(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】搬送容器
(51)【国際特許分類】
B65D 85/68 20060101AFI20221026BHJP
【FI】
B65D85/68 W
(21)【出願番号】P 2019161175
(22)【出願日】2019-09-04
【審査請求日】2021-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390032056
【氏名又は名称】ヒロホー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091719
【氏名又は名称】忰熊 嗣久
(72)【発明者】
【氏名】小早川 昌士
【審査官】金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105923232(CN,A)
【文献】米国特許第7128509(US,B2)
【文献】特開2003-232311(JP,A)
【文献】実開平5-54808(JP,U)
【文献】特開2005-132276(JP,A)
【文献】特開2005-205689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
適当な間隔を隔てて角管からなる複数本の横梁が並行に設けられた金属フレームと、
前記横梁の長さ方向と長さ方向を揃えて前記横梁上に配置され、上側面に凹部が設けられ、低い位置に両側面に貫通する複数の開口を有する板状発泡樹脂の受け材と、
前記受け材の上側面の凹部に類似する形状であって、当該形状よりもやや上辺が後退して前記横梁に固定され、かつ前記開口に連通するように、その対応する位置に前記開口よりも
小さな貫通孔を有する金属板と、
前記開口を充足する断面を有す
る柱状の基台部と、
前記柱状の基台部が延びる方向を前後方向xとしたときに、前記前後方向xの後側に向けて前記基台部から
並列状に左右に間隔を開けて
突出した板状のバネ部と、
前記バネ部の先端に前記貫通孔より大きく突出した鍔部を具備する一対のフック部と、前記基台部の
前記前後方向xの前側に板状の頭部とを有するクリップとを有し、
前記頭部が前記受け材側に前記鍔部が前記金属板側となるように、前記連通した開口と貫通孔を前記クリップが通されて、前記受け材を金属板に留めていることを特徴とする搬送容器。
【請求項2】
前記貫通孔は角度αの傾斜する側辺を有する台形形状であり、
前記一対のフック部のバネ部は、角度αとなるように傾斜しており、
前記バネ部の板状の面が台形の貫通孔の側辺に対向していることを特徴とする請求項1に記載の搬送容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用部品などの大型の部材を梱包する搬送容器に関する。
【背景技術】
【0002】
大型の部材を運搬するに際しては、部材が傷付き若しくは変形しないように、台車やボックスパレットの上に枕材を配置し、その上に部材を搭載する。例えば、特許文献1においては、ボックスパレットの桁の上に枕材を配置する例が示されている。また、特許文献2においては、部品が嵌まる凹部を設けた受け枕を多段に積み重ねた例が示されている。これら、いずれの文献も、垂直方向の柱に設けられた案内溝に落とし込むことにより枕材若しくは受け枕を固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭52-9244号公報
【文献】実開昭57-149220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
搬送容器は、オーダーメイドで容器メーカにより製造されている。特許文献1や2では、台車やボックスパレットに受け材を取り付ける際には、台車やボックスパレット側に用意されている溝を使う。このような溝を用いる場合、受け枕は上から入れる必要がある。受け材と運送対象の部品を交互に積み重ねて配置して多段積する。
【0005】
一方、金属フレームの横梁に受け材を固定する搬送容器も存在する。例えば、
図3A、3Bに示した搬送容器は、適当な間隔を隔てて並行に設けられた複数本の横梁2を多段に有する金属フレーム1に対して、その横梁2の一側面22に受け材3を載せて固定することにより構成されている。
図3Aは全体図、
図3Bは部分拡大図である。
図3に示す金属フレーム1は、各層において横梁2が複数本設けられた三階層構造を有している。横梁2は金属角管で構成され、一側面22のすぐとなりの側面21には、受け材3の補強部品である金属板4が一側面22と直交するように固定されている。
【0006】
横梁2のうちいくつか若しくは全部に対して受け材3が設けられている。受け材3は、横梁2の長さ方向と長さ方向を揃えて固定された発泡樹脂製の板状部材である。受け材3は、上側面31には1又は複数の凹部32が設けられている。凹部32の形状は、搬送対象となる部品の形状に類似した形状になっている。また、金属板4の上辺41は、受け材3の上側面31と相似形状を持っている。受け材3の上側面31は、金属板の上辺41よりもやや上側に露出している。
【0007】
搬送容器の製作工程では、
図3Bに示すように、受け材3の底面33を横梁2の一側面22に載せて、受け材3の横側面34を金属板4側と接触するように配置する、受け材3側に座金6を配置して、受け材3と金属板4とをボルト8とナット9で縫い付けて固定する。その際、ボルト8とナット9の締め忘れで ナット9の脱落 受け材3のぐらつきで製品不良が発生する恐れがある。また、逆にボルト8とナット9を締めすぎた場合、受け材が破損する恐れも生じる。このように、ボルト8とナット9で縫い付ける位置が多数あり、製品不良につながる恐れを内在している。また、多数の締め付けは、作業自体が手間である。
【0008】
そこで本発明は、搬送容器の製作工程における製品不良につながる恐れを廃し、かつ、工程の削減を図り短納期で納入できる構造の搬送容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明の搬送容器は、適当な間隔を隔てて角管からなる複数本の横梁が並行に設けられた金属フレームと、
前記横梁の長さ方向と長さ方向を揃えて前記横梁上に配置され、上側面に凹部が設けられ、低い位置に両側面に貫通する複数の開口を有する板状発泡樹脂の受け材と、
前記受け材の上側面の凹部に類似する形状であって、当該形状よりもやや上辺が後退して前記横梁に固定され、かつ前記開口に連通するように、その対応する位置に前記開口よりも小さな貫通孔を有する金属板と、
前記開口を充足する断面を有する柱状の基台部と、前記柱状の基台部が延びる方向を前後方向xとしたときに、前記前後方向xの後側に向けて前記基台部から並列状に左右に間隔を開けて突出した板状のバネ部と、前記バネ部の先端に前記貫通孔より大きく突出した鍔部を具備する一対のフック部と、前記基台部の前記前後方向xの前側に板状の頭部とを有するクリップとを有し、
前記頭部が前記受け材側に前記鍔部が前記金属板側となるように、前記連通した開口と貫通孔を前記クリップが通されて、前記受け材を金属板に留めていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、クリップを嵌め込むだけで、受け材を金属板に固定して搬送容器が製造できるので、製品不良の恐れを低減でき、必要とする工数を大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1Aは本実施例に係る搬送容器の要部を示す図であり、
図1B~1Eは搬送容器の製作経過を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態について添付した図面に基づき説明する。
図1Aにおいて、本実施例に係る搬送容器は、クリップ10と受け材3と金属フレーム1(1層のみ示した)とを有している。ここにおいて、横梁2は、
図4に示したものと同じでように、受け材3は横梁2の夫々の長さ方向(左右方向y)を揃えて、横梁2に対してクリップ10により固定される。
【0013】
図1Cは金属板4の側面を示している。
図3に示したものと相違して、金属板4には、台形の貫通孔5が設けられている。貫通孔5の側辺5a、5bは、横梁2(一点鎖線で示した)に対して、角度αとなるように傾斜した角度になっている。
図1Dは受け材3の側面を示している。受け材3の底面33が横梁2(一点鎖線で示した)の一側面22に搭載される。また、貫通孔5と対応する位置に貫通孔5よりも大きい開口7が設けられている。開口7の形は、本実施例においては長方形である。受け材3は、開口7を有する点で
図3の受け材3とは相違しており、それ以外については同じである。受け材3として使用される発泡樹脂として、例えば、パロニア(商標登録第5478125号、三井化学株式会社)を用いるのが良い。
【0014】
図2に移り、クリップ10について説明する。
図2A-2Dは、クリップ10の詳細図であり、
図2Aは後から見た斜視図、
図2Cは前から見た斜視図、
図2Bは背面図、
図2Dは側面図である。クリップ10は、基台部11と、基台部11から並列状に前後方向xの後側に向けて左右に間隔を開けて突出した一対のフック部12と、基台部11の前側に板状の頭部13とを有した樹脂製部品である。基台部は、開口7を充足するように本実施例ではほぼ同一の形状の外形を有して前後方向xに延びる柱状の部位である。クリップ10は、基台部11と一対のフック部12と頭部13とが一体的に樹脂成形されていることが好ましい。
【0015】
一対のフック部12は、横梁2(一点鎖線で示した)に対して、角度αとなるように傾斜した一対のバネ部14と、各バネ部14の先端に設けられた鍔部15とを有している。一対のバネ部14は板状であり、角度αの傾斜により、バネ部14の面が台形の貫通孔5の側辺5a、5bの夫々に対向(若干の間隔を開けていても、当接していても良い)するようになっている。一対のバネ部14の夫々の先端に設けられた鍔部15は、互いに離反する方向に貫通孔5よりも大きく突出しており、かつ、その形状は、基台部11に近づくにつれて、互いに離反する距離が増加するテーパ状である。
【0016】
頭部13は、基台部11よりも大きな面積を有しており、基台部11の上方の当接部16と、基台部11の下側に左右に張り出した翼部17とを有している。当接部16の基台部11側の面16aは、基台部11に対して前後方向xに直交する左右方向yの面である。一方、左右の翼部17は、前後方向xにおいてやや後ろ側の方向に向けて延びる後退形状になっている。当接部16の基台部11側の面16aと鍔部15の後端の間隔bは、受け材3と金属板4の厚さを合計したものに相当する長さになっている。
【0017】
図1Eを参照し、搬送容器の組立て手順について説明する。受け材3の底面33を横梁2の一側面22と金属板4の交差した箇所にあてがい、貫通孔5と開口7の位置を揃えて連通させる。そして、クリップ10のフック部12側を開口7に挿入する。挿入過程で、鍔部15がテーパ状をしているためにバネ部14が相互に近接するように屈曲しフック部12は開口7及び貫通孔5を通過する。そして、鍔部15を貫通孔5から突出させるとバネ部14は弾発して、鍔部15を貫通孔5の縁に引っ掛ける。
図1Bは、貫通孔5から突出したフック部12の鍔部15を示している。受け材3の上側面31が金属板4の上辺41よりもやや上側に露出しているため、搬送対象物を支えるクッション性が保持されて、かつ金属板4が受け材3と類似の形をしているので、一定の剛性を確保している。また、
図2Fは、一点破線により受け材3と金属板4とを示して、これらに取り付けられたクリップ10の側面視を示している。同図において、翼部17の後退形状は変形され、当接部16と同様に受け材3に対して面接触している。これは、翼部17のそれ自体が有するバネ性により、翼部17の後退形状が受け材3に倣って直線状に変形し、その結果として鍔部15を金属板4に強く押して当てている。
図2Eは、そのような様子を示しており、翼部17が矢印cのように変形し、その弾発力により鍔部15が金属板4側へ押し付けられる。その結果、クリップ10は、受け材3を金属板4に対して強く留めるのである。
【0018】
また、一対のバネ部は角度αの傾斜であって、台形の貫通孔5の角度αの側辺に対向する。このため、
図2Bに示すように、受け材の左右方向yの揺れた場合には、その力はバネ部14が直接若しくは鍔部を介して角度αで受けることにより、左右方向yの力が分散される。その結果、バネ部14が変形しにくく、鍔部15が金属板4から外れることが抑制される。
【0019】
図2Gは、受け材3の発泡樹脂として、厚さの厚い受け材3を用いる場合のクリップ10を示している。厚さの確保が容易な発泡樹脂材料として、例えばSOFTLON(商標登録第928395号、積水化学工業株式会社)等の樹脂材料が挙げられる。厚い受け材3であっても開口7の形状は
図1の受け材3と同じとする。このような場合においては、クリップ10の基台部11の前後方向の長さdを長くする。尚、
図2Gのクリップ10の基台部11の一部が、樹脂材料の削減のため一部欠損(矢印aの部分)しているが、完全に開口7を埋める必要は無く、開口7を充足するにはこれで十分である。
【0020】
本実施例によれば、クリップを嵌め込むだけで、受け材3を金属板4に固定して搬送容器が製造できるので、製品不良につながる恐れを削減でき、かつ必要とする工数を大幅に削減することができる。また、一対のバネ部14と貫通孔5の側辺5a、5bは角度αで対向しているため、受け材3の左右方向yの揺れの力が分散することができる。また、翼部17が後退形状をしているため、クリップ10が受け材3と金属板4を固定したときに、翼部17の弾発力により受け材3を金属板4に押し付け固定することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 金属フレーム
2 横梁
3 受け材
4 金属板
5 貫通孔
6 座金
7 開口
8 ボルト
9 ナット
10 クリップ
11 基台部
12 フック部
13 頭部
14 バネ部
15 鍔部
16 当接部
17 翼部