(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】ビスホスホネートを含む慢性移植腎機能不全の予防または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/663 20060101AFI20221026BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20221026BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20221026BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20221026BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20221026BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20221026BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20221026BHJP
A61K 9/52 20060101ALI20221026BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20221026BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20221026BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20221026BHJP
【FI】
A61K31/663
A61P13/12
A61P19/10
A61K9/10
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/20
A61K9/52
A61K9/08
A61K9/06
A23L33/10
(21)【出願番号】P 2019555020
(86)(22)【出願日】2018-04-13
(86)【国際出願番号】 KR2018004360
(87)【国際公開番号】W WO2018190685
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-03-24
(31)【優先権主張番号】10-2017-0048564
(32)【優先日】2017-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513184264
【氏名又は名称】インダストリー-アカデミック コオペレイション ファウンデーション、ヨンセイ ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ポム ソク
(72)【発明者】
【氏名】ソン、スン ファン
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/052408(WO,A1)
【文献】国際公開第01/097788(WO,A1)
【文献】日腎会誌,2004年,Vol.46, No.7,p.667-675
【文献】Nephrol. Dial. Transplant.,2004年,Vol.19,p.2870-2873
【文献】Kidney International,2003年,Vol.64,p.281-289
【文献】Clin. Transplant.,2016年,Vol.30,p.1090-1096
【文献】Clinical Orthopaedics and Related Research,2009年,Vol.468, No.3,p.867-874
【文献】Clin. Invest.Med.,2012年,Vol.35, No.4,p.E165-E172
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスホスホネート(bisphosphonate)を有効成分として含む、慢性移
植機能不
全の予防または治療用医薬組成物
であって、
前記移植機能不全は、腎臓の移植に起因するものである、医薬組成物
。
【請求項2】
前記ビスホスホネートが、骨粗鬆症治療用途に用いられるものである、請求項1に記載
の医薬組成物。
【請求項3】
前記ビスホスホネートは、リセドロネート(risedronate;risedronic acid)、イバンドロネート(Ibandronate;ibandronic acid)、エチドロネート(Etidronate;etidronic acid)、アレンドロネート(Alendronate;alendronic acid)、パミドロネート(Pamidronate;pamidronic acid)、クロドロネート(Clodronate;clodronic acid)、チルドロネート(Tiludronate;tiludronic acid)、インカドロネート(Incadronate;incadronic acid)、ミノドロネート(Minodronate;minodronic acid)、オルパドロネート(Olpadronate;olpadronic acid)、およびネリドロネート(Neridronate;neridronic acid)からなる群から選択された何れか1つ以上である、請求項2に記載
の医薬組成物。
【請求項4】
前記医薬組成物は、
腎臓の移植手術後における
腎臓移植患者の長期生存率(long-term survival)を増加させる、請求項1に記載
の医薬組成物。
【請求項5】
前記医薬組成物は、懸濁液、散剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、徐放性製剤、注射剤、軟膏剤、または点眼剤の形態である、請求項1に記載
の医薬組成物。
【請求項6】
ビスホスホネート(bisphosphonate)を有効成分として含む、慢性移
植機能不
全の予防または改善用食品組成物
であって、
前記移植機能不全は、腎臓の移植に起因するものである、食品組成物
。
【請求項7】
前記ビスホスホネートが、骨粗鬆症治療用途に用いられるものである、請求項
6に記載
の食品組成物。
【請求項8】
前記ビスホスホネートは、リセドロネート(risedronate;risedronic acid)、イバンドロネート(Ibandronate;ibandronic acid)、エチドロネート(Etidronate;etidronic acid)、アレンドロネート(Alendronate;alendronic acid)、パミドロネート(Pamidronate;pamidronic acid)、クロドロネート(Clodronate;clodronic acid)、チルドロネート(Tiludronate;tiludronic acid)、インカドロネート(Incadronate;incadronic acid)、ミノドロネート(Minodronate;minodronic acid)、オルパドロネート(Olpadronate;olpadronic acid)、およびネリドロネート(Neridronate;neridronic acid)からなる群から選択された何れか1つ以上である、請求項
7に記載
の食品組成物。
【請求項9】
前記食品組成物は、
腎臓の移植手術後における
腎臓移植患者の長期生存率(long-term survival)を増加させる、請求項
6に記載
の食品組成物。
【請求項10】
前記食品組成物は、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、粉末剤、または飲料の形態である、請求項
6に記載
の食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨粗鬆症の治療剤として用いられているビスホスホネートを含む慢性移植腎機能不全の予防または治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
腎臓の損傷や腎臓の機能低下状態が3ヶ月以上続くことを慢性腎臓病という。この場合、持続的に血液透析や腹膜透析を行わなければならず、治療のためには、腎臓移植が必要である。このような臓器移植の場合、移植手術の後に、移植腎機能不全(allograft dysfuction)により腎臓の機能が再び悪くなる場合がしばしば発生する。移植腎機能不全とは、臓器移植における拒絶反応の一種であって、移植後数ヶ月から発症することがあり、移植腎機能不全が発生すると、移植された腎臓の機能が低下し、さらに腹膜透析または血液透析を持続的に受けなければならない。
【0003】
かかる移植腎機能不全は、急性移植腎機能不全(acute allograft dysfunction)と慢性移植腎機能不全(chronic allograft dysfunction)とに大別される(Ryan J.G.et.al.,Med.Cli.N.Am.(2016)100:487-503)。急性移植腎機能不全は、手術後6ヶ月以内に発生し、超急性拒絶反応(hyperacute rejection)、血栓症(thrombosis)、尿漏れ(urine leak)、尿管閉塞(ureteral obstruction)などの症状が現れる。その治療方法としては、副腎皮質ホルモンなどの免疫抑制剤の大量投与が用いられている。しかしながら、数ヶ月乃至数年後に徐々に発生することになる慢性移植腎機能不全は、免疫抑制剤の大量投与では殆ど治療効果が見られない。そのため、米国では、腎臓移植後1年生存率は96%であるが、5年生存率は81%、10年生存率は59%と、腎臓移植後における長期生存率が急激に減少しているが、これに対する効果的な治療剤の開発は微少な状態である(2009年、米国USRDS資料)。したがって、慢性移植腎機能不全に対する効果的な治療剤または予防製剤の開発は、腎臓移植患者の長期生存率を著しく増加させると期待されている(Leonardo V.R.et.al.,Transplantation Rev.(2016)in press)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような従来技術の問題を解決するためになされたものであって、ビスホスホネートを有効成分として含む、慢性移植腎機能不全の予防または治療用薬学組成物を提供することをその目的とする。
【0005】
しかし、本発明が達成しようとする技術的課題は上述の課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は、下記の記載から、当業界において通常の知識を有する者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、本願に記載の多様な具体例が図面を参照して記載される。下記の説明において、本発明の完全な理解のために、多様な特異的詳細事項、例えば、特異的形態、組成物、および工程などが記載されている。しかし、特定の具体例は、これらの特異的詳細事項のうち1つ以上なしに、または他の公知の方法および形態とともに実行され得る。他の例において、公知の工程および製造技術は、本発明を不明瞭にすることを避けるために、特定の詳細事項として記載されない。「一具体例」または「具体例」に対する本明細書全体をわたる参照は、具体例と結び付けて記載された特別な特徴、形態、組成、または特性が本発明の1つ以上の具体例に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる多様な位置で表現された「一具体例において」または「具体例」の状況は、必ずしも本発明の同一の具体例を示すわけではない。さらに、特別な特徴、形態、組成、または特性は、1つ以上の具体例において何らかの適した方法で組み合わされ得る。
【0007】
明細書において、特に定義がなければ、本明細書で用いられた全ての科学的および技術的な用語は、本発明が属する技術分野において当業者が通常理解しているものと同一の意味を有する。
【0008】
本明細書において、「慢性移植腎機能不全(chronic allograft dysfuction)」とは、組織または臓器移植手術の後に、移植された組織または臓器の機能が徐々に減少することを総称し、好ましくは、移植手術後6ヶ月以上が経た後に発症することを意味するが、急性に機能が減少するのではなければ、これに制限されない。前記組織または臓器は、好ましくは、腎臓、骨髄、心臓、角膜、腸、肝、肺、膵臓、皮膚などであってもよく、より好ましくは腎臓であるが、移植が可能な組織または臓器であればこれに制限されない。
【0009】
本明細書において、「ビスホスホネート(bisphosphonate)」とは、ピロホスフェートの構造的類似体であって、ピロホスフェートのP-O-P-グループが、酵素的に安定したP-C-P-グループで代替されている化合物を総称するものであり、P-C-P-グループのC-原子において水素原子を置き換えることにより、様々な構造的要素および特性を有するビスホスホネートが製造可能である。臨床的使用が承認された公知のビスホスホネートとしては、パミドロネート、アレンドロネート、エチドロネート、クロドロネート、リセドロネート、チルドロネート、イバンドロネート、インカドロネート、ミノドロネート、オルパドロネート、ネリドロネート、EB-1053などが挙げられ、このようなビスホスホネートは、骨粗鬆症治療剤として広く知られて用いられている。
【0010】
本発明は、ビスホスホネート(bisphosphonate)を有効成分として含む、慢性移植腎機能不全(chronic allograft dysfuction)の予防または治療用医薬組成物を提供する。
【0011】
本発明の一具体例において、前記ビスホスホネートは、好ましくは、骨粗鬆症治療用途に用いられ、より好ましくは、リセドロネート(risedronate;risedronic acid)、イバンドロネート(Ibandronate;ibandronic acid)、エチドロネート(Etidronate;etidronic acid)、アレンドロネート(Alendronate;alendronic acid)、パミドロネート(Pamidronate;pamidronic acid)、クロドロネート(Clodronate;clodronic acid)、チルドロネート(Tiludronate;tiludronic acid)、インカドロネート(Incadronate;incadronic acid)、ミノドロネート(Minodronate;minodronic acid)、オルパドロネート(Olpadronate;olpadronic acid)、ネリドロネート(Neridronate;neridronic acid)、EB-1053などが挙げられ、より好ましくは、リセドロネート(risedronate;risedronic acid)、イバンドロネート(Ibandronate;ibandronic acid)、エチドロネート(Etidronate;etidronic acid)、アレンドロネート(Alendronate;alendronic acid)、パミドロネート(Pamidronate;pamidronic acid)であるが、骨粗鬆症治療用途に用いられているビスホスホネートであればこれに制限されない。
【0012】
本発明の他の具体例において、前記移植腎機能不全は、腎臓、骨髄、心臓、角膜、腸、肝、肺、膵臓、皮膚などからなる群から選択された何れか1つの組織または臓器移植による副作用であり、移植手術の後に、移植された組織または臓器の機能が徐々に減少することを意味する。
【0013】
本発明のさらに他の具体例において、前記医薬組成物は、移植手術後10年以上の長期生存率(long-term survival)を増加させ、前記医薬組成物は、懸濁液、散剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、徐放性製剤、注射剤、軟膏剤、点眼剤などの種々の形態で製造可能である。
【0014】
本発明において、前記医薬組成物は、カプセル、錠剤、顆粒、注射剤、軟膏剤、粉末、または飲料の形態であることを特徴とし、前記医薬組成物は、ヒトを対象とすることを特徴とする。前記医薬組成物は、これらに限定されるものではないが、それぞれ通常の方法により、散剤、顆粒剤、カプセル、錠剤、水性懸濁液などの経口剤型、外用剤、坐剤、および滅菌注射溶液の形態で剤型化して使用可能である。本発明の医薬組成物は、薬学的に許容可能な担体を含んでもよい。薬学的に許容される担体は、経口投与時には、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、香料などが使用可能であり、注射剤の場合は、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張剤、安定化剤などを混合して使用可能であり、局所投与用の場合は、基剤、賦形剤、潤滑剤、保存剤などが使用可能である。本発明の薬学的組成物の剤型は、上述のような薬学的に許容される担体と混合して多様に製造されることができる。例えば、経口投与時には、錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル(elixir)、懸濁液、シロップ、ウエハなどの形態で製造可能であり、注射剤の場合は、単位投薬アンプルまたは多数回投薬の形態で製造可能である。その他に、溶液、懸濁液、錠剤、カプセル、徐放性製剤などの剤型が可能である。
【0015】
一方、製剤化に適した担体、賦形剤、および希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルジネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレート、または鉱物油などが使用可能である。また、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、防腐剤などをさらに含んでもよい。
【0016】
本発明に係る医薬組成物の投与経路は、これらに限定されるものではないが、口腔、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、硬膜内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸管、局所、舌下、または直腸が含まれる。経口または非経口投与が好ましい。本願で用いられた用語「非経口」は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、ファブリキウス嚢内、胸骨内、硬膜内、病巣内、および頭蓋骨内注射または注入技術を含む。本発明の医薬組成物は、また、直腸投与のための坐剤の形態で投与されてもよい。
【0017】
本発明の医薬組成物は、使用された特定の化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康、性別、 食習慣 、投与時間、投与経路、排出率、薬物配合、および予防または治療すべき特定疾患の重症度を含む種々の要因によって多様に変化可能であり、前記医薬組成物の投与量は、患者の状態、体重、疾病の程度、薬物の形態、投与経路、および期間によって異なるが、当業者が適切に選択可能であり、1日0.0001~50mg/kgまたは0.001~50mg/kgで投与してもよい。投与は、一日に一回投与することも可能であり、数回に分けて投与することも可能である。前記投与量は、どのような面においても、本発明の範囲を限定するものではない。本発明に係る医薬組成物は、丸剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤で剤型化してもよい。
【0018】
また、本発明は、ビスホスホネート(bisphosphonate)を有効成分として含む慢性移植腎機能不全(chronic allograft dysfuction)の予防または改善用食品組成物を提供する。
【0019】
本発明の一具体例において、前記ビスホスホネートは、好ましくは、骨粗鬆症治療用途に用いられ、より好ましくは、リセドロネート(risedronate;risedronic acid)、イバンドロネート(Ibandronate;ibandronic acid)、エチドロネート(Etidronate;etidronic acid)、アレンドロネート(Alendronate;alendronic acid)、パミドロネート(Pamidronate;pamidronic acid)、クロドロネート(Clodronate;clodronic acid)、チルドロネート(Tiludronate;tiludronic acid)、インカドロネート(Incadronate;incadronic acid)、ミノドロネート(Minodronate;minodronic acid)、オルパドロネート(Olpadronate;olpadronic acid)、ネリドロネート(Neridronate;neridronic acid)、EB-1053などからなる群から選択された何れか1つ以上であるが、骨粗鬆症治療剤として用いられているビスホスホネートであればこれに制限されない。
【0020】
本発明の他の具体例において、前記移植腎機能不全は、腎臓、骨髄、心臓、角膜、腸、肝、肺、膵臓、皮膚などからなる群から選択された何れか1つの組織または臓器移植による副作用であり、移植手術の後に、移植された組織または臓器の機能が徐々に減少することを意味する。
【0021】
本発明のさらに他の具体例において、前記食品組成物は、移植手術後における長期生存率(long-term survival)を増加させ、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、粉末剤、飲料の形態などで製造可能である。
【0022】
本発明において、前記食品組成物は、各種食品類、例えば、飲料、ガム、茶、ビタミン複合剤、健康補助食品類などに用いられ、丸剤、粉末、顆粒、浸剤、錠剤、カプセル、または飲料の形態で使用可能である。この際、食品または飲料中の前記ビスホスホネートの量は、一般に、本発明の食品組成物の場合、全食品重量の0.01~15重量%で加えてもよく、健康飲料組成物の場合、100mLを基準として0.02~10g、好ましくは0.3~1gの比率で加えてもよい。
【0023】
本発明の食品組成物は、当業界において通常の食品添加剤、例えば、香味剤、風味剤、着色剤、充填剤、安定化剤などを含んでもよい。本発明に係る食品組成物は、必須成分としての前記ビスホスホネートの他に添加される成分は特に制限されず、通常の食品のように、種々の香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含有してもよい。前記天然炭水化物の例としては、モノサッカライド、モノサッカライド例えば、ブドウ糖、果糖など;ジサッカライド、例えば、マルトース、スクロースなど;ポリサッカライド、例えば、デキストリン、シクロデキストリン;などのような通常の糖、およびキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールである。上述のもの以外の香味剤として、天然香味剤(タウマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウジオシドA、グリチルリチンなど))、および合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を有利に使用可能である。前記天然炭水化物の比率は、本発明の組成物100mL当たりに、一般には約1~20g、好ましくは約5~12gである。
【0024】
上記の他に、本発明の食品組成物は、種々の栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤、および天然風味剤などの風味剤、着色剤、および充填剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に用いられる炭酸化剤などを含有してもよい。このような成分は、独立して、または組み合わせて使用可能である。このような添加剤の比率は、あまり重要ではないが、本発明の組成物100重量部当たりに、0~約20重量部の範囲で選択されるのが一般的である。
【0025】
また、本発明は、慢性移植腎機能不全(chronic allograft dysfuction)の予防または治療のために、治療を必要とする対象体に、請求項1から6の何れか一項に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、慢性移植腎機能不全の予防または治療方法を提供する。
【0026】
本発明の一具体例において、前記医薬組成物は、対象体に1日に0.0001~50mg/kgまたは0.001~50mg/kgで投与するステップを含む。
【0027】
また、本発明は、慢性移植腎機能不全(chronic allograft dysfuction)の予防または治療のための、請求項1から6の何れか一項に記載の医薬組成物の用途を提供する。
【0028】
本発明の一具体例において、前記医薬組成物は、治療を必要とする対象体に、1日に0.0001~50mg/kgまたは0.001~50mg/kgで投与する。
【0029】
また、本発明は、慢性移植腎機能不全(chronic allograft dysfuction)の予防または改善のために、改善を必要とする対象体に、請求項7から12の何れか一項に記載の食品組成物を摂取させるステップを含む、慢性移植腎機能不全の予防または改善用食品組成物を提供する。
【0030】
本発明の一具体例において、前記食品組成物は、ビスホスホネートの量を、全食品重量の0.01~15重量%で含む。本発明の他の具体例において、前記食品組成物は、ビスホスホネートの量を、100mLを基準として0.02~10g、好ましくは0.3~1gの比率で含む。
【0031】
また、本発明は、慢性移植腎機能不全(chronic allograft dysfuction)の予防または改善のための、請求項7から12の何れか一項に記載の食品組成物の用途を提供する。
【0032】
本発明の一具体例において、前記食品組成物は、ビスホスホネートの量を、全食品重量の0.01~15重量%で含む。本発明の他の具体例において、前記食品組成物は、ビスホスホネートの量を、100mLを基準として0.02~10g、好ましくは0.3~1gの比率で含む。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係るビスホスホネートを含む慢性移植腎機能不全の予防または治療用組成物は、組織または臓器移植手術の後に、移植された組織または臓器の機能が徐々に減少する慢性移植腎機能不全の予防および/または治療効果に優れており、これにより、移植手術後における長期生存率を著しく増加させることができると期待される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の一実施例に係るビスホスホネート実験群全体の平均生存率(~300month)を確認した結果を示した図である。
【
図2】本発明の一実施例に係るアレンドロネート投与群の長期生存率を確認した結果を示した図である。
【
図3】本発明の一実施例に係るエチドロネート投与群の長期生存率を確認した結果を示した図である。
【
図4】本発明の一実施例に係るパミドロネート投与群の長期生存率を確認した結果を示した図である。
【
図5】本発明の一実施例に係るリセドロネート投与群の長期生存率を確認した結果を示した図である。
【
図6】本発明の一実施例に係るエチドロネート、イバンドロネート、およびパミドロネート投与群の平均生存率を確認した結果を示した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明は、骨粗鬆症治療剤として用いられているビスホスホネートを含む慢性移植腎機能不全の予防または治療用組成物に関し、本発明に係るビスホスホネートを含む慢性移植腎機能不全の予防または治療用組成物は、組織または臓器移植手術の後に、移植された組織または臓器の機能が徐々に減少する慢性移植腎機能不全の予防および/または治療効果に優れており、これにより、移植手術後における長期生存率を著しく増加させることができると期待される。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の旨により、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されないということは、当業界において通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【実施例】
【0037】
実施例1:慢性移植腎機能不全におけるビスホスホネートの役割の確認
慢性移植腎機能不全におけるビスホスホネート(bisphosphonate)の役割を確認するために、1979年4月から2016年6月まで延世大学校医療院で腎臓移植(kidney transplantation;KT)を受けた4,000人の患者のうち、移植手術の前にビスホスホネートを使用していた患者と、データが消失された患者を除いた3,939人を対象として研究を行った。対象患者のうち、ビスホスホネートを使用していない患者は3,022人(対照群)であり、残りの917人は、手術後1年が経た後にビスホスホネートを使用した。ビスホスホネートを使用する時点で患者の腎臓機能検査(renal function test;glomerular filtration rate;GFR)を行い、その検査結果値が30mL/min/1.73m
2以上であった患者866人を、実験群と指定した。対照群と実験群の移植腎生存率(graft survival)を、傾向スコアマッチング法(propensity score matching;PSM)を用して分析した。実施例の統計分析は、何れもIBM PSS statistics ver.21(IBM Korea corporation、Seoul、Korea)およびMedCalc Ver.11.6(MedCalc Software)を用いて実施した。「p<0.05」であると、有意性があると分析した。ビスホスホネートとしては、リセドロネート(Risedronate;risedronic acid)、イバンドロネート(Ibandronate;ibandronic acid)、エチドロネート(Etidronate;etidronic acid)、アレンドロネート(Alendronate;alendronic acid)、およびパミドロネート(Pamidronate;pamidronic acid)を使用し、リセドロネートは559人、イバンドロネートは16人、エチドロネートは13人、アレンドロネートは245人、そしてパミドロネートは33人に使用した。投与用量および回数は、それぞれの既存の投与方法に従って使用した。その結果は、
図1から
図6に示した。
【0038】
図1に示されたように、ビスホスホネートを投与した実験群と、投与していない対照群の生存率は、100ヶ月(month)まではあまり差がないことを確認し、その後に徐々に生存率の差が生じることを確認した。このことから、ビスホスホネートの投与が短期生存率には影響を殆ど及ぼさないが、長期になるにつれて生存率が著しく増加することを確認することができた。
【0039】
また、
図2から
図6に示されたように、それぞれのビスホスホネートの投与時における長期生存率を確認した結果からも、短期生存率は差がなかったが、長期生存率においては著しい差が現れることを確認した。
【0040】
上記の結果から、従来に骨粗鬆症治療剤として用いられていたビスホスホネートを、腎臓移植手術を受けた患者に投与すると、慢性移植腎機能不全(chronic allograft dysfunction)の発症率を著しく減少させ、腎臓移植患者の長期生存率(long-term survival)を著しく増加させることができるということを確認することができた。このことから、ビスホスホネートを、慢性移植腎機能不全の予防または治療用途に使用可能であるということを確認することができた。
【0041】
以上、本発明の特定の部分を詳述したが、当業界において通常の知識を有する者にとって、このような具体的な技術は好ましい実現例にすぎず、これに本発明の範囲が制限されるものではない点は明白である。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の請求範囲とその等価物によって定義されるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、骨粗鬆症治療剤として用いられているビスホスホネートを含む慢性移植腎機能不全の予防または治療用組成物に関する。