(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】冷媒充填方法
(51)【国際特許分類】
F25B 45/00 20060101AFI20221026BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
F25B45/00 Z
F25B1/00 396A
F25B1/00 396B
(21)【出願番号】P 2020549148
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(86)【国際出願番号】 JP2019037049
(87)【国際公開番号】W WO2020066922
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2018184330
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018184329
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018184332
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018184331
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山田 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】吉見 敦史
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 英二
(72)【発明者】
【氏名】岩田 育弘
(72)【発明者】
【氏名】大久保 瞬
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/027716(WO,A1)
【文献】特開平09-072637(JP,A)
【文献】特開2017-215140(JP,A)
【文献】特開2004-116885(JP,A)
【文献】特開2004-116875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 45/00
F25B 49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環する冷媒によって冷凍サイクルが行なわれる既設の冷凍サイクル装置(1)の第1熱源ユニット(10A)の冷媒を、第2熱源ユニット(10B)に充填するために回収して前記第2熱源ユニットに充填する冷媒充填方法であって、
前記第1熱源ユニットを前記既設の冷凍サイクル装置から取り外すステップと、
前記第2熱源ユニットを、前記第1熱源ユニットを取り外した前記既設の冷凍サイクル装置に組み込むステップと、
前記既設の冷凍サイクル装置から第1冷媒を回収して回収冷媒を得るステップと、
前記第2熱源ユニットを備える冷凍サイクル装置に対して前記回収冷媒を充填し、さらに前記回収冷媒とは組成が異なる第2冷媒を充填するステップと、
を備える、冷媒充填方法。
【請求項2】
前記第1冷媒がR410A冷媒であり、前記第2冷媒がR32冷媒である、
請求項1に記載の冷媒充填方法。
【請求項3】
前記第1冷媒がR410A冷媒であり、前記第2冷媒がR452B冷媒である、
請求項1に記載の冷媒充填方法。
【請求項4】
前記第1冷媒がR410A冷媒であり、前記第2冷媒がR454B冷媒である、
請求項1に記載の冷媒充填方法。
【請求項5】
前記第2熱源ユニットに窒素ガスを詰めた後に、前記窒素ガスを前記第2熱源ユニットの中に詰めた状態で前記第2熱源ユニットを前記既設の冷凍サイクル装置の設置場所まで運送するステップをさらに備える、
請求項1から4のいずれか一項に記載の冷媒充填方法。
【請求項6】
前記第2熱源ユニットに所定圧力範囲のR32を詰めた後に、前記R32を前記第2熱源ユニットの中に詰めた状態で前記第2熱源ユニットを前記既設の冷凍サイクル装置の設置場所まで運送するステップをさらに備える、
請求項1から4のいずれか一項に記載の冷媒充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
循環する冷媒によって冷凍サイクルが行なわれる冷凍サイクル装置への冷媒充填方法
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクルを行なう冷媒回路を備える冷凍サイクル装置は、空気調和装置及び給湯器などに適用されている。また、冷凍サイクル装置は、例えば特許文献1(特開2003-240388号公報)に記載されているように、冷凍サイクル装置に冷媒の充填を行なう際に既設配管を利用する場合がある。特許文献1に記載されている冷凍サイクル装置では、例えば、ポンプダウン運転によって液冷媒が熱源ユニットの室外熱交換器に集められて回収される。通常、冷媒サイクル装置から回収された冷媒は、工場に搬送されて処分されるか、あるいは工場に搬送されて再生される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、既設の冷凍サイクル装置から回収した冷媒を工場に持って帰って再生するには、既設の冷凍サイクル装置の在る場所から工場まで、回収した冷媒を運搬しなければならない。また、工場から冷媒充填の対象の冷凍サイクル装置の在る場所まで、工場で再生した冷媒を運搬しなければならない。
【0004】
このように工場に持って帰って再生する再生利用では冷媒充填作業の効率が悪くなるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1観点の冷媒充填方法は、循環する冷媒によって冷凍サイクルが行なわれる既設の冷凍サイクル装置の第1熱源ユニットの冷媒を、第2熱源ユニットに充填するために回収して第2熱源ユニットに充填する冷媒充填方法であって、既設の冷凍サイクル装置から第1冷媒を回収して回収冷媒を得るステップと、第2熱源ユニットを備える冷凍サイクル装置に対して回収冷媒を充填し、さらに回収冷媒とは組成が異なる第2冷媒を充填するステップとを備える。
【0006】
第1観点の冷媒充填方法では、第2熱源ユニットを備える冷凍サイクル装置に対して回収冷媒を充填し、さらに第2冷媒を充填することで、第2熱源ユニットの充填作業の効率化を図ることができる。なお、回収して充填する冷媒は、第1熱源ユニットから回収した冷媒を意味する。
【0007】
第2観点の冷媒充填方法は、第1観点の冷媒充填方法であって、第1冷媒がR410A冷媒であり、第2冷媒がR32冷媒である。
【0008】
第2観点の冷媒充填方法では、第1冷媒がR410A冷媒であり、第2冷媒がR32冷媒であることから、R410A冷媒で動作していた既設の冷凍サイクル装置の熱源ユニット以外の部分がR410A冷媒に対応している。従って、第2冷媒であるR32冷媒を補っても回収冷媒と第2冷媒の混合冷媒の成分の割合が変わるもののR410A冷媒と同様にR125とR32の混合冷媒であることに変わりがなく、R410A冷媒に対してR125とR32以外の第2冷媒を補充する場合に比べて既設の冷凍サイクル装置の熱源ユニット以外の部分が冷媒に適合するので、冷凍サイクル装置の動作を正常に保ち易くなる。
【0009】
第3観点の冷媒充填方法は、第1観点の冷媒充填方法であって、第1冷媒がR410AB冷媒であり、第2冷媒がR452B冷媒である。
【0010】
第3観点の冷媒充填方法では、第1冷媒がR410A冷媒であり、第2冷媒がR452B冷媒であることから、R410A冷媒で動作していた既設の冷凍サイクル装置の熱源ユニット以外の部分がR410A冷媒に対応している。従って、R410A冷媒の代替冷媒であるR452B冷媒を補っても回収冷媒と第2冷媒の混合冷媒の成分の割合が変わるもののR410A冷媒と同様にジフルオロメタンとペンタフルオロエタンとを含む混合冷媒であることに変わりがなく、R410Aに対してジフルオロメタンとペンタフルオロエタンとを含まない第2冷媒を補充する場合に比べて既設の冷凍サイクル装置の熱源ユニット以外の部分が冷媒に適合するので、冷凍サイクル装置の動作を正常に保ち易くなる。
【0011】
第4観点の冷媒充填方法は、第1観点の冷媒充填方法であって、第1冷媒がR410A冷媒であり、第2冷媒がR454B冷媒である。
【0012】
第4観点の冷媒充填方法では、第1冷媒がR410A冷媒であり、第2冷媒がR454B冷媒であることから、R410A冷媒で動作していた既設の冷凍サイクル装置の熱源ユニット以外の部分がR410A冷媒に対応している。従って、R410A冷媒の代替冷媒であるR454B冷媒を補っても回収冷媒と第2冷媒の混合冷媒の成分の割合が変わるもののR410A冷媒と同様にジフルオロメタンとペンタフルオロエタンとを含む混合冷媒であることに変わりがなく、R410Aに対してジフルオロメタンとペンタフルオロエタンとを含まない第2冷媒を補充する場合に比べて既設の冷凍サイクル装置の熱源ユニット以外の部分が冷媒に適合するので、冷凍サイクル装置の動作を正常に保ち易くなる。
【0013】
第5観点の冷媒充填方法は、第1観点から第4観点のいずれかの冷媒充填方法であって、第2熱源ユニットに窒素ガスを詰めた後に、窒素ガスを第2熱源ユニットの中に詰めた状態で第2熱源ユニットを既設の冷凍サイクル装置の設置場所まで移送するステップをさらに備える。
【0014】
第5観点の冷媒充填方法では、設置場所まで運送する第2熱源ユニットに窒素ガスが詰められていることから、運送中に第2熱源ユニットに外気が入り込むのを窒素ガスが邪魔するので、運送中に外気に混じって異物、水分などが第2熱源ユニットに入り込むのを抑制することができる。
【0015】
第6観点の冷媒充填方法は、第1観点から第4観点のいずれかの冷媒充填方法であって、第2熱源ユニットに所定圧力範囲のR32を詰めた後に、R32を第2熱源ユニットの中に詰めた状態で第2熱源ユニットを既設の冷凍サイクル装置の設置場所まで移送するステップをさらに備える。
【0016】
第6観点の冷媒充填方法では、設置場所まで運送する第2熱源ユニットにR32冷媒が詰められていることから、運送中に熱源ユニットに外気が入り込むのをR32冷媒が邪魔するので、運送中に外気に混じって異物、水分などが第2熱源ユニットに入り込むのを抑制することができる。また、第2熱源ユニットを既設の冷凍サイクル装置に接続するときにR32冷媒を抜き取らなくて済むので充填作業時の手間が省ける。
【0017】
第7観点の冷媒充填方法は、第1観点から第6観点のいずれかの冷媒充填方法であって、第2熱源ユニットを備える冷凍サイクル装置への充填で回収冷媒と第2冷媒とが混合されて混合冷媒となった場合に、混合冷媒が不燃性か否かの判断及び/または混合冷媒が可燃性か否かの判断を行うステップをさらに備える。
【0018】
第7観点の冷媒充填方法では、回収冷媒と第2冷媒とが混合された混合冷媒が不燃性であること及び/または可燃性であることが判断される。第2熱源ユニットを備える冷凍サイクル装置が不燃性の冷媒にしか対応していない場合、あるいは可燃性の冷媒に対応していない場合には、混合冷媒を冷凍サイクル装置に利用しない選択をしたり、冷凍サイクル装置を例えば可燃性の冷媒に対応するように改修したりする対策を講じることができ、冷凍サイクル装置の動作を正常に保つことができる。
【0019】
第8観点の冷媒充填方法は、第1観点から第7観点のいずれかの冷媒充填方法であって、第2熱源ユニットに充填された回収冷媒と第2冷媒の混合割合を第2熱源ユニットに記憶させる及び/または混合割合を第2熱源ユニットに表示するステップを備える。
【0020】
第8観点の冷媒充填方法では、記憶及び/または表示される混合割合から第2熱源ユニットの冷媒の組成を正確に把握できるので、把握した冷媒の組成に基づいて冷凍サイクル装置を正常に動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態に係る冷凍サイクル装置の構成の概要を示す冷媒回路図。
【
図2】第1熱源ユニットから第2熱源ユニットへの冷媒の移送を説明するための模式図。
【
図3】第1熱源ユニットから第2熱源ユニットに移送される冷媒の重量の測定を説明するための模式図。
【
図4】冷媒充填方法のフローの概要を示すフローチャート。
【
図5】変形例1Fにおける冷媒の重量の測定を説明するための模式図。
【
図6】変形例1Fにおける冷媒の重量の測定を説明するための模式図。
【
図7】変形例1Gにおける冷媒の重量の測定を説明するための模式図。
【
図8】変形例1Hにおける冷媒の重量の測定を説明するための模式図。
【
図9】冷凍サイクル装置の制御系統の概要を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(1)全体構成
図1には、冷媒充填方法の対象となる冷凍サイクル装置の構成の一例が示されている。
図1に示されている冷凍サイクル装置1は、冷媒回路100を循環する冷媒によって冷凍サイクルを行う装置である。冷凍サイクル装置1は、冷媒の圧縮と、冷媒からの放熱と、冷媒の減圧膨張と、冷媒への吸熱のサイクルを繰り返す。冷凍サイクル装置1は、冷凍サイクルにおける放熱の機能を有するかまたは吸熱の機能を有するかを切り換えることができる第1熱源ユニット10A若しくは第2熱源ユニット10Bと、第1熱源ユニット10A若しくは第2熱源ユニット10Bに接続されている利用ユニット50とを備えている。ここで、第1熱源ユニット10Aが更新前の熱源ユニットであり、第2熱源ユニット10Bが更新後の熱源ユニットである。
【0023】
ここでは、更新後の冷凍サイクル装置1が第2熱源ユニット10Bを備える場合を例に挙げて説明する。しかし、既設の冷凍サイクル装置1の第1熱源ユニット10Aから回収した冷媒を第2熱源ユニット10Bに充填する場合は、このような冷凍サイクル装置1の更新の場合に限られない。例えば、第2熱源ユニット10Bが、冷凍サイクル装置1が設置されているビルに隣接するビルの他の冷凍サイクル装置に備えられているものであってもよい。回収して充填する冷媒は、第1熱源ユニット10Aから回収した冷媒を意味する。
【0024】
利用ユニット50は、第1熱源ユニット10Aまたは第2熱源ユニット10Bが冷媒から放熱させる熱源となっている場合には、冷媒が吸熱することを利用して対象の冷却を行う。また、利用ユニット50は、第1熱源ユニット10Aまたは第2熱源ユニット10Bが冷媒に吸熱させる熱源となっている場合には、冷媒が放熱することを利用して対象の加熱を行う。
【0025】
冷凍サイクル装置1は、冷暖房を行う空気調和装置に適用することができ、その場合には例えば第1熱源ユニット10Aまたは第2熱源ユニット10Bが空気調和装置の室外機になり、利用ユニット50が空気調和装置の室内機になる。室内機である利用ユニット50は、空調対象空間の空気を冷却し、または加熱して、冷房または暖房を行う。なお、ここでは、冷凍サイクル装置1が空気調和装置に適用される場合を例に挙げて説明するが、冷凍サイクル装置は、他の装置にも適用でき、例えば、ヒートポンプ給湯器、冷蔵庫、及び庫内を冷却する冷却装置に適用することができる。
【0026】
図2及び
図3には、冷凍サイクル装置1が空気調和装置である場合について、冷凍サイクル装置1が建物200に設置されている例が示されている。
図2に示されている例では、第1熱源ユニット10Aまたは第2熱源ユニット10Bが建物200の屋上に設置されている。複数の利用ユニット50は、
図2に示されているように、建物200の中の各部屋の空調を行うために、各部屋に設置されている。
【0027】
図2及び
図3には、既設の冷凍サイクル装置1に含まれている更新前の第1熱源ユニット10Aと、更新後に冷凍サイクル装置1に含まれる予定の第2熱源ユニット10Bが示されている。言い換えると、第1熱源ユニット10Aが旧熱源ユニットであり、第2熱源ユニット10Bが新熱源ユニットである。既設の冷凍サイクル装置1は、既に建物200に設置されており、更新前に冷媒を循環させて冷凍サイクルを行った実績がある。冷凍サイクル装置1に含まれている第1熱源ユニット10A及び複数の利用ユニット50の中には冷媒が存在している。ここでは、冷媒回路100の中を循環させる目的で、冷凍サイクル装置1が内部に有している冷媒を循環冷媒という。
【0028】
以下に説明する、上述のような冷凍サイクル装置1への冷媒充填方法は、
図4のフローチャートに記載されているように、既設の冷凍サイクル装置1から第1冷媒を回収して回収冷媒を得るステップS3と、第2熱源ユニット10Bを備える更新後の冷凍サイクル装置1に対して回収冷媒を充填するとともに回収冷媒とは組成が異なる第2冷媒を充填するステップS5とを含むように構成されている。
【0029】
以下の実施形態の説明では、第1冷媒がR410A冷媒、第2冷媒がR32冷媒である場合を例に挙げて説明する。第1冷媒がR410A冷媒であってジフルオロメタンとペンタフルオロエタンの混合冷媒であり、回収冷媒もR410A冷媒と同様に混合冷媒となっている。
【0030】
既設の冷凍サイクル装置1において、R410A冷媒を長期間使用していると、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンの混合割合が時間の経過とともに変化する場合がある。ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンの混合割合の変化の範囲については実験またはシミュレーションなどによって、誤差があるものの推定できる。また、第1熱源ユニット10Aが組み込まれた既設の冷凍サイクル装置1は、循環冷媒に占めるジフルオロメタンとペンタフルオロエタンの混合割合が、当初のR410A冷媒から変化しても動作が可能な許容範囲を有している。同様に、第2熱源ユニット10Bを備える更新後の冷凍サイクル装置1も、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンの混合割合がR410Aと同じ1:1でなくても動作できるように、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンの混合割合について許容範囲を有している。
【0031】
従って、回収冷媒にR32冷媒が追加された後の循環冷媒のジフルオロメタンとペンタフルオロエタンの混合割合が、更新後の冷凍サイクル装置1の許容範囲内であれば、更新後の冷凍サイクル装置1は、正常に動作する。なお、
図3に示されているボンベ85には、追加されるR32冷媒が入っている。
【0032】
図4に示されているように、まず、ポンプダウン運転によって冷凍サイクル装置1の循環冷媒が第1熱源ユニット10Aに移された状態で、第1熱源ユニット10Aが冷凍サイクル装置1から取り外される(ステップS1)。第1熱源ユニット10Aが取り外されるときには、第1熱源ユニット10Aの高圧側閉鎖弁21と低圧側閉鎖弁22が閉じられている。
【0033】
次に、冷凍サイクル装置1に第2熱源ユニット10Bが組み込まれる(ステップS2)。第2熱源ユニット10Bが組み込まれた更新後の冷凍サイクル装置1に対して、例えば、冷凍サイクル装置1の気密が検査され、冷凍サイクル装置1の気密が確認された後に真空ポンプによって冷凍サイクル装置1が真空引きされる。
【0034】
図2には、第1熱源ユニット10Aから第2熱源ユニット10Bに冷媒が移されている状態が模式的に示されている。第2熱源ユニット10Bは、更新後の冷凍サイクル装置1に組み込まれた状態で、電源210に接続されており、運転可能な状態になっている。また、第1熱源ユニット10Aと第2熱源ユニット10Bがチャージホース70で接続されている。第2熱源ユニット10Bを運転することによって、第1冷媒(R410A冷媒)が、チャージホース70を通って第1熱源ユニット10Aから第2熱源ユニット10Bに移される。この第1熱源ユニット10Aから第2熱源ユニット10Bへの冷媒の移送によって回収冷媒が得られる(ステップS3)。このとき、第1熱源ユニット10Aは、例えば建物200の屋上に仮置きされた状態になっていて電源210には接続されていない。
【0035】
図3には、第1熱源ユニット10Aから第2熱源ユニット10Bに回収された回収冷媒の重量を測定している状態が示されている。第1熱源ユニット10Aは、計量器61で重量を計量される。計量器61による第1熱源ユニット10Aから回収された回収冷媒の計量は、第1熱源ユニット10Aから回収冷媒が移される前と、第1熱源ユニット10Aから回収冷媒が移された後の両方で、第1熱源ユニット10Aの重量を測定することにより行われる。第1熱源ユニット10Aから回収冷媒が移された後の第1熱源ユニット10Aについての計量器61の計量値から、第1熱源ユニット10Aから回収冷媒が移される前の第1熱源ユニット10Aについての計量器61の計量値を差し引くことで、回収冷媒の重量を算出することができる(ステップS4)。
【0036】
回収冷媒が移送された第2熱源ユニット10Bが冷凍サイクル装置1に組み込まれることによって冷凍サイクル装置1への回収冷媒の移送が完了する。そして、回収冷媒が移送された冷凍サイクル装置1に、第2冷媒が充填される(ステップS5)。第2熱源ユニット10Bが組み込まれた更新後の冷凍サイクル装置1にとって適正な冷媒の総重量は、第1熱源ユニット10Aが組み込まれた既設の冷凍サイクル装置1のデータを用いて、予め計算することができる。ステップS4で測定システム60により測定された回収冷媒の重量を、更新後の冷凍サイクル装置1にとっての適正な冷媒の総重量から差し引くことで、不足する冷媒の重量を得ることができ、第2冷媒であるR32冷媒の充填量を決めることができる。なお、更新後の冷凍サイクル装置1にとっての適正な冷媒の総重量が所定範囲で設定されている場合には、例えば所定範囲の中央値を使って計算すればよい。
【0037】
上述のステップS1からステップS5の冷媒充填作業は、例えば、現地で行われる。ここで、ステップS1からステップS5の冷媒充填作業が現地で行われるとは、回収冷媒を工場などの施設に持ち帰らずに、回収冷媒をそのまま、または冷凍サイクル装置1の設置場所で処理して更新後の冷凍サイクル装置1に再充填することである。上述の場合には、ステップS1からステップS5までの作業が、例えば建物200の屋上で行われる。なお、ステップS1からステップS5の冷媒充填作業は、現地で行う場合には、1日以内に行われることが好ましく、1日のうちでも日中に行われることがさらに好ましい。環境変化が小さく、作業対象の視認が容易になり、冷媒漏洩及び冷凍サイクル装置1への異物の混入を防止し易くなるからである。なお、
図4に示されているステップS6の作業は、後ほど制御系統40(
図9参照)の説明をした後に詳しく説明する。
【0038】
(2)詳細構成
(2-1)冷凍サイクル装置1の構成
図1に示されている冷凍サイクル装置1は、1台の第1熱源ユニット10Aまたは第2熱源ユニット10Bと複数台の利用ユニット50が冷媒連絡配管81,82によって接続されている。冷凍サイクル装置1においては、第1熱源ユニット10Aまたは第2熱源ユニット10Bの中の熱源側回路110と、利用ユニット50の中の利用側回路120とが接続されて冷媒回路100が構成されている。この冷凍サイクル装置1においては、この冷媒回路100の中を冷媒が循環することにより、蒸気圧縮式の冷凍サイクルが繰り返される。ここでは、冷凍サイクル装置1が空気調和装置に適用されている例を説明する。
【0039】
(2-1-1)第1熱源ユニット10A、第2熱源ユニット10B
ここでは、説明を簡素化するために、更新前の第1熱源ユニット10Aと更新後の第2熱源ユニット10Bとが同じ構成である場合について説明するが、これらの構成が同じでなくても本開示に係る技術を適用することは可能である。第1熱源ユニット10Aも第2熱源ユニット10Bも、例えば、
図1に示されているように、圧縮機11と、油分離器12と、四方弁13と、熱源側熱交換器14と、過冷却熱交換器15と、アキュムレータ16と、冷媒調整器18と、油調整器19と、熱源側ファン20と、高圧側閉鎖弁21と、低圧側閉鎖弁22と、チャージポート23と、第1膨張弁25a~第3膨張弁25cと、第1電磁弁26a~第6電磁弁26fと、第1逆止弁27a~第4逆止弁27dと、第1圧力調整弁28a~第3圧力調整弁28cと、キャピラリーチューブ29と、複数のフィルタ30と、ストレーナ31とを備えている。
【0040】
熱源側熱交換器14は、例えばフィンアンドチューブ式の熱交換器であって空気と冷媒との間で熱交換を行う。過冷却熱交換器15には、例えばプレート式熱交換器を用いることができる。第1電磁弁26a~第6電磁弁26fは、流路の開閉機能を有する。第1圧力調整弁28a~第3圧力調整弁28cは、上流側の冷媒の圧力を予め定められた所定の絶対圧力に保つ機能を有する。第1圧力調整弁28a~第3圧力調整弁28cに付された矢印の先が第1圧力調整弁28a~第3圧力調整弁28cの下流側を示している。フィルタ30は、通過する冷媒から異物を取り除く機能を有する。ストレーナ31は、冷媒から固形成分を取り除く機能を有する。
【0041】
圧縮機11の吐出側は、油分離器12と第1逆止弁27aを介して、四方弁13の第1ポートに接続されている。圧縮機11から吐出される冷媒は、油分離器12で油を分離されて、四方弁13の第1ポートに向って流れる。四方弁13の第2ポートが熱源側熱交換器14の一方出入口に接続され、四方弁13の第3ポートがアキュムレータ16の入口に接続され、四方弁13の第4ポートが低圧側閉鎖弁22に接続されている。四方弁13において、冷房運転時には実線で示されているように、第1ポートと第2ポートが連通するとともに第3ポートと第4ポートが連通し、暖房運転時には破線で示されているように、第1ポートと第4ポートが連通するとともに第2ポートと第3ポートが連通する。
【0042】
熱源側熱交換器14の他方出入口は、第1膨張弁25aの一端に接続され、第1膨張弁25aを介して高圧側閉鎖弁21に接続されている。第1膨張弁25aの他端と高圧側閉鎖弁21との間に過冷却熱交換器15が設置されている。第1膨張弁25aは、熱源側熱交換器14の液側に設けられており、通過する冷媒の減圧程度を調節することができる。過冷却熱交換器15と、過冷却回路32aと、第2膨張弁25bとが過冷却部32を構成している。過冷却回路32aは、第1膨張弁25aの他端から高圧側閉鎖弁21に向けて延びる部分の分岐点P1から分岐し、過冷却熱交換器15を通って、四方弁13とアキュムレータ16との間の合流点P2に接続する。分岐点P1と過冷却熱交換器15の間に設けられている第2膨張弁25bは、過冷却回路32aを通過する冷媒の減圧程度を調節することができる。過冷却熱交換器15は、分岐点P1と高圧側閉鎖弁21との間を流れる冷媒と、過冷却回路32aにおいて分岐点P1から合流点P2に向って流れる冷媒との間で熱交換を行わせる。
【0043】
過冷却回路32aにおいて、過冷却熱交換器15から合流点P2に向って順に、分岐点P3、第1電磁弁26a、合流点P4、第2逆止弁27bが設けられている。分岐点P1と合流点P4とは第1圧力調整弁28aを介して接続され、分岐点P1から合流点P4に向って冷媒が流れる。分岐点P3は、圧縮機11のインジェクションポートに接続されている。従って、第2膨張弁25bで減圧された中間圧の冷媒が、過冷却熱交換器15から出て第1電磁弁26aの上流で分岐されて、圧縮機11のインジェクションポートに流入する。
【0044】
アキュムレータ16の一方の出口は、ガス冷媒を圧縮機11の吸入側に戻すために圧縮機11の吸入側に直接接続され、アキュムレータ16の他方の出口は、油戻しのためにフィルタ30と第2電磁弁26bとを介して圧縮機11の吸入側に接続されている。また、圧縮機11の吸入側と油分離器12との間には、分離された油を圧縮機11に戻すために、フィルタ30と第3電磁弁26cとキャピラリーチューブ29とを通過する経路が形成されている。
【0045】
圧縮機11の吸入側には、第3膨張弁25cを介して、冷媒調整器18の一方出入口が接続されている。冷媒調整器18は、冷媒回路100を流れる冷媒量を調整する機器である。冷媒調整器18の他方出入口は、第2圧力調整弁28bを介して合流点P2に接続されている。また、冷媒調整器18の他方出入口には、第4電磁弁26dと第3逆止弁27cを介して第1逆止弁27aの流出側が接続されている。冷媒調整器18は、冷媒回路100に流れる冷媒の量を一定に保つ機能を有する。
【0046】
また、圧縮機11の吸入側には、第6電磁弁26fを介して油調整器19の一方出入口が接続されている。油調整器19の他方出入口は、第3圧力調整弁28cを介して合流点P2に接続されている。また、油調整器19の他方出入口には、第5電磁弁26eと第4逆止弁27dを介して第1逆止弁27aの流出側が接続されている。油調整器19は、冷媒回路100に供給される油量を一定に保つ機能を有する。
【0047】
熱源側熱交換器14には、熱源側ファン20が配置されている。熱源側ファン20は、熱交換を促進するための気流を熱源側熱交換器14に発生させる。
【0048】
フィルタ30は、油分離器12と第1逆止弁27aとの間、熱源側熱交換器14と第1膨張弁25aとの間、過冷却熱交換器15と高圧側閉鎖弁21との間、四方弁13の第4ポートと低圧側閉鎖弁22との間、アキュムレータ16の他方出口と第2電磁弁26bとの間、油分離器12と第3電磁弁26cとの間、第3膨張弁25cと冷媒調整器18の間及び油調整器19と第6電磁弁26fとの間に設けられている。ストレーナ31は、油調整器19と第3圧力調整弁28の間に設けられている。チャージポート23は、フィルタ30と第3膨張弁25cとの間に設けられている。
【0049】
(2-1-2)利用ユニット50
各利用ユニット50は、例えば、
図1に示されているように、利用側熱交換器51と、利用側膨張弁52と、利用側ファン53とを備えている。利用側熱交換器51は、例えばフィンアンドチューブ式の熱交換器であって空気と冷媒との間で熱交換を行わせる。液側の冷媒連絡配管81とガス側の冷媒連絡配管82の間に、利用側膨張弁52と利用側熱交換器51が直列接続されている。利用側膨張弁52と利用側熱交換器51は、液側の冷媒連絡配管81からガス側の冷媒連絡配管82に向って、利用側膨張弁52、利用側熱交換器51の順に配置されている。各利用側熱交換器51には、利用側ファン53が配置されている。利用側ファン53は、熱交換を促進するための気流を利用側熱交換器51に発生させる。液側の冷媒連絡配管81とガス側の冷媒連絡配管82の間に並列に接続されている複数の利用ユニット50により、利用側回路120が構成されている。
【0050】
(2-1-3)制御系統
図9に示されているように、冷凍サイクル装置1の制御系統40は、熱源側コントローラ41と利用側コントローラ42とを備えて構成されている。熱源側コントローラ41は、第1熱源ユニット10A及び第2熱源ユニット10Bに備えられている。ここでは、利用ユニット50が複数あるために利用側コントローラ42が複数設けられている場合を説明しているが、利用ユニット50が1台であれば利用側コントローラ42も1つあればよい。また、熱源側コントローラ41と利用側コントローラ42のように分離せずに、1つのコントローラにまとめてもよい。
【0051】
熱源側コントローラ41は、判断部43と制御部44とを含んでいる。熱源側コントローラ41は、圧縮機11と、四方弁13と、熱源側ファン20と、第1膨張弁25a~第3膨張弁25cと、第1電磁弁26a~第6電磁弁26fとを制御し、冷凍サイクルに関する制御を行う。また、利用側コントローラ42は、利用側膨張弁52と、利用側ファン53を制御し、冷凍サイクルに関する制御を行う。なお、熱源側コントローラ41及び利用側コントローラ42は、複数の温度センサ及び複数の圧力センサなどを備えているが、ここではセンサの記載を省略している。
【0052】
この第2熱源ユニット10Bは、第2熱源ユニット10Bに充填された回収冷媒と第2冷媒の混合割合を第2熱源ユニット10Bに記憶し及び混合割合を表示するように構成されている。第2熱源ユニット10Bは、熱源側コントローラ41に接続されている入力装置46及び表示装置47を含んでいる。また、第2熱源ユニット10Bの熱源側コントローラ41は、メモリ45を有している。
【0053】
上記実施形態では、熱源側コントローラ41及び利用側コントローラ42は、メモリ45に格納された実行可能なプログラム及びデータをCPU(図示せず)よって解釈実行することで制御を行うように構成できる。このプログラム及びデータは、記録媒体を介してメモリ45内に導入されてもよいし、記録媒体上から直接実行されてもよい。また、記録媒体からメモリ45へのプログラム及びデータの導入は、電話回線や搬送路等を介して行ってもよい。また、熱源側コントローラ41及び利用側コントローラ42は、CPUとメモリ45を用いて行うのと同様の制御を行うことができる集積回路(IC)を用いて構成されてもよい。ここでいうICには、LSI(large-scale integrated circuit)、ASIC(application-specific integrated circuit)、ゲートアレイ、FPGA(field programmable gate array)等が含まれる。 例えば、第2熱源ユニット10Bに冷媒を充填した作業者は、入力装置46を使って、第2熱源ユニット10Bに充填された回収冷媒と第2冷媒の混合割合をメモリ45に記憶させる(
図4に示されているステップS6)。メモリ45に記憶されている混合割合の情報が必要なときには、作業者は、入力装置46を使って、メモリ45から混合割合の情報を読み出して混合割合の情報を表示装置47に表示させる。
【0054】
ここでは、第2熱源ユニット10Bが混合割合の情報を記憶するメモリ45と表示する表示装置47とを備える場合について説明している。しかし、第2熱源ユニット10Bは、メモリ45と表示装置47のいずれか一方を備えるように構成されてもよい。例えば、メモリ45に記憶されている情報を携帯端末の表示画面などに表示できるように構成して、表示装置47を省いてもよい。また、例えば、第2熱源ユニット10B以外の場所(クラウドコンピュータまたはサーバなどの外部の記憶装置)に記憶されている情報を取得する通信機能を第2熱源ユニット10Bが備え、取得した混合割合の情報を表示装置47に表示するように構成してもよい。
【0055】
(2-1-4)冷房運転
冷凍サイクル装置1は、冷房運転では、四方弁13を実線の状態、言い換えると第1ポートと第2ポートが連通するとともに第3ポートと第4ポートが連通する状態にする。冷房運転で行われる冷凍サイクルでは、熱源側熱交換器14が放熱器として機能し、利用側熱交換器51が蒸発器として機能する。圧縮機11から吐出された冷媒は、熱源側熱交換器14、利用側膨張弁52、利用側熱交換器51を順に循環して、圧縮、凝縮、膨張、蒸発の蒸気圧縮式の冷凍サイクルを繰り返す。
【0056】
冷凍サイクル装置1は、圧縮機11の運転周波数を利用側熱交換器51における蒸発圧力または蒸発温度が目標圧力または目標蒸発温度となるように制御するとともに、利用側膨張弁52の各弁開度を利用側熱交換器51のガス側を流れる冷媒の過熱度が目標過熱度となるように制御する。冷房運転において、第1膨張弁25aは全開状態とされる。冷凍サイクル装置1は、過冷却熱交換器15を出た冷媒の過熱度が目標過熱度となるように第2膨張弁25bの開度を調節する。また、冷凍サイクル装置1は、所定条件を満たすときに、過冷却回路32aを流れる冷媒を分岐点P1と高圧側閉鎖弁21との間を流れる冷媒と過冷却熱交換器15において熱交換させて中間圧のガス冷媒とし、インジェクションポートから圧縮機11の圧縮機構の圧縮途中の圧縮室に供給する。中間圧のガス冷媒を供給された圧縮機11は、ガス冷媒を注入されない場合に比べて吐出温度を下げることができる。
【0057】
(2-1-5)暖房運転
冷凍サイクル装置1は、暖房運転では、四方弁13の破線の状態、言い換えると第1ポートと第4ポートが連通するとともに第2ポートと第3ポートが連通する状態にする。暖房運転で行われる冷凍サイクルでは、熱源側熱交換器14が蒸発器として機能し、利用側熱交換器51が放熱器として機能する。圧縮機11から吐出された冷媒は、利用側熱交換器51、第1膨張弁25a、熱源側熱交換器14を順に循環して、圧縮、凝縮、膨張、蒸発の蒸気圧縮式の冷凍サイクルを繰り返す。
【0058】
暖房運転において、第2膨張弁25bは全閉状態とされる。冷凍サイクル装置1は、圧縮機11の運転周波数を利用側熱交換器51における凝縮温度が目標凝縮温度となるように制御するとともに、利用側膨張弁52の弁開度を利用側熱交換器51の液側を流れる冷媒の過冷却度が目標過冷却度となるように制御する。冷凍サイクル装置1は、第1膨張弁25aの弁開度を、熱源側熱交換器14のガス側を流れる冷媒の過熱度が目標過熱度になるように制御する。
【0059】
(2-2)測定システム60
測定システム60は、
図3に示されている計量器61を含んでいる。計量器61としては、例えば、台秤、吊り秤がある。計量器61は、第1熱源ユニット10Aまたは第2熱源ユニット10Bの重量を量れる機能を有するとともに、冷媒の重量を検出するための十分な分解能を有している。
【0060】
(2-3)冷媒の移送
第1熱源ユニット10Aから第2熱源ユニット10Bへの冷媒の移送では、例えば、第1熱源ユニット10Aが冷凍サイクル装置1に組み込まれていて可動可能な状態で、ポンプダウン運転によって、利用側回路120の冷媒を第1熱源ユニット10Aの熱源側回路110に移送する。その後、第1熱源ユニット10Aの高圧側閉鎖弁21と低圧側閉鎖弁22を閉じる。そして、ポンプダウン運転後に、第1熱源ユニット10Aの高圧側閉鎖弁21と低圧側閉鎖弁22を閉じて第1熱源ユニット10Aを取り外して仮置きの状態にする。ポンプダウン運転では、例えば、高圧側閉鎖弁21を閉じて、第1熱源ユニット10Aを冷房運転する。高圧側閉鎖弁21を閉じて、第1熱源ユニット10Aの熱源側熱交換器14を凝縮器して機能させる運転を行う。低圧側閉鎖弁22の圧力が十分に低くなったら、低圧側閉鎖弁22を閉じる。
【0061】
次に、第1熱源ユニット10Aを冷凍サイクル装置1から取り外し、第2熱源ユニット10Bを冷凍サイクル装置1に組み込む。その後、
図2に示されているように、第1熱源ユニット10Aの高圧側閉鎖弁21のサービスポートと第2熱源ユニット10Bのチャージポート23とをチャージホース70で接続する。冷媒の移送手段は、チャージホース70を含んでいる。第2熱源ユニット10Bを運転して圧縮機11を駆動し、第1熱源ユニット10Aの高圧側閉鎖弁21のサービスポートから第2熱源ユニット10Bのチャージポート23へ冷媒を移送する。第2熱源ユニット10Bを運転して圧縮機11を駆動するときには、第3膨張弁25cを閉じ、冷房運転を行い、冷媒調整器18からアキュムレータ16を通して圧縮機11に吸入される経路で回収冷媒を吸入する。チャージポート23及び高圧側閉鎖弁21のサービスポートからチャージホース70を取り外すことで、チャージポート23及び高圧側閉鎖弁21のサービスポートが閉じられる。
【0062】
(3)変形例
(3-1)変形例1A
上記実施形態では、冷凍サイクル装置1の第1熱源ユニット10Aも第2熱源ユニット10Bも、冷凍サイクルの放熱と吸熱とを切り換えられるように構成されている場合について説明したが、冷凍サイクル装置1は、このような構成には限られない。冷凍サイクル装置1は、例えば、第1熱源ユニット10Aまたは第2熱源ユニット10Bが冷媒から放熱させる熱源として機能する専用機であるとともに利用ユニット50が冷媒へ吸熱させる装置として機能する専用機であってもよい。この場合、冷凍サイクル装置1が空気調和装置であれば冷房専用機になる。また、冷凍サイクル装置1は、例えば、第1熱源ユニット10Aまたは第2熱源ユニット10Bが冷媒へ吸熱させる熱源として機能する専用機であるとともに利用ユニット50が冷媒から放熱させる装置として機能する専用機であってもよい。この場合、冷凍サイクル装置1が空気調和装置であれば暖房専用機になる。
【0063】
(3-2)変形例1B
なお、ステップS3の冷媒を移す操作の次にステップS4の測定の操作を行ってもよいが、ステップS4の次にステップS3の操作を行ってもよく、あるいはステップS3とステップS4の操作を並行して行ってもよく、ステップS3とステップS4の操作を行う順序は
図3に示された順には限られない。
【0064】
(3-3)変形例1C
上記実施形態では、第1冷媒がR410A冷媒、第2冷媒がR32冷媒である場合について説明したが、冷凍サイクル装置1で使用できる第1冷媒と第2冷媒の組合せはこれだけには限られない。例えば、第1冷媒がR410A冷媒、第2冷媒がR452B冷媒であってもよい。また、第1冷媒がR410A冷媒、第2冷媒がR454B冷媒であってもよい。また、第1冷媒がR32冷媒、第2冷媒がR410A冷媒であってもよい。第1冷媒がR32冷媒で且つ第2冷媒がR410A冷媒である場合には、R32冷媒単体の場合に比べて燃え難くなる。R32冷媒の割合に比べてR410A冷媒の割合が多くなるほど微燃性から不燃性に変化する。さらにはHFC冷媒以外の冷媒の組合せであってもよい。
【0065】
(3-4)変形例1D
上記実施形態では、冷凍サイクル装置1が利用ユニット50を複数備えるマルチ型の冷凍サイクル装置1について説明した。しかし、本開示の技術が適用できる冷凍サイクル装置はマルチ型の冷凍サイクル装置には限られない。例えば、1台の熱源ユニットに1台の利用ユニットが接続されるペア型の冷凍サイクル装置に対しても、本開示の技術を適用することができる。
【0066】
また、冷凍サイクル装置に接続される熱源ユニットは、1台には限られず、複数台の熱源ユニットが接続されてもよい。例えば、2台の第1熱源ユニットを冷凍サイクル装置が含んでいるときには、2台の第1熱源ユニットと交換される2台の第2熱源ユニットに回収冷媒を移送して、移送後の2台の第2熱源ユニットの重量を測定システム60で測定することにより回収冷媒の重量を検出すればよい。
【0067】
(3-5)変形例1E
上記実施形態では、第1熱源ユニット10Aの圧縮機11を冷媒の移送の動力源に用いる場合について説明した。しかし、冷媒の移送の動力源は、第1熱源ユニット10Aの圧縮機11には限られない。冷媒の移送には、例えば、内部に圧縮機を有する冷媒回収装置を用いてもよい。
【0068】
(3-6)変形例1F
上記実施形態では、第1熱源ユニット10Aから第2熱源ユニット10Bに冷媒を直接移送する場合について説明したが、
図5に示されているように、一旦、第1熱源ユニット10Aから回収ボンベ80に冷媒を移送し、その後回収ボンベ80から第2熱源ユニット10Bに冷媒を移送してもよい。この場合、計量器61により回収冷媒が回収ボンベ80の中に回収される前の回収ボンベ80の重量と、回収ボンベ80の中に回収冷媒が回収された後の回収ボンベ80の重量を測定し、回収前後の回収ボンベ80の重量の差から回収冷媒の重量を測定するように構成してもよい。
【0069】
このように回収ボンベ80を使用する場合、例えば、第1熱源ユニット10Aが、電源210に接続されていて運転可能であれば、ポンプダウン運転によって、利用側回路120の冷媒を第1熱源ユニット10Aの熱源側回路110に移送する。そして、第1熱源ユニット10Aの高圧側閉鎖弁21のサービスポートと回収ボンベ80とをチャージホース70で接続する。高圧側閉鎖弁21のサービスポートと回収ボンベ80にチャージホース70が取り付けられることで、第1熱源ユニット10Aの熱源側回路110と回収ボンベ80の間が連通する。その後、第1熱源ユニット10Aを運転して圧縮機11を駆動し、第1熱源ユニット10Aの高圧側閉鎖弁21のサービスポートから回収ボンベ80へ冷媒を移送する。回収ボンベ80を閉じて高圧側閉鎖弁21のサービスポート及び回収ボンベ80からチャージホース70を取り外すことで、高圧側閉鎖弁21のサービスポートが閉じられる。
【0070】
第2熱源ユニット10Bが組み込まれた後の冷凍サイクル装置1に対して、例えば、冷凍サイクル装置1の気密が検査され、冷凍サイクル装置1の気密が確認された後に真空ポンプによって冷凍サイクル装置1が真空引きされる。冷凍サイクル装置1に組み込まれた第2熱源ユニット10Bに回収ボンベ80から回収冷媒を移送するときには、
図6に示されているように、回収ボンベ80と第2熱源ユニット10Bのチャージポート23とをチャージホース70で接続する。チャージポート23と回収ボンベ80にチャージホース70が取り付けられることで、第2熱源ユニット10Bの熱源側回路110と回収ボンベ80の間が連通する。その後、第2熱源ユニット10Bを運転して圧縮機11を駆動し、回収ボンベ80から第2熱源ユニット10Bのチャージポート23へ冷媒を移送する。回収ボンベ80を閉じてチャージポート23及び回収ボンベ80からチャージホース70を取り外すことで、チャージポート23が閉じられる。
【0071】
また、計量器61により回収ボンベ80の中に回収冷媒が回収された後の回収ボンベ80の重量と、回収ボンベ80から第2熱源ユニット10Bに回収冷媒が移送された後の回収ボンベ80の重量とを測定し、移送前後の回収ボンベ80の重量の差から回収冷媒の重量を測定するように構成してもよい。
【0072】
(3-7)変形例1G
上記実施形態では、第2熱源ユニット10Bに冷媒が移送される前後の第1熱源ユニット10Aの重量を計量する場合について説明したが、
図7に示されているように、第2熱源ユニット10Bに冷媒が移送される前後の第2熱源ユニット10Bの重量を計量してもよい。第2熱源ユニット10Bは、計量器61で重量を計量される。計量器61による第2熱源ユニット10Bに移送された回収冷媒の計量は、第2熱源ユニット10Bに回収冷媒が移される前と、第2熱源ユニット10Bに回収冷媒が移された後の両方で、第2熱源ユニット10Bの重量を測定することにより行われる。第2熱源ユニット10Bに回収冷媒が移された後の第2熱源ユニット10Bについての計量器61の計量値から、第2熱源ユニット10Bに回収冷媒が移される前の第2熱源ユニット10Bについての計量器61の計量値を差し引くことで、回収冷媒の重量を算出することができる。
【0073】
第1熱源ユニット10Aから第2熱源ユニット10Bへの冷媒の移送では、例えば、第1熱源ユニット10Aが、電源210に接続されていて運転可能である場合、ポンプダウン運転によって、利用側回路120の冷媒を第1熱源ユニット10Aの熱源側回路110に移送する。例えば、高圧側閉鎖弁21を閉じて、第1熱源ユニット10Aを冷房運転する。高圧側閉鎖弁21を閉じて、第1熱源ユニット10Aの熱源側熱交換器14を凝縮器して機能させる運転を行う。低圧側閉鎖弁22の圧力が十分に低くなったら、低圧側閉鎖弁22を閉じる。そして第1熱源ユニット10Aの高圧側閉鎖弁21のサービスポートと第2熱源ユニット10Bのチャージポート23とをチャージホース70で接続する。チャージポート23及び高圧側閉鎖弁21のサービスポートにチャージホース70が取り付けられることで、第1熱源ユニット10Aの熱源側回路110と第2熱源ユニット10Bの熱源側回路110の間が連通する。その後、第1熱源ユニット10Aを運転して圧縮機11を駆動し、第1熱源ユニット10Aの高圧側閉鎖弁21のサービスポートから第2熱源ユニット10Bのチャージポート23へ冷媒を移送する。チャージポート23及び高圧側閉鎖弁21のサービスポートからチャージホース70を取り外すことで、チャージポート23及び高圧側閉鎖弁21のサービスポートが閉じられる。第2熱源ユニット10Bの中には回収冷媒が移されているので、第2熱源ユニット10Bが冷凍サイクル装置1に組み込まれることで、第2熱源ユニット10Bの中の回収冷媒が冷凍サイクル装置1に充填される。
【0074】
なお、第2熱源ユニット10Bに予め少量の冷媒を予めチャージしておいてもよい。その場合に、回収冷媒の重量と、予めチャージされた冷媒の重量と、必要に応じて追加冷媒の重量を加えた重量の合計が、更新後の冷凍サイクル装置1にとって適正な冷媒の総重量となるように調整すればよい。
【0075】
(3-8)変形例1H
上記実施形態及び変形例では、計量器61を用いて回収冷媒の重量を測定する場合について説明したが、
図8に示されているように、第1熱源ユニット10Aから第2熱源ユニット10Bに移送される回収冷媒の重量を、質量流量計62を用いて測定してもよい。この場合には、測定システム60に質量流量計62が含まれる。質量流量計62としては、コリオリ式流量計がある。コリオリ式流量計を用いれば、冷媒が気液二相状態で第1熱源ユニット10Aから第2熱源ユニット10Bに移送されても、回収冷媒の質量を測定することができる。なお、本開示では、地球上における重力加速度の差が僅かであることから、質量流量計62の計測値(kg)≒回収冷媒の重量(kgf)として取り扱う。質量流量計62を用いた測定は、第1熱源ユニット10Aを電源210に接続して第1熱源ユニット10Aから第2熱源ユニット10Bに冷媒を移送する場合、第2熱源ユニット10Bを電源210に接続して第1熱源ユニット10Aから第2熱源ユニット10Bに冷媒を移送する場合、あるいは第1熱源ユニット10Aから第2熱源ユニット10Bに回収ボンベ80を介して冷媒を移送する場合の場合でも行うことができる。
【0076】
(3-9)変形例1I
上記実施形態で説明した冷凍サイクル装置1の冷媒充填方法においては、第1熱源ユニット10から冷媒を回収する前に、既設の冷凍サイクル装置1を運転して冷媒回路100の中の冷媒を暖めるステップをさらに備えることが好ましい。
【0077】
(3-10)変形例1J
冷凍サイクル装置1に対する冷媒充填方法においては、上記実施形態のステップS1の前に、第2熱源ユニット10Bを準備するため、第2熱源ユニット10Bに窒素ガスを詰めた後に、窒素ガスを第2熱源ユニット10Bの中に詰めた状態で第2熱源ユニット10Bを既設の冷凍サイクル装置1の設置場所まで、上記実施形態では建物200の屋上まで運送するステップをさらに備えてもよい。
【0078】
ステップS2で、第2熱源ユニット10Bを冷凍サイクル装置1に組み込む際には、第2熱源ユニット10Bから窒素ガスを抜き取る。そして、窒素ガスが抜き取られた第2熱源ユニット10Bを複数の利用ユニット50に接続する。
【0079】
(3-11)変形例1K
冷凍サイクル装置1に対する冷媒充填方法においては、上記実施形態のステップS1の前に、第2熱源ユニット10Bを準備するため、第2熱源ユニット10Bに所定圧力範囲のR32を詰めた後に、R32冷媒を第2熱源ユニット10Bの中に詰めた状態で第2熱源ユニット10Bを既設の冷凍サイクル装置1の設置場所まで、上記実施形態では建物200の屋上まで運送するステップをさらに備えるように構成することができる。
【0080】
ステップS2で、第2熱源ユニット10Bを冷凍サイクル装置1に組み込む際には、複数の利用ユニット50を真空引きした状態で、第2熱源ユニット10BからR32冷媒を抜き取らずに、第2熱源ユニット10Bを複数の利用ユニット50に接続する。
【0081】
なお、上述の所定圧力範囲は、例えば、絶対圧力で、20℃において大気圧以上であり、且つ35℃において1MPa未満の圧力範囲であることが好ましい。
【0082】
(3-12)変形例1L
冷凍サイクル装置1に対する冷媒充填方法においては、更新後の冷凍サイクル装置1への充填で回収冷媒と第2冷媒とが混合されて混合冷媒となった場合に、混合冷媒が不燃性か否かの判断及び/または混合冷媒が可燃性か否かの判断を行うステップをさらに備えるように構成されてもよい。
【0083】
例えば、第1冷媒がR410A冷媒で、第2冷媒がR32冷媒の場合、ペンタフルオロエタンが不燃性であるものの、R32冷媒(ジフルオロメタン)が僅かではあるが燃焼性を有するため、充填された後の混合冷媒に占めるジフルオロメタンの割合が増加すると、混合冷媒が僅かな燃焼性を持つ可能性がある。そこで、予め混合冷媒が不燃性となるジフルオロメタンとペンタフルオロエタンの混合割合を調べておき、不燃性と判断できるジフルオロメタンの混合割合の上限閾値を決定しておく。これにより更新後の空調機が不燃性冷媒を想定した機器の場合、そのまま使用できる。測定された回収冷媒の重量と補充するR32冷媒の重量から混合冷媒に占めるジフルオロメタンの混合割合が上限閾値より小さければ、混合冷媒が不燃性であると判断する。混合冷媒が不燃性と判断できる場合には、R32冷媒だけを補充する。もし、混合冷媒が不燃性と判断できない場合には、例えば、ペンタフルオロエタンなどの他の冷媒を足すなどして混合冷媒が不燃性になるように充填を行う。
【0084】
あるいは、予め可燃性と判断できるジフルオロメタンの混合割合の下限閾値を決定しておく。測定された回収冷媒の重量と補充するR32冷媒の重量から混合冷媒に占めるジフルオロメタンの混合割合が下限閾値より大きければ、混合冷媒が可燃性であると判断する。混合冷媒が可燃性と判断された場合には、例えば、R32冷媒の補充を中止して、代わりにR410冷媒を補充するなどの対応をする。または、混合冷媒が可燃性と判断された場合には、更新後の冷凍サイクル装置1を例えば可燃性の冷媒に対応するように改修する対策を講じてもよい。
【0085】
(3-13)変形例1M
上記実施形態では、第1熱源ユニット10A及び第2熱源ユニット10Bに過冷却熱交換器15が設けられる場合について説明したが、第1熱源ユニット10A及び/または第2熱源ユニット10Bに過冷却熱交換器15が設けられなくてもよい。
【0086】
また、第1熱源ユニット10A及び第2熱源ユニット10Bに油調整器19が設けられる場合について説明したが、第1熱源ユニット10A及び/または第2熱源ユニット10Bに油調整器19が設けられなくてもよい。
【0087】
また、第1熱源ユニット10A及び第2熱源ユニット10Bに冷媒調整器18が設けられる場合について説明したが、第1熱源ユニット10A及び/または第2熱源ユニット10Bに冷媒調整器18が設けられなくてもよい。
【0088】
また、第1熱源ユニット10A及び第2熱源ユニット10Bに油分離器12が設けられる場合について説明したが、第1熱源ユニット10A及び/または第2熱源ユニット10Bに油分離器12が設けられなくてもよい。
【0089】
(3-14)変形例1N
上記実施形態では、メモリ45及び/または表示装置47を用いて、第2熱源ユニット10Bに充填された回収冷媒と第2冷媒の混合割合を第2熱源ユニット10Bに記憶させる及び/または混合割合を第2熱源ユニット10Bに表示するステップについて説明した。これ以外の方法として、混合割合の記録を第2熱源ユニット10Bに残すようにしてもよい。例えば、混合割合を記録用紙に記録して、第2熱源ユニット10Bに記録用紙を保存するようにしてもよい。
【0090】
(4)特徴
(4-1)
上記実施形態の冷凍サイクル装置1に対する冷媒充填においては、更新後の冷凍サイクル装置1に対して、既設の冷凍サイクル装置1から第1冷媒を回収して得た回収冷媒を充填し、さらに第2冷媒を充填することで、第2熱源ユニット10Bの充填作業の効率化が図られている。
【0091】
(4-2)
上記実施形態では、第1冷媒がR410A冷媒であり、第2冷媒がR32冷媒であることから、R410A冷媒で動作していた既設の冷凍サイクル装置1の熱源ユニット以外の部分がR410A冷媒に対応していることから、第2冷媒であるR32冷媒を補ってもジフルオロメタンとペンタフルオロエタンの混合割合が変わるもののR410A冷媒と同様にジフルオロメタンとペンタフルオロエタンの混合冷媒であることに変わりがなく、R410A冷媒に対してR125冷媒とR32冷媒以外の第2冷媒を補充する場合に比べて既設の冷凍サイクル装置1の熱源ユニット以外の部分が冷媒に適合するので、冷凍サイクル装置1の動作を正常に保ち易くなる。
【0092】
(4-3)
上記変形例1Cで説明したように第1冷媒がR410A冷媒であり、第2冷媒がR452B冷媒であってもよい。この場合、R410A冷媒で動作していた既設の冷凍サイクル装置1の熱源ユニット以外の部分がR410A冷媒の代替冷媒であるR452B冷媒に通常対応可能である。第2冷媒であるR452B冷媒を補ってもジフルオロメタンとペンタフルオロエタンと2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペンの混合割合が変わるもののR410A冷媒と同様にフルオロメタンとペンタフルオロエタンとを含む混合冷媒であることに変わりがなく、R410A冷媒に対してジフルオロメタンとペンタフルオロエタンを含まない第2冷媒を補充する場合に比べて既設の冷凍サイクル装置1の熱源ユニット以外の部分が冷媒に適合する。その結果、回収冷媒であるR410A冷媒とは異なるR452B冷媒を充填しても、冷凍サイクル装置1の動作を正常に保ち易い。
【0093】
(4-4)
上記変形例1Cで説明したように第1冷媒がR410A冷媒であり、第2冷媒がR454B冷媒であってもよい。この場合、R410A冷媒で動作していた既設の冷凍サイクル装置1の熱源ユニット以外の部分がR410A冷媒の代替冷媒であるR454B冷媒に通常対応可能である。第2冷媒であるR454B冷媒を補ってもジフルオロメタンとペンタフルオロエタンと2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペンの混合割合が変わるもののR410A冷媒と同様にフルオロメタンとペンタフルオロエタンとを含む混合冷媒であることに変わりがなく、R410A冷媒に対してジフルオロメタンとペンタフルオロエタンを含まない第2冷媒を補充する場合に比べて既設の冷凍サイクル装置1の熱源ユニット以外の部分が冷媒に適合する。その結果、回収冷媒であるR410A冷媒とは異なるR452B冷媒を充填しても、冷凍サイクル装置1の動作を正常に保ち易い。
【0094】
(4-5)
上記変形例1Jで説明したように、第2熱源ユニット10Bに窒素ガスを詰めた後に、窒素ガスを第2熱源ユニット10Bの中に詰めた状態で第2熱源ユニット10Bを既設の冷凍サイクル装置1の設置場所である建物200の屋上まで運送する場合には、運送中に第2熱源ユニット10Bに外気が入り込むのを窒素ガスが邪魔する。その結果、運送中に外気に混じって異物、水分などが第2熱源ユニット10Bに入り込むのを抑制することができる。
【0095】
(4-6)
上記変形例1Kで説明したように、第2熱源ユニット10Bに所定圧力範囲のR32冷媒を詰めた後に、R32冷媒を第2熱源ユニット10Bの中に詰めた状態で第2熱源ユニット10Bを既設の冷凍サイクル装置1の設置場所である建物200の屋上まで運送する場合には、設置場所まで運送する第2熱源ユニット10BにR32冷媒が詰められていることから、運送中に第2熱源ユニット10Bに外気が入り込むのをR32冷媒が邪魔するので、運送中に外気に混じって異物、水分などが第2熱源ユニット10Bに入り込むのを抑制することができる。また、第2熱源ユニット10Bを既設の冷凍サイクル装置1に接続するときにR32冷媒を抜き取らなくて済むので充填作業時の手間が省ける。
【0096】
(4-7)
上記変形例1Lで説明したように、回収冷媒と第2冷媒とが混合された混合冷媒が不燃性であること及び/または可燃性であることを判断する場合には、更新後の冷凍サイクル装置1が不燃性の冷媒にしか対応していない場合、あるいは可燃性の冷媒に対応していない場合には、混合冷媒を更新後の冷凍サイクル装置1に利用しない選択をしたり、更新後の冷凍サイクル装置1を例えば可燃性の冷媒に対応するように改修したりする対策を講じることができ、冷凍サイクル装置1の動作を正常に保つことができる。
【0097】
(4-8)
冷媒充填方法は、
図4に示されているようにステップS6を備えるように構成することができる。ステップS6では、第2熱源ユニット10Bに充填された回収冷媒と第2冷媒の混合割合を第2熱源ユニット10Bのメモリ45に記憶させる及び/または混合割合を第2熱源ユニット10Bの表示装置47に表示する。例えば、作業者は、メモリ45に記憶されている混合割合の情報及び/または表示装置47に表示される混合割合から第2熱源ユニット10Bの冷媒の組成を正確に把握することができる。その結果、作業者は、把握した冷媒の組成に基づいて冷凍サイクル装置1を調整することができ、冷凍サイクル装置1を正常に動作させることができる。
【0098】
(5)他の観点
以上説明した冷媒充填方法は、次のような観点で捉え直すことができる。
【0099】
冷凍サイクル装置の更新を行なう際に、現地で回収した冷媒を、更新後の冷凍サイクル装置に現地で使用することが考えられる。更新後の冷凍サイクル装置に、現地で回収した冷媒を現地で充填して使用する場合には、現地で回収した回収冷媒を利用することによって及び、更新後の冷凍サイクル装置の構成が変更されることによって、回収冷媒が更新後の冷凍サイクル装置に対して十分な適正を有していない状況が発生する可能性がでてくる。
【0100】
上述のように考えるときには、回収された回収冷媒を更新後の冷凍サイクル装置に利用する場合に、回収冷媒が充填された冷凍サイクル装置を正常に動作させるという課題があるということができる。
【0101】
このような課題を解決するには、冷媒充填方法が、循環する冷媒によって冷凍サイクルが行なわれる既設の冷凍サイクル装置1の第1熱源ユニット10Aを、第2熱源ユニット10Bに入れ替えるときの冷媒充填方法であって、前記既設の冷凍サイクル装置から第1冷媒を回収して回収冷媒を得るステップと、前記第2熱源ユニットを備える更新後の冷凍サイクル装置に対して前記回収冷媒を充填するとともに前記回収冷媒とは組成が異なる第2冷媒を充填するステップとを備えればよい。
【0102】
このような冷媒充填方法では、冷凍サイクル装置1に対する冷媒充填において、更新後の冷凍サイクル装置1に対し、既設の冷凍サイクル装置1から第1冷媒を回収して得た回収冷媒を充填するとともに第2冷媒を充填することができる。その結果、回収冷媒の不足分を第2冷媒により補うことで冷凍サイクル装置1を正常に動作させることができる。
【0103】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0104】
1 冷凍サイクル装置
10 熱源ユニット
10A 第1熱源ユニット
10B 第2熱源ユニット
【先行技術文献】
【特許文献】
【0105】