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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】高熱伝導性材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20221026BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20221026BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20221026BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20221026BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20221026BHJP
   D01F 9/08 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/013
C08K3/22
B82Y30/00
B82Y40/00
D01F9/08 A
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2018563356
(86)(22)【出願日】2018-01-17
(86)【国際出願番号】 JP2018001152
(87)【国際公開番号】W WO2018135517
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2020-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2017007138
(32)【優先日】2017-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017207728
(32)【優先日】2017-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中根 幸治
(72)【発明者】
【氏名】高 淑雅
(72)【発明者】
【氏名】大越 章由
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 剛史
(72)【発明者】
【氏名】伊左治 忠之
(72)【発明者】
【氏名】小澤 雅昭
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-348561(JP,A)
【文献】特開2002-293954(JP,A)
【文献】特開2017-053078(JP,A)
【文献】特開平01-301544(JP,A)
【文献】特開2015-086270(JP,A)
【文献】国際公開第2011/158942(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/16
D01F 9/08 - 9/32
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナファイバーシート及び樹脂を含む高熱伝導性材料であって、前記アルミナファイバーシートが、高熱伝導性材料中20~90質量%含まれ、前記アルミナファイバーが、一定方向に配向している高熱伝導性材料。
【請求項2】
前記アルミナファイバーシートが、前記高熱伝導性材料中30~80質量%含まれる請求項1記載の高熱伝導性材料。
【請求項3】
前記アルミナファイバーが、αアルミナを含む請求項1又は2記載の高熱伝導性材料。
【請求項4】
前記αアルミナが、前記アルミナファイバー中50質量%以上含まれる請求項記載の高熱伝導性材料。
【請求項5】
前記アルミナファイバーの平均繊維径が、50~2,000nmである請求項1~のいずれか1項記載の高熱伝導性材料。
【請求項6】
前記アルミナファイバーの平均繊維径が、100~1,000nmである請求項記載の高熱伝導性材料。
【請求項7】
前記樹脂が、ポリビニルアルコール、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂及びシリコーン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1~のいずれか1項記載の高熱伝導性材料。
【請求項8】
前記高熱伝導性材料の熱伝導率が、5W/mK以上である請求項1~のいずれか1項記載の高熱伝導性材料。
【請求項9】
前記高熱伝導性材料の熱伝導率に異方性があり、アルミナファイバーと直交方向の熱伝導率に対するアルミナファイバーと平行方向の熱伝導率の比が、1.4以上である請求項1~のいずれか1項記載の高熱伝導性材料。
【請求項10】
前記高熱伝導性材料が、電気絶縁性である請求項1~のいずれか1項記載の高熱伝導性材料。
【請求項11】
アルミナファイバーシート及び樹脂を含む高熱伝導性材料であって、
(1)高熱伝導性材料の熱伝導率が、5W/mK以上であり、
(2)前記アルミナファイバーが、一定方向に配向しており、
(3)高熱伝導性材料の熱伝導率に異方性があり、アルミナファイバーと直交方向の熱伝導率に対するアルミナファイバーと平行方向の熱伝導率の比が、1.4以上である
高熱伝導性材料。
【請求項12】
前記高熱伝導性材料が、電気絶縁性である請求項1記載の高熱伝導性材料。
【請求項13】
(1)アルミナ源及び水溶性高分子を含む分散液を紡糸材料として、静電紡糸法によってアルミナ源を含むファイバーシートを作製する工程、
(2)前記アルミナ源を含むファイバーシートを焼成し、アルミナファイバーシートを作製する工程、及び
(3)前記アルミナファイバーシートに、樹脂濃度が10質量%以下の樹脂溶液を含浸させる工程
を含む、アルミナファイバーシート及び樹脂を含む高熱伝導性材料の製造方法であって、
前記アルミナファイバーシートが、高熱伝導性材料中20~90質量%含まれ、前記アルミナファイバーが、一定方向に配向している高熱伝導性材料の製造方法。
【請求項14】
前記アルミナファイバーが、前記高熱伝導性材料中30質量%以上含まれる請求項1記載の高熱伝導性材料の製造方法。
【請求項15】
前記アルミナ源が、アルミナ水和物、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム及びアルミナからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項13又は14記載の高熱伝導性材料の製造方法。
【請求項16】
前記アルミナ源の分散液中の濃度が、1~40質量%である請求項1~1のいずれか1項記載の高熱伝導性材料の製造方法。
【請求項17】
前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコール、セルロース、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸塩及びポリ酢酸ビニルからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1~1のいずれか1項記載の高熱伝導性材料の製造方法。
【請求項18】
前記水溶性高分子の分散液中の濃度が、5~40質量%である請求項117のいずれか1項記載の高熱伝導性材料の製造方法。
【請求項19】
前記樹脂が、ポリビニルアルコール、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂及びシリコーン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項118のいずれか1項記載の高熱伝導性材料の製造方法。
【請求項20】
前記焼成温度が、500℃以上である請求項119のいずれか1項記載の高熱伝導性材料の製造方法。
【請求項21】
前記焼成温度が、1,200℃以上である請求項2記載の高熱伝導性材料の製造方法。
【請求項22】
前記アルミナファイバーが、αアルミナを含む請求項1~2のいずれか1項記載の高熱伝導性材料の製造方法。
【請求項23】
前記アルミナファイバーのα晶結晶化率が、50質量%以上である1~2のいずれか1項記載の高熱伝導性材料の製造方法。
【請求項24】
前記アルミナファイバーの平均繊維径が、50~2,000nmである請求項1~2のいずれか1項記載の高熱伝導性材料の製造方法。
【請求項25】
前記アルミナファイバーの平均繊維径が、100~1,000nmである請求項2記載の高熱伝導性材料の製造方法。
【請求項26】
前記高熱伝導性材料の熱伝導率が、5W/mK以上である請求項1~2のいずれか1項記載の高熱伝導性材料の製造方法。
【請求項27】
前記高熱伝導性材料の熱伝導率に異方性があり、アルミナファイバーと直交方向の熱伝導率に対するアルミナファイバーと平行方向の熱伝導率の比が、1.4以上である請求項1~2のいずれか1項の高熱伝導性材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高熱伝導性材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車や電機産業において電子機器の小型化や軽量化が進んでいる。一方で、発熱量の増加による熱暴走、熱疲労等が課題となっている。アルミニウム等に代表される金属は、高熱伝導性を有するが、重量、電気絶縁性の観点から課題がある。高熱伝導性樹脂材料は、高熱伝導性金属材料に対し、軽量化、電気絶縁性の観点で優れ、置き換えが期待される。そこで、高熱伝導性であって電気絶縁性なフィラーを樹脂に複合することが広く検討されている。
【0003】
携帯電子機器における発熱は使用者に火傷を引き起こすおそれがあり、そのため、使用者が触れない部分へ熱を導くことができる異方性熱伝導性材料が求められている。自動車運転時に発生するエンジンの廃熱は、暖房、除湿、除雪等に利用されている。ハイブリッド自動車に代表される次世代自動車においては、省燃費の観点からエンジン作動時間が短く、発生する廃熱も著しく減少する。廃熱をこれまでより効率的に利用するため、望まれる部分へ効率的に熱を伝える異方性熱伝導性材料が求められている。
【0004】
樹脂の軽量性や加工性といった利点を維持するためには、熱伝導性フィラーを少量添加し、熱伝導経路を効率的に形成することが重要である。そのような観点から、熱伝導性フィラーの形状として粒子状、板状又は繊維状のものが検討されている。例えば、特許文献1には、異なる粒径を有する3つの高熱伝導性アルミナ粒子を複合した熱可塑性樹脂組成物が開示されている。また、特許文献2には、高熱伝導性無機繊維及び高熱伝導性無機粉末を複合した熱可塑性樹脂組成物が開示されている。
【0005】
本発明者らは、繊維状の熱伝導性フィラーとして、ポリビニルアルコール水溶液にベーマイト粒子を分散させた紡糸液を静電紡糸し、焼成によりポリビニルアルコールを除去することで得られるアルミナファイバーを含むポリウレタンシートを報告している(非特許文献1)。しかし、前記ポリウレタンシート中のアルミナの含有量は小さく、従来の製造方法ではアルミナの含有量を増やすことは困難であり、十分な熱伝導性を得ることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平5-132576号公報
【文献】特開平8-283456号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Koji Nakane et al., 「Thermal Conductivity of Polyurethane Sheets containing Alumina Nanofibers」, SENI GAKKAISHI Vol. 71, No.1 (2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、適度な量の高熱伝導性アルミナファイバーシート及び樹脂を含む高熱伝導性材料、並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、高熱伝導性アルミナファイバーシートに所定の濃度以下の樹脂溶液を含浸させることで、適度な量の高熱伝導性アルミナファイバーシート及び樹脂を含む複合体を製造することができ、前記複合体が十分な熱伝導性を有し、高熱伝導性材料として好適であることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、下記高熱伝導性材料及びその製造方法を提供する。
1.アルミナファイバーシート及び樹脂を含む高熱伝導性材料であって、前記アルミナファイバーシートが、高熱伝導性材料中20~90質量%含まれる高熱伝導性材料。
2.前記アルミナファイバーシートが、前記高熱伝導性材料中30~80質量%含まれる1の高熱伝導性材料。
3.前記アルミナファイバーが、一定方向に配向している1又は2の高熱伝導性材料。
4.前記アルミナファイバーが、αアルミナを含む1~3のいずれかの高熱伝導性材料。
5.前記αアルミナが、前記アルミナファイバー中50質量%以上含まれる4の高熱伝導性材料。
6.前記アルミナファイバーの平均繊維径が、50~2,000nmである1~5のいずれかの高熱伝導性材料。
7.前記アルミナファイバーの平均繊維径が、100~1,000nmである6の高熱伝導性材料。
8.前記樹脂が、ポリビニルアルコール、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂及びシリコーン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である1~7のいずれかの高熱伝導性材料。
9.前記高熱伝導性材料の熱伝導率が、5W/mK以上である1~8のいずれかの高熱伝導性材料。
10.前記高熱伝導性材料の熱伝導率に異方性があり、アルミナファイバーと直交方向の熱伝導率に対するアルミナファイバーと平行方向の熱伝導率の比が、1.4以上である1~9のいずれかの高熱伝導性材料。
11.前記高熱伝導性材料が、電気絶縁性である1~10のいずれかの高熱伝導性材料。
12.アルミナファイバーシート及び樹脂を含む高熱伝導性材料であって、
(1)高熱伝導性材料の熱伝導率が、5W/mK以上であり、
(2)前記アルミナファイバーが、一定方向に配向しており、
(3)高熱伝導性材料の熱伝導率に異方性があり、アルミナファイバーと直交方向の熱伝導率に対するアルミナファイバーと平行方向の熱伝導率の比が、1.4以上である
高熱伝導性材料。
13.前記高熱伝導性材料が、電気絶縁性である12の高熱伝導性材料。
14.(1)アルミナ源及び水溶性高分子を含む分散液を紡糸材料として、静電紡糸法又は乾式紡糸法によってアルミナ源を含むファイバーシートを作製する工程、
(2)前記アルミナ源を含むファイバーシートを焼成し、アルミナファイバーシートを作製する工程、及び
(3)前記アルミナファイバーシートに、樹脂濃度が10質量%以下の樹脂溶液を含浸させる工程
を含む高熱伝導性材料の製造方法。
15.前記アルミナファイバーが、前記高熱伝導性材料中20質量%以上含まれる14の高熱伝導性材料の製造方法。
16.前記アルミナファイバーが、前記高熱伝導性材料中30質量%以上含まれる15の高熱伝導性材料の製造方法。
17.前記アルミナファイバーが、一定方向に配向している14~16のいずれかの高熱伝導性材料の製造方法。
18.前記アルミナ源が、アルミナ水和物、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム及びアルミナからなる群より選ばれる少なくとも1種である14~17のいずれかの高熱伝導性材料の製造方法。
19.前記アルミナ源の分散液中の濃度が、1~40質量%である14~18のいずれかの高熱伝導性材料の製造方法。
20.前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコール、セルロース、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸塩及びポリ酢酸ビニルからなる群から選ばれる少なくとも1種である14~19のいずれかの高熱伝導性材料の製造方法。
21.前記水溶性高分子の分散液中の濃度が、5~40質量%である14~20のいずれかの高熱伝導性材料の製造方法。
22.前記樹脂が、ポリビニルアルコール、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂及びシリコーン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である14~21のいずれかの高熱伝導性材料の製造方法。
23.前記焼成温度が、500℃以上である14~22のいずれかの高熱伝導性材料の製造方法。
24.前記焼成温度が、1,200℃以上である23の高熱伝導性材料の製造方法。
25.前記アルミナファイバーが、αアルミナを含む14~24のいずれかの高熱伝導性材料の製造方法。
26.前記アルミナファイバーのα晶結晶化率が、50質量%以上である14~25のいずれかの高熱伝導性材料の製造方法。
27.前記アルミナファイバーの平均繊維径が、50~2,000nmである14~26のいずれかの高熱伝導性材料の製造方法。
28.前記アルミナファイバーの平均繊維径が、100~1,000nmである27の高熱伝導性材料の製造方法。
29.前記高熱伝導性材料の熱伝導率が、5W/mK以上である14~28のいずれかの高熱伝導性材料の製造方法。
30.前記高熱伝導性材料の熱伝導率に異方性があり、アルミナファイバーと直交方向の熱伝導率に対するアルミナファイバーと平行方向の熱伝導率の比が、1.4以上である14~29のいずれかの高熱伝導性材料の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の高熱伝導性材料は、適度な量のアルミナファイバーを含むため熱伝導性に優れる。また、前記アルミナファイバーを一定方向に配向させることで、配向方向に対し優先的に熱が伝わる異方性熱伝導材料とすることができる。また、本発明の高熱伝導性材料の製造方法によれば、簡便な工程にて、熱伝導性に優れるアルミナファイバーを適度な含有量で含む高熱伝導性材料が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明における静電紡糸法を示す概略説明図である。
図2】実施例2で得られたアルミナファイバーの走査型電子顕微鏡写真である。
図3】実施例2で得られたアルミナファイバーのX線回折図である。
図4】実施例7で得られたアルミナファイバーとポリビニルアルコールとの複合体の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[高熱伝導性材料]
本発明の高熱伝導性材料は、アルミナファイバーシート及び樹脂を含む。
【0014】
前記アルミナファイバーは、αアルミナを含むことが好ましい。αアルミナを含むことによって、より高い熱伝導性を得ることができる。前記αアルミナは、アルミナファイバー中、50質量%以上含まれることが好ましく、90質量%以上含まれることがより好ましく、99質量%以上含まれることがより一層好ましい。また、αアルミナは100質量%含まれていてもよいが、通常99.9質量%以下である。
【0015】
前記アルミナファイバーは、αアルミナ以外の成分を含んでもよい。αアルミナ以外の成分としては、γアルミナ、δアルミナ、θアルミナ、非晶質アルミナ等が挙げられる。αアルミナ以外の成分を含む場合、その含有量は、アルミナファイバー中、50質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、1質量%以下がより一層好ましい。
【0016】
前記アルミナファイバーは、その平均繊維径が、50~2,000nmであることが好ましく、100~1,000nmであることがより好ましい。平均繊維径が前記範囲であれば、樹脂との複合が容易に達成される。なお、本発明において平均繊維径は、アルミナファイバーの走査型顕微鏡写真から、画像解析ソフトを用いて求めた値である。また、前記アルミナファイバーは、非多孔質であることが好ましい。
【0017】
本発明の高熱伝導性材料に含まれる樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリウレタンエラストマー等のポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン樹脂、ポリフッ化ビニリデン等のポリオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル樹脂、ポリエチレンサクシネート/アジペート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、メタクリル酸メチル-スチレン共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリ-3-ヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンオキシド、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリグルコール酸、変性でんぷん、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、キチン、キトサン、リグニン等が挙げられる。これらのうち、ポリビニルアルコール、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂等が好ましい。前記樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
本発明の高熱伝導性材料におけるアルミナファイバーシートの含有量の下限は、20質量%であるが、30質量%がより好ましく、40質量%がより一層好ましく、45質量%が更に好ましい。また、その上限は、90質量%であるが、80質量%が好ましく、70質量%がより好ましく、60質量%がより一層好ましく、55質量%が更に好ましい。前記範囲でアルミナファイバーシートを含むことで、高い熱伝導性が得られる。
【0019】
本発明の高熱伝導性材料は、高い熱伝導性を有する。具体的には、熱伝導率が、5W/mK以上とすることができ、好ましくは10W/mK以上、より好ましくは15W/mK以上とすることができる。
【0020】
また、本発明の高熱伝導性材料は、アルミナファイバーシート中のアルミナファイバーを一定方向に配向させることで、熱伝導性に異方性を有するものとすることができる。この場合、アルミナファイバーと直交方向の熱伝導率に対するアルミナファイバーと平行方向の熱伝導率の比が、1.4以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、2.0以上であることがより一層好ましく、2.5以上であることが更に好ましい。なお、その比の上限は、特に限定されないが、通常30程度である。
【0021】
また、本発明の高熱伝導性材料は、電気絶縁性であることが好ましい。
【0022】
[高熱伝導性材料の製造方法]
本発明の高熱伝導性材料の製造方法は、
(1)アルミナ源及び水溶性高分子を含む分散液を紡糸材料として、静電紡糸法又は乾式紡糸法によってアルミナファイバーシートを作製する工程、
(2)作製したアルミナファイバーシートを焼成する工程、及び
(3)焼成したアルミナファイバーシートに、樹脂濃度が10質量%以下の樹脂溶液を含浸させる工程
を含むものである。
【0023】
[工程(1)]
工程(1)は、アルミナ源及び水溶性高分子を含む分散液を紡糸材料として、静電紡糸法又は乾式紡糸法によってアルミナ源を含むファイバーシートを作製する工程である。
【0024】
前記アルミナ源としては、アルミナ水和物、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミナ等が好ましく、特にアルミナ一水和物が好ましい。前記アルミナ源としては、ベーマイト粒子、アルミナゾル等が好適に使用できる。前記ベーマイト粒子としては、特に限定されないが、例えば、サソール社製「DISPERAL」及び「DISPAL」、河合石灰(株)製「セラシュール」(登録商標)、大明化学工業(株)製「ベーマイト粉体」等が挙げられる。また、アルミナゾル粒子としては、特に限定されないが、例えば、日産化学工業(株)製アルミナゾル「AS-200」、「AS-550」、「AS-520」、川研ファインケミカル(株)製アルミナゾル「10A」、「10C」、「10D」、「A2」、「CSA-110A」、「F-1000」、「F-3000」、多木化学(株)製バイラール(登録商標)「Al-L7」、「Al-ML15」、「Al-C20」、「AS-l10」等が挙げられる。前記アルミナ源は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。前記アルミナ源の含有量は、分散液中1~40質量%が好ましく、2~30質量%がより好ましく、3~20質量%がより一層好ましい。
【0025】
前記水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸塩、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。前記水溶性高分子の含有量は、分散液中5~40質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましく、5~20質量%がより一層好ましい。
【0026】
前記分散液に使用し得る溶媒としては、前記水溶性高分子を溶解し、アルミナ源を分散できる水がよい。更に、水に溶解する溶媒を2種以上混合してもよい。水に混合可能な溶媒としては、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチルメチルケトン(MEK)、イソブチルメチルケトン(MIBK)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ブチルセロソルブ、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、シクロヘキサノン、乳酸エチル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、γ-ブチロラクトン、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸等が挙げられる。その他の溶媒を含む場合、その含有量は、前記水溶性高分子が溶解し得る限り特に限定されない。
【0027】
図1は、本発明における静電紡糸法を示す概略説明図である。静電紡糸法は、電圧供給装置1により電圧を印加された金属ノズル2からアースされたコレクタ3に紡糸液を射出する。紡糸液が飛散中に溶媒は揮発し、固形分がファイバー状にコレクタ3に集積する方法である。
【0028】
静電紡糸法は、市販の装置で行うことができる。紡糸条件は適宜選択され、例えば、紡糸距離4(金属ノズル-ドラム型コレクタ間距離)が5~30cm、金属ノズルとドラム型コレクタ間の印加電圧が5~40kV、紡糸液射出量が0.1~5.0mL/時間、ドラム型コレクタの回転数が50~4,000回転/分とすることができる。
【0029】
このとき、金属ノズルから射出されたファイバーが高速で回転するドラムに巻き取られることによって、アルミナファイバーが一定方向に配向したシートを得ることができる。アルミナファイバーが一定方向に配向していると、熱伝導性の経路が効率的に形成され、更に異方性も付与されるため好ましい。
【0030】
乾式紡糸法は、市販の装置で行うことができる。紡糸条件は適宜選択され、例えば、紡糸温度は、好ましくは65~105℃、より好ましくは70~95℃、より一層好ましくは75~85℃とすることができる。
【0031】
[工程(2)]
工程(2)は、工程(1)で作製したアルミナ源を含むファイバーシートを焼成し、アルミナファイバーシートを作製する工程である。前記焼成温度は、500℃以上が好ましく、800℃以上がより好ましく、1,000℃以上がより一層好ましく、1,200℃以上が更に好ましい。特に、1,200℃以上で焼成を行うと、得られるアルミナファイバーシート中のアルミナがα晶へ変化し、より高い熱伝導性を得ることができる。
【0032】
焼成は、電気炉、ガス炉等の焼成炉を用いて行うことができる。また、焼成は、大気雰囲気下、酸素雰囲気下で行うことができるが、ポリビニルアルコール由来の炭素成分が消失する条件が好ましい。
【0033】
焼成時間は、1時間以上が好ましく、3時間以上がより好ましく、5時間以上がより一層好ましい。焼成時間の上限は特に限定されないが、好ましくは10時間、より好ましくは8時間である。焼成時間が前記範囲であれば、ポリビニルアルコール由来の炭素成分の消失と、アルミナのα晶結晶化が進む。このとき、アルミナのα晶結晶化率は、50質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、99質量%以上がより一層好ましい。α晶結晶化率は、最大で100質量%であるが、通常99.9質量%以下である。
【0034】
なお、焼成温度に達するまでは、20℃/分以下の昇温速度で昇温させることが好ましい。昇温速度としては、15℃/分以下がより好ましく、10℃/分以下がより好ましい。昇温速度が前記範囲であれば、ポリビニルアルコール由来の炭素成分の消失と、アルミナのα晶結晶化が進む。
【0035】
焼成により得られたアルミナファイバーは、その平均繊維径が、50~2,000nmであることが好ましく、100~1,000nmであることがより好ましい。平均繊維径が前記範囲であれば、樹脂との複合が容易に達成される。
【0036】
また、アルミナファイバーシートの厚みは、10~2,000μmが好ましく、20~1,500μmがより好ましく、40~1,000μmがより一層好ましい。
【0037】
[工程(3)]
工程(3)は、工程(2)で作製したアルミナファイバーシートに、樹脂濃度が10質量%以下の樹脂溶液を含浸させる工程である。この工程によって、アルミナファイバーと樹脂との複合体を形成させ、高熱伝導性材料とすることができる。なお、アルミナファイバーシートは、前記複合体中1枚のみが含まれていてもよく、複数枚が含まれていてもよい。
【0038】
得られる複合体が高熱伝導性を示すためには、適度にアルミナファイバーを含む必要がある。本発明においては、前述した樹脂を10質量%以下の濃度で含む樹脂溶液を使用することで、適度にアルミナファイバーを含む複合体が得られる。樹脂溶液中の樹脂濃度は、10質量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましく、5質量%以下がより一層好ましい。樹脂濃度が10質量%を超えると、特に、15質量%以上であると、樹脂溶液中の樹脂の割合が多いため、複合体中の樹脂の含有量が多く、アルミナファイバーは低含有量となり、高熱伝導性を示さないことがある。なお、前記樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
前記樹脂溶液に用いる溶媒としては、前記樹脂を溶解し得るものであれば特に限定されない。例えば、水、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、MEK、MIBK、PGME、PGMEA、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ブチルセロソルブ、THF、1,4-ジオキサン、DMF、DMAc、NMP、シクロヘキサノン、乳酸エチル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、γ-ブチロラクトン、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸等が挙げられる。前記溶媒は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0040】
焼成したアルミナファイバーシートに樹脂溶液を含浸させる方法としては、樹脂を溶解させた溶液を滴下する方法、モノマーを溶解させた溶液を滴下し、後の加熱工程でモノマーを反応させる方法等が挙げられる。
【0041】
焼成したアルミナファイバーシートに樹脂溶液を含浸させた後は、減圧を行い加熱により溶媒の除去と樹脂の硬化を行うことで複合体を得ることができる。このとき、減圧は、1,000Pa以下にすることが好ましく、100Pa以下にすることがより好ましい。加熱は、溶媒を除去し樹脂の硬化を行うことができる限り特に限定されないが、通常100~140℃で行うことが好ましく、110~130℃で行うことがより好ましい。また、加熱時間は、通常30分以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。
【0042】
以上の方法によって、アルミナファイバーシートを20~90質量%含むアルミナファイバーシートと樹脂との複合体を製造することができる。前記複合体の厚みは、10~3,000μmが好ましく、20~2,000μmがより好ましく、40~1,500μmがより一層好ましい。
【0043】
本発明の高熱伝導性材料は、放熱材料として利用でき、例えば、放熱シート、放熱テープ、放熱回路基板、放熱筐体、放熱封止剤、ヒートシンク、ヒートパイプ等の放熱部材用の放熱材料として好適に利用できる。また、これらの放熱部材は、例えば、LED、パワー半導体、CPU、リチウムイオン電池等のデバイスに好適に利用できる。更に、これらの放熱デバイスは、例えば、携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、テレビ、ハードディスクレコーダー、タブレットパソコン、ノートパソコン、デスクトップパソコン等のデジタル家電製品、ハイブリット自動車、電気自動車、燃料電池自動車等の次世代自動車、家庭用照明、産業用照明、車載用照明等の次世代照明装置、太陽電池、燃料電池、地熱発電等の次世代発電装置、水電解による水素製造等次世代エネルギーキャリア製造装置等に好適に利用できる。
【実施例
【0044】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。なお、使用した装置及び測定条件は以下のとおりである。なお、アルミナファイバーの平均繊維径は、アルミナファイバーの走査型顕微鏡写真から画像解析ソフト「Image J」を用いて、繊維径を10箇所測定したものの平均値である。また、実施例において、試料の調製及び物性の分析に用いた装置及び条件は、以下のとおりである。
【0045】
(1)静電紡糸法:インフュージョンポンプ(シリンジポンプ):(有)メルクエスト製FP-1000、高圧電源:松定プレシジョン(株)製HR-40R0.75
(2)走査型電子顕微鏡:(株)キーエンス製VE-9800、(株)日立ハイテクノロジーズ製Miniscope TM3000
(3)X線回折装置:(株)リガク製MiniFlex 2
(4)熱重量分析装置:(株)リガク製ThermoPlus evo又はBRUKER製TG-DTA 2000SA
(5)熱拡散率測定装置:(株)ベテル製サーモウェーブアナライザーTA-35
【0046】
[1]高熱伝導性材料の作製
[実施例1]
10質量%ポリビニルアルコール(平均重合度:1,500、ケン化度:99%)水溶液10.0質量部に、ベーマイト粉末(サソール社製DISPERAL P2、アルミナ成分72%、一次粒子系12.5nm)0.598質量部を添加し、攪拌して分散させた。
得られた水分散液2mLを紡糸液とし、先端に金属製ノズルが取り付けられたシリンジ内に充填した。ファイバー捕集のコレクタは、直径15cmの回転ドラムを使用した。金属製ノズルとドラムコレクタとを電圧供給装置に電気的に接続した。電圧供給装置により、ドラムコレクタ側をアースとして金属ノズル側に20kVの電圧を印加した。金属ノズルとドラムコレクタとの距離を15cmに調整した。ドラムコレクタを毎分4,000回転で回転させた。シリンジから押出速度1.0mL/hにて紡糸液を回転するドラムコレクタに向けて射出することにより、ポリビニルアルコールとベーマイトとからなるファイバーを回転するドラムコレクタ上に形成させ、アルミナ源を含むファイバーシートを得た。
【0047】
[実施例2]
実施例1で得られたアルミナ源を含むファイバーシートを電気炉内に入れ、昇温速度10℃/分にて、焼成温度1,200℃まで昇温した。1,200℃で5時間焼成した後、放冷し、室温まで冷却することにより、アルミナファイバーシートを得た。得られたアルミナファイバーの走査型電子顕微鏡写真を、図2に示す。得られたアルミナファイバーの平均繊維径は、約230nmであった。
得られたアルミナファイバーシートのX線回折像(Niフィルター、CuKα線、30kV、15mA)を、図3に示す。図3の結果から、得られたアルミナファイバーシートはαアルミナを含み、α晶結晶化率は52.73%であった。
【0048】
[実施例3]
10質量%ポリビニルアルコール(平均重合度:1,500、ケン化度:99%)水溶液10.0質量部に、アルミナゾル(日産化学工業(株)製AS-550、アルミナ成分15.5%)2.77質量部を添加し、攪拌して分散させた。
得られた水分散液2mLを紡糸液とし、先端に金属ノズルが取り付けられたシリンジ内に充填した。ファイバー捕集のコレクタは、直径15cmの回転ドラムを使用した。金属ノズルとドラムコレクタとを電圧供給装置に電気的に接続した。電圧供給装置により、ドラムコレクタ側をアースとして金属ノズル側に20kVの電圧を印加した。金属ノズルとドラムコレクタとの距離を15cmに調整した。ドラムコレクタを毎分4,000回転で回転させた。シリンジから押出速度1.0mL/hにて紡糸液を回転するドラムコレクタに向けて射出することにより、ポリビニルアルコールとアルミナゾルとからなるファイバーを回転するドラムコレクタ上に形成させ、アルミナ源を含むファイバーシートを得た。
【0049】
[実施例4]
実施例3で得られたアルミナ源を含むファイバーシートを電気炉内に入れ、昇温速度10℃/分にて、焼成温度1,500℃まで昇温した。1,500℃で5時間焼成した後、放冷し、室温まで冷却することにより、アルミナファイバーシートを得た。得られたアルミナファイバーの平均繊維径は、約240nmであった。
【0050】
[実施例5]
10質量%ポリビニルアルコール(平均重合度:1,500、ケン化度:99%)水溶液10.0質量部に、アルミナゾル(日産化学工業(株)製AS-200、アルミナ成分10.8%)3.98質量部を添加し、攪拌して分散させた。
得られた水分散液2mLを紡糸液とし、先端に金属ノズルが取り付けられたシリンジ内に充填した。ファイバー捕集のコレクタは、直径15cmの回転ドラムを使用した。金属ノズルとドラムコレクタとを電圧供給装置に電気的に接続した。電圧供給装置により、ドラムコレクタ側をアースとして金属ノズル側に20kVの電圧を印加した。金属ノズルとドラムコレクタとの距離を15cmに調整した。ドラムコレクタを毎分4,000回転で回転させた。シリンジから押出速度1.0mL/hにて紡糸液を回転するドラムコレクタに向けて射出することにより、ポリビニルアルコールとアルミナゾルとからなるファイバーを回転するドラムコレクタ上に形成させ、アルミナ源を含むファイバーシートを得た。
【0051】
[実施例6]
実施例5で得られたアルミナ源を含むファイバーシートを電気炉内に入れ、昇温速度10℃/分にて、焼成温度1,500℃まで昇温した。1,500℃で5時間焼成した後、放冷し、室温まで冷却することにより、アルミナファイバーシートを得た。得られたアルミナファイバーの平均繊維径は、約169nmであった。
【0052】
[実施例7]
ポリビニルアルコール(平均重合度:1,500、ケン化度:99%)の5.0質量%水溶液を調製し、実施例2で得られたアルミナファイバーシートに当該ポリビニルアルコール5.0質量%水溶液を含浸させた。真空下、120℃で水の除去とポリビニルアルコールの加熱硬化とを行い、アルミナファイバーシートとポリビニルアルコールとの複合体を得た。前記複合体はシート状で得られ、厚さは101μmであった。
得られた複合体の走査型電子顕微鏡写真を、図4に示す。アルミナファイファイバーは、一定方向に配向した状態で、ポリビニルアルコールと複合体を形成していることがわかった。
得られた複合体について、熱重量分析計を用いて10℃/分で500℃まで昇温することにより、複合体中のアルミナファイバーシート含有量を計測した。複合体中のアルミナファイバーシートの含有量は49.5質量%(24.0体積%)であった。
【0053】
[実施例8]
ポリビニルアルコール(平均重合度:1,500、ケン化度:99%)の10質量%水溶液を調製し、実施例2で得られたアルミナファイバーシートに当該ポリビニルアルコール10質量%水溶液を含浸させた。真空下、120℃で水の除去とポリビニルアルコールの加熱硬化とを行い、アルミナファイバーシートとポリビニルアルコールとの複合体を得た。前記複合体はシート状で得られ、厚さは78μmであった。
得られた複合体について、熱重量分析計を用いて10℃/分で500℃まで昇温することにより、複合体中のアルミナファイバーシート含有量を計測した。複合体中のアルミナファイバーシートの含有量は40.0質量%(17.6体積%)であった。
【0054】
[実施例9]
ポリビニルアルコール(平均重合度:1,500、ケン化度:99%)の5.0質量%水溶液を調製し、実施例2で得られたアルミナファイバーシートに当該ポリビニルアルコール5.0質量%水溶液を含浸させた。真空下、120℃で水の除去とポリビニルアルコールの加熱硬化とを行い、アルミナファイバーシートとポリビニルアルコールとの複合体を得た。前記複合体はシート状で得られ、厚さは41μmであった。
得られた複合体について、熱重量分析計を用いて10℃/分で500℃まで昇温することにより、複合体中のアルミナファイバーシート含有量を計測した。複合体中のアルミナファイバーシートの含有量は71.5質量%(44.6体積%)であった。
【0055】
[実施例10]
ポリビニルアルコール(平均重合度:1,500、ケン化度:99%)の10質量%水溶液を調製し、実施例4で得られたアルミナファイバーシートに当該ポリビニルアルコール10質量%水溶液を含浸させた。真空下、120℃で水の除去とポリビニルアルコールの加熱硬化とを行い、アルミナファイバーシートとポリビニルアルコールとの複合体を得た。前記複合体はシート状で得られ、厚さは69μmであった。
得られた複合体について、熱重量分析計を用いて10℃/分で500℃まで昇温することにより、複合体中のアルミナファイバーシート含有量を計測した。複合体中のアルミナファイバーシートの含有量は32.0質量%(13.1体積%)であった。
【0056】
[実施例11]
ポリウレタンエマルション(第一工業製薬(株)製スーパーフレックス(登録商標)300、固形分30質量%)を4分の1に希釈した水溶液(固形分7.5質量%)を調製し、実施例2で得られたアルミナファイバーシートに当該ポリウレタンエマルション希釈水溶液(固形分7.5質量%)を含浸させた。真空下、120℃で水の除去とポリウレタンの加熱硬化とを行い、アルミナファイバーシートとポリウレタンとの複合体を得た。前記複合体はシート状で得られ、厚さは60μmであった。
得られた複合体について、熱重量分析計を用いて10℃/分で500℃まで昇温することにより、複合体中のアルミナファイバーシート含有量を計測した。複合体中のアルミナファイバーシートの含有量は30.8質量%(12.1体積%)であった。
【0057】
[実施例12]
ポリウレタンエマルション(第一工業製薬(株)製スーパーフレックス300、固形分30質量%)を3分の1に希釈した水溶液(固形分10質量%)を調製し、実施例2で得られたアルミナファイバーシートに当該ポリウレタンエマルション希釈水溶液(固形分10質量%)を含浸させた。真空下、120℃で水の除去とポリウレタンの加熱硬化とを行い、アルミナファイバーシートとポリウレタンとの複合体を得た。前記複合体はシート状で得られ、厚さは97μmであった。
得られた複合体について、熱重量分析計を用いて10℃/分で500℃まで昇温することにより、複合体中のアルミナファイバーシート含有量を計測した。複合体中のアルミナファイバーシートの含有量は61.2質量%(32.7体積%)であった。
【0058】
[実施例13]
ポリウレタンエマルション(第一工業製薬(株)製スーパーフレックス300、固形分30質量%)を20分の1に希釈した水溶液(固形分1.5質量%)を調製し、実施例2で得られたアルミナファイバーシートに当該ポリウレタンエマルション希釈水溶液(固形分1.5質量%)を含浸させた。真空下、120℃で水の除去とポリウレタンの加熱硬化とを行い、アルミナファイバーシートとポリウレタンとの複合体を得た。前記複合体はシート状で得られ、厚さは82μmであった。
得られた複合体について、熱重量分析計を用いて10℃/分で500℃まで昇温することにより、複合体中のアルミナファイバーシート含有量を計測した。複合体中のアルミナファイバーシートの含有量は84.7質量%(63.1体積%)であった。
【0059】
[実施例14]
ガラス容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル(株)製jER(登録商標)828)5.0質量部、フェノールノボラック樹脂(DIC(株)製フェノライト(登録商標)TD2131)2.8質量部、2-エチル-4-メチルイミダゾール(関東化学(株)製)0.050質量部、及びNMP(純正化学(株)製)70.2質量部を加え、撹拌し、固形分10質量%のNMP溶液を作製した。実施例2で得られたアルミナファイバーシートに当該NMP溶液(固形分10質量%)を含浸させた。100℃で5分間、その後180℃で1時間加熱することでアルミナファイバーシートとエポキシ樹脂の複合体を得た。前記複合体はシート状で得られ、厚さは52μmであった。
得られた複合体について、熱重量分析計を用いて20℃/分で1,000℃まで昇温することにより、複合体中のアルミナファイバーシート含有量を計測した。複合体中のアルミナファイバーシートの含有量は38.5質量%(18.4体積%)であった。
【0060】
[実施例15]
ガラス容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル(株)製jER828)5.0質量部、フェノールノボラック樹脂(DIC(株)製フェノライトTD2131)2.8質量部、2-エチル-4-メチルイミダゾール(関東化学(株)製)0.050質量部、及びNMP(純正化学(株)製)148.3質量部を加え、撹拌し、固形分5.0質量%のNMP溶液を作製した。実施例2で得られたアルミナファイバーシートに当該NMP溶液(固形分5.0質量%)を含浸させた。100℃で5分間、その後180℃で1時間加熱することでアルミナファイバーシートとエポキシ樹脂の複合体を得た。前記複合体はシート状で得られ、厚さは51μmであった。
得られた複合体について、熱重量分析計を用いて20℃/分で1,000℃まで昇温することにより、複合体中のアルミナファイバーシート含有量を計測した。複合体中のアルミナファイバーシートの含有量は74.2質量%(50.9体積%)であった。
【0061】
[実施例16]
ガラス容器に、トリグリシジルイソシアヌレート(日産化学工業(株)製TEPIC(登録商標)-L)5.0質量部、フェノールノボラック樹脂(DIC(株)製フェノライトTD2131)5.2質量部、2-エチル-4-メチルイミダゾール(関東化学(株)製)0.050質量部、及びNMP(純正化学(株)製)193.9質量部を加え、撹拌し、固形分5.0質量%のNMP溶液を作製した。実施例2で得られたアルミナファイバーシートに当該NMP溶液(固形分5.0質量%)を含浸させた。100℃で5分間、その後180℃で1時間加熱することでアルミナファイバーシートとエポキシ樹脂の複合体を得た。前記複合体はシート状で得られ、厚さは117μmであった。
得られた複合体について、熱重量分析計を用いて20℃/分で1,000℃まで昇温することにより、複合体中のアルミナファイバーシート含有量を計測した。複合体中のアルミナファイバーシートの含有量は55.4質量%(30.9体積%)であった。
【0062】
[実施例17]
ガラス容器に、トリス(7,8-エポキシオクチル)イソシアヌレート(日産化学工業(株)製TEPIC-FL)5.0質量部、フェノールノボラック樹脂(DIC(株)製フェノライトTD2131)2.8質量部、2-エチル-4-メチルイミダゾール(関東化学(株)製)0.050質量部、及びNMP(純正化学(株)製)149.4質量部を加え、撹拌し、固形分5.0質量%のNMP溶液を作製した。実施例2で得られたアルミナファイバーシートに当該NMP溶液(固形分5.0質量%)を含浸させた。100℃で5分間、その後180℃で1時間加熱することでアルミナファイバーシートとエポキシ樹脂の複合体を得た。前記複合体はシート状で得られ、厚さは150μmであった。
得られた複合体について、熱重量分析計を用いて20℃/分で1,000℃まで昇温することにより、複合体中のアルミナファイバーシート含有量を計測した。複合体中のアルミナファイバーシートの含有量は67.0質量%(42.2体積%)であった。
【0063】
[実施例18]
ガラス容器に脂環型エポキシ樹脂((株)ダイセル製セロキサイド(登録商標)21021P)5.0質量部、フェノールノボラック樹脂(DIC(株)製フェノライトTD2131)4.1質量部、2-エチル-4-メチルイミダゾール(関東化学(株)製)0.050質量部、及びNMP(純正化学(株)製)172.8質量部を加え、撹拌し、固形分5質量%のNMP溶液を作製した。実施例2で得られたアルミナファイバーシートに当該NMP溶液(固形分5質量%)を含浸させた。100℃で5分間、その後180℃で1時間加熱することでアルミナファイバーシートとエポキシ樹脂の複合体を得た。前記複合体はシート状で得られ、膜さは113μmであった。
得られた複合体について、熱重量分析計を用いて20℃/分で1,000℃まで昇温することにより、複合体中のアルミナファイバーシート含有量を計測した。複合体中のアルミナファイバーシートの含有量は85.3質量%(67.6体積%)であった。
【0064】
[実施例19]
ガラス容器に、ピロメリット酸無水物(東京化成工業(株)製)6.7質量部、パラフェニレンジアミン(東京化成工業(株)製)2.7質量部、4,4''-ジアミノ-p-ターフェニル1.6質量部、及びNMP(純正化学(株)製)89質量部を加え、50℃で12時間加熱撹拌し、固形分11質量%のポリアミック酸のNMP溶液を作製した。NMP(純正化学(株)製)で希釈することにより、固形分5.5質量%のポリアミック酸のNMP溶液を作製した。実施例6で得られたアルミナファイバーシートに当該NMP溶液(固形分5.5質量%)を含浸させた。100℃で1時間加熱し、その後窒素下400℃で2時間加熱することでポリアミック酸の硬化を行い、アルミナファイバーシートとポリイミド樹脂との複合体を得た。前記複合体はシート状で得られ、厚さは80μmであった。
得られた複合体について、熱重量分析計を用いて20℃/分で1,000℃まで昇温することにより、複合体中のアルミナファイバーシート含有量を計測した。複合体中のアルミナファイバーシートの含有量は21.1質量%(8.9体積%)であった。
【0065】
[実施例20]
シリコーン樹脂(信越化学工業(株)製KR-255、固形分50質量%)をトルエン(東京化成工業(株)製)で5分の1に希釈したトルエン溶液(固形分10質量%)を調製した。実施例2で得られたアルミナファイバーシート4.0質量部に当該シリコーン樹脂希釈液(固形分10質量%)81質量部を含浸させた。150℃でトルエンの除去とシリコーン樹脂の加熱硬化とを行い、アルミナファイバーシートとシリコーン樹脂との複合体を得た。前記複合体はシート状で得られ、厚さは46μmであった。
得られた複合体中のアルミナファイバーシート含有量は33.1質量%(21.1体積%)と計算された。
【0066】
[比較例1]
ポリビニルアルコール(平均重合度:1,500、ケン化度:99%)の15質量%水溶液を調製し、実施例2で得られたアルミナファイバーシートに当該ポリビニルアルコール15質量%水溶液を含浸させた。真空下、120℃で水の除去とポリビニルアルコールの加熱硬化とを行い、アルミナファイバーシートとポリビニルアルコールとの複合体を得た。前記複合体はシート状で得られ、厚さは207μmであった。
得られた複合体について、熱重量分析計を用いて10℃/分で500℃まで昇温することにより、複合体中のアルミナファイバーシート含有量を計測した。複合体中のアルミナファイバーシートの含有量は8.3質量%(2.8体積%)であった。
【0067】
[比較例2]
ガラス容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル(株)製jER828)5.0質量部、及びフェノールノボラック樹脂(DIC(株)製フェノライトTD2131)2.8質量部を加え、90℃で5分間撹拌することで混合した。その後、ダイヤフラムポンプで約5分間減圧脱泡した後に2-エチル-4-メチルイミダゾール(関東化学(株)製)0.050質量部を加え、更に5分間加熱混合した。この融液を離形処理したガラス板2枚で100μmのスペーサーを介し挟み込み、100℃で5分間、その後180℃で1時間加熱することで硬化したエポキシ樹脂シートを得た。得られたシートの膜厚は102μmであった。
【0068】
[比較例3]
ガラス容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル(株)製jER828)5.0質量部、フェノールノボラック樹脂(DIC(株)製フェノライトTD2131)2.8質量部、2-エチル-4-メチルイミダゾール(関東化学(株)製)0.050質量部、及びNMP(純正化学(株)製)7.8質量部を加え、撹拌し、固形分50質量%のNMP溶液を作製した。実施例2で得られたアルミナファイバーシートに当該NMP溶液(固形分50質量%)を含浸させた。100℃で5分間、その後180℃で1時間加熱することでアルミナファイバーシートとエポキシ樹脂の複合体を得た。前記複合体はシート状で得られ、厚さは151μmであった。
得られた複合体について、熱重量分析計を用いて20℃/分で1,000℃まで昇温することにより、複合体中のアルミナファイバーシート含有量を計測した。複合体中のアルミナファイバーシートの含有量は10.3質量%(4.0体積%)であった。
【0069】
[比較例4]
ガラス容器にビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル(株)製jER828)5.0質量部、及びフェノールノボラック樹脂(DIC(株)製フェノライトTD2131)2.8質量部を加え、90℃で5分間撹拌することで混合した。その後、ダイヤフラムポンプで約5分間減圧脱泡した後に2-エチル-4-メチルイミダゾール(関東化学(株)製)0.050質量部を加え、更に5分間加熱混合した。実施例2で得られたアルミナファイバーシートに当該融液を含浸させた。100℃で5分間、その後180℃で1時間加熱することでアルミナファイバーシートとエポキシ樹脂の複合体を得た。前記複合体はシート状で得られ、厚さは109μmであった。
得られた複合体について、熱重量分析計を用いて20℃/分で1,000℃まで昇温することにより、複合体中のアルミナファイバーシート含有量を計測した。複合体中のアルミナファイバーシートの含有量は12.0質量%(4.7体積%)であった。
【0070】
[2]高熱伝導性材料の評価
[実施例21]
実施例7で得られたアルミナファイバーシートとポリビニルアルコールとの複合体について、熱拡散率を測定した。熱拡散率から熱伝導率への計算は、アルミナの比重3,890kg/m3、アルミナの比熱750J/kg℃、ポリビニルアルコールの比重1,250kg/m3及びポリビニルアルコールの比熱1,680J/kg℃を用い、それぞれの含有量から複合体の比重と比熱を計算することで行った。
【0071】
[実施例22]
実施例8で得られたアルミナファイバーシートとポリビニルアルコールとの複合体について、熱拡散率の測定を実施例21と同様に行った。
【0072】
[実施例23]
実施例9で得られたアルミナファイバーシートとポリビニルアルコールとの複合体について、熱拡散率の測定を実施例21と同様に行った。
【0073】
[実施例24]
実施例10で得られたアルミナファイバーシートとポリビニルアルコールとの複合体について、熱拡散率の測定を実施例21と同様に行った。
【0074】
[実施例25]
実施例11で得られたアルミナファイバーシートとポリウレタン樹脂との複合体について、熱拡散率を測定した。熱拡散率から熱伝導率への計算は、アルミナの比重3,890kg/m3、アルミナの比熱750J/kg℃、ポリウレタン樹脂の比重1,200kg/m3及びポリウレタン樹脂の比熱1,900J/kg℃を用い、それぞれの含有量から複合体の比重と比熱を計算することで行った。
【0075】
[実施例26]
実施例12で得られたアルミナファイバーシートとポリウレタン樹脂との複合体について、熱拡散率の測定を実施例25と同様に行った。
【0076】
[実施例27]
実施例13で得られたアルミナファイバーシートとポリウレタン樹脂との複合体について、熱拡散率の測定を実施例25と同様に行った。
【0077】
[実施例28]
実施例14で得られたアルミナファイバーシートとエポキシ樹脂との複合体について、熱拡散率を測定した。熱拡散率から熱伝導率への計算は、アルミナの比重3,890kg/m3、アルミナの比熱750J/kg℃、エポキシ樹脂の比重1,400kg/m3及びエポキシ樹脂の比熱1,400J/kg℃を用い、それぞれの含有量から複合体の比重と比熱を計算することで行った。
【0078】
[実施例29]
実施例15で得られたアルミナファイバーシートとエポキシ樹脂との複合体について、熱拡散率の測定を実施例28と同様に行った。
【0079】
[実施例30]
実施例16で得られたアルミナファイバーシートとエポキシ樹脂との複合体について、熱拡散率の測定を実施例28と同様に行った。
【0080】
[実施例31]
実施例17で得られたアルミナファイバーシートとエポキシ樹脂との複合体について、熱拡散率の測定を実施例28と同様に行った。
【0081】
[実施例32]
実施例18で得られたアルミナファイバーシートとエポキシ樹脂との複合体について、熱拡散率の測定を実施例28と同様に行った。
【0082】
[実施例33]
実施例19で得られたアルミナファイバーシートとポリイミド樹脂との複合体について、熱拡散率を測定した。熱拡散率から熱伝導率への計算は、アルミナの比重3,890kg/m3、アルミナの比熱750J/kg℃、ポリイミドの比重1,420g/m3及びポリイミドの比熱1,100J/kg℃を用い、それぞれの含有量から複合体の比重と比熱を計算することで行った。
【0083】
[実施例34]
実施例20で得られたアルミナファイバーシートとシリコーン樹脂との複合体について、熱拡散率を測定した。熱拡散率から熱伝導率への計算は、アルミナの比重3,890kg/m3、アルミナの比熱750J/kg℃、シリコーン樹脂の比重2,100g/m3及びシリコーン樹脂の比熱1,200J/kg℃を用い、それぞれの含有量から複合体の比重と比熱を計算することで行った。
【0084】
[比較例5]
比較例1で得られたアルミナファイバーシートとポリビニルアルコールとの複合体について熱拡散性の測定を、実施例21と同様に行った。
【0085】
[比較例6]
比較例2で得られたエポキシ樹脂シートについて、熱拡散率を測定した。熱拡散率から熱伝導率への計算には、エポキシ樹脂の比重1,400kg/m3、比熱1,400J/kg℃を用いた。
【0086】
[比較例7]
比較例3で得られたアルミナファイバーシートとエポキシ樹脂との複合体について、熱拡散性の測定を実施例28と同様に行った。
【0087】
[比較例8]
比較例4で得られたアルミナファイバーシートとエポキシ樹脂との複合体について、熱拡散性の測定を実施例28と同様に行った。
【0088】
表1、2及び3に、ファイバーに平行方向の熱伝導率(4箇所の平均値)、ファイバーに直角方向の熱伝導率(4箇所の平均値)、シート厚さ方向の熱伝導率(8箇所の平均値)及びファイバーに直角方向の熱伝導率に対するファイバーに平行方向の熱伝導率の比を示す。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】
実施例21~34で測定したアルミナファイバーに沿った平行方向の熱伝導率は、6.7から25.3W/mKと高いことがわかった。アルミナファイバーに沿った平行方向の熱伝導率はアルミナファイバーに直行する方向やシート厚さ方向の熱伝導率の1.4倍以上であり、熱伝導性の異方性が示された。一方、比較例5~8で測定した熱伝導率は、いずれの方向においても3W/mK以下と低かった。
【符号の説明】
【0093】
1 電圧供給装置
2 金属ノズル
3 ドラム型コレクタ
4 紡糸距離
図1
図2
図3
図4