3遠心分離ユニットU5aでは上記第1収容ボックスB1の細胞に対して遠心分離処理を続行しており、これに対し第2の第3遠心分離ユニットU5bでは上記第2収容ボックスB2の細胞に対して遠心分離処理が開始されることとなる。
そして、第1の第3遠心分離ユニットU5aにおいて遠心分離処理が終了して第1収容ボックスB1を離脱するタイミングは、上記第2の第3遠心分離ユニットU5b以外の処理ユニットUにおいて収容ボックスBを離脱するタイミングに一致している。
【0034】
図4(b)の状態からさらに上記単位時間が経過し、2単位時間が経過して第1の第3遠心分離ユニットU5aにおいて第1収容ボックスB1を離脱すると、制御手段は上記第1収容ボックスB1を上記回収アイソレータ3に接続させ、それまで第2培養位置P2に位置していた第3収容ボックスB3を上記第1の第3遠心分離ユニットU5aに接続させる。この時、第2の第3遠心分離ユニットU5bでは遠心分離処理が続行されている。
つまり、本実施例では第1の第3遠心分離ユニットU5aと第2の第3遠心分離ユニットU5bではそれぞれ収容ボックスBを2単位時間分接続を継続させ、これらに対する接続および離脱させるタイミングを1単位時間分ずらすことで、交互に収容ボックスBを接続させながら接続時間を延長して、処理時間の長い処理を終わらせるようになっている。
また当該処理の延長時間はその他の処理ユニットUにおける単位時間の正の整数倍に合わせてあることから、当該処理ユニットUから収容ボックスBを離脱させるタイミングを、他の処理ユニットUから収容ボックスBを離脱させるタイミングに合わせることができるため、上記各実施例と同様、単位時間ごとに収容ボックスBを移動させて効率的に細胞の培養を行うことが可能となっている。
【0035】
なお、上記図3図4にかかる実施例では、第3遠心分離ユニットU5を2台設けているが、処理時間によっては3台以上の第3遠心分離ユニットU5を設けることも可能である。
この場合であっても、図3に示す実施例で説明した通り、単位時間が経過するごとに収容ボックスBを次の同じ処理を行う処理ユニットUに移動させればよく、また図4に示す実施例で説明した通り、処理が完了するまで収容ボックスBを処理ユニットUに接続し、同じ処理を行う他の処理ユニットUに新たな収容ボックスBを接続するようにすればよい。
【符号の説明】
【0036】
1 細胞加工システム 2 収容アイソレータ
3 回収アイソレータ 4 接続手段
B 収容ボックス U 処理ユニット
U1、U3、U5 第1~第3遠心分離ユニット
U2、U4 第1、第2播種ユニット
図1
図2
図3
図4