(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】動物用フェイスカバー
(51)【国際特許分類】
A01K 13/00 20060101AFI20221026BHJP
【FI】
A01K13/00 C
(21)【出願番号】P 2017237385
(22)【出願日】2017-12-12
【審査請求日】2020-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】500098633
【氏名又は名称】有限会社犬と生活
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】坂口 まや
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0297107(US,A1)
【文献】米国特許第09820470(US,B1)
【文献】特表2001-525016(JP,A)
【文献】実開平03-058956(JP,U)
【文献】米国特許第07523720(US,B1)
【文献】実開昭57-018355(JP,U)
【文献】特開平10-304933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性及びシースルー性を有するメッシュ状の生地により開口を備える袋状に形成され、動物の顔を覆って装着される顔保護部と、
弾性的に伸縮可能に形成され、前記
顔保護部の前記開口側を前記動物に対して保持する保持部と
、
生地により筒状に形成され、前記顔保護部の前記開口側に対して一端部側が接続されて、前記動物の少なくとも首周りの一部を覆って装着される首保護部と、
弾性的に伸縮可能に形成され、前記首保護部の他端部側を前記動物の首回りに保持する首保持部と、
を具備したことを特徴とする動物用フェイスカバー
。
【請求項2】
首保護部は、防虫加工された生地により形成されている
ことを特徴とする請求項
1記載の動物用フェイスカバー。
【請求項3】
顔保護部を形成する生地は、所定の害虫を通過させない大きさの目に設定されている
ことを特徴とする請求項1
または2記載の動物用フェイスカバー。
【請求項4】
顔保護部を形成する生地は、オーガンジーである
ことを特徴とする請求項1ないし
3いずれか一記載の動物用フェイスカバー。
【請求項5】
顔保護部を形成する生地は、防虫加工されていない生地である
ことを特徴とする請求項1ないし
4いずれか一記載の動物用フェイスカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばペットなどの動物に用いられる動物用フェイスカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、犬などのペット用の衣服が知られている。この衣服は、例えばペットの胴体部を覆う覆い部や頭部の上側を部分的に覆うフードなどを備えて形成され、ペットの防寒や衛生管理に利用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この特許文献1に記載されたペット用の衣服では、ペットの顔部分が露出しており、この顔部分を保護することができない。
【0004】
また、近年、ペットの害虫被害として、マダニ被害の事例が報告されている。ペットがマダニ被害に遭うと、ペットの直接的病害やマダニを媒介とした疾患だけでなく、そのペットの飼い主などへの二次被害の拡大も懸念される。上記特許文献1に記載されたペット用の衣服は、防虫について考慮されていないが、この点、例えば防虫加工が施されたメッシュ状の防虫シートをペット用の衣服とするものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
しかしながら、この特許文献2に記載された防虫シートであっても、基本的にペットの胴周りや首周りを覆うものであり、ペットの特に顔部分の防虫や保護については考慮されていない。このため、特に散歩の際に草むらなどに顔を入れたり地面に顔を近づけたりする習性のある例えば犬などのペットについては、顔部分に害虫が付着することを防止できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-67878号公報
【文献】登録実用新案第3098289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、動物の特に顔部分を保護することが求められている。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、動物の顔を効果的に保護できる動物用フェイスカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の動物用フェイスカバーは、通気性及びシースルー性を有するメッシュ状の生地により開口を備える袋状に形成され、動物の顔を覆って装着される顔保護部と、弾性的に伸縮可能に形成され、前記顔保護部の前記開口側を前記動物に対して保持する保持部と、生地により筒状に形成され、前記顔保護部の前記開口側に対して一端部側が接続されて、前記動物の少なくとも首周りの一部を覆って装着される首保護部と、弾性的に伸縮可能に形成され、前記首保護部の他端部側を前記動物の首回りに保持する首保持部と、を具備したものである。
【0010】
請求項2記載の動物用フェイスカバーは、請求項1記載の動物用フェイスカバーにおいて、首保護部は、防虫加工された生地により形成されているものである。
【0011】
請求項3記載の動物用フェイスカバーは、請求項1または2記載の動物用フェイスカバーにおいて、顔保護部を形成する生地は、所定の害虫を通過させない大きさの目に設定されているものである。
【0012】
請求項4記載の動物用フェイスカバーは、請求項1ないし3いずれか一記載の動物用フェイスカバーにおいて、顔保護部を形成する生地は、オーガンジーであるものである。
【0013】
請求項5記載の動物用フェイスカバーは、請求項1ないし4いずれか一記載の動物用フェイスカバーにおいて、顔保護部を形成する生地は、防虫加工されていない生地であるものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の動物用フェイスカバーによれば、通気性及びシースルー性を有するメッシュ状の生地により開口を備える袋状に形成された顔保護部で動物の顔を覆い、この顔保護部の開口側を保持部によって動物に対して弾性的に保持することによって、呼吸や視界を妨げることなく動物の顔を効果的に保護できるとともに、生地により筒状に形成されて一端部に顔保護部の開口側が接続される首保護部を動物の少なくとも首周りの一部を覆って首保持部により動物の首回りに弾性的に保持することによって、動物の首周りを保護できるので、首保護部と顔保護部とによって動物の首周りから頭部及び顔に亘る部分全体を保護できる。
【0015】
請求項2記載の動物用フェイスカバーによれば、請求項1記載の動物用フェイスカバーの効果に加えて、首保護部を防虫加工が施された生地により形成することで、動物用フェイスカバーを装着した動物の首周りを、首保護部によって害虫を遠ざけつつ保護できる。
【0016】
請求項3記載の動物用フェイスカバーによれば、請求項1または2記載の動物用フェイスカバーの効果に加えて、顔保護部を形成する生地を、所定の害虫を通過させない大きさの目に設定することで、顔保護部の生地の目を害虫が通過して顔に付着することを効果的に防止できる。
【0017】
請求項4記載の動物用フェイスカバーによれば、請求項1ないし3いずれか一記載の動物用フェイスカバーの効果に加えて、顔保護部を形成する生地をオーガンジーとすることで、顔保護部を安価に製造しつつ、通気性及びシースルー性を確保しながら塵埃や害虫が通過しにくい微細な大きさの目の顔保護部を容易に形成できる。
【0018】
請求項5記載の動物用フェイスカバーによれば、請求項1ないし4いずれか一記載の動物用フェイスカバーの効果に加えて、顔保護部を形成する生地を、防虫加工されていない生地とすることで、顔保護部によって顔を覆った動物の鼻や目の粘膜を防虫加工用の防虫剤により刺激したり、動物が誤って顔保護部を噛んだときに防虫剤を経口摂取したりすることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施の形態の動物用フェイスカバーを示す側面図である。
【
図2】同上動物用フェイスカバーの一の装着状態を示す説明図である。
【
図3】同上動物用フェイスカバーの他の装着状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態の構成を、図面を参照して説明する。
【0021】
図1ないし
図3において、11は動物用フェイスカバー(バグガード)である(以下、単にフェイスカバー11という)。このフェイスカバー11は、犬などの動物であるペット(愛玩動物)Pの顔F、本実施の形態では頭部Hを保護するものである。このフェイスカバー11は、首保護部12を備えている。また、このフェイスカバー11は、顔保護部13を備えている。なお、上下方向や左右方向については、ペットPに装着した状態を基準とする。
【0022】
首保護部12は、ペットPの少なくとも首Nの周囲、すなわち首周りを保護するものである。この首保護部12は、薄手の生地により形成されている。この首保護部12は、好ましくは、防虫(防蚊)加工された生地により形成されている。例えば、この首保護部12は、トリエント(登録商標)などの生地により形成されている。このため、この首保護部12は、例えば蚊などの小型の不快飛翔虫やノミ、ダニなどの害虫に対して忌避効果を発揮するようになっている。また、この首保護部12は、所定長さの筒状に形成されている。この首保護部12の前端部となる一端部には、顔保護部13が隙間なく接続されている。また、この首保護部12の後端部となる他端部は、ペットPが頭部Hを挿入する挿入口15として開口されている。さらに、この首保護部12には、例えばゴムなどの弾性部材16が挿入口15の周縁部に沿って環状に配置されていてもよい。このため、首保護部12の後端部は、弾性部材16により伸縮可能なギャザ状の首保持部17となっていてもよい。すなわち、挿入口15は、弾性部材16により開口量が調整可能に設定されていてもよい。また、この首保護部12は、装着するペットPの首Nの形状に応じて、後端部(挿入口15)側から前端部側に向かって下方へと湾曲していてもよい。
【0023】
顔保護部13は、ペットPの顔Fを覆って保護するものである。この顔保護部13は、通気性及びシースルー性を有するメッシュ状の薄手の生地により形成されている。この顔保護部13は、好ましくは防虫(防蚊)加工が施されていない生地により形成されている。さらに好ましくは、この顔保護部13は、所定の害虫、例えばマダニ、ヒアリ、あるいはノミなどを通過させない、微細な大きさの目を有する生地により形成されている。したがって、この顔保護部13は、微細な塵埃などが目を通して内部に侵入しにくく構成されている。例えば、この顔保護部13は、オーガンジーにより形成されている。また、この顔保護部13は、開口19を備える袋状に縫製されている。この顔保護部13は、開口19側が首保護部12の前端部となる一端部に連続するように接続されている。すなわち、この顔保護部13の開口19の周縁部は、首保護部12の一端部の周縁部に対して縫製などにより一体的に接続されている。このため、この顔保護部13は、首保護部12の一端部を封止している。この顔保護部13には、例えばゴムなどの弾性部材20が開口19の周縁部に沿って環状に配置されていてもよい。すなわち、首保護部12と顔保護部13との接続部は、弾性部材20により伸縮可能なギャザ状の保持部21となっていてもよい。また、この顔保護部13は、首保護部12の前端部となる一端部に対して前方へと突出して位置している。なお、この顔保護部13は、複数枚の生地によって形成されていてもよい。例えば、この顔保護部13は、底部などに襠を形成して、ペットPの顔に対して左右幅方向にゆとりを持たせるように縫製してもよい。
【0024】
次に、上記一実施の形態の使用方法を説明する。
【0025】
フェイスカバー11は、ペットPの頭部Hを挿入口15から首保護部12の内部に挿入するように頭部Hに被せる。このとき、
図2に示すように、首保護部12がペットPの首Nの所定の周囲を覆い、顔Fを含む頭部H全体を開口19から顔保護部13内に挿入して位置させるように装着できるし、例えば耳が長いペットPなどの場合には、
図3に示すように、首保護部12がいわゆるスヌードのように首Nから頭部Hの耳部に亘る部分を一体的に覆い、顔Fのみを開口19から顔保護部13内に位置させるように装着することもできる。さらに、このように、首保護部12が首Nから耳部に亘る部分を一体的に覆う場合、犬などのペットPにおいて、マズルが短い、いわゆる短頭種などの場合には、顔Fを顔保護部13内に位置させずに、顔Fの前方を顔保護部13によって覆うようにしてもよい。なお、
図2及び
図3においては、説明を明確にするために、顔保護部13の内方に位置するペットPの頭部Hや顔Fの部分を実線により示している。
【0026】
首保護部12は、弾性部材16の収縮によって後端部の首保持部17が首Nの周囲に対してギャザ状に密着し、ほぼ隙間なくフィットすることで、挿入口15と首Nとの隙間からの塵埃や害虫などの侵入を防止する。この首保護部12は、ペットPの大きさや種類に応じて、両端部間をだぶつかせる度合いを変えることで、長さを容易に調整することができる。さらに、顔保護部13は、弾性部材20の収縮によって首保護部12とともに首Nの周囲に対して保持部21がギャザ状に密着し、首保持部17とともにフェイスカバー11をペットPに対して保持して、ペットPが動いたときのフェイスカバー11のずれなどを防止する。また、顔保護部13は、オーガンジーにより形成されていることで、その風合いによって、ペットPの顔Fに対して離れた形状を保つことができ、顔Fに対して触れにくい。そのため、顔保護部13がペットPに不快感を与えにくい。
【0027】
なお、ペットPについては、フェイスカバー11に加えて、例えば胴回りを覆う衣服や手足を覆う手袋、靴などを同時に組み合わせて利用し、ほぼ全身を保護する状態とすることもできる。その際、首保護部12は、後端部側を衣服などの下に入り込ませることで、フェイスカバー11と衣服との繋ぎ目の位置でペットPの身体が露出することを防止することが好ましい。
【0028】
そして、通気性及びシースルー性を有するメッシュ状の生地により開口19を備える袋状に形成された顔保護部13でペットPの顔Fを覆い、この顔保護部13の開口19側を保持部21によってペットPに対して保持することによって、呼吸や視界を妨げることなくペットPの顔Fを効果的に保護できる。この結果、例えばペットPが散歩の最中に草むらに顔を入れたり、地面に顔を寄せたりしたときに害虫や塵埃などが顔Fに付着しにくいとともに、顔保護部13が顔F全体を覆うので、ペットPが道端に落ちている食品などを誤って拾い喰いしたり、強風の日に砂がペットPの目に入ったりすることなども防止できる。
【0029】
また、生地により筒状に形成されて一端部に顔保護部13の開口19側が接続される首保護部12をペットPの少なくとも首周りの一部を覆って装着することによって、ペットPの首周りを保護できるので、首保護部12と顔保護部13とによってペットPの首周りから頭部H及び顔Fに亘る部分全体を保護できる。
【0030】
すなわち、フェイスカバー11は、筒状の首保護部12の一端部に袋状の顔保護部13の開口19側が接続されているため、首保護部12の他端部であってペットPへの装着用の挿入口15を除いて、塵埃や害虫がフェイスカバー11内に入り込むことができる大きな開口部分が生じることがない。
【0031】
また、首保護部12を防虫加工が施された生地により形成することで、フェイスカバー11を装着したペットPの首周りを、首保護部12によって害虫を遠ざけつつ保護できる。
【0032】
さらに、顔保護部13を形成する生地を、所定の害虫(例えばマダニ、ヒアリ、ノミなど)を通過させない大きさの目に設定することで、顔保護部13の生地の目を害虫が通過して顔に付着することを効果的に防止できる。
【0033】
また、顔保護部13を形成する生地をオーガンジーとすることで、顔保護部13を安価に製造しつつ、通気性及びシースルー性を確保しながら塵埃や害虫が通過しにくい微細な大きさの目の顔保護部13を容易に形成できる。
【0034】
そして、顔保護部13を形成する生地を、防虫加工されていない生地とすることで、顔保護部13によって顔を覆ったペットPの鼻や目の粘膜を防虫加工用の防虫剤により刺激したり、ペットPが誤って顔保護部13を噛んだりしたときに防虫剤を経口摂取したりすることを防止できる。
【0035】
この結果、フェイスカバー11を防虫具として効果的に利用でき、害虫の首Nから先の頭部H、特に顔Fへの付着を抑制できる。
【0036】
なお、上記一実施の形態において、首保護部12を形成する生地は、任意に選択できるが、防虫(防蚊)加工が施されていない生地を使用する場合には、ペットPへの装着前に防虫(防蚊)剤を首保護部12に予め塗布などすることで、同様の作用効果を奏することができる。
【0037】
また、上記の実施の形態では、フェイスカバー11を基本的に防虫用途として構成したが、ペットPの顔Fを保護するのみの用途などとしても使用可能である。この場合、顔保護部13にはオーガンジーでなく、より目が粗く強度のあるメッシュやチュールを使用することもできるし、首保護部12には防虫加工が施された生地以外の素材を使用することもできる。
【0038】
さらに、首保護部12は、必須の構成ではなく、保持部によって顔保護部13がペットPの顔Fを覆った状態で保護部によってフェイスカバー11がペットPに保持されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
11 動物用フェイスカバー
12 首保護部
13 顔保護部
17 首保持部
19 開口
21 保持部
F 顔
P 動物であるペット