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  • 特許-電子部品の仮止め用シート状基板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】電子部品の仮止め用シート状基板
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/20 20180101AFI20221026BHJP
【FI】
C09J7/20
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2017014817
(22)【出願日】2017-01-12
(65)【公開番号】P2018111790
(43)【公開日】2018-07-19
【審査請求日】2017-10-30
【審判番号】
【審判請求日】2019-11-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593002654
【氏名又は名称】ナニワ化工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597163119
【氏名又は名称】株式会社サンラベル
(72)【発明者】
【氏名】田中 豊樹
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 繁
【合議体】
【審判長】亀ヶ谷 明久
【審判官】木村 敏康
【審判官】門前 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-184324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
200℃~350℃の高温下での加工処理を含む、電子部品(3)を加工処理する製造ラインに付設した台座(7)に取り付けられた基盤(6)に粘着付設されるところの電子部品の仮止め用シート状基板であって、ポリイミドからなる75ミクロン~50ミクロンの薄いシート状(1)の一側面(1A)に弱粘着強度を有するシリコーンからなる弱粘着層(2)を塗布して設け、
前記シート状基板(1)の他側面(1B)に、前記弱粘着層(2)よりも強粘着強度を有するシリコーンからなる強粘着層(4)を塗布して設け、
前記弱粘着層(2)と前記強粘着層(4)とを備えたシート状基板(1)にガス抜き用の多数の小孔(5)を所定の間隔で穿孔してあり、該小孔(5)は、パンチングにより穿孔され、孔径が、1.0mmで、孔間隔が1.4mmとされており、
前記シート状基板(1)は、前記弱粘着層(2)によって前記台座(7)の基板(6)に仮止めされ、前記弱粘着層(2)によって電子部品(3)を着脱容易に仮止めする状態と、前記強粘着層(4)によって、前記台座(7)の基板(6)に容易に仮止めされ、加工処理後に前記電子部品(3)を止め付け状態の前記シート状基板(1)を前記台座(7)から外してそのまま次工程に用い得る状態とに使い分けできるように構成してあり、前記弱粘着層(2)及び前記強粘着層(4)の表面には、被覆のためのライナーフィルム(2A)(4A)が付設されている、ことを特徴とする電子部品の仮止め用シート状基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電子基板、部品などを製造ラインに乗せて加工する際に用いる電子部品の仮止め用シート状基板の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子基板は、製造ラインに乗せられて、順次部品の付設、回路形成などの加工が行われるが、このような作業は、現況にあっては、ラインのコンベアに設けた台座に付設された取り付けプレートに、粘着性のあるシートを貼り付け、このシートの表面に基板或いは部品を粘着によって仮止めして行われている。
【0003】
この仮止めは、所要の作業が終わった際に、基板或いは部品を容易に外すことができるようにするためで、通常、上記シートに粘着性を持つ樹脂(例えばシリコーン樹脂)の塗布を行うことで行われている。
上記シートの大きさの範囲内でれば、部品の大きさや取り付け位置も容易に変更し易いという利点があると共にコンベアの台座のプレートに対しても着脱容易で、また、部品変更(サイズ等が異なる)に際してもシートの着脱変更が容易である。
【0004】
こうした技術に関連する従来技術は、例えば、次の文献に開示されている。
【文献】特開2012-20750
【文献】特開2003-179322
【文献】WO2014157128A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の如き手段を用いることで、電子部品の仮止めは容易に行い得るようになったが、次の事象が問題となった。
即ち、上述した粘着層(自己粘着)は、シート材に貼られた状態(塗布された状態)で、ラインの台座のプレートに粘着された後、外気に晒される粘着層の側縁部(例え厚みが50ミクロン程度でも)の樹脂に対する大気中の湿気の浸潤によって、内部に水分が溜まることになることが分かっており、これが、発泡を来して、(特に、製造ラインにおいては、200℃前後の雰囲気中での作業もある)粘着層を膨張させ、且つ、前記水分を気化させ、一側面がシート状基板で通気性が遮断されていることで(反対面は台座により通気遮断)、気泡が抜けず、部分的に粘着層の厚みを変えてしまい、結果として、仮り止めした電子部品の高さ位置が変化し、ライン上での精密加工を狂わせてしまうという問題である。
こうした問題は、上述した水分だけでなく、粘着層の樹脂(シリコーン)に含まれる、例えば、シロキサン等の発泡も問題となる。即ち、シロキサンが時間経過と共に帰化することで、また、前述の高温下での作業によって、粘着層内に気泡を発生し、逃げ場がないところから、粘着層の厚みを変化させてしまい、その後の電子部品に対する精密加工に不良を来すのである。
【0006】
本発明は、上述した電子部品の製造工程におけるラインにおける仮止めを、簡単な解決手段でもって常に正確に行い得るようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる電子部品の仮止め用シート状基板は、上記解決手段解決するべく、200℃~350℃の高温下での加工処理を含む、電子部品(3)を加工処理する製造ラインに付設した台座(7)に取り付けられた基盤(6)に粘着付設されるところの電子部品の仮止め用シート状基板であって、ポリイミドからなる75ミクロン~50ミクロンの薄いシート状(1)の一側面(1A)に弱粘着強度を有するシリコーンからなる弱粘着層(2)を塗布して設け、
前記シート状基板(1)の他側面(1B)に、前記弱粘着層(2)よりも強粘着強度を有するシリコーンからなる強粘着層(4)を塗布して設け、
前記弱粘着層(2)と前記強粘着層(4)とを備えたシート状基板(1)にガス抜き用の多数の小孔(5)を所定の間隔で穿孔してあり、該小孔(5)は、パンチングにより穿孔され、孔径が、1.0mmで、孔間隔が1.4mmとされており、
前記シート状基板(1)は、前記弱粘着層(2)によって前記台座(7)の基板(6)に仮止めされ、前記弱粘着層(2)によって電子部品(3)を着脱容易に仮止めする状態と、前記強粘着層(4)によって、前記台座(7)の基板(6)に容易に仮止めされ、加工処理後に前記電子部品(3)を止め付け状態の前記シート状基板(1)を前記台座(7)から外してそのまま次工程に用い得る状態とに使い分けできるように構成してあり、前記弱粘着層(2)及び前記強粘着層(4)の表面には、被覆のためのライナーフィルム(2A)(4A)が付設されている、
という手段を講じたものである。
【0008】
本発明において、電子部品とは、種々の電子機器に用いられる部品であって、如何なる部品であるかを問うものではない。
シート状基板とは、通常50ミクロン程度の厚みのポリイミドを用いた素材のものであるが、これに近似する均等物は全て含まれるものである。
また、自己粘着性を有する弱、強粘着層は、ここでは、シリコーンを用いるのが好ましいが、機能的に実質的に均等なものを代用してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電子部品の製造ラインで用いられる電子部品の仮止め用のシート状基板として、予め、シート状基板に、前記弱、強粘着層をも貫通する多数の小孔、ここでは、パンチングにより穿孔され、孔径が1.0mmで、孔間隔が1.4mm、を形成しておくことで、高温下(200℃~350℃程度であるが)での加工において粘着層で発生した水蒸気、樹脂内包の薬剤の気泡を、前記小孔を通して、シート状基板をも通り抜けて外気に逃がすことができ、これによって、前記粘着層の不測膨張を未然に回避し、部品を初期位置に仮止めした状態を維持し得て、精密な加工作業を行い得ると共に弱粘着層の側の電子部品のみを容易に取り外すことができるのである。しかも、前記弱粘着層をシリコーンからなる素材で構成しているので、前述の気抜き機能だけでなく柔軟であることから電子部品を装着した際に、その自重によって前記小孔がその孔径を小さくする方向に変形させることができて電子部品との接触表面積を大きくして、結果として粘着力を最大限に維持できることになって、電子部品の位置ずれを防止することができて、精度が要求されるライン上での爾後加工工程を安定して行い得るという利点がある。
【0010】
この際、シート状基板に小孔が多数穿孔されていて、電子部品に対する粘着性が小さくなるように思われるが、前記粘着層は、例えば、シリコーン等のような柔軟性を有するものであるから、前記電子部品を設置して粘着させる時に、前記小孔周辺が変形して、孔を小さくするように変形させる状態となり、粘着面積の大きな低下を防止できるのであり、これによって、十分な粘着性が確保できる。
また、本発明のシート状基板は表裏使い分け可能とできるので、台座側に弱粘着層を位置させた場合には、加工処理後に電子部品をシート状基板と一体的に外して、そのまま次工程(電子部品の製品組み込み)に持ち込むことができる利点もある。
本発明のその他の利点は以下の実施例の説明から明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施に際しては、前記小孔(5)がパンチングにより穿孔され、孔径が0.35mm乃至2.0mmで、孔間隔が0.5mm乃至3.0mmとされている、ことが好ましい。
【0012】
このように構成することで、粘着性強弱が得られて、台座の基板に対しての基板シートの取り付けは強力に粘着させ、電子部品の基板シートに対しては弱く粘着させ、以て、電子部品の着脱を容易に行いながら、台座に対しては強い力で取り外しを行うことができる。尤も、台座に対して弱粘着層の側を粘着する場合には、加工処理後に基板シートを電子部品と共に台座から外して、次工程(例えば電子部品の製品組み込み等)に持ち込むことができる。
前記小孔は、機械的なパンチングで容易に加工できると共に上述のサイズによって、強、弱粘着層のガス抜きを行いながら、孔周部の変形を許容するので、孔を塞ぐように変形して、孔穿孔に伴う表面積の減少を極力抑えることができて、粘着力を大きく損なうことがないのである。
【0013】
そして、前記弱粘着層(2)及び前記強粘着層(4)の表面には、被覆のためのライナーフィルム(2A)(4A)が付設されており、前記パンチング加工時及び搬送、取り扱い時には被覆され、使用時に剥離除去される構成とされていることが好ましい。
このように構成することで、パンチング加工をスムースに行い得ると共に粘着層が露出していないので、搬送、取り扱いが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明にかかるシート状基板の正面図。
図2】本発明にかかるシート状基板の要部の拡大縦断面図。
図3】本発明にかかるシート状基板の作用を示す模式図。
【実施例
【0015】
本発明にかかる電子部品の仮止め用シート状基板は、図に示すように、次のように構成されている。図示は、理解を助けるために、模式的に誇張した表示を採っている。
【0016】
本発明のシート状基板は、電子回路基板等の電子機器部品3を、回路形成等の加工処理する製造ラインに付設した台座7に取り付けられた基板6に粘着付設されるところの基板シートである。
合成樹脂素材からなる薄いシート状基板1、ここでは、ポリイミド製の厚さ、約75ミクロン~50ミクロンで構成されているものの一側面1A(表面とする)に弱粘着強度を有する弱粘着層2を塗布して設けてある。
【0017】
そして、前記弱粘着層2と前記強粘着層4とを備えたシート状基板1にガス抜き用の多数の小孔5を所定の間隔で穿孔してある。
ここでは、パンチングで機械的に穿孔されるが、孔径が1mmで、孔間隔が、1.4mm(孔の中心間の距離)としているが、0.35mm乃至2.0mmで、孔間隔が0.5mm乃至3.0mmとされているのが好ましい。
このように、前記シート状基板1は、前記強粘着層4によって、コンベアラインの前記台座7の基板6に仮止めされ、前記弱粘着層2によって、電子部品3を仮止めし、前記強粘着層4と前記弱粘着層2との粘着強度差によって、電子部品3の引き剥がしを容易に行い得るように構成してある。
【0018】
そして、前記弱粘着層2及び前記強粘着層4の表面には、被覆のためのライナーフィルム2A,4Aが付設されており、前記パンチング加工時及び搬送、取扱い時には被覆され、使用時に剥離除去される構成とされている。
このライナーフィルム2A,4Aは、ここでは、ポリイミドを用いているが、これに類似の物性のフィルムであれば、Pet等、適宜のものを用いてよい。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、シート状基板を貫通する孔を形成することで、電子部品の仮止めに用いる粘着層から生じる気泡等による厚み変化を解消できるもので、仮止め位置(高さ位置)を精密に維持させることができることで、加工を正確に行い得るので、簡単な手段でもって、電子部品の加工を正確に行い得るので、種々の電子部品など、精密加工を必要とする部品に対する加工を確実に行うことができ、その応用範囲は広いものである。
【符号の説明】
【0020】
1:シート状基板
1A:一側面
1B:他側面
2:弱粘着層
3:電子機器部品
4:強粘着層
5:小孔
6:基板
7:台座
図1
図2
図3