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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】圧電アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H01L 41/04 20060101AFI20221026BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20221026BHJP
   H01L 41/083 20060101ALI20221026BHJP
   H01L 41/047 20060101ALI20221026BHJP
   H02N 2/04 20060101ALI20221026BHJP
   G01B 7/16 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
H01L41/04
H01L41/09
H01L41/083
H01L41/047
H02N2/04
G01B7/16 R
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020034045
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021136409
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2021-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100208605
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 龍一
(72)【発明者】
【氏名】熊本 憲二
【審査官】柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-206536(JP,A)
【文献】特開2013-045866(JP,A)
【文献】特開2017-003370(JP,A)
【文献】特開平04-352480(JP,A)
【文献】国際公開第2010/110291(WO,A1)
【文献】特開2011-181958(JP,A)
【文献】特開2011-187847(JP,A)
【文献】特開昭60-086880(JP,A)
【文献】特開2018-110144(JP,A)
【文献】特開2018-023251(JP,A)
【文献】国際公開第2008/072767(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/04
H01L 41/09
H01L 41/083
H01L 41/047
H02N 2/04
G01B 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧の印加により変位する圧電アクチュエータであって、
複数の圧電素子を直列に連結して形成された圧電アクチュエータ本体と、
前記圧電アクチュエータ本体の変位方向の歪を検知する歪ゲージと、を備え、
前記複数の圧電素子は、前記歪ゲージが接着される接着部を有する第1の圧電素子と、前記歪ゲージが接着されない第2の圧電素子と、によって構成され、
前記第1の圧電素子は、最大収縮時の圧電伸縮部長さに対する最大変位量の割合である最大歪率について、少なくとも前記接着部における最大歪率が、前記第2の圧電素子の最大歪率より小さいことを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項2】
前記第1の圧電素子は、前記接着部における内部電極層の間隔が前記第2の圧電素子の内部電極層の間隔より広いことを特徴とする請求項1記載の圧電アクチュエータ。
【請求項3】
前記第1の圧電素子は、前記接着部における圧電層の圧電歪定数d33が前記第2の圧電素子の圧電層の圧電歪定数d33より小さいことを特徴とする請求項1記載の圧電アクチュエータ。
【請求項4】
前記第1の圧電素子は、前記接着部における内部電極の面積が前記第2の圧電素子の内部電極の面積より小さいことを特徴とする請求項1記載の圧電アクチュエータ。
【請求項5】
前記第1の圧電素子は、前記接着部における応力緩和層が前記第2の圧電素子の応力緩和層と比較して、その数が少ない、または面積が小さいことを特徴とする請求項1記載の圧電アクチュエータ。
【請求項6】
前記第1の圧電素子の前記接着部における最大歪率は、前記第2の圧電素子の最大歪率の80%以下であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の圧電アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧の印加により変位する圧電アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子は伸長時と収縮時で異なる変位特性(ヒステリシス)を示すため、半導体露光装置等の精密位置決めでは、変位センサによりフィードバック制御を行い位置決め精度を向上させて使用されている。また、精密な数値制御加工機の微動機構や医療用マニュピレータ、航空・宇宙用の精密な姿勢制御機構にも変位センサによりフィードバック制御を行った高精度の圧電アクチュエータが使用されている。さらに、半導体製造装置へ各種ガスを供給する流量調整バルブの駆動用としても圧電アクチュエータが使用されているが、制御流量の高精度化に伴い変位センサを内蔵したものが使用されるようになっている。
【0003】
特許文献1は、ヒステリシスを有する圧電変位部2を用い、ピストン3の変位量を高い精度で制御することを目的として、印加電圧に応じて伸縮する圧電変位部2、圧電変位部2の一端の伸縮力を受けるピストン3、圧電変位部2の他端の伸縮力を受けるベース4を備え、ピストン3は、圧電変位部2を覆う内筒14を備え、この内筒14の端にはベース4に接近した変位検出部15を備え、ベース4には、変位検出部15までの距離を検出する変位センサ7が固定されている圧電アクチュエータ1が記載されている。
【0004】
特許文献2は、電歪効果素子を用いた圧電アクチュエータの電圧-変位特性のヒステリシスを解消し、微小な移動量の検出精度を改善することを目的として、金属ケース7内に気密端子3や金属部材8によって密封した電歪効果素子1の側面に変位センサ2を設けて電歪効果素子に電気接続する圧電アクチュエータが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-153909号公報
【文献】特開平5-206536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
圧電アクチュエータ用の変位センサとしては非接触式の静電容量センサや渦電流センサが使用されることが多かった。しかしながら、特許文献1に示されるような、非接触式のセンサを用いたフィードバック制御方式を適用した場合、高精度な位置決めが可能になるが、システムが複雑で高価となり、用途も限定される。
【0007】
これに対し、特許文献2に示されているように、樹脂封止した圧電アクチュエータ本体に歪ゲージなどの変位センサを直接貼付し、部分的な変位信号を利用する簡易型のフィードバック制御も提案されている。歪ゲージは多くの場合、素子に直接貼り付けるだけであるため小型で安価な変位計となり、耐久性が向上することで多様な用途で使用されることが期待できる。
【0008】
圧電アクチュエータは高速で伸縮させる用途が多く、変位センサも同様な応答性および繰り返し耐久性が求められる。圧電アクチュエータを用いたバルブ等では数千万回レベルの開閉への耐久性が求められるため、歪ゲージも同等以上の耐久性が必要となる。例えば、ある歪ゲージは、1500ppmの歪率で疲労寿命が1000万回前後となっている。これぐらいの疲労寿命である場合、圧電アクチュエータ用の変位センサとしては耐久性が不足しているため、ゲージ部への負担を軽減する組込みを行い、耐久性を向上させることが必要となる。
【0009】
しかしながら、特許文献2記載の技術では、歪ゲージのゲージ部への負担を軽減する組込みを行い、耐久性を向上させることは考慮されていない。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、歪ゲージの最大歪率を小さくすることで、歪ゲージの耐久性を向上させ、その結果、耐久性が向上した歪ゲージを備える圧電アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の圧電アクチュエータは、電圧の印加により変位する圧電アクチュエータであって、複数の圧電素子を直列に連結して形成された圧電アクチュエータ本体と、前記圧電アクチュエータ本体の変位方向の歪率を検知する歪ゲージと、を備え、前記複数の圧電素子は、前記歪ゲージが接着される接着部を有する第1の圧電素子と、前記歪ゲージが接着されない第2の圧電素子と、によって構成され、前記第1の圧電素子は、少なくとも前記接着部における最大歪率が、前記第2の圧電素子の最大歪率より小さいことを特徴としている。
【0012】
このように、歪ゲージが接着される第1の圧電素子の少なくとも接着部の最大変位を小さくすることで、歪ゲージの最大歪率を小さくすることができ、歪ゲージの耐久性を向上させることができる。その結果、歪を検知する歪ゲージを備える圧電アクチュエータの耐久性が向上する。
【0013】
(2)また、本発明の圧電アクチュエータにおいて、前記第1の圧電素子は、前記接着部における内部電極層の間隔が前記第2の圧電素子の内部電極層の間隔より広いことを特徴としている。このように、第1の圧電素子の接着部における内部電極層の間隔を第2の圧電素子の内部電極層の間隔より広くすることで、第1の圧電素子の接着部の最大変位を小さくすることができる。その結果、歪ゲージの最大歪率を小さくすることができ、歪ゲージの耐久性を向上させることができる。
【0014】
(3)また、本発明の圧電アクチュエータにおいて、前記第1の圧電素子は、前記接着部における圧電層の圧電歪定数d33が前記第2の圧電素子の圧電層の圧電歪定数d33より小さいことを特徴としている。このように、第1の圧電素子の接着部における圧電層の圧電歪定数d33を、第2の圧電素子の圧電層の圧電歪定数d33より小さくすることで、第1の圧電素子の接着部の最大変位を小さくすることができる。その結果、歪ゲージの最大歪率を小さくすることができ、歪ゲージの耐久性を向上させることができる。
【0015】
(4)また、本発明の圧電アクチュエータにおいて、前記第1の圧電素子は、前記接着部における内部電極の面積が前記第2の圧電素子の内部電極の面積より小さいことを特徴としている。このように、第1の圧電素子の接着部における内部電極の面積を、第2の圧電素子の内部電極の面積より小さくすることで、第1の圧電素子の接着部の最大変位を小さくすることができる。その結果、歪ゲージの最大歪率を小さくすることができ、歪ゲージの耐久性を向上させることができる。
【0016】
(5)また、本発明の圧電アクチュエータにおいて、前記第1の圧電素子は、前記接着部における応力緩和層が前記第2の圧電素子の応力緩和層と比較して、その数が少ない、または面積が小さいことを特徴としている。このように、第1の圧電素子の接着部における応力緩和層を、第2の圧電素子の応力緩和層と比較して、その数を少なくする、または面積を小さいくすることで、第1の圧電素子の接着部の最大変位を小さくすることができる。その結果、歪ゲージの最大歪率を小さくすることができ、歪ゲージの耐久性を向上させることができる。なお、応力緩和層の数が少ないとは、応力緩和層が形成されないことも含む。
【0017】
(6)また、本発明の圧電アクチュエータにおいて、前記第1の圧電素子の前記接着部における最大歪率は、前記第2の圧電素子の最大歪率の80%以下であることを特徴としている。このように、第1の圧電素子の接着部における最大歪率のみを、第2の圧電素子の最大歪率の80%以下にすることで、歪ゲージの耐久性を向上させることができる。その結果、歪を検知する歪ゲージを備える圧電アクチュエータの耐久性が向上する。例えば、接着部における最大歪率を、第2の圧電素子の最大歪率の80%にする場合、歪ゲージの耐久性は2倍に向上する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、歪ゲージの最大歪率を小さくすることができ、歪ゲージの耐久性を向上させることができる。その結果、歪を検知する歪ゲージを備える圧電アクチュエータの耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(a)、(b)それぞれ本発明の圧電アクチュエータを示す正面図および側面図である。
図2】圧電素子の正断面図である。
図3】所定の最大変位を有する圧電素子とその半分の最大変位を有する圧電素子のそれぞれのヒステリシスを表すグラフである。
図4】歪ゲージの最大歪率と耐久性の関係を表すグラフである。
図5】変位制御システムの概略図である。
図6】(a)、(b)それぞれ本発明の密閉型の圧電アクチュエータを示す正断面図および側断面図である。
図7】(a)、(b)それぞれ座および端子の正断面図および底面図である。
図8】(a)、(b)それぞれ第1の実施形態の第1の圧電素子および第2の圧電素子を示す正断面図である。
図9】(a)~(c)それぞれ第1の実施形態の第1および第2の圧電素子の製造に使用されるグリーンシートを示す模式図である。
図10】(a)、(b)それぞれ第2の実施形態の第1の圧電素子および第2の圧電素子を示す正断面図である。
図11】(a)~(e)それぞれ第2の実施形態の第1および第2の圧電素子の製造に使用されるグリーンシートを示す模式図である。
図12】(a)、(b)それぞれ第3の実施形態の第1の圧電素子および第2の圧電素子を示す正断面図である。
図13】(a)~(e)それぞれ第3の実施形態の第1および第2の圧電素子の製造に使用されるグリーンシートを示す模式図である。
図14】(a)、(b)それぞれ第4の実施形態の第1の圧電素子および第2の圧電素子を示す正断面図である。
図15】(a)~(e)それぞれ第4の実施形態の第1および第2の圧電素子の製造に使用されるグリーンシートを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。なお、構成図において、各構成要素の大きさは概念的に表したものであり、必ずしも実際の寸法比率を表すものではない。
【0021】
[本発明の各実施形態に共通の基本的な構成]
(圧電アクチュエータの構成)
図1(a)、(b)は、それぞれ圧電アクチュエータ100を示す正面図および側面図である。なお、参照図に示す圧電アクチュエータは一例であって、素子数等で本発明は限定されない。
【0022】
圧電アクチュエータ100は、圧電アクチュエータ本体105、駆動用の端子126、127、センサ用の端子159、歪ゲージ155で構成され、電圧の印加により伸縮する。圧電アクチュエータ100は、例えばマスフローコントローラの弁の開閉制御部や精密位置決め装置のステージ駆動部に用いられ、その場合、被駆動体(弁、ステージ)を変位させる。
【0023】
圧電アクチュエータ本体105は、一対のリード線121、122を介して一対の外部電極116、117に電圧が印加されたとき、各圧電素子110が伸縮することで先端が変位する。駆動用の端子126、127は、圧電アクチュエータ本体105のリード線121、122に接続されており、印加電圧をリード線121、122に伝える。
【0024】
圧電アクチュエータ本体105の駆動用のGND端子と歪ゲージ用のGND端子を共通にすることができる。これにより、総端子数が多くなることを抑制し、配線等の構成をとりやすくできる。なお、共通の端子を用いずにそれぞれ分離した端子を用いてもよい。
【0025】
一方、図1(a)、(b)に示すように、圧電アクチュエータ100は、圧電アクチュエータ本体105に歪ゲージ155を接続し、センサ用の端子159設けている。これにより、歪ゲージ155を備えた圧電アクチュエータ100において、歪ゲージ用の端子159を介して圧電素子110の変位の信号を受けられる。歪ゲージ155の詳細は後述する。
【0026】
(圧電アクチュエータ本体)
圧電アクチュエータ本体105は、圧電素子110、およびリード線121、122で構成されている。圧電アクチュエータ本体105を構成する複数の圧電素子110は、直列に配置、連結され(多連化)、その端面同士が接着剤により接着されている。複数の圧電素子110が接着されることで大きい変位量を確保できる。なお、直列とは、伸縮方向すなわち圧電素子110内の圧電層および内部電極の積層方向を意味する。
【0027】
リード線121、122は、駆動用の端子126、127と各圧電素子110の外部電極117とを接続している。なお、図1(b)で示す側面とは反対側でも同様に接続がなされている。
【0028】
(圧電素子)
図2は、圧電素子110の正断面図である。圧電素子110は、印加電圧に対して変位を出力し、圧電層113、内部電極114、115および外部電極116、117を有している。圧電素子110は、圧電層113と内部電極114、115とが交互に積層されている。また、圧電素子110の側面において、外部電極116、117は内部電極114、115に接続されている。圧電層は、例えばPZT、チタン酸バリウム等の圧電材料で構成できる。電極材料には、Ag-Pd、Pt等を用いることができる。
【0029】
複数の圧電素子110は、歪ゲージ155が接着される接着部111を有する第1の圧電素子110aと、歪ゲージ155が接着されない第2の圧電素子110bと、によって構成される。そして、第1の圧電素子110aは、少なくとも接着部111における最大歪率が、第2の圧電素子110bの最大歪率より小さい。なお、本発明は、第1の圧電素子110aと第2の圧電素子110bの構成を変えることで、少なくとも接着部111における最大歪率を、第2の圧電素子110bの最大歪率より小さくしているが、図2はそれを示していない。第1の圧電素子110aと第2の圧電素子110bの構成の違いは、各実施形態で説明する。
【0030】
最大歪率とは、最大収縮時の圧電伸縮部長さに対する最大変位量の割合である。また、接着部111における最大歪率とは、最大収縮時の接着部111の圧電伸縮部長さに対する接着部111の最大変位量の割合である。また、第2の圧電素子110bの最大歪率とは、1の圧電アクチュエータ本体105に複数の第2の圧電素子110bが存在する場合、それぞれの第2の圧電素子110bの最大歪率の平均値である。
【0031】
第1の圧電素子110aの接着部111における最大歪率は、第2の圧電素子110bの最大歪率の80%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましい。また、第2の圧電素子110bの最大歪率に対する第1の圧電素子110aの接着部111における最大歪率の下限値は、歪ゲージ155によって検出する必要のある精度によって異なるため、特に限定する必要はないが、例えば、10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、25%以上であることがさらに好ましい。歪率の数値では、例えば、歪の上限値では、1200ppm以下であることが好ましく、750ppm以下であることがより好ましい。また、下限値では、例えば、150ppm以上であることが好ましく、300ppm以上であることがより好ましく、375ppm以上であることがさらに好ましい。
【0032】
第1の圧電素子の接着部以外の部分の最大歪率は、接着部の最大歪率と同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、第1の圧電素子全体の構成を接着部の構成と同じにする場合、第1の圧電素子の接着部以外の部分の最大歪率は、第2の圧電素子の最大歪率より小さくなり、圧電アクチュエータ全体の変位量は小さくなるが、第1の圧電素子全体の構成が同じであるため、第1の圧電素子の製造が容易になる。また、第1の圧電素子全体が接着部といえるため、歪ゲージの接着も容易になる。例えば、第1の圧電素子の接着部以外の部分の構成を第2の圧電素子の構成と同じにする場合、第1の圧電素子の接着部以外の部分の最大歪率は、第2の圧電素子の最大歪率と同じになり、圧電アクチュエータ全体の変位量を大きくすることができる。
【0033】
図3は、所定の最大変位を有する圧電素子とその半分の最大変位を有する圧電素子のそれぞれのヒステリシスを表すグラフである。最大電圧150Vを印加したときの最大変位が10μmである圧電素子を標準変位素子とし、最大電圧150Vを印加したときの最大変位が5μmである圧電素子を1/2変位素子として表した。図3に表されるように、最大変位が1/2である1/2変位素子のヒステリシスは、標準変位素子のヒステリシスとほとんど同じ動きを示すため、1/2変位素子は、中間の電圧においても標準変位素子の変位の約1/2の変位を得ることができる。このような性質により、第1の圧電素子の接着部における最大変位を、第2の圧電素子の最大変位より小さくしても、その割合が分かれば、接着部で検出した歪率から圧電アクチュエータ全体の変位を計測することができる。
【0034】
圧電素子の最大変位を小さくすると、歪ゲージの変化量も小さくなり、変位センサとしてのS/N比の低下が問題になる場合がある。このような場合、歪ゲージを、例えば、素子の2面に接着し、歪ゲージの微小な抵抗値変化を検出するホイートストンブリッジの対向部にそれぞれ接続することで、変化率を倍増し補償することができる。この2ゲージ法を併用することで、歪ゲージのS/N比を低下させることなく、耐久性を向上させることが可能となる。
【0035】
(歪ゲージ)
歪ゲージ155は、圧電アクチュエータ本体105の変位方向の歪を検知する。歪ゲージ155は、線歪ゲージ、箔歪ゲージ等を用いることができる。歪ゲージ155は、圧電アクチュエータ本体105に直接貼り付けることで接続される。貼り付けは、接着剤等を用いることができる。歪ゲージ155は、圧電アクチュエータ本体105の表面に接続されているので、圧電アクチュエータ100が伸びたときに歪ゲージ155も伸びることで、圧電アクチュエータ100の変位と歪ゲージ155の変位が同相の歪となり、制御性が向上する。
【0036】
歪ゲージ155は、リード線157、158に接続され、リード線158が、センサ用端子159に接続されることで、検知された変位信号が伝達される。これにより、圧電アクチュエータ本体105の変位を確認して、正確にその変位を把握することができフィードバック制御により圧電アクチュエータを使用した精密な位置決めが可能になる。
【0037】
歪ゲージは、歪率が半減する毎に耐久性がほぼ1桁増加することが知られている。したがって、歪ゲージの最大歪率を小さくすることができれば、歪ゲージの耐久性は向上する。本発明では、歪ゲージ155を接着する接着部111を有する第1の圧電素子110aの少なくとも接着部111の最大歪率を、第2の圧電素子110bの最大歪率より小さくしているため、歪ゲージ155の耐久性が向上している。
【0038】
図4は、歪ゲージの最大歪率と耐久性の関係を表すグラフである。歪ゲージの最大歪率が1500ppmであるときの耐久性を1としたとき、歪ゲージの最大歪率に対する耐久性を数値で表した。なお、図4のグラフは、歪ゲージの耐久性がどのように向上するかを概念的に示したものであり、必ずこのような耐久性が得られることを示すものではない。図4に示されるように、例えば、第1の圧電素子の接着部における最大歪率が、第2の圧電素子の最大歪率の80%である場合、最大歪率を低減していない場合と比較して、歪ゲージの耐久性は約2倍になる。また、50%である場合、歪ゲージの耐久性は約10倍になる。
【0039】
(変位制御システム)
上記の圧電アクチュエータ100を用いて変位制御システム190を構成できる。図5は、変位制御システム190の概略図である。図5に示すように、変位制御システム190は、圧電アクチュエータ100、フィードバック制御装置170および駆動電源180を備えている。
【0040】
歪ゲージ155のセンサ用の端子159は、フィードバック制御装置170に接続されている。検知された変位の信号は、フィードバック制御装置170に入力され、フィードバック制御装置170は、検知された信号を圧電アクチュエータ100の変位に変換し、検知された変位をもとに必要な駆動量を算出する。検知信号から変位への変換は、同相であり、歪ゲージ155から伸びの信号の入力があったときには、圧電アクチュエータ100の伸びの変位を出力する。フィードバック制御装置170は、算出された駆動量に応じて駆動電源180を制御し、駆動電源180は、フィードバック制御装置170から指令を受けた電圧を圧電アクチュエータ本体105に印加する。このようにして、誤差を低減した変位制御システム190を実現できる。
【0041】
(密封型圧電アクチュエータ)
図1では、圧電アクチュエータ本体105が剥き出しになっていたが、圧電アクチュエータ本体105は、キャップおよび座によって密封されていてもよい。図6(a)、(b)は、それぞれ密封型の圧電アクチュエータ300を示す正断面図および側断面図である。図7(a)、(b)は、それぞれ座340および端子126、127、159の正断面図および底面図である。以下では、図1と異なる部分のみ説明する。
【0042】
圧電アクチュエータ300は、圧電アクチュエータ本体105、駆動用の端子126、127、センサ用の端子159、歪ゲージ155、座340、およびキャップ360で構成され、電圧の印加により伸縮する。
【0043】
座340は、圧電アクチュエータ本体105の端部に接着され、その一端を固定し、圧電アクチュエータ本体105を支持する。そして、座340側の端部が固定された圧電アクチュエータ本体105の伸縮により先端側の突起330が変位する。なお、本実施形態では、突起330は半球状である。
【0044】
座340は、キャップ360の端部と固定されることで、圧電アクチュエータ本体105を密封する。湿度や腐食性ガスに弱い圧電アクチュエータ本体105と歪ゲージ155を、低湿度の不活性ガスで気密封止した構造とすることで信頼性と耐久性を向上できる。例えば、切削水で変位装置が濡れるような精密加工機、腐蝕性ガスの流量制御を行う圧電式バルブなどで用いられる場合、オープン制御では圧電アクチュエータを用いた位置決め精度が不十分であり、変位センサによりフィードバック制御を行うことが可能な圧電アクチュエータにより位置決め等を行うことが有効である。
【0045】
このように、封止により高湿度、腐食性ガス下など過酷な環境でも問題なく、圧電アクチュエータを稼働することができる。キャップ360内が完全に気密構造となるため、湿度や腐食性ガス等の圧電素子、歪ゲージの耐久性を阻害する環境下でも使用可能となり、用途拡大につながる。
【0046】
端子126、127、159は、ハーメチック端子として座340を貫通して設けられている。貫通孔にはガラスまたは樹脂345が充填され、密封されている。座340には、端子126、127、159は、圧電アクチュエータ100の中心軸の周りに歪ゲージ用および駆動用でそれぞれ配置されていることが好ましい。これにより、端子126、127、159について容易に電気的な接続をとることができる。
【0047】
圧電アクチュエータ本体105の駆動用のGND端子と歪ゲージ155の検出用のGND端子と共通にすることができる。これにより、歪ゲージをキャップ内に収容した構造とした場合に、座から引き出す総端子数が多くなることを抑制し、歪ゲージをキャップ内に収容した耐環境性を向上させた構成をとりやすくできる。なお、共通の端子を用いずにそれぞれ分離した端子を用いてもよい。
【0048】
キャップ360は、有底で開口端を有する円筒形状を有し、金属で形成されている。キャップ360は、圧電アクチュエータ本体105を積層方向に密着しつつ内部に収容し、座340にその開口端が接合され、キャップ360内部を封止している。これにより、圧電アクチュエータ300が保護され、耐久性が向上する。
【0049】
キャップ360は、キャップの先端部分にドーム形状の部分に突起330が当接するダイヤフラムを有する。キャップ360の直管部分は、キャップ360の中央から底部にかけて円筒に形成されている。ダイヤフラムは、ドーム形状に形成されている。キャップ360は、SUS316、SUS316L等の耐食性とばね性に優れている材質が望ましい。基台が座340を固定し、座340が圧電アクチュエータ本体105の端部を支持している。そして、キャップ360の先端が被駆動体に接することで、圧電アクチュエータ300から被駆動体に変位が伝わる。
【0050】
キャップ360内部には、圧電アクチュエータ本体105の他、歪ゲージ155も収容されている。キャップ360により周囲の環境から圧電アクチュエータ本体105と歪ゲージ155を保護できる。
【0051】
一方、図6(a)、(b)に示すように、圧電アクチュエータ300は、キャップ360内部に歪ゲージ155を配置し、センサ用の端子159を座340に設けている。これにより、歪ゲージ155を内蔵した圧電アクチュエータ300において、センサ用の端子159を介して圧電素子110の変位の信号を受けられる。
【0052】
圧電アクチュエータ本体105は、圧電素子110、リード線121、122および突起330で構成されている。突起330は、無機材料で半球状に形成され、圧電アクチュエータ本体105の被駆動体へ変位を伝える先端側に設けられている。突起330と圧電アクチュエータ本体105とは強固に接着されており、突起330はキャップ360のドーム形状の内側部分に接する。これにより、圧電アクチュエータ本体105の変位をキャップ360の外部に取り出すことができる。
【0053】
(圧電アクチュエータの基本的な製造方法)
次に、図1のように構成された圧電アクチュエータ100の基本的な製造方法を説明する。まず、圧電層と内部電極とが交互に積層された圧電素子110を作製する。具体的には、圧電セラミックスのグリーンシートにPtやAg-Pd等の電極ペーストを印刷して積層、圧着し、焼成する。次に、圧電素子110の側面に積層方向に沿って、内部電極に接続された外部電極116、117を形成する。圧電素子110の側面に電極ペーストを印刷して焼成することで外部電極116、117を形成できる。
【0054】
得られた複数の圧電素子110の積層方向の端面には、エポキシ等の接着剤を塗布して接着し、直列方向に連結する。このようにして多連化を行い、接着剤を硬化させる。そして、歪ゲージ155、または圧電アクチュエータ本体105の歪ゲージ155配置位置に接着剤を塗布して、歪ゲージ155を圧電アクチュエータ本体105に直接貼り付ける。歪ゲージ155は、1つの圧電素子110に貼り付けてもよいし、連続する複数の圧電素子110に貼り付けてもよい。
【0055】
そして、金属製で板状のリード線を、外部電極に固着させて、圧電アクチュエータ100を作製できる。なお、駆動用の端子126、127は、それぞれ駆動電源180、センサ用の端子159は、フィードバック制御装置170に電気的に接続される。
【0056】
(密封型圧電アクチュエータの製造方法)
また、図6のように構成された密封型圧電アクチュエータ300の製造方法を説明する。密封型圧電アクチュエータ300の製造方法は、上記の圧電アクチュエータの製造方法において、歪ゲージを貼り付けた圧電アクチュエータ本体を座に設置し、キャップを被せて封止する。そして、金属製で板状のリード線を、外部電極に固着させることで、密封型圧電アクチュエータ300を製造できる。
【0057】
[第1の実施形態]
次に、第1の実施形態の圧電アクチュエータについて説明する。第1の実施形態の圧電アクチュエータの基本的な構成は、上記の通りである。したがって、本実施形態に特有の構成のみ説明する。
【0058】
(圧電素子)
図8(a)、(b)は、それぞれ本実施形態の第1の圧電素子および第2の圧電素子の正断面である。なお、図8(a)、(b)は、外部電極は省略している。図8(a)、(b)に示されるように、本実施形態の第1の圧電素子110aは、接着部111における内部電極層の間隔が、第2の圧電素子110bの内部電極層の間隔より広い。内部電極層の間隔とは、隣り合う内部電極114と内部電極115との間の積層方向の距離をいう。内部電極層の間隔が広い部分では、内部電極層の間隔が狭い部分と比較して、同一の電圧を印加したときの内部電極層の間の電界強度が小さくなるため、その間の歪は小さくなる。したがって、内部電極層の間隔が広い部分では、最大電圧を印加したときの最大歪率が小さくなり、そこに接着した歪ゲージ155の耐久性が向上する。
【0059】
積層型圧電素子の変位量(変位歪)は、使用する圧電セラミックスの圧電歪定数に応じて内部電極間隔を調整することで設計される。例えば、ある種類の圧電セラミックスに対して、内部電極間隔を調整することで最大電圧を印加したときの最大歪率が1500ppmになるように設計することができる。このように、最大歪率は、積層型圧電素子の製造に使用するグリーンシートの厚みを変更することにより調整することができる。例えば、厚みが2倍のグリーンシートを用いると積層型圧電素子の内部電極間隔もほぼ2倍となるため、同一の電圧を印加したときに、そこに発生する電界強度は1/2となる。圧電素子の変位量は電界強度にほぼ比例するため、図4に表されるように同一の電圧を印加したときに、発生する歪も1/2となる。
【0060】
(異なる構成の圧電素子の製造方法)
図9(a)~(c)は、それぞれ本実施形態の第1および第2の圧電素子の製造に使用されるグリーンシートを示す模式図である。図9(a)~(c)は、それぞれ焼成後に内部電極114となる電極ペースト214と圧電層113となる圧電セラミックスのグリーンシート201、焼成後に内部電極115となる電極ペースト215と圧電層113となる圧電セラミックスのグリーンシート202、および電極ペーストが積層されていない圧電セラミックスのグリーンシート203を示す。
【0061】
第2の圧電素子110bは、通常の厚みのグリーンシート201、202が交互に積層されて焼成されることで製造される。一方、第1の圧電素子110aは、少なくとも接着部111となる部分を積層するときに、通常の厚みのグリーンシート201、202ではなく、焼成後に圧電セラミックス113となる圧電セラミックの厚みを増加させたグリーンシートを交互に積層する。または、通常の厚みのグリーンシート201、202に対し、電極ペーストが積層されていないグリーンシート203を適宜積層することで圧電層113の厚みを増加させてもよい。このようにして、接着部111における内部電極層の間隔が、第2の圧電素子110bの内部電極層の間隔より広い第1の圧電素子110aを製造することができる。なお、第1および第2の圧電素子のいずれも、積層方向の端面は、保護層を形成するために、グリーンシート203を1層以上積層してもよい。
【0062】
複数の圧電素子を変位方向に直列に接続する圧電アクチュエータの場合、歪ゲージを接着する第1の圧電素子について、少なくとも接着部になる層のシート厚みを調整したものを使用することで、第1の圧電素子を製造することができる。また、圧電アクチュエータ用の圧電素子が1個の高積層素子で製作されている場合は、歪ゲージを接着する部分のみ厚いシートを用いる構造とすることができる。このように、圧電セラミックシートの厚さにより、歪ゲージでの最大歪率を調整することができるため、市場で要求される十分な耐久性を有する歪ゲージ内蔵圧電アクチュエータを製造することが可能となる。
【0063】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態の圧電アクチュエータについて説明する。第2の実施形態の圧電アクチュエータの基本的な構成は、上記の通りである。したがって、本実施形態に特有の構成のみ説明する。
【0064】
(圧電素子)
図10(a)、(b)は、それぞれ本実施形態の第1の圧電素子および第2の圧電素子の正断面である。なお、図10(a)、(b)は、外部電極は省略している。図10(a)、(b)に示されるように、本実施形態の第1の圧電素子110aは、接着部111における圧電層113aの圧電歪定数が、第2の圧電素子110bの圧電層113の圧電歪定数より小さい。ここで、圧電歪定数はd33である。
【0065】
積層型圧電素子用の圧電セラミックスには多様な特性の材料がある。圧電アクチュエータ用途では大きな変位が求められるため、一般にソフト材と呼ばれる比較的圧電歪定数が大きな材料が用いられる。一方、ソフト材にマンガン等を微量添加することで高速駆動に適したハード材となることも知られている。一般にハード化するとソフト材の半分以下に圧電歪定数は低下する。このように同様な組成で圧電歪定数が大きく異なる材料を容易に準備することが可能である。
【0066】
(異なる構成の圧電素子の製造方法)
図11(a)~(e)は、それぞれ本実施形態の第1および第2の圧電素子の製造に使用されるグリーンシートを示す模式図である。図11(a)~(e)は、それぞれ焼成後に内部電極114となる電極ペースト214と圧電層113となる圧電セラミックスのグリーンシート201、焼成後に内部電極115となる電極ペースト215と圧電層113となる圧電セラミックスのグリーンシート202、焼成後に内部電極114となる電極ペースト214と圧電層113aとなる圧電セラミックスのグリーンシート204、焼成後に内部電極115となる電極ペースト215と圧電層113aとなる圧電セラミックスのグリーンシート205、および電極ペーストが積層されていない圧電セラミックスのみのグリーンシート203を示す。
【0067】
第2の圧電素子110bは、焼成後に圧電層113となる圧電セラミックスのグリーンシート201、202が交互に積層されて焼成されることで製造される。一方、第1の圧電素子110aは、少なくとも接着部111となる部分を積層するときに、通常のグリーンシート201、202ではなく、焼成後に圧電セラミックス113aとなる圧電セラミックスのグリーンシート204、205を交互に積層する。圧電セラミックス201、202と比較して、圧電セラミックス204、205は、焼成後の圧電歪定数d33が小さい。このようにして、接着部111における圧電層113aの圧電歪定数d33が、第2の圧電素子110bの圧電層113の圧電歪定数d33より小さい第1の圧電素子を製造することができる。なお、第1および第2の圧電素子のいずれも、積層方向の端面は、保護層を形成するために、グリーンシート203を1層以上積層してもよい。
【0068】
複数の圧電素子を変位方向に直列に接続する圧電アクチュエータの場合、歪ゲージを接着する第1の圧電素子について、少なくとも接着部になる層にハード材等の圧電特性を抑制した材料を用いることで、第1の圧電素子を製造することができる。また、圧電アクチュエータ用の圧電素子が1個の高積層素子で製作されている場合は、歪ゲージを接着する部分のみハード材等の圧電特性を抑制した材料を用いる構造とすることができる。このように、圧電セラミックシートの組成により、歪ゲージでの最大歪率を調整することができるため、市場で要求される十分な耐久性を有する歪ゲージ内蔵圧電アクチュエータを製造することが可能となる。
【0069】
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態の圧電アクチュエータについて説明する。第3の実施形態の圧電アクチュエータの基本的な構成は、上記の通りである。したがって、本実施形態に特有の構成のみ説明する。
【0070】
(圧電素子)
図12(a)、(b)は、それぞれ本実施形態の第1の圧電素子および第2の圧電素子の正断面である。なお、図12(a)、(b)は、外部電極は省略している。図12(a)、(b)に示されるように、本実施形態の第1の圧電素子110aは、接着部111における内部電極114a、115aの面積が、第2の圧電素子110bの内部電極114、115の面積より小さい。なお、電圧を印加したときに変位する部分は、異なる電圧が印加される内部電極を積層方向へ投影したときに重なる範囲の圧電活性部であるため、内部電極114a、または115aの何れか一方の面積が、内部電極114、または115の面積より小さいだけでもよい。
【0071】
積層型圧電素子内部には素子の断面積にも依存するが、断面積の80~100%の面積で内部電極が形成される。積層型圧電素子に電圧を印加すると、内部電極が形成された部分には電界が発生し圧電セラミックスが伸縮する。一方、内部電極の周辺部には電界は発生しないため、電圧印加により伸縮することはない。この圧電不活性部は内部電極部での変位を抑制することになる。このため、歪ゲージを接着する部分のみ内部電極を形成する面積の比率を下げていけば、積層型圧電素子の変位を必要なレベルまで低下させることができ、歪ゲージの最大歪率を必要なレベルまで調整することができる。
【0072】
(異なる構成の圧電素子の製造方法)
図13(a)~(e)は、それぞれ本実施形態の第1および第2の圧電素子の製造に使用されるグリーンシートを示す模式図である。図13(a)~(e)は、それぞれ焼成後に内部電極114となる電極ペースト214と圧電層113となる圧電セラミックスのグリーンシート201、焼成後に内部電極115となる電極ペースト215と圧電層113となる圧電セラミックスのグリーンシート202、焼成後に内部電極114aとなる電極ペースト214aと圧電層113となる圧電セラミックスのグリーンシート206、焼成後に内部電極115aとなる電極ペースト215aと圧電層113となる圧電セラミックスのグリーンシート207、および電極ペーストが積層されていない圧電セラミックスのみのグリーンシート203を示す。
【0073】
第2の圧電素子110bは、通常の内部電極の面積を有する電極ペースト214、215を使用したグリーンシート201、202が交互に積層されて焼成されることで製造される。一方、第1の圧電素子110aは、少なくとも接着部111となる部分を積層するときに、通常のグリーンシート201、202ではなく、焼成後に内部電極114aとなる電極ペースト214aを積層したグリーンシート206、および焼成後に内部電極115aとなる電極ペースト215aを積層したグリーンシート207を交互に積層する。電極ペースト214、215と比較して、電極ペースト214a、215aは、焼成後の内部電極の面積が小さい。このようにして、接着部111における内部電極114a、115aの面積が、第2の圧電素子110bの内部電極114、115の面積より小さい第1の圧電素子を製造することができる。なお、第1および第2の圧電素子のいずれも、積層方向の端面は、保護層を形成するために、グリーンシート203を1層以上積層してもよい。
【0074】
複数の圧電素子を変位方向に直列に接続する圧電アクチュエータの場合、歪ゲージを接着する第1の圧電素子について、少なくとも接着部になる層に内部電極の面積を低減させたグリーンシートを用いることで、第1の圧電素子を製造することができる。また、圧電アクチュエータ用の圧電素子が1個の高積層素子で製作されている場合は、歪ゲージを接着する部分のみ内部電極の面積を低減させたグリーンシートを用いる構造とすることができる。このように、圧電セラミックシートの内部電極の面積の調整により、歪ゲージでの最大歪率を調整することができるため、市場で要求される十分な耐久性を有する歪ゲージ内蔵圧電アクチュエータを製造することが可能となる。
【0075】
[第4の実施形態]
次に、第4の実施形態の圧電アクチュエータについて説明する。第4の実施形態の圧電アクチュエータの基本的な構成は、上記の通りである。したがって、本実施形態に特有の構成のみ説明する。
【0076】
(圧電素子)
図14(a)、(b)は、それぞれ本実施形態の第1の圧電素子および第2の圧電素子の正断面である。なお、図14(a)、(b)では、内部電極114、115を点線で、応力緩和層118を実線で表している。また、図14(a)、(b)は、外部電極は省略している。図14(a)、(b)に示されるように、本実施形態の第1の圧電素子110aは、接着部111における応力緩和層118が、第2の圧電素子110bの応力緩和層118と比較して、その数が少ない、または面積が小さい。なお、応力緩和層118の数が少ないとは、接着部111における応力緩和層118の数と、第2の圧電素子の積層方向の接着部111と同一の長さにおける応力緩和層118の数を比較して、その数が少ないことをいい、接着部111において応力緩和層118が形成されないことも含む。また、応力緩和層118の面積が小さいとは、接着部111に形成された応力緩和層118を積層方向へ投影した図形の面積が、第2の圧電素子110bに形成された応力緩和層118を積層方向へ投影した図形の面積よりも小さいことをいう。
【0077】
一般に積層型圧電素子内部には内部電極の周辺には、絶縁および外部環境からの汚染、防湿のため圧電不活性部が形成されている。圧電アクチュエータ用の積層型圧電素子では圧電不活性部による変位阻害を防止するために、全層もしくは一定の間隔で圧電不活性部にスリット状の応力緩和層を形成している。すなわち、応力緩和層は、圧電素子の駆動時に素子内部に発生する応力を緩和するために設けられる。このため、歪ゲージを接着する部分のみ圧電素子応力緩和層の数を少なくし、面積を小さくし、または応力緩和層を形成しないことで、変位特性を低下させることができ、歪ゲージの最大歪率を低減することができる。これにより、歪ゲージ内蔵圧電アクチュエータの耐久性を向上させることが可能となる。
【0078】
(異なる構成の圧電素子の製造方法)
図15(a)~(e)は、それぞれ本実施形態の第1および第2の圧電素子の製造に使用されるグリーンシートを示す模式図である。図15(a)~(e)は、それぞれ焼成後に内部電極114となる電極ペースト214と圧電層113となる圧電セラミックス213と応力緩和層118となる難焼結セラミックスペースト218が積層されたグリーンシート208、焼成後に内部電極115となる電極ペースト215と圧電層113となる圧電セラミックス213と応力緩和層118となる難焼結セラミックスペースト218が積層されたグリーンシート209、焼成後に内部電極114となる電極ペースト214と圧電層113となる圧電セラミックス213が積層されたグリーンシート201、焼成後に内部電極115となる電極ペースト215と圧電層113となる圧電セラミックス213が積層されたグリーンシート202、および電極ペーストが積層されていない圧電セラミックス213のみのグリーンシート203を示す。ここで、難焼結セラミックスペースト218としては、ジルコニア、チタン酸鉛などが用いられる。
【0079】
第2の圧電素子110bは、焼成後に応力緩和層118となる難焼結セラミックスペースト218が塗布されたグリーンシート208、209が交互に積層されて焼成されることで製造される。なお、適宜、焼成後に応力緩和層118となる難焼結セラミックスペースト218が塗布されていないグリーンシート201、202を使用してもよい。一方、第1の圧電素子110aは、少なくとも接着部111となる部分を積層するときに、焼成後に応力緩和層118となる難焼結セラミックスペースト218が塗布されたグリーンシート208、209を使用しない、または第2の圧電素子を製造する場合と比較して使用する枚数を少なくする。このようにして、接着部111における応力緩和層118が、第2の圧電素子110bの応力緩和層118と比較して、その数が少ない、または面積が小さい第1の圧電素子110aを製造することができる。なお、第1および第2の圧電素子のいずれも、積層方向の端面は、保護層を形成するために、グリーンシート203を1層以上積層してもよい。
【0080】
複数の圧電素子を変位方向に直列に接続する圧電アクチュエータの場合、歪ゲージを接着する第1の圧電素子について、少なくとも接着部になる部分の応力緩和層の数を少なくし、面積を小さくし、または応力緩和層を形成しないことで、第1の圧電素子を製造することができる。また、圧電アクチュエータ用の圧電素子が1個の高積層素子で製作されている場合は、歪ゲージを接着する部分のみ、他の部分と比較して応力緩和層の数を少なくし、面積を小さくし、または応力緩和層を形成しない構造とすることができる。このように、圧電セラミックシートの応力緩和層の調整により、歪ゲージでの最大歪率を調整することができるため、市場で要求される十分な耐久性を有する歪ゲージ内蔵圧電アクチュエータを製造することが可能となる。
【0081】
なお、第1から第3の実施形態では、応力緩和層に言及していないが、それは各実施形態の特徴をより明確にするためであり、第1から第3の実施形態に応力緩和層があってもよいし、なくてもよい。また、本発明は、2つ以上の実施形態を組み合わせても成立する。
【0082】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形および均等物に及ぶことはいうまでもない。また、各図面に示された構成要素の構造、形状、数、位置、大きさ等は説明の便宜上のものであり、適宜変更しうる。
【符号の説明】
【0083】
100、300 圧電アクチュエータ
105 圧電アクチュエータ本体
110、110a、110b 圧電素子
111 接着部
113、113a 圧電層
114、114a、115、115a 内部電極
116、117 外部電極
118 応力緩和層
121、122、157、158 リード線
126、127、159 端子
155 歪ゲージ
170 フィードバック制御装置
180 駆動電源
190 変位制御システム
201~209 グリーンシート
218 難焼結セラミックスペースト
214、214a、215、215a 電極ペースト
330 突起
340 座
345 ガラス、樹脂
360 キャップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15