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  • 特許-ポリアミド樹脂組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/02 20060101AFI20221026BHJP
   C08L 77/06 20060101ALI20221026BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
C08L77/02
C08L77/06
C08L1/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018139515
(22)【出願日】2018-07-25
(65)【公開番号】P2020015813
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 頌平
(72)【発明者】
【氏名】野口 彰太
(72)【発明者】
【氏名】中井 美穂
(72)【発明者】
【氏名】上川 泰生
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/126038(WO,A1)
【文献】特開2005-194532(JP,A)
【文献】特開平10-130495(JP,A)
【文献】特開平08-283572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 77/02
C08L 77/06
C08L 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上のポリアミド樹脂と平均繊維径が10μm以下のセルロース繊維とを含有し、2番目に含有量が多いポリアミド樹脂の含有量が、ポリアミド樹脂の合計に対して5質量%以上であって、ポリアミド樹脂の合計100質量部に対するセルロース繊維の含有量が0.01~50質量部であり、前記ポリアミド樹脂が、ポリアミド6とポリアミド66の組み合わせ、ポリアミド6とポリアミド12の組み合わせ、またはポリアミド6とポリアミド66とポリアミド12の組み合わせであることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
セルロース繊維が、未変性のセルロース繊維またはセルロース由来の水酸基の一部が変性されたセルロース繊維であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース繊維を含有したポリアミド樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、機械的特性や耐熱性に優れることから広く用いられている。しかしながら、ポリアミド樹脂は、結晶性かつ吸水性であるため、収縮率や膨張率が高く寸法安定性が悪い。そのため、ポリアミド樹脂は、機械的特性や寸法安定性を向上させるため、ガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレイ等の無機充填剤を配合されていることが多い。しかしながら、無機充填剤は、比重が高いために、それから得られる成形品の質量が大きくなるという問題点があった。
【0003】
近年、樹脂材料の強化材としてセルロース繊維が検討されている。セルロース繊維を配合した樹脂組成物は、無機充填剤を用いる場合より軽量であって、機械的特性や寸法安定性にも優れている。特許文献1では、本発明者らが、セルロース繊維を含有したポリアミド樹脂組成物について開示をおこなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開2011/126038号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のポリアミド樹脂組成物は、機械的特性が向上し、線膨張係数が小さく寸法安定性が良好なものの、異方性が大きかった。
【0006】
本発明は、前記の問題点を解決しようとするものであり、機械的特性や寸法安定性に優れつつも、低異方性のポリアミド樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、2種以上のポリアミド樹脂を特定の比率で用いて、さらに平均繊維径が10μm以下のセルロース繊維を特定量用いることにより上記目的が達成されることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、下記の通りである。
(1)2種以上のポリアミド樹脂と平均繊維径が10μm以下のセルロース繊維とを含有し、2番目に含有量が多いポリアミド樹脂の含有量が、ポリアミド樹脂の合計に対して5質量%以上であって、ポリアミド樹脂の合計100質量部に対するセルロース繊維の含有量が0.01~50質量部であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
(2)ポリアミド樹脂が、ポリアミド6とポリアミド66の組み合わせ、ポリアミド6とポリアミド12の組み合わせ、またはポリアミド6とポリアミド66とポリアミド12の組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
(3)セルロース繊維が、未変性のセルロース繊維またはセルロース由来の水酸基の一部が変性されたセルロース繊維であることを特徴とする(1)または(2)に記載のポリアミド樹脂組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、機械的特性や寸法安定性に優れつつも、低異方性のポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】そり変位量を評価するために作製した円盤の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂とセルロース繊維から構成される。
【0012】
本発明においては、ポリアミド樹脂は2種以上から構成されることが必要であり、2~10種類から構成されることが好ましく、2~5種類で構成されることがより好ましく、2~3種類で構成されることがさらに好ましい。2種以上のポリアミド樹脂は、機械的特性の点からすべてのポリアミド樹脂が相溶していることが好ましい。相溶性の点から、11種以上のポリアミド樹脂から構成するものとすることは、現実的ではない。
【0013】
本発明において、ポリアミド樹脂とは、アミノ酸、ラクタムまたはジアミンとジカルボン酸とから形成されるアミド結合を有する重合体のことである。
【0014】
アミノ酸としては、例えば、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸が挙げられる。
【0015】
ラクタムとしては、例えば、ε-カプロラクタム、ω-ラウロラクタムが挙げられる。
【0016】
ジアミンとしては、例えば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、2,4-ジメチルオクタメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、3,8-ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジンが挙げられる。
【0017】
ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2-クロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ジグリコール酸が挙げられる。
【0018】
ポリアミド樹脂の具体例としては、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ポリアミド116)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミドTMHT)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリヘキサメチレンテレフタル/イソフタルアミド(ポリアミド6T/6I)、ポリビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)、ポリビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドジメチルPACM12)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ポリアミド9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド10T)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド11T)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド(ポリアミド11T(H))が挙げられ、これらの共重合体や混合物であってもよい。中でも、本発明においては、機械的特性やことコストの点から、ポリアミド6とポリアミド66の組み合わせ、ポリアミド6とポリアミド12の組み合わせ、または、ポリアミド6とポリアミド66とポリアミド12の組み合わせが好ましい。
【0019】
本発明においては、2番目に含有量が多いポリアミド樹脂の含有量が、ポリアミド樹脂の合計に対して5質量%以上 であることが必要である。ただし、本発明においては、含有量が最も多いポリアミド樹脂が2種以上ある場合、2番目に含有量が多い樹脂の含有量は、最も含有量が多い樹脂の含有量で計算するものとする。ポリアミド樹脂のN(4≦N)種類の場合、2番目に含有量が多いポリアミド樹脂の含有量は、ポリアミド樹脂の合計に対して、(100/N×0.6)質量%以上とすることが好ましく、(100/N)質量%とすることがより好ましい。具体的には、例えば、ポリアミド樹脂が2種類の場合、2番目に含有量が多いポリアミド樹脂の含有量は、ポリアミド樹脂の合計に対して
30質量%以上とすることが好ましく、50質量%とすることがより好ましく、例えば、ポリアミド樹脂が3種類の場合、2番目に含有量が多いポリアミド樹脂の含有量は、ポリアミド樹脂の合計に対して、20質量%以上とすることが好ましく、33 質量%とすることがより好ましい。2番目に含有量が多いポリアミド樹脂の含有量が5質量%未満の場合、異方性が大きくなるので好ましくない。
【0020】
セルロース繊維としては、例えば、木材、稲、綿、麻、ケナフ等に由来するものの他にバクテリアセルロース、バロニアセルロース、ホヤセルロース等の生物由来のものも含まれる。また、再生セルロース、セルロース誘導体も含まれる。
【0021】
本発明においては、2種以上のポリアミド樹脂を特定の比率で用いて、さらに平均繊維径が10μm以下のセルロース繊維を特定量用いることによって、機械的特性や寸法安定性を向上させ、低異方性とすることができる。そのためには、セルロース繊維を凝集させることなく、ポリアミド樹脂組成物中に均一に分散させることが好ましい。セルロース繊維を均一に分散させるためには、セルロース繊維とポリアミド樹脂を構成するモノマーとを、ポリアミド樹脂の重合時に均一に混合させることが好ましい。また、セルロース繊維は、ポリアミド樹脂を構成するモノマーとの親和性が高い未変性のセルロース繊維や、セルロース由来の水酸基の一部が変性されたセルロース繊維を用いることが好ましい。変性後の置換基としては、例えば、カルボキシル基、カルボキシメチル基、リン酸エステル基、シリルエーテル基 が挙げられる。
【0022】
さらに、本発明においては、セルロース繊維の平均繊維径はできる限り小さい方が好ましい。セルロース繊維の平均繊維径が小さいほど、マトリクス樹脂中にセルロース繊維が強固にネットワーク構造を形成し、機械的特性が向上する傾向がある。また、理由は不明であるが、セルロース繊維の平均繊維径が小さいほど、成形収縮率や吸湿膨張率や反り量等の寸法安定性が小さくなり、かつ、低異方性となる傾向がある。
【0023】
本発明のポリアミド樹脂組成物中に含有されるセルロース繊維は、平均繊維径が10μm以下であることが必要であり、中でも平均繊維径は500nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましい。平均繊維径が10μmを超えるセルロース繊維では、機械的特性や寸法安定性を向上させることができず、異方性も低減することができないので好ましくない。平均繊維径の下限は特に限定するものではないが、セルロース繊維の生産性を考慮すると1nm以上とすることが好ましい。
【0024】
ポリアミド樹脂組成物中のセルロース繊維の平均繊維径を10μm以下とするためには、ポリアミド樹脂に配合するセルロース繊維として、平均繊維径が10μm以下のものを用いることが好ましい。このような平均繊維径が10μm以下のセルロース繊維としては、セルロース繊維を引き裂くことによってミクロフィブリル化したものが好ましい。ミクロフィブリル化する手段としては、ボールミル、石臼粉砕機、高圧ホモジナイザー、高圧粉砕装置、ミキサー等の各種粉砕装置を用いることができる。セルロース繊維としては、市販されているものとして、例えば、ダイセルファインケム社製の「セリッシュ」を用いることができる。
【0025】
平均繊維径が10μm以下のセルロース繊維として、セルロース繊維を用いた繊維製品の製造工程において、屑糸として出されたセルロース繊維の集合体を用いることもできる。繊維製品の製造工程とは紡績時、織布時、不織布製造時、その他、繊維製品の加工時等が挙げられる。これらのセルロース繊維の集合体は、セルロース繊維がこれらの工程を経た後に屑糸となったものであるため、セルロース繊維が微細化したものとなっている。
【0026】
また、平均繊維径が10μm以下のセルロース繊維として、バクテリアが産出するバクテリアセルロース繊維を用いることもでき、例えば、アセトバクター族の酢酸菌を生産菌として産出されたものを用いることができる。植物のセルロース繊維は、セルロースの分子鎖が収束したもので、非常に細いミクロフィブリルが束になって形成されているものであるのに対し、酢酸菌より産出されたセルロース繊維はもともと幅20~50nmのリボン状であり、植物のセルロース繊維と比較すると極めて細い網目状を形成している。
【0027】
さらに、平均繊維径が10μm以下のセルロース繊維として、例えば、N-オキシル化合物の存在下にセルロース繊維を酸化させた後に、水洗、物理的解繊工程を経ることにより得られる、微細化されたセルロース繊維を用いてもよい。N-オキシル化合物としては各種あるが、例えば、Cellulose(1998)5,153-164に記載されているような2,2,6,6-Tetramethylpiperidine-1-oxyl radical(以下、「TEMPO」と略称する。)等が好ましい。このような化合物を触媒量の範囲で反応水溶液に添加する。
【0028】
この水溶液に共酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムや亜塩素酸ナトリウムを加え、臭化アルカリ金属を加えることにより反応を進行させる。水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ性の化合物を添加してpHを10付近に保持し、pHの変化が見られなくなるまで反応を継続する。反応温度は室温で構わない。反応後、系内に残存するN-オキシル化合物を除去することが好ましい。洗浄は濾過、遠心分離等、各種方法を採用することができる。その後、上記したような各種粉砕装置を用い、物理的な解繊工程を経ることで微細化されたセルロース繊維を得ることができる。なお、上記方法により得られたセルロース繊維は、セルロース由来の水酸基の一部がカルボキシル基で変性されたセルロース繊維となる。
【0029】
セルロース繊維は、平均繊維径と平均繊維長との比であるアスペクト比((平均繊維長)/(平均繊維径))が10以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましく、100以上であることがさらに好ましい。アスペクト比が10以上であることにより、得られるポリアミド樹脂組成物の機械的特性や寸法安定性が向上しやすくなる。
【0030】
本発明において、セルロース繊維の含有量は、ポリアミド樹脂の合計100質量部に対して、0.01~50質量部であることが必要であり、0.5~10質量部であることが好ましい。セルロース繊維の含有量がポリアミド樹脂の合計100質量部に対して0.01質量部未満である場合は、機械的特性や寸法安定性を向上させることができず、異方性も低減することができないので好ましくない。一方、セルロース繊維の含有量がポリアミド樹脂100質量部に対して50質量部を超える場合は、セルロース繊維をポリアミド樹脂組成物中に含有させることが困難となり、また溶融樹脂の流動性が悪化するためポリアミド樹脂組成物の成形性が低下する場合がある。
【0031】
ポリアミド樹脂組成物の相対粘度は、溶媒として96%硫酸を用いて、温度25℃、濃度1g/100mLで測定した場合において、1.5~5.0であることが好ましく、1.7~4.0であることがより好ましい。樹脂組成物の相対粘度が1.7未満では、樹脂組成物の機械的特性が低下する場合がある。一方、相対粘度が5.0を超えると、溶融樹脂の流動性が悪化するため樹脂組成物の成形性が低下する場合がある。
【0032】
セルロース繊維は水との親和性が非常に高く、平均繊維径が小さいほど水に対して良好な分散状態を保つことができる。また、水を失うと水素結合により強固にセルロース繊維同士が凝集し、一旦凝集すると凝集前と同様の分散状態をとることが困難となる。特にセルロース繊維の平均繊維径が小さくなるほどこの傾向は顕著となる。したがって、セルロース繊維は水を含んだ状態でポリアミド樹脂に配合することが好ましい。そこで、本発明においては、水を含んだ状態のセルロース繊維の存在下に、ポリアミド樹脂を構成するモノマーを用いて重合反応をおこなうことにより、セルロース繊維を含有するポリアミド樹脂組成物を得る方法を採ることが好ましい。このような製造法により、ポリアミド樹脂中にセルロース繊維を凝集させずに均一に分散させることが可能となる。
【0033】
本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法は特に限定されないが、例えば、ポリアミド樹脂を構成するモノマーとセルロース繊維の水分散液とを混合し重合反応をおこなって得られた樹脂組成物に、前記ポリアミド樹脂とは異なるポリアミド樹脂を含有させることにより製造することができる。
【0034】
セルロース繊維の水分散液は、平均繊維径が10μm以下のセルロース繊維を水に分散させたものであり、水分散液中におけるセルロース繊維の含有量は0.01~100質量部とすることが好ましい。セルロース繊維の水分散液は、精製水とセルロース繊維とをミキサー等で撹拌することにより得ることができる。そして、セルロース繊維の水分散液とポリアミド樹脂を構成するモノマーとを混合しミキサー等で撹拌することにより、均一な分散液とする。その後、分散液を加熱し、150~270℃まで昇温させて撹拌することにより重合反応させる。このとき、分散液を加熱する際に徐々に水蒸気を排出することにより、セルロース繊維の水分散液中の水分を排出することができる。なお、上記ポリアミド樹脂組成物の重合時においては、必要に応じてリン酸や亜リン酸等の触媒を添加してもよい。そして、重合反応終了後は、得られた樹脂組成物を払い出した後、切断してペレットとすることが好ましい。
【0035】
セルロース繊維としてバクテリアセルロースを用いる場合においては、セルロース繊維の水分散液として、バクテリアセルロースを精製水に浸して溶媒置換したものを用いてもよい。バクテリアセルロースの溶媒置換したものを用いる際には、溶媒置換後、所定の濃度に調整したものを、ポリアミド樹脂を構成するモノマーに混合し、上記と同様に重合反応を進行させることが好ましい。
【0036】
上記方法においては、平均繊維径が10μm以下のセルロース繊維を水分散液のまま重合反応に供することになるため、セルロース繊維を分散性が良好な状態で重合反応に供することができる。さらに、重合反応に供されたセルロース繊維は、重合反応中のモノマーや水との相互作用により、また上記のような温度条件で撹拌することにより、分散性が向上し、繊維同士が凝集することがなく、平均繊維径が小さいセルロース繊維が良好に分散したポリアミド樹脂組成物を得ることが可能となる。なお、上記方法によれば、重合反応前に添加したセルロース繊維よりも、重合反応終了後に樹脂組成物中に含有されているセルロース繊維の方が、平均繊維径が小さくなることがある。
【0037】
さらに上記方法においては、セルロース繊維を乾燥させる工程が不要となり、微細なセルロース繊維の飛散が生じる工程を経ずに製造が可能であるため、操業性よくポリアミド樹脂組成物を得ることが可能となる。またモノマーとセルロース繊維を均一に分散させる目的として水を有機溶媒に置換する必要がないため、ハンドリングに優れるとともに製造工程中において化学物質の排出を抑制することが可能となる。
【0038】
ポリアミド樹脂を構成するモノマーとセルロース繊維の水分散液とを混合し重合反応をおこなう温度は、構成するモノマーが重合し、かつ得られるポリアミド樹脂組成物が分解しない領域から選ばれる。重合反応をおこなう温度は、ポリアミド樹脂がポリアミド6の場合、150~270℃であることが好ましく、ポリアミド66の場合、190~310℃であることが好ましい。
【0039】
重合反応をおこなって得られたポリアミド樹脂組成物は、さらに固相重合をおこなうことが好ましい。
【0040】
固相重合は、 重合反応をおこなって得られたポリアミド樹脂組成物、または必要に応じて精練した後の樹脂組成物を、不活性ガス流通下または減圧下で、樹脂組成物の融点(以下、「Tm」と略称する場合がある。)未満の温度で30分以上加熱することによりおこなうことが好ましく、1時間以上加熱することによりおこなうことがより好ましい。加熱温度が、(Tm-75℃)未満の場合、固相重合の反応速度が遅くなることがある。一方、加熱温度がTm付近では、樹脂組成物が融着したり、着色が生じたりする場合がある。
【0041】
ポリアミド樹脂を構成するモノマーとセルロース繊維の水分散液とから得られた樹脂組成物に、前記ポリアミド樹脂とは異なるポリアミド樹脂を含有させる方法は特に限定されないが、溶融混練する方法が好ましい。溶融混練法としては、ブラベンダー等のバッチ式ニーダー、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、ヘリカルローター、ロール、一軸押出機、二軸押出機等を用いる方法が挙げられる。溶融混練温度は、ポリアミド樹脂が溶融し、かつそれらが分解しない領域から選ばれる。溶融混練温度は、高すぎると、ポリアミド樹脂やセルロース繊維が分解するおそれがあることから、(Tm-20℃)~(Tm+50℃)とすることが好ましい。
【0042】
本発明のポリアミド樹脂組成物には、異方性が大きくならない程度に、ガラス繊維や炭素繊維等のセルロース繊維以外の繊維状強化材を含有してもよい。また、本発明の樹脂組成物には、その特性を大きく損なわない限りにおいて、繊維状強化材以外の強化材、ポリアミド樹脂とは異なる他の重合体、顔料、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、耐衝撃剤、難燃剤、相溶化剤、結晶核剤、着色剤、炭化抑制剤等の添加剤を配合してもよい。添加剤は、ポリアミド樹脂を構成するモノマーとセルロース繊維の水分散液とを混合し重合反応をおこなう時に配合してもよいし、前記ポリアミド樹脂とは異なるポリアミド樹脂を含有させる時に配合してもよいし、また、2種以上のポリアミド樹脂とセルロース繊維を含有した樹脂組成物に溶融混練して配合してもよい。2種以上のポリアミド樹脂とセルロース繊維を含有した樹脂組成物に添加剤を配合する方法は、特に限定されないが、ポリアミド樹脂を構成するモノマーとセルロース繊維の水分散液とを混合し重合反応をおこなって得られた樹脂組成物に、前記ポリアミド樹脂とは異なるポリアミド樹脂を含有させる場合と同様の条件でおこなえばよい。
【0043】
本発明のポリアミド樹脂組成物を様々な形状に加工する方法としては、溶融混合物をストランド状に押出しペレット形状にする方法や、溶融混合物をホットカット、アンダーウォーターカットしてペレット形状にする方法や、シート状に押出しカッティングする方法、ブロック状に押出し粉砕してパウダー形状にする方法が挙げられる。
【0044】
本発明のポリアミド樹脂組成物の成形方法としては、例えば、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、焼結成形法が挙げられ、機械的特性、成形性の向上効果が大きいことから、射出成形法が好ましい。
【0045】
射出成形機としては、特に限定されず、例えば、スクリューインライン式射出成形機またはプランジャ式射出成形機が挙げられる。射出成形機のシリンダー内で加熱溶融されたポリアミド樹脂組成物は、ショットごとに計量され、金型内に溶融状態で射出され、所定の形状で冷却、固化された後、成形体として金型から取り出される。射出成形時のヒータ設定温度は、Tm以上にすることが好ましいが、セルロース繊維の熱分解や金属腐食性を抑えるために300℃以下で成形することが好ましい。
【0046】
なお、本発明のポリアミド樹脂組成物の加熱溶融時には、十分に乾燥された樹脂組成物ペレットを用いることが好ましい。樹脂組成物ペレットは、含有する水分量が多いと、射出成形機のシリンダー内で発泡し、最適な成形体を得ることが困難となることがある。射出成形に用いる樹脂組成物ペレットの水分率は、樹脂組成物100質量部に対して、0.3質量部未満であることが好ましく、0.1質量部未満であることがより好ましい。
【0047】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、機械的特性や寸法安定性に優れつつも、低異方性であることから、自動車用途、電気電子機器用途、農業・水産用途、医療用機器用途、雑貨等に好適に供することができる。
【0048】
自動車用途としては、例えば、バンパー等のボディ、インストルメントパネル、コンソールボックス、ガーニッシュ、ドアトリム、天井、フロア、ランプリフレクター、ブラッシホルダー、フュエルポンプモジュール部品、デストリビューター、シートリードバルブ、ワイパーモーターギア、スピードメーターフレーム、ソレノイドイグニッションコイル、オルタネーター、スイッチ、センサー部品、タイロットエンドスタビライザー、ECUケーブル、排ガスコントロールバルブ、コネクター、排気ブレーキの電磁弁、エンジンバルブ、ラジエータファン、スタータ、インジェクタ、エンジン周りのパネル、エンジンカバー、モーターカバーが挙げられる。
【0049】
電気電子機器用途としては、例えば、パソコン、携帯電話、音楽プレーヤー、カーナビゲーション、SMTコネクター、ICカードコネクター、光ファイバーコネクター、マイクロスイッチ、コンデンサー、チップキャリア、コイル封止、トランジスター封止、ICソケット、スイッチ、リレー部品、キャパシターハウジング、サーミスタ、各種コイルボビン、FDDメインシャーシ、テープコーダーヘッドマウント、ステッピングモーター、軸受、シェーバ刃台、液晶プロジェクションTVのランプハウジング、電子レンジ部品、電磁調理器のコイルベース、ドライヤーノズル、スチームドライヤー部品、スチームアイロン部品、DVDピックアップベース、整流子基台、回路基板、IC、液晶冶具、フードカッター、DATシリンダーベース、コピー機用ギア、プリンタ定着ユニット部品、液晶パネル導光板、通信機器(アンテナ)、半導体用封止材料、パワーモジュール、ヒューズホルダー、ウォーターポンプインペラー、半導体製造装置のパイプ、ゲーム機用コネクター、エアコン用ドレインパン、生ごみ処理機内容器、掃除機モーターファンガイド、電子レンジ用ローラーステイ・リング、キャップスタンモーター軸受、街路灯、水中ポンプ、モーターインシュレータ、モーターブラシホルダー、ブレーカー部品、パソコン筐体、携帯電話筐体、OA機器筐体部品、ガスメーターが挙げられる。
【0050】
農業、水産用途としては、例えば、コンテナー、栽培容器、浮きが挙げられる。
【0051】
医療用機器用途としては、例えば、注射器、点滴容器が挙げられる。
【0052】
雑貨としては、例えば、皿、コップ、スプーン、植木鉢、クーラーボックス、団扇、玩具、ボールペン、定規、クリップ、ドレーン材、フェンス、収納箱、工事用配電盤、給湯機器ポンプケーシング、インペラー、ジョイント、バルブ、水栓器具が挙げられる。
【実施例
【0053】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0054】
A.評価方法
(1)ポリアミド樹脂組成物中のセルロース繊維の平均繊維径
凍結ウルトラミクロトームを用いて射出成形片から厚さ100nmの切片を採取し、切片染色を実施後、透過型電子顕微鏡(日本電子社製JEM-1230)を用いて観察をおこなった。電子顕微鏡画像からセルロース繊維(単繊維)の長手方向に対する垂直方向の長さを測定した。このとき、垂直方向の長さのうち最大のものを繊維径とした。同様にして10本のセルロース繊維(単繊維)の繊維径を測定し、10本の平均値を算出したものを平均繊維径とした。
なお、セルロース繊維の繊維径が大きいものについては、ミクロトームにて厚さ10μmの切片を切り出したものか、摺動部材をそのままの状態で、実体顕微鏡(OLYMPUS社製 SZ-40)を用いて観察をおこない、得られた画像から上記と同様にして繊維径を測定し、平均繊維径を求めた。
【0055】
(2)融点
示差走査熱量計DSC-7型(パーキンエルマー社製)を用いて、昇温速度20℃/分で350℃まで昇温した後、350℃で5分間保持し、降温速度20℃/分で25℃まで降温し、さらに25℃で5分間保持後、再び昇温速度20℃/分で昇温測定した際の吸熱ピークのトップを融点とした。
【0056】
(3)曲げ強度、曲げ弾性率
得られた樹脂組成物のペレットを十分に乾燥した後、日精樹脂工業社製射出成形機(NEX110-12E)を用いて、シリンダー温度(Tm+15℃)、金型温度(Tm-190℃)の条件で、ISO規格3167に記載の多目的試験片A型を得た。
得られた多目的試験片A型の曲げ強度および曲げ弾性率を、ISO178準拠の3点支持曲げ法(支点間距離:64mm、試験速度:2mm/分、試験雰囲気:23℃、50%RH、絶乾状態)にて測定した。
【0057】
(4)成形収縮率
得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを十分に乾燥した後、ファナック社製射出成形機(α-100iA)を用いて、シリンダー温度(Tm+15℃)、金型温度(Tm-190℃)の条件で、幅60mm×長さ60mm×厚み3mmの板状試験片を作製した。射出方向をMD、平板表面に平行かつ射出方向と垂直の方向をTDとして、それぞれの方向の板状試験片の寸法を測定した。
得られた板状試験片を、23℃で24時間静置し、その後、板状試験片のMDとTDの寸法を測定した。静置前後の試験片寸法から、MD、TDそれぞれの成形収縮率を求めた。
また、以下の式により、成形収縮率比を求めた。成形収縮率の異方性が低い材料ほど、成形収縮率比は1に近づく。
成形収縮率比=(TDの成形収縮率)/(MDの成形収縮率)
本発明においては、成形収縮率比を以下の4段階で評価し、「A」以上を合格とした。
S: 0.9を超え1.1未満
A: 0.8を超え0.9以下または1.1以上1.2未満
B: 0.5を超え0.8以下または1.2以上1.5未満
C: 0.5以下または1.5以上
【0058】
(5)吸湿膨張率
(4)で得られた板状試験片を、23℃、62%RHの条件下240時間静置し、その後、試験片のMDとTDの寸法を測定した。静置前後の試験片寸法から、MD、TDそれぞれの吸湿膨張率を求めた。
また、以下の式により、吸湿膨張率比を求めた。吸湿膨張率の異方性が低い材料ほど、吸湿膨張率比は1に近づく。
吸湿膨張率比=(TDの吸湿膨張率)/(MDの吸湿膨張率)
本発明においては、吸湿膨張率比を以下の4段階で評価し、「A」以上を合格とした。
S: 0.9を超え1.1未満
A: 0.8を超え0.9以下または1.1以上1.2未満
B: 0.5を超え0.8以下または1.2以上1.5未満
C: 0.5以下または1.5以上
【0059】
(8)反り変位量
得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを十分に乾燥した後、ファナック社製射出成形機(α-100iA)を用いて、シリンダー温度(Tm+15℃)、金型温度(Tm-190℃)の条件で、図1に示す厚み2mmの円盤状試験片を作製した。
得られた円盤状試験片を水平な台の上に静置し、図1の0~4の5か所の垂直方向変位についてレーザー変位計を用いて測定し、平均値を求めた。
本発明においては、反り変位量を以下の3段階で評価し、「A」以上を合格とした。
S: 0.2mm以下
A: 0.2mmを超え0.5mm以下
B: 0.5mmを超える
【0060】
B.原料
(1)ポリアミド樹脂
・PA6:ポリアミド6、ユニチカ社製、A1030BRL
・PA66:ポリアミド66、ASCEND社製、VYDYNE 50BWFS
・PA12:ポリアミド12、宇部興産社製、3024U
【0061】
(2)セルロース繊維
・KY100G:ダイセルファインケム社製 セリッシュKY100G、平均繊維径:125nm、未変性のセルロース繊維が10質量%含有されたもの。
・KY100S:ダイセルファインケム社製 セリッシュKY100S、平均繊維径が140nmの未変性のセルロース繊維が25質量%含有されたもの。
・屑糸(未変性のセルロース繊維):
不織布の製造工程において屑糸として出されたセルロース繊維の集合体に、精製水を加えてミキサーで撹拌し、平均繊維径が3240nmの未変性のセルロース繊維が6質量%含有された水分散液を調製した。
【0062】
・TEMPO触媒酸化セルロース繊維(セルロース由来の水酸基の一部が変性されたセルロース繊維):
漂白後の針葉樹由来の未叩解クラフトパルプ(白色度85%)500g(絶乾)を、TEMPO 780mgおよび臭化ナトリウム75.5gを溶解した水溶液500mLに添加し、パルプが均一に分散するまで撹拌した。そこに次亜塩素酸ナトリウム水溶液を6.0mmol/gになるように加えることで酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するため、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後の混合物をガラスフィルターにより濾過してパルプを分離し、十分に水洗することで酸化されたパルプを得た。上記の工程で得られた酸化パルプを水で1.0%(w/v)に調整し、超高圧ホモジナイザー(20℃、150MPa)で3回処理して、平均繊維径が10nmのTEMPO触媒酸化セルロース繊維が1.0質量%含有された水分散液を調製した。
なお、TEMPO触媒酸化セルロース繊維をH-NMR、13C-NMR、FT-IR、中和滴定で確認したところ、セルロース由来の水酸基の一部がカルボキシル基で置換されていた。
【0063】
(3)ガラス繊維
・GF:日本電気硝子社製 ECS03T-262H、繊維径10μm
【0064】
実施例1
セルロース繊維の水分散液として、セリッシュKY100Gを用いて、これに精製水を加えてミキサーで撹拌し、セルロース繊維の含有量が5.0質量%の水分散液を調製した。
このセルロース繊維の水分散液100質量部と、ε-カプロラクタム100質量部とを、均一な分散液となるまでさらにミキサーで撹拌、混合した。続いて、この混合分散液を重合装置に投入後、撹拌しながら240℃に加熱し、徐々に水蒸気を放出しつつ、0MPaから0.5MPaの圧力まで昇圧した。そののち大気圧まで放圧し、240℃で1時間重合反応をおこなった。重合が終了した時点でポリアミド樹脂組成物をストランド状に払い出し、切断して、樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを95℃の熱水で処理し、精練をおこない、乾燥し、乾燥セルロース繊維含有PA6ペレットを得た。
一方、PA66のペレットを100℃で12時間真空乾燥し、乾燥PA66ペレットを得た。
得られた乾燥セルロース繊維含有PA6ペレット50質量部と、乾燥PA66ペレット50質量部とをドライブレンドした後、二軸押出機(東芝機械社製TEM26SS、スクリュー径26mm)の主ホッパーに供給した。その後、280℃で溶融混練し、ストランド状に払い出し、切断して、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。
【0065】
実施例2~9、比較例3~5
表1に記載の樹脂組成になるようにポリアミド樹脂とセルロース繊維の種類と含有量を変更する以外は、実施例1と同様の操作をおこない、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。ただし、実施例8、9で用いたPA12は100℃で12時間真空乾燥したものを用いた。
【0066】
比較例1
PA6のペレットを100℃で12時間真空乾燥し、乾燥PA6ペレットを得た。
乾燥PA6ペレット50質量部と、実施例1で得られた乾燥PA66ペレット50質量部とをドライブレンドした後、二軸押出機(東芝機械社製TEM26SS、スクリュー径26mm)の主ホッパーに供給した。その後、280℃で溶融混練し、ストランド状に払い出し、切断して、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。
【0067】
比較例2
比較例1で得られた乾燥PA6ペレット50質量部と、実施例1で得られた乾燥PA66ペレット50質量部とをドライブレンドした後、二軸押出機(東芝機械社製TEM26SS、スクリュー径26mm)の主ホッパーに供給した。280℃で溶融し、途中、サイドフィーダーからGF15質量部を供給して十分に溶融混練し、ストランド状に払い出し、切断して、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。
【0068】
表1に、実施例、比較例で得られたポリアミド樹脂組成物の樹脂組成、樹脂組成物中のセルロース繊維の平均繊維径およびポリアミド樹脂組成物の評価結果を示す。
【0069】
【表1】
【0070】
実施例1~9のポリアミド樹脂組成物は、本発明の要件をすべて満たしていたため、曲げ強度、曲げ弾性率が高く、成形収縮率、吸湿膨張率の値が小さく、それぞれのTD/MD比が1に近い値であって、異方性が小さかった。
また、セルロース繊維の配合量が増加するにともない、成形収縮率、吸湿収縮率や反り変位量が小さくなり、成形収縮率比や吸湿膨張率比も小さくなる傾向があった。
【0071】
比較例1のポリアミド樹脂組成物は、セルロース繊維を配合していなかったため、成形収縮率、吸湿膨張率、反り変位量が大きかった。
比較例2のポリアミド樹脂組成物は、セルロース繊維を配合せずガラス繊維を配合したため、曲げ強度や曲げ弾性率が高く、成形収縮率や反り変位量は小さかったが、成形収縮率、吸湿膨張率のTD/MD比が1.2以上となり異方性が大きかった。
比較例3、4のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂を1種しか用いなかったため、成形収縮率、吸湿膨張率のTD/MD比が1.2以上となり異方性が大きかった。
比較例5のポリアミド樹脂組成物は、2番目に含有量が多いポリアミド樹脂の含有量が、ポリアミド樹脂全体に対して5質量%未満であっため、成形収縮率、吸湿膨張率のTD/MD比が1.2以上となり異方性が大きかった。
図1