(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】ECU装置、車両シート及び着座者の下肢の長さ推定システム
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20221026BHJP
A47C 7/62 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
B60N2/90
A47C7/62 Z
(21)【出願番号】P 2018201849
(22)【出願日】2018-10-26
【審査請求日】2021-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2018085929
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】溝井 健介
(72)【発明者】
【氏名】山内 直人
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-206227(JP,A)
【文献】特開2006-123640(JP,A)
【文献】特開2017-226273(JP,A)
【文献】特開2007-1500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-90
A47C 7/00-74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両シートに着座した着座者の下肢の長さを推定するためのECU装置において、
前記着座者のサイアングルに関する情報を取得するサイアングル情報取得手段と、
前記着座者の膝裏角度に関する情報を取得する膝裏角度情報取得手段と、
前記サイアングル情報取得手段が取得した前記サイアングルに関する情報と、前記膝裏角度情報取得手段が取得した前記膝裏角度に関する情報とに基づいて、前記着座者の下肢の長さを推定する推定手段と、
を備えたことを特徴とするECU装置。
【請求項2】
前記サイアングル情報取得手段は、前記サイアングルに関する情報として、前記車両シートのシートクッションに配置された座圧センサにより計測された座圧を取得することを特徴とする請求項1に記載のECU装置。
【請求項3】
前記シートクッションは、シートフレームとクッションパッドと表皮とを備え、
前記座圧センサは、前記シートクッションの前記クッションパッドに設けられた凹部を避けた位置に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のECU装置。
【請求項4】
前記膝裏角度情報取得手段は、前記膝裏角度に関する情報として、前端が前記車両シートの前後方向に移動可能な前記車両シートのシートクッションの当該前端に配置された圧力センサによる圧力の検知の有無と当該前端の移動距離を取得することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のECU装置。
【請求項5】
前記膝裏角度情報取得手段は、前記膝裏角度に関する情報として、前記車両シートのシートクッションの前端に配置された複数の赤外線センサにより計測された、前記着座者のふくらはぎまでの各距離を取得することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のECU装置。
【請求項6】
前記サイアングル情報取得手段は、前記サイアングルに関する情報として、第1赤外線センサから前記着座者の膝又は脛に向けて赤外線レーザを照射して計測された当該膝又は脛までの第1距離を取得し、
前記膝裏角度情報取得手段は、前記膝裏角度に関する情報として、第2赤外線センサから前記着座者の踵に向けて赤外線レーザを照射して計測された当該踵までの第2距離を取得することを特徴とする請求項1に記載のECU装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のECU装置がシートフレームに取り付けられていることを特徴とする車両シート。
【請求項8】
車両シートに着座した着座者の下肢の長さを推定する着座者の下肢の長さ推定システムにおいて、
前記着座者のサイアングルに関する情報を取得するサイアングル情報取得手段と、
前記着座者の膝裏角度に関する方法を取得する膝裏角度情報取得手段と、
前記サイアングル情報取得手段が取得した前記サイアングルに関する情報と、前記膝裏角度情報取得手段が取得した前記膝裏角度に関する情報とに基づいて、前記着座者の下肢の長さを推定する推定手段と、
を備えたことを特徴とする着座者の下肢の長さ推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ECU装置、車両シート及び着座者の下肢の長さ推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両シートのシートクッションの前後の位置やチルト、座面の長さ等(以下、車両シートの状態という。)が、当該車両シートに着座した着座者にとって最適な状態になるように、それらを自動的に調整することが可能な車両シートの開発が進められている。
そして、最適な状態の形成を実現するためには、少なくとも着座者の下肢の長さをできるだけ正確に検出したり推定したりすることが必要になる。
【0003】
例えば、特許文献1には、シートクッションの前後の位置等の調整する際、着座者の肩の位置が前後に移動しないようにシートクッションを前方又は後方に移動させるとともに、着座者の踵がのせられる床面を僅かに上昇させたり下降させたりする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載された技術では、成人男性の下肢の長さの平均が970mmであり、成人女性の下肢の長さの平均が900mmであることを前提とし、それに基づいて車両シートに着座した着座者の膝裏角度等を推定している。
しかしながら、着座者はそれぞれ体格や骨格が異なっているため、上記のようにして調整された車両シートの状態が、着座者にとって最適な状態になっているとは言い切れない。
【0006】
やはり、車両シートの状態を着座者にとって最適な状態に自動調整するためには、できるだけ正確に推定された着座者の下肢の長さの情報が必要であり、それに基づいて自動調整を行うことが必要である。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、車両シートに着座した着座者の下肢の長さを的確に推定することが可能なECU装置、車両シート及び着座者の下肢の長さ推定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
車両シートに着座した着座者の下肢の長さを推定するためのECU装置において、
前記着座者のサイアングルに関する情報を取得するサイアングル情報取得手段と、
前記着座者の膝裏角度に関する情報を取得する膝裏角度情報取得手段と、
前記サイアングル情報取得手段が取得した前記サイアングルに関する情報と、前記膝裏角度情報取得手段が取得した前記膝裏角度に関する情報とに基づいて、前記着座者の下肢の長さを推定する推定手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のECU装置において、前記サイアングル情報取得手段は、前記サイアングルに関する情報として、前記車両シートのシートクッションに配置された座圧センサにより計測された座圧を取得することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のECU装置において、
前記シートクッションは、シートフレームとクッションパッドと表皮とを備え、
前記座圧センサは、前記シートクッションの前記クッションパッドに設けられた凹部を避けた位置に配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のECU装置において、前記膝裏角度情報取得手段は、前記膝裏角度に関する情報として、前端が前記車両シートの前後方向に移動可能な前記車両シートのシートクッションの当該前端に配置された圧力センサによる圧力の検知の有無と当該前端の移動距離を取得することを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のECU装置において、前記膝裏角度情報取得手段は、前記膝裏角度に関する情報として、前記車両シートのシートクッションの前端に配置された複数の赤外線センサにより計測された、前記着座者のふくらはぎまでの各距離を取得することを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載のECU装置において、
前記サイアングル情報取得手段は、前記サイアングルに関する情報として、第1赤外線センサから前記着座者の膝又は脛に向けて赤外線レーザを照射して計測された当該膝又は脛までの第1距離を取得し、
前記膝裏角度情報取得手段は、前記膝裏角度に関する情報として、第2赤外線センサから前記着座者の踵に向けて赤外線レーザを照射して計測された当該踵までの第2距離を取得することを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、車両シートにおいて、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のECU装置がシートフレームに取り付けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、
車両シートに着座した着座者の下肢の長さを推定する着座者の下肢の長さ推定システムにおいて、
前記着座者のサイアングルに関する情報を取得するサイアングル情報取得手段と、
前記着座者の膝裏角度に関する方法を取得する膝裏角度情報取得手段と、
前記サイアングル情報取得手段が取得した前記サイアングルに関する情報と、前記膝裏角度情報取得手段が取得した前記膝裏角度に関する情報とに基づいて、前記着座者の下肢の長さを推定する推定手段と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1、7、8に記載の発明によれば、サイアングル情報取得手段で着座者のサイアングルに関する情報を取得し、膝裏角度情報取得手段で着座者の膝裏角度に関する情報を取得し、推定手段でそれらの情報に基づいて着座者の下肢の長さを推定するため、車両シートに着座した着座者の下肢の長さを的確に推定することが可能となる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、サイアングルに関する情報として、車両シートのシートクッションの上面側に配置された座圧センサにより計測された座圧を用いることで、着座者の下肢の長さの推定処理を簡易な構成で且つ的確に行うことが可能となる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、座圧センサをシートクッションの吊り込み部を避けた位置に配置することで、着座者の大腿部が座圧センサに的確に接触するようになり、座圧センサで座圧を的確に計測することが可能となる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、膝裏角度に関する情報として、車両シートのシートクッションの前端に配置された圧力センサによる圧力の検知の有無とシートクッションの前端の移動距離を用いることで、着座者の下肢の長さの推定処理を簡易な構成で且つ的確に行うことが可能となる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、膝裏角度に関する情報として、車両シートのシートクッションの前端に配置された複数の赤外線センサにより計測された、着座者のふくらはぎまでの各距離を用いることで、着座者の下肢の長さの推定処理を簡易な構成で且つ的確に行うことが可能となる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、サイアングルに関する情報として、第1赤外線センサで計測された着座者の膝又は脛までの第1距離を用い、膝裏角度に関する情報として、第2赤外線センサで計測された着座者の踵までの第2距離を用いることで、着座者の下肢の長さの推定処理を簡易な構成で且つ的確に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】シートフレームの構造等を表す斜視図である。
【
図4】第1の実施形態におけるシートクッションへの座圧センサの配置等を表す図である。
【
図5】シートクッションのクッションパッドに設けられた溝を避けた位置に配置された座圧センサを表す平面図である。
【
図6】第1の実施形態におけるシートクッションへの座圧センサの配置等を表す図である。
【
図7】(A)シートクッションの前端を前後方向に移動させるための構成例を表す図であり、(B)シートクッションの前端を前方に移動させた状態を表す図である。
【
図8】第1の実施形態における処理の流れを表すフローチャートである。
【
図9】第2の実施形態における構成を表す図である。
【
図10】第3の実施形態における構成を表す図である。
【
図11】第3の実施形態における処理の流れを表すフローチャートである。
【
図12】ECU装置の構成の変形例を表すブロック図である。
【
図13】実施形態とは異なるセンサーを用いた場合の例を表す図である。
【
図14】実施形態とは異なる手法で下肢の長さを算出するシステム構成を表すブロック図である。
【
図15】踵の位置に基づいて下肢の長さを算出する場合の構成を表す図である。
【
図16】踵の位置に基づいて下肢の長さを算出する場合の構成を表す図である。
【
図17】ドライビングポジションの調整に係る構成例を示す図である。
【
図18】ドライビングポジションの調整に係る構成例を示す図である。
【
図21】荷重センサーを備えたクッションフレームを示す分解斜視図である。
【
図22】シート姿勢調整システムの構成を示すブロック図である。
【
図23】情報端末を利用した情報入力方法の一例を説明する図である。
【
図24】ハンドルの位置調整について説明する図である。
【
図25】サイドミラー及びバックミラーの位置調整について説明する図である。
【
図26】サイド電子ミラーの位置及び表示調整について説明する図である。
【
図27】シートの形態を変更する場合について説明する図である。
【
図28】登坂時におけるシートの形態変更について説明する図である。
【
図29】イモビライザーが含まれたシートの形態変更の構成について説明する図である。
【
図30】温度調整に係る例について説明する図である。
【
図31】ECUユニットについて説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態および図示例に限定するものではない。
【0024】
図1に示す車両シート10は、自動車等の車両に設けられる車両用のシートである。なお、以下では、車両シート10が主に運転席のシートである場合について説明するが、車両シート10はこの場合に限定されず、助手席のシートであってもよく、また、2列シートの後部座席や、3列シートの2列目や3列目のシート等のシートであってもよい。
【0025】
図1に示すように、車両シート10は、着座者の臀部及び大腿部を支持するシートクッション11と、下端部がシートクッション11に支持されて背もたれとなるシートバック14と、シートバック14に設けられて着座者の頭部を支持するヘッドレスト17と、を備える。なお、この他、ネックレストやアームレスト、フットレスト、オットマン等の補助支持部を備えていてもよい。
【0026】
シートクッション11は、骨格となるシートフレーム18(後述する
図2参照)と、シートフレーム18上に設けられたクッションパッド12と、シートフレーム18及びクッションパッド12を被覆してシートの表面を構成する表皮13と、から主に構成されている。
また、シートバック14も同様に、骨格となるシートフレーム18(後述する
図2参照)と、シートフレーム18に設けられたクッションパッド15と、シートフレーム18及びクッションパッド15を被覆してシートの表面を構成する表皮16と、から主に構成されている。
【0027】
なお、車両シート10は、図示しないモータの駆動等により、車両シート10全体を前後方向に移動させたり、シートクッション11のハイト(高さ)やチルト(シートクッション11の座面の角度)等を調整したり、シートバック14のリクライニングや中折れ動作等、ヘッドレスト17の昇降動作等を行うことができるようになっている。
また、この他、車両シート10は、着座者の背に当たるシートバック14の形状を変化させるランバーサポート機能を有しており、また、シートクッション11やシートバック14の土手の部分が上下方向や前後方向に動くようになっている。
【0028】
シートクッション11のクッションパッド12の下側等には、
図2に示すように、シートフレーム(クッションフレーム等ともいう。)18が設けられている。
シートフレーム18は、シートクッション11を構成するシートクッションフレーム19と、シートバック14を構成するシートバックフレーム20、を有している。
【0029】
シートクッションフレーム19は、前後に長く延びるとともに左右に離間して配置された一対のサイドフレーム21と、この一対のサイドフレーム21の前端部同士を接続する板金から構成されたパンフレーム22と、一対のサイドフレーム21の後端部同士を接続する金属パイプから構成された連結パイプ23とを備えて平面視で枠状に構成されている。
そして、パンフレーム22と連結パイプ23との間には、シートスプリング24が架設されている。
【0030】
シートスプリング24は、前後に長く延びるとともに左右に並んだ4つのバネ部材24A~24Dで構成されている。
各バネ部材24A~24Dは、金属線が左右にジグザグに屈曲されてなり、後端が連結パイプ23に引っ掛けられており、前端はパンフレーム22に連結されている。
【0031】
シートバックフレーム20は、上下に長く延びるとともに左右に離間して配置された一対のサイドフレーム20aと、一対のサイドフレーム20aの上端部間に架け渡されて設けられた上部フレーム20bと、一対のサイドフレーム20aの下端部間に架け渡されて設けられた板状のロアメンバー20cと、を備えている。
また、上部フレーム20bと、ロアメンバー20cとの間には、一対のサイドフレーム20a間に架け渡されるようにして複数のバネ部材からなるシートスプリング20dが設けられている。シートスプリング20dを構成する複数のバネ部材は、左右に向けて延びるとともに上下にジグザグに屈曲している。
【0032】
また、シートフレーム18には、本発明に係るECU(Electronic Control Unit)装置1が、車両シート10を構成する各部材の動作の邪魔にならない位置に、例えばボルト1aで螺着する等して取り付けられている。
なお、
図2では、ECU装置1をシートフレーム18の外側に取り付けた場合を示したが、ECU装置1をシートフレーム18の内側に取り付けることも可能である。また、ECU装置1をシートクッションフレーム19に取り付ける代わりにシートバックフレーム20に取り付けるように構成することも可能である。
【0033】
[第1の実施の形態]
ECU装置1は、車両シート10に着座した着座者Aの下肢の長さz(ヒップポイント(股関節)から踵までの長さ)を推定するための装置である。そして、本実施形態では、ECU装置1は、
図3に示すように、サイアングル情報取得手段2と、膝裏角度情報取得手段3と、推定手段4とを備えている。また、ECU装置1のメモリ5には、各種のパラメータ等が記憶されている。
なお、以下のECU装置1に関する説明は、サイアングル情報取得手段2や膝裏角度情報取得手段3、推定手段4を備え、車両シート10に着座した着座者の下肢の長さを推定する、本発明に係る着座者の下肢の長さ推定システムの説明にもなっている。
【0034】
ECU装置1のサイアングル情報取得手段2は、着座者Aのサイアングル(着座者Aの大腿部Bの水平面に対する角度)θに関する情報を取得するようになっている。
本実施形態では、サイアングル情報取得手段2は、サイアングルθに関する情報として、車両シート10のシートクッション11に配置された座圧センサにより計測された座圧を取得するようになっている。
【0035】
具体的に説明すると、本実施形態では、
図4に示すように、シートクッション11の上面側、すなわちシートクッション11のクッションパッド12と表皮13との間に、複数の座圧センサs1~s4が前後方向に並べられるように配置されている。
なお、座圧センサは、
図4に示したようにシートクッション11のクッションパッド12と表皮13との間に配置してもよいが、例えば、シートクッション11のクッションパッド12の下側(例えばシートスプリング24やパンフレーム22(
図2参照)等の上側、すなわちそれらとクッションパッド12との間)等に配置するように構成することも可能である(例えば特開2016-144985号公報等参照)。また、例えば、座圧センサをシートクッション11のクッションパッド12に埋め込むように配置することも可能である。
【0036】
そして、各座圧センサs1~s4はECU装置1とそれぞれ電気的に接続されており、座圧x1~x4を計測すると、計測した座圧x1~x4をECU装置1のサイアングル情報取得手段2にそれぞれ送信し、サイアングル情報取得手段2がそれらを受信して取得するようになっている。
【0037】
なお、実際には、各座圧センサs1~s4は薄いため、着座者Aに座圧センサs1~s4が感じ取られることはない。
また、シートクッション11のクッションパッド12には、表皮13の吊り込み部13A(
図5参照)に対応する位置等に溝等の凹部12Aが設けられている場合があるが、そのような場合、座圧センサs1~s4をクッションパッド12の凹部12Aの部分に設けると、座圧センサs1~s4が着座者Aの大腿部Bに接触しづらくなり座圧xを正確に計測できなくなる可能性がある。そのため、
図5に示すように、座圧センサs1~s4を、シートクッション11のクッションパッド12の凹部12Aを避けた位置に配置することが望ましい。
【0038】
また、本実施形態では、
図4に示すように、車両シート10に、着座者Aの体重を検出する体重検出センサswが配置されている。
そして、サイアングル情報取得手段2は、着座者Aのサイアングルθに関する情報を補正する補正値として、体重検出センサswが検出した着座者Aの体重WTも取得するようになっている。着座者Aの体重WTが大きくなると、着座者Aのシートクッション11への沈み込みが大きくなり、補正が必要になるためである。
【0039】
ECU装置1の膝裏角度情報取得手段3(
図3参照)は、着座者Aの膝裏角度(着座者Aの大腿部とふくらはぎとの為す角度)φに関する情報を取得するようになっている。
本実施形態では、膝裏角度情報取得手段3は、膝裏角度φに関する情報として、前端が車両シート10の前後方向に移動可能なシートクッション11の当該前端に配置された圧力センサs11~s13による圧力の検知の有無と当該前端の移動距離yを取得するようになっている。
【0040】
具体的に説明すると、本実施形態では、
図6に示すように、シートクッション11の前端(クッションパッド12と表皮13との間)に、複数の圧力センサs11~s13が上下方向に並べられるように配置されている。
そして、各圧力センサs11~s13はECU装置1とそれぞれ電気的に接続されており、圧力を検知するとオン信号を出力するようになっている。
【0041】
また、本実施形態では、シートクッション11の前端が車両シート10の前後方向に移動できるようになっている。そして、前方に移動したシートクッション11の前端が着座者AのふくらはぎCに当接するまでに移動した移動距離yの情報が、ECU装置1の膝裏角度情報取得手段3に送信される。
このようにして、膝裏角度情報取得手段3は、膝裏角度φに関する情報として、圧力センサs11~s13からのオン信号(すなわち圧力センサs11~s13による圧力の検知の有無)及び移動距離yをそれぞれ受信して取得するようになっている。
【0042】
ここで、シートクッション11の前端を車両シート10の前後方向に移動させるための構成を例示して説明する。この構成は、特開2017-30611号公報に記載されており、詳しくはそちらを参照されたい。
この構成では、
図7(A)、(B)に示すように、前述したシートクッションフレーム19(
図2参照)の前端よりも前側にローラ部30を配置し、ローラ部30を前後方向に移動させることでシートクッション11の前端を前後方向に移動させる。
【0043】
具体的には、ローラ部30の外周部31には、シートクッション11のクッションパッド12や表皮13が巻き付けられており、表皮13等は端末部分13aが回転軸32に設けられた固定部33で固定されている。ローラ部30の回転軸32は左右方向に延びており、支持部34によって回転可能な状態で支持されている。支持部34は、図示しない駆動モータが作動するとシートクッションフレーム19に沿って前後方向に移動できるように配置されている。
また、シートクッションフレーム19の前端部分とローラ部30の回転軸32とは、第1リンク35、第2リンク36、第3リンク37及び第4リンク38からなるリンク構造39で接続されている。
【0044】
このような構成の下で、駆動モータが作動すると支持部34が前方に向かって移動し、それに連動してリンク機構39がローラ部30の回転軸32を回動させる。そのため、ローラ部30に巻き付けられた状態になっていたシートクッション11のクッションパッド12や表皮13の一部が伸びた(すなわち真っ直ぐになった)状態になり、シートクッション11の前端が前方に移動する。
また、駆動モータを逆回りに作動させると、今度は支持部34が後方に向かって移動し、それに連動してリンク機構39がローラ部30の回転軸32を逆回りに回動させる。そのため、上記のようにして一部伸びていたシートクッション11のクッションパッド12や表皮13が再度ローラ部30に巻き付けられる状態になり、シートクッション11の前端が後方に移動する。
【0045】
このようにして、シートクッション11の前端を前後方向に移動させることが可能となる。そして、ローラ部30や支持部34が移動させた際に、駆動モータのモータ駆動部(図示省略)によりその移動距離yが計測され、ECU装置1の膝裏角度情報取得手段3に送信されるように構成される。
なお、シートクッション11の前端を車両シート10の前後方向に移動させるための構成はこの構成に限定されず、図示を省略するが、例えば、シートクッション11のクッションパッド12の一部を前後方向に平行移動させるように構成することも可能である。
【0046】
ECU装置1の推定手段4(
図3参照)は、上記のようにしてサイアングル情報取得手段2が取得したサイアングルθに関する情報(すなわち座圧センサs1~s4が計測した座圧x1~x4と体重検出センサswが検出した着座者Aの体重WT)と、膝裏角度情報取得手段3が取得した膝裏角度φに関する情報(すなわち圧力センサs11~s13による圧力の検知の有無とモータ駆動部が計測した移動距離y)とに基づいて、着座者Aの下肢の長さzを推定するようになっている。
以下、
図8に示す実際の処理の流れに沿って、推定手段4による着座者Aの下肢の長さzの推定処理について具体的に説明する。
【0047】
ECU装置1は、まず、車両シート10に着座者Aが着座していない状態で、車両シート10の各部分を初期状態にする等の初期動作を行う。
すなわち、車両シート10に備えられた各モータを駆動させる等して、車両シート10全体の前後方向の位置を初期位置に移動させ、シートクッション11のハイトやチルト、シートバック14のリクライニング等を初期状態とする。また、シートクッション11の前端の位置を初期位置に移動させる等の処理を行う。
【0048】
そして、その状態の車両シート10に着座者Aが着座すると、ECU装置1は、例えば車両シート10のシートバック14の下部に配置されたセンサ(図示省略)に着座者Aの腰が触れているかどうか(すなわち車両シート10に深く腰掛けているかどうか)等をチェックして、着座者Aが車両シート10に正しい姿勢で着座しているかをチェックする(ステップS1)。
そして、着座者Aが車両シート10に正しい姿勢で着座していない場合には、図示しない表示手段に表示させたり音声を発生させたりして着座者Aに正しい姿勢で着座するよう促す。
【0049】
また、ECU装置1は、着座者Aが正しい姿勢で着座していると判断すると、続いて、シートクッション11の上面側に配置した各座圧センサs1~s4を起動させる。
各座圧センサs1~s4は座圧x1~x4をそれぞれ計測して、ECU装置1のサイアングル情報取得手段2に送信する。
このようにして、サイアングル情報取得手段2は、サイアングルθに関する情報として座圧センサs1~s4から座圧x1~x4を取得する(ステップS2)。
【0050】
その際、
図4に示したように、着座者Aが車両シート10に着座した状態でサイアングルθが小さいと、
図4に破線で示すように、着座者Aの大腿部Bのうち、臀部に近い側だけでなく膝に近い側もシートクッション11と接触する状態になる。
そのため、この場合は、座圧センサs1~s4ではいずれも座圧x1~x4として0とは異なる有意の値が計測される。
【0051】
そして、着座者Aの下肢の長さzが長くなるとサイアングルθが大きくなっていく。そして、サイアングルθが大きくなるに従って、座圧センサs4で計測される座圧x4が小さくなっていき、着座者Aの大腿部Bが座圧センサs4と接触しない状態になると、座圧センサs4で座圧x4が計測されなくなる。
サイアングルθがさらに大きくなると、座圧センサs3で計測される座圧x3が小さくなっていき、着座者Aの大腿部Bが座圧センサs3と接触しないようになると、座圧センサs3で座圧x3が計測されなくなる。
また、サイアングルθが大きくなるほど、座圧センサs1にかかる座圧が大きくなるため、座圧センサs1で計測される座圧x1は大きくなっていく。
【0052】
このように、サイアングルθの大きさと各座圧センサs1~s4で計測される座圧x1~x4との間に強い相関があることが本発明者らの研究で分かっている。
そして、車両シート10に着座した着座者Aの下肢の長さzとサイアングルθとの間にも強い相関がある。そのため、座圧センサs1~s4で計測される座圧x1~x4を用いて着座者Aの下肢の長さzを算出して推定することができる。
【0053】
また、体重検出センサswは、検出した着座者Aの体重WTをサイアングル情報取得手段2に送信する。
このようにして、ECU装置1のサイアングル情報取得手段2は、着座者Aのサイアングルθに関する情報の補正値として着座者Aの体重WTを取得する(ステップS3)。
【0054】
一方、ECU装置1は、座圧センサs1~s4等の起動と同時に、圧力センサs11~s13とモータ駆動部を起動させる。そして、駆動モータを駆動させてシートクッション11の前端を前方に移動させる。モータ駆動部は、前方に移動したシートクッション11の前端が着座者AのふくらはぎCに当接した時点で駆動モータの駆動を停止させてシートクッション11の移動を停止させる。そして、シートクッション11の前端の移動距離yをECU装置1の膝裏角度情報取得手段3に送信する。
このようにして、膝裏角度情報取得手段3は、シートクッション11の前端の移動距離yを取得する(ステップS4)。
【0055】
また、シートクッション11の前端が着座者AのふくらはぎCに当接した際、全ての圧力センサs11~s13が圧力を検知するわけではなく、一部の圧力センサのみが圧力を検知する。
そして、モータ駆動部は、圧力センサs11~s13のうちのいずれかの圧力センサがオン信号を出力した時点で、駆動モータの駆動を停止させてシートクッション11の前端の前方への移動を停止させる。
【0056】
この場合、着座者Aの膝裏角度φが小さい場合(すなわち膝が立っている場合。
図6の実線参照)は、最も低い位置に配置されている圧力センサs13が着座者AのふくらはぎCに接触するため、圧力センサs13からオン信号が出力される。また、着座者Aの膝裏角度φが大きい場合(すなわち膝が寝ている場合。
図6の破線参照)には、最も高い位置に配置されている圧力センサs11からオン信号が出力される。また、着座者Aの膝裏角度φがそれらの中間の角度である場合には、中間の位置に配置されている圧力センサs12からオン信号が出力される。
一方、着座者Aの膝裏角度φが大きい場合(すなわち膝が寝ている場合)には、シートクッション11の前端を前方に最大限移動させても、シートクッション11の前端が着座者AのふくらはぎCに接触せず、いずれの圧力センサs11~s13も圧力を検知しない場合もある。
【0057】
本発明者らの研究では、いずれの圧力センサs11~s13も圧力を検知しない場合を含め、着座者Aの膝裏角度φの大きさといずれの圧力センサs11~s13が圧力を検知したか(すなわち圧力センサs11~s13による圧力の検知の有無)との間に強い相関があることが分かっている。
そして、車両シート10に着座した着座者Aの下肢の長さzと膝裏角度φとの間にも強い相関がある。そのため、いずれの圧力センサs11~s13が圧力を検知したか(あるいはいずれの圧力センサs11~s13も圧力を検知しなかったか)に基づいて着座者Aの下肢の長さzを算出して推定することができる。
【0058】
本実施形態では、ECU装置1の膝裏角度情報取得手段3は、いずれかの圧力センサs11~s13からオン信号が出力された場合には、その圧力センサの情報を取得し、モータ駆動部から移動距離yを取得した時点でいずれの圧力センサs11~s13からもオン信号を受信しない場合は、いずれの圧力センサs11~s13も圧力を検知しなかったという情報を取得する。
このようにして、膝裏角度情報取得手段3は、圧力センサs11~s13による圧力の検知の有無に関する情報を取得する(ステップS5)。
【0059】
なお、本実施形態では、圧力センサs11~s13として、上記のように圧力を検知するとオン信号を出力するセンサを用いる場合について説明するが、例えば、圧力センサs11~s13で圧力を計測し、圧力センサs11~s13が計測した圧力に基づいてECU装置1が処理を行うように構成することも可能である。
【0060】
ECU装置1の推定手段4(
図3参照)では、以上のようにして、サイアングル情報取得手段2が取得した座圧センサs1~s4の座圧x1~x4及び着座者Aの体重WTと、膝裏角度情報取得手段3が取得したシートクッション11の前端の移動距離yに基づいて、車両シート10に着座した着座者Aの下肢の長さzを推定する(ステップS6)。
そして、その際、いずれの圧力センサs11~s13が圧力を検知したか、あるいはいずれの圧力センサs11~s13も圧力を検知しなかったかで場合分けして推定するように構成されている。
【0061】
すなわち、推定手段4は、(a)圧力センサs11が圧力を検知した場合、(b)圧力センサs12が圧力を検知した場合、(c)圧力センサs13が圧力を検知した場合、(d)いずれの圧力センサs11~s13も圧力を検知しなかった場合の4つに場合分けし、各場合について下記(1)式に従って着座者Aの下肢の長さzを算出して推定するようになっている。
z=(p1×x1+p2×x2+p3×x3+p4×x4+p5×WT)×p6
+p7×y+p8 …(1)
【0062】
ここで、p1~p8はパラメータであり、(a)~(d)の場合についてそれぞれ設定されている。すなわち、例えば(a)~(d)の場合のパラメータp1をそれぞれp1a、p1b、p1c、p1dとすると、パラメータp1a、p1b、p1c、p1dはそれぞれ異なる値が設定されている(なお偶々同じ値になる場合もあり得る。)。他のパラメータについても同様である。
そして、予め種々の体格や骨格を有する多数の着座者について実際に上記の処理を行い、得られたデータ(座圧x1~x4、体重WT、移動距離y、下肢の長さz)を上記の(a)~(d)の場合に場合分けして分類し、各場合において座圧x1~x4と体重WTと移動距離yから下肢の長さzが適切に算出されるように各パラメータp1~p8の値が設定される。
そして、このようにして設定された各パラメータp1~p8はECU装置1のメモリ5に記憶されており、以上の着座者Aの下肢の長さzの推定処理に用いられるようになっている。
【0063】
以上のように、本実施形態に係るECU装置1、車両シート10及び着座者の下肢の長さ推定システムによれば、サイアングル情報取得手段2で着座者Aのサイアングルθに関する情報(本実施形態では座圧x1~x4や体重WT)を取得し、膝裏角度情報取得手段3で着座者Aの膝裏角度φに関する情報(本実施形態では圧力センサs11~s13からのオン信号の有無やシートクッション11の前端の移動距離y)を取得し、推定手段4でそれらの情報に基づいて着座者Aの下肢の長さzを推定する。
そのため、車両シート10に着座した着座者Aの下肢の長さzを的確に推定することが可能となる。
【0064】
そして、的確に推定した着座者Aの下肢の長さzに基づいて、車両シート10全体の前後方向の位置やシートクッション11の位置やハイト、チルト、座面の長さ等(すなわち車両シートの状態)を適切に自動調整して、着座者Aにとって着座した車両シート10が最適な状態になるように自動調整することが可能となる。
【0065】
なお、上記の実施形態では、座圧センサs1~s4が4列設けられており(
図4や
図5参照)、圧力センサs11~s13が3列設けられている場合(
図6や
図7(A)、(B)参照)について説明したが、座圧センサの列数や圧力センサの列数を増やしたり減らしたりすることも可能である。
また、例えば座圧センサを複数のセンサ(上記の実施形態では座圧センサs1~s4)に分割して設ける場合について説明したが、例えば、面状の座圧センサで座圧を面的に計測するように構成することも可能である。
【0066】
[第2の実施の形態]
上記の第1の実施形態では、実際にシートクッション11の前端を前方に移動させ、その移動距離yを、ECU装置1の膝裏角度情報取得手段3が膝裏角度φに関する情報として取得する場合について説明した。
一方、このように構成する代わりに、
図9に示すように、シートクッション11の前端に赤外線センサを配置し、赤外線センサから赤外線レーザを照射して計測された着座者AのふくらはぎCまでの距離Yを、膝裏角度情報取得手段3が膝裏角度φに関する情報として取得するように構成することも可能である。
【0067】
この場合、シートクッション11の前端から着座者AのふくらはぎCまでの距離を1箇所だけで計測するのでは、着座者Aの膝裏角度φに関する情報が得られないため(すなわち膝裏角度φが不定になってしまうため)、
図9に示すように、シートクッション11の前端の上下方向の異なる位置に複数の赤外線センサs21、s22を配置し、複数の赤外線センサs21、s22により計測された、着座者AのふくらはぎCまでの各距離y21、y22を取得するように構成される。
なお、シートクッション11の前端に配置する赤外線センサの数は3つ以上であってもよい。
【0068】
そして、この場合、ECU装置1の推定手段4は、取得した各距離y21、y22に基づいて、第1の実施形態と同様に場合分けを行って着座者Aの下肢の長さzを推定するように構成することが可能である。
また、推定手段4は、場合分けを行わず、例えば下記(2)式で表される1つの式に従って着座者Aの下肢の長さzを算出して推定するように構成することも可能である。
z=(p1×x1+p2×x2+p3×x3+p4×x4+p5×WT)×p6
+p7×y21+p8×y22+p9 …(2)
【0069】
この場合も、予め種々の体格や骨格を有する多数の着座者について実際に上記の処理を行い、得られたデータ(座圧x1~x4、体重WT、距離y21、y22、下肢の長さz)を上記(2)式に代入して座圧x1~x4と体重WTと距離y21、y22から下肢の長さzが適切に算出されるように各パラメータp1~p9の値が設定される。
そして、このようにして設定された各パラメータp1~p9はECU装置1のメモリ5に記憶されており、以上の着座者Aの下肢の長さzの推定処理に用いられるようになっている。
【0070】
以上のように、本実施形態に係るECU装置1、車両シート10及び着座者の下肢の長さ推定システムによっても、サイアングル情報取得手段2で着座者Aのサイアングルθに関する情報(本実施形態では座圧x1~x4や体重WT)を取得し、膝裏角度情報取得手段3で着座者Aの膝裏角度φに関する情報(距離y21、y22)を取得し、推定手段4でそれらの情報に基づいて着座者Aの下肢の長さzを推定する。
そのため、車両シート10に着座した着座者Aの下肢の長さzを的確に推定することが可能となる。
【0071】
そして、的確に推定した着座者Aの下肢の長さzに基づいて、車両シート10全体の前後方向の位置やシートクッション11の位置やハイト、チルト、座面の長さ等(すなわち車両シートの状態)を適切に自動調整して、着座者Aにとって着座した車両シート10が最適な状態になるように自動調整することが可能となる。
【0072】
[第3の実施の形態]
また、上記の各実施形態では、座圧センサs1~s4が計測した座圧x1~x4を着座者Aのサイアングルθに関する情報として取得し、また、シートクッション11の前端の移動距離yや赤外線センサs21、s22が計測した距離y21、y22を膝裏角度φに関する情報として取得して、着座者Aの下肢の長さzを推定する場合について説明した。
一方、このように構成する代わりに、
図10に示すように、第1赤外線センサs31から車両シート10に着座した着座者Aの膝や脛Dに向けて赤外線レーザを照射して取得した膝や脛Dまでの第1距離Y1と、第2赤外線センサs32から着座者Aの踵Eに向けて赤外線レーザを照射して取得した踵Eまでの第2距離Y2とに基づいて着座者Aの下肢の長さzを推定するように構成することも可能である。
【0073】
すなわち、この場合、ECU装置1のサイアングル情報取得手段2は、サイアングルθに関する情報として、第1赤外線センサs31から着座者Aの膝や脛Dに向けて赤外線レーザを照射して計測された膝や脛Dまでの第1距離Y1を取得する。
また、ECU装置1の膝裏角度情報取得手段3は、膝裏角度φに関する情報として、第2赤外線センサs32から着座者Aの踵Eに向けて赤外線レーザを照射して計測された踵Eまでの第2距離Y2を取得するように構成される。
【0074】
その際、第1赤外線センサs31は、例えば車両のステアリングホイールやインパネ(図示省略)の下側等の車両内の任意の位置に配置される。また、第2赤外線センサs32は、例えば車両シート10の下側等の車両内の任意の位置に配置される。
そして、前述した第2の実施形態における赤外線センサs21、s22の場合も同様であるが、着座者Aが着座する際、足を開いている場合もあり足を閉じている場合もあるため、第1赤外線センサs31や第2赤外線センサs32をそれぞれ1つずつ配置すると、照射された赤外線レーザが着座者Aの膝や脛D、踵Eに当たらず、着座者Aの膝や脛Dまでの第1距離Y1や踵Eまでの第2距離Y2を計測できない場合があり得る。
【0075】
そこで、複数の第1赤外線センサs31を例えば左右方向に並べて配置し(例えば3つの第1赤外線センサs31a~s31c(
図10参照))、複数の第1赤外線センサs31から赤外線レーザを互いに平行に且つ所定の間隔をあけて照射するように構成することが望ましい。
また、第2赤外線センサs32についても同様に、複数の第2赤外線センサs32を例えば左右方向に並べて配置し(例えば5つの第2赤外線センサs32a~s32e(
図10参照))、複数の第2赤外線センサs32から赤外線レーザを互いに平行に且つ所定の間隔をあけて照射するように構成することが望ましい。
【0076】
このように構成すれば、着座者Aが足を開いて着座していても、また、足を閉じて着座していても、少なくともいずれか1つの第1赤外線センサs31から照射された赤外線レーザが着座者Aの膝や脛Dに当たるため、着座者Aの膝や脛Dまでの第1距離Y1を確実に計測することが可能となる。
また、少なくともいずれか1つの第2赤外線センサs32から照射された赤外線レーザが着座者Aの踵Eに当たるため、着座者Aの踵Eまでの第2距離Y2を確実に計測することが可能となる。
【0077】
一方、本実施形態では、ECU装置1の推定手段4は、
図11に示す処理の流れに沿って着座者Aの下肢の長さzの推定処理を行うように構成される。
本実施形態においても、ECU装置1は、まず、車両シート10に着座者Aが着座していない状態で、車両シート10全体の前後方向の位置を初期位置に移動させたり、シートクッション11のハイトやチルト、シートバック14のリクライニング等を初期状態とする等の初期動作を行う。
【0078】
そして、その状態の車両シート10に着座者Aが着座すると、ECU装置1は、例えば車両シート10のシートバック14の下部に配置されたセンサ(図示省略)に着座者Aの腰が触れているかどうか(すなわち車両シート10に深く腰掛けているかどうか)等をチェックして、着座者Aが車両シート10に正しい姿勢で着座しているかをチェックする(ステップS11)。
そして、着座者Aが車両シート10に正しい姿勢で着座していない場合には、図示しない表示手段に表示させたり音声を発生させたりして着座者Aに正しい姿勢で着座するよう促す。
【0079】
また、ECU装置1は、着座者Aが正しい姿勢で着座していると判断すると、続いて、第1赤外線センサs31a~s31cや第2赤外線センサs32a~s32eを起動させる。
第1赤外線センサs31a~s31cは起動すると、着座者Aの膝や脛Dに向けてそれぞれ赤外線レーザを照射し、計測した第1距離Y1(以下、各第1赤外線センサs31a~s31cが計測した第1距離Y1をそれぞれY1a~Y1cという。)をECU装置1のサイアングル情報取得手段2にそれぞれ送信する。
このようにして、サイアングル情報取得手段2は、サイアングルθに関する情報として第1距離Y1(Y1a~Y1c)を取得する(ステップS12)。
【0080】
また、体重検出センサswは、検出した着座者Aの体重WTをサイアングル情報取得手段2に送信する。
このようにして、ECU装置1のサイアングル情報取得手段2は、着座者Aのサイアングルθに関する情報の補正値として着座者Aの体重WTを取得する(ステップS13)。
【0081】
また、第2赤外線センサs32a~s32eは起動すると、着座者Aの踵Eに向けてそれぞれ赤外線レーザを照射し、計測した第2距離Y2(以下、各第2赤外線センサs32a~s32eが計測した第2距離Y2をそれぞれY2a~Y2eという。)をECU装置1の膝裏角度情報取得手段3にそれぞれ送信する。
このようにして、膝裏角度情報取得手段3は、膝裏角度φに関する情報として第2距離Y2(Y2a~Y2e)を取得する(ステップS14)。
【0082】
なお、第1赤外線センサs31や第2赤外線センサs32から照射した赤外線レーザが着座者Aに照射されなかった場合(すなわち赤外線レーザの照射範囲内に着座者Aの膝や脛D、踵Eがなかった場合)は、第1距離Y1や第2距離Y2は無限大(実際には第1距離Y1や第2距離Y2の取り得る値の最大値)とされる。
【0083】
ECU装置1の推定手段4では、上記のようにして、サイアングル情報取得手段2が取得した第1距離Y1及び着座者Aの体重WTと、膝裏角度情報取得手段3が取得した第2距離Y2に基づいて、車両シート10に着座した着座者Aの下肢の長さzを推定する(ステップS15)。
【0084】
具体的には、推定手段4は、各第1赤外線センサs31a~s31cが計測した第1距離Y1a~Y1cの中から最小値を抽出して第1距離Y1とする。また、同様に、各第2赤外線センサs32a~s32eが計測した第2距離Y2a~Y2eの中から最小値を抽出して第2距離Y2とする。
そして、推定手段4は、下記(3)式に従って着座者Aの下肢の長さzを算出して推定するようになっている。
z=p11×Y1+p12×Y2+p13×WT+p14 …(3)
【0085】
ここで、p11~p14はパラメータであり、予め種々の体格や骨格を有する多数の着座者について実際に上記の処理を行い、得られたデータ(第1距離Y1、第2距離Y2、体重WT、下肢の長さz)を上記(3)式にあてはめ、第1距離Y1、第2距離Y2、体重WTから下肢の長さzが適切に算出されるように各パラメータp11~p14の値が設定される。
そして、このようにして設定された各パラメータp11~p14はECU装置1のメモリ5に記憶されており、以上の着座者Aの下肢の長さzの推定処理に用いられるようになっている。
【0086】
以上のように、本実施形態に係るECU装置1、車両シート10及び着座者の下肢の長さ推定システムによれば、サイアングル情報取得手段2で着座者Aのサイアングルθに関する情報(本実施形態では第1距離Y1)を取得し、膝裏角度情報取得手段3で着座者Aの膝裏角度φに関する情報(本実施形態では第2距離Y2)を取得し、推定手段4でそれらの情報に基づいて着座者Aの下肢の長さzを推定する。
そのため、車両シート10に着座した着座者Aの下肢の長さzを的確に推定することが可能となる。
【0087】
そして、的確に推定した着座者Aの下肢の長さzに基づいて、車両シート10全体の前後方向の位置やシートクッション11の位置やハイト、チルト、座面の長さ等(すなわち車両シートの状態)を適切に自動調整して、着座者Aにとって着座した車両シート10が最適な状態になるように自動調整することが可能となる。
【0088】
なお、上記の実施形態では、第1赤外線センサs31や第2赤外線センサs32で計測する着座者Aの膝や脛D、踵Eまでの第1距離Y1や第2距離Y2の他に、さらに着座者Aの身体のいずれかの部分までの距離を計測するように構成し、着座者Aの下肢の長さzを推定する際にその距離も用いるように構成して、着座者Aの下肢の長さzの推定の精度を上げるように構成することも可能である。
【0089】
なお、本発明は上記の各実施形態等に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0090】
〔変形例〕
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、変形例について説明する。以下に挙げる変形例は可能な限り組み合わせてもよい。
【0091】
〔変形例1〕
本変形例においては、
図4~
図7に参照されるように、シートクッション11の上面側に前後方向に並べられて設けられた複数の座圧センサs1~s4によって計測される座圧x1~x4のバランスに基づいて、サイアングルθの大きさを推定している。
これに加え、本変形例においては、
図12に示すように、ECU装置1が、時間の計測を行う計時手段40を備えており、車両シート10の前後方向に移動するシートクッション11の前端に設けられた圧力センサs11~s13によって検知される圧力と、シートクッション11前端に対する着座者Aの接触時間に基づいて、ふくらはぎCの位置を推定している。
【0092】
すなわち、複数の座圧センサs1~s4は前後方向に並べられているため、サイアングルθの大きさに応じて、各座圧センサs1~s4によって計測される座圧x1~x4に強弱が出ることになる。つまり、下肢の長さzが長い人の場合は、シートクッション11前端に向かうにつれて座圧が弱くなる(接していなければ座圧はかからない状態となる。)。そこで、ECU装置1は、その圧力の強弱バランスに基づいて着座者Aのサイアングルθの大きさを推定している。したがって、着座者Aが正しい姿勢で着座してさえいれば、サイアングル情報取得手段2は、サイアングルθに関する情報を取得することができることになる。
また、シートクッション11前端を移動させてふくらはぎCに接触させると、シートクッション11前端に設けられた圧力センサs11~s13のうち、いずれかの圧力センサによって、ふくらはぎCの接触を検知することができるようになっている。この時、膝裏角度φの大きさによっては、3つの圧力センサs11~s13のうち、いずれかの1つ又は2つの圧力センサと、ふくらはぎCとが接触しない状態となる。要するに、3つの圧力センサs11~s13のいずれかによって、ふくらはぎCの位置を検知するパターンが、膝裏角度φの大きさによって複数生じることになる。換言すれば、ECU装置1は、シートクッション11前端を移動させてふくらはぎCに接触させ、ふくらはぎCを検知している圧力センサs11~s13を特定し、その結果に基づいて膝裏角度φを推定している。したがって、着座者Aが正しい姿勢で着座してさえいれば、膝裏角度情報取得手段3は、膝裏角度φに関する情報を取得できることになる。
【0093】
ECU装置1の推定手段4は、上記のようにしてサイアングル情報取得手段2が取得したサイアングルθに関する情報(すなわち座圧センサs1~s4が計測した座圧x1~x4と体重検出センサswが検出した着座者Aの体重WT)と、ふくらはぎCの位置と、膝裏角度情報取得手段3が取得した膝裏角度φに関する情報(すなわち圧力センサs11~s13による圧力の検知の有無)とに基づいて、着座者Aの下肢の長さzを推定する。
これにより、車両シート10に着座した着座者Aの下肢の長さzを、より的確に推定することが可能となる。
【0094】
〔変形例2〕
本変形例においては、例えば
図10に参照される第1赤外線センサs31(s31a~s31c)と第2赤外線センサs32(s32a~s32e)の位置に、超音波センサーs41が配置されている。当該超音波センサーs41は、送波器により超音波を対象物に向け発信し、その反射波を受波器で受信することにより、対象物の有無や対象物までの距離を検出するものであり、本変形例においては着座者Aの脛D(膝を含む)、踵Eを対象物としている。
【0095】
また、超音波センサーs41は、一つだけ設けられるものとしてもよいし、複数設けられるものとしてもよい。
超音波センサーs41は、ECU装置1の制御によって適宜角度調整できるように構成されてもよい。
そして、このように設置された超音波センサーs41によって、着座者Aの膝から踵Eまでの距離を測定することができるので、ECU装置1は、その測定結果に基づいて着座者Aの下肢の長さzを算出できるようになっている。
なお、超音波センサーs41の設置位置を、着座者Aの側面(車両の左右方向)から超音波を発信できる位置とすることで下肢の長さzを直接的に導き出してもよい。
【0096】
本変形例によれば、着座者Aが正しい姿勢で着座していることを前提とし、このような超音波センサーs41を用いることによって、着座者Aの下肢の長さzを容易に算出することができる。
【0097】
〔変形例3〕
本変形例においては、例えば
図13に示すように、車両におけるハンドルの下方の位置に、着座者Aの下肢(大腿部B、脛D、踵Eを含む脚部)を撮影対象(被写体)とした第1カメラs42Aが配置され、ハンドルの上方の位置に、着座者Aの顔(目又は頭頂部)を撮影対象とした第2カメラs42Bが配置されている。
また、第1カメラs42Aの配置位置は、着座者Aの下肢全体を撮影範囲とすることが可能な位置が好ましい。
さらに、第1カメラs42A及び第2カメラs42Bは、一つだけ設けられるものとしてもよいし、複数設けられるものとしてもよい。
第1カメラs42A及び第2カメラs42Bは、ECU装置1の制御によって適宜角度調整できるように構成されてもよい。
そして、第1カメラs42Aによって得られる情報は、例えば脚(少なくとも大腿部Bから踵Eまでを含む)の位置、脚の状態(サイアングルθや膝裏角度φ)、ヒップポイントから踵Eまでの長さ、すなわち下肢の長さzを計測することができる。
さらに、第2カメラs42Bによれば、着座者Aの目の高さ(アイポイント)・頭頂部の高さを認識でき、それに基づいて着座者Aの座高を推定することができる。
【0098】
着座者Aが正しい姿勢で着座していることを前提とし、第1カメラs42Aによって下肢を撮影することにより、着座者Aの下肢の長さz(ヒップポイント(股関節)から踵までの長さ)を容易に推定することができ、第2カメラs42Bによって顔を撮影することにより、着座者Aの座高を推定できる。これにより、例えば車両シート10の各部がECU装置1の制御によって自動で位置調整可能な構成であった場合には、第1カメラs42A及び第2カメラs42Bの撮影結果に基づいて、車両シート10の各部を、運転に最適なポジションに自動調整することができる。
カメラs42A,s42Bは、車体に対する設置位置が固定されており、被写体となる下肢までの距離は、着座者Aが正しい姿勢で着座していれば変動が少ない(定点測距が可能。)。そのため、カメラs42A,s42Bであっても着座者Aの下肢の長さzを容易に推定することができる。
【0099】
〔変形例4〕
本変形例においては、ECU装置1が、着座者Aの身長情報と座高の検出結果に基づいて、着座者Aの下肢の長さzを推定している。
図14に示すように、ECU装置1には、座高検出手段43と、タブレット端末やスマートフォン等の情報端末とが通信可能に接続されている。すなわち、ECU装置1と座高検出手段43との間では情報の送受信が可能となっており、ECU装置1と情報端末44との間でも情報の送受信が可能となっている。
ECU装置1と、座高検出手段43及び情報端末44との接続手段は、有線でもよいし、無線でもよい。また、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信によるものであってもよいし、種々のコンピュータネットワークを利用したものでもよい。
【0100】
座高検出手段43は、車両シート10に着座した着座者Aの座高を検出可能なものであれば特に限定されるものではない。本変形例においては、対象物の位置を検出する位置センサー(例えば赤外線センサー、超音波センサー、電磁波センサー、レーザー距離計等)と、必要に応じて当該センサーを位置調整させる機構と、を有する。
より詳細に説明すると、例えば、ヘッドレスト17に位置センサーを設け、シートバック14にヘッドレスト17を上下動させる機構を設け、ECU装置1による制御によってヘッドレスト17を上下動させて着座者Aの頭部の位置を検出するような手法で、着座者Aの座高を検出することができる。ただし、この手法に限られるものではなく、適宜変更可能である。
【0101】
身長情報は、情報端末44から入力される。
ECU装置1は、情報端末44から入力された身長情報と、座高検出手段43による座高の検出結果に基づいて、着座者Aの下肢の長さzを算出する。
この時、臀部の盛り上がりなども考慮するために尻周りの寸法を補正値の情報として情報端末44から入力してもよいし、体重検出センサswによって検出された体重WTを補正値としてもよい。
本変形例によれば、着座者Aの身長情報と座高の検出結果に基づいて、着座者Aの下肢の長さzを容易に推定できる。
【0102】
〔変形例5〕
本変形例においては、指定された位置に踵Eが置かれていることを前提にし、ECU装置1が、複数の座圧センサs1~s4によって計測される座圧x1~x4のバランスに基づいて着座者Aの下肢の長さzを推定している。
指定された位置は、例えばフロアマット45(
図15参照。)の上面に、踵Eを置く位置を知らせるマーキングを施すなどして着座者Aにわかりやすい状態としておく。
このように踵Eの位置が指定されていると、着座者Aが異なる人に変わった場合でも、踵Eの位置に関しては同じ条件にすることができるので、複数の座圧センサs1~s4によって計測される座圧x1~x4のバランスから、サイアングルθに関する情報を推定でき、着座者Aの下肢の長さzを算出できるようになっている。
【0103】
また、
図15に示すように、フロアマット45の裏側にフロア用圧力センサ-46を設置して、着座者Aの踵Eの位置を検知できるようにしてもよい。踵Eの位置を検知できるようにすれば、例えば上述したようなマーキングの位置に踵Eを置けない人でも下肢の長さzを算出できる。つまり、様々な体型の人の下肢の長さzを算出できることになる。
【0104】
図16に示す例においては、踵Eの位置を検出する手段としてレーザー距離計47が用いられている。このようなレーザー距離計45は、レーザービームを踵Eに向かって照射し、踵E側からの反射ビームを捕捉して距離を演算するものである。
レーザー距離計47の設置位置がECU装置1に予め登録されていれば、ECU装置1によって下肢の長さzを算出する場合に、レーザー距離計47によって踵Eの位置を容易に検出することができる。
また、例えば、車両のフロア上に仮想的な座標を構築し、旋回可能に構成されたレーザー距離計47の動作をECU装置1によって制御すれば、踵Eの位置をより検出しやすくすることができる。
【0105】
<構成例>
以下、上述した実施形態及び変形例に対して適宜組み合わせることが可能な構成例について説明する。また、以下に挙げる構成例も可能な限り組み合わせてもよい。
また、以下の各構成例において、上述した実施形態及び変形例と共通する要素については、共通の符号を付し、説明を省略又は簡略する。
【0106】
<構成例1>
〔ドライビングポジションについて〕
ここでいうドライビングポジションとは、運転中に常に良い視界が保たれ、車と一体感をもってハンドルやペダル操作が行える運転姿勢・位置を指す。
ドライビングポジションは、制御装置10によってシート60Aにおける各部の制御が行われることで適宜変更することができる。
【0107】
本構成例におけるシート60Aは、
図17,
図18に示すように、当該シート60Aの骨格を構成するシートフレーム60を備え、シートフレーム60には、制御装置10によって制御され、かつ、シート60Aに着座した人が適正なドライビングポジションとなるようにシート60Aの形態を変形させる各種機構(シート姿勢調整装置15を含む。)が設けられている。
【0108】
より詳細に説明すると、シートフレーム60は、シートクッション61Aの骨格を構成するクッションフレーム61と、シートバック62Aの骨格を構成するバックフレーム62と、を有している。そして、これらクッションフレーム61及びバックフレーム62の周囲に上記した各種機構が設けられている。
【0109】
各種機構として、クッションフレーム61には、シート60A全体をフロア上に支持し、シート60Aを前後方向にスライド移動させるためのスライドレール63が設けられている(矢印A1参照。)。
また、バックフレーム62には、乗員がシートバック62Aにもたれかかる力を受け止めてバックフレーム62に伝えるとともに、乗員の腰部に当たる部分の形状を変化させて、乗員の好みに応じて腰部のサポート状態を変えるためのランバーサポート64が設けられている。すなわち、ランバーサポート64は、前後方向に変形するように構成されている(矢印A4参照。)。
さらに、クッションフレーム61の後端部とバックフレーム62の下端部との間には、クッションフレーム61に対するバックフレーム62の角度を変更するためのリクライニング機構65が設けられている(矢印A2参照。)。
また、クッションフレーム61には、シートクッション61Aを上下方向に移動させるためのハイト機構66が設けられている(矢印A3参照。)。ハイト機構66は、
図17に示すようにシートクッション61Aを上下動させるだけでなく、
図18に示すように、シートクッション61Aの前端部と後端部の上下方向の位置を調整することも可能となっている。
図18に示す例においてハイト機構66は、クッションフレーム61の前端部と後端部の上下方向の位置を調整するためのリンク機構を有している。
バックフレーム62は、リクライニング機構65を介してクッションフレーム61に連結された状態となっているため、ハイト機構66によってクッションフレーム61と共に上下方向に移動する。
さらに、バックフレーム62は、立て起こした状態の当該バックフレーム62における上下方向途中部分を前後方向に傾斜させる中折れ機構を有してもよい。このような中折れ機構を有するバックフレーム62がシート60Aに用いられると、シートに着座した人は、例えばシートバック62Aに寄りかかりつつ、上半身の上部が起こされる状態となるので、ゆったりとリクライニングさせた状態でも前方視界を確保しやすい。
【0110】
シート60Aのドライビングポジションを調整する場合は、上記した各種機構をいくつか又は全部同時に動作させてもよいし、一つ一つを順次動作させてもよい。
なお、例えば、スライドレール63によってシート60Aの前後位置を調整し、リクライニング機構65によってシートバック62Aの角度を調整し、ハイト機構66によってシート60Aの高さ調整を行い、その後、ランバーサポート64によって腰部の前後位置を調整する、という順番でシート60Aの形態を変更することが好ましい。
【0111】
また、本構成例においては、制御装置10によって、シート60Aが設けられる乗用車の車格や走行条件に応じ、ドライビングポジションの変更が自動でできるようになっている。
すなわち、シート60Aが設けられる乗用車の車格(例えば、SUV/ミニバンタイプ、セダンタイプ、スポーツカータイプ等を指す。)や走行条件(例えば時間帯、天気、道路の状況等を指す。)が乗員の判断によって選択され、制御装置10は、その乗員の選択と、シートに着座する人の体格に基づいて最適なドライビングポジションを算出し、シート60Aの形態を変更する制御を行う。
【0112】
また、シートに着座した人の意思でシート60Aの形態変更を開始できるように、車内に、モード変更を開始できるモード変更ボタン(図示省略)が設けられるようにしてもよい。このようなモード変更ボタンでは、例えばスポーツモードのポジション、リラックスモードのポジション等を変更できる。
スポーツモードは、乗用車のシート60Aを、スポーツカーの運転時に好ましい形態へと変化させるモードである。スポーツカーの運転時に好ましい形態としては、例えば、シートクッション61A及びシートバック62Aにおけるサイドサポート(いわゆる土手)の角度を調整することによりホールド性やコーナリングの安定性を向上させたり、ハイトを低くして目線を道路に近づけたりする状態が挙げられる。
リラックスモードは、乗用車のシート60Aを、リラックスした状態で着座できるような形態へと変化させるモードである。より詳細に説明すると、リラックスモードは、シート60Aを、
図18に示すように、シートクッション61Aの前端部が後端部に対して上方に移動し、シートバック62Aがリクライニング(後方に回転して傾斜する)した状態に形態変更するモードである。
なお、運転席以外のシートでは、いつでもリラックスモードにすることが可能であり、運転席のシート60Aでは、車両の自動運転中のみ選択できるモードとする。ここでいう車両の自動運転とは、NHTSA(米国運輸省道路交通安全局)が策定した自動化レベルにおける「レベル4」或いは米国のSAE[Society of Automotive Engineers]が策定した自動化レベルにおける「レベル4」及び「レベル5」に該当する高度自動運転もしくは完全自動運転を指すものとする。
【0113】
<構成例2>
〔体幅調整について〕
本構成例のシート70は、シートクッション71と、シートバック72と、を備える。そして、これらシートクッション71及びシートバック72のうち少なくとも一方に、乗員の体幅に合わせた体幅調整を行うためのエアセル74が組み込まれている。
ここでいう体幅は、乗員の身体の幅を指し、特にシート70に着座した際の腰部付近の幅を指すものとする。
【0114】
本構成例においては、
図19に示すように、少なくともシートバック72に対してエアセル74が組み込まれている。
シートバック72は、当該シートバック72の骨格を構成するバックフレーム73を有する。バックフレーム73は、左右一対のバックサイドフレーム73a,73aと、これら左右一対のバックサイドフレーム73a,73aの上端部間を連結する上部フレーム73bと、左右一対のバックサイドフレーム73a,73aの下端部間を連結する下部フレーム73cと、を備える。さらに、左右一対のバックサイドフレーム73a,73a間には、乗員の腰部をサポートするランバーサポート73bが設けられている。
【0115】
そして、左右一対のバックサイドフレーム73a,73aのそれぞれの内側面に、流体(ここでは空気だが、液体でもよい。)が内部に封入されることにより膨張する袋体であるエアセル74が設けられている。エアセル74は、空気の供給源であるエアコンプレッサー(図示省略)に接続されている。
エアセル74には、図示はしないが、当該エアセル74の内圧を計測する内圧センサーが設けられてもよい。また、内圧センサーの代わりに、乗員に対する圧力がどれくらいかかっているかを計測する圧力センサーが設けられていてもよい。
また、エアセル74は、シートバック72の表皮の裏側に設けられており、シートバック72の、前方に膨出する左右のサイドサポート72a(いわゆる土手)に対して設けられた状態となっている。
【0116】
このようなエアセル74によって体幅調整を行う場合は、人がシート70に着座した状態で行われる。人が腕を上げた状態でエアセル74内に空気を流入させて徐々に膨張させると、エアセル74が、表皮を介して乗員の脇腹に徐々に強く接する。エアセル74が表皮を介して乗員に接し、圧力センサーによって計測された圧力が適切な数値になると、エアコンプレッサーから空気の送出をストップし、膨張状態を保持する。
これにより、左右のサイドサポート72a間の間隔を、乗員の体幅に合った最適な寸法に調整することができる。また、エアセル74を、表皮を介して乗員の脇腹に接しさせ、圧力センサーによって所定の圧力値を得た段階を、シートに着座した乗員の体の幅とすることができる。すなわち、乗員の体幅を推測することができる。
【0117】
なお、以上では、エアセル74の設置位置を、シート70に着座した人の腰部付近であるとしたが、腰部付近だけに限られるものではなく、シート70の様々な部位に設けられてもよいものとする。
図20は、シート70の全体を示す斜視図であり、本例では、シート70の様々な部位にエアセル74~78が設けられている。
【0118】
図20に示すシート70のシートバック72には、シート70に着座した人の肩を支持するショルダーサポート72bが備えられている。そして、このショルダーサポート72bはエアセル75を内蔵しており、エアセル75は、その膨出によって着座した人の肩を幅方向内側かつ下方に押す機能を有する。
【0119】
また、シートバック72におけるランバーサポート73dの位置に対応してエアセル76が設けられている。このエアセル76は、シート70に着座した人の腰部の特に背中側を前方に押す機能を有する。
すなわち、腰部付近においては、左右のエアセル74と背中側のエアセル76とによって、乗員の腰部を三方から支持できるようになっている。なお、最適な腰部の支持のため、左右のエアセル74による支持圧力は、背中側のエアセル76の膨出量に応じて適宜調整されるものとする。
【0120】
さらに、シートクッション71の幅方向両端部には、上方に膨出するサイドサポート71aが設けられており、これらのサイドサポート71aは、エアセル77をそれぞれ内蔵している。そして、これらエアセル77は、その膨出によってシート70に着座した人の臀部及び大腿部を幅方向内側に押す機能を有する。
【0121】
また、シートクッション71の前端部には、着座した人の脚の膝下部を支持する膝下支持部としてのオットマン部71bが設けられている。このオットマン部71bは、シートクッション71の前端に配置されたエアセル78を備えており、このエアセル78が膨出したときに着座した人の脚の膝下部を下方から支持する機能を有する。
【0122】
シート70に組み込まれた各エアセル74~78は、例えばシート70に組み込まれた乗員の体格(例えば、身長や体重、座高、脚の長さを始めとする様々な部位)を測定する体格測定手段によって得られた体格情報から体幅を推測し、その推測結果に基づいて、制御装置10の制御によって適宜作動させることができる。体格情報は、体格測定手段に依らず、乗員による制御装置10への情報入力によって取得してもよい。
また、制御装置10によってエアセル74~78の動作を制御する場合は、運転条件や乗員の体格に応じて最適な圧力で、かつ最適な幅寸法となるように自動制御される。
【0123】
<構成例3>
〔体重計測について〕
本構成例におけるシートは、荷重センサーWを備えることにより、シートに着座した人の体重計測が可能となっている。
シートは、シートクッションの骨格を構成するクッションフレーム80を備えており、荷重センサーWは、
図21に示すように、クッションフレーム80に組み込まれている。
【0124】
クッションフレーム80は、左右一対のクッションサイドフレーム81,81と、これら左右一対のクッションサイドフレーム81の下端部に取り付けられる矩形フレーム82と、矩形フレーム82の下端部に取り付けられる左右一対のスライドレール83と、を有している。
荷重センサーWは、矩形フレーム82と左右一対のスライドレール83との間に設けられている。
【0125】
矩形フレーム82は、左右一対のビーム82aと、フロントビーム82bと、バックパイプ82cと、を備え、これらフレーム材が平面視において矩形状に連結されたものであり、左右一対のクッションサイドフレーム81から伝わる乗員の荷重を、荷重センサーWに対して均等に伝達する役割を持つ。
フロントビーム82bは、左右一対のビーム82aの前端部間に設けられて、これら左右一対のビーム82aの前端部同士を連結している。
バックパイプ82cは、左右一対のビーム82aの後端部間に設けられて、これら左右一対のビーム82aの後端部同士を連結している。
【0126】
左右一対のスライドレール83は、それぞれ、前後端部に設けられた脚部によって支持されるロアレール83aと、ロアレール3に対してロアレール3上を前後方向に摺動可能となってロアレール3に係合したアッパーレール83bと、を備える。
左右一対のスライドレール83は、左右のロアレール3の下面に固定されて当該左右のロアレール3の間に架け渡されたロアブラケット83cによって一体化されている。また、左右一対のスライドレール83には、ロアレール83aに対してアッパーレール83bをロックするとともにそのロックを解除するためのロック機構83dが設けられている。
【0127】
荷重センサーWは、左右のアッパーレール83bにおける前端部と後端部に、合計4つ設けられている。そして、例えばボルト・ナットなどの固定手段によってアッパーレール83bの上面に固定されている。
また、荷重センサーWの上には、ブッシュ84a及び段付カラー84bを介して矩形フレーム82が載せられている。
矩形フレーム82におけるビーム82aは、断面L字型に形成されて底面板部を備えている。この底面板部には、荷重センサーWにおける上方に突出するロッドW1が通される貫通孔が形成されている。当該貫通孔に通されたロッドW1には、いずれも環状に形成された、平座金84c、巻きバネ84d、スプリングホルダー84eが設けられている。
そして、ロッドW1にナット84fが設けられ、左右一対のスライドレール83と矩形フレーム82とが荷重センサーWを介して連結された状態となっている。また、矩形フレーム82に対しては、左右一対のクッションサイドフレーム81が溶接などにより接合されている。
【0128】
このように構成されたクッションフレーム80を備えたシートによれば、シートに着座した人の体重計測が可能となる。すなわち、荷重センサーWは、検出した荷重に係る情報を電気信号に変換して制御装置10に出力する。制御装置10は、取得した情報に基づいて、シートに着座した人の体重を導き出すことができる。
なお、荷重センサーWは、左右一対のクッションサイドフレーム81を支持する矩形フレーム82の四隅の下方に設けられている。そのため、例えば、荷重センサーWが四隅に設けられない場合に比して、4つの荷重センサーWによる荷重検出精度を高めることができる。
さらに、4つの荷重センサーWが用いられているため、シートに着座する人の着座バランスを検出することができる。すなわち、第一から第四までの荷重センサーWのうち、どの荷重センサーWに最も荷重が大きくかかっているか、通常走行時とコーナリング時との差異等、様々な検出結果を取得することができる。このような検出結果は、制御装置10によるシートの形態変化や車体側との連動に係る制御に反映させることができる。
【0129】
制御装置10における記憶部12には、荷重センサーWによって検出された情報から体重情報を導き出すプログラムの他にも、体重計測に係る様々なプログラムが記憶されている。
体重計測に係る様々なプログラムとして、例えば、導き出された体重情報と、制御装置10に入力された乗員の身長情報からBMIを算出し、ドライビングポジションを補正するポジション補正プログラムが記憶部12に記憶されている。
その他にも、制御装置10と、カーナビゲーションや乗員が所有する情報端末とを通信可能な状態としておき、導き出された体重情報を送信する体重情報送信プログラムが記憶部12に記憶されている。これにより、体重情報を可視化することができ、乗員は、自身の体重情報を確認することができる。
また、制御装置10とアドバイス用外部データベースとを通信可能な状態としておき、導き出された体重情報に基づいて、外部データベースから適切なアドバイスデータを抽出し、乗員に体重に関するアドバイス(体重に係る課題を提起するアドバイス)を送信するアドバイスプログラムが記憶部12に記憶されていてもよい。
【0130】
<構成例4>
〔情報端末操作について〕
図22に示すように、制御装置10は、更に通信部16を備えており、当該制御装置10に対するアクセスが許可されている情報端末90と通信可能に接続されている。
情報端末90は、タブレット端末、携帯端末(スマートフォンを含む。)、パーソナルコンピュータ等のコンピュータであり、車両側の制御装置10と双方向の無線通信をすることにより、制御装置10から情報を取得したり、制御装置10を制御したりすることが可能となっている。このような情報端末90は、制御部91、記憶部92、入力部93、表示部94、通信部95を備える。
【0131】
制御部91は、中央処理装置としてCPU(Central Processing Unit)を含んで構成され、記憶部92に記憶されるプログラムやデータに基づいて各種の演算処理を実行するとともに、情報端末90の各部を制御する。
【0132】
記憶部92は、例えば半導体メモリ、磁気ディスク装置等の記憶装置を含んで構成され、各種のプログラムやデータを記憶するほか、制御部91のワークメモリとしても機能する。なお、記憶部92には、フラッシュメモリ、光学ディスク等の着脱可能な情報記憶媒体を含むこととしてよい。
【0133】
入力部93は、例えばタッチパネル、キーボード、マウス等の入力装置を含んで構成され、情報端末90を操作するユーザ(例えば乗員)の操作入力を受け付ける。なお、本構成例における入力部30は、タッチパネル式の入力装置によって構成されている。
【0134】
表示部94は、制御部91により生成されるグラフィックデータに基づく画面を表示させるものであり、本構成例においては、入力部93としてタッチパネルが採用されているため、表示部94としてもタッチパネルが採用されている。その他にも、例えば液晶ディスプレイ装置などの表示装置を適宜採用してもよい。
【0135】
通信部95は、無線通信回路を含み、制御装置10における通信部16との間で信号を送受信することで、制御装置10との双方向通信を可能とする。なお、制御装置10における通信部16と情報端末90における通信部95とは、各種のコンピュータネットワークのうちいずれかを介して通信してもよいし、アドホックモードで通信してもよい。また、有線によって通信してもよいし、無線によって通信してもよい。
【0136】
情報端末90では、シート及び当該シートが設けられた車両について入力された各種の情報を記憶部92に記憶させておくことができる。また、通信部95を介して制御装置10と通信することにより、入力された各種の情報を、制御装置10における記憶部12にも記憶させておくことができる。
より具体的には、人がシートに着座し、シートの形態を変更した場合に、その形態変更情報を、制御装置10における記憶部12又は情報端末90における記憶部92に記憶させておくことができる。
【0137】
制御装置10は、シートに着座した人の情報とシートの形態変更情報に基づいて、シートの形態変更を自動で行うことができる。
また、シートの形態を変更する際は、情報端末90からの入力情報に基づいて行われるものとしてもよい。すなわち、情報端末90は、制御装置10と双方向の無線通信をすることにより制御装置10を制御可能であるため、制御装置10を介して、制御装置10に接続された各種センサーやシート姿勢調整装置15の制御が可能となっている。この時、情報端末90の表示部94には、情報端末90によって制御可能なデバイス(例えば上記のスライドレール63,83、ランバーサポート64、リクライニング機構65、ハイト機構66、シートバックの中折れ機構、ハイト機構66における前後端部の位置調整機構等)が表示でき、情報端末90のタッチパネル(入力部93及び表示部94)上で、制御を行うデバイスの選択を行うことができる。
さらに、上記の各デバイスを選択し、制御装置10によってその動作を制御するにあたり、情報端末90のタッチパネル(入力部93及び表示部94)上で、シートに着座する乗員の体格情報を入力することができる。その際、乗員の体格情報を数値入力してもよいし、
図23に示すように、タッチパネルの画面に表示されたコンピュータグラフィックスを操作することによって体格情報を入力してもよい。
図23に示す例においては、画面に表示された人(コンピュータグラフィックス)の身長の方向にピンチアウト操作を行うことで身長が高くなるように身長情報を変更している。図示はしないが、ピンチイン操作を行えば身長を低くするように身長情報を変更でき、画面に表示された人の横方向にピンチアウト・ピンチイン操作を行えば体幅の情報を変更できる。また、その他の操作(例えばスワイプ操作やフリック操作)で体重を増減させたり、画面に表示されるユーザの切り替えを行ったりしてもよい。
【0138】
また、制御装置10によってシートの形態変更を自動で行う他の例として、乗員情報を情報端末90に登録することでシートの形態を変更する方法が挙げられる。
より詳細に説明すると、乗員情報とは、例えば身長や体重、座高、脚長さ、腕長さ、体幅、姿勢(猫背か反り背かなど)、BMI、体脂肪率、筋肉量等のような、乗員の身体情報を特定できる情報を指す。そして、これらの乗員情報を予め情報端末90における記憶部92に記憶しておき、これらの乗員情報からシートに着座する人の体格や特徴を推測し、推測して導き出された情報を利用して、乗員に最適な状態となるようにシートの形態を変更させる。
なお、乗員の身体情報に変動があった場合には、上記のように、情報端末90のタッチパネル上で、身体情報の調整を行うことが可能となっている(
図23参照。)。
【0139】
さらに、記憶部92には、情報端末90のタッチパネル上で入力されたユーザの運動情報(運動の頻度や運動の内容)や食事情報(普段の食事などの情報)と、例えば上記した荷重センサーWによる体重計測に係る情報と、に基づいて、ユーザの健康管理を行うプログラム(例えば上記のアドバイスプログラムと同様のプログラム)が記憶されている。このようなプログラムを実行することにより、ユーザは、情報端末90上で自身の健康状態を把握でき、アドバイスに従って自宅などで健康管理を行うことができる。
【0140】
また、本構成例における制御装置10は、
図23に示すように、シートの形態変更に係るユーザごとの情報を学習するAI(人工知能:Artificial Intelligence)学習部17を更に備えている。
AI学習部17は、制御装置10が設定したシートの形態(位置)と、ユーザが調整したシートの形態(位置)との差分を算出して記憶部12に記憶させることができる。また、このようなユーザの最適なシートの形態を、ユーザごとに記憶部12に記憶させておき、シートに着座したユーザが誰かを特定できた時点で、そのユーザに合わせてシートの形態を変更させることができる。また、AI学習部17は、シートの形態を記憶させるのと同時に、例えば車両のハンドルやミラーの位置を記憶部12に記憶させておき、ユーザに合わせてシートの形態を変更させるとともにハンドルやミラーの位置を変更させるようにしてもよい。
【0141】
また、ユーザが調整したシートの形態を記憶する際に、その他の付加条件も記憶部12に記憶させていくことで、AI学習部17は、その記憶させたデータに基づいてユーザごとの最適なシートの形態を学習することができる。
付加条件としては、例えば天気や外気温、車内温度等の環境条件や、年月日や時間帯等の時間条件、ユーザの体温などの健康条件等が挙げられる。つまり、ユーザがシートの形態を変更させたときに、どのような理由(条件)でシートの形態を変更させたかを、AI学習部17が学習することができる。そのため、ユーザがシートに着座する際に、付加条件が記憶した時と同様の条件になった場合に、AI学習部17は、学習した内容に基づいてシートの形態を変更させる。
【0142】
また、本構成例においては、
図23に示すように、制御装置10又は/及び情報端末90が、例えば自動車メーカーや販売会社等の管理者によって管理された外部サーバ96と通信可能に接続されており、AI学習部17によって学習した情報の管理を行うことができるようになっている。
より詳細に説明すると、AI学習部17が記憶部12に記憶させたシートの形態に係る情報や、シートの形態を変更させた際の付加条件に係る情報は、通信部16を介して外部サーバ96へと送信される。そして、外部サーバ96では、不特定多数のユーザの情報を常に取得しており、シートの形態変更に係る傾向や特徴を解析し、解析した情報を、個々のユーザ(制御装置10)に対してフィードバックしている。
【0143】
さらに、シートの形態変更によって得られた乗員の着座姿勢に係る情報を収集し、体格や着座姿勢のユーザービリティ調査に活用することが行われている。すなわち、管理者によって管理される外部サーバ96は、多数のユーザからの様々な情報を受信することになるため、これらの情報をビッグデータとして収集して解析し、多くのユーザの満足度向上に繋げることができる。
【0144】
<構成例5>
〔車体連動について〕
シートに着座する人の姿勢や体格に応じて、乗用車(自動車:車両)における車体の様々な部分や機能を連動させることができるようになっている。
【0145】
図24は、ハンドル100の位置調整について説明する図であり、ハンドル100の位置調整は、シートに着座した人の姿勢や体格に係る情報に基づいて制御装置10によって制御される。
例えば、座高が高い人P1は肩の高さ位置も高い場合があり、座高が低い人P3は肩の位置も低い場合がある。また、腕の長さは身長に概ね比例する場合が多い。
このような場合には、例えば、シートに着座した人の座高がどの程度の高さであるかを検出し、その検出結果に基づいてハンドル100の角度を上下方向に変更したり、入力された身長に係る情報から腕の長さを推測し、その推測結果に基づいてハンドル100を前後に位置調整したりすることができる。
なお、このようにハンドル100の位置調整を行う機構は、いわゆる「チルト&テレスコピックステアリング」と呼ばれる。
【0146】
ハンドル100の軸(ステアリングシャフト)が収納されるステアリングコラム101は、ハンドル100の軸を上下方向や前後方向に位置調整する駆動部(図示省略)を備える。このような駆動部は、制御装置10に接続されており、当該制御装置10によって制御される。
これにより、シートに着座した人の姿勢や体格に係る情報に基づいて、ハンドル100の位置調整を自動で行うことができる。
なお、シートに着座する人の姿勢や体格に係る情報は、カーナビゲーション装置102(
図25,
図26参照)から情報入力を行ってもよいし、タブレット端末やスマートフォン等の情報端末90から情報入力を行ってもよい。
【0147】
図25は、サイドミラー103及びバックミラー104の位置調整について説明する図であり、サイドミラー103及びバックミラー104の位置調整は、シートに着座した人の姿勢や体格に係る情報に基づいて制御装置10によって制御される。
例えば座高が高い人P1は目線の高さも高い場合があり、座高が低い人P3は目線の高さも低い場合がある。
このような場合には、例えば、シートに着座した人の座高がどの程度の高さであるかを検出し、その検出結果に基づいてサイドミラー103及びバックミラー104の角度を上下・左右に変更することができる。
また、サイドミラー103及びバックミラー104の角度調整は、カメラによるアイポイントの検出によっても行うことができる。
【0148】
図26は、サイドミラー103に替えてサイド電子ミラー105が設けられ、このサイド電子ミラー105の位置及び表示調整について説明する図である。
サイド電子ミラー105は、車体の側面に後方を撮影するように取り付けられるカメラと、乗員室内に設けられ、カメラが撮影した動画を映すモニター105aと、で構成されている。
【0149】
サイド電子ミラー105の位置及び表示調整は、シートに着座した人の姿勢や体格に係る情報に基づいて制御装置10によって制御される。
より詳細に説明すると、サイド電子ミラー105に表示される画面の位置を調整する場合は、制御装置10によってカメラの向きが調整される。また、サイド電子ミラー105自体の位置を調整する場合は、制御装置10によってモニター105aの角度が上下・左右に変更される。
【0150】
サイドミラー103やバックミラー104、サイド電子ミラー105におけるカメラ及びモニター105aは、その向きや位置を調整する駆動部をそれぞれ備えている。これにより、
図25,
図26に示す構成例によれば、シートに着座した人の姿勢や体格に係る情報に基づいて、サイドミラー103、バックミラー104、サイド電子ミラー105の位置や表示の調整を自動で行うことができる。
なお、シートに着座する人の姿勢や体格に係る情報は、カーナビゲーション装置102から情報入力を行ってもよいし、タブレット端末やスマートフォン等の情報端末90から情報入力を行ってもよい。
【0151】
図27は、サイドサポート及びランバーサポートを含むシート110の形態変更が、制御装置10の制御によって自動で行われる。
シート110は、シートクッション111と、シートバック112と、ヘッドレスト113と、を備えている。
シートバック112には、前後方向に変形可能に構成されて、シート110に着座した人の腰部をサポートするランバーサポート114が内部に設けられている。
また、シート110には、上述したようなスライド機構(矢印A1参照。)、リクライニング機構(矢印A2参照。)、ハイト機構(矢印A3参照。)が適宜設けられ、シートバック112には、当該シートバック112における上下方向途中部分を前後方向に傾斜させる中折れ機構が設けられている。さらに、ハイト機構は、シートクッション111の骨格を構成するクッションフレームの前端部と後端部の上下方向の位置を調整するためのリンク機構を有している。
【0152】
シートクッション111の幅方向両端部には、上方に膨出するサイドサポート111aが設けられている。また、シートバック112の幅方向両端部には、前方に膨出するサイドサポート112aが設けられている。さらに、ヘッドレスト113の幅方向両端部には、前方に膨出するサイドサポート113aが設けられている。
なお、各サイドサポート111a,112a,113aの内部には、流体が内部に封入されることにより膨張するエアセルが設けられており、エアセル内の流体の増減により、各サイドサポート111a,112a,113aの膨出度合いを調整できるようになっている。
【0153】
制御装置10は、車体に設けられた各種センサーの検出結果に基づいて、ランバーサポート114や各サイドサポート111a,112a,113a、その他の各機構の動作を制御可能となっている。
各種センサーとしては、例えばコーナリング時の遠心力を検出するセンサーや、ハンドルの操舵角を検出するセンサー、急発進及び急制動を検出するセンサー、ブレーキの作動を検出するセンサー、車両の駐車状態を検出するセンサー、乗員の眠気を検知するセンサー、車体の角度を検出するセンサー等が用いられている。
なお、これらの各種センサーとしては、例えば加速度センサーやロードセル、各種の位置センサーを始めとする種々のセンサー類を適宜採用することができる。
【0154】
車両走行中のコーナリング時には、シートに着座した人の身体は遠心力によって外側に移動しようとする。そのため、センサーが遠心力を検出した場合、その検出結果に基づいて、シート110に設けられた各サイドサポート111a,112a,113aのうち、遠心方向外側に位置する各サイドサポート111a,112a,113aが、乗員の身体の側面に密着するように変形する。さらに、ランバーサポート114のうち遠心方向外側部が前方に(内側に閉じるように)変形する。また、遠心方向内側に位置する各サイドサポート111a,112a,113a及びランバーサポート114の遠心方向内側部は、後方に(外側に開くように)変形してもよい。
また、車両の走行時にカーブに差し掛かってコーナリングを行う場合は、ハンドルの回転操作も同時に行われる。そのため、遠心力を検出センサーが作動した時には、ハンドルの操舵角を検出するセンサーも、ハンドルの回転動作を検出していることになる。したがって、ハンドルの操舵角を検出するセンサーが作動した時も、各サイドサポート111a,112a,113aとランバーサポート114とが変形するように構成されている。
なお、ハンドルの操舵角は、カーブの半径に応じて異なるため、各サイドサポート111a,112a,113aとランバーサポート114の変形具合を、ハンドルの操舵角に応じて変更してもよい。
【0155】
車両の急発進時及び急制動時には、シートに着座した人の臀部及び大腿部が、シートクッション111上をずれるように移動する所謂「尻ずれ」が発生する場合がある。
車両の急発進時及び急制動時には、急発進及び急制動を検出するセンサーが作動し、急発進及び急制動を検出する。制御装置10は、その検出結果に基づいて、各サイドサポート111a,112a,113aを前方に内側に閉じるように変形させる制御を行い、乗員の身体をホールドする。また、シートクッション111の前端部を上方に移動させる制御を同時に行ってもよい。これにより、車両の急発進及び急制動時における尻ずれの発生又は尻ずれが起きた場合の移動距離を抑えることができる。
【0156】
車両には、レーダーやカメラによって障害物を感知し、障害物との衝突を回避するためにブレーキの補助操作を行う自動ブレーキシステムが搭載されている場合がある。また、自動ブレーキシステムに限らず、車両走行時には、急制動とは異なる急ブレーキをかける場合がある。そのようなブレーキ操作を行われた際に、ブレーキの作動を検出するセンサーが作動し、ブレーキの作動を検出する。制御装置10は、その検出結果に基づいて、各サイドサポート111a,112a,113aとランバーサポート114を、乗員の安全性を向上させ得る姿勢となるように変形させる制御を行う。
具体的に説明すると、制御装置10は、ランバーサポート114を前方に突出させるように変形させ、乗員の背中を反らせた状態にして頸部をシートバック112又はヘッドレスト113に近づけるような姿勢にする。さらに、各サイドサポート111a,112a,113aを前方に内側に閉じるように変形させる制御を行い、乗員の身体をホールドする。これにより、乗員の頸部をシートバック112又はヘッドレスト113に近づけた状態を維持しやすくなるので、障害物との衝突を回避できなかった場合であっても、乗員の安全性を確保しやすい。
【0157】
以上で説明したシート110の形態変更に伴う各部の動作のうち、運転時には行われないことが好ましい動作が含まれる場合がある。そのような場合には、車両の駐車状態を検出するセンサーによって車両の駐車状態を検出してから、制御装置10によってシート110の形態を変更するように制御する。
これにより、例えばシート110の形態変更に伴う各部の動作のうち、運転時には行われないことが好ましい動作が含まれる場合には、車両の駐車状態を確認してから当該動作を行うことができるので安全性の向上を図ることができる。
なお、ここでは車両の駐車状態を検出するセンサーを用いるものとしたが、停車状態を検出するセンサーに替えてもよいし、併用してもよい。
【0158】
乗員の眠気を検知するセンサーとしては、カメラを用いて乗員が一定時間以上目を閉じている状態や、着座者の体動や体勢等を検出するタイプのものや、乗員の呼吸の状態から眠気の有無を検出するセンサー、乗員の体温から眠気の有無を検出するセンサー等が用いられている。
制御装置10は、乗員の眠気を検知するセンサーが作動した場合に、その検出結果に基づいて、シート110を、乗員の眠気を改善させやすい姿勢を取れる形態に変形させる。具体的には、ランバーサポート114を前方に突出させて乗員の腰部を前方に移動させ、伸びをさせるように促すようにする。これにより、乗員の眠気の改善を図ることができる。
【0159】
図28(a)に示すように、登坂時において車体50は水平よりも大きく傾いた状態となり、シート110に着座した人も同時に傾いて、背中がシートバック112に密着するような姿勢になる場合がある。そうすると、シート110に着座した人は上体を立て起こすことが難しく、これに起因して視界が悪くなる場合がある。
そこで、
図28(b)に示すように、車体50の角度が一定以上になった場合に、車体50の角度を検出するセンサーによって車体50の角度を検出し、制御装置10が、その検出結果に基づいて、シート110を水平に近くなるように傾ける制御を行う。具体的には、ハイト機構66によってシートクッション111の後端部を前端部よりも上方に移動させるようにする。これにより、シート110を水平に近くなるように傾けることができるので、登坂時であっても、シート110に着座した人の視界が悪くなりにくい。
【0160】
車両には、車両の盗難防止を目的として、いわゆるイモビライザーが導入されている。このイモビライザーは、
図29に示すように、制御装置10と、エンジンキー120と、キーシリンダ121と、アンテナ122と、アンプ123と、を備えており、制御装置10は、車両のエンジン124、カーナビゲーション装置102、シート110と接続されている。
エンジンキー120には、トランスポンダと呼ばれる識別コードの送信機120aが埋め込まれており、送信機120aから送信された識別コードは、アンテナ122で受信され、アンプ122によって増幅されて制御装置10へと送信できるようになっている。
制御装置10においては、識別コードと、車体固有の識別コードとを照合し、一致すればエンジン124を始動できる構成となっている。
【0161】
また、制御装置10は、識別コードの照合が問題なかった場合に、シート110を、予め登録された形態へと動作させる。すなわち、シートに着座する人は、車両に乗り込んでシート110に座り、エンジン124を始動させるだけで、予め登録された所望の形態へとシート110を変化させることができる。
なお、シート110の形態変更を登録した人数が複数である場合は、カーナビゲーション装置102に、シート110に着座した人が誰であるかを選択する画面を表示し、着座した人自身が選択することによって、自身が予め登録したシート110の形態へと変更できるようになっている。
【0162】
なお、車両の乗り込み時にシート110の形態を変更する方法は、イモビライザーを利用する方法だけでなく、タブレット端末やスマートフォン等の情報端末90からの入力で行う方法を採用してもよい。
情報端末90の場合は、制御装置10と情報端末90とをBluetooth(登録商標)のペアリングと、そこに紐付けられた情報と、に基づいて制御を行う。すなわち、情報端末90の所有者が、自身の所有する情報端末90と制御装置10とをペアリングさせることによってユーザ情報を制御装置10に送信することができる。これにより、シート110の形態変更を登録した人数が複数であっても、自身が予め登録したシート110の形態へと支障なく変更できる。
【0163】
図30に示すように、制御装置10は、シートヒーター115及びブロワー116が内蔵されたシート110、車内のエアコン120、体温検知センサー121、温湿度センサー122と接続されている。シートヒーター115はシート110の温度を上昇させるものであり、ブロワー116は、風を送ってシート110の温度を下げることができる。
【0164】
体温検知センサー121は、シート110に着座した人の体温を検知するためのセンサーであり、シート110に内蔵されているか、若しくは、シート110近傍の車体に設けられている。
温湿度センサー122は、少なくとも車両の外部における温度及び湿度を検出するセンサーであり、車外に設けられている。また、温湿度センサー122は、車両の外部に設けられるものの他に、車両の内部に設けられるものを用いてもよい。
【0165】
制御装置10は、体温検知センサー121と温湿度センサー122の検出結果に基づいて、シートヒーター115、ブロワー116、エアコン120の動作を適宜制御できるようになっている。
すなわち、例えば、体温検知センサー121によってシート110に着座した人の体温を検知し、制御装置10は、その検知結果に基づいて、例えばエアコン120の動作させることができる。この時、制御装置10は、エアコン120ではなく、シートヒーター115又はブロワー116のいずれかを動作させてもよいし、これらを併用してもよい。
また、温湿度センサー122によって車外又は車内の温度と湿度を検出し、制御装置10は、その検出結果に基づいて、シートヒーター115又はブロワー116のいずれかを動作させることができる。この時、制御装置10は、シートヒーター115又はブロワー116のいずれかではなく、エアコン120を動作させてもよいし、これらを併用してもよい。
【0166】
以上に説明したECUとも呼称される制御装置10は、
図31に示すように、乗物とは切り離されてユニット化された状態で構成することができる。換言すれば、ECUユニット130として構成され、乗物に対して後付けされる形で搭載することが可能となっている。
このようなECUユニット130は、シートにおける電動調節が可能な箇所に対し、有線又は/及び無線で接続可能で、かつ、情報の送受信が可能に構成されている。
ここで、シートにおける電動調節が可能な箇所とは、以上で説明したデバイス(例えば上記のピラー駆動部、スライドレール、ランバーサポート、リクライニング機構、ハイト機構、シートバックの中折れ機構、ハイト機構における前後端部の位置調整機構、シートヒーター、ブロワー等)や、シートの形態を変更させる際に必要な各種のセンサー、乗物の車体側に設けられた各種のデバイス(サイドミラー、バックミラー、サイド電子ミラー、イモビライザー、エアコン等)を始め様々なものが挙げられる。
また、このECUユニット130は、上記の外部サーバ96との間でも情報の送受信が可能であるし、AI学習部を備えてもよい。
【0167】
このように構成されたECUユニット130を、既存の単なる電動調節が可能な箇所を備えたシートに適用することによって、当該シートを、個人の姿勢や体格、好み、その他の乗員に関する情報に合わせ、自動で各部を調節可能な電動シートとして稼働させることができるようになる。
なお、ECUユニット130は、以上に説明した乗物のシートに対して適用されるだけでなく、上記のような各種のデバイス(電動式のデバイス:パワーデバイスともいう)を備えた椅子やソファを始めとする腰掛け(
図31に示す電動椅子)、電動式のベッド(
図31に示す電動ベッド)等にも適用することができる。具体的には、医療用ベッド、事務椅子、待合室ベンチ、歯医者の椅子、飛行機のシート、電車のシート、船舶のシート、公共交通機関における運転席シート、家庭用ソファ、電動式車いす等に適用することができる。
【符号の説明】
【0168】
1 ECU装置
2 サイアングル情報取得手段
3 膝裏角度情報取得手段
4 推定手段
10 車両シート
11 シートクッション
11A 吊り込み部
18 シートフレーム
A 着座者
D 膝又は脛
E 踵
s1~s4 座圧センサ
s11~s13 圧力センサ
s21、s22 赤外線センサ
s31 第1赤外線センサ
s32 第2赤外線センサ
x1~x4 座圧
y 移動距離
Y1 第1距離
Y2 第2距離
y21、y22 ふくらはぎまでの距離
z 下肢の長さ
φ 膝裏角度
θ サイアングル