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特許7164839積層体、金属箔張積層板、パターニングされた金属箔付き積層体、ビルドアップ構造を有する積層体、プリント配線板、多層コアレス基板、及びその製造方法
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  • 特許-積層体、金属箔張積層板、パターニングされた金属箔付き積層体、ビルドアップ構造を有する積層体、プリント配線板、多層コアレス基板、及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】積層体、金属箔張積層板、パターニングされた金属箔付き積層体、ビルドアップ構造を有する積層体、プリント配線板、多層コアレス基板、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/16 20060101AFI20221026BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20221026BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20221026BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20221026BHJP
   B32B 27/42 20060101ALI20221026BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20221026BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
B32B27/16
B32B27/30 D
B32B27/30 Z
B32B27/34
B32B27/38
B32B27/42 101
H05K1/03 610H
H05K3/46 B
H05K3/46 T
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020539345
(86)(22)【出願日】2019-08-16
(86)【国際出願番号】 JP2019032098
(87)【国際公開番号】W WO2020045112
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2018161406
(32)【優先日】2018-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】平野 俊介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 禎啓
(72)【発明者】
【氏名】小柏 尊明
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-307608(JP,A)
【文献】特開2003-251757(JP,A)
【文献】特開2005-41148(JP,A)
【文献】特開2005-74933(JP,A)
【文献】特開2012-45887(JP,A)
【文献】特開2013-64078(JP,A)
【文献】特開2004-165255(JP,A)
【文献】特開2003-258434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/16
B32B 27/30
B32B 27/34
B32B 27/38
B32B 27/42
H05K 1/03
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の樹脂組成物層と、耐熱フィルム層と、第2の樹脂組成物層と、がこの順で積層された積層体であり、
前記第1の樹脂組成物層が半硬化状態(Bステージ)であり、かつ前記第1の樹脂組成物層の最大厚さと最小厚さの差が、0.5~5μmであり、
前記第2の樹脂組成物層が半硬化状態(Bステージ)であり、かつ前記第2の樹脂組成物層の最大厚さと最小厚さの差が、0.5~5μmである、積層体。
【請求項2】
前記耐熱フィルム層の厚さが、1~20μmである、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記耐熱フィルム層が、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ナイロン樹脂、及びフッ素系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂を含む、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記第1の樹脂組成物層が、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、マレイミド樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、及びビニル樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
前記第2の樹脂組成物層が、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、マレイミド樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、及びビニル樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
プリント配線板用である、請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の積層体と、
前記積層体の片面又は両面に配された金属箔と、
を有する、金属箔張積層体。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の積層体と、
前記積層体の片面又は両面に配され、パターニングされた金属箔と、
を有する、パターニングされた金属箔付き積層体。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載の積層体と、
導体層と、が、
交互に積層された、ビルドアップ構造を有する積層体。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか一項に記載の積層体を含む、プリント配線板。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか一項に記載の積層体と、
前記積層体の両面に配された1つ又は複数の導体層と、を有し、
前記複数の導体層の各々の間に設置された、絶縁樹脂層を有する、多層コアレス基板。
【請求項12】
導体層表面に、請求項1~6のいずれか一項に記載の積層体における、前記第1の樹脂組成物層又は前記第2の樹脂組成物層を積層させる工程を含む、多層コアレス基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、金属箔張積層板、パターニングされた金属箔付き積層体、ビルドアップ構造を有する積層体、プリント配線板、多層コアレス基板、及びその製造方法に関する。詳しくは、本発明は、プリント配線板及び多層コアレス基板のビルドアップ材料として有用な積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器、通信機器、及びパーソナルコンピューター等に広く用いられる半導体パッケージの高機能化及び小型化は、近年、益々加速している。それに伴い、半導体パッケージにおけるプリント配線板、多層コアレス基板、及び半導体素子搭載用パッケージ基板の薄型化も要求されている。
【0003】
薄型のプリント配線板、多層コアレス基板、及び半導体素子搭載用基板の製造方法として、例えば、特許文献1では、ステンレス鋼等の剛性が高く、かつ、厚い支持基板(キャリア基板)上に、後の工程において剥離可能な銅の層を形成した積層体を用いて、その積層体上に、パターンめっきにより回路パターンを形成し、エポキシ樹脂被覆ファイバーグラスのような絶縁樹脂層を積層して加熱及び加圧処理し、最後に支持基板を剥離、及び除去して薄型のプリント配線板、多層コアレス基板及び半導体素子搭載用基板を製造する方法が開示されている。このように、剛性が高く、かつ、厚い支持基板上に、回路パターンと絶縁樹脂層とを積層させ、最後に支持基板を剥離、及び除去することで、既存の製造装置でも薄型のプリント配線板、多層コアレス基板、及び半導体素子搭載用基板を製造できる。
【0004】
また、プリント配線板及び半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法として、コア基板上に絶縁樹脂層と導体層とを交互に積み重ねるビルトアップ方式による方法が知られている。更に、多層コアレス基板の製造方法として、コア基板上に絶縁樹脂層と導体層とを交互に積み重ね、最終的にコア基板を除去する方法が知られている。絶縁樹脂層形成には、通常、プリプレグ又は樹脂シートが用いられている。
【0005】
このようなプリプレグは、樹脂組成物を基材に含浸又は塗布させた後、樹脂組成物を半硬化(Bステージ化)させて得られる。
また、前記樹脂シートとしては、例えば、耐熱フィルムの両面に半硬化状態(Bステージ)の樹脂組成物層が形成された耐熱フィルム基材入りのシートが用いられている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表昭59-500341号公報
【文献】特開2003-251757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、より薄型化を目的に、支持基板を用いることなく、パターニングされた金属箔付き積層体、ビルドアップ構造を有する積層体、プリント配線板、多層コアレス基板、及び半導体素子搭載用基板(以下、これらの積層体、プリント配線板及びこれらの基板を「プリント配線板等」とも称す)を製造しようとする場合、既存の製造装置を用いると、プリント配線板等が折れることや、プリント配線板等がコンベアに巻き付くこと等の問題が生じる。そのため、既存の製造装置を用いて、市場が要求するほどの薄型化を目的としたプリント配線板等を製造することは困難である。
【0008】
また、プリプレグは、ガラスクロス等の基材に樹脂組成物を塗布又は含侵して得られるため強度に優れるが、プリプレグの厚さは、ガラスクロスの厚さに依存する。そのため、市場が要求するほどの薄型化は、プリプレグでは非常に困難であり、プリプレグを用いたとしても、高密度な微細配線が形成され、薄型のプリント配線板等を得ることは難しい。
【0009】
プリプレグと異なり、半硬化状態の樹脂組成物層を含む樹脂シートは、ガラスクロス等の基材を用いないで得られるため薄型化でき、靱性に優れるが、強度が弱いとの問題を有する。この点、特許文献2では、耐熱フィルムを用いて樹脂シートを作製しているが、特許文献2では、単に耐熱フィルムに樹脂組成物層を積層しているのみであるため、耐熱フィルムと樹脂組成物層との密着性に改良の余地を有し、樹脂シートの薄型化に限度がある。そのため、この樹脂シートにおいても、高密度な微細配線が形成され、薄型のプリント配線板等を得ることができない。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、高強度及び薄型の積層体であり、かつ、この積層体を用いることで、薄型であり、高強度な、金属箔張積層板を好適に製造できる積層体の提供を目的とする。また、薄型及び高強度であり、高密度な微細配線が形成された、パターニングされた金属箔付き積層体、ビルドアップ構造を有する積層体、プリント配線板、多層コアレス基板、及び半導体素子搭載用基板を好適に製造することができる積層体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意検討した結果、耐熱フィルム層の両面に、半硬化状態(Bステージ化)であり、かつ、樹脂組成物層の最大厚さと最小厚さの差が特定の範囲にある樹脂組成物層を配した積層体が、高強度であり、かつ、薄型の耐熱フィルムとそのフィルムの両面に配する薄型の樹脂組成物層とが良好に密着しているため積層体の薄型が可能であることを見出した。そして、この積層体を用いることで、薄型であり、高強度な、金属箔張積層板が得られ、また、薄型及び高強度であり、高密度な微細配線が形成された、パターニングされた金属箔付き積層体、ビルドアップ構造を有する積層体、プリント配線板、多層コアレス基板及びその製造方法、並びに半導体素子搭載用基板が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
〔1〕第1の樹脂組成物層と、耐熱フィルム層と、第2の樹脂組成物層と、がこの順で積層された積層体であり、前記第1の樹脂組成物層が半硬化状態(Bステージ)であり、かつ前記第1の樹脂組成物層の最大厚さと最小厚さの差が、0.5~5μmであり、前記第2の樹脂組成物層が半硬化状態(Bステージ)であり、かつ前記第2の樹脂組成物層の最大厚さと最小厚さの差が、0.5~5μmである、積層体。
〔2〕前記耐熱フィルム層の厚さが、1~20μmである、〔1〕に記載の積層体。
〔3〕前記耐熱フィルム層が、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ナイロン樹脂、及びフッ素系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂を含む、〔1〕又は〔2〕に記載の積層体。
〔4〕前記第1の樹脂組成物層が、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、マレイミド樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、及びビニル樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂を含む、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の積層体。
〔5〕前記第2の樹脂組成物層が、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、マレイミド樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、及びビニル樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂を含む、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の積層体。
【0013】
〔6〕プリント配線板用である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の積層体。
〔7〕〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の積層体と、前記積層体の片面又は両面に配された金属箔と、を有する、金属箔張積層体。
〔8〕〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の積層体と、前記積層体の片面又は両面に配され、パターニングされた金属箔と、を有する、パターニングされた金属箔付き積層体。
〔9〕〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の積層体と、導体層と、が、交互に積層された、ビルドアップ構造を有する積層体。
〔10〕〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の積層体を含む、プリント配線板。
〔11〕〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の積層体と、前記積層体の両面に配された1つ又は複数の導体層と、を有し、前記複数の導体層の各々の間に設置された、絶縁樹脂層を有する、多層コアレス基板。
〔12〕導体層表面に、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の積層体における、前記第1の樹脂組成物層又は前記第2の樹脂組成物層を積層させる工程を含む、多層コアレス基板の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高強度及び薄型の積層体を得ることができる。また、本発明の積層体を用いることで、薄型であり、高強度な、金属箔張積層板を好適に得ることができる。また、薄型及び高強度であり、高密度な微細配線が形成された、パターニングされた金属箔付き積層体、ビルドアップ構造を有する積層体、プリント配線板、多層コアレス基板、及び半導体素子搭載用基板を好適に得ることができる。更に、本発明によれば、薄型及び高強度であり、高密度な微細配線が形成された、多層コアレス基板を好適に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例2における3層コアレス基板の作製工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明はその要旨の範囲内で、適宜に変形して実施できる。
【0017】
なお、本明細書における「(メタ)アクリロイル基」とは「アクリロイル基」及びそれに対応する「メタクリロイル基」の両方を意味し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」の両方を意味し、「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸」及びそれに対応する「メタクリル酸」の両方を意味し、「(メタ)アクリロイル」とは「アクリロイル」及びそれに対応する「メタクリロイル」の両方を意味する。
【0018】
本実施形態において、「樹脂固形分」、「第1の樹脂組成物層中の樹脂固形分」又は「第2の樹脂組成物層中の樹脂固形分」とは、特に断りのない限り、第1又は第2の樹脂組成物層における、充填材、溶剤、及び添加剤を除いた成分をいい、「樹脂固形分100質量部」とは、第1又は第2の樹脂組成物層における、充填材、溶剤、及び添加剤を除いた成分の合計が100質量部であることをいう。
【0019】
[積層体]
本実施形態の積層体は、第1の樹脂組成物層と、耐熱フィルム層と、第2の樹脂組成物層と、がこの順で積層されたものである。本実施形態において、前記第1の樹脂組成物層は半硬化状態(Bステージ)であり、かつ前記第1の樹脂組成物層の最大厚さと最小厚さの差が、0.5~5μmである。また、前記第2の樹脂組成物層は半硬化状態(Bステージ)であり、かつ前記第2の樹脂組成物層の最大厚さと最小厚さの差が、0.5~5μmである。
【0020】
本実施形態の、樹脂組成物層の最大厚さと最小厚さの差が特定の範囲にある第1及び第2の樹脂組成物層は、非常に薄く、樹脂組成物層と耐熱フィルムとの良好な密着性を得ることができ、かつ、優れた靭性を得ることができる。また、耐熱フィルム層は、薄く、耐熱性に優れ、剛性が高い。そのため、本実施形態によれば、非常に高強度であり、かつ薄型である積層体を得ることができる。
【0021】
また、本実施形態の積層体は、電子機器、通信機器、及びパーソナルコンピューター等の製造に用いることができ、金属箔張積層体、及びプリント配線板等のビルドアップ材料として有用である。本実施形態の積層体を用いて金属箔張積層体、及びプリント配線板等を製造しても、その製造工程において、本実施形態の薄型でありながら高強度である積層体は破壊されず、これらの金属箔張積層体、及びプリント配線板等を好適に製造できる。本実施形態の積層体は、耐熱フィルム層の両面に、半硬化状態であり、かつ、樹脂組成物層の最大厚さと最小厚さの差が特定の範囲にある樹脂組成物層を配している。そのため、特に、本実施形態の積層体、金属箔張積層板、及び金属箔等の薄い内層板を使用してビルドアップして得られるプリント配線板等は、基材が入っていない樹脂シートを用いて得られるプリント配線板に比べて、機械的強度が高く、反り及び捻じれが小さく、積層時の成形厚さにばらつきが少ない。本実施形態の積層体を用いることで、CSP(chip size package)等の、薄型であり、高強度であり、かつ、高密度なプリント配線板等を好適に得ることができる。
【0022】
また、金属箔張積層体、及びプリント配線板等では、樹脂組成物層に金属箔が積層されているが、樹脂組成物層が平滑な面である場合、例えば、アンカー効果が得られないため、樹脂組成物層と金属箔層との密着性が悪くなり、ボイドが発生しやすくなる。そこで、通常、金属箔層は、アンカー効果を得るために粗化処理がなされているが、この場合、樹脂の厚さにばらつきがあると、樹脂組成物層の樹脂分が少ない部分においてボイドが発生し、積層体全体が破壊される。しかし、本実施形態の積層体では、半硬化状態であり、樹脂組成物層の最大厚さと最小厚さの差が特定の範囲にあるため、樹脂組成物層の厚さにばらつきがなく、粗化処理された金属箔層においても良好に密着する。また、本実施形態では、樹脂組成物層の最大厚さと最小厚さの差を非常に薄い範囲で制御し、耐熱フィルムと樹脂組成物層との良好な密着性、及び樹脂組成物層と金属箔層との良好な密着性を得ている。そのため、薄型の積層体を用いても、ボイドが発生せず、積層体が破壊されることがない。従って、薄型であり、高強度な、金属箔張積層板、及び高密度な微細配線が形成された、薄型で高強度のプリント配線板等を好適に製造することができる。
【0023】
プリント配線板等の製造に際し、金属箔をエッチングした後にめっき処理を施しても、樹脂組成物層とエッチングされていない金属箔層とは良好に密着しており、更に、樹脂組成物層の厚さにばらつきがないため、樹脂組成物層とめっき間においても良好に密着する。そのため、本実施形態の積層体を用いることで、高密度な微細配線が形成された薄型のプリント配線板等を得ることができる。
【0024】
<耐熱フィルム層>
耐熱フィルム層としては、耐熱性樹脂を含むフィルムであれば特に限定されない。
耐熱フィルム層の厚さは、特に限定されないが、金属箔張積層体及びプリント基板等のハンドリング性の向上、並びに金属箔張積層体及びプリント基板等の靱性の向上の観点から、好ましくは1~20μmであり、より好ましくは3~15μmであり、更に好ましくは4~10μmである。
【0025】
耐熱性樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ナイロン樹脂、及びフッ素系樹脂が挙げられる。これらの耐熱性樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。これらの耐熱性樹脂の中でも、耐熱性の観点から、ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂が好ましい。
【0026】
ポリイミド樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリアミドイミド、ポリピロメリットジイミド、ビスマレイミド、及びポリエーテルイミドが挙げられる。これらのポリイミド樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。ポリイミド樹脂としては、市販品を用いることもでき、例えば、東レ・デュポン株式会社製のポリイミド樹脂を使用することができる。
【0027】
ポリアミドイミド樹脂としては、特に限定されず、例えば、トリメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、及びビトリレンジイソシアネートを、N-メチル-2-ピロリドン及び/又はN,N-ジメチルアセトアミドの溶媒中で加熱することで得られる樹脂;トリメリット酸無水物、ジフェニルメタンジイソシアネート、及びカルボキシル基末端(メタ)アクリロニトリル-ブタジエンゴムを、N-メチル-2-ピロリドン及び/又はN,N-ジメチルアセトアミド等の溶媒中で加熱することで得られる樹脂が挙げられる。これらのポリアミドイミド樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0028】
ナイロン樹脂としては、特に限定されず、例えば、ナイロン6、ナイロン6,6'、及びアラミドが挙げられる。これらのナイロン樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0029】
フッ素系樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、及びポリクロロトリフルオロエチレンが挙げられる。これらのフッ素系樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0030】
耐熱フィルム層は、接着層付き耐熱フィルム層であってもよい。耐熱フィルム層が接着層付き耐熱フィルム層である場合には、接着層面が樹脂組成物層と接するように配置する。
接着層を構成する樹脂としては、特に限定されず、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、マレイミド樹脂(マレイミド化合物)、イソシアネート樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(「BT樹脂」とも称す)、及びビニル樹脂が挙げられる。これらの接着層を構成する樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、マレイミド樹脂(マレイミド化合物)、イソシアネート樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、及びビニル樹脂のそれぞれの具体例は、後述の第1及び第2の樹脂組成物層に用いられる熱硬化性樹脂に記載のとおりである。
接着層付き耐熱フィルムとしては、市販品を用いることもでき、例えば、ニッカン工業(株)製のCISV(商品名)を使用することができる。
【0031】
耐熱フィルム層の表面に樹脂組成物層を形成する場合、無処理であってもよいが、樹脂組成物層との接着性を向上させるために、コロナ処理、プラズマ処理、低紫外線処理、薬液処理、及びサンドブラスト処理等の処理を行ってもよい。
【0032】
<第1の樹脂組成物層>
第1の樹脂組成物層としては、半硬化状態(Bステージ)であり、第1の樹脂組成物層の最大厚さと最小厚さの差が、0.5~5μmであれば、特に限定されない。
本実施形態において、半硬化状態(Bステージ)とは、樹脂組成物層中に含まれる各成分が、積極的に反応(硬化)を始めてはいないが、樹脂組成物が乾燥状態、すなわち、粘着性がない程度まで、加熱して溶媒を揮発させている状態を称し、加熱しなくても硬化せずに溶媒が揮発したのみの状態も含まれる。本実施形態において、半硬化状態(Bステージ)の最低溶融粘度は、通常、1,000Pa・s以下である。なお、本実施形態において、最低溶融粘度は、次の方法で測定される。すなわち、樹脂組成物層から採取した樹脂粉1gをサンプルとして使用し、レオメータ(TAインスツルメンツ社製ARES-G2(商品名))により、最低溶融粘度を測定する。ここでは、プレート径25mmのディスポーサブルプレートを使用し、40℃から180℃の範囲において、昇温速度2℃/分、周波数10.0rad/秒、歪0.1%の条件下で、樹脂粉の最低溶融粘度を測定する。
樹脂組成物層が半硬化状態であることにより、樹脂組成物層と耐熱フィルムとの良好な密着性、及び金属箔層を配する場合には、樹脂組成物層と金属箔層とも良好な密着性を得ることができる。また、半硬化状態であると、半導体素子搭載用の基板に対する積層体の追従性が向上すると同時に、半導体素子実装後に積層体を物理的な力によって剥離することが容易となる。
【0033】
また、第1の樹脂組成物層の最大厚さと最小厚さの差は、通常0.5~5μmであり、良好な成形性が得られ、積層時の成形厚さにばらつきが少なく、かつ樹脂組成物層とめっき間において良好な密着性が得られる点から、好ましくは0.5~3μmであり、より好ましくは0.5~2.5μmであり、更に好ましくは0.5~2μmである。
本実施形態において、樹脂組成物層の最大厚さと最小厚さは、それぞれ、例えば、マイクロウォッチャー(キーエンス社製VH-7000(商標名))の450倍レンズにて、樹脂組成物層の最大の厚さと、最小の厚さを測定した値である。樹脂組成物層の最大厚さと最小厚さの差は、この値を用いて算出する。
【0034】
第1の樹脂組成物層の厚さは、積層に用いられる金属箔等の内層板の厚さ、基板平面に占める金属の割合、及び外層に使用される金属箔の凹凸の度合いにより適宜選択でき特に限定されないが、薄型のプリント配線板及び半導体素子搭載用基板を得る点から、通常1~18μmであり、より好ましくは1~12μmであり、更に好ましくは1~10μmである。なお、本実施形態において、基板平面に占める金属割合(「金属残存率」とも称す)とは、基板中に配された金属の平面積/基板全体の平面積×100のことを意味し、通常、20~100%である。
【0035】
第1の樹脂組成物層は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。熱硬化性樹脂として、特に限定されず、プリント配線板の絶縁樹脂層に用いられる公知の熱硬化性樹脂(絶縁材料)を適宜選択できる。例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、マレイミド樹脂(マレイミド化合物)、イソシアネート樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、及びビニル樹脂が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。これらの熱硬化性樹脂の中でも、基板の耐熱性及び寸法安定性の観点から、ビスマレイミドトリアジン樹脂、マレイミド樹脂、エポキシ樹脂、及びシアネート樹脂が好ましく、マレイミド樹脂、エポキシ樹脂、及びシアネート樹脂がより好ましい。
【0036】
本実施形態に係る第1の樹脂組成物層において、熱硬化性樹脂の合計の含有量は、特に限定されないが、本実施形態の第1の樹脂組成物層中の樹脂固形分100質量部中に、好ましくは1~100質量部である。
【0037】
フェノール樹脂としては、特に限定されず、1分子中に2個以上のヒドロキシ基を有するフェノール樹脂であれば、一般に公知のものを使用できる。例えば、ビスフェノールA型フェノール樹脂、ビスフェノールE型フェノール樹脂、ビスフェノールF型フェノール樹脂、ビスフェノールS型フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック型フェノール樹脂、グリシジルエステル型フェノール樹脂、アラルキルノボラック型フェノール樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、多官能フェノール樹脂、ナフトール樹脂、ナフトールノボラック樹脂、多官能ナフトール樹脂、アントラセン型フェノール樹脂、ナフタレン骨格変性ノボラック型フェノール樹脂、フェノールアラルキル型フェノール樹脂、ナフトールアラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、脂環式フェノール樹脂、ポリオール型フェノール樹脂、リン含有フェノール樹脂、及び水酸基含有シリコーン樹脂類が挙げられる。これらのフェノール樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0038】
本実施形態に係る第1の樹脂組成物層において、フェノール樹脂の合計の含有量は、特に限定されないが、本実施形態の第1の樹脂組成物層中の樹脂固形分100質量部中に、好ましくは1~20質量部である。
【0039】
熱硬化性樹脂の中でも、エポキシ樹脂は、耐熱性、耐薬品性、及び電気特性に優れ、比較的安価であることから、樹脂組成物層の材料として好適に用いることができる。エポキシ樹脂としては、特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールのジグリシジルエテール化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエテール化物、フェノール類のジグリシジルエテール化物、アルコール類のジグリシジルエテール化物、及びこれらのアルキル置換体、ハロゲン化物、及び水素添加物が挙げられる。これらのエポキシ樹脂の中でも、銅との密着性の点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂としては、市販品を用いることもでき、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)エピコート(登録商標)828(商品名)、大日本インキ化学工業(株)製EXA830LVP(商品名)、ダウケミカル(株)製DEN438(商品名)、及び住友化学工業(株)製ESCN220F(商品名)を使用することができる。これらのエポキシ樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
また、このエポキシ樹脂とともに用いる硬化剤は、エポキシ樹脂を硬化させるものであれば、特に限定されず、公知のものを使用できる。硬化剤としては、例えば、多官能フェノール類、多官能アルコール類、アミン類、イミダゾール化合物、酸無水物、有機リン化合物、及びこれらのハロゲン化物が挙げられる。これらの硬化剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0040】
本実施形態に係る第1の樹脂組成物層において、エポキシ樹脂の合計の含有量は、特に限定されないが、本実施形態の第1の樹脂組成物層中の樹脂固形分100質量部中に、好ましくは20~80質量部である。
【0041】
シアネート樹脂は、加熱によりトリアジン環を繰り返し単位とする硬化物を生成する樹脂であり、硬化物は、誘電特性に優れる。このため、特に高周波特性が要求される場合等に好適である。シアネート樹脂としては、特に限定されず、例えば、2,2'-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、ビス(4-シアナトフェニル)メタン、ビス(4-シアナトフェニル)エタン、1,3-ジシアナトベンゼン、1,4-ジシアナトベンゼン、1,3,5-トリシアナトベンゼン、1,3-ジシアナトナフタレン、1,4-ジシアナトナフタレン、1,6-ジシアナトナフタレン、1,8-ジシアナトナフタレン、2,6-ジシアナトナフタレン、2、7-ジシアナトナフタレン、1,3,6-トリシアナトナフタレン、4、4’-ジシアナトビフェニル、ビス(4-シアナトフェニル)エーテル、2、2’-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、2,2'-ビス(3,5-ジメチル-4-シアナトフェニル)メタン、2,2'-(4-シアナトフェニル)-1,1',1'',3,3',3''-ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4-シアナトフェニル)スルホン、α,α'-ビス(4-シアナトフェニル)-m-ジイソプロピルベンゼン、下記式(1)で表されるナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、下記式(2)で表されるノボラック型シアン酸エステル化合物、ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル化合物、フェノールノボラック、及びアルキルフェノールノボラックのシアネートエステル化物が挙げられる。これらのシアネート樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。また、シアネートエステル化合物は、予め一部が三量体や五量体にオリゴマー化されていてもよく、プレポリマーであってもよい。プレポリマーとしては、特に限定されないが、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算で、質量平均分子量が500~4,000の範囲であることが好ましい。
【0042】
【化1】
【0043】
式(1)中、R1は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表し、水素原子が好ましい。式(1)中、n1は、1以上の整数を示す。n1の上限値は、特に限定されないが、通常10であり、6であることが好ましい。
【0044】
【化2】
【0045】
式(2)中、R2は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表し、水素原子が好ましい。式(2)中、n2は、1以上の整数を示す。n2の上限値は、特に限定されないが、通常10であり、7であることが好ましい。
【0046】
これらシアネート樹脂の中でも、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、及びこのシアネートエステル化合物のプレポリマーは、硬化物の誘電特性と硬化性とのバランスがより良好であり、コスト的にも安価であるため好ましい。
【0047】
本実施形態に係る第1の樹脂組成物層において、シアネート樹脂の合計の含有量は、特に限定されないが、本実施形態の第1の樹脂組成物層中の樹脂固形分100質量部中に、好ましくは20~80質量部である。
【0048】
本実施形態においては、シアネート樹脂に対して硬化触媒及び硬化促進剤を併用することもできる。
硬化触媒としては、特に限定されないが、例えば、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、及び亜鉛の金属類を用いることができる。具体的には、2-エチルヘキサン酸塩、及びオクチル酸塩等の有機金属塩;アセチルアセトン鉄等の有機金属錯体等が挙げられる。これらの硬化触媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0049】
硬化促進剤としては、特に限定されないが、フェノール類を使用することが好ましい。フェノール類としては、ノニルフェノール、及びパラクミルフェノール等の単官能フェノール;ビスフェノールA、ビスフェノールF、及びビスフェノールS等の二官能フェノール;フェノールノボラック、及びクレゾールノボラック等の多官能フェノール等が挙げられる。これらの硬化促進剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0050】
本実施形態に係る第1の樹脂組成物層において、硬化触媒及び硬化促進剤の含有量は、特に限定されないが、本実施形態の第1の樹脂組成物層中の樹脂固形分100質量部中に、それぞれ好ましくは0.01~10質量部である。
【0051】
マレイミド樹脂及びマレイミド化合物としては、特に限定されないが、1分子中に1個以上のマレイミド基を有する樹脂又は化合物であれば、一般に公知のものを使用できる。例えば、N-フェニルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、4,4'-ジフェニルメタンビスマレイミド、フェニルメタンマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、2,2'-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル)プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタン、3,3'-ジメチル-5,5'-ジエチル-4,4'-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、1,6-ビスマレイミド-(2,2',4-トリメチル)ヘキサン、4,4'-ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4'-ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ポリフェニルメタンマレイミド、下記式(3)で表されるマレイミド化合物、ノボラック型マレイミド、ビフェニルアラルキル型マレイミド、及びこれらマレイミド化合物のプレポリマー、もしくはマレイミド化合物とアミン化合物のプレポリマーが挙げられる。これらのマレイミド樹脂(マレイミド化合物)は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0052】
【化3】
【0053】
式(3)中、R3は、水素原子又はメチル基を示し、水素原子が好ましい。式(3)中、n3は、1以上の整数を示す。nの上限値は、特に限定されないが、通常10であり、7であることが好ましい。
【0054】
本実施形態に係る第1の樹脂組成物層において、マレイミド樹脂及びマレイミド化合物の合計の含有量は、特に限定されないが、本実施形態の第1の樹脂組成物層中の樹脂固形分100質量部中に、好ましくは1~30質量部である。
【0055】
イソシアネート樹脂としては、特に限定されず、例えば、フェノール類とハロゲン化シアンとの脱ハロゲン化水素反応により得られるイソシアネート樹脂が挙げられる。イソシアネート樹脂としては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートMDI、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。これらのイソシアネート樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0056】
本実施形態に係る第1の樹脂組成物層において、イソシアネート樹脂の合計の含有量は、特に限定されないが、本実施形態の第1の樹脂組成物層中の樹脂固形分100質量部中に、好ましくは1~10質量部である。
【0057】
ベンゾシクロブテン樹脂としては、シクロブテン骨格を含む樹脂であれば特に限定されないが、例えば、ジビニルシロキサン-ビスベンゾシクロブテン(ダウケミカル社製)を用いることができる。これらのベンゾシクロブテン樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0058】
本実施形態に係る第1の樹脂組成物層において、ベンゾシクロブテン樹脂の合計の含有量は、特に限定されないが、本実施形態の第1の樹脂組成物層中の樹脂固形分100質量部中に、好ましくは1~10質量部である。
【0059】
BT樹脂としては、特に限定されず、例えば、シアン酸エステル化合物及びマレイミド化合物を、無溶剤、又はメチルエチルケトン、Nメチルピロドリン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、及びキシレン等の有機溶剤に溶解して加熱混合し、ポリマー化したものが挙げられる。
【0060】
BT樹脂の原料として用いるシアン酸エステル化合物としては、特に限定されないが、例えば、前記式(1)で表されるナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、前記式(2)で表されるノボラック型シアン酸エステル化合物、ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル化合物、2,2'-ビス(3,5-ジメチル-4-シアナトフェニル)メタン、ビス(4-シアナトフェニル)メタン、1,3-ジシアナトベンゼン、1,4-ジシアナトベンゼン、1,3,5-トリシアナトベンゼン、1,3-ジシアナトナフタレン、1,4-ジシアナトナフタレン、1,6-ジシアナトナフタレン、1,8-ジシアナトナフタレン、2,6-ジシアナトナフタレン、2、7-ジシアナトナフタレン、1,3,6-トリシアナトナフタレン、4、4’-ジシアナトビフェニル、ビス(4-シアナトフェニル)エーテル、ビス(4-シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4-シアナトフェニル)スルホン、及び2、2’-ビス(4-シアナトフェニル)プロパンが挙げられる。これらの中でも、前記式(1)で表されるナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、前記式(2)で表されるノボラック型シアン酸エステル化合物、及びビフェニルアラルキル型シアン酸エステル化合物が、難燃性及び硬化性がより向上し、熱膨張係数がより低下する傾向にあるため、好ましい。
【0061】
BT樹脂の原料として用いるマレイミド化合物としては、特に限定されないが、例えば、N-フェニルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル)プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタン、前記式(3)で表されるマレイミド化合物、及びこれらマレイミド化合物のプレポリマー、もしくはマレイミド化合物とアミン化合物のプレポリマーが挙げられる。これらの中でも、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル)プロパン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、及び前記式(3)で表されるマレイミド化合物が好ましい。
【0062】
BT樹脂の原料として用いるマレイミド化合物の割合は、特に限定されないが、ガラス転移温度、難燃性、及び硬化性の観点から、BT樹脂の合計量100質量部に対して、好ましくは5~75質量部である。また、プレポリマーであるBT樹脂の数平均分子量は、特に限定されないが、ハンドリング性、ガラス転移温度、及び硬化性の観点から、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算で、100~100,000であることが好ましい。
【0063】
本実施形態に係る第1の樹脂組成物層において、BT樹脂の合計の含有量は、特に限定されないが、本実施形態の第1の樹脂組成物層中の樹脂固形分100質量部中に、好ましくは10~70質量部である。
【0064】
ビニル樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ビニルモノマーの重合体及び共重合体が挙げられる。ビニルモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル誘導体、ビニルエステル誘導体、マレイン酸ジエステル誘導体、(メタ)アクリルアミド誘導体、スチレン誘導体、ビニルエーテル誘導体、ビニルケトン誘導体、オレフィン誘導体、マレイミド誘導体、及び(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。これらのビニル樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0065】
樹脂組成物層には、誘電特性、耐衝撃性、及びフィルム加工性等を考慮して、熱可塑性樹脂をブレンドすることもできる。熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、及びポリブタジエンが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0066】
フッ素樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、及びポリフッ化ビニルが挙げられる。これらのフッ素樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0067】
熱可塑性樹脂の中でも、硬化物の誘電特性を向上させることができるという観点から、ポリフェニレンエーテル及び/又は変性ポリフェニレンエーテルを配合して用いることが有用である。ポリフェニレンエーテル及び変性ポリフェニレンエーテルとしては、特に限定されないが、例えば、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリスチレンとのアロイ化ポリマー、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン-ブタジエンコポリマーとのアロイ化ポリマー、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン-無水マレイン酸コポリマとのアロイ化ポリマー、ポリ(3,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリアミドとのアロイ化ポリマー、及びポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン-ブタジエン-(メタ)アクリロニトリルコポリマーとのアロイ化ポリマーが挙げられる。これらのポリフェニレンエーテル及び変性ポリフェニレンエーテルは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。また、ポリフェニレンレンエーテルに反応性や重合性を付与するために、ポリマー鎖末端にアミン基、エポキシ基、カルボン基、及びスチリル基等の官能基を導入してもよく、ポリマー鎖側鎖にアミン基、エポキシ基、カルボキシル基、スチリル基、及びメタクリル基等の官能基を導入してもよい。
【0068】
ポリフェニレンスルフィドは、芳香族環をスルフィド結合で重合体としたものであり、分岐型、又は直鎖型のポリフェニレンスルフィド、及びその共重合体を例示することができる。例えば、パラフェニレンスルフィド、メタフェニレンスルフィド、及びこれらの重合体、並びにこれらと共重合可能なエーテルユニット、スルホンユニット、ビフェニルユニット、ナフチルユニット、置換フェニルスルフィドユニット、及び三官能フェニルスルフィドユニット等を分子中に有する共重合体が挙げられる。これらのポリフェニレンスルフィドは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0069】
ポリカーボネートとしては、特に限定されないが、例えば、臭素化ポリカーボネートオリゴマーが挙げられる。臭素化ポリカーボネートオリゴマーの分子量は、特に限定されないが、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算で、質量平均分子量で500~3,500のものが好適である。
【0070】
ポリエーテルイミドとしては、特に限定されないが、例えば、2,2'-ビス[4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物と、m-フェニレンジアミン又はp-フェニレンジアミンとの縮合物、及びこれらの共重合体、並びに変性体が挙げられる。これらのポリエーテルイミドは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。ポリエーテルイミドとしては、市販品を用いることもでき、例えば、ジーイープラスチックス社製Ultem(登録商標)1000シリーズ(商品名)、5000シリーズ(商品名)、及び6000シリーズ(商品名)が挙げられる。
【0071】
ポリエーテルエーテルケトンとしては、特に限定されないが、例えば、4,4’-ジフルオロベンゾフェノンとハイドロキノンとの共重合体が挙げられる。これらのポリエーテルエーテルケトンは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0072】
ポリ(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートが挙げられる。これらのポリ(メタ)アクリレートは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0073】
ポリアミドとしては、特に限定されないが、例えば、ポリアミド12、ポリアミド11、ポリアミド6、ポリアミド6,6、及びポリアミド6,12の共重合体が挙げられる。これらのポリアミドは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0074】
熱可塑性樹脂の中でも、耐湿性に優れ、金属に対する接着剤が良好であるという観点から、ポリアミドイミド樹脂が有用である。ポリアミドイミド樹脂の原料は、特に限定されないが、酸性分としては、無水トリメリット酸、及び無水トリメリット酸モノクロライドが挙げられる。アミン成分としては、特に限定されないが、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、ビス[4-(アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、及び2,2'-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンが挙げられる。ポリアミドイミド樹脂は、乾燥性を向上させるためにシロキサン変性としてもよく、この場合、アミノ成分としてシロキサンジアミンを用いることができる。ポリアミドイミド樹脂は、フィルム加工性を考慮すると、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算で、質量平均分子量が5万以上のものを用いることが好ましい。ポリアミドイミド樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0075】
ポリブタジエンとしては、特に限定されないが、例えば、1,4-ポリブタジエン、1,2-ポリブタジエン、末端(メタ)アクリレート変性ポリブタジエン、及び末端ウレタンメタクリレート変性ポリブタジエンが挙げられる。これらのポリブタジエンは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0076】
樹脂組成物層には、本実施形態の特性が損なわれない範囲において、無機フィラー及び有機フィラー等の充填材が混合されていてもよい。無機フィラーとしては、特に限定されないが、例えば、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、クレー、タルク、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化亜鉛、溶融シリカ、ガラス粉、石英粉、及びシラスバルーンが挙げられる。有機フィラーとしては、特に限定されないが、例えば、ジアリルフタレートプレポリマー及びジアリルイソフタレートプレポリマーが挙げられる。これらの充填材は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0077】
これらの充填材の含有量は、特に制限されないが、第1の樹脂組成物層中の樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは1~500質量部である。
【0078】
樹脂組成物層には、有機溶媒が残存していてもよい。有機溶媒は、通常、樹脂組成物層を形成するために用いられた有機溶媒(ワニス)に由来する。有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びトリメチルベンゼンの芳香族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、及びメチルイノブチルケトンのケトン系溶媒;テトラヒドロフランのエーテル系溶媒;イソプロパノール、及びブタノールのアルコール系溶媒;2-メトキシエタノール、及び2-ブトキシエタノールのエーテルアルコール溶媒;N-メチルピロリドン、N、N'-ジメチルホルムアミド、及びN、N'-ジメチルアセトアミドのアミド系溶媒が挙げられる。これらの有機溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。樹脂組成物層を作製する場合におけるワニス中の溶媒量は、特に限定されないが、ワニス100質量%中に対して、40~400質量%の範囲とすることが好ましく、60~180質量%の範囲とすることがより好ましい。ワニス中における溶媒量を前記範囲に制御することにより、塗膜量を精度よく調整することができるため、樹脂組成物層の最大厚さと最小厚さの差を好適に制御でき、均一な膜厚を有する樹脂組成物層を得ることが可能となる。ワニス中の溶媒量が40質量%未満であると、ワニス粘度が好適であっても、耐熱フィルム層上に隙間なくワニスを塗布できない傾向にある。また、ワニス中の溶媒量が400質量%を超えると、好適なワニス粘度を得ることができない傾向にある。
【0079】
樹脂組成物層には、本実施形態の特性が損なわれない範囲において、必要に応じて、これまでに挙げられていない、難燃剤、硬化剤、硬化促進剤、熱可塑性粒子、着色剤、紫外線不透過剤、酸化防止剤、及び還元剤等の各種添加剤を更に加えることができる。これらの添加剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0080】
難燃剤としては、特に限定されないが、例えば、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモ無水フタル酸、及びトリブロモフェノール等の臭素化合物;トリフェニルフォスフェート、トリキシレルフォスフェート、及びクレジルジフェニルフォスフェート等のリン化合物;水酸化マグネシウム、及び水酸化アルミニウム等の金属水酸化物;赤リン及びその変性物;三酸化アンチモン、及び五酸化アンチモン等のアンチモン化合物;メラミン、シアヌール酸、及びシアヌール酸メラミン等のトリアジン化合物等が挙げられる。これらの難燃材は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0081】
本実施形態に係る第1の樹脂組成物層において、添加剤の含有量は、特に限定されないが、本実施形態の第1の樹脂組成物層中の樹脂固形分100質量部中に、それぞれ0.1~10質量部であることが好ましい。
【0082】
<第2の樹脂組成物層>
第2の樹脂組成物層としては、半硬化状態(Bステージ)であり、第2の樹脂組成物層の最大厚さと最小厚さの差が、0.5~5μmであれば、特に限定されない。半硬化状態(Bステージ)については、前記のとおりである。
【0083】
また、第2の樹脂組成物層の最大厚さと最小厚さの差は、通常0.5~5μmであり、良好な成形性が得られ、積層時の成形厚さにばらつきが少なく、かつ樹脂組成物層とめっき間において良好な密着性が得られる点から、好ましくは0.5~3μmであり、より好ましくは0.5~2.5μmであり、更に好ましくは0.5~2μmである。第2の樹脂組成物層の最大厚さと最小厚さの差は、第1の樹脂組成物層の最大厚さと最小厚さの差と同じあってもよく、異なっていてもよいが、生産性、及び第1の樹脂組成物層の形成に用いるワニスが第2の樹脂組成物層の形成に用いるワニスに混入して、所望の最大厚さと最小厚さの差を有する第2の樹脂組成物層が得られないおそれがある点から、同じであることが好ましい。なお、樹脂組成物層の最大厚さと最小厚さは、前記のとおり、例えば、マイクロウォッチャーにて測定した値であり、最大厚さと最小厚さの差は、この値を用いて算出した値である。
【0084】
また、第2の樹脂組成物層の厚さは、積層に用いられる金属箔等の内層板の厚さ、基板平面に占める金属の割合、及び外層に使用される金属箔の凹凸の度合いにより適宜選択でき、特に限定されないが、薄型のプリント配線板及び半導体素子搭載用基板を得る点から、通常1~18μmであり、好ましくは1~12μmであり、より好ましくは1~10μmである。第2の樹脂組成物層の厚さは、第1の樹脂組成物層の厚さと同じあってもよく、異なっていてもよいが、生産性、及び第1の樹脂組成物層の形成に用いるワニスが第2の樹脂組成物層の形成に用いるワニスに混入して、所望の最大厚さと最小厚さの差を有する第2の樹脂組成物層が得られないおそれがある点から、同じであることが好ましい。
【0085】
第2の樹脂組成物層は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。熱硬化性樹脂として、特に限定されないが、プリント配線板に用いられる公知の熱硬化性樹脂(絶縁材料)を適宜選択できる。例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、マレイミド樹脂(マレイミド化合物)、イソシアネート樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、及びビニル樹脂が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。これらの熱硬化性樹脂の中でも、基板の耐熱性及び寸法安定性の観点から、ビスマレイミドトリアジン樹脂、マレイミド樹脂、エポキシ樹脂、及びシアネート樹脂が好ましく、マレイミド樹脂、エポキシ樹脂、及びシアネート樹脂がより好ましい。具体例については、それらの配合量も含めて、前記の第1の樹脂組成物層と同じである。これらの熱硬化性樹脂の合計の含有量は、特に制限されないが、第2の樹脂組成物層中の樹脂固形分100質量部に、好ましくは1~100質量部である。
第2の樹脂組成物層に含まれる成分、及びそれらの配合量は、第1の樹脂組成物層と同じあってもよく、異なっていてもよいが、生産性、及び第1の樹脂組成物層の形成に用いるワニスが第2の樹脂組成物層の形成に用いるワニスに混入して、所望の最大厚さと最小厚さの差を有する第2の樹脂組成物層が得られないおそれがある点から、同じであることが好ましい。すなわち、第2の樹脂組成物層は、第1の樹脂組成物層と同じ成分を用いて製造されることが好ましい。なお、第2の樹脂組成物層に含まれる成分についての具体例は、前記の第1の樹脂組成物層を同じである。
【0086】
[積層体の製造方法]
本実施形態の積層体は、公知の方法で製造することができ、特に限定されない。
例えば、本実施形態の第1及び第2の樹脂組成物層を形成するために、前記の各成分を順次溶媒に配合し、十分に攪拌して得られた樹脂組成物を用いて製造することができる。本実施形態に用いる樹脂組成物は、本実施形態の樹脂組成物層を作製する際のワニスとして、好適に使用することができる。なお、必要に応じて、予め、前記の各成分のそれぞれを分けて樹脂組成物(ワニス)を作製し、これらの混合することで、本実施形態の樹脂組成物層を作製する際に用いるワニスを作製してもよい。
【0087】
樹脂組成物の製造時には、必要に応じて、各成分を均一に溶解又は分散させるための公知の処理(例えば、攪拌、混合、及び混練処理)を行うことができる。例えば、充填材を用いる場合には、適切な攪拌能力を有する攪拌機を付設した攪拌槽を用いて攪拌分散処理を行うことにより、樹脂組成物に対する充填材の分散性を向上させることができる。上記の攪拌、混合、及び混練処理は、例えば、超音波ホモジナイザー等の分散を目的とした攪拌装置、三本ロール、ボールミル、ビーズミル、及びサンドミル等の混合を目的とした装置、並びに公転又は自転型の混合装置等の公知の装置を用いて適宜行うことができる。また、本実施形態の樹脂組成物の調製時においては、必要に応じて有機溶媒を使用することができる。有機溶媒の種類は、樹脂組成物中の樹脂を溶解可能なものであれば、特に限定されず、その具体例は、前記したとおりである。
【0088】
次いで、樹脂組成物層を耐熱フィルム層に積層する方法は、有機溶媒に前記の樹脂組成物を溶解させたワニスを調製し、このワニスを、バーコーティング、スピンコーティング、ブレードコーティング、リバースコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、リップコーティング、エアーナイフコーティング、及びディッピング等を用いて、耐熱フィルム上に塗布し、加熱又は熱風吹きつけ等により有機溶媒を乾燥させて、半硬化状態(Bステージ)であり、樹脂組成物層の最大厚さと最小厚さの差が特定の範囲にある樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。本実施形態において、ワニス中の溶媒量は、特に限定されないが、塗膜量を精度よく調整することができ、樹脂組成物層の最大厚さと最小厚さの差を好適に制御でき、均一な膜厚を有する樹脂組成物層を得ることが可能となることから、上記の範囲にあることが好ましい。
樹脂組成物層中の残存有機溶媒量は、後の工程での有機溶媒の拡散を防止する観点から、樹脂組成物層の合計100質量部に対して5質量部以下とすることが好ましく、3質量部以下とすることがより好ましい。下限は、特に限定されないが、有機溶媒が残存しないことがよく、通常、0質量部である。また、ワニスを調製するための有機溶媒としては、樹脂組成物における各成分を各々好適に溶解又は分散させることができるものであれば特に限定されない。有機溶媒の具体例は、前記したとおりである。
【0089】
本実施形態では、耐熱フィルム層にワニスを用いて第1の樹脂組成物層を積層した後、第1の樹脂組成物層が積層されていない耐熱フィルム層の面にワニスを用いて第2の樹脂組成物層を積層してもよく、耐熱フィルム層の両面にワニスを用いて第1の樹脂組成物層及び第2の樹脂組成物層を同時に積層してもよい。第1及び第2の樹脂組成物層に用いるワニスは、同じであっても、異なっていてもよいが、生産性、及び第1の樹脂組成物層の形成に用いるワニスと第2の樹脂組成物層の形成に用いるワニスとが混合し、所望の最大厚さと最小厚さの差を有する樹脂組成物層が得られないおそれがある点から、同じであることが好ましい。
【0090】
本実施形態においては、樹脂組成物層の最大厚さと最小厚さの差を好適に制御できる観点から、グラビアコーティングを用いることが好ましい。グラビアコーティング(グラビア塗工)に用いる装置としては、均一な膜厚の第1及び第2の樹脂組成物層を耐熱フィルム層の両面に形成できれば特に限定されず、例えば、テクノスマート株式会社製120R-75(商品名)等が挙げられる。
【0091】
グラビアコーティングにて樹脂組成物層を耐熱フィルム層に積層する場合、樹脂組成物層の最大厚さと最小厚さの差を制御する点から、塗工液(ワニス)が、耐熱フィルム層上に隙間なく、スムーズに流れるように、ワニスを調製することが好ましい。このような点から、ワニス中の溶媒量は、特に限定されないが、塗膜量を精度よく調整することができ、樹脂組成物層の最大厚さと最小厚さの差を好適に制御でき、均一な膜厚を有する樹脂組成物層を得ることが可能となることから、上記の範囲にあることが好ましい。また、ワニスの粘度としては、1~500mPa・sであることが好ましく、10~300mPa・sであることがより好ましく、耐熱フィルム層上に隙間なく塗布できる好適なワニスを得ることができる点から、20~70mPa・sであることが更に好ましい。グラビアコーティングでは、グラビアロールを用いて耐熱フィルム層に樹脂組成物層を塗工するが、ワニス中の溶媒量及びワニスの粘度が、それぞれ上記の範囲にあると、局所的に生じるボイド等の凹凸を低減でき、樹脂組成物層への塗膜量を精度よく調整することができる。そのため、樹脂組成物層の最大厚さと最小厚さの差を好適に制御でき、均一な膜厚を有する樹脂組成物層を得ることが可能となる。耐熱フィルムとしては、表面が平滑であるフィルムを用いることが好ましく、耐熱性の観点を踏まえると、ポリイミド樹脂のフィルム及びポリアミド樹脂のフィルムを用いることがより好ましい。
【0092】
また、グラビアロールの回転速度は、通常1~30m/sであり、成形性の点から、好ましくは3~10m/sである。また、このときの耐熱フィルムの走行速度は、通常1~30m/sであり、成形性の点から、好ましくは3~10m/sである。
【0093】
耐熱フィルムの走行速度S(m/s)に対するグラビアロールの回転速度G(m/s)の比率(G/S)は、特に限定されないが、0.5~2.0とすることが好ましい。これにより、膜厚を制御しながら、非常に薄い膜厚、好ましくは1~10μmの膜厚を有する第1及び第2の樹脂組成物層を得ることができる。作業性及び生産効率の向上の点から、比率(G/S)は、0.8~1.5であることがより好ましい。
【0094】
耐熱フィルムの走行速度Sは、特に限定されないが、成形性の点から、1~30m/sが好ましく、第1及び第2の樹脂組成物層の膜厚の均一性及び生産効率の点から、より好ましくは3~10m/sである。
【0095】
グラビアコーティングにおいて、連続長さ方向の膜厚の均一性及び幅方向の膜厚の均一性が問題となる場合がある。そのため、連続長さ方向の膜厚の均一性は、特に限定されないが、30%以内に制御することが好ましく、より好ましくは20%以内に制御する。また、幅方向の膜厚の均一性は、特に限定されないが、30%以内に制御することが好ましく、より好ましくは20%以内に制御する。なお、本実施形態において、連続長さ方向の膜厚の均一性及び幅方向の膜厚の均一性は、平均値に対する標準偏差の値(%)、すなわち(標準偏差/平均値)×100(%)を表す。
【0096】
樹脂組成物層を耐熱フィルム上に塗布した後の加熱、及び乾燥工程は、特に限定されないが、例えば、60~100℃の乾燥機中で、1~60分加熱させる方法等により行うことができる。本実施形態では、加熱、及び乾燥工程を経ることにより、半硬化状態の樹脂組成物層を得ることができる。
【0097】
<保護フィルム>
本実施形態の積層体は、耐熱フィルム層上に形成された第1及び第2の樹脂組成物層を保護するために保護フィルムを含んでもよい。保護フィルムは、回路基板への積層を行うまでの間、積層体の流通過程において、ほこりやゴミの付着を防止すると共に、樹脂組成物層の表面を物理的ダメージから守り、樹脂組成物層を保護することができる。このような保護フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリ塩化ビニル等のポリオレフィン;PET(ポリエチレンテレフタレート)、及びPEN(ポリエチレンナフタレート)等のポリエステル;PC(ポリカーボネート);ポリイミド等のフィルムを挙げることができる。なお、保護フィルムには、マッド処理、及びコロナ処理の他、離型処理が施されていてもよい。保護フィルムの厚さは、特に限定されないが、例えば、5~30μmの範囲である。保護フィルムには、着色がされていてもよいし、保護フィルムである旨の記載があってもよい。保護フィルムの積層方法は、例えば、後述の金属箔張積層体における積層方法を参照できる。
【0098】
[金属箔張積層体]
本実施形態の金属箔張積層体は、本実施形態の積層体と、この積層体の片面又は両面に配された金属箔とを有する。本実施形態では、第1の樹脂組成物層及び/又は第2の樹脂組成物層の表面に金属箔を積層して、加熱しながら、積層体の積層方向に加圧することで金属箔張積層体を得ることができる。本実施形態の積層体を用いると、高強度で、薄型の金属箔張積層板を得ることができる。
【0099】
金属箔としては、特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、及びこれらのうちの2種以上の金属からなる合金が挙げられる。好ましくは、電気伝導度の点から、銅である。第1の樹脂組成物層及び第2の樹脂組成物層に積層される金属箔は、同じであっても異なってもよいが、同じであることが好ましい。金属箔の厚さは、特に限定されないが、それぞれ通常1~18μmであり、レーザー穴あけ加工性が容易な点から、1~15μmであることが好ましく、1~12μmであることがより好ましい。厚さは、両面で同じであっても異なってもよいが、同じであることが好ましい。
【0100】
金属箔としては、例えば、JX日鉱日石金属(株)製GHY5(商品名、12μm厚銅箔)、三井金属鉱業(株)製3EC-VLP(商品名、12μm厚銅箔)及び3EC-III(商品名、18μm厚銅箔)等の市販品を使用することもできる。また、金属箔と樹脂組成物層との間にそれらを接着するための接着層をそれぞれ設けてもよく、接着層付きの金属箔を使用してもよい。接着層の材質は、特に限定されず、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、及びポリエステル系樹脂が使用できる。
【0101】
加熱及び加圧処理の方法は、特に限定されないが、例えば、真空(減圧)ホットプレス及び真空(減圧)ラミネートを挙げることができる。中でも、真空(減圧)ホットプレスが、接着強度をより高くすることができるので好ましい。
【0102】
加熱温度は、特に限定されないが、180~230℃であることが好ましく、190~220℃であることがより好ましい。加熱温度が上記範囲であれば、第1の樹脂組成物層、耐熱フィルム層、及び第2の樹脂組成物層の接着をより十分に行うことができる。
【0103】
加圧圧力は、特に限定されないが、1~4MPaであることが好ましく、2.5~3.5MPaであることがより好ましい。加圧圧力が上記範囲であれば、第1の樹脂組成物層、耐熱フィルム層、及び第2の樹脂組成物層の接着をより十分に行うことができる。
【0104】
加熱及び加圧の時間は、特に限定されないが、30~300分間が好ましく、40~120分間がより好ましい。加熱及び加圧の時間が上記範囲であれば、第1の樹脂組成物層、耐熱フィルム層、及び第2の樹脂組成物層の接着をより十分に行うことができる。
【0105】
[パターニングされた金属箔付き積層体]
本実施形態のパターニングされた金属箔付き積層体は、本実施形態の積層体と、この積層体の片面又は両面に配され、パターニングされた金属箔とを有する。本実施形態では、銅箔張積層体における金属箔を適宜、マスキング及びパターニングすることでパターニングされた金属箔付き積層体を得ることができる。マスキング及びパターニングは、プリント配線板の製造において行われる公知のマスキング及びパターニングを用いることができ、特に限定されないが、例えば、サブトラクティブ法によってパターニングする(回路パターンを形成する)ことが好ましい。金属箔については、前記のとおりである。
【0106】
サブトラクティブ法によるマスキング及びパターニングは、例えば、次のようにして行うことができる。金属箔の全面に、温度110±10℃、及び圧力0.50±0.02MPaで感光性ドライフィルムレジスト(日立化成製RD-1225(商品名))を積層貼着(ラミネート)する。次いで、金属箔の所定の回路パターンに沿って露光し、マスキングを行う。その後、1質量%炭酸ナトリウム水溶液にて両面のドライフィルムレジストを現像処理し、金属箔において、エッチングレジストに覆われていない部分の金属箔を塩化第二銅水溶液で除去し、最終的にアミン系のレジスト剥離液(例えば、菱江化学社製クリーンエッチ(登録商標)EF-105A R-100(商品名))にてドライフィルムレジストを剥離する。これにより、パターニングされた金属箔付き積層体を形成することができる。
【0107】
[ビルドアップ構造を有する積層体]
本実施形態の積層体は、例えば、プリント配線板、多層コアレス基板、及び半導体素子搭載用基板のビルドアップ構造を有する積層体に用いることができる。ビルドアップ構造を有する積層体は、例えば、本実施形態の積層体と、導体層とが、交互に積層された構造を有する。ビルドアップ構造を有する積層体は、本実施形態の積層体と、導体層とが交互に積層されており、それらを加熱しながらそれらの積層方向に加圧する工程を1つ又は2つ以上を有する方法により製造することができる。導体層は、特に限定されないが、例えば、前記の金属箔を用いることができる。また、導体層には、金属箔を適宜、マスキング及びパターニングして、回路パターンが形成されていてもよい。マスキング及びパターニングの方法は、前記を参照できる。
また、ビルドアップ構造を有する積層体は、本実施形態の積層体の片面又は両面に、更に金属箔(導体層)、及び絶縁樹脂層が積層され、それらを加熱しながらそれらの積層方向に加圧する工程を1つ又は2つ以上を有する方法により製造することもできる。すなわち、前記工程を少なくとも1回以上繰り返すことで、ビルドアップ構造を有する積層体を作製することもできる。導体層及び絶縁樹脂層の積層の順番は特に限定されない。ビルドアップ構造を有する積層体は、複数の導体層と絶縁樹脂層とを有し、導体層が、各絶縁樹脂層の間、及びビルドアップ構造の最外層の表面に配置される構成とすることができる。この際、絶縁樹脂層の数は、特に限定されないが、例えば、3層又は4層とすることできる。ビルドアップ構造を有する積層体の絶縁樹脂層に使用できる絶縁材料は、特に限定されないが、公知の絶縁材料を用いることができる。このような絶縁材料としては、例えば、第1の樹脂組成物層及び第2の樹脂組成物層に用いられる熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物であってもよく、プリプレグであってもよい。プリプレグとは、ガラス繊維及び有機繊維等の繊維状補強材に樹脂組成物を添着させた材料である。また、金属箔は、特に限定されないが、例えば、前記金属箔が参照できる。導体層は、特に限定されないが、例えば、前記導体層が参照できる。
【0108】
また、本実施形態の積層体は、例えば、プリント配線板、多層コアレス基板、及び半導体素子搭載用基板のビルドアップ材料用のコアレス基板の作製用途に用いることもできる。コアレス基板としては、例えば、2層以上のコアレス基板が挙げられ、例えば、3層コアレス基板が挙げられる。コアレス基板の構成については、後述する。
【0109】
ビルドアップ構造を有する積層体では、薄膜化の要望を実現する観点から、少なくとも1層の絶縁樹脂層の厚さが4~15μmであることが好ましい。絶縁樹脂層の厚さは、種々の積層体用途によって異なるが、例えば、6~14μmがより好ましく、8~12μmが更に好ましい。
【0110】
ビルドアップ構造を有する積層体を製造する際の加熱及び加圧処理の方法、加熱温度、加圧圧力、並びに加熱及び加圧処理の時間は、特に限定されないが、例えば、前記の金属箔張積層体に記載の、加熱及び加圧処理の方法、加熱温度、加圧圧力、並びに加熱及び加圧処理の時間を参照できる。
【0111】
[プリント配線板]
本実施形態の積層体は、プリント配線板の用途に好適に用いることができる。本実施形態のプリント配線板は、本実施形態の積層体を含み、通常、コア基材と呼ばれる絶縁樹脂層が完全硬化した金属箔張積層体に対し、ビルドアップ材料として本実施形態の積層体を用いることにより得ることができる。本実施形態の積層体を用いると、例えば、厚い支持基板(キャリア基板)を用いずに、高強度で、高密度な微細配線が形成された、薄型のプリント配線板を製造することができる。また、本実施形態の積層体を用いて得られるプリント配線板は、各層間における密着力及び生産性(歩留率)に優れる。
【0112】
コア基材の表面には、通常、当業界で用いられる金属箔張積層体の金属箔、又は金属箔を剥離した後にめっきする等して得られる導体層により導体回路が形成される。コア基材は、特に限定されないが、主として、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、ビスマレイミドトリアジン樹脂の基板、及び熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成される。また、多層プリント配線板を製造する際に、更に絶縁樹脂層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物の内層回路基板も本実施形態でいう回路基板に含まれる。なお、導体層(回路)表面は、黒化処理等により予め粗化処理が施されていた方が絶縁樹脂層の回路基板への密着性の観点から好ましい。金属箔は、特に限定されないが、例えば、前記金属箔が参照できる。導体層は、特に限定されないが、例えば、前記導体層が参照できる。
【0113】
本実施形態において、ビルドアップとは、この表面導体回路に対して本実施形態の積層体における半硬化状態の樹脂組成物層を積層させる方法である。その後、通常半硬化状態の樹脂に対して熱処理等を行って完全硬化させることでプリント配線板を得ることができる。
【0114】
プリント配線板の製造では、必要に応じて、各導体層を電気的に接続するため、ビアホール及び/又はスルーホール等の穴加工が行われる。穴加工は、通常、メカニカルドリル、炭酸ガスレーザー、UVレーザー、及びYAGレーザー等を用いて行う。
【0115】
この穴加工が行われた場合、その後、デスミア処理を含む粗化処理を行うことが好ましい。なお、通常、粗化処理は、膨潤工程、表面粗化、及びスミア溶解工程、並びに中和工程からなる。
【0116】
膨潤工程は、膨潤剤を用いて絶縁樹脂層の表面を膨潤させることにより行う。膨潤剤としては、特に限定されないが、絶縁樹脂層の表面の濡れ性が向上し、次の表面粗化及びスミア溶解工程において酸化分解が促進される程度にまで絶縁樹脂層の表面を膨潤させることができるものが好ましい。具体例としては、アルカリ溶液、及び界面活性剤溶液等が挙げられる。
【0117】
表面粗化及びスミア溶解工程は、酸化剤を用いて行う。酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ性の過マンガン酸塩溶液等が挙げられ、過マンガン酸カリウム水溶液、及び過マンガン酸ナトリウム水溶液が好ましい。かかる酸化剤処理はウェットデスミアと呼ばれるが、ウェットデスミアに加えて、プラズマ処理及びUV処理によるドライデスミア、バフ等による機械研磨、並びにサンドブラスト等の他の公知の粗化処理を、適宜組み合わせて実施してもよい。
【0118】
中和工程は、前工程で使用した酸化剤を還元剤で中和するものである。還元剤としては、アミン系還元剤が挙げられ、ヒドロキシルアミン硫酸塩水溶液、エチレンジアミン四酢酸水溶液、及びニトリロ三酢酸水溶液等の酸性水溶液が好ましい。
【0119】
本実施形態において、ビアホール及び/又はスルーホールを設けた後、又はビアホール及び/又はスルーホール内をデスミア処理した後に、各導体層を電気的に接続するために金属めっき処理することが好ましい。
【0120】
金属めっき処理の方法としては、特に限定されないが、通常のプリント配線板の製造における金属めっき処理の方法を適宜用いることができる。金属めっき処理の方法及びめっきに使用される薬液の種類は、特に限定されないが、通常のプリント配線板の製造における金属めっき処理の方法及び薬液を適宜用いることができる。金属めっき処理に使用される薬液は、市販品であってもよい。
金属めっき処理方法としては、特に限定されないが、例えば、脱脂液による処理、ソフトエッチング液による処理、酸洗浄、プレディップ液による処理、キャタリスト液による処理、アクセレーター液による処理、化学銅液による処理、酸洗浄、及び硫酸銅液に浸漬し電流を流す処理が挙げられる。
【0121】
樹脂組成物層に対して導体層を形成する金属めっき工程は、例えば、粗化処理により凹凸が形成された樹脂組成物層表面に無電解めっきと電解めっきを組み合わせた方法で導体層を形成するか、又は無電解めっきのみで導体層を形成することにより行われる。導体層としては、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、及び金等の金属、並びにこれら金属の合金等で形成できるが、銅がより好ましい。銅めっき層は、無電解銅めっきと電解銅めっきを組み合わせた方法か、導体層とは逆パターンのめっきレジストを形成し、無電解銅めっきのみで導体層を形成することができる。
【0122】
回路形成工程は、セミアディティブ法、フルアディティブ法、及びサブトラクティブ法等が挙げられる。中でも、微細配線パターンを形成する観点からは、セミアディティブ法が好ましい。
【0123】
セミアディティブ法でパターン形成する手法としては、特に限定されないが、例えば、絶縁樹脂層表面に無電解めっき等により薄い導体層を形成した後、めっきレジストを用いて選択的に電解めっきを施し(パターンめっき)、その後めっきレジストを剥離し、全体を適量エッチングして配線パターン形成する手法が挙げられる。
【0124】
めっきにより配線パターンを形成する際に、絶縁樹脂層と導体層との密着強度を向上させる観点から、めっきの後に乾燥工程を行うことが好ましい。セミアディティブ法によるパターン形成では、無電解めっきと電解めっきとを組み合わせて行うが、その際、無電解めっきの後と、電解めっきの後に、それぞれ乾燥を行うことが好ましい。無電解後の乾燥は、例えば、80~180℃で10~120分にて行うことが好ましく、電解めっき後の乾燥は、例えば、130~220℃で10~120分にて行うことが好ましい。めっきとしては、銅めっきが好ましい。
【0125】
また、プリント配線板の表面に絶縁樹脂層が存在する場合には、この樹脂組成物層に対して表面処理し、めっき等により導体層を設け、この導体層を用いてパターン回路を形成することができる。めっきによりパターン形成する場合には、めっき処理を行う前に樹脂組成物層表面に粗化処理を行うことが好ましい。
【0126】
ビルドアップ法における積層方法としては、真空加圧式ラミネーターを好適に用いることができる。この場合、本実施形態の積層体に対してゴム等の弾性体を介して積層する方法が好ましい。ラミネート条件としては、当業界で一般に使用されている条件であれば特に限定されないが、例えば、70~140℃の温度、1~11kgf/cm2の接触圧力、並びに20hPa以下の減圧雰囲気下で行われる。ラミネート工程の後に、金属板による熱プレスにより、ラミネートされた接着フィルムの平滑化を行ってもよい。上記ラミネート工程及び平滑化工程は、市販されている真空加圧式ラミネーターによって連続的に行うことができる。ラミネート工程の後、又は平滑化工程の後、熱硬化工程を行うことができる。熱硬化工程は、樹脂組成物を完全硬化する。熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なるが、通常、硬化温度が170~190℃、及び硬化時間が15~60分である。
【0127】
本実施形態では、プリント配線板に、更に絶縁樹脂層及び/又は導体層を積層させ、多層プリント配線板を得ることもできる。多層プリント配線板の内層には、回路基板を有していてもよい。本実施形態の積層体は、多層プリント配線板の絶縁樹脂層の一つを構成することになる。そのため、本実施形態によれば、高密度な微細配線が形成された、薄型で高強度な多層プリント配線板を得ることができる。
【0128】
積層の方法は、特に限定されないが、通常のプリント配線板の積層成形に一般に使用される方法を用いることができる。積層方法としては、例えば、多段プレス、多段真空プレス、ラミネーター、真空ラミネーター、及びオートクレーブ成形機等が挙げられる。積層時の温度は、特に限定されないが、例えば、100~300℃、圧力は、特に限定されないが、例えば、0.1~100kgf/cm2(約9.8kPa~約9.8MPa)、加熱時間は、特に限定されないが、例えば、30秒~5時間の範囲で適宜選択して行う。また、必要に応じて、例えば、150~300℃の温度範囲で後硬化を行い、硬化度を調整してもよい。
【0129】
[半導体素子搭載用基板]
半導体素子搭載用基板は、例えば、本実施形態の金属箔張積層板に、絶縁樹脂層及び導電層を積層させて得ることができる。絶縁樹脂層及び導体層は、特に限定されないが、例えば、前記の絶縁樹脂層及び導体層を参照できる。また、半導体素子搭載用基板は、本実施形態の積層体の外層に、更にサブトラクティブ法によって回路パターンを形成する工程を有する製造方法により得ることもできる。回路パターンは、積層体の片面にだけ形成されてもよく、両面に形成されてもよい。サブトラクティブ法によって回路パターンを形成する方法は、特に限定されないが、通常のプリント配線板の製造において行われている方法であってもよい。
【0130】
[多層コアレス基板(多層プリント配線板)]
本実施形態の積層体は、コアレス基板の製造に用いることができる。コアレス基板の一例として、多層コアレス基板が挙げられる。
多層コアレス基板は、例えば、本実施形態の積層体の両面に積層された1つ又は複数の導体層と、複数の導体層の各々の間に設置された絶縁樹脂層とを有する。絶縁樹脂層及び導体層は、特に限定されないが、例えば、前記の絶縁樹脂層及び導体層を参照できる。なお、各導体層は、パターニングされていてもよい。また、多層コアレス基板は、各導体層同士が電気的に接続されたビアホール及び/又はスルーホールを有していてもよい。パターニング、ビアホール、及びスルーホール、並びにこれらの作製方法については、特に限定されず、前記を参照できる。
【0131】
多層コアレス基板は、導体層表面に、本実施形態の積層体における、第1の樹脂組成物層又は第2の樹脂組成物層を積層させる工程を含み、例えば、次の方法により得ることができる。
まず、Bステージとしたプリプレグ(例えば、三菱ガス化学(株)製GHPL-830NS ST56(商品名)、厚さ0.100mm)の両面に、剥離層付き金属箔(例えば、JX日鉱日石金属株式会社製PCS(商品名)、銅箔の厚さ12μm)の剥離層面をプリプレグ側に向けて配置し、温度180~220℃、圧力2~3MPa、及び保持時間60~120分間の条件にて真空プレスを実施する。これにより、プリプレグが硬化し、絶縁樹脂層が形成され、この絶縁樹脂層の両面に、剥型層と金属箔とがこの順で設けられた支持基板が得られる。
【0132】
次いで、この支持基板の両面の金属箔面に、本実施形態の積層体における第1の樹脂組成物層を配置し、更に、本実施形態の積層体における第2の樹脂組成物層の表面に金属箔(例えば、三井金属鉱業社製3EC-VLP(商品名)、銅箔の厚さ12μm)を配置し、温度180~220℃、圧力2~3MPa、及び保持時間60~120分間の条件にて真空プレスを実施し、金属箔張積層板を得る。なお、支持基板の両面の金属箔面は、第1の樹脂組成物層との密着性を得るために、公知の粗化処理を施していることが好ましい。このような粗化処理としては、例えば、銅表面粗化液(例えば、メック株式会社製CZ-8100(商品名))を用いた方法が挙げられる。
【0133】
次いで、前記で得られた金属箔張積層板の両面に配された金属箔を、所定の配線パターンにエッチングして導体層を形成し、パターニングされた金属箔付き積層体を得る。パターニングについては、特に限定されないが、前記を参照できる。
【0134】
次いで、前記で得られたパターニングされた金属箔付き積層体の両面の金属箔面に、金属箔付き絶縁樹脂層(例えば、三菱ガス化学株式会社製CRS-381NSI(商品名)、厚さ:15μm)の絶縁樹脂層面側を、パターニングされた金属箔付き積層体の金属箔側に向けて配置し、温度180~220℃、圧力2~3MPa、及び保持時間60~120分間の条件にて真空プレスを実施し、金属箔張積層板を得る。なお、パターニングされた金属箔付き積層体の金属箔面は、絶縁樹脂層との密着性を得るために、公知の粗化処理を施していることが好ましい。このような粗化処理としては、例えば、銅表面粗化液(例えば、メック株式会社製CZ-8100(商品名))を用いた方法が挙げられる。また、絶縁樹脂層及び金属箔としては、特に限定されないが、前記の絶縁樹脂層及び金属箔を参照できる。
【0135】
次いで、前記で得られた金属箔張積層板において、支持基板に配された剥離層付き金属箔と、絶縁樹脂層との境界部である剥離層に物理的な力を加えて、剥離することにより、支持基板から2枚のコアレス基板を剥離する。得られたコアレス基板の上下の金属箔上に、ハーフエッチング、及びレーザー加工機によりビアホール及び/又はスルーホール等の穴あけ加工を行い、無電解めっき及び/又は電解めっきを施し、所定の配線パターンを形成し、多層コアレス基板を得る。ハーフエッチングとしては、公知の方法を用いることができ、特に限定されないが、例えば、過酸化水素及び硫酸溶液によるエッチングが挙げられる。穴あけ加工、無電解めっき、及び電解めっきについては、特に限定されないが、前記の方法を参照できる。
【実施例
【0136】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0137】
〔実施例1〕
(積層体1Aの作製)
2,2'-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン400質量部を150℃に溶融させ、撹拌しながら4時間反応させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算で質量平均分子量1,900のプレポリマーを得た。これをメチルエチルケトン200質量部に溶解し、ワニス1とした。このワニス1の600質量部(全量)に対して、室温で液状のエポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製エピコート(登録商標)828(商品名))100質量部と、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業(株)製EXA830LVP(商品名))150質量部と、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(ダウケミカル(株)製DEN438(商品名))150質量部と、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(住友化学工業(株)製ESCN220F(商品名))200部とを配合し、硬化触媒としてアセチルアセトン鉄0.3質量部をメチルエチルケトン100質量部に溶解して加え、良く攪拌混合して均一なワニス2にした。その後、ワニス2にメチルエチルケトンを加え、粘度を50mPa・sに調整した。なお、ワニス中の溶媒量は、ワニス100質量%に対して、120質量%であった。
【0138】
グラビア塗工装置(テクノスマート株式会社製120R-75(商品名))を用いて、このワニス2を表面平滑な耐熱フィルム層(厚さ:7μm、ポリイミド樹脂、東レ・デュポン株式会社製(カプトン(登録商標))の両面に塗布し、乾燥することで、Bステージ化した第1の樹脂組成物層及びBステージ化した第2の樹脂組成物層を形成し、Bステージ化した第1の樹脂組成物層、耐熱フィルム層及びBステージ化した第2の樹脂組成物層と、がこの順で積層された積層体1を得た。なお、連続長さ方向の膜厚の均一性及び幅方向の膜厚の均一性は、それぞれ20%以内であった。
【0139】
(銅箔張積層体2Aの作製)
前記で得られた積層体1における、第1の樹脂組成物層及び第2の樹脂組成物層のそれぞれの表面に、銅箔(厚さ:12μm、三井金属鉱業社製3EC-VLP(商品名))のマット面側を配置し、真空(減圧)下、加熱温度200℃にて、積層方向へのプレス圧力3MPaで60分間プレス処理を施し、銅箔張積層体1を得た。
【0140】
(パターニングされた銅箔付き積層体3Aの作製)
前記で得られた銅箔張積層体2Aにおける、銅箔の両面に、温度110±10℃、圧力0.50±0.02MPaにて、感光性ドライフィルムレジスト(日立化成(株)製RD-1225(商品名))をラミネートした。その後、ラミネートしたドライフィルムレジストを所定の回路パターンに沿って露光し、マスキングを行った。その後、1質量%炭酸ナトリウム水溶液にて両面のドライフィルムレジストを現像処理し、銅箔において、エッチングレジストに覆われていない部分の銅箔を塩化第二銅水溶液で除去し、最終的にアミン系のレジスト剥離液(菱江化学社製クリーンエッチ(登録商標)EF-105A R-100)にてドライフィルムレジストを剥離し、パターニングされた銅箔付き積層体3Aを得た。
【0141】
〔実施例2〕
図1に示される工程に従って、3層コアレス基板を作製した。
(支持基板1Bの作製)
ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)をガラスクロス(ガラス繊維)に含浸させてBステージとしたプリプレグ(厚さ0.100mm、三菱ガス化学(株)製GHPL-830NS ST56(商品名))の両面に、厚さ12μmの銅箔13にシラン化合物で構成された剥型層12が塗布により形成された剥型層付銅箔(JX日鉱日石金属株式会社製PCS(商品名))を、剥型層12面が前記プリプレグと接するように配置した。その後、温度220±2℃、圧力5±0.2MPa、保持時間60分間の条件にて真空プレスを実施し、プリプレグを硬化させて絶縁樹脂層11を形成し、前記絶縁樹脂層11の両面に、剥型層12と銅箔13とがこの順で設けられた支持基板1Bを作製した。
【0142】
(積層体2Bの作製)
実施例1において、実施例1と同様の製法にて、ワニス2を調製した(粘度:60mPa、ワニスの溶媒量:120質量%)。このワニス2を用いて、Bステージ化した第1の樹脂組成物層21、耐熱フィルム層22、及びBステージ化した第2の樹脂組成物層23と、がこの順で積層された積層体2Bを得た。
【0143】
(銅箔張積層体3Bの作製)
積層体2Bにおける第1の樹脂組成物層21との密着力を得るため、支持基板1Bの表面を、銅表面粗化液(メック株式会社製CZ-8100(商品名))を用いて粗化処理を施した。次いで、支持基板1Bの両面の銅箔13面に、前記で得られた積層体2Bの第1の樹脂組成物層21をそれぞれの銅箔13面に配置し、更に、積層体2Bの両面に配された第2の樹脂組成物層23に、銅箔31(厚さ:12μm、三井金属鉱業社製3EC-VLP(商品名))のマット面側をそれぞれ配置し、真空(減圧)下、加熱温度200℃にて、積層方向へのプレス圧力3MPaで60分間プレス処理を施し、銅箔張積層体3Bを得た。
【0144】
(パターニングされた銅箔付き積層体4Bの作製)
前記で得られた銅箔張積層体3Bにおける、銅箔31の両面に、温度110±10℃、圧力0.50±0.02MPaにて、感光性ドライフィルムレジスト(日立化成(株)製RD-1225(商品名))をラミネートした。その後、ラミネートしたドライフィルムレジストを所定の回路パターンに沿って露光し、マスキングを行った。その後、1質量%炭酸ナトリウム水溶液にて両面のドライフィルムレジストを現像処理し、銅箔31において、エッチングレジストに覆われていない部分の銅箔31を塩化第二銅水溶液で除去し、最終的にアミン系のレジスト剥離液(菱江化学社製クリーンエッチ(登録商標)EF-105A R-100)にてドライフィルムレジストを剥離し、パターニングされた銅箔付き積層体4Bを得た。
【0145】
(銅箔張積層体5Bの作製)
前記のパターニングされた銅箔付き積層体4Bに対して、絶縁樹脂層51との密着力を得るため、このパターニングされた銅箔付き積層体4Bの銅箔31の表面を、銅表面粗化液(メック株式会社製CZ-8100(商品名))を用いて粗化処理を施した。次いで、このパターニングされた銅箔付き積層体4Bの銅箔31の両面に、銅箔付き絶縁樹脂層(三菱ガス化学株式会社製CRS-381NSI(商品名)、厚さ:15μm)の絶縁樹脂層51面側を配置し、真空(減圧)下、加熱温度200℃にて、積層方向へのプレス圧力3MPaで60分間プレス処理を施し、最表面に銅箔52が積層された銅箔張積層体5Bを得た。
【0146】
(3層コアレス基板6Bの作製)
前記で得られた銅箔張積層体5Bにおいて、支持基板1Bに配された銅箔13と、絶縁樹脂層11との境界部(剥離層12)に物理的な力を加えて剥離させて、3層コアレス基板6Bを得た。その後、ハーフエッチングを行い、炭酸ガスレーザー加工、及びデスミア処理を含む粗化処理を施すことで、所望の位置にビアホールを形成した。その後、無電解銅めっき及び電解銅めっきを組み合わせることで、導体層及び外層に銅層を形成した。その後、セミアディティブ法にて、パターン回路を形成することでパターニングされた3層コアレス基板7Bを得た。
【0147】
〔比較例1〕
(積層体1Cの作製)
実施例1において、実施例1と同様の製法にて、ワニス2を調製した(粘度:100mPa、ワニスの溶媒量:30質量%)。このワニス2を用いて、Bステージ化した第1の樹脂組成物層、耐熱フィルム層、及びBステージ化した第2の樹脂組成物層と、がこの順で積層された積層体1Cを得た。
【0148】
(銅箔張積層体2C、及びパターニングされた銅箔付き積層体3Cの作製)
前記で得られた積層体1Cを用いて、実施例1と同様にして、銅箔張積層体2C、及びパターニングされた銅箔付き積層体3Cを得た。
【0149】
〔比較例2〕
(支持基板1Dの作製)
ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)をガラスクロス(ガラス繊維)に含浸させてBステージとしたプリプレグ(厚さ0.100mm、三菱ガス化学(株)製GHPL-830NS ST56(商品名))の両面に、厚さ12μmの銅箔にシラン化合物で構成された剥型層が塗布により形成された剥型層付銅箔(JX日鉱日石金属株式会社製PCS(商品名))を、剥型層面が前記プリプレグと接するように配置した。その後、温度220±2℃、圧力5±0.2MPa、保持時間60分間の条件にて真空プレスを実施し、プリプレグを硬化させて絶縁樹脂層を形成し、前記絶縁樹脂層の両面に、剥型層と銅箔とがこの順で設けられた支持基板1Dを作製した。
【0150】
(積層体2Dの作製)
実施例1において、実施例1と同様の製法にて、ワニス2を調製した(粘度:50mPa、ワニスの溶媒量:30質量%)。このワニス2を用いて、Bステージ化した第1の樹脂組成物層、耐熱フィルム層、及びBステージ化した第2の樹脂組成物層と、がこの順で積層された積層体2Dを得た。
【0151】
(銅箔張積層体3Dの作製)
積層体2Dにおける第1の樹脂組成物層との密着力を得るため、支持基板1Dの表面を、銅表面粗化液(メック株式会社製CZ-8100(商品名))を用いて粗化処理を施した。次いで、支持基板1Dの両面の銅箔面に、前記で得られた積層体2Dの第1の樹脂組成物層をそれぞれの銅箔面に配置し、更に、積層体2Dの両面に配された第2の樹脂組成物層に、銅箔(厚さ:12μm、三井金属鉱業社製3EC-VLP(商品名))のマット面側をそれぞれ配置し、真空(減圧)下、加熱温度200℃にて、積層方向へのプレス圧力3MPaで60分間プレス処理を施し、銅箔張積層体3Dを得た。
【0152】
(パターニングされた銅箔付き積層体4Dの作製)
前記で得られた銅箔張積層体3Dにおける、銅箔の両面に、110±10℃、圧力0.50±0.02MPaにて、感光性ドライフィルムレジスト(日立化成(株)製RD-1225(商品名))をラミネートした。その後、ラミネートしたドライフィルムレジストを所定の回路パターンに沿って露光し、マスキングを行った。その後、1質量%炭酸ナトリウム水溶液にて両面のドライフィルムレジストを現像処理し、銅箔において、エッチングレジストに覆われていない部分の銅箔を塩化第二銅水溶液で除去し、最終的にアミン系のレジスト剥離液(菱江化学社製クリーンエッチ(登録商標)EF-105A R-100)にてドライフィルムレジストを剥離し、パターニングされた銅箔付き積層体4Dを得た。
【0153】
(銅箔張積層体5Dの作製)
前記のパターニングされた銅箔付き積層体4Dに対して、絶縁樹脂層との密着力を得るため、このパターニングされた銅箔付き積層体4Dの銅箔の表面を、銅表面粗化液(メック株式会社製CZ-8100(商品名))を用いて粗化処理を施した。次いで、このパターニングされた銅箔付き積層体4Dの銅箔の両面に、銅箔付き絶縁樹脂層(三菱ガス化学株式会社製CRS-381NSI(商品名)、厚さ:15μm)の絶縁樹脂層面側を配置し、真空(減圧)下、加熱温度200℃にて、積層方向へのプレス圧力3MPaで60分間プレス処理を施し、最表面に銅箔が積層された銅箔張積層体5Dを得た。
【0154】
(3層コアレス基板6Dの作製)
前記で得られた銅箔張積層体5Dにおいて、支持基板1Dに配された銅箔と、絶縁樹脂層との境界部(剥離層)に物理的な力を加えて剥離させて、3層コアレス基板6Dを得た。その後、ハーフエッチングを行い、炭酸ガスレーザー加工、及びデスミア処理を含む粗化処理を施すことで、所望の位置にビアホールを形成した。その後、無電解銅めっき及び電解銅めっきを組み合わせることで、導体層及び外層に銅層を形成した。その後、セミアディティブ法にて、パターン回路を形成することでパターニングされた3層コアレス基板7Dを得た。
【0155】
〔測定及び評価方法〕
(1)樹脂組成物層の膜厚の測定
マイクロウォッチャー(キーエンス社製VH-7000(商標名)、450倍)を用いて、実施例及び比較例で得られた積層体1A、2B、1C、及び2Dにおける、第1の樹脂組成物層及び第2の樹脂組成物層のそれぞれの最大厚さ及び最小厚さを測定した。また、測定された最大厚さ及び最小厚さを用いて平均の厚さ、及び最大厚さと最小厚さとの差を算出した。結果を表1に示す。
【0156】
(2)ボイドの測定試験
実施例及び比較例で得られたパターニングされた銅箔付き積層体3A、4B、3C、及び4Dを用いて、パターニングされた銅箔付き積層体の両面の銅箔を除去し、目視検査にて、除去後の積層体の両面におけるボイドの有無を確認した。ボイドの発生が認められない場合を「AA」と、ボイドの発生が認められた場合を「CC」として評価した。「AA」と評価された積層体は、密着性に優れ、薄型でも高強度であるプリント配線板、多層コアレス基板及び半導体素子搭載用基板を製造できることを示す。結果を表1に示す。
【0157】
(3)搬送性試験
ボイドの測定試験で用いた、銅箔除去後の積層体(第1の樹脂組成物層、耐熱フィルム層及び第2の樹脂組成物層をこの順で有する)を、100mm×50mmの矩形状にした後、剥離ライン(エミネント式現像エッチング剥離ラインの剥離部分、圧力0.1MPa、東京化工機(株)製)に投入し、水洗搬送することで積層体の破損の有無を確認した。
水洗搬送前の積層体の面積をAとし、水洗搬送後において積層体の破損していない部分の面積をBとした場合に、(B/A)×100の値が99%より大きいものを「AA」と評価し、それ以外のものを「CC」と評価した。「AA」と評価された積層体は、薄型でも高強度であるため、既存の装置を用いてもプリント配線板、多層コアレス基板及び半導体素子搭載用基板を製造できることを示す。結果を表1に示す。
【0158】
【表1】
【0159】
本出願は、2018月8月30日出願の日本特許出願(特願2018-161406)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明の積層体は、電子機器、通信機器、及びパーソナルコンピューター等の製造に用いることができ、プリント配線板及び半導体素子搭載用基板等のビルドアップ材料として有用である。
【符号の説明】
【0161】
1B…支持基板、11…絶縁樹脂層、12…剥離層、13…銅箔、2B…積層体、21…第1の樹脂組成物層、22…耐熱フィルム層、23…第2の樹脂組成物層、3B…銅箔張積層体、31…銅箔、4B…パターニングされた銅箔付き積層体、5B…銅箔張積層体、51…絶縁樹脂層、52…銅箔、6B…3層コアレス基板、7B…パターニングされた3層コアレス基板
図1